JP5499435B2 - 相互相関判定方法、測位装置及び電子機器 - Google Patents

相互相関判定方法、測位装置及び電子機器 Download PDF

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Description

本発明は、受信信号判定方法、プログラム、測位装置及び電子機器に関する。
人工衛星を利用した測位システムとしては、GPS(Global Positioning System)が
広く知られており、携帯型電話機やカーナビゲーション装置等に内蔵された測位装置に利
用されている。GPSでは、GPS衛星から発信されているGPS衛星信号を捕捉・追尾
して、このGPS衛星信号に含まれる航法メッセージを復号し、復号した航法メッセージ
に含まれるGPS衛星の軌道情報及び時間情報をもとに、擬似距離を算出して現在位置を
算出する。
GPS衛星信号の捕捉(ときにGPS衛星の捕捉とも呼ばれる)は、受信信号とレプリ
カコードとの相関演算を行うことで実現される。レプリカコードは、測位装置内部で擬似
的に発生させた、捕捉しようとするGPS衛星信号に含まれるPRN(Pseudo Random No
ise)コードを模擬した信号である。捕捉しようとするGPS衛星信号が間違いなければ
、そのGPS衛星信号のPRNコードとレプリカコードとは一致し、間違っていれば一致
しない。そのため、相関演算で求められた相関値の大きさによって、GPS衛星信号の捕
捉に成功したか否かを判定することができる。
一般には、予め所定の閾値を設定しておき、相関演算で求められた相関値が閾値を超え
た場合に、GPS衛星信号の捕捉に成功したと判定する手法が用いられている。しかし、
GPS衛星信号のPRNコードとレプリカコードとが一致していない場合であっても、強
信号を受信可能な環境等においては、相関値が閾値を超えてしまう場合があり、実際には
GPS衛星信号の捕捉に失敗したにも関わらず、誤って捕捉に成功したものと判定してし
まう場合がある。この現象はクロスコリレーション(相互相関)と呼ばれ、測位精度を低
下させる大きな要因となる。
この問題を解決するための技術として、例えば特許文献1には、各GPS衛星からの受
信信号のドップラー周波数の差を判断材料として用いて、クロスコリレーションを検出す
る技術が開示されている。
特開2003−98244号公報
しかし、特許文献1に開示されている技術では、クロスコリレーションを検出するため
に、全ての衛星の組合せについてドップラー周波数の差を算出する必要があるため、捕捉
対象の衛星が数多く存在する場合には、演算量が増大するという問題があった。また、特
許文献1に開示されている技術は、強信号を受信することができる環境に測位装置が位置
していることを前提とした技術であり、弱信号しか受信することができない環境において
は、そのまま適用することができないという欠点がある。
本発明は、上述した課題に鑑みて為されたものである。
以上の課題を解決するための第1の発明は、異なる拡散符号で拡散変調された複数の測
位用信号のうちの何れかの測位用信号を受信することと、前記受信された測位用信号に対
して、前記複数の拡散符号のうちの一の拡散符号のレプリカコードを用いた相関演算を、
当該レプリカコードの位相をずらしつつ行うことと、前記相関演算により得られた相関値
の中の最大の相関値である全体ピーク値と、当該全体ピーク値の位相から1チップ以上離
れた相関値のうちの最大の相関値である離隔ピーク値とを選択することと、前記受信され
た測位用信号が前記一の拡散符号で拡散変調された測位用信号であるか否かを判定するた
めの前記全体ピーク値の閾値条件を、前記離隔ピーク値に基づいて可変することと、前記
全体ピーク値が前記閾値条件を満たすか否かを判定することにより、前記受信された測位
用信号が前記一の拡散符号で拡散変調された測位用信号であるか否かを判定することと、
を含む受信信号判定方法である。
また、第8の発明として、異なる拡散符号で拡散変調された複数の測位用信号のうちの
何れかの測位用信号を受信する受信部と、前記受信された測位用信号に対して、前記複数
の拡散符号のうちの一の拡散符号のレプリカコードを用いた相関演算を、当該レプリカコ
ードの位相をずらしつつ行う相関演算部と、前記相関演算により得られた相関値の中の最
大の相関値である全体ピーク値と、当該全体ピーク値の位相から1チップ以上離れた相関
値のうちの最大の相関値である離隔ピーク値とを選択する選択部と、前記受信された測位
用信号が前記一の拡散符号で拡散変調された測位用信号であるか否かを判定するための前
記全体ピーク値の閾値条件を、前記離隔ピーク値に基づいて可変する閾値条件可変部と、
前記全体ピーク値が前記閾値条件を満たすか否かを判定することにより、前記受信された
測位用信号が前記一の拡散符号で拡散変調された測位用信号であるか否かを判定する信号
判定部と、前記信号判定部によって測位用信号であると判定された信号を用いて現在位置
を測位する測位部と、を備えた測位装置を構成してもよい。
この第1の発明等によれば、受信した測位用信号に対して、複数の拡散符号のうちの一
の拡散符号のレプリカコードを用いた相関演算が、当該レプリカコードの位相をずらしつ
つ行われる。また、相関演算により得られた相関値の中から全体ピーク値と離隔ピーク値
とが選択され、受信した測位用信号が一の拡散符号で拡散変調された測位用信号であるか
否かを判定するための全体ピーク値の閾値条件が、離隔ピーク値に基づいて可変される。
そして、全体ピーク値が閾値条件を満たすか否かが判定されることにより、受信した測位
用信号が一の拡散符号で拡散変調された測位用信号であるか否かが判定される。
全体ピーク値から1チップ以上離れた相関値のうちの最大の相関値を離隔ピーク値とし
て選択した上で、全体ピーク値が、当該離隔ピーク値に基づいて可変に設定した閾値条件
を満たすか否かを判定するといった簡便な方法により、演算量を増大させることなくクロ
スコリレーションを適切に検出することができ、ひいては、測位精度を向上させることが
可能となる。
第2の発明は、第1の発明の受信信号判定方法における前記拡散符号はN個のチップで
構成されており、前記相関演算を行うことは、前記拡散符号をM(≧N)個のセルに分割
し、該セル単位で位相をずらしつつ前記相関演算を行うことであり、前記離隔ピーク値の
