JP5489038B2 - 緩み止め機能付きナット - Google Patents

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Description

本発明は、螺合結合したナットとボルトの緩みを防ぐため、前記ボルトのねじ溝に嵌め込まれるコイル状に形成された弾性のある金属製線材を用いる緩み止め機能付きナットに関する。
上述の技術の起源は古く、昭和9年には既に「一条の強弾性金属線をその下端より螺巻して使用『ボルト』に螺合せしむべき螺旋部分を捲成し、その上方一捲又は数捲を大捲部分となし、その上方余端を折曲げして下方に導き、螺旋部分の下方一に置いて『ナット』に嵌合せしめ得る如き六角ナットを屈曲形成せしめて成る『ナット』の緩み止め金具の構造」が提案されている。
実公昭10−12319
上記は、一般的な「ボルトのねじ溝に嵌め込まれるコイル状に形成された弾性のある金属製線材を用いる緩止具」の原典となる文献である。この文献は、弾性のある金属線材を「コイル」状に巻いた、所謂「コイルばね」を「ボルトの緩み止め」に用いることができる基本的な原理を示している。以下、本明細書では、これを「緩止コイル」と称する。
上記の特許文献1では、「緩止コイル」は図1の「屈曲形成し螺条部分(103a)」である。この「屈曲形成し螺条部分(103a)」が「直径よりも大巻する部分(103b)」を経て、ナットと接合している部分(103c)」と接合している。前記103bは、コイル上端から金属線を延伸ばし下方向に屈曲させてナットと接合するために(一旦)コイルを一旦“外側”に拡径したものであり、機能的には103bと103cで「ナットと接合」している
基本原理を、図1により説明する。ここで「緩止コイル」の上端は六角ナットに固定されている。下端は自由端とする。これに「ボルト」を螺合(挿入)する−すなわち、ボルトを右回転させると、該ボルトと該緩止コイルの摩擦力の作用により、該緩止コイルは捻られるように回転する。
この時、緩止コイルの「上端」が六角ナットに固定されているため、金属線の弾性により、緩止コイル「緩む」ように(拡径するように)動く。従って、該ボルトと該緩止コイル間の摩擦力は小さくなり、装着(ボルトの挿入)は容易に可能となる。
しかし、取り外す場合は、逆に「径が縮小する」ように力が働く。この場合、該ボルトと該緩止コイル間の摩擦力が増大して(締め付けるような状態になり)、回転が阻止される。
さらに取り外す方向に力を加えると(より締め付けられて)一層強い力で締め付けられる。従って、一旦装着してしまったら、もはや人為的にも「抜く」ことは難しく、極めて強力な「緩止」防止効果がある。
上記の構成では、十分な「緩み防止」の効果を得るには、コイルの内径がボルトの外径より若干小さく(この方が「強い」摩擦力が発生する)する必要があるが、このように“強い摩擦力”が生じるように構成すると、装着時(=ねじ込む時)の「金属線とボルトの摩擦力」も大きくなるため、装着が難しくなる。
これに対して、図2のように、コイルの拡径を人為的に行うための「ツマミ」を具備したものもある。
特開2001−59514
この場合、人手で簡単に拡径できるような弾性では、金属線とボルトの摩擦力も小さく「緩み止」の効果も小さい。しかし、十分な摩擦力を得ようとすると、人手では簡単に拡径できず、非常に使いにくいものとなる。
そのような問題に対応するため、上記特許文献では、装着した段階で「ツマミ」にキャップをする構成を提案している。
例えば、図3のように「緩み止め機能付きナット」を装着した上で、「ツマミ」を固定する「キャップ」を付ける。この場合、同「キャップ」によって「ツマミ」位置が固定されるため、人手によってコイルを拡径できないため、この「キャップ」の装着時には「緩み止」の効果が維持される。
しかし、上述の構成には様々な不都合がある。
第一に「キャップ」を装着は必須となる。すなわち、「キャップ」を装着しないと事実上「緩み止」の効果は期待できない。従って、特許文献1の方法に比べて非常にコストが増大してしまう。
