以下、本発明に係る軸受装置の実施の形態を、油圧ショベルのピン結合部に適用した場合を例に挙げ、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
まず、図1ないし図6は本発明の第1の実施の形態を示している。図中、1は建設機械の代表例である油圧ショベルを示し、該油圧ショベル1は、自走可能なクローラ式の下部走行体2と、該下部走行体2上に旋回可能に搭載された上部旋回体3とにより大略構成されている。上部旋回体3の前部側には、土砂等の掘削作業を行う作業装置4が俯仰動可能に設けられている。
そして、作業装置4は、上部旋回体3のベースとなる旋回フレーム3Aに回動可能にピン結合されたブーム5と、該ブーム5の先端側に回動可能にピン結合されたアーム6と、該アーム6の先端側に回動可能にピン結合されたバケット7と、ブームシリンダ8、アームシリンダ9、バケットシリンダ10とにより大略構成されている。
ここで、上部旋回体3とブーム5との間のピン結合部、ブーム5とアーム6との間のピン結合部、アーム6とバケット7との間のピン結合部には、それぞれ軸受装置が設けられており、例えばアーム6とバケット7とは、後述の軸受装置11を介して回動可能に連結されている。
11はアーム6とバケット7との間のピン結合部に設けられた軸受装置で、該軸受装置11は、アーム6に対してバケット7を回動可能に支持するものである。そして、軸受装置11は、図2に示すように、後述のアームボス12、各ブラケット16、連結ピン20、各耐摩耗性部材23等により構成されている。
12はアーム6の先端側に設けられたボス部材としてのアームボスで、該アームボス12は、全体として内周側がピン挿通孔12Aとなった円筒状をなし、溶接等の手段を用いてアーム6の先端に一体に固着されるものである。ここで、アームボス12は、薄肉な円筒体からなり左,右方向に延びた中間筒体13と、該中間筒体13の左,右両端部にそれぞれ溶接によって固着された厚肉な円筒体からなる左,右のボス筒体14とにより構成されている。
そして、左,右のボス筒体14の内周側には、軸方向に延びるブッシュ嵌合孔14Aが形成され、このブッシュ嵌合孔14Aには後述のブッシュ15が嵌合している。また、左,右のボス筒体14の軸方向の端部は、後述する各ブラケット16と軸方向で対面する軸方向端面14Bとなり、この軸方向端面14Bには後述する多数個のピン穴22が穿設されている。さらに、ボス筒体14の軸方向端面14Bの外周側には、全周に亘ってテーパ状に傾斜したテーパ面14Cが形成されている。
15は各ボス筒体14のブッシュ嵌合孔14Aにそれぞれ設けられた円筒状のブッシュで、これら各ブッシュ15は、ボス筒体14のブッシュ嵌合孔14Aに圧入状態で嵌合している。そして、各ブッシュ15の内周側には後述の連結ピン20が摺動可能に挿嵌され、ブッシュ15の内周面15Aは連結ピン20との摺動面となっている。
16はバケット7に固着して設けられた左,右一対のブラケットで、該各ブラケット16は、厚肉な鋼板等を用いて平板状に形成され、後述の連結ピン20が挿通されるピン挿通孔16Aが設けられている。そして、各ブラケット16は、アームボス12を挟んだ状態で当該アームボス12の各ボス筒体14と軸方向で対向して配置され、連結ピン20を介してアームボス12に相対回転可能に取付けられるものである。
17は左,右のブラケット16にそれぞれ設けられた左,右のスラストプレートで、該各スラストプレート17は、ブラケット16のうちアームボス12側となる内側面に溶接等の手段を用いて固着され、アームボス12からのスラスト荷重を受けるものである。ここで、スラストプレート17は、全体として厚肉な円板状に形成され、その中央部には連結ピン20が挿通されるピン挿通孔17Aが設けられている。また、スラストプレート17の軸方向端面17Bは、ボス筒体14の軸方向端面14Bと僅かな隙間をもって対面している。さらに、スラストプレート17の軸方向端面17Bの外周側には、全周に亘ってテーパ状に傾斜したテーパ面17Cが設けられ、該スラストプレート17のテーパ面17Cとボス筒体14のテーパ面14Cとは軸方向で対面している。
