JP5497991B2 - 顔料微粒子の製造方法 - Google Patents
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Description
このような微細な有機顔料は、例えば塗料、印刷インク、電子写真用トナー、インクジェットインク、カラーフィルタ等を用途としてあげることができ、非常に重要な化合物となっている。中でも高性能が要求され、実用上特に重要なものとしては、インクジェット用顔料及びカラーフィルタ用顔料が挙げられる。
インクジェット用インクの色材については、従来、染料が用いられてきたが、耐水性や耐光性の点で問題があり、高い耐水性や耐光性を有する顔料が用いられるようになってきている。顔料インクにより得られた画像は、染料系のインクによる画像に比べて耐光性、耐水性に優れるという利点を有する。しかしながら、紙表面の空隙にしみこむことが可能なナノメートルサイズで均一に微細化(すなわち単分散化)することは難しく、紙への密着性に劣るという問題がある。
またデジタルカメラの高画素化に伴い、CCDセンサーなどの光学素子や表示素子に用いるカラーフィルタの薄層化が望まれている。カラーフィルタには有機顔料が用いられているが、フィルタの厚さは有機顔料の粒子径に大きく依存するため、ナノメートルサイズレベルでしかも単分散で安定な微粒子の製造が望まれている。
しかし、例えばソルトミリングのような物理的な方法(ブレイクダウン法)で顔料をより微細化していくと、該顔料の分散液は高粘度を示すことが多い。このため、この顔料分散液を工業的規模で調製した場合は、該顔料分散液の分散機からの取り出しが困難となったり、パイプラインによる輸送ができなくなったり、更には貯蔵中にゲル化して使用不能となる等の問題があった。
また、良溶媒に溶解した試料を攪拌条件や温度を制御した貧溶媒に注入することにより、ナノ粒子を得る再沈法を用いる方法がある(例えば特許文献5参照)。この方法(ビルドアップ法)で作られた粒子は単分散性(本発明において、単分散性とは粒径が揃っている度合いをいう。)が良く、近年注目されてきているが、その一方で製造工程が煩雑であり、生産性などに課題がある。
しかしながら、これら化学修飾された顔料前駆体を元の顔料に再生させるためには、大量のエネルギーが必要であった。そのため得られた顔料粒子の多くは粒子成長した粗大粒子となっていることがほとんどであり、微小なナノ粒子を効率良く製造することは困難であった。
また、顔料合成段階や分散工程中に粒子成長抑制剤を添加すると、粒子成長を抑制する効果があることは既に知られているところである(例えば、特許文献7及び8参照)。しかしながら、それによって得られた粒子でも、いまだインクジェット用顔料及びカラーフィルタ用顔料としてそのまま用いるには、粒子サイズが大きすぎるのが現状であり、さらなる微細化が求められていた。
顔料の一次粒子の形状は、化学組成や特性、結晶構造、合成法などによって決まり、球状、立方状、棒状、針状、偏平状、無定形など多種多様である(例えば非特許文献1参照)。一次粒子の形状及び粒子径は、顔料粉末としての性能に大きな影響を及ぼし、例えば粒子径が大きいほど隠ぺい力、耐候性に優れるが、着色力が低いことなどが知られている。そこで顔料粒子の形状を整える為に、塗料業界などではフラッシング工程を導入しているが、この工程は微小な顔料粒子を結晶成長させて粗大化させるものであり、粒子径を大きい方に揃えている。即ち微小側に粒度分布をそろえる一般的な方法が無いのが現状である。
〔1〕下記顔料前駆体の保護基を脱離して顔料に転換し、該顔料の微粒子を生成させるに当たり、下記粒子成長抑制剤の存在下で前記顔料への転換を行い、生成微粒子の長径と短径の差を抑制することを特徴とする顔料微粒子の製造方法。
[前記粒子成長抑制剤が、