選択は、前記全体ピーク値の位相からM/N個以上離れたセルの相関値のうちの最大の相
関値を前記離隔ピーク値として選択することである受信信号判定方法である。
また、第9の発明として、第8の発明の測位装置における前記拡散符号はN個のチップ
で構成されており、前記相関演算部は、前記拡散符号をM(≧N)個のセルに分割し、該
セル単位で位相をずらしつつ前記相関演算を行い、前記選択部は、前記全体ピーク値の位
相からM/N個以上離れたセルの相関値のうちの最大の相関値を前記離隔ピーク値として
選択する測位装置を構成してもよい。
この第2の発明等によれば、N個のチップで構成される拡散符号をM(≧N)個のセル
に分割し、該セル単位で位相をずらしつつ相関演算が行われる。また、全体ピーク値の位
相からM/N個以上離れたセルの相関値のうちの最大の相関値が、離隔ピーク値として選
択される。従って、相関演算をセル単位で精細に行うが、この際、全体ピーク値のセルと
同一のチップに含まれるセルの相関値の中からは離隔ピーク値を選択しないようにする。
第3の発明は、第1又は第2の発明の受信信号判定方法における前記相関演算を行うこ
とは、積算時間を可変に相関値を積算することを含み、前記相関演算を行った際の積算時
間に対する前記離隔ピーク値が、前記相関演算時の積算時間に応じた相関値の変化の種類
として予め定められた複数種類の何れに該当するかを判定することを更に含み、前記閾値
条件を可変することは、前記種類毎に予め定められた前記閾値条件を可変する方法のうち
、前記判定された種類に対応する可変方法に従って前記閾値条件を可変することを含む受
信信号判定方法である。
また、第10の発明として、第8又は第9の発明の測位装置における前記相関演算部は
、演算した相関値を積算時間を可変に積算し、前記相関演算部による相関演算時の積算時
間に対する前記離隔ピーク値が、前記相関演算時の積算時間に応じた相関値の変化の種類
として予め定められた複数種類の何れに該当するかを判定する相関値種類判定部を更に備
え、前記閾値条件可変部は、前記種類毎に予め定められた前記閾値条件を可変する方法の
うち、前記相関値種類判定部により判定された種類に対応する可変方法に従って前記閾値
条件を可変する測位装置を構成してもよい。
この第3の発明等によれば、相関演算を行った際の積算時間に対する離隔ピーク値が、
相関演算時の積算時間に応じた相関値の変化の種類として予め定められた複数種類の何れ
に該当するかが判定される。そして、種類毎に予め定められた閾値条件を可変する方法の
うち、判定された種類に対応する可変方法に従って閾値条件が可変される。相関値の変化
の種類に応じて閾値条件を可変することで、クロスコリレーションの検出の確実性を高め
ることができる。
第4の発明は、第3の発明の受信信号判定方法における前記閾値条件は、前記離隔ピー
ク値に対する前記全体ピーク値の相対的な閾値に関する条件であり、前記可変方法は、少
なくとも前記積算時間と前記離隔ピーク値とを変数として前記相対的な閾値を算出する関
数で定められており、前記閾値条件を可変することは、前記相関演算を行った際の積算時
間と前記離隔ピーク値とを、前記判定された種類に対応する可変方法として定められた関
数の変数に代入することで、前記相対的な閾値を算出することであり、前記離隔ピーク値
に対する前記全体ピーク値の相対的な値が、前記算出された相対的な閾値を超える場合に
、前記受信された測位用信号が前記一の拡散符号で拡散変調された測位用信号であると判
定することを更に含む受信信号判定方法である。
また、第11の発明として、第10の発明の測位装置における前記閾値条件は、前記離
隔ピーク値に対する前記全体ピーク値の相対的な閾値に関する条件であり、前記可変方法
は、少なくとも前記積算時間と前記離隔ピーク値とを変数として前記相対的な閾値を算出
する関数で定められており、前記閾値条件可変部は、前記相関演算部による相関演算時の
積算時間と前記離隔ピーク値とを、前記相関値種類判定部により判定された種類に対応す
る可変方法として定められた関数の変数に代入することで、前記相対的な閾値を算出し、
前記信号判定部は、前記離隔ピーク値に対する前記全体ピーク値の相対的な値が、前記算
出された相対的な閾値を超える場合に、前記受信された測位用信号が前記一の拡散符号で
拡散変調された測位用信号であると判定する測位装置を構成してもよい。
この第4の発明等によれば、相関演算を行った際の積算時間と離隔ピーク値とが、判定
された種類に対応する可変方法として定められた関数の変数に代入されることで、相対的
な閾値が算出される。そして、離隔ピーク値に対する全体ピーク値の相対的な値が、算出
された相対的な閾値を超える場合に、受信された測位用信号が一の拡散符号で拡散変調さ
れた測位用信号であると判定される。
第5の発明は、第4の発明の受信信号判定方法における前記相関演算時の積算時間に応
じた相関値の変化の種類には、前記全体ピーク値が信号に対する相関値である場合の相関
値の変化を表した第1類型と、前記全体ピーク値がノイズに対する相関値である場合の相
関値の変化を表した第2類型とがあり、前記関数は実際の相関値の変化を模擬した数式モ
デルであって、前記第1類型の種類に対応する関数は線形の関数であり、前記第2類型の
種類に対応する関数は非線形の関数である受信信号判定方法である。
また、第12の発明として、第11の発明の測位装置における前記相関演算時の積算時
間に応じた相関値の変化の種類には、前記全体ピーク値が信号に対する相関値である場合
の相関値の変化を表した第1類型と、前記全体ピーク値がノイズに対する相関値である場
合の相関値の変化を表した第2類型とがあり、前記関数は実際の相関値の変化を模擬した
数式モデルであって、前記第1類型の種類に対応する関数は線形の関数であり、前記第2
類型の種類に対応する関数は非線形の関数である測位装置を構成してもよい。
この第5の発明等によれば、全体ピーク値が信号に対する相関値である場合(第1類型
)の相関値の変化として線形関数が、全体ピーク値がノイズに対する相関値である場合(
第2類型)の相関値の変化として非線形関数がそれぞれ対応付けられている。何れの関数
も、実際の相関値の変化を模擬した数式モデルであるため、実際の相関値の変化に従った
適切な閾値を算出することができる。
第6の発明は、第1〜第5の何れかの発明の受信信号判定方法における前記測位用信号
の受信において受信される通信信号のSNRの範囲の最低値が−150dBm以下である
