JP5507665B2 - 急速に水和可能なセルロース系結合剤を用いたセラミックの製造 - Google Patents

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Description

関連出願の相互参照
2009年4月3日出願の米国仮特許出願第61/166,275号の優先権の利益を主張する。
本開示は、一般に、セルロース系結合剤材料を使用することによるセラミック体の製造方法に関する。
炭化水素ガス、ガソリン、またはディーゼル燃料などの炭化水素燃料を利用する内燃機関が放出する排出ガスは、大気の深刻な汚染を生じうる。これらの排出ガス中の多くの汚染物質としては、とりわけ炭化水素および酸素含有化合物があり、後者には酸化窒素(NOx)および一酸化炭素(CO)が含まれる。自動車産業は、長年、自動車エンジン系に由来する汚染物質の量の低減に努めており、触媒コンバータを装着した最初の自動車が1970年代半ばに導入された。コージエライト基板は、典型的にはハニカム体の形態をしており、長い間、自動車の触媒コンバータに触媒活性成分を担持するための基材としての使用が好まれてきた。
チタン酸アルミニウム(AT)セラミックが、高温用途のための優れた候補として浮上している。このようなチタン酸アルミニウム材料に所望の細孔をもたらすため、グラファイトの細孔形成剤が無機バッチ材料に加えられている。
本開示はセラミック体の製造方法に関し、本方法は、
無機セラミック形成原料を混合してバッチを形成し、
急速に水和可能なセルロース系結合剤と液体溶媒を前記バッチに加え、さらに混合して可塑化混合物を形成し、
前記可塑化混合物を押出成形して未焼成体を形成する、
各工程を有してなる。その後、未焼成体は、主要セラミック相を生じさせるのに十分に加熱され、結果として、未焼成体をセラミック体に変換する。
メチルセルロース・サンプルA〜Cおよび急速に水和可能なメチルセルロース・サンプルD〜Eの水和速度を示す図。 サンプルA〜Cを代表するメチルセルロースの走査型電子顕微鏡写真を示す図。 サンプルD〜Eを代表するメチルセルロースの走査型電子顕微鏡写真を示す図。 図1のサンプルA〜Cを代表するメチルセルロースの低倍率の走査型電子顕微鏡写真を示す図。 図1のサンプルD〜Eを代表するメチルセルロースの低倍率の走査型電子顕微鏡写真を示す図。
本開示のさまざまな実施の形態は、存在する場合には、図面に関連して詳細に説明される。さまざまな実施の形態についての言及は、本発明の範囲を制限するものではなく、本明細書に添付される特許請求の範囲によってのみ制限される。さらには、本明細書に記述される実施例はいずれも、単に 、特許請求の範囲に記載された本発明の多くの可能な実施の形態の幾つかを説明するものである。
「ゲル化温度」とは、バッチが有効に押出成形できない程度まで硬化される温度のことをいう。
「Tonset」とは、バッチのレオロジーが低粘度から高粘度へと推移し始める温度のことをいう。
「含む」、「含める」または同様の用語は、限定はしないが、包含することを意味し、排他的であることを意味しない。
本開示の実施の形態の説明に用いられる、例えば、組成物中の材料の量、濃度、体積、処理温度、処理の所要時間、収量、流速、圧力、フィルムの厚さ、および同様の数値、ならびにそれらの範囲を修飾する「約」とは、例えば:化合物、組成物、濃縮物または使用する配合物の典型的な測定および取扱方法;これらの手順における不慮の誤差;製造、起源、または本方法の実施に使用する出発材料または原料の純度のばらつき;などを通じて生じうる、数量の変動のことをいう。「約」という用語はまた、例えば、特定の初期濃度または混合の組成物または製剤が劣化することに起因する数量のばらつき、および、組成物または製剤を特定の初期濃度または混合で混合または処理することに起因する数量のばらつきも包含する。「約」という用語によって修飾されているか否かに関わらず、本明細書に添付される特許請求の範囲は、これらの数量と同等の数量を含む。
未焼成体、または未焼成セラミック体とは、加熱(または焼成)される際に主要セラミック相(コージエライトまたはチタン酸アルミニウムなど)を生成し、結果として焼成セラミック体を生じる、押出成形体などの本体のことをいう。未焼成体は、主要セラミック相のセラミックの前駆体を含み、随意的に、ある量のセラミック自体を含みうる。