18はボス筒体14の軸方向端面14Bとスラストプレート17の軸方向端面17Bとの間の隙間をシールする左,右のOリングを示し、該各Oリング18は、例えばゴム等の弾性材料を用いて断面円形状のリング体として形成されている。そして、Oリング18は、ボス筒体14の軸方向端面14Bの外周側に形成されたテーパ面14Cと、スラストプレート17の軸方向端面17Bの外周側に形成されたテーパ面17Cとの間に適度な締め代をもって取付けられ、ボス筒体14の軸方向端面14Bとスラストプレート17の軸方向端面17Bとの間の隙間内に土砂等の異物が侵入するのを防止するものである。
19は一方のブラケット16のうちスラストプレート17とは反対側となる外側面に固着して設けられた円筒状の廻止め部材で、該廻止め部材19は、後述の連結ピン20をブラケット16に対して抜止め、廻止めするものである。ここで、廻止め部材19は、ブラケット16のピン挿通孔16Aと同心状に配置され、廻止め部材19には、後述のストッパ21が挿通されるストッパ挿通孔19Aが径方向に貫通して設けられている。
20はアームボス12と左,右のブラケット16とを相対回転可能に連結する連結ピンで、該連結ピン20は、アームボス12のボス筒体14に嵌合された各ブッシュ15、左,右のブラケット16のピン挿通孔16A、左,右のスラストプレート17のピン挿通孔17Aに挿通されるものである。従って、連結ピン20の軸中心線O−Oは、アームボス12のピン挿通孔12A、各ブラケット16のピン挿通孔16A、各スラストプレート17のピン挿通孔17Aと一致している。ここで、連結ピン20の一端側には、スラストプレート17のピン挿通孔17Aの孔径よりも大径な大径鍔部20Aが一体に設けられている。一方、廻止め部材19に挿通された連結ピン20の他端側には、径方向に貫通するストッパ挿通孔20Bが穿設されている。
そして、連結ピン20をアームボス12の各ブッシュ15、左,右のブラケット16のピン挿通孔16A、左,右のスラストプレート17のピン挿通孔17Aに挿通し、大径鍔部20Aを一方のスラストプレート17に当接させた状態で、連結ピン20のストッパ挿通孔20Bと廻止め部材19のストッパ挿通孔19Aとに棒状のストッパ21を挿通することにより、連結ピン20は各ブラケット16に対して抜止め、廻止め状態に取付けられている。
次に、本実施の形態に用いる多数個の埋込穴と耐摩耗性部材について説明する。
まず、22はアームボス12を構成する左,右のボス筒体14の軸方向端面14Bに形成された埋込穴としての多数個(例えば12個)のピン穴を示し、これら各ピン穴22は、連結ピン20を取囲んで環状に配置され、後述の耐摩耗性部材23が取付けられるものである。また、各ピン穴22は、軸方向端面14Bから軸方向に延びた底面22Aを有する有底穴として形成され、ボス筒体14の軸方向端面14B側が開口端22Bとなっている。
ここで、図5および図6に示すように、各ピン穴22は、ボス筒体14の軸方向端面14Bのうち連結ピン20の軸中心線O−Oを中心とした半径Rの円周S上に、周方向に一定の間隔(例えば30度)をもって環状に配置されている。
23はアームボス12を構成する左,右のボス筒体14の軸方向端面14Bに設けられた多数個(例えば12個)の耐摩耗性部材を示し、該各耐摩耗性部材23は、左,右のボス筒体14の軸方向端面14Bに形成されたピン穴22内に取付られるものである。これら各耐摩耗性部材23は、図3および図5に示すように、軸方向に一様な外径寸法をもった円柱状のピンからなる棒状体により構成され、軸方向の基端側に位置しボス筒体14のピン穴22内に埋込まれる埋込部23Aと、軸方向の先端側に位置し各ブラケット16に設けたスラストプレート17の軸方向端面17Bに摺接する表面硬化部23Bとにより構成されている。
耐摩耗性部材23の埋込部23Aは、ボス筒体14の軸方向端面14Bに形成されたピン穴22内に圧入(しまりばめ)され、その基端側の端面23A1がピン穴22の底面22Aに当接している。一方、耐摩耗性部材23の表面硬化部23Bは、耐摩耗性部材23の先端側に対し、溶射皮膜処理、熱処理、高周波焼入れ処理のうちいずれか一の表面硬化処理を施すことにより、耐摩耗性に優れた表面硬化層として形成されている。