(a)顔料残基を有する化合物からなり、当該顔料残基が、ジケトピロロピロール顔料、キナクリドン顔料、アントラキノン顔料、ジオキサジン顔料、およびフタロシアニン顔料から選ばれる少なくとも一種の顔料の残基であり、あるいは、
(b)水素結合形成能を有する部位を有し、当該水素結合形成能を有する部位が、ウレア基、ウレタン基、チオウレア基、またはアミド基である。]
[前記顔料前駆体が、下記一般式(1)で表される化合物である。]
〔2〕前記顔料前駆体が下記一般式(2)〜(6)のいずれかで表される化合物であることを特徴とする〔1〕記載の顔料微粒子の製造方法。
〔3〕前記粒子成長抑制剤を、対応する顔料の質量を基準にして0.05〜15質量%で適用することを特徴とする〔1〕または〔2〕記載の顔料微粒子の製造方法。
〔4〕前記顔料微粒子の数平均径が50nm以下であることを特徴とする〔1〕〜〔3〕のいずれか1項に記載の顔料微粒子の製造方法。
〔5〕前記顔料微粒子の長径が5〜50nmの範囲内で短径が5〜50nmの範囲内であり、かつ、長径と短径の差が0〜30nmの範囲内であることを特徴とする〔1〕〜〔4〕のいずれか1項に記載の顔料微粒子の製造方法。
〔6〕前記一般式(1)における顔料前駆体が、顔料分子中のカルボニル基の酸素原子が保護基Cによりエノール保護された顔料前駆体であることを特徴とする〔1〕〜〔5〕のいずれか1項に記載の顔料微粒子の製造方法。
〔7〕さらに顔料分散剤の存在下で前記保護基を脱離し、前記顔料前駆体を前記顔料に転換することを特徴とする〔1〕〜〔6〕のいずれか1項に記載の顔料微粒子の製造方法。
〔8〕前記の顔料前駆体の保護基を脱離させる工程が、溶媒中で行われることを特徴とする〔1〕〜〔7〕のいずれか1項に記載の顔料微粒子の製造方法。
〔9〕前記溶媒が、水、アルコール類、ケトン類、エーテル類、芳香族化合物、二硫化炭素、脂肪族化合物、ニトリル化合物、エステル類、スルホキシド化合物、アミド化合物、ハロゲン含有化合物、ニトロ化合物、及び窒素含有複素環化合物から選ばれる少なくとも1つ、またはこれらの混合物であることを特徴とする〔8〕記載の顔料微粒子の製造方法。
〔10〕前記の顔料前駆体における保護基を、化学反応法、加熱法又は光分解法から選ばれた少なくとも1つの方法によって脱離させる工程を含むことを特徴とする〔1〕〜〔9〕のいずれか1項に記載の顔料微粒子の製造方法。
〔11〕前記化学反応法において、顔料化を促す化合物として、酸、塩基、求核剤、親電子剤、酸化剤、還元剤、および配位性化合物から選ばれる少なくとも一種を用いることを特徴とする〔10〕に記載の顔料微粒子の製造方法。
〔12〕前記酸として有機酸または無機酸を用いることを特徴とする〔11〕に記載の顔料微粒子の製造方法。
本発明の製造方法は、粒子成長抑制剤の存在下で、顔料前駆体の保護基を脱離させることにより、微小顔料微粒子をその形状が球形に近くなるよう粒子径の長径と短径の差を低減しながら得る工程を有する。
本発明で使用する顔料前駆体は、顔料が保護基により修飾された構造を有しており、下記一般式(1)で表される化合物が好ましい。
一般式(2)中、Ra1で表される脂肪族基は無置換でも置換基を有していてもよく、飽和基でも不飽和基でもよく、総炭素数1〜15の脂肪族基が好ましい。例えば、メチル基、エチル基、ビニル基、アリル基、エチニル基、2−エチルヘキシル基、イソプロピル基、t−ブチル基、シクロヘキシル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基等が挙げられる。
一般式(2)中、Ra1で表されるアリール基としては、無置換でも置換基を有していてもよく、総炭素数6〜16のアリール基が好ましい。例えば、フェニル基、2−メチルフェニル基、4−ニトロフェニル基、2−クロロフェニル基、2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニル基等が挙げられる。
