図2は、本願発明の検索仲介システムの一実施形態に係るハードウェア構成図である。検索仲介システムは、検索仲介装置I、検索者クライアントC、開設者が異なる実情報データベースR1(実情報データベースは1つ以上存在し、それらはR2,R3,‥と表示されるべきであるが、以下では説明の都合上、どのデータベースかを特定せずに説明する場合はRnで表し、個別のデータベースについて言及する場合は代表してR1についてのみ説明する。)が広域ネットワークで接続された構成をとる。また説明を分かりやすくするため図2には識別子利用記録登録装置A1も含めて描画されている。識別子利用記録登録装置A1は識別子担体M(RFIDタグ等)を読取った識別子読み取り装置Dからの情報を受け、これから1件の識別子レコードを生成して所定の実情報データベースR1に対して生成したレコードを登録要求する。
これらの各構成要素は、何れも標準的なTCP/IP通信で接続されたサーバー/クライアントコンピュータ上に構築される。各コンピュータのハードウェア上で動作する複数のソフトウェアの同一装置内でのプロセス間連携、及び通信を介した別ハードウェアとの相互作用によって動作する。
各コンピュータは、別のシステム個体と相互作用を行うためのTCP/IP通信装置を備える。すべての装置は、複数のシステム個体と、同時並行で別の領域のネットワークに接続する、あるいは同一ネットワーク上で異なる用途の通信セッションを処理する必要があるため、マルチセッションの通信機能を持つことが必須となる。検索クライアント Cは、時間経過ごとに作業が遷移し、その通信先は順次切り替えていくことで単一とすることも可能なため、マルチセッション通信の機能は必須ではない。しかしながら、現在のコンピュータハード構成の常識から、自ら望まずともマルチセッション機能を備える。
同じく各コンピュータは、複数通信セッションを生み出す源となる複数のソフトウェアプログラムを同時並行で内部連携させながら動作させることが必須となる。そのため、中央演算装置はプロセス間領域干渉を防ぐ機能を持つ揮発記憶装置とつながって、マルチプロセスの機能を持つことが最低限要求される。又、このプロセス間連携を実現するための内部通信装置(データバス)が必要である。又、動作させるソフトウェアプログラムを定常的に格納し、通信とプロセス処理によって得たデータを永続的に保持する永続記憶装置(ハードディスク)が必要である。但し、これらいずれも今日の汎用コンピュータの常識的な構成であり、特段の物ではない。
検索仲介装置Iおよび実情報データベースRnは、通常、汎用サーバーコンピュータ上に構築して実現する。これは、取り扱う情報量がその他のクライアント型より格段に多く、同時動作させるプロセスと通信セッションも同種のものが並行して別の内容を取扱いながら動作することに起因している。そのため、これらサーバーコンピュータは、多数のマルチプロセス中央演算装置を搭載し、広大な揮発記憶装置を備え、且つ、これらを高速に並行切替え接続するプロセス間サービスバスと呼ばれる強化された内部通信装置を備える。更に、ここで交信・処理されるデータは、全体システムの寿命のある限り維持され続け、且つ、時には書換えの衝突が起きるほど頻繁に内外から読み書きされる。これを処理するため、これらサーバー系システムの永続記憶装置は、単なるハードディスク上のファイルシステムでは不十分となるため、データベース管理システムを必須とする。但し、これも汎用的なものであれば十分である。
検索者クライアントCおよび識別子利用記録登録装置A1のクライアント系は、対人対面操作を前提に使用される。又、複数のソフトウェアプログラムを作業者が操作しながら業務を進める。そのため、マルチウィンドウ対人対話装置を備えることが望ましい。しかしながら、これは作業用ソフトウェアの作り方次第ではマルチウィンドウである必要は無い。そうであっても、現在のクライアントコンピュータは、マルチウィンドウを標準とするオペレーティングシステム付きで販売されるのが通例であるため、不要でもそうならざるを得ない。
以上まとめると、検索仲介装置Iは、マルチプロセス中央演算装置、揮発記憶装置(RAM)、データベース管理システム永続記憶装置(ハードディスク)、プロセス間サービスバス内部通信装置、マルチセッションTCP/IP通信装置を備える。実情報データベース Rnは、マルチプロセス中央演算装置、揮発記憶装置(RAM)、データベース管理システム永続記憶装置(ハードディスク)、プロセス間サービスバス内部通信装置、マルチセッションTCP/IP通信装置を備える。検索者クライアントCは、マルチプロセス中央演算装置、揮発記憶装置(RAM)、永続記憶装置(ハードディスク)、プロセス間サービスバス内部通信装置、TCP/IP通信装置、マルチウインドウ対人対話装置を備える。識別子利用記録登録装置A1は、マルチプロセス中央演算装置、揮発記憶装置(RAM)、永続記憶装置(ハードディスク)、内部通信装置、マルチセッションTCP/IP通信装置、マルチウインドウ対人対話装置を備える。
各コンピュータは、ハードウェア要素の能力に強弱はあってもほぼ同じ構成を取るのに対して、それぞれの役割によって異なる複数のソフトウェアプログラムが永続記憶装置に搭載されている。それらのソフトウエアプログラムが各コンピュータの中央演算装置に読み出され解釈され各コンピュータのハードウエアリソースを割り当てられて実行されることによりある機能を持ったプロセスとして動作する。あるい複数のプロセスが通信セッションを張り連携して動作する。各ソフトウェアプログラムは、一般的なコンピュータ資源の利用方法を逸脱する物理的な動作は必要としない。前述のマルチセッション・プロセス間連携を取り仕切るLINUX等の汎用オペレーティングシステムが管理するプロセススレッドとして、メモリー領域と内部通信及び永続記憶を割り当てられながら、それぞれのソフトウェアとして書かれた内部ロジックに基づいて、異なる振る舞いをする。特にサーバー系システムで動作するソフトウェアは、ひとつのソフトウェアプログラムも内部的には複数の異なる役割を果たすソフトウェアプログラム要素の複合体として構成され、それぞれのソフトウェア要素が、又同一のものが同時並行に別の内容を処理するべく動作する。更に、同種乃至は異種のソフトウェア要素が別のソフトウェア要素の処理・通信結果を受けて、次のソフトウェア要素を起動乃至は依頼して処理を進めていく。それぞれは中央処理装置と揮発記憶装置上においてスレッドとして存在し、処理に使用する演算器や、揮発性ないしは永続(不揮発性)の記憶領域、内部乃至は外部への通信先が衝突しないよう、動作順序と範囲がオペレーティングシステムによって防御され管制される。
