JP5492581B2 - 熱可塑性樹脂発泡成形体 - Google Patents

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本発明は、種々の包装容器、緩衝材等の用途において有用な発泡性熱可塑性樹脂粒子の製造方法に関する。
従来より、熱可塑性樹脂の発泡性樹脂粒子を得る方法としては、例えば、懸濁重合によって得られる熱可塑性樹脂粒子に易揮発性発泡剤を1〜20質量%含浸させて発泡性熱可塑性樹脂粒子とする方法、又は熱可塑性樹脂粒子を押出機にて溶融混練し、押出機先端のダイからストランド状や略球状に押出して造粒して得られる熱可塑性樹脂粒子に、水系懸濁液中で易揮発性発泡剤を1〜20質量%含浸させて発泡性熱可塑性樹脂粒子とする方法が知られている。
熱可塑性樹脂の中でもオレフィン系樹脂を主鎖に有し、イオン性解離基を主鎖又は側鎖に有する熱可塑性樹脂、いわゆるアイオノマーは、アクリル系高分子とエチレンなどを、亜鉛やナトリウムなどの金属陽イオンを加え、分子間結合させて得られる。アイオノマーは、加熱すると分子間架橋が緩み、流動性を示すため、ポリエチレンやポリスチレンなどの熱可塑性樹脂と同様に成形加工が可能である。このアイオノマーは、弾力性と柔軟性を有し、耐衝撃性、耐クラック性、耐摩耗性に優れるといった特徴を有しており、食品包装の分野などで利用されている。
特許文献1には、流通・保存時の生鮮食品、加工食品の防黴、静菌、殺菌を目的としたイソチオシアン酸エステルを含有する鮮度保持層を備えた鮮度保持用シートおよびこれを使用した保存用容器が開示されており、鮮度保持層に積層される難透過性のフィルム層としてアイオノマーフィルムが開示されている。
特許文献2には、アイオノマーの架橋発泡体を得るための樹脂組成物が開示されており、押出成形によって架橋発泡用の成形体を製造し、しかるのちに架橋発泡させるアイオノマー発泡体の製造方法が開示されている。
特開平7−016976号公報 特開平11−158310号公報
しかしながら、前記アイオノマーは、従来ビーズ法として知られる方法にて発泡体を得ようとした場合、主鎖の融点付近で発泡剤を吸収させるが、冷却工程において冷却速度が緩やかであればイオン性解離基に由来する結晶化が進み、発泡性が大きく低下する問題があった。
従って、アイオノマー樹脂においては押出発泡での用途が殆どであり、発泡性樹脂粒子として使用する場合も、極少量を主成分であるオレフィン系樹脂に溶融混練し、改質剤として使用する用途に限られていた。
本発明は、前記事情に鑑みてなされ、従来技術では製造が困難であったアイオノマー樹脂を主体とする発泡性熱可塑性樹脂粒子の提供を目的とする。
前記目的を達成するため、本発明は、オレフィン系樹脂を主鎖に有し、イオン性解離基を主鎖又は側鎖に有し、示差走査熱量測定によってイオン架橋部由来の吸熱ピークと、主鎖であるオレフィン系樹脂由来の吸熱ピークとが検出される熱可塑性樹脂に発泡剤を含有させてなる発泡性熱可塑性樹脂粒子であって、
該発泡性熱可塑性樹脂粒子の熱可塑性樹脂が、オレフィン系樹脂由来の吸熱ピーク温度以上の温度に加熱された後急冷することによって前記イオン架橋部由来の吸熱ピークが検出されないか又は加熱前の前記熱可塑性樹脂におけるイオン架橋部由来の吸熱ピークよりも低いイオン架橋部由来の吸熱ピークが検出される状態にある発泡性熱可塑性樹脂粒子を提供する。
本発明の発泡性熱可塑性樹脂粒子において、前記発泡性熱可塑性樹脂粒子中の熱可塑性樹脂は、前記イオン架橋部由来の吸熱ピークの高さ(H1)と、前記オレフィン系樹脂由来の吸熱ピークの高さ(H2)との比(H1/H2)が0.10以下であることが好ましい。
本発明の発泡性熱可塑性樹脂粒子において、前記熱可塑性樹脂は、前記オレフィン系樹脂由来の吸熱ピークが、2つ又はそれ以上のピークが連なった構造であることが好ましい。
本発明の発泡性熱可塑性樹脂粒子において、前記熱可塑性樹脂が、ポリエチレン系アイオノマー樹脂であることが好ましい。
また本発明は、前記本発明に係る発泡性熱可塑性樹脂粒子を加熱し発泡させて得られ、前記イオン架橋部由来の吸熱ピークが検出されないか又は加熱前の前記熱可塑性樹脂におけるイオン架橋部由来の吸熱ピークよりも低いイオン架橋部由来の吸熱ピークが検出される状態にある熱可塑性樹脂予備発泡粒子を提供する。
また本発明は、前記熱可塑性樹脂予備発泡粒子を成形型のキャビティ内に充填し、該キャビティ内を加熱して型内発泡成形し、これを型から外し放置することによって得られた熱可塑性樹脂発泡成形体であって、該熱可塑性樹脂は、示差走査熱量測定によってイオン架橋部由来の吸熱ピークと、主鎖であるオレフィン系樹脂由来の吸熱ピークとが検出される状態にある熱可塑性樹脂発泡成形体を提供する。
また本発明は、オレフィン系樹脂を主鎖に有し、イオン性解離基を主鎖又は側鎖に有し、示差走査熱量測定によってイオン架橋部由来の吸熱ピークと、主鎖であるオレフィン系樹脂由来の吸熱ピークとが検出される熱可塑性樹脂に、前記オレフィン系樹脂由来の吸熱ピーク温度よりも高い温度で発泡剤を含有させ、次いで該発泡剤含有樹脂を前記イオン架橋部由来の吸熱ピーク温度よりも低い温度まで1℃/分以上の冷却速度で冷却し、該冷却と同時に又は冷却よりも前に樹脂を粒子状に成形して前記本発明に係る発泡性熱可塑性樹脂粒子を得る発泡性熱可塑性樹脂粒子の製造方法を提供する。