ここで、溶射皮膜処理によって表面硬化部23Bを形成する場合には、例えばタングステンカーバイトに対しニッケルとクロムを合計して10〜30重量%含有させた粉末材料を、プラズマ溶射法等の手段を用いて耐摩耗性部材23の先端側に溶射する方法が採用される。また、熱処理によって表面硬化部23Bを形成する場合には、耐摩耗性部材23に対し、ガス窒化処理、ガス軟窒化処理、塩浴窒化処理等の窒化系熱処理を施すことにより、耐摩耗性部材23の先端側に窒化物層、炭化物層、炭窒化物層を形成する方法が採用される。さらに、高周波焼入れ処理によって表面硬化部23Bを形成する場合には、耐摩耗性部材23の近傍に配置した高周波誘導子に高周波電力を給電し、耐摩耗性部材23を誘導加熱することにより、耐摩耗性部材23の先端側を焼入れする方法が採用される。
上述した表面硬化処理によって先端側に表面硬化部23Bが形成された各耐摩耗性部材23は、基端側の埋込部23Aをボス筒体14の軸方向端面14Bに形成されたピン穴22内に圧入することにより、連結ピン20を中心とした半径Rの円周S上に、周方向に一定の間隔をもって環状に配置されている。
ここで、図3に示すように、ボス筒体14の軸方向端面14Bに形成されたピン穴22の底面22Aから開口端22Bまでの距離(ピン穴22の深さ寸法)をAとし、耐摩耗性部材23の埋込部23A側(基端側)の端面23A1から表面硬化部23B側(先端側)の端面23B1までの距離(耐摩耗性部材23の長さ寸法)をBとすると、耐摩耗性部材23の長さ寸法Bは、ピン穴22の深さ寸法Aよりも僅に大きく設定されている(B>A)。
従って、ピン穴22内に耐摩耗性部材23の埋込部23Aを圧入し、ピン穴22の底面22Aに耐摩耗性部材23の埋込部23A側の端面23A1を当接させた状態では、図3に示すように、耐摩耗性部材23の先端側に設けた表面硬化部23Bの端面23B1は、ボス筒体14の軸方向端面14Bからブラケット16(スラストプレート17)の軸方向端面17Bに向けて僅かに突出する。これにより、多数個の耐摩耗性部材23の表面硬化部23Bが、ブラケット16(スラストプレート17)の軸方向端面17Bに確実に摺接し、アームボス12と各ブラケット16とに作用する軸方向の荷重を各耐摩耗性部材23によって確実に受承することができる構成となっている。
本実施の形態による軸受装置11は上述の如き構成を有するもので、この軸受装置11を介してアーム6の先端側にピン結合されたバケット7は、バケットシリンダ10を伸縮させることにより、連結ピン20を中心としてアーム6の先端側で回動しつつ土砂等の掘削作業を行う。
このバケット7を用いた掘削作業時には、バケット7に設けられた左,右のブラケット16に対して連結ピン20の軸方向にスラスト荷重が作用し、アームボス12を構成する左,右のボス筒体14の軸方向端面14Bは、このブラケット16に作用するスラスト荷重を受承する。このとき、各ボス筒体14の軸方向端面14Bと各ブラケット16に設けられたスラストプレート17の軸方向端面17Bとは互いに摺接する。
これに対し、本実施の形態では、各ボス筒体14の軸方向端面14Bに多数個のピン穴22を設けると共に、基端側が当該ピン穴22内に埋込まれる埋込部23Aとなり、先端側が各ブラケット16(スラストプレート17)の軸方向端面17Bに摺接する表面硬化部23Bとなった多数個の耐摩耗性部材23を設ける構成としている。
このため、ボス筒体14の軸方向端面14Bが、ブラケット16の軸方向端面17Bに直接的に摺接することがなく、軸方向端面14Bの摩耗を各耐摩耗性部材23によって抑えることができる。この結果、ボス筒体14の軸方向端面14Bを耐摩耗性部材23の表面硬化部23Bによって保護し、ボス筒体14の軸方向端面14Bとブラケット16の軸方向端面17Bとの間に長期に亘って適正な隙間を確保することができるので、アームボス12と各ブラケット16との間のガタつきを抑え、アームボス12とブラケット16とを長期に亘って円滑に相対回動させることができる。