我々は、メチルセルロースなどの急速に水和可能なセルロース系結合剤の使用により、ダイを遮断しうる粗粒子を排除するために高密度の押出スクリーンを用いた、薄いセル壁製品の迅速な押出操作を可能にすることを見出した。乾燥粉末では例えば1時間未満で(押出成形された可塑化バッチを経て)ハニカム構造などのセル構造のような複雑な構造へと成形される迅速な押出成形工程において、粗粒子のダイへの到達を妨げるスクリーンを一時的にも遮断しないことから、急速に溶解する結合剤が好ましい。結合剤の急速な水和(または溶解)特性は、メトキシおよびヒドロキシプロピル側鎖の適切な置換化学を通じて、および、粒子形態、例えばメチルセルロースの粒子形態によって、もたらすことができる。結合剤(メチルセルロースなど)粒子は、不溶性繊維を本質的に含まないことが好ましく、不溶性繊維を含まないことがさらに好ましい(適切な化学的置換が生じた場合など)。結合剤(メチルセルロースなど)粒子はまた、好ましくは、高密度粒子の特徴を有し、溶解が起こる液固界面を制限する傾向がある内部細孔または内表面を本質的に含まないことが好ましく、含まないことがさらに好ましい。高密度粒子はまた、好ましくは、薄い断面を有し、溶解時の水の拡散経路の制限に役立つ。
本明細書では、セルロース系粒子は、平均孤立粒子水和速度を決定するための次の手順に従って測定して、水和可能であると報告される。例としてメチルセルロースについての手順が記載されるが、本手順は他のセルロース系結合剤にも利用することができる。最初に、例えば、メチルセルロース繊維を顕微鏡スライド上に移す前に、メチルセルロースの大部分が乗った軽くコーティングされたスパチュラをタッピングすることによって、メチルセルロース・サンプルを構成する粒子(または繊維)をガラスの顕微鏡スライド上に広く分散させる。次に、顕微鏡スライド上のメチルセルロース繊維の上にカバースリップを置く。次いで、スライドを光学顕微鏡に移し、操作者がスライドを走査して、検査すべきメチルセルロース繊維の領域を見つける。この検査に使用する倍率は100倍であるが、検査する繊維の大きさに基づいて幾分変動しうる。好ましくは、選択した顕微鏡の光学系は、メチルセルロース繊維がビデオ・キャプチャ装置に用いられる視野を満たすようにならなければならない。ビデオ・キャプチャ装置をプレビューモードで使用して、キャプチャされる画像内に、対象のメチルセルロース繊維を完全に位置付けなければならない。メチルセルロース繊維の位置が適切にビデオ・フィールド内に入ったら、ビデオ・キャプチャを開始し、水滴をカバースリップの端に加える、すなわち、水がカバースリップ下を十分に遠くまで移動可能になり、繊維/粒子と接触するのに十分な量の水滴を加える。繊維が完全に溶解するまでビデオ・キャプチャを継続する。繊維が視野の外に流れてしまう場合には、そのデータ点は不採用となる。キャプチャした映像は、ImageJなどの画像解析ソフトウエアパッケージを使用して後に分析するために、保存することができる。キャプチャした映像を使用して、水が繊維と最初に接触する時間、および繊維が完全に溶解する時間を決定する。これら2つの時間の差異は、この繊維が溶解する時間量である。溶解時間を繊維の大きさと関連付けたい場合には、繊維の大きさ、その長さ、幅または面積を、水の接触前にビデオから測定することができる。気泡が形成して視野から消える、または出て行くのにかかった時間はカウントしない。これらのステップは、サンプルの平均水和速度を決定するのに十分な情報を得るために、数回繰り返さなければならず、最低でも10回繰り返すことが好ましい。繊維は、水と接触した後は、全体的に、視覚的に消失していなければならない。粒子/繊維がバッチ混合物の外側で水和されることから、本明細書では、このことを平均孤立粒子水和速度と称する。