JP5492393B2 - 熱間圧延棒鋼線材とその製造方法 - Google Patents
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60≦fα≦100−45.5C ・・・・・・・・・(1)
但し、CはC含有量であって、0.30%≦C≦0.55%
を満たすフェライトと、残部のパーライトからなるフェライト−パーライト複相組織を有し、平均フェライト粒径が2.5〜4.5μmの範囲内にあることを特徴としている。
本発明の熱間圧延棒鋼線材の製造方法では、使用する鋼片の化学成分組成に水素等の製造過程で増減する元素を規定していないが、鋼片を製造するに至る初期工程における溶鋼の成分組成が、そのまま引き継がれると考えることができる。したがって、製造する熱間圧延棒鋼線材の成分組成を特定することにより、溶鋼の成分組成が特定される。
(1)C:0.30〜0.55%
Cは、経済的で且つ有効な強度上昇効果を有する元素である。しかしながら、本発明における重要な目的であるフェライト分率の向上に対しては、フェライト分率を低下させる方向に作用する。
(2)Si:0.10〜0.60%
Siは製鋼時の鋼の脱酸のために必要な元素である。また、固溶強化により強度を上昇させる効果もある。その含有量が0.10%未満では、脱酸効果や強度向上効果が不十分となる。一方、Si含有量が上限の0.60%を超えて含有量が高くなると、C含有量が上限値の場合には強度が高くなり過ぎ、靱性を低下させる結果となる。したがって、Si含有量は0.10〜0.60%の範囲内としている。
(3)Mn:0.50〜1.50%
MnはSiと同様、脱酸剤として有用な元素であり、固溶強化により強度を上昇させる効果もある。また、Mnは変態温度を低下させて、組織を微細化させる効果もある。その含有量が0.50%未満の場合には、上記効果が十分発揮されない。一方、その含有量が1.50%を超える場合は、強度が高くなり過ぎ、靱性を低下させる。また、空冷程度の冷却速度でも、ベイナイトが形成されるようになるため、靱性が低下する。したがって、Mn含有量は0.50〜1.50%の範囲内としている。
(3)S:0.005〜0.065%
Sは、鋼中に不可避的に含有される成分であり、S含有量の低減の工業的及びコスト的限界を考慮して、0.005%を下限とする。Sは鋼中でMnSとして存在し、高S含有量になると、熱間加工により伸長してセパレーション発生の原因になり、熱間加工性及び靭性の劣化原因となるので、上限を0.065%とする。したがって、S含有量は0.005〜0.065%の範囲内としている。
(4)Al:0.001〜0.060%
Alは製鋼時の鋼の脱酸のために必要な元素である。また、固溶強化により強度を上昇させる効果もあり、鋼中に存在する固溶NをAlNとして固定し、AlNとして析出して圧延時の組織の粗大化を抑制する効果もある。その含有量が0.001%未満の場合には、上記効果が不十分となる。一方、0.060%を超えると、強度が高くなり過ぎ、靱性を低下させる結果となる。したがって、Al含有量は0.001〜0.060%の範囲内としている。
(製造方法)
本発明の高強度且つ高靱性を備えた熱間圧延棒鋼線材の好ましい製造条件について以下に説明する。
(1)素材の調製方法について
本発明では、先ず素材の調製方法として、上記化学成分組成からなる溶鋼を溶製して連続鋳造鋳片を調製し、鋳片を加熱後、粗圧延工程で半成品としての鋼片にするか、若しくは製造業者の設備によっては入手した鋼片を更に所望の断面形状・寸法に熱間鍛造等により加工するかして、素材とする。なお、熱間鍛造等により加工した場合も、材料が具備する材料特性上は鋼片と実質的に同一とみなすことができる。
(2)オーステナイト材の750〜850℃における熱間加工直前のオーステナイト粒径dγの望ましい制御について
