本明細書には、興奮毒性、耳毒性、老人性難聴またはそれらの組み合わせを処置する(例えば、これらの影響を緩和または低減する)ための、制御放出性の抗アポトーシス剤または前アポトーシス剤の組成物が提供される。
少数の治療薬が耳の障害の治療に利用可能である;しかしながら、経口経路、静脈内の経路または筋肉内の経路経由の全身性の経路が、これらの治療薬を送達するために現在使用される。いくつかの例において、全身薬物投与は、血清内では高血中濃度で、標的とする中耳および内耳の器官構造体では低濃度であるという、薬物濃度における潜在的な不均等を作り出す。結果として、十分に治療上有効な量を内耳に送達するために、かなり大量の薬物が、この不均等さを克服するに必要となる。加えて、薬物の全身投与は、標的部位に十分に局所送達させるのに必要な血清濃度が高い結果、全身毒性および有害な副作用の可能性が増す場合もある。全身毒性は、また、肝臓の破壊および治療薬剤の処理の結果生じ、投与された治療薬によって得られる任意の利益を事実上打ち消してしまう毒性代謝物を形成する場合もある。
全身送達の毒性および付随する副作用を克服するために、本明細書には、標的とする耳の構造体に治療薬剤を局所送達するための方法および組成物およびデバイスが開示される。例えば、前庭器および蝸牛器へのアクセスは、正円窓膜、卵円窓/アブミ骨底板、輪状靱帯を含む中耳を通って、耳嚢/側頭骨を通ってなされるであろう。
治療薬剤の鼓室内注射は、鼓膜の裏側に治療薬剤を注射し、中耳及び/又は内耳へと到達させる技術である。この技術はいくつかの問題を示す。例えば、正円窓膜、すなわち内耳への薬物吸収の部位へのアクセスは問題が多い。
さらに、鼓室内への注射は、外リンパおよび内リンパのモル浸透圧濃度およびpHの変更、内耳構造体に直接又は間接的に損傷を与える病原体、内毒素の導入、等の現在利用可能な処置レジメンでは対処できない、いくつかの認識されていない問題を作り出す。当該技術分野ではこれらの問題を認識していない1つの理由は、認められた鼓室内の組成物が1つも存在していない、ということである。内耳は、独特な組成物の問題を呈する。故に、体の他の部分のために開発された組成物は、鼓室内の組成物にほとんど全く適切でない。
ヒトへの投与に適切な、耳用組成物に対する要件(例えば、無菌性レベル、pH、モル浸透圧濃度)に関する、従来技術における手引きは全く無い。複数の種にわたる、動物の耳の間の、広範な解剖学的な差異が存在する。聴覚の構造体における内部空間の違いの結果、内耳疾患を伴う動物モデルは、臨床承認用に開発された、治療法をテストするためのツールとして、しばしば信頼できない。
本明細書には、pH、モル浸透圧濃度、イオンバランス、無菌性、エンドトキシン及び/又は発熱物質のレベルの厳しい基準を満たす耳用組成物が提供される。本明細書に記載の耳の組成物は、内耳の微小環境(例えば、外リンパ)に適合し、ヒトへの投与に適切である。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の組成物は、染料を含み、鼓室内の治療法の前臨床、及び/又は臨床開発中に、侵襲的手法(例えば、外リンパの除去)の必要を未然に防ぐ投与組成物の可視化を助ける。
本明細書には、標的とする耳の構造体を局所的に処置するために、制御放出性の抗アポトーシス剤または前アポトーシス剤の組成物が提供され、それによって、抗アポトーシス剤または前アポトーシス剤の組成物の全身性の投与の結果としての副作用を回避する。局所的に適用される抗アポトーシス剤または前アポトーシス剤の組成物およびデバイスは、標的とする耳の構造体と適合し、所望の標的とする耳の構造体(例えば、蝸牛領域、鼓室または外耳)に直接投与されるか、または、内耳領域(例えば、正円窓膜、蝸牛窓稜または卵円窓膜)に直接つながっている構造体に投与されるかのいずれかである。耳の構造体を特異的に標的とすることによって、全身的な処置の結果生じる有害な副作用が避けられる。さらに、臨床研究から、蝸牛の外リンパに薬物を長時間曝露することの利益、例えば、治療薬剤を何度も与える場合に、突発性難聴の臨床上の有効性を高めることが示された。従って、制御放出性のアポトーシス調節剤または耳の障害を処置するための組成物を提供することによって、耳の障害を患う被験体に、一定の、可変の、および/または長期にわたる、抗アポトーシス剤または前アポトーシス剤の供給源が与えられ、治療におけるばらつきが減るか、またはなくなる。従って、本明細書に開示される1つの実施形態は、抗アポトーシス剤または前アポトーシス剤を連続的に放出するように、可変の速度かまたは一定の速度かで、少なくとも1つの抗アポトーシス剤または前アポトーシス剤を、治療に有効な用量で放出させることが可能な組成物を提供する。いくつかの実施形態において、本明細書に開示の抗アポトーシス剤または前アポトーシス剤は、即時放出組成物として投与される。他の実施形態において、抗アポトーシス剤または前アポトーシス剤は、持続放出組成物として投与され、または継続的に、可変的に、もしくはパルス形式で、またはこれらの変形として放出される。さらに他の実施形態において、抗アポトーシス剤または前アポトーシス剤の組成物は、即時放出性と持続性放出性の両方の組成物として投与され、連続的か、可変的かまたはパルス形式か、またはそれらの変形のいずれかで放出される。この放出は、任意に、環境的な条件または生理学的な条件、例えば、外部のイオン環境に依存する(例えば、Oros(登録商標)release system、Johnson & Johnsonを参照)。
加えて、標的とする耳の構造体の局所的な処置は、pK特性が悪く、吸収率が悪く、全身放出性が低く、および/または毒性の問題がある薬剤を含む、以前の望ましくない治療薬剤の使用も可能にする。生体の血液バリアが存在するためのみならず、抗アポトーシス剤または前アポトーシス剤の組成物およびデバイスを局所的に標的とするため、以前には、毒性があるか、または有効ではないという特徴のある抗アポトーシス剤または前アポトーシス剤で処置した結果、副作用の危険性が減らされるであろう。従って、抗アポトーシス剤または前アポトーシス剤の副作用または効果の無さのために、抗アポトーシス剤または前アポトーシス剤の副作用のために、耳の疾患の処置において、以前は医師が拒否していた抗アポトーシス剤または前アポトーシス剤を使用することも、本明細書の実施形態の範囲内にあると熟慮される。
また、本明細書に開示の抗アポトーシス剤または前アポトーシス剤の組成物およびデバイスと組み合わせた、耳に適合するさらなる薬剤を使用することも、本明細書に開示の実施形態の範囲内に含まれる。このような薬剤を使用する場合、このような薬剤は、興奮毒性、耳毒性、老人性難聴、またはこれらの組み合わせの結果、難聴または平衡感覚の欠落、または聴覚または平衡感覚の機能不全の処置に役立つ。従って、興奮毒性、耳毒性、老人性難聴またはそれらの組み合わせの影響を改善するか弱める追加の薬剤もまた、抗アポトーシス剤または前アポトーシス剤と組み合わせて使用されることが熟慮されている。いくつかの実施形態において、追加の薬剤は、酸性化剤、麻酔薬、鎮痛剤、抗生物質、制吐剤、抗真菌剤、抗微生物剤、抗精神病薬(特にフェノチアジン・クラスの中のもの)、防腐剤、抗ウイルス剤、収れん薬、化学療法剤、コラーゲン、コルチコステロイド、利尿薬、角質溶解薬、一酸化窒素合成酵素インヒビター、あるいはそれらの組み合わせである。
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の耳に許容可能な制御放出アポトーシス調節組成物は、標的耳領域に投与され、そして経口用量の抗アポトーシス剤または前アポトーシス剤がさらに投与される。いくつかの実施形態において、経口用量の抗アポトーシス剤または前アポトーシス剤は、耳に許容可能な制御放出アポトーシス調節組成物の投与前に投与され、次いで、経口用量は、制御放出アポトーシス調節組成物が提供される時間の期間にわたって、徐々に減らされる。代替的に、経口用量の抗アポトーシス剤または前アポトーシス剤は、制御放出アポトーシス調節組成物の投与の間投与され、次いで、経口用量は、制御放出アポトーシス調節組成物が提供される時間の期間にわたって、徐々に減らされる。代替的に、経口用量の抗アポトーシス剤または前アポトーシス剤は、制御放出アポトーシス調節組成物の投与の後投与され、次いで、経口用量は、制御放出アポトーシス調節組成物が提供される時間の期間にわたって、徐々に減らされる。
加えて、本明細書に含まれる抗アポトーシス剤または前アポトーシス剤の組成物またはデバイスは、また、担体、アジュバント(例えば、防腐剤、安定化剤、湿潤剤または乳化剤)、溶解促進剤、浸透圧を調節するための塩、および/または緩衝液も含む。このような担体、アジュバント、および他の賦形剤は、標的とする耳の構造体(複数)中の環境に適合するであろう。標的とする領域または区域での副作用を最小限にし、本明細書で想定される耳の障害を効果的に処置することを可能にするために、耳毒性をなくすか、または耳毒性が最小限の担体、アジュバントおよび賦形剤が特に熟慮される。耳毒性を防ぐために、本明細書に開示の抗アポトーシス剤または前アポトーシス剤の組成物またはデバイスは、任意に、標的とする耳の構造体の別個の領域を標的とし、この別個の領域は、鼓室、前庭骨および卵円膜の迷路、蝸牛骨および蝸牛膜の迷路、内耳の中に位置する他の解剖学的構造体または生理学的構造体を含むが、これらに限定されない。
特定の定義
用語「耳に許容可能な」は、組成物、組成物または成分に関し、本明細書で使用される場合、処置される被被験体の中耳(auris mediaまたはmiddle ear)および内耳(auris internaまたはinner ear)に対して何の持続的な有害な影響もないことを含む。「薬学的に耳に許容可能な」とは、本明細書で使用される場合、中耳(auris mediaまたはmiddle ear)および内耳(aurisinternaまたはinner ear)に関連して、化合物の生体活性または性質を無効化せず、中耳(auris mediaまたはmiddle ear)および内耳(auris internaまたはinner ear)に対する毒性を相対的に減らすか、または減らす担体または希釈剤のような物質を表す。すなわち、この物質は、望ましくない生物学的効果を生じないか、またはこの物質が含まれる組成物の任意の成分と有害に相互作用しないように、個体に投与される。
本明細書で使用される場合、特定の化合物または医薬組成物を投与することによって、特定の耳の疾患、障害または疾病の症状を改善すること、または減らすことは、永久的であれ一時的であれ、上記の化合物または組成物の投与に起因して、または上記の化合物または組成物の投与に関連して、重篤度を下げること、発症を遅らせること、進行を遅らせること、または持続時間を短くすること、を表す。
本明細書で使用される場合、用語「アゴニスト」は、レセプターの活性と結合し、肯定的に変更する分子を意味する。いくつかの実施形態において、アゴニストは、レセプターが機能する割合を増加させる。いくつかの実施形態において、アゴニストはレセプターを活性化する。いくつかの実施形態において、アゴニストは恒常的にレセプターを活性化する。いくつかの実施形態において、アゴニストは、レセプターのリガンド結合ポケットのアクセス可能性を増やす(例えば、結合ポケットの形を変形させ、それがよりアクセスし易くする)。アゴニストは、完全アゴニスト、半アゴニストおよび共アゴニストを含むが、これらに制限されない。
本明細書で用いられている場合、用語「アンタゴニスト」は、レセプターの活性と結合し、否定的に変更する分子を意味する。いくつかの実施形態において、アンタゴニストは、レセプターの活性を、(部分的にまたは完全に)妨げる。いくつかの実施形態において、アンタゴニストは、レセプターが機能する割合を高める。いくつかの実施形態において、アンタゴニストは、レセプター結合ポケットのアクセス可能性を減らす(例えば、レセプターのリガンド結合ポケットをブロックし、結合ポケットの形を変形させ、それによりアクセスし難くする)。アンタゴニストは、競合的アンタゴニスト、半アゴニスト(それらの結合は、完全アゴニストの結合を阻害する)、逆アゴニスト、非競争的アンタゴニスト、アロステリックアンタゴニスト、及び/又はオルソステリックアンタゴニストを含むが、これらに限定されない。
「酸化防止剤」は、医薬的に耳に許容可能な酸化防止剤であり、例えば、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、アスコルビン酸ナトリウム、アスコルビン酸、重亜硫酸ナトリウム、トコフェロールを含む。特定の実施形態において、酸化防止剤は、必要な場合、化学安定性を高める。酸化防止剤は、また本明細書に開示の抗アポトーシス剤または前アポトーシス剤と組み合わせて使用される薬剤を含む、特定の治療薬剤の耳毒性の影響を中和するために使用される。
「内耳(auris interna)」は、蝸牛および前庭の迷路、および蝸牛を中耳と接続する正円窓を含む、内耳(inner ear)を指す。
「耳のバイオアベイラビリティ」または「内耳のバイオアベイラビリティ」または「中耳のバイオアベイラビリティ」または「外耳のバイオアベイラビリティ」は、試験される動物またはヒトの標的とする耳の構造体で利用可能な本明細書に開示された化合物の投与された用量の百分率を指す。
「中耳(auris media)」は、鼓室、耳小骨、および中耳を内耳と接続する卵円窓を含む、中耳(middle ear)を指す。
「外耳(auris externa)」は、耳介、耳道、および外耳を中耳と接続する鼓膜を含む、外耳(outer ear)を指す。
「血漿濃度」は、被験体の血液の血漿成分における、本明細書で提供される化合物の濃度を指す。
「担体物質」は、抗アポトーシス剤または前アポトーシス剤(複数)、標的とする耳の構造体(複数)、および耳に許容可能な医薬組成物の放出特性と適合する賦形剤である。このような担体物質は、例えば、バインダー、懸濁剤、崩壊剤、充填剤、界面活性剤、可溶化剤、安定化剤、潤滑剤、湿潤剤、希釈剤などを含む。「薬学的に耳に適合する担体物質」は、アカシア、ゼラチン、コロイド状二酸化ケイ素、グリセロリン酸カルシウム、乳酸カルシウム、マルトデキストリン、グリセリン、ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン(PVP)、コレステロール、コレステロールエステル、カゼイン塩ナトリウム、大豆レシチン、タウロコール酸、ホスファチジルコリン、塩化ナトリウム、三リン酸カルシウム、リン酸二カリウム、セルロースおよびセルロース接合体、ショ糖ナトリウムステアロイル乳酸、カラゲナン、モノグリセリド、ジグリセリド、アルファ化でんぷんなどを含むが、これらに限定されない。
「アポトーシスのモジュレーター」、「アポトーシス調節剤」、「抗アポトーシス剤または前アポトーシス剤」は、同物異名である。それらは、(a)アポトーシス(つまり抗アポトーシス剤)から神経および耳の有毛細胞(または中耳もしくは内耳の他の細胞)を保護する薬剤(例えば、抗アポトーシス剤);または、神経または耳の有毛細胞(または中耳もしくは内耳の他の細胞)においてアポトーシスを引き起こす薬剤である。
用語「希釈剤」は、送達前に抗アポトーシス剤または前アポトーシス剤を希釈し、標的とする耳の構造体に適合させるために使用される化学化合物を指す。
「分散剤」および/または「粘度調節剤」は、液体媒体を通じて抗アポトーシス剤または前アポトーシス剤の拡散性および均質性を制御する物質である。分散促進剤/分散剤の例は、以下を含むが、これらに限定されない:親水性ポリマー、電解液、Tween(登録商標)60または80、PEG、ポリビニルピロリドン(PVP;Plasdone(登録商標)として商業的に知られている)、および、例えば、ヒドロキシプロピルセルロース(例えば、HPC、HPC−SLおよびHPC−L)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(例えばHPMC K100、HPMC K4M、HPMC K15M及びHPMC K100M)、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートステアレート(HPMCAS)、非晶質セルロース、 ケイ酸アルミニウムマグネシウム、トリエタノールアミン、ポリビニルアルコール(PVA)、ビニルピロリドン/ビニルアセテートコポリマー(S630)、エチレンオキシドおよびホルムアルデヒドを備えた 4‐(1,1,3,3‐テトラメチルブチル)-フェノールポリマー(チロキサポールとしても知られている)、ポロクサマー(例えばPluronic F127、Pluronics F68、F88(登録商標)、およびF108(登録商標)、これらは、エチレンオキシドとプロピレンオキシドのブロックコポリマーである)のような炭水化物ベースの分散剤;およびポロキサミン(例えば、Tetronic 908(登録商標)、Poloxamine 908としても知られる、これは、プロピレンオキシドとエチレンオキシドのエチレンジアミンへの逐次添加からつくられる四官能ブロックコポリマーである(BASF Corporation、Parsippany、N.J.)、ポリビニルピロリドンK12、ポリビニルピロリドンK17、ポリビニルピロリドンK25またはポリビニルピロリドンK30、ポリビニルピロリドン/ビニルアセテートコポリマー(S−630)、ポリエチレングリコール、例えば、ポリエチレングリコールは、約300から約6000の分子量、または約3350から約4000の分子量、または約7000から約5400の分子量を有する、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ポリソルベート80、アルギン酸ナトリウム、例えば、トラガカントゴム、アラビアゴム、グアーガムのようなゴム、キサンタンを含むキサンタン、砂糖、例えば、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロースのようせルロース化合物、ポリソルベート80、アルギン酸ナトリウム、ポリエトキシル化ソルビタンモノラウリン酸、ポリエトキシル化ソルビタンモノラウリン酸、ポビドン、カルボマー、ポリビニルアルコール(PVA)、アルギン酸塩、キトサンまたはそれらの組み合わせ、セルロースまたはトリエチルセルロースのような可塑剤も、分散剤として使用される。本明細書に開示の抗アポトーシス剤または前アポトーシス剤のリポソーム分散または自己乳化性分散に有用な、任意の分散剤は、ジミリストイルホスファチジルコリン、ホスファチジルコリン(c8〜c18)、ホスファチジルエタノールアミン(c8〜c18)、ホスファチジルグリセロール(c8〜c18)、卵または大豆由来の天然のホスファチジルコリン、卵または大豆由来の天然のホスファチジルグリセロール、コレステロールおよびミリスチン酸イソプロピルである。
「薬物吸収」または「吸収」は、抗アポトーシス剤または前アポトーシス剤が、投与した局所的な部位から移動するプロセスを指し、ほんの一例として、内耳の正円窓膜から、バリア(以下に記載のように、正円窓膜)を通り、内耳(auris internaまたはinner ear)構造体へと移動するプロセスを指す。用語「同時投与」などは、本明細書に用いられる場合、単一の患者への抗アポトーシス剤または前アポトーシス剤の投与を包含することを意味し、同じ若しくは異なる投与経路、または同じ若しくは異なる時間に、抗アポトーシス剤または前アポトーシス剤が投与される処置レジメンを含むことが意図されている。
用語「有効な量」又は「治療に有効な量」は、本明細書で使用される場合、処置されている1以上の疾患又は疾病の症状を、ある程度まで緩和すると予想されるのに十分な、投与されている抗アポトーシス剤または前アポトーシス剤の量を指す。例えば、本明細書に開示の抗アポトーシス剤または前アポトーシス剤を投与した結果、興奮毒性の徴候、症状または原因を減らし、および/または軽減するのに十分な量を指す。例えば、治療用途で「有効な量」は、過度の有害な副作用を伴わずに、疾患症状を減らすか又は改善するのに要求される、本明細書に開示の抗アポトーシス剤または前アポトーシス剤の組成物の量である。用語「治療上有効な量」は、例えば、予防に有効な量を含む。本明細書に開示の抗アポトーシス剤または前アポトーシス剤の組成物の「効な量」は、過度の有害な副作用を伴うことなく、所望の薬理学的効果又は治療の向上を達成するのに有効な量である。「有効な量」または「治療上有効な量」は、いくつかの実施形態において、投与される化合物の代謝、被験体の年齢、体重、全体的な状態、処置される疾病、処置される疾病の重篤度、主治医の判断がばらつくことによって、被験体ごとに変わることが理解される。また、薬物動態および薬理学を考慮して、持続放出型の投薬形式における「有効な量」が、即効型の投薬形式における「有効な量」とは異なり得ることも理解される。
用語「高める(enhance)」または「高めること(enhancing)」は、抗アポトーシス剤または前アポトーシス剤の望ましい効果の有効性または持続時間のいずれかを増やすか、または長くすること、または、治療薬剤を投与した結果生じる局所的な痛みのような、任意の有害な症状を減らすことを指す。従って、本明細書に開示の抗アポトーシス剤または前アポトーシス剤の効果を高めることに関し、用語「高めること(enhancing)」は、本明細書に開示の抗アポトーシス剤または前アポトーシス剤と組み合わせて使用する他の治療薬剤の効果を、有効性または持続時間のいずれかにおいて増やすか、または長くする能力を指す。「高めるのに有効な量」は、本明細書で使用される場合、所望な系で別の治療薬剤または抗アポトーシス剤または前アポトーシス剤の効果を高めるのに十分な、抗アポトーシス剤または前アポトーシス剤または他の治療薬剤の量を指す。患者に用いる場合、この用途にとって有効な量は、疾患、障害または疾病の重篤度および経過、以前の治療、患者の健康状態および薬物に対する応答、処置する医師の判断によって変わるであろう。
用語「阻害すること(inhibiting)」は、症状、例えば、興奮毒性の進行、または処置を必要とする患者の症状が進むのを予防するか、遅らせるか、または逆行させることを指す。
用語「キット」及び「製品」は、同義語として用いられる。
「薬物動態」は、標的とする耳の構造体内にある所望の部位で、適切な薬物濃度の獲得および維持を決定する因子を指す。
予防的用途では、本明細書に記載の抗アポトーシス剤または前アポトーシス剤を含む組成物は、特定の疾患、障害または疾病(例えば興奮毒性、耳毒性、老人性難聴)にり患しやすい、またはさもなければ、それらのリスクのある患者に投与される。このような量は、「予防に有効な量または用量」と定義される。このような使用において、正確な量はまた、患者の健康状態、体重などにも左右される。本明細書で使用される場合、「医薬デバイス」は、耳に投与する際に、本明細書に記載の活性薬剤を持続放出するためのリザーバーを提供する、本明細書に記載の任意の組成物を含む。
「プロドラッグ」は、インビボで親薬物に変換される抗アポトーシス剤または前アポトーシス剤を指す。特定の実施形態において、プロドラッグは、1以上の工程またはプロセスによって、化合物の、生物学的、薬学的または治療的に活性な形態へと酵素によって代謝される。薬学的に活性な化合物は、プロドラッグを製造するために、インビボ投与すると活性化合物が再生されるように、修飾される。1つの実施形態において、プロドラッグは、薬物の代謝安定性または移動特性を変え、副作用または毒性を消し、または薬物の他の特性または性質を変えるように設計される。本明細書に提供される化合物は、いくつかの実施形態において、適切なプロドラッグへと誘導体化される。
「正円窓膜」は、蝸牛窓(fenestrae cochlea、circularwindowまたはfenestrae rotundaまたはround windowとしても知られる)を覆う、ヒトの膜である。ヒトでは、正円窓膜の厚みは、約70ミクロンである。
「可溶化剤」は、例えば、トリアセチン、クエン酸トリエチル、オレイン酸エチル、カプリル酸エチル、ラウリル硫酸ナトリウム、カプリン酸ナトリウム、ショ糖エステル、アルキルグルコシド、ナトリウムドクセート、ビタミンE TPGS、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、N-ヒドロキシエチルピロリドン、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルシクロデキストリン、エタノール、n-ブタノール、イソプロピルアルコール、コレステロール、胆汁塩、ポリエチレングリコール200〜600、グリコフロール、トランスキトール、プロピレングリコール、ジメチルイソソルビドなどのような、耳に許容可能な化合物を指す。
「安定化剤」は、任意の酸化防止剤、緩衝液、酸、防腐剤などのような、標的とする耳の構造体の環境と適合する化合物を指す。安定化剤は、限定されないが、(1)賦形剤と、容器またはシリンジまたはガラス瓶を含む送達システムとの適合性を向上させる、(2)組成物の成分の安定性を向上させる、または(3)組成物の安定性を向上させる、いずれかの薬剤を含む。
「定常状態」は、本明細書で使用される場合、標的とする耳の構造体に投与される薬物の量が、1回の投薬間隔の間に排除される薬物の量と等しい場合、または、標的とする構造体内での薬物曝露濃度が一定レベルになる場合である。
本明細書で使用される場合、用語「実質的に低分解の産物」は、活性薬剤の5重量%未満が、活性薬剤の分解産物であることを意味する。更なる実施形態において、前記用語は、活性薬剤の3重量%未満が活性薬剤の分解産物であることを意味する。また更なる実施形態において、活性薬剤の2重量%未満が、活性薬剤の分解産物であることを意味する。更なる実施形態において、活性薬剤の1重量%未満が、活性薬剤の分解産物であることを意味する。
本明細書で使用される場合、用語「被験体」は、動物、好ましくは、ヒトまたは非ヒトを含む哺乳動物を意味するために使用される。患者、被験体という用語は互換的に使用され得る。どちらの用語も、医療専門家(例えば、医者、看護師、医師助手、看護助手、ホスピスワーカー)に監督を要求するとは解釈されない。
「界面活性剤」は、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ナトリウムドクセート、Tween(登録商標)60または80、トリアセチン、ビタミンE TPGS、ソルビタンモノオレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレート、ポリソルベート、ポロクサマー(polaxomer)、胆汁塩、グリセリルモノステアレート、エチレンオキシドおよびプロピレンオキシドのコポリマー、例えば、プルロニック(登録商標)(BASF)などのような、耳に許容可能な化合物を指す。いくつかの他の界面活性剤は、ポリオキシエチレン脂肪酸グリセリド及び植物油、例えばポリオキシエチレン(60)水素化ヒマシ油;及び、ポリオキシエチレンアルキルエーテルおよびアルキルフェニルエーテル、例えば、オクトキシノール10、オクトキシノール40を含む。いくつかの実施形態において、界面活性剤は、物理的安定性を高めるために、または他の目的のために含まれる。
用語「処置する(treat)」、「処置している(treating)」、及び「処置(treatment)」は、本明細書に用いられる場合、予防的及び/又は治療的にのいずれかで、疾患又は疾病の症状を軽減、減少、又は改善すること、更なる症状を予防すること、症状の根底にある代謝の原因を改善または予防すること、疾患又は疾病を抑制すること、例えば疾患又は疾病の進行を停止すること、疾患又は疾病を緩和すること、疾患又は疾病を退行させること、疾患又は疾病により生じる状態を緩和すること、或いは疾患又は疾病を止めることを含む。
本明細書で用いられる場合、「基本的に微粉にされたパウダーの形態で」は、ほんの一例として、活性薬剤の70重量%より多くが、活性薬剤の微粉にされた粒子状物質の形態であることを含む。更なる実施形態において、前記用語は、活性薬剤の80重量%より多くが、活性薬剤の微粉にされた粒子状物質の形態であることを意味する。また更なる実施形態において、活性薬剤の90重量%より多くが、活性薬剤の微粉にされた粒子状物質の形態であることを意味する。
本明細書で使用される場合、用語「実質的に低分解の産物」は、活性薬剤の5重量%未満が、活性薬剤の分解産物であることを意味する。更なる実施形態において、前記用語は、活性薬剤の3重量%未満が活性薬剤の分解産物であることを意味する。また更なる実施形態において、活性薬剤の2重量%未満が、活性薬剤の分解産物であることを意味する。更なる実施形態において、活性薬剤の1重量%未満が、活性薬剤の分解産物であることを意味する。
本明細書で用いられる場合、用語「耳の介入治療」は、1以上の耳構造体に対する外部損傷か外傷を意味し、移植、耳の手術、注射、カニューレ挿入などを意味する。移植は、内耳または中耳の医療デバイスを含んでいる。それらの例は、蝸牛移植、聴力付与デバイス、聴力改善デバイス、短い電極、ミクロの人工補綴またはピストン様人工補綴;針;幹細胞移植;薬物送達デバイス;細胞ベースの治療などを含む。耳の手術は、中耳手術、内耳手術、鼓膜切開術(typanostomy)、鼓室階切開(cochleostomy)、迷路切開術(labyrinthotomy)、乳突削開術(mastoidectomy)、アブミ骨切除手術、アブミ骨摘除術(stapedotomy)、内リンパ球嚢切開術(sacculotomy)などを含む。注射は、中耳内の注射、蝸牛内の注射、正円窓膜を隔てた注射などを含む。カニューレ挿入は、中耳内、蝸牛内、内リンパ、外リンパ、前庭のカニューレ挿入などを含む。
本明細書に記載の方法と組成物の、他の目的、特徴、利点は、後述する詳細な説明から明らかになるだろう。しかしながら、発明の詳細な説明と特定の実例は、特定の実施形態を示すが、説明のためだけに与えられたものであることを理解されたい。
耳の解剖学
図4に示すように、外耳は、この器官の外側部分であり、耳介(pinna、auricle)と、耳道(外耳道)と、鼓膜(tympanic menbrane、ear drumとしても知られている)の外側に面する部分から成る。頭部の側面に見える外耳の肉質部分である耳介は、音波を集め、音波を耳道に向かわせる。従って、外耳の機能は、一部には、音波を集め、鼓膜および中耳に向かわせることである。
中耳は、空気で満たされた空洞であり、鼓室と呼ばれ、鼓膜の背後にある。鼓膜(tympanic membrane、ear drumとしても知られている)は、外耳を中耳から分ける薄い膜である。中耳は、側頭骨の中に位置しており、この空間の中に、ツチ骨、キヌタ骨、アブミ骨の3つの耳骨(耳小骨)を含む。耳小骨は、小さな靱帯によってともに結合しており、鼓室の空間を横切って架橋を形成している。ツチ骨は、一端で鼓膜に結合しており、他端でキヌタ骨に結合しており、次いで、アブミ骨に結合している。アブミ骨は、卵円窓に結合しており、2つの卵円窓の1つは、鼓室内に位置している。輪状靱帯として知られる線維組織層は、アブミ骨を卵円窓に接続している。外耳からの音波は、まず、鼓膜を振動させる。この振動が、耳小骨および卵円窓を通って蝸牛に伝わり、内耳における液体にこの動きが伝わる。従って、耳小骨は、鼓膜と、流体に満たされた内耳の卵円窓の間を機械的に結合するように配置されており、さらなる処理のために、音が内耳に伝えられ、変換される。耳小骨、鼓膜または卵円窓が硬化、硬直、または動きができなくなると、難聴、例えば、耳硬化症、またはアブミ骨の硬直を引き起こす。
また、鼓室は、耳管を経て、咽喉にも繋がっている。耳管は、外気と中耳の空洞の間の圧力を等しくする能力を付与している。正円窓は、内耳の要素であるが、また鼓室内にも繋がっており、内耳の蝸牛に向かって開口している。正円窓は、正円窓膜によって覆われており、3層から成る:最外層または粘液層、中間層または線維層、および内膜、これは蝸牛の流体と直接連絡する。従って、正円窓は、内側の膜を介して、内耳と直接繋がっている。
卵円窓および正円窓での動きは、相互連絡されており、すなわち、アブミ骨の骨が、鼓膜から正円窓へとこの動きを伝えることで、内耳の流体に対して内側に動くにつれて、正円窓(または、正円窓膜)が、対応するように押し出され、蝸牛の流体から離れる。正円窓のこの動きによって、蝸牛内の流体が動き、次いで、蝸牛の内側の有毛細胞が動き、聴覚信号が伝達される。正円窓膜における硬化、硬直は、蝸牛の流体が移動できなくなるため、難聴を引き起こす。近年の研究は、卵円窓を通る正常な伝導経路を迂回させ、増幅された入力を蝸牛室に提供する、正円窓に医療用変換器を移植することに注目が集まっている。
聴覚信号の変換は、内耳で起こる。流体で満たされた内耳(auris internaまたはinner ear)は、蝸牛器および前庭器の2つの主要な要素からなる。内耳は、部分的に、頭蓋骨の側頭骨にある入り組んだ一連の経路である骨迷路(osseous labyrinthまたはbony labyrinth)内に位置している。前庭の器官は、平衡感覚の器官であり、3つの半円状の管と、前庭とからなっている。この3つの半円状の管は、空間の3つの直交面に沿った頭部の動きを、流体の動きと、次いで、膨大部稜と呼ばれる半円状の管の感覚器官による信号処理とによって検出することができるように、互いに相関的に配列されている。膨大部稜は、有毛細胞と支持細胞とを備えており、クプラと呼ばれる半円型のゼラチン状の塊によって覆われている。有毛細胞の毛は、クプラに包埋されている。半円状の管は、動的平衡、回転または角運動の平衡状態を検出する。
頭部を迅速に回転させると、半円状の管は、頭部とともに動くが、膜状の半円状の管の中にある内リンパ液は、動かないままである傾向がある。内リンパ液は、クプラに逆らって押し出され、片側に傾く。クプラが傾くと、クプラが、膨大部稜の有毛細胞のいくつかの毛を曲げ、これが、知覚インパルスの引き金となる。それぞれの半円状の管は、異なる面に位置しているため、それぞれの半円状の管に対応する膨大部稜は、頭部の同じ動きに対して異なる応答をする。これにより、インパルスの寄せ集めが作られ、これが、内耳神経の前庭枝にある中枢神経系に伝わる。中枢神経系は、この情報を解釈し、平衡を維持するのに適切な反応を開始する。中枢神経系の中で重要なのは、小脳であり、平衡および均衡の感覚を媒介する。
前庭は、内耳の中心部分であり、静的平衡または重力に対する頭部の位置を確認する、有毛細胞を有する機械受容器を備えている。静的平衡は、頭部が動いていないか、または直線状に動いているときに役割をはたす。前庭内の膜状迷路は、卵形嚢および球形嚢の2つの嚢状の構造体に分かれる。それぞれの構造体は、同様に、嚢斑と呼ばれる小さな構造体を含み、これは、静的平衡の維持に関与している。嚢斑は、感覚有毛細胞からなり、感覚有毛細胞は、嚢斑を覆うゼラチン状の塊(クプラと似たもの)に包埋されている。耳石と呼ばれる炭酸カルシウムの粒は、ゼラチン状の層表面に埋め込まれている。
頭部が直立位置にある場合、毛は、斑に沿ってまっすぐになっている。頭部が傾くと、ゼラチン状の塊および耳石が、これに対応して傾き、斑の有毛細胞のいくつかの毛が曲がる。この曲げ動作によって、中枢神経系に対して信号インパルスが開始され、これが、内耳神経の前庭枝を介して伝わり、平衡を維持するために、適切な筋肉に対し運動インパルスを順に中継する。
蝸牛は、聴覚に関連する、内耳の部分である。蝸牛は、カタツムリに似た形状に巻かれている、先が細くなった管状の構造体である。蝸牛の内側は、3つの領域に分かれており、卵円膜および基底膜の位置によってさらに規定されている。卵円膜の上の位置は、前庭階であり、卵円窓から蝸牛頂部に延びており、カリウム濃度が低く、ナトリウム濃度が高い水溶液である外リンパ液を含有する。基底膜は、鼓室階の領域を規定しており、蝸牛頂部から正円窓に延びており、これも外リンパを含有している。基底膜は、数千の硬い繊維を含有しており、この繊維は、正円窓から蝸牛頂部に向かって、徐々に長くなっている。基底膜の線維は、音によって活性化されると、振動する。前庭階と鼓室階との間に蝸牛管があり、この蝸牛管は、蝸牛頂部で、閉じた嚢として終わる。蝸牛管は、内リンパ液を含有しており、この内リンパ液は、脳脊髄液と似ており、カリウムが多い。
聴覚器官であるコルチ器官は、基底膜上にあり、蝸牛管の方へ上方に向かって延びている。コルチ器官は、有毛細胞を含有しており、この有毛細胞は、自由表面から延びる毛状突起を有しており、蓋膜と呼ばれるゼラチン状表面と接触している。有毛細胞には軸索が存在しないが、内耳神経の蝸牛枝を形成する感覚神経線維に囲まれている(脳神経VIII)。
上記のように、楕円形の窓としても知られる卵円窓は、アブミ骨と連絡しており、鼓膜から振動する音波を中継する。卵円窓に伝わった振動は、外リンパおよび前庭階/鼓室階を経て、流体で満たされた蝸牛の内圧を高め、次いで、正円窓膜が応答して膨らむ。卵円窓の内側が加圧されること/正円窓が外側に膨らむことが協働することによって、蝸牛の内圧が変わることなく、蝸牛内の流体を動かすことができる。しかし、振動が、外リンパを介して前庭階内に伝わると、卵円膜内で対応する振幅が作られる。これらの対応する振幅は、蝸牛管の内リンパを介して伝わり、基底膜へと伝わる。基底膜が振幅するか、または上下に動くと、コルチ器官が、それに伴って動く。次いで、コルチ器官の有毛細胞受容体が、蓋膜に逆らって動き、蓋膜で機械的な変形が起こる。この機械的な変形によって、神経インパルスが開始され、これが、内耳神経を介して中枢神経系に伝わり、受け取られた音波は、続いて中枢神経系によって処理されるシグナルへと機械的に変換される。
疾患
内耳障害、中耳障害、外耳障害を含む耳の障害は、限定されないが、難聴、眼振、眩暈、耳鳴り、炎症、感染、うっ血を含む症状を作り出す。本明細書に開示の組成物で処置される耳の障害は多数で、耳毒性、興奮毒性および老人性難聴を含む。
興奮毒性
興奮毒性は、グルタミン酸及び/又は同様の物質による、神経及び/又は有毛細胞の死、又は損傷を指す。
グルタミン酸は、中枢神経系で最も大量にある興奮性の神経伝達物質である。シナプス前細胞は、刺激に対してグルタミン酸を放出する。グルタミン酸は、シナプスを横切ってめぐり、シナプス後細胞に位置する受容体に結合し、これらの神経細胞を活性化させる。グルタミン酸受容体は、NMDA、AMPAおよびカイニン酸受容体を含んでいる。グルタミン酸輸送体は、シナプスから細胞外のグルタミン酸を除去する役目を課されている。特定の出来事(例えば、乏血または脳卒中)は、グルタミン酸輸送体を損傷させる。これはシナプス内に蓄積する過剰なグルタミン酸を生じさせる。シナプス内の過剰なグルタミン酸は、グルタミン酸受容体の過剰な活性化を結果として生じる。
AMPA受容体は、グルタミン酸とAMPAの双方の結合によって活性化される。AMPA受容体の特定のイソフォームの活性化は、ニューロンの原形質膜に位置しているイオンチャンネルの開放という結果を生じる。チャンネルが開くと、Na+とCa2+イオンがニューロンへと流れ、K+イオンがニューロンの外へと流れる。
NMDA受容体は、グルタミン酸とNMDAとの双方が結合することによって活性化される。NMDA受容体の活性化は、ニューロンの原形質膜に位置しているイオンチャンネルの開放を結果として生じる。しかし、これらのチャンネルはMg2+イオンによってブロックされる。AMPA受容体の活性化は、イオンチャンネルからシナプスへのMg2+イオンの排出という結果を生じる。イオンチャンネルが開き、イオンチャンネルがMg2+イオンを排出すると、Na+とCa2+イオンがニューロンへと流れ、K+イオンがニューロンの外へと流れる。
興奮毒性は、NMDA受容体とAMPA受容体とが、過剰な量のリガンド、例えば、異常な量のグルタミン酸によって、過剰に活性化されたときに生じる。これらの受容体の過剰な活性化は、それらの制御下でイオンチャンネルの過剰な開放を起こす。このことは、異常に高いレベルのCa2+とNa+とがニューロンに入ることを可能にする。ニューロンへのこれらのレベルのCa2+およびNa+の流入によって、ニューロンは、よりしばしば興奮することとなる。この増加した興奮によって、遊離基および炎症性の化合物の迅速な蓄積が起こる。遊離基は、細胞内の貯蔵エネルギーを使い果たし、ミトコンドリアを損傷する。更に、過剰レベルのCa2+とNa+イオンは、過剰レベルの酵素(ホスホリパーゼ、エンドヌクレアーゼ、プロテアーゼを含むが、これに限定されない)を活性化する。これらの酵素の過剰な活性は、細胞骨格、原形質膜、ミトコンドリア、ニューロンのDNAに損傷を与えるという結果を生じる。そのような損傷は、しばしばアポトーシス遺伝子の活性化を結果として生じさせる。さらに、多数の前アポトーシス遺伝子およびアポトーシス調節遺伝子の転写は、Ca2+レベルによって制御される。過剰Ca2+は、しばしば、前アポトーシス遺伝子の発現上昇を引き起こし、アポトーシス調節遺伝子の発現低下に帰着する。
老人性難聴
老人性難聴は老化に起因する進行性の両側性の聴力損失である。ほとんどの難聴が、より高い周波数(つまり15または16Hz以上の周波数)で起こり、(男性の音声に対するのと逆に)女性の音声を聞くことを困難にし、(「s」および「th」のような)高調子の音を区別することができなくなる。それは除去するのが困難な背景雑音かもしれない。障害は、補聴器の移植、及び/又はROSの形成を避ける医薬品の投与によって、最もしばしば処置される。
障害は、内耳、中耳、及び/又は、VII神経の生理機能の変化によって引き起こされる。老人性難聴に帰着する内耳の変化は、耳の有毛細胞及び/又は不動毛の損失を伴う上皮萎縮、神経細胞の萎縮症、血管線条の萎縮症および基底膜の肥厚/硬直を含む。老人性難聴に寄与し得るさらなる変化は、鼓膜と小骨における欠陥の蓄積を含む。
老人性難聴に結びつく変化は、DNAにおける変異の蓄積およびミトコンドリアDNAにおける変異の蓄積により生じる場合がある;しかしながら、変化は、大騒音に曝されること、耳毒性の薬品に曝されること、感染、及び/又は、耳への血流が減少することによって悪化し得る。後者は、アテローム性動脈硬化、糖尿病、高血圧および喫煙に起因する。
中毒性難聴
中毒性難聴は、耳のニューロンまたは有毛細胞への破壊または損傷を指し、前記損傷は、毒素によって引き起こされる。多剤は耳毒性であると知られている。多くの場合、耳毒性は用量依存性である。それは薬の中止で治らないかもしれないしまたは良くなるかもしれない。
既知の耳毒性薬物は、限定されないが、以下含む:アミノグリコシド抗生物質クラスの抗生物質(例えば、ゲンタマイシン、またはアミカシン)、マクロライド・クラスの抗生物質のいくつかのメンバー(例えば、エリスロマイシン)、糖タンパク質クラスの抗生物質のいくつかのメンバー(例えば、バンコマイシン)、サリチル酸、ニコチン、いくつかの化学療法剤(例えばアクチノマイシン、ブレオマイシン、シスプラチン、カルボプラチンおよびビンクリスチン)、またはループ利尿薬ファミリー薬物のいくつかのメンバー(例えばフロセミド)。
シスプラチンおよびアミノグリコシド抗生物質クラスの抗生物質は、活性酸素種(ROS)の生産を引き起こす。ROSは、細胞を直接損傷し、よって、DNA、タンパク質、及び/又は脂質の損傷により、アポトーシスを引き起こす。ROSはまた、アポトーシスに帰着するシグナリング・カスケードに含まれる。特定の例において、酸化防止剤は、それらの形成を防ぐかそれらが細胞を破損し得る前に、遊離基を除去することによって、ROSによる損傷を防ぐ。従って、いくつかの実施形態は、酸化防止剤の使用を組み入れる。特定の例において、ニトロンは、急性の音響雑音に誘発される難聴を防ぐために、酸化防止剤と相乗的に作用する。特定の例において、ニトロンは遊離基を補足する。いくつかの実施形態において、ニトロン(例えば、アルファ-フェニル-tert-ブチルニトロン(PBN)、アロプリノール(allpurinol))は、酸化防止剤と同時投与される。シスプラチンおよびアミノグリコシド抗生物質クラスの抗生物質の両方も、内耳の血管線条でメラニンを結合することによって耳を損傷すると考えられる。サリチル酸は、タンパク質プレスチン(prestin)の機能を阻害するので、耳毒性と分類される。プレスチン(prestin)は、外部の耳の有毛細胞の原形質膜を横切って塩化物と炭酸塩の交換を制御することによって、外部の耳の有毛細胞運動性を調節する。それは、外部の耳の有毛細胞でのみ見られ、内部の耳の有毛細胞では見られない。
内耳の障害および中耳の障害を含む、耳の及び/又は前庭の障害は、限定されないが、難聴、眼振、眩暈、耳鳴り、炎症、腫脹、感染、うっ血を含む症状を生み出す。これらの障害は、感染、損傷、炎症、腫瘍、薬物または他の化学薬剤に対する有害な反応のような多くの原因を有しているであろう。
外傷
外傷は、外部の力の適用に起因する耳の構造体への物理的損傷を指す。いくつかの実施形態において、外傷は、大騒音(例えば爆竹、または大きな音楽)に曝されることに起因する。いくつかの実施形態において、耳の構造体への外傷は、医療機器の移植、耳の手術、注射剤、カニューレ挿入などに起因する。移植物は、内耳または中耳医療機器を含み、それらの例は、蝸牛移植、聴力付与デバイス、聴力改善デバイス、短い電極、ミクロの人工補綴またはピストン様人工補綴;針;幹細胞移植;薬物送達デバイス;細胞ベースの治療などを含む。耳の手術は、中耳手術、内耳手術、鼓膜切開術(typanostomy)、鼓室階切開(cochleostomy)、迷路切開術(labyrinthotomy)、乳突削開術(mastoidectomy)、アブミ骨切除手術、アブミ骨摘除術(stapedotomy)、内リンパ球嚢切開術(sacculotomy)などを含む。注射は、中耳内の注射、蝸牛内の注射、正円窓膜を隔てた注射などを含む。カニューレ挿入は、中耳内、蝸牛内、内リンパ、外リンパ、前庭のカニューレ挿入などを含む。
いくつかの実施形態において、音響外傷の後に続く、本明細書に記載の抗アポトーシス剤(例えば、AM−111)の組成物の投与またはデバイスの適用は、音響外傷によって引き起こされた耳の構造物への損傷、例えば、刺激作用、細胞死骨新生(osteoneogeneis)及び/又はさらなる神経退化を遅らせ、または防ぐ。
いくつかの実施形態において、外因性物質(例えば、医療機器移植物または幹細胞移植物)の移植と組み合わせての、本明細書に記載の抗アポトーシス剤(例えば、AM−111)組成物の投与またはデバイスの適用は、耳に、外部デバイスおよび/または多数の細胞(例えば、幹細胞)を導入したことによって引き起こされる耳の構造物への損傷、例えば、刺激作用、細胞死骨新生及び/又は、さらなる神経退化を遅らせ、または防ぐ。いくつかの実施形態において、移植物と組み合わせての、本明細書に記載の抗アポトーシス剤(例えば、AM−111)の組成物の投与またはデバイスの適用は、移植組織のみの場合と比較して、難聴のより有効な回復を可能にする。
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の抗アポトーシス剤(例えば、AM−111)組成物の投与またはデバイスの適用は、成功した移植のために、基礎となる疾病によって引き起こされた耳の構造体への損傷を減らす。いくつかの実施形態において、関連手術における、および/または外因性物質の移植と共の、本明細書に記載の抗アポトーシス剤(例えば、AM−111)組成物の投与またはデバイスの適用は、否定的な副作用(例えば細胞死)を減らし、または防ぐ。
