以下、電力変換装置の実施形態を、図面を用いて説明する。なお、この実施形態は、交流電源として100Vの商用電源(50Hz/60Hz)を入力とし、所望の直流電圧に変換して負荷へ電力を供給する電力変換装置に適用した場合である。
[第1の実施形態]
はじめに、第1の実施形態を、図1〜図4を用いて説明する。図1は、第1の実施形態の電力変換装置100を示す回路図である。
電力変換装置100は、交流電源101の両端に、インダクタL1とキャパシタC1を直列に介して、第1の半導体スイッチQ1を接続する。第1の半導体スイッチQ1は、N型チャネルのMOS型FETを使用する。具体的には、交流電源101の一端にインダクタL1を介してキャパシタC1の一端を接続し、キャパシタC1の他端に第1の半導体スイッチQ1であるMOS型FETのドレイン端子を接続し、当該MOS型FETのソース端子を交流電源101の他端に接続する。
電力変換装置100は、第1の半導体スイッチQ1の両端に、平滑コンデンサC2を直列に介して、第2の半導体スイッチQ2を接続する。第2の半導体スイッチQ2は、N型チャネルのMOS型FETを使用する。具体的には、第2の半導体スイッチQ2であるMOS型FETのソース端子をキャパシタC1と第1の半導体スイッチQ1との接続点に接続し、当該MOS型FETQ2のドレイン端子を平滑コンデンサC2の正極端子に接続し、平滑コンデンサC2の負極端子を交流電源101と第1の半導体スイッチQ1との接続点に接続する。
電力変換装置100は、第1の半導体スイッチQ1に対して並列に第1の外付けダイオードD1を接続し、第2の半導体スイッチQ2に対して並列に第2の外付けダイオードD2を接続する。具体的には、第1の半導体スイッチQ1と交流電源101との接続点に、第1の外付けダイオードD1のアノードを接続し、第1の半導体スイッチQ1とキャパシタC1との接続点に、第1の外付けダイオードD1のカソードを接続する。また、第2の半導体スイッチQ2とキャパシタC1との接続点に、第2の外付けダイオードD2のアノードを接続し、第2の半導体スイッチQ2と平滑コンデンサC2との接続点に、第2の外付けダイオードD2のカソードを接続する。第1の外付けダイオードD1は、第1の半導体スイッチQ1が有するボディダイオードより順方向電圧が低い。同じく、第2の外付けダイオードD2は、第2の半導体スイッチQ2が有するボディダイオードより順方向電圧が低い。
電力変換装置100は、平滑コンデンサC2の両端を出力端子102、103とする。そして、これらの出力端子102,103間に、所望の負荷104を接続する。
電力変換装置100は、交流電源101の両端に入力電圧検出部105を接続する。入力電圧検出部105は、交流電源101の両端に発生する入力電圧Vinを検出する。そして、その検出信号をコントローラ110に出力する。
電力変換装置100は、第1の半導体スイッチQ1と第1の外付けダイオードD1との接続点と交流電源101との間に回路電流検出部106を接続する。回路電流検出部106は、インダクタL1等に流れる回路電流Iを検出し、その検出信号をコントローラ110に出力する。
電力変換装置100は、出力端子102,103間に出力電圧検出部107を接続する。出力電圧検出部107は、平滑コンデンサC2の両端である出力端子102,103間の電圧Voutを検出する。そして、その検出信号をコントローラ110に出力する。
コントローラ110は、オシレータ108から発生するクロック信号CLKを入力する。また、コントローラ110は、前記入力電圧検出部105で検出される入力電圧Vinと、前記回路電流検出部106で検出される回路電流Iと、出力電圧検出部107で検出される出力端子102,103間の電圧Voutとを入力する。さらに、コントローラ110は、出力電圧Voutと比較するための基準電圧(リファレンス電圧)Vrefを入力する。コントローラ110は、出力電圧Voutが上記基準電圧Vrefより高いか低いかを判定する。
コントローラ110は、入力電圧Vinと、回路電流Iと、出力電圧Voutとに基いて、第1のパルス信号P1と第2のパルス信号P2とを生成する。コントローラ110は、第1のパルス信号P1を第1の半導体スイッチQ1に供給し、第2のパルス信号P2を第2の半導体スイッチQ2に供給する。
第1の半導体スイッチQ1は、第1のパルス信号P1が供給されている間、導通する。第2の半導体スイッチQ2は、第2のパルス信号P2が供給されている間、導通する。
図2は、入力電圧Vin及び回路電流Iと、第1及び第2のパルス信号P1,P2との関係を示す波形図である。図2において、区間T1〜T2は、交流電圧Vaの極性が正の区間である。この区間のとき、コントローラ110は、交流電圧Vaの周期よりはるかに高い周波数で第1のパルス信号P1を生成する。図2において、区間T2〜T3は、交流電圧Vaの極性が負の区間である。この区間のとき、コントローラ110は、交流電圧Vaの周期よりはるかに高い周波数で第2のパルス信号P2を生成する。
すなわち、交流電圧Vaの極性が正のとき、第1の半導体スイッチQ1が導通・非導通を繰り返す。交流電圧Vaの極性が負のとき、第2の半導体スイッチQ2が導通・非導通を繰り返す。その結果、インダクタL1を流れる回路電流Iは、入力電圧Vinと相似形の正弦波となる。
図3は、コントローラ110の制御手順を示す流れ図である。交流電源が供給され、コントローラ110が立ち上がると、コントローラ110は、オシレータ108が発振する所定周波数のクロック信号CLKを取込む。また、コントローラ110は、出力電圧検出部107で検出される出力電圧Voutを周期的に取込む。そして、その都度、この出力電圧Voutから基準電圧Vrefを減じた出力電圧補正値(出力電圧Vout−基準電圧Vref)を算出し、この出力電圧補正値を低周波積分する。
負荷104への電力供給開始(パルス出力周期の開始)のタイミングになると、コントローラ110は、出力電圧Voutが基準電圧Vrefに近づくように、帰還係数(フィードバック係数)K1を決定する。帰還係数K1は、出力電圧Voutを基準電圧Vrefに近づけるため、出力電圧Voutが基準電圧Vrefより低い場合には“1”以上の値をとり、出力電圧Voutが基準電圧Vrefより高い場合には“1”未満の値をとる。また、帰還係数K1は、出力電圧Voutと基準電圧Vrefとの出力電圧補正値が大きいときには大きい値をとり、出力電圧補正値が小さいときには小さい値をとる。ただし、回路系統に急峻な帰還制御がかからないようにするため、低周波積分をした出力電圧補正値の値から帰還係数K1を決定する。つまり帰還係数K1は、出力電圧Voutの変動に伴い、緩やかに変動した値となる。
具体的には、コントローラ110は、ステップST1として現時点における上記出力電圧補正値の低周波積分値を、第1の帰還係数K1として決定する。そして、この第1の帰還係数K1をコントローラ110内のメモリで記憶する。
次に、コントローラ110は、ステップST2として入力電圧検出部105が現時点で検出した入力電圧、つまりは入力電圧瞬時値Vinを取込む。そして、ステップST3としてこの入力電圧瞬時値Vinの極性を判定し、その極性を表わすフラグ情報を上記メモリで記憶する。例えば、極性が正であれば“1”の状態のフラグ情報を記憶し、極性が負であれば“0”の状態のフラグ情報を記憶する。さらに、コントローラ110は、ステップST4としてこの入力電圧瞬時値Vinから極性を除いた入力電圧絶対値を求め、上記メモリで記憶する。なお、ステップST3として入力電圧絶対値を求めて記憶し、ステップST4として入力電圧の極性を判定してフラグ情報を記憶してもよい。
次に、コントローラ110は、ステップST5としてメモリに記憶した入力電圧絶対値に前記第1の帰還係数K1を乗算して、最大電流規定値(PeakH)を算出する(電流規定値決定手段)。