第二に非常に使いにくい。すなわち、一旦装着したボルトを外す場合、上記の「キャップ」を外し、手で「ツマミ」を回してコイルを緩ませつつ、工具を装着して操作することになる。この場合「ツマミ」の位置の問題から、「六角レンチ(「ボックスレンチ」又は「ソケットレンチ」」、や「きく(多角レンチ)」など、上からナットの緩締工具を装着するものは利用できない。
また、横から装着する「スパナ」は利用できるにしても、片手で「ツマミ」を回しつつもう一方の手で操作するため、非常に処理が面倒になる。
このため、上述の構成では、一度「装着」したらメンテナンスは面倒である。
しかし、頑強な金属製部品でも劣化もするし、あるいは、何かの衝撃で破損する可能性もある。特に、航空機や高速鉄道など、使用条件が厳しい環境の中で高い安全性が要求されている場合、部品の劣化や破損(ひび等)の検査・交換が頻繁に行われる(行われなければならない)。
このような「メンテナンス」が頻繁に必要となるものには、上記の各特許文献の「緩み止」は実際問題として使えない。
本発明は上述の問題点を解決するために考案されたものである。
具体的には、「スパナ」、「六角レンチ(ボックスレンチ)」、「きく(多角レンチ)」等々の一般的な工具を用いることで、簡単に「締め付け」あるいは「取り外し」が行える「緩み止め機能付きナット」を提供することにある。
また、例えば上記の「キャップ」のように、コスト増の要因となる部材を使用しない安価な「緩み止め機能付きナット」を提供することにある。
本発明の第の構成は、緩締工具を用いてボルトとナットを容易に螺合・螺脱し得る緩み止め機能付きナットであって、
弾性のある金属線材によって構成された緩止具が、
ルトと螺合した前記ナットから突き出したボルトの突出部分の螺条に嵌合可能であり、金属線を螺巻した緩止コイル部と、
止コイル部の上端から下方に屈曲し、その先端がナットと係合可能な円形状に形成されたナット係合部と、
止コイル部の下端から接線方向に沿ってナットの外縁を越えて延伸させた締付自動調整部を具備し、
ナットの上面に、円環状の細溝から成る緩止具係合部を形成し、
ナットに緩締工具を装着したときに、締付自動調整部が押圧されて緩止コイル部が拡径するように、ナット係合部をナット上面の緩止具係合部に固定し、緩止具をナットに係合させたことを特徴とするものである。
本発明の第2の構成は、上面に円環状の細溝から成る緩止具係合部を有すると共にボルトに対して螺合及び螺脱が可能なナットと、金属線を螺巻し前記ボルトの螺条に対して螺合する緩止コイル部及び前記緩止コイル部の上端から下方に屈曲して前記ナットの上面に係合する円弧状のナット係合部並びに前記緩止コイル部の下端からその接線方向に沿って前記ナットの外縁を越えて延伸する締付自動調整部を備える緩止具と、を有し、前記円弧状のナット係合部を、前記円弧状の前記緩止具係合部に圧入し、前記緩止具を前記ナットに係合させたことを特徴とする、と云うものである
上記第1及び第2の構成によれば、締付自動調整部は、緩止コイル部の下端から「接線方向に沿って」かつ「前記ナットの外縁を越えて」延伸された金属線により構成された締付自動調整部は、「前記ナットの外縁を越えて」延伸されているため、緩締工具が装着されて締付自動調整部が押圧される。この場合、緩止コイル部の下端から「接線方向に沿って」金属線は延伸されて締付自動調整部が構成されているため、押圧された締付自動調整部によって、比較的スムーズに緩止コイルは拡径し、緩止コイルによるボルトの締め付けが緩み、コイルの金属線とボルトの摩擦力が小さくなって、緩締操作が簡単に行える。
また、緩締工具の装着を解くと、締付自動調整部の押圧が解かれるため、緩止コイルが元の形状に戻ってボルトを締め付ける。このため、緩締工具をナットに装着した時だけ「緩止具」は緩むが、他の時はボルトを締め付け「緩み止め」として働くことになる。
さらに金属線を同金属線と略同じか若干細い円環状の細溝に圧入等によって簡単に係合させることができる。
本発明の第3の構成は、上記の第1又は第2の構成に加えて、
締付自動調整部は、ナット外縁近傍に屈曲機能部を有し、さらに、ナット外縁近傍からナット側面に沿って下方向に延伸した側面機能部を有することを特徴とするものである。