一般式(2)中、Ra1で表されるヘテロ環基としては、飽和環基でも不飽和環基でもよく、総炭素数3〜15のヘテロ環基が好ましい。例えば、2−ピリジル基、2−ピリミジニル基等が挙げられる。
一般式(2)中、Yで表されるヘテロ原子は、窒素原子、酸素原子、及び硫黄原子からなる群の中から選ばれ、好ましくは窒素原子、酸素原子であり、より好ましくは酸素原子であり、最も好ましくはエノール酸素原子である。
また、本明細書中における「脂肪族基」は、その脂肪族部位が直鎖、分岐鎖または環状であって、飽和および不飽和のいずれであってもよく、例えば、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基を含み、無置換であっても置換基で置換されていてもよい。また、本明細書中における「アリール基」は、単環および縮合環のいずれでもよく、例えば芳香族基が含まれ、無置換であっても置換基で置換されていてもよい。本明細書中における「ヘテロ環基」は、そのヘテロ環部位が環内にヘテロ原子(例えば、窒素原子、イオウ原子、酸素原子)を持つものであり、飽和環および不飽和環のいずれであってもよく、単環および縮合環のいずれでもよく、無置換であっても置換基で置換されていてもよい。
また、本明細書中における「置換基」は、置換可能な基であればよく、例えば、脂肪族基、アリール基、ヘテロ環基、アシル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、脂肪族オキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、脂肪族オキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、ヘテロ環オキシカルボニル基、カルバモイル基、脂肪族スルホニル基、アリールスルホニル基、ヘテロ環スルホニル基、脂肪族スルホニルオキシ基、アリールスルホニルオキシ基、ヘテロ環スルホニルオキシ基、スルファモイル基、脂肪族スルホンアミド基、アリールスルホンアミド基、ヘテロ環スルホンアミド基、アミノ基、脂肪族アミノ基、アリールアミノ基、ヘテロ環アミノ基、脂肪族オキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、ヘテロ環オキシカルボニルアミノ基、脂肪族スルフィニル基、アリールスルフィニル基、脂肪族チオ基、アリールチオ基、ヒドロキシ基、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、脂肪族オキシアミノ基、アリールオキシアミノ基、カルバモイルアミノ基、スルファモイルアミノ基、ハロゲン原子、スルファモイルカルバモイル基、カルバモイルスルファモイル基、ジ脂肪族オキシフォスフィニル基、ジアリールオキシフォスフィニル基等を挙げることができる。
一般式(3)中、Ra2で表される脂肪族基は無置換でも置換基を有していてもよく、飽和基でも不飽和基でもよく、総炭素数1〜15の脂肪族基が好ましい。例えば、メチル基、エチル基、ビニル基、アリル基、エチニル基、2−エチルヘキシル基、イソプロピル基、t−ブチル基等が挙げられる。
一般式(3)中、Ra2で表されるアリール基としては、無置換でも置換基を有していてもよく、総炭素数6〜16のアリール基が好ましい。例えば、フェニル基、2−メチルフェニル基、4−ニトロフェニル基、2−クロロフェニル基等が挙げられる。
一般式(3)中、Ra2で表されるヘテロ環基としては、飽和環基でも不飽和環基でもよく、総炭素数3〜15のヘテロ環基が好ましい。例えば、2−ピリジル基、2−ピリミジニル基等が挙げられる。
一般式(3)中、Yで表されるヘテロ原子は、窒素原子、酸素原子、及び硫黄原子からなる群の中から選ばれ、好ましくは窒素原子、酸素原子であり、より好ましくは酸素原子であり、最も好ましくはエノール酸素原子である。