例えば、図2においては、検索仲介装置Iには、検索者管理機能として動作するプロセス通信セッション群、中継先管理機能として動作するプロセス通信セッション群、実検索式中継機能として動作するプロセス通信セッション群が動作することを示している。
検索仲介装置Iは、そこで提供される高度付帯サービスを処理することを含め、膨大な通信・データ処理を担当することがある。このため、図2において、特に「 (群) 」と表記するように、同一のソフトウェア構成を持つハードウェアを並結する、乃至はそれぞれのソフトウェアプログラムを個別のハードウェア複数に搭載して、これをあたかも1台のシステムであるかのごとく連携動作させるクラスター構成にする場合がある。
異種ソフトウェアを分散させて搭載させる場合には、そのソフトウェア処理の特徴に応じて、組み付けるハードウェア装置要素の能力を異なるものにすることがある。例えば、検索仲介装置Iの実情報保有表DB243を担当するハードウェアは、取り扱うインデックスリストが膨大な場合には、データベース管理システム部やデータベース管理システムを、複数のハードウェアに分散させるクラスター構成にすることもある。
あるいは、実検索式中継・集約スレッドを担当するハードウェアは、その内部の高度付帯サービスを実行するために、戻ってくる回答内容をXMLのエレメント群単位に分解して、それぞれの単位について内容を計数したり書き換えたりするサブスレッドを多数起動して分担処理させる方法があり、これを効率的に実現するために、高速内部通信バスで接続されたマッシブクラスター中央演算装置と高速揮発記憶装置を備え、その性能向上には寄与しない永続記憶装置を省く構成とすることもできる。
一方、回答レコードが膨大である場合には、逆に強力な分散クラスターデータベースを組み付ける場合もある。膨大な数の検索クライアントから、その何倍もの実情報DBに対して中継を求められる場合には、それぞれのセッションを処理するプロセスの並列は律速にならず、通信回線へのゲートがボトルネックになる場合もある。これを解決するために、ひとつのサーバーハードウェアに複数のマルチセッション通信装置を組み付け、それぞれが接続されている広域ネットワークの帯域幅を全体で使いきるまで通信性能を強化する方法も取られる。
実情報データベース R1においても、膨大な実情報レコードを格納して検索させる場合には、クラスターデータベース構成を取る場合もある。
中継制御に使用する以外のソフトウェアプログラムは、既存の標準検索規格が規定する動作を実現するために、ほとんどが市販されているものである。
いずれのシステムも、サービスバスは内部通信の範囲を越えて、TCP/IP通信上のXML Webサービス等による疎結合構成に拡張される。疎結合構成は、分散クラスターデータベースを基盤に実現されるものも市販されている。但し、このときのクラスター間のTCP/IPネットワークは、広域ネットワークから分離された閉域ネットワークとされる。しかしながら、このクラスター間閉域ネットワークへは、ロードバランサーや高次レイヤースィッチを介して広域ネットワークに論理的に直接に接続している複数のハードウェアからのプロセストラフィックを流すことができる。拡張サービスバスもクラスターデータベースも現在のコンピュータ技術では常識的に広く知られたものであるため、動作の詳細説明は省く。
それぞれのハードウェアに搭載される個々のソフトウェアプログラムに固有の内部ロジックは、各機能部の内部動作として別途、詳細に説明する。又機能部乃至は外部のハードウェアとの相互のプロセス間通信は、それぞれを結ぶ連携動作として詳細に説明する。但し、データベース管理システムを基盤とする機能要素については、その動作をデータベースへの記録、検索、読み出しとしてそれを明示する。
これらハードウェアを結び付け、データ交信を実現するTCP/IPネットワークは、通信先への接続を割り振るルーターの相互接続によって実現されるが、余りにも一般的なものであるので、説明を省く。広域、閉域と通信範囲の異なるネットワークは、物理的にルーターで遮断されている場合と、VPNとして仮想論理的に実現されている場合がある。前述のロードバランサーや高次レイヤースィッチもこのTCP/IPネットワークの構成要素であり、各構成コンピュータ群からは透過的に意識することの無い存在である。これらも今日の通信技術の常識であるので説明しない。
識別子利用記録登録装置 A1は、識別子読取装置 Dの動作を制御し、識別子利用業務の背景情報を付記する構成を採っている。これは一般的なバーコードリーダーを利用したPOS端末やRFID無線機を利用した物流検知・記録システムに他ならない。固有のソフトウェアとして識別子読取装置 Dを動作させるもの、外部の業務管理システムと交信して読み取り作業の背景情報を取得し作業進行を管理するもの、そして実情報データベース Rnが準拠する標準書式で識別子取扱い記録 rを作成し、R1への登録寄稿を行うものが動作する。これらソフトウェアは単独でも組合せでも端末に搭載し、上位に処理を送る連携形態でも実現される。これらの装置とソフトウェアを動作させるため、マルチウィンドウのGUIおよびマルチプロセスを処理できる中央演算装置、および識別読取装置が接続される構内域と、Rnと直接通信を行う閉域の異なるネットワークに同時に接続するマルチセッションTCP/IP通信装置を備える。読取装置とはISO-15961などの規格で接続され、ISO-15459などで記載された識別子を読み取る。識別子担体がRFIDであるなら、ISO-18000などの無線交信で読取装置と担体は通信する。この識別子利用記録登録装置 A1のハードウェアとソフトウェアは、さまざまな形態で既に市販されている。
図3は、識別子利用記録登録装置An、実情報データベースRn、検索仲介装置I、検索クライアントCの各装置間コミニケーションを説明する模式図である。検索クライアントCと検索仲介装置I間の検索依頼3、検索結果6、検索仲介装置Iと実情報データベースRn間の複写検索式4、個別検索結果5、識別子利用記録登録装置Anから実情報データベースRnへの取扱記録rの登録依頼などの装置間の通信は、AS2乃至はebXML Messaging Serviceに代表されるTCP/IP上でのHTTP−POSTによるXMLデータ送付を規定するプロトコルによって実現できる。但しこれ以外の通信方法で実現してもよい。