また、本実施の形態によれば、ボス筒体14の軸方向端面14Bに多数個のピン穴22を形成し、各耐摩耗性部材23の埋込部23Aをピン穴22内に圧入するだけで、ボス筒体14の軸方向端面14Bに各耐摩耗性部材23の表面硬化部23Bを配置することができる。このため、例えばボス筒体14の軸方向端面14Bに溶射皮膜処理を施す場合に比較して、大がかりな処理設備を不要とすることができ、軸方向端面14Bの表面を硬化させるためのコストを低減することができる。
従って、ボス筒体14の軸方向端面14Bに対する表面硬化処理が施されていない場合でも、この軸方向端面14Bに後加工によって多数個のピン穴22を形成し、これら各ピン穴22に耐摩耗性部材23の埋込部23Aを圧入することにより、多数個の耐摩耗性部材23の表面硬化部23Bによって軸方向端面14Bの表面を硬化させることができる。この結果、油圧ショベル1の機種に応じて大きさが異なる複数種類のアームボス12が存在する場合でも、ボス筒体14の軸方向端面14Bに取付ける耐摩耗性部材23の個数を変更するだけで、複数種類のアームボス12(ボス筒体14)の軸方向端面14Bを長期に亘って保護することができる。
さらに、ボス筒体14の軸方向端面14Bに配置した各耐摩耗性部材23の表面硬化部23Bが摩耗した場合でも、この摩耗した耐摩耗性部材23のみをピン穴22から取外し、新たな耐摩耗性部材23を取付けることができる。この結果、ボス筒体14の軸方向端面14Bを、耐摩耗性部材23の表面硬化部23Bにより長期に亘って保護することができる。
また、本実施の形態によれば、耐摩耗性部材23の先端側に設けた表面硬化部23Bの端面23B1を、ピン穴22が形成されたボス筒体14の軸方向端面14Bからブラケット16(スラストプレート17)の軸方向端面17Bに向けて僅かに突出させる構成としている。これにより、多数個の耐摩耗性部材23の表面硬化部23Bを、ブラケット16の軸方向端面17Bに確実に摺接させることができ、アームボス12と各ブラケット16とに作用する軸方向の荷重を各耐摩耗性部材23によって確実に受承することができる。
次に、図7は本発明の第2の実施の形態を示している。第2の実施の形態の特徴は、耐摩耗性部材の表面硬化部の端面を、耐摩耗性部材が取付けられる一方の軸方向端面と同一平面上に配置したことにある。なお、本実施の形態では、上述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一符号を付し、その説明を省略するものとする。
図中、31はボス筒体14の軸方向端面14Bに形成された埋込穴としての多数個(1個のみ図示)のピン穴を示し、これら各ピン穴31は、上述した第1の実施の形態による各ピン穴22に代えて本実施の形態に用いたもので、連結ピン20を取囲んで配置され、耐摩耗性部材23の埋込部23Aが圧入されるものである。
これら各ピン穴31は、ボス筒体14の軸方向端面14Bから軸方向に延びた底面31Aを有する有底穴として形成され、ボス筒体14の軸方向端面14B側が開口端31Bとなっている。この場合、ボス筒体14の軸方向端面14Bに形成されたピン穴31の底面31Aから開口端31Bまでの距離(ピン穴31の深さ寸法)は、耐摩耗性部材23の埋込部23A側(基端側)の端面23A1から表面硬化部23B側(先端側)の端面23B1までの距離(耐摩耗性部材23の長さ寸法)Bと等しく設定されている。
従って、ピン穴31内に耐摩耗性部材23の埋込部23Aを圧入し、ピン穴31の底面31Aに耐摩耗性部材23の埋込部23A側の端面23A1を当接させた状態では、耐摩耗性部材23の先端側に設けた表面硬化部23Bの端面23B1は、ピン穴31が形成されたボス筒体14の軸方向端面14Bと同一平面上に配置される構成となっている。
第2の実施の形態による軸受装置は上述の如き構成を有するもので、その基本的作用については上述した第1の実施の形態によるものと格別差異はない。
