JP5500197B2 - レーザリフトオフ方法およびレーザリフトオフ装置 - Google Patents
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Description
GaNは分解温度(約800°C)まで温度が上昇するとガリウム(Ga)と窒素(N2)に分解する。LLOは、基板のサファイアとGaNの界面にGaNのみが吸収する波長の高強度レーザパルスをサファイア側から照射することにより、界面のGaNのみ分解温度以上に上昇させGaNからサファイアを剥離する方法である。
レーザリフトオフ装置10は、パルスレーザを発生するレーザ源20、レーザ源20からのレーザLを入射して、1パルスあたりのエネルギー(パルスエネルギー)を計測するエネルギー計測器60、レーザLを所定の形状に成形するためのレーザ光学系40、ワークWが載置されるワークステージ31、ワークステージ31を搬送する搬送機構32、エネルギー計測器60により測定したパルスエネルギーに基づいてレーザ源20から出射するレーザLのパルスエネルギーの制御や、搬送機構32の動作を制御するレーザリフトオフ装置の制御部50などを備えている。上記エネルギー計測器60としては、例えば、フォトダイオード、パイロエレクトリックセンサ等を用いることができる。
レーザ光学系40の先にはワークWを載置するワークステージ31が設けられている。ワークステージ31は搬送機構32によりXY方向(図面左右手前奥方向)に移動する。
レーザ源20は、放電によりレーザを生成するレーザガスチャンバ201、レーザガスチャンバ201に放電のための電力を供給する電源202、電源等を制御するコントローラ203を備える。
例えば、パルスエネルギーが30mJのレーザを照射する場合、レーザリフトオフ装置は次のような制御を行う。
レーザリフトオフ装置の制御部50は、レーザ源20のコントローラ203に対し、30mJのパルスエネルギーのレーザLを照射するように信号を送る。
コントローラ203は、この信号に基づき、電源202に対し、レーザLのパルスエネルギーが30mJになるような電圧、例えば18kVを出力するように信号を送る。
電源202は、チャンバ201に対して18kVの電圧を印加する。チャンバ201内で放電が発生し、チャンバ201からレーザLが出射する。
レーザLがエネルギー計測器60に入射する。エネルギー計測器60はレーザLのパルスエネルギーを測定し、その値をコントローラ203に送る。
コントローラ203は、エネルギー計測器60からのパルスエネルギー量が30mJになるように、フィードバック制御を行う。なお、電源電圧を制御するほか、例えばチャンバ201のガス圧を制御して出力エネルギーを制御することもできる。
ワークステージ31には、ワークWは、サポート基板3を下にして(ワークステージ31側にして)置かれ、レーザ光Lはサファイア基板1を介してGaN結晶層2に照射される。レーザ源20としては、例えば波長248nmを放射するKrF(クリプトンフッ素)エキシマレーザが用いられる。
そのため、レーザリフトオフ装置においても、ワークに対して照射するレーザの制御は、前記したように1パルスあたりのエネルギーを制御して行っていた。
図9は、レーザリフトオフ装置のレーザ源(例えばKrFエキシマレーザ)から出射する、レーザのパルス波形の一例である。同図は横軸が時間、縦軸がパワー(W)である。エネルギー計測器60により測定されるパルスエネルギー量は、この波形により囲まれた面積(図中斜線で示した部分)となる。
同図に示すように、レーザ光のパルス波形は、最初大きなピークを示した後、小さなピークを繰り返しながら減衰する。
ところが、表1に示すように、このようにパルスエネルギー量を一定に制御していても、サファイア基板からGaNの材料層を剥離できたり剥離できなかったりする現象が生じた。同表は、10個のサンプルワークに対してあらかじめ設定したパルスエネルギーでレーザ照射を行った時の、剥離したサンプルと剥離しなかったサンプルの数を示した表である。
このように、従来の1パルスのエネルギーを一定に制御する方法では、サファイア基板からGaNの結晶層を、全てのサンプルを、確実にかつクラックを発生させないで剥離する条件を見つけることが困難であった。