本発明の発泡性熱可塑性樹脂粒子の製造方法において、前記熱可塑性樹脂を粒子状に成形した熱可塑性樹脂粒子に、前記オレフィン系樹脂由来の吸熱ピーク温度よりも高い温度で発泡剤を接触させて該発泡剤を含浸させる工程と、
次いで、発泡剤を含浸させた熱可塑性樹脂粒子を、前記イオン架橋部由来の吸熱ピーク温度よりも低い温度まで1℃/分以上の冷却速度で冷却し、発泡性熱可塑性樹脂粒子を得る工程とを有することが好ましい。
前記熱可塑性樹脂を樹脂供給装置内で加熱溶融し、これに発泡剤を加えて混練し、この発泡剤含有溶融樹脂を該樹脂供給装置に取り付けたダイの小孔から、前記イオン架橋部由来の吸熱ピーク温度よりも低い温度とした水中に押出し、急冷すると同時に押出物を切断して発泡性熱可塑性樹脂粒子を得る工程とを有することが好ましい。
本発明の発泡性熱可塑性樹脂粒子は、オレフィン系樹脂を主鎖に有し、イオン性解離基を主鎖又は側鎖に有し、示差走査熱量測定によってイオン架橋部由来の吸熱ピークと、主鎖であるオレフィン系樹脂由来の吸熱ピークとが検出される熱可塑性樹脂に発泡剤を含有させてなる発泡性熱可塑性樹脂粒子であって、オレフィン系樹脂由来の吸熱ピーク温度以上の温度に加熱された後急冷することによって前記イオン架橋部由来の吸熱ピークが検出されないか又は加熱前の前記熱可塑性樹脂におけるイオン架橋部由来の吸熱ピークよりも低いイオン架橋部由来の吸熱ピークが検出される状態にあるものなので、これを加熱して予備発泡し、さらに得られた予備発泡粒子を型内発泡成形して発泡成形体を製造することが可能であり、従来技術では製造が困難であった型内発泡成形用のアイオノマー樹脂を主成分とする発泡性樹脂粒子を提供することができる。
本発明の熱可塑性樹脂発泡成形体は、前記発泡性熱可塑性樹脂粒子を加熱して予備発泡し、熱可塑性樹脂予備発泡粒子を成形型のキャビティ内に充填し、該キャビティ内を加熱して型内発泡成形し、これを型から外し放置することによって得られた熱可塑性樹脂発泡成形体であって、該熱可塑性樹脂は、示差走査熱量測定によってイオン架橋部由来の吸熱ピークと、主鎖であるオレフィン系樹脂由来の吸熱ピークとが検出される状態にあるものであり、従来技術では製造が困難であったアイオノマー樹脂を主成分とする樹脂の型内発泡成形体を提供することができる。アイオノマー樹脂は、弾力性と柔軟性を有し、耐衝撃性、耐クラック性、耐摩耗性に優れるといった特徴を有しており、これを型内発泡成形して単純形状から複雑形状までの多種多様な形状の発泡成形体とすることができるので、ポリスチレン系樹脂やポリエチレン系樹脂を原料とした既存の発泡成形体よりも耐衝撃性、耐クラック性、耐摩耗性等に優れる発泡成形体を提供することができる。
本発明の発泡性熱可塑性樹脂粒子の製造方法は、オレフィン系樹脂を主鎖に有し、イオン性解離基を主鎖又は側鎖に有し、示差走査熱量測定によってイオン架橋部由来の吸熱ピークと、主鎖であるオレフィン系樹脂由来の吸熱ピークとが検出される熱可塑性樹脂に、前記オレフィン系樹脂由来の吸熱ピーク温度よりも高い温度で発泡剤を含有させ、次いで該発泡剤含有樹脂を前記イオン架橋部由来の吸熱ピーク温度よりも低い温度まで1℃/分以上の冷却速度で冷却し、該冷却と同時に又は冷却よりも前に樹脂を粒子状に成形して前記本発明に係る発泡性熱可塑性樹脂粒子を得るものなので、従来技術では製造が困難であった型内発泡成形用のアイオノマー樹脂を主成分とする発泡性樹脂粒子を容易に製造することができる。
本発明の発泡性熱可塑性樹脂粒子の製造方法に用いられる製造装置の一例を示す構成図である。 本発明の発泡性熱可塑性樹脂粒子に用いる熱可塑性樹脂のDSC測定データの一例を示す模式図である。
本発明で使用するイオン架橋性熱可塑性樹脂、いわゆるアイオノマー樹脂としては、ポリエチレン等のオレフィン系樹脂を主鎖に有し、側鎖にカルボン酸塩、スルホン酸塩、アンモニウム塩等のイオン性解離基を持つ構造であり、金属陽イオンによって分子間で架橋されている構造を持つ。この金属陽イオンによる架橋は、加熱により結合力が変化するため、イオン架橋性熱可塑性樹脂を加熱することで一般の熱可塑性樹脂と同様に成形することができる。
金属陽イオンとしては、亜鉛イオン、ナトリウムイオン、マグネシウムイオン等がある。本発明で用いる熱可塑性樹脂(A)は、イオン架橋性熱可塑性樹脂が60%以上あればよく、ポリエチレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリブタジエン系樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、エチレン−プロピレン−非共役ジエン三次元共重合体などのジエン系のゴム状重合体等の熱可塑性樹脂を含んでも良いが、イオン架橋性熱可塑性樹脂を単独で使用することが好ましい。
また、金属陽イオン種の異なる2種類又はそれ以上のイオン架橋性熱可塑性樹脂を混合して使用しても良い。
本発明で用いるイオン架橋性熱可塑性樹脂の融点は、80〜100℃の範囲のものが好ましく、85〜100℃の範囲のものがより好ましい。
本発明で用いるイオン架橋性熱可塑性樹脂のメルトフローレート(MFR)としては、特に限定されないが、0.5〜20の範囲のものが好ましく、0.9〜15の範囲のものがより好ましい。