いくつかの実施形態において、外因性物質の移植と連携しての、本明細書に記載の抗アポトーシス剤(例えば、AM−111)組成物の投与またはデバイスの適用は、栄養作用を有する(つまり、細胞の健全な成長、および移植物または移植組織の領域の組織の治癒を促進する)。いくつかの実施形態において、栄養作用は、耳の手術の間、または中耳内の注入手順の間、望ましい。いくつかの実施形態において、栄養作用は、医療デバイスの設置の後、または細胞(例えば幹細胞)移植の後に望ましい。そのような実施形態のうちのいくつかにおいて、本明細書に記載の抗アポトーシス剤(例えばAM−111)組成物またはデバイスは、直接の蝸牛注入によって、鼓室階切開(chochleostomy)によって、または円形窓上への沈着を介して、投与される。
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の抗アポトーシス剤(例えば、AM−111)組成物の投与またはデバイスの適用は、耳の手術、または外因性物質(例えば、医療デバイスまたは多数の細胞(例えば、幹細胞))の移植に関連した炎症及び/又は感染を減らす。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の抗アポトーシス剤(例えば、AM−111)組成物の投与またはデバイスの適用は、手術後の及び/又は移植後の合併症(例えば炎症、有毛細胞の損傷、神経退化、骨新生など)を減らし、または除去する(elimipate)。いくつかの例において、本明細書に記載の抗アポトーシス剤(例えば、AM−111)組成物の投与またはデバイスの適用は、手術後または移植後の回復時間を短くする。
1つの態様において、本明細書に記載の製剤及びその投与形態は、内耳部分(compartment)の直接的な灌流の方法に適用可能である。従って、本明細書に記載の製剤は、非限定的な例として、鼓室階切開(cochleostomy)、迷路切開術(labyrinthotomy)、乳突削開術(mastoidectomy)、アブミ骨切除手術、アブミ骨摘除術(stapedotomy)、内リンパ球嚢切開術(endolymphatic sacculotomy)などを含む外科的手術において有益である。いくつかの実施形態において、内耳部分(compartment)は、耳の手術前、耳の手術の間、耳の手術の後、またはそれらの組み合わせ中に、本明細書に記載の抗アポトーシス剤(例えば、AM−111)組成物またはデバイスで灌流される。いくつかの実施形態において、AM−111は、外傷から耳の構造体に対する損傷を修復するために被験体に投与される。いくつかの実施形態において、AM−111は、手術に起因する損傷を減らすために、耳の手術前に、耳の手術中に、耳の手術の後に投与される。
医薬品
本明細書には、アポトーシスから耳のニューロンおよび耳の有毛細胞を保護し、及び/又は、耳の感覚ニューロン及び/又は有毛細胞の悪化を改善する、アポトーシス調節組成物が提供される。さらに、本明細書には、耳のニューロン及び/又は有毛細胞の成長及び/又は再生を促進するアポトーシス調節組成物が提供される。また、本明細書には、耳のニューロン及び/又は有毛細胞のアポトーシスを引き起こすアポトーシス調節組成物が提供される。耳の障害は、本明細書に記載の医薬品、または他の医薬品に反応する原因および兆候を有する。本明細書に開示されてはいないが、耳の及び/又は前庭の障害の改善または根絶に有用な抗アポトーシス剤または前アポトーシス剤は、示されている実施形態の範囲内に明らかに含まれ、範囲内にあることが意図されている。
さらに、全身適用または局所適用中に、他の臓器系において毒性があり、有害であるか、または有効ではないことが以前に示されている医薬品、例えば、肝臓で処理した後に生成する毒性代謝物によるもの、特定の臓器、組織または系における薬物の毒性、効力を得るのに必要な高濃度によるもの、全身経路を介して放出されることが不可能なことによるもの、またはpK特性が悪いことによるものも、本明細書のいくつかの実施形態において有用である。例えば、抗アポトーシス剤または前アポトーシス剤である、ミノサイクリンの既知の副作用は、下痢、頭痛、嘔吐症状、熱、黄疸、頭蓋内圧亢進および自己免疫障害、例えば、狼瘡、を含む。従って、全身への放出が制限されているか、または全身への放出は行われず、全身に投与されると毒性があり、pK特性が悪いか、またはこれらを組み合わせた性質を有する医薬品は、本明細書に開示する実施形態の範囲内であることが想定されている。
本明細書に開示のアポトーシス調節組成物は、任意に、処置が必要な耳の構造体を直接標的にする;例えば、想定される1つの実施形態は、本明細書で開示の抗アポトーシス剤または前アポトーシス剤を、内耳の正円窓膜またはクリスタ蝸牛窓(crista fenestrae cochlea)に直接適用し、内耳(auris internaまたはinner ear)の構成部分に直接到達し、処置することを可能とする。他の実施形態において、本明細書に開示の抗アポトーシス剤または前アポトーシス剤は、卵円窓に直接適用される。さらに他の実施形態において、直接的な到達は、内耳への直接的な微量注入(例えば、蝸牛への微小潅流)により、得られる。また、このような実施形態は、任意に、薬物送達デバイスを含み、この薬物送達デバイスは、針およびシリンジ、ポンプ、マイクロインジェクションデバイス、またはそれらの任意の組み合わせの使用によって、抗アポトーシス剤または前アポトーシス剤の製剤を送達する。
いくつかの医薬品は、単独で、または組み合わせの中で、耳毒性である。例えば、アクチノマイシン、ブレオマイシン、シスプラチン、カルボプラチンおよびビンクリスチンを含むいくつかの化学療法剤;および、エリスロマイシン、ゲンタマイシン、ストレプトマイシン、ジヒドロストレプトマイシン、トブラマイシン、ネチルマイシン、アミカシン、ネオマイシン、カナマイシン、エキノマイシン(etiomycin)、バンコマイシン、メトロニダゾール(metronidizole)、カプレオマイシンを含む抗生物質は、いささか非常に有毒で、そして前庭と蝸牛の構造体に差次的に(differentially)影響する。しかしながら、いくつかの例において、耳毒性薬物との組み合わせ(例えば、耳保護剤(otoprotectant)と組み合わせてのシスプラチン)は、薬物の耳毒性の影響を和らげることにより保護的である。
さらに、潜在的に耳毒性薬物の局在化された適用は、また、維持された効き目を備えたより低量の使用またはより短い期間の間の目標量の使用を通じて、さもなければ全身投与によって生じる毒性の影響を和らげる。さらに、いくつかの薬学的賦形剤、希釈剤又は担体は、潜在的に耳毒性がある。例えば、塩化ベンザルコニウム、一般的な防腐剤は、耳毒性があり、従って、前庭又は蝸牛の構造体に取り込まれると、潜在的に有害である。制御放出抗アポトーシス剤または前アポトーシス剤を処方する際に、適切な賦形剤、希釈剤又は担体を避ける又は組み合わせること、製剤から潜在的な耳毒性の構成成分を減少させる又は除去すること、又は賦形剤、希釈剤又は担体などの量を減少させることが推奨される。任意で、制御抗アポトーシス剤または前アポトーシス剤の製剤は、特定の治療薬剤、賦形剤、希釈剤又は担体を使用することで生じる潜在的な耳毒性の影響を弱めるための、抗酸化物質、アルファリポ酸、カルシウム、ホスホマイシン又は鉄キレート剤などの耳毒性防護剤を含む。いくつかの実施形態において、ニトロン(例えば、アルファ-フェニル-tert-ブチルニトロン)は、酸化防止剤と同時投与される。
MAPK/JNKシグナリング・カスケードのインヒビター
本明細書に開示の製剤の使用のために予期されるのは、アポトーシスからニューロンおよび耳の有毛細胞を保護する薬剤(つまり抗アポトーシス剤)である。さらに、本明細書に開示の製剤の使用のために予期されるのは、ニューロンおよび耳の有毛細胞におけるアポトーシスを引き起こす薬剤(つまり前アポトーシス剤)である。従って、いくつかの実施形態は、抗アポトーシス剤の使用を組み入れる。あるいは、いくつかの実施形態は、前アポトーシス剤の使用を組み入れる。
MAPK/JNKカスケードは、細胞においてアポトーシスを引き起こす。細胞のストレス(例えば、音響外傷、耳毒性薬剤への曝露)は、マイトゲン活性化タンパク質キナーゼ(MAPK)を活性化する。活性化されたMAPKは、c‐jun N末端キナーゼ(JNK)のメンバー上のThrとTyrの残基をリン酸化し、それにより、これらのキナーゼを活性化する。その後、JNKは、c‐jun、AP−1転写因子複合体の構成成分、をリン酸化する。AP−1の活性化は、Bcl−2ファミリー(例えばBax、BAD、BakおよびBok)のいくつかの前アポトーシスのメンバーの転写を引き起こす。
いくつかの実施形態において、抗アポトーシス剤は、MAPK/JNKシグナリング・カスケードの活性を(部分的にまたは完全に)抑制する薬剤である。いくつかの実施形態において、抗アポトーシス剤は、ミノサイクリン;SB−203580(4-(4-フルオロフェニル)‐2‐(4‐メチルスルフィニル(フェニル)‐5‐(4‐ピリジル)(1Hイミダゾール);PD169316(4‐(4‐フルオロフェニル)‐2‐(4‐ニトロフェニル)‐5‐(4‐ピリジル)‐1H‐イミダゾール); SB202190(4‐(4‐フルオロフェニル)‐2‐(4‐ヒドロキシフェニル)‐5‐(4‐ピリジル)1H‐イミダゾ‐ル;RWJ67657(4‐[4‐(4‐フルオロフェニル)‐1‐(3‐フェニルプロピル)‐5‐(4‐ピリジニル)‐1H‐イミダゾール(‐2‐イル)‐3‐ブチン(butyn)‐1‐オール];SB220025(5‐(2‐アミノ‐4‐ピリミジニル)‐4‐(4‐フルオロフェニル)‐1‐(4‐ピペリジニル)イミダゾール);あるいはそれらの組み合わせである。ミノサイクリンは、p38 MAPKリン酸化の誘導の阻害により、耳毒性の抗生物質ゲンタマイシンによる処置の後に起こる耳の有毛細胞のアポトーシスを防ぐ。いくつかの実施形態において、MAPK/JNKシグナリング・カスケードに拮抗する薬剤は、D‐JNKI‐1 ((D)‐hJIP175‐157‐DPro‐DPro‐(D)‐HIV‐TAT57‐48)、AM−111 (Auris)、 SP600125 (アントラ[1,9―cd]ピラゾール‐6(2H)‐オン)、 JNK インヒビターI ((L)‐HIV‐TAT48‐57‐PP‐JBD20)、 JNKインヒビターIII ((L)‐HIV‐TAT47‐57‐gaba‐c‐Junδ33‐57)、AS601245 (1,3−ベンゾチアゾール‐2‐イル (2−[[2−(3−ピリジニル)エチル]アミノ]‐4ピリミジニル)アセトニトリル)、JNKインヒビターVI(H2N−RPKRPTTLNLF−NH2)、JNKインヒビターVIII(N‐(4−アミノ‐5‐シアノ−6−エトキシピリジン‐2‐イル)‐2‐(2,5‐ジメトキシフェニル)アセトアミド)、JNKインヒビタ‐IX(N‐(3‐シアノ‐4,5,6,7‐テトラヒドロ‐1‐ベンゾチエン(benzothien)‐2‐イル)‐1‐ナフトアミド)、ジクマロール(3,3’ メチレンビス(4‐ヒドロキシクマリン))、SC‐236(4‐[5‐(4‐クロロフェニル)‐3‐(トリフルオロメチル)‐1H‐ピラゾル‐1‐イル] ベンゼン‐スルホンアミド)、CEP―1347(Cephalon)、CEP―11004(Cephalon);またはそれらの組み合わせである。いくつかの実施形態において、抗アポトーシス剤はAM−111(Auris)である。
JAK(ヤーヌス・キナーゼ)インヒビター
本明細書に開示の製剤の用途のために予期されるのは、アポトーシスからニューロンおよび耳の有毛細胞を保護する薬剤(つまり抗アポトーシス剤)である。さらに、本明細書に開示の製剤の用途のために予期されるのは、ニューロンおよび耳の有毛細胞におけるアポトーシスを引き起こす薬剤(つまり前アポトーシス剤)である。従って、いくつかの実施形態は、抗アポトーシス剤の使用を組み入れる。あるいは、いくつかの実施形態は、前アポトーシス剤の使用を組み入れる。
特定の例において、JAKキナーゼは、タイプIおよびタイプIIサイトカインレセプター信号伝達経路に含まれる下流のタンパク質をリン酸化し活性化する。特定の例において、JAK2キナーゼの活性化はアポトーシスを引き起こす。
いくつかの実施形態において、抗アポトーシス剤は、ヤーヌス・キナーゼ(JAK)の活性を(部分的にまたは完全に)阻害する薬剤である。いくつかの実施形態において、抗アポトーシス剤は、ヤーヌス・キナーゼ2(JAK2)の活性を(部分的にまたは完全に)阻害する薬剤である。いくつかの実施形態において、抗アポトーシス剤は、VX−680、TG101348、TG101209、INCB018424、XL019、CEP−701、AT9283またはそれらの組み合わせである。
B cl−2ファミリー
本明細書に開示の製剤の用途のために予期されるのは、アポトーシスからニューロンおよび耳の有毛細胞を保護する薬剤(つまり抗アポトーシス剤)である。さらに、本明細書に開示の製剤の用途のために予期されるのは、ニューロンおよび耳の有毛細胞中のアポトーシスを引き起こす薬(つまり前アポトーシス剤)である。従って、いくつかの実施形態は、抗アポトーシス剤の使用を組み入れる。あるいは、いくつかの実施形態は、前アポトーシス剤の使用を組み入れる。
いくつかの実施形態において、抗アポトーシス剤はBcl−2である。いくつかの例において、Bcl−2は、部分的にまたは完全にカスパーゼ(例えば、カスパーゼ3およびカスパーゼ‐6)の活性化を阻害する。特定の例において、Bcl−2による処置、またはBcl−2のアゴニズム(あるいはそれらの一部分の変形)は、神経細胞への虚血性障害を改善する。特定の例において、Bcl−2による処置、またはBcl−2のアゴニズム(あるいはそれらの一部分の変形)は、シスプラチンに引き起こされたアポトーシスを改善する。特定の例において、Bcl−2による処置、またはBcl−2のアゴニズム(あるいはそれらの一部分の変形)は、ネオマイシンに引き起こされたアポトーシスを改善する。特定の例において、Bcl−2による処置、またはBcl−2のアゴニズム(あるいはそれらの一部分の変形)は、音響外傷に引き起こされたアポトーシスを改善する。
いくつかの実施形態において、抗アポトーシス剤は、少なくともアポトーシス調節Bcl−2ポリペプチドの一部を含む人工タンパク質である。いくつかの実施形態において、Bcl−2ファミリーのアポトーシス調節メンバーは、基底細胞リンパ腫‐特大(Bcl−XL)である。Bcl−XLは、癌細胞においてしばしば過剰発現する、Bcl−2ファミリーのアポトーシス調節メンバーである。いくつかの実施形態において、Bcl−x(L)に由来する人工タンパク質は、FNKである。いくつかの実施形態において、融合タンパク質は、FNKおよびHIV/TATタンパク質構成物の形質導入領域(TAT)を含んで構築される。FNK−TATのcDNA配列構築物のために、米国特許第7,253,269号を参照、これは、そのような開示のために本明細書に引用によって組み込まれる。FNK−TATタンパク質構成物の投与は、外傷によって損傷したニューロンおよび耳の有毛細胞におけるアポトーシスの誘発を阻害する。
いくつかの実施形態において、抗アポトーシス剤は、Bax、BAD、Bak、Bokまたはそれらの組み合わせの活性を(部分的にまたは完全に)抑制する薬剤である。特定の例において、Baxポリペプチドは、(単独で、または別のポリペプチドと結合して)細胞のミトコンドリアの外膜に細孔を形成する。特定の例において、Bakポリペプチドは、(単独で、または別のポリペプチドと結合して)細胞のミトコンドリアの外膜に細孔を形成する。細胞のミトコンドリアにおける細孔の形成は、結果的に、部分的にまたは完全に、ミトコンドリアから、シトクロムcおよび他の前アポトーシス因子の解放をもたらす(「ミトコンドリア外膜透過化」)。特定の例において、ミトコンドリア外膜透過化は、部分的にまたは完全に、多くのカスパーゼの活性化を引き起こす。特定の例において、カスパーゼの活性化は、部分的にまたは完全に、アポトーシスの誘発を引き起こす。特定の例において、BADポリペプチドは、Bcl−2およびBcl−xLに結合する。特定の例において、Bcl−2またはBcl−xLポリペプチドへのBADポリペプチドの結合は、Bcl−2及び/又はBcl−xLポリペプチドを不活性化する。特定の例において、Bcl−2またはBcl−xLポリペプチドの不活性化は、Baxおよび/またはBakによって誘発されたアポトーシスを促進する。
いくつかの実施形態において、抗アポトーシス剤は、ペプチドV5阻害Bax(Bax阻害ペプチドV5として知られている);Baxチャンネル遮断薬((±)-1-(3,6-ジブロモカルバゾル(Dibromocarbazol)-9-イル)-3-ピペラジン-1-イル-プロパン-2-オール);ペプチドP5阻害Bax(またBax阻害ペプチドP5として知られている);あるいはそれらの組み合わせである。いくつかの実施形態において、抗アポトーシス剤は、Bakの活性を(部分的にまたは完全に)阻害する。いくつかの実施形態において、抗アポトーシス剤は、BADの活性を(部分的にまたは完全に)阻害する。
FAS
本明細書に開示の製剤の用途のために予期されるのは、アポトーシスからニューロンおよび耳の有毛細胞を保護する薬剤(つまり抗アポトーシス剤)である。さらに、本明細書に開示の製剤の用途のために予期されるのは、ニューロンおよび耳の有毛細胞においてアポトーシスを引き起こす薬剤(つまり前アポトーシス剤)である。従って、いくつかの実施形態は、抗アポトーシス剤の使用を組み入れる。あるいは、いくつかの実施形態は、前アポトーシス剤の使用を組み入れる。
Fas(またCD95、Apo−1およびTNFRSf6として知られている)は、受容体である。いくつかの例において、そのリガンドによって結合された時、Fasは、死を誘発する情報伝達複合体(DISC)を形成する。DISCは、それらのリガンドによって結ばれたFas受容体の三量体、および、他のいくつかのポリペプチドから構成され、これらに限定されないが、FADDおよびカスパーゼ8を含む。いくつかの例において、DISCは細胞へ内部移行する。FADDへのカスパーゼ‐8ポリペプチドの結合は、カスパーゼ8ポリペプチドの活性化を引き起こす。特定の例において、活性カスパーゼ-8ポリペプチドは、細胞の細胞質ゾルの中へのDISCから放出される。特定の例において、活性なカスパーゼ-8ポリペプチドは、他のエフェクター・カスパーゼを切断し、DNA分解、膜泡形成、細胞収縮、染色質凝縮、および、核および細胞質の切断を引き起こす。
いくつかの実施形態において、抗アポトーシス剤は、FASの活性を(部分的にまたは完全に)阻害する薬剤である。いくつかの実施形態において、抗アポトーシス剤はKp7−6;FAIM(S)(Fasアポトーシス阻害分子‐ショート);FAIM(L)(Fasアポトーシス阻害分子‐ロング);Fas:Fc;FAP−1;あるいはそれらの組み合わせである。いくつかの実施形態において、抗アポトーシス剤は、抗Fasリガンド抗体;抗Fas抗体;あるいはそれらの組み合わせである。いくつかの実施形態において、抗Fasリガンド抗体は、NOK2;F2051;F1926;F2928;あるいはそれらの組み合わせである。いくつかの実施形態において、抗Fas抗体はZB4;Fas M3 mAb;あるいはそれらの組み合わせである。
Akt
本明細書に開示の製剤の用途のために予期されるのは、アポトーシスからニューロンおよび耳の有毛細胞を保護する薬剤(つまり抗アポトーシス剤)である。さらに、本明細書に開示の製剤の用途のために予期されるのは、ニューロンおよび耳の有毛細胞においてアポトーシスを引き起こす薬剤(つまり前アポトーシス剤)である。従って、いくつかの実施形態は、抗アポトーシス剤の使用を組み入れる。あるいは、いくつかの実施形態は、前アポトーシス剤の使用を組み入れる。
特定の例において、Akt1(Aktαとしても知られている)は、(単独でまたは他のポリペプチドと結合して)アポトーシスを阻害する。特定の例において、Aktは、PIP3及び/又はPIP2に結合する。いくつかの例において、PIP3に結合した後、Aktは、PDPK1、mTORC2およびDNAによってリン酸化される。特定の例において、Aktは、他のポリペプチド、核因子-kB、Bcl−2ファミリー、MDM2、FOXO1、GSK−3、Raf−1、ASK、Chk1、Bad、またはMDM2中で、結合し、調整することにより、アポトーシスを(単独でまたは他のポリペプチドと結合して)調整する。
いくつかの実施形態において、抗アポトーシス剤は、Akt1の活性を(部分的にまたは完全に)阻害する薬剤である。いくつかの実施形態において、抗アポトーシス剤は成長因子である。いくつかの実施形態において、成長因子は、EGFである。
PI3キナーゼ
本明細書に開示の製剤の用途のために予期されるのは、アポトーシスからニューロンおよび耳の有毛細胞を保護する薬剤(つまり抗アポトーシス剤)である。さらに、本明細書に開示の製剤の用途のために予期されるのは、ニューロンおよび耳の有毛細胞においてアポトーシスを引き起こす薬剤(つまり前アポトーシス剤)である。従って、いくつかの実施形態は、抗アポトーシス剤の使用を組み入れる。あるいは、いくつかの実施形態は、前アポトーシス剤の使用を組み入れる。
特定の例において、フォスフォイノシチド3−キナーゼ(PI3キナーゼ)は、ホスファチジルイノシトール(例えば、ホスファチジルイノシトール(3,4,5)‐トリスホスファート)のイノシトール環の3位の水酸基をリン酸化する。いくつかの例において、PI3(例えばp110α、p110δおよびp110γ)は、AKTに結合するPIP3を活性化する。特定の例において、PIP3に結合したAKTは、PDPK1、mTORC2およびDNA―PKによってリン酸化される。いくつかの例において、リン酸化されたAKTはアポトーシスを阻害する。
いくつかの実施形態において、抗アポトーシス剤は、PI3キナーゼの活性を(部分的にまたは完全に)阻害する薬剤である。いくつかの実施形態において、抗アポトーシス剤は、740Y−P;SC 3036(KKHTDDGYMPMSPGVA);PI3−キナーゼアクチベーター(Santa Cruz Biotechnology,Inc.);あるいはそれらの組み合わせである。
NF‐kB
本明細書に開示の製剤の用途のために予期されるのは、アポトーシスからニューロンおよび耳の有毛細胞を保護する薬剤(つまり抗アポトーシス剤)である。さらに、本明細書に開示の製剤の用途のために予期されるのは、ニューロンおよび耳の有毛細胞においてアポトーシスを引き起こす薬剤(つまり前アポトーシス剤)である。従って、いくつかの実施形態は、抗アポトーシス剤の使用を組み入れる。あるいは、いくつかの実施形態は、前アポトーシス剤の使用を組み入れる。
いくつかの例において、NF―kB(核因子‐kB)転写因子は、いくつかのサブユニットのホモ二量体化およびヘテロ二量体化から形成される。サブユニットは、限定されないが、NF‐kB1(p50);NF‐kB2(p52);RelA(p65);RelB;およびc‐Relを含む。特定の例において、NF‐kBは、p50とp65のヘテロダイマー、またはp52とp65のヘテロダイマーから成る。p65はトランスアクチベーション領域を包含している。特定の例において、不活性なNF−kBは、細胞質ゾルで見つかり、調節タンパク質(例えば、IkBaおよびIkBb)によって結合される。
特定の例において、NF-kBファミリーのメンバーは、サイトカイン、(他のトリガー中で)LPS、紫外線、衝撃(例えば、熱、またはモル浸透圧濃度)、酸化ストレスまたはそれらの組み合わせに反応して活性化される。特定の例において、前述のトリガーに曝すことは、IKKによるIkBのリン酸化に結びつく。IKKによるIkBのリン酸化は、IkBのタンパク質分解を生ずる。いくつかの例において、IkBの分解は、NF‐kBが核に移動することを可能にし、そこで、NF‐kBは、標的遺伝子のkBエンハンサー因子に結合し、転写を引き起こす。特定の例において、活性なNF‐kB転写因子は、アポトーシスを阻害する。特定の例において、活性なNF‐kB転写因子は、アポトーシス調節遺伝子TRAF1およびTRAF2を阻害する。特定の例において、活性なNF‐kB転写因子は、アポトーシスを促進する。
従って、いくつかの実施形態は、NF‐kB転写因子を調節する薬剤の使用を組み入れる。特定の例において、NF‐kB転写因子を調節する薬剤は、NF‐kBのアンタゴニスト、半アゴニスト、逆アゴニスト、中性若しくは競合的アンタゴニスト、アロステリックアンタゴニスト、及び/又はオルソステリックアンタゴニストである。いくつかの実施形態において、NF‐kB転写因子を調節する薬剤は、NF‐kB転写因子アゴニスト、半アゴニスト、及び/又は正アロステリックモジュレーターである。いくつかの実施形態において、NF‐kB転写因子アゴニスト、半アゴニスト、及び/又は正アロステリックモジュレーターは、Pam3Cys((S)‐(2,3‐ビス(パルミトイルオキシ)‐(2RS)‐プロピル)‐N‐パルミトイル‐(R)-Cys-(S)-Ser(S)-Lys4-OH,トリヒドロクロライド);Act1(NF‐kBアクチベーター1);またはそれらの組み合わせである。
いくつかの実施形態において、NF‐kBアゴニスト、半アゴニスト、及び/又は正アロステリックモジュレーターは、IkBアンタゴニスト、半アゴニスト、逆アゴニスト、中性アンタゴニスト若しくは競合的アンタゴニスト、アロステリックアンタゴニスト、及び/又はオルソステリックアンタゴニストである。いくつかの実施形態において、IkBアンタゴニスト、半アゴニスト、逆アゴニスト、中性アンタゴニストもしくは競合的アンタゴニスト、アロステリックアンタゴニスト、及び/又はオルソステリックアンタゴニストは、抗IkB抗体である。
いくつかの実施形態において、NF‐kB転写因子を調節する薬剤は、NF‐kB転写因子アンタゴニスト、半アゴニスト、逆アゴニスト、中性アンタゴニスト若しくは競合的アンタゴニスト、アロステリックアンタゴニスト、及び/又はオルソステリックアンタゴニストである。いくつかの実施形態において、NF‐kB転写因子アンタゴニスト、半アゴニスト、逆アゴニスト、中性アンタゴニスト若しくは競合的アンタゴニスト、アロステリックアンタゴニスト、及び/又はオルソステリックアンタゴニストは、アセチル‐11‐ケト‐b‐ボスウェル酸;アンドログラフォリド;カフェー酸フェネチルエステル(CAPE);グリオトキシン;イソヘレニン;MEMO結合ドメイン結合ペプチド(DRQIKIWFQNRRMKWKKTALDWSWLQTE);NF‐kB活性化インヒビター(6‐アミノ‐4‐(4‐フェノキシフェニルエチルアミノ)キナゾリン);NF‐kB活性化インヒビターII(4‐メチル‐N1‐(3‐フェニルプロピル)ベンゼン‐1,2‐ジアミン);NF‐kB活性化インヒビターIII(3‐クロロ‐4‐ニトロ‐N‐(5‐ニトロ‐2‐チアゾリル)‐ベンズアミド);NF‐kB活性化インヒビターIV((E)−(2‐フルオロ基‐4’‐メトキシスチルベン);NF‐kB活性化インヒビターV(5‐ヒドロキシ‐(2,6‐ジイソプロピルフェニル)‐1H‐イソインドール‐1,3‐ジオン);NF‐kB SN50(AAVALLPAVLLALLAPVQRKRQKLMP);オリドニン(Oridonin);パルテノリド;PPM‐18(2-ベンゾイルアミノ-1,4-ナフトキノン;Ro106‐9920;スルファサラジン;TIRAPインヒビターペプチド(RQIKIWFNRRMKWKKLQLRDAAPGGAIVS);ウィザフェリンA;オーゴニン;またはそれらの組み合わせである。
いくつかの実施形態において、NF‐kB転写因子を調節する薬剤は、TNFによるNF‐kB活性化を阻害する。いくつかの実施形態において、NF‐kB転写因子を調節する薬剤は、TNFのアンタゴニスト、半アゴニスト、逆アゴニスト、中性アンタゴニスト若しくは競合的アンタゴニスト、アロステリックアンタゴニスト若しくは競合的アンタゴニスト、及び/又はオルソステリックアンタゴニストである。いくつかの実施形態において、TNFによるNF‐kB活性化を阻害する薬剤は、BAY11−7082((E)3−[4−(メチルフェニル)スルホニル]‐2−プロペンニトリル);BAY11‐7085((E)3−[(4‐メチルフェニル)スルホニル]‐2‐プロペンニトリル);(E)カプサイチン;あるいはそれらの組み合わせである。
いくつかの実施形態において、NF‐kB転写因子を調節する薬剤は、IKKアンタゴニスト、半アゴニスト、逆アゴニスト、中性アンタゴニスト若しくは競合的アンタゴニスト、アロステリックアンタゴニスト及び/又はオルソステリックアンタゴニストである。いくつかの実施形態において、IKKアンタゴニスト、半アゴニスト、逆アゴニスト、中性アンタゴニスト若しくは競合的アンタゴニスト、アロステリックアンタゴニスト、及び/又はオルソステリックアンタゴニストは、アウロチオリンゴ酸(ATMまたはAuTM);エボジアミン;Hypoestoxide;IKKインヒビターIII(BMS‐345541);IKKインヒビターVII;IKKインヒビターX;IKKインヒビターII;IKK‐2インヒビターIV;IKK‐2インヒビターV;IKK‐2インヒビターVI;IKK‐2インヒビター(SC‐514);IkBキナーゼインヒビターペプチド;IKK‐3インヒビターIX;あるいはそれらの組み合わせである。
いくつかの実施形態において、NF‐kBのアンタゴニスト、半アゴニスト、逆アゴニスト、中性アンタゴニストまたは競合的アンタゴニスト、アロステリックアンタゴニスト、及び/又はオルソステリックアンタゴニストは、IKKのアゴニスト、半アゴニスト、及び/又は正アロステリックモジュレーターである。
p38
本明細書に開示の製剤の用途のために予期されるのは、アポトーシスからニューロンおよび耳の有毛細胞を保護する薬剤(つまり抗アポトーシス剤)である。さらに、本明細書に開示の製剤の用途のために予期されるのは、ニューロンおよび耳の有毛細胞においてアポトーシスを誘発する薬剤(つまり前アポトーシス剤)である。従って、いくつかの実施形態は、抗アポトーシス剤の使用を組み入れる。あるいは、いくつかの実施形態は、前アポトーシス剤の使用を組み入れる。
特定の例において、p38(ミートゲン活性化タンパク質キナーゼ(MAPK))は、(他のトリガー中で)サイトカイン、LPS、紫外線、衝撃(例えば、熱、またはモル浸透圧濃度)、酸化ストレスまたはそれらの組み合わせの存在に反応して、(単独で、または他のポリペプチドと結合して)アポトーシスを引き起こす。いくつかの例において、活性化されたp38ポリペプチドは、MAPKAPキナーゼ2、ATF−2、MacおよびMEF2をリン酸化する。特定の例において、MAPKAPキナーゼ2、ATF−2、Mac及び/又はMEF2のリン酸化がアポトーシスを誘因する。特定の例において、アポトーシスは、培養がp38インヒビターSB−203580で最初に処置された時、耳毒性の薬品(例えば、ネオマイシン及び/又はシスプラチン)に曝された蝸牛の培養において減少する。
従って、いくつかの実施形態は、p38を調節する薬剤の使用を組み入れる。いくつかの実施形態において、p38を調節する薬剤は、p38のアンタゴニスト、半アゴニスト、逆アゴニスト、中性アンタゴニストまたは競合的アンタゴニスト、アロステリックアンタゴニスト、及び/又はオルソステリックアンタゴニストである。いくつかの実施形態において、p38のアンタゴニスト、半アゴニスト、逆アゴニスト、中性アンタゴニストまたは競合的アンタゴニスト、アロステリックアンタゴニスト、及び/又はオルソステリックアンタゴニストは、ARRY−797(Array BioPHarma);SB―220025(5‐(2‐アミノ‐4‐ピリミジニル)‐4‐(4‐フルオロフェニル)‐1‐(4‐ピペリジニル)イミダゾール);SB―239063(trans‐4‐[4‐(4‐フルオロフェニル)‐5‐(2‐メトキシ‐4‐ピリミジニル(‐1H‐イミダゾール‐1‐イル)シクロヘキサノール);SB―202190(4‐(4‐フルオロフェニル)‐2‐(4‐ヒドロキシフェニル)‐5‐(4‐ピリジル)1H‐イミダゾール);JX―401(‐[2‐メトキシ‐4‐(メチルチオ)ベンゾイル]‐4‐(フェニルメチル)ピペリジン);PD―169316(4‐(4‐フルオロフェニル)‐2‐(4‐ニトロフェニル)‐5‐(4‐ピリジル)‐1H‐イミダゾール)];SKF‐86002(6‐(4‐フルオロフェニル)‐2,3‐ジヒドロ‐5‐(4‐ピリジニル)イミダゾ[2(1‐b)チアゾールジヒドロクロライド];SB‐200646(N‐(1‐メチル‐1H‐インドール‐5‐イル)‐N’‐3‐ピリジニル尿素);CMPD‐1(2’‐フルオロ‐N‐(4‐ヒドロキシフェニル)‐[1,1’‐ビフェニル]‐4‐ブタンアミド);EO‐1428((2‐メチルフェニル)‐[4‐[(2‐アミノ‐4‐ブロモフェニル)アミノ]‐2‐クロロフェニル]メタノン);SB‐253080(4‐[5‐(4‐フルオロフェニル)‐2‐[4‐(メチルスルホニル)フェニル]‐1H‐イミダゾール‐4‐イル]ピリジン));SD‐69(1H‐インドール‐5‐カルボキサミド);SB‐203580(4‐(4‐フルオロフェニル)‐2‐(4‐メチルスルフィニルフェニル‐5‐(4‐ピリジル)1Hイミダゾール);またはそれらの組み合わせである。
グレリン
本明細書に開示の製剤の用途のために予期されるのは、アポトーシスからニューロンおよび耳の有毛細胞を保護する薬剤(つまり抗アポトーシス剤)である。さらに、本明細書に開示の製剤の用途のために予期されるのは、ニューロンおよび耳の有毛細胞においてアポトーシスを引き起こす薬剤(つまり前アポトーシス剤)である。従って、いくつかの実施形態は、抗アポトーシス剤の使用を組み入れる。あるいは、いくつかの実施形態は、前アポトーシス剤の使用を組み入れる。
特定の実施形態において、グレリンは、成長ホルモン分泌促進因子レセプター(GHS−R)に結合するリガンドである。特定の例において、グレリンへの暴露は、心筋細胞、内皮細胞、脂肪細胞、副腎球状帯細胞、膵臓β-細胞、骨芽細胞MC3T3−E1、腸の上皮細胞、及び/又は視床下部のニューロンにおいてアポトーシスを阻害する。特定の例において、グレリンへの暴露は、ERK1/2の活性化の誘因となる。特定の例において、グレリンへの暴露は、活性酸素種の生産を減少させる。特定の例において、グレリンへの接触暴露は、ミトコンドリアの膜電位を安定させる。さらに、処置されたグレリンへの暴露は、Bcl−2/Baxの割合、およびカスパーゼ‐3の拮抗作用における増加を誘因する。
従って、いくつかの実施形態は、グレリンを調節する薬剤の使用を組み入れる。特定の例において、グレリンを調節する薬剤は、グレリンのアンタゴニスト、半アゴニスト、逆アゴニスト、中性アンタゴニスト若しくは競合的アンタゴニスト、アロステリックアンタゴニスト、及び/又はオルソステリックアンタゴニストである。いくつかの実施形態において、グレリンを調節する薬剤は、グレリンアゴニスト、半アゴニスト、及び/又は正アロステリックモジュレーターである。いくつかの実施形態において、グレリンアゴニスト、半アゴニストおよび/または正アロステリックモジュレーターは、TZP‐101(Tranzyme PHarma);TZP−102(Tranzyme PHarma);GHRP−6(成長ホルモン放出因子ペプチド‐6);GHRP−2(成長ホルモン放出因子ペプチド-2);EX−1314(Elixir Pharmaceuticals);MK−677(Merck);L−692,429(ブタンアミド、3‐アミノ‐3‐メチル‐N‐(2,3,4,5‐テトラヒドロ‐2‐オキソ‐1‐((2’‐(1H‐テトラゾル‐5‐イル)(1,1’‐ビフェニル)‐4‐イル)メチル)‐1H‐1‐ベンザゼピン‐3‐イル)‐、(R)‐));EP1572(Aib‐DTrp‐DgTrp‐CHO);ジルチアゼム;ジルチアゼムの代謝物;あるいはそれらの組み合わせである。
BRE
本明細書に開示の製剤の用途のために予期されるのは、アポトーシスからニューロンおよび耳の有毛細胞を保護する薬剤(つまり抗アポトーシス剤)である。さらに、本明細書に開示の製剤の用途のために予期されるのは、ニューロンおよび耳の有毛細胞におけるアポトーシスを引き起こす薬剤(つまり前アポトーシス剤)である。従って、いくつかの実施形態は、抗アポトーシス剤の使用を組み入れる。あるいは、いくつかの実施形態は、前アポトーシス剤の使用を組み入れる。
従って、いくつかの実施形態は、アポトーシス調節ポリペプチド、アポトーシス調節ポリペプチドのアゴニスト、半アゴニスト、部分アゴニスト、及び/又は正アロステリックモジュレーター、またはそれらの組み合わせを組み入れる。いくつかの実施形態において、ポリペプチド調節アポトーシスは、BRE(脳および生殖器に発現したタンパク質)である。特定の例において、BREは、レセプターアンタゴニストである。特定の例において、BREは、TNF−R1アンタゴニストである。特定の例において、BREは、Fasアンタゴニストである。特定の例において、BREによるTNF−R1および/又はFasの拮抗作用は、部分的にまたは完全にカスパーゼの下流の活性化を阻害する。特定の例において、カスパーゼの活性化を部分的にまたは完全に阻害することは、アポトーシスを阻害する。いくつかの例において、TNF−R1および/又はFasへのBREの結合は、部分的にまたは完全にミトコンドリアのアポトーシス経路を阻害する。
カルシウム拮抗薬
本明細書に開示の製剤の用途のために予期されるのは、アポトーシスからニューロンおよび耳の有毛細胞を保護する薬剤(つまり抗アポトーシス剤)である。さらに、本明細書に開示の製剤の用途のために予期されるのは、ニューロンおよび耳の有毛細胞中のアポトーシスを引き起こす薬剤(つまり前アポトーシス剤)である。従って、いくつかの実施形態は、抗アポトーシス剤の使用を組み入れる。あるいは、いくつかの実施形態は、前アポトーシス剤の使用を組み入れる。
従って、いくつかの実施形態は、Ca2+チャンネルの開放に拮抗する薬剤の使用を組み入れる。多数の前アポトーシス遺伝子およびアポトーシス調節遺伝子の転写は、Ca2+イオンレベルによって制御される。さらに、Ca2+イオンは、限定されないが、ホスホリパーゼ、エンドヌクレアーゼおよびプロテアーゼを含む多数の酵素の活性化に不可欠(integral)である。これらの酵素が過剰に活性化されると、それらは、細胞骨格、原形質膜、ミトコンドリアおよびニューロンのDNAを損傷する。損傷が著しいならば、ニューロンは、アポトーシスを起こすだろう。いくつかの実施形態において、抗アポトーシス剤または前アポトーシス剤は、Ca2+チャンネル遮断薬のアンタゴニスト、半アゴニスト、逆アゴニスト、中性アンタゴニストまたは競合的アンタゴニスト、アロステリックアンタゴニスト、及び/又はオルソステリックアンタゴニストである。いくつかの実施形態において、Ca2+チャンネル遮断薬は、ベラパミル、ニモジピン、ジルチアゼム、オメガ‐コノトキシン、GVIA、アムロジン、フェロジピン、ラシジピン、ミベフラジル、NPPB(5-ニトロ-2-(3-フェニルプロピルアミノ)安息香酸)、フルナリジンまたはそれらの組み合わせである。
アポリポタンパク質
本明細書に開示の製剤の用途のために予期されるのは、アポトーシスからニューロンおよび耳の有毛細胞を保護する薬剤(つまり抗アポトーシス剤)である。さらに、本明細書に開示の製剤の用途のために予期されるのは、ニューロンおよび耳の有毛細胞においてアポトーシスを引き起こす薬剤(つまり前アポトーシス剤)である。従って、いくつかの実施形態は、抗アポトーシス剤の使用を組み入れる。あるいは、いくつかの実施形態は、前アポトーシス剤の使用を組み入れる。
いくつかの実施形態において、抗アポトーシス剤は、アポリポタンパク質の活性を促進する薬剤である。いくつかの実施形態において、抗アポトーシス剤は、ApoE、ApoEのアゴニスト、ApoEのミミック、ApoEのホモログ、またはそれらの組み合わせである。いくつかの実施形態において、抗アポトーシス剤は、ApoA、ApoAのアゴニスト、ApoAのミミック、ApoAのホモログ、またはそれらの組み合わせである。いくつかの実施形態において、抗アポトーシス剤は、ApoB、ApoBのアゴニスト、ApoBのミミック、ApoBのホモログ、あるいはそれらの組み合わせである。いくつかの実施形態において、抗アポトーシス剤は、ApoC、ApoCのアゴニスト、ApoCのミミック、ApoCのホモログ、またはそれらの組み合わせである。あるいくつかの実施形態において、抗アポトーシス剤は、ApoD、ApoDのアゴニスト、ApoDのミミック、ApoDのホモログ、またはそれらの組み合わせである。いくつかの実施形態において、抗アポトーシス剤は、ApoH、ApoHのアゴニスト、ApoHのミミック、ApoHのホモログ、またはそれらの組み合わせである。
エリトロポイエチン
本明細書に開示の製剤の用途のために予期されるのは、アポトーシスからニューロンおよび耳の有毛細胞を保護する薬剤(つまり抗アポトーシス剤)である。さらに、本明細書に開示の製剤の用途のために予期されるのは、ニューロンおよび耳の有毛細胞においてアポトーシスを引き起こす薬剤(つまり前アポトーシス剤)である。従って、いくつかの実施形態は、抗アポトーシス剤の使用を組み入れる。あるいは、いくつかの実施形態は、前アポトーシス剤の使用を組み入れる。
従って、いくつかの実施形態は、抗アポトーシス遺伝子の活性を調節する薬剤の使用を組み入れる。いくつかの実施形態において、抗アポトーシス遺伝子の活性を調節する薬剤は、エリトロポイエチン(EPO)である。EPOは、そのレセプターに結合すると、JAK2カスケードを活性化する糖タンパク質である。これは、多くのアポトーシス調節遺伝子の活性化を誘因する。EPOレセプター受容器は、内指節細胞および外指節細胞、内溝細胞、コルチ器官を支持する細胞および螺旋神経節ニューロンの細胞質で見つかる。
外因性EPOでの処置は、アポトーシスを起こす細胞の数の減少に至る。また、それは、音響外傷および乏血によって引き起こされた損傷を改善し、それは、グルタミン酸に引き起こされた興奮毒性からニューロンを保護する。従って、EPOは、アポトーシス、及び/又は損傷に引き起こされたアポトーシスからニューロンおよび耳の有毛細胞を保護する。従って、いくつかの実施形態において、抗アポトーシス剤または前アポトーシス剤は、エリトロポイエチンのアンタゴニスト、半アゴニスト、逆アゴニスト、中性アンタゴニストまたは競合的アンタゴニスト、アロステリックアンタゴニスト、及び/又はオルソステリックアンタゴニストである。
HO−1
本明細書に開示の製剤の用途のために予期されるのは、アポトーシスからニューロンおよび耳の有毛細胞を保護する薬剤(つまり抗アポトーシス剤)である。さらに、本明細書に開示の製剤の用途のために予期されるのは、ニューロンおよび耳の有毛細胞においてアポトーシスを引き起こす薬剤(つまり前アポトーシス剤)である。従って、いくつかの実施形態は、抗アポトーシス剤の使用を組み入れる。あるいは、いくつかの実施形態は、前アポトーシス剤の使用を組み入れる。
HO−1の発現は、アポトーシスの誘発を阻害する。従って、いくつかの実施形態は、ヘムオキシゲナーゼ-1(HO−1)活性の活性を調節する薬剤の使用を組み入れる。いくつかの実施形態において、HO−1のモジュレーターは、HO-1のアンタゴニスト、半アゴニスト、逆アゴニスト、中性アンタゴニストまたは競合的アンタゴニスト、アロステリックアンタゴニスト、及び/又はオルソステリックアンタゴニストである。いくつかの実施形態において、HO−1のモジュレーターは、HO−1のアゴニスト、半アゴニスト、及び/又は正アロステリックモジュレーターである。いくつかの実施形態において、HO−1のアゴニスト、半アゴニスト及び/又はアロステリックモジュレーターは、ピペリン、ヘミン、及び/又はブラジリンである。
カスパーゼ
本明細書に開示の製剤の用途のために予期されるのは、アポトーシスからニューロンおよび耳の有毛細胞を保護する薬剤(つまり抗アポトーシス剤)である。さらに、本明細書に開示の製剤の用途のために予期されるのは、ニューロンおよび耳の有毛細胞においてアポトーシスを引き起こす薬剤(つまり前アポトーシス剤)である。従って、いくつかの実施形態は、抗アポトーシス剤の使用を組み入れる。あるいは、いくつかの実施形態は、前アポトーシス剤の使用を組み入れる。
いくつかの実施形態において、限定されないが、カスパーゼ‐8及び/又はカスパーゼ‐9を含むカスパーゼ標的のアンタゴニスト、半アゴニスト、逆アゴニスト、中性アンタゴニストまたは競合的アンタゴニスト、アロステリックアンタゴニスト、及び/又はオルソステリックアンタゴニストは、組み入れられる。いくつかの実施形態は、カスパーゼインヒビターの使用を組み入れる。カスパーゼは、いくつかがアポトーシスを調節するプロテアーゼである。カスパーゼ8およびカスパーゼ9の両方は、音響外傷、アミノグリコシド処置およびシスプラチン処置を受けやすい有毛細胞で見つかる。前庭の有毛細胞が、ネオマイシンで処置された後に、カスパーゼのアンタゴニスト、半アゴニスト、逆アゴニスト、中性アンタゴニストまたは競合的アンタゴニスト、アロステリックアンタゴニスト、及び/又はオルソステリックアンタゴニストで処置される場合、細胞生存は保持される。いくつかの実施形態において、カスパーゼインヒビターは、z‐VAD‐FMK(ベンジルオキシカルボニル‐Val‐Ala‐Asp(OMe)‐フルオロメチルケトン);z‐LEHD‐FMK(ベンジルオキシカルボニル‐Leu‐Glu(OMe)‐His‐Asp(OMe)‐フルオロメチルケトン);B‐D‐FMK(boc‐アスパルチル(Ome)‐フルオロメチルケトン);AcLEHD‐CHO(N‐アセチル‐Leu‐Glu‐His−Asp−CHO);AcIETD‐CHO(N‐アセチル‐IIe‐Glu‐Thr‐Asp−CHO);z‐IETD‐FMK(ベンジルオキシカルボニル‐Ile‐Glu(OMe)‐Thr‐Asp(OMe)‐フルオロメチルケトン);FAM‐LEHD‐FMK(ベンジルオキシカルボニル‐Leu‐Glu‐His‐Asp‐フルオロメチルケトン);FAM‐LETD‐FMK(ベンジルオキシカルボニル(Leu‐Glu‐Thr‐Asp‐フルオロメチルケトン);Q‐VD‐OPH(キノリン‐Val−Asp−CH2‐O‐PH);またはそれらの組み合わせである。
アポトーシスタンパク質のインヒビター(IAP)
本明細書に開示の製剤の用途のために予期されるのは、アポトーシスからニューロンおよび耳の有毛細胞を保護する薬剤(つまり抗アポトーシス剤)である。さらに、本明細書に開示の製剤の用途のために予期されるのは、ニューロンおよび耳の有毛細胞においてアポトーシスを引き起こす薬剤(つまり前アポトーシス剤)である。従って、いくつかの実施形態は、抗アポトーシス剤の使用を組み入れる。あるいは、いくつかの実施形態は、前アポトーシス剤の使用を組み入れる。
