JP5499301B2 - 潜像印刷物 - Google Patents

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Description

本発明は、複製防止対策や偽造防止対策を必要とするセキュリティ印刷物である銀行券、パスポート、有価証券、身分証明書、カード、通行券等の貴重印刷物の分野において、通常の可視光下で観察できる画像が、特定の条件下で観察した場合には全く異なる画像に変化し、かつ、色彩も変化する潜像印刷物に関わるものである。
近年のスキャナ、プリンタ、カラーコピー機等のデジタル機器の進展により、セキュリティ印刷物の精巧な複製物を容易に作製することが可能となっている。そのため、前述したような複製や偽造を防止するため、すき入れやホログラムに代表されるような、コピーでは再現不可能な様々な偽造防止技術が必要とされている。
これらの偽造防止技術の一つとして、用紙を製造する段階で形成するすき入れ技術とは別に、すき入れを印刷によって形成する技術の一例として、透光性のある用紙に透明化インキを用いて印刷された透かし模様が施されていることを特徴とする透かし模様入り用紙が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
また、偽造防止技術の中には、観察角度によって画像が変化するホログラムに代表される光学的なセキュリティ要素を貼付したものが多く存在するようになった。ただし、ホログラムのような光学的な変化を示す偽造防止印刷物は、製造方法が複雑であって、大量に発注しなければコスト的にも負荷が高くなるといった問題がある。そこで、本出願人は、平面配向性パール顔料を用いた盛り上がりのある画線を形成し、背景画像部とメッセージ画像部で配線角度を異なる構成とすることで、斜めから観察した場合にのみ、メッセージ画像部がポジからネガへ又はネガからポジへ、変化して出現する効果を有する真偽判別可能な印刷物に関わる発明を出願している(例えば、特許文献2、特許文献3参照)。
特開平10−236000号公報 特許第3718712号公報 特開2010−173161号公報
しかしながら、特許文献1の技術は、透過光下で観察した場合にのみ、潜像画像が視認できる構成であり、特許文献2及び3の技術に関しては、正反射光下で観察した場合にのみ潜像画像が視認できる構成である。よって、これらは、拡散反射光下で観察される画像を基準とすると、拡散反射光下とは異なる、一つの特定の条件下(正反射光下又は透過光下)で潜像画像を視認可能な技術であった。しかし、言い換えれば一つの特定の条件下でしか真偽判別が行えない技術であり、真偽判別が特定の場面に限定されてしまうという問題があった。これらは、多様な環境及び状況下で真偽判別を行う必要があるセキュリティ印刷物の性質を考慮すると、解決すべき問題であった。
また、特許文献2及び3の技術において、正反射光で真偽判別する行為は、照明に対してわずかに印刷物を傾ける程度の、人目につかない小さな動作で行うことができる。しかし、その反面、これらの技術のように正反射光によって行われる真偽判別は、一般に、観察環境中に存在する光の入射方向やその光量等に極めて強く影響を受けるため、常に認証性が高いとは言い難い。例えば、認証環境中に大きな窓があれば昼間と夜では見え方が異なる。
逆に、特許文献1記載の技術によって形成される透かし技術は、真偽判別に透過光を用いる。透過光を用いた真偽判別方法は、環境中に光量が一定以上存在する場合には極めて認証性の高い真偽判別方法であるが、印刷物を透かすという行為は、多くの場合目立つ動作を伴う。対面販売における真偽判別は、客本人が居る間に迅速に行う必要があるが、例えばスーパーやコンビニ等のレジにおいて、客から渡されたお金を透かすという行為を、客本人の前で行うことは現在の日本人の感覚では失礼にあたると考えられ、安易に行える行為ではない。透かしさえすれば本来、受け取らずに排除できたはずの偽造券を、透かせなかったために受け取ってしまう例は少なからず存在すると考えられている。
前述してきたとおり、正反射光下又は透過光下といった一つの特定の状況下でしか真偽判別を行えない技術にはそれぞれ問題があった。そこで、その問題を解決するため、単純に、一つのセキュリティ印刷物中に特許文献1及び特許文献2の技術の両方を形成することで、それぞれの問題点を補完することも可能ではある。しかし、その場合、刷色数の増加等による印刷工程への負荷及び印刷面積の増大等によるコスト増加を招き、その結果、印刷工程に多大な影響を及すといった別の問題が生じることとなる。
このことから、複数の条件下で潜像画像が視認可能であると同時に真偽判別を行う環境が限定されず、更には印刷工程への負荷が少ない技術が望まれていた。また、従来と同様、生産性の高い印刷方式での製造が求められ、同時に、最新のデジタル機器を用いても複製物を容易に作製できない技術が求められている。
本発明は、前述した課題の解決を目的とするものであり、一つの領域に形成された印刷画像であるにもかかわらず、領域内の画像が拡散反射光下で視認した場合及び正反射光下で視認した場合並びに透過光下で視認した場合に、それぞれ全く相関のない異なる画像にチェンジする効果を有する印刷物である。また、最新のデジタル機器を用いても複製することはできず、かつ、ホログラムのような複雑な製造工程を必要としない、印刷によって形成可能な印刷物に関する。
本発明における潜像印刷物は、透過性を有する基材の少なくとも一部に、基材と異なる色を有する印刷画像が形成されており、印刷画像は、第一の画像の上に第二の画像が形成されて成り、第一の画像は、第一の情報部と、第一の背景部から成り、第一の情報部は、第二のインキで形成されて成る第一の情報要素が、一定のピッチで規則的に第一の方向に複数配置されて成り、記第一の背景部は、第二のインキとは異なる第一のインキで形成されて成る潜像要素が、一定のピッチで規則的に第一の方向と同じ方向に複数配置されて成る潜像要素群と、第二のインキで形成されて成るカモフラージュ要素が、一定のピッチで規則的に第一の方向と同じ方向に複数配置されて成るカモフラージュ要素群とを備え、カモフラージュ要素群は、第一の背景部内で潜像要素群をネガポジ反転させた画像であり、かつ、潜像要素群とカモフラージュ要素群は、拡散反射光下で等色であり、第一の情報要素、潜像要素及びカモフラージュ要素は、互いに重なり合うことはなく配置されて成り、かつ、第一の情報部を形成している領域と第一の背景部を形成している領域とが重なることで、重なった領域の面積率が他の領域の面積率よりも高くなり、第二の画像は、第二の情報部と、第二の背景部から成り、第二の情報部は、第一のインキ及び第二のインキとは異なる第三のインキで形成されて成る盛り上がりを有する情報画線が、第二の方向に一定のピッチで複数配置されて成り、第二の背景部は、第三のインキで形成されて成る盛り上がりを有する背景画線が、第二の方向とは異なる第三の方向に一定のピッチで複数配置されて成り、第二の情報部と第二の背景部の面積率は略同一であり、第一のインキは、基材の透過率を変化させる浸透成分を含んだ浸透型インキであり、第二のインキは、第一のインキと同じ色相の着色インキであり、第三のインキは、パール顔料を含むパールインキであり、拡散反射光下で観察した場合は、第一の情報部が主体的に視認され、透過光下で観察した場合は、潜像要素群が主体的に視認され、正反射光下で観察した場合は、第二の情報部が主体的に視認されることを特徴とする。
本発明における潜像印刷物は、潜像要素、カモフラージュ要素及び第一の情報要素は、画線、画素の少なくとも一つ又はそれぞれの組み合わせであることを特徴とする。
本発明における潜像印刷物は、第一の方向と第二の方向、並びに、第一の方向と第三の方向は、異なる方向であることを特徴とする。
本発明における潜像印刷物は、盛り上がりを有する情報画線及び背景画線の高さは、5μm以上であることを特徴とする。
本発明における潜像印刷物は、第二の情報部の面積率及び第二の背景部の面積率は、50%以上であることを特徴とする。
本発明における潜像印刷物は、第二の方向と、第三の方向の角度の差は、10度以上であることを特徴とする。
本発明における潜像印刷物は、第三のインキに含まれるパール顔料は、盛り上がりを有するインキの皮膜表面にリーフィングしていることを特徴とする。