受信信号判定方法である。
また、第13の発明として、第8〜第12の何れかの発明の測位装置における前記受信
部は、受信可能な通信信号のSNRの範囲の最低値が−150dBm以下である測位装置
を構成してもよい。
この第6の発明等によれば、受信可能な通信信号のSNRの範囲の最低値が−150d
Bm以下であるため、微弱な信号をも受信することができる、いわゆる超高感度の信号受
信が可能な性能下において、クロスコリレーションを適切に検出することが可能となる。
また、第7の発明として、第1〜第6の発明の受信信号判定方法を、測位装置に内蔵さ
れたコンピュータに実行させるためのプログラムを構成してもよいし、さらには、第14
の発明として、第8〜第13の何れかの発明の測位装置を備えた電子機器を構成してもよ
い。
以下、図面を参照して、本発明に好適な実施形態の一例を説明する。尚、以下では、測
位装置を備えた電子機器として携帯型電話機を例に挙げ、測位システムとしてGPSを用
いた場合について説明するが、本発明を適用可能な実施形態がこれに限定されるわけでは
ない。
1.機能構成
図1は、携帯型電話機1の機能構成を示すブロック図である。携帯型電話機1は、GP
Sアンテナ10と、GPS受信部20と、TCXO(Temperature Compensated Crystal
Oscillator)40と、ホストCPU(Central Processing Unit)50と、操作部60と
、表示部70と、携帯電話用アンテナ80と、携帯電話用無線通信回路部90と、ROM
(Read Only Memory)100と、RAM(Random Access Memory)110とを備えて構成
される。
GPSアンテナ10は、GPS衛星から発信されているGPS衛星信号を含むRF信号
を受信するアンテナであり、受信した信号をGPS受信部20に出力する。GPSアンテ
ナ10は、SNR(Signal-to-Noise Ratio)が−150dBm以下のGPS衛星信号を
受信可能な超高感度アンテナである。尚、GPS衛星信号は、衛星毎に異なる拡散符号の
一種であるPRNコードで直接スペクトラム拡散方式により変調された1.57542[
GHz]の通信信号である。PRNコードは、コード長1023チップ、繰返し周期1m
sの擬似ランダム雑音である。
GPS受信部20は、GPSアンテナ10から出力された信号に基づいて携帯型電話機
1の現在位置を測位する測位装置であり、いわゆるGPS受信機に相当する機能ブロック
である。GPS受信部20は、RF(Radio Frequency)受信回路部21と、ベースバン
ド処理回路部30とを備えて構成される。尚、RF受信回路部21と、ベースバンド処理
回路部30とは、それぞれ別のLSI(Large Scale Integration)として製造すること
も、1チップとして製造することも可能である。また、GPS受信部20は、いわゆる超
高感度GPSシステムであり、受信可能な信号の下限値として、少なくともSNRが−1
50dBm程度までは受信可能である。尚、それ以下のSNRの信号を受信可能なシステ
ムであってもよい。
RF受信回路部21は、高周波信号(RF信号)の回路ブロックであり、TCXO40
により生成された発振信号を分周或いは逓倍することで、RF信号乗算用の発振信号を生
成する。そして、生成した発振信号を、GPSアンテナ10から出力されたRF信号に乗
算することで、RF信号を中間周波数の信号(以下、「IF(Intermediate Frequency)
信号」と称す。)にダウンコンバートし、IF信号を増幅等した後、A/D変換器でデジ
タル信号に変換して、ベースバンド処理回路部30に出力する。
ベースバンド処理回路部30は、RF受信回路部21から出力されたIF信号に対して
相関処理等を行ってGPS衛星信号を捕捉・抽出し、データを復号して航法メッセージや
時刻情報等を取り出して測位演算を行う測位回路である。
図2は、ベースバンド処理回路部30の回路構成の一例を示す図である、ベースバンド
処理回路部30は、メモリ32と、相関演算処理部33と、コード生成部34と、CPU
35と、ROM36と、RAM37とを備えて構成される。
メモリ32は、RF受信回路部21から入力したIF信号を、CPU35からの制御信
号に従って所定時間間隔でサンプリングして格納する。
相関演算処理部33は、ミキサ331と、積算部332とを備えて構成され、メモリ3
2に格納されているIF信号のサンプリングデータと、コード生成部34から入力したレ
プリカコードとの相関を、例えばFFT演算を用いて算出するコヒーレント積算処理を行
い、このコヒーレント積算処理により得られた相関値を所定の積算時間「T」分(例えば
「1秒分」)積算して積算相関値「P」を算出するインコヒーレント積算処理を行う。
この際、相関演算処理部33は、1023チップのPRNコードを所定個のセル「C」
に分割し、該セル単位で位相をずらしつつ相関演算を行う。本実施形態では、セル「C」
の分割数を、PRNコートのチップ数である1023個の約2倍の2000個とする。従
って、隣接するセル同士は同じチップに含まれる可能性がある。しかし、2以上離れたセ
ル同士は必ず別のチップに含まれるセルとなる。一般化すれば、拡散符号であるPRNコ
ードはNチップで構成される。このPRNコードをM個のセルに分割する。よって、M/
N個以上離れたセル同士であれば、同じチップに含まれることはない。
ミキサ331は、メモリ32に格納されているIF信号のサンプリングデータと、コー
ド生成部34から入力したレプリカコードとを乗算して相関値を算出し、算出した相関値
を積算部332に出力する。
積算部332は、ミキサ331から入力した相関値を所定の積算時間「T」の間積算し
た積算相関値「P」を算出し、積算時間「T」が経過する毎に、積算相関値「P」をCP
U35へ出力する。積算部332は、ミキサ331から入力した相関値を積算するが、回
路的(メモリ容量的)に格納可能な値には限りがあるため、この限界値を超える積算はで
きない。そこで、本実施形態では、CPU35が、積算相関値「P」が積算限界値を超え
ることのないように、積算部332による積算を制御する。
具体的には、CPU35は、積算部332により積算された積算相関値「P」を常駐的
に監視しており、積算相関値「P」が積算限界値に近付く毎に、新たに積算する積算量を