一般式(4)中、Ra3で表される脂肪族基は無置換でも置換基を有していてもよく、飽和基でも不飽和基でもよく、総炭素数1〜15の脂肪族基が好ましい。例えば、メチル基、エチル基、ビニル基、アリル基、エチニル基、2−エチルヘキシル基、イソプロピル基、t−ブチル基等が挙げられる。
一般式(4)中、Ra3で表されるアリール基としては、無置換でも置換基を有していてもよく、総炭素数6〜16のアリール基が好ましい。例えば、フェニル基、2−メチルフェニル基、4−ニトロフェニル基、2−クロロフェニル基等が挙げられる。
一般式(4)中、Ra3で表されるヘテロ環基としては、飽和環基でも不飽和環基でもよく、総炭素数3〜15のヘテロ環基が好ましい。例えば、2−ピリジル基、2−ピリミジニル基等が挙げられる。
一般式(4)中、Yで表されるヘテロ原子は、窒素原子、酸素原子、及び硫黄原子からなる群の中から選ばれ、好ましくは窒素原子、酸素原子であり、より好ましくは酸素原子であり、最も好ましくはエノール酸素原子である。
一般式(5)中、Ra4で表される脂肪族基は無置換でも置換基を有していてもよく、飽和基でも不飽和基でもよく、総炭素数1〜15の脂肪族基が好ましい。例えば、メチル基、エチル基、ビニル基、アリル基、エチニル基、イソプロピル基、t−ブチル基等が挙げられる。
一般式(5)中、Ra4で表されるアリール基としては、無置換でも置換基を有していてもよく、総炭素数6〜16のアリール基が好ましい。例えば、フェニル基、4−ニトロフェニル基、2−クロロフェニル基等が挙げられる。
一般式(5)中、Ra4で表されるヘテロ環基としては、飽和環基でも不飽和環基でもよく、総炭素数3〜15のヘテロ環基が好ましい。例えば、2−ピリジル基、2−ピリミジニル基等が挙げられる。
一般式(5)中、Yで表されるヘテロ原子は、窒素原子、酸素原子、及び硫黄原子からなる群の中から選ばれ、好ましくは窒素原子、酸素原子であり、より好ましくは酸素原子であり、最も好ましくはエノール酸素原子である。
一般式(6)中、Ra5で表される脂肪族基は無置換でも置換基を有していてもよく、飽和基でも不飽和基でもよく、総炭素数1〜15の脂肪族基が好ましい。例えば、メチル基、エチル基、ビニル基、アリル基、エチニル基、イソプロピル基、t−ブチル基等が挙げられる。
一般式(6)中、Ra5で表されるアリール基としては、無置換でも置換基を有していてもよく、総炭素数6〜16のアリール基が好ましい。例えば、フェニル基、4−ニトロフェニル基、2−クロロフェニル基等が挙げられる。
一般式(6)中、Ra5で表されるヘテロ環基としては、飽和環基でも不飽和環基でもよく、総炭素数3〜15のヘテロ環基が好ましい。例えば、2−ピリジル基、2−ピリミジニル基等が挙げられる。
一般式(6)中、Yで表されるヘテロ原子は、窒素原子、酸素原子、及び硫黄原子からなる群の中から選ばれ、好ましくは窒素原子、酸素原子であり、より好ましくは酸素原子であり、最も好ましくはエノール酸素原子である。
以下に、本発明に用いられる、不溶性顔料に転換されうる顔料前駆体について、その具体例を示す。ただし、本発明はこれらの具体例に何ら限定されるものではない。
また、本発明に用いられる顔料前駆体は、Industrial Organic Pigments(Wiley,Third edition)等に記載の方法に準じて、直接合成することもできる。
次に、本発明に用いる粒子成長抑制剤について説明する。顔料前駆体の保護基を脱離させると顔料分子が不溶化して析出してくるが、得られる顔料粒子は粒子成長した粗大粒子である。しかしながら、ある種の添加剤の存在下で同様に顔料前駆体の保護基を脱離させて顔料粒子を造る場合には、粒子成長が妨げられて微小粒子が得られることがある。
本発明において粒子成長抑制剤とは、不溶化して析出する顔料粒子の粒子成長を妨げて微小粒子を得るような効果(粒子成長抑制効果)を奏するものをいう。粒子成長抑制剤としては、粒子成長抑制効果があるものであればどのようなものであってもよいが、その構造上、顔料残基を有する化合物であるか、または/および、水素結合形成能を有する部位を有しているものが、特に粒子成長を妨る効果が大きく好ましく用いられる。
