JP5509420B2 - 未熟コムギ種子を用いた食品の製造方法及び食品 - Google Patents
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Description
一方、2006年に甘味種コムギが開発された(非特許文献1参照)。このコムギは、同祖染色体に由来する3つのコムギ顆粒性澱粉合成酵素I型(GBSSI)タンパク質(granule bound starch synthase I-A1:GBSSI-A1、granule bound starch synthase I-B1:GBSSI-B1、granule bound starch synthase I-D1:GBSSI-D1)および3つのコムギ澱粉合成酵素IIa型(SSIIa)タンパク質(starch synthase IIa-A1:SSIIa-A1、starch synthase IIa-B1:SSIIa-B1、starch synthase IIa-D1:SSIIa-D1)が全て欠損したコムギであり、従来の既知のコムギとはかけ離れた新しい特性を持ったコムギとして注目されている。甘味種コムギを粉砕した穀粉を用いることで、製品に独特の風味や食感を与えることが知られている。
さらに、このようなコムギの特性をいっそう生かすことができるコムギの加工方法が望まれている。
従来コムギを未熟段階で収穫し、食品あるいは食品素材として用いる習慣はなかった。従来用いられてきた穀物収穫用装置、例えばコンバインによる収穫、バインダーで刈り取り後に、ハーベスタでの脱穀、あるいはドラム型脱穀機等による脱穀、さらには「とうみ」等による風力を用いた精選装置を用いた一連の収穫、脱穀作業では、種子のみを収穫することが困難であった。穀物収穫に一般的に用いられる従来の作業工程だけでは、種子だけでなく茎や穂軸、葉が大量に混在している。さらには、種子を覆う外穎、内穎が種子に結合したままの状態である種子が大量に混在している。
本発明者らは、このような収穫物(以下、未熟コムギ原料と称する)から、特定の工程を経ることによって、未熟コムギ種子のみが効率良く回収できることを見出し、ひいては未熟コムギ種子を用いて優れた食品素材及び食品を効率よく製造できることを見出した。
「収穫前種子」は、収穫する直前の種子を意味する。「未熟コムギ原料」は、コンバイン等での収穫後、コムギ種子が茎や穂軸、穎花などと混在している状態のものを意味する。
「未熟コムギ種子」は、未熟コムギ原料より茎や穂軸、穎花などを除去したもの(いわゆる種実(grain)に該当するもの)を意味する。「不良種子」は、収穫、脱穀の過程で生じた破損した種子や、穎花が結合したままの種子を意味する。
本発明の食品素材又は食品の製造方法では、上記脱穀の後、該未熟コムギ原料を40℃から85℃の温水中に投入し、浮遊する種子以外の夾雑物および不良種子を除去し、未熟コムギ種子を採取し、その未熟コムギ種子を用いることが好ましい。この工程において、より具体的には、該未熟コムギ原料を40℃から85℃の温水中に投入し、当初の温水から5℃以上温度を上昇させる過程で浮遊する種子以外の夾雑物および不良種子を除去し、沈んでいる画分として未熟コムギ種子を採取することが望ましい。
本発明の食品素材又は食品の製造方法の一実施態様では、未熟コムギ種子を凍結乾燥する工程をさらに含む。より具体的には、本発明の食品素材又は食品の製造方法の一例として、上記の冷凍状態での脱穀及び温水中での選別の後に、採取した未熟コムギ種子を凍結乾燥する工程を含む方法が挙げられる。
本発明の食品素材又は食品の製造方法の別の実施態様では、上記のように凍結乾燥された未熟コムギ種子を粉砕して穀粉を調製することができる。従って、本発明はまた、未熟コムギ原料を冷凍状態で脱穀し、次いで40℃から85℃の温水中に投入し、浮遊する種子以外の夾雑物および不良種子を除去した後、得られた未熟コムギ種子を凍結乾燥し次いで粉砕し穀粉を得ることを含む、小麦粉の製造方法にも向けられる。
本発明の方法のさらに別の好ましい実施態様として、未熟コムギが、3つのコムギ澱粉合成酵素IIa型タンパク質を発現せず、かつ3つのコムギ顆粒性澱粉合成酵素I型タンパク質のうち1つ以上を発現しないコムギである、上記未熟コムギ種子を用いた食品素材又は食品の製造方法がある。
本発明はさらに、上記の方法によって製造された食品素材又は食品に向けられる。
本発明の方法において、脱穀を施した該未熟コムギ原料を40℃から85℃の温水中に投入し、当初の温水から5℃以上温度を上昇させる過程を設けることによって、この過程で種子以外の夾雑物や不良種子が浮遊してくるので、いっそう有利に該夾雑物や不良種子を除去することができる。上記の温水中での未熟コムギ種子と不良種子の選別工程は、上記のように効率良く夾雑物や不良種子と分けて未熟コムギ種子を選別する効果だけでなく、未熟コムギ種子の保存性及び風味の改善にも有用な効果を与えることができる。
本発明の未熟コムギ種子を用いた食品素材又は食品の製造方法によれば、食感や風味や硬さが良好な食材、及び食品を製造することができる。