段階的に調整する。具体的には、第1段階では既に格納されている積算値及び加算してい
く相関値を「1/2」とし、第2段階ではさらに「1/2」とし、といった処理を行う。
要は、格納されている積算値及び加算していく相関値のビット数をシフトしていき、有効
桁数(より正確には2ビットで表現した場合の有効桁数)を調整する。積算相関値「P」
が積算限界値に近づいたか否かの判定は、格納されている積算相関値のビット数が所定ビ
ット数に達したか否かで判定する。以下の説明では、この積算量の調整に係るパラメータ
「S」を「パワースケール」と称する。
コード生成部34は、CPU35からの制御信号に従って、捕捉対象のGPS衛星のP
RNコードを模擬したレプリカコードを生成し、生成したレプリカコードをミキサ331
に出力する。
CPU35は、測位演算を行って携帯型電話機1の現在位置を測位するプロセッサであ
る。具体的には、CPU35は、相関演算処理部33から出力された積算相関値「P」を
基に、GPS衛星信号に含まれるPRNコード及び搬送波周波数の位相を検出してGPS
衛星信号を捕捉・追尾する。そして、捕捉・追尾したGPS衛星信号のデータを復号して
航法メッセージを取り出し、当該航法メッセージに含まれるGPS衛星の軌道情報や時刻
情報等を基に擬似距離の演算や測位演算等を行って、携帯型電話機1の現在位置を測位す
る。
尚、本実施形態においては現在位置の測位演算そのものはCPU35で実行することと
して説明するが、CPU35で実行する処理の一部又は全てをホストCPU50で実行す
ることとしてもよいのは勿論である。
捕捉しようとするGPS衛星信号が間違いなければ、そのGPS衛星信号に含まれるP
RNコードとレプリカコードとは一致し(捕捉成功)、間違っていれば一致しない(捕捉
失敗)。そのため、算出された積算相関値「P」のピークを判定することによってGPS
衛星信号の捕捉が成功したか否かを判定でき、レプリカコードを次々に変更して、同じ受
信信号との相関演算を行うことで、GPS衛星信号を捕捉することが可能となる。
本実施形態では、CPU35は、以下の手順に従ってGPS衛星信号(GPS衛星)の
捕捉の成否を判定する。先ず、CPU35は、相関演算処理部33においてセル単位で位
相方向にずらして相関演算されたセル毎の積算相関値「P」の中から、積算相関値「P」
が最大となったセルである全体ピークセル「CT」と、当該全体ピークセルの積算相関値
である全体ピーク値「PT」とを選択する。
また、全体ピークセル「CT」から2セル以上離れたセルのうち、積算相関値「P」が
最大となったセルである離隔ピークセル「CF」と、当該離隔ピークセルの積算相関値で
ある離隔ピーク値「PF」とを選択する。全体ピークセル「CT」から2セル以上離れたセ
ルの中から離隔ピークセル「CF」を選択するのは、上述したように、隣接する2つのセ
ルが同じチップに含まれている可能性があるためである。
その後、選択した離隔ピーク値「PF」と積算時間「T」とに基づいて、離隔ピーク値
「PF」が、相関値の変化の種類として予め定められた8段階の離隔ピークレベルのうち
の何れのレベルであるかを判定し、判定した離隔ピークレベルに基づいて、全体ピーク値
「PT」の閾値「Pθ」を可変に設定する。
そして、全体ピーク値「PT」が閾値「Pθ」を超えた場合は(PT>Pθ)、捕捉対象
とするGPS衛星信号のPRNコードとレプリカコードとが一致し、当該GPS衛星信号
の捕捉に成功したものと判定する。また、全体ピーク値「PT」が閾値「Pθ」以下であ
る場合は(PT≦Pθ)、捕捉対象とするGPS衛星信号のPRNコードとレプリカコー
ドとが一致せず、当該GPS衛星信号の捕捉に失敗したものと判定する。
図3は、ROM36に格納されたデータの一例を示す図である。ROM36には、CP
U35により読み出され、ベースバンド処理(図16参照)として実行されるベースバン
ド処理プログラム361と、離隔ピークレベル判定用基準値算出式データ362と、離隔
ピーク値加算量算出式データ363と、閾値算出式データ364とが記憶されている。ま
た、ベースバンド処理プログラム361には、PRNコード判定処理(図17参照)とし
て実行されるPRNコード判定プログラム3611がサブルーチンとして含まれている。
ベースバンド処理とは、CPU35が、捕捉対象とするGPS衛星(以下、「捕捉対象
衛星」と称す。)それぞれについて、PRNコードとレプリカコードとの一致を判定する
ことで、当該捕捉対象衛星の捕捉の成否を判定し、捕捉に成功したGPS衛星(以下、「
捕捉衛星」と称す。)のGPS衛星信号に基づいて、携帯型電話機1の現在位置を測位す
る処理である。ベースバンド処理については、フローチャートを用いて詳細に後述する。
PRNコード判定処理とは、CPU35が、相関演算処理部33から入力した積算相関
値「P」の中から全体ピーク値「PT」と離隔ピーク値「PF」とを選択し、選択した離隔
ピーク値「PF」の離隔ピークレベルに基づいて、全体ピーク値「PT」の閾値「Pθ」を
可変に設定する処理である。そして、設定した閾値「Pθ」を全体ピーク値「PT」が超
えた場合は、当該捕捉対象衛星のGPS衛星信号のPRNコードとレプリカコードとが一
致し、受信信号が当該捕捉対象衛星のGPS衛星信号であること、すなわち、当該捕捉対
象衛星の捕捉に成功したものと判定する。PRNコード判定処理についても、フローチャ
ートを用いて詳細に後述する。
図5は、離隔ピークレベル判定用基準値算出式データ362のデータの内容を説明する
ための図である。図5では、横軸を積算時間「T」、縦軸を離隔ピークレベル判定用基準
値「PC」としたグラフを示している。離隔ピークレベル判定用基準値算出式データ36
2には、「1」〜「8」の離隔ピークレベルそれぞれについて、離隔ピークレベル判定用
基準値「PC」を算出するための算出式のデータが記憶されている。
離隔ピークレベル「n」の離隔ピークレベル判定用基準値「PCn」(nは離隔ピークレ
ベル)は、次式(1)のような積算時間「T」を変数とする1次関数で与えられる。
Cn=k1n×T+k2n ・・・(1)
ここで、「k1n」及び「k2n」は予め定められた係数であり、図6の実測結果に基づいて
定められる。但し、離隔ピークレベルが低いほど、関数の傾きを表す係数「k1n」は大き
くなる。
離隔ピークレベル判定用基準値「PC」の算出式は、GPS衛星信号のSNRを変化さ
せながら、当該GPS衛星信号のPRNコードと異なるレプリカコードとの相関演算を行