また、本発明の粒子成長抑制剤によって粒子成長が停止されるのは、例えば、顔料結晶の成長方向が、水素結合生成方向と、それに略鉛直なπ平面方向とであり、そのそれぞれにおいて粒子成長抑制剤が例えば水素結合によって結合することで成長が阻害されることによるものと推測される。
以下に、本発明に用いられる、顔料残基を有する化合物からなる粒子成長抑制剤についてその具体例を示す。ただし、本発明はこれらの具体例に何ら限定されるものではない。
水素結合形成能を有する部位とは、窒素、酸素、硫黄、ハロゲンなどの電気陰性度が大きな原子(陰性原子)を含む部位を意味し、例えば該化合物が、アルコール基、チオール基、カルボン酸基、スルホン酸基、アミン基、ウレア基、ウレタン基、チオウレア基、アミド基などから選ばれる少なくとも1つの基を有しているものを例として挙げることができる。この中でも、ウレア基、ウレタン基、チオウレア基、アミド基を有して水素結合を形成し得る化合物が好ましい。また、顔料残基を有する化合物の構造中に水素結合形成能を有する部位を有していてもよく、あるいはこれを有していなくてもどちらでもよいが、顔料残基を有する化合物であってその構造中に水素結合形成能を有する部位を有しているものがより好ましい。
以下に、本発明に用いられる、水素結合形成能を有する部位を有する粒子成長抑制剤についてその具体例を示す。ただし、本発明はこれらの具体例に何ら限定されるものではない。
粒子成長抑制剤は、顔料前駆体の保護基を脱離させて顔料粒子を造る際、保護基の脱離前に添加する必要があり、対応する顔料の質量を基準にして0.05〜15質量%、好ましくは0.1〜8質量%、より好ましくは0.5〜5質量%の量で添加するのがよい。また、粒子成長抑制剤は1種類で用いても良いし2種類以上併用して用いても良い。2種類以上併用する場合は、どのような組み合わせであっても良いが、顔料残基を有する化合物からなる粒子成長抑制剤と水素結合形成能を有する部位を有する粒子成長抑制剤とを併用して用いることがより好ましい。
ここで、本発明によって得られる顔料微粒子の粒子径は、粒子成長抑制剤の種類などの条件によっても変化するが、顔料微粒子(一次粒子)の粒径は、50nm以下であることが好ましく、5nm〜40nmであることがより好ましく、10nm〜30nmであることが特に好ましい。
また、本発明において粒子径の短径と長径の差が抑制されているとは、長径が5〜50nmの範囲内で短径が5〜50nmの範囲内であり、かつ、長径と短径の差が0〜30nmの範囲内である微粒子を得ることをいう。さらに、本発明で得られる微粒子は、長径が5〜50nmの範囲内で短径が5〜50nmの範囲内であり、かつ、長径と短径の差が0〜20nmの範囲内にあることがより好ましく、長径が5〜30nmの範囲内で短径が5〜30nmの範囲内であり、かつ、長径と短径の差が0〜10nmの範囲内にあることが特に好ましい。
ここで、長径、短径とは、ある一粒の顔料粒子を回転楕円体粒子として近似した時に、その一断面である楕円状に直交する2本の直線を描いて、その最長の直線を長径といい、該長径と直交する短い方の直線を短径という。但し、長径と短径が同じ値であってもよい。
具体例としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、t−ブチルアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジエチルエーテル、ジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、ベンゼン、トルエン、ヘキサン、アセトニトリル、ベンゾニトリル、酢酸エチル、乳酸エチル、2−(1−メトキシ)プロピルアセテート、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、ジクロロメタン、トリクロロエチレン、クロロベンゼン、ニトロベンゼン、ピリジン、キノリン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