次に、コントローラ110は、ステップST6として前記フラグ情報の状態から入力電圧Vinの極性が正であるか負であるかを判定する。前記フラグ情報が“1”、すなわち入力電圧Vinの極性が正である場合には(ST6のYES)、コントローラ110は、ステップST7として前記クロック信号CLKの立ち上がりに同期して第1のパルス信号P1をオンする。前記フラグ情報が“0”、すなわち入力電圧Vinの極性が負である場合には(ST6のNO)、コントローラ110は、ステップST8として前記クロック信号CLKの立ち上がりに同期して第2のパルス信号P2をオンする(パルス信号出力手段)。
次に、コントローラ110は、ステップST9として電流検出部106が現時点で検出した回路電流、つまりは回路電流瞬時値Iを取込む。そして、ステップST10としてこの回路電流瞬時値Iから極性を除いた回路電流絶対値を求め、上記メモリで記憶する。
次に、コントローラ110は、ステップST11としてメモリで記憶した回路電流絶対値が前記最大電流規定値(PeakH)に達したか否かを判定する。回路電流絶対値が最大電流規定値(PeakH)に達していない場合(ST11のNO)、コントローラ110は、再度、回路電流瞬時値Iを取込み(ST9)、この回路電流瞬時値Iから極性を除いた回路電流絶対値を求めて、メモリに上書き記憶する(ST10)。
こうして、コントローラ110は、回路電流絶対値が最大電流規定値(PeakH)に達するまで、ステップST9及びST10の処理を繰り返し実行する。回路電流絶対値が最大電流規定値(PeakH)に達したならば(ST11のYES)、コントローラ110は、ステップST12として前記フラグ情報から入力電圧Vinの極性を再度判定する。そして、入力電圧Vinの極性が正である場合(ST12のYES)、コントローラ110は、ステップST13として前記第1のパルス信号P1をオフする。これに対し、入力電圧Vinの極性が負である場合(ST12のNO)、コントローラ110は、ステップST14として前記第2のパルス信号P2をオフする。
第1のパルス信号P1または第2のパルス信号P2をオフすると、次の1周期に移行するべく、コントローラ110は、この制御手順の最初の処理ステップST1に戻る。すなわち、現時点における出力電圧補正値の低周波積分値から第1の帰還係数K1を決定する。以後、負荷104への電力供給が終了するまで、コントローラ110は、ステップST1〜ST14の各処理手順を繰り返す。
このような制御手順を実行するコントローラ110は、ソフトウェアによって構成してもよいし、ハードウェアによって構成してもよい。
かかる構成の電力変換装置100においては、入力電圧Vinの極性が正のときには、クロック信号CLKに同期して、コントローラ110から第1の半導体スイッチQ1に対して第1のパルス信号P1が供給される。第1のパルス信号P1は、回路電流Iが最大電流規定値(PeakH)まで上昇するとオフし、次のクロック信号CLKが入力されると、オンする。すなわち、クロック信号CLKが発生してから回路電流Iが最大電流規定値(PeakH)に達するまで、第1のパルス信号P1はオンする。そして、最大電流規定値(PeakH)に達してから次のクロック信号が発生するまで、第1のパルス信号P1はオフする。
図4は、入力電圧Vinの極性が正のときの回路電流Iと、クロック信号CLKと、第1のパルス信号P1と、第1の半導体スイッチQ1を流れる電流と、第2の外付けダイオードD2を流れる電流とを示している。なお、電力変換装置100は、その一態様として、交流電源101の周波数を50Hzとし、第1及び第2の半導体スイッチQ1,Q2のスイチッング周波数を100kHzとする。ただし、図で100kHzの動作を表現しようとすると細かくなりすぎるので、便宜上、非常に粗い周期で記載している。
図4に示すように、回路電流Iに対する最大電流規定値(PeakH)のエンベロープ曲線Peは、入力電圧Vinの波形と相似形の正弦波状になる。そして、第1のパルス信号P1は、クロック信号CLKに同期してオンする(時点T11,T13,T15,T17,T19,T21,T23,T25を参照)。そして、回路電流Iが最大電流規定値(PeakH)に達するまで、第1のパルス信号P1は、オン状態を維持する。
回路電流Iが最大電流規定値(PeakH)に達すると(時点T12,T14,T16,T18,T20,T22,T24を参照)、第1のパルス信号P1はオフする。その後、次のクロック信号が発生すると(時点T13,T15,T17,T19,T21,T23,T25を参照)、第1のパルス信号P1は、再びオンする。以後、入力電圧Vinの極性が負となるまで、第1のパルス信号P1は、上述したオン・オフの動作を繰り返す。
第1のパルス信号P1がオンすると、第1の半導体スイッチQ1が導通する。第1の半導体スイッチQ1が導通すると、交流電源101、インダクタL1、キャパシタC1及び第1の半導体スイッチQ1の閉回路が形成される。その結果、インダクタL1の線形リアクトル作用により、右上がりの直線的な電流が、キャパシタC1側から第1の半導体スイッチQ1に流れる(区間T11−T12、T13−T14、T15−T16、T17−T18、T19−T20、T21−T22、T23−T24を参照)。
第1のパルス信号P1がオフすると、第1の半導体スイッチQ1が非導通になる。第1の半導体スイッチQ1が非導通になると、第1の半導体スイッチQ1を流れる電流はゼロとなる。このとき、インダクタL1は、リアクトルエネルギーにより引き続き電流を同方向に流し続けるようとする。このため、第2の半導体スイッチQ2に並列接続された第2の外付けダイオードD2を経由して平滑コンデンサC2に電流が流れ込む(区間T12−T13、T14−T15、T16−T17、T18−T19、T20−T21、T22−T23、T24−T25を参照)。
第1のパルス信号P1がオン,オフをする毎に、電力変換装置100は上述した動作を繰り返す。その結果、電力変換装置100は、出力端子102,103間の出力電圧Voutを昇圧しながら、平滑コンデンサC2を充電する。
一方、入力電圧Vinの極性が負のときには、クロック信号CLKに同期して、コントローラ110から第2の半導体スイッチQ2に対して第2のパルス信号P2が供給される。第2のパルス信号P2は、回路電流Iが最大電流規定値(PeakH)に達するまでオン状態を維持し、最大電流規定値(PeakH)に達するとオフする。そして、その後、次のクロック信号CLKが入力されると、第2のパルス信号P2は、再びオンする。以後、入力電圧Vinの極性が正となるまで、第2のパルス信号P2は、上述したオン・オフの動作を繰り返す。
第2のパルス信号P2がオンすると、第2の半導体スイッチQ2が導通する。第2の半導体スイッチQ2が導通すると、交流電源101、インダクタL1、キャパシタC1、第2の半導体スイッチQ2及び平滑コンデンサC2の閉回路が形成される。このとき、平滑コンデンサC2の電圧は、交流電圧Vaより高い。その結果、平滑コンデンサC2の充電電圧が第2の半導体スイッチQ2及びインダクタL1を経由して交流電源101側に戻るように、電力変換装置100は動作する。このため、右上がりの直線的な電流が、平滑コンデンサC2側から第2の半導体スイッチQ2に流れる。
第2のパルス信号P2がオフすると、第2の半導体スイッチQ2が非導通になる。第2の半導体スイッチQ2が非導通になると、第2の半導体スイッチQ2を流れる電流はゼロとなる。このとき、インダクタL1は、リアクトルエネルギーにより引き続き電流を同方向に流し続けようとする。このため、第1の半導体スイッチQ1に並列接続された第1の外付けダイオードD1を経由してキャパシタC1に電流が流れ込む。