本発明の未熟コムギ種子を用いた食品素材の製造方法の一例となる、小麦粉の製造方法によれば、従来の小麦粉とは異なる新規な食感や風味、さらには独特の色合いを持った小麦粉を得ることができ、この小麦粉を様々な食品の製造に用いることができる。
本発明の方法はどのような種類のコムギにも適用することができる。
本発明で用いる未熟コムギ原料のコムギとして、収穫前コムギ種子において乾燥質量に対するアルファグルカン含量が例えば40%以下のものを選択することによって、食材や食品に柔らかい食感を与えることが可能となる。
本発明で用いる未熟コムギ種子は、他のコムギ種子、例えば完熟コムギ種子に比べて遊離アミノ酸含量が高く、かつ食物繊維含量も多いことから、機能性食材としても優れており、本発明によって機能性の高い食材及び食品を提供することができる。
未熟コムギを収穫する時期の目安として、収穫前コムギ種子の水分含量が50質量%以上、好ましくは55質量%以上、さらに好ましくは60質量%以上、最も好ましくは65質量%以上であることが挙げられる。コムギ種子の水分含量は、該種子を乾燥させることによって、乾燥前後の質量変化から算出することができる。
未熟コムギの収穫時期の目安としてまた、コムギの開花時期から18〜38日目、好ましくは20〜35目目、より好ましくは26〜35日目に収穫することが挙げられる。
また、本発明で用いる未熟コムギ原料のコムギとして、どのような種類のコムギも用いることができるが、好ましいコムギの例として、収穫前種子の乾燥質量に基づいてアルファグルカン含量が40質量%以下のコムギが挙げられる。このアルファグルカン含量はより好ましくは35質量%以下であり、いっそう好ましくは30質量%以下である。アルファグルカンとは、デンプンに含まれるアミロースやアミロペクチンのように、グルコースが基本的にはα-1,4-結合で直鎖状に結合し、ところどころα-1,6-結合で枝分かれして連なった構造を持つポリマーのことである。コムギ種子のアルファグルカン含量の測定は、市販のアルファグルカン測定用キット、例えばMEGAZYME社製のTOTAL STARCH ASSAYキットを用いて実施することができる。
未熟コムギ原料の冷凍条件は、0℃以下、好ましくは−4℃以下、さらに好ましくは−10℃以下に未熟コムギ原料を冷凍することが挙げられる。使用する冷凍装置は通常用いられる家庭用あるいは業務用冷凍庫など、冷却した外気によって種子を凍らせることができる装置であればいかなる装置を用いても良い。あるいはドライアイスなどを用いて未熟コムギ原料を予備冷却した後に冷凍庫に保管しても良い。さらには液体窒素を使って種子を直接冷却あるいは冷凍し、その後冷凍庫に保管しても良い。
未熟コムギ原料が冷凍状態であれば、種子が硬化するため衝撃に強くなり、さらに穎等との結合組織の柔軟性も失われるため、通常完熟したコメやダイズ、コムギ種子等の脱穀に用いられる装置等を利用して脱穀することができる。あるいは、未熟コムギ原料を投入した容器内で、回転羽等を利用して衝撃を与える、あるいは容器を激しく振とうするといった外的に加える力により、原料に衝撃を与える、あるいは摩擦力を発生させることにより穎を種子から脱離させる方法を用いても良い。あるいは原料を研磨することにより、穎を脱離させる方法でも良い。このような目的には、例えば従来コメの精米に用いられる精米機を利用することができる。摩擦式精米機、研削式精米機など精米の方式、あるいは、業務用、家庭用など用途別によらずいかなる精米機でも良い。また、通常の精米装置は冷凍状態の穀粒を処理する設計ではないため、極力低温で処理できるよう冷却機能等が付加されたようなものであればなお良い。さらには風力等で未熟コムギ原料とそれ以外の夾雑物を選別できる機能が付与されたものであればなお良い。
上記のように脱穀処理を行った未熟コムギ原料は正常な未熟コムギ種子、種子に破損や穎が結合したままである不良種子、および茎や葉、種子から脱離した穎花等の夾雑物が依然として混在した状態にある。この状態から未熟コムギ種子を、不良種子や夾雑物の混入率をできるだけ低いレベルで回収することが有利である。
茎や葉の断片あるいは種子から脱離した穎などは大きさや比重の違いにより風力や水中で、目の大きさの異なる網等を組み合わせることで比較的簡便に除去することができるが、外穎あるいは内穎が結合したままの不良種子と未熟コムギ種子を分離することは非常に困難である。穎は食したときに噛み切ることが難しく、口中に残ってしまう。特に外穎は非常に硬いため、口中を傷つけてしまう可能性もあることから、未熟コムギ種子へのこれら穎付き種子の混入はできる限り低く抑える必要がある。
いっそう純度の高い未熟コムギ種子を得るためには、より具体的には、該未熟コムギ原料を40℃から85℃の温水中に投入し、当初の温水から5℃以上温度を上昇させる過程で浮遊する種子以外の夾雑物および不良種子を除去し、沈降している画分として未熟コムギ種子を回収することで達成できる。