本発明で使用する熱可塑性樹脂は、前述したアイオノマー樹脂を単独で使用してもよいし、アイオノマー樹脂を主体として他の熱可塑性樹脂をブレンドして使用してもよい。ブレンドする場合に使用される他の熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン系樹脂やポリプロピレン系樹脂などのオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリル酸系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、フッ素含有樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体などが挙げられ、これらを1種又は2種以上使用することができる。
本発明で使用する発泡剤(B)としては、プロパン、ブタン、イソブタン、ペンタン、イソペンタンなどの炭化水素、ハロゲン化炭化水素などが挙げられるが、ブタン、イソブタン、ペンタン、イソペンタンが特に好ましい。
本発明の発泡性熱可塑性樹脂粒子において、樹脂に含有させる前記発泡剤(B)の量は、熱可塑性樹脂(A)100質量部に対し、3〜30質量部の範囲が好ましく、4〜25質量部の範囲がより好ましく、5〜15質量部の範囲が最も好ましい。発泡剤(B)の量が前記範囲未満であると、発泡成形する際に十分な発泡倍数に到達することができないおそれがある。一方、前記範囲を超えると、発泡剤使用量に見合う発泡成形性は得られず、コスト面、環境面で適さない。
本発明の発泡性熱可塑性樹脂粒子は、必要に応じて前記発泡剤以外にも、溶剤、可塑剤、タルク、珪酸カルシウム、合成あるいは天然に産出される二酸化ケイ素、エチレンビスステアリン酸アミド、メタクリル酸エステル系共重合体等の発泡核剤、ヘキサブロモシクロドデカン、テトラブロモビスフェノールA−ビス(2,3−ジブロモ−2−メチルプロピルエーテル)、トリアリルイソシアヌレート6臭化物等の難燃剤、カーボンブラック、酸化鉄、グラファイト等の着色剤などの添加剤を、熱可塑性樹脂中に添加することができる。
本発明の発泡性熱可塑性樹脂粒子の表面には、従来の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子に対して通常行われているように、脂肪酸金属塩、脂肪酸エステル、耐電防止剤などの表面処理剤をコーティングすることができ、表面処理剤のコーティングを行うことで、樹脂粒子(ビーズ)の流動性、予備発泡特性などを改善することもできる。前記表面処理剤の総添加量は、発泡性熱可塑性樹脂粒子100質量部に対して0.01〜2.0質量部程度の量が好ましい。
本発明の発泡性熱可塑性樹脂粒子は、オレフィン系樹脂を主鎖に有し、イオン性解離基を主鎖又は側鎖に有し、示差走査熱量測定(以下、DSC測定と記す)によってイオン架橋部由来の吸熱ピークと、主鎖であるオレフィン系樹脂由来の吸熱ピークとが検出される熱可塑性樹脂に発泡剤を含有させてなり、該発泡性熱可塑性樹脂粒子の熱可塑性樹脂が、オレフィン系樹脂由来の吸熱ピーク温度以上の温度に加熱された後急冷することによって前記イオン架橋部由来の吸熱ピークが検出されないか又は加熱前の前記熱可塑性樹脂におけるイオン架橋部由来の吸熱ピークよりも低いイオン架橋部由来の吸熱ピークが検出される状態になっている。
ここで、DSC測定は、測定試料と基準物質との間の熱量の差を計測し、試料のガラス転移点や融点などを測定する測定方法である。
本発明では、下記の装置、条件にて測定を行った。
装置 :走査型示差熱量測定機(SEIKO DSC 200型)
昇温範囲 :25℃→180℃
Temp.Rate :10℃/分
試料 :5±0.1mg
すなわち、熱可塑性樹脂5±0.1mgを走査型示差熱量測定機(SEIKO DSC 200型)を用いて25℃から180℃まで10℃/分の昇温速度で昇温してDSC測定データを求めた。
図2は、本発明の発泡性熱可塑性樹脂粒子に用いる熱可塑性樹脂のDSC測定データの一例を示す模式図であり、図中(A)の曲線は加熱前の原料の熱可塑性樹脂のDSC曲線を示し、図中(B)の曲線は発泡性熱可塑性樹脂粒子中の熱可塑性樹脂のDSC曲線を示す。
この図に示す通り、曲線(A)で示す原料として用いる熱可塑性樹脂には、符号P1で示す低温側の吸熱ピークと、符号P2で示す高温側の吸熱ピークが検出される。
高温側の吸熱ピークP2は、該熱可塑性樹脂の主鎖であるオレフィン系樹脂由来の吸熱ピークであり、また低温側の吸熱ピークP1は、該熱可塑性樹脂のイオン架橋部由来の吸熱ピークである。
それぞれの吸熱ピークの温度及び高さは、この熱可塑性樹脂の材質により異なるが、一例として、代表的なアイオノマー樹脂である亜鉛イオン含有アイオノマー(三井デュポンポリケミカル社製、商品名「ハイミラン1650」)をDSC測定した際のそれぞれの吸熱ピークの温度を挙げると、イオン架橋部由来の低温側の吸熱ピークP1の温度(T1)が約50℃、高温側の吸熱ピークP2の温度(T2)が約90℃であった。なお、高温側の吸熱ピークP2は一山構造であった。
一方、本発明の発泡性熱可塑性樹脂粒子中の熱可塑性樹脂は、イオン架橋部由来の低温側の吸熱ピークP1が図2の曲線(B)で示す通り存在しないか、或いは存在しても曲線(A)の加熱前の原料の熱可塑性樹脂におけるイオン架橋部由来の吸熱ピークP1(曲線(A)のP1)よりも低い吸熱ピークP1(曲線(B)のP1)が検出される状態であり、且つオレフィン系樹脂由来の高温側の吸熱ピークP2(曲線(B)のP2)は、2つの吸熱ピークP2a,P2bが連なった二山構造になっていることを特徴とする。なお、オレフィン系樹脂由来の吸熱ピークP2が二山構造になっている場合、ピーク高さが高い方(図2の曲線(B)の場合はP2a)をオレフィン系樹脂由来の吸熱ピークP2とする。