本発明の潜像印刷物において、通常の観察条件(拡散反射光下)で第一の有意味情報が視認でき、透過光下では第二の有意味情報が視認でき、正反射光下では第三の有意味情報が視認でき、かつ、それぞれの観察条件に応じてその色彩も同時に変化することを視認できる。よって、一つの印刷画像を用いて複数の異なる条件下での潜像と色彩の確認による真偽判別が可能であり、かつ、それぞれの条件で観察できる画像と色彩は全く異なる。また、この複数の異なる条件下でそれぞれ異なる画像と色彩に次々にチェンジする効果を、一つの印刷画像中に再現して模倣することは、一つの条件下で潜像が出現する技術を模倣するよりも飛躍的に難易度が上がるため、より偽造抵抗力に優れる。
銀行券や商品券、チケット等のセキュリティ印刷物として本発明の潜像印刷物を使用する場合、複数の異なる観察環境での真偽判別が可能になったことで、単にそれぞれの環境で真偽判別が可能となるといった、単なる加法的効果が生じるだけではない。対面販売を行っている状況下において、迅速で確実に、かつ、臆することなく実施できる真偽判別する仕組みを提供することができる。例について以下に説明する。
例えば、コンビニやスーパー等のレジにおいて、本発明の潜像印刷物の真偽判別を行う場合、客から手渡された潜像印刷物をまず一見し、第一の有意味情報が読み取れるかを確認する。第一の有意味情報が正確に読み取れて、その画像自体に違和感が生じなければ、続いてわずかに潜像印刷物を傾けて正反射させ、第一の有意味情報が第二の有意味情報へとチェンジするか否かを確認する。この動作は、極めて小さな動作であるから、客の側からは真偽判別が行われているかどうかはわからない。真性品であればこの段階で、第二の有意味情報が視認できるから、これ以上のチェックは不要とある。
しかし、この状態で第二の有意味情報が視認できなかったり、画像が不鮮明であったりして、疑わしい場合にのみ、一番確実な真偽判別方法である潜像印刷物を透かす行為に及ぶものである。
本潜像印刷物によって、正反射光及び透過光による真偽判別方法のそれぞれの弱点を一つの要素で補完するだけでなく、より効果的な真偽判別を提供することができる。よって、より自然で確実な真偽判別が可能となり、従来よりも偽造品の排除が容易にでき得る状況を提供できる。
以上の手法で形成した潜像印刷物は、オフセット印刷とフレキソ印刷のコンビネーションや、オフセット印刷とスクリーン印刷のコンビネーションで製造可能であることからコストパフォーマンスに優れる。
本発明における潜像印刷物を示す。 (a)は、本発明における印刷画像を示し、(b)は、第一の画像を示し、(c)は、第二の画像を示す。 (a)は、本発明における第一の画像を示し、(b)は、第一の情報部を示し、(c)は、第一の背景部を示す。 (a)は、本発明における第一の背景部を示し、(b)は、潜像要素群を示し、(c)はカモフラージュ要素群を示す。 (a)は、本発明における第一の画像を示し、(b)は、第一のインキを用いて形成する画像(潜像要素群)を示し、(c)は、第二のインキを用いて形成する画像(第一の情報部とカモフラージュ要素群)を示す。 本発明における潜像要素群の構成の一例を示す。 (a)は、第二のインキで形成する画像を示し、(b)は、カモフラージュ要素群の構成の一例を示し、(c)は、第一の情報部の構成の一例を示す。 (a)は、本発明における第二の画像を示し、(b)は、第二の情報部の構成の一例を示し、(c)は、第二の背景部の構成の一例を示す。 本発明における第二の情報画線及び第二の背景画線の拡大図を示す。 本発明における潜像印刷物の効果を示し、(a)は、拡散反射光下で観察した場合に視認される画像を示し、(b)は、正反射光下で観察した場合に視認される画像を示し、(c)は、透過光下で観察した場合に視認される画像を示す。 (a)は、第一のインキを用いて形成する画像(潜像要素群)が画素で形成されている場合の構成の一例を示し、(b)は、第二のインキを用いて形成する画像(第一の情報部とカモフラージュ要素群)が画素で形成されている場合の構成の一例を示す。 各要素における、画線、画素の少なくとも一つ又はそれぞれの組み合わせを示す。 (a)は、第一のインキを用いて形成する画像(潜像要素群)の構成の一例を示し、(b)は、第二のインキを用いて形成する画像(第一の情報部とカモフラージュ要素群)の構成の一例を示す。 実施例1における潜像印刷物を示す。 実施例1における潜像印刷物に含まれるインキ別の画像を示し、(a)は、第一のインキで形成する潜像要素群、(b)は、第二のインキで形成するカモフラージュ要素群と第一の情報部、(c)は、第三のインキで形成する第二の画像を示す。 実施例1における潜像要素群を示す。 実施例1における第二のインキで形成する画像を示す。 実施例1における第二の画像を示す。 実施例1における潜像印刷物の効果を示し、(a)は、拡散反射光下で観察した場合に視認される画像を示し、(b)は、正反射光下で観察した場合に視認される画像を示し、(c)は、透過光下で観察した場合に視認される画像を示す。 実施例2における潜像印刷物を示す。 実施例2における潜像印刷物に含まれるインキ別の画像を示し、(a)は、第一のインキで形成する潜像要素群、(b)は、第二のインキで形成するカモフラージュ要素群と第一の情報部、(c)は、第三のインキで形成する第二の画像を示す。 実施例2における潜像要素群を示す。 実施例2における第二のインキで形成する画像を示す。 実施例2における第二の画像を示す。 実施例2における潜像印刷物の効果を示し、(a)は、拡散反射光下で観察した場合に視認される画像を示し、(b)は、正反射光下で観察した場合に視認される画像を示し、(c)は、透過光下で観察した場合に視認される画像を示す。 実施例3における潜像印刷物を示す。 実施例3における潜像印刷物に含まれるインキ別の画像を示し、(a)は、第一のインキで形成する潜像要素群、(b)は、第二のインキで形成するカモフラージュ要素群と第一の情報部、(c)は、第三のインキで形成する第二の画像を示す。 実施例3における潜像要素群を示す。 実施例3における第二のインキで形成する画像を示す。 実施例3における第二の画像を示す。 実施例3における潜像印刷物の効果を示し、(a)は、拡散反射光下で観察した場合に視認される画像を示し、(b)は、正反射光下で観察した場合に視認される画像を示し、(c)は、透過光下で観察した場合に視認される画像を示す。
本発明を実施するための形態について、図面を参照して説明する。しかしながら、本発明は、以下に述べる実施するための形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲記載における技術的思想の範囲内であれば、その他のいろいろな実施の形態が含まれる。
図1に、本発明における潜像印刷物(1)を示す。潜像印刷物(1)は、基材(2)の少なくとも一部に、基材と異なる色を有する印刷画像(3)が形成されている。なお、説明の便宜上、図1の印刷画像(3)の中に「A」、「B」及び「C」の文字を表現しているが、実際には、一般的な観察環境下(拡散反射光下)での観察においては、「A」の文字が視認できるのであって、「B」及び「C」の文字は視認不可である。また、効果については後述するが、「B」の文字は透過光下での観察において視認でき、「C」の文字は正反射光下での観察において視認できる。
なお、本発明における「拡散反射光下での観察」とは、観察者の視点が、正反射光がほとんど存在しない領域中にあって潜像印刷物(1)を観察している状況を示しており、本発明における「正反射光下の観察」とは、観察者の視点が、前述した正反射光が生じている領域中にあって潜像印刷物(1)を観察している状況を示しており、本発明における「透過光下での観察」とは、観察者の視点が、前述した透過光下の領域中にあって潜像印刷物(1)を観察している状況を示している。
図2に、印刷画像(3)の構成を示す。図2(a)に示す印刷画像(3)は、図2(b)に示す第一の画像(4)及び図2(c)に示す第二の画像(5)を有する。