図7は、検索仲介装置Iの内部機能ブロック構成図である。図7に基づいて検索仲介装置Iの機能・動作を説明する。検索仲介装置Iには大きく分けて、検索者対応機能10、中継先管理機能20、実検索式中継機能30の三つの機能が備えられている。これらの機能は、検索仲介装置Iを実現するサーバコンピュータのハードディスク等に記録された専用のソフトウエアプログラムが同サーバコンピュータのマルチプロセス中央演算装置により解釈されサーバコンピュータのハードウエア資源を割り当てられて実行されることによって機能する。そしてそれらの機能の一部の代表的なものについては図7に検索受付け部12、中継先管理部21などと各1つのブロックを当てて示している。この図において、データパス矢印上に載る書類カード上の番号は、以下に説明する第1〜第6動作処理で交換されるデータを示す。この書類番号は、図1の概念図中の矢印番号が指す第1〜第6動作処理と合致している。図1に登場しない、請求や分配の金銭上の交換データを示す書類カードは通番を持たせていない。以下、図7の機能ブロックが図1の概念図を動作させる概要を説明する。
第1動作処理「実情報データベースの届け出」:実情報データベースR1が、開示区分設定票1を検索仲介装置Iに届け出ることにより、中継先管理部21は中継用の実検索アカウントを発行し、実情報の開示対象者区分を検索仲介装置Iに登録する。検索仲介装置Iの中継先管理機能20は開示区分設定DB242を備えており、開示区分設定票1に設定された所在アクセスパスと実情報の開示対象者区分は提出元のデータベースR1と関係付けられて開示区分設定DB242に登録される。
図12はあるデータベース開設者が提出した開示区分設定票1により設定される実情報の開示対象者区分の例である。検索者の属する業種(図12の表の各列に対応)に応じて提供する情報提供サービスの程度をクラス1〜クラス5の段階で示している。検索者が身元を開示する場合と、開示しない場合でサービス程度を区別している。クラス1はデータベース内容を提供しない(開示しない)段階を示す。クラス5はデータベースに登録された内容をそのまま(粒度処理をせずに)提供する段階を示す。その間のクラス2〜4は、その中間のサービス程度、すなわちそのクラスの程度に応じてデータベースの記録内容が粒度処理されて提供されることを示す。例えば、身元も属する業種も開示しない検索者に対してはこの表はクラス1を示しているのでこのデータベースは検索要求に応じない。一方、身元を開示するドラッグストアチェーンまたは製薬業に属する検索者に対してはクラス5なのでデータベースに記録された内容を粒度処理せずにそのまま提供する。
第2動作処理「検索者身元の届け出」: 検索クライアントCは検索者開示身元届け出票2と身元確認のための証明公開鍵を、検索仲介装置Iに届け出る。検索者管理部11の働きにより検索者管理表111に検索者アカウントが登録される。
図11は開示身元届け出票2によって検索者管理表111に登録された検索者アカウントを例示したものである。図11の表の各行に、登録された各検索者の登録情報が表示されている。検索者開示身元届け出票2は、図11の表の各列に示す項目である、検索者名、業種(検索者の属する業種)、所在地、年商規模、資本系列、身元開示条件、検索式身元を明らかして検索仲介装置Iに伝えるものである。身元開示条件にはいくつかの予め定められた開示方針のうちのいずれかを指定する。即ち、「開示」「非開示」「指定の項目のみ開示」「指定業種(データベース開設者の属する業種)にのみ開示」等の中から一つ選択する。開示変数は身元開示条件を修飾する情報を指定する。例えば、身元開示条件が「指定の項目のみ開示」ならば、その指定の項目を、「指定業種にのみ開示」ならばその業種を列挙する。尚、「粒度処理」の粒度とはデータベースの記録内容をどの程度の詳細さで提供するかの度合いをいい、「粒度処理」は特許文献2で言及される「粒度処理」と同概念である。
第3動作処理「検索式中継の依頼」:検索クライアントCは検索式3を検索仲介装置Iに投函する。検索者対応機能10の一部としての検索式受付部12は、検索者管理表111に登録されている正規の検索者からの中継依頼であることを電子署名で判定する。検索式解析部15は検索式から所定の特徴量を抽出して、検索式を検証・解析し、重大な障害を引き起こす可能性が少ないことを確認する。具体的には、極端に限定が浅く膨大な回答データ量を引き起こすワイルドカードが多用されていたり、巧妙なSQLインジェクションコマンドが含まれるなど、検索式が重大な障害を引き起こす可能性が少ないことを予備的に確認する。この段階で、重篤な懸念があると判断された場合、検索結果提供部13にセキュリティー懸念から仲介を拒否する通知を戻させる。
第4動作処理「検索式中継の実行」:中継管理機能20は、中継先判定部25を備え、ここで検索式3の中継先となるべき実情報データベースR1〜3の選別を実行する。中継先判定部25は、検索式中継が無駄にならない中継先を選定する。実検索中継機能30の検索中継部31は中継先判定部25が選択した中継先へ複写検索式4を中継し、各実情報データベースからの個別の検索結果を受取る。ここで中継先判定部25の動作の詳細を述べれば次のようなものである。
第4.1動作処理「実情報保有実績先の抽出」:中継先判定部 25は、第3動作処理の副動作、検索式解析の一部として実施された検索式3中に指名されている識別子の抽出結果を利用し、実情報保有表DB243のインデックスリストを検索して、当該識別子について実情報を保有することが確認されている実情報データベースR1他を抽出する。この判定の詳細は後述する。
第4.2動作処理「非開示確定先の除外」:中継先判定部25は、開示区分設定DB 242に対して、第4.1動作処理で抽出されたR1他が届け出ている検索者区分に対する情報開示区分と、検索者管理表111に登録されている検索クライアントCの開示身元属性を照合し、検索クライアントCが一切、情報非開示の対象として事前に確定する実情報データベースR3他を抽出し、中継先からこれら回答拒絶が事前に確定しているところを除外する。具体的には、中継先判定部25は、検索者を認証して得た検索者IDにより検索者アカウント(図11)を参照して、その検索者の属する業種と開示態様を知ることができるので、これと、各データベースごとの開示区分設定表を照合して検索式を中継しても回答が期待できるデータベースと期待できないデータベース(そのデータベースから見て当該検索者がクラス1に相当する場合)を事前に判断することができる。
この第4.2動作処理の結果と、前出の第4.1動作処理の結果との論理積をとることで検索式3を中継すべき先が決定される。すなわち、捜索対象にある実情報の保有が確認されていて、かつ検索者に(開示粒度はともかく)何らかの情報開示の意思のある実情報データベースだけが選抜された状態になる。
第5動作処理「検索結果の集約」:複写検索式4の配布を受けた実情報データベースR1他は、自身の方針に即して開示できる範囲で(標準)、個別検索結果5を検索仲介装置Iに回答する。この第5動作処理は、中継先管理機能20の実情報保有表更新部24で実行される新規識別子抽出処理と、粒度処理部 23で実行されるオプションの情報粒度フィルター・内容課金の事後処理を含む。これらはそれぞれ後述する。