本発明の発泡性熱可塑性樹脂粒子において、イオン架橋部由来の吸熱ピークP1の高さ(H1)と、前記オレフィン系樹脂由来の吸熱ピークP2(P2a)の高さ(H2)との比(H1/H2)が0.10以下であることが好ましく、0.09以下がより好ましく、0.07以下がさらに好ましい。この比(H1/H2)が0.10を超えると発泡性熱可塑性樹脂粒子の発泡性能が悪くなり、該樹脂粒子を加熱しても発泡しない。
前述した本発明の発泡性熱可塑性樹脂粒子は、加熱前の原料の熱可塑性樹脂に、オレフィン系樹脂由来の吸熱ピーク温度(T2)よりも高い温度で発泡剤を含有させ、次いで該発泡剤含有樹脂をイオン架橋部由来の吸熱ピーク温度(T1)よりも低い温度まで1℃/分以上の冷却速度で冷却し、該冷却と同時に又は冷却よりも前に樹脂を粒子状に成形する、本発明の発泡性熱可塑性樹脂粒子の製造方法によって製造することができる。
好適な実施形態において、本発明の発泡性熱可塑性樹脂粒子の製造方法は、次の(1)、(2)の製造方法であることが好ましい。
(1)本発明の発泡性熱可塑性樹脂粒子の製造方法において、加熱前の原料の熱可塑性樹脂を粒子状に成形した熱可塑性樹脂粒子に、前記オレフィン系樹脂由来の吸熱ピーク温度(T2)よりも高い温度で発泡剤を接触させて該発泡剤を含浸させる工程と、
次いで、発泡剤を含浸させた熱可塑性樹脂粒子を、前記イオン架橋部由来の吸熱ピーク温度(T1)よりも低い温度まで1℃/分以上の冷却速度で冷却し、発泡性熱可塑性樹脂粒子を得る工程とを有する含浸法による製造方法。
(2)加熱前の原料の熱可塑性樹脂を樹脂供給装置内にて前記オレフィン系樹脂由来の吸熱ピーク温度(T2)よりも高い温度で加熱溶融し、これに発泡剤を加えて混練し、この発泡剤含有溶融樹脂を該樹脂供給装置に取り付けたダイの小孔から、前記イオン架橋部由来の吸熱ピーク温度よりも低い温度(T1)とした水中に押出し、急冷すると同時に押出物を切断して発泡性熱可塑性樹脂粒子を得る工程とを有する溶融押出法による製造方法。
前記(1)の製造方法において、熱可塑性樹脂を粒子状に成形した熱可塑性樹脂粒子を製造する方法は特に限定されず、適当な粒径及び粒子形状の市販品があれば、それを利用してもよいし、或いは(2)の製造方法(溶融押出法)において、溶融樹脂に発泡剤を加えることなく溶融押出しすることによって発泡剤を含まない熱可塑性樹脂粒子を製造し、これを用いることもできる。
本発明の発泡性熱可塑性樹脂粒子の製造方法では、オレフィン系樹脂由来の吸熱ピーク温度(T2)よりも高い温度で発泡剤を含有させ(この時の樹脂では吸熱ピークP1が存在しないか又は存在していてもピーク高さが低いものと思われる)、次いでイオン架橋部由来の吸熱ピーク温度(T1)よりも低い温度まで急冷することによって、熱可塑性樹脂にイオン架橋部由来の吸熱ピークP1が存在しないか又は存在していてもピーク高さが低い状態のまま、発泡性熱可塑性樹脂粒子を製造することができる。
この急冷条件において、冷却速度が1℃/分より低いと、得られる樹脂粒子中の熱可塑性樹脂は、イオン架橋部由来の吸熱ピークP1が現れ、しかもその高さH1が原料の熱可塑性樹脂における吸熱ピークP1の高さH1と近く、又は同じになり、得られる樹脂粒子の発泡性能が悪くなり、該樹脂粒子を加熱しても発泡しない場合がある。
図1は、本発明の発泡性熱可塑性樹脂粒子の製造方法に用いられる製造装置の一例を示す構成図であり、本例の製造装置は、樹脂供給装置としての押出機1と、押出機1の先端に取り付けられた多数の小孔を有するダイ2と、押出機1内に樹脂原料等を投入する原料供給ホッパー3と、押出機1内の溶融樹脂に発泡剤供給口5を通して発泡剤を圧入する高圧ポンプ4と、ダイ2の小孔が穿設された樹脂吐出面に冷却水を接触させるように設けられ、室内に冷却水が循環供給されるカッティング室7と、ダイ2の小孔から押し出された樹脂を切断できるようにカッティング室7内に回転可能に設けられたカッター6と、カッティング室7から冷却水の流れに同伴して運ばれる発泡性粒子を冷却水と分離すると共に脱水乾燥して発泡性粒子を得る固液分離機能付き脱水乾燥機10と、固液分離機能付き脱水乾燥機10にて分離された冷却水を溜める水槽8と、この水槽8内の冷却水をカッティング室7に送る送水ポンプ9と、固液分離機能付き脱水乾燥機10にて脱水乾燥された発泡性熱可塑性樹脂粒子を貯留する製品ホッパーとを備えて構成されている。
なお、押出機1としては、スクリュを用いる押出機またはスクリュを用いない押出機のいずれも用いることができる。スクリュを用いる押出機としては、例えば、単軸式押出機、多軸式押出機、ベント式押出機、タンデム式押出機などが挙げられる。スクリュを用いない押出機としては、例えば、プランジャ式押出機、ギアポンプ式押出機などが挙げられる。また、いずれの押出機もスタティックミキサーを用いることができる。これらの押出機のうち、生産性の面からスクリュを用いた押出機が好ましい。また、カッター6を収容したカッティング室7も、樹脂の溶融押出による造粒方法において用いられている従来周知のものを用いることができる。