まず、上記750〜850℃の温度範囲であるが、加工する鋼片などの材料はある大きさを有することから、当然材料には長さ方向、厚さ方向などに温度分布を生ずることがある。したがって、上記温度範囲は、材料が均一に再加熱された状態の温度を含むことはもちろん、若干の温度分布が生じた場合の平均化した温度や測定誤差などを含むものである。本発明における他の温度規定は、すべて上記に準じている。
(3)750〜850℃でのオーステナイト材熱間加工と当該加工終了後の冷却条件について
本発明においては、素材としての鋼片又はこれに更に鍛造等を加えて調製された材料を、850〜950℃の温度範囲内で再加熱する(上記イ)か、又は900〜1250℃若しくは1200℃の範囲内で熱間加工する(但し、仕上温度は900〜950℃の範囲内)(上記ロ)かのいずれかの後、引続き750〜850℃の範囲内で熱間加工を施す。当該熱間加工に供される被加工材はオーステナイト材であり、上述した粒径dγのオーステナイト材を750〜850℃で熱間加工することにより、前述した所謂粒界アロトリオモルフフェライト(オーステナイト粒界に生成するフェライト)の成長を制御することにより、フェライト分率を60%以上に増大させる。
(4)Ar3以下であってパーライト変態開始温度以上での恒温保持について
フェライト分率fαを一層増大させるために、上記750〜850℃での熱間加工が終了後、加工材を500℃以下の温度まで冷却するに際して、500℃までの平均冷却速度を3〜15℃/secの範囲内で冷却する過程で、更にAr3以下且つパーライト変態開始温度以上の温度範囲内で恒温保持処理を行う。この恒温保持をせずに750〜850℃での熱間加工が終了後、500℃までの冷却をする場合、すなわち、連続冷却の場合は、フェライトが平衡分率にならない内にパーライト変態が開始してしまう。これに対して、パーライト変態開始温度以上で恒温保持すると、平衡体積のフェライト−オーステナイト状態に近づけることができ、これによりフェライト体積率(=フェライト分率)を連続冷却の場合に比べ増大させることができる。
(5)フェライト分率の上限について
フェライト分率の上限は、状態図で決まる。変態温度が低下すればするほど、状態図におけるフェライト−オーステナイト相比はフェライト分率が大きくなる。公知の計算ソフト「Thermo−calc」を用い、セメンタイトが析出しないと仮定して、720℃、650℃、630℃又は600℃まで過冷できた場合のオーステナイト−フェライト平衡分率を求めると、フェライト分率とC含有量との関係は、図4に表すことができる。経験上、600℃をセメンタイトが析出しない下限温度としている。
(6)フェライト分率fα(面積%)の規定
図4において、フェライト分率が最も大きくなると考えられる600℃まで過冷した場合の炭素含有量とフェライト分率との関係式は、下記(1a)式:
fα=100−45.5C ・・・・・・・・・(1a)
である。したがって、フェライト分率の必須要件の一つとして、下記(1b)式:
fα≦100−45.5C ・・・・・・・・・(1b)
で規定することができる。
fα≧60% ・・・・・・・・・・・・(1c)
とした。
60≦fα≦100−45.5C ・・・・・・・・・・(1)
但し、 0.30%≦C≦0.55%
を本発明の熱間圧延棒鋼線材におけるフェライト分率fαに関する必須要件としている。
(鋼材のフェライト分率と平均フェライト粒径及び硬さについて)
本発明の熱間圧延棒鋼線材の平均フェライト粒径の下限値は、フェライト分率を確保することにより靭性向上を図るために2.5μmとし、上限値は、フェライトの微細粒化効果による強度及び靭性の良好なバランスを得るために4.5μmとしている。
<試験A> グリーブル試験機によるアンビル圧縮加工による試験
(1)試験材の調製方法
表1に示す化学成分組成の鋼を溶製した。成分符号がS45C−1及びS45C−2の鋼はS45C(JIS G4051 機械構造用炭素鋼鋼材による)相当の成分組成を有し、成分符号がS45CSの鋼はS45CのS含有量を高めたもの(S=0.056%)であり、S含有量以外はS45C−1及びS45C−2と類似の成分組成を有する。