第2のパルス信号P2がオン,オフをする毎に、電力変換装置100は上述した動作を繰り返す。その結果、電力変換装置100は、キャパシタC1に電荷を補充する。
交流電圧Vaの極性は、正と負を交互に繰り返す。したがって、電力変換装置100は、平滑コンデンサC2を充電する作用とキャパシタC1に電荷を補充する作用とを交互に繰り返す。すなわち電力変換装置100は、キャパシタC1に電荷を補充した後に平滑コンデンサC2を充電する。したがって、平滑コンデンサC2を充電する際にはキャパシタC1に蓄えられた電荷が平滑コンデンサC2に移動する。
図1に示した電力変換装置100の回路は、第1及び第2の半導体スイッチQ1,Q2がスイッチング動作しないと、倍電圧回路として動作する。つまり、入力電圧が例えば交流100Vの場合は、略200Vの直流電圧が出力端子102,103間に生じる。
前述したように第1及び第2の半導体スイッチQ1,Q2がスイッチング動作すると、キャパシタC1に蓄えられた電荷が平滑コンデンサC2に移動する。このため、電力変換装置100の昇圧効果が加算される。その結果、電力変換装置100は、入力電圧である交流電圧Vaを、その倍電圧よりもさらに高い電圧に昇圧して、基準電圧Vrefと略等しい直流の出力電圧Voutを得ることができる。
このように、第1の実施形態によれば、電力変換装置100は、全波整流を行うことなく、交流電源101から得られる交流電圧を直流電圧に変換して負荷104へ電力を供給することができる。したがって、全波整流のためのダイオードブリッジ回路が不要となるため、回路部品点数を削減でき、コストの低減を図ることができる。また、ダイオードブリッジ回路で発生していたダイオードの順方向電圧による損失がなくなるので、電力変換装置100は、高効率の電力変換が可能となる。
その上、電力変換装置100は、入力電流波形を入力電圧波形と相似形となるように制御している。このため、入力電流は正弦波となる。したがって、入力電流の高調波を抑制でき、ノイズの少ない電力変換を実現できる。入力電流の高調波を抑制するためには、一般には、力率改善コンバータ(PFC)を別途設ける必要がある。しかし、電力変換装置100は、力率改善コンバータを設ける必要がない。すなわち電力変換装置100は、全波整流の機能と力率改善コンバータの機能とを1つの回路で実現しているので、より一層変換効率を高めることができる。
しかも、図4から明らかなように、インダクタL1等に流れる回路電流Iは、平均値とピーク値との差が小さい。インダクタL1、コンデンサC1、半導体スイッチQ1,Q2等の回路部品の定格は、回路電流のピーク値によって決まる。したがって、回路電流の平均値に対してピーク値がかけ離れていた場合、回路部品のコストアップにつながる。これに対して、電力変換装置100は、回路電流平均値とピーク値との差を小さくできるので、インダクタL1の磁気飽和定格、コンデンサC1のリップル電流定格、第1及び第2の半導体スイッチQ1,Q2の最大電流定格等に余裕を持たせることができる。その結果、電力変換装置100は、低コスト化を図ることができる。
さらに、電力変換装置100は、第1のパルス信号P1と第2のパルス信号P2の出力タイミングをクロック信号CLKに同期させている。したがって、第1のパルス信号P1と第2のパルス信号P2の周波数が固定である。仮に、これらのパルス信号S1,S2の周波数が可変であると、入力電圧がゼロクロスの近辺で高周波化が起こり得る。電力変換装置100は、第1のパルス信号P1と第2のパルス信号P2の周波数が固定なので、上述したような無用な高周波化を防ぐことができる。よって、電力変換装置100は、駆動のための電力を軽減できる効果も奏する。
[第2の実施形態]
次に、第2の実施形態を、図5〜図9を用いて説明する。なお、第2の実施形態における電力変換装置200の回路構成は、第1の実施形態と同様なので図1を代用し、共通部分には同一符号を付してその詳しい説明を省略する。
図5は、電力変換装置200において、入力電圧Vin及び回路電流Iと、第1及び第2のパルス信号P1,P2との関係を示す波形図である。図5において、区間T1〜T2は、交流電圧Vaの極性が正の区間である。この区間のとき、コントローラ110は、交流電圧Vaの周期よりはるかに高い周波数で第1のパルス信号P1を生成する。本実施形態では、このときの第1のパルス信号P1を、第1の半導体スイッチQ1に対するメインパルス信号MPと称する。また、この区間のとき、コントローラ110は、第1のパルス信号P1がオフする毎に第2のパルス信号P2を生成する。本実施形態では、このときの第2のパルス信号P2を、第2の半導体スイッチQ2に対するサブパルス信号SPと称する。
図5において、区間T2〜T3は、交流電圧Vaの極性が負の区間である。この区間のとき、コントローラ110は、交流電圧Vaの周期よりはるかに高い周波数で第2のパルス信号P2を生成する。本実施形態では、このときの第2のパルス信号P2を、第2の半導体スイッチQ2に対するメインパルス信号MPと称する。また、この区間のとき、コントローラ110は、第2のパルス信号P2がオフする毎に第1のパルス信号P1を生成する。本実施形態では、このときの第1のパルス信号P1を、第1の半導体スイッチQ1に対するサブパルス信号SPと称する。
すなわち、本実施形態においても、交流電圧Vaの極性が正のとき、第1の半導体スイッチQ1が導通・非導通を繰り返す。交流電圧Vaの極性が負のとき、第2の半導体スイッチQ2が導通・非導通を繰り返す。その結果、インダクタL1を流れる回路電流Iは、入力電圧Vinと相似形の正弦波となる。
ここで、サブパルス信号SPの生成方法を、図6を用いて説明する。図6は、入力電圧Vinの極性が正のときの最大電流規定値(PeakH)のエンベロープ曲線Peと、回路電流Iと、クロック信号CLKと、メインパルス信号としての第1のパルス信号P1(MP)と、サブパルス信号としての第2のパルス信号P2(SP)とのごく一部を示している。
第1のパルス信号P1(MP)は、時点T31に示すように、クロック信号CLKに同期してオンし、時点T32に示すように、回路電流Iが最大電流規定値(PeakH)に達するとオフする。第2のパルス信号P2(SP)は、時点T33に示すように、回路電流Iが最大電流規定値(PeakH)よりも若干低いサブパルスオン規定値(PeakM)に達するとオンし、時点T34に示すように、直前のクロック信号CLKからdt1時間を経過するとオフする。dt1時間は、クロック信号CLKの1周期よりも若干短い時間である。
すなわち、サブパルス信号SPは、回路電流Iが最大電流規定値(PeakH)よりも若干低いサブパルスオン規定値(PeakM)に達するとオンし、直前のクロック信号CLKから該クロック信号CLKの1周期よりも若干短いdt1時間を経過するとオフするように生成する。
こうすることにより、第1のパルス信号P1(MP)の立下りと第2のパルス信号P2(SP)の立ち上がりとの間に、微小の遅延時間(T32−T33)が生成される。また、第2のパルス信号P2(SP)の立下りと第1のパルス信号P1(MP)の立ち上がりとの間に、微小の遅延時間(T34−T35)が生成される。したがって、第1のパルス信号P1(MP)と第2のパルス信号P2(SP)とが同時にオンすることはない。仮に、第1のパルス信号P1(MP)と第2のパルス信号P2(SP)とが同時にオンすると、第1の半導体スイッチQ1と第2の半導体スイッチQ2とに貫通電流が流れ、平滑コンデンサC2がショート状態となる。上記遅延時間は、このショート状態となることを防ぐための措置である。