いくつかの実施形態において、アポトーシス調節ポリペプチドのアンタゴニスト、半アゴニスト、逆アゴニスト、中性アンタゴニストまたは競合的アンタゴニスト、アロステリックアンタゴニスト、及び/又はオルソステリックアンタゴニストが組み入れられる。いくつかの実施形態は、アポトーシス調節ポリペプチド、アポトーシス調節ポリペプチドのアゴニスト、半アゴニスト、または正アロステリックモジュレーター、またはそれらの組み合わせの使用を組み入れる。いくつかの実施形態において、アポトーシス調節ポリペプチドは、アポトーシスタンパク質のインヒビター(IAP)ファミリーのメンバー(例えば、XIAP;cIAP‐1;cIAP‐2;ML‐IAP;ILP―2;NAIP;サバイビン;ブルース;およびIAPL‐3)である。特定の例において、XIAPでの処置または、XIAPの拮抗作用は、老人性難聴の進展及び/又は進行を改善する。特定の例において、XIAPでの処置または、XIAPの拮抗作用は、高周波領域の聴力損失を改善する。特定の例において、XIAPでの処置または、XIAPの拮抗作用は、ゲンタマイシンに引き起こされた難聴を改善する。
いくつかの例において、IAPファミリーのメンバーは、カスパーゼ(例えばカスパーゼ3、カスパーゼ7、カスパーゼ8およびカスパーゼ9)を拮抗する。特定の例において、XIAPは、カスパーゼ3、カスパーゼ7およびカスパーゼ9を拮抗する。特定の例において、cIAP‐1は、カスパーゼ3およびカスパーゼ7を拮抗する。特定の例において、cIAP‐2はカスパーゼ3およびカスパーゼ7を拮抗する。特定の例において、ML‐IAPはカスパーゼ3およびカスパーゼ9を拮抗する。特定の例において、ILP―2は、カスパーゼ9を拮抗する。特定の例において、NIAPは、カスパーゼ3およびカスパーゼ7を拮抗する。特定の例において、サバイビンは、カスパーゼ9を拮抗する。いくつかの例において、カスパーゼの拮抗は、部分的にまたは完全にアポトーシスを阻害する。いくつかの例において、IAPファミリーのメンバーは、カスパーゼのユビキチン化(ubiquination)を触媒する。特定の例において、XIAPは、カスパーゼのユビキチン化(ubiquination)を触媒する。特定の例において、cIAP‐1は、カスパーゼのユビキチン化(ubiquination)を触媒する。特定の例において、cIAP‐2は、カスパーゼ(例えばカスパーゼ3およびカスパーゼ7)のユビキチン化(ubiquination)を触媒する。
いくつかの実施形態において、IAPファミリーのメンバーは、XIAP(X連鎖IAP);cIAP‐1(細胞性(cellular)IAP‐1);cIAP‐2(細胞性(cellular)IAP−2);ml‐IAP(黒色腫IAP);ILP―2(IAP様タンパク質);NAIP(神経細胞アポトーシス阻害タンパク質);サバイビン;ブルース;IAPL‐3;またはそれらの組み合わせである。いくつかの実施形態において、IAPは、XIAPである。いくつかの実施形態において、IAPは、第二のポリペプチドの前に、後に、または同時に共に投与される。いくつかの実施形態において、サバイビンは、B型肝炎ウイルスx相互作用タンパク質(HBXIP)の前に、後に、または同時に共に投与される。いくつかの実施形態において、ILP―2は、結合パートナーと共に投与される。いくつかの例において、結合パートナーは、ILP―2を安定させる。
ホルチリン
本明細書に開示の製剤の用途のために予期されるのは、アポトーシスからニューロンおよび耳の有毛細胞を保護する薬剤(つまり抗アポトーシス剤)である。さらに、本明細書に開示の製剤の用途のために予期されるのは、ニューロンおよび耳の有毛細胞においてアポトーシスを引き起こす薬剤(つまり前アポトーシス剤)である。従って、いくつかの実施形態は、抗アポトーシス剤の使用を組み入れる。あるいは、いくつかの実施形態は、前アポトーシス剤の使用を組み入れる。
従って、いくつかの実施形態は、アポトーシス調節ポリペプチドのアンタゴニスト、半アゴニスト、逆アゴニスト、中性アンタゴニストまたは競合的アンタゴニスト、アロステリックアンタゴニスト及び/又はオルソステリックアンタゴニストの使用を組み入れる。いくつかの実施形態において、アポトーシス調整ポリペプチド、アポトーシス調整ポリペプチドのアゴニスト、半アゴニスト、及び/又は正アロステリックモジュレーター、またはそれらの組み合わせが使用される。いくつかの実施形態において、アポトーシス調節ポリペプチドはホルチリンである。特定の例において、ホルチリンは、Ca2+を結合する。特定の例において、Ca2+は、多数の前アポトーシス遺伝子の転写を調節する。いくつかの例において、ホルチリンによるCa2+の結合は、前アポトーシス遺伝子のCa2+を媒介とした転写を、部分的にまたは完全に阻害する。
カルパイン
本明細書に開示の製剤の用途のために予期されるのは、アポトーシスからニューロンおよび耳の有毛細胞を保護する薬剤(つまり抗アポトーシス剤)である。さらに、本明細書に開示の製剤の用途のために予期されるのは、ニューロンおよび耳の有毛細胞においてアポトーシスを引き起こす薬剤(つまり前アポトーシス剤)である。従って、いくつかの実施形態は、抗アポトーシス剤の使用を組み入れる。あるいは、いくつかの実施形態は、前アポトーシス剤の使用を組み入れる。
従って、いくつかの実施形態は、1以上のカルパインのアンタゴニスト、半アゴニスト、逆アゴニスト、中性アンタゴニストまたは競合的アンタゴニスト、アロステリックアンタゴニスト及び/又はオルソステリックアンタゴニストの使用を組み入れる。カルパインは、カルシウム依存性で、非リソソームのシステインプロテアーゼである。それらは細胞のアポトーシスに関係する。ロイペプチン(カルパインのインヒビター)は、アミノグリコシド抗生物質の耳毒性から、ニューロンおよび耳の有毛細胞を保護する。さらに、カルパインは、シスプラチン処置または音響外傷の後に、耳のニューロン及び/又は有毛細胞でしばしば見つかる。いくつかの実施形態において、カルパインのインヒビターは、ロイペプチン;PD‐150606(3‐(4‐ヨードフェニル)‐2‐メルカプト‐(Z)‐2‐プロペン酸);MDL‐28170(Z‐Val‐PHe‐CHO);カルペプチン;アセチル‐カルパスタチン;MG132(N‐[(フェニルメトキシ)カルボニル]‐L‐ロイシル‐N‐[(1S)‐1‐ホルミル‐3(‐メチルブチル]‐L‐ロイシンアミド);MYODUR;BN82270(Ipsen);BN2204(Ipsen);あるいはそれらの組み合わせである。
p53
本明細書に開示の製剤の用途のために予期されるのは、アポトーシスからニューロンおよび耳の有毛細胞を保護する薬剤(つまり抗アポトーシス剤)である。さらに、本明細書に開示の製剤の用途のために予期されるのは、ニューロンおよび耳の有毛細胞中のアポトーシスを引き起こす薬剤(つまり前アポトーシス剤)である。従って、いくつかの実施形態は、抗アポトーシス剤の使用を組み入れる。あるいは、いくつかの実施形態は、前アポトーシス剤の使用を組み入れる。
従って、いくつかの実施形態は、1以上のp53のアンタゴニスト、半アゴニスト、逆アゴニスト、中性アンタゴニストまたは競合的アンタゴニスト、アロステリックアンタゴニスト、及び/又はオルソステリックアンタゴニストの使用を組み入れる。p53は、細胞周期を調節し、傷害を受けた細胞のアポトーシスを開始する転写因子である。いくつかの実施形態において、p53のアンタゴニスト、半アゴニスト、逆アゴニスト、中性アンタゴニストまたは競合的アンタゴニスト、アロステリックアンタゴニスト、及び/又はオルソステリックアンタゴニストは、siRNA分子(AHLi−11(Quark Pharmaceuticals))、mdm2タンパク質、ピフィスリン-α(1-(4-メチルフェニル)-2-(4,5,6,7-テトラヒドロ-2-イミノ-3(2H)-ベンゾチアゾリル)エタノン、それらのアナログ、またはそれらの組み合わせである。
熱ショックタンパク質
本明細書に開示の製剤の用途のために予期されるのは、アポトーシスからニューロンおよび耳の有毛細胞を保護する薬剤(つまり抗アポトーシス剤)である。さらに、本明細書に開示の製剤の用途のために予期されるのは、ニューロンおよび耳の有毛細胞においてアポトーシスを引き起こす薬剤(つまり前アポトーシス剤)である。従って、いくつかの実施形態は、抗アポトーシス剤の使用を組み入れる。あるいは、いくつかの実施形態は、前アポトーシス剤の使用を組み入れる。
いくつかの実施形態において、抗アポトーシス剤は、熱ショックタンパク質の活性を促進する薬剤である。いくつかの実施形態において、抗アポトーシス剤は、熱ショックタンパク質である。いくつかの実施形態において、抗アポトーシス剤は、Hsp、Hspのアゴニスト、またはそれらのホモログ若しくはそれらのミミックである。いくつかの実施形態において、抗アポトーシス剤は、Hsp70、Hsp72、BiP(もしくはGrp78)、mtHsp70(もしくはGrp75)、Hsp70−1bおよびHsp70−1L、Hsp70−2、Hsp70−4、Hsp70−6、Hsp70−7、Hsp70-12a、Hsp70−14、Hsp10、Hsp27、Hsp40、Hsp60、Hsp90、Hsp104、Hsp110、Grp94、またはそれらの組み合わせである。
トレフォイル因子
本明細書に開示の製剤の用途のために予期されるのは、アポトーシスからニューロンおよび耳の有毛細胞を保護する薬剤(つまり抗アポトーシス剤)である。さらに、本明細書に開示の製剤の用途のために予期されるのは、ニューロンおよび耳の有毛細胞においてアポトーシスを引き起こす薬剤(つまり前アポトーシス剤)である。従って、いくつかの実施形態は、抗アポトーシス剤の使用を組み入れる。あるいは、いくつかの実施形態は、前アポトーシス剤の使用を組み入れる。
いくつかの例において、トレフォイル因子は、NF‐kBの活性化を引き起こす。特定の例において、NF-kBの活性化はアポトーシスを阻害する。
いくつかの実施形態において、抗アポトーシス剤は、トレフォイル因子の活性を促進する薬剤である。いくつかの実施形態において、抗アポトーシス剤は、トレフォイル因子である。いくつかの実施形態において、抗アポトーシス剤は、トレフォイル因子、トレフォイル因子のアゴニスト、またはそれらのホモログ若しくはそれらのミミックである。いくつかの実施形態において、抗アポトーシス剤は、TFF1、TFF2、TFF3またはそれらの組み合わせである。
サーチュインモジュレーター
本明細書に開示の製剤の用途のために予期されるのは、アポトーシスからニューロンおよび耳の有毛細胞を保護する薬剤(つまり抗アポトーシス剤)である。さらに、本明細書に開示の製剤の用途のために予期されるのは、ニューロンおよび耳の有毛細胞中のアポトーシスを引き起こす薬剤(つまり前アポトーシス剤)である。従って、いくつかの実施形態は、抗アポトーシス剤の使用を組み入れる。あるいは、いくつかの実施形態は、前アポトーシス剤の使用を組み入れる。
従って、いくつかの実施形態は、1以上のサーチュインのアンタゴニスト、半アゴニスト、逆アゴニスト、中性アンタゴニストまたは競合的アンタゴニスト、アロステリックアンタゴニスト、及び/又はオルソステリックアンタゴニストの使用を組み入れる。サーチュイン(またはSir2タンパク質)は、ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)のクラスIIIを含む。そのファミリーの7つのメンバー:Sirt1、Sirt2、Sirt3、Sirt4、Sirt5、Sirt6およびSirt7がある。Sirt1の拮抗作用は、前アポトーシス遺伝子のp53およびKu‐70の脱アセチルによって、アポトーシスを防ぐことができる。いくつかの実施形態において、サーチュイン活性のアゴニスト、半アゴニスト、及び/又は正アロステリックモジュレーターは、スチルベン、フラボン、イソフラボン、フラバノン、カテキン、遊離基保護化合物、イソニコチンアミド、ジピリダモール、ZM336372(3-(ジメチルアミノ)-N-[3-[(4-ヒドロキシベンゾイル)-アミノ]-4-メチルフェニル]ベンズアミド)、カンプトテシン、クメストロール、ノルジヒドログアヤレト酸、エスクレチン、SRT‐1720(Sirtris)、SRT‐1460(Sirtris)、SRT‐2183(Sirtris)、それらのアナログ、またはそれらの組み合わせである。
いくつかの実施形態において、サーチュインのアゴニスト、半アゴニスト、及び/又は正アロステリックモジュレーターは、スチルベンである。いくつかの実施形態において、スチルベンは、trans‐スチルベン、cis−スチルベン、レスベラトロル、ピセタノール、ラポンチン、デオキシラポンチン、ブテインまたはそれらの組み合わせである。
いくつかの実施形態において、サーチュインに触媒された脱アセチル反応を調節する薬剤は、カルコンである。いくつかの実施形態において、カルコンは、カルコン(chalcon);イソリキリチゲン(isoliquirtigen);ブテイン;4,2’,4’‐トリヒドロキシカルコン;3,4,2’,4’,6’-ペンタヒドロキシカルコン;またはそれらの組み合わせである。いくつかの実施形態において、サーチュインに触媒された脱アセチル反応を調節する薬剤はフラボンである。
いくつかの実施形態において、フラボンは、フラボン、モリン、フィゼチン;ルテオリン;ケルセチン;ケンペロール;アピゲニン;ゴシペチン;ミリセチン;6‐ヒドロキシアピゲニン;5‐ヒドロキシフラボン;5,7,3’,4’,5’‐ペンタヒドロキシフラボン;3,7,3’,4’,5’‐ペンタヒドロキシフラボン;3,6,3’,4’‐テトラヒドロキシフラボン;7,3’,4’,5’‐テトラヒドロキシフラボン;3,6,2’,4’‐テトラヒドロキシフラボン;7,4’‐ジヒドロキシフラボン;7,8,3’,4’‐テトラヒドロキシフラボン;3,6,2’,3’‐テトラヒドロキシフラボン;4’‐ヒドロキシフラボン;5‐ヒドロキシフラボン;5,4’‐ジヒドロキシフラボン;5,7‐ジヒドロキシフラボン;あるいはそれらの組み合わせである。
いくつかの実施形態において、サーチュインに触媒された脱アセチル反応を調節する薬剤は、イソフラボンである。ある実施形態において、イソフラボンは、ダイゼイン、ゲニステインまたはそれらの組み合わせである。
いくつかの実施形態において、サーチュインに触媒された脱アセチル反応を調節する薬剤は、フラバノンである。いくつかの実施形態において、フラバノンは、ナリンゲニン;フラバノン;3,5,7,3’,4’-ペンタヒドロキシフラバノン;またはそれらの組み合わせである。
いくつかの実施形態において、サーチュインに触媒された脱アセチル反応を調節する薬剤は、アントシアニジンである。いくつかの実施形態において、アントシアニジンは、ペラルゴニンクロライド、シアニジンクロライド、デルフィニジンクロライドまたはそれらの組み合わせである。
いくつかの実施形態において、サーチュインに触媒された脱アセチル反応を調節する薬剤は、カテキンである。いくつかの実施形態において、カテキンは、(−)-エピカテキン(水酸基の位置:3、5、7、3’、4’);(−)−カテキン(水酸基の位置:3、5、7、3’、4’);(−)−ガロカテキン(水酸基の位置:3、5、7、3’、4’、5’)(+)−カテキン(水酸基の位置:3、5、7、3’、4’);(+)−エピカテキン(水酸基の位置:3、5、7、3’、4’);あるいはそれらの組み合わせである。
いくつかの実施形態において、サーチュインに触媒された脱アセチル反応を調節する薬剤は、遊離基保護化合物である。いくつかの実施形態において、遊離基保護化合物は、ヒノキチオール(b‐ツヤプリシン);2‐ヒドロキシ‐4‐イソプロピル‐2,4,6‐シクロペプタトリエン‐1‐オン);L‐(+)‐エルゴチオネイン((S)‐a‐カルボキシ‐2,3‐ジヒドロ‐N,N,N‐トリメチル‐2‐チオキソ基‐1H‐イミダゾール4‐エタナミニウム内塩);カフェー酸フェニルエステル;MCI―186(3‐メチル‐1‐フェニル‐2‐ピラゾリン‐5‐オン);HBED(N(N’‐ジ‐(2‐ヒドロキシベンジル)エチレンジアミン‐N,N’‐‐ジ酢酸●H2O;アンブロキソール(trans‐4‐(2‐アミノ‐3,5‐ジブロモベンジルアミノ)シクロヘキサン‐HCl;およびU―83836E((−)‐2‐((4‐(2,6‐ジ‐1‐ピロリジニル‐4‐ピリミジニル)‐1‐ピペラジニル(piperzainyl))メチル)‐3,4‐ジヒドロ-2,5,7,8‐テトラメチル‐2H‐1‐ベンゾピラン‐6‐オール●2HCl);またはそれらの組み合わせである。
いくつかの実施形態において、ニコチン酸アミド結合アンタゴニストは、イソニコチンアミドまたはイソニコチンアミドのアナログである。いくつかの実施形態において、イソニコチンアミドのアナログは、β‐1’‐5‐メチル‐ニコチン酸アミド‐2’‐ デオキシリボース;β‐D‐1’‐5‐メチル‐ニコチンアミド(-nico-tinamide))‐2’‐デオキシリボフラノシド;β‐1’‐4,5‐ジメチル‐ニコチンアミド‐2’‐デオキシリボース(de‐oxyribose);またはβ‐D‐1’‐4,5‐ジメチル‐ニコチンアミド‐2’‐デオキシリボフラノシドである。さらなるイソニコチンアミドのアナログのために、米国特許第5,985,848号;第6,066,722号;第6,228,847号;第6,492,347号;第6,803,455号;および米国特許出願公開第2001/0019823号;第2002/0061898号;第2002/0132783号;第2003/0149261号;第2003/0229033号;第2003/0096830号;第2004/0053944号;第2004/0110772号;および第2004/0181063号を参照、これらは、その開示のために参照によって本明細書に組み入れられる。
Src
本明細書に開示の製剤の用途のために予期されるのは、アポトーシスからニューロンおよび耳の有毛細胞を保護する薬剤(つまり抗アポトーシス剤)である。さらに、本明細書に開示の製剤の用途のために予期されるのは、ニューロンおよび耳の有毛細胞においてアポトーシスを引き起こす薬剤(つまり前アポトーシス剤)である。従って、いくつかの実施形態は、抗アポトーシス剤の使用を組み入れる。あるいは、いくつかの実施形態は、前アポトーシス剤の使用を組み入れる。
Src pp60c−srcの阻害は、アポトーシスを調節する。従って、いくつかの実施形態は、1以上のプロテインキナーゼのSrcファミリーのアンタゴニスト、半アゴニスト、逆アゴニスト、中性アンタゴニストまたは競合的アンタゴニスト、アロステリックアンタゴニスト、及び/又はオルソステリックアンタゴニストの使用を組み入れる。Srcファミリーは、非レセプタータンパク質キナーゼのファミリーである。脊椎動物で見つかったSrcキナーゼの例は、限定されないが、Src、Yes、Fgr、Yrk、Fyn、Lyn、Hck、Lck、およびBlkを含む。それらは、ATPからセリン、トレオニンまたはチロシン上の遊離水酸基にリン酸塩を移動させることにより、タンパク質のリン酸化を触媒する。限定されない例として、リン酸化を触媒したSrcキナーゼの標的は、ビンキュリン、コルタクチン、タリン、パキシリン、FAK、テンシン、エズリン、p130cas、β‐またはγ‐カテニン、ZO‐1、オクルジン、p120ctn、コネキシン43、ネクチン‐2デルタを含む。Srcキナーゼは、N末端SH3ドメイン、中央のSH2ドメインおよびチロシンキナーゼドメインから成る。SH2とSH3のドメインへのリガンドの結合は、Srcキナーゼの活性を抑制する構造体変化を引き起こす。
いくつかの実施形態において、Srcは、pp60c−srcである。いくつかの実施形態において、Srcのアンタゴニスト、半アゴニスト、逆アゴニスト、中性アンタゴニストまたは競合的アンタゴニスト、アロステリックアンタゴニストおよび及び/又はオルソステリックアンタゴニストは、1‐ナフチルPP1(1‐(1,1‐ジメチルエチル)‐3‐(1‐ナフタレニル)‐1H‐ピラゾロ[3,4‐d]ピリミジン‐4‐アミン);ラベンダスチンA(5‐[[(2,5‐ジヒドロキシフェニル)メチル][(2‐ヒドロキシフェニル)メチル]アミノ]2‐ヒドロキシ安息香酸);MNS(3,4‐メチレンジオキシ‐b‐ニトロスチレン;PP1(1‐(1,1‐ジメチルエチル)‐1‐(4‐メチルフェニル)‐1H‐ピラゾロ[3,4‐d]ピリミジン‐4‐アミン);PP2(3‐(4‐クロロフェニル)1‐(1,1‐ジメチルエチル)‐1H‐ピラゾロ[3,4‐d]ピリミジン‐4‐アミン);KX1‐004(Kinex);KX1‐005(Kinex);KX1‐136(Kinex);KX1‐174(Kinex);KX1‐141(Kinex);KX2‐328(Kinex);KX1‐306(Kinex);KX1‐329(Kinex);KX2‐391(Kinex);KX2‐377(Kinex);ZD4190(Astra Zeneca);N‐(4‐ブロモ‐2‐フルオロフェニル)‐6‐メトキシ‐7‐(2‐(1H‐1,2,3‐トリアゾル‐1‐イル)エトキシ)キナゾリン‐4‐アミン);AP22408(Ariad Pharmaceuticals);AP23236(Ariad Pharmaceuticals);AP23451(Ariad Pharmaceuticals);AP23464(Ariad Pharmaceuticals);AZD0530(Astra Zeneca);AZM475271(M475271;Astra Zeneca);ダサチニブ(N‐(2‐クロロ‐6‐メチルフェニル)‐2‐(6‐(4‐(2‐ヒドロキシ‐エチル)‐ピペラジン‐1‐イル)‐2‐メチルピリミジン‐4‐イルアミノ)チアゾール‐5‐カルボキサミド);GN963(trans‐4‐(6,7‐ジメトキシキノキサリン(dimethoxyquinoxalin)‐2イルアミノ)シクロヘキサノールスルフェート);ボスチニブ(4‐((2,4‐ジクロロ‐5‐メトキシフェニル)アミノ)‐6‐メトキシ‐7‐(3‐(4‐メチル‐1‐ピペラジニル)プロポキシ)‐3‐キノリンカルボニトリル);あるいはそれらの組み合わせである。さらなるキナーゼのSrcファミリーのアンタゴニスト、半アゴニスト、逆アゴニスト、中性アンタゴニストまたは競合的アンタゴニスト、アロステリックアンタゴニスト、及び/又はオルソステリックアンタゴニストの開示のためには、米国出願特許公開第2006/0172971号を参照、これは、それらの開示のために参照として本明細書に組み入れられる。
RNAi
本明細書に開示の製剤の用途のために予期されるのは、アポトーシスからニューロンおよび耳の有毛細胞を保護する薬剤(つまり抗アポトーシス剤)である。さらに、本明細書に開示の製剤の用途のために予期されるのは、ニューロンおよび耳の有毛細胞においてアポトーシスを引き起こす薬剤(つまり前アポトーシス剤)である。従って、いくつかの実施形態は、抗アポトーシス剤の使用を組み入れる。あるいは、いくつかの実施形態は、前アポトーシス剤の使用を組み入れる。
いくつかの実施形態において、標的(例えば、MAPK/JNKカスケードの遺伝子、カスパーゼ遺伝子、Src遺伝子、カルパイン遺伝子、Ca2+チャンネル遺伝子)の阻害または下流調節が所望される場合、RNA干渉は利用され得る。いくつかの実施形態において、標的を阻害または下流調節する薬剤は、siRNA分子である。特定の例において、siRNA分子は、RNA干渉(RNAi)による目標の転写を阻害する。いくつかの実施形態において、目標に補足的な配列を備えた二重鎖RNA(dsRNA)分子が、(例えばPCRによって)生成される。いくつかの実施形態において、目標に補足的な配列を備えた20〜25bpのsiRNA分子が生成される。いくつかの実施形態において、20〜25bpのsiRNA分子は、各鎖の3’末端および5’リン酸塩末端のおよび3’ヒドロキシル末端上に2〜5bpのオーバーハング(overhang)を有する。いくつかの実施形態において、20〜25bpのsiRNA分子は、ブラントエンドを有する。RNAを生成するための技術については、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、second edition(Sambrook et al.、1989)およびMolecular Cloning:A Laboratory Manual、third edition(Sambrook and Russel、2001)、本明細書に「Sambrook」として共同で引用されている);Current Protocols in Molecular Biology(F. M. Ausubel et al.、eds.、1987、2001を通じて補足を含む);Current Protocols in Nucleic Acid Chemistry John Wiley & Sons, Inc.、New York、2000)を参照、これらは、そのような開示のために参照として本明細書に組み入れられる。
いくつかの実施形態において、dsRNAまたはsiRNA分子は、制御放出性の耳に許容可能な微粒子もしくは微小粒子、ヒドロゲル、リポソームまたは熱可逆性ゲルへと組み込まれる。いくつかの実施形態において、耳に許容可能な微粒子、ヒドロゲル、リポソーム、ペイント、フォーム、インサイツ形成海綿状物質(in situ forming spongy material)、ナノカプセルまたはナノスフィア、または熱可逆性ゲルは、内耳へと注入される。いくつかの実施形態において、耳に許容可能な微粒子、ヒドロゲル、リポソームか微小粒子、あるいは熱可逆性ゲル。いくつかの実施形態において、耳に許容可能な微粒子、ヒドロゲル、リポソーム、ペイント、フォーム、インサイツ形成海綿状物質、ナノカプセルまたはナノスフィア、または熱可逆性ゲルは、蝸牛、コルチ器官、前庭迷路、あるいはそれらの組み合わせの中に注入される。
特定の例において、dsRNAまたはsiRNA分子の投与の後、投与位置の細胞(例えば、蝸牛、コルチ器官、及び/又は前庭迷路の細胞)は、dsRNAまたはsiRNA分子で形質転換される。形質転換に続く特定の実例において、dsRNA分子は、約20〜25bpの多数のフラグメントへと切断され、siRNA分子を与える。特定の例において、フラグメントは、各鎖の3’末端の上に約2bpのオーバーハングを有する。
いくつかの例において、siRNA分子は、RNA誘導サイレンシング複合体(RISC)によって2つの鎖(ガイド鎖および非ガイド鎖)に分割される。特定の例において、ガイド鎖は、RISCの触媒作用成分(つまり、アルゴノート)に組み入れられる。ガイド鎖は、補足的な標的mRNA配列に結合する。いくつかの例において、RISCは、標的mRNAを切断する。いくつかの例において、標的遺伝子の発現は下流調節される。
いくつかの実施形態において、標的に補足的な配列は、ベクターに結合される。いくつかの実施形態において、配列は2つのプロモータ間に配置される。いくつかの実施形態において、プロモータは反対方向で位置づけられる。いくつかの実施形態において、ベクターは、細胞と連絡する。いくつかの例において、細胞は、ベクターで形質転換される。形質転換に続くいくつかの例において、配列のセンス鎖および非センス鎖が生成される。特定の例において、センス鎖および非センス鎖は、siRNA分子へと切断されるdsRNA分子を形成するためにハイブリッド形成される。特定の例において、鎖は、siRNA分子を形成するためにハイブリッド形成される。いくつかの実施形態において、ベクターは、プラスミド(例えば、pSUPER;pSUPER.neo;pSUPER.neo+gfp)である。
いくつかの実施形態において、ベクターは、制御放出性の耳に許容可能な微粒子若しくは微小粒子、ヒドロゲル、リポソームまたは熱可逆性ゲルに組み込まれる。いくつかの実施形態において、耳に許容可能な微粒子、ヒドロゲル、リポソーム、ペイント、フォーム、インサイツ形成海綿状物質、ナノカプセルまたはナノスフィア、または熱可逆性ゲルは、内耳へ注入される。いくつかの実施形態において、耳に許容可能な微粒子、ヒドロゲル、リポソーム若しくは微小粒子、または熱可逆性ゲル。いくつかの実施形態において、耳に許容可能な微粒子、ヒドロゲル、リポソーム、ペイント、フォーム、インサイツ形成海綿状物質、ナノカプセルまたはナノスフィア、または熱可逆性ゲルは、蝸牛、コルチ器官、前庭迷路、あるいはそれらの組み合わせの中に注入される。
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の組成物は、活性成分、または薬学的に許容可能なそのプロドラッグもしくはその塩を、組成物の容積で、約0.1〜約70mg/mL、約0.5mg/mL〜約70mg/mL、約0.5mg/mL〜約50mg/mL、約0.5mg/mL〜約20mg/mL、約1mg〜約70mg/mL、約1mg〜約50mg/mL、約1mg/mL〜約20mg/mL、約1mg/mL〜約10mg/mL、または約1mg/mL〜約5mg/mLの間の活性成分または薬学的に許容可能なそのプロドラッグもしくはその塩の濃度を有する。
抗体
本明細書に開示の製剤の用途のために予期されるのは、耳の腫瘍の成長を阻害する薬剤である。いくつかの実施形態において、薬剤は、抗体である。いくつかの実施形態において、抗体は、血管の成長を阻害する。いくつかの実施形態において、抗体は、腫瘍細胞の死(例えばアポトーシス)を引き起こす。いくつかの実施形態において、抗体は、抗CD‐20抗体、抗CD22抗体、抗CD32b抗体、抗CD−33抗体、抗CD40抗体、抗CD52抗体、抗EGFR抗体、抗VEGF抗体、抗HER2レセプター抗体、抗17−1A抗体、抗CCR4抗体、抗IGF−IR抗体、抗CTLA−4抗体、あるいはそれらの組み合わせである。いくつかの実施形態において、抗体は、抗CD20抗体である。いくつかの実施形態において、抗体は、リツキシマブ、トシツモマブ、イブリツモマブ、エピラツズマブ、アレムツズマブ、オクレリズマブ(PRO70769)、ベルツズマブ(IMMU−106またはhA20)、オファツムマブ(HuMax−CD20ヒトIgG1抗体または2F2)、HuMAB 7D8(Genmab A/S)、AME−133v(LY2469298、Applied Molecular Evolution)、GA101(R7159、Genentech)、PRO131921(Genentech)、rhuMAb v114、Hex‐hA20(Immunomedics)、BLX301(BioLex)、Bi20(FBTA05(Trion Pharma))、エピラツズマブ、ルミリキシマブ、HuM195、アレムツズマブ、セツキシマブ、パニツムマブ、ベバシズマブ、トラスツズマブ、エドレコロマブ、アデカツムマブ、KM2760、rhuCD40 mAb、ダセツズマブ(SGN40)、CP−870,893(Pfizer)、HCD122(Novartis/Xoma)、CP−675,206(Pfizer)、CP−751,871(Pfizer)またはそれらの組み合わせである。
併用
いくつかの実施形態において、本明細書に開示の組成物は、さらなる治療薬を更に含む。いくつかの実施形態において、さらなる治療薬剤は、酸性化剤、麻酔薬、鎮痛剤、抗生物質、制吐剤、抗真菌剤、抗微生物剤、抗精神病薬(特にフェノチアジンクラスのもの)、防腐剤、抗ウイルス剤、収れん薬、化学療法剤、コラーゲン、コルチコステロイド、利尿薬、角質溶解薬、一酸化窒素シンターゼインヒビター、あるいはそれらの組み合わせである。
酸性化剤
酸性化剤は、本明細書に開示の組成物と組合わせて任意に使用される。酸性化剤は、前庭の環境のpHレベルを低下させ、前庭の環境を微生物の成長にとって最も不利にする。抗コリン剤は、酢酸を含むが、これに限定されない。
制吐剤
制吐剤は、本明細書に開示の組成物と組合わせて任意に使用される。制吐剤は、プロメタジン、プロクロルペラジン、トリメトベンズアミドおよびトリエチルペラジン(triethylperazine)を含む。他の制吐剤は、ドラセトロン、グラニセトロン、オンダンセトロン、トロピセトロンおよびパロノセトロンのような5HT3アンタゴニスト;およびドロペリドールのような神経弛緩薬を含む。さらに、制吐剤は、メクリジンのような抗ヒスタミン剤;パーフェナジンのようなフェノチアジンおよびチエチルペラジン;ドンペリドン、プロペリドール(properidol)、ハロペリドール、クロルプロマジン、プロメタジン、プロクロルペラジン、メトクロプラミドまたはそれらの組み合わせを含むドーパミン拮抗薬;ドロナビノール、ナビロン、サティベックスまたはそれらの組み合わせを含むカンナビノイド;スコポラミンを含む抗コリン薬;およびデクサメタゾーンを含むステロイド;トリメトベンズアミン(trimethobenzamine)、エメトロール(emetrol)、プロポフォール、ムシモールまたはそれらの組み合わせを含む。
抗菌物質
抗菌物質もまた、本明細書に開示の組成物を備えた有用なものとして予期される。抗菌物質は、バクテリア、菌類または寄生生物を含む微生物を阻害または根絶するために働く薬剤を含む。特定の抗菌物質は、特定の微生物と闘うために使用され得る。従って、熟練した開業医は、抗菌物質が、同定された微生物または発現した兆候に関連し、または依存することだろうと知るだろう。抗菌物質は、抗生物質、抗ウイルス剤、抗真菌剤および駆虫薬を含む。
抗生物質は、アミカシン、ゲンタマイシン、カナマイシン、ネオマイシン、ネチルマイシン、ストレプトマイシン、トブラマイシン、パロモマイシン、ゲルダナマイシン(geldanmycin)、ハービマイシン、ロラカルベフ、エルタペネム、ドリペネム、イミペネム、シラスタチン、メロペネム、セファドロキシル、セファゾリン、セファロチン、セファレキシン、セファクロール、セファマンドール、セホキシチン、セフプロジル(defprozil)、セフロキシム、セフィキシム、セフジニル、セフジトレン、セフォペラゾン、セフォタキシム、セフポドキシム、セフタジジム、セフチブテン、セフチゾキシム、セフトリアキソン、セフェピム、セフトジプロレ、テイコプラニン、バンコマイシン、アジスロマイシン、クラリスロマイシン、ジリスロマイシン、エリスロマイシン、ロキシスロマイシン、トロレアンドマイシン、テリスロマイシン、スペクチノマイシン、アズトレオナム、アモキシシリン、アンピシリン、アズロシリン、カルベニシリン、クロキサシリン、ジクロキサシリン、フルクロキサシリン、メズロシリン、メチシリン、ナフシリン、オキサシリン、ペニシリン、ピペラシリン、チカルシリン(ticarcillan)、バシトラシン、コリスチン、ポリミキシンB、シプロフロキサシン、エノキサシン、ガチフロキサシン、レボフロキサシン、ロメフロキサシン、モキシフロキサシン、ノルフロキサシン、オフロキサシン、トロバフロキサシン(trovfloxacin)、マフェナイド、プロントジル、スルファセタミド、スルファメチゾール、スルファニルアミド(sulfanimilimde)、スルファサラジン(sulfsalazine)、スルフイソキサゾール(sulfsioxazole)、トリメトプリム、デメクロサイクリン、ドキシサイクリン、ミノサイクリン、オキシテトラサイクリン(oxtetracycline)、テトラサイクリン、アルスフェナミン、クロラムフェニコール、クリンダマイシン、リンコマイシン、エタンブトール、ホスホマイシン、フシジン酸、フラゾリドン、イソニアジド、リネゾリド、メトロニダゾール、ムピロシン、ニトロフラントイン、プラテンシマイシン、ピラジンアミド、キヌプリスチン(quinuspristin)/ダルホプリスチン、リファンピン、チニダゾール、またはそれらの組み合わを含むが、これらに制限されない。
抗ウィルス物質は、アミノフィリン、ファムシクロビル、およびバラシクロビルを含むが、これらに限定されない。他の抗ウィルス物質は、アバカビル、アシクロビル、アデフォビル(adfovir)、アマンタジン、アンプレナビル、アルビドール、アタザナビル、アトリプラ(artipla)、ブリブジン、シドホビル、コンビビル、エドクスジン、エファビレンツ、エムトリシタビン、エンフビルチド、エンテカビル、ホミビルセン(fomvirsen)、ホスアンプレナビル、ホスカルネット、ホスホネット、ガンシクロビル、ガーダシル、イバシタビン、イムノブル(imunovir)、イドクスウリジン、イミキモド、インジナビル、イノシン、インテグラーゼインヒビター、インターフェロンタイプIII、インターフェロンタイプII、インターフェロンタイプIを含むインターフェロン、ラミブジン、ロピナビル、ロビリド、MK‐0518、マラビロック、モロキシジン、ネルフィナビル、ネビラピン、ネクサビル(nexavir)、ヌクレオシドアナログ、オセルタミビル、ペンシクロビル、ペラミビル、プレコナリル、ポドフィロトキシン、プロテアーゼ阻害剤、逆転写酵素阻害薬、リバビリン、リマンタジン、リトナビル、サキナビル、スタブジン、テノホビル、テノホビルジソプロキシル、チプラナビル、トリフルリジン、トリジビル、トロマンタジン、ツルバダ、バルガンシクロビル、ビクリビロック、ピダラブン(vidrabine)、ビラミジン、ザルシタビン、ザナミビル、ジドブジン、あるいはそれらの組み合わせを含む。
抗真菌剤は、アモロルフィン(amrolfine)、ブテナフィン(utenafine)、ナフチフィン、テルビナフィン、フルシトシン、フルコナゾール、イトラコナゾール、ケトコナゾール、ポサコナゾール、ラブコナゾール、ボリコナゾール、クロトリマゾール、エコナゾール、ミコナゾール、オキシコナゾール、スルコナゾール、テルコナゾール、チオコナゾール、ニッコーマイシンZ、カスポファンギン、ミカファンギン、アニデュラファンギン、アンフォテリシンB、リポソームニスタチン(nystastin)、ピマリシン、グリセオフルビン、シクロピロクスオラミン、ハロプロジン、トルナフテート、ウンデシレン酸塩、あるいはそれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない。駆虫薬は、アミトラズ、アモスカネート、アベルメクチン、カルバドックス、ジエチルカルバマジン(diethylcarbamizine)、ジメトリダゾール、ジミナゼン、イベルメクチン、マクロフィラリサイド、マラチオン、ミタバン(mitaban)、オキサムニキン、ペルメトリン、プラジカンテル、パモ酸ピランテル(prantel pamoate)、セラメクチン、スチボグルコン酸ナトリウム、チアベンダゾールまたはそれらの組み合わせを含み得る。
抗敗血症剤
本明細書に開示の組成物を備えた有用なものとして、抗敗血症剤も予期される。抗敗血症剤は、酢酸、ホウ酸、ゲンチアナバイオレット、過酸化水素、過酸化カルバミド、クロルヘキシジン、食塩水、マーキュロクロム、ポビドンヨード、ポリヒドロキシンヨウ素(polyhyroxine iodine)、クレシル酸塩および酢酸アルミニウム、またその組み合わせを含むが、これらに限定されない。
収れん薬
本明細書に開示の組成物を備えた有用なものとして、収れん薬も予期される。収れん薬は、イソプロピルアルコール、エタノール、およびプロピレングリコールを含むが、これらに限定されない。
コルチコステロイド
本明細書に開示の組成物を備えた有用なものとして、コルチコステロイドも予期される。コルチコステロイドは、ヒドロコルチゾン、プレドニゾン、フルプレドニソロン、デクサメタゾーン、ベータメタゾン、吉草酸ベタメタゾン、メチルプレドニソロン、フルオシノロンアセトニド、フルランドレノロンアセトニド、フルオロメトロン、コルチゾン、プレドニゾロン、アルクロメタゾン、アムシノニド、ベータメタゾン、クロベタゾール、クロコルトロン、デソニド、デスオキシメタゾン、ジフロラゾン、フルオシノニド、フルドロキシコルチド(flurandrenolide)、フルチカゾン、ハルシノニド、ハロベタゾール、モメタゾン、フルメタゾン、プレドニカルベートおよびトリアムシノロン、およびそれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない。
血小板活性化因子アンタゴニスト
血小板活性化因子アンタゴニストもまた、本明細書に開示のアポトーシス調節組成物と組み合せての使用のために予期される。血小板活性化因子アンタゴニストは、ほんの一例として、カズレノン、フォマクチン(phomactin)G、ジンセノサイド、アパファント(4-(2-クロロフェニル)-9-メチル-2[3(4-モルホリニル)-3-プロパノール-1-イル[6Hチエノ[3.2-f[[1.2.4] トリアゾロ]4,3-1]]1.4] ジアゼピン)、A‐85783、BN‐52063、BN‐52021、BN‐50730(テトラヘドラ(tetrahedra)‐4,7,8,10メチル‐1(クロロ‐1フェニル)-6(メトキシ‐4)))フェニル-カルバミル)-9ピリド[4’,3’-4,5] チエノ[3,2f] トリアゾロ‐1,2,4[4,3-a,ジアゼピン]-1,4)、BN50739、SM‐12502、RP‐55778、Ro24‐4736、SR27417A、CV‐6209、WEB2086、WEB2170、14‐デオキシアンドログラホリド、CL184005、CV‐3988、TCV‐309、PMS‐601、TCV‐309またはそれらの組み合わせを含む。
以下に(表1)に、本明細書に開示の組成物およびデバイスと共に使用するのために予期される活性薬剤の例が提示される。いくつかの実施形態において、表1に開示の1以上の活性薬剤が、本明細書に記載の組成物またはデバイスと共に使用される。
いくつかの実施形態において、さらなる治療薬剤は、即時放出薬剤である。いくつかの実施形態において、さらなる治療薬剤は、制御放出薬剤である。
滅菌の一般法
本明細書には、本明細書に記載の耳の疾患を改善するか、または減らす耳用組成物が提供される。さらに、本明細書には、いくつかの実施形態において、前記耳用組成物の投与を含む方法が提供される。いくつかの実施形態において、組成物またはデバイスは、滅菌されている。本明細書に開示する実施形態には、ヒトにおいて使用するための、本明細書に開示した医薬組成物またはデバイスを滅菌するための手段およびプロセスが、含まれる。目標は、感染を引き起こす微生物を比較的含まない、安全な医薬品を得ることである。米国食品医薬品局は、規制指導を、出版「Guidance for Industry:Sterile Drug Products Produced by Aseptic Processing」において提供した:これは、http://www.fda.gov/cder/guidance/5882fnl.htmで利用可能であり、その全体中が本明細書に参照として組み入れられる。
本明細書で使用される場合、「滅菌」は、製品または包装に存在する微生物を破壊、または除去するプロセスを意味する。対象と組成物の滅菌に利用可能な任意の適切な方法は、本明細書に記載の組成物およびデバイスの用途のために予期される。微生物を不活性化するのに利用可能な方法としては、限定されないが、激しく熱を加えること、致死性の化学物質、またはγ線を適用することが挙げられる。本明細書には、いくつかの実施形態において、耳用治療組成物を調製するプロセスは、熱による滅菌、化学物質による滅菌、放射線による滅菌、または濾過滅菌から選択される滅菌方法に組成物を曝露するプロセスが開示される。使用する方法は、滅菌対象のデバイスまたは組成物の性質に大きく依存する。滅菌の多くの方法の詳細な記述は、Remington(The Science and Practice of Pharmacy(Lippincott, WilliamsおよびWilkins著))の第40章に提供され、これは本主題に関して参照として組み入れられる。
加熱滅菌
激しく熱を加えることによって滅菌するために、多くの方法が利用可能である。1つの方法は、飽和蒸気によるオートクレーブを用いることによる方法である。この方法では、少なくとも121℃の温度での飽和蒸気を目的物と接触させて、滅菌することができる。目的物を滅菌する場合には、熱を微生物に直接的に移動させるか、または滅菌する水溶液の塊を加熱することによって、微生物に間接的に移動させる。この方法は、滅菌プロセスに柔軟性、安全性、経済性を与えるので、広範囲に実施される。
乾熱滅菌は、高温で微生物を死滅させ、発熱物質の除去を行う方法である。このプロセスは、HEPAで濾過した微生物を含まない空気を、滅菌プロセスのために少なくとも130〜180℃の温度まで加熱し、発熱物質除去プロセスのために少なくとも230〜250℃の温度まで加熱するのに適したデバイスで行う。濃縮した組成物または粉末状組成物を再構築するための水も、オートクレーブで滅菌する。いくかの実施形態において、本明細書に記載の組成物は、例えば、粉末内部温度が130〜140℃で約7〜11時間、または、内温150〜180℃で1〜2時間加熱する、乾熱によって滅菌された微粉化された薬剤を含む。
化学的滅菌法
化学物質による滅菌方法は、激しい熱による滅菌に耐えられない生成物に対する代替法である。この方法では、殺菌性を有する種々の気体および蒸気、例えば、エチレンオキシド、二酸化塩素、ホルムアルデヒドまたはオゾンを抗アポトーシス剤または前アポトーシス剤として使用する。例えば、エチレンオキシドの殺菌活性は、エチレンオキシドが反応性アルキル化剤として作用する能力によるものである。したがって、滅菌プロセスは、エチレンオキシド蒸気を、滅菌対象の製品と直接接触させることが必要となる。
放射線殺菌
放射線による滅菌の1つの利点は、熱による分解または他の損傷を受けずに、多くの種類の生成物を滅菌できることである。一般的に使用される放射線は、γ線か、60Co源由来のβ線である。γ線の透過能は、溶液、組成物、不均質な混合物を含む多くの種類の製品を滅菌するのに使用することができる。この照射による殺菌効果は、γ線と生体高分子との相互作用によるものである。この相互作用によって、帯電している種と、遊離ラジカルとが生成する。転位および架橋プロセスのようなその後の化学反応によって、上記の生体高分子の通常の機能が失われる。また、本明細書に記載の組成物が、任意に、β線を用いて滅菌される。
濾過
濾過滅菌は、微生物を破壊するのではなく、溶液から除去するために用いられる方法である。膜フィルターを用い、熱に感受性の溶液を濾過する。このようなフィルターは、混合セルロース誘導体エステル(MCE)、フッ化ポリビニリデン(PVF;PVDFとしても知られる)またはポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の薄く、強く、均質なポリマーで0.1〜0.22μmの孔径を有する。種々の特性を有する溶液は、任意に、異なるフィルター膜を用いて濾過される。例えば、PVF膜およびPTFE膜は、有機溶媒を濾過するのに十分適しており、一方、水溶液は、PVF膜またはMCE膜を介して濾過する。フィルター装置は、シリンジに取り付ける利用時点の(a point-of-use)の使い捨てフィルターから、製造プラントで使用する商業規模のフィルターまで、多くの規模で使用するものが利用可能である。膜フィルターは、オートクレーブまたは化学滅菌で滅菌する。膜濾過システムの検証は、以下の標準化されたプロトコルにしたがって行い(文献「Microbiological Evaluation of Filters for Sterilizing Liquids、Vol4、No.3.Washington、D.C:Health Industry Manufacturers Association、1981」)、Brevundimonas diminuta(ATCC19146)のような一般的ではないほど小さい微生物について、既知の量(約107cm2)を用いた膜フィルターのチャレンジ試験を含む。