(i)粗圧延素材:所定成分組成の溶鋼をブルーム連続鋳造鋳片に鋳造し、これを1200〜1300℃の温度域に加熱し、粗圧延によりC方向断面寸法を厚さ180mm×幅180mmとした後、室温まで冷却した鋼(「粗圧延素材」という)である。
(ii)粗圧延+熱間鍛造素材:所定成分組成の溶鋼をブルーム連続鋳造鋳片に鋳造し、これを(i)に準じて粗圧延し、試験素材を切り出し採取し、更に、熱間鍛造により総減面率95.5%でC方向断面寸法を厚さ38mm×幅38mmとした後、室温まで冷却した鋼(「粗圧延+熱間鍛造素材」という)である。
(2)実施例1〜5
表2に、実施例1〜5の試験方法及び試験結果を示す。これらは、アンビル圧縮加工後に500℃まで冷却した場合であって、パーライト変態開始温度以上で恒温保持をしなかった場合である。
実施例1では、表1に示した成分符号がS45C−1の連続鋳造鋳片を熱間粗圧延された素材から切り出した試験材(厚さ12mm×幅15mm×長さ18mm)を使用し、実施例2では、成分符号がS45CS(高S材、S=0.056%)の連続鋳造鋳片を同じく熱間粗圧延された素材から切り出した試験材(厚さ12mm×幅15mm×長さ18mm)を使用し、いずれも900℃に再加熱し、60sec保持した後、冷却速度10℃/secで800℃まで冷却し、ここで5sec保持し、引続きグリーブル試験機によりアンビル圧縮加工を行った。図6に試験材に対するアンビルによる圧縮加工方法を示す。
(実施例3〜5の試験方法)
実施例3〜5はいずれも、成分符号がS45C−2の連続鋳造鋳片を用い、実施例3では上記(ii)に準じ、熱間粗圧延後、更に1150℃で鍛造された素材から、実施例4では上記(ii)に準じ、熱間粗圧延後、更に1200℃で鍛造された素材から、そして実施例5では熱間粗圧延後の素材から、それぞれ切り出した試験材(厚さ12mm×幅15mm×長さ18mm)を使用し、いずれも900℃に再加熱し、60sec保持した後、冷却速度10℃/secで750℃まで冷却し、ここで5sec保持し、引き続き加工温度750℃で図6に示すように試験材の幅15mm×長さ18mmの平面に対して矢印6の方向に厚さ12mmの中心部での圧下率が85%となる圧縮加工をひずみ速度10sec−1にて1回で行った後、直ちに平均冷却速度10℃/secで500℃まで冷却した。その後、常温まで冷却して、加工熱処理試験を完了した。
(実施例1〜5の確性試験方法)
上記加工熱処理済み後の材料の中心部から確性試験片を切り出して確性試験に供した。確性試験を行った試験材中の位置は、図6に示す試験材4の圧縮面であった15mm幅×18mm長さの平面に対する垂直断面で、且つ試験材の12mm厚さ×18mm長さの平面に平行な断面であって、試験材の厚さ、幅及び長さの中心部相当の位置について行った。
(実施例1〜5の試験結果)
試験結果を表2に示す。等軸オーステナイト粒径dγの推定値は全て17μmであり、パンケーキ状オーステナイト粒界間隔の推定値THγもまた全て5μmであった。すなわち、素材のS含有量が、0.017%又は0.056%のいずれであっても、素材が粗圧延素材又は粗圧延+熱間鍛造素材のいずれであっても、そしてアンビル圧縮加工温度が800℃又は750℃のいずれであっても、試験材の再加熱温度が900℃で60sec保持し、その後冷却速度10℃/secで上記アンビル圧縮加工温度まで冷却し、中心部圧下率が85%であれば、等軸オーステナイト粒径dγの推定値は全て17μmであり、次いで、アンビル圧縮加工後のパンケーキ状オーステナイト粒界間隔の推定値THγも、また、圧縮加工温度が800℃又は750℃のいずれにおいても全て5μmであった。
(3)比較例1〜5