一方、入力電圧Vinの極性が負のときも同様であり、第2のパルス信号P2(MP)は、クロック信号CLKに同期してオンし、回路電流Iが最大電流規定値(PeakH)に達するとオフする。第1のパルス信号P1(SP)は、回路電流Iが最大電流規定値(PeakH)よりも若干低いサブパルスオン規定値(PeakM)に達するとオンし、直前のクロック信号CLKから前記dt1時間を経過するとオフする。この場合も、第2のパルス信号P2(MP)と第1のパルス信号P1(SP)とが同時にオンすることはない。
図7及び図8は、コントローラ110の制御手順を示す流れ図である。なお、コントローラ110が、出力電圧検出部107で検出される出力電圧Voutから基準電圧Vrefを減じた出力電圧補正値(出力電圧Vout−基準電圧Vref)を周期的に算出し、この出力電圧補正値を低周波積分している点は、第1の実施形態と同様である。
負荷104への電力供給開始(パルス出力周期の開始)のタイミングになると、コントローラ110は、ステップST21として現時点における上記出力電圧補正値の低周波積分値を、第1の帰還係数K1として決定する。また、この第1の帰還係数K1に一定の比率a(但し、1>a>0)を乗算した値を、第2の帰還係数K2として決定する。そして、第1及び第2の帰還係数K1,K2(K1>K2)をコントローラ110内のメモリで記憶する。
次に、コントローラ110は、第1の実施形態のステップST2〜ST4と同様に、ステップST22として入力電圧瞬時値Vinを取込み、ステップST23としてこの入力電圧瞬時値Vinの極性を判定する。そして、その極性を表わすフラグ情報を上記メモリで記憶するとともに、ステップST24として入力電圧絶対値を上記メモリで記憶する。
次に、コントローラ110は、ステップST25としてメモリに記憶した入力電圧絶対値に前記第1の帰還係数K1を乗算して、最大電流規定値(PeakH)を算出する。同様に、入力電圧絶対値に前記第2の帰還係数K2を乗算して、サブパルスオン規定値(PeakM)を算出する(電流規定値決定手段)。
次に、コントローラ110は、第1の実施形態のステップST6〜ST8と同様に、ステップST26として入力電圧Vinの極性が正であるか負であるかを判定する。そして、入力電圧Vinの極性が正である場合には(ST26のYES)、コントローラ110は、ステップST27としてクロック信号CLKの立ち上がりに同期して第1のパルス信号P1(MP)をオンする。入力電圧Vinの極性が負である場合には(ST26のNO)、コントローラ110は、ステップST28としてクロック信号CLKの立ち上がりに同期して第2のパルス信号P2(MP)をオンする(パルス信号出力手段)。
メインパルス信号MPとしての第1のパルス信号P1(MP)または第2のパルス信号P2(MP)がオンすると、コントローラ110は、ステップST29として内蔵の第1タイマT1による計時動作をスタートさせる。
次に、コントローラ110は、第1の実施形態のステップST9〜ST14と同様に、ステップST30として回路電流瞬時値Iを取込む。そして、ステップST31としてこの回路電流瞬時値Iから極性を除いた回路電流絶対値を求め、上記メモリで記憶する。
次に、コントローラ110は、ステップST32として回路電流絶対値が前記最大電流規定値(PeakH)に達したか否かを判定する。回路電流絶対値が最大電流規定値(PeakH)に達していない場合(ST32のNO)、コントローラ110は、再度、回路電流瞬時値Iを取込み(ST30)、この回路電流瞬時値Iから極性を除いた回路電流絶対値を求めて、メモリに上書き記憶する(ST31)。
こうして、コントローラ110は、回路電流絶対値が最大電流規定値(PeakH)に達するまで、ステップST30及びST31の処理を繰り返し実行する。回路電流絶対値が最大電流規定値(PeakH)に達したならば(ST32のYES)、コントローラ110は、ステップST33として前記フラグ情報から入力電圧Vinの極性を再度判定する。そして、入力電圧Vinの極性が正である場合(ST33のYES)、コントローラ110は、ステップST34として前記第1のパルス信号P1(MP)をオフする。これに対し、入力電圧Vinの極性が負である場合(ST33のNO)、コントローラ110は、ステップST35として前記第2のパルス信号P2(MP)をオフする。
メインパルス信号としての第1のパルス信号P1(MP)または第2のパルス信号P2(MP)がオフすると、次に、コントローラ110は、ステップST36として再びその時点の回路電流瞬時値Iを取込む。そして、ステップST37としてこの回路電流瞬時値Iから極性を除いた回路電流絶対値を求め、上記メモリで記憶する。
次に、コントローラ110は、ステップST38としてメモリで記憶した回路電流絶対値が前記サブパルスオン規定値(PeakM)に達したか否かを判定する。回路電流絶対値が前記サブパルスオン規定値(PeakM)に達していない場合(ST38のNO)、コントローラ110は、再度、回路電流瞬時値Iを取込み(ST36)、この回路電流瞬時値Iから極性を除いた回路電流絶対値を求めて、メモリに上書き記憶する(ST37)。
こうして、コントローラ110は、回路電流絶対値がサブパルスオン規定値(PeakM)に下降するまで、ステップST36及びST37の処理を繰り返し実行する。回路電流絶対値がサブパルスオン規定値(PeakM)まで下降したならば(ST38のYES)、コントローラ110は、ステップST39として入力電圧Vinの極性が正であるか負であるかを再度判定する。入力電圧Vinの極性が正である場合には(ST39のYES)、コントローラ110は、ステップST40として第2のパルス信号P2(SP)をオンする。入力電圧Vinの極性が負である場合には(ST39のNO)、コントローラ110は、ステップST41として第1のパルス信号P1(SP)をオンする(パルス信号出力手段)。
サブパルス信号SPとしての第1のパルス信号P1(SP)または第2のパルス信号P2(SP)がオンすると、コントローラ110は、ステップST42として第1のタイマT1が前記dt1時間を計時するのを待機する。第1のタイマT1がdt1時間を計時すると(ST42のYES)、コントローラ110は、ステップST43として入力電圧Vinの極性を再度判定する。そして、入力電圧Vinの極性が正である場合(ST43のYES)、コントローラ110は、ステップST44として前記第2のパルス信号P2(SP)をオフする。これに対し、入力電圧Vinの極性が負である場合(ST43のNO)、コントローラ110は、ステップST45として前記第1のパルス信号P1(SP)をオフする。
サブパルス信号SPとしての第1のパルス信号P1(SP)または第2のパルス信号P2(SP)がオフすると、次の1周期に移行するべく、コントローラ110は、この制御手順の最初の処理ステップST21に戻る。すなわち、現時点における出力電圧補正値の低周波積分値から第1及び第2の帰還係数K1,K2を決定する。以後、負荷104への電力供給が終了するまで、コントローラ110は、ステップST21〜ST45の各処理手順を繰り返す。
かかる構成の電力変換装置200においては、入力電圧Vinの極性が正のときには、コントローラ110から第1の半導体スイッチQ1に対しての第1のパルス信号P1がメインパルス信号MPとして供給される。第1のパルス信号P1(MP)は、回路電流Iが最大電流規定値(PeakH)まで上昇するとオフし、次のクロック信号CLKが発生するとオンする。すなわち、クロック信号CLKが発生してから回路電流Iが最大電流規定値(PeakH)に達するまで、第1のパルス信号P1(MP)はオンする。そして、最大電流規定値(PeakH)に達してから次のクロック信号が発生するまで、第1のパルス信号P1(MP)はオフする。
また、入力電圧Vinの極性が正のときでかつ第1のパルス信号P1(MP)がオフのとき、コントローラ110から第2の半導体スイッチQ2に対して第2のパルス信号P2がサブパルス信号SPとして供給される。第2のパルス信号P2(SP)は、回路電流Iがサブパルスオン規定値(PeakM)まで下降するとオンし、直前のクロック信号CLKから前記dt1時間が経過するとオフする。