本発明は、上記した従来の問題点を解決し、基板上に材料層が形成されてなる前記基板を通してパルスレーザを照射し、前記基板と前記材料層との界面で前記材料層を前記基板から剥離するレーザリフトオフ処理において、基板から材料層を確実にかつクラックが生じないように剥離できるレーザ源の制御を実現することである。
上記のように、従来、レーザの出力の制御は1パルスのエネルギーが一定になるように、即ち、図9のレーザパルス波形(以下パルス波形とも呼ぶ)により囲まれた面積(図中斜線で示した部分)が一定になるように制御している。
しかし、レーザのパルス波形を詳しく調べてみると、例えば図10に示すように、1パルスのエネルギー量(波形の面積)は同じであるが、最初のピーク(第1のピーク)が少し低く、その分他の部分(第2、第3のピーク)が高くなったような波形が現れることがわかった。そして、このような第1のピークが低い場合に、材料層(GaN結晶層)がサファイア基板から剥離しないことがわかった。
図11に、レーザのパルス波形とGaNの温度を重ねて示す。
レーザが照射されたGaNの温度の温度は、大きなエネルギーを有する第1のピークに合せて上昇し、その頂点を越えた後も(GaNにエネルギーは流れ込むので)しばらくの間は上昇する。やがて、GaNに流れ込むエネルギー量よりも放熱により失われるエネルギー量のほうが大きくなり、GaNの温度は下降する。
レーザリフトオフ処理においては、サファイアは吸収しないがGaNは吸収する波長(例えば248nm)のレーザをサファイア側から短時間照射し、最も光を強く吸収する界面付近の温度を800°Cまで上昇させ、GaNを熱分解し、サファイアから剥離させる方法である。サファイア基板とGaNが剥離される最も温度の高くなる位置(サファイアとGaNの境界からGaN側に数10nmの位置)での微小時間Δtにおける熱収支を考えると、次の式のようになる。
温度変化量=K×{(レーザ光吸収エネルギー)―(熱伝導による流出エネルギー)}
ここで、K:比例定数
(レーザ光吸収エネルギー)>(熱伝導による流出エネルギー)から、(レーザ光吸収エネルギー)<(熱伝導による流出エネルギー)に変わるときである。
現在レーザリフトオフ処理に使用されているKrFエキシマレーザの典型的なパルス波形は、前記図11に示した通りであり、レーザ立ち上がりから約6nsで出力パワーのピークに到達し、その後減少しながら60nsまでレーザ発振が続く。
このような波形の場合、図11に示したGaNが最高温度になる時間Tはレーザパルスの立ち上がりから初めのピークを迎えた後の出力パワーの低下している間の10−20nsにある。すなわち、GaNが分解するかしないかは、GaNが最高温度になる時間Tまでのレーザパワーが決め、それ以降のレーザパワーはGaNの分解に寄与しないと考えられる。
上記温度が最高となる時間Tはレーザのパルス形状に依存するため、例えば最初のピークを迎えるまでの時聞が20nsになるようなレーザの場合、上記時間Tは30ns付近にあるだろうし、逆にピークまでの時聞が1nsであるようなレーザの場合は2ns付近にあるだろうと推定される。
そこで発明者らは、ワークに照射するレーザのエネルギー量を、1パルスのエネルギー量ではなく、GaNの温度が分解閾値以上でありクラックが発生しない温度になるような照射量になるように制御するようにした。具体的には、次のような制御が考えられる。
以下、このレーザのパルスの立ち上がりからGaNの温度が最も高くなるまでの時間範囲のエネルギーを、GaNの剥離に有効なエネルギーという意味で、「有効エネルギー」と呼ぶことがある。
(2)レーザ源としてKrFエキシマレーザを用いる場合、そのレーザパルス波形は前記した図10に示したような波形であり、このように波形形状の場合、前記有効エネルギーは、最初の(第1の)ピークの大きさに対応するものと考えられる。
そこで、レーザのパルス波形の最初のピークの高さが一定になる(あるいは、ある範囲内に入る)ように制御すれば、上記有効エネルギーもほぼ一定に保つことができる。
これにより、レーザ照射によりGaNが達する最高温度を剥離可能な最適な温度にすることができる。