表2に、比較例1〜5の試験方法及び試験結果を示す。これらは、素材の再加熱温度を900℃、保持時間を60secとし、アンビル圧縮加工後、直ちに500℃まで冷却した場合であり、パーライト変態開始温度以上での恒温保持はしていない。
(比較例1〜5の試験方法)
比較例1〜5では、表2に示す通りの分類素材、成分符号及び加工方法で調製した試験素材から切り出した試験材(厚さ12mm×幅15mm×長さ18mm)を使用した。試験材の再加熱条件は全て900℃×60secであり、本発明の製造方法で必須要件としている再加熱条件を満たしている。この内、比較例1〜3では再加熱後の冷却速度が1℃/secと遅いが、アンビル圧縮加工温度は800℃であり、本発明の製造方法で必須要件としている加工温度条件を満たしている。そして、比較例1では中心部圧下率が85%であり、本発明の製造方法で必須要件としている減面率の条件を満たしているが、比較例2,3では57%であり、減面率の条件を満たしていない。圧縮加工後の平均冷却速度は、比較例1〜3は全て1℃/secであり、本発明の製造方法で必須要件としている平均冷却温度の条件を満たしていない。
(比較例1〜5の確性試験方法)
試験片の採取は上記「加工熱処理済み試験材」の中心部から試験片を切り出して確性試験に供した。確性試験を行った試験材中の位置、確性試験項目及び方法については、前記実施例1〜5と同じである。
(比較例1〜5の試験結果)
試験結果を表2に示す。800℃におけるアンビル圧縮加工直前における等軸オーステナイト粒径dγの推定値は、全て17μmであった。すなわち、素材のS含有量が、0.017%又は0.056%のいずれであっても、等軸オーステナイト粒径dγの推定値は、全て17μmであった。 アンビル圧縮加工後、500℃まで冷却した場合のパンケーキ状オーステナイト粒界間隔の推定値THγは、中心部での圧下率が85%の圧縮加工をした比較例1のみは5μmと小さいが、中心部での圧下率が57%であった比較例2〜5は8μmと大きい。一方、フェライトの平均粒径dαについては比較例1のみが3μmであったが、比較例2〜5は4μmであった。その結果、dα/THγは、比較例1が0.6であったのに対して、比較例2〜5では0.5と若干小さかった。これは、THγが比較例1において比較的小さかったことにより、フェライト分率fαは、比較例1が比較的大きい傾向はあるが、比較例1〜5の全てにおいて55%以下であり、本発明の線材で必須要件としている60%以上を満たしていない。
(4)比較例6〜17
(比較例6〜17の試験方法)
表3に示すように、比較例6〜11では成分符号がS45C−1の粗圧延素材(i)を使用し、比較例12〜17では成分符号がS45CS(高S材、S=0.056%)の粗圧延素材(i)を使用し、厚さ×幅×長さ(180×180mm×長さ)の素材から、直径3mm×長さ10mmの試験材を長さ方向と一致させて切り出し採取した。
(比較例6〜17の確性試験方法)
試験片の採取は上記「熱処理済み試験材」の中心部から試験片を切り出して確性試験に供した。確性試験項目は、走査型電子顕微鏡(SEM)による金属組織の観察、平均フェライト粒厚さTHαの測定、画像処理によるフェライト分率fαの測定及びビッカース試験による硬さHVの測定を行った。また、等軸状オーステナイト粒径dγの推定値及びパンケーキ状オーステナイトの粒界間隔THγ(いずれも図1参照)の推定値を求めた。
(比較例6〜17の試験結果)
試験結果を表3に示す。試験材の再加熱温度が950℃、900℃及び850℃の内のいずれかにおける60sec保持以後における等軸状オーステナイト粒径dγの推定値は、表3に示した通りである。成分符号がS45C−1の場合、再加熱温度が950℃のとき(比較例6、7)は26μm、900℃のとき(比較例8,9)は17μm、そして850℃のとき(比較例10,11)は12μmであり、また、成分符号がS45CS(S含有量=0.056%)の場合は、再加熱温度が950℃(比較例12,13)のときは23μm、900℃(比較例14,15)のときは16μm、そして850℃(比較例16,17)のときは11μmであった。オーステナイト粒径dγの推定値は、高S含有量材においては通常水準のS含有量材よりも小さくなっている。