高分子分散剤としては、例えばその重量平均分子量(Mw)は、1000〜200000の範囲が好ましく、特に10000〜100000の範囲が好ましい。この重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(キャリア:テトラヒドロフラン)により測定されるポリスチレン換算重量平均分子量である。
また、顔料分散剤として、顔料残基を有する重合体であることがより好ましい。ここで、顔料残基により構成される有機顔料の構造は、本発明に用いられる前記顔料前駆体から転換されて得られる顔料の構造と同一であっても異なっていてもよいが、強親和性とする観点から同一又は類似する構造であることが好ましい。
化学反応方法とは、顔料前駆体の不溶性顔料への転換を開始もしくは促進させる化合物を何らかの方法で顔料前駆体と共存させることをいう。この際、顔料前駆体は、溶液中に溶解していても、固体のまま(例えば、ガラス基板上にスピンコートされた状態等で)存在していても良い。
まず、顔料前駆体と粒子成長抑制剤を共存させて溶媒に溶解させる。顔料分散剤を用いるときには、顔料前駆体、粒子成長抑制剤と共に溶解させる。ここで分散剤や溶媒、粒子成長抑制剤の種類は、顔料前駆体及び得られる顔料によって適宜選択される。この顔料前駆体溶液を攪拌させながら適当な酸などを加えることで、顔料前駆体が転換されて瞬時に不溶性顔料が形成される。
<顔料前駆体の合成>
[合成例P−1]
1,4−ジケト−3,6−ビス(4−クロロフェニル)ピロロ[3,4−c]ピロール5.0部を溶かしたテトラヒドロン溶液100部に、ジメチルアミノピリジン0.9部を加え25℃で攪拌する。そこに、ジ-tert-ブチルジカーボネート3.7部を加え30℃で1時間攪拌を行った。さらに1時間後、ジ-tert-ブチルジカーボネート3.7部を加え30℃で4時間攪拌を行った。反応終了後、ろ過をし、溶媒を留去する。残固体を炭酸水素ナトリウムの5%水溶液で洗い、続いて1規定塩酸で洗うことで、顔料前駆体P−1、7.7部を得た。
1,4−ジケト−3,6−ビス(4−クロロフェニル)ピロロ[3,4−c]ピロール2.9部を溶かしたテトラヒドロフラン溶液60部に、水素化ナトリウム0.7部を加え60℃で1時間攪拌した。その後、t−ブチルジメチルシリルクロリド4.6部を加え5時間加熱攪拌した後、吸引ろ過を行い、ろ液を濃縮した。析出した固体をクロロホルムに溶かしたのち、水で洗浄、ろ過を繰り返すことで、顔料前駆体P−2、4.4部を得た。
1,4−ジケト−3,6−ビス(4−クロロフェニル)ピロロ[3,4−c]ピロール5.0部を溶かしたテトラヒドロン溶液100部に、水素化ナトリウム1.23部(60%)を加え60℃で1時間攪拌した。その後、クロロ(ジメチル)(1,1,2−トリメチルプロピル)シラン5.5部を加え5時間加熱攪拌した後、吸引ろ過を行い、ろ液を濃縮した。析出した固体をクロロホルムに溶かしたのち、水で洗浄、ろ過を繰り返すことで顔料前駆体P−3、10.1部を得た。
1,4−ジケト−3,6−ビス(4−クロロフェニル)ピロロ[3,4−c]ピロール6.1部を溶かしたテトラヒドロン溶液200部に、ジメチルアミノピリジン1.0部を加え25℃で攪拌する。そこに、ジ-tert-アミルジカーボネート5.0部を加え30℃で1時間攪拌を行った。さらに1時間後、ジ-tert-アミルジカーボネート5.0部を加え30℃で4時間攪拌を行った。反応終了後、ろ過をし、溶媒を留去する。残固体を炭酸水素ナトリウムの5%水溶液で洗い、続いて1規定塩酸で洗うことで、顔料前駆体P−4、9.8部を得た。