図3に、第一の画像(4)の構成を示す。図3(a)に示す第一の画像(4)は、図3(b)に示す第一の情報部(6)と、図3(c)に示す第一の背景部(7)とから構成されている。第一の情報部(6)は、文字や数字、記号等の第一の有意味情報を表し、拡散反射光下でのみ可視化される。実施の形態における第一の有意味情報としては、アルファベットの「A」の文字とする。第一の背景部(7)は、一定の階調で構成される。第一の情報部(6)を形成している領域と第一の背景部(7)を形成している領域が重なることで、重なった領域の面積率が他の領域の面積率よりも高くなり、その面積率の差異によって濃淡が生じて第一の画像(4)が視認される。
なお、第一の情報部(6)と第一の背景部(7)は、画線及び/又は画素から構成されるが、詳細な画線構成及び画素構成は後述する。なお、前述した第一の情報部(6)を形成している領域と第一の背景部(7)を形成している領域が重なるとは、あくまでも領域同士が重なるという意味であって、それぞれを構成している画線及び/又は画素同士が重なる意味ではない。
図4に、第一の背景部(7)の構成を示す。図4(a)に示す第一の背景部(a)は、図4(b)に示す潜像要素群(8)と、図4(c)に示すカモフラージュ要素群(9)とから構成されている。潜像要素群(8)は、文字や数字、記号等の第二の有意味情報を表し、透過光下でのみ可視化される。実施の形態における第二の有意味情報としては、アルファベットの「B」の文字とする。カモフラージュ要素群(9)は、第一の背景部(7)内で第二の有意味画像である潜像要素群(8)をネガポジ反転させた画像であり、潜像要素群(8)を第一の背景部(7)の中に隠蔽する働きを有する。よって、潜像要素群(8)とカモフラージュ要素群(9)は、目視上等しい色彩でなければならない。
潜像印刷物(1)における第一の画像(4)は、二種類のインキによって形成されている。その二種類のインキによって形成される画像を図5に示す。図5(a)は、第一の画像(4)であり、図5(b)に、第一のインキを用いて形成する画像を示し、図5(c)に第二のインキを用いて形成する画像を示す。第一のインキを用いて形成する画像(8)は、潜像要素群(8)であり、第二のインキを用いて形成する画像は、第一の情報部(6)とカモフラージュ要素群(9)を有した画像である。
ここで、第一のインキ及び第二のインキについて説明する。潜像要素群(8)のみを形成する第一のインキは、基材(2)に印刷した場合に、印刷した領域の透過率を高く変化させる浸透成分を含んだ浸透型インキである必要がある。第二のインキは、通常の着色インキであって、基材に印刷した場合には、第一のインキを基材(2)に印刷した場合と同じ色相である必要があるが、濃度は異なっていても良い。この理由については後述する。なお、ここでいう「濃度」とは、第一のインキと第二のインキを同じ面積率でそれぞれ印刷した場合に、その印刷したそれぞれの部分を色濃度計で測定した際の濃度値のことである。
第一のインキ及び第二のインキは、基材(2)に印刷した場合に目視可能な程度の色彩である必要がある。色を有さない場合には、拡散反射光下で印刷画像(3)は不可視となり、第一の情報部(6)を視認することができないためである。
なお、本発明における「色彩」とは、色相、彩度及び明度の概念を含んで色を表したものであり、また、「色相」とは、赤、青、黄といった色の様相のことであり、具体的には、可視光領域(400〜700nm)の特定の波長の強弱の分布を示すものである。
図6に、潜像要素群(8)の具体的な構成の一例を示す。潜像要素群(8)は、要素幅(W1)の潜像要素(11)が、第1の方向に一定のピッチ(P1)で規則的に複数配置されて成る。本発明における「第1の方向」とは、潜像要素(11)が画線の場合、図面中における方向のことであり、潜像要素(11)と直交する方向に規則的に配置されている。
図7に、カモフラージュ要素群(9)と第一の情報部(6)の具体的な構成の一例を示す。図7(b)に示すように、カモフラージュ要素群(9)は、潜像要素(11)と同じ要素幅(W1)のカモフラージュ要素(12)が、第1の方向に一定のピッチ(P1)で規則的に複数配置されて成る。また、図7(c)に示すように、第一の情報部(6)は、要素幅(W2)の第一の情報要素(13)が、第一の方向に一定のピッチ(P1)で規則的に複数配置されて成る。
本発明における「第1の方向」とは、カモフラージュ要素(12)及び第一の情報要素(13)が画線の場合、図面中における方向のことであり、各要素と直交する方向に規則的に配置されている。
第一の情報要素(13)が配置される第1の方向と、潜像要素(11)が配置される第1の方向と、カモフラージュ要素(12)が配置される第1の方向とは、すべて同じ方向であり、第一の情報要素(13)、潜像要素(11)及びカモフラージュ要素(12)は、互いに重なり合うことなく形成される。第1の方向を、それぞれの要素ごとに変えても本発明の潜像印刷物を作製することは可能であるが、拡散反射光下で印刷画像(3)を拡大して観察した場合には、画線の方向の違いから潜像要素群(8)を視認できる構成となることから、好ましい形態ではない。
実施の形態において使用した第一のインキと第二のインキは、色相が同じであるだけでなく、色濃度も全く同じであり、完全に同じ色彩であって目視上等色である場合について説明する。第一のインキと第二のインキが等色である場合、潜像要素群(8)の面積率とカモフラージュ要素群(9)の面積率は、同じである必要がある。その理由は、第一のインキと第二のインキが等色関係にある場合、それ以外の要素設計では、潜像要素群(8)とカモフラージュ要素群(9)が等色とならず、二つの要素を組み合わせて第一の背景部(7)を形成した場合に、潜像要素群(8)を完全に隠蔽することができないためである。
なお、本発明における「等色」とは、観察者が色彩を有する二つの観察対象を一定の距離(20cm〜30cm)離れて観察した場合に、特に注意をせずに一瞥した場合に、2つの観察対象が異なった色彩ではなく、同じ色彩であると感じる状態のこととする。例えば、色差ΔEでは、3以下程度の値とする。また、本発明でいう「色相が同じ」とは、二つの色において赤、青、黄といった色の様相が一致し、可視光領域の波長の強弱の分布が二つの色において相関を有することである。
逆に、第一のインキと第二のインキの色相が同じであっても、色濃度が異なる場合には、色濃度の差に応じて潜像要素群(8)とカモフラージュ要素群(9)の面積率を変化させる必要がある。例えば、第一のインキが淡い青色であって、第二のインキが濃い青色であり、第二のインキが第一のインキよりも2倍の色濃度を有する場合、潜像要素群(8)の面積率は、カモフラージュ要素群(9)の面積率の2倍の値になるように、それぞれの要素のピッチと要素幅を調整する必要がある。なお、本発明における「面積率」とは、一定の面積中に占める印刷された面積の割合のことである。
図8に、第二の画像(5)の構成を示す。第二の画像(5)は、第一の画像(4)の上に重ね合わせて形成される。図8(a)に示す第二の画像(5)は、図8(b)に示す第二の情報部(14)と、第二の情報部(14)を取り囲んで成る図8(c)に示す第二の背景部(15)によって構成されている。第二の情報部(14)は、文字や数字、記号等の第三の有意味情報を表し、正反射光下でのみ可視化される。実施の形態における第三の有意味情報としては、アルファベットの「C」の文字とする。
図8(b)及び図8(c)における一部拡大図に示すように、第二の情報部(14)は、画線幅(W3)の第二の情報画線(16a)が、第2の方向に一定のピッチ(P2)で規則的に配置されて成り、第二の背景部(15)は、画線幅(W3)の第二の背景画線(16b)で第2の方向とは異なる第3の方向に一定のピッチ(P2)で規則的に配置されて成る。第二の情報画線(16a)及び第二の背景画線(16b)は、いずれも盛り上がりを有する画線によって形成される。
図9に、第二の情報画線(16a)及び第二の背景画線(16b)の拡大図を示す。例えば、図中Aの方向から光が入射した場合には、入射光と平行に近い角度となる第二の情報画線(16a)の光の反射は小さくなり、相対的に第二の背景画線(16b)の光の反射は大きくなる。逆に、図中Bの方向から光が入射した場合には、入射光と平行に近い角度となる第二の背景画線(16b)の光の反射は小さくなり、相対的に第二の情報画線(16a)の光の反射は大きくなる。よって、いずれの方向から光が入射したとしても、第二の情報画線(16a)と第二の背景画線(16b)との間には、反射光の差異が生じることから、観察者が正反射光下にいれば、いずれの角度から観察したとしても明瞭なコントラストを有して第二の画像(5)が視認される。