った場合の各SNRにおける離隔ピーク値「PF」の実測結果を、数式モデルとして表し
たものである。
図6は、上述した離隔ピーク値「PF」の実測結果の一例を示す図である。図6では、
横軸を積算時間「T」、縦軸を離隔ピーク値「PF」とし、捕捉対象とするGPS衛星信
号のSNRを、「−122dBm」〜「−136dBm」まで「2dBm」ずつ変化させ
た場合の各SNRに対応する離隔ピーク値「PF」の変化を示している。この結果を見る
と、全てのSNRにおいて、積算時間「T」が長くなるにつれて離隔ピーク値「PF」が
線形的に増加していることがわかる。
この結果を基に、GPS衛星信号のSNRが大きい順に「1」〜「8」の離隔ピークレ
ベルを対応付けた上で、積算時間「T」の1次関数でそれぞれを近似した式が、離隔ピー
クレベル判定用基準値「PC」の算出式(式(1))である。但し、SNRが「−122
dBm以上」である場合は離隔レベルを一律に「1」とし、「−136dBm以下」であ
る場合は離隔レベルを一律に「8」としている。離隔ピークレベル「8」は、ノイズレベ
ルである。
CPU35は、各離隔ピークレベルそれぞれについて、選択した離隔ピーク値「PF
と積算時間「T」とを用いて、式(1)に従って離隔ピークレベル判定用基準値「PC
を算出する。そして、離隔ピークレベルそれぞれの基準値と離隔ピーク値「PF」とを対
比して、離隔ピーク値「PF」と最も値が近い離隔ピークレベル判定用基準値「PC」を特
定するとともに、その離隔ピークレベルを判定する。
図7及び図8は、離隔ピーク値加算量算出式データ363のデータ内容を説明するため
の図である。図7及び図8は、横軸を積算時間「T」、縦軸を離隔ピーク値加算量「σ」
としたグラフを示している。離隔ピーク値加算量算出式データ363には、「1」〜「8
」の離隔ピークレベルそれぞれについて、離隔ピーク値加算量「σ」を算出するための算
出式のデータが記憶されている。
図7は、離隔ピークレベルが「1」〜「7」である場合の離隔ピーク値加算量「σ」を
算出するための算出式のグラフを示しており、離隔ピークレベル「n」の離隔ピーク値加
算量「σn」は、次式(2)のような積算時間「T」と離隔ピーク値「PF」とを変数とす
る1次関数で与えられる。
σn=u1n×T+u2n×PF+u3n ・・・(2)
但し、「u1n」、「u2n」及び「u3n」は、予め定められる係数であり、図9を参照し
て説明する実測結果を模擬するように定められる。離隔ピークレベルが低いほど、関数の
傾きを示す係数「u1n」及び「u2n」は大きくなる。
また、図8は、離隔ピークレベルが「8」である場合の離隔ピーク値加算量「σ」を算
出するための算出式のグラフを示している。離隔ピーク値加算量「σ」は、パワースケー
ル「S」の大きさに応じて、2種類の特性の異なる関数によって近似される。
具体的には、パワースケール「S」が「4」よりも小さい場合は(S<4)、離隔ピー
ク値加算量「σ」は次式(3)で与えられる。
σ=v1×T+v2×PF+v3×S+v4 ・・・(3)
また、パワースケール「S」が「4」以上である場合は(S≧4)、離隔ピーク値加算
量「σ」は次式(4)で与えられる。
σ=w1×T+w2×PF+w3×2S+w4 ・・・(4)
尚、式(3)の係数「v1」、「v2」、「v3」及び「v4」や、式(4)の係数「w1
」、「w2」、「w3」及び「w4」は、図9及び図10を参照して説明する実測結果を模
擬するように定められる。
式(4)が式(3)と異なるのは、式(3)が積算時間「T」、離隔ピーク値「PF
及びパワースケール「S」を変数とする線形関数であるのに対し、式(4)は、右辺第3
項が「2S」であることにより、非線形関数となっている点である。
上述した離隔ピーク値加算量「σ」の算出式は、GPS衛星信号のSNRを変化させな
がら、当該GPS衛星信号のPRNコードと異なるレプリカコードとの相関演算を行った
場合の、各SNRにおける離隔ピーク値加算量「σ」の実測結果を基に、当該実測結果を
模擬する数式モデルとして定められたものである。
図9及び図10は、上述した離隔ピーク値加算量「σ」の実測結果の一例を示す図であ
る。図9は、GPS衛星信号のSNRが「−134dBm」である場合(=離隔ピークレ
ベル「7」)の実測結果の一例を示しており、図10は、GPS衛星信号のSNRが「−
136dBm以下」である場合(=離隔ピークレベル「8」)の実測結果の一例を示して
いる。各図において、横軸は積算時間「T」、縦軸は離隔ピーク値加算量「σ」をそれぞ
れ示している。
GPS衛星信号のSNRが「−134dBm」である場合は、積算時間「T」が長くな
るにつれて離隔ピーク値加算量「σ」が線形的に増加していることがわかる。この結果を
基に、離隔ピーク値加算量「σ」を、積算時間「T」及び離隔ピーク値「PF」を変数と
する1次関数で近似した式が、式(2)である。
尚、ここでは図示を省略するが、SNRが「−134dBm」よりも大きい場合(離隔
ピークレベルが「1」〜「6」の場合)についても、同様の実験結果を得ることができた
。但し、SNRが大きくなるほど(離隔ピークレベルが低くなるほど)、同じ積算時間「
T」に対する離散ピーク値加算量「σ」は大きくなることが判明した。この実験結果と整
合するように「σ」の算出式を定義した結果、図7では、離隔ピークレベルが低くなるほ
ど1次関数の傾きが大きくなっている。
一方、GPS衛星信号のSNRが「−136dBm以下」である場合は、図10に示す
ように、積算時間「T」が長くなるにつれて離隔ピーク値加算量「σ」が増加することに
変わりはないが、線形的な特性を示さないことがわかった。そこで、パワースケール「S
」の大きさに応じて、線形関数と非線形関数の2種類の関数によって離散ピーク値加算量
「σ」を近似した式が、式(3)及び式(4)である。より具体的には、図8の破線部分
P1に対応する近似式が式(3)であり、破線部分P2に対応する近似式が式(4)であ
る。
閾値算出式データ364は、全体ピーク値「PT」の閾値「Pθ」を算出するための算
出式が記憶されたデータである。閾値「Pθ」は、次式(5)に従って算出される。
θ=PF+m×σ ・・・(5)
但し、「m」は、離隔ピーク値加算量「σ」を調整するための定数である。
図11に、クロスコリレーション非発生時における積算相関値「P」の変化の一例を示
す。図11では、離隔ピーク値「PF」に「m×σ」を加算することで得られる閾値「P