第5.1動作処理「粒度処理」:粒度処理部 23は、中継型検索仲介システムがオプションとして提供する情報粒度フィルター・内容課金の事後処理を、開示区分設定DB242に格納されている各回答の提供者、実情報データベースR1他それぞれが指定する内容開示制限指示に基づき実行する。このとき、実情報レコードのデータスキーマが規定する項目に識別子として記述されている事物を抽出し、回答元を明示して実情報保有表更新部24に通知する。尚中継型検索仲介システムにおける「粒度処理」は公知(特許文献2)なので詳細説明は割愛する。
第5.2動作処理「応答事物の蓄積」:実情報保有表更新部24は、粒度処理部23で抽出された識別子を回答元ごとに実情報保有DB243に照会し、これまでの蓄積に含まれていなかった新規の識別子を新たに登録する。実情報保有表DB243はインデックスリストの形式で情報が集積される。インデックスリストについての詳細は後述する。
第6動作処理「検索結果の一括回答」:実情報データベースRごとの回答は集約され、検索結果提供部13より一括で検索クライアント Cに回答する。
以上は、検索仲介装置Iの基本の実装例の動作となる。さらに、検索の網羅性と関心事の秘匿性をさらに向上させる仕組みを付加する。そのための仕組みが常置検索の導入である。即ち、第3動作処理においてインデックスリストの作成に常置検索を利用するようにするのである。中継先管理機能20は、次の副動作処理を実行する。
第1.1動作処理「インデックスリスト用の常置検索登録」:実情報データベースR1(〜3)に対して、インデックスリストの変化差分を繰り返し検知するよう依頼する常置検索式qを作成する。検索仲介装置I自身の検索アカウントにおいて実情報データベースR1他で常置検索が実行されるよう中継先管理機能20の一つである常置検索式発行部26を通じて実情報データベースR1他に常置検索を依頼する。
第1.2動作処理「把握用の常置検索回答の弁別」:実情報データベース R1は、初回だけは、それまでに蓄積している全記録をフルダンプする。以降、前回の通知からの記録差分である常置検索回答sを検索仲介装置Iに定期ないしは適時、繰り返し通知する。検索中継部31は、着信した常置検索回答が検索仲介装置I自身の検索アカウントによるものとして識別し、常置検索回答sを中継先管理機能20に回送する。なお、常置検索の既に実情報レコードの蓄積が進んでいる実情報データベースの場合は、初回回答が膨大なデータ量になる場合があるため、初回回答の受渡しは、通信ではなく、物理媒体の運搬によって行っても良い。
第1.3動作処理「インデックスリストの作成・更新」:粒度処理部23は常置検索回答sに対しては単に識別子抽出部として機能する。すなわち、回答sから個別の識別子として認識される項目を抽出して実情報保有表更新部24に通知する。こうして、実情報保有表DB243のインデックスリストは更新される。識別子の認識とインデックスリストの作成の詳細は別途、後述する。
通常の検索者からの検索要求を中継することによる個別検索結果の、回答として通過する実情報レコードから識別子を抽出して、記録済みのものと照合する処理も、インデックスリストの更新に有効であるので、常置検索回答sを利用する処理と併用することが望ましい。
図6は実情報レコードとインデックスリストを説明する図である。これまで本発明で想定する実情報レコード、識別子、インデックスレコードなどの用語を明確にしていなかったので、これらの用語について次に説明する。
図6a)は実情報レコードを示す。上段は物理的な実態がある物品の取扱記録である。「製品固体番号」、「収容容器番号」、「取扱作業種類」、「記録発生場所」などは識別子の項目種別(カテゴリ)を示す標識であって、データの内容自体ではない。それらの右側にある、(製品固体番号に対しての)「3698−895−569」、‥、(収容容器番号に対しての)「4597−64−97658」、‥、(取扱作業種類に対しての)「入荷検品」などの数字や文字列が実情報の内容である。これらの数字や文字列(符号)の一つのまとまり<図6a)における「製品固体番号」、「収容容器番号」、‥、「記録所有権者」の各項目種別についての数字や文字列(符号)のすべて>が1件のレコードである。これは識別子利用記録登録装置A1から登録依頼される1件のデータレコードに相当する。この項目種別についての数字や文字列(符号)の一つ一つを識別子という。本発明が想定している検索システムの場合、検索者は、この識別子のいくつかをAND,ORの論理演算子でつなげて構成した条件式でシステムに問い合わせることを想定している。そして、その条件式に合致した実情報レコードがそのレコード単位で検索回答される。ただし、識別子は常に全ての桁を明示する必要はなく一定の条件の範囲でワイルドカードを用いても良い。したがって、本発明が想定している検索システムの場合は、識別子の一つ一つが検索のキーワードと考えられる。そして通常の検索の場合は、実情報レコードのまとまりで検索結果が作成され回答される。
図6b)はインデックスリスト(より正しくは「正引きインデックスリスト」)の例である。正引きインデックスリストはデータベースRnごとに一つ作成され管理される。インデックスリストはそのデータベースRnが保有する実情報レコードの中に記載されている識別子を単に抜書きして一覧のリストとしたものである。通常の実情報レコードは図6a)で示したように、いくつかの識別子が関係しあった情報として作成されるが、インデックスリストは、単に、ある識別子がそのデータベースの中に存在するかどうかだけを示す。例えば、図6b)においては、その一番上にある「3698−895−569」という識別子を含む実情報レコードが、データベースR1の保有するデータの中に存在していることが示される。しかし、その識別子がどのような状況で記録されたのか(どのような他の識別子とともに1件の実情報レコードを形成しているか)については何も示さない。
図4、図5は、以上の第1〜第6の動作処理と各副動作を、外部通信で結ばれた疎結合の関係にある独立システムと、各システム内の内部バスで接続された概要機能ブロックごとの相互作用シーケンスとして図示したものである。実検索の実施前後で、前段の準備段階とデータの蓄積の流れを示す図4と、後段の実検索が依頼されて中継先が選別されて仲介が実行される図 5に分けて表している。前段後段とも機能ブロックごとに相互連続性・依存性のないものは上下に分離されている。機能ブロックの一連の動作にあるものは、準備段階と検索実行段階の間にある待機状態で分かれている。機能ブロックごとの相互作用は必ずしも受動的に起動される直線シーケンスには無いものがある。上向に循環するループで常時可動しているプロセスや、一動作後、次の起動を待機するプロセス、常時、割り込み書き込みを受けて変化していて、把握されている状態と瞬間の状態が異なるプロセスもある。