この目的に使用される装置は、内部に温水を保持し、加熱により水温を上昇させることができる装置であればいかなるものを使用しても良い。例えば、家庭用、業務用に限らず、鍋や釜を用い、直火あるいは電気的に容器を加熱することで水温を上昇させる方法が挙げられる。この場合、容器の底に当たる部分は投入した未熟コムギ原料が均一に広がるように平らになったものが好ましい。また浮遊してくる夾雑物や不良種子を回収しやすいよう、ある程度の高さを有する容器が好ましい。さらには投入した原料を緩く攪拌する作業を行うことができる装置が好ましい。また用いる温水には、電解質、非電解質等の溶質を溶かした溶液を用いても良い。
温水の昇温の条件は特に限定されないが、昇温の幅は、上記のように5℃以上が適当で、せいぜい40℃まで、好ましくはせいぜい30℃までである。また、平均昇温速度として0.5〜10℃/分が一般的で、1〜8℃/分が好ましく、2〜8℃/分がより好ましい。
初期の温水の温度及び昇温の条件の一例として、例えば50℃の温水でスタートして、75℃で終了させ、その間の昇温速度が2〜3℃/分が挙げられる。
また、取り除いた夾雑物や不良種子の中には正常粒が混入している場合もある。
本発明の食品素材又は食品の製造方法において、上記のようにして得た未熟コムギ種子は、そのまま食品素材となり、そのまま食する食品ともなる。例えば、該未熟コムギ種子をレトルト処理し、レトルトパック食材又は食品、あるいは缶詰とすることもできる。あるいは、該未熟コムギ種子を冷凍し、冷凍食材又は食品とすることもできる。該未熟コムギ種子は冷凍保存、チルド保存、又は冷蔵保存をすることもできる。
該未熟コムギ種子を用いる食品素材及び食品は、特定の種類に限定されるものではない。該未熟コムギ種子は、例えばそのままで、又は例えば炒める、煮る、蒸す、焼く、揚げる、漬けるなどの調理方法によって、任意の食材と合わせて食品とすることができ、他の食材と合わせる態様も、例えば均一に混ぜる、練りこむ、トッピングにするなど、様々な方法が採用できる。該未熟コムギ種子を用いた食品の具体例として、ベーカリー類、揚げ物類(例えば天ぷら)、焼き物類、ルーやソース、シチュー、炒め物類(例えばバター炒め)、漬物など様々な食品が挙げられる。
凍結乾燥後の未熟コムギ種子は、そのままでも食することができ、また食材として使用することができる。例えばシリアルバーなどの食材となり、コーティングするコア材料ともなり、また、塩や各種調味料、シーズニング等をまぶしてそのまま焼く、揚げる、あるいはせんべい等に練りこむことで食品とすることができる。例えばチョコレートなどでコーティングしてスナック菓子とすることもできる。
こうして凍結乾燥させた未熟コムギ種子を用いて、これを全粒のまま粉砕することで小麦粉を調製することができる。この場合の粒度は500μm以下であることが望ましい。あるいは通常の製粉工程と同様の工程で小麦粉を調製することができる。
上記のように製粉して得られた小麦粉は、それ単独で食材となり、又は他の穀粉と混合して、通常の小麦粉と同様に用いることができる。他の穀粉として、コムギ由来の穀粉(ウルチコムギ由来の穀粉及びモチコムギ由来の穀粉を包含する)、米粉、デンプン、そば粉、大麦粉、トウモロコシ粉、オーツ粉末などが挙げられる。
本発明の小麦粉を用いて製造する食品は、特に限定させるものではなく、例えばベーカリー類、麺類、揚げ物類、焼き物類、ルーやソース、練り物などが挙げられる。
ここで「発現を欠く」とは、ゲノムDNA上に生じた変異により当該遺伝子由来のmRNAや酵素タンパクが合成されなくなったことを意味する。あるいは、タンパク質は合成されても、ゲノムDNA上に生じた変異により、タンパク質のアミノ酸配列の置換あるいは挿入、欠失などの変異が起こり、アミロースを合成する又はアミロペクチンの側鎖を伸長するという、コムギ顆粒性澱粉合成酵素I型タンパク質とコムギ澱粉合成酵素IIa型タンパク質の各々が本来有する酵素機能のすべてあるいは一部を失っている場合が含まれる。
交配および選抜方法はこれに限定されるものではなく、放射線照射あるいは化学的変異原処理などによって得られたもの、あるいは遺伝子組換えによって得られたもの、さらにはこれらを交配の母本として育成されたコムギなど、いずれの材料を用いて育成したものでも良い。また取得した上記コムギをさらに他の有用品種と交配し得られた後代から上記タイプのコムギを選抜して取得したものでも良い。
本発明において、上記コムギのコムギ粒由来の未熟コムギ種子を材料とすることで、風味、硬さ及び食感の面でいっそう優れた食品を提供し、また、食品に独特の風味や食感や色合いを発揮させ得る小麦粉を提供することができる。
[試験材料のコムギ]
・ナンブコムギ(NB)・・・東北地方で広く栽培されている品種。GBSSIおよびSSIIaは全て正常型の遺伝子を有する。
・モチコムギ(Wx)・・・東北農業研究センターで育成された系統。GBSSIは全て変異型、SSIIaは全て正常型の遺伝子を有する。
・高アミロースコムギ(HA)・・・東北農業研究センターで育成された系統。GBSSIは全て正常型、SSIIaは全て変異型の遺伝子を有する。