図9は、入力電圧Vinの極性が正のときの回路電流Iと、クロック信号CLKと、第1のパルス信号P1(MP)と、第2のパルス信号P2(SP)と、第1の半導体スイッチQ1を流れる電流と、第2の外付けダイオードD2を流れる電流と、第2の半導体スイッチQ2を流れる電流とを示している。なお、電力変換装置200は、その一態様として、交流電源101の周波数を50Hzとし、第1及び第2の半導体スイッチQ1,Q2のスイチッング周波数を100kHzとする。ただし、図で100kHzの動作を表現しようとすると細かくなりすぎるので、便宜上、非常に粗い周期で記載している。
図9に示すように、回路電流Iに対する最大電流規定値(PeakH)のエンベロープ曲線Peは、入力電圧Vinの波形と相似形の正弦波状になる。そして、メインパルス信号MPとしての第1のパルス信号P1(MP)は、クロック信号CLKに同期してオンすると(時点T41,T45,T49,T53,T57,T61,T65,T69を参照)、回路電流Iが最大電流規定値(PeakH)に達するまで、第1のパルス信号P1(MP)はオン状態を維持する。
回路電流Iが最大電流規定値(PeakH)に達すると(時点T42,T46,T50,T54,T58,T62,T66を参照)、第1のパルス信号P1(MP)はオフする。その後、次のクロック信号CLKが入力されると(時点T45,T49,T53,T57,T61,T65,T69を参照)、第1のパルス信号P1(MP)は、再びオンする。以後、入力電圧Vinの極性が負となるまで、第1のパルス信号P1(MP)は、上述したオン・オフの動作を繰り返す。
一方、第2のパルス信号P2(SP)は、回路電流Iが最大電流規定値(PeakH)に達するまではオフしている。そして、回路電流Iが最大電流規定値(PeakH)に達した後、サブパルスオン規定値(PeakM)まで下降すると(時点T43,T47,T51,T55,T59,T63,T67を参照)、サブパルス信号SPとしての第2のパルス信号P2(SP)がオンする。そして、直前のクロック信号CLKから前記dt1時間が経過すると(時点T44,T48,T52,T56,T60,T64,T68を参照)、第2のパルス信号P2(SP)はオフする。以後、入力電圧Vinの極性が負となるまで、第2のパルス信号P2(SP)は、上述したオン・オフの動作を繰り返す。
第1のパルス信号P1(MP)がオンすると、第1の半導体スイッチQ1が導通する。第1の半導体スイッチQ1が導通すると、交流電源101、インダクタL1、キャパシタC1及び第1の半導体スイッチQ1の閉回路が形成される。その結果、インダクタL1の線形リアクトル作用により、右上がりの直線的な電流が、キャパシタC1側から第1の半導体スイッチQ1に流れる(区間T41−T42、T45−T46、T49−T50、T53−T54、T57−T58、T61−T62、T65−T66を参照)。
第1のパルス信号P1(MP)がオフすると、第1の半導体スイッチQ1が非導通になる。第1の半導体スイッチQ1が非導通になると、第1の半導体スイッチQ1を流れる電流はゼロとなる。このとき、インダクタL1は、リアクトルエネルギーにより引き続き電流を同方向に流し続けるようとする。このため、第2の半導体スイッチQ2に並列接続された第2の外付けダイオードD2を経由して平滑コンデンサC2に電流が流れ込む(区間T42−T43、T46−T47、T50−T51、T54−T55、T58−T59、T62−T63、T66−T67を参照)。
第1のパルス信号P1(MP)がオン,オフをする毎に、電力変換装置200は上述した動作を繰り返す。その結果、電力変換装置200は、出力端子102,103間の出力電圧Voutを昇圧しながら、平滑コンデンサC2を充電する。
ここで、第1のパルス信号P1(MP)がオフし、回路電流Iがサブパルスオン規定値(PeakM)まで下降すると、第2のパルス信号P2(SP)がオンする。第2のパルス信号P2(SP)は、直前のクロック信号CLKから前記dt1時間が経過するまでオンしており、dt1時間が経過するとオフする。
第2のパルス信号P2(SP)がオンすると、第2の半導体スイッチQ2が導通する。第2の半導体スイッチQ2が導通すると、第2の外付けダイオードD2を経由して平滑コンデンサC2に流れ込んでいた電流が、第2の半導体スイッチQ2を経由して平滑コンデンサC2に流れ込むようになる(区間T43−T44、T47−T48、T51−T52、T55−T56、T59−T60、T63−T64、T67−T68を参照)。
dt1時間が経過して、第2のパルス信号P2(SP)がオフすると、第2の半導体スイッチQ2が非導通となる。第2の半導体スイッチQ2が非導通となると、第2の半導体スイッチQ2を経由して平滑コンデンサC2に流れ込んでいた電流が、再び第2の外付けダイオードD2を経由して平滑コンデンサC2に流れ込む(区間T44−T45、T48−T49、T52−T53、T56−T57、T60−T61、T64−T65、T68−T69を参照)。
第2のパルス信号P2(SP)がオン,オフをする毎に、電力変換装置200は上述した動作を繰り返す。その結果、平滑コンデンサC2に流れ込む電流Iは、第1の半導体スイッチQ1がオフした直後と、第1の半導体スイッチQ1がオンする直前は、第2の外付けダイオードD2を経由して流れ、それ以外は、第2の半導体スイッチQ2を経由して流れる。
一方、入力電圧Vinの極性が負のときには、コントローラ110から第2の半導体スイッチQ2に対して第2のパルス信号P2(MP)が供給される。第2のパルス信号P2(MP)は、回路電流Iが最大電流規定値(PeakH)に達するまでオンし、最大電流規定値(PeakH)に達するとオフする。そして、その後、次のクロック信号CLKが入力されると、第2のパルス信号P2(MP)は、再びオンする。
また、入力電圧Vinの極性が負のときでかつ第2のパルス信号P2(MP)がオフのとき、コントローラ110から第1の半導体スイッチQ1に対して第1のパルス信号P1(SP)が供給される。第1のパルス信号P1(SP)は、回路電流Iがサブパルスオン規定値(PeakM)まで下降するとオンし、直前のクロック信号CLKから前記dt1時間が経過するとオフする。
以後、入力電圧Vinの極性が正となるまで、第1のパルス信号P1(SP)と第2のパルス信号P2(MP)は、上述したオン・オフの動作を繰り返す。
第2のパルス信号P2(MP)がオンすると、第2の半導体スイッチQ2が導通する。第2の半導体スイッチQ2が導通すると、交流電源101、インダクタL1、キャパシタC1、第2の半導体スイッチQ2及び平滑コンデンサC2の閉回路が形成される。このとき、平滑コンデンサC2の電圧は、交流電圧Vaより高い。その結果、平滑コンデンサC2の充電電圧が第2の半導体スイッチQ2及びインダクタL1を経由して交流電源101側に戻るように、電力変換装置100は動作する。このため、右上がりの直線的な電流が、平滑コンデンサC2側から第2の半導体スイッチQ2に流れる。
第2のパルス信号P2(MP)がオフすると、第2の半導体スイッチQ2が非導通になる。第2の半導体スイッチQ2が非導通になると、第2の半導体スイッチQ2を流れる電流はゼロとなる。このとき、インダクタL1は、リアクトルエネルギーにより引き続き電流を同方向に流し続けようとする。このため、第1の半導体スイッチQ1に並列接続された第1の外付けダイオードD1を経由してキャパシタC1に電流が流れ込む。
第2のパルス信号P2(MP)がオン,オフをする毎に、電力変換装置200は上述した動作を繰り返す。その結果、電力変換装置200は、キャパシタC1に電荷を補充する。