図4の列枠で分割された独立システムと概要機能ブロックごとにその動作の流れと、その中での図7の動作処理のタイミングと相互作用の細部を説明する。図4においても、データパス矢印上に載る書類カード上の番号は、図1中の矢印番号が指す第1〜第6動作処理で交換されるデータと合致している。図1に登場しない、補助の交換データを示す書類カードは通番を持たせていない。
識別子利用記録登録装置A1:識別子利用記録登録装置A1は、図4のステップS-A1-1に示す次の動作を繰り返す。実情報データベースR1に格納されるべき実情報の本文レコードを生成し、作成した実情報レコードを、R1の実情報保持プロセスが停止していない限り、その他図4の右側のいずれのシステムの動作順序に拘束されることなく、実情報データベースR1に任意の時刻において寄稿登録する。実施例として、識別子利用記録登録装置A1は取扱い物品を物品固有の識別子で識別し、その物流過程や所在・来歴を解明する物品トラッキング記録を作成するシステムを想定する。識別子の取扱い記録は、通常、自動認識で取得される物品識別子の観測通報に、その観測が行われた業務背景を記述する項目データを付記することで作成される。
図6a)実情報レコードは、この取扱い記録の実情報レコードの事例である。上段は、物理的な実体がある物品の取扱い記録である。一方、下段は、物理的な実体は無い情報要素の集合に意味を与えた電子データ、ここでは業務伝票の取扱い記録である。電子データの取扱い記録の作成には物理的な識別子の読取装置と読み取り行為が伴わないだけで、識別子が特定するデータの利用の事実に、その利用の背景情報を付記する過程は、両者の区別は無い。識別子利用記録登録装置A1は、作成した識別子取扱い記録の実情報レコードを実情報データベースR1に、Webサービス等の一般的なTCP/IP上位プロトコルにより記録が作成され登録が起きる都度、任意の時刻に送信する。この寄稿の発生が独立事象として起きることによって解決するべき課題が生じている。
実情報データベース R1:図4の左から2つ目の枠は実情報データベースR1上で動作するプロセスを示す。それらは、a.開示対象者登録、b.実情報保持、c.常置検索維持、d.実情報操作で示されている。右列上段のS-R1a-1の開示対象者登録ステップは、第1動作処理の開示区分設定表1を編集して仲介システムに送信するだけの過程であり、必ずしも自動化されたコンピュータ通信プロセスである必要はない。開示区分設定表1の送信も、必ずしも電子的なデータ交換によるとは限らない。物理的な書面を郵送し、転記登録することでも同等のことが実現される。S-R1c-1の常置検索登録ステップで、S-I20-2ステップにおいて検索仲介装置Iが任意の時刻に送信してくる常置検索式を受信し、常置検索式中に付帯記述される常置検索の実行条件と、その都度、繰り返し実行される実検索式を登録する。さらにS-R1c-2の巡回ステップにおいて、登録された実行条件が発動される状態になることを監視し続け、条件が充足した場合に該当する実検索式を実行に掛ける。実行条件は、任意の時間的な周期を指定する場合、あるいは新規に蓄積される、または記録内容に修正が加えられる件数がある閾値を越えた場合、ある特定の内容を含む記録が寄稿され登録される場合などを設定する。常置検索が発動される度に検索結果を作成し、常置検索の依頼者にWeb サービス等の一般的なTCP/IP上位プロトコルで即座に送信する。
常置検索の場合も、検索者からの直接の検索依頼または検索中継装置Iにより中継さ
れた検索依頼を受けた場合と同様、実情報データベースR1が回答する内容は、実情報レコードの1件のまとまりごとのデータである。すなわち、図6a)に示したS-A1-1ステップによって識別子利用記録登録装置A1他が実情報データベースR1等に寄稿登録した実情報レコードの単位である。図6a)に例示される取扱い記録の実情報レコードを0件以上、分解その他手を入れることなく直列に連結したデータである。尚、検索条件に合致するレコードが存在しない場合の他、実情報データベース側の都合で提供を拒否する場合には空文回答(0件回答)となる。
その下の「d:実情報操作」のプロセスは、S-R1d-1ステップの登録されている実情報レコードを何らかの理由で修正する事態が起きた場合に臨時に発動される単発処理である。ただし、修正は不定期に頻発する。図5の「e:分配通知待受け」プロセスも、S-R1e-1の検索仲介装置Iから寄与分配通知を受信するステップだけであり、これも必ずしも自動化されたコンピュータ通信プロセスである必要はない。この部分の通信プロセスは、この全体システムが有償の経済行為として動作することを示すために取り上げている。ただし、これはebXMLに代表される標準的なEDIの規定の上に容易に構築されるものであり、全体的なデータ通信プロセスに完全に統合できる。
以上の4プロセスは、これら相互には直接のインタラクションを持たない独立プロセスである。実情報データベースR1の基幹プロセスは、左列の「b:実情報保持」プロセスである。このプロセスフロー図では、それぞれの動作を直列に記述しているが、実際にはそれぞれの動作は非同期に独立に発生し、登録や修正の書き込み処理のたびに直前の状態観測である検索結果とは異なる状態に遷移するデータベースプロセスそのものである。
S-I20-6ステップで図示される第4動作処理の実検索の依頼と、S-R1b-5ステップで示す第5動作処理のその結果回答からなる検索仲介装置Iからの即時実検索も、「b:実情報保持機能」プロセスの通常の検索動作で実行される。図5中のS-I20-6ステップとS-R1b-5ステップとの関係では検索仲介装置Iからの検索依頼は、即時実行だけで処理される双方向パスだけを図示しているが、検索依頼は常置検索として来る場合もある。この場合は、前述の「c:常置検索維持」プロセスに常置検索式を転送し、その動作を制御させる。即時検索か常置検索かは、実検索式を受け入れるWebサービスのインターフェイスコマンドで呼ばれる段階で区別される。即時検索と常置検索の処理には1点、機能的な差異がある。即時検索は、検索条件に特段の指定が無い場合、すべての蓄積記録を検索の対象とするが、常置検索の場合、検索条件に自動的に、前回の検索実施時刻より新しい、記録の追加ないしは修正が起きたレコードに限定する、という論理積項が更新されて付記され実行される。これは差分検索として広く知られたもので、容易に実現される。識別子利用記録登録装置 A1からの実情報レコードの寄稿登録とその格納、および実情報操作プロセスからの既存レコードへの修正は、常時、予測不能な間隔で、すなわちポアソン到着と想定される頻度で繰り返し非同期に独立して発生する。しかも書き込み処理であり、その発生直後にはデータベースの記録状態に変化が残される。