(5)実施例1〜5と比較例1〜17の各特性値間の著しい相違点
両者の比較をするために、実施例1〜5の代表例として実施例1を選び、比較例1〜17の代表例として比較例9を選んだ。両代表例間の製造条件を比較すると、素材の成分符号はS45C−1であり、同一で、試験材の再加熱条件も再加熱温度900℃×保持時間60secであり、同一で、且つこの再加熱・保持後の冷却速度も10℃/secと同一であるが、実施例1では再加熱・保持後に試験材の中心部での圧縮率が85%となるアンビル圧縮加工を施しているのに対し、比較例9ではアンビル圧縮加工を施していない。
(6)実施例6〜17
(実施例6〜17の試験方法)
表4に示すように、成分符号が全てS45C−2の試験素材を用いた。実施例6〜9では、粗圧延+1150℃での熱間鍛造素材(ii)を使用し、実施例10〜13では、粗圧延+1200℃での熱間鍛造素材(ii)を使用し、そして、実施例14〜17では、粗圧延素材(i)を使用し、それぞれの素材の厚さ×幅×長さの方向に対応させて厚さ12mm×幅15mm×長さ18mmの試験材を採取して、いずれも900℃に加熱し、60sec保持した後、冷却速度が10℃/secで750℃まで冷却し、750℃で5sec保持し、引続き図6に示すように、グリーブル試験機により幅15mm×長さ18mmの平面に対して矢印6の方向に、アンビル圧縮加工を行い、厚さ12mmの中心部の圧下率が85%となる圧縮加工を行った。アンビル圧縮の加工回数は1回であり、ひずみ速度を10sec−1として行った。
試験結果を表4に示す。はじめに、試験材がアンビル圧縮加工を受ける前後のオーステナイト粒径を推定し、その推定値を表4に併記した。実施例6〜17のいずれにおいても、アンビル圧縮加工直前における等軸オーステナイト粒径dγの推定値は17μmであった。これは、素材の成分符号及び加工方法にはよらず、アンビル圧縮加工前の加熱温度が900℃であった実施例1〜5と同一である。また、実施例6〜17のいずれにおいても、アンビル圧縮加工後のオーステナイト粒厚さ(パンケーキ状オーステナイト粒界間隔)の推定値THγは、5μmであった。
<試験B> 試験用熱間鍛造機又は試験用溝ロール圧延機を用いた試験
(1)試験材の調製方法
表5に示す化学成分組成の鋼を溶製し、前記試験Aにおける前記(ii)の粗圧延+熱間鍛造素材と同じ方法により、厚さ38mm×幅38mm×長さ300mmの素材を調製し、これを試験材として熱間鍛造試験及び熱間溝ロール圧延試験を行った。いずれの試験においても、グリーブル圧縮試験の時と同様に、試験材の中心部に対して、鍛造試験では所定の圧下率の加工を、また、溝ロール圧延試験では所定の減面率の加工を加え、中心部に注目して試験を行った。
(試験方法)
表6に、試験方法の概要を示す。表5の成分符号がS45CSの成分組成を有する上記厚さ38mm×幅38mm×長さ300mmの素材の試験材を、950℃に再加熱して1hr保持し、空冷して750℃〜800℃において鍛造した。鍛造方法は、試験材の片側長さ180mm部分につき厚さ38mmを1回の平鍛造により19.5mmにし、直ちに90度回転して当初の幅38mmが鍛造により38〜70mm程度となった材料の長さ中央部の幅(幅=約70mm)を、19.5mmに平鍛造した。このとき、試験材の中心部における圧下率が85%に相当する圧縮加工がなされた。鍛造時の温度挙動は、1回目の平鍛造では加工発熱により750℃から790まで上昇し、2回目の平鍛造では加工発熱により760℃から800℃まで上昇した。