・甘味種コムギ(SW)・・・東北農業研究センターで育成された系統。GBSSI、SSIIaともに全て変異型の遺伝子を有する。
・B3-8コムギ・・・東北農業研究センターで育成された系統。GBSSI-A1、D1が正常型、B1は変異型の遺伝子、SSIIa-A1、B1、D1は全て変異型。
・B5-8コムギ・・・東北農業研究センターで育成された系統。GBSSI-A1が正常型、B1、D1は変異型の遺伝子、SSIIa-A1、B1、D1は全て変異型。
圃場栽培では、全体の80%が開花した日を開花日として、一部を開花後25日目付近にコンバインにより収穫した。収穫した未熟コムギ原料は、収穫用の網袋ごと液体窒素で冷却後、−20℃の冷凍庫で保存し、必要に応じて脱穀して試験に用いた(未熟コムギ種子)。
圃場にて栽培した甘味種コムギをコンバインで収穫後、−20℃の冷凍庫に保存することで冷凍した。サンプルの一部は、冷水中で解凍し、よく水を切った後条件検討に用いた。
脱穀装置としてサタケ社製マジックミルRSKM5Bを用い、100gのサンプルを「1合」「3ぶ・再精米」の設定で、一定時間の処理を行い、破損がなくかつ脱穀された「未熟コムギ種子」(正常粒)と、種子に破損が見られるものや穎が結合したままである「不良種子」をより分け、この合計を100質量%としたときの各々の割合を算出した。結果を以下の表1に記載する。
解凍後の生状態で脱穀処理を行った場合には、回転羽や壁面との接触の衝撃により種子が破損する割合が非常に高く、また頴も種子から剥がれにくかった。これに対して冷凍状態で処理を行った場合には、種子の破損は低いレベルに抑えられ、かつ冷凍したことにより頴が硬化するため、小さな衝撃でも種子から脱離しやすくなったことにより、脱穀が効率よく行われると考えられた。
表1
圃場にて栽培した甘味種コムギをコンバインで収穫後、−20℃の冷凍庫に保存することで冷凍した。サンプルの一部は、冷水中で解凍し、よく水を切って後条件検討に用いた。
50gの冷凍サンプルを内径80mm、高さ110mmの円筒形プラスチック製のボトルに入れて蓋をして再度−20℃で十分に冷凍した。これを約200mmの間隔を1秒当たり5往復の速度で60秒間振動させることにより脱穀を行った。解凍したサンプルも同様に50gをボトルに入れ、解凍したまま同様の処理を行った。それぞれ種子から未熟コムギ種子(正常粒)、不良種子をより分けて質量を測定した。正常粒、不良種子の合計を100質量%としたときの各々の割合を算出した。結果を表2に示す。この場合においても、解凍状態よりも、冷凍状態で行うほうが正常粒の割合が高かった。
以上のことから、脱穀の方法によらず、効率的に脱穀を行うためには冷凍した未熟コムギ原料を用いることが重要であることがわかる。
表2
試験例1のように冷凍状態で「3ぶ・再精米」「1合」の条件で5秒間の冷凍脱穀処理を行った未熟コムギ原料を、一定温度に保温しておいた温水中に投入した。その後加熱により水温を上昇させていき、特定の温度で浮遊してきた夾雑物、不良種子を取り除き、その時点で沈んでいるサンプルを回収して、該サンプルにおいて未熟コムギ種子と不良種子を仕分けして質量を測定した。未熟コムギ種子、不良種子の質量の合計に対する不良種子の質量を混入率として示した。対象として、23℃あるいは80℃の水温で10分間一定温度に保っておいた条件で沈んでいるサンプルを回収した場合の混入率も同時に示す(表3)。
この結果から、投入時の温度あるいは昇温速度によらず、少なくとも5℃以上の水温を上昇させることで不良種子の混入を大きく低減することができた。
不良種子は外穎あるいは内穎もしくはその両方に覆われており、その隙間にわずかに入り込んでいる空気が、加熱の間に膨張することにより浮力を与えることにより、この浮力が得られない未熟コムギ種子との間に浮力の差が生じ、不良種子が液面に浮遊しやすくなる状況になっていると考えられる。例えば冷水中に再脱穀した未熟コムギ原料を投入して、攪拌しつつ浮遊する夾雑物や不良種子を除去することも可能であるが、非常に手間と時間がかかる作業である。この方法を用いることで、非常に効率良く未熟コムギ種子を回収できることが明らかとなった。
圃場から収穫した未熟甘味種コムギ原料を用い、上記試験例1のように、「3ぶ・再精米」「1合」の条件で5秒間の冷凍脱穀処理を行った後、60℃に保温した温水に投入し80℃で回収(平均昇温速度:2℃/分)した温水選別未熟コムギ種子を用いた。また、23℃一定温度で回収(この場合には不良種子の混入が多いため、目視により不良種子を除去した)した冷水選別未熟コムギ種子を用い、保存性の検討を行った。温水選別未熟コムギ種子、および冷水選別未熟コムギ種子をよく水を切って、それぞれナイロン袋に入れ、4℃の冷蔵庫にて72時間保管した。