第二の情報部(14)の面積率と第二の背景部(15)の面積率は、略同一である必要がある。これは、面積率の違いがある場合には、透明や半透明なインキで第二の画像(5)を形成したとしても、盛り上がりを有して印刷された画線が厳密な意味で完全な透明になることはないために、第二の情報部(14)と第二の背景部(15)の面積率の違いからわずかながら濃淡差や透過率の差異が生じ、拡散反射光下や透過光下で観察した場合であっても、第二の画像(5)が可視化されてしまう場合があるためである。このような事態を防ぐことを目的として、第二の情報部(14)と第二の背景部(15)の面積率を略同一にする必要がある。
なお、本発明における「面積率が略同一」とは、目視上その差異を観察者が注視しても容易に知覚できない範囲とし、具体的な範囲としては、二つの画像の面積率の割合が95%から105%程度の範囲にある場合とする。
また、第二の画像(5)の視認性を考慮すると、第二の情報部(14)と第二の背景部(15)の面積率は、50%以上であることが好ましい。これは、面積率が50%以下の場合、後述するパール効果が不十分となる場合が多く、第二の画像(5)の視認性が低くなる問題が生じるためである。また、面積率の上限値については、100%であってはならないが、非画線部さえ存在すれば100%に極めて近い値でもよい。
また、第2の方向と第3の方向は、少なくとも10度以上角度が異なっていることが好ましい。これは、角度差が10度以下の場合、一定の方向から入射する光に対して、第二の情報部(14)と第二の背景部(15)の間に大きな角度の差異がないために、強い光のコントラストが生じず、第二の画像(5)の視認性が低くなるためである。なお、最も強い光のコントラストが生じるのは、90度角度が異なっている場合である。
なお、第一の情報要素(13)が配置される「第1の方向」、潜像要素(11)が配置される「第一の方向」、カモフラージュ要素(12)が配置される「第1の方向」が、すべて同じ方向であることは前述したとおりであるが、この「第1の方向」と、第二の情報画線(16a)が配置される「第2の方向」及び第二の背景画線(16b)が配置される「第3の方向」とは、同じ方向とならないことが望ましい。
仮に、同じ方向とする場合には、第一の画像(4)における潜像要素(11−3)、カモフラージュ要素(12)及び第一の情報要素(13)のピッチ(P1)及び第二の画像(5)における第二の情報画線(16a)及び第二の背景画線(16b)のピッチ(P2)を適宜決定することが望ましい。これは、第一の画像(4)を形成している各要素と、第二の画像(5)を形成している画線とが干渉することによって発生するモアレを抑制することを目的とするものである。モアレが生じることで、本来出現してはならない条件下で潜像画像が視認されてしまう可能性があり、それぞれの潜像画像の存在を可能な限り隠蔽するためには、前述したようなそれぞれの要素に干渉が生じない工夫を施すことが望ましい。
また、第二の画像(5)を形成する第二の情報画線(16a)及び第二の背景画線(16b)は、盛り上がりを有する必要があるが、この盛り上がりの高さは、基材の高さより5μm以上あれば、第二の画像(5)が正反射光下において可視化される。画線高さは、一般的なオフセット印刷で形成することは困難であるが、フレキソ印刷やグラビア印刷、スクリーン印刷や凹版印刷等を用いれば容易に形成することができる。盛り上がりの高さの上限は技術面から考えると特に制限はないが、印刷物としての市場での流通適性や耐久性、積載適性等を考慮すると、30μmを超えないことが望ましい。
第二の画像(5)は、第三のインキを用いて形成される。第三のインキは、拡散反射光下において透明又は半透明であって、正反射光下において特定の干渉色を生じるパール顔料を含んだインキで形成する(以後、「パールインキ」という)。パールインキは、拡散反射光下では透明又は半透明であるが、正反射光下では特定の色の干渉色を発する上、透過光で観察した場合には、干渉色の補色が観察されるという特徴を有する。
例えば、赤色の干渉色を発するパールインキは、透過光下で観察すると緑色として視認され、黄色の干渉色を発するパールインキは、透過光下で観察すると青色として視認される。パール顔料には、正反射時に単一の干渉色しか発しないタイプの顔料のほかに、入射する光の角度の変化で色相が変化するタイプの顔料も存在するが、本発明の潜像印刷物を形成する上では、いずれのタイプを用いても良い。
なお、本発明における「透明又は半透明」とは、観察者が特に注意を払わず、単に一瞥しただけでは、その存在を容易に知覚することが困難な程度の色彩しか有さない状態とする。
第三のインキに求められる拡散反射光下で透明又は半透明であるという特徴は、拡散反射光下で第二の画像(5)が可視化される事を防ぐために必要な性能であり、また、光を反射して干渉色(第一の色彩)を発するという特徴は、正反射光下で第二の画像(5)を色彩豊かに表現するために必要とされる性能であるとともに、透過光下で現れる潜像要素群(8)に異なる色彩(干渉色の補色:第二の色彩)を付与するために必要とされる性能である。
以上のように、虹彩色パール顔料を第三のインキに含ませた場合には、本発明の潜像印刷物(1)が想定する様々な異なった条件での観察において、本発明の特徴の一つである画像が変化する効果に加えて、大きな色変化の効果も加えることができる。
また、5μm以上の盛り上がりの画線で第二の画像(5)を形成する場合、盛り上がりを有するインキの皮膜表面にパール顔料が配向する効果を有する、いわゆるリーフィング効果を備えた虹彩色パール顔料を用いたインキを第三のインキとして使用することが望ましい。
仮に、リーフィング効果を備えないパール顔料を使用して5μmを超える盛り上がりを有する画線を形成した場合、パール顔料はその画線の中でそれぞれランダムな向きで固定されてしまうために、入射した光をそれぞれの顔料が異なった方向に反射し、強いパール効果を得ることができない。
一方、リーフィング効果を有するパール顔料を用いた場合には、すべてのパール顔料の向きは画線表面に、すべて同じ角度に固定されるため、特定の方向から光が入射した場合に、すべての顔料が一斉に光を反射することができ、強いパール効果を得ることができる。
使用するパール顔料のリーフィング効果を向上させるためには、印刷時に盛り上がりを有する画像の表面で顔料が配向するような特殊な処理を施すことが好ましい。具体的には、例えば、特開2001−106937号公報に記載されたような撥水及び撥油性処理等の顔料の表面処理を行うことで、印刷部の画線表面で顔料を配向させることができ、正反射光下によるパールの干渉色をより鮮やかに出現させることが可能となる。
また、パール顔料の粒子の大きさは、使用する印刷方式に応じて選択するものであるが、1μm〜50μmであり、好ましいのは、平均粒径5〜15μm程度である。
なお、5μm未満の盛り上がりの画線を形成する場合には、パール顔料の向きは乾燥過程である程度自然に揃うため、このような処理は必須ではない。ただし、画線の盛り上がりの高さが低くなるにつれて、入射する光を反射する画線表面がなだらかになることから、第二の情報部(14)と第二の背景部(15)の間で充分な光の反射量の違いが生じづらくなり、第二の画像の視認性は低下することに留意する必要がある。
第一のインキと第二のインキの関係は、前述したとおりであるが、第一のインキと第三のインキの関係、第二のインキと第三のインキの関係についての制約は特にない。
以上のように作製した潜像印刷物(1)の効果について、図10を用いて説明する。図10(a)は、拡散反射光下に観察者の視点(18a)が存在している条件で本発明の潜像印刷物(1)を観察した場合に、視認される画像を示している。拡散反射光下での観察において、潜像要素群(8)はカモフラージュ要素群(9)によって第一の背景部(7)に隠蔽されていることから不可視であり、第二の画像(5)は透明であって同様に不可視であることから、第一の情報部(6)である「A」の文字が、印刷画像の中に濃淡を有して主体的に視認される。