θ」よりも、全体ピーク値「PT」が大きくなっている(PT>Pθ)。この場合、CPU
35は、捕捉対象衛星のGPS衛星信号のPRNコードとレプリカコードとが一致し、受
信信号には当該捕捉対象衛星のGPS衛星信号が含まれている、すなわち、当該捕捉対象
衛星の捕捉に成功したものと判定する。
これに対し、クロスコリレーション発生時における積算相関値「P」の変化の一例を示
したのが図12である。図12では、全体ピーク値「PT」よりも閾値「Pθ」が大きく
なっている(PT<Pθ)。この場合、CPU35は、捕捉対象衛星のGPS衛星信号の
PRNコードとレプリカコードとが一致せず、受信信号には当該捕捉対象衛星のGPS衛
星信号が含まれていない、すなわち、捕捉対象衛星の捕捉に失敗したものと判定する。
図4は、RAM37に格納されるデータの一例を示す図である。RAM37には、捕捉
衛星データ371と、積算相関値データ372と、全体ピーク値データ373と、離隔ピ
ーク値データ374と、閾値データ375と、測位データ376とが記憶される。
捕捉衛星データ371は、捕捉衛星の番号が記憶されたデータであり、ベースバンド処
理においてCPU35により更新される。
図13は、積算相関値データ372のデータ構成例を示す図である。積算相関値データ
372には、それぞれのセル3721に対する積算相関値3722が対応付けて記憶され
る。例えば、セル「C1」の積算相関値は「P1」である。積算相関値データ372は、
CPU35が相関演算処理部33から積算相関値「P」を入力することで更新される。
図14は、全体ピーク値データ373のデータ構成例を示す図である。全体ピーク値デ
ータ373には、全体ピークセル3731と、全体ピーク値3732とが対応付けて記憶
される。図14における全体ピークセルは「C1000」であり、全体ピーク値は「P1
000」である。全体ピーク値データ373は、PRNコード判定処理においてCPU3
5により更新される。
図15は、離隔ピーク値データ374のデータ構成例を示す図である。離隔ピーク値デ
ータ374には、離隔ピークセル3741と、離隔ピーク値3742とが対応付けて記憶
される。図15における離隔ピークセルは「C1002」であり、離隔ピーク値は「P1
002」である。離隔ピーク値データ374は、PRNコード判定処理においてCPU3
5により更新される。
閾値データ375には、PRNコード判定処理においてCPU35により算出された全
体ピーク値「PT」の閾値「Pθ」が記憶される。また、測位データ376には、ベース
バンド処理においてCPU35により測位された測位位置が記憶される。
TCXO40は、所定の発振周波数で発振信号を生成する温度補償型水晶発振器であり
、生成した発振信号をRF受信回路部21及びベースバンド処理回路部30に出力する。
ホストCPU50は、ROM100に記憶されているシステムプログラム等の各種プロ
グラムに従って携帯型電話機1の各部を統括的に制御するプロセッサである。ホストCP
U50は、CPU35から入力した測位位置をプロットしたナビゲーション画面を、表示
部70に表示させる。
操作部60は、例えばタッチパネルやボタンスイッチ等により構成される入力装置であ
り、押下されたキーやボタンの信号をホストCPU50に出力する。この操作部60の操
作により、通話要求やメールの送受信要求等の各種指示入力がなされる。
表示部70は、LCD(Liquid Crystal Display)等により構成され、ホストCPU5
0から入力される表示信号に基づいた各種表示を行う表示装置である。表示部70には、
ナビゲーション画面や時刻情報等が表示される。
携帯電話用アンテナ80は、携帯型電話機1の通信サービス事業者が設置した無線基地
局との間で携帯電話用無線信号の送受信を行うアンテナである。
携帯電話用無線通信回路部90は、RF変換回路、ベースバンド処理回路等によって構
成される携帯電話の通信回路部であり、携帯電話用無線信号の変調・復調等を行うことで
、通話やメールの送受信等を実現する。
ROM100は、ホストCPU50が携帯型電話機1を制御するためのシステムプログ
ラムや、ナビゲーション機能を実現するための各種プログラムやデータ等を記憶している
RAM110は、ホストCPU50により実行されるシステムプログラム、各種処理プ
ログラム、各種処理の処理中データ、処理結果などを一時的に記憶するワークエリアを形
成している。
2.処理の流れ
図16は、CPU35によりROM36に記憶されているベースバンド処理プログラム
361が読み出されて実行されることで、携帯型電話機1において実行されるベースバン
ド処理の流れを示すフローチャートである。
ベースバンド処理は、RF受信回路部21によるGPS衛星信号の受信と併せて、CP
U35が、操作部60に測位開始指示の操作がなされたことを検出した場合に実行を開始
する処理であり、各種アプリケーションの実行といった各種の処理と並行して行われる処
理である。尚、携帯型電話機1の電源のON/OFFとGPSの起動/停止とを連動させ
、携帯型電話機1の電源投入操作を検出した場合に処理の実行を開始させることにしても
よい。原則として、測位演算は「1秒」毎に行われるものとする。
また、特に説明しないが、以下のベースバンド処理の実行中は、GPSアンテナ10に
よるRF信号の受信や、RF受信回路部21によるIF信号へのダウンコンバート、相関
演算処理部33による積算相関値「P」の演算等が随時行われている状態にあるものとす
る。
先ず、CPU35は、アルマナック等のGPS衛星の軌道情報に基づいて、捕捉対象衛
星を選定する(ステップA1)。そして、選定した各捕捉対象衛星について、ループAの
処理を実行する(ステップA3〜A13)。ループAでは、CPU35は、コード生成部
34に対して、レプリカコードの生成指示を与える(ステップA5)。そして、ROM3
6に記憶されているPRNコード判定プログラム3611を読み出して実行することで、
PRNコード判定処理を行う(ステップA7)。
図17は、PRNコード判定処理の流れを示すフローチャートである。
先ず、CPU35は、相関演算処理部33から出力され、RAM37の積算相関値デー
タ372に記憶された積算結果から、全体ピークセル「CT」と全体ピーク値「PT」とを
選択し(ステップB1)、RAM37の全体ピーク値データ373に記憶させる。また、