上記の屈曲機能部は締付工具の上方からの押圧に対して有効に機能するものである。また、側面機能部は締付工具の側方からの押圧に対して有効に機能するものである。
例えば「スパナ」を使う場合、「スパナ」は多くの場合、ナットの側面から装着させる。
この場合、例えば、スパナを多少ナットの上にずらせて装着したら、側面機能部がない締付自動調整部を押圧することも不可能ではないが、敢えてスパナをずらせて装着する使用方法は慣れないと難しく、またスパナとナットが接している接触面積が小さくなるため、上手くナットを操作できない恐れもある。
しかし、上記のような「側面機能部」が具備されていれば、スパナを上にずらせて使用することもなく、普通にナットに装着しても、確実に「スパナ」が締付自動調整部を押圧することで、緩止コイルの締め付けを緩めることができる。
同様に「屈曲機能部」は、上部に壁面のある、例えば「六角レンチ(ボックスレンチ)」のような緩締工具を用いる場合に効果がある。
また、この「屈曲機能部」は当該部分が金属線の長さに余裕を持たせる「遊び」の役割を担う。
本発明の第4の構成は、上記の第1又は第2の構成に加えて、
締付自動調整部は、緩止コイル部の下端からナット外縁近傍までナット上面と平行に延伸したものであることを特徴とするものである。
この構成は、緩締工具からの押圧力を最も効果的に緩止コイル部に伝達できる。
本発明の第5の構成は、上第3構成に加えて、
曲機能部は、金属線を一旦上方向に屈曲させ、直ちに下方向に屈曲させることにより、突起状の形状であることを特徴とするものである。
上記のように屈曲機能部を「突起状」に形成することで、屈曲機能部を簡単に構成できる。
本発明の第6の構成は、上記第1乃至第3のいずれかの構成に加えて、
締付自動調整部は、緩止コイル部の下端からナット外縁近傍まで若干上方向となる傾斜を有して延伸したものであることを特徴とするものである。
この構成は、第4の構成に次いで緩締工具からの押圧力を効果的に緩止コイル部に伝達できるものであり、さらに、上方向への傾斜によって当該部分が上部に出っ張ることで、当該部分の端部に屈曲機能部を簡単に構成できる。
本発明の第七の構成は、上記の第一から第六の何れかの構成に加えて、
緩止具係合部は、ナット係合部と嵌合可能であって、金属線材と略同じか若干細い円環状の細溝をナット上に刻んだものであることを特徴とするものである。
上記の構成は、例えば、金属線を同金属線と略同じか若干細い円環状の細溝に圧入等によって簡単に係合させることができる。
本発明の第7の構成は、上記の第1から第6の何れかの構成に加えて、
ナットは、六角ナットの一部を削り落したものであることを特徴とするものである。
この構造は非常に重要である。上記の側面作用部を押圧して緩止コイルの締め付けを緩まる場合、上記側面作用部は若干回転するように移動する。これは、緩止コイル部が拡径するためには必然的な動作である。通常の六角ナットを使用した場合、該締付自動調整部が六角ナットの角に引っ掛かる危険性がある。上記の構造は、この危険性を低減できる。
本発明の第8の構成は、上記の第7の構成に加えて、
六角ナットの削り落した部分は、六角ナットの一角を当該ナットの中心軸に平行な平面に沿って切断したものであることを特徴とするものである。
上記の構成は、六角ナットを一回の切断工程によって加工処理できる。
本発明により、例えば「スパナ」、「六角レンチ(ボックスレンチ)」、「きく(多角レンチ)」等の緩締工具を前記ナットに装着すると、その装着する動作によって自然にコイルが緩むため、金属線から大きな摩擦力を受けることなくボルトの緩締作業が行える。
この機能によって、一旦装着したボルトであっても、工具を装着したら「締め付け」が弱くなるため、ボルトの点検(「緩み止」を外した状態での「締め付け」状況の点検)、締め付け(「緩み止」を外した状態での「締め付け」操作)、交換(他のボルト、あるいは、「締め付け具」付きナットの新しい部品への取り換え)が簡単に行える。
また、締付自動調整部が「緩止コイル部の下部から接線方向にナット外縁まで延伸」しているため、例えば「スパナ」、「六角レンチ(ボックスレンチ)」、「きく(多角レンチ)」のような工具を装着されて、締付自動調整部が押圧された場合、緩止コイル部に対し最も有効に力が作用する。