この間経時的にサンプリングを行った。サンプリングした種子は冷水中でよく洗浄した後、−80℃で予備冷凍した後、凍結乾燥機(FDU-1000、EYELA社製)を用いて48時間凍結乾燥した。このときの最終的な真空度は10Paであった。この凍結乾燥未熟コムギ種子をultra centrifugal mill (ZM400, Retsch社製)を用いて14,000rpm、0.75mmのスクリーンを用いて粉砕し、全粒粉を得た。この全粒粉はあらかじめ水分含量を測定しておいた。
このサンプルに含まれるsucroseをHPLCにより定量した。HPLCには、waters社製Allianceシステムe2695、及びRefractive Index Detector 2414を用いた。カラムはShodex社製、NH2P 50G-4AガードカラムおよびNH2P 50-4Eカラムを用いた。カラム温度および検出器温度は30℃に設定し、75%アセトニトリルを分離溶媒として1mL/minの流速で分離した。同時に標準品を用いて作成した検量線のデータから、サンプル中に含まれるsucrose含量を算出し、保存開始直後のサンプル中に含まれるsucrose含量を100%とした場合の、各サンプルにおけるsucrose含量を百分率で示した(表4)。
表4
上記試験例4で用いた温水選別未熟コムギ種子と冷水選別未熟コムギ種子を選別終了後の段階で試食した結果を示す(表5)。
評価は次の項目に従い、10名のパネラーにより官能評価を行った。冷水選別未熟コムギ種子の評価を全て3として評価した。この結果、温水中で選抜することにより、常温以下で選別したものに比べて風味が増して青臭さが低減され、食品としてより好ましいものとなることがわかった。
本発明において、食品および食品素材として好ましい未熟コムギ種子は、収穫前種子の水分含量が50質量%以上のコムギである。ビニールハウス栽培での開花後10、15、20、25、30、35、40日の水分含量を測定した。さらに各ステージの種子の硬さを官能試験により評価した。
方法
甘味種コムギを開花後、10、15、20、25、30、35、40日目において穂を収穫し、直後に液体窒素で冷凍した。これを凍ったまま種子のみを取り出し、5gを用いて種子中の水分含量を測定した。5gの種子を135℃、2時間乾燥を行い、乾燥前後の質量変化から種子中の水分含量を算出した。
また解凍直後の状態の種子を直接噛み砕いたときの硬さを10名のパネラーにより評価を行った。10日目の種子の硬さを5(最も柔らかい)として、これ以降の種子の硬さを5段階で評価した。
表6
開花後25日目に穂ごと刈り取って収穫し、冷凍保存しておいたビニールハウス栽培の未熟NBコムギ、未熟Wxコムギ、未熟HAコムギ、未熟SWコムギ、未熟B3-8コムギ、未熟B5-8コムギを用い、それぞれ冷凍したまま手作業で穎等を除去して未熟コムギ種子を回収した。これを60℃の温水に投入し、80℃まで加熱(平均昇温速度:2℃/分)して試験材料とした。NBコムギ、SWコムギに関しては、完熟コムギ種子も比較対照として用いた。ただし、完熟コムギ種子の場合、収穫時に十分に脱穀されているため、冷凍脱穀および温水での選別は不要であった。しかし、短時間の温水での加熱処理だけでは種子が硬すぎて対照としては不適と考えられたため、沸騰水中で20分間加熱処理を行って評価した。
10名のパネラーにより次の項目に従って、未熟NBコムギの評価を各項目において3とした5段階での評価を行った。各項目における平均値を算出し、表7にまとめた。この結果、完熟SWコムギに対して、未熟SWコムギは非常にやわらかく、風味や食感の点でも優れていた。また、同じ未熟種子であっても、SWコムギ、B3-8コムギ、B5-8コムギは、NBコムギ、Wxコムギ、HAコムギと比べて非常にやわらかく、かつ好ましい食感、風味、甘さを有していることがわかった。これは特にB5-8コムギ、SWコムギに顕著であり、さらにはSWコムギにおいて最も特徴が現れる評価となった。以上のことから、SWコムギやB3-8コムギ、B5-8コムギは他のコムギではこれまで利用が難しかった未熟種子の食品への利用が可能であることがわかった。
ビニールハウス栽培で開花後25日目および35日目にサンプリングし、すぐに液体窒素中で冷凍したNBコムギ、Wxコムギ、HAコムギ、SWコムギ、B3-8コムギ、B5-8コムギを、冷凍したまま手作業で種子を収穫し、再度−80℃で保管した。これを試験例4と同様に凍結乾燥、粉砕して全粒粉を得た。これら全粒粉はあらかじめ水分含量を測定しておいた。
この全粒粉を用いてアルファグルカン含量を測定した。測定はMEGAZYME社製のTOTAL STARCH ASSAYキットを用い、マニュアルに従って行った。
サンプルをプラスチックチューブに秤量し、5mLの80%エタノールを加えて80-85℃で5分間のインキュベートを行った後、さらに5mLの80%エタノールを加えてよく懸濁した。1000×gで10分間の遠心を行い、上清を除去した。ペレットに再度10mLの80%エタノールを加えて懸濁後、遠心して上清を除去した。このペレットに2mLのDMSOを加え、5分間沸騰水中で加熱した。3mLのthermostable -α-amylaseを加えてよく攪拌した後、沸騰水中で6分間加熱した。次にこれを50℃で保温しつつ、200mM sodium acetate buffer (pH4.5)を4mL加え、さらにamyloglucosidaseを0.1mL加え、50℃で30分間インキュベートした。この反応液を水で100mLにメスアップした後、3,000rpmで10分間遠心し、上清を回収した。このサンプルを0.1mLずつ2本のチューブに分け、それぞれにGOPODを3.0mL加え、50℃で20分間インキュベートした。この反応液の510nmにおける吸光度を測定した。