また、本発明における「主体的に視認される」とは、「A」の文字のみが視認されるのではなく、第一の背景部(7)が淡く視認される中に「A」の文字が第一の背景部(7)と強いコントラストを成して強調して視認される状態のことである。これは、背景部(7)を構成している潜像要素群(8)及びカモフラージュ要素群(9)が、拡散反射光下では等色関係にあることから、潜像要素群(8)はカモフラージュ要素群(9)によって完全に隠蔽されるために、第一の背景部(7)は目視上フラットな単一な階調として認識され、その中に第一の情報部(6)が他の要素と重なり合わないように配置されているため、第一の背景部(7)の領域と第一の情報部(6)の領域の間に面積率の差による反射濃度の差(濃淡)が生まれ「A」の文字が主体的に視認されることとなる。
なお、ここでいう「反射濃度の差異」とは、画像の濃さのことで、基材に印刷した画像に光を投射した場合、投射した光の量に対する反射した光の量のことである。
図10(b−1)及び図10(b−2)は、正反射光下に観察者の視点(18b)が存在している条件で本発明の潜像印刷物(1)を観察した場合に、視認される画像を示している。正反射光下での観察において、一定の面積率の範囲の中で形成された第一の画像(4)には極端な濃淡が存在しないことから、第一の画像(4)の上に重ねられて形成されている第二の画像(5)が発する強いパール効果に隠蔽されて不可視となり、第二の情報部(14)である「C」の文字が、第三のインキが光を反射して発する干渉色である第一の色彩を伴って主体的に視認される。主体的に視認されるとは、前述した図10(a)における視認状態と同様である。
また、入射する光の角度に応じて、背景が明るい場合には「C」の文字は暗く、背景が暗い場合には「C」の文字は明るく見える、いわゆるネガポジ反転した状態で印刷画像(3)の中に視認される。このように画像がネガポジ反転する効果は、盛り上がりを有する画線を用いなければ得ることは不可能であり、本発明における潜像印刷物(1)に高い偽造抵抗力を与えるものである。また、正反射光下において特定の色彩を生じるパール効果と、この画像のネガポジ反転する効果を高いレベルで同時に実現するためには、使用するパール顔料が画線表面にリーフィングしていることが望ましい。
また、図10(c)は、透過光下に観察者の視点(18c)が存在している条件で本発明の潜像印刷物(1)を観察した場合に、視認される画像を示している。透過光下での観察において、面積率を制限して形成した第一の情報部(6)は、淡い濃度であることから基材を透過した光によってより淡く変化して不可視となり、また、第二の画像(5)は、第三のインキが光を反射した場合に発する干渉色の補色である第二の色彩を生じさせるものの、第二の情報部(14)と第二の背景部(15)の面積率が同じであるために濃淡自体は生じさせず、結果として光を強く透過する潜像要素群(8)が、第二の色彩で主体的に視認される。主体的に視認されるとは、前述した図10(a)における視認状態と同様である。
また、透過光下で視認される潜像要素群(8)に第二の色彩が現れる効果は、そもそもの正反射時のパール効果に依存するため、透過光下の色彩を鮮やかにするためにも、パール顔料は画線表面にリーフィングしていることが望ましい。
以上のように、潜像印刷物(1)を拡散反射光下で観察した場合は、第一の情報部(6)が主体的に視認され、透過光下で観察した場合には、潜像要素群(8)が主体的に視認され、正反射光下で観察した場合は、第二の情報部(14)が主体的に視認される効果を有する。また、単なる画像の変化だけでなく、第三のインキが生じさせるパール効果によって、同時に極めて豊かな色彩変化も実現している。
実施の形態において、第一の画像(4)を形成する潜像要素群(8)、カモフラージュ要素群(9)及び第一の情報部(6)のそれぞれを構成している潜像要素(11)、カモフラージュ要素(12)及び第一の情報要素(13)が、すべて画線である例で説明したが、画線に限定されるものではなく、図11に示すように、潜像要素群(8´)、カモフラージュ要素群(9´)及び第一の情報部(6´)を画素で形成しても何ら問題ない。
図11(a)に示すように、潜像要素群(8´)を画素によって形成する場合、潜像要素群(8´)は、一定の画素幅(R1)及び一定の画素高さ(H1)の複数の画素から構成される潜像要素(11´)が、第1の方向に一定のピッチ(P1)で規則的に複数配置されて成る。
なお、画素の高さ(H1)に関しては、画素幅(R1)と同一でも良く、違っても良い。本発明における「第1の方向」とは、潜像要素群(8´)が画素の場合、図面中における上下方向のことであり、図に示すように画素がマトリクス状に規則的に配置されている状態である。
また、図11(b)に示すように、カモフラージュ要素群(9´)及び第一の情報部(6´)を画素によって形成する場合、カモフラージュ要素群(9´)は、一定の画素幅(R2)及び一定の画素高さ(H2)の複数の画素から構成されるカモフラージュ要素(12´)が、第1の方向に一定のピッチ(P1)で規則的に複数配置されて成り、第一の情報部(6´)は、一定の画素幅(R1)及び一定の画素高さ(H1)の複数の画素から構成される第一の情報要素(13´)が、第1の方向に一定のピッチ(P1)で規則的に複数配置されて成る。ここで、カモフラージュ要素群(9´)と第一の情報部(6´)は、互いに重なり合わない位置に配置される必要があるが、それを満たせばそれぞれの要素の構成要件、具体的には、高さ(H1、H2)及び画素幅(R1、R2)に制限はない。
なお、画素の高さ(H1)に関しては、画素幅(R1)と同一でも良く、違っても良く、画素の高さ(H2)に関しても、画素幅(R2)と同一でも良く、違っても良い。本発明における「第1の方向」とは、カモフラージュ要素(12´)及び第一の情報要素(13´)が画素の場合、図面中における上下方向のことであり、図に示すように画素がマトリクス状に規則的に配置されている状態である。
潜像要素(11´)、カモフラージュ要素(12´)及び第一の情報要素(13´)は、画線、画素の少なくとも一つ又はそれぞれの組み合わせで形成される。つまり、図12(a)に示すように、潜像要素(11´)及びカモフラージュ要素(12´)を画素で形成し、第一の情報要素(13´)を画線で形成するなど、要素ごとの単位で画線と画素を組み合わせても良い。また、図10(b)に示すように、潜像要素(11´)、カモフラージュ要素(12´)及び第一の情報要素(13´)において、それぞれの各要素同士で画線と画素を組み合わせても良い。また、図10(c)に示すように、潜像要素(11´)、カモフラージュ要素(12´)及び第一の情報要素(13´)において、それぞれの各要素の中で画線と画素を組み合わせても良い。
なお、本発明における画線とは、印刷物を形成する最小単位である印刷網点が一定方向に複数集合して形成された集まりであって、単なる直線だけでなく、波線や破線、分断線等も含まれる。また、画素とは、印刷物を形成する最小単位である印刷網点が複数集合して形成された一塊の集まりであって、単なる円や四角等の単純な形状のみを指すのではなく、微細な文字や記号、図柄等も含まれる。
また、実施の形態において、第一のインキと第二のインキは、目視上等色であることを前提とした構成で説明を行ったが、第一のインキと第二のインキの色濃度が異なる場合、潜像要素群(8)及びカモフラージュ要素群(9)の面積率や画素面積率を変化させることで、潜像要素群(8)とカモフラージュ要素群(9)を等色にすることができる。
例えば、第一のインキよりも第二のインキが濃い場合、図13に示すように、潜像要素群(8´´)を構成する潜像要素(11´´)の要素幅(W1)よりも、カモフラージュ要素群(9´´)を構成するカモフラージュ要素(12´´)の要素幅(W3)を小さくすることで、潜像要素群(8´´)とカモフラージュ要素群(9´´)を等色とすることができる。
また、拡散反射光下で第一の画像(4)の中の第一の有意味情報である「A」の文字を観察者に視認させるためには、第一の情報部(6)と第一の背景部(7)は濃淡差を有している必要があるが、この濃淡差が大きすぎた場合には、正反射光下や透過光下の観察においても、本来消失しなければならない「A」の文字が視認されてしまう場合がある。これを避けるためには、「A」の文字を形成する第一の情報部(6)の面積率は、50%を超えないことが望ましい。これは、使用するインキの色濃度にもよるが、極めて淡い色のインキを用いたとしても、50%を超える面積率で第一の情報部(6)を形成した場合には、前述したような問題が生じる場合があるためである。