そこで、本発明では、レーザリフトオフ装置にレーザパルスの波形を計測するためのパルス波形計測手段を設けた。そして、このパルス波形計測手段により、レーザパルス波形を計測して、レーザの照射量を制御可能とした。
これにより、上記有効エネルギーを求めたり、レーザの最初のピークの高さを計測し、クラックを生じさせることなくGaN結晶層をサファイア基板から剥離させることができるレーザの出力パワーを求め、レーザの照射量を制御することが可能となる。
(1)基板上に材料層が形成されてなる前記基板を通してパルスレーザを照射し、前記基板と前記材料層との界面で前記材料層を前記基板から剥離するレーザリフトオフ装置を以下のように構成する。
前記基板を透過すると共に前記材料層を分解するために必要な波長域のパルスレーザを発生するレーザ源と、前記パルスレーザが入射され、該パルスレーザのレーザパルス波形を測定するパルス波形計測手段と、前記パルス波形計測手段により計測されたレーザパルス波形を用いて該レーザパルス波形における各時点の出力パワーを求め、該出力パワーに基づき、前記材料層との界面で前記材料層を前記基板から剥離するに必要なレーザの照射量を求め、前記レーザ源を制御する制御部とを設ける。
(2)上記(1)において、レーザ源から出射するパルスレーザの1パルスあたりのエネルギー量を測定するエネルギー計測器を設け、前記制御部は、前記パルス波形計測手段により計測されたレーザパルス波形と、前記エネルギー計測器により計測されたエネルギー量に基づき、前記レーザパルス波形における各時点の出力パワーを求める。
(3)上記(1)(2)において、前記制御部に、レーザパルスの立ち上がり時点から予め定められた時間の範囲内のエネルギー量を演算する演算手段を設け、該エネルギー量が一定になるように前記レーザ源を制御する。
(4)上記(1)(2)において、前記レーザ源としてKrFエキシマレーザを用い、前記制御部に、レーザ波形のピーク値を求める手段を設け、該ピーク値が一定になるように前記レーザ源を制御する。
(5)上記(1)(2)に記載のレーザリフトオフ装置を用いたレーザリフトオフ方法において、前記基板を通して材料層に照射されるレーザパルス波形を計測し、レーザパルスの立ち上がり時点から予め定められた時間の範囲内のエネルギー量Eeを求める第1の工程と、計算されたエネルギー量が、一定になるように前記レーザ源を制御して、前記基板上に形成された材料層にレーザを照射する第2の工程によりレーザリフトオフを行う。
(6)上記(1)(2)に記載のレーザリフトオフ装置を用いたレーザリフトオフ方法において、前記レーザ源としてKrFエキシマレーザを用い、前記基板を通して材料層に照射されるレーザパルス波形を計測し、該レーザパルス波形に基づき、前記材料層を前記基板から剥離するに必要なレーザパルス波形における各時点の出力パワーのピーク値Pを求める第1の工程と、前記レーザパルス波形のピーク値が前記ピーク値Pになるように、前記レーザ源を制御して、前記基板上に形成された材料層にレーザを照射する第2の工程によりレーザリフトオフを行う。
(1)レーザリフトオフ装置に、レーザ源が出射するパルスレーザのパルス波形を測定するパルス波形計測手段と、前記パルス波形計測手段により計測されたレーザパルス波形を用いて該レーザパルス波形における各時点の出力パワーを求め、該出力パワーに基づき、前記材料層を前記基板から剥離するに必要なレーザの照射量を求め、前記レーザ源を制御する制御部とを設けたので、材料層の温度が最高温度となるまでの時間範囲のレーザの照射量を制御することができ、サファイア基板から材料層をクラックを生じさせることなく確実に剥離することができる。
(2)パルス波形計測手段に加えて、レーザ源から出射するパルスレーザの1パルスあたりのエネルギー量を測定するエネルギー計測器を設けることにより、レーザパルス波形における各時点の出力パワーを、容易に、かつ、精度よく求めることができる。
(3)レーザのパルスの立ち上がりから材料層の温度が最も高くなるまでの時間範囲のエネルギーの値が一定になるように制御することにより、各レーザ照射において、材料層の到達温度を所望の一定の温度にすることができる。したがって、サファイア基板から材料層を、クラックを生じさせることなく、確実に剥離することができる。