ここで、第2のパルス信号P2(MP)がオフし、回路電流Iがサブパルスオン規定値(PeakM)まで下降すると、第1のパルス信号P1(SP)がオンする。第1のパルス信号P1(SP)は、直前のクロック信号CLKから前記dt1時間が経過するまでオンしており、dt1時間が経過するとオフする。
第1のパルス信号P1(SP)がオンすると、第1の半導体スイッチQ1が導通する。第1の半導体スイッチQ1が導通すると、第1の外付けダイオードD1を経由してキャパシタC1に流れ込んでいた電流が、第1の半導体スイッチQ1を経由してキャパシタC1に流れ込むようになる。
直前のクロック信号CLKからdt1時間が経過して、第1のパルス信号P1(SP)がオフすると、第1の半導体スイッチQ1が非導通となる。第1の半導体スイッチQ1が非導通となると、第1の半導体スイッチQ1を経由してキャパシタC1に流れ込んでいた電流が、再び第1の外付けダイオードD1を経由してキャパシタC1に流れ込む。
第1のパルス信号P1(SP)がオン,オフをする毎に、電力変換装置200は上述した動作を繰り返す。その結果、キャパシタC1に流れ込む電流Iは、第2の半導体スイッチQ2がオフした直後と、第2の半導体スイッチQ2がオンする直前は、第1の外付けダイオードD1を経由して流れ、それ以外は、第1の半導体スイッチQ1を経由して流れる。
交流電圧Vaの極性は、正と負を交互に繰り返す。したがって、電力変換装置200は、平滑コンデンサC2を充電する作用とキャパシタC1に電荷を補充する作用とを交互に繰り返す。すなわち電力変換装置200は、キャパシタC1に電荷を補充した後に平滑コンデンサC2を充電する。したがって、平滑コンデンサC2を充電する際にはキャパシタC1に蓄えられた電荷が平滑コンデンサC2に移動する。このため、電力変換装置200の昇圧効果が加算される。よって、第1の実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
それに加えて、第2の実施形態の電力変換装置200では、第1の半導体スイッチQ1がオフした時点より第2の外付けダイオードD2に流れていた電流が、微小な遅延時間が経過すると第2の半導体スイッチQ2に流れる。そして、第1の半導体スイッチQ1がオンする直前で、再び、第2の外付けダイオードD2に流れる。同様に、第2の半導体スイッチQ2がオフしたことにより第1の外付けダイオードD1に流れていた電流が、第2の半導体スイッチQ2がオフした時点から微小な遅延時間経過後に第1の半導体スイッチQ1に流れる。そして、第2の半導体スイッチQ2がオンする直前で、再び、第1の外付けダイオードD1に流れる。
第1の半導体スイッチQ1と第2の半導体スイッチQ2は、外付けダイオードD1,D2と比べてオン抵抗が非常に小さい。したがって、電力変換装置200は、第1の実施形態の電力変換装置100と比較して、より一層の電力変換効率を高めることができる。
なお、第1の半導体スイッチQ1がオン,オフするタイミングと第2の半導体スイッチQ2がオフ,オンするタイミングとを一致させると、電力変換効率はより一層高まる。しかし、半導体スイッチQ1,Q2は、特性のばらつきにより、同時にオンする可能性がある。第1の半導体スイッチQ1と第2の半導体スイッチQ2とが同時にオンすると、貫通電流が流れて回路がショートする。
このような不具合を防止するために、電力変換装置200は、第1の半導体スイッチQ1がオフしたときには微小な遅延時間を空けて第2の半導体スイッチQ2がオンするようにしている。逆に、第2の半導体スイッチQ2がオフしたときには微小な遅延時間を空けて第1の半導体スイッチQ1がオンするようにしている。したがって、第1の半導体スイッチQ1と第2の半導体スイッチQ2とが同時にオンする区間が発生することはないので、回路がショートするような不具合は起こりえない。
[第3の実施形態]
次に、第3の実施形態を、図10〜図11を用いて説明する。なお、第3の実施形態における電力変換装置300の回路構成は、第1の実施形態と同様なので図1を代用し、共通部分には同一符号を付してその詳しい説明を省略する。
第3の実施形態は、サブパルス信号SPの生成方法が第2の実施形態と異なる。第3の実施形態におけるサブパルス信号SPの生成方法を、図10を用いて説明する。図10は、入力電圧Vinの極性が正のときの最大電流規定値(PeakH)のエンベロープ曲線Peと、回路電流Iと、クロック信号CLKと、メインパルス信号としての第1のパルス信号P1(MP)と、サブパルス信号としての第2のパルス信号P2(SP)とのごく一部を示している。
第1のパルス信号P1(MP)は、時点T31に示すように、クロック信号CLKに同期してオンし、時点T32に示すように、回路電流Iが最大電流規定値(PeakH)に達するとオフする。第2のパルス信号P2(SP)は、時点T33に示すように、回路電流Iが最大電流規定値(PeakH)に達してから微小なdt2時間経過するとオンし、時点T34に示すように、直前のクロック信号CLKからdt1時間を経過するとオフする。dt1時間は、クロック信号CLKの1周期よりも若干短い時間である。
すなわち、サブパルス信号SPは、回路電流Iが最大電流規定値(PeakH)に達してから微小なdt2時間を経過するとオンし、直前のクロック信号CLKから該クロック信号CLKの1周期よりも若干短いdt1時間を経過するとオフするように生成する。
こうすることにより、第1のパルス信号P1(MP)の立下りと第2のパルス信号P2(SP)の立ち上がりとの間に、微小の遅延時間(T32−T33)が生成される。また、第2のパルス信号P2(SP)の立下りと第1のパルス信号P1(MP)の立ち上がりとの間に、微小の遅延時間(T34−T35)が生成される。したがって、第1のパルス信号P1(MP)と第2のパルス信号P2(SP)とが同時にオンすることはない。
図11は、コントローラ110の制御手順を示す流れ図である。図11は、第2の実施形態で説明した図8に対応する。そして、第2の実施形態と共通する部分には同一符号を付している。また、第2の実施形態で説明した図7に示す処理ステップST21〜ST32は、第3の実施形態でも適用される。すなわち、負荷104への電力供給開始(パルス出力周期の開始)のタイミングになると、コントローラ110は、第2の実施形態で説明したステップST21〜ST32の処理を実行する。
図11と図8とを比較すれば明らかなように、電力変換装置300のコントローラ110は、ステップST34またはST35のメインパルス信号としての第1のパルス信号P1(MP)または第2のパルス信号P2(MP)がオフした後の処理が、第2の実施形態と異なる。すなわち、第3の実施形態では、コントローラ110は、ステップST51として内蔵の第2のタイマT2による計時動作をスタートさせる。そして、ステップST52としてこの第2のタイマT2が前記dt2時間を計時するのを待機する。第2のタイマT2が前記dt2時間を計時すると(ST52のYES)、コントローラ110は、第2の実施形態で説明したステップST39の処理に進む。すなわち、入力電圧Vinの極性が正であるか負であるかを判定し、入力電圧Vinの極性が正である場合には(ST39のYES)、コントローラ110は、ステップST40として第2のパルス信号P2(SP)をオンする。入力電圧Vinの極性が負である場合には(ST39のNO)、コントローラ110は、ステップST41として第1のパルス信号P1(SP)をオンする(パルス信号出力手段)。以後、第2の実施形態のステップST42〜ST45と同様な処理を実行して、第1のパルス信号P1(SP)または第2のパルス信号P2(SP)をオフする。