1,4−ジケト−3,6−ビス(4−クロロフェニル)ピロロ[3,4−c]ピロール2.8部を溶かしたテトラヒドロン溶液50部に、水素化ナトリウム0.7部(60%)を加え60℃で1時間攪拌した。その後、t−ブチルジフェニルシリルクロリド4.8部を加え5時間加熱攪拌した後、吸引ろ過を行い、ろ液を濃縮した。析出した固体をクロロホルムに溶かしたのち、水で洗浄、ろ過を繰り返すことで顔料前駆体P−5、4.4部を得た。
D−1
下記繰返し単位M−1を与えるモノマー 10質量部
末端にメタクリロイル基を有するポリメチルメタクリレート 90質量部
(数平均分子量6000、東亞合成化学(株)製AA−6、商品名)
下記繰返し単位M−2を与えるモノマー 10質量部
末端にメタクリロイル基を有するポリメチルメタクリレート 90質量部
(数平均分子量6000、東亞合成化学(株)製AA−6、商品名)
D−3:ソルスパーズ24000GR(ルーブリゾール社製)
D−4:ソルスパーズ32000(ルーブリゾール社製)
D−5:Disperbyk−161(BYK Chemie社製)
D−6:Disperbyk−2000(BYK Chemie社製)
D−7:ソルスパーズ3000(ルーブリゾール社製)
D−8:EFKA6750(EFKA社製)
D−9:ソルスパーズ5000(ルーブリゾール社製)
D−10:ソルスパーズ39000(ルーブリゾール社製)
D−11:ソルスパーズ55000(ルーブリゾール社製)
D−12:ポリアクリル酸(aldrich社製)
D−13:ポリビニルピロリドン(和光純薬社製)
粒子成長抑制剤H−1(0.01部)、顔料分散剤D−1(0.5部)及び先に示した顔料前駆体P−3(0.9部)を1−メトキシ−2−プロピルアセテート(以下、PGMEAと略称する)100部に添加した溶液を、藤沢製薬工業社製GK−0222−10型ラモンドスターラー(商品名)を用いて、25℃、500rpmで攪拌し、その溶液中にトリフルオロ酢酸0.22部を一括添加することで、1,4−ジケト−3,6−ビス(4−クロロフェニル)ピロロ[3,4−c]ピロール顔料粒子を調製した。またこの際に、完全に顔料化が完了したことを、紫外可視分光光度計(島津製作所社製UV−2400PC、商品名)を用いて確認した。さらにこの溶液に、日本精密製作所社製超音波ホモジナイザーUSシリーズ(商品名)を用いて、超音波を30分照射することで、顔料粒子分散液R−1を調製した。
実施例1において、溶液に添加した材料の組成を下記表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様に顔料粒子を調製することで、顔料粒子分散液R-2〜R-81を得た。
実施例1の粒子成長抑制剤H−1(0.01部)、顔料分散剤D−1(0.5部)及び先に示した顔料前駆体P−3(0.9部)を1−メトキシ−2−プロピルアセテート(PGMEA)100部に添加した溶液を、顔料分散剤D−1(0.5部)及び先に示した顔料前駆体P−3(0.9部)を1−メトキシ−2−プロピルアセテート100部に添加した溶液に変更した以外は、実施例1と同様に顔料を調製することで、顔料粒子分散液W−1を調製した。
比較例1において、溶液に添加した材料の組成を下記表2に示すように変更した以外は、比較例1と同様に顔料粒子を調製することで、顔料粒子分散液W-2〜W−3を得た。
各分散液について以下の評価を行った。結果を表3、4に示す。
このようにして得られた顔料粒子の粒子径は、以下のようにして求めた。まず、支持膜を張ったメッシュ上に顔料粒子分散液を滴下、乾燥したものを試料として、透過型電子顕微鏡(日本電子社製JEM−2010、商品名)を用い、加速電圧100kVで観察を行った。続いて、測定した写真の粒子を1つずつ100個以上画像処理を行って、その長径、短径の平均を出した。なお、長径、短径とは、ある一粒の顔料粒子を回転楕円体粒子として近似して見た時に、その一断面である楕円状に直交する2本の直線を描いて、その最長の直線を長径とし、該長径と直交する短い方の直線を短径とした。