(4)KrFエキシマレーザにおいて、材料層を前記基板から剥離するに必要なレーザ波形における各時点の出力パワーのピーク値Pを求め、前記レーザ波形のピーク値がピーク値Pになるように、前記レーザ源を制御することにより、上記(3)と同様、各レーザ照射において、材料層の到達温度を所望の一定の温度にすることができ、サファイア基板から材料層を、クラックを生じさせることなく、確実に剥離することができる。
パルス波形計測器70は、前記図9に示したようなレーザパルス波形の形状を計測するための手段であり、パルス波形計測器70としては例えばバイプラナ光電管等を用いることができる。
なお、パルス波形計測器70は応答速度がはやく、レーザパルス波形の形状は計測できるが、計測されたレーザパルス波形の波高値(例えば電圧値)は必ずしもレーザパルスの出力パワー(W)に対応したものにはならない。そこで、上記パルス波形計測器70により計測されたレーザパルス波形(例えば電圧値)を出力パワー(W)に換算する必要がある。
このため、エネルギー計測器60によりレーザパルスの1パルスあたりのエネルギー量を求め、この値に基づきパルス波形計測器70により計測されたレーザパルス波形の大きさを校正することが望ましい。なお、予め、上記電圧値を出力パワー(W)に変換する換算表等を用意しておき、計測されたレーザパルス波形の大きさをエネルギー量に換算してもよい。
レーザ光学系40は、レーザLを所定の形状に成形し、前記図7で説明したように、ワークステージ31上に載置されたワークWにレーザLを照射する。
レーザ光学系40の先には前記したようにワークWを載置するワークステージ31が設けられている。ワークステージ31は搬送機構32によりXY方向(図面左右手前奥方向)に移動する。
図1に示すレーザリフトオフ装置には、前記したようにレーザ源20のレーザ出射側に、エネルギー計測器60に加えてパルス波形計測器70が取り付けられている。なお、同図では、エネルギー計測器60の次にパルス波形計測器70を設けているが、パルス波形計測器70の次にエネルギー計測器60を配置してもよい。なお、後述するように、エネルギー計測器60を設けず、パルス波形計測器70の出力(例えば電圧値)を、換算表等を用いて出力パワー(W)に換算して、パルスエネルギー量を求めるようにしてもよい。
また、制御部50は入力部502を備えており、入力部502には、例えば実験や計算で求めたレーザのパルスの立ち上がりからGaNの温度が最も高くなるまでの時間Tや、制御したい目標となる有効エネルギーの値が入力される。
演算部501は、入力部502に入力された時間Tと、エネルギー計測器60により計測されたパルスエネルギー量と、パルス波形計測器70により計測されたレーザパルス波形とから、レーザのパルスの立ち上がりから時間Tまでのエネルギー量(有効エネルギー量)を計算する。そして、計算した有効エネルギーの値と、上記目標となる有効エネルギー(目標エネルギー)の値の差に応じて、上記レーザ源20を制御して計算された有効エネルギーが上記目標エネルギーに一致するように(あるいは、その差がある範囲内に入るように)制御する。
まず、レーザパルスの立ち上がりからGaNの温度が最も高くなるまでの時間T(図11参照)を設定する。この時間Tは、ワークの種類(大きさや厚さなどの違い)により異なる。本実施例に使用したワークについては、実験や計算などから、レーザパルスの立ち上がりからGaNの温度が最も高くなるまでの時間は、前記図12で説明したように、10nsから15nsの範囲と考えられ、ここでは、時間T=12nsとした。
表2にその結果について示す。同表は、複数のサンプルワークに対してあらかじめ設定した有効エネルギーでレーザ照射を行った時の、剥離したサンプルと剥離しなかったサンプルの数を示した表である。
この結果より、有効エネルギー量が13.6mJ以上であれば、GaNを確実に剥離することができる。しかし、エネルギー量が大きくなるとクラックが生じることが考えられる。そのため、有効エネルギー量を、13.6mJから14.0mJの範囲の値に設定しておけば、サファイア基板からGaNの結晶層を、確実にかつクラックが生じないように剥離できる。