この結果、25日目、35日目のアルファグルカン含量はNB、Wx、HAコムギに関しては40質量%以上であったのに対して、上記試験例7において良好な結果が得られたSW、B3-8、B5-8コムギでは40質量%以下であった。SW、B3-8、B5-8コムギは、デンプン合成に関与するSSIIaを全て欠損しかつGBSSIを1つ以上欠損していることから、正常なデンプン粒が合成されない(あるいは分解を受けている)ため、アルファグルカン含量が低下したと考えられる。すなわち、通常のコムギにおいては正常なデンプン粒が合成されることにより硬い食感となるが、SW、B3-8、B5-8コムギの場合には正常なデンプン粒が非常に少ないために、柔らかい食感を与えると考えられる。よって、本発明に用いる未熟種子として利用するコムギはアルファグルカン含量が40質量%以下(好ましくは35質量%以下、さらには30質量%以下)であることが望ましいと考えられる。
表8:アルファグルカン含量(質量%)
圃場栽培にて開花後25日目に採取した未熟NBおよびSWコムギ種子を、上記試験例4と同様に冷凍状態脱穀、温水選別を行った後、よく水を切って−80℃で冷凍した。これを試験例4と同様に、凍結乾燥、粉砕を行って全粒粉を得た。また比較対照として、完熟種子からも全粒粉を調製した。完熟種子は冷蔵で保存されたものをそのままultra centrifugal millを用いて粉砕した。これら全粒粉はあらかじめ水分含量を測定しておいた。
これら全粒粉を用いて、遊離アミノ酸含量を次のように測定した。3.0gの試料に30mLの75%エタノールを加えて、10分間振とう後、遠心分離して上清を回収した。この操作を3回繰り返し、得られた上清をまとめて遠心濃縮機により濃縮した。水で全容を15mLにメスアップした後、0.45μmのフィルターでろ過後、さらに限外ろ過を行い、得られた溶液を分析用サンプルとした。分析用サンプルは、アミノ酸自動分析計を用いて分析し、同時に測定した標準品アミノ酸との比較から、サンプル中のアミノ酸含量を算出した(表9)。この結果、未熟SWコムギ種子には、完熟SWコムギ種子、あるいは未熟、完熟NBコムギに比べて豊富に遊離アミノ酸を含んでいることが分かった。
方法
上記試験例9の遊離アミノ酸含量測定に用いた未熟NBコムギ由来全粒粉、および未熟SWコムギ由来全粒粉に含まれる総食物繊維含量を測定した。測定方法は食品衛生検査指針 理化学編(社団法人日本食品衛生協会、2005:pp206-213)に従った。この結果、未熟SWコムギには未熟NBコムギに比べて非常に高い総食物繊維含量であった(表10)。食物繊維は整腸作用等があることが知られており、未熟SWコムギは機能性食品としての観点からも有用であることが示された。
表10
[材料]
(1)圃場栽培により開花後25日目にコンバインで収穫した未熟NBおよびSWコムギを収穫用の網袋ごと液体窒素で冷却後、−20℃の冷凍庫に保存することで冷凍した。このサンプルを冷凍したまま100gずつマジックミルにて「1合」「3ぶ・再精米」の条件で5秒間脱穀後、50℃に保温した温水に投入し、75℃まで水温を上昇させる(平均昇温速度:3℃/min)過程で浮遊した不良種子を除去し、沈んだままの未熟コムギ種子を回収した(温水選別未熟NB、SW種子)。比較対照として、冷凍した未熟コムギ原料を同様に冷凍して脱穀した後、23℃に保温した冷水中で目視により不良種子を除去したサンプルを調製した(冷水選別未熟NB、SW種子)。これらサンプルは、よく水を切った後、試験を行うまで−20℃の冷凍庫に保存した。
(2) 温水選別未熟NBおよびSWコムギ、冷水選別未熟NBおよびSWコムギを、凍結乾燥用ガラス瓶に移して−80℃で予備冷凍を行った後、凍結乾燥機(FDU-1000、EYELA社)にセットし、48時間凍結乾燥処理を行った。最終的な真空度は10Paであった。このようにして得た各サンプルの水分含量は、温水選別未熟NBコムギ4.1%、温水選別未熟SWコムギ8.2%、冷水選別未熟NBコムギ3.6%、冷水選別未熟SWコムギ8.6%であった。
(3)上記の凍結乾燥した各種未熟コムギ種子を、ultra centrifugal mill(ZM400, Retsch社製、14,000rpm、0.75mmスクリーン使用)を用いて粉砕した全粒粉を調製した(温水選別未熟SW全粒粉、冷水選別未熟SW全粒粉、温水選別未熟NB全粒粉、冷水選別未熟NB全粒粉)。