このため、弾性変形しやす緩止コイル部の拡径動作もスムーズに行われる。また、工具を外した際の(工具を装着する前の緩止作用がある状態に戻る)復元動作も、緩止コイル部の“ばね作用”が有効に機能するため、スムーズに行われる。
上記の一連の動作(工具が装着されたら「締め付け」を弱め、工具を外したら「締め付け」を強める)は、「工具の装着」という動作に付随して自動的に(自然に)行われる。
さらに、締付自動調整部の屈曲機能部が、外縁近傍で若干上方向に膨らんだのちナット側面に沿って下方向に延伸している。すなわち、上方向に小さい凸部が形成されている。これは、例えば、「六角レンチ(ボックスレンチ)」のように上部に壁面がある工具に対して有効に機能する。
また、六角ナットの角を落とすことで、側面機能部が角の内側に入り込むように動くことが可能となる。
これに対して、角を落とさない場合、緩締工具による押圧に対して側面機能部が前記の角に引っ掛かって殆ど動くことができない恐れもある。
述のように、本発明は工具が金属線を内側に押すことで、コイル部の締め付けを制御する(緩める)。この結果、金属線は内側に動くが、金属線は弾性を有し、かつ、ボルトを締め付けて十分な摩擦力を発生できる程度に強い力が働くものであるため、ナット側面の金属線を工具で内側に押した場合、正確には(内側に入りつつ)“拡径する方向”に回転する。従って、側面の金属線が動く余裕がないと、十分に機能できない。
また、この余裕が少ないと工具の装着姿勢(ナットに対する工具の角度)が不自由にもなる。これが制約されると使い勝手が悪くなるが、上記の構成は、このような問題は生じない。
さらに細溝をナット上面に設け、当該細溝に係合部を嵌め込んでいる。この構成は、極めて強固な係合をナットと線材の間に作ることができる。
しかも、上記の構成は、ナットを加工するコストだけで実現できる。
以上のように、本発明の「緩み止め機能付きナット」は、通常はボルトを「締め付け」ることによって「緩み」を防ぐ(=着脱を困難にする)機能を有する。同時に、ナットに適合した工具を装着すれば“自動的に(自然に)”ボルトの「締め付け」を緩めて着脱容易になる。
従って、通常は「緩止具」として機能しつつ、工具使用時には(工具を装着するだけで)自動的に「緩止」の機能を解除できるため「メンテナンス」が非常に楽になる。
例えば、「緩み」を点検する場合は、従来の「緩み止」では“人の力で外せない”ため、「緩み」が発生しているか否かが判断できなかった。しかし、本発明では、工具を装着した時点で「緩止機能が解除」されるため、ボルトとナットの係合程度の検査を非常に簡単に行うことができる。また、この過程で(緩みが生じていれば)工具を用いて「締め付ければ」強固な係合を回復できる。
また、部品の交換も容易である。工具を装着している状況では「緩み止め」の機能は停止しているため、部品を簡単に外すことができる。
さらに、本発明は、規格品(例えば工具、六角ナット、コイル状の金属線)に若干の加工を行うことで実現できる。通常のボルト、ナットに加えて必要な部材は“コイル状の金属線”のみであり、これに加えて(六角)ナットの一部を加工するだけで実現できるため、コスト的にも非常に安価なものにできる。
以下、本発明の実施の形態について、図4〜図16を参照しながら説明する。
図4には本発明の実施例1を示す。
この実施例は、本発明の原理を示すための例である。
図4は、本発明の実施例1の緩止機能付きナット401にボルト101が螺合している状態を示す。図4(a)は側面図、図4(b)は斜視図である。緩止コイル部103aは、従来技術の緩止コイルと同様のものである。本発明は、これに締付自動調整部410とナット係合部420が付加されたものである。
締付自動調整部410は、緩止コイル部103aの下端から、さらに金属線を接線方向に延伸して構成される。緩止コイル部103aの下端点(P1の位置)から、当該位置における緩止コイル部103aの接線方向に、締付自動調整部(基本部)410は延伸されている。