図1に示す製造装置を用い、発泡性熱可塑性樹脂粒子を製造するには、まず、原料の熱可塑性樹脂、発泡核剤、必要に応じて添加される所望の添加剤を秤量し、原料供給ホッパー3から押出機1内に投入する。原料の熱可塑性樹脂は、ペレット状や顆粒状にして事前に良く混合してから1つの原料供給ホッパーから投入してもよいし、あるいは例えば複数のロットを用いる場合は各ロットごとに供給量を調整した複数の原料供給ホッパーから投入し、押出機内でそれらを混合してもよい。原料の熱可塑性樹脂は、磁気選別や篩分け、比重選別、送風選別などの適当な選別手段により異物を除去しておくことが好ましい。
押出機1内にポリスチレン系樹脂、発泡助剤やその他の添加剤を供給後、樹脂を加熱溶融し、その溶融樹脂をダイ2側に移送しながら、発泡剤供給口5から高圧ポンプによって発泡剤を圧入し、難燃剤含有溶融樹脂に発泡剤を混合し、押出機1内に必要に応じて設けられる異物除去用のスクリーンを通して、溶融物をさらに混練しながら先端側に移動させ、発泡剤を添加した溶融物を押出機1の先端に付設したダイ2の小孔から押し出す。
ダイ2の小孔が穿設された樹脂吐出面は、室内に冷却水が循環供給されるカッティング室7内に配置され、且つカッティング室7内には、ダイ2の小孔から押し出された樹脂を切断できるようにカッター6が回転可能に設けられている。発泡剤添加済みの溶融物を押出機1の先端に付設したダイ2の小孔から押し出すと、溶融物は粒状に切断され、同時に冷却水と接触して急冷され、発泡が抑えられたまま固化して本発明の発泡性熱可塑性樹脂粒子となる。
この際、前記冷却水の温度はイオン架橋部由来の吸熱ピーク温度(T1)よりも低い温度、例えば50℃以下、好ましくは30℃以下、最も好ましくは20℃以下とする。
形成された発泡性熱可塑性樹脂粒子は、カッティング室7から冷却水の流れに同伴して固液分離機能付き脱水乾燥機10に運ばれ、ここで発泡性熱可塑性樹脂粒子を冷却水と分離すると共に脱水乾燥する。乾燥された発泡性熱可塑性樹脂粒子は、貯留容器11に貯留される。
本発明の発泡性熱可塑性樹脂粒子は、発泡樹脂成形体の製造分野において周知の装置及び手法を用い、水蒸気加熱等により加熱して予備発泡し、熱可塑性樹脂予備発泡粒子(以下、予備発泡粒子と記す)とする。この予備発泡粒子は、製造するべき発泡成形体の密度と同等の嵩密度となるように予備発泡される。本発明において、その嵩密度は限定されないが、通常は0.015〜0.20g/cmの範囲とし、0.02〜0.10g/cmの範囲が好ましく、0.02〜0.05g/cmの範囲がより好ましい。
なお、本発明において予備発泡粒子の嵩密度とは、JIS K6911:1995年「熱硬化性プラスチック一般試験方法」に準拠して測定されたものをいう。
<予備発泡粒子の嵩密度>
先ず、予備発泡粒子を測定試料としてWg採取し、この測定試料をメスシリンダー内に自然落下させ、メスシリンダー内に落下させた測定試料の体積VcmをJIS K6911に準拠した見掛け密度測定器を用いて測定し、下記式に基づいて予備発泡粒子の嵩密度を測定する。
嵩密度(g/cm)=測定試料の質量(W)/測定試料の体積(V)
<予備発泡粒子の嵩発泡倍数>
また、予備発泡粒子の嵩発泡倍数は、次式により算出される数値である。
嵩発泡倍数=1/嵩密度(g/cm
前記予備発泡粒子は、発泡樹脂成形体の製造分野において周知の装置及び手法を用い、該予備発泡粒子を成形型のキャビティ内に充填し、水蒸気加熱等により加熱して型内発泡成形し、熱可塑性樹脂発泡成形体(以下、発泡成形体と記す)を製造する。
本発明の発泡成形体の密度は特に限定されないが、通常は0.015〜0.20g/cmの範囲とし、0.02〜0.10g/cmの範囲が好ましく、0.02〜0.05g/cmの範囲がより好ましい。該発泡成形体の密度が0.015g/cm未満であると、該発泡成形体の強度が低下するため好ましくない。一方、0.20g/cmを超えると、予備発泡粒子製造時に発泡ばらつきが大きくなり好ましくない。
なお、本発明において発泡成形体の密度とは、JIS K7122:1999「発泡プラスチック及びゴム−見掛け密度の測定」記載の方法で測定した発泡成形体密度のことである。
<発泡成形体の密度>
50cm以上(半硬質および軟質材料の場合は100cm以上)の試験片を材料の元のセル構造を変えない様に切断し、その質量を測定し、次式により算出した。
密度(g/cm)=試験片質量(g)/試験片体積(cm
試験片状態調節、測定用試験片は、成形後72時間以上経過した試料から切り取り、23℃±2℃×50%±5%または27℃±2℃×65%±5%の雰囲気条件に16時間以上放置したものである。
<発泡成形体の発泡倍数>
また、発泡成形体の発泡倍数は次式により算出される数値である。
発泡倍数=1/密度(g/cm
本発明の発泡成形体は、気泡の平均弦長が10〜500μmの範囲であることが好ましく、150〜300μmの範囲がより好ましい。なお、本発明において気泡の平均弦長とは、下記の方法で測定した発泡成形体の気泡の平均弦長のことである。
<平均弦長>
発泡成形体の気泡の平均弦長は、ASTM D2842−69の試験方法に準拠して測定されたものをいう。具体的には、発泡成形体を略二等分となるように切断し、切断面を走査型電子顕微鏡(日立製作所社製 商品名「S−3000N])を用いて100倍に拡大して撮影する。撮影した画像をA4用紙に印刷し、任意の箇所に長さ60mmの直線を一本描き、この直線上に存在する気泡数から気泡の平均弦長(t)を下記式より算出する。