医薬組成物は、任意に、膜フィルターを通すことによって滅菌される。ナノ粒子 (米国特許第6,139,870号) 又は多重ラメラベシクル(multilamellar vesicles)(Richard et al.、International Journal of Pharmaceutics(2006)、312(1‐2):144−50)を備える製剤は、それらの組織構造を破壊することなしに,0.22μmフィルターを通して濾過することによって、滅菌に適する。いくつかの実施形態において、本明細書に開示の方法は、濾過滅菌を用いることによって、組成物(またはその成分)を滅菌する工程を含む。別の実施形態において、耳に許容可能な耳用治療剤組成物は、粒子組成物が、濾過滅菌に適するような粒子を含む。さらなる実施形態において、前記粒子組成物は、大きさが300nm未満、大きさが200nm未満、または大きさが100nm未満の粒子を含む。別の実施形態において、耳に許容可能な組成物は、粒子組成物を含み、この粒子の滅菌性は、前駆体成分の溶液を滅菌濾過することによって確保される。別の実施形態において、耳に許容可能な組成物は、粒子組成物を含み、この粒子組成物の滅菌性は、低温滅菌濾過によって確保される。さらなる実施形態において、低温滅菌濾過は、0〜30℃の間、0〜20℃の間、0〜10℃の間、10〜20℃の間、または20〜30℃の間の温度で行われる。
別の実施形態において、耳に許容可能な粒子組成物の調製のためのプロセスは、以下を含む:粒子組成物を含有する水溶液を、滅菌フィルターを介して低温で濾過する工程;この滅菌溶液を凍結乾燥する工程;および、投与前に、この粒子組成物を滅菌水で再構築する工程。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の組成物は、微粉化された活性医薬成分を含有する単一のバイアル組成物中の懸濁物として製造される。単一のバイアル組成物は、滅菌ポロクサマー溶液を、微粉化された滅菌活性成分(例えば、PD98059)と無菌状態で混合し、組成物を滅菌医薬容器に移すことによって調製される。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の組成物を懸濁物として含有する単一のバイアルを、分注および/または投与前に再び懸濁させる。
特定の実施形態において、濾過手順および/または充填手順は、本明細書に記載の組成物のゲル温度(Tgel)よりも約5℃低い温度で、理論値が100cPの粘度で行われ、ぜん動ポンプを用い、妥当な時間で濾過することができる。
別の実施形態において、耳に許容可能な耳用治療剤組成物は、濾過滅菌に適したナノ粒子製剤を含む。さらなる実施形態において、ナノ粒子製剤は、大きさが300nm未満、大きさが200nm未満、または大きさが100nm未満のナノ粒子を含む。別の実施形態において、耳に許容可能な組成物は、マイクロスフィア組成物を含み、マイクロスフィアの前駆体の有機溶液および水溶液を滅菌濾過することによって、このマイクロスフィア滅菌性が確保される。別の実施形態において、耳に許容可能な組成物は、熱可逆性ゲルを含み、このゲル組成物の滅菌性は、低温滅菌濾過によって確保される。さらなる実施形態において、低温滅菌濾過は、0〜30℃の間、又は0〜20℃の間、または0〜10℃の間、又は10〜20℃の間、または20〜30℃の間の温度で行われる。別の実施形態において、耳に許容可能な熱可逆性ゲルを調製するプロセスは、以下を含む:熱可逆性ゲル成分を含有する水溶液を、滅菌フィルターを介して低温で濾過する工程;この滅菌溶液を凍結乾燥する工程;および、投与前に、この熱可逆性ゲルを再構築する工程。
特定の実施形態において、活性成分は、適切なビヒクル(例えば、緩衝液)に溶解され、別々に滅菌される(例えば、熱処理、濾過、γ線によって)。いくつかの例において、活性成分は、乾燥状態で別々に滅菌される。いくつかの例において、活性成分は、懸濁物として、またはコロイド状懸濁物として滅菌される。残りの賦形剤(例えば、耳用組成物に存在する流体ゲル成分)は、別々の工程で、適切な方法(例えば、賦形剤の冷却した混合物の濾過および/または放射線照射)によって滅菌され、別々に滅菌された2つの溶液は、次いで、無菌状態で混合され、最終の耳用組成物が提供される。いくつかの例において、本明細書に記載の組成物を投与する直前に最終的な無菌状態の混合が行われる。
いくつかの例において、従来から使用されている滅菌方法(例えば、熱処理(例えば、オートクレーブで)、γ線、濾過)によって、ポリマー成分(例えば、熱硬化性、ゲル化性または粘膜接着性のポリマー成分)および/または組成物中の活性薬剤が不可逆的に分解される。いくつかの例において、膜(例えば、0.2μM膜)を介しての耳用組成物の滅菌は、この組成物が、濾過プロセス中にゲル化するチキソトロピー性ポリマーを含む場合には、不可能である。
従って、本明細書には、ポリマー成分(例えば、熱硬化性および/またはゲル化性および/または粘膜接着性のポリマー成分)および/または活性薬剤が、滅菌プロセス中に分解するのを防ぐような、耳用組成物を滅菌する方法が提供される。いくつかの実施形態において、緩衝液成分を特定のpH範囲で用いること、および特定の比率のゲル化剤を組成物に用いることによって、活性薬剤(例えば、本明細書に記載の任意の耳用治療薬剤)の分解が減るか、またはなくなる。いくつかの実施形態において、適切なゲル化剤および/または熱硬化性ポリマーを選択することによって、本明細書に記載の組成物を濾過によって滅菌することができる。いくつかの実施形態において、適切な熱硬化性ポリマーおよび適切なコポリマー(例えば、ゲル化剤)を、組成物に対して特定のpH範囲と組み合わせて用いることによって、治療薬剤またはポリマー賦形剤が実質的に分解することなく、記載の組成物を高温で滅菌することができる。本明細書に提供された滅菌方法の利点は、特定の場合において、組成物が、滅菌工程中に活性薬剤および/または賦形剤および/またはポリマー成分が失われることなく、オートクレーブによって最終滅菌され、微生物および/または発熱物質を実質的に含まない状態にすることである。
微生物
本明細書には、本明細書に記載の耳の疾患を改善するか、または減らす、耳に許容可能な組成物またはデバイスが提供される。さらに、本明細書には、前記耳用組成物を投与することを含む方法が提供される。いくつかの実施形態において、組成物またはデバイスは、実質的に微生物を含まない。許容可能な滅菌レベルは、限定されないが、米国薬局方1111章(以下参照)を含む、治療に許容可能な耳用組成物を規定する適用可能な標準に基づく。例えば、許容可能な滅菌レベルとしては、組成物1gあたり約10コロニー形成単位(cfu)、組成物1g当たり約50cfu、組成物1g当たり約100cfu、組成物1g当たり約500cfu、または組成物1g当たり約1000cfuが挙げられる。いくつかの実施形態において、組成物の許容可能な滅菌レベルとしては、微生物剤が、10cfu/mL未満、50cfu/mL未満、500cfu/mL未満、または1000cfu/mL未満が挙げられる。
それに加え、許容可能な滅菌レベルとしては、特定の好ましくない微生物剤が除外されていることが挙げられる。例として、特定の好ましくない微生物剤としては、限定されないが、Escherichia coli(E.coli)、Salmonella sp.(種)、Pseudomonas aeruginosa(P.aeruginosa)および/または他の特定の微生物剤が挙げられる。耳に許容可能な耳用治療剤組成物の滅菌レベルは、米国薬局方61章、62章および71章に従い、滅菌保証プログラムで確認する。滅菌保証による品質コントロール、品質保証および検証プロセスの鍵となる要素は、滅菌試験方法である。滅菌試験は、ほんの一例として、2つの方法によって行われる。第1の方法は、試験対象の組成物サンプルを成長培地に加え、21日間までの期間インキュベートする、直接接種である。成長培地の濁りは、コンタミネーションを示す。この方法の欠点は、材料の塊からのサンプリング量が少量だと感度が下がること、微生物の検出が視覚的な観察に基づくことが挙げられる。代替法は、膜濾過による滅菌試験である。この方法では、ある容積の生成物を小さな膜濾紙に通す。次いで、濾紙を培地に入れ、微生物の成長を促進させる。この方法は、生成物の塊全体をサンプリングするので、感度が高くなるという利点を有する。任意に、膜濾過による滅菌試験によって決定するために、市販のMillipore Steritest滅菌試験システムを用いる。クリームまたは軟膏の濾過試験のために、SteritestフィルターシステムTLHVSL210も使用される。エマルジョンまたは粘性生成物の濾過試験のために、SteritestフィルターシステムTLAREM210またはTDAREM210が使用される。あらかじめ充填したシリンジの濾過試験のために、SteritestフィルターシステムTTHASY210が使用される。エアロゾルまたはフォームとして分散した物質の濾過試験のために、SteritestフィルターシステムTTHVA210が使用される。アンプルまたはバイアル中の可溶性粉末の濾過試験のために、SteritestフィルターシステムTTHADA210またはTTHADV210が使用される。
E.coliおよびSalmonellaのための試験は、ラクトース培養液を用い、30〜35℃で24〜72時間インキュベートし、MacConkey寒天および/またはEMB寒天中で、18〜24時間インキュベートすること、および/またはRappaport培地を用いることを含む。P.aeruginosaを検出するための試験は、NAC寒天の使用を含む。米国薬局方の62章は、特定の好ましくない微生物のための試験手順をさらに列挙している。
特定の実施形態において、任意の本明細書に記載の制御放出組成物は、組成物1gあたり、約60未満のコロニー形成単位(CFU)、約50未満のコロニー形成単位、約40未満のコロニー形成単位、または約30未満のコロニー形成単位の微生物剤を有する。特定の実施形態において、本明細書に記載の耳用組成物は、内リンパおよび/または外リンパとモル浸透圧濃度が等しくなるように処方される。
エンドトキシン
本明細書には、本明細書に記載の耳の疾患を改善するか、または減らす耳用組成物が提供される。さらに、本明細書には、前記耳用組成物を投与することを含む方法が提供される。いくつかの実施形態において、組成物またはデバイスは、実質的にエンドトキシンを含まない。滅菌プロセスのさらなる態様は、微生物を殺して生じる副生成物(以下、「生成物」)を除去することである。発熱物質除去プロセスによって、サンプルから発熱物質を除去することである。発熱物質は、免疫反応を誘発するエンドトキシンまたはエクソトクシンである。エンドトキシンの例は、グラム陰性菌の細胞壁に見出されるリポ多糖体(LPS)分子である。オートクレーブまたはエチレンオキシドを用いる処理のような滅菌手順によって、細菌は死滅するが、LPS残基は、敗血性ショックのような炎症性免疫反応を誘発する。エンドトキシンの分子の大きさが広範囲にわたってさまざまなため、エンドトキシンの存在は、「エンドトキシン単位」(EU)で表わされる。1EUは、E.coliのLPS100ピコグラムに相当する。ヒトは、わずか5EU/kg体重の反応を生じる場合がある。無菌状態(sterility)は、当該技術分野で認識されているような任意の単位で表わされる。特定の実施形態において、本明細書に記載の耳用組成物は、従来の許容可能なエンドトキシンレベル(例えば、被験体の体重について、5EU/kg)と比較して、低いエンドトキシンレベルを有する(例えば、被験体の体重について、4EU/kg未満)。いくつかの実施形態において、耳に許容可能な耳用治療剤組成物は、被験体の体重の約5EU/kg未満のEUを有する。他の実施形態において、耳に許容可能な耳用治療剤組成物は、被験体の体重の約4EU/kg未満のEUを有する。さらなる実施形態において、耳に許容可能な耳用治療剤組成物は、被験体の体重の約3EU/kg未満のEUを有する。さらなる実施形態において、耳に許容可能な耳用治療剤組成物は、被験体の体重の約2EU/kg未満のEUを有する。
いくつかの実施形態において、耳に許容可能な耳用治療剤組成物またはデバイスは、組成物の約5EU/kg未満のEUを有する。他の実施形態において、耳に許容可能な耳用治療剤組成物は、組成物の約4EU/kg未満のEUを有する。さらなる実施形態において、耳に許容可能な耳用治療剤組成物は、組成物の約3EU/kg未満のEUを有する。いくつかの実施形態において、耳に許容可能な耳用治療剤組成物は、約5EU/kg未満の「生成物」を有する。他の実施形態において、耳に許容可能な耳用治療剤組成物は、約1EU/kg未満の「生成物」を有する。さらなる実施形態において、耳に許容可能な耳用治療剤組成物は、約0.2EU/kg未満の「生成物」を有する。いくつかの実施形態において、耳に許容可能な耳用治療剤組成物は、約5EU/g未満のユニットまたは「生成物」を有する。他の実施形態において、耳に許容可能な耳用治療剤組成物は、約4EU/g未満のユニットまたは「生成物」を有する。さらなる実施形態において、耳に許容可能な耳用治療剤組成物は、約3EU/g未満のユニットまたは「生成物」を有する。いくつかの実施形態において、耳に許容可能な耳用治療剤組成物は、約5EU/mg未満のユニットまたは「生成物」を有する。他の実施形態において、耳に許容可能な耳用治療剤組成物は、約4EU/mg未満のユニットまたは「生成物」を有する。さらなる実施形態において、耳に許容可能な耳用治療剤組成物は、約3EU/mg未満のユニットまたは「生成物」を有する。特定の実施形態において、本明細書に記載の耳用組成物は、約1〜約5EU/mLの組成物を含有する。特定の実施形態において、本明細書に記載の耳用組成物は、約2〜約5EU/mLの組成物、約3〜約5EU/mLの組成物、または約4〜約5EU/mLの組成物を含有する。
特定の実施形態において、本明細書に記載の耳用組成物またはデバイスは、従来の許容可能なエンドトキシンレベル(例えば、組成物の0.5EU/mL)と比較して、低いエンドトキシンレベル(例えば、組成物の0.5EU/mL未満)を有する。いくつかの実施形態において、耳に許容可能な耳用治療剤組成物またはデバイスは、組成物の約0.5EU/mL未満である。他の実施形態において、耳に許容可能な耳用治療剤組成物は、組成物の約0.4EU/mL未満である。さらなる実施形態において、耳に許容可能な耳用治療剤組成物は、組成物の約0.2EU/mL未満である。
発熱物質の検出は、ほんの一例として、いくつかの方法で行われる。滅菌レベルに適した試験としては、米国薬局方(USP)71章の滅菌レベル試験(Sterility Tests)(第23版、1995)に記載されている試験が挙げられる。ウサギの発熱物質試験およびLimulus amebocyte溶解物試験は、両方とも、米国薬局方の85章および151章(USP23/NF18、Biological Tests、The United States PHarmacopeial Convention、Rockville、MD、1995)に特定されている。代替的な発熱物質アッセイは、単球活性化-サイトカインアッセイに基づいて開発されている。品質制御用途に適した均一な細胞株が開発されており、ウサギ発熱物質試験およびLimulus amebocyte溶解物試験を合格したサンプルでの発熱を検出する能力を示す(Taktakらによる文献「J.PHarm.PHarmacol.(1990)、43:578−82」)。さらなる実施形態において、耳に許容可能な耳用治療剤組成物について、発熱物質除去を行う。さらなる実施形態において、耳に許容可能な耳用治療剤組成物を製造するプロセスは、発熱性について組成物を試験する工程を含む。特定の実施形態において、本明細書に記載の組成物は、実質的に発熱物質を含まない。
pHおよび実際のモル浸透圧濃度
本明細書で使用される場合、「実際のモル浸透圧濃度(容積モル浸透圧濃度/重量モル浸透圧濃度)」または「送達可能なモル浸透圧濃度(容積モル浸透圧濃度/重量モル浸透圧濃度)」は、活性薬剤と、ゲル化剤および/または増粘剤(例えば、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンコポリマー、カルボキシメチルセルロースなど)を除くすべての賦形剤のモル浸透圧濃度(容積モル浸透圧濃度/重量モル浸透圧濃度)を測定することによって決定される、組成物のモル浸透圧濃度(容積モル浸透圧濃度/重量モル浸透圧濃度)を意味する。本明細書に記載の組成物の実際のモル浸透圧濃度は、任意の適切な方法、例えば、Viegasらの文献「Int.J.Pharm、1998、160、157‐162」の中に記載されているような凝固点降下方法)によって測定される。いくつかの例において、本明細書に記載の組成物の実際のモル浸透圧濃度は、より高い温度で組成物のモル浸透圧濃度を決定することができる、蒸気圧浸透圧法(例えば、蒸気圧降下法)によって測定される。いくつかの例において、蒸気圧降下法によって、ゲル化剤(例えば、熱可逆性ポリマー)を含む組成物のモル浸透圧濃度を、ゲル化剤がゲルの形態である、より高い温度で決定することができる。本明細書に記載の耳用組成物の実際のモル浸透圧濃度は、約100mOsm/kg〜約1000mOsm/kg、約200mOsm/kg〜約800mOsm/kg、約250mOsm/kg〜約500mOsm/kg、または約250mOsm/kg〜約320mOsm/kg、又は約250mOsm/kg〜約350mOsm/kg、または約280mOsm/kg〜約320mOsm/kgである。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の組成物は、実際のモル浸透圧濃度が、約100mOsm/L〜約1000mOsm/L、約200mOsm/L〜約800mOsm/L、約250mOsm/L〜約500mOsm/L、約250mOsm/L〜約350mOsm/L、約250mOsm/L〜約320mOsm/L、または約280mOsm/L〜約320mOsm/Lである。
いくつかの実施形態において、標的作用部位(例えば、外リンパ)でのモル浸透圧濃度は、本明細書に記載の任意の組成物の送達されるモル浸透圧濃度(すなわち、正円窓膜を透過または浸透する物質のモル浸透圧濃度)とほぼ同じである。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の組成物は、約150mOsm/L〜約500mOsm/L、約250mOsm/L〜約500mOsm/L、約250mOsm/L〜約350mOsm/L、約280mOsm/L〜約370mOsm/L、または約250mOsm/L〜約320mOsm/Lの送達可能なモル浸透圧濃度を有する。
内リンパに存在する主なカチオンは、カリウムである。加えて、内リンパは、高濃度の正に帯電したアミノ酸を有する。外リンパに存在する主なカチオンは、ナトリウムである。特定の例において、内リンパおよび外リンパのイオン性組成物は、有毛細胞の電気化学インパルスを制御する。特定の例において、内リンパまたは外リンパのイオン平衡におけるいかなる変化も、耳の有毛細胞に沿った電気化学インパルスの伝導が変化することに起因して、難聴を生じさせる。いくつかの実施形態において、本明細書に開示の組成物は、外リンパのイオン平衡を崩さない。いくつかの実施形態において、本明細書に開示の組成物は、外リンパと同じか、または実質的に同じイオン平衡を有する。いくつかの実施形態において、本明細書に開示の組成物は、内リンパのイオン平衡を崩さない。いくつかの実施形態において、本明細書に開示の組成物は、内リンパと同じか、または実質的に同じイオン平衡を有する。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の耳用組成物は、内耳液(例えば、内リンパおよび/または外リンパ)に適合するイオン平衡を与えるように処方される。
内リンパおよび外リンパは、血液の生理学的pHに近いpHを有する。内リンパは、約7.2〜7.9のpH範囲を有し、一方、外リンパは、約7.2〜7.4のpH範囲を有する。体幹に近い(proximal)内リンパのインサイツpHは、約7.4であり、末梢に近い内リンパのpHは、約7.9である。
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の組成物のpHは、(例えば、緩衝液を用いることによって)内リンパに適合する約5.5〜9.0の範囲のpHに調節される。特定の実施形態において、本明細書に記載の組成物のpHは、外リンパに適合する約5.5〜9.0の範囲のpHに調節される。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の組成物のpHは、外リンパに適合する約5.5〜約8.0、約6〜約8.0又は約6.6〜約8.0の範囲のpHに調節される。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の組成物のpHは、外リンパに適合する約7.0〜7.6の範囲のpHに調節される。
いくつかの実施形態において、有用な組成物は、1以上のpH調製剤または緩衝液も含む。適切なpH調整剤または緩衝液としては、限定されないが、酢酸塩、炭酸水素塩、塩化アンモニウム、クエン酸塩、リン酸塩、薬学的に許容可能なこれらの塩、またはこれらの組み合わせ若しくは混合物が挙げられる。
1つの実施形態において、本開示の組成物に1以上の緩衝液が用られる場合、それらは、(例えば、薬学的に許容可能なビヒクルと)混合され、最終製剤に(例えば、約0.1%〜約20%、約0.5%〜約10%の量で)存在する。本開示の特定の実施形態において、ゲル組成物に含まれる緩衝液の量は、ゲル組成物のpHが、体内の天然の緩衝系を妨害しないような量である。
1つの実施形態において、希釈剤はまた、より安定な環境を得ることができるため、化合物を安定化させるために用いられる。緩衝液(pH制御、または維持もできるもの)中に溶解された塩は、希釈剤として当技術分野で利用され、希釈剤は、リン酸緩衝生理食塩溶液を含むが、これに限定されない。
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の任意のゲル組成物は、ゲルを含む医薬品またはポリマーが分解することなく、(例えば、濾過、または無菌状態で混合、または熱処理、および/またはオートクレーブ処理(例えば、最終滅菌)によって)ゲル組成物を滅菌することができるpHを有する。滅菌中の耳用薬剤および/またはゲルポリマーの加水分解および/または分解を減らすために、緩衝液のpHは、滅菌プロセス(例えば、高温でのオートクレーブ処理)中、組成物のpHが7〜8に維持されるように設計される。
特定の実施形態において、本明細書に記載の任意のゲル組成物は、医薬品、またはゲルを含むポリマーが分解することなく、ゲル組成物の最終滅菌(例えば、熱処理および/またはオートクレーブ処理による)を可能にするpHを有する。例えば、オートクレーブ処理中の耳用薬剤および/またはゲルポリマーの加水分解および/または分解を減らすために、緩衝液のpHは、高温での組成物のpHを7〜8の範囲に維持するように設計される。組成物中で使用される耳用薬剤に依存して、任意の適切な緩衝液が使用される。いくつかの例において、温度が約‐0.03/℃で上がるにつれて、TRISのpKaが小さくなり、温度が約0.003/℃で上がるにつれて、PBSのpKaが大きくなるため、250°F(121℃)でのオートクレーブ処理によって、TRIS緩衝液中でpHシフトが顕著に下がり(すなわち、より酸性になり)、一方、PBS緩衝液中で、pHシフトは相対的にほとんど上がらず、したがって、PBS中よりもTRIS中で、耳用薬剤の加水分解および/または分解がはるかに増える。本明細書に記載のような緩衝液およびポリマー添加剤(例えば、P407、CMC)を適切に組み合わせることによって、耳用薬剤の分解が減る。
いくつかの実施形態において、pHが約5.0〜約9.0の間、約5.5〜約8.5の間、約6.0〜約7.6の間、約7〜約7.8の間、約7.0〜約7.6の間、約7.2〜約7.6の間、又は約7.2〜約7.4の間である組成物が、本明細書に記載の耳用組成物の滅菌(例えば、濾過、または無菌状態で混合、または熱処理、および/またはオートクレーブ処理(例えば、最終滅菌)による)に適している。特定の実施形態において、pHが約6.0、約6.5、約7.0、約7.1、約7.2、約7.3、約7.4、約7.5、又は約7.6である組成物が、本明細書に記載する任意の組成物の滅菌(例えば、濾過、または無菌状態で混合、または熱処理、および/またはオートクレーブ処理(例えば、最終滅菌)による)に適している。
いくつかの実施形態において、組成物は、本明細書に記載のようなpHを有し、非限定的な例として、本明細書に記載のセルロース系増粘剤のような増粘剤(例えば、粘度を高める薬剤)を含む。いくつかの例において、第2のポリマー(例えば、増粘剤)を加え、組成物のpHを上記のようにすると、耳用組成物中の耳用薬剤および/またはポリマー成分がなんら実質的に分解することなく、本明細書に記載の組成物を滅菌することができる。いくつかの実施形態において、本明細書に記載のpHを有する組成物中、増粘剤に対する熱可逆性ポロクサマーの比率は、約40:1、約35:1、約30:1、約25:1、約20:1、約15:1、約10:1、または約5:1である。例えば、特定の実施形態において、本明細書に記載の徐放性および/または持続放出性の組成物は、ポロクサマー407(プルロニックF127)およびカルボキシメチルセルロース(CMC)の組み合わせを、約40:1、約35:1、約30:1、約25:1、約20:1、約15:1、約10:1、または約5:1の比率で含む。
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の任意の組成物中の熱可逆性ポリマーの量は、組成物の総重量の約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、又は約40%である。いくつかの実施形態において、本明細書に記載する任意の組成物中の熱可逆性ポリマーの量は、組成物の総重量の約10%、約11%、約12%、約13%、約14%、約15%、約16%、約17%、約18%、約19%、約20%、約21%、約22%、約23%、約24%、又は約25%である。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の任意の組成物中の熱可逆性ポリマー(例えば、プルロニックF127)の量は、組成物の総重量の7.5%である。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の任意の組成物中の熱可逆性ポリマー(例えば、プルロニックF127)の量は、組成物の総重量の10%である。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の任意の組成物中の熱可逆性ポリマー(例えば、プルロニックF127)の量は、組成物の総重量の11%である。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の任意の組成物中の熱可逆性ポリマー(例えば、プルロニックF127)の量は、組成物の総重量の12%である。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の任意の組成物中の熱可逆性ポリマー(例えば、プルロニックF127)の量は、組成物の総重量の13%である。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の任意の組成物中の熱可逆性ポリマー(例えば、プルロニックF127)の量は、組成物の総重量の14%である。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の任意の組成物中の熱可逆性ポリマー(例えば、プルロニックF127)の量は、組成物の総重量の15%である。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の任意の組成物中の熱可逆性ポリマー(例えば、プルロニックF127)の量は、組成物の総重量の16%である。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の任意の組成物中の熱可逆性ポリマー(例えば、プルロニックF127)の量は、組成物の総重量の17%である。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の任意の組成物中の熱可逆性ポリマー(例えば、プルロニックF127)の量は、組成物の総重量の18%である。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の任意の組成物中の熱可逆性ポリマー(例えば、プルロニックF127)の量は、組成物の総重量の19%である。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の任意の組成物中の熱可逆性ポリマー(例えば、プルロニックF127)の量は、組成物の総重量の20%である。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の任意の組成物中の熱可逆性ポリマー(例えば、プルロニックF127)の量は、組成物の総重量の21%である。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の任意の組成物中の熱可逆性ポリマー(例えば、プルロニックF127)の量は、組成物の総重量の23%である。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の任意の組成物中の熱可逆性ポリマー(例えば、プルロニックF127)の量は、組成物の総重量の25%である。
いくつかの実施形態において、本明細書に記載する任意の組成物中の増粘剤(例えば、ゲル化剤)の量は、組成物の総重量の約1%、約5%、約10%、又は約15%である。いくつかの実施形態において、本明細書に記載する任意の組成物中の増粘剤(例えば、ゲル化剤)の量は、組成物の合計重量の約0.5%、約1%、約1.5%、約2%、約2.5%、約3%、約3.5%、約4%、約4.5%、又は約5%である。
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の医薬組成物は、少なくとも約1日、少なくとも約2日、少なくとも約3日、少なくとも約4日、少なくとも約5日、少なくとも約6日、少なくとも約1週間、少なくとも約2週間、少なくとも約3週間、少なくとも約4週間、少なくとも約5週間、少なくとも約6週間、少なくとも約7週間、少なくとも約8週間、少なくとも約1ヶ月間、少なくとも約2ヶ月間、少なくとも約3ヶ月間、少なくとも約4ヶ月間、少なくとも約5ヶ月間、または少なくとも約6ヶ月間の任意の期間にわたって、pHに関して安定である。他の実施形態において、本明細書に記載の組成物は、少なくとも約1週間にわたって、pHに関して安定である。また、本明細書に記載の組成物は、少なくとも約1ヶ月間にわたって、pHに関して安定である。
等張化剤
概して、内リンパは、外リンパよりもモル浸透圧濃度が高い。例えば、内リンパは、約304mOsm/kg H2Oのモル浸透圧濃度を有し、一方、外リンパは、約294mOsm/kg H2Oのモル浸透圧濃度を有する。特定の実施形態において、本明細書に記載の組成物に、耳用組成物の実際のモル浸透圧濃度が約100mOsm/kg〜約1000mOsm/kg、約200mOsm/kg〜約800mOsm/kg、約250mOsm/kg〜約500mOsm/kg、又は約250mOsm/kg〜約350mOsm/kg、または約280mOsm/kg〜約320mOsm/kgになるような量で、等張化剤が加えられる。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の組成物は、約100mOsm/L〜約1000mOsm/L、約200mOsm/L〜約800mOsm/L、約250mOsm/L〜約500mOsm/L、約250mOsm/L〜約350mOsm/L、約280mOsm/L〜約320mOsm/L、又は約250mOsm/L〜約320mOsm/Lの実際のモル浸透圧濃度を有する。
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の任意の組成物の送達可能なモル浸透圧濃度は、標的とする耳の構造体(例えば、内リンパ、外リンパなど)とモル浸透圧濃度が等しくなるように設計される。特定の実施形態において、本明細書に記載の耳用組成物は、標的作用部位で、約250〜約320mOsm/Lの容積モル浸透圧濃度(約250〜約320mOsm/kg H2Oの重量モル浸透圧濃度)を提供するように処方され;好ましくは、約270〜約320mOsm/Lの容積モル浸透圧濃度(約270〜約320mOsm/kg H2Oの重量モル浸透圧濃度)の外リンパに適したモル浸透圧濃度を与えるように処方される。特定の実施形態において、組成物の送達可能なモル浸透圧濃度(重量モル浸透圧濃度/容積モル浸透圧濃度)(すなわち、ゲル化剤または増粘剤(例えば、熱可逆性ゲルポリマーが存在しない製剤のモル浸透圧濃度(重量モル浸透圧濃度/容積モル浸透圧濃度))は、例えば、適切な濃度の塩(例えば、カリウム塩またはナトリウム塩の濃度)を用いることによって調節されるか、または標的部位に送達する際に、組成物を内リンパに適合および/または外リンパに適合する(すなわち、内リンパおよび/または外リンパと等しいモル浸透圧濃度を有する)ようにする等張化剤を用いることによって調節される。熱可逆性ゲルポリマーを含む組成物のモル浸透圧濃度は、さまざまな量の水が、ポリマーのモノマー単位と会合するため、信頼できる値ではない。組成物の実際のモル浸透圧濃度は信頼できる手段で、任意の適切な方法(例えば凝固点降下法、蒸気圧降下法)によって測定される。いくつかの例において、本明細書に記載の組成物は、投与の際に、内耳環境へのかく乱を最小限にして、哺乳動物への不快感(例えば、眩暈および/または吐き気)を最小限にするように(例えば、標的部位(例えば、外リンパ)で)送達可能なモル浸透圧濃度を与える。
いくつかの実施形態において、本明細書に記載する任意の組成物は、外リンパおよび/または内リンパと等張である(isotonic)。等張性組成物は、等張化剤を加えることによって提供される。適切な等張化剤としては、限定されないが、任意の薬学的に許容可能な糖、これらの塩または任意の組み合わせまたは混合物が挙げられ、例えば、限定されないが、デキストロース、グリセリン、マンニトール、ソルビトール、塩化ナトリウム、他の電解質が挙げられる。
有用な耳用組成物は、組成物のモル浸透圧濃度を許容範囲にするのに必要とされる量の1以上の塩を含む。このような塩は、ナトリウムカチオン、カリウムカチオン、またはアンモニウムカチオン及び塩化物アニオン、クエン酸塩アニオン、アスコルビン酸塩アニオン、ホウ酸塩アニオン、リン酸塩アニオン、炭酸水素アニオン、硫酸塩アニオン、チオ硫酸塩アニオン又は亜硫酸水素塩アニオンを有するものを含み、適切な塩は、塩化ナトリウム、塩化カリウム、チオ硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム及び硫酸アンモニウムを含む。
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の組成物は、本明細書に記載されるようなpHおよび/または実際のモル浸透圧濃度を有し、活性医薬成分の濃度が、約1μM〜約10μMまで、約1mM〜約100mMまで、約0.1mM〜約100mMまで、約0.1mM〜約100nMまでである。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の組成物は、本明細書に記載するようなpHおよび/または実際のモル浸透圧濃度を有し、活性医薬成分の濃度が、組成物の活性成分の重量の約0.01%〜約20%まで、約0.01%〜約10%まで、約0.01〜約7.5%まで、約0.01%〜6%まで、約0.01〜5%まで、約0.1〜約10%まで、または約0.1%〜約6%までである。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の組成物は、本明細書に記載するようなpHおよび/または実際のモル浸透圧濃度を有し、活性医薬成分の濃度が、組成物の容積で活性成分の約0.1〜約70mgまで、約1mg〜約70mg/mLまで、約1mg〜約50mg/mLまで、約1mg/mL〜約20mg/mLまで、約1mg/mL〜約10mg/mLまで、約1mg/mL〜約5mg/mLまで、又は約0.5mg/mL〜約5mg/mLまでである。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の組成物は、本明細書に記載するようなpHおよび/または実際のモル浸透圧濃度を有し、活性医薬成分の濃度が、組成物の容積で活性成分の約1μg/mL〜約500μg/mLまで、約1μg/mL〜約250μg/mLまで、約1μg/mL〜約100μg/mLまで、約1μg/mL〜約50μg/mLまで、約1μg/mL〜約20μg/mLまでである。
粒子サイズ
表面積を大きくし、および/または組成物の分散性を調節するために、サイズ縮小が行われる。また、本明細書に記載の任意の組成物について、一貫性のある平均粒子サイズ分布(PSD)(例えば、マイクロメートルのサイズの粒子、ナノメートルのサイズの粒子など)を維持するために、サイズ縮小が行われる。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の任意の組成物は、多粒子を含む(すなわち、複数の粒子サイズ(例えば、微粉化された粒子、ナノサイズの粒子、大きさが一定ではない粒子、コロイド状粒子)を含む。いくつかの実施形態において、本明細書に記載する任意の組成物は、1以上の多粒子の(例えば、微粉化された)治療薬剤を含む。微粉化は、固体物質粒子の平均直径を小さくするプロセスである。微粉化された粒子は、直径がほぼマイクロメートルの大きさからほぼナノメートルの大きさである。いくつかの実施形態において、微粉化された固体中の粒子の平均直径は、約0.5μm〜約500μmである。いくつかの実施形態において、微粉化された固体中の粒子の平均直径は、約1μm〜約200μmである。いくつかの実施形態において、微粉化された固体中の粒子の平均直径は、約2μm〜約100μmである。いくつかの実施形態において、微粉化された固体中の粒子の平均直径は、約3μm〜約50μmである。いくつかの実施形態において、微粉化された粒子状固体は、粒径が、約5ミクロン未満、約20ミクロン未満、および/または約100ミクロン未満である。いくつかの実施形態において、抗アポトーシス剤または前アポトーシス剤の粒子状物質(例えば、微粉化された粒子)を用いると、多粒子ではない(例えば、微粉化していない)抗アポトーシス剤または前アポトーシス剤を含む組成物と比較して、本明細書に記載する任意の組成物から抗アポトーシス剤または前アポトーシス剤が徐放および/または持続放出が可能となる。いくつかの例において、多粒子(例えば、微粉化された)抗アポトーシス剤または前アポトーシス剤を含む組成物は、塞がったり、目詰まりしたりすることなく、27G針を取り付けた1mLシリンジから排出される。
いくつかの例において、本明細書に記載する任意の組成物中の任意の粒子は、コーティングされた粒子(例えば、コーティングされた微粉化粒子、ナノ粒子)および/またはマイクロスフィアおよび/またはリポソーム粒子である。粒径を小さくする技術としては、例として、粉砕、製粉(例えば、空気摩擦による製粉(ジェットミルによる製粉)、ボールミルによる製粉)、コアセルベーション、複合コアセルベーション、高圧ホモジナイズ法、スプレー乾燥および/または超臨界流体による結晶化が挙げられる。いくつかの例において、粒子は、機械的衝撃(例えば、ハンマーミル、ボールミルおよび/またはピンミルによる)によって大きさが調節される。いくつかの例において、粒子は、流体エネルギー(例えば、スパイラルジェットミル、ループジェットミル、および/または流動床型ジェットミルによる)によって大きさが調節される。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の組成物は、結晶性粒子および/または等方性粒子を含む。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の組成物は、アモルファス粒子および/または異方性粒子を含む。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の組成物は、治療薬剤が、中性分子、遊離酸、遊離塩基、または治療薬剤の塩、またはプロドラッグ、またはこれらの任意の組み合わせである治療薬剤粒子を含む。
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の組成物は、1以上の抗アポトーシス剤または前アポトーシス剤を含み、抗アポトーシス剤または前アポトーシス剤はナノ微粒子物を含む。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の組成物は、抗アポトーシス剤または前アポトーシス剤のビーズ(例えば、タクロリムスビーズ)を含み、このビーズは、任意に、制御放出性賦形剤でコーティングされている。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の組成物は、顆粒化され、および/またはサイズを小さくし、制御放出性賦形剤でコーティングされた抗アポトーシス剤または前アポトーシス剤を含み;次いで、顆粒化され、コーティングされた抗アポトーシス剤または前アポトーシス剤粒子状物質は、本明細書に記載の任意の組成物中において、任意に微粉化され、および/または処方される。
いくつかの例において、抗アポトーシス剤または前アポトーシス剤の中性分子、遊離酸、遊離塩基、および塩として、抗アポトーシス剤または前アポトーシス剤を組み合わせることは、本明細書に記載の手順を使用して、かつてはパルス状放出性の耳用薬剤組成物を調製するために使用される。いくつかの組成物において、微粉化された抗アポトーシス剤または前アポトーシス剤(および/またはそれらの塩またはプロドラッグ)とコーティングされた粒子(例えば、ナノ粒子、リポソーム、マイクロスフィア)を組み合わせることは、本明細書に記載の任意の手順を用いて、パルス状放出性の耳用薬剤製剤を調製するために使用される。あるいは、パルス状放出特性は、20%までの送達量の抗アポトーシス剤または前アポトーシス剤(例えば、微粉化された抗アポトーシス剤または前アポトーシス剤、中性分子、遊離塩基、遊離酸またはそれの塩もしくはプロドラッグ;多粒子の抗アポトーシス剤または前アポトーシス剤、中性分子、遊離塩基、遊離酸またはそれらの塩もしくはプロドラッグ)を、シクロデキストリン、界面活性剤(例えば、ポロクサマー(407、338、188)、Tween(80、60、20、81)、PEG水素化ヒマシ油)、N‐メチル‐2‐ピロリドンのような共溶媒などと一緒に可溶化し、本明細書に記載の任意の手順を用いてパルス状放出組成物を調製することによって、達成される。
特定の実施形態において、本明細書に記載の任意の耳に適合する組成物は、1以上の微粉化された医薬品(例えば、抗アポトーシス剤または前アポトーシス剤)を含む。このような実施形態のうちいくつかにおいて、微粉化された医薬品は、微粉化された粒子、コーティングされた(例えば、持続放出性コーティングで)微粉化された粒子、またはこれらの組み合わせを含む。このような実施形態のうちいくつかにおいて、微粉化された粒子、コーティングされた微粉化された粒子、またはこれらの組み合わせを含む微粉化された医薬品は、抗アポトーシス剤または前アポトーシス剤を、中性分子、遊離酸、遊離塩基、塩、プロドラッグ、またはこれらの組み合わせとして含む。特定の実施形態において、本明細書に記載の医薬組成物は、抗アポトーシス剤または前アポトーシス剤を微粉化された粉末として含む。
本明細書に記載の多粒子および/または微粉化された抗アポトーシス剤または前アポトーシス剤は、固体マトリックス、液体マトリックスまたはゲルマトリックスを含む任意の種類のマトリックスを用い、耳の構造体(例えば、内耳)に送達される。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の多粒子および/または微粉化された抗アポトーシス剤または前アポトーシス剤は、固体マトリックス、液体マトリックスまたはゲルマトリックス(matrices)を含む任意の種類のマトリックスを用い、鼓室内注射によって耳の構造体(例えば、内耳)に送達される。
医薬組成物
本明細書には、少なくとも1つの抗アポトーシス剤または前アポトーシス剤と、薬学的に許容可能な希釈剤、賦形剤または担体とを含む医薬組成物またはデバイスが提供される。いくつかの実施形態において、医薬組成物は、他の医療薬剤または医薬品、担体、アジュバント、例えば、防腐剤、安定化剤、湿潤剤または乳化剤、溶解促進剤、浸透圧を調節するための塩、および/または緩衝液を含む。他の実施形態において、医薬組成物は、他の治療基質も含有する。
いくつかの薬学的賦形剤、希釈剤又は担体は、潜在的に耳毒性がある。例えば、塩化ベンザルコニウム、一般的な防腐剤は、耳毒性があり、従って、前庭又は蝸牛の構造体に取り込まれると、潜在的に有害である。制御放出アポトーシス調節組成物を処方する際に、適切な賦形剤、希釈剤又は担体を避ける又は組み合わせること、組成物から潜在的な耳毒性の化合物を減少させる又は除去すること、又はそのような賦形剤、希釈剤又は担体などの量を減少させることが推奨される。任意に、制御放出アポトーシス調節組成物は、賦形剤、希釈剤又は担体の特定の治療薬剤を使用することで生じ得る潜在的な耳毒性の影響を弱めるために、抗酸化物質、アルファリポ酸、カルシウム、ホスホマイシン又は鉄キレート剤などの耳毒性防護剤を含む。
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の組成物またはデバイスは、適用するときにゲルの視覚化を高めるのに役立つ染料を含む。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の耳に許容可能な組成物またはデバイスと適合する染料としては、エバンスブルー(例えば、耳用組成物の総重量の0.5%)、メチレンブルー(例えば、耳用組成物の総重量の1%)、イソスルファンブルー(例えば、耳用組成物の総重量の1%)、トリパンブルー(例えば、耳用組成物の総重量の0.15%)、および/またはインドシアニングリーン(例えば、25mg/バイアル)が挙げられる。他の一般的な染料(例えば、FD&C red 40、FD&C red 3、FD&C yellow 5、FD&C yellow 6、FD&C blue 1、FD&C blue2、FD&C green 3)、蛍光染料(例えば、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、Alexa Fluors、DyLight Fluors)、および/またはMRI、CATスキャン、PETスキャンなどのような非侵襲性造影技術と組み合わせて視覚化可能な染料が挙げられる。ガドリニウム系MRI染料、ヨウ素系染料、バリウム系染料なども、本明細書に記載の任意の耳用組成物と共に使用することが想定されている。本明細書に記載の任意の組成物または組成物と適合する他の染料は、Sigma‐Aldrichの染料に関するカタログに列挙されている(それは、そのような開示のために、本明細書に参考として組み込まれる)。