ここでの検索依頼の受付と回答の交信は、図5では検索仲介装置Iとだけを想定しているが、元来は、検索仲介装置Iを介さずに検索クライアントCおよび複数のその同種の別の検索者と直接、交信することが前提にある。このような直接接続でデータ交信を行うには、アクセスして来るすべての検索者に対して、実情報データベースR1がアカウント管理を行う必要がある。このような直接接続ではなく、検索仲介装置Iだけを介した間接接続の形態を採ることにより、実情報データベースR1はこうした煩雑な多数のクライアントのアカウント管理から開放される。ただし、検索仲介装置Iは同時並行で複数の異なる検索式の処理を依頼して来るため、実検索の実行プロセスであるS-R1b-5ステップはマルチスレッドで並行動作することになる。
検索仲介装置I:本発明の中核をなすシステムである。検索式中継・回答集約型の検索仲介システムそのものを原型として、無効中継を抑制する付加機能を有する。図7中に図示したように、右列の検索者対応機能10と左列の中継先管理機能20の大域ブロックで構成される。それぞれの大域ブロック内の各機能ブロック間の相互作用は、図7の解説で述べている。各機能ブロックの動作処理の詳細は、ここでの全体構成の解説の後に述べる。右列の検索者対応機能10は、S-I10-1ステップに図示する、検索者管理部11が専ら受け持つ第2動作処理のS-Ca-1ステップの検索クライアントCからの開示身元届出票2の受付と検索クライアントCのアカウント発行の準備手続の前段と、第3動作処理のS-Cab-1ステップから始まる実検索の中継依頼および、第6動作処理のS-Cb-3ステップの回答の完了までの中継受付・回答プロセスの後段とに大きく分かれる。
図7の解説で述べていない動作処理として、S-I10-2ステップからS-I10-5ステップにわたる仲介判定の結果、検索中継を拒絶する通知をS-Cb-2ステップとして検索クライアント Cに送付するパスがある。これは実情報データベースが自己都合で空文を拒絶回答の換わりに発行するのとまったく同等に動作する。この中継拒絶通知を送らずに、中継も実施せずに検索仲介装置I上で空文回答を作成し第6動作処理として送りつけることでも同等の結果を得られるため、どちらの方法を取るかは任意に選択可能である。
もう1箇所、図7の解説で述べていない動作処理にS-I10-7ステップの料金集計とその請求動作がある。これは実情報データベースR1のプロセス説明で述べた寄与分配通知と対応するサービス利用料・情報提供料の課金・請求プロセスで、実現形態はEDIでも郵便でも構わない。前段のS-I10-1ステップの開示身元登録は、届け出票の記載内容修正の依頼が起きる例外を除き、初期設定として1検索者に1度だけ実行されて完了し、後段の中継待機に移行する。後段は、S-Cb-1ステップの第3動作処理の中継依頼が発動されるたびにS-I10-2ステップからS-I20-9ステップまではシーケンス動作し、S-I10-6ステップでの第6動作処理の回答と後処理の完了をもって再度、待機状態に復帰する。ただし、1検索者の1検索依頼については、後段シーケンスは1本として流れるが、1検索者が複数の検索中継依頼を同時発行する、ないしは検索クライアントC以外の別の複数のアカウント取得者が同じく複数の異なる実検索式の中継を同時に依頼して来ることが定常的に起きる。この場合、検索者と実検索式およびそれに伴う検索中継先を弁別した後段プロセスが複数並行で走ることになる。
左列の中継先管理機能20は、変更が申し出られない限りは1度しか処理フローが流れない第1動作処理の開示区分設定プロセスのS-I20-1ステップ(図4)と、拡張導入した中継制限に利用する実情報保有表DB243のインデックスリストを作成・維持するための変動差分検出用の常置検索を依頼し反映させるS-I20-2ステップからS-I20-5ステップに至るプロセスからなる中段、および、待機状態から右列のS-I10-5ステップからの中継依頼を受けて、S-I20-6およびS-I20-7ステップ(図5)で個別の中継先を判定して、中継して回答を回収するS-I20-8ステップと特許文献2の記載の粒度処理と同様の処理を行うS-I20-9ステップ、および、実情報データベースRnからの検索回答に含まれる識別子から当該データベースのインデックスリストに含まれていない新規な識別子を抽出して実情報保有表データベース243を更新するS-I20-10とS-I20-11ステップ、さらに情報料を算定するS-I20-12ステップを実行してセッションを完了し、再度、待機状態に復帰するまでの下段に大きく3区分される。
図4中、ハッチングで囲った中段左の領域は図8において細部を説明していることを示す。インデックスリスト維持のための常置検索式qの依頼であるS-I20-2ステップと回答sの回収であるS-I20-3ステップは、もともとの依頼者が検索クライアントCではなく検索仲介装置I自身であることを除き、第4動作処理の検索式中継と第5動作処理のその回答回収と同じ機能を利用した検査クライアントC用とは別の非同期プロセスを動作させることで実施される。
常置検索であるので、常置検索回答sは依頼セッションへの応答上ではない非同期の別セッション上で交信される。そのため、S-I20-3ステップでの差分受領動作は常時着信待ちが可能なWebサービスインターフェイス上で動作する。S-I20-2ステップからS-I20-4ステップに至る中段は、後段とは独立した非同期プロセスであり、保有表DB243を抱えたデータベースプロセスとして常時待機・都度応答で動作する。
S-I20-6ステップからS-I20-12ステップまでの後段も待機状態から起動され、一連のシーケンス処理を経て、再度、待機状態に復帰する反復動作を行う。左列の中継先管理機能20プロセスの後段は、右列の検索者対応機能10プロセスの後段がマルチスレッドで多数、並行動作することを実質的にさばくメインエンジンであるため、当然ながら、依頼を受ける実検索式3´を識別しながら、これもマルチスレッドで複数並行動作する。さらに、第4動作処理の複写検索式の送信とその応答である第5動作処理であるS-I20-8ステップでの実情報データベース群との交信は、中継型検索仲介システムの基本原理であるマルチキャスト・マルチセッションを同時並行で捌くことに他ならないため、代理検索実行以下の各処理は、中継先の件数に相当する数の並行スレッドとして動作し、個々の中継先ごとの応対が完了するまでそれぞれプロセスが維持される。全中継先からの応答への後処理が完了した段階で下段初めの中継待機状態に復帰する。右列の検索者対応機能10と左列の中継先管理機能20は、メインラインとして検索中継の実施依頼とその結果応答のパスで相互作用する。この右列と左列の間での依頼は、外部の検索クライアントCからのトリガーで突然に開始され、ここでの応答は、中継先からの不揃いな応答完了と、個別の開示条件と都度ごとの回答内容に依存した後処理が終わる都度、(何もしなければ)予測不能な不整なタイミングで全部が揃うまで続発して完了する。この間、右列、左列とも受け側機能部は中継先件数と完了数を消し込みながら、全体の終了(打ち切り)通知を待ちつつ、待機・都度累積を繰り返す。ここでは、全体の流れを説明するため、検索仲介装置I内部で起きる、中継制御に使用する制御用情報の相互作用の解説は後述する。