制御部50は、まず、レーザ源20のコントローラ203に対し、レーザLを照射するように信号を送る。コントローラ203は、この信号に基づき、レーザLのパルスエネルギー量が予め設定された値になるような電圧を出力するように信号を送り、電源202は、チャンバ201に対して、レーザLのパルスエネルギー量が予め設定された値になるような電圧を印加する。チャンバ201内で放電が発生し、チャンバ201からレーザLが出射する。
制御部50の演算部501は、パルスエネルギー量とレーザパルス波形に基づき、前記時間Tのエネルギー量(有効エネルギー量Ee)を演算する。制御部50は、この演算により求めた有効エネルギー量Eeと、入力している有効エネルギー量の設定値Eesp(例えば13.8mJ)とを比較し、有効エネルギー量Eeが13.8mJになるように、コントローラ203に対してレーザLのパルスエネルギーのフィードバック制御を行う。
このような制御をおこなうことにより、環境の変化等によりレーザパルス波形が変化し、有効エネルギー量が変化しても、有効エネルギー量が13.8mJになるようフィードバック制御され、有効エネルギー量を一定(もしくはある範囲内)に制御することができる。
図2は本発明のレーザリフトオフ装置における制御部の具体的構成例を示す図であり、同図により本発明の第1の実施例について説明する。
レーザ源20は前記したようにチャンバ201、チャンバに放電のための電力を供給する電源202、電源を制御するコントローラ203を備え、コントローラ203により、電源202の充電電圧(あるいはチャンバ201のガス圧)を制御して、レーザ源20から出力されるレーザの出力パワーを制御する。
レーザ源20から出力されるレーザは、エネルギー計測器60、パルス波形計測器70を経てレーザ光学系40に入射し、ここでレーザビームの波形が整形され、ワークに照射される。レーザ源20から出力されるレーザの1パルスあたりのエネルギー量はエネルギー計測器60により計測され制御部50に送られる。また、レーザ源20から出力されるレーザパルスの波形は、パルス波形計測器70で計測され制御部50に送られる。
一方、入力部56から有効エネルギー量を計算する時間幅T(図11に示したGaN結晶層の温度が最高温度になるまでの時間)が入力されており、有効エネルギー計算部52は、上記パワー波形Wpと上記時間幅Tとから、レーザパルスの有効エネルギー量Eeを求める。
比較部53は、入力部57から与えられる目標有効エネルギー量Eesp(条件だしで得られた最適有効エネルギー量、例えば前記13.8mJ)と上記実測された有効エネルギー量Eeとを比較し、その差をレーザ出力エネルギー制御部54に送出する。レーザ出力エネルギー制御部54は、上記差に基づきレーザ源20を制御するレーザ源制御信号Ceを求めて出力する。
レーザ源20のコントローラ203は、レーザ源20から出力されるレーザ源制御信号Ceに基づき電源202(あるいはチャンバ201の圧力、あるいはレーザ光学系に配置したアテネータの透過率)を制御する。
差er=(有効エネルギー量Ee)−(目標有効エネルギー量Eesp)
上記レーザ出力エネルギー制御部54は、以下の演算を行い、レーザ源制御信号Ceを算出する。
レーザ源制御信号Ce=−K×(dE/dEe)×(差er)
ここで、Kは比例定数(ゲイン)、Eはレーザパルスの全エネルギー量、Eeは有効エネルギー量であり、(dE/dEe)は有効エネルギー量の変化量に対する全エネルギー量の変化量を表す。なお、レーザの全エネルギー量Eの変化量ΔEに対する有効エネルギーEeの変化量ΔEeは略比例関係にあることが確認されており、上記(dE/dEe)は略一定で、その値は実験等で求めることができる。
すなわち、有効エネルギー量Eeが目標有効エネルギー量Eespに一致するようにフィードバック制御され、有効エネルギー量Eeを一定(もしくはある範囲内)に制御することができる。