透過光下で潜像要素群(8)を鮮明に視認させるためには、潜像要素群(8)の面積率は、30%以上であることが望ましい。第一のインキとして用いる浸透型インキの透過性にもよるが、30%未満の面積率で潜像要素群(8)を形成した場合には、充分な視認性が得られない場合が多いためである。
また、第一のインキ、第二のインキ、第三のインキに脱刷や印刷不良等の発生の有無を見極めることを目的として又は真偽判別性の向上を目的として、蛍光顔料や蛍光染料、燐光顔料等の発光顔料や発光染料、赤外線吸収材料や赤外反射材料等の機能性材料を添加しても何ら問題ない。
本発明における潜像印刷物に使用する基材(2)は、上質紙やコート紙のように、浸透インキを印刷した場合に、インキが基材の内部に浸透する特性を有するとともに、基材自体も透光性を有する必要がある。不透明なプラスティックや金属では本発明の透過光下での潜像要素群(8)が出現する効果は得られない。
以下、前述の発明を実施するための最良の形態にしたがって、具体的に作製した潜像印刷物の実施例について詳細に説明するが、本発明は、この実施例に限定されるものではない。
本発明の実施例1について、図14乃至図19を用いて説明をする。基材(2−1)として白色の上質紙(日本製紙株式会社製)を用いた。
図14に、実施例1における潜像印刷物(1−1)を示す。潜像印刷物(1−1)は、基材(2−1)の少なくとも一部に、灰色の印刷画像(3−1)が形成されている。なお、説明の便宜上、図14の印刷画像(3−1)の中に「A」及び「B」並びに「C」の文字を表現しているが、実際には、一般的な観察環境下(拡散反射光下)での観察において「B」及び「C」の文字は視認不可であり、視認できるのは「A」の文字である。
なお、印刷画像(3−1)を構成している第一の画像(4−1)及び第二の画像(5−1)、第一の画像(4−1)を構成している第1の情報部(6−1)及び第1の背景部(7−1)、第一の背景部(7−1)を構成している潜像要素群(8−1)及びカモフラージュ要素群(9−1)、また、第二の画像(5−1)を構成している第二の情報部(14−1)及び第二の背景部(15−1)については、実施の形態で説明したものと同一であるため省略する。
図15に、実施例1における印刷画像(3−1)を構成している、使用するインキ別の画像を示す。図15(a)は、第一のインキで形成する画像を示しており、第一のインキで形成する画像は、潜像要素群(8−1)のみである。図15(b)は、第二のインキで形成する画像を示しており、第一の情報部(6−1)及びカモフラージュ要素群(9−1)を組み合わせた画像である。図15(c)は、第三のインキで形成する画像であり、この画像は第二の画像(5−1)である。
第一のインキには、浸透型インキ(T&K TOKA ベストワン 透かしインキ)を使用した。第一のインキは、インキ自体は無色透明であるものの、基材(2−1)に印刷した場合には用紙内部へと浸透し、油染みのように印刷した領域の基材の色濃度が上がることから、実施例1のように白色の基材(2−1)に印刷した場合には、目視上は淡い灰色として観察される。
このことから、図15(b)の画像の形成に用いる第二のインキは、第一のインキが基材(2−1)に浸透した場合の色と同じ、淡い灰色の着色インキ(T&K TOKA製 UV グレーインキをワニスで10分の1程度に薄めたインキ)を使用した。
図15(c)の第二の画像(5−1)の形成に用いる第三のインキは、表1に示した配合のUV乾燥型のスクリーンインキを使用した。第三のインキは、拡散反射光下では透明又は半透明であって、正反射光下では金色の干渉色を発するパール顔料を含んだインキであって、カラーフリップフロップ性を備えている。また、透過光下では金色(黄色)の補色である青色として観察される。なお、実施例1で使用したパール顔料には、撥水及び撥油性処理の表面処理を行っている。
Figure 0005499301
図16に、潜像要素群(8−1)の画線構成を示す。潜像要素群(8−1)は、画線幅0.15mmの潜像要素(11−1)が、0.3mmピッチで第1の方向に連続して規則的に複数配置されて成る。実施例1における潜像要素群(8−1)の面積率は、50%である。
図17に、カモフラージュ要素群(9−1)及び第一の情報部(6−1)の画線構成を示す。カモフラージュ要素群(9−1)は、画線幅0.15mmのカモフラージュ要素(12−1)が、第1の方向に0.3mmピッチで連続して規則的に複数配置されて成り、第一の情報部(6−1)は、画線幅0.15mmの第一の情報要素(13−1)が、第1の方向に0.3mmピッチで連続して規則的に複数配置されて成る。なお、カモフラージュ要素(12−1)と第一の情報要素(13−1)は重なり合うことはない。
実施例1においては、基材に印刷した場合に第一のインキと第二のインキは、等色関係にあることから、カモフラージュ要素群(9−1)と潜像要素群(8−1)の面積率は、等しく設計する必要がある。よって、カモフラージュ要素群(9−1)の面積率は、潜像要素群(8−1)と同じ50%の面積率である。また、第一の情報画像(13−1)の面積率は、50%である。
図18に、第二の画像(5−1)の画線構成を示す。第二の画像(5−1)は、第二の情報部(14−1)及び第二の背景部(15−1)から成り、第二の情報部(14−1)は、画線幅0.2mmの第二の情報画線(16a−1)が、第2の方向にピッチ0.35mmで規則的に複数配置されて成り、第二の背景部(15−1)は同じく画線幅0.2mmの第二の背景画線(16b−1)が、第3の方向にピッチ0.35mmで規則的に複数配置されて成る。第二の情報部(14−1)と第二の背景部(15−1)の面積率は、約57%である。
第一のインキを使用して、図15(a)に示した潜像要素群(8−2)をオフセット印刷方式で形成したのち、図15(b)に示した画像を第二のインキを使用して、同じくオフセット印刷方式で形成し、続いて、図15(c)に示した第二の画像(5−1)を第三のインキを用いてUV乾燥型のスクリーン印刷を行い、本発明の潜像印刷物(1−1)を得た。なお、実施例1における第二の情報画線(16a−1)及び第二の背景画線(16b−1)の画線の高さは、12μmである。
以上のように作製した潜像印刷物(1−1)の効果について、図19を用いて説明する。図19(a)は、拡散反射光下に観察者の視点(18a−1)が存在している条件で本発明の潜像印刷物(1−1)を観察した場合に、視認される画像を示しており、拡散反射光下での観察においては、第一の情報部(6−1)である「A」の文字が印刷画像の中に灰色の濃淡を有して主体的に視認された。
図19(b−1)及び図19(b−2)は、正反射光下に観察者の視点(18b−1)が存在している条件で本発明の潜像印刷物(1−1)を観察した場合に、視認される画像を示しており、正反射光下での観察においては、第二の情報部(14−1)である「C」の文字が、金色の干渉色を伴って主体的に視認された。なお、背景が明るい場合には「C」の文字は暗く、背景が暗い場合には「C」の文字は明るく見える、いわゆるネガポジ反転した状態で視認された。
図19(c)は、透過光下に観察者の視点(18a−1)が存在している条件で本発明の潜像印刷物(1−1)を観察した場合に、視認される画像を示しており、透過光下での観察においては、潜像要素群(8−1)である「B」の文字が、やや青味を伴った色で背景よりも明るく視認された。
以上のように、拡散反射光下で印刷画像を観察した場合は、第一の情報部(6−1)が視認され、透過光下で観察した場合には、第二の情報部(14−1)が視認され、正反射光下で観察した場合は、潜像要素群(8−1)が視認される効果を有することが確認できた。
本発明の実施例2において、実施例1の例とは異なり、第一の画像を画線ではなく、画素で形成した例について、図20乃至図25を用いて説明をする。基材(2−2)として実施例1と同様に白色の上質紙(日本製紙株式会社製)を用いた。