然るに、本実施の形態によれば、耐摩耗性部材23の先端側に設けた表面硬化部23Bの端面23B1を、ピン穴31が形成されたボス筒体14の軸方向端面14Bと同一平面上に配置している。これにより、ブラケット16に設けたスラストプレート17の軸方向端面17Bを、耐摩耗性部材23の表面硬化部23Bの端面23B1とボス筒体14の軸方向端面14Bとに同時に摺接させることができる。この結果、スラストプレート17の軸方向端面17Bに作用する面圧を低減することができるので、軸方向端面17Bの摩耗を抑えることができ、スラストプレート17が設けられたブラケット16の寿命を延ばすことができる。
次に、図8は本発明の第3の実施の形態を示している。第3の実施の形態の特徴は、各耐摩耗性部材を、連結ピンを中心として径寸法が異なる2個の円周上に配置したことにある。なお、本実施の形態では、上述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一符号を付し、その説明を省略するものとする。
図中、41はボス筒体14の軸方向端面14Bに形成された埋込穴としての多数個(例えば6個)の第1のピン穴を示している。これら各第1のピン穴41は、ボス筒体14の軸方向端面14Bのうち連結ピン20の軸中心線O−Oを中心とした半径R1の円周S1上に、周方向に一定の間隔(例えば60度)をもって環状に配置された有底穴として形成されている。
42は第1のピン穴41とは異なる位置でボス筒体14の軸方向端面14Bに形成された埋込穴としての多数個(例えば6個)の第2のピン穴を示している。これら各第2のピン穴42は、ボス筒体14の軸方向端面14Bのうち連結ピン20の軸中心線O−Oを中心とした半径R2の円周S2上に、周方向に一定の間隔(例えば60度)をもって環状に配置された有底穴として形成されている。
この場合、第2のピン穴42が配置される円周S2の半径R2は、第1のピン穴41が配置される円周S1の半径R1よりも大きく設定されている(R2>R1)。また、各第1のピン穴41と各第2のピン穴42とは、互いに周方向で30度の間隔をもって離間している。
このように、ボス筒体14の軸方向端面14Bには、連結ピン20の軸中心線O−Oを中心とした半径R1の円周S1上に配置された第1のピン穴41と、半径R2の円周S2上に配置された第2のピン穴42とが形成されている。そして、これら第1のピン穴41と第2のピン穴42内には、それぞれ耐摩耗性部材23の埋込部23Aが圧入され、ボス筒体14の軸方向端面14Bには、半径R1の円周S1と半径R2の円周S2上に6個づつ、合計12個の耐摩耗性部材23が配置される構成となっている。
第3の実施の形態による軸受装置は上述の如き構成を有するもので、その基本的作用については上述した第1の実施の形態によるものと格別差異はない。
然るに、本実施の形態によれば、ボス筒体14の軸方向端面14Bに、連結ピン20の軸中心線O−Oを中心とした半径R1の円周S1と半径R2の円周S2上に合計12個の耐摩耗性部材23の表面硬化部23Bを配置することができる。この結果、各耐摩耗性部材23の表面硬化部23Bの端面23B1の面積を増大させることができ、この大きな面積をもった耐摩耗性部材23の表面硬化部23Bによって、ボス筒体14の軸方向端面14Bを確実に保護することができる。
次に、図9ないし図11は本発明の第4の実施の形態を示している。第4の実施の形態の特徴は、ボス部材の軸方向端面とブラケットの軸方向端面のうち一方の軸方向端面にボルト穴を形成し、このボルト穴に耐摩耗性部材を螺入する構成としたことにある。なお、本実施の形態では、上述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一符号を付し、その説明を省略するものとする。
図中、51はアームボス12を構成する左,右のボス筒体14の軸方向端面14Bに形成された埋込穴としての多数個(例えば12個)のボルト穴を示し、該各ボルト穴51は、第1の実施の形態による各ピン穴22に代えて本実施の形態に用いたもので、連結ピン20を取囲んで配置され、後述の耐摩耗性部材52が取付けられるものである。