検索クライアント C:第2動作処理のS-Ca-1ステップ(図4右端)の開示身元登録も電子データ交信化が必須ではないアカウント設定のための準備プロセスである。S-Cb-1ステップからS-Cb-3ステップにわたる「検索実行」プロセス(図5右端)は、元来は検索仲介装置Iを介さずとも、実情報データベースR1の即時・常置検索Webサービスインターフェイスと直接交信する潜在力を持っている。ただし、検索クライアントCと実情報データベースR1は、まったく直接取引も面識もない未知の関係にあることを想定しているため、接続可能な相手先R1の通信パスを知らず、R1から検索を許諾されたアカウントも持たないため、実際には検索クライアントCは実情報データベースR1を直に検索することは不可能である。S-Cc-1ステップのみからなる「請求受領待機」プロセスは、独立した非同期プロセスとしているが、法的に債権履行が担保できれば、EDIに統合されていなくても構わない。
本実施形態が、発明の課題を解決する処理手順を詳述する。
図 8は、図4の左中段のハッチング部分を詳細化して、インデックスリスト作成の処理の流れを説明したものである。以下、図8の個別機能部が連携する状況を追記して、処理の流れを詳細に説明する。
1.識別子利用記録登録装置A1による識別子検出と実情報データベースR1への記録登録
1)識別子取扱業務の設定
識別子利用記録登録装置A1は、S-A1-0-1ステップで取扱業務の背景情報を 取得し、永続記憶装置の所定の領域に設定し、利用記録への転記に備える。
2)識別子取扱業務記録の作成
S-D-1ステップで識別子読取装置Dが識別子の出現を検知し、S-D-2ステッ プで通知してくる。識別子利用記録登録装置A1はS-A1-0-2ステップでこれ を受信し、S-A1-0-3ステップで業務背景情報を付記した識別子取扱記録rを 作成する。
3)識別子取扱記録の登録
識別子利用記録登録装置A1は、S-A1-1ステップとして記録の登録・維持・ 利用を担当するR1に識別子取扱記録rを、事前に決められた実情報データ ベースR1に送付する。
2.実情報データベースR1から検索仲介装置Iへの検索中継アカウント発行
1)検索仲介委託の申込み
実情報データベースR1は、S-R1a-0ステップにおいて検索仲介装置Iに対 して、仲介の対象を指定した開示区分設定票1を送付する。中継先管理機能 20の一部である中継先管理部21は、S-I20-0ステップとして実情報保有 表DB243に対して、実情報データベースR1分のインデックスリストア カウントを作成するよう指示する。
2)インデックスリスト代行作成用 常置検索式発行
常置検索式発行部26は、S-I20-2-1ステップで実情報データベースR1へ の常置検索式qを作成する。図14は常置検索式の例である。常置検索式q は、通常は、実情報データベースに起きる変動分を対象識別子の区分に関わ らず差分を取り出すテンプレートをそのまま複写して作成する。このテンプ レートは特権的な例外として、きわめて浅い限定を許された識別子ワイルド カードを含むことになる。
3)常置検索登録
常置検索式発行部26は、実情報データベースR1に常置検索を仲介システ ム自身のアカウントで受付させるよう、検索中継部31に依頼する(S-I20- 2-2ステップ)。検索中継部31は、常置検索式を実情報データベースR1 だけに送付し、実情報データベースR1はS-R1c-1ステップとして常置検索 維持部に定期・適時に常置検索式を実行するよう登録する。
4)常置検索回答
識別子利用記録に変動があった実情報データベースR1は、S-R1c-2ステッ プによる常置検索維持部の動作を実行し、S-R1c-3ステップにおいて変動結 果を非同期通信による回答として検索中継部31に順次、常置検索回答sを 送信してくる。検索仲介装置Iの検索中継部31はS-I20-3ステップとして 自己依頼した常置検索の回答であることを判別して、受領した非同期回答を 中継先管理機能20に転送する。
5)インデックスリスト作成
中継先管理機能20は、S-I20-3ステップで常置検索回答sが実情報データ ベースR1からの回答であることを認識して、インデックス対象項目に記載 されている識別子を検出する。識別子は、識別子利用記録rの作成に識別子 利用装置 が検出した取扱い対象事物の識別子だけでなく、記録の作成が行 われた場所を特定する識別子、作成事業者の識別子をも対象として抽出する こともできる。あるいは記録の作成時刻、ないしは記録を作成するに至った 業務種別、業務の措置結果といった識別子取扱い業務の背景情報も、記号と して表記される限り、この識別子抽出の対象とすることができる。S-I20-4 ステップにおいて、これらの識別子が実情報保有表DB243上のR1のイ ンデックスリストに新規であることを照合し、新規のものだけをインデック スリストに追加登記する。逆引き用途として、識別子をキーとして、その取 り扱い記録が通知された実情報データベースへのアクセスパスを一覧にした 、逆引きインデックスリスト(図6c))の〔R1から新規に通知された識 別子新規、R1のアクセスパス〕に該当するセルに○を意味する符号を加え る(S-I20-5ステップ、参照)。
ここで、逆引インデックスリストを利用した中継先判定部25による中継先判定処理を説明する。
まず、検索式解析部15は、図9に示すようにa)実検索式3に指定されている識別子を識別子の項目ごとにすべて書き写した識別子特帳票を作成する。図9においては物品固体番号項目を抽出したb)1と、伝票番号項目を抽出したb)2を例示している。これ以外にも「取扱作業種類」、「記録発生場所」、「記録作成期間」が限定されているため、それぞれについて識別子特帳票を作成する。実検索式3がワイルドカード表記を含めて識別子指定している場合もそのまま書き写す。作成した識別子特帳票は検索式3に付加されて検索式3aとされる。検索式3aは中継先判定部25へ送られる。