本変形例は、前記図2に示したものからエネルギー計測器60を除去し、パルス波形計測器70により計測したレーザパルス波形の各時点の波高値を電圧・パワー変換部55で出力パワーに換算するように構成したものである。電圧・パワー変換部55は、例えばパルス波形計測器70が出力するレーザパルスの大きさ(波高値)に対応した電圧を出力パワー(W)に変換する換算テーブル55aを備えており、パルス波形計測器70が出力する電圧を出力パワーに変換する。
上記換算テーブル55aは、例えば予め図示しないエネルギー計測器でレーザパルスの1パルスあたりのエネルギーを計測するとともに、パルス波形計測器70でレーザパルス波形を計測し、その結果からパルス波形計測器70の出力電圧と出力パワーの関係を求め、テーブルに記憶したものである。
その他の構成及び動作は、前記図2で説明したとおりであり、有効エネルギー量Eeが目標有効エネルギー量Eespに一致するようにレーザ源20を制御する。
しかし、要は、レーザ照射によりGaNが達する最高温度が一定になるように有効エネルギーを制御すればよく、他の方法も考えられる。
その一つとして、レーザのパルス波形の最初のピークの高さが一定になるように制御することが考えられる。
レーザ源として例えばKrFエキシマレーザを用いる場合、そのレーザパルス波形は概ね前記図9に示した波形であり、前記したようにレーザのパルス波形の最初のピークの高さが一定になるように制御することで、有効エネルギーもほぼ一定に制御されるものと考えられる。
すなわち、GaNの最高到達温度は有効エネルギーの大きさに依存し、有効エネルギーの大きさは照射するレーザのパルス波形における最初のピーク(第1のピーク)の高さに依存しており、最初のピークの高さが高いほど、GaNの最高到達温度は高くなり、最初のピークの高さが低いとGaNの最高到達温度は低くなると考えられる。
したがって、レーザパルスの最初のピーク値を制御することで、有効エネルギーを制御するのと同等の効果が得られるものと考えられる。
有効エネルギーとレーザパルスの最初のピークの高さPmaxは相関していると考えられるので、まず、実験等により、有効エネルギーEeと最初のピークの高さPmaxの関係を求めておく。
そして、前記表2により、GaNの結晶層を剥離できる有効エネルギーに対応したピーク値を設定する。この値をピーク値の設定値Pspとして、図4の入力部59から入力する。
図5にレーザパルス波形における第1のピークを示す。横軸は時間、縦軸はパワーである。
なお、パルスエネルギーを変化させ、レーザパルス波形における第1のピークの高さを変化させながらサンプルワークにレーザを照射し、GaNが剥離できるかどうかについて調べ、その結果から、サファイア基板からGaNの結晶層を、確実にかつクラックが生じないように剥離できる第1のピークの高さPmaxを求めてもよい。
レーザ源20から出力されるレーザは、エネルギー計測器60、パルス波形計測器70を経てレーザ光学系40に入射し、ここでレーザビームの波形が整形され、ワークに照射される。レーザ源20から出力されるレーザの1パルスあたりのエネルギー量はエネルギー計測器60により計測され制御部50に送られる。また、レーザ源20から出力されるレーザパルスの波形は、パルス波形計測器70で計測され制御部50に送られる。
ピーク値検出部58は、上記パワー波形Wpからレーザのパルス波形の最初のピークの高さPmaxを検出する。
比較部53は、入力部59から与えられる目標ピーク値Pspと、ピークの高さPmaxとを比較し、その差をレーザ出力エネルギー制御部54に送出する。
レーザ出力エネルギー制御部54は、上記差に基づきレーザ源20を制御するレーザ源制御信号Ceを求めて出力する。
差er=(ピークの高さPmax)−(目標ピーク値Psp)
上記レーザ出力エネルギー制御部54は、以下の演算を行い、レーザ源制御信号Ceを算出する。
レーザ源制御信号Ce=−K×(dE/dPmax)×(差er)
ここで、Kは比例定数(ゲイン)、Eはレーザパルスの全エネルギー量、Pmaxはレーザパルスの第1のピークの高さであり、(dE/dPmax)は第1のピークの高さの変化量に対する全エネルギー量の変化量を表す。