こうして、サブパルス信号SPとしての第1のパルス信号P1(SP)または第2のパルス信号P2(SP)がオフすると、次の1周期に移行するべく、コントローラ110は、この制御手順の最初の処理ステップST21に戻る。
かかる構成の電力変換装置300においても、第2の実施形態の電力変換装置200と同一の作用効果を奏し得る。
[第4の実施形態]
次に、第4の実施形態を、図12〜図14を用いて説明する。なお、第4の実施形態における電力変換装置400の回路構成は、第1の実施形態と同様なので図1を代用し、共通部分には同一符号を付してその詳しい説明を省略する。
図12は、電力変換装置400において、入力電圧Vin及び回路電流Iと、第1及び第2のパルス信号P1,P2との関係を示す波形図である。図12において、区間T1〜T2は、交流電圧Vaの極性が正の区間である。この区間のとき、コントローラ110は、交流電圧Vaの周期よりはるかに高い周波数で第1のパルス信号P1を生成する。本実施形態では、このときの第1のパルス信号P1を、第1の半導体スイッチQ1に対するメインパルス信号MPと称する。また、この区間内の区間T4〜T5に示すように、インダクタL1を流れる回路電流Iが所定の値SHLを超えるとき、コントローラ110は、第1のパルス信号P1がオフする毎に第2のパルス信号P2を生成する。本実施形態では、このときの第2のパルス信号P2を、第2の半導体スイッチQ2に対するサブパルス信号SPと称する。
図12において、区間T2〜T3は、交流電圧Vaの極性が負の区間である。この区間のとき、コントローラ110は、交流電圧Vaの周期よりはるかに高い周波数で第2のパルス信号P2を生成する。本実施形態では、このときの第2のパルス信号P2を、第2の半導体スイッチQ2に対するメインパルス信号MPと称する。また、この区間内の区間T6〜T7に示すように、インダクタL1を流れる回路電流Iが所定の値SHLを超えるとき、コントローラ110は、第2のパルス信号P2がオフする毎に第1のパルス信号P1を生成する。本実施形態では、このときの第1のパルス信号P1を、第1の半導体スイッチQ1に対するサブパルス信号SPと称する。
すなわち、本実施形態においても、交流電圧Vaの極性が正のとき、第1の半導体スイッチQ1が導通・非導通を繰り返す。交流電圧Vaの極性が負のとき、第2の半導体スイッチQ2が導通・非導通を繰り返す。その結果、インダクタL1を流れる回路電流Iは、入力電圧Vinと相似形の正弦波となる。
図13は、コントローラ110における制御手順の要部を示す流れ図である。図13は、第3の実施形態で説明した図11に対応する。そして、第3の実施形態と共通する部分には同一符号を付している。また、第2の実施形態で説明した図7に示す処理ステップST21〜ST32は、第4の実施形態でも適用される。すなわち、負荷104への電力供給開始(パルス出力周期の開始)のタイミングになると、コントローラ110は、第2の実施形態で説明したステップST21〜ST32の処理を実行する。
図13と図11とを比較すれば明らかなように、電力変換装置400のコントローラ110は、ステップST52の第2のタイマT2が前記dt2時間を計時した後の処理が、第3の実施形態と異なる。すなわち、第4の実施形態では、コントローラ110は、ステップST53として、現時点の最大電流規定値(PeakH)が予め設定された任意のしきい値SHLを超えているか否かを判定する(判定手段)。
最大電流規定値(PeakH)がしきい値SHLを超えていない場合(ST53のNO)、コントローラ110は、次の1周期に移行するべく、この制御手順の最初の処理ステップST21に戻る。
一方、最大電流規定値(PeakH)がしきい値SHLを超えている場合には(ST53のYES)、コントローラ110は、第2の実施形態で説明したステップST39の処理に進む。すなわち、入力電圧Vinの極性が正であるか負であるかを判定し、入力電圧Vinの極性が正である場合には(ST39のYES)、コントローラ110は、ステップST40として第2のパルス信号P2(SP)をオンする。入力電圧Vinの極性が負である場合には(ST39のNO)、コントローラ110は、ステップST41として第1のパルス信号P1(SP)をオンする(パルス信号出力手段)。以後、第2の実施形態のステップST42〜ST45と同様な処理を実行して、第1のパルス信号P1(SP)または第2のパルス信号P2(SP)をオフする。
こうして、サブパルス信号SPとしての第1のパルス信号P1(SP)または第2のパルス信号P2(SP)がオフすると、次の1周期に移行するべく、コントローラ110は、この制御手順の最初の処理ステップST21に戻る。
かかる構成の電力変換装置400においても、入力電圧Vinの極性が正のときには、第2または第3の実施形態と同様に、コントローラ110から第1の半導体スイッチQ1に対してメインパルス信号MPとしての第1のパルス信号P1(MP)が供給される。
また、入力電圧Vinの極性が正のときでかつ第1のパルス信号P1(MP)がオフのとき、コントローラ110から第2の半導体スイッチQ2に対してサブパルス信号SPとしての第2のパルス信号P2(SP)が供給される点も第2または第3の実施形態と同様である。ただし、第4の実施形態においては、最大電流規定値(PeakH)が所定のしきい値SHLを超えたときだけ、第2の半導体スイッチQ2に対してサブパルス信号SPである第2のパルス信号P2(SP)が供給される。
図14は、入力電圧Vinの極性が正のときの入力電流Iと、クロック信号CLKと、第1のパルス信号P1(MP)と、第2のパルス信号P2(SP)と、第1の半導体スイッチQ1を流れる電流と、第2の外付けダイオードD2を流れる電流と、第2の半導体スイッチQ2を流れる電流とを示している。なお、電力変換装置400は、その一態様として、交流電源101の周波数を50Hzとし、第1及び第2の半導体スイッチQ1,Q2のスイチッング周波数を100kHzとする。ただし、図で100kHzの動作を表現しようとすると細かくなりすぎるので、便宜上、非常に粗い周期で記載している。
図14に示すように、回路電流Iに対する最大電流規定値(PeakH)のエンベロープ曲線Peは、入力電圧Vinの波形と相似形の正弦波状になる。そして、メインパルス信号MPとしての第1のパルス信号P1(MP)は、クロック信号CLKに同期してオンすると(時点T71,T73,T75,T79,T83,T87,T91,T93を参照)、回路電流Iが最大電流規定値(PeakH)に達するまで、オン状態を維持する。
回路電流Iが最大電流規定値(PeakH)に達すると(時点T72,T74,T76,T80,T84,T88,T92を参照)、第1のパルス信号P1(MP)はオフする。その後、次のクロック信号CLKが入力されると(時点T73,T75,T79,T83,T87,T91,T93を参照)、第1のパルス信号P1(MP)は、再びオンする。以後、入力電圧Vinの極性が負となるまで、メインパルス信号MPとしての第1のパルス信号P1(MP)は、上述したオン・オフの動作を繰り返す。
一方、第2のパルス信号P2(SP)は、回路電流Iの最大電流規定値(PeakH)がしきい値SHLを超えるまではオフしている。そして、最大電流規定値(PeakH)がしきい値SHLを超えた後、回路電流Iが最大電流規定値(PeakH)に達してから微小のdt2時間を経過すると(時点T77,T81,T85,T89を参照)、第2のパルス信号P2は、サブパルス信号SPとしてオンする。そして、直前のクロック信号CLKから所定のdt1時間が経過すると(時点T78,T82,T86,T90を参照)、第2のパルス信号P2(SP)はオフする。以後、回路電流Iの最大電流規定値(PeakH)がしきい値SHLより低下するまで、サブパルス信号SPとしての第2のパルス信号P2(SP)は、上述したオン・オフの動作を繰り返す。