平均弦長t=60/(気泡数×写真の倍率)
なお、直線を描くにあたり、直線が気泡に点接触してしまう場合には、この気泡も気泡数に含め、更に、直線の両端部が気泡を貫通することもなく、気泡内に位置した状態となる場合には、直線の両端部が位置している気泡も気泡数に含める。更に、撮影した画像の任意の5箇所において上述と同様の要領で平均弦長を算出し、これらの平均弦長の相加平均値を発泡成形体の気泡の平均弦長とする。
本発明の発泡成形体は、前述した型内発泡成形後、これを型から外し放置することによって、発泡性熱可塑性樹脂粒子では存在しないか又は存在してもピーク高さが低いイオン架橋部由来の吸熱ピークP1が徐々に検出されるようになり、そのピーク高さが図2の曲線(A)における吸熱ピークP1の高さH1と同等になる状態となるまで放置することが好ましい。吸熱ピークP1の高さH1が加熱前の原料の熱可塑性樹脂と同等になった発泡成形体は、本来熱可塑性樹脂が有している、耐衝撃性、耐クラック性、耐摩耗性に優れるといった特徴を有しており、これを型内発泡成形して単純形状から複雑形状までの多種多様な形状の発泡成形体とすることができるので、ポリスチレン系樹脂やポリエチレン系樹脂を原料とした既存の発泡成形体よりも耐衝撃性、耐クラック性、耐摩耗性等に優れる発泡成形体を提供することができる。
発泡成形体を放置しておく期間は、原料の熱可塑性樹脂の種類、放置時の温度や湿度等により変動するが、通常は2週間以上であればよい。この放置後は、発泡成形体の熱可塑性樹脂の吸熱ピークP1が安定し、発泡成形体の物理的・化学的な変化は生じない。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、以下の実施例の記載は単なる例示であり、本発明は以下の実施例の記載にのみ限定されるものではない。
[実施例1]
亜鉛イオン含有アイオノマー(三井デュポンポリケミカル社製、商品名「ハイミラン1650」、融点96℃)を加熱前にDSC測定した結果、主鎖であるオレフィン系樹脂に由来する95.7℃の一山構造の吸収ピーク、及びイオン架橋部由来の51.2℃の吸熱ピークが検出された。この51.2℃の吸熱ピーク高さ(H1)は8.7kJ/kgであり、95.7℃の吸収ピーク高さ(H2)は56.1kJ/kgであり、これらの比(H1/H2)は、0.155であった。
この原料を口径65mmの単軸押出機に、時間当たり80kgで連続供給した。押出機内温度としては、最高温度210℃に設定し、樹脂を溶融させた後、押出機先端部での樹脂温度を170℃、直径1.0mmでランド長さが2.5mmの小孔が50個配置されたダイより押出し、40℃の冷却水にて冷却した後、高速回転刃で切断して長さ1.00mm、直径1.3mmの小粒子(a)を得た。
撹拌機が付いた内容積5Lのオートクレーブ中に、前記小粒子(a)1500g、リン酸三カルシウム(大平化学社製)30g、ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ2.0g、イオン交換水2500kgを供給した後、オートクレーブの撹拌機の撹拌羽根を150rpmの撹拌速度で回転させてオートクレーブ内を撹拌して懸濁液を作製した。
次に、前記撹拌羽根を回転させながら、オートクレーブ内を100℃まで昇温し、発泡剤としてブタン225gを窒素にて圧入し100℃で5時間に亘って保持した。続いて、オートクレーブ内を1分当たり4.0℃の冷却速度で25℃まで冷却した。
冷却後、オートクレーブから懸濁液を取り出して脱水、洗浄を複数回繰り返して行い、さらに乾燥工程を経て発泡性熱可塑性樹脂粒子を得た。
得られた直後の発泡性熱可塑性樹脂粒子をDSC測定した結果、主鎖であるオレフィン系樹脂に由来する95℃、及び105℃の二山構造の吸収ピークが検出され、且つイオン架橋部由来の52℃の吸熱ピークは殆ど検出されなかった。この52℃の吸熱ピーク高さ(H1)は0.27kJ/kgであり、95℃の吸収ピーク高さ(H2)は53.1kJ/kgであり、これらの比(H1/H2)は、0.005であった。
得られた発泡性熱可塑性樹脂粒子100質量部に対して、ポリエチレングリコール0.03質量部、ステアリン酸亜鉛0.15質量部、ステアリン酸モノグリセライド0.05質量部、ヒドロキシステアリン酸トリグリセライド0.05質量部を発泡性熱可塑性樹脂粒子の表面全面に均一に被覆した。
次いで、前記樹脂粒子を蒸気にて加熱し、嵩密度0.033g/cmの予備発泡粒子を得た。
得られた直後の予備発泡粒子をDSC測定した結果、主鎖であるオレフィン系樹脂に由来する95℃、及び105℃の二山構造の吸収ピークが検出され、且つイオン架橋部由来の52℃の吸熱ピークが僅かながら検出された。この52℃の吸熱ピーク高さ(H1)は1.2kJ/kgであり、95℃の吸収ピーク高さ(H2)は53.8kJ/kgであり、これらの比(H1/H2)は、0.022であった。
続いて、得られた予備発泡粒子を室温雰囲気下、24時間に亘って放置した後、再度加圧可能な容器に充填し、0.5MPaの窒素にて加圧し、更に12時間放置した。長さ400mm×幅300mm×高さ50mmの長方形状のキャビティを有する成形型内に、加圧を開放した前記予備発泡粒子を充填し、その後、成形型のキャビティ内をゲージ圧0.15MPaの圧力の水蒸気で20秒間に亘って加熱し、その後、キャビティ内の圧力が0.01MPaになるまで冷却し、その後成形型を開き、長さ400mm×幅300mm×高さ50mmの長方形状の発泡成形体を取り出した。得られた発泡成形体は、密度0.035g/cmであった。