図20に、実施例2における潜像印刷物(1−2)を示す。潜像印刷物(1−2)は、基材(2−2)の少なくとも一部に、灰色の印刷画像(3−2)が形成されている。
なお、印刷画像(3−2)を構成している第一の画像(4−2)及び第二の画像(5−2)、第一の画像(4−2)を構成している第1の情報部(6−2)及び第1の背景部(7−2)、第一の背景部(7−2)を構成している潜像要素群(8−2)及びカモフラージュ要素群(9−2)、また、第二の画像(5−2)を構成している第二の情報部(14−2)及び第二の背景部(15−2)については、実施の形態で説明したものと同一であるため省略する。
図21に、実施例2における印刷画像(3−2)を構成している、使用するインキ別の画像を示す。図21(a)は、第一のインキで形成する画像を示しており、第一のインキで形成する画像は、潜像要素群(8−2)のみである。図21(b)は、第二のインキで形成する画像を示しており、第一の情報部(6−2)及びカモフラージュ要素群(9−2)を組み合わせた画像である。図21(c)は、第三のインキで形成する画像であり、この画像は第二の画像(5−2)である。第一のインキ、第二のインキ及び第三のインキは実施例1と同じインキを用いた。
図22に、潜像要素群(8−2)の画素構成を示す。潜像要素群(8−2)は、画素幅0.7mm画素高さ0.7mmの複数の画素から構成される潜像要素(11−2)が、第1の方向に1.0mmピッチで連続して規則的に複数配置されて成る。実施例2における潜像要素群(8−2)の面積率は、約40%である。
図23に、カモフラージュ要素群(9−2)及び第一の情報部(6−2)の画素構成を示す。カモフラージュ要素群(9−2)は、画素幅0.7mm画素高さ0.7mmの複数の画素から構成されるカモフラージュ要素(12−2)が、第1の方向に1mmピッチで連続して複数規則的に配置されて成り、第一の情報部(6−2)は、画素幅0.7mm画素高さ0.7mmの複数の画素から構成される第一の情報画素(13−2)が、1mmピッチで第1の方向に連続して規則的に複数配置されて成る。なお、カモフラージュ要素(12−2)と第一の情報要素(13−2)は重なり合うことはない。
実施例2においては、基材に印刷した場合に第一のインキと第二のインキは、等色関係にあることから、カモフラージュ要素群(9−2)と潜像要素群(8−2)の面積率は、等しく設計する必要がある。よって、カモフラージュ要素群(9−2)の画素面積率は、潜像要素群(8−1)と同じ面積率である。また、第一の情報画像(13−2)の面積率は、12.5%である。
図24に、第二の画像(5−2)の構成を示す。第二の画像(5−2)は、第二の情報部(14−2)及び第二の背景部(15−2)から成り、第二の情報部(14−2)は、画線幅0.2mmの第二の情報画線(16a−2)が、第2の方向にピッチ0.35mmで規則的に複数配置されて成り、第二の背景部(15−2)は、同じく画線幅0.2mmの第二の背景画線(16b−2)が、第3の方向にピッチ0.35mmで規則的に複数配置されて成る。第二の情報部(14−2)と第二の背景部(15−2)の面積率は、約57%である。
第一のインキを使用して、図21(a)に示した潜像要素群(8−2)をオフセット印刷方式で形成したのち、図21(b)に示した画像を第二のインキを使用して、同じくオフセット印刷方式で形成し、続いて、図21(c)に示した第二の画像(5−2)を第三のインキを用いてUV乾燥型のスクリーン印刷を行い、本発明の潜像印刷物(1−2)を得た。なお、実施例2における第二の情報画線(16a−2)及び第二の背景画線(16b−2)の画線の高さは、12μmである。
以上のように作製した潜像印刷物(1−2)の効果について、図25を用いて説明する。図25(a)は、拡散反射光下に観察者の視点(18a−2)が存在している条件で本発明の潜像印刷物(1−2)を観察した場合に、視認される画像を示しており、拡散反射光下での観察においては、第一の情報部(6−2)である「A」の文字が印刷画像の中に灰色の濃淡を有して主体的に視認された。
図25(b−1)及び図25(b−2)は、正反射光下に観察者の視点(18b−2)が存在している条件で本発明の潜像印刷物(1−1)を観察した場合に、視認される画像を示しており、正反射光下での観察においては、第二の情報部(14−2)である「C」の文字が、金色の干渉色を伴って主体的視認された。なお、背景が明るい場合には「C」の文字は暗く、背景が暗い場合には「C」の文字は明るく見える、いわゆるネガポジ反転した状態で視認された。
図25(c)は、透過光下に観察者の視点(18a−2)が存在している条件で本発明の潜像印刷物(1−2)を観察した場合に、視認される画像を示しており、透過光下での観察においては、潜像要素群(8−2)である「B」の文字が、やや青味を伴った色で背景よりも明るく視認された。
以上のように、拡散反射光下で印刷画像を観察した場合は、第一の情報部(6−2)が視認され、透過光下で観察した場合には、第二の情報部(14−2)が視認され、正反射光下で観察した場合は、潜像要素群(8−2)が視認される効果を有することが確認できた。
本発明の実施例3において、実施例1及び実施例2の例とは異なり、第一のインキと第二のインキが等色ではなく、同じ色相であるものの、色濃度が異なるインキを用いて本発明の潜像印刷物を形成した例について、図26乃至図31を用いて説明をする。基材(2−3)として実施例1及び実施例2と同様に白色の上質紙(日本製紙株式会社製)を用いた。
図26に、実施例3における潜像印刷物(1−3)を示す。潜像印刷物(1−3)は、基材(2−3)の少なくとも一部に、灰色の印刷画像(3−3)が形成されている。
なお、印刷画像(3−3)を構成している第一の画像(4−3)及び第二の画像(5−3)、第一の画像(4−3)を構成している第1の情報部(6−3)及び第1の背景部(7−3)、第一の背景部(7−3)を構成している潜像要素群(8−3)及びカモフラージュ要素群(9−3)、また、第二の画像(5−3)を構成している第二の情報部(14−3)及び第二の背景部(15−3)については、実施の形態で説明したものと同一であるため省略する。
図27に、実施例3における印刷画像(3−3)を構成している、使用するインキ別の画像を示す。図27(a)は、第一のインキで形成する画像を示しており、この第一のインキで形成する画像は潜像要素群(8−3)のみである。図27(b)は、第二のインキで形成する画像を示しており、第一の情報部(6−3)及びカモフラージュ要素群(9−3)を組み合わせた画像である。図27(c)は、第三のインキで形成する画像であり、この画像は第二の画像(5−3)である。
実施例3では、第一のインキには浸透型インキ(帝国インキ製 ユニマーク)を使用した。第一のインキは、インキ自体は一般的な油同様にやや黄味を帯びた半透明な色を有するが、基材(2−3)に印刷した場合には、用紙内部へと浸透し、油染みのように印刷した領域の基材の色濃度が上がることから、実施例1及び実施例2で使用した第一のインキ同様に白色の基材(2−3)に印刷した場合には、目視上は淡い灰色として観察される。
一方、実施例3において、図27(b)の画像の形成に用いる第二のインキは、第一のインキが基材(2−1)に浸透した場合の色濃度の約2倍の色濃度を有した、やや濃い灰色の着色インキ(T&K TOKA製 UV グレーインキをワニスで5分の1程度に薄めたインキ)を使用した。
図27(c)の第二の画像(5−3)の形成に用いる第三のインキは、表2に示した配合のUV乾燥型のスクリーンインキを使用した。第三のインキは、拡散反射光下では透明又は半透明であって、正反射光下では赤色の干渉色を発するパール顔料を含んだインキであって、カラーフリップフロップ性を備えている。また、透過光下では赤色の補色である緑色として観察される。なお、本実施例で使用したパール顔料にも、撥水及び撥油性処理の表面処理を行っている。
Figure 0005499301
図28に、潜像要素群(8−3)の画線構成を示す。潜像要素群(8−3)は、画線幅0.3mmの潜像要素(11−3)が、第1の方向に0.4mmピッチで連続して規則的に配置されて成る。実施例3における潜像要素群(8−2)の面積率は、75%である。