ここで、各ボルト穴51は、内周側に雌ねじが形成され後述する耐摩耗性部材52の埋込部52Aが螺入される有底の雌ねじ部51Aと、雌ねじ部51Aよりも大きな穴径をもって該雌ねじ部51Aと同心上に形成された有底の座ぐり穴部51Bとにより構成されている。そして、座ぐり穴部51Bの穴径は、耐摩耗性部材52を締付けるソケットレンチ(図示せず)の外径よりも大きく設定され、座ぐり穴部51Bの基端側(雌ねじ部51A側)は底面51Cとなり、先端側はボス筒体14の軸方向端面14Bに開口する開口端51Dとなっている。
52は左,右のボス筒体14の軸方向端面14Bに設けられた多数個(例えば12個)の耐摩耗性部材を示し、該各耐摩耗性部材52は、各ボス筒体14の軸方向端面14Bに形成されたボルト穴51に取付けられるものである。これら各耐摩耗性部材52は、例えば六角ボルトからなる棒状体により構成され、軸方向の基端側に位置しボルト穴51の雌ねじ部51Aに螺入される雄ねじ状の埋込部52Aと、ボルト穴51の座ぐり穴部51B内に配置され底面51Cに着座する六角形状のヘッド部52Bと、該ヘッド部52Bの先端側に配置され各ブラケット16に設けたスラストプレート17の軸方向端面17Bに摺接する表面硬化部52Cとにより構成されている。
ここで、各耐摩耗性部材52は、埋込部52Aをボルト穴51の雌ねじ部51Aに螺入し、ヘッド部52Bの基端側の端面52B1をボルト穴51の底面51Cに着座させることにより、ボルト穴51に取付けられている。一方、各耐摩耗性部材52の表面硬化部52Cは、六角形状のヘッド部52Bの先端側に対し、溶射皮膜処理、熱処理、高周波焼入れ処理のうちいずれか一の表面硬化処理を施すことにより、耐摩耗性に優れた表面硬化層として形成されている。
そして、先端側に表面硬化部52Cが形成された各耐摩耗性部材52は、基端側の埋込部52Aをボス筒体14の軸方向端面14Bに形成されたボルト穴51(雌ねじ部51A)に螺入することにより、連結ピン20を中心とした円周上に周方向に一定の間隔をもって環状に配置されている。
ここで、図11に示すように、ボルト穴51を構成する座ぐり穴部51Bの底面51Cから開口端51Dまでの距離(座ぐり穴部51Bの深さ寸法)をCとし、耐摩耗性部材52を構成するヘッド部52Bの端面52B1から表面硬化部52Cの端面52C1までの距離(ヘッド部52Bの厚さ寸法)をDとすると、ヘッド部52Bの厚さ寸法Dは、座ぐり穴部51Bの深さ寸法Cよりも僅に大きく設定されている(D>C)。
従って、耐摩耗性部材52を構成するヘッド部52Bの端面52B1を、座ぐり穴部51Bの底面51Cに当接させた状態では、耐摩耗性部材52の先端側に設けた表面硬化部52Cの端面52C1は、ボス筒体14の軸方向端面14Bからブラケット16(スラストプレート17)の軸方向端面17Bに向けて僅かに突出する。これにより、多数個の耐摩耗性部材52の表面硬化部52Cが、ブラケット16(スラストプレート17)の軸方向端面17Bに確実に摺接し、アームボス12と各ブラケット16とに作用する軸方向の荷重を各耐摩耗性部材52によって確実に受承することができる構成となっている。
第4の実施の形態による軸受装置は上述の如き構成を有するもので、その基本的作用については上述した第1の実施の形態によるものと格別差異はない。
然るに、本実施の形態によれば、アームボス12を構成するボス筒体14の軸方向端面14Bに雌ねじ部51Aを有するボルト穴51を形成し、このボルト穴51の雌ねじ部51Aに耐摩耗性部材52の埋込部52Aを螺入することにより、各ボルト穴51に対し耐摩耗性部材52を容易に着脱することができる。
このため、ボス筒体14の軸方向端面14Bに取付けられた各耐摩耗性部材52の表面硬化部52Cが、長期に亘ってブラケット16(スラストプレート17)の軸方向端面17Bに摺接することにより摩耗した場合でも、この表面硬化部52Cが摩耗した耐摩耗性部材52のみを取外し、容易に新たな耐摩耗性部材52に交換することができる。この結果、摩耗が少ない適正な表面硬化部52Cを有する耐摩耗性部材52によって、ボス筒体14の軸方向端面14Bを長期に亘って保護することができる。