表6に試験結果を示す。平均フェライト粒径dαは3.0μm、フェライト分率fαは65%であり、フェライト−パーライト複相組織を呈しており、本発明の棒鋼線材の必須要件を満たしている。また、ビッカース硬さHvは199であり、引張強さ換算で632MPa程度の高強度を有している。一方、シャルピー衝撃上部棚エネルギーUSEは113Jと優れた靭性が得られており、目標が達成されている。
(2)比較例18、19
(試験方法)
表6に、試験方法の概要を示す。比較例18では、表5の成分符号がS55Cの成分組成を有する上記厚さ38mm×幅38mm×長さ300mmの素材の試験材を、また、比較例19では、表5の成分符号がS45CSの成分組成を有する上記厚さ38mm×幅38mm×長さ300mmの素材の試験材を、それぞれ、950℃に再加熱して1hr保持した。空冷して900℃から750℃の温度範囲内において、溝ロール圧延を行った。
(試験結果)
表6に試験結果を示す。比較例18,19のそれぞれにおいて、平均フェライト粒径dαは5.0μm、7.8μmであり、フェライト分率fαは21%、45%である。いずれも本発明の棒鋼線材の必須要件を満たしていない。
(フェライト分率と靭性の関係について)
実施例18及び比較例18,19で得られた結果より、フェライト分率とシャルピー衝撃上部棚エネルギーとの関係を図11に示す。
2 パンケーキ状オーステナイト
3 粒界アロトリオモルフフェライト
4 試験材
5 アンビル
6 アンビル圧縮加工方向
Claims (5)
- 質量%で、C:0.30〜0.55%、Si:0.10〜0.60%、Mn:0.50〜1.50%、S:0.005〜0.065%、Al:0.001〜0.060%、Cr:0.12〜0.15%を含有し、残部が鉄及び不可避不純物からなる化学成分組成を有し、フェライト分率fα(面積%)が、下記(1)式:
60≦fα≦100−45.5C ・・・・・・・・・(1)
但し、CはC含有量であって、0.30%≦C≦0.55%
を満たすフェライトと、残部のパーライトからなるフェライト−パーライト複相組織を有し、平均フェライト粒径が2.5〜4.5μmの範囲内にあることを特徴とする熱間圧延棒鋼線材。 - 前記熱間圧延棒鋼線材の硬さがビッカース硬さで190〜240の範囲内にあることを特徴とする請求項1に記載の熱間圧延棒鋼線材。
- 質量%で、C:0.30〜0.55%、Si:0.10〜0.60%、Mn:0.50〜1.50%、S:0.005〜0.065%、Al:0.001〜0.060%、Cr:0.12〜0.15%を含有し、残部が鉄及び不可避不純物からなる化学成分組成を有する鋼片を850〜950℃の温度範囲内で再加熱し、引続き750〜850℃の温度範囲内で減面率Rが、R≧70%となるように熱間加工を施した後、得られた加工材を500℃以下の温度まで冷却するに際して、500℃までの平均冷却速度を3〜15℃/secの範囲内で冷却することを特徴とする熱間圧延棒鋼線材の製造方法。
- 質量%で、C:0.30〜0.55%、Si:0.10〜0.60%、Mn:0.50〜1.50%、S:0.005〜0.065%、Al:0.001〜0.060%、Cr:0.12〜0.15%を含有し、残部が鉄及び不可避不純物からなる化学成分組成を有する鋼片を再加熱して仕上がり温度が900〜950℃の範囲内で熱間加工し、引続き750〜850℃の温度範囲内で減面率Rが、R≧70%となるように熱間加工を施した後、得られた加工材を500℃以下の温度まで冷却するに際して、500℃までの平均冷却速度を3〜15℃/secの範囲内で冷却することを特徴とする熱間圧延棒鋼線材の製造方法。
- 加工材を500℃以下の温度まで冷却するに際して、500℃までの平均冷却速度を3〜15℃/secの範囲内で冷却する過程で、更にAr3以下且つパーライト変態開始温度以上の温度範囲内で恒温保持処理することを特徴とする請求項3又は4に記載の熱間圧延棒鋼線材の製造方法。
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