有用な設備としては、1)個々の繊維/粒子を明確に観察するのに十分な倍率を有する光学顕微鏡(100倍);2)顕微鏡を通じて映像をキャプチャすることができるビデオ・キャプチャ・システム、ここで、ビデオ・キャプチャ装置の速度は、サンプルを識別可能にするのに十分に速くなくてはならず、速度は>10HZでなくてはならない;3)保存および/またはその後の分析のためにビデオ・キャプチャ・システムからの映像をキャプチャする適切なソフトウエアを有するコンピュータ装置;4)標準的な顕微鏡スライド;5)スライドカバーガラス、好ましくはNo. 1.5;6)サンプルを顕微鏡スライドに移すためのスパチュラ;7)水;8)水の小さい液滴をサンプル上に置くための水滴;9)キャプチャした映像を分析する画像解析ソフトウエア、ここで、ソフトウエアは、さまざまな映像フレームをキャプチャした時間の決定、ならびに繊維のサイジング可能でなければならない。
図1は、メチルセルロース・サンプルA〜Eについての水和速度の変動とともに、平均孤立粒子水和速度を示している。サンプルA〜Cに関しては、押出スクリーンの塞栓速度は速く、サンプルD〜Eに関しては、押出スクリーンの塞栓速度は大幅に低下した。
図2は、サンプルA〜Cを代表するメチルセルロースの走査型電子顕微鏡写真である。図3は、サンプルD〜Eを代表するメチルセルロースの走査型電子顕微鏡写真である。図2と図3の比較から分かるように、急速に水和可能なメチルセルロース結合剤の粒子形態は、扁平なリボン状の形態を有する粒子/繊維であるのに対し(図3)、水和性に乏しい(水和速度が速い)サンプル(A〜C)は、より開放的な管状の形態を有していた。 一部の実施の形態では、急速に水和可能なメチルセルロース結合剤の繊維/粒子は、40〜60マイクロメートルの断面を有する。
図4は、サンプルA〜Cを代表するメチルセルロースの低倍率の走査型電子顕微鏡写真である。図5は、サンプルD〜Eを代表するメチルセルロースの低倍率の走査型電子顕微鏡写真である。
Fluid Imaging社のFlowCAMなどの粒径分析器は、押出成形法への適合についてのセルロース系結合剤の比較に使用することができる。例えば、我々はヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)の1%溶液を分析した。不溶性のセルロース繊維、ならびに、部分的に水和された繊維および非晶質ゲル粒子は容易に検出される。ある1つの実施の形態において、我々は、薄壁の未焼成セラミックハニカム体を押出成形する間に押出スクリーンの塞栓の顕著な低下をもたらす、1%溶液において1000粒子/ml未満の粒子数分析値を有するHPMCを見出した。
1つの態様では、セラミック体の製造方法が開示され、本方法は、
無機セラミック形成原料を混合してバッチを形成し、
急速に水和可能なセルロース系結合剤と液体溶媒を前記バッチに加え、さらに混合して可塑化混合物を形成し、
前記可塑化混合物を押出成形して未焼成体を形成する、
各工程を有してなる。
一部の実施の形態では、セルロース系結合剤はセルロース系粒子で構成され、前記セルロース系粒子の大部分は15秒未満の平均孤立粒子水和速度を有し、他の実施の形態では12秒未満であり、他の実施の形態では10秒未満であり、他の実施の形態では5秒未満である。
一部の実施の形態では、セルロース系粒子は、メチルセルロース、メチルセルロース誘導体、およびそれらの組合せからなる群のうちの1種類またはそれ以上からなる。一部の実施の形態では、セルロース系粒子は、疎水的に改質されたセルロースポリマーからなり;これらの実施の形態の一部では、疎水的に改質されたセルロースポリマーは、メチルセルロースまたはヒドロキシプロピルメチルセルロースである。
一部の実施の形態では、セルロース系粒子は、4.0〜7.5重量%のヒドロキシプロピル、27.0〜30.0重量%のメトキシル、および0.0〜1.0重量%のNaClを含む。
一部の実施の形態では、セルロース系粒子は内部細孔を含まない。
一部の実施の形態では、セルロース系粒子は内表面を含まない。
一部の実施の形態では、セルロース系粒子のかなりの部分は扁平なリボン状の形態を有する。
一部の実施の形態では、セルロース系結合剤は不溶性繊維を含まない。
一部の実施の形態では、可塑化混合物は、15μm未満の、少なくとも1つの横断するダイ開口部を備えた押出ダイを通じて押出成形され、他の実施の形態ではダイ開口部は10μm未満であり、他の実施の形態では5μm未満である。