図29に、第二のインキで形成する画像の構成を示す。カモフラージュ要素群(9−3)は、画線幅0.15mmのカモフラージュ要素(12−3)が、第1の方向に0.4mmピッチで連続して規則的に配置されて成り、第一の情報部(6−3)は、画線幅0.15mmの第一の情報画素(13−3)が、第1の方向に0.4mmピッチで連続して規則的に配置されて成る。なお、カモフラージュ要素(12−3)と第一の情報要素(13−3)は重なり合うことはない。
実施例3においては、基材に印刷した場合の第一のインキと第二のインキは、2倍の色濃度の差が生じることから、カモフラージュ要素群(9−3)と潜像要素群(8−3)を等色にするためには、カモフラージュ要素群(9−3)は、潜像要素群(8−3)の2分の1の面積率に設計する必要がある。よって、カモフラージュ要素群(9−3)の面積率は、潜像要素群(8−3)の半分である。また、第一の情報画像(13−3)の面積率は、25%である。
図30に、第二の画像(5−3)の構成を示す。第二の画像(5−3)は、第二の情報部(14−3)及び第二の背景部(15−3)から成り、第二の情報部(14−3)は、画線幅0.3mmの第二の情報画線(16a−3)が、第2の方向にピッチ0.51mmで規則的に複数配置されて成り、第二の背景部(15−3)は同じく画線幅0.3mmの第二の背景画線(16b−3)が、第3の方向にピッチ0.51mmで規則的に複数配置されて成る。第二の情報部(14−3)と第二の背景部(15−3)の面積率59%である。
第一のインキを使用して、図27(a)に示した潜像要素群(8−3)をオフセット印刷方式で形成したのち、図27(b)に示した画像を第二のインキを使用して、同じくオフセット印刷方式で形成し、続いて、図27(c)に示した第二の画像(5−3)を第三のインキを用いてUV乾燥型のスクリーン印刷を行い、本発明の潜像印刷物(1−3)を得た。なお、本実施例における第二の情報画線(16a−3)及び第二の背景画線(16b−2)の画線の高さは、14μmである。
以上のように作製した潜像印刷物(1−3)の効果について、図31を用いて説明する。図31(a)は、拡散反射光下に観察者の視点(18a−3)が存在している条件で本発明の潜像印刷物(1−3)を観察した場合に、視認される画像を示しており、拡散反射光下での観察においては、第一の情報部(6−3)である「A」の文字が印刷画像の中に灰色の濃淡を有して主体的に視認された。
図31(b−3)及び図31(b−3)は、正反射光下に観察者の視点(18b−3)が存在している条件で本発明の潜像印刷物(1−3)を観察した場合に、視認される画像を示しており、正反射光下での観察においては、第二の情報部(14−3)である「C」の文字が、赤色の干渉色を伴って主体的に視認された。なお、背景が明るい場合には「C」の文字は暗く、背景が暗い場合には「C」の文字は明るく見える、いわゆるネガポジ反転した状態で視認された。
図31(c)は、透過光下に観察者の視点(18a−3)が存在している条件で本発明の潜像印刷物(1−3)を観察した場合に、視認される画像を示しており、透過光下での観察においては、潜像要素群(8−3)である「B」の文字が、やや緑味を伴った色で背景よりも明るく視認された。
以上のように、拡散反射光下で印刷画像を観察した場合は、第一の情報部(6−3)が視認され、透過光下で観察した場合には、第二の情報部(14−3)が視認され、正反射光下で観察した場合は、潜像要素群(8−3)が視認される効果を有することが確認できた。
1、1−1、1−2、1−3 潜像印刷物
2、2−1、2−2、2−3 基材
3、3−1、3−2、3−3 印刷画像
4、4−1、4−2、4−3 第一の画像
5、5−1、5−2、5−3 第二の画像
6、6−1、6−2、6−3 第一の情報部
7、7−1、7−2、7−3 第一の背景部
8、8´、8´´、8−1、8−2、8−3 潜像要素群
9、9−1、9−2、9−3 カモフラージュ要素群
11、11´、11´´、11−1、11−2、11−3 潜像要素
12、12´、12´´、12−1、12−2、12−3 カモフラージュ要素
13、13´、13´´、13−1、13−2、13−3 第一の情報要素
14、14−1、14−2、14−3 第二の情報部
15、15−1、15−2、15−3 第二の背景部
16a、16a−1、16a−2、16a−3 第二の情報画線
16b、16b−1、16b−2、16b−3 第二の背景画線
17、17−1、17−2、17−3 光源
18a、18a−1、18a−2、18a−3、18b、18b−1、18b−2、18b−3、18c、18c−1、18c−2、18c−3 観察者の視点

Claims (7)

  1. 透過性を有する基材の少なくとも一部に、前記基材と異なる色を有する印刷画像が形成されており、前記印刷画像は、第一の画像の上に第二の画像が形成されて成り、
    前記第一の画像は、第一の情報部と、第一の背景部から成り、
    前記第一の情報部は、第二のインキで形成されて成る第一の情報要素が、一定のピッチで規則的に第一の方向に複数配置されて成り、
    前記第一の背景部は、前記第二のインキとは異なる第一のインキで形成されて成る潜像要素が、一定のピッチで規則的に前記第一の方向と同じ方向に複数配置されて成る潜像要素群と、前記第二のインキで形成されて成るカモフラージュ要素が、一定のピッチで規則的に前記第一の方向と同じ方向に複数配置されて成るカモフラージュ要素群とを備え、前記カモフラージュ要素群は、前記第一の背景部内で前記潜像要素群をネガポジ反転させた画像であり、かつ、前記潜像要素群と前記カモフラージュ要素群は、拡散反射光下で等色であり、
    前記第一の情報要素、前記潜像要素及び前記カモフラージュ要素は、互いに重なり合うことなく配置され、かつ、前記第一の情報部を形成している領域と前記第一の背景部を形成している領域とが重なることで、重なった領域の面積率が他の領域の面積率よりも高くなり、
    前記第二の画像は、第二の情報部と、第二の背景部から成り、
    前記第二の情報部は、前記第一のインキ及び前記第二のインキとは異なる第三のインキで形成されて成る盛り上がりを有する情報画線が、第二の方向に一定のピッチで複数配置されて成り、前記第二の背景部は、前記第三のインキで形成されて成る盛り上がりを有する背景画線が、前記第二の方向とは異なる第三の方向に一定のピッチで複数配置されて成り、前記第二の情報部と前記第二の背景部の面積率は略同一であり、
    前記第一のインキは、前記基材の透過率を変化させる浸透成分を含んだ浸透型インキであり、前記第二のインキは、前記第一のインキと同じ色相の着色インキであり、前記第三のインキは、パール顔料を含むパールインキであり、
    拡散反射光下で観察した場合は、前記第一の情報部が主体的に視認され、透過光下で観察した場合は、前記潜像要素群が主体的に視認され、正反射光下で観察した場合は、前記第二の情報部が主体的に視認されることを特徴とする潜像印刷物。
  2. 前記潜像要素、前記カモフラージュ要素及び前記第一の情報要素は、画線、画素の少なくとも一つ又はそれぞれの組合わせであることを特徴とする請求項1記載の潜像印刷物。
  3. 前記第一の方向と前記第二の方向、並びに、前記第一の方向と前記第三の方向は、異なる方向であることを特徴とする請求項1又は2記載の潜像印刷物。
  4. 盛り上がりを有する前記情報画線及び前記背景画線の高さは、5μm以上であることを特徴とする請求項1又は3のいずれか1項に記載の潜像印刷物。
  5. 前記第二の情報部の面積率及び前記第二の背景部の面積率は、50%以上であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の潜像印刷物。
  6. 前記第二の方向と、前記第三の方向の角度の差は、10度以上であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の潜像印刷物。
  7. 前記第三のインキに含まれるパール顔料は、盛り上がりを有するインキの皮膜表面にリーフィングしていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の潜像印刷物。
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