(4)さらに比較対照として、圃場栽培したNBコムギ、SWコムギを、完熟期まで栽培し、コンバインで収穫後、穀物乾燥機による通風乾燥により水分含量を12質量%以下まで乾燥した(完熟コムギ種子)。これら完熟SWコムギ種子、完熟NBコムギ種子をそれぞれ20分間沸騰水中で加熱処理を行ったもの(完熟SW種子、完熟NB種子)、または完熟コムギ種子をそのままultra centrifugal millを用いて上記と同様に粉砕した全粒粉を得た(完熟SW全粒粉、完熟NB全粒粉)。
バター炒め
熱したフライパンにバターを3g加えて溶かした後、温水選別未熟SW種子、温水選別未熟NB種子、完熟SW種子、及び完熟NB種子をそれぞれ、10g入れて中火で焦がさない程度に2分間炒めた。
この試作品について、10名のパネラーにより次の項目に従って、温水選別未熟NB種子の評価を以下のとおり各項目において3とした5段階での評価を行った。各項目における平均値を算出し、表11にまとめた。この結果、温水選別未熟SWは、完熟SW種子あるいは温水選別未熟NB種子、完熟NB種子と比較して、好ましい風味で柔らかく、軽い食感で甘さが強い結果、優れた総合評価となった。従来コムギを粒状態で食するには、そもそも硬さが大きな問題であったが、温水選別未熟SWは良好な風味と食感を有しており、さらに鮮やかな緑色の外観も伴うことから、優れた食品、食品素材であることが分かった。
天ぷら
温水選別未熟SW種子、温水選別未熟NB種子、完熟SW種子、及び完熟NB種子を用いて天ぷらを試作した。
天ぷら粉(日本製粉(株)製「サクッと軽いてんぷら粉」) 100gに水140ccを加えてよく溶いた。この生地約20mLに対して、上記各種コムギ種子を10g加え、よく混ぜ、十分に熱した油に流しこんだ。具が浮かんできてから1分30秒後に引き上げ、油をきりながら室温で冷却した。
この試作品を10名のパネラーにより次の項目に従って、温水選別未熟NB種子の評価を各項目において3とした5段階での評価を行った。各項目における平均値を算出し、表12にまとめた。この結果、温水選別未熟SW種子は好ましい風味を持ち、柔らかくて軽い食感でかつ甘さが強く、また緑色の外観も相まって高い総合評価となった。
シリアルバー
温水選別未熟SW種子、冷水選別未熟SW種子、温水選別未熟NB種子、及び冷水選別未熟NB種子をそれぞれ凍結乾燥して得た、各種の凍結乾燥-未熟コムギ種子を用いてシリアルバーを試作した。バターと上白糖を105℃になるまで攪拌しながら加熱し、バインダーとした。あらかじめよく混合しておいたシリアルと凍結乾燥-未熟コムギ種子に、このバインダーを加えてよく絡め、オーブン用シートを敷いたトレイに入れて平らに伸ばした。これを250℃に設定したコンベアオーブンで3分間焼成した後、室温まで冷却した。この試作品について、10名のパネラーにより次の項目に従って、凍結乾燥-冷水選別未熟NB種子の評価を各項目において3とした5段階での評価を行った。この結果、凍結乾燥-温水選別未熟SW種子は風味が良くて柔らかく、総合評価において、他よりも優れた評価であった(表13)。
全粒粉の利用
温水選別未熟SW全粒粉、温水選別未熟NB全粒粉、完熟SW全粒粉、及び完熟NB全粒粉をそれぞれ用いて、市販のワラビモチ 7gあたり1gの各種全粒粉をまぶして試食した。10名のパネラーにより次の項目に従って、温水選別未熟NB全粒粉の評価を各項目において3とした5段階での評価を行った。各項目における平均値を算出し、表14にまとめた。この結果、温水選別未熟SW全粒粉は口溶け、風味、べとつき、甘さにおいて優れた評価となった。
パウンドケーキ
温水選別未熟SW全粒粉及び冷水選別未熟SW全粒粉をそれぞれ用いて、パウンドケーキを試作した。材料の配合組成及び小麦粉の組成を以下に示す。
バターを室温にもどし、ビーターを装着したミキサーで低速1分、中速3分間であわ立てた。次に上白糖を加えて低速1分、高速5分間ミキシングした。この間にクリーム状になった段階で全卵を3回に分けて混合した。あらかじめ混合し篩っておいた小麦粉とベーキングパウダーを加えてさらにミキサーで低速30秒攪拌し、粉を掻き落とした後さらに低速で30秒間ミキシングを行った。パウンド型(17×7.5×5.5cm)に生地を350gずつ流し込み、上火175℃、下火175℃に設定しておいたオーブンで40分間焼成した。型からパウンドケーキを取り出し、室温で冷却した後、ビニール袋に入れて放置し、翌日評価を行った。評価項目は以下のとおりである。
その結果、温水選別未熟SW全粒粉を用いた場合には、青臭さが抑えられたことにより風味が向上していた(表15)。さらには、口の中に残るようなネチャツキも抑えられて口溶けの良い食感となっており、総合評価も高くなった。
うどん
温水選別未熟SW全粒粉及び冷水選別未熟SW全粒粉をそれぞれ用いて、うどんを試作した。生地の配合組成及び小麦粉の組成を以下に示す。
ミキサーで小麦粉を攪拌しつつ、塩を溶かした水を加えて5分間捏ね上げた。そぼろ状になった生地を製麺ロールに通し成形した。成形した生地を折りたたんで再度ロールに通して複合を行った後、生地の厚さが2.3mmになるように圧延した。この後、10番角刃ロールで裁断し、4℃で30分間保存した。沸騰した水中で麺を茹で上げた後、冷水中で麺をほぐし、ざるに移して水を切った後、つゆにつけて試食した。