この微細な顔料粒子をインクジェット用途で使用した場合、ノズルヘッドでの目詰まりが改善されること、またカラーフィルターで使った場合、散乱光を抑制してコントラストが上がること、などが期待される。
Claims (12)
- 下記顔料前駆体の保護基を脱離して顔料に転換し、該顔料の微粒子を生成させるに当たり、下記粒子成長抑制剤の存在下で前記顔料への転換を行い、生成微粒子の長径と短径の差を抑制することを特徴とする顔料微粒子の製造方法。
[前記粒子成長抑制剤が、
(a)顔料残基を有する化合物からなり、当該顔料残基が、ジケトピロロピロール顔料、キナクリドン顔料、アントラキノン顔料、ジオキサジン顔料、およびフタロシアニン顔料から選ばれる少なくとも一種の顔料の残基であり、あるいは、
(b)水素結合形成能を有する部位を有し、当該水素結合形成能を有する部位が、ウレア基、ウレタン基、チオウレア基、またはアミド基である。]
[前記顔料前駆体が、下記一般式(1)で表される化合物である。]
- 前記顔料前駆体が下記一般式(2)〜(6)のいずれかで表される化合物であることを特徴とする請求項1記載の顔料微粒子の製造方法。
- 前記粒子成長抑制剤を、対応する顔料の質量を基準にして0.05〜15質量%で適用することを特徴とする請求項1または2記載の顔料微粒子の製造方法。
- 前記顔料微粒子の数平均径が50nm以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の顔料微粒子の製造方法。
- 前記顔料微粒子の長径が5〜50nmの範囲内で短径が5〜50nmの範囲内であり、かつ、長径と短径の差が0〜30nmの範囲内であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の顔料微粒子の製造方法。
- 前記一般式(1)における顔料前駆体が、顔料分子中のカルボニル基の酸素原子が保護基Cによりエノール保護された顔料前駆体であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の顔料微粒子の製造方法。
- さらに顔料分散剤の存在下で前記保護基を脱離し、前記顔料前駆体を前記顔料に転換することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の顔料微粒子の製造方法。
- 前記の顔料前駆体の保護基を脱離させる工程が、溶媒中で行われることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の顔料微粒子の製造方法。
- 前記溶媒が、水、アルコール類、ケトン類、エーテル類、芳香族化合物、二硫化炭素、脂肪族化合物、ニトリル化合物、エステル類、スルホキシド化合物、アミド化合物、ハロゲン含有化合物、ニトロ化合物、及び窒素含有複素環化合物から選ばれる少なくとも1つ、またはこれらの混合物であることを特徴とする請求項8記載の顔料微粒子の製造方法。
- 前記の顔料前駆体における保護基を、化学反応法、加熱法又は光分解法から選ばれた少なくとも1つの方法によって脱離させる工程を含むことを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の顔料微粒子の製造方法。
- 前記化学反応法において、顔料化を促す化合物として、酸、塩基、求核剤、親電子剤、酸化剤、還元剤、および配位性化合物から選ばれる少なくとも一種を用いることを特徴とする請求項10に記載の顔料微粒子の製造方法。
- 前記酸として有機酸または無機酸を用いることを特徴とする請求項11に記載の顔料微粒子の製造方法。
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