第1のパルス信号P1(MP)がオンすると、第1の半導体スイッチQ1が導通する。第1の半導体スイッチQ1が導通すると、交流電源101、インダクタL1、キャパシタC1及び第1の半導体スイッチQ1の閉回路が形成される。その結果、インダクタL1の線形リアクトル作用により、右上がりの直線的な電流が、キャパシタC1側から第1の半導体スイッチQ1に流れる(区間T71−T72、T73−T74、T75−T76、T79−T80、T83−T84、T87−T88、T91−T92を参照)。
第1のパルス信号P1(MP)がオフすると、第1の半導体スイッチQ1が非導通になる。第1の半導体スイッチQ1が非導通になると、第1の半導体スイッチQ1を流れる電流はゼロとなる。このとき、インダクタL1は、リアクトルエネルギーにより引き続き電流を同方向に流し続けるようとする。このため、第2の半導体スイッチQ2に並列接続された第2の外付けダイオードD2を経由して平滑コンデンサC2に電流が流れ込む(区間T72−T73、T74−T75、T76−T79、T80−T83、T84−T87、T88−T91、T92−T93を参照)。
第1のパルス信号P1(MP)がオン,オフをする毎に、電力変換装置100は上述した動作を繰り返す。その結果、電力変換装置100は、出力端子102,103間の出力電圧Voutを昇圧しながら、平滑コンデンサC2を充電する。
ここで、回路電流Iの最大電流規定値(PeakH)がしきい値SHLを超えたとき、第1のパルス信号P1がオフしてから微小なdt2時間が経過すると、第2のパルス信号P2(SP)がオンする。第2のパルス信号P2(SP)は、直前のクロック信号CLKから所定のdt1時間が経過するまでオンしており、dt1時間が経過するとオフする。
第2のパルス信号P2(SP)がオンするまでは、第2の外付けダイオードD2を経由して平滑コンデンサC2に電流が流れ込む(区間T76−T77、T80−T81、T84−T85、T88−T89を参照)。第2のパルス信号P2(SP)がオンすると、第2の半導体スイッチQ2が導通する。第2の半導体スイッチQ2が導通すると、第2の外付けダイオードD2を経由して平滑コンデンサC2に流れ込んでいた電流が、第2の半導体スイッチQ2を経由して平滑コンデンサC2に流れ込むようになる(区間T77−T78、T81−T82、T85−T86、T89−T90を参照)。
直前のクロック信号CLKから所定のdt1時間が経過して、第2のパルス信号P2(SP)がオフすると、第2の半導体スイッチQ2が非導通となる。第2の半導体スイッチQ2が非導通となると、第2の半導体スイッチQ2を経由して平滑コンデンサC2に流れ込んでいた電流が、再び第2の外付けダイオードD2を経由して平滑コンデンサC2に流れ込む(区間T78−T79、T82−T83、T86−T87、T90−T91を参照)。
第2のパルス信号P2(SP)がオン,オフをする毎に、電力変換装置400は上述した動作を繰り返す。その結果、回路電流Iの最大電流規定値(PeakH)がしきい値SHLを超えたとき、平滑コンデンサC2に流れ込む電流Iは、第1の半導体スイッチQ1がオフした直後と、第1の半導体スイッチQ1がオンする直前は、第2の外付けダイオードD2を経由して流れ、それ以外は、第2の半導体スイッチQ2を経由して流れる。
このように、電力変換装置400は、回路電流Iが多いときにサブパルス信号SPを発生させて、外付けダイオードD1,D2を流れる電流を第1の半導体スイッチQ1または第2の半導体スイッチQ2でバイパスするようにしている。回路電流Iが少ないときには、第1の半導体スイッチQ1または第2の半導体スイッチQ2で電流をバイパスする効果は薄い上、半導体スイッチQ1,Q2を駆動するための電力が必要となる。そこで、第4の実施形態のように、回路電流Iが多いときにサブパルス信号SPを発生させることで、電力変換装置400は、第2または第3の実施形態の電力変換装置200,300よりも効率を高めることが可能となる。
以下、前記各実施形態の変形例について説明する。
例えば第4の実施形態では、回路電流Iが最大電流規定値(PeakH)に達した後、微小なdt2時間が経過すると、サブパルス信号SPとしての第1のパルス信号P1(SP)または第2のパルス信号(SP)をオンするようにした。この点については、第2の実施形態のように、最大電流規定値(PeakH)よりも若干低いサブパルスオン規定値(PeakM)を設定し、回路電流Iが最大電流規定値(PeakH)に達した後、サブパルスオン規定値(PeakM)まで低下すると、サブパルス信号SPとしての第1のパルス信号P1(SP)または第2のパルス信号(SP)をオンするようにしてもよい。この場合、第2のタイマT2を省略できる。
また、各実施形態では、交流電源として100Vの商用電源(50Hz/60Hz)を入力電源としたが、交流電源は、100Vの商用電源に限定されるものではない。例えば、200〜220Vの商用電源(50Hz/60Hz)を入力電源とし、所望の直流電圧に変換して負荷へ電力を供給する電力変換装置であってもよい。
図15に、100Vの交流電源と200Vの交流電源を印加した場合の始動時の電圧変化を示す。100Vの交流電源を印加した場合、平滑コンデンサC2にチャージアップされる電圧は、図15中E1に示すように略200Vとなる。これに対し、200Vの交流電源を印加した場合に平滑コンデンサC2にチャージアップされる電圧は、図15中E2に示すように略400Vとなる。しかしいずれの場合においても、スイッチング動作を開始すると(時点t0)、その出力電圧は、リファレンス電圧(この例では600V)に等しくなるように制御がかかる。
また、各実施形態では、図1に示す回路を基本構成としたが、基本構成の回路は図1のものに限定されるものではない。基本構成の他の回路例を、図16及び図17に示す。
図16は、第1の半導体スイッチQ1に対して並列に接続されていた第1の外付けダイオードD1と、第2の半導体スイッチQ2に対して並列に接続されていた第2の外付けダイオードD1とを省略した場合である。半導体スイッチQ1,Q2は、ボディダイオードを内蔵している。そこで、図16の回路は、外付けダイオードD1,D2の代わりに、半導体スイッチQ1,Q2のボディダイオードを利用する。
図17は、第1のパルス信号P1及び第2のパルス信号P2でスイッチング動作する一対のスイッチとして、半導体スイッチQ1,Q2の代わりに、機械的スイッチS1,S2を使用した例である。なお、機械的スイッチS1,S2の代わりに、トライアックのようなボディダイオードを有しない半導体スイッチを適用することも可能である。
また、例えば、交流電源101に接続されるインダクタL1とキャパシタC1とは直列接続である。そこで、交流電源101の一端にキャパシタC1の一端を接続し、キャパシタC1の他端にインダクタl1を介して半導体スイッチQ1または機械的スイッチS1を接続することも可能である。
また、回路電流Iを検出する位置は、各実施形態の位置に限定されるものではない。例えば、交流電源101の一端に電流検出部501,602を介してインダクタL1を接続し、交流電源101の他端にキャパシタC1を接続して、交流電源101とインダクタL1との間を流れる電流を回路電流Iとして検出してもよい。
あるいは、インダクタL1に対して2次巻線L2を配置し、この2次巻線L2に発生する電圧から回路電流Iを検出してもよい。
また、第1の半導体スイッチQ1及び第2の半導体スイッチQ2に対してそれぞれ低抵抗R1,R2を接続し、低抵抗R1,R2毎にその両端にピーク電流検出部81,82を接続する。そして、低抵抗R1,R2を流れる電流を電圧値に変換して、ピーク電流を検出してもよい。
この他、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。