本明細書に記載の任意の医薬組成物またはデバイスを、蝸牛窓稜、正円窓、鼓室、鼓膜、中耳または外耳と接触させた状態で配置することによって投与する。
本明細書に記載の耳に許容可能な制御放出抗アポトーシス剤または前アポトーシス剤の組成物の1つの特定の実施形態において、抗アポトーシス剤または前アポトーシス剤は、ゲルマトリックスの状態で提供され、本明細書では、「耳に許容可能なゲル組成物」、「内耳に許容可能なゲル組成物」、「中耳に許容可能なゲル組成物」、「外耳に許容可能なゲル組成物」、「耳用ゲル組成物」、またはこの変形で呼ばれる。ゲル組成物のすべての成分は、標的とする耳の構造体と適合しなければならない。さらに、ゲル組成物は、標的とする耳の構造体内にある所望の部位に、制御放出抗アポトーシス剤または前アポトーシス剤を提供する。いくつかの実施形態において、ゲル組成物は、抗アポトーシス剤または前アポトーシス剤を所望の標的部位に送達するための、短時間型または即効型の放出成分を有している。他の実施形態において、ゲル組成物は、抗アポトーシス剤または前アポトーシス剤を送達するための徐放成分を有する。いくつかの実施形態において、ゲル組成物は、多粒子(例えば、微粉化された)抗アポトーシス剤または前アポトーシス剤を含む。いくつかの実施形態において、耳用ゲル組成物は、生分解性である。他の実施形態において、耳用ゲル組成物は、正円窓膜の外側粘液層に付着可能なように粘膜接着性の賦形剤を含む。さらなる他の実施形態において、耳用ゲル組成物は、浸透促進賦形剤を含み、さらなる実施形態において、耳用ゲル組成物は、約500〜1,000,000センチポイズの間、約750〜1,000,000センチポイズの間; 約1000〜1,000,000のセンチポアズの間;約1000〜400,000のセンチポアズの間;約2000〜100,000のセンチポアズの間;約3000〜50,000のセンチポアズの間;約4000〜25,000のセンチポアズの間;約5000〜20,000のセンチポアズの間;または約6000〜15,000のセンチポアズの間の粘度を与えるのに十分な増粘剤を含有する。いくつかの実施形態において、耳用ゲル組成物は、約50,0000〜1,000,000センチポイズの間の粘度を与えるのに十分な増粘剤を含む。
他の実施形態において、本明細書に記載の内耳用医薬組成物は、耳に許容可能なヒドロゲルをさらに提供する。さらなる他の実施形態において、耳用医薬組成物は、耳に許容可能なマイクロスフィアまたは微小粒子を提供する。さらに別の実施形態において、耳用医薬組成物は、耳に許容可能なリポソームを提供する。いくつかの実施形態において、耳用医薬組成物は、耳に許容可能なフォームを提供する。さらなる他の実施形態において、耳医薬組成物は、耳に許容可能なペイントを提供する。さらなる他の実施形態において、耳医薬組成物は、耳に許容可能なインサイツ形成海綿状物質を供給する。いくつかの実施形態において、耳用医薬組成物は、耳に許容可能な溶媒放出ゲルである。いくつかの実施形態において、耳用医薬組成物は、化学線根治ゲルを供給する。さらなる実施形態は、耳医薬組成物の中に熱可逆性ゲルを含み、室温またはそれ以下でゲルを調整する時は、組成物は流体だが、鼓室腔、正円窓膜または蝸牛窓稜を含む内耳及び/又は中耳の標的部位の中へ、またはその近くにゲルを適用する時は、耳用医薬組成物は、ゲル様の物質へ強化され(stiffen)、または硬化される。
さらなるまたは代替的な実施形態において、耳用ゲル組成物は、鼓室内注射を介して、正円窓膜の上または近くに投与可能である。他の実施形態において、耳用ゲル組成物は、正円窓または蝸牛窓稜の領域へまたはその近くに、耳介後部の切開部や外科的処置による入口を通じて、正円窓または蝸牛窓稜へ、またはその近くに投与される。あるいは、耳用ゲル組成物は、シリンジおよび針によって適用され、針は、鼓膜を介して挿入され、正円窓または蝸牛窓稜の領域に導かれる。次いで、耳用ゲル組成物は、局所的な処置のために、正円窓または蝸牛窓稜の上にまたはこれらの近くに配置される。他の実施形態において、耳用ゲル組成物は、患者に移植したマイクロカテーテルを介して適用され、またさらなる実施形態において、ポンプ装置によって正円窓膜上またはその近くに投与される。さらなる他の実施形態において、耳用ゲル組成物は、マイクロインジェクションデバイスよって正円窓膜上またはその近くに投与される。さらに他の実施形態において、耳用ゲル組成物は、鼓膜内に適用される。いくつかの実施形態において、耳用ゲル組成物は、鼓膜上に適用される。さらなる他の実施形態において、耳用ゲル組成物は、耳道上または耳道中に適用する。
さらなる特定の実施形態において、本明細書に記載の任意の医薬組成物またはデバイスは、液体マトリックス(例えば、鼓室内注射用または点耳薬用の液体組成物)中に多粒子の抗アポトーシス剤または前アポトーシス剤を含む。特定の実施形態において、本明細書に記載の任意の医薬組成物は、固体マトリックス中に多粒子抗アポトーシス剤または前アポトーシス剤を含む。
制御放出組成物
概して、制御放出製剤組成物は、放出部位および体内の放出時間に関し、薬物の放出制御を付与する。本明細書で論じられる場合、制御放出性とは、即効型放出性、遅延放出性、徐放性、持続放出性、可変型放出性、パルス状放出性、二峰性放出性を指す。多くの利点が、制御放出によって得られる。第1に、医薬品の制御放出により、投薬回数が減り、これにより、繰り返し処置が最小限になる。第2に、制御放出処置によって、薬物の利用がより効果的になり、残渣として残る化合物が減る。第3に、制御放出によって、疾患部位に送達デバイスまたは組成物を配置することによる、局所的な薬物送達の可能性が与えられる。またさらに、制御放出によって、それぞれ固有の放出特性を有する2以上の異なる薬物を投与し放出する機会が与えられ、または、単一の投薬単位を用いることによって、同じ薬物を、異なる速度または異なる持続時間で放出させる機会が与えられる。
従って、本明細書に記載の実施形態の1つの態様は、制御放出アポトーシス調節型の耳に許容可能な組成物を提供することである。本明細書に開示の組成物および/またはデバイスの制御放出の態様は、限定されないが、内耳または他の耳の構造体で使用するのに許容可能な賦形剤、薬剤または物質を含む種々の薬剤によって付与される。例として、このような賦形剤、薬剤または材料は、耳に許容可能なポリマー、耳に許容可能な増粘剤、耳に許容可能なゲル、耳に許容可能なペイント、耳に許容可能なフォーム、耳に許容可能なキセロゲル、耳に許容可能なマイクロスフィア若しくは微小粒子、耳に許容可能なヒドロゲル、耳に許容可能なインサイツ形成海綿状物質、耳に許容可能な化学線硬化ゲル(actinic radiation curable gel)、耳に許容可能な溶媒放出ゲル、耳に許容可能なリポソーム、耳に許容可能なナノカプセル若しくはナノスフィア、耳に許容可能な熱可逆性ゲルまたはそれらの組み合わせを含む。
耳に許容可能なゲル剤
ゲル(ときに、ゼリーとも呼ばれる)は、種々の様式で規定される。例えば、米国薬局方は、ゲルを、小さな無機粒子または大きな有機分子のいずれかに液体がしみこんだ懸濁物からなる半固体系であると定義している。ゲルは、単相系または二相系を含む。単相ゲルは、分散した高分子と液体との間に明らかな境界が存在しない様式で、液体全体に均一に分布する有機高分子からなる。いくつかの単相ゲルは、合成高分子(例えば、カルボマー)または天然ゴム(例えば、トラガカント)から調製される。いくつかの実施形態において、単相ゲルは、一般的に水系であるが、アルコールおよび油を用いても作成されるであろう。二相ゲルは、小さな別個の粒子の網目構造体からなる。
ゲルは、また、疎水性ゲルまたは親水性ゲルに分類することができる。特定の実施形態において、疎水性ゲルの基材は、ポリエチレンを含む液体パラフィン若しくはコロイド状シリカでゲル化した脂肪油、またはアルミニウム石鹸または亜鉛石鹸から成る。対照的に、疎水性ゲルの基材は、通常は、水、グリセロール、または適切なゲル化剤(例えば、トラガカント、デンプン、セルロース誘導体、カルボキシビニルポリマー、ケイ酸アルミニウムマグネシウム)でゲル化したプロピレングリコールから成る。特定の実施形態において、本明細書に開示する組成物またはデバイスのレオロジーは、プラスチックに似ているか、プラスチックであるか、チキソトロピーであるか、またはダイラタントである。
1つの実施形態において、本明細書に記載の、粘度が高められた耳に許容可能な組成物は、室温で液体ではない。特定の実施形態において、粘度が高められた組成物は、室温と体温(重篤な発熱、例えば、約42℃までの発熱している個体を含む)との間で相転移することを特徴とする。いくつかの実施形態において、相転移は、体温より1℃低い温度で、体温より2℃低い温度で、体温よリ3℃低い温度で、体温より4℃低い温度で、体温より6℃低い温度で、体温より8℃低い温度で、または体温よリ10℃低い温度で起こる。いくつかの実施形態において、相転移は、体温より約15℃低い温度で、体温より約20℃低い温度で、または体温より約25℃低い温度で起こる。特定の実施形態において、本明細書に記載する組成物のゲル化温度(Tgel)は、約20℃、約25℃、又は約30℃である。特定の実施形態において、本明細書に記載する組成物のゲル化温度(Tgel)は、約35℃、又は約40℃である。1つの実施形態において、本明細書に記載の任意の組成物をほぼ体温で投与すると、耳用組成物の鼓室内投与と関連する眩暈が減り、または防がれる。体温の定義には、健康な個体、不健康な個体(約42℃までの発熱している個体を含む)の体温が含まれる。ある実施形態において、本明細書に記載の医薬組成物またはデバイスは、ほぼ室温で液体であり、室温またはほぼ室温で投与され、例えば、眩暈のような副作用を減らし、または改善する。
ポリオキシプロピレンおよびポリオキシエチレンで構成されるポリマーは、水溶液に組み込まれると、熱可逆性ゲルを形成する。これらのポリマーは、体温に近い温度で液体状態からゲル状態へと変化する能力を有し、従って、標的とする耳の構造体に適用される有用な組成物を可能にする。液体状態とゲル状態の相転移は、ポリマー濃度、溶液中の成分に依存して変わる。
ポロクサマー407(PF‐127)は、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンコポリマーから成る非イオン性界面活性剤である。他のポロクサマーとしては、188(F‐68グレード)、237(F‐87グレード)、338(F‐108グレード)が挙げられる。ポロクサマー水溶液は、酸、アルカリ、金属イオン存在下で安定である。PF‐127は、一般式E106P70E106、平均分子量が13,000の、市販されているポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレントリブロックコポリマーである。このポリマーは、ポリマーのゲル化性を高めるような適切な方法によってさらに精製することができる。このポリマーは、約70%のエチレンオキシドを含有し、この部分が、親水性に相当する。このポリマーは、一連のポロクサマーABAブロックコポリマーの1つであり、このメンバーは、以下に示す共通の化学式を有している。
PF‐127は、体温まで加熱すると、このコポリマーの濃縮溶液(>20%w/w)が、低粘度の透明溶液から固体ゲルに変換するため、特に興味深い。従って、この現象は、身体と接触させて配置する場合、ゲル調製剤が、半固体構造体を形成し、徐放放出デポ剤を形成することを示唆している。さらに、PF‐127は、良好な可溶性を有し、毒性が低く、したがって、薬物送達システムのための良好な媒体であると考えられる。
代替的な実施形態において、熱ゲルは、PEG‐PLGA‐PEGトリブロックコポリマーである(Jeongら、Nature(1997)、388:860‐2;Jeongら、J.Control.Release(2000)、63:155−63;Jeongら、Adv.Drug Delivery Rev.(2002)、54:37‐51)。このポリマーは、約5%w/w〜約40%w/wの濃度でゾル-ゲル挙動を示す。望ましい性質に依存して、PLGAコポリマー中のラクチド/グリコリドのモル比は、約1:1〜約20:1の範囲内である。得られるコポリマーは、水に可溶性であり、室温では自由に流動する液体であるが、体温ではハイドロゲルを形成する。市販されているPEG‐PLGA‐PEGトリブロックコポリマーは、Boehringer Ingelheim製のRESOMER RGP t50106である。この物質は、50:50ポリ(DL‐ラクチド‐co‐グリコリド)のPGLAコポリマーで構成されており、PEGは、10%w/wであり、分子量は約6000である。
ReGel(登録商標)は、米国特許第6,004,573号、第6,117949号、第6,201,072号、第6,287,588号に記載されているような可逆的な熱ゲル化性を有する、一連の低分子量の生分解性ブロックコポリマーに対するMacroMed Incorporatedの商標である。それは、また、係属中の米国特許出願第09/906,041号、第09/559,799号および第10/919,603号の中で示された生物分解性の高分子医薬担体を含んでいる。生分解性薬物担体は、ABA型またはBAB型のトリブロックコポリマーまたはこれらの混合物を含み、Aブロックは、相対的に疎水性であり、生分解性ポリエステルまたはポリ(オルトエステル)を含み、Bブロックは、相対的に親水性であり、ポリエチレングリコール(PEG)を含み、このコポリマーは、疎水性含量が50.1〜83重量%であり、親水性含量が17〜49.9重量%であり、最終的なブロックコポリマーの分子量は、2000〜8000ダルトンである。この薬物担体は、通常の哺乳動物の体温未満の温度では水溶性を示し、可逆的な熱ゲル化を受け、哺乳動物の生理学的体温と等しい温度では、ゲルとして存在する。生分解性の疎水性Aポリマーブロックは、ポリエステルまたはポリ(オルトエステル)を含み、ここで、ポリエステルは、D,L‐ラクチド、D‐ラクチド、L‐ラクチド、D,L‐乳酸、D‐乳酸、L‐乳酸、グリコリド、グリコール酸、ε‐カプロラクトン、ε‐ヒドロキシヘキサン酸、γ‐ブチロラクトン、γ‐ヒドロキシ酪酸、δ‐バレロラクトン、δ‐ヒドロキシ吉草酸、ヒドロキシ酪酸、リンゴ酸、およびこれらのコポリマーからなる群より選択されるモノマーから合成され、平均分子量が、約600〜3000ダルトンである。親水性Bブロックセグメントは、好ましくは、平均分子量が約500〜2200ダルトンのポリエチレングリコール(PEG)である。
さらなる生分解性熱可塑性ポリエステルとしては、AtriGel(登録商標)(Atrix Laboratories、Inc.から得られる)および/または、例えば、米国特許第5,324,519号;第4,938,763号;第5,702,716号;第5,744,153号;および第5,990,194号に開示されるものが挙げられ、適切な生分解性熱可塑性ポリエステルは、熱可塑性ポリマーとして開示されている。適切な生分解性熱可塑性ポリエステルの例としては、ポリラクチド、ポリグリコリド、ポリカプロラクトン、これらのコポリマー、これらのターポリマー、およびこれらの任意の組み合わせが挙げられる。いくつかのこのような実施形態において、適切な生分解性熱可塑性ポリエステルは、ポリラクチド、ポリグリコリド、これらのコポリマー、これらのターポリマー、またはこれらの組み合わせである。1つの実施形態において、生物分解性の熱可塑性ポリエステルは、カルボキシ末端基を有する、50/50のポリ(DL‐ラクチド‐co‐グリコリドであり;組成物中に約30重量%から約40重量%で存在し;約23,000のから約45,000までの平均分子量を持つ。あるいは、別の実施形態において、生物分解性の熱可塑性ポリエステルは、カルボキシ末端基を有さない、75/25のポリ(DL‐ラクチド‐co‐グリコリド)であり;組成物中、約40重量%から約50重量%で存在し;約15,000から約24,000までの平均分子量を持つ。さらなる実施形態または代替の実施形態において、ポリ(DL‐ラクチド‐co‐グリコリド)の末端基は、重合法に依存し、ヒドロキシル、カルボキシルまたはエステルのいずれかである。乳酸またはグリコール酸の重縮合によって、末端がヒドロキシル基およびカルボキシル基のポリマーが得られる。環状ラクチドモノマーまたはグリコリドモノマーを、水、乳酸またはグリコール酸で開環重合すると、同じ末端基を有するポリマーが得られる。しかし、環状モノマーを、一置換アルコール(例えば、メタノール、エタノール、または1-ドデカノール)で開環重合すると、末端基の1つがヒドロキシル基であり、1つがエステル基であるポリマーが得られる。環状モノマーを、ジオール(例えば、1,6‐ヘキサンジオールまたはポリエチレングリコール)で開環重合すると、末端基がヒドロキシルのみのポリマーが得られる。
熱可逆性ゲルのポリマー系が、より低温でもっと完全に溶解するため、溶解方法は、より低温で、使用する量の水に必要な量のポリマーを加えることを含む。一般に、振り混ぜることによってポリマーを湿らせた後、混合物に蓋をし、ポリマーを溶解させるために、コールドチャンバーに入れるか、または約0〜10℃で恒温容器に入れる。この混合物を撹拌するか、または振り混ぜ、もっと迅速に熱可逆性ゲルポリマーを溶解させる。抗アポトーシス剤または前アポトーシス剤および種々の添加剤(例えば、緩衝液、塩および防腐剤)を加え、溶解する。いくつかの例において、抗アポトーシス剤または前アポトーシス剤および/または他の医薬活性薬剤を、水に不溶性な場合には懸濁させる。pHは、適切な緩衝液を加えることによって調節される。正円窓膜の粘膜接着特性が、任意に、正円窓膜の粘膜接着性カルボマー(例えば、カルボポール(登録商標)934P)を組成物に組み込むことによって、熱可逆性ゲルに付与される(Majithiyaらによる文献「AAPS PHarmSciTech (2006)、7(3)、p.E1;EP0551626」、この両方は、そのような開示のために、本明細書に参照として組み込まれる)。1つの実施形態において、加えられる増粘剤の使用を必要としない、耳に許容可能な医薬ゲル組成物がある。このようなゲル組成物には、少なくとも1つの薬学的に許容可能な緩衝液が組み込まれている。1つの態様において、抗アポトーシス剤または前アポトーシス剤、および薬学的に許容可能な緩衝液を含むゲル状組成物がある。別の実施形態において、薬学的に許容可能な賦形剤または担体は、ゲル化剤である。
他の実施形態において、内リンパまたは外リンパに適切なpHを与えるため、有用な抗アポトーシス剤または前アポトーシス剤の耳に許容可能な医薬組成物はまた、1以上のpH調整剤または緩衝液も含んでいる。適切なpH調整剤または緩衝液としては、限定されないが、酢酸塩、炭酸水素塩、塩化アンモニウム、クエン酸塩、リン酸塩、これらの薬学的に許容可能な塩、またはこれらの組み合わせ若しくは混合物が挙げられる。このようなpH調整剤および緩衝液は、組成物pHを、約5〜約9の間のpH、いくつかの実施形態において、約6.5〜約7.5の間のpH、さらに別の実施形態において、約6.5、約6.6、約6.7、約6.8、約6.9、約7.0、約7.1、約7.2、約7.3、約7.4、約7.5のpHに維持するのに必要な量で含まれる。1つの実施形態において、1以上の緩衝液は、本開示の組成物に使用される場合、例えば薬学的に許容可能なビヒクルと混合され、最終製剤に、例えば、約0.1%〜約20%、約0.5%〜約10%の範囲の量で存在する。本開示の特定の実施形態において、ゲル組成物に含まれる緩衝液の量は、ゲル組成物のpHが、内耳(auris media or auris interna)の天然の緩衝系を妨害せず、内リンパまたは外リンパの天然のpHを妨害しないような量であり、この量は、抗アポトーシス剤または前アポトーシス剤の組成物が標的とする蝸牛における場所に依存する。いくつかの実施形態において、約10μM〜約200mMの濃度の緩衝液がゲル組成物に存在する。特定の実施形態において、約5mM〜約200mMの濃度の緩衝液が存在する。特定の実施形態において、約20mM〜約100mMの濃度の緩衝液が存在する。1つの実施形態において、緩衝液は、わずかに酸性pHである酢酸塩またはクエン酸塩のような緩衝液である。1つの実施形態において、緩衝液は、約4.5〜約6.5のpHを有する酢酸ナトリウム緩衝液である。1つの実施形態において、緩衝液は、約5.0〜約8.0、又は約5.5〜約7.0のpHを有するクエン酸ナトリウム緩衝液である。
代替的な実施形態において、使用する緩衝液は、わずかに塩基性のpHであるトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、炭酸水素塩、炭酸塩またはリン酸塩である。1つの実施形態において、緩衝液は、約6.5〜約8.5、または約7.0〜約8.0のpHを有する炭酸水素ナトリウム緩衝液である。別の実施形態において、緩衝液は、約6.0〜約9.0のpHを有する二塩基性リン酸ナトリウム緩衝液である。
本明細書には、また、本明細書に記載の抗アポトーシス剤または前アポトーシス剤、および増粘剤を含む制御放出組成物またはデバイスが記載される。適切な増粘剤としては、ほんの一例として、ゲル化剤および懸濁剤が挙げられる。1つの実施形態において、粘度が高められた組成物は、緩衝液を含んでいない。他の実施形態において、粘度が高められた組成物は、薬学的に許容可能な緩衝液を含む。必要ならば、等張性を調節するために、塩化ナトリウムまたは他の等張化剤が任意に使用される。
ほんの例として、耳に許容可能な粘性剤としては、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ナトリウムコンドロイチンサルフェート、ヒアルロン酸ナトリウムが挙げられる。標的とした耳構造体と適合性の他の増粘剤は、限定されないが、以下を含む:アラビアゴム(アラビアゴム)、寒天、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、アルギン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ブラダーラック、ベントナイト、カルボマー、カラゲーニン、カルボポル、キサンタン、セルロース、微結晶性セルロース(MCC)、セラトニア、キチン、カルボキシメチル化キトサン、コンドラス、デキストロース、ファーセレラン、ゼラチン、ガハッチゴム、グアーガム、ヘクトライト、ラクトーゼ、ショ糖、バクガデキストリン、マンニトール、ソルビトール、蜂蜜、トウモロコシデンプン、小麦デンプン、米デンプン、じゃが芋デンプン、ゼラチン、アラヤゴム、キサンタン(xanthum)ゴム、トラガカントゴム、エチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、エチルメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピル・セルロース、ポリ(ヒドロキシ-エチルメタクリル酸塩)、オキシポリゼラチン、ペクチン、ポリゲリン、ポビドン、炭酸プロピレン、メチルビニルエーテル/無水マレイン酸共重合体(PVM/MA)、ポリ(メトキシエチルメタクリル酸塩)、ポリ(メトキシエトキシエチルメタクリル酸塩)、ヒドロキシプロピル・セルロース、ヒドロキシプロピルメチル-セルロース(HPMC)、ナトリウムカルボキシメチルセルロース(CMC)、二酸化ケイ素、ポリビニルピロリドン(PVP:ポビドン)、スプレンダ(登録商標)、(デキストロース、バクガデキストリンおよびスクラロース)またはそれらの組み合わせ。特定の実施形態において、粘度を高める賦形剤は、MCCとCMCを組み合わせたものである。別の実施形態において、増粘剤は、カルボキシメチル化キトサンまたはキチンとアルギン酸塩を組み合わせたものである。キチンおよびアルギン酸塩を、本明細書に開示の抗アポトーシス剤または前アポトーシス剤と組み合わせると、御放出組成物として働き、組成物からの抗アポトーシス剤または前アポトーシス剤の拡散を制限する。さらに、カルボキシメチル化キトサンとアルギン酸塩を組み合わせると、任意に、正円窓膜を介しての抗アポトーシス剤または前アポトーシス剤の透過性を増やすのに役立つ。
ある実施形態において、粘度が高められた組成物は、約0.1mM〜約100mMの抗アポトーシス剤または前アポトーシス剤、薬学的に許容可能な粘性剤、注射用の水を含み、水中の粘性剤の濃度は、粘度が高められた組成物が、約100〜約100,000cPの最終粘度を与えるのに十分である。特定の実施形態において、ゲルの粘度は、約100〜約50,000cP、約100cP〜約1,000cP、約500cP〜約1500cP、約1000cP〜約3000cP、約2000cP〜約8,000cP、約4,000cP〜約50,000cP、約10,000cP〜約500,000cP、約15,000cP〜約1,000,000cPの範囲である。他の実施形態において、さらにより粘度が高い媒体が望ましい場合、生体適合性ゲルは、抗アポトーシス剤または前アポトーシス剤の重量の、少なくとも約35%、少なくとも約45%、少なくとも約55%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、または少なくとも約80%等を含む。非常に濃縮されたサンプルでは、生体適合性の粘度が高められた組成物は、抗アポトーシス剤または前アポトーシス剤の重量の、少なくとも約25%、少なくとも約35%、少なくとも約45%、少なくとも約55%、少なくとも約65%、少なくとも約75%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、又は少なくとも約95%を含む。
いくつかの実施形態において、本明細書に提示されるゲル組成物の粘度は、任意の記載した手段で測定される。例えば、いくつかの実施形態において、LVDV‐II+CP Cone PlateViscometerおよびCone Spindle CPE‐40が、本明細書に記載のゲル組成物の粘度を算出するために使用される。他の実施形態において、Brookfield(スピンドルおよびカップ)粘度計が、本明細書に記載のゲル組成物の粘度を算出するために使用される。いくつかの実施形態において、本明細書で参照される粘度範囲は、室温で測定される。他の実施形態において、本明細書で参照される粘度範囲は、体温(例えば、健康なヒトの平均体温)で測定される。
1つの実施形態において、薬学的に許容可能な粘度が高められた耳に許容可能な組成物は、少なくとも1つの抗アポトーシス剤または前アポトーシス剤および少なくとも1つのゲル化剤を含む。ゲル組成物の調製に使用するのに適切なゲル化剤としては、限定されないが、セルロース、セルロース誘導体、セルロースエーテル(例えば、カルボキシメチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース)、グアーゴム、キサンタンゴム、ローカストビーンゴム、アルギン酸塩(例えば、アルギン酸)、ケイ酸塩、デンプン、トラガカント、カルボキシビニルポリマー、カラギーナン、パラフィン、ペトロラタム、およびこれらの任意の組み合わせまたは混合物が挙げられる。いくつかの他の実施形態において、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(Methocel(登録商標))は、ゲル化剤として使用される。特定の実施形態において、本明細書に記載の増粘剤は、また、本明細書に提示されるゲル組成物のためのゲル化剤として利用される。
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の耳の治療薬剤は、耳に許容可能なペイントとして調合される。本明細書で使用される場合、ペイント(塗膜形成要素としても知られている)は、溶媒、モノマーまたはポリマー、活性薬剤および任意に1以上の薬学的に許容可能な賦形剤から成る溶液である。組織への適用の後、溶媒は蒸発して、後に、モノマーまたはポリマー、および活性薬剤から成る薄いコーティングを残す。コーティングは、活性薬剤を保護し、それを適用部位で固定化された状態に維持する。このことで、失われる活性薬剤の量は減り、それと対照的に、被験体に送達される量は増加する。限定しない例として、ペイントは、コロジオン(例えば弾性コロジオン、USP)、および糖類シロキサン共重合体および架橋剤を含む溶液を含む。コロジオンは、ピロキシリン(ニトロセルロース)を含むエチルエーテル/エタノール溶液である。適用の後、エチルエーテル/エタノール溶液は、ピロキシリンの薄膜を残して蒸発する。糖類シロキサン共重合体を含む溶液において、糖類シロキサン共重合体は、溶媒の蒸発が糖類シロキサン共重合体の架橋を始めた後、コーティングを形成する。ペイントに関するさらなる開示については、Remington:The Science and Practice of Pharmacy(Lippincott,Williams & Wilkinsによる出版)を参照:これは、この主題に関して、本明細書で組み入れられる。本明細書で使用のために予期されるペイントは、耳を介する圧縮波の伝播と干渉しないように柔軟である。さらに、ペイントは、液体(つまり溶液、懸濁液またはエマルジョン)、半固体(つまり、ゲル、フォーム、ペーストまたはゼリー)またはエアロゾルとして適用され得る。
いくつかの実施形態において、本明細書に開示の耳の治療薬剤は制御放出フォームとして調合される。本明細書に開示の組成物で使用される適切なフォーム状担体の例は、制限されないが、以下を含む:アルギン酸塩およびその誘導体、カルボキシメチルセルロースおよびその誘導体、コラーゲン、例えば、デキストラン、デキストラン誘導体、ペクチン、デンプン、さらなるカルボキシル基および/またはカルボキサミド基を有している、及び/又は、親水性の側鎖を有しているデンプンのような加工デンプン、セルロースおよびそれらの誘導体、寒天およびポリアクリルアミドで安定させた寒天のようなその誘導体を含む多糖、ポリエチレンオキシド、グリコールメタクリル酸塩、ゼラチン、キサンタン(xanthum)のようなゴム、グアー、カラヤ、ゲラン、アラビアアカシア、トラガカントゴムおよびローカストビーンガム、あるいはそれらの組み合わせ。前述の担体の塩(例えばアルギン酸ナトリウム)もまた適切である。組成物は、任意にさらに起泡剤を含み、それは、界面活性剤または外部推進薬を含むフォームの形成を促進する。適切な起泡剤の例は、セトリミド、レシチン、石鹸、シリコーンなどを含む。また、Tween(登録商標)のような市販の界面活性剤もまた適切である。
いくつかの実施形態において、他のゲル組成物は、使用される特定の抗アポトーシス剤または前アポトーシス剤、他の医薬品または賦形剤/添加剤によっては有用であり、そのため、本開示の範囲内に入ると考えられる。例えば、他の市販のグリセリン系ゲル、グリセリンから誘導される化合物、複合されたゲルまたは架橋されたゲル、マトリックス、ハイドロゲル、ポリマー、同様に、ゼラチンおよびゼラチン誘導体、アルギン酸塩、アルギン酸塩系ゲル、さらに、種々の天然および合成のハイドロゲルおよびハイドロゲルから誘導された化合物は、すべて、本明細書に記載の抗アポトーシス剤または前アポトーシス剤の組成物において有用であると予想される。いくつかの実施形態において、耳に許容可能なゲル剤は、限定されないが、以下を含む:アルギン酸塩ヒドロゲルSAF(登録商標)‐Gel(ConvaTec、Princeton、N.J.)、Duoderm(登録商標)Hydroactive Gel(ConvaTec)、Nu‐gel(登録商標)(Johnson&Johnson Medical、Arlington、Tex.);Carrasyn(登録商標)(V)Acemannan Hydrogel(Carrington Laboratories,Inc.、Irving,Tex.);グリセリン・ゲルElta(登録商標)Hydrogel(Swiss‐American Products,Inc.、Dallas、Tex.)およびK‐Y(登録商標)Sterile(Johnson & Johnson)。さらなる実施形態において、生分解性の生体適合性ゲルは、また、本明細書に開示され記載される耳に許容可能な組成物に存在する化合物を表している。
哺乳動物に投与するために、およびヒトに投与するために処方された組成物のために開発されたいくつかの組成物において、耳に許容可能なゲルは、実質的に重量全体の組成物を含む。他の実施形態において、耳に許容可能なゲルは、組成物の重量の約98%、または約99%も含まれる。耳に許容可能なゲルは、実質的に液体を含まないか、実質的に粘性の組成物が必要な場合に望ましい。さらなる実施形態において、粘性が少し低いか、またはわずかに流動性の高い耳に許容可能な医薬ゲル組成物が望ましい場合、組成物の生体適合性ゲル状組成物部分は、化合物の、少なくとも約50重量%、少なくとも約60重量%、少なくとも約70重量%、または少なくとも約80重量%、または90重量%を含む。これらの範囲内にある中間の整数はすべて、本開示の範囲内にあることが想定され、いくつかの代替的な実施形態において、さらにより流動性の(その結果、粘性がより低い)耳に許容可能なゲル組成物が処方され、例えば、混合物のゲル成分またはマトリックス成分は、組成物の約50重量%を超えない量で、約40重量%を超えない量で、約30重量%を超えない量で、または約15重量%を超えない量で、または約20重量%を超えない量で含まれる。
耳に許容可能な懸濁剤
1つの実施形態において、少なくとも1つの抗アポトーシス剤または前アポトーシス剤は、組成物が少なくとも1つの懸濁剤をさらに含む、薬学的に許容可能な増強された粘性組成物に含まれ、そこでは、懸濁剤は、組成物に制御放出特性を与えるのを助ける。いくつかの実施形態において、懸濁剤は、また、耳に許容可能なアポトーシス調節組成物と組成物の粘性を増加させる役目をする。
懸濁剤は、ほんの一例として、以下を含む:ポリビニルピロリドン(例えばポリビニルピロリドンK12、ポリビニルピロリドンK17、ポリビニルピロリドンK25、ポリビニルピロリドンK30)、ビニルピロリドン/ビニルアセテートコポリマー(S630)、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(ヒプロメロース)、ヒドロキシメチルセルロースアセテートステアレート、ポリソルベート80、ヒドロキシエチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ゴム(例えば、トラガカントゴム、アラビアゴム、グアーガム、キサンタンガムを含むキサンタンなど)、砂糖、セルロース化合物(例えばナトリウムカルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロースなど)、ポリソルベート80、アルギン酸ナトリウム、ポリオキシエチレン硬化ソルビタンモノラウリン酸、ポリオキシエチレン硬化ソルビタンモノラウリン酸、ポビドンなど。いくつかの実施形態において、有用な水溶性懸濁液は、懸濁剤として1以上のポリマーを含む。有用なポリマーは、セルロースポリマー(例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース)などの水溶性ポリマー、および、架橋カルボキシル含有ポリマーなどの非水溶性ポリマーを含む。
1つの実施形態において、現在の開示は、ヒドロキシエチルセルロース・ゲル中に治療上有効な量の抗アポトーシス剤または前アポトーシス剤を含む耳に許容可能なゲル状組成物を提供する。ヒドロキシエチルセルロース(HEC)は、水または水性の緩衝液の中で、所望の粘性(一般に、約0.2〜約10%のHECに対応して、約200cps〜約30,000cps)を与えるように再構成される乾燥粉末として得られる。1つの実施形態において、HECの濃度は、約1%〜約15%、約1%〜約2%、または約1.5%〜約2%の間である。
他の実施形態において、ゲル組成物及び粘度を強化した組成物を含む耳に許容可能な組成物は、賦形剤、他の薬剤または医薬薬剤、担体、防腐剤、安定剤、湿潤剤、乳化剤などのアジュバント、溶解促進剤、塩、可溶化剤、消泡剤、抗酸化剤、分散剤、湿潤剤、界面活性剤またはそれらの組み合わせをさらに含む。
耳に許容可能な化学放射線根治ゲル
他の実施形態において、ゲルは、化学放射線根治ゲルであり、標的とする耳構造体への、またはその近くへの投与、化学放射線(または、紫外線、可視光線または赤外線を含む光)の使用の後、所望のゲル特性が形成される。ほんの一例として、ファイバーオプティクスは、所望のゲル特性を形成するように化学放射線を提供するために使用される。いくつかの実施形態において、ファイバーオプティクスとゲル投与デバイスは、単一のユニットを形成する。他の実施形態において、ファイバーオプティクスとゲル投与デバイスは別々に提供される。
耳に許容可能な溶媒放出ゲル
いくつかの実施形態において、ゲルは、標的とされた耳構造体へまたはその近くへ投与した後、所望のゲル特性が形成されるように、溶媒放出ゲルであり、そのことによって、注入された組成物中で溶媒としてゲルを拡散させ、所望のゲル特性を有するゲルが形成される。例えば、ショ糖酢酸塩イソブチラート、薬学的に許容可能な溶媒、1以上の添加物、および抗アポトーシス剤または前アポトーシス剤を含む組成物は、正円窓膜に、またはその近くに投与され:注入された組成物からの溶媒の拡散は、所望のゲル特性があるデポー剤を提供する。例えば、溶剤が注入された組成物から急速に拡散する場合、水溶性溶媒の使用は高粘度のデポー剤を提供する。他方では、疎水性の溶剤(例えば、安息香酸ベンジル)の使用は、それほど粘り気のないデポー剤を提供する。耳に許容可能な溶媒放出ゲル組成物の1つの例は、DURECT Corporationによって売られたSABER(商標)Delivery Systemである。
耳に許容可能なインサイツ形成海綿状物質
内耳または中耳においてインサイツで形成された海綿状物質の使用もまた、本実施形態の範囲内で予期される。いくつかの実施形態において、海綿状物質は、ヒアルロン酸またはその誘導体から形成される。海綿状物質は、所望の抗アポトーシス剤または前アポトーシス剤をしみ込ませられ、内耳内で抗アポトーシス剤または前アポトーシス剤の制御放出を提供するように、内耳に、または、内耳へ抗アポトーシス剤または前アポトーシス剤の制御放出を提供するように、正円窓膜に接して置かれる。いくつかの実施形態において、海綿状物質は、生分解性である。
正円窓膜粘膜接着性物質
本明細書に開示の抗アポトーシス剤または前アポトーシス剤および組成物およびデバイスを備えた正円窓膜粘膜接着性物質の添加も、また、実施形態の範囲内であることが想定される。「粘膜接着」という用語は、生体膜のムチン層(例えば、3層の正円窓膜の外側の膜)に結合する物質に使用される。正円窓膜の粘膜接着性ポリマーとしての機能をはたすために、ポリマーはいくつかの一般的な物理化学的特徴を有しており、このような特徴は、例えば、多くの水素結合形成基との顕著なアニオン親水性、濡れた粘液/粘膜組織表面に適した表面特性、または粘液の網目を透過するのに十分な可撓性などである。
耳に許容可能な組成物と共に使用される正円窓膜の粘膜接着剤としては、限定されないが、以下を含む:少なくとも1つのか陽性のポリビニピロリドンポリマー(PVP);水膨潤性であるが、非水溶性の、繊維状の架橋カルボキシ官能化ポリマー;架橋ポリ(アクリル酸)(例えば、カルボポール(登録商標)947P);カルボマーホモポリマー;カルボマーコポリマー;親水性の多糖ゴム、マルトデキストリン、架橋したアルギネートゴムのゲル(alignate gum gel)、水分散性のポリカルボキシル化ビニルポリマー、二酸化チタン、二酸化ケイ素、および粘土からなる群から選択される少なくとも2つの粒子状物質成分、またはそれらの混合物が挙げられる。正円窓膜の粘膜接着剤は、任意に、耳に許容可能な粘度を高める賦形剤と組み合わせて用いるか、または単独で用い、組成物と、標的とする耳要素の粘膜層との相互作用を高める。ある非限定的な例では、粘膜接着剤は、マルトデキストリンおよび/またはアルギネートゴムである。使用する場合、組成物に付与された正円窓膜の粘膜接着剤の性質は、有効な量の抗アポトーシス剤または前アポトーシス剤の組成物を、例えば、正円窓膜または蝸牛窓稜の粘膜層に、その粘膜をコーティングする量で送達するのに十分なレベルで、その後、組成物を、患部(ほんの一例として、内耳の前庭構造体および/または蝸牛構造体を含む)に送達する。使用された時、本明細書に提示の組成物の粘膜接着特性が決定され、この情報(本明細書に提供の他の技術と共に)を使用して、適切な量が決定される。十分な粘膜接着性を決定するための1つの方法は、限定されないが、粘膜接着性の賦形剤の不存在下、および存在下で、組成物の存在場所または保持時間の変化を測定することを含む、組成物と粘膜層との相互作用の変化をモニターすることを含む。
粘膜接着剤は、例えば、米国特許第6,638,521号、第6,562,363号、第6,509,028号、第6,348,502号、第6,319,513号、第6,306,789号、第5,814,330号および第4,900,552号に記載されており、その各々は、本明細書で、そのような開示のために参照として組み込まれる。
別の制限しない例において、粘膜接着剤は、例えば、二酸化チタン、二酸化ケイ素および粘土から選ばれた少なくとも2つの微粒子の成分であり、組成物は、投与前に任意の液体でさらに希釈されず、および二酸化ケイ素のレベルは、存在するならば、組成物の重量の約3%から約15%まである。二酸化ケイ素は、存在するならば、噴霧化された二酸化ケイ素、沈殿された二酸化ケイ素、コアセルベートされた二酸化ケイ素、ゲル二酸化ケイ素およびそれらの混合物を含む。粘土は、存在する場合、カオリン鉱物、セルペンチン無機質、スメクタイト、イライトまたはそれらの混合物を含む。例えば、粘土は、ラポナイト、ベントナイト、ヘクトライト、サポナイト、モンモリロナイトまたはそれらの混合物を含む。
1つの非限定的な実施例において、正円窓膜の粘膜接着剤は、マルトデキストリンである。マルトデキストリンは、場合により、トウモロコシ、ジャガイモ、小麦または他の植物産物由来のデンプンの加水分解によって得られる炭水化物である。マルトデキストリンは、場合により、単独で使用されるか、または他の正円窓膜の粘膜接着剤と組み合わせて使用され、本明細書に開示の組成物に粘膜接着性を付与する。1つの実施形態において、マルトデキストリンとカルボポールポリマーとの組み合わせは、本明細書に開示の組成物またはデバイスの正円窓膜の粘膜接着特性を高めるために使用される。
別の実施形態において、正円窓膜の粘膜接着剤は、アルキル-グリコシドおよび/または単糖アルキルエステルである。本明細書で使用される場合、「アルキル-グリコシド」は、任意の親水性単糖(例えば、スクロース、マルトースまたはグルコース)が、疎水性アルキルに結合した化合物を意味する。いくつかの実施形態において、正円窓膜の粘膜接着剤は、アルキル-グリコシドが、疎水性アルキル(例えば、炭素原子約6〜25個を含むアルキル)にアミド結合、アミン結合、カルバメート結合、エーテル結合、チオエーテル結合、エステル結合、チオエステル結合、グリコシド結合、チオグリコシド結合、および/またはウレイド結合によって結合した糖を含むアルキル-グリコシドである。いくつかの実施形態において、正円窓膜の粘膜接着剤は、ヘキシル-、ヘプチル-、オクチル-、ノニル-、デシル-、ウンデシル-、ドデシル-、トリデシル-、テトラデシル-、ペンタデシル-、ヘキサデシル-、ヘプタデシル-、およびオクタデシルのα-D-マルトシドまたはβ-D-マルトシド;ヘキシル-、ヘプチル-、オクチル-、ノニル-、デシル-、ウンデシル-、ドデシル-、トリデシル-、テトラデシル-、ペンタデシル-、ヘキサデシル-、ヘプタデシル-、およびオクタデシルのα-D-グルコシドまたはβ-D-グルコシド;ヘキシル-、ヘプチル-、オクチル-、ノニル-、デシル-、ウンデシル-、ドデシル-、トリデシル-、テトラデシル-、ペンタデシル-、ヘキサデシル-、ヘプタデシル-、およびオクタデシルのα-D-スクロシドまたはβ-D-スクロシド;ヘキシル-、ヘプチル-、オクチル-、ドデシル-、トリデシル-、およびテトラデシルのβ-D-チオマルトシド;ヘプチル-またはオクチル-1-チオのα-D-グルコピラノシドまたはβ-D-グルコピラノシド;アルキルチオスクロース;アルキルマルトトリオシド;スクロースβ-アミノ-アルキルエーテルの長鎖脂肪族炭酸アミド;アルキル鎖にアミド結合によって結合した、パラチノースまたはイソマルトアミンの誘導体、およびアルキル鎖に尿素によって結合したイソマルトアミン誘導体;スクロースβ-アミノ-アルキルエーテルの長鎖脂肪族炭酸ウレイド、およびスクロースβ-アミノ-アルキルエーテルの長鎖脂肪族炭酸アミドである。いくつかの実施形態において、正円窓膜の粘膜接着剤は、アルキルグリコシドが、炭素原子が9〜16個のアルキル鎖にグリコシド結合によって結合するマルトース、スクロース、グルコース、またはこれらの組み合わせである、アルキル-グリコシドである(例えば、ノニル-、デシル-、ドデシル-、およびテトラデシルのスクロシド;ノニル-、デシル-、ドデシル-、およびテトラデシルのグルコシド;ノニル-、デシル-、ドデシル-、およびテトラデシルのマルトシド)。ある実施形態において、正円窓膜の粘膜接着剤は、アルキルグリコシドが、ドデシルマルトシド、およびテトラデシルマルトシドである、アルキル-グリコシドである。
いくつかの実施形態において、正円窓膜の粘膜接着剤は、アルキル-グリコシドが、少なくとも1つのグルコースを有する二糖類であるアルキル-グリコシドである。いくつかの実施形態において、耳に許容可能な浸透促進剤は、界面活性剤が、α‐D‐グルコピラノシル‐β‐グルコピラノシド、n‐ドデシル‐4‐O‐α‐D‐グルコピラノシル‐β‐グルコピラノシド、および/またはn‐テトラデシル‐4‐O‐α‐D‐グルコピラノシル‐β‐グルコピラノシドを含む界面活性剤である。いくつかの実施形態において、正円窓膜の粘膜接着剤は、アルキル-グリコシドが、純水中または水溶液中で、約1mM未満の臨界ミセル濃度(CMC)を有する、アルキル-グリコシドである。いくつかの実施形態において、正円窓膜の粘膜接着剤は、アルキル-グリコシド内の酸素原子が、硫黄原子で置換されているアルキル-グリコシドである。いくつかの実施形態において、正円窓膜の粘膜接着剤は、アルキルグリコシドがβアノマーであるアルキル-グリコシドである。いくつかの実施形態において、正円窓膜の粘膜接着剤は、アルキルグリコシドが、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.1%、99.5%、または99.9%のβアノマーを含む、アルキル-グリコシドである。
耳に許容可能な制御放出粒子