なお、前記したようにレーザの全エネルギー量Eの変化量ΔEに対する有効エネルギーEeの変化量ΔEeは比例関係にあることが確認されており、また、前記したように第1のピークの高さと有効エネルギーは対応しているものと考えられるから、前記(dE/dEe)と同様、上記(dE/dPmax)は略一定になるものと考えられる。
すなわち、ピークの高さPmaxが目標ピーク値Pspに一致するようにフィードバック制御され、ピークの高さPmaxを一定(もしくはある範囲内)に制御することができる。これにより、有効エネルギー量を一定にすることができる。
2 材料層(GaN結晶層)
3 サポート基板
10 レーザリフトオフ装置
20 レーザ源
31 ワークステージ
32 搬送機構
40 レーザ光学系
50 制御部
51,55 電圧・パワー変換部
52 有効エネルギー計算部
53 比較部
54 レーザ出力エネルギー制御部
56,57,59 入力部
58 ピーク値検出部
60 エネルギー計測器
70 パルス波形計測器
201 レーザガスチャンバ
202 電源
203 コントローラ
501 演算部
502 入力部
W ワーク
Claims (6)
- 基板上に材料層が形成されてなる前記基板を通してパルスレーザを照射し、前記基板と前記材料層との界面で前記材料層を前記基板から剥離するレーザリフトオフ装置であって、前記基板を透過すると共に前記材料層を分解するために必要な波長域のパルスレーザを発生するレーザ源と、
前記パルスレーザが入射され、該パルスレーザのレーザパルス波形を測定するパルス波形計測手段と、
前記パルス波形計測手段により計測されたレーザパルス波形を用いて該レーザパルス波形における各時点の出力パワーを求め、該出力パワーに基づき、前記材料層との界面で前記材料層を前記基板から剥離するに必要なレーザの照射量を求め、前記レーザ源を制御する制御部とを備えた
ことを特徴とするレーザリフトオフ装置。 - 前記レーザ源から出射するパルスレーザの1パルスあたりのエネルギー量を測定するエネルギー計測器を備え、
前記制御部は、前記パルス波形計測器により計測されたレーザパルス波形と、前記エネルギー計測器により計測されたエネルギー量に基づき、前記レーザパルス波形における各時点の出力パワーを求める
ことを特徴とする請求項1に記載のレーザリフトオフ装置。 - 前記制御部は、レーザパルスの立ち上がり時点から予め定められた時間の範囲内のエネルギー量を演算する演算手段を備え、該エネルギー量が一定になるように前記レーザ源を制御する
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のレーザリフトオフ装置。 - 前記レーザ源はKrFエキシマレーザであり、前記制御部は、レーザパルス波形のピーク値を求める手段を備え、該ピーク値が一定になるように前記レーザ源を制御する
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のレーザリフトオフ装置。 - 請求項1または請求項2に記載のレーザリフトオフ装置を用いたレーザリフトオフ方法であって、
前記基板を通して材料層に照射されるレーザパルス波形を計測し、レーザパルスの立ち上がり時点から予め定められた時間の範囲内のエネルギー量Eeを演算する第1の工程と、
前記エネルギー量Eeが、前記材料層を前記基板から剥離するに必要なエネルギー量となるように前記レーザ源を制御して、前記基板上に形成された材料層にレーザを照射する第2の工程からなる
ことを特徴とするレーザリフトオフ方法。 - 請求項1または請求項2に記載のレーザリフトオフ装置を用いたレーザリフトオフ方法であって、前記レーザ源はKrFエキシマレーザであり、
前記基板を通して材料層に照射されるレーザパルス波形を計測し、該レーザパルス波形に基づき、レーザパルス波形における各時点の出力パワーのピーク値Pを求める第1の工程と、
前記レーザ波形のピーク値Pが、前記材料層を前記基板から剥離するに必要な前記ピーク値になるように、前記レーザ源を制御して、前記基板上に形成された材料層にレーザを照射する第2の工程からなる
ことを特徴とするレーザリフトオフ方法。
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