一部の実施の形態では、可塑化混合物は、4μm以下の、少なくとも1つの横断するダイ開口部を備えた押出ダイを通じて押出成形される。
一部の実施の形態では、可塑化混合物は、押出ダイを通じて押出成形される前に、押出スクリーンを通じて押出成形される。
一部の実施の形態では、セルロース系粒子の大部分は押出ダイを通過する前に完全に水和される。
一部の実施の形態では、セルロース系粒子の大部分は押出スクリーンを通過する前に完全に水和される。
一部の実施の形態では、セルロース系結合剤はセルロース系粒子からなり、セルロース系粒子の大部分のそれぞれが水浴中で孤立する際に、セルロース系粒子の大部分は15秒足らずで水和することができる。
一部の実施の形態では、セルロース系結合剤は、無機セラミック形成原料に対して5重量%を超える上乗せ添加量でバッチに加えられる。一部の実施の形態では、セルロース系結合剤は、無機セラミック形成原料に対して10重量%を超える上乗せ添加量でバッチに加えられる。
一部の実施の形態では、無機セラミック形成原料は、コージエライト、ムライト、粘土、タルク、ジルコン、ジルコニア、スピネル、アルミナおよびそれらの前駆体、シリカおよびそれらの前駆体、ケイ酸塩、アルミン酸塩、リチウム・アルミノケイ酸塩、アルミナ シリカ、長石、チタニア、溶融シリカ、窒化物、炭化物、ホウ化物、炭化ケイ素、窒化ケイ素、ソーダ石灰、アルミノケイ酸塩、ホウケイ酸塩、ホウケイ酸ソーダバリウム、またはそれらの混合物のうちの少なくとも1種類を含む。
一部の実施の形態では、セラミック形成原料は、アルミナ、チタニア、シリカ、およびマグネシア源、ならびにそれらの組合せからなる群のうち1種類以上を含む。
一部の実施の形態では、本方法は、さらに、未焼成体を、主要セラミック相を生成するのに十分に加熱することを含む。
本明細書に開示される方法は、ハニカム体などの製造された薄壁(または超薄壁)押出成形体の押出成形工程に有利に利用することができ、ここで、その工程は、粗粒材料によるダイの遮蔽を制限し、プロセス効率にとって有害であろう頻繁なダイ交換を必要とする、押出スクリーンを利用する。これらのスクリーンは、場合によっては押出成形部分の廃棄につながる、ダイのチャネルに留まるであろう細かい粒子を捕捉する。スクリーンは、数時間の押出操作にわたって材料を捕捉するように設計することができ、本明細書に開示される方法は、スクリーン交換の合間、および/またはスクリーン交換の間に生じる圧力エクスカーションの制限に役立てることができる。さらには、表皮形成および全般的な材料利用(MU)性能にも影響を与えうる圧力不安定性の原因となりうる、スクリーン交換の頻度を低減することができる。
本開示は、さまざまな具体的実施の形態および技術に関連して説明されてきた。しかしながら、本開示の精神および範囲内に維持しつつ、多くの変形および変更が可能である。

Claims (6)

  1. セラミック体の製造方法であって、
    無機セラミック形成原料を混合してバッチを形成し、
    急速に水和可能なセルロース系結合剤と液体溶媒を前記バッチに加え、さらに混合して可塑化混合物を形成し、および
    前記可塑化混合物を押出成形して未焼成体を形成する、
    各工程を有してなり、前記セルロース系結合剤がセルロース系粒子からなり、該セルロース系粒子が15秒未満の平均孤立粒子水和速度を有することを特徴とする方法。
  2. 前記セルロース系粒子が4.0〜7.5重量%のヒドロキシプロピル、27.0〜30.0重量%のメトキシル、および0.0〜1.0重量%のNaClを含むことを特徴とする請求項1記載の方法。
  3. 前記セルロース系粒子が内部細孔を含まないことを特徴とする請求項1記載の方法。
  4. 前記セルロース系粒子が、扁平なリボン状の形状を有するセルロース系粒子を含むことを特徴とする請求項1記載の方法。
  5. 前記セルロース系結合剤が不溶性繊維を含まないことを特徴とする請求項1記載の方法。
  6. 前記セルロース系粒子が、前記押出ダイを通過する前に、完全に水和されることを特徴とする請求項1記載の方法。
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