本明細書に開示の抗アポトーシス剤または前アポトーシス剤は、抗アポトーシス剤または前アポトーシス剤の局在的な送達を促進または容易にする制御放出粒子、脂質複合体、リポソーム、ナノ粒子、微小粒子、マイクロスフィア、コアセルベート、ナノカプセル剤または他の薬剤内に任意に組み入れられる。いくつかの実施形態において、単一の増強された粘性組成物が使用され、その中には、少なくとも1つの抗アポトーシス剤または前アポトーシス剤が存在し、一方、他の実施形態において、2以上の別個の増強された粘性組成物の混合物を含む医薬組成物が使用され、その中には、少なくとも1つの抗アポトーシス剤または前アポトーシス剤が存在する。いくつかの実施形態において、ゾル、ゲル及び/又は生体適合性マトリックスの組み合わせもまた、制御放出性のアポトーシス調節組成物を提供するために使用される。いくつかの実施形態において、制御放出性のアポトーシス調節組成物は、1つ以上の薬剤によって架橋結合され、組成物の性質を改変または向上させる。
本明細書に開示の医薬組成物に関連するマイクロスフィアの例は、以下を含む:Luzzi, L. A., J. Pharm. Psy. 59:1367 (1970); 米国特許第4,530,840号; Lewis, D. H.,“Controlled−release of Bioactive Agents from Lactides/Glycolide Polymers”in Biodegradable Polymers as Drug Delivery Systems, Chasin, M. and Langer, R., eds., Marcel Decker (1990);米国特許第4,675,189号;Beck et al.,“Poly(lactic acid) and Poly(lactic acid−co−glycolic acid) Contraceptive Delivery Systems," in Long Acting Steroid Contraception, Mishell, D. R.,ed., Raven Press (1983); 米国特許第4,758,435号; 米国特許第3,773,919号; 米国特許第4,474,572号。マイクロスフィアとして形成されたタンパク質治療薬の例は、以下を含む:米国特許第6,458,387号; 米国特許第6,268,053号; 米国特許第6,090,925号; 米国特許第5,981,719号; および米国特許第5,578,709号、これらは、そのような開示のために、本明細書に組み込まれる。
マイクロスフィアは、不規則に形作られた微小粒子は可能であるが、通常、球形である。マイクロスフィアは、直径サブミクロンから1000ミクロンまでの範囲でサイズが変化しうる。本明細書に開示の耳に許容可能な組成物の用途に適しているマイクロスフィアは、直径サブミクロンから250ミクロンであり、標準ゲージ針による投与が可能である。耳に許容可能なマイクロスフィアは、注射可能な組成物で使用するのに許容可能な寸法範囲でマイクロスフィアを生産する任意の方法によって調製されている。注入は、液状組成物の投与のために使用される標準ゲージ針で任意に遂行される。
耳に許容可能な放出粒子状物質において本明細書で使用される高分子マトリックス材料の好適例は、ポリ(グリコール酸)およびポリ‐d,l‐乳酸、ポリ‐l‐乳酸、先述のもののコポリマー、ポリ(脂肪族カルボン酸)、コポリオキサレート、ポリカプロラクトン、ポリジオキサノン、ポリ(オルロカーボネート)、ポリ(アセタール)、ポリ(乳酸カプロラクトン)、ポリオルトエステル、ポリ(グリコール酸カプロラクトン)、ポリジオキサノン(polydioxonene)、ポリ無水物、ポリホスファゼン(polyphosphazines)、および、アルブミン、カゼインおよびグリセロールモノステアラートおよびジステアラートなどのいくつかのロウを含む、天然ポリマーが挙げられる。様々な市販のポリ(ラクチド‐co‐グリコリド材料(PLGA)は、本明細書に開示の方法の中で随意に使用される。例えば、ポリ(d,l‐ラクチド‐co‐グリコール酸)は、Boehringer−Ingelheimから、RESOMER RG 503として市販で入手可能である。この生成物は、50%のラクチドと50%のグリコリドのモル百分率の組成物である。これらのコポリマーは、幅広い範囲の分子量およびグリコール酸に対する乳酸の比率率において入手可能である。1つの実施形態は、ポリマー・ポリ(d,‐ラクチド‐co‐グリコリド)の使用を含む。そのようなコポリマーにおいてグリコリドに対するラクチドの分子比は、約95:5から約50:50の範囲を含む。
高分子マトリックス材料の分子量は、ある程度重要である。分子量は、それが良好なポリマー・コーティングを形成するように、つまり、ポリマーはよい塗膜形成要素となるように、十分に高くあるべきである。通常、良好な分子量は、5,000〜500,000のドルトンの範囲の中である。ポリマーの分子量は、また、分子量がポリマーの生分解速度に影響を及ぼすという観点から重要である。薬物放出の拡散機構のために、薬の全部が微小粒子から放出されるまで、ポリマーは完全なままであるべきであり、その後、分解されるべきである。薬物はまた、重合体の賦形剤のバイオイロードゥ(bioerodes)として微小粒子から放出される。重合体材の適切な選択によって、結果できるマイクロスフィアが、拡散放出と生分解放出との両方の性質を示すように、マイクロスフィア組成物が形成される。これは、多相放出パターンを与えるのに役立つ。
化合物をマイクロスフィアにカプセル化する様々な方法が知られている。これらの方法では、抗アポトーシス剤または前アポトーシス剤は、通常、壁形成材料を含有する溶媒中で、攪拌器(stirrer)、攪拌器(agitator)、または他の動力学的な混合技術を用いて、分散または乳化される。それから、溶媒はマイクロスフィアから除去され、その後、マイクロスフィア生成物が得られる。
1つの実施形態において、制御放出アポトーシス組成物は、抗アポトーシス剤または前アポトーシス剤および/または他の医薬品のエチレン酢酸ビニルコポリマーマトリクスへの取り込みを介して作られる(米国特許第6,083,534号を参照。この文献は開示目的のために本明細書に組み込まれる)。別の実施形態において、抗アポトーシス剤または前アポトーシス剤は、ポリ(乳酸‐グリコール酸)またはポリ−L−乳酸マイクロスフィアに取り込まれる。同上(Id.)。さらに別の実施形態において、抗アポトーシス剤または前アポトーシス剤は、アルギン酸マイクロスフィアにカプセル化される(米国特許第6,036,978号を参照。この文献は開示目的のために本明細書に組み込まれる)。抗アポトーシス剤または前アポトーシス剤または組成物をカプセル化するのに生体適合性のメタクリル酸ベースのポリマーは、本明細書で開示される組成物および方法で任意に用いられる。幅広いメタクリル酸ベースのポリマー系は、Evonikから市販されているEUDRAGITポリマーなどのように市販されている。メタクリル酸ポリマーの1つの有用な態様は、組成物の特性が、様々なコポリマーを取り込むことによって変化するということである。例えば、ポリ(アクリル酸−co−メチルメタクリル酸)微小粒子は、ポリ(アクリル酸)系上の水素中のカルボン酸基がムチンと水素結合を形成すると、強度の粘膜付着特性を示す(Park et al, Pharm. Res.(1987)4(6):457−464)。アクリル酸とメチルメタクリル酸モノマーの間の割合の変動は、コポリマーの特性を調節するのに役立つ。メタクリル酸ベースの微小粒子は、タンパク質の治療組成物にも用いられてきた(Naha et al,Journal of Microencapsulation 04 February, 2008 (オンライン公開))。1つの実施形態において、本明細書に記載される高粘度の耳に許容可能な組成物は、アポトーシス調節マイクロスフィアを含み、マイクロスフィアはメタクリル酸ポリマーまたはコポリマーから形成される。さらなる実施形態において、本明細書に記載される高粘度製剤は、アポトーシス調節マイクロスフィアを含み、マイクロスフィアは粘膜付着性である。他の制御放出系は、ポリマーの材料またはマトリクスの、抗アポトーシス剤または前アポトーシス剤を含有する固形若しくは中空のスフィアへの取り込みまたは沈着を含み、本明細書で開示される実施形態内でも明示的に検討される。抗アポトーシス剤または前アポトーシス剤の活性を著しく失うことなく利用可能な制御放出系のタイプは、本明細書で開示される教示、例、および原理を用いて決定される。
薬剤調製に関する従来のマイクロカプセル化工程の例は、米国特許第3,737,337号に示され、この文献は開示目的のために参照することにより、本明細書に組み込まれる。カプセル化される若しくは埋め込まれるアポトーシス調節物質は、(分散の準備段階で)振動器および高速攪拌器などを含む従来の混合器を用いて、ポリマーの有機溶液(相A)中に溶解または分散される。溶液または懸濁液中にコア材料を含有する相(A)の分散は、従来の混合器(高速混合器、振動混合器、または、スプレーノズルでさえ)を再度用いて、水相(B)中で行われ、その場合、マイクロスフィアの粒子の大きさは、相(A)の濃度だけではなく、エマルカート(emulsate)またはマイクロスフィアの大きさによって決定される。抗アポトーシス剤または前アポトーシス剤のマイクロカプセル化のための従来の技術を用いて、活性薬剤およびポリマーを含有する溶媒が、往々にして比較的長時間、攪拌、かき混ぜ、振動、または、他の動力学的な混合技術によって、不混和溶液中で乳化または分散すると、マイクロスフィアが生じる。
マイクロスフィアを構築するための従来の方法は、米国特許第4,389,330号および米国特許第4,530,840号に記載され、これらの文献は参照することにより本明細書に組み込まれる。所望の薬剤は、適切な溶媒中に溶解または分散する。薬剤を含有する培地に、所望の活性薬剤が充填された生成物を与える活性成分に相対する量でポリマーマトリクス材料を加える。任意で、マイクロスフィア生成物のすべての成分は、溶媒培地中で一緒に混ぜ合わせることが可能である。薬剤およびポリマーマトリクス材料に適切な溶媒は、アセトン、クロロホルム、塩化メチレンのようなハロゲン化炭化水素、芳香族炭化水素化合物、ハロゲン化芳香族炭化水素化合物、環状エーテル、アルコール、酢酸エチルなどの有機溶媒を含む。
溶媒中の成分の混合物は、連続相の処理培地で乳化され;この連続相培地は、指示された成分を含有する微小滴の分散が連続相培地で形成されるような培地である。必然的に、連続相処理培地および有機溶媒は不混和でなければならず、キシレンおよびトルエン、ならびに、合成油および天然油などの非水系の培地が使用可能ではあるが、もっとも一般的なものは水である。通常、界面活性剤は、微小粒子が凝集するのを防止し、且つ、エマルジョンの中の溶媒微小滴のサイズを制御するために、連続相処理培地に加えられる。好まれる界面活性剤の分散培地の組み合わせは、水混合物中に1から10重量%のポリ(ビニルアルコール)である。分散は、その混合された物質の機械的攪拌によって形成される。エマルジョンはまた、連続相処理培地に、活性薬剤の壁を形成する材料溶液を少滴加えることによって任意に形成される。エマルジョン形成中の温度は、特に重要ではないが、微粒子のサイズと性質および連続相中の薬剤の可溶性に影響を与える。連続相にできるだけ薬剤がないことが望ましい。さらに、使用される溶媒と連続相処理培地に依存して、温度は低すぎてはならず、さもなければ、溶媒と処理培地が凝固したり、若しくは処理培地が実用の目的にとって粘りがありすぎたりし、又、高すぎると、処理培地が蒸発したり、若しくは、液体処理培地が維持されなくなる。さらに、培地の温度は、マイクロスフィアに取り込まれている特定の薬剤の安定性が不利に影響を受けるくらい高くてはいけない。従って、分散工程は、安定な処理状態を保つ任意の温度で行われ、好ましい温度は、選択された薬剤と賦形剤に依存して、約5℃から60℃である。
形成された分散は、安定なエマルジョンであり、この分散から、有機溶媒の不混和液体が、溶媒除去工程の第1工程で、任意に部分的に除去される。溶媒は、減圧の適用、又は両方の組み合わせのような一般的な技術によって除去される。微少滴から溶媒を蒸発させるために利用される温度は、重要ではないが、与えられた微小粒子の調製に使用される抗アポトーシス剤または前アポトーシス剤を分解するので、それほど高すぎてはならなず、また、壁を形成する材料に欠陥を引起こすような急な速度で溶媒を蒸発させるほど高くてはならない。通常、溶媒の5〜75%が、第1の溶媒除去工程で除去される。
第1工程の後、溶媒不混和液体培地中の分散した微小粒子は、任意の適切な分離方法によって液体培地から分離される。従って、例えば、液体は、マイクロスフィアからデカントされ、又は、微粒子の懸濁液をろ過させる。分離技術のさらに別の様々な組み合わせが、所望ならば、使用される。
連続相処理培地からのマイクロスフィアの分離の後、マイクロスフィア中の溶媒の残りは、抽出によって除去される。この段階で、マイクロスフィアは、界面活性剤と共に又はなしで、第1工程において使用された同じ連続相処理培地の中に、又は別の液体の中に、懸濁される。抽出培地は、マイクロスフィアから溶媒を除去し、そしてまた、マイクロスフィアを溶解しない。抽出の間、溶解された溶媒を含む抽出培地は、任意に除去され、新しい抽出培地と入れ替えられる。これは、継続的に最も良く行われる。与えられた工程の抽出培地の補充速度は、変わり易く、工程が行われている時に決定され、従って、速度に対する正確な限定は、前もって決定すべきではない。溶媒の大部分がマイクロスフィアから除去されてしまった後に、マイクロスフィアは、空気にさらすことによって、又は真空乾燥や乾燥剤を通しての乾燥などのような、他の従来の乾燥技術によって乾燥される。この工程は、80重量%以下の、好ましくは60重量%以下のコア充填(core loadings)が得られるので、抗アポトーシス剤または前アポトーシス剤をカプセル化する際に効果的である。
代替的に、抗アポトーシス剤または前アポトーシス剤を含む制御放出マイクロスフィアは、スタティックミキサーの使用によって調製される。静的な又は静止型のミキサーは、たくさんの静的に混和された薬剤を受け入れる導管又はチューブから成る。スタティックミキサーは、比較的短い長さの導管の中で、かつ、比較的短時間で、均質な混合を提供する。スタティックミキサーを用いると、ブレードのようなミキサーのある部分が液体を通って動くのではなく、液体がミキサーを通って動く。
スタティックミキサーは、エマルジョンを作るために使用される。エマルジョンを形成するためにスタティックミキサーを使用する場合、混合される様々な溶液や相の密度や粘度、相の容積比、相間の界面張力、スタティックミキサーのパラメーター(導管の直径;ミキシング要素の長さ;ミキシング要素の数)、およびスタティックミキサーを介しての線速度を含むいくつかの要素がエマルジョンの粒径を決定する。温度は、密度や、粘度、および界面張力に影響するので、変化可能である。制御する変数は、線速度や、ずり速度(sheer rate)、およびスタティックミキサーのユニット当たりの圧力降下である。
スタティックミキサー工程を用いて抗アポトーシス剤または前アポトーシス剤を含むマイクロスフィアを形成するために、有機相と水相が組み合わされる。有機相と水相は、ほとんど又は実質的に、不混和であり、水相は、エマルジョンの連続相を形成している。有機相は、壁を形成するポリマー又はポリマーマトリクス材料のみでなく、抗アポトーシス剤または前アポトーシス剤を含む。有機相は、有機溶媒又は他の適切な溶媒に抗アポトーシス剤または前アポトーシス剤を溶解させることによって、又は、抗アポトーシス剤または前アポトーシス剤を含む分散液又はエマルジョンを形成することによって、調製される。有機相と水相は、その2つの相が、スタティックミキサーを介して同時に流れるようにポンプで送り込まれ、それによって、ポリマーマトリクス材料内にカプセル化された抗アポトーシス剤または前アポトーシス剤を含むマイクロスフィアを含むエマルジョンが形成される。有機相と水相は、有機溶媒を抽出又は除去するために、大量のクエンチ液(quench liquid)の中にスタティックミキサーを通してポンプで送り込まれる。有機溶媒は、クエンチ液の中で洗浄又は攪拌されている間に、マイクロスフィアから任意に除去される。マイクロスフィアは、クエンチ液の中で洗浄された後、ふるいによって分離され、乾燥される。
1つの実施形態において、マイクロスフィアは、スタティックミキサーを用いて調製される。その工程は、上論の溶媒抽出技術に限定されないが、他のカプセル化技術と共に使用される。例えば、その工程は、相分離カプセル化技術と共に使用される。そうするために、ポリマー溶液の中に懸濁又は分散する抗アポトーシス剤または前アポトーシス剤を含む有機相が、調製される。非溶剤型の第2相は、ポリマーおよび活性薬剤に対する溶媒を含まない。好ましい非溶剤型の第2相は、シリコンオイルである。有機相と非溶剤型の相は、ヘプタンのような非溶剤型のクエンチ液の中に、スタティックミキサーを通じてポンプで送り込まれる。半固体の粒子は、クエンチされ、完全に固化され、そして洗浄される。マイクロカプセル化の工程はまた、スプレー乾燥、溶媒蒸留、蒸留と抽出の組み合わせ、および溶解押出を含む。
別の実施形態において、マイクロカプセル化工程は、単一の溶媒とのスタティックミキサーの使用を含む。この工程は、米国特許出願第08/338,805号に詳細に記載されており、本明細書に、開示目的のために参照として取り込まれている。代替的な工程は、共溶媒とのスタティックミキサーの使用を含む。この工程では、生分解性ポリマー結合剤と活性な医薬品を含む生分解性マイクロスフィアが調製され、これは、ハロゲン化炭化水素を含まない、少なくとも2つの実質的に無毒の溶媒の混合物を含み、薬剤とポリマーの両方を溶解させる。溶解した薬剤とポリマーを含む溶媒の混合物は、少滴を形成するために水溶性の溶液中に分散される。それから、結果できたエマルジョンは、好ましくは、混合物に少なくとも1つの溶媒を含む水性抽出培地に加えられ、それによって、各溶媒の抽出速度は制御され、その上、薬学的に活性な薬剤を含む生分解性のマイクロスフィアが形成される。その工程は、水中の1つの溶媒の溶解性は、他と実質的に独立しており、溶媒選択が増えるために、より少ない抽出培地が必要とされるという、特に抽出が困難な溶媒にとって、有利な点を有する。
ナノ粒子はまた、本明細書に開示の抗アポトーシス剤または前アポトーシス剤と共に使用するために熟慮される。ナノ粒子は、約100nmまたはそれ以下のサイズの材料構造である。溶媒との粒子表面の相互作用が密度の違いを克服するほど十分強いことから、医薬組成物におけるナノ粒子の使用の1つは、懸濁液の形成である。ナノ粒子分散液は、ナノ粒子がろ過滅菌を受けるのに十分小さいので、無菌化される(例えば、米国特許第 6,139,870号参照、これは、開示目的のために参照として本明細書に組み込まれる)。ナノ粒子は、界面活性剤、リン脂質、若しくは脂肪酸の水溶液又は水溶性分散液に乳化した、少なくとも1つの疎水性で、水に溶けない、そして水に分散しない(water-indispersible)ポリマー又はコポリマーを含む。抗アポトーシス剤または前アポトーシス剤は、ナノ粒子の中に、ポリマー又はコポリマーと共に任意に導入される。
脂質ナノ粒子は、制御放出構造として作用し、その上、正円窓膜を貫通し、そして内耳の標的に到達するために、本明細書でまた熟考されている。脂質ナノ粒子は、カプリン酸およびカプリル酸の中性脂肪(Labrafac WL1349;平均分子量(avg.mw)512)、大豆レシチン(LIPOID(登録商標)S75−3; 69%の ホズファチジルコリンと他のリン脂質)、界面活性剤(例えば、SOLUTOL HS15)、ポリエチレングリコール660ヒドロキシステアレートおよび遊離したポリエチレングリコール660;NaClと水を乳化させることによって形成される。その混合物は、室温で攪拌され、水中にオイルエマルジョンを与える。磁気攪拌のもと、4℃/分の速度で徐々に加熱した後、70℃近くで短期間の透明化が起こり、そして、85℃で逆相(オイルの中に水の小滴)が得られる。それから、冷却と加熱が、85℃と60℃の間で、4 ℃/分の速度で3サイクル行われ、そして0℃近くの温度で冷たい水の中で急速に希釈され、ナノカプセルの懸濁液が生成される。抗アポトーシス剤または前アポトーシス剤をカプセル化するために、冷たい水で希釈する直前に、薬剤が加えられる。
いくつかの実施形態において、抗アポトーシス剤または前アポトーシス剤は、耳の活性薬剤の水溶性ミセル溶液と共に、90分間インキュベートすることによって脂質ナノ粒子に導入される。懸濁液は、その後、15分毎にボルテックスされ(vortexed)、それから、1分間冷水浴(ice bath)でクエンチされる。
適切な耳に許容可能な界面活性剤は、ほんの一例として、コール酸又はタウロコール酸の塩である。タウロコール酸は、コール酸とタウリンから形成される複合体であり、十分代謝可能なスルホン酸の界面活性剤である。タウロコール酸のアナログであるタウロウルソデオキシコール酸(TUDCA)は、自然に形成される胆汁酸であり、タウリンとウルソデオキシコール酸(UDCA)の複合体である。他の自然に形成される陰イオン性の界面活性剤(例えば、硫酸ガラクトセレブロシド)、中性の界面活性剤(例えば、ラクトシルセラミド)又は双性イオン性の界面活性剤(例えば、スフィンゴミエリン、ホズファチジルコリン、パルミトイルカルニチン)は、ナノ粒子を調製するために任意に使用される。
耳に許容可能なリン脂質は、例として、天然の、合成の、又は半合成のリン脂質;例えば、精製した卵又は大豆レシチン(レシチンE100、レシチンE80およびホスホリポン、例えば、ホスホリポン 90)、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルグリセロール、ジパルミトイルホズファチジルコリン、ジパルミトイルグリセロホズファチジルコリン、ジミリストイルホズファチジルコリン、ジステアロイルホズファチジルコリンおよびホスファチジン酸から選ばれ、又はそれらの混合物は特によく使用される。
耳に許容可能な組成物と共に使用するための脂肪酸は、例として、ラウリン酸、ミリスチン酸(mysristic acid)、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、アラギジン酸、ベヘン酸、オレイン酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、リノール酸、α−リノール酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、エルカ酸、ドコサヘキサエン酸などから選ばれる。
適切な耳に許容可能な界面活性剤は、既知の有機および無機の薬学的賦形剤から選択される。そのような賦形剤は、様々なポリマー、低分子量のオリゴマー、天然物、および界面活性剤を含む。好ましい界面改質剤は、非イオン性、およびイオン性の界面活性剤を含む。2つ又はそれ以上の表面改質剤は、組み合わされて使用され得る。
耳に許容可能な界面活性剤の代表例は、セチルピリジニウムクロライド、 ゼラチン、カゼイン、レシチン(リン脂質)、デキストラン、グリセロール、アカシアガム、コレステロール、トラガント、ステアリン酸、ステアリン酸カルシウム、グリセロールモノステアレート、セトステアリルアルコール、セトマクロゴール乳化ワックス、ソルビタンエステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル;ドデシルトリメチルアンモニウムブロミド、ポリオキシエチレンエステアレート、コロイダルシリコンジオキシド、リン酸塩、ドデシル硫酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC、HPC−SL、およびHPC−L)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース (HPMC)、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチル−セルロースフタレート、非晶性セルロース、ケイ酸マグネシウムアルミニウム、トリエタノールアミン、ポリビニルアルコール(PVA)、 ポリビニルピロリドン(PVP)、エチレンオキシドおよびホルムアルデヒドを含む、4−(1,1,3,3−(テトラメチルブチル(tetaamethylbutyl))−フェノールポリマー(チロキサポール、スペリオン(superione)、およびトリトンとしても知られる)、ポロクサマー、ポロクサミン(poloxamnines)、ジミリストイルホスファチジルグリセロールのような荷電されたリン脂質、ジオクチルスルホサクシネート(DOSS);Tetronic(登録商標)1508、スルホコハク酸ナトリウムのジアルキルエステル、Duponol P、 Tritons X−200、Crodestas F−110、p−イソノニルフェノキシポリ−(グリシドール)、Crodestas SL−40(Croda,Inc.); およびSA9OHCO、これは、C18H37CH2(CON(CH3)−CH2(CHOH)4(CH2OH)2(Eastman Kodak Co.);デカノニル−N−メチルグルカミド;n−デシルβ−D−グルコピラノシド;n−デシルβ−D−マルトピラノシド;n−ドデシルβ−D−グルコピラノシド;n−ドデシルβ−D−マルトシド;ヘプタノニル−N−メチルグルカミド;n−ヘプタル−β−D−グルコピラノシド;n−ヘプチルβ−D−チオグルコシド;n−ヘキシルβ−D−グルコピラノシド;ノナノイル−N−メチルグルカミド;n−ノイルβ−D−グルコピラノシド;オクタノニル−N−メチルグルカミド;n−オクチル−β−Dグルコピラノシド;オクチルβ−D−チオグルコピラノシド;などを含む。これらの界面活性剤のほとんどは、医薬的な賦形剤として知られており、アメリカ薬剤師会(American Pharmaceutical Association)とイギリス薬学会(Pharmaceutical Society of Great Britain)によって共同で出版された(The Pharmaceutical Press、1986)、医薬的な賦形剤のハンドブック(the Handbook of Pharmaceutical Excipeints)に詳細に記載されており、開示目的のために参照として特別に取り込まれている。
疎水性、水に不溶性、および水に非分散性のポリマー又はコポリマーは、例えば乳酸ポリマー若しくはグリコール酸ポリマーおよびそれらのコポリマー、又はポリ乳酸/ポリエチレン(若しくはポリプロピレン)オキシドコポリマー、好ましくは、1000と200,000の間の分子量であるもの、ポリヒドロキシブチル酸ポリマー、少なくとも12個の炭素原子を含む脂肪酸であるポリラクトン、又はポリ酸無水物のような生体適合性で、かつ生分解性のポリマーから選択される。
ナノ粒子は、その中に活性な有効成分と疎水性で、不水溶性で、かつ水中に分散しない(water-indispersible)ポリマーまたはコポリマーを含む不混和性の有機相が加えられる、リン脂質の水性の分散液または溶液、またはオレイン酸塩の水性の分散液または溶液から、コアセルベーションまたは溶剤の蒸発の技術によって得られ得る。その混合物は、先に乳化され、その後、均質化され、有機溶媒が蒸発され、超極小のナノ粒子の水性懸濁液が得られる。
様々な方法が実施形態の範囲内にあるアポトーシス調節ナノ粒子を作り出すために任意に利用される。これらの方法は、自由ジェット膨張(free jet expansion)、レーザー蒸散、スパークエロージョン(spark erosion)、電気爆発(electro explosion)および化学蒸着のような気化方法;機械的摩擦(mechanical attrition)(例えば、「パールミリング」テクノロジー("pearlmilling" technology)Elan Nanosystems)、超臨界CO2および溶媒置換に続く界面沈着を含む物理的方法を含む。1つの実施形態において、溶媒置換方法が使用される。この方法によって作成されるナノ粒子のサイズは、有機溶媒中のポリマーの濃度;混合速度;およびその工程で使用される界面活性剤に敏感である。連続管路攪拌装置は、小さな粒径を確保するために必要な乱流を提供される。ナノ粒子を調製するために使用される連続管路攪拌装置の1つのタイプが記載されている(Hansen et al J Phys Chem 92、2189−96、1988)。他の実施形態において、超音波装置、流水式(flow through)ホモジナイザー又は超臨界CO2装置が、ナノ粒子を調製するために使用される。
適切なナノ粒子の均質性が、直接合成によって得られれば、分子ふるいクロマトグラフィーが、それらの生成に関する他の成分を含まない、高度に均一な薬剤を含む粒子を作成するために使用される。ゲルろ過クロマトグラフィーのような分子ふるいクロマトグラフィー(SEC)技術が、粒子に結合した抗アポトーシス剤または前アポトーシス剤を、結合していないフリーな(free)抗アポトーシス剤または前アポトーシス剤または他の医薬化合物から分離させるため、またはアポトーシス調節を含むナノ粒子の適切なサイズの幅を選択するために、使用される。Superdex 200、Superose 6、Sephacryl 1000のような様々なSEC媒体が、市販されており、このような混合物のサイズを基礎とする生成のために、利用される。さらに、ナノ粒子は、遠心分離、膜ろ過によって、および、他の分子ふるい装置、架橋結合したゲル/材料、および膜の使用によって精製される。
耳に許容可能なシクロデキストリンおよび他の安定化組成物
具体的な実施形態において、耳に許容可能な組成物は、代替的にシクロデキストリンを含む。シクロデキストリンは、6、7、または8のグルコピラノース単位を含む環状オリゴ糖であり、それぞれα-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン、又はγ-シクロデキストリンと呼ばれている。シクロデキストリンは、水溶性を高める親水性の外部と、空洞を形成する疎水性の内部とを備える。水性の環境下、他の分子の疎水性部分は、しばしばシクロデキストリンの疎水性空洞に入り込み、包接化合物を形成する。加えて、シクロデキストリンはまた、疎水性空洞内部にない分子との非結合性の相互作用も可能である。シクロデキストリンは、それぞれのグルコピラノシル単位に3つの遊離水酸基、又はαシクロデキストリン上に18水酸基、β-シクロデキストリン上に21水酸基、及びγシクロデキストリ上に24水酸基を備える。1又はそれより多いこれら水酸基は、任意のいくつかの試薬と反応し、ヒドロキシプロピルエーテル、スルホン酸塩、及びスルホアルキルエーテルを含む多種多様のシクロデキストリン誘導体を形成する。β‐シクロデキストリン及びヒドロキシプロピル-β‐シクロデキストリン(HPβCD)の構造体を以下に示す。
いくつかの実施形態において、本明細書中に記載される医薬組成物におけるシクロデキストリンの使用は、薬物の溶解性を改善する。包接化合物は、増強された溶解性の多くの場合に含まれ;しかし、シクロデキストリンと、不溶性化合物の間の他の相互作用もまた溶解性を改善する。ヒドロキシプロピル‐β‐シクロデキストリン( HPβCD)は、市販で、発熱物質を含まない製品(pyrogen free product)として入手可能である。それは、水に容易に溶ける、非吸湿性の白い粉である。HPβCDは、熱的に安定しており、そして中性のPHにおいて分解しない。従って、シクロデキストリンは、組成物の中の治療薬剤または組成物の可溶性を促進する。従って、いくつかの実施形態において、シクロデキストリンは、本明細書に記載された組成物の中で耳に許容可能な抗アポトーシス剤または前アポトーシス剤の可溶性を増加するために含まれる。他の実施形態において、シクロデキストリンをさらに加えると、本明細書に記載された組成物の中では、制御放出賦形剤として働く。
ほんの一例として、使用のためのシクロデキストリン誘導体は、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリン、ヒドロキシエチルβ−シクロデキストリン、ヒドロキシプロピルγ−シクロデキストリン、硫酸β−シクロデキストリン、硫酸α−シクロデキストリン、スルホブチルエーテルβ−シクロデキストリンを含む。
本明細書で開示されている組成物及び方法の中で使用されるシクロデキストリンの濃度は、生理化学的な性質、薬物動態的な性質、副作用または有害事象、製剤濃度、又は、医薬的に活性な薬剤、又はそれらの塩若しくはプロドラッグ、または化合物における他の賦形剤の性質と関連する他の要因に従って変化する。従って、特定の実施形態において、本明細書に開示される組成物と方法に従って使用されるシクロデキストリンの濃度又は量は、必要に応じて変化する。使用される場合、抗アポトーシス剤または前アポトーシス剤の可溶性を増加させ、本明細書に記載の任意の組成物において制御放出賦形剤として機能するために必要なシクロデキストリンの量は、本明細書に記載の賦形剤、例、および技術を用いて選択される。
本明細書に開示の耳に許容可能な組成物において使用される安定剤は、例えば、脂肪酸、脂肪アルコール、アルコール、長鎖脂肪酸エステル、長鎖エーテル、親水性の脂肪酸誘導体、ポリビニルピロリドン、ポリビニルエーテル、ポリビニルアルコール、炭化水素、疎水性ポリマー、吸湿ポリマー、またはそれらの組合せを含む。いくつかの実施形態において、安定剤のアミドアナログもまた使用される。さらなる実施形態において、選択される安定剤は、組成物(例えば、オレイン酸、ワックス)の疎水性を変化させ、または組成物中の様々な成分(例えば、エタノール)の混合を改善し、組成物(例えば、PVP又はポリビニルピロリドン)中の水分レベルを制御し、相の移動度(長鎖脂肪酸、アルコール、エステル、エーテル、アミドなど、又はそれらの組合せ、ワックスなどの室温より高い融点を有する物質)を制御する。別の実施形態において、これらの安定剤のいくつかは、溶媒/共溶媒(例えばエタノール)として使用される。他の実施形態において、安定剤は、抗アポトーシス剤または前アポトーシス剤の分解を抑制するのに十分な量で存在する。このような安定剤の例としては、(a)約0.5%から約2% w/vのグリセロール、(b)約0.1%から約1% w/vのメチオニン、(c)約0.1%から約2% w/vのモノチオグリセロール、(d)約1mMから約10mMのEDTA、(e)約0.01%から約2% w/vのアスコルビン酸、(f)0.003%から約0.02% w/vのポリソルベート80、(g)0.001%から約0.05% w/vのポリソルベート20、(h)アルギニン、(i)ヘパリン、(j)デキストラン硫酸、(k)シクロデキストリン、(l)ペントサンポリサルフェート及び他のヘパリノイド、(m)マグネシウム及び亜鉛などの二価カチオン、又は(n)それらの組合せが挙げられるが、これらに限定されない。
さらなる有用な抗アポトーシス剤または前アポトーシス剤の耳に許容可能な組成物は、1以上の抗凝集性の添加剤を含み、タンパク質凝集の速度を減少させることによって抗アポトーシス剤または前アポトーシス剤の組成物の安定性を高める。選択される抗凝集性の添加剤は、抗アポトーシス剤または前アポトーシス剤、例えば抗アポトーシス剤または前アポトーシス剤の抗体、が曝露される条件の性質に依存する。例えば、攪拌及び熱的ストレスを受ける特定の組成物は、凍結乾燥及び再構成を受ける製剤と違って、異なる抗凝集性の添加剤を必要とする。有用な抗凝集性の添加剤としては、ほんの一例ではあるが、尿素、塩化グアニジン、グリシン又はアルギニンなどの単純なアミノ酸、糖、多価アルコール、ポリソルベート、ポリエチレングリコール及びデキストランなどのポリマー、アルキルグリコシドなどのアルキルサッカライド、及び界面活性剤が挙げられる。
他の有用な組成物は、求められる化学的安定性を高めるために、1以上の耳に許容可能な抗酸化剤を任意に含む。適切な抗酸化剤としては、ほんの一例として、アスコルビン酸、メチオニン、チオ硫酸ナトリウム、及び二亜硫酸ナトリウムが挙げられる。1つの実施形態において、抗酸化剤は、金属キレート剤、チオール含有化合物、及び他の一般的な安定剤から選択される。
さらに他の有用な組成物は、物理的安定性を高めるため又は他の目的のために、1以上の耳に許容可能な界面活性剤を含む。適切な非イオン性界面活性剤は、ポリオキシエチレン脂肪酸グリセリド及び植物油(例えばポリカルボキシエチレン(60)水素化ヒマシ油);及びポリオキシエチレンアルキルエーテル及びアルキルフェニルエーテル(例えばオクトキシノール10、オクトキシノール40)を含むが、これらに限定されない。
いくつかの実施形態において、本明細書に記載される耳に許容可能な医薬組成物は、化合物の分解に関して、以下の期間に亘って安定であり、その期間は、少なくとも約1日、少なくとも約2日、少なくとも約3日、少なくとも約4日、少なくとも約5日、少なくとも約6日、少なくとも約1週間、少なくとも約2週間、少なくとも約3週間、少なくとも約4週間、少なくとも約5週間、少なくとも約6週間、少なくとも約7週間、少なくとも約8週間、少なくとも約3ヶ月、少なくとも約4ヶ月、少なくとも約5ヶ月、または少なくとも約6ヶ月である。他の実施形態において、本明細書中に記載される組成物は、少なくとも約1週間の期間に亘って、化合物の分解に関して安定である。本明細書には、少なくとも約1ヶ月の期間に亘って、化合物の分解に関して安定である組成物もまた記載される。
他の実施形態において、さらなる界面活性剤(共界面活性剤(co-surfactant))及び/又は緩衝液は、本明細書に前述される1以上の薬学的に許容可能なビヒクルと組み合わされることで、界面活性剤及び/又は緩衝液は、安定のために最適なpHに生成物を維持する。適切な共界面活性剤としては、a)天然及び合成の親油性薬剤、例えば、リン脂質、コレステロール、及びコレステロール脂肪酸エステル及びそれらの誘導体;b)非イオン性界面活性剤、例えば、ポリオキシエチレン脂肪アルコールエステル、ソルビタン脂肪酸エステル(Spans)、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(例えば、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレエート(Tween 80)、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレエート(Tween 60)、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレエート(Tween 20)、及び他のTween、ソルビタンエステル、グリセロールエステル(例えば、Myrj及びグリセロールトリアセテート(トリアセチン))、ポリエチレングリコール、セチルアルコール、セトステアリルアルコール、ステアリルアルコール、ポリソルベート80、ポロクサマー、ポロキサミン、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体(例えば、Cremophor(登録商標)RH40、Cremphor A25、Cremphor A20、Cremophor(登録商標) EL)及び他のCremophor、スルホサクシネート、アルキルスルフェート(SLS);PEG‐8グリセリルカプリレート/カプレート(Labrasol)などのPEGグリセリル脂肪酸エステル、PEG‐4グリセリルカプリレート/カプレート(Labrafac Hydro WL 1219)、PEG‐32グリセリルラウレート(Gelucire 444/14)、PEG‐6グリセリルモノオレエート(Labrafil M 1944 CS)、PEG‐6グリセリルリノレエート(Labrafil M 2125 CS);プロピレングリコールラウレートなどのプロピレングリコールモノ及びジ脂肪酸エステル、プロピレングリコールカプリレート/カプレート;Brij(登録商標)700、アスコルビル-6-パルミテート、ステアリルアミン、ラウリル硫酸ナトリウム、トリイリシンオレイン酸(triiricinoleate)ポリオキシエチレングリセロール、及びそれらの任意の組合せ又は混合物、を含む、c)アニオン性界面活性剤、これは、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、スルホコハク酸ナトリウム、ジオクチル、アルギン酸ナトリウム、アルキルポリオキシエチレンスルフェート、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸トリエタノールアミン、ラウリン酸カリウム、胆汁塩、及びそれらの任意の組合せ又は混合物が挙げられるが、これらに限定されない、およびd)臭化セチルトリメチルアンモニウム、及びラウリルジメチルベンジル塩化アンモニウムのようなカチオン性界面活性剤が挙げられるが、これらに限定されない。
さらなる実施形態において、1以上の共界面活性剤が、本開示の耳に許容可能な組成物において利用される場合、それらは、例えば、薬学的に許容可能なビヒクルと組み合わされ、例えば、約0.1%から約20%の範囲、約0.5%から約10%の範囲の量で、最終組成物中に存在する。
1つの実施形態において、界面活性剤は、0から20のHLB値を有する。さらなる実施形態において、界面活性剤は、0から3、4から6、7から9、8から18、13から15、10から18のHLB値を有する。
1つの実施形態において、希釈剤はまた、より安定な環境を提供するので、抗アポトーシス剤または前アポトーシス剤または他の医薬化合物を安定化するのに使用される。緩衝された溶液中に溶解した塩(これは、pH制御又はpH維持を提供することもできる)は、希釈剤として利用され、リン酸緩衝化生理食塩水が挙げられるがこれに限定されない。他の実施形態において、ゲル組成物は、抗アポトーシス剤または前アポトーシス剤の組成物が標的とする蝸牛の部位に依存して、内リンパまたは外リンパと等張性である。等張性の組成物は、等張化剤の添加によって提供される。適切な等張化剤としては、任意の薬学的に許容可能な糖、塩、又はそれらの任意の組合せ若しくは混合物(デキストロースおよび塩化ナトリウムが挙げられるが、これらに限定されない)が挙げられるが、これらに限定されない。さらなる実施形態において、等張化剤は、約100mOsm/kgから約500mOsm/kgの量で存在する。いくつかの実施形態において、等張化剤は、約200mOsm/kg から約400mOsm/kg、約280mOsm/kgから約320mOsm/kgの量で存在する。等張化剤の量は、本明細書に記載されるように、医薬組成物の標的構造体に依存する。
有用な等張化組成物はまた、外リンパまたは内リンパにとって許容可能な範囲に組成物の浸透圧をもたらすのに必要な量の1以上の塩を含む。このような塩は、ナトリウム、カリウム、又はアンモニウムのカチオン及び塩化物、クエン酸塩、アスコルビン酸塩、ホウ酸塩、リン酸塩、炭酸水素塩、硫酸塩、チオ硫酸塩、又は亜硫酸水素塩のアニオンを有する塩を含み、適切な塩としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、チオ硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、及び硫酸アンモニウムを含む。
いくつかの実施形態において、本明細書中に開示される耳に許容可能なゲル組成物は、微生物の生長を防ぐために、代替的にまたは追加的に防腐剤を含む。本明細書中に記載される増強された粘性を有する組成物における使用のための適切な耳に許容可能な防腐剤としては、安息香酸、ホウ酸、p-ヒドロキシベンゾエート、アルコール、第四級化合物、安定化された二酸化塩素、水銀(例えば、メルフェン及びチオメルサール)、前述の混合物などが挙げられるが、これらに限定されない。
さらなる実施形態において、防腐剤は、本明細書に提示される耳に許容可能な組成物の範囲内において、ほんの一例ではあるが、抗菌薬剤である。1つの実施形態において、組成物は、ほんの一例ではあるが、メチルパラベン、亜硫酸水素ナトリウム、アスコルビン酸塩、クロロブタノール、チメロサール、パラベン、ベンジルアルコール、フェニルエタノール及びその他を含む。別の実施形態において、メチルパラベンは、約0.05%から約1.0%、約0.1%から約0.2%の濃度である。さらなる実施形態において、ゲルは、水、メチルパラベン、ヒドロキシエチルセルロース及びクエン酸ナトリウムを混合することによって調製される。さらなる実施形態において、ゲルは、水、メチルパラベン、ヒドロキシエチルセルロース及び酢酸ナトリウムを混合することによって調製される。さらなる実施形態において、混合物は、120℃で約20分間オートクレーブすることによって滅菌され、本明細書に記載される適切な量の抗アポトーシス剤または前アポトーシス剤と混合する前に、pH、メチルパラベン濃度及び粘度を試験する。
薬物送達ビヒクルにおいて使用される適切な耳に許容可能な水溶性防腐剤は、亜硫酸水素ナトリウム、アスコルビン酸塩、クロロブタノール、チメロサール、パラベン、ベンジルアルコール、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、フェニルエタノールおよびその他を含む。これらの薬剤は、通常、約0.001重量%から約5重量%の量で、好ましくは、約0.01重量%から約2重量%の量で存在する。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の耳に許容可能な組成物は、防腐剤を含まない。
正円窓膜浸透促進剤
別の実施形態において、組成物は、1以上の正円窓膜浸透促進剤をさらに含む。正円窓膜を越える浸透は、正円窓膜浸透促進剤により高められる。正円窓膜浸透促進剤は、正円窓膜を越えて同時投与物質の輸送を促進する化学物質である。正円窓膜浸透促進剤は、化学構造体に従って分類される。イオン性と非イオン性の両方の界面活性剤、例えばラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル酸ナトリウム、ポリオキシエチレン‐20‐セチルエーテル、ラウレス‐9、ドデシル硫酸ナトリウム、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、ポリオキシエチレン‐9‐ラウリルエーテル(PLE)、Tween(登録商標)80、ノニルフェノキシポリエチレン(NP‐POE)、ポリソルベートなどが、正円窓膜浸透促進剤として機能する。胆汁塩(例えば、グリココール酸ナトリウム、デオキシコール酸ナトリウム、タウロコール酸ナトリウム、タウロジヒドロフシジン酸ナトリウム、グリコジヒドロフシジン酸ナトリウムなど)、脂肪酸及び誘導体(例えば、オレイン酸、カプリン酸、モノ-グリセリド及びジ-グリセリド、ラウリル酸、アシルコリン、カプリル酸、アシルカルニチン、カプリル酸ナトリウムなど)、キレート剤(例えば、EDTA、クエン酸、サリチル酸塩キレートなど)、スルホキシド(例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)、デシルメチルスルホキシドなど)、及びアルコール(例えば、エタノール、イソプロパノール、グリセロール、プロパンジオールなど)もまた正円窓膜浸透促進剤として機能する。