実施例1では、この締付自動調整部(基本部)410はナット102上面に沿って平行に当該ナット外縁に向かって延伸している。
本発明の原理は、例えば、「スパナ」、「きく(多角レンチ)」、「六角レンチ(ボックスレンチ)」のようなボルトとナットの締付工具を上記ナットに装着することで、この締付自動調整部410が工具に押圧されることで、締付工具装着時に自動的に緩止コイル部103aの締め付けを緩ませるものである。
図5では、本発明の緩止機能部分を分かりやすくするため、図4からボルト10を除いたものを示す。但し、前記のコイルとボルトの関係を示すために、ボルト101は点線で示している。
また、図5には、ナット102と緩止具403の係合の例を示している。
図5のように、ナット上に緩止具係合部430として、円環状の細溝を形成する。この緩止具係合部430は、緩止具403のナット係合部420と適合するように、円弧状に形成されている。
これを、例えば圧入すれば、極めて強く両者は係合する。
6は、締付自動調整部410がスパナ610によって押圧される例である。ここでは、スパナ610を上方向に多少ずらして、スパナ610の内側で締付自動調整部410の金属線の端(P2の位置)を押圧する場合を考える。
図6のように、締付自動調整部410は上面から見れば、同図のように、緩止コイル部103aの下端から、接線方向にナット外縁まで直線的に延伸している。
P2の位置で締付自動調整部410が外側から押圧された場合、締付自動調整部410の端部を丸める等してスパナ610の壁面に沿って動けるならば、押圧されることで、P2の位置からP3の位置に動く。
これは緩止コイル部103aが弾性のある金属線によって構成されているため、バネ類似の作用によるものである。
上記金属線が図6のように(緩止コイルの締め付けを緩ませる方向に)若干の回転を伴って押圧されることにより、緩止具403は締め付けを緩めて、スパナ610のような緩締工具による緩締操作が容易に実行できる。
この例は、本発明の基本原理を示したものである。しかし、スパナ610を多少ずらして使用する等、使い勝手の良いものではない。そこで、以下の実施例2と実施例3では、使い勝手の良い形態を示す。
図7には本発明の実施例2を示す。
図7は、本発明の実施例2の緩止機能付きナット701にボルト101が螺合している状態を示す。図7(a)は側面図、図7(b)は斜視図である。緩止コイル部103aは、実施例1と同様に、従来技術の緩止コイル部と同様のものである。但し、本発明は、さらに締付自動調整部(基本部)710a、屈曲機能部710b及び側面機能部710cによって構成された締付自動調整部710が付加されている。
締付自動調整部710は、緩止コイル部103aの下端の金属線をさらに延長して構成される。緩止コイル部103aの下端点(P1の位置)から当該位置におけるコイルの接線方向に、締付自動調整部(基本部)710aは延伸されている。
実施例2では、この締付自動調整部(基本部)710aはナット702上面に沿って平行にナット外縁に向かって延伸している。
本発明の原理は、前述のように、締付工具の装着によって、この締付自動調整部(基本部)710aが工具に押圧されることで、工具装着時に自動的に緩止コイル部103aの締め付けを緩ませるものである。
しかし、より確実な動作を得るために、この実施例2では側面機能部710cを具備する。尚、図示はしないが、上記の締付自動調整部(基本部)710aに屈曲機能部710bを介さず側面機能部710cを直接的に接続する構成も可能である。しかし、このように屈曲機能部710bを有していても(前記のように省いた場合と)同様に側面機能部710cは機能し得るため、本実施例では屈曲機能部710bを有する形で説明する。
図8では、本発明の緩止具703を分かりやすくするため、図7からボルト101、ナット702を除いたものを示す。但し、コイルとボルトの関係を示すために、ボルト101は点線によって表示している。
図9には、側面機能部710cの機能を説明する。図9(a)のように、締付自動調整部710が緩締工具によってP4の位置からP5の位置に動かされる場合を例に説明する。