中継先判定部25は、受け取った検索式3aの識別子特帳票を図6c)の実情報保有 DB243に保持している逆引インデックスリストに照会する。すなわち、識別子特帳票に現れる1つ1つの識別子をキーとして逆引インデックスリストに一致する識別子が載っているかどうかを検査し、記録されている場合は、対応するデータベースを抽出する。ワイルドカード表記が含まれている識別子もワイルドカード書式に従って検索キーとなる。この照会の結果、キーとした識別子を何らかの形で含んだ記録を保持している実情報データベース群(中継先候補)が抽出され中継先候補リストが作成される(図9のc1)、c2))。これを中継先の1次候補とする。
以上の動作により、中継を開始した時点で実情報保有表データベース243にて実記録の保有を確認できていない実情報データベース群に検索式が中継されることを差し控えることができる。
図10は、実情報データベースからの常置検索回答ではない通常の検索結果の回答から実情報保有表DBを更新する処理を説明するフロー図である。以下この処理を説明する。
まず、S-I20-3ステップにおいて、回答Sはヘッダ部分を有する一定のデータ形式に従って作成されておりヘッダ部分には常置検索回答かそうではない一般の中継検索式に対する回答かを区別する情報、回答元のデータベースを特定する識別情報等が記録されているので検索式中継部31は、ヘッダ部分を読み出すことにより、例えば、到着した回答Sは常置検索回答ではなく、回答元が実情報データベースR1であることが認識され、粒度処理部(識別子抽出部)23に回答Sとともに伝達される(S-I20-3ステップ)。
<インデックス対象識別子IDの抽出>
回答Sは、図 9のd)で例示される実情報データベースR1が保持して検索式に該当するとして回答した複数の実情報レコードの集合である。この各実情報レコードには共通する情報項目が選択的に含有されている。ここから、S-I20-4ステップにおいてそれぞれの実情報レコードを各情報項目の種別ごとにスキャンし記載されている識別子を抽出する。全ての実情報レコードから抽出された識別子を項目ごとに重複を除いて整理した識別子リストを作成する。
<新規識別子の登録>
S-I20-5ステップは、実情報保有表DB243が保持している実情報データベースR1のインデックスリストと重複を除かれた識別子リストを項目ごとに照合して未登録のものを追記する処理を行う。識別子リストは項目ごとに分かれていて、同一項目に該当する識別子が列記されている。まず、この識別子をキーにして逆引きインデックスリストを照会すると、実情報保有表DB243は、各識別子ごとに保有先として登録済みの実情報データベースの一覧を応答する。この保有先に現在処理中の回答Sを応答した実情報データベース R1が含まれているかを検査し、リスト中のいずれかの識別子に対して含まれていなければ、R1のインデックスリストにとってこの識別子は新規に発見されたものとなる。そこで、逆引きインデックスリストの当該識別子の欄に新規に保有が確認された実情報データベースR1を追記する。さらにR1の正引きインデックスリストにこの識別子を保有していることを追記する。逆引きインデックスリストの当該識別子の項にR1が既に登録済みであれば、次の識別子、項目とフォーカスを変えて識別子リスト全体を照合する(S-I20-5ステップ)。
また、図4、図10のS-I20-4ステップおよびS-I20-5ステップと図5のS-I20-10ステップとS-I20-11ステップの組は、機能としてまったく同一のものを異なる場面で利用しているものである。
<さらに改良した実施形態>
これまで説明した常置検索を用いた仕組みでは無関係先へ検索式を伝播させないという点に関しての効果は明らかである。しかしながら本発明が想定する検索用途においては検索の網羅性が重視されることから、検索の網羅性という観点でさらに改善されることが望ましい。以下この問題についての改善策を付加した実施形態を説明する。
図Bは図7に示した構成に中継先判定部25に従属して動作する臨時検索式発行部27が新たに加えられた検索仲介装置Iの機能ブロック図である。以下臨時検索式発行部27を備えた検索仲介装置Iの検索式中継動作を説明する。
1)除外候補抽出
中継先判定部25は、一覧内の識別子についての記録が無いと中継先の1次候補として除外された実情報データベース群のリスト(以下除外データベースリスト)を作成する。臨時検索式発行部27は、中継先判定部25から上記除外データベースリストを受け、検索式3aを読み込む。
2)確認検索式の作成
臨時検索式発行部27は、検索式特徴の一覧にある識別子をOR条件に並べた臨時検索式pを作成する。同種や項目意味の異なる識別子を列記することがAND条件を意味する検索方式の場合は、異なる独立した検索式として並列に作成する。
3)事前検索
臨時検索式発行部27は、除外データベースリストに存在する実情報データベース群に対して、臨時検索式pを常置検索式q同様、検索仲介装置Iの自己アカウントにおいて検索中継部31を介して送付し、同一通信セッション上での即答を求める(AS2等の非同期通信方式の場合は検索結果受領部 22で回答を待つ)。このとき、回答書式指定に、検索規格によって可能であれば、回答実情報レコードを1識別子当たり最新のもの1件だけに限定するよう、指示を加える。この臨時検索は中継システムIの単独アカウントで実行されるため、検索クライアントCの素性は一切、実情報データベース群には伏せられる。
4)記録所有確認
臨時検索式pの応答oが得られたら、応答oは検索中継部31から発行元である臨時検索発行部26へ渡される。臨時検索式発行部27は、所定の時間内に受取った応答oを検査し、空文でない応答oを返した実情報のリストを追加データベースリストとして中継先判定部25に返答する。
5)実検索式中継
中継先判定部25は、中継先候補のリストに上記追加データベースリストに存在する実情報データベース群を加えて中継先実情報データベース群を決定する。
このように、検索中継を実行する直前の最新状態を確認するステップを新たに挿入することにより、より確実に取得漏れを防ぎつつ、関心事が露見することを防ぐことを両立させることができる。直前の臨時検索において回答件数を最新1件に制限するのは、記録保有の(可能性の)有無だけを確認することが目的であり、無用な通信負荷を起こさないためである。上記臨時検索では、検索式特徴の一覧にある識別子が1つでも含まれている実情報レコードがあるかどうかを検査することになるので、通常の検索より実情報データベースに与える負荷は小さく、応答は速いはずである。したがって本来の検索式中継の前に補助的に臨時検索を行うことが現実的な解決手段であることが理解されよう。
しかしこの方法は、「検索条件に合致する最新の1件だけを返答する」という限定をかけることができない検索方式を採用する検索システムでは、過剰な回答が集まることが予想され、採用できない。またそのような返答ができない実情報データベースに対しては臨時検索をする対象から除外するべきである。