いくつかの実施形態において、耳に許容可能な浸透促進剤は、アルキルグリコシドが、テトラデシル-β-D-マルトシドであるアルキル-グリコシドを含む界面活性剤である。いくつかの実施形態において、耳に許容可能な浸透促進剤は、アルキルグリコシドが、テトラデシル-マルトシドであるアルキル-グリコシドを含む界面活性剤である。いくつかの例において、浸透促進剤はヒアルロニダーゼである。いくつかの例において、ヒアルロニダーゼは、ヒトまたはウシのヒアルロニダーゼである。いくつかの例において、ヒアルロニダーゼは、ヒトのヒアルロニダーゼ(例えば、ヒトの精子で見つかったヒアルロニダーゼ、PH20(Halozyme)、Hyelenex(登録商標)(Baxter International,Inc.)である。特定の例において、ヒアルロニダーゼは、ウシのヒアルロニダーゼ、例えば、ウシの睾丸のヒアルロニダーゼ、AmpHadase(登録商標)(Amphastar Pharmaceuticals)、Hydase(登録商標)(PrimaPHarm,Inc.)である。いくつかの例において、ヒアルロニダーゼは、ヒツジのヒアルロニダーゼ、Vitrase(登録商標)(ISTA Pharmaceuticals))ある。特定の例において、本明細書に記載のヒアルロニダーゼは、組換型ヒアルロニダーゼである。いくつかの例において、本明細書に記載のヒアルロニダーゼは、ヒト化組換ヒアルロニダーゼである。いくつかの例において、本明細書に記載のヒアルロニダーゼはペグ化されたヒアルロニダーゼ(例えば、PEGPH20(Halozyme))である。さらに、米国特許第7,151,191号、第6,221,367号および第5,714,167号(これらは、そのような開示のために参照によって本明細書に組み入れられる)に記載のペプチド様浸透促進剤は、さらなる実施形態として予期される。これらの浸透促進剤は、アミノ酸とペプチド誘導体で、膜または細胞間の細胞間隙の完全性に影響を与えずに、受動の細胞間拡散による薬物吸収を可能にする。
正円窓膜浸透リポソーム
リポソーム又は脂質粒子は、また、抗アポトーシス剤または前アポトーシス剤の組成物又は組成物をカプセル化するために使用され得る。水溶性培地中に穏やかに分散したリン脂質は、脂質の層を分離する封入された水溶性媒体の領域と共に、多層の小胞(vesicles)を形成する。これらの多層の小胞の超音波処理、又は乱流攪拌は、通常、リポソームといわれる、約10〜1000nmのサイズの単一層の小胞を形成することとなる。これらのリポソームは、抗アポトーシス剤または前アポトーシス剤または他の医薬薬剤の担体として大いに有用である。それらは、生物学的に不活性であり、生分解性で、無毒で、そして非抗原性である。リポソームは、様々な大きさで、かつ、組成および表面特性を変えて形成される。さらに、それらは、幅広い種類の薬剤を封入し、そしてリポソーム崩壊の位置で薬剤を放出することができる。
本発明で耳に許容可能なリポソームにおいて使用するのに適切なリン脂質は、例えば、ホズファチジルコリン、エタノールアミンおよびセリン、スフリンゴミエリン、カルジオリピン、プラスマロゲン、ホスファチジン酸およびセレブロシドであり、特に、無毒で、薬学的に許容可能な有機溶媒中に抗アポトーシス剤または前アポトーシス剤と共に可溶なものである。好ましいリン脂質は、例えば、ホズファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、リゾホズファチジルコリン、ホズファチジルグリセロールなど、およびそれらの混合物、特にレシチン、例えば大豆レシチンの混合物である。本発明の組成物において使用されるリン脂質の量は、約10から約30%まで、好ましくは、約15から約25%まで変動し、特に約20%である。
親油性の添加剤は、リポソームの性質を選択的に改変するために有効に利用され得る。そのような添加剤の例は、例として、ステアリルアミン、ホスファチジン酸、トコフェロール、コレステロール、 コレステロールヘミコハク酸(hemisuccinate)およびラノリン抽出物を含む。使用される親油性の添加剤の量は、0.5から8%まで、好ましくは、1.5から4%まで変化し、特に約2%である。通常、親油性の添加剤の量とリン脂質の量との割合は約1:8から約1:12まで変化し、特に、約1:10である。リン脂質、親油性の添加剤および抗アポトーシス剤または前アポトーシス剤および他の医薬化合物は、成分を溶解することができる無毒の薬学的に許容可能な有機溶媒系と一緒に使用される。溶媒系は、抗アポトーシス剤または前アポトーシス剤を完全に溶解しなければならないのみでなく、安定な単一の2層のリポソームを有する組成物を可能にする必要がある。溶媒系は、約8から約30%の量のジメチルイソソルビドおよびテトラグリコール(グリコフロル(glycofurol )、テトラヒドロフルフリル(tetrahydrofurfuryl )アルコールポリエチレングリコールエーテル)を含む。溶媒系において、ジメチルイソソルビドの量のテトラグリコールの量に対する割合は、約2:1から約1:3まで、特に、約1:1から約1:2.5まで変化し、好ましくは約1:2である。従って、最終の組成物中のテトラグリコールの量は、5から20%まで、特に、5から15%まで変化し、好ましくは、約10%である。最終の組成物中のジメチルリソソルビドの量は、3から10%まで、特に3から7%まで変化し、好ましくは、約5%である。
本明細書において以下に使用される用語「有機成分」は、リン脂質、親油性の添加剤および有機溶媒を含む混合物を言う。抗アポトーシス剤または前アポトーシス剤は、薬剤の完全な活性を保持するために、有機成分の中にまたは他の手段で溶解され得る。最終組成物における抗アポトーシス剤または前アポトーシス剤の量は、0.1から5.0%まで変化し得る。さらに、抗酸化物のような他の成分は、有機成分に加えられる。例として、トコフェロール、ブチルヒドロキシアニソール、ブチルヒドロキシトルエン、アスコルビルパルミテート(ascorbyl palmitate)、 アスコルビルオリエート(ascorbyl oleate)などが挙げられる。
リポソーム組成物は、適度な熱抵抗性である抗アポトーシス剤または前アポトーシス剤または他の医薬成分のために、以下のように任意に調製される:(a)リン脂質と有機溶媒系を容器の中で約60〜80℃まで加熱し、活性成分を溶解し、それから任意の更なる処方薬剤を加え、そして完全な溶解が得られるまで混合物を攪拌し;(b)第二の容器に90〜95℃まで水溶液を加熱し、その中に防腐剤を溶解させ、混合物を冷却し、それから補助の処方薬剤の残りと水の残りを加え、完全な溶解が得られるまで攪拌し;それから水溶性成分を調製し;(c)高速の混合装置、例えば、高せん断ミキサーで混合物を均質化すると同時に、水溶性成分に直接有機相を移動させ;そして(d)更なる均質化を行うと同時に、結果できる混合物に増粘剤を加えることによって、調製される。水溶性成分は、任意に、ホモジナイザーが装備された適切な容器に入れられ、そして均質化は、有機成分の注入の間に大きな乱流を作ることによってなされる。混合物に高いずり応力を働かせる任意の混合方法またはホモジナイザーが使用され得る。通常、約1,500から20,000rpmまでの、特に、約3,000から約6,000rpmまでの、速度が可能なミキサーが使用され得る。段階(d)の工程で使用するのに適切な増粘剤は、例えば、キサンタンガム、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースまたはそれらの混合物である。増粘剤の量は、他の成分の性質と濃度に依存し、通常、約0.5〜2.0%まで変化し、ほぼ約1.5%である。リポソーム組成物の調製中に使用される材料の分解を防止するために、窒素又はアルゴンのような不活性ガスで全ての溶液から不純物を取除き、そして不活性な環境下で全ての工程を行うことが有用である。上述の方法によって調製されたリポソームは、通常、脂質の二重層において結合した活性成分のほとんどを含み、カプセル化していない材料からリポソームを分離することは必要とされない。
他の実施形態において、ゲル組成物および年度を増強された組成物を含む耳に許容可能な組成物は、賦形剤、他の医薬薬剤または薬学的薬剤、キャリア、保存剤、安定化剤,湿潤剤または乳化剤のようなアジュバント、溶液促進剤(solution promoter)、塩、可溶化剤、および消泡剤、抗酸化剤、分散剤、湿潤剤、界面活性剤、またはそれらの組合せをさらに含む。
本明細書に記載される耳に許容可能な組成物における使用に適切な担体は、限定するものではないが、標的とする耳構造体の生理環境に適合する任意の薬学的に許容可能な溶媒を含む。他の実施形態において、基剤は、薬学的に許容可能な界面活性剤及び溶媒の組み合わせである。
いくつかの実施形態において、他の賦形剤としては、ステアリルフマル酸ナトリウム、ジエタノールアミンセチルスルフェート、イソステアリン酸塩、ポリエトキシレート化ヒマシ油、ノノキシル(nonoxyl)10、オクトキシノール(octoxynol )9、ラウリル硫酸ナトリウム、ソルビタンエステル(ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンセスキオレエート、ソルビタントリオレエート、ソルビタントリステアレート、ソルビタンラウレート、ソルビタンオレエート、ソルビタンパルミテート、ソルビタンステアレート、ソルビタンジオレエート、ソルビタンセスキ-イソステアレート、ソルビタンセスキステアレート、ソルビタントリ-イソステアレート)、レシチン、それらの薬学的に許容可能な塩またはそれらの組合せ若しくは混合物が挙げられる。
他の実施形態において、担体はポリソルベートである。ポリソルベートは、ソルビタンエステルの非イオン性の界面活性剤である。本開示における有用なポリソルベートとしては、ポリソルベート20、ポリソルベート40、ポリソルベート60、ポリソルベート80(Tween 80)及びそれらの任意の組合せ又は混合物が挙げられるが、これらに限定されない。さらなる実施形態において、ポリソルベート80は、薬学的に許容可能な担体として利用される。
1つの実施形態において、水溶性のグリセリンベースの耳に許容可能な増粘組成物は、少なくとも約0.1%の水溶性グリセリン化合物又はそれ以上を含む、少なくとも1つの抗アポトーシス剤または前アポトーシス剤を備える医薬送達ビヒクルの調製に利用される。いくつかの実施形態において、抗アポトーシス剤または前アポトーシス剤の割合は、医薬組成物全体の約1%と約95%の間、約5%と約80%の間、約10%と約60%の間、又はそれ以上の重量又は体積で変化する。いくつかの実施形態において、治療上有用な抗アポトーシス剤または前アポトーシス剤の組成物それぞれにおける化合物の量は、適切な用量が化合物の任意の所定の単位用量で得られるような方法で調製される。溶解性、バイオアベイラビリティ、生物学的半減期、投与経路、製品有効期間などの因子、および他の薬学的な検討事項が、本明細書中に考慮される。
所望ならば、耳に許容可能な医薬ゲルはまた、緩衝液に加えて、防腐剤、共溶媒、イオン強度及び浸透圧調整剤及び他の賦形剤を含み得る。適切な水溶性緩衝液は、アルカリ金属又はアルカリ性の土類金属の炭酸塩、リン酸塩、炭酸水素塩、クエン酸塩、ホウ酸塩、酢酸塩、コハク酸などであり、これらは、リン酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、ホウ酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム及びトロメタミン(TRIS)などである。これらの薬剤は、系のpHを7.4±0.2、好ましくは7.4に維持するのに十分な量で存在する。このように、緩衝液は組成物全体の重量基準で5%と同等となり得る。
共溶媒は抗アポトーシス剤または前アポトーシス剤の溶解度を高めるために使用されるが、いくつかの抗アポトーシス剤または前アポトーシス剤または他の医薬化合物は不溶性である。これらは、しばしば、適切な懸濁剤又は増粘剤を用いてポリマービヒクル中で懸濁される。
さらに、いくつかの医薬的な賦形剤、希釈剤、又は担体は、潜在的に耳毒性である。例えば、一般の防腐剤である塩化ベンザルコニウムは、耳毒性であり、それゆえ前庭及び蝸牛の構造体に導入されると、潜在的に有害である。制御放出抗アポトーシス剤または前アポトーシス剤の組成物を処方する際に、組成物から潜在的な耳毒性の成分を少なくする又は除去するために、適切な賦形剤、希釈剤、又は担体を回避又は組み合わせること、又はこのような賦形剤、希釈剤、又は担体の量を減らすことが助言されている。任意に、制御放出抗アポトーシス剤または前アポトーシス剤の組成物は、特定の治療薬又は賦形剤、希釈剤、又は担体の使用により生じる潜在的な耳毒性効果を中和するために、抗酸化剤、αリポ酸、カルシウム、ホスホマイシン又は鉄キレート剤などの耳保護性(otoprotective)の薬剤を含む。
以下は、治療上許容可能な耳の組成物の例である。
本明細書に開示の組成物は、特定の治療薬または賦形剤、希釈剤または担体の使用により生じ得る潜在的な耳毒性の影響を中和するために、代替的に、少なくとも1つの活性薬剤および/または賦形剤に加えて耳保護性の薬剤を含み、これは、限定されないが、酸化防止剤、αリポ酸、カルシウム、ホスホマイシンまたは鉄キレート剤のような薬剤を含む。
治療の方法
投薬方法及びスケジュール
内耳に送達される薬物は、経口経路、静脈経路、筋肉内経路で全身的に投与されてきた。しかしながら、内耳に局所的な病理に対する全身投与は、全身的な毒性及び副作用の可能性を増大させ、薬物の非生産的な分布を形成する。この分布では、高レベルの薬物が血清において見出され、これに対応して、低レベルの薬物が内耳で見出される。治療薬剤の鼓室内注射は、鼓膜の裏側に治療薬剤を注射し、中耳及び/又は内耳へと到達させる技術である。1つの実施形態において、本明細書に記載される組成物は、鼓室内注射を介して正円窓膜に直接投与される。別の実施形態において、本明細書に記載される抗アポトーシス剤または前アポトーシス剤の耳に許容可能な組成物は、内耳への非鼓室内注射方法で正円窓膜に投与される。さらなる実施形態において、本明細書に記載される組成物は、蝸牛窓稜の変更を含む正円窓膜への外科的方法を介して、正円窓膜に投与される。1つの実施形態において、送達システムは、鼓膜を貫通するとともに、直接的に正円窓膜又は内耳の蝸牛窓稜に到達可能なシリンジ及び注射針のデバイスである。いくつかの実施形態において、シリンジの注射針は、18ゲージ注射針より幅広い注射針である。別の実施形態において、注射針ゲージは、18ゲージから31ゲージまでである。さらなる実施形態において、注射針ゲージは25ゲージから30ゲージまでである。抗アポトーシス剤または前アポトーシス剤の組成物の濃厚さまたは粘度に依存して、シリンジ又は皮下注射針のゲージレベルは、適宜変えられ得る。別の実施形態において、注射針の内径は、適切な針ゲージを維持する一方、針の目詰まりの可能性を減らすために、針の壁厚を減少させる(一般に、薄壁のまたは超薄肉の針と言われる)ことにより増大させ得る。
別の実施形態において、針は、ゲル組成物の即時送達のために使用される皮下針である。皮下針は、一回使用の(single)針又は使い捨ての針である。いくつかの実施形態において、シリンジは、本明細書で開示される、薬学的に許容可能なゲルベースの抗アポトーシス剤または前アポトーシス剤を含む組成物の送達のために使用され、シリンジは、圧入(press-fit)(Luer)又はツイスト−オン(twist-on) (Luer−lock)フィッティングを有する。1つの実施形態において、シリンジは、皮下注射シリンジである。別の実施形態において、シリンジは、プラスティック又はガラスで作られている。さらに別の実施形態において、皮下注射シリンジは、一回使用のシリンジである。さらなる実施形態において、ガラスシリンジは、滅菌することができる。さらに別の実施形態において、滅菌は、オートクレーブによって行う。別の実施形態において、シリンジは、ゲル組成物が使用前に蓄えられる、円筒形のシリンジ本体を含む。他の実施形態において、シリンジは、本明細書で開示されるような薬学的に許容可能なゲルベースの組成物が、使用前に蓄えられる円筒形のシリンジ本体を含み、適切な薬学的に許容可能な緩衝液と共に混合するのに都合が良い。他の実施形態において、シリンジは、その中に含まれる抗アポトーシス剤または前アポトーシス剤または他の医薬的化合物を安定化し、又はそうでなければ安定に貯蔵するために、他の賦形剤、安定剤、懸濁剤、希釈剤またはこれらの組み合わせを含むことができる。
いくつかの実施形態において、シリンジは、その本体が区画化された円筒形のシリンジ本体を含み、各区画(compartment)は、耳に許容可能な抗アポトーシス剤または前アポトーシス剤のゲル組成物の少なくとも1つの成分を貯蔵することができる。さらなる実施形態において、区画化された本体を有するシリンジは、中耳又は内耳への注入の前に成分を混合させることができる。他の実施形態において、送達システムは、複数のシリンジを含み、その複数のシリンジの各シリンジは、少なくとも1つのゲル組成物の成分を含み、各成分は、注入前に予め混合されるか、または注入後に混合される。さらなる実施形態において、本明細書で開示されるシリンジは、少なくとも1つのリサーバー(reservoir)を含み、その少なくとも1つのリザーバーは、抗アポトーシス剤または前アポトーシス剤か、薬学的に許容可能な緩衝液か、ゲル化剤のような増粘剤か、又はそれらの組み合わせを含む。中耳内注射を行うために、既製の、シリンジバレルを有するプラスティックシリンジ、針を有する針アセンブリ、プランジャーロッドを有するプランジャー、および保持フランジのような最もシンプルな形態で、市販の注射器具が任意に使用される。
いくつかの実施形態において、送達デバイスは、中耳および/または内耳への治療薬の投与のために設計された器具である。ほんの一例として、GYRUS Medical GmbHは、正円窓の隙間の視覚可およびそこへの薬物送達のための、マイクロオトスコープを提供し;Arenbergは、内耳の構造体へ液体を送達するための医学的処置を、米国特許第5,421,818号;第5,474,529号;および第5,476,446号に記載しており、その各々は、そのような開示のために本明細書に参照として取り込まれている。米国特許出願第08/874,208号、これは、そのような開示のために本明細書に参照として取り込まれているが、内耳に治療薬を送達するための、液体移送導管を植え込むための外科的方法について記載している。米国特許出願公開2007/0167918は、これは、そのような開示のために本明細書に参照として取り込まれているが、さらに、内耳内の液体サンプリングおよび薬剤投与のための組み合わされた耳のアスピレーターと投薬ディスペンサーについて記載する。
本明細書に記載される組成物及びその投与方法は、また、内耳部分の直接的な滴下又は灌流の方法に適用可能である。従って、本明細書に記載される組成物は、非限定的な例として、蝸牛形成術(cochleostomy)、内耳手術(labyrinthotomy)、乳突削開術、アブミ骨切除術、内リンパ球形嚢手術(endolymphatic sacculotomy)などを含む外科的手術において有益である。
本明細書に記載の耳に許容可能な組成物または抗アポトーシス剤または前アポトーシス剤の化合物(複数)を含む組成物は、予防的処置及び/又は処置として投与される。治療上の適用では、抗アポトーシス剤または前アポトーシス剤の組成物は、既に本明細書に開示される障害に苦しむ患者に、その疾患、障害または疾病の症状を治し、または少なくとも部分的に阻止するのに十分な量で投与される。この使用に対する効果的な量は、疾患、障害又は疾病の重症度及び経過、以前の治療、患者の健康状態及び薬物に対する反応及び処置する医師の判断による。
患者の症状が改善しない場合、医者の裁量によって、抗アポトーシス剤または前アポトーシス剤の化合物の投与は、患者の疾患若しくは疾病の症状を改善するため、又はさもなければ、それらを制御し若しくは制限するために、長期にわたり、すなわち、患者の生命が続く間を含む、延長された時間の間、継続的に投与され得る。
患者の状態が改善した場合、医者の裁量によって、抗アポトーシス剤または前アポトーシス剤の化合物の投与は、継続的になされ得;代わりに、投与される薬物の用量は、一時的に減らされまたは一時的に特定の時間の間中止され得る(すなわち、「休薬期間」)。休薬期間の長さは、2日から1年の間で変化され、ほんの一例として、2日、3日、4日、5日、6日、7日、10日、12日、15日、20日、28日、35日、50日、70日、100日、120日、150日、180日、200日、250日、280日、300日、320日、350日、および365日を含む。休薬期間の間の用量の減少は、10%〜100%であり得、ほんの一例として、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、および100%を含む。
いったん患者の症状が改善すると、必要ならば、抗アポトーシス剤または前アポトーシス剤の維持量が投与される。引き続いて、症状の作用として、改善した疾患、障害又は疾病が維持されるレベルまで、投与の用量若しくは頻度、またはその両方を任意に減らす。特定の実施形態において、患者は、いかなる症状の再発時にも長期的に間欠的処置を必要とする。
このような量に対応する抗アポトーシス剤または前アポトーシス剤の量は、例えば、投与された特定の抗アポトーシス剤または前アポトーシス剤、投与経路、処置される疾病、処置される標的部位、及び、処置される被験体又は宿主などを含む疾病を取り囲む特定の環境に応じて、特定の化合物、疾病及びその重症度などの要因により依存して異なる。しかしながら、一般的に成人ヒトの処置に用いられる投与量は、概して1回の投与につき、0.02〜50mgの幅であり、好ましくは1回の投与につき、1〜15mgである。所望の投与量は、1回の投与量又は分割された投与量であらわされ、同時に(又は短期間をおいて)又は適切な間隔をおいて投与される。
いくつかの実施形態において、最初の投与は、特定の抗アポトーシス剤または前アポトーシス剤であり、そして次の投与は、異なる組成物または抗アポトーシス剤または前アポトーシス剤ぽである。
外来性物質の植込
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の医薬製剤、組成物およびデバイスは、外来性物質(例えば、医療機器または複数の細胞(例えば幹細胞))と組み合わせて(例えば、移植、短期の使用、長期使用、あるいは除去)使用される。本明細書で用いらる場合、用語「外来性物質」は、内耳または中耳医療デバイス(例えば、聴覚付与デバイス(hearing sparing devices)、聴覚改善デバイス、短い電極、微小補綴またはピストン様補綴);針;薬物送達デバイス、および細胞(例えば幹細胞)を含む。いくつかの例において、外来性物質の植込は、難聴を経験する患者と連携して使用される。いくつかの例において、難聴は誕生の時存在する。いくつかの例において、難聴は、、それは発展する、あるいは誕生後に発展または進行する疾病(例えば、メニエール病)が関係しており、骨新生(osteoneogenesis)、神経損傷、蝸牛の構造体の閉塞、あるいはそれらの組み合わせに帰着する。
いくつかの例において、外来性物質は複数の細胞である。いくつかの例において、外来性物質は複数の幹細胞である。
いくつかの例において、外来性物質は電子デバイスである。いくつかの実施形態において、電子デバイスは、耳の後ろに置かれた外側部分、および、ほとんど耳が聞こえないか、ひどく聴力が低下した人に音の感覚を供給する、皮膚の下に外科的に置かれる第2の部分を有する。ほんの一例として、そのような医療機器植込は、耳の破損部分を迂回し、直接聴神経を刺激する。いくつかの例において、人工内耳は、片側の聴覚喪失において使用される。いくつかの例において、人工内耳は、両耳における聴覚喪失のために使用される。
いくつかの実施形態において、外来性物質の移植(例えば、医療機器移植または幹細胞移植)と組み合わせての本明細書に記載の活性薬剤の投与は、耳の中への外部デバイス及び/又はの複数の細胞(例えば、幹細胞)の取付けに起因する耳構造体への損傷(例えば、刺激、細胞死骨新生、及び/又はさらなる神経退化)を遅らせるか防ぐ。いくつかの実施形態において、移植と組み合わせての本明細書に記載の組成物またはデバイスの投与は、移植のみと比較して、難聴のより有効な回復を可能とする。
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の活性薬剤の投与は、移植を成功させて、基礎となる疾病によって引き起こされた耳構造体に対する損傷を減少させる。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の活性薬剤の投与は、共同外科において、及び/又は外来性物質の移植と共に、負の副作用(例えば、細胞死)を減少させ、または防ぐ。いくつかの実施形態において、外来性物質の移植と組み合わせての本明細書に記載の活性薬剤の投与は、栄養作用を有する(つまり、細胞の健全な成長、および埋込または移植の領域の組織の治療を促進する)。いくつかの実施形態において、栄養作用は、耳の手術の間、または中耳内の注入手続中が望ましい。いくつかの実施形態において、栄養作用は、医療機器の設置、または細胞(例えば幹細胞)移植の後に望ましい。そのような実施形態のうちのいくつかにおいて、本明細書に記載の組成物またはデバイスは、直接の蝸牛の注入によって、鼓室階切開によって、または正円窓膜上への付着によって投与される。
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の活性薬剤の投与は、耳の手術または外来性物質(例えば、医療機器または複数の細胞(例えば、幹細胞))の移植に関連した、炎症及び/又は感染を減らす。いくつかの例において、本明細書に記載の製剤を備えた手術の領域の灌流は、手術後の及び/又は移植後の合併症(例えば、炎症、有毛細胞の損傷、神経退化、骨新生など)を減らし、または除く。いくつかの例においては、本明細書に記載の製剤を備えた手術の領域の灌流は、手術後のまたは移植後の回復時間を短くする。
1つの態様において、本明細書に記載される製剤及びその投与方法は、内耳部分の直接的な灌流の方法に適用可能である。従って、本明細書に記載される製剤は、非限定的な例として、蝸牛形成術(cochleostomy)、迷路切開術(labyrinthotomy)、乳突削開術、アブミ骨切除術、アブミ骨摘除術、内リンパ球形嚢手術(endolymphatic sacculotomy)などを含む外科的手術と組み合わせて有用である。いくつかの実施形態において、内耳部分は、耳の手術前に、耳の手術の間、耳の手術の後、またはそれらの組み合わせで、本明細書に記載の製剤で灌流される。そのような実施形態のうちのいくつかにおいて、本明細書に記載の製剤は、持続放出成分(例えば、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンコポリマーのようなゲル化成分)を基本的に含まない。そのような実施形態のうちのいくつかにおいて、本明細書に記載の製剤は、製剤の重量で5%未満の持続放出成分(例えば、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレントリブロックコポリマーのようなゲル化成分)を含む。そのような実施形態のうちのいくつかにおいて、本明細書に記載の製剤は、製剤の重量で2%未満の持続放出成分(例えば、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレントリブロックコポリマーのようなゲル化成分)を含む。そのような実施形態のうちのいくつかにおいて、本明細書に記載の製剤は、製剤の重量で1%未満の持続放出成分(例えば、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレントリブロックコポリマーのようなゲル化成分)を含む。そのような実施形態のうちのいくつかにおいて、手術領域の灌流のために使用される、本明細書に記載の組成物は、基本的にゲル化成分を含まない。
制御放出組成物およびデバイスの薬物動態学
1つの実施形態において、本明細書で開示される組成物またはデバイスは、さらに、組成物またはデバイスから活性薬剤の即時の、又は1分以内の、又は5分以内の、又は10分以内の、又は15分以内の、又は30分以内の、又は60分以内の、又は90分以内の放出を提供する。他の実施形態において、治療上有効な量の活性薬剤は、即時に、又は1分以内に、又は5分以内に、または、10分以内に、または15分以内に、又は30分以内に、又は60分以内に、又は90分以内に組成物またはデバイスから放出される。特定の実施形態において、組成物またはデバイスは、活性薬剤の即時放出を提供する耳に薬学的に許容可能なゲル組成物またはデバイスを含む。組成物のさらなる実施形態は、また、組成物またはデバイスの粘度を強める薬剤を含み得る。
他の又はさらなる実施形態において、組成物またはデバイスは、活性薬剤の持続放出組成物またはデバイスを提供する。特定の実施形態において、組成物またはデバイスからの活性薬剤の拡散は、5分、または15分、または30分、又は1時間、又は4時間、又は6時間、又は12時間、又は18時間、又は1日、又は2日、又は3日、又は4日、または5日又は6日、又は7日、又は10日、又は12日、又は14日、又は18日、又は21日、又は25日、又は30日、又は45日、又は2ヶ月又は3ヵ月又は4ヶ月又は5ヶ月又は6ヶ月又は9ヶ月又は1年にわたる時間間隔の間起こる。他の実施形態において、治療上有効な量の活性薬剤は、5分、または15分、または30分、又は1時間、又は4時間、又は6時間、又は12時間、又は18時間、又は1日、又は2日、又は3日、又は4日、または5日又は6日、又は7日、又は10日、又は12日、又は14日、又は18日、又は21日、又は25日、又は30日、又は45日、又は2ヶ月又は3ヵ月又は4ヶ月又は5ヶ月又は6ヶ月又は9ヶ月又は1年にわたる時間間隔の間、組成物またはデバイスから放出される。
他の実施形態において、組成物またはデバイスは、活性薬剤の即時放出と持続放出との両方を提供する。さらに他の実施形態において、組成物またはデバイスは、0.25:1の割合の、又は、0.5:1の割合の、または1:1の割合の、又は1:2の割合の、又は1:3、又は1:4の割合の、又は1:5の割合の、又は1:7の割合の、又は1:10の割合の、又は1:15の割合の、又は1:20の割合の即時放出と持続放出の組成物またはデバイスを含む。いくつかの実施形態において、組成物またはデバイスは、第一の活性薬剤の即時放出と、第二の活性薬剤又は他の活性薬剤の持続放出を提供する。さらに他の実施形態において、組成物またはデバイスは、活性薬剤と少なくとも1つの活性薬剤の即時放出と持続放出を提供する。いくつかの実施形態において、組成物またはデバイスは、それぞれ、0.25:1の割合の、又は0.5:1の割合の、又は1:1の割合の、又は1:2の割合の、又は1:3、又は1:4の割合の、又は1:5の割合の、又は1:7の割合の、又は1:10の割合の、又は1:15の割合の、又は1:20の割合の、第一の活性薬剤と第二の活性薬剤の即時放出と持続放出をそれぞれ提供する。
特定の実施形態において、組成物またはデバイスは、基本的に全身の暴露を伴わずに病気の部位に、治療上有効な量の活性薬剤を提供する。さらなる実施形態において、組成物またはデバイスは、基本的に検出可能な全身の暴露を伴わずに病気の部位に治療上有効な量の活性薬剤を提供する。他の実施形態において、組成物またはデバイスは、検出可能な全身の暴露をほとんどまたは全く伴わずに、病気の部位に治療上有効な量の活性治療薬を提供する。
即時放出、遅延放出、および/若しくは持続放出の、耳に適合する組成物またはデバイスの組み合わせは、本明細書で開示される賦形剤、希釈液、安定化剤、等張化剤および他の成分のみでなく他の医薬品と組み合わされ得る。このように、使用される活性薬剤、所望の濃厚さおよび粘度、又は選択される送達の方法に依存して、本明細書で開示される実施形態の代替的な形態は、即時放出、遅延放出および/または持続放出の実施形態と結び付けられる。
特定の実施形態において、本明細書に記載される耳に適合する組成物またはデバイスの薬物動態は、テストアニマル(例として、モルモット、またはチンチラを含む)の正円窓膜に、又はその近くに製剤組成物またはデバイスを注射することによって決定される。決定された時間間隔(1週間を越える組成物またはデバイスの薬物動態を試験するために、例えば、6時間、12時間、1日、2日、3日、4日、5日、6日、および7日)において、テストアニマルは、安楽死させられ、5mLの外リンパ液のサンプルが試験される。内耳が取り除かれ、活性薬剤の存在を検査される。必要な場合、活性薬剤のレベルは、他の器官においても測定される。さらに、活性薬剤の全身レベルは、テストアニマルから血液サンプルを回収することによって測定される。組成物またはデバイスが、聴覚を阻害するか否かを決定するために、テストアニマルの聴覚は、任意に検査される。
代替的に、内耳は、(テストアニマルから取り除かれる時に)提供され、そして活性薬剤の移動が、測定される。さらに別の代替として、インビトロの正円窓膜のモデルが提供され、活性薬剤の移動が測定される。
本明細書に記載されるように、微粉にされた活性薬剤を含む組成物またはデバイスは、微粉にされていない活性薬剤を含む組成物またはデバイスと比較して、より長い時間にわたる持続放出を提供する。いくつかの例において、微粉にされた活性薬剤は、遅い分解によって活性薬剤の安定した供給(例えば、+/−20%)を提供し、また活性薬剤のための貯蔵所として役立ち;そのような貯蔵の効果は、耳における活性薬剤の滞留時間を増加させる。特定の実施形態において、組成物またはデバイス内のゲル化剤の量と組み合わせての、活性薬剤(例えば、微粉にされた活性薬剤)の適切な粒径の選択は、ある時間、日、週または月の間にわたる活性薬剤の放出を可能とする整調可能な持続放出特性を提供する。
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の組成物またはデバイスの粘性は、耳に適合するゲルから放出の適切な速度を提供するように設計される。いくつかの実施形態において、増粘剤(tichening agent)(例えば、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンコポリマーのようなゲル化成分)の濃度は、調整可能な平均溶解時間(MDT)を可能にする。MDTは、本明細書に記載の組成物またはデバイスからの活性薬剤の放出速度に反比例する。実験的に、放出された活性薬剤は、Korsmeyer−Peppas方程式に随意にあてはめられる。
ここで、Qは時間tにおいて放出される活性薬剤の量であり、Qαは活性薬剤の全放出量であり、kはn次の放出定数であり、nは溶解機構に関する無次元数であり、bは軸切片であり、n=lがエロージョン抑制機構を特徴づける初期バースト放出機構を特徴づけている。平均溶解時間(MDT)は、医薬分子が放出前にマトリクス内にとどまっている異なる時間間隔の和を分子の総数で除したもので、次の式によって算出される。
例えば、組成物またはデバイスの平均溶解時間(MDT)とゲル化剤(例えばポロクサマー)の間の濃度の直線的な関係は、拡散によってではなく、ポリマーゲル(例えばポロクサマー)のエロージョンにより活性薬剤が放出されることを示す。別の例において、非線形の関係は、拡散及び/又はポリマーゲル分解の組み合わせによる活性薬剤の放出を示す。別の例において、組成物またはデバイスのより速いゲル排出時間過程(活性薬剤のより速い放出)は、より低い平均溶解時間(MDT)を示す。組成物またはデバイス中のゲル化剤及び/又は活性薬剤の濃度は、MDTに適切なパラメーターを決定するために試験される。いくつかの実施形態において、注入量もまた、症状発現前および臨床研究に適切なパラメーターを決定するために試験される。活性薬剤のゲル強度および濃度は、組成物またはデバイスからの活性薬剤の放出動力学に影響する。低いポロクサマー濃度では、排出速度は加速される(MDTはより低い)。組成物またはデバイス中の活性薬剤濃度の増加は、耳の中の活性薬剤の滞留時間及び/又はMDTを延長する。
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の組成物またはデバイスからのポロクサマーに対するMDTは、少なくとも6時間である。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の組成物またはデバイスからのポロクサマーに対するMDTは、少なくとも10時間である。
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の組成物またはデバイスからの活性薬剤に対するMDTは、約30時間から約48時間までである。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の組成物またはデバイスからの活性薬剤に対するMDTは、約30時間から約96時間までである。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の組成物またはデバイスからの活性薬剤に対するMDTは、約30時間から約1週までである。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の組成物またはデバイスに対するMDTは、約1週から約6週までである。
特定の実施形態において、本明細書に記載される制御放出耳用組成物またはデバイスは、活性薬剤の曝露を増加させ、耳の流体(例えば、内リンパ及び/又は外リンパ)における曲線下面積(AUC)を、制御放出耳用組成物またはデバイスではない組成物またはデバイスと比較して、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、又は約90%増加させる。特定の実施形態において、本明細書中に記載される制御放出耳用組成物またはデバイスは、活性薬剤の曝露を増加させ、耳の流体(例えば、内リンパ及び/又は外リンパ)におけるCmaxを、制御放出耳用組成物またはデバイスではない組成物またはデバイスと比較して、約40%、約30%、約20%又は約10%減少させる。特定の実施形態において、本明細書に記載される制御放出耳用組成物またはデバイスは、制御放出耳用組成物またはデバイスではない組成物またはデバイスと比較して、Cmax対Cminの割合を変化(例えば減少)させる。特定の実施形態において、本明細書中に記載される制御放出耳用組成物またはデバイスは、活性薬剤の曝露を増加させ、活性薬剤の濃度が、制御放出耳用組成物またはデバイスではない組成物またはデバイスと比較して、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、又は約90%だけCmin以上である時間の長さを増加させる。特定の例において、本明細書中に記載される制御放出耳用組成物またはデバイスは、Cmaxへの時間を遅延させる。特定の例において、薬物の制御安定性放出は、薬物の濃度がCmin以上である時間を延長する。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載される組成物およびデバイスは、内耳において薬物の滞留時間を延長し、安定した薬物暴露特性を提供する。いくつかの例において、組成物またはデバイス内の活性薬剤の濃度の増加は、クリアランス過程を飽和させ、より速く、かつ安定した一定状態に到達することを可能とする。
特定の例において、一旦薬の薬物曝露(例えば、内リンパまたは外リンパ中の濃度)が、定常状態に達すると、内リンパまたは外リンパ中の薬物濃度は、長期間(例えば、1日、2日、3日、4日、5日、6日、あるいは1週、3週、6週、2箇月)の間、その治療量で、またはその治療量あたりでとどまる。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の制御放出組成物またはデバイスから放出された活性薬剤の定常状態の濃度は、制御放出組成物またはデバイスでない組成物またはデバイスから放された活性薬剤の定常状態の濃度の約20倍から約50倍である。
本明細書に開示の組成物またはデバイスからの活性薬剤の放出は、所望の放出特性に任意に整調可能である。いくつかの実施形態において、本明細書に開示の組成物またはデバイスは、実質的にゲル化成分をふくまない溶液である。そのような例において、組成物またはデバイスは、実質的に活性薬剤の即時放出を提供する。そのような実施形態のうちのいくつかにおいて、組成物またはデバイスは、耳の構造体の灌流において(例えば手術中に)役立つ。
いくつかの実施形態において、本明細書に開示の組成物またはデバイスは、基本的に、ゲル化成分を含まず、微粉にされた活性薬剤を含む溶液である。そのような実施形態のうちのいくつかにおいて、組成物またはデバイスは、約2日から約4日まで、活性薬剤の中間放出を供給する。
いくつかの実施形態において、本明細書に開示の組成物またはデバイスは、ゲル化剤(例えばポロクサマー407)を含み、約1日から約3日までの期間にわたって活性薬剤の放出を提供する。いくつかの実施形態において、本明細書に開示の組成物またはデバイスは、ゲル化剤(例えばポロクサマー407)を含み、約1日から約5日までの期間ににわたって活性薬剤の放出を提供する。いくつかの実施形態において、本明細書に開示の組成物またはデバイスは、ゲル化剤(例えばポロクサマー407)を含み、約2日から約7日までの期間にわたって活性薬剤の放出を提供する。
いくつかの実施形態において、本明細書に開示の組成物またはデバイスは、微粉にされた活性薬剤と組み合わせてゲル化剤(例えばポロクサマー407)を含み、持続放出を提供する。いくつかの実施形態において、本明細書に開示の組成物またはデバイスは、(a)14〜17%のゲル化剤(例えばポロクサマー407)および(b)微粉にされた活性薬剤を含み;約1週から約3週までの期間にわたる持続放出を提供する。いくつかの実施形態において、本明細書に開示の組成物またはデバイスは、(a)16%のゲル化剤(例えばポロクサマー407)および(b)微粉にされた活性薬剤を含み;約3週からの期間にわたる持続放出を提供する。いくつかの実施形態において、本明細書に開示の組成物またはデバイスは、(a)18〜21%のゲル化剤(例えばポロクサマー407)および(b)微粉にされた活性薬剤を含み;約3週から約6週までの期間にわたる持続放出を提供する。いくつかの実施形態において、本明細書に開示の組成物またはデバイスは、(a)20%のゲル化剤(例えばポロクサマー407)および(b)微粉にされた活性薬剤を含み;約6週までの期間にわたる持続放出を提供する。いくつかの実施形態において、組成物またはデバイス中のゲル化剤の量および活性薬剤の粒径は、組成物またはデバイスからの活性薬剤の所望の放出特性に調整可能である。
特定の実施形態において、微粉にされた活性薬剤を含む組成物またはデバイスは、微粉にされていない活性薬剤を含む組成物またはデバイスと比較して、より長い期間にわたって持続放出を提供する。特定の実施形態において、組成物またはデバイス中のゲル化剤の量と組み合わせての活性薬剤(例えば微粉にされた活性薬剤)の適切な粒径の選択は、ある期間の時間、日、週または月にわたる活性薬剤の放出を可能にする調整可能な持続放出特性を提供する。
製品のキット/製造物
本開示はまた、哺乳動物における疾患若しくは障害の症状を防止、処置、又は改善するためのキットも提供する。そのようなキットは、通常、本明細書で開示される、1つまたはそれ以上の抗アポトーシス剤または前アポトーシス剤の制御放出組成物またはデバイス、およびキットを使用するための説明書を含む。本開示はまた、ヒトが罹患し、罹患する虞があり、若しくは内耳の障害を引き起こす危険があるような、哺乳動物における疾患、機能障害もしくは障害の症状を処置したり、やわらげたり、軽減したり、又は改善したりするための製剤の製造に関して、1つ又はそれ以上の抗アポトーシス剤または前アポトーシス剤の制御放出組成物の使用を熟慮する。
いくつかの実施形態において、キットは、バイアル、チューブのような1以上の容器を収容するよう区分化されたキャリア、パッケージ、又は容器を備え、容器の各々は、本明細書中に記載される方法において使用される別々の要素の一つを含む。適切な容器としては、例えば、ボトル、バイアル、シリンジ、及び試験管を含む。他の実施形態において、容器は、ガラス又はプラスチックのような様々な材料から形成される。
本明細書で提供される製造品は、パッケージ材料を含む。医薬品を包装する際に使用されるパッケージ材料はまた、本明細書で示される。例えば、米国特許第5,323,907号、第5,052,558号、及び第5,033,252号を参照。医薬パッケージ材料の例としては、ブリスター包装、ボトル、チューブ、吸入器、ポンプ、バッグ、バイアル、容器、シリンジ、ボトル及び選択された組成物及び投与及び処置の所望の方法に適した任意のパッケージ材料が挙げられるが、これらに限定されない。本明細書中で提供される抗アポトーシス剤または前アポトーシス剤の組成物の幅広い製剤は、内耳への抗アポトーシス剤または前アポトーシス剤の制御放出投与により利益を受ける任意の疾患、障害、又は疾病に対する多様な処置として考慮される。
いくつかの実施形態において、キットは、1以上の追加のコンテナを備え、その各々のコンテナは、本明細書中に記載される組成物の使用のための商業上及び利用上から望ましい1以上の様々な材料(例えば、任意に濃縮された形態での試薬、及び/又はデバイス)を備える。このような材料の非限定的な例としては、緩衝液、希釈剤、フィルター、針、シリンジ、担体、パケージ、容器、バイアル及び/又は内容を列挙するチューブラベル及び/又は使用説明書、及び使用説明書を備える添付文書が挙げられるが、これらに限定されない。一組の指示書が任意に含まれる。更なる実施形態において、ラベルは、容器上に、または容器に付属されている。別のさらなる実施形態において、ラベルを形づくる文字、数字、又は他の表示が、容器自体のコンテナ中に貼り付けられるか、成形されるか、または刻まれている場合は、ラベルは容器上に取付けられる。ラベルが、コンテナを同様に保持する貯蔵所(receptacle)又はキャリア(例えば、パッケージインサート)に存在する場合、ラベルはコンテナに付随する。他の実施形態において、ラベルは、内容物が特定の治療用途に用いられるべきものであるということを示すために用いられる。さらなる別の実施形態において、ラベルは、また、本明細書に記載の方法などのように、内容物の使用に関しての方向性を示すものでもある。
特定の実施形態において、医薬組成物は、本明細書で提供される化合物を含む1以上の単位剤形を含む、パックまたはディスペンサーデバイスで与えられる。別の実施形態において、パックは、例えば、ブリスター包装などの金属またはプラスチックホイルを含む。さらなる実施形態において、パックまたはディスペンサーデバイスには、投与の説明書が添付してある。なおさらなる実施形態において、パックまたはディスペンサーには、医薬品の製造、使用、または、販売を規制する政府機関によって規定された形態の容器に付随する通知書が添付してあり、この通知書は、ヒトまたは動物の投与に関する薬物の形態についての、政府機関の承認を反映するものである。別の実施形態において、このような通知書は、例えば、処方薬または承認された生成物の挿入に関する、米国食品医薬品局により承認されたラベルである。さらなる別の実施形態において、適合する医薬担体に処方された、本明細書で提供される化合物を含む組成物は、また、示された疾病の処置のために、調製され、適切な容器に配され、ラベル付けされる。