図9(b)は上面図である。締付自動調整部710は上面から見れば、同図のように、緩止コイル部103aの下端から、接線方向にナット外縁まで直線的に延伸している。
P4の位置で側面機能部710cが外側から押圧された場合、締付自動調整部710は矢印の方向にしか動けない。この動作によって、緩止具は締付けを緩める。
しかし、通常の六角ナットを使用した時、例えば図9(b)のように、側面機能部710cが該六角ナットの角引っ掛かる場合がある。
実施例2では、締付自動調整部710の側面機能部710cが引っ掛からないように、図9(b)のように六角ナットの角の一つを落としている。
これは、例えば、図9(b)の点線部S1を切り落とすことで、一般に市販されている六角ナットに少し手を加えるだけで作ることができる。
図10には、実施例2の緩止機能付きナット701にスパナ610を装着する場合を示す。
規格に適合した六角ナットを操作する規格に適合した「スパナ」の場合、操作対象のナットの寸法と適合している。すなわち、ナットの寸法は六角ナットの寸法より若干大きめではある(=遊びがある)。
例えば図10(a)のようにスパナ610を装着する場合、締付自動調整部710の側面機能部710cに、スパナ610の最奥部の壁面が当接する。
この場合、「スパナ」は締付自動調整部710の側面機能部710cがあるから装着する必要がある。
上記スパナ610をナット702とフィットするように“押し込む”と、側面機能部710cはP4の位置からP5の位置に移動させられる。上述のように、六角ナットの角は落としてあるため、側面機能部710cがナット702の角に引っ掛かることなく、スムーズにP4の位置からP5の位置に押し込められる。
これに伴い、弾性金属によって構成された緩止コイル部103aの締付けが弱まり、手作業によっても緩止機能付きナット701の緩締作業が簡単に行える。
図10(b)から明らかなように、ナット702と緩止具703により構成される緩止機能付きナット701は、緩止具703が弾性変形して緩止コイル部103aの外径寸法が縮小することにより、ナット702と適合するスパナ610の内寸法より小さくなるため、上記スパナ610に装着し得る。
図11には、ナット702の角と側面機能部710cとの関係を示している。
ナットの角を落とす目的は、側面機能部710cが引っ掛かることを防ぐためであり、側面機能部710cが動ける範囲なら、落とす量は少ない方が良い。
図12には、ナット702と緩止具703の係合の例を示す。
図12の場合も、実施例1のように、ナット702上に「緩止具係合部730」として、円環状の細溝を形成している。緩止具703のナット係合部420は、上記細溝と適合するように、円弧状に形成している。
これを、例えば圧入すれば、極めて強く両者は係合する。これは、実施例1と同様に実現できる。
図13〜図16には実施例3を示す。
図13は、本発明の実施例3の緩止機能付きナット1301にボルト101が螺合している状態を示す。
図13(a)は側面図、図13(b)は斜視図である。緩止コイル部103aは、前記の実施例1及び実施例2と同様に、従来技術の緩止コイルと同様のものである。また、ナット係合部420は実施例1と同様のものである。
本発明は、実施例2の締付自動調整部710の代わりに、締付自動調整部1310を備えた発明の例である。
締付自動調整部1310は、緩止コイル部103aの下端の金属線をさらに延長して構成される。緩止コイル部103aの下端から、当該位置におけるコイルの接線方向に、締付自動調整部(基本部)1310aは延伸されている。
実施例3では、締付自動調整部(基本部)1310aは緩止コイル部103aの下端点(P1の位置)からナット外縁に向かって若干上向きに延長延びしている。
また、側面機能部1310cは、実施例2の側面機能部710bのように垂下するのでなく、若干(半径方向に)外側に開いた状態で下方に延伸している。
従って、屈曲機能部1310bは、締付自動調整部(基本部)1310aから側面機能部1310cに至るように折れることで形成できる。
図14に示すように、実施例3においては、「きく(多角レンチ)」あるいは「六角レンチ(ボックスレンチ)」を使用した例について示している