離隔ピークセル「CF」と離隔ピーク値「PF」とを選択して(ステップB3)、離隔ピー
ク値データ374に記憶させる。
次いで、CPU35は、ステップB3で選択した離隔ピーク値「PF」と積算時間「T
」とに基づいて、離隔ピークレベルを判定する(ステップB5)。具体的には、ROM3
6に記憶されている離隔ピークレベル判定用基準値算出式データ362を参照し、8段階
の離隔ピークレベルそれぞれについて、式(1)に従って積算時間「T」から離隔ピーク
レベル判定用基準値「PC」を算出する。そして、離隔ピーク値「PF」に値が最も近い離
隔ピークレベル判定用基準値「PC」に対応する離隔ピークレベルを、当該離隔ピーク値
「PF」の離隔ピークレベルと判定する。
次いで、CPU35は、ステップB5で判定した離隔ピークレベルに基づいて、離隔ピ
ーク値加算量「σ」を算出する(ステップB7)。具体的には、ROM36に記憶されて
いる離隔ピーク値加算量算出式データ363を参照し、離隔ピークレベルが「1」〜「7
」である場合は、式(2)に従って離隔ピーク値加算量「σ」を算出する。また、離隔ピ
ークレベルが「8」であり、パワースケール「S」が「4未満」である場合は(S<4)
、式(3)に従って離隔ピーク値加算量「σ」を算出し、パワースケール「S」が「4以
上」である場合は(S≧4)、式(4)に従って離隔ピーク値加算量「σ」を算出する。
その後、CPU35は、ROM36に記憶されている閾値算出式データ364を参照し
、ステップB3で選択した離隔ピーク値「PF」と、ステップB7で算出した離隔ピーク
値加算量「σ」とに基づいて、式(5)に従って全体ピーク値「PT」の閾値「Pθ」を
算出する(ステップB9)。
そして、CPU35は、ステップB1で選択した全体ピーク値「PT」が、ステップB
9で算出した閾値「Pθ」よりも大きいか否かを判定し(ステップB11)、大きいと判
定した場合は(ステップB11;Yes)、当該捕捉対象衛星の捕捉に成功したと判定し
て(ステップB13)、PRNコード判定処理を終了する。また、全体ピーク値「PT
が閾値「Pθ」以下であると判定した場合は(ステップB13;No)、当該捕捉対象衛
星の捕捉に失敗したと判定して(ステップB15)、PRNコード判定処理を終了する。
図16のベースバンド処理に戻って、PRNコード判定処理を行った後、CPU35は
、当該捕捉対象衛星の捕捉に失敗したと判定した場合は(ステップA9;No)、次の捕
捉対象衛星へと処理を移行する。また、捕捉に成功したと判定した場合は(ステップA9
;Yes)、当該捕捉対象衛星を捕捉衛星に加えてRAM37の捕捉衛星データ371を
更新した後(ステップA11)、次の捕捉対象衛星へと処理を移行する。
全ての捕捉対象衛星についてステップA5〜A11の処理を行った後、CPU35は、
ループAを終了する。その後、CPU35は、捕捉衛星データ371に記憶されている捕
捉衛星のGPS衛星信号に基づいて、例えば最小二乗法を用いた測位演算を行い(ステッ
プA15)、その測位位置をRAM37の測位データ376に記憶させる。尚、最小二乗
法を用いた測位演算の詳細については公知であるため、説明を省略する。
その後、CPU35は、測位演算により求めた測位位置をホストCPU50に出力する
(ステップA17)。そして、操作部60に対してユーザにより測位終了指示がなされた
か否かを判定し(ステップA19)、なされなかったと判定した場合は(ステップA19
;No)、ステップA1に戻る。また、測位終了指示がなされたと判定した場合は(ステ
ップA19;Yes)、ベースバンド処理を終了する。
3.作用効果
本実施形態によれば、受信したGPS衛星信号に対して、複数のPRNコードのうちの
一のPRNコードのレプリカコードを用いた相関演算が、当該レプリカコードの位相(セ
ル)をずらしつつ行われる。また、相関演算により得られた積算相関値「P」の中から全
体ピーク値「PT」と離隔ピーク値「PF」とが選択され、受信したGPS衛星信号が一の
PRNコードで拡散変調されたGPS衛星信号であるか否かを判定するための全体ピーク
値「PT」の閾値「Pθ」が、離隔ピーク値「PF」に基づいて可変される。そして、全体
ピーク値「PT」が閾値「Pθ」を超えたか否かが判定されることにより、受信したGP
S衛星信号が一のPRNコードで拡散変調されたGPS衛星信号であるか否かが判定され
る。
全体ピーク値「PT」から2セル以上(=1チップ以上)離れた積算相関値「P」のう
ちの最大の積算相関値を離隔ピーク値「PF」として選択した上で、全体ピーク値「PT
が、当該離隔ピーク値「PF」に基づいて可変に設定した閾値「Pθ」を超えたか否かを
判定するといった簡便な方法により、演算量を増大させることなくクロスコリレーション
を適切に検出することができ、ひいては、測位精度を向上させることが可能となる。
4.変形例
4−1.電子機器
本発明は、測位装置を備えた電子機器であれば何れの電子機器にも適用可能である。例
えば、ノート型パソコンやPDA(Personal Digital Assistant)、カーナビゲーション
装置等についても同様に適用可能である。
4−2.衛星測位システム
上述した実施形態では、衛星測位システムとしてGPSを例に挙げて説明したが、WA
AS(Wide Area Augmentation System)、QZSS(Quasi Zenith Satellite System)
、GLONASS(GLObal NAvigation Satellite System)、GALILEO等の他の衛
星測位システムであってもよい。
4−3.処理の分化
CPU35が実行する処理の一部又は全部を、ホストCPU50が実行することにして
もよい。例えば、ホストCPU50がPRNコード判定処理を行い、その判定結果に基づ
いて、CPU35が測位演算を行うようにする。また、測位演算も含めて、CPU35が
実行する処理全てをホストCPU50が実行することにしてもよい。
4−4.セルの分割数
上述した実施形態では、1023チップで構成されるPRNコードを2000個のセル
に分割するものとして説明したが、セルの分割数は適宜変更可能である。例えば、300
0個のセルに分割した場合は、全体ピークセル「CT」から3セル以上離れたセルの積算
相関値「P」のうちの最大の積算相関値を、離隔ピーク値「PF」として選択するように
する。すなわち、セルの分割数をM個とした場合は、全体ピークセル「CT」からM/1