次に、図12は本発明の第5の実施の形態を示している。第5の実施の形態の特徴は、ボス部材の軸方向端面とブラケットの軸方向端面のうち一方の軸方向端面にボルト穴を形成し、このボルト穴に耐摩耗性部材を螺入すると共に、耐摩耗性部材の表面硬化部の端面をそれが取付けられる一方の軸方向端面と同一平面上に配置したことにある。なお、本実施の形態では、上述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一符号を付し、その説明を省略するものとする。
図中、61はアームボス12を構成する左,右のボス筒体14の軸方向端面14Bに形成された埋込穴としての多数個(1個のみ図示)のボルト穴を示している。このボルト穴61は、有底の雌ねじ部61Aと、雌ねじ部61Aと同心上に形成された有底の座ぐり穴部61Bとにより構成され、座ぐり穴部61Bの基端側は底面61Cとなり、先端側はボス筒体14の軸方向端面14Bに開口する開口端61Dとなっている。
62は左,右のボス筒体14の軸方向端面14Bに設けられた多数個(1個のみ図示)の耐摩耗性部材を示し、該各耐摩耗性部材62は、各ボス筒体14の軸方向端面14Bに形成されたボルト穴61に取付けられるものである。これら各耐摩耗性部材62は、例えば六角ボルトからなる棒状体により構成され、ボルト(雄ねじ)からなる埋込部62Aと、六角形状のヘッド部62Bと、該ヘッド部62Bの先端側に形成された表面硬化部62Cとにより構成されている。
そして、各耐摩耗性部材62は、埋込部62Aをボス筒体14の軸方向端面14Bに形成されたボルト穴61(雌ねじ部61A)に螺入し、ヘッド部62Bの基端側の端面62B1をボルト穴61(座ぐり穴部61B)の底面61Cに着座させることにより、ボス筒体14の軸方向端面14Bに取付けられている。
ここで、ボルト穴61を構成する座ぐり穴部61Bの底面61Cから開口端61Dまでの距離(座ぐり穴部61Bの深さ寸法)Eは、耐摩耗性部材62を構成するヘッド部62Bの端面62B1から表面硬化部62Cの端面62C1までの距離(ヘッド部62Bの厚さ寸法)と等しく設定されている。
従って、ボルト穴61の雌ねじ部61Aに耐摩耗性部材62の埋込部62Aを螺入し、座ぐり穴部61Bの底面61Cに耐摩耗性部材62のヘッド部62Bの端面62B1を着座させた状態では、耐摩耗性部材62の先端側に設けた表面硬化部62Cの端面62C1は、ボス筒体14の軸方向端面14Bと同一平面上に配置される構成となっている。
第5の実施の形態による軸受装置は上述の如き構成を有するもので、耐摩耗性部材62の先端側に設けた表面硬化部62Cの端面62C1を、ボルト穴61が形成されたボス筒体14の軸方向端面14Bと同一平面上に配置している。これにより、ブラケット16に設けたスラストプレート17の軸方向端面17Bを、耐摩耗性部材62の表面硬化部62Cの端面62C1とボス筒体14の軸方向端面14Bとに同時に摺接させ、スラストプレート17の軸方向端面17Bに作用する面圧を低減することができるので、軸方向端面17Bの摩耗を抑えることができ、スラストプレート17が設けられたブラケット16の寿命を延ばすことができる。
なお、上述した第1の実施の形態では、作業装置4を構成するアーム6のアームボス12とバケット7に設けた左,右のブラケット16のうち、アームボス12(ボス筒体14)の軸方向端面14Bに耐摩耗性部材23を取付けた場合を例示している。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えば図13に示す変形例のように、左,右のブラケット16に設けられたスラストプレート17の軸方向端面17Bに耐摩耗性部材23を取付ける構成としてもよい。このことは、第2〜第5の実施の形態についても同様である。
また、上述した各実施の形態では、作業装置4を構成するアーム6とバケット7との間のピン結合部に用いた軸受装置11を例に挙げて説明している。しかし、本発明はこれに限らず、例えば上部旋回体3とブーム5との間のピン結合部、ブーム5とアーム6との間のピン結合部等、2部材間を回動可能に連結するピン結合部に広く適用することができるものである。