10名のパネラーにより次の項目に従って、冷水選別未熟SW全粒粉の評価を各項目において3とした5段階での評価を行った。この結果、表16に示すように、冷水選別未熟SW全粒粉を用いた場合に比べて、温水選別未熟SW全粒粉を用いた場合には、食感には大差なかったものの、口に残るえぐみが軽減されたことでより食べやすくなっていた。また色合いも、冷水選別未熟SW全粒粉を用いた場合にはくすんだ緑色であったものが、温水選別未熟SW全粒粉を用いた場合にはより鮮やかな緑色となっており、色合いとしても好ましく、総合評価も高くなった。
食パン
温水選別未熟SW全粒粉及び冷水選別未熟SW全粒粉をそれぞれ用いて、食パンを試作した。材料の配合組成及び小麦粉の組成を以下に示す。下記配合のうち、ショートニング以外のものまで混合し、ミキサー(エスケーミキサー TYPE SK21C)で低速2分間、高速で3分間ミキシングを行った(27℃)。ミキサーを止めてショートニングを加えた後、再度低速1分、中速3分、高速5分間のミキシングを行い、捏ね上げた生地を27℃、湿度75%で60分間醗酵させた。これを460gに分割して丸め、20分間のベンチを行った。モルダーにて成形した後、成形用型に入れ38℃、湿度85%の醗酵室にて生地高さが型の80%程度に膨らむまでホイロを行った後焼成した(210℃、32分間)。焼成した食パンは室温で1時間放冷した後、ビニール袋に入れて室温で放置し、翌日スライスして評価を行った。10名のパネラーにより次の項目に従って、冷水選別未熟SW全粒粉の評価を各項目において3とした5段階での評価を行った。表17に示すように、温水選別未熟SW全粒粉を用いた場合には、青臭さがあまり感じられず、好ましい風味を与える食パンとなった。
フランスパン
温水選別未熟SW全粒粉及び冷水選別未熟SW全粒粉をそれぞれ用いて、フランスパンを試作した。材料の配合組成及び小麦粉の組成を以下に示す。食塩と水をボールに入れて良く溶かし、小麦粉とモルトシロップを入れ、低速で4分間ミキシングを行いつつ乾燥パン酵母を徐々に加えた。さらに高速で1分間ミキシングを行った後、27℃、湿度75%で20分間醗酵させた。パンチを行った後、再度同条件で20分間醗酵させる過程を2回繰り返した。さらにこの生地を冷蔵庫(4℃)で一晩醗酵した。翌日室温で60分間放置して生地温度を15℃付近に戻した後、350gずつに分割して丸め、90分間のベンチを行った。成型後、27℃、湿度80%の条件で60分間ホイロを行い、生地の表面に切れ目を入れた後に250℃で25分間焼成した。これを室温で冷却後、その日のうちに評価を行った。10名のパネラーにより次の項目に従って、冷水選別未熟SW全粒粉の評価を各項目において3とした5段階での評価を行った。表18に示すように、温水選別未熟SW全粒粉を用いた場合には、青臭さやえぐみがあまり感じられず、高い総合評価を与えるものとなった。
Claims (9)
- 未熟コムギ原料を冷凍状態で脱穀することを含む、未熟コムギ種子を用いた食品素材又は食品の製造方法。
- 冷凍状態での脱穀の後、未熟コムギ原料を40℃から85℃の温水中に投入し、浮遊する種子以外の夾雑物および不良種子を除去し、及び未熟コムギ種子を採取し、該未熟コムギ種子を用いることを含む、請求項1記載の未熟コムギ種子を用いた食品素材又は食品の製造方法。
- 未熟コムギ原料を40℃から85℃の温水中に投入し、当初の温水から5℃以上温度を上昇させる過程で浮遊する種子以外の夾雑物および不良種子を除去し、及び沈んでいる画分として未熟コムギ種子を採取し、該未熟コムギ種子を用いることを含む、請求項2記載の未熟コムギ種子を用いた食品素材又は食品の製造方法。
- 未熟コムギ種子を凍結乾燥する工程をさらに含む、請求項1〜3のいずれか1項記載の未熟コムギ種子を用いた食品素材又は食品の製造方法。
- 凍結乾燥された未熟コムギ種子を粉砕して穀粉を調製する工程をさらに含む、請求項4記載の未熟コムギ種子を用いた食品素材又は食品の製造方法。
- 収穫前コムギ種子の水分含量が50%以上である未熟コムギ原料を用いる、請求項1〜5のいずれか1項記載の未熟コムギ種子を用いた食品素材又は食品の製造方法。
- 収穫前コムギ種子が種子乾燥質量に対してアルファグルカン含量が40%以下である未熟コムギ原料を用いる、請求項1〜6のいずれか1項記載の未熟コムギ種子を用いた食品素材又は食品の製造方法。
- 未熟コムギが、3つのコムギ澱粉合成酵素IIa型タンパク質を発現せず、かつ3つのコムギ顆粒性澱粉合成酵素I型タンパク質のうち1つ以上を発現しないコムギである、請求項1〜7のいずれか1項記載の未熟コムギ種子を用いた食品素材又は食品の製造方法。
- 請求項1〜8のいずれか1項記載の方法によって製造された、未熟コムギ種子を用いた食品素材又は食品。
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