得られた発泡成形体を2週間25℃で保持後、DSC測定した結果、主鎖であるオレフィン系樹脂に由来する95℃、及び105℃の二山構造の吸収ピーク、及びイオン架橋部由来の52℃の吸熱ピークが検出された。この52℃の吸熱ピーク高さ(H1)は8.5kJ/kgであり、95℃の吸収ピーク高さ(H2)は56.2kJ/kgであり、これらの比(H1/H2)は、0.151であった。
[実施例2]
亜鉛イオン含有アイオノマー(三井デュポンポリケミカル社製、商品名「ハイミラン1650」、融点96℃)を加熱前にDSC測定した結果、主鎖であるオレフィン系樹脂に由来する95.7℃の一山構造の吸収ピーク、及びイオン架橋部由来の51.2℃の吸熱ピークが検出された。この51.2℃の吸熱ピーク高さ(H1)は8.7kJ/kgであり、95.7℃の吸収ピーク高さ(H2)は56.1kJ/kgであり、これらの比(H1/H2)は、0.155であった。
この原料を口径90mmの単軸押出機に、時間当たり130kgで連続供給した。押出機内温度としては、最高温度210℃に設定し、樹脂を溶融させた後、発泡剤として樹脂100質量部に対して7質量部のペンタンを押出機の途中から圧入した。押出機内で樹脂と発泡剤を混練するとともに冷却し、押出機先端部での樹脂温度を150℃、ダイの樹脂導入部の圧力を15MPaに保持して、直径0.6mmでランド長さが2.5mmの小孔が240個配置されたダイより、このダイの吐出面に連結され30℃の水が循環するカッティング室内に、発泡剤含有溶融樹脂を押し出すと同時に、10枚の刃を有する高速回転カッターにて押出物を切断した。切断した粒子を循環水で冷却しながら、粒子分離器に搬送し、粒子を循環水と分離した。さらに、捕集した粒子を脱水・乾燥して発泡性熱可塑性樹脂粒子を得た。得られた発泡性熱可塑性樹脂粒子は、変形、ヒゲ等の発生もなく、ほぼ完全な球体であり、平均粒径は約1.1mmであった。
得られた発泡性熱可塑性樹脂粒子100質量部に対して、ポリエチレングリコール0.03質量部、ステアリン酸亜鉛0.15質量部、ステアリン酸モノグリセライド0.05質量部、ヒドロキシステアリン酸トリグリセライド0.05質量部を発泡性熱可塑性樹脂粒子の表面全面に均一に被覆した。
その他は、実施例1と同様にして、予備発泡粒子、及び発泡成形体を作製した。また、実施例1と同様にして、原料樹脂、発泡性熱可塑性樹脂粒子、予備発泡粒子、及び発泡成形体をDSC測定した。
得られた直後の発泡性熱可塑性樹脂粒子をDSC測定した結果、主鎖であるオレフィン系樹脂に由来する94℃、及び105℃の二山構造の吸収ピークが検出され、且つイオン架橋部由来の51.5℃の吸熱ピークは殆ど検出されなかった。この51.5℃の吸熱ピーク高さ(H1)は0.22kJ/kgであり、94℃の吸収ピーク高さ(H2)は56.1kJ/kgであり、これらの比(H1/H2)は、0.004であった。
得られた直後の予備発泡粒子をDSC測定した結果、主鎖であるオレフィン系樹脂に由来する95℃、及び105℃の二山構造の吸収ピークが検出され、且つイオン架橋部由来の51.2℃の吸熱ピークが僅かながら検出された。この51.2℃の吸熱ピーク高さ(H1)と95℃の吸収ピーク高さ(H2)との比(H1/H2)は、0.050であった。
型内発泡成形してから2週間25℃で保持した発泡成形体をDSC測定した結果、主鎖であるオレフィン系樹脂に由来する94℃、及び105℃の二山構造の吸収ピーク、及びイオン架橋部由来の52℃の吸熱ピークが検出された。この52℃の吸熱ピーク高さ(H1)は8.9kJ/kgであり、94℃の吸収ピーク高さ(H2)は56.4kJ/kgであり、これらの比(H1/H2)は、0.158であった。
[実施例3]
アイオノマーとして、ナトリウムイオン含有アイオノマー(三井デュポンポリケミカル社製、商品名「ハイミラン1605」、融点92℃)を使用したこと以外は、実施例2と同様にして、発泡性熱可塑性樹脂粒子、予備発泡粒子及び発泡成形体を作製した。また、実施例2と同様にして、原料樹脂、発泡性熱可塑性樹脂粒子、予備発泡粒子、及び発泡成形体をDSC測定した。
原料であるナトリウムイオン含有アイオノマーを加熱前にDSC測定した結果、主鎖であるオレフィン系樹脂に由来する92.2℃の一山構造の吸収ピーク、及びイオン架橋部由来の50.1℃の吸熱ピークが検出された。この50.1℃の吸熱ピーク高さ(H1)は8.4kJ/kgであり、92.2℃の吸収ピーク高さ(H2)は54.3kJ/kgであり、これらの比(H1/H2)は、0.155であった。
得られた直後の発泡性熱可塑性樹脂粒子をDSC測定した結果、主鎖であるオレフィン系樹脂に由来する92℃、及び105℃の二山構造の吸収ピークが検出され、且つイオン架橋部由来の50.1℃の吸熱ピークは殆ど検出されなかった。この50.1℃の吸熱ピーク高さ(H1)は0.21kJ/kgであり、92℃の吸収ピーク高さ(H2)は52.7kJ/kgであり、これらの比(H1/H2)は、0.004であった。