023セル以上離れたセルの積算相関値「P」のうちの最大の積算相関値を、離隔ピーク
値「PF」として選択することにすればよい。
携帯型電話機の機能構成を示すブロック図。 ベースバンド処理回路部の回路構成を示すブロック図。 ROMに格納されるデータの一例を示す図。 RAMに格納されるデータの一例を示す図。 離隔ピークレベル判定用基準値算出式データのデータ内容の説明図。 離隔ピークレベル判定用基準値算出式を導出するための実験結果を示す図。 離隔ピーク値加算量算出式データのデータ内容の説明図。 離隔ピーク値加算量算出式データのデータ内容の説明図。 離隔ピーク値加算量算出式を導出するための実験結果を示す図。 離隔ピーク値加算量算出式を導出するための実験結果を示す図。 クロスコリレーション非発生時における積算相関値の変化の一例を示す図。 クロスコリレーション発生時における積算相関値の変化の一例を示す図。 積算相関値データのデータ構成例を示す図。 全体ピーク値データのデータ構成例を示す図。 離隔ピーク値データのデータ構成例を示す図。 ベースバンド処理の流れを示すフローチャート。 PRNコード判定処理の流れを示すフローチャート。
符号の説明
1 携帯型電話機 、 10 GPSアンテナ、 20 GPS受信部、
21 RF受信回路部、 30 ベースバンド処理回路部、 32 メモリ、
33 相関演算処理部、 34 コード生成部、 35 CPU、 36 ROM、
37 RAM、 40 TCXO、 50 ホストCPU、 60 操作部、
70 表示部、 80 携帯電話用アンテナ、 90 携帯電話用無線通信回路部、
100 ROM、 110 RAM

Claims (6)

  1. 異なる拡散符号で拡散変調された複数の測位用信号のうちの何れかの測位用信号を受信することと、
    所定の積算時間に亘って、前記受信した測位用信号に対して、前記複数の拡散符号のうちの一の拡散符号のレプリカコードを用いた相関演算を行うことと、
    前記一の拡散符号における前記相関演算により得られた相関値の中の最大の相関値である全体ピーク値と、当該全体ピーク値の位相から1チップ以上離れた相関値のうちの最大の相関値である離隔ピーク値とを選択することと、
    前記全体ピーク値が相互相関によるものであるか否かを判定するための閾値条件を、前記離隔ピーク値に基づいて設定することと、
    前記全体ピーク値が前記閾値条件を満たすか否かを判定することにより、前記全体ピーク値が前記相互相関によるものであるか否かを判定することと、を含み、
    前記閾値条件を設定することは、
    前記離隔ピーク値が、前記積算時間に応じた相関値の変化の種類として予め定められた複数種類の何れに該当するかを判定することと、
    前記積算時間と前記離隔ピーク値とを用いて、判定された種類に対応する離隔ピーク値加算量を算出することと、
    算出した前記離隔ピーク値加算量を用いて、前記閾値条件を算出することと、
    を含み、
    前記全体ピーク値が前記相互相関によるものであるか否かを判定することは、前記全体ピーク値が、前記閾値条件を超える場合に、前記全体ピーク値が前記相互相関ではないと判定すること、を含む、
    相互相関判定方法。
  2. 前記拡散符号はN個のチップで構成されており、
    前記相関演算を行うことは、前記拡散符号をM(≧N)個のセルに分割し、該セル単位で位相をずらしつつ前記相関演算を行うことであり、
    前記離隔ピーク値の選択は、前記全体ピーク値の位相からM/N個以上離れたセルの相関値のうちの最大の相関値を前記離隔ピーク値として選択することである、
    請求項1に記載の相互相関判定方法。
  3. 前記積算時間に応じた相関値の変化の種類には、前記全体ピーク値が信号に対する相関値である場合の相関値の変化を表した第1類型と、前記全体ピーク値がノイズに対する相関値である場合の相関値の変化を表した第2類型とがあり、
    前記離隔ピーク値加算量を算出することは、
    前記第1類型の種類に対応する離隔ピーク値加算量は、線形の関数を用いて、算出されることと、
    前記第2類型の種類に対応する離隔ピーク値加算量は、非線形の関数を用いて、算出されることと、
    を含む、
    請求項1又は2に記載の相互相関判定方法。
  4. 前記測位用信号の受信において受信される通信信号のSNR(Signal-to-Noise Ratio)の範囲の最低値が−150dBm以下である請求項1〜3の何れか一項に記載の相互相関判定方法。
  5. 異なる拡散符号で拡散変調された複数の測位用信号のうちの何れかの測位用信号を受信する受信部と、
    所定の積算時間に亘って、前記受信した測位用信号に対して、前記複数の拡散符号のうちの一の拡散符号のレプリカコードを用いた相関演算を行う相関演算部と、
    前記一の拡散符号における前記相関演算により得られた相関値の中の最大の相関値である全体ピーク値と、当該全体ピーク値の位相から1チップ以上離れた相関値のうちの最大の相関値である離隔ピーク値とを選択する選択部と、
    前記全体ピーク値が相互相関によるものであるか否かを判定するための閾値条件を、前記離隔ピーク値に基づいて設定する閾値条件設定部と、
    前記全体ピーク値が前記閾値条件を満たすか否かを判定することにより、前記全体ピーク値が前記相互相関によるものであるか否かを判定する相互相関判定部と、
    前記相互相関判定部によって相互相関によるものではないと判定された信号を用いて現在位置を測位する測位部と、を備え、
    前記閾値条件を設定することは、
    前記離隔ピーク値が、前記積算時間に応じた相関値の変化の種類として予め定められた複数種類の何れに該当するかを判定することと、
    前記積算時間と前記離隔ピーク値とを用いて、判定された種類に対応する離隔ピーク値加算量を算出することと、
    算出した前記離隔ピーク値加算量を用いて、前記閾値条件を算出することと、
    を含み、
    前記全体ピーク値が前記相互相関によるものであるか否かを判定することは、前記全体ピーク値が、前記閾値条件を超える場合に、前記全体ピーク値が前記相互相関ではないと判定すること、を含む、
    測位装置。
  6. 請求項5に記載の測位装置を備えた電子機器。
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