実施例
例1:熱可逆性ゲルXIAP製剤の調製
1.0%のXIAPを含む10gバッチのゲル組成物を、TRIS HCl緩衝液(0.1M)の中に最初にポロクサマー407(BASF Corp.)を懸濁することにより調製する。TRIS中にポロクサマー407が完全に溶解することを保証するために、ポロクサマー407およびTRISを、4℃で攪拌下で一晩混合する。ハイプロメロース、メチルパラベンおよび付加的なTRIS HCl緩衝液(0.1M)を加える。溶解が観察されるまで、組成物を撹拌する。XIAPの溶液を加え、均質のゲルが形成されるまで、組成物を混合する。混合物は、使用するまで室温以下で保存する。
例2:粘膜付着性で熱可逆性ゲルAM−111製剤の調製
1.0%のAM−111を含む10gバッチの粘膜付着性ゲル製剤を、TRIS HCL緩衝液(0.1M)中に、最初にポロクサマー407(BASF Corp.)およびCarbopol 934Pを懸濁することにより調製する。TRIS中にポロクサマー407とCarbopol 934Pが完全に溶解することを保証するために、ポロクサマー407、Carbopol 934PおよびTRISを、4℃で攪拌下で一晩混合する。ハイプロメロース、メチルパラベンおよび付加的なTRIS HCL緩衝液(0.1M)を加える。溶解が観察されるまで、組成物を撹拌する。AM−111溶液を加え、均質のゲルが形成されるまで、組成物を混合する。混合物は、使用するまで室温以下で保存する。
例3:粘膜付着性で熱可逆性ゲルSb−203580製剤の調製
SB−203580は、固体として供給される。それを、最終体積モル濃度10mMまで水中で再水和する。1.0%のSB−203580を含む10gバッチの粘膜付着性ゲル製剤を、TRIS HCL緩衝液(0.1M)中に、最初にポロクサマー407(BASF Corp.)およびCarbopol 934Pを懸濁することにより調製する。TRIS中にポロクサマー407とCarbopol 934Pが完全に溶解するのを保証するために、ポロクサマー407、Carbopol 934PおよびTRISを、4℃で攪拌下で一晩混合する。ハイプロメロース、メチルパラベンおよび付加的なTRIS HCL緩衝液(0.1M)を加える。溶解が観察されるまで、組成物を撹拌する。SB−203580溶液を加え、均質のゲルが形成されるまで、組成物を混合する。混合物は、使用するまで室温以下で保存する。
例4:ヒドロゲルベースのロイペプチン製剤の準備
クリーム・タイプの製剤を、先ず、ロイペプチンを水と共に、ペプチンが溶けるまで、穏やかに混合することによって調製する。その後、油基部を、室温から60℃への昇温で、パラフィン油、トリヒドロキシステアラート(trihydroxystearate)およびセチルジメチコン(dimethicon)コポリオールを混合することにより調製する。油基部を室温まで冷却し、ロイペプチン溶液を加える。均質で単層のヒドロゲルが形成されるまで2相を混合する。
例5:ゲル・ミノサイクリン製剤の調製
5mlの酢酸溶液を、約4.0のpHまで滴定する。キトサンを加え、約5.5のpHを達成する。その後、ミノサイクリンをキトサン溶液中に溶解させる。この溶液を、ろ過によって殺菌する。また、グリセロリン酸塩二ナトリウムの5mlの水溶液を調製し、殺菌する。2つの溶液を混合し、2時間以内に37℃で、所望のゲルが形成される。
例6:正円窓膜上への増強された粘性SB−203580製剤の適用
例3に従って製剤を調製し、5mlの、15ゲージのルアーロックの使い捨ての針に取り付けられたシリコンで処理されたガラス製シリンジへと充填する。SB−203580は、鼓膜に対して局所的に適用され、中耳の空洞を可視化するために小さい切込みを作る。針先を、正円窓膜上へ導き、SB−203580製剤を、直接円形窓膜上に適用する。
例7:PBS緩衝液中のオートクレーブ滅菌された17%のポロクサマー407NF/2%の耳用薬剤のための分解産物に対するpHの影響
17%のポロクサマー407/2%の耳用薬剤の保存液を、351.4gの塩化ナトリウム(Fisher Scientific.)、302.1gのリン酸ナトリウム二塩基無水物(Fisher Scientific.)、122.1mgのリン酸ナトリウム一塩基無水物(Fisher Scientific.)、及び適切な量の薬剤を、79.3gの無菌ろ過された蒸留水を用いて溶解させることにより調製する。溶液を、氷冷槽中で冷却し、その後17.05gのポロクサマー407NF(SPECTRUM CHEMICALS)を、混ぜる間、冷却した溶液中へ振り入れる。混合液を、ポロクサマーが完全に溶解するまでさらに混合する。この溶液のpHを測定する。
pH5.3のPBS中の17%ポロクサマー407/2%の耳用薬剤
上記溶液の一定分量(約30mL)を取り出し、1MのHClの追加によりpHを5.3に調整する。
pH8.0のPBS中の17%ポロクサマー407/2%の耳用薬剤
上記溶液の一定分量(約30mL)を取り出し、1MのHClの追加によりpHを8.0に調整する。
PBS緩衝液(pH7.3)を、805.5gの塩化ナトリウム(Fisher Scientific.)、606mgのリン酸ナトリウム二塩基無水物(Fisher Scientific.)、247mgのリン酸ナトリウム一塩基無水物(Fisher Scientific.)を溶解させることで調製し、その後、無菌ろ過した蒸留水を用いて200gに定量化(QS)する。
PBS pH7.3中に耳用薬剤2%の溶液を、PBS緩衝液中で適切な量の耳用薬剤を溶解させることで調製し、その後、PBS緩衝液を用いて10gに定量化(QS)する。
1mLのサンプルを、個々に、3mLねじ式キャップガラスバイアル(ゴム内張付き)中に配し、堅く閉める。バイアルを、Market Forge‐sterilmatic autoclave(設定、スローリキッド)に配し、250°Fで15分間、滅菌する。オートクレーブ後、サンプルを、放置し室温まで冷却し、その後、冷蔵庫に置く。サンプルを、冷却している間、バイアルを混ぜることによって均質化する。
外観(例えば、変色及び/又は沈殿物)を観察し、記録する。HPLC分析を、全部で15分間の間、(0.05%のTFAを含んでいる、吸水性アセトニトリル混合液)の30〜80のアセトニトリル勾配(1〜10分)を用いる、Luna C18(2)、3μm、100A、250×4.6mmカラム)を備えているAgilent 1200を用いて行う。サンプルを、サンプルの30μLを採ることによって希釈化し、1.5mLの1:1アセトニトリル水混合液で溶解する。オートクレーブ滅菌したサンプル中の耳用薬剤の純度を記録する。
一般に、組成物は、2%以上の任意の個々の不純物(例えば、耳用薬剤の分解産物)を有するべきでなく、好ましくは1パーセント以下であるべきである。さらに、組成物は、生産と貯蔵の後に、沈殿したり、または変色したりしてはならない。
例6における手順に従って調製した、SB−203580、PD169316、SB202190、RWY67657、AM−111、微粉にしたSB−203580、または微粉にしたAM−111を含む組成物を、上記の手順を用いて試験し、オートクレーブ滅菌の工程の間の分解に対するpHの影響を決定する。
例8:PBS中の17%のポロクサマー407NF/2%の耳用薬剤の放出特性および粘度に対するオートクレーブ滅菌の影響
例6(オートクレーブされたものと、されていないもの)からのサンプルの一定分量を、放出特性および粘度の測定値のために評価し、ゲルの性質による加熱滅菌法の影響を評価する。
溶解を、Snapwell(0.4μmの孔径を有する、直径6.5mmのポリカーボネート膜)内で、37℃で行う。0.2mLのゲルを、snapwellへ置き、放置し硬化させ、それから、0.5mLを、リザーバに置き、Labline orbit shakerを用いて70rpmで振り混ぜる。サンプルを、1時間毎に採取する(0.1mLを取り除き、暖かい緩衝液で交換する)。ポロクサマー濃度を得るために、外部構成標準曲線と対照して、チオシアン酸コバルト法を用いて、624nmでUVによって、サンプルを分析する。手短に説明すると、20μLのサンプルを、1980μLの15mMのチオシアン酸コバルト溶液に混合し、吸収率を、Evolution 160UV/V分光光度計(Thermo Scientific)を用いて、625nmで測定する。
放出された耳用薬剤を、Korsmeyer−Peppasの式に当てはめる。
Qは時間tにおいて放出される活性薬剤の量であり、Qαは活性薬剤の全放出量であり、kはn次の放出定数であり、nは溶解機構に関する無次元数であり、bは軸切片であり、n=lがエロージョン抑制機構を特徴づける初期バースト放出機構を特徴づけている。平均溶解時間(MDT)は、医薬分子が放出前にマトリクス内にとどまっている異なる時間間隔の和を分子の総数で除したもので、次の式によって算出される。
粘性物の測定を、ウォータージャケット温度制御ユニット(1.6℃/分で15乃至34℃まで温度に勾配が付けられている)を装備している(ずり速度0.31s−1)0.08rpmで回転するCPE−51スピンドルを備えているBrookfield viscometer RVDV−II+Pを用いて行う。Tgelを、粘性の増加がゾル‐ゲルの遷移に起因して起こる、曲線の屈曲点として定める。
例6の手順によって調製した、SB−203580、PD169316、SB202190、RWY67657、AM−111、微粉にしたSB−203580、または微粉にしたAM−111を含む組成物を、上記の手順を用いて試験し、Tgelを決定する。
例9:溶液Aの加熱滅菌(加圧減菌)後の2%の耳用薬剤および17%のポロクサマー407NFを含む組成物の分解産物および粘度に対する第2のポリマーの添加の影響
溶液A:PBS緩衝液中にカルボキシルメチルセルロース(CMC)を含むpH7.0の溶液を、78.4の無菌ろ過蒸留水で溶解させた、178.35mgの塩化ナトリウム(Fisher Scientific)、300.5mgのリン酸ナトリウム二塩基無水物(Fisher Scientific)、126.6mgのリン酸ナトリウム一塩基無水物(Fisher Scientific)を溶解させることによって調製し、その後、1gのBlanose 7M65CMC(Hercules、5450cP@2%の粘度)を緩衝液中に振り入れ、溶解を助けるために加熱し、その後、溶液を冷却する。
PBS緩衝液中に、17%ポロクサマー407NFと1%CMCと2%の耳用薬剤を含む、pH7.0の溶液を、氷冷水浴槽内で8.1gの溶液Aを冷却し、その次に、適切な量の耳用薬剤を加え、その後混合することによって作る。1.74gのポロクサマー407NF(Spectrum Chemicals)を、混合している間に、冷溶液内に振り入れる。混合液を、さらに、全てのポロクサマーが完全に溶解するまで、混合する。
前記サンプルの2mLを、3mLのねじ口ガラスバイアル(ゴム内張付き)内に配し、堅く閉める。バイアルを、Market Forge‐sterilmatic autoclave(設定、スローリキッド)に配し、250°Fで25分間滅菌する。オートクレーブ後、サンプルを、放置し室温まで冷却し、その後、冷蔵庫に置く。サンプルを、バイアルを冷却している間、混ぜることによって均質化する。
オートクーブ後、沈殿又は変色を観察する。HPLC分析を、全部で15分間の間、(0.05%のTFAを含んでいる、吸水性アセトニトリル混合液)の30〜80のアセトニトリル勾配(1〜10分)を用いる、Luna C18(2)、3μm、100Å、250×4.6mmカラム)を備えているAgilent 1200を用いて行う。サンプルを、サンプルの30μLを採ることによって希釈化し、1.5mLの1:1アセトニトリル水混合液で溶解する。オートクレーブ滅菌したサンプル中の耳用薬剤の純度を記録する。
粘性物の測定を、ウォータージャケット温度制御ユニット(1.6℃/分で15乃至34℃まで温度に勾配が付けられている)を装備している(ずり速度0.31s−1)0.08rpmで回転するCPE−51スピンドルを備えているBrookfield viscometer RVDV−II+Pを用いて行う。Tgelを、粘度の増加がゾル‐ゲルの遷移に起因して起こる、曲線の屈曲点として定める。
溶解を、snapwell(0.4μmの孔径を有する、直径6.5mmのポリカーボネート膜)内で、37℃で行い、0.2mLのゲルを、snapwellへ置き、放置し硬化させ、それから、0.5mLを、リザーバに置き、Labline orbit shakerを用いて70rpmで振り混ぜる。サンプルを、1時間毎に採取する(0.1mLを取り除き、暖かい緩衝液で交換する)。耳用薬剤の濃度を得るために、外部構成標準曲線と対照して、245nmでUVによって、サンプルを分析する。
SB−203580、PD169316、SB202190、RWY67657、AMー111、微粉にしたSB−203580、または微粉にしたAM−111含む組成物を、上記の手順を用いて試験し、過熱滅菌(加圧減菌)後の2%の耳用薬剤および17%のポロクサマー407NFを含む組成物の分解産物および粘度に対する第2のポリマーの添加の影響を決定する。
例10:加熱滅菌(加圧減菌)後のポロクサマー407NFを含む組成物の分解産物に対する緩衝液のタイプの影響
TRIS緩衝液を、377.8mgの塩化ナトリウム(Fisher Scintific)と、602.9mgのTromethamine(Sigma ChemicalCo.)を溶解することによって調製し、その後、無菌ろ過蒸留水(DI water)で100gに定量化(QS)し、pHを1MのHClで7.4に調節した。
TRIS緩衝液中に25%のポロクサマー407溶液を含む保存液:
重さ45gのTRIS緩衝液を、氷冷浴槽内で冷やし、それから、15gのポロクサマー407NF(Spectrum Chemicals)を混合する間、緩衝液へと振り入れる。更に、全てのポロクサマーが完全に溶解するまで、混合液を混合する。
一連の組成物を、上記保存液によって調製する。適切な量の耳用薬剤(またはその塩或いはそのプロドラッグ)及び/又は微粉にされた/コーティングされた/リポソームの粒子状物質としての耳用薬剤(またはその塩もしくはそのプロドラッグ)を全ての実験に使用する。
PBS緩衝液中に25%のポロクサマー407溶液を含む保存液(pH7.3):
704mgの塩化ナトリウム(Fisher Scientific)、601.2mgのリン酸ナトリウム二塩基無水物(Fisher Scientific)、242.7mgのリン酸ナトリウム一塩基無水物(Fisher Scientific)を、140.4gの無菌ろ過蒸留水で溶解することによって、PBS緩衝液を調製する。溶液を、氷冷水浴槽で冷却し、その後、50gのポロクサマー407NF(SPECTRUM CHEMICALS)を、混合している間に、冷溶液内に振り入れる。ポロクサマーが完全に溶解するまで、混合液をさらに混合する。
一連の組成物を、上記保存液によって調製する。適切な量の耳用薬剤(またはその塩或いはそのプロドラッグ)及び/又は微粉にされた/コーティングされた/リポソームの粒子状物質としての耳用薬剤(またはその塩もしくはそのプロドラッグ)を全ての実験に使用する。
表2と3は、上記述の手順を用いて調製したサンプルの一覧表である。適切な量の耳用薬剤を各サンプルに加え、サンプル中に2%の最終濃度の耳用薬剤を提供する。
1mLのサンプルを、個々に、3mLねじ式キャップガラスバイアル(ゴム内張付き)中に配し、堅く閉める。バイアルを、Market Forge−sterilmatic autoclave(設定、スローリキッド)内に置き、250°Fで25分間滅菌する。オートクレーブ後、サンプルを放置し、室温になるまで冷却する。バイアルを、冷蔵庫に置き、サンプルを均質化するために冷却する間、混合する。
HPLC分析を、全部で15分間の間、(0.05%のTFAを含んでいる、吸水性アセトニトリル混合液)の30〜80のアセトニトリル勾配(1〜10分)を用いる、Luna C18(2)、3μm、100A、250×4.6mmカラム)を備えているAgilent 1200を用いて行う。サンプルを、サンプルの30μLを採ることによって希釈化し、1.5mLの1:1アセトニトリル水混合液で溶解する。オートクレーブ滅菌したサンプル中の耳用薬剤の純度を記録する。TRIS緩衝液とPBS緩衝液の濃度の安定性を比較する。
粘性物の測定を、ウォータージャケット温度制御ユニット(1.6℃/分で15乃至34℃まで温度に勾配が付けられている)を装備している(ずり速度0.31s−1)0.08rpmで回転するCPE−51スピンドルを備えているBrookfield viscometer RVDV−II+Pを用いて行う。Tgelを、粘度の増加がゾル‐ゲルの遷移に起因して起こる、曲線の屈曲点として定める。加圧減菌の後に何の変化も示さない組成物だけを分析する。
SB−203580、PD169316、SB202190、RWY67657、AM−111、微粉にしたSB−203580、または微粉にしたAM−111を含む組成物を、上記の手順を用いて試験し、加熱滅菌(加圧減菌)後の2%の耳用薬剤および17%のポロクサマー407NFを含む組成物の分解産物および粘度に対する第2のポリマーの添加の影響を決定する。微粉にした耳用薬剤を含む組成物の安定性を、微粉にしていない耳用薬剤と比較する。
例11:パルス状放出の耳用組成物
本明細書に記載の手順を使用して、パルス状放出の耳用組成物を作るために、ジアゼパムを使用する。17%のポロクサマー407の溶液を、351.4gの塩化ナトリウム(Fisher Scientific.)、302.1gのリン酸ナトリウム二塩基無水物(Fisher Scientific.)、122.1mgのリン酸ナトリウム一塩基無水物(Fisher Scientific.)、及び適切な量の耳用薬剤を、79.3gの無菌ろ過された蒸留水で溶解することにより調製する。溶液を、氷冷槽中で冷却し、その後17.05gのポロクサマー407NF(SPECTRUM CHEMICALS)を、混合する間、冷却した溶液中へ振り入れる。ポロクサマーが完全に溶解するまで、混合液をさらに混合する。この溶液のpHを測定する。ジアゼパムの送達した量の20%を、βシクロデキストリンの助けによって、17%ポロクサマー溶液内で溶解する。その後、残り80%の耳用薬剤を、混合液に加え、最終組成物を、本明細書に記載の任意の手順を用いて調製する。
本明細書に記載の手順と例によって調製した、SB−203580、PD169316、SB202190、RWY67657、AM−111、微粉にしたSB−203580、または微粉にしたAM−111を含むパルス状放出組成物を、本明細書に記載の手順を用いて試験し、パルス状放出特性を決定する。
例12:PBS中の17%のポロクサマー407/2%の耳用薬剤/78Ppmエバンスブルーの調製
5.9mgのエバンスブルー(Sigma Chemical Co)を、1mLのPBS緩衝液で溶解することによって、PBS緩衝液中のエバンスブルーの保存溶液(5.9mg/mL)を調製する。704mgの塩化ナトリウム(Fisher Scientific)、601.2mgのリン酸ナトリウム二塩基無水物(Fisher Scientific)、242.7mgのリン酸ナトリウム一塩基無水物(Fisher Scientific)を、140.4gの無菌ろ過蒸留水で溶解することによって調製する。
(例9におけるように)PBS緩衝液中に25%のポロクサマー407溶液を含む保存溶液を、研究に使用する。適切な量の耳用薬剤を、25%のポロクサマー407溶液を含む保存溶液に加え、2%の耳用薬剤を含む組成物を調製する(表4)。
例12における手順に従って調製した、SB−203580、PD169316、SB202190、RWY67657、AM−111、微粉にしたSB−203580、または微粉にしたAM−111を含む組成物を、0.22μmのPVDFシリンジフィルタ(Millipore corporation)を介してろ過滅菌しオートクレーブ滅菌する。
上記組成物を、本明細書に記載の手順によって、モルモットの中耳に投与し、接触しているゲルへの組成物能力と、ゲルの位置を、投与後と投与24時間後に確認する。
例13:可視化染料を加えて、および加えないでの、ポロクサマー407組成物のターミナル(terminal)滅菌
リン酸塩緩衝液pH7.3中の17%のポロクサマー407/2%の耳用薬剤:709mgの塩酸ナトリウム(Fisher Scientific)、742mgのリン酸ナトリウム二塩基無水物USP(Fisher Scientific)、251.1mgのリン酸ナトリウム一塩基一水和物USP(Fisher Scientific)、および適切な量の耳用薬剤を、158.1gの無菌ろ過蒸留水で溶解する。溶液を、氷冷水浴槽内で冷却し、その後、34.13gのポロクサマー407NF(Spectrum chemicals)を、混合している間、冷溶液内に振り入れる。混合液を、ポロクサマーが完全に溶解するまでさらに混合する。
リン酸塩緩衝液中の17%のポロクサマー407/2%の耳用薬剤/59エバンスブルー:リン酸塩緩衝液中の17%のポロクサマー407/2%の耳用薬剤の2mLを採り、PBS緩衝液中の5.9mg/mLのエバンスブルー(Sigma−Aldrich chemical Co)溶液2mLを加える。
リン酸塩緩衝液中の25%のポロクサマー407/2%の耳用薬剤:330.5mgの塩酸ナトリウム(Fisher Scientific)、334.5mgのリン酸ナトリウム二塩基無水物USP(Fisher Scientific)、125.9mgのリン酸ナトリウム一塩基一水和物USP(Fisher Scientific)、および適切な量の耳用薬剤を、70.5gの無菌ろ過蒸留水で溶解する。
溶液を、氷冷水浴槽内で冷却し、その後、25.1gのポロクサマー407NF(Spectrum chemicals)を、混合している間、冷溶液内に振り入る。混合液を、ポロクサマーが完全に溶解するまでさらに混合する。
リン酸塩緩衝液中の25%のポロクサマー407/2%の耳用薬剤:リン酸塩緩衝液中の25%ポロクサマー407と2%の耳用薬剤の2mLを採り、PBS緩衝液中の5.9mg/mLのエバンスブルー(Sigma−Aldrich chemical Co)溶液の2mLを加える。
組成物の2mLを、2mLのガラスバイアル(Wheaton serum glassvial)に入れ、13mmのブチルスチレン(butyl str)(キンブルストッパー)で密閉し、13mmのアルミニウムシールによって圧着する。バイアルを、MarketForge−sterilmatic autoclave(設定、スローリキッド)内に配し、25分間250°Fで滅菌する。オートクレーブした後、サンプルを、放置し室温まで冷却し、その後、冷蔵庫に入れる。バイアルを、冷蔵庫に入れ、冷却している間混合し、サンプルを均質化する。オートクレーブ後のサンプルの溶解又は沈殿を記録する。
HPLC解析を、30〜95のメタノール:アセテート緩衝液pH4勾配(1〜6分)を用いる、Luna C18(2)、3μm、100Å、250×4.6mmカラム)を備えたAgilent 1200を用いて行い、その後、全部で22分間の間、11分間均一溶媒を用いて行う。サンプルの30μLを採ることによってサンプルを希釈し、0.97mLの水で溶解する。主なピークを、以下の表に記録する。オートクレーブ前の純度は、この方法を使用して常に99%以上である。
粘度の測定を、ウォータージャケット温度制御ユニット(1.6℃/分で15乃至34℃まで温度に勾配が付けられている)を装備している(ずり速度0.31s−1)0.08rpmで回転されるCPE−51スピンドルを備えているBrookfield viscometer RVDV−II+Pを用いて行う。Tゲルを、粘性の増加がゾル‐ゲルの遷移に起因して起こる、曲線の屈曲点として定める。
例11における手順に従って調製した、SB−203580、PD169316、SB202190、RWY67657、AM−111、微粉にしたSB−203580、または微粉にしたAM−111を含む組成物を、上記の手順を用いてテストし、組成の安定性を決定する。
例14:放出特性のインビトロでの比較
溶解を、Snapwell(0.4μmの孔径を有する、直径6.5mmのポリカーボネート膜)内で、37℃で行い、本明細書に記載のゲル組成物0.2mLを、snapwellへ置き、放置し硬化させ、それから、0.5mLを、リザーバに置き、Labline orbit shakerを用いて70rpmで振り混ぜる。サンプルを、1時間毎に採取する(0.1mLを取り除き、暖かい緩衝液で交換する)。耳用薬剤の濃度を得るために、外部構成標準曲線と対照して、245nmでUVによって、サンプルを分析する。プルロニック濃度をチオシアン酸コバルト法を用いて624nmで分析する。%P407の関数としての平均溶解時間(MDT)の相対ランクオーダーを決定する。組成物平均溶解時間(MDT)とP407濃度との間の線形的な関係は、耳用薬剤は、ポリマーゲル(ポロクサマー)のエロージョンによって放出されるのであり、拡散を介さないことを示している。非線形の関係は、拡散及び/又はポリマーゲルの変質を介した耳用薬剤の放出を示す。
代替的に、サンプルを、Li Xin−Yuの文献(Acta Pharmaceutica Sinica 2008,43(2):208−203)に記載の方法を用いて分析し、そして、%P407の関数としての平均溶解時間(MDT)のランクオーダーを決定する。
本明細書に記載の手順に従って調製した、SB−203580、PD169316、SB202190、RWY67657、AM−111、微粉にしたSB−203580、または微粉にしたAM−111を含む組成物を、上述の手順を用いて試験し、耳用薬剤の放出特性を決定する。
例15:ゲル化温度のインビトロでの比較
ポロクサマー407のゲル化温度及び粘度に対するポロクサマー188と耳用薬剤の影響を、ゲル化温度を操作する目的で評価する。
(例9におけるような)PBS緩衝液中の25%のポロクサマー407保存液と(例11におけるような)PBS溶液を使用する。BASFからのポロクサマー188NFを使用する。適切な量の耳用薬剤を、表5に記載の溶液に加え、耳用薬剤の組成物を作る。
上述の組成物の平均溶解時間、粘度およびゲル温度を上記の手順を用いて測定する。
得られたデータを式にあてはめ、式を利用して、F127/F68混合物(17〜20%のF127と0〜10%のF68)のゲル化温度を概算することができる。
Tgel=−1.8(%F127)+1.3(%F68)+53
得られたデータを式にあてはめ、式を利用して、例13と15で得られた結果を用いて、F127/F68混合物(17〜25%のF127と0〜10%のF68)のゲル化温度に基づいて平均溶解時間(時間)を概算することができる。
MDT=−0.2(Tgel)+8
SB−203580、PD169316、SB202190、RWY67657、AM−111、微粉にしたSB−203580、または微粉にしたAM−111を含む組成物を、表5に記載の溶液に適切な量の耳用薬剤を添加することによって調製する。組成物のゲル温度を、上記の手順を用いて決定する。
例16:滅菌ろ過のための温度領域の決定
目詰まりの可能性を減らすために、滅菌ろ過をする必要がある温度幅を導くために低温での粘度を測定する。
粘度の測定を、ウォータージャケット温度制御ユニット(1.6℃/分で15乃至25℃まで温度に勾配が付けられている)を装備している(ずり速度7.5、37.5および75s−1)1.5rpmおよび10rpmで回転するCPE−40スピンドルを備えているBrookfield viscometer RVDV−II+Pを用いて行う。17%のプルロニックP407のTgelを、耳用薬剤の増加する濃度の関数として決定する。17%のプルロニック組成物に対するTgelの増加を以下によって概算する。
ΔTgel=0.93[%耳用薬剤]
本明細書に記載の手順に従って調製した、SB−203580、PD169316、SB202190、RWY67657、AM−111、微粉にしたSB−203580、または微粉にしたAM−111を含む組成物を、上記の手順を用いて試験し、滅菌ろ過のための温度幅を決定する。Tgelおよび組成物の見かけ粘度に対する耳用薬剤の増加量の添加の影響を記録する。
例17:製造条件の決定
8リットルのバッチの17%のP407プラセボを作り、製造/ろ過条件を評価する。プラセボを、3ガロンのSS圧力容器内に蒸留水6.4リットルを充填して製造し、一晩冷蔵庫内に放置して冷ます。翌朝、タンクを取り出し(水温5℃、RT18℃)、塩化ナトリウム48g、二塩基二水和物リン酸ナトリウム29.6g、一塩基一水和物リン酸ナトリウム10gを加え、オーバーヘッドミキサ(IKARW20@1720rpm)で溶解する。半時間後、緩衝液が溶解すると(溶液温度8℃、RT18℃)、ポロクサマー407NF(spectrum chemicals)1.36kgを、15分間隔で緩衝液の溶液中にゆっくりと散水し(溶液温度12℃、RT18℃)、その後、速度を2430rpmに増速する。さらに1時間混合した後、混合速度を1062rpmに減速する(完全溶解)。
溶液の温度を19度で保持するために、室温は25℃以下に維持する。溶液の温度は、容器の冷蔵/冷却を要することなく、製造開始の3時間まで19℃以下に保持する。
17.3cm2の表面積を持つ3つの異なるSartoscale(Sartorius Stedim)フィルターを、20pciおよび14℃の溶液で評価する。
1)Sartopore2、0.2μm 5445307HS−FF(PES)、16mL/分の流速
2)SartobranP、0.2μm 5235307HS−FF(セルロースエステル)、12mL/分の流速
3)Sartopore2 XLI、0.2μm 5445307IS−FF(PES)、15mL/分の流速
Sartopore2フィルター5441307H4−SSを使用し、16pciの圧力下で溶液の温度で、0.015m2の表面積を有する0.45μm、0.2μmのSartopore2 150滅菌カプセル(Sartorius Stedim)を用いてろ過を行う。流速を16psi、約100mL/分で測定し、一方、流速は変化させず温度を6.5〜14℃の範囲に維持する。溶液の圧力降下と温度上昇は、溶液の粘度増加に起因する流速の減少を引き起こす。工程中、溶液の変質を監視する。
Pluronic(登録商標)のUV/Visスペクトルを、Evolution 160UV/Vis(Thermo Scientific)によって得る。250乃至300nmの幅におけるピークは、原材料(ポロクサマー)に存在するBHT安定剤によるものである。表8に、濾過前後の上記の溶液の物理化学的性質を示す。
上記の工程は、17%P407組成物の製造に適用可能であり、室温条件の温度分析を含む。好ましくは、19℃の最高温度は製造中の容器の冷却のコストを低減する。いくつかの例において、ジャケット付きの容器が、さらなる溶液の温度制御のために用いられ、製造の諸問題を解決している。
例18:オートクレーブ滅菌された微粉にしたサンプルからの耳用薬剤のインビトロでの放出
TRIS緩衝液中の薬剤17%のポロクサマー407/1.5%の耳用薬剤:250.8mgの塩化ナトリウム(Fisher Scintific)、および302.4mgのトロメタミン(Tromethamine)(Sigma ChemicalCo.)を、39.3gの無菌ろ過蒸留水中に溶解し、1MのHClでpHを7.4に調節する。上記の溶液4.9を用い、適切な量の微粉にした耳用薬剤を懸濁し、よく分散する。組成物の2mLを、2mLのガラス製バイアル(Wheatonserum glass vial)に移し、13mmのブチルスチレン(キンブルストッパー)で密閉し、13mmのアルミニウムシールによって圧着する。バイアルを、MarketForge−sterilmatic autoclave(設定、スローリキッド)内に配し、25分間250°Fで滅菌する。オートクレーブした後、サンプルを、放置し室温まで冷却する。バイアルを、冷蔵庫に入れ、冷却している間混合し、サンプルを均質化する。オートクレーブ後のサンプルの溶解又は沈殿を記録する。
溶解を、Snapwell(0.4μmの孔径を有する、直径6.5mmのポリカーボネート膜)内で、37℃で行う。0.2mLのゲルを、snapwellへ置き、放置し硬化させ、それから、0.5mLのPBS緩衝液を、リザーバに入れ、Labline orbit shakerを用いて70rpmで振り混ぜる。サンプルを、1時間毎に採取する(耳用薬剤の溶解度を促進するために、0.1mLを取り除き、2%のPEG−40水素添加されたひまし油(BASF)を含む暖かい緩衝液で交換する)。耳用薬剤の濃度を得るために、外部構成標準曲線と対照して、245nmでUVによって、サンプルを分析する。放出割合を、本明細書に記載の他の組成物と比較する。MDT時間を、各サンプルに対して計算する。
17%ポロクサマー系における耳用薬剤の溶解度を、エッペンドルフ遠心器5424を用いて、10分間15000rpmでサンプルを遠心処理後、上澄み中の耳用薬剤の濃度を測定することによって評価する。上澄み中の耳用薬剤濃度は、外部較正標準曲線と対照して、245nmでUVによって測定する。
本明細書に記載の手順に従って準備をした、SB−203580、PD169316、SB202190、RWY67657、AM−111、微粉にしたSB−203580、または微粉にしたAM−111を含む組成を試験し、各組成物からの耳用薬剤の放出割合を決定する。
例19:カルボキシルメチルセルロースナトリウムを含む組成物の放出割合またはMDTおよび粘度
17%のポロクサマー407/2%の耳用薬剤/1%のCMC(Hercules Blanose 7M):PBS緩衝液中のカルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC)溶液(pH7.0)を、滅菌ろ過した蒸留水78.1g中に、205.6mgの塩化ナトリウム(Fisher Scientific)、372.1mgの一塩基リン酸塩二水和物リン酸ナトリウム(Fisher Scientific)、106.2mgの一塩基一水和物リン酸ナトリウム(Fisher Scientific)を溶解させることによって調製する。1gのBlanose7MCMC(Hercules、粘度533cP@2%)を、緩衝溶液中に振り入れ、溶解を容易にするために加熱し、それから溶液を冷却し、17.08gのポロクサマー407NF(Spectrum Chemicals)を、混合している間、冷却した溶液中に振り入れる。PBS緩衝液中に17%のポロクサマー407NF/1%のCMC/2%の耳用薬剤を含む組成物を、上記溶液9.8gに適切な量の耳用薬剤を添加/溶解して、全ての耳用薬剤が完全に溶解するまで混合して製造する。
17%のポロクサマー407/2%の耳用薬剤/0.5%のCMC(Blanose 7M65):PBS緩衝液中のカルボキシメチルセルロース(CMC)ナトリウム溶液(pH7.2)を、滅菌ろ過された蒸留水78.7g中に、257mgの塩化ナトリウム(Fisher Scientific)、375mgの二塩基二水和物リン酸ナトリウム(Fisher Scientific)、108gの一塩基一水和物リン酸ナトリウム(Fisher Scientific)を溶解させることによって調製し、0.502gのBlanose 7M65CMC(Hercules、粘度5450cP@2%)を、緩衝溶液中に振り入れ、溶解を容易にするために加熱し、それから溶液を冷却し、17.06gのポロクサマー407NF(Spectrum Chemicals)を、混合している間、冷却した溶液中に振り入れる。PBS緩衝液中に17%のポロクサマー407/1%のCMC/2%の耳用薬剤の溶液を、上記溶液9.8gに適切な量の耳用薬剤を添加/溶解して、全ての耳用薬剤が完全に溶解するまで混合して製造する。
17%のポロクサマー407NF/2%の耳用薬剤/0.5%のCMC(Blanose 7H9):PBS緩衝液中のカルボキシメチルセルロース(CMC)ナトリウム溶液(pH7.3)を、滅菌ろ過した蒸留水78.6g中に、256.5mgの塩化ナトリウム(Fisher Scientific)、374mgの二塩基二水和物リン酸ナトリウム(FisherScientific社)、107mgの一塩基一水和物リン酸ナトリウム7H9CMC(Hercules、粘度5600cP@1%)を緩衝溶液中に振り入れ、溶解を容易にするために加熱し、ついで溶液を冷却し、17.03gのポロクサマー407NF(Spectrum Chemicals)を、混合している間、冷却した溶液中に振り入れる。PBS緩衝液中の17%のポロクサマー407NF/1%のCMC/2%の耳用薬剤の溶液を、上記の溶液9.8gに適切な量の耳用薬剤を添加/溶解して、すべての耳用薬剤が完全に溶解するまで混合して、製造する。
粘度の測定を、ウォータージャケット温度制御ユニット(1.6℃/分で10乃至34℃まで温度に勾配が付けられている)を装備している(ずり速度0.6s−1)0.08rpmで回転するCPE−40スピンドルを備えているBrookfield viscometer RVDV−II+Pを用いて行う。Tgelを、粘性の増加がゾル‐ゲルの遷移に起因して起こる、曲線の屈曲点として定める。
溶解を、snapwell(0.4μmの孔径を有する、直径6.5mmのポリカーボネート膜)内で、37℃で行う。0.2mLのゲルを、snapwellへ置き、放置し硬化させ、それから、0.5mLを、リザーバに置き、Labline orbit shakerを用いて70rpmで振り混ぜる。サンプルを、1時間毎に採取する(0.1mLを取り除き、暖かい緩衝液で交換する)。耳用薬剤の濃度を得るために、外部構成標準曲線と対照して、245nmでUVによって、サンプルを分析する。MDT時間を、上記の組成物の各々に対して計算する。
上記の手順によって調整した、SB−203580、PD169316、SB202190、RWY67657、AM−111、微粉にしたSB−203580、または微粉にしたAM−111をを含む組成物を、上記の手順を用いて試験し、カルボキシルメチルセルロースナトリウムを含む組成物の放出割合および/または平均溶解時間および粘度の間の関係を決定する。平均溶解時間(MDT)と見かけ粘度(ゲル化温度より2℃低い温度で測定)の間の任意の相関を記録する。
例20:正円窓膜上への増強された粘度の抗アポトーシス剤または前アポトーシス剤の組成物の適用
例2に従って組成物を調製し、15ゲージのルアーロックの使い捨ての針に取り付けられた5mlのシリコン処理されたガラス製シリンジへと充填する。リドカインは、鼓膜に対して局所的に適用され、中耳の空洞を可視化するために小さい切込みを作る。針先を、正円窓膜上へ導き、組成物を、直接円形窓膜上に適用する。
例21:モルモットにおけるアポトーシス調節組成物の中耳内の注入のインビボ実験
21匹のモルモット(Charles River、体重200−300gの雌)の群に、0〜6%の耳用薬剤を含む本明細書に記載の異なるP407−DSP 50μLを、内耳内に注入する。各組成物に対するゲル排出の時間経過を決定する。組成物のより早いゲル排出の時間経過は、より小さい平均溶解時間(MDT)を示す。従って、組成物内の抗アポトーシス剤または前アポトーシス剤の注入量と濃度を試験して、前臨床研究および臨床研究のための最適なパラメーターを決定する。
例22:インビボでの持続放出の動力学
21匹のモルモット(Charles River、体重200−300gの雌)の群に、280mOsm/kgで緩衝された、組成物の重量で1.5〜4.5%の耳用薬剤を含む50μLの17%プルロニックF−127組成物を中耳内に注入する。1日目に動物に投薬する。組成物に対する放出特性は、外リンパの分析に基づいて決定する。
例23:音響外傷マウスモデルにおけるベラパミルの評価
中毒性難聴の誘導
20〜24gの重さの12匹のハーランスプラギュ−ダウレイ(Harlan Sprague−Dawley)のマウスを用いる。4−20mHzでの聴性脳幹反応(AABR)の基準値を測定する。マウスに麻酔をかけ、30分間、120dBの音の大きさで、6kHzの持続的な純音に曝露する。
処置
対照群マウス(n=10)に、音響外傷の後、生理食塩水を投与する。実験グループ(n=10)に、音響外傷の後、ベラパミル(体重1kgにつき2.0mg)を投与する。
電気生理学的試験
各々の動物の、各々の耳へのクリック刺激に対する、聴覚脳幹反応閾値(ABR)の聴覚閾値を最初に測定し、実験手順の1週間後にも測定する。動物を、加温パッド上の単層の聴覚ブース(acoustic booth)(Industrial Acoustic Co, Bronx, NY, USA)内に入れる。皮下電極(Astro―Med,Inc. Crass Instrument Division, West Waewick, RI, USA)を、頭頂(探査電極)、乳様突起(基準)、及び後肢(アース)に挿入する。クリック刺激(0.1ミリ秒)をコンピュータで起こし、外側の聴覚道に配置するため、耳鏡に取り付けられたBeyer DT 48,200オームスピーカーへ送達する。記録されたABRは、電池式のプリアンプにより増幅されるとともにデジタル化され、タッカーデービステクノロジーABR記録システムへ挿入される。この記録システムは、刺激のコンピュータ制御、記録、及び、平均関数を提供する(Tucker Davis Technology, Gainesville, FL, USA)。続いて、減少する振幅刺激が動物に対する5−dB段階において表され、記録された刺激固定活性(stimulus―locked activity)は平均化され(n=512)、表示される。閾値は、明白に検出可能な反応がない記録と、明確に識別可能な反応を備える記録との間の刺激レベルとして定義される。
例24:音響外傷マウスモデルにおけるAM−111の評価
中毒性難聴の誘導
20〜24gの重さの12匹のハーランスプラギュ−ダウレイ(Harlan Sprague−Dawley)のマウスを用いる。4−20mHzでの聴性脳幹反応(ABR)の基準値を測定する。マウスに麻酔をかけ、30分間、120dBの音の大きさで、6kHzの持続的な純音に曝露する。
処置
対照群マウス(n=10)に、音響外傷の後、生理食塩水を投与する。実験グループ(n=10)に、音響外傷の後、AM−111(体重1kgにつき3.0mg)を投与する。
電気生理学的試験
各々の動物の、各々の耳へのクリック刺激に対する、聴覚脳幹反応閾値(ABR)の聴覚閾値を最初に測定し、実験手順の1週間後にも測定する。動物を、加温パッド上の単層の聴覚ブース(acoustic booth)(Industrial Acoustic Co, Bronx, NY, USA)内に入れる。皮下電極(Astro―Med,Inc. Crass Instrument Division, West Waewick, RI, USA)を、頭頂(探査電極)、乳様突起(基準)、及び後肢(アース)に挿入する。クリック刺激(0.1ミリ秒)をコンピュータで起こし、外側の聴覚道に配置するため、耳鏡に取り付けられたBeyer DT 48,200オームスピーカーへ送達する。記録されたABRは、電池式のプリアンプにより増幅されるとともにデジタル化され、タッカーデービステクノロジーABR記録システムへ挿入される。この記録システムは、刺激のコンピュータ制御、記録、及び、平均関数を提供する(Tucker Davis Technology, Gainesville, FL, USA)。続いて、減少する振幅刺激が動物に対する5−dB段階において表され、記録された刺激固定活性(stimulus―locked activity)は平均化され(n=512)、表示される。閾値は、明白に検出可能な反応がない記録と、明確に識別可能な反応を備える記録との間の刺激レベルとして定義される。
例25:正円窓膜への増強された粘度のAM−111組成物の適用
例2に従って組成物を調製し、15ゲージのルアーロックの使い捨ての針に取り付けられた5mlのシリコン処理されたガラス製シリンジへと充填する。AM−111は、鼓膜に対して局所的に適用され、中耳の空洞を可視化するために小さい切込みを作る。針先を、正円窓膜上へ導き、AM−111製剤を、直接円形窓膜上に適用する。
例25−急性音響外傷のためのAM−111中耳内投与の評価
研究目的
本研究の主要な目的は、急性音響外傷のための鼓室内(IT)のAM111処置の安全性及び有効性を評価することである。
原発性結果測定
等しく加重されたエンドポイントとしての純音平均(PTA)および単語認識;語音弁別スコアリングのために、50単語の単音節調システムを使用する;PTAにおける20dB以上の改良、または違いが30dB以上である周波数の全てまたはいくつか、および/またはWDSにおける20dBまたはそれ以上の改良;絶対的な変化に加えて、対側性の耳に関しての回復も決定する。
完全な回復−対側性の語音弁別スコアの5%以内、または対側性のPTAの5dB以内への回復。
研究設計
この研究は、急性音響外傷の処置における鼓室内のAM−111を、プラセボと比較する、多施設、二重盲検、無作為化、プラセボ対照、平行グループ研究である。約140の被験体が本研究に登録され、無作為化順序に基づいた2つの処置グループの1つに対して無作為に選ばれる(1:1)。グループIの被験体は、IT AM−111を受ける(熱可逆性ゲル送達デバイスの2mg/mLのAM−111の1回の注入;週に一度で1か月投与)。グループIIの被験体は、プラゼボIT注入を受ける(熱可逆性ゲル送達デバイスの1回の注入;週に一度で1か月投与)。
聴覚評価
聴覚評価は、以下を含む:
a.純音平均(500Hz、1および2kHz;4、6、および8kHz)。
i.その後、2つのPTA値:低周波値(500Hz−2kHz)および高周波値(4−8kHz)が決定される。
b.鐙骨反射
c.鼓膜聴力検査および音の減衰
d.語音認識閾値
処置を開始する前に、それぞれの被験体の難聴を(研究に割り当てる前に2回、無作為に選ぶ前に1回)測定する。処置の開始後1、2、4及び8週、4及び6カ月での聴覚評価。
算入の主な基準
・18〜75歳の年齢の男性または女性の患者。
・1か月以内に発症した、少なくとも30dBの難聴
除外基準
・直前30日以内に、任意の理由のための以前の経口ステロイド処置より10日以上
・直前14日以内に、急性音響外傷のための以前の経口ステロイド処置より5日以上
・どちらかの耳における波動型聴覚の病歴
本発明の好ましい実施形態が本明細書中で示されるとともに記載されてきたが、このような実施形態はほんの一例として提供されるものである。本明細書中に記載の実施形態の様々な代替形態が、本発明を実行する際に任意に採用される。以下の特許請求の範囲が本発明の範囲を定義するものであり、この特許請求の範囲及びそれらの均等物の範囲内の方法及び構造体がそれによって包含されるものであるということが意図されている。