得られた直後の予備発泡粒子をDSC測定した結果、主鎖であるオレフィン系樹脂に由来する92℃、及び105℃の二山構造の吸収ピークが検出され、且つイオン架橋部由来の50℃の吸熱ピークが僅かながら検出された。この50℃の吸熱ピーク高さ(H1)と92℃の吸収ピーク高さ(H2)との比(H1/H2)は、0.071であった。
型内発泡成形してから2週間25℃で保持した発泡成形体をDSC測定した結果、主鎖であるオレフィン系樹脂に由来する92℃、及び105℃の二山構造の吸収ピーク、及びイオン架橋部由来の50℃の吸熱ピークが検出された。この50℃の吸熱ピーク高さ(H1)は8.3kJ/kgであり、92℃の吸収ピーク高さ(H2)は55.8kJ/kgであり、これらの比(H1/H2)は、0.149であった。
[比較例1]
発泡剤を吸収させた後の冷却速度を1分当たり0.5℃としたこと以外は、実施例1と同様にして発泡性熱可塑性樹脂粒子を得た。
その後、実施例1と同様にして予備発泡粒子及び発泡成形体の製造を試みたが、発泡できなかった。
得られた直後の発泡性熱可塑性樹脂粒子をDSC測定した結果、主鎖であるオレフィン系樹脂に由来する95℃、及び105℃の吸収ピーク、及びイオン架橋部由来の52℃の吸熱ピークが検出された。この52℃の吸熱ピーク高さ(H1)は8.5kJ/kgであり、と95℃の吸収ピーク高さ(H2)は55.8kJ/kgであり、これらの比(H1/H2)は、0.152であった。
表1に、前記実施例1〜3及び比較例の結果をまとめて記す。
Figure 0005492581
表1の結果から、本発明に係る実施例1〜3は、発泡性樹脂粒子の状態でイオン架橋部由来の吸熱ピークP1が殆ど検出されなかった。そして、この発泡性樹脂粒子を加熱することで予備発泡粒子を作製することができ、さらに該予備発泡粒子を型内発泡成形することで、アイオノマー樹脂製の発泡成形体を製造することができた。
一方、比較例1は、実施例1に比べ、発泡剤含浸後の冷却速度が低かったことによって、得られた樹脂粒子はイオン架橋部由来の吸熱ピークP1が大きな値として検出された。この樹脂粒子は、加熱しても発泡せず、予備発泡粒子及び発泡成形体の製造は不可能であった。
本発明は、従来技術では製造が困難であった、オレフィン系樹脂を主鎖に有し、イオン性解離基を主鎖又は側鎖に有する熱可塑性樹脂、いわゆるアイオノマー樹脂に発泡剤を含有させた発泡性熱可塑性樹脂粒子を提供する。本発明の発泡性熱可塑性樹脂粒子は、型内発泡成形法によって所望形状の発泡成形体を製造することができる。得られた発泡成形体は、既存の発泡成形体よりも耐衝撃性、耐クラック性、耐摩耗性等に優れており、種々の包装容器、緩衝材等の各種の用途において有用なものである。
1…押出機(樹脂供給装置)、2…ダイ、3…原料供給ホッパー、4…高圧ポンプ、5…発泡剤供給口、6…カッター、7…カッティング室、8…水槽、9…送水ポンプ、10…固液分離機能付き脱水乾燥機、11…貯留容器、A…原料の熱可塑性樹脂のDSC曲線,B…発泡性熱可塑性樹脂粒子中の熱可塑性樹脂のDSC曲線、P1…イオン架橋部由来の吸熱ピーク,P2,P2a,P2b…主鎖であるオレフィン系樹脂に由来する吸収ピーク。

Claims (3)

  1. 発泡性熱可塑性樹脂粒子を加熱し発泡して得られる熱可塑性樹脂予備発泡粒子を、成形型のキャビティ内に充填し、該キャビティ内を加熱して型内発泡成形し、これを型から外し放置することによって得られ、密度が0.015〜0.035g/cm である熱可塑性樹脂発泡成形体であって、
    前記発泡性熱可塑性樹脂粒子は、オレフィン系樹脂を主鎖に有し、イオン性解離基を主鎖又は側鎖に有し、示差走査熱量測定によってイオン架橋部由来の吸熱ピークと、主鎖であるオレフィン系樹脂由来の吸熱ピークとが検出される熱可塑性樹脂を前記オレフィン系樹脂由来の吸熱ピーク温度よりも高い温度に加熱し、発泡剤を含有させて発泡剤含有樹脂とし、次いで該発泡剤含有樹脂を前記イオン架橋部由来の吸熱ピーク温度よりも低い温度まで1℃/分以上の冷却速度で冷却してなり、
    前記発泡性熱可塑性樹脂粒子の熱可塑性樹脂は、前記イオン架橋部由来の吸熱ピークが検出されないか又は加熱前の前記熱可塑性樹脂におけるイオン架橋部由来の吸熱ピークよりも低いイオン架橋部由来の吸熱ピークが検出される状態にあり、かつ、前記イオン架橋部由来の吸熱ピークの高さ(H1)と、前記オレフィン系樹脂由来の吸熱ピークの高さ(H2)との比(H1/H2)が0.10以下であり、
    前記熱可塑性樹脂予備発泡粒子は、前記イオン架橋部由来の吸熱ピークが検出されないか又は前記の加熱前の熱可塑性樹脂におけるイオン架橋部由来の吸熱ピークよりも低いイオン架橋部由来の吸熱ピークが検出される状態にあり、
    前記熱可塑性樹脂発泡体の熱可塑性樹脂は、示差走査熱量測定によってイオン架橋部由来の吸熱ピークと、主鎖であるオレフィン系樹脂由来の吸熱ピークとが検出される状態にある熱可塑性樹脂発泡成形体
  2. 前記発泡性熱可塑性樹脂粒子の熱可塑性樹脂は、前記オレフィン系樹脂由来の吸熱ピークが、2つ又はそれ以上のピークが連なった構造である請求項1に記載の熱可塑性樹脂発泡成形体
  3. 前記発泡性熱可塑性樹脂粒子の熱可塑性樹脂が、ポリエチレン系アイオノマー樹脂である請求項1又は2に記載の熱可塑性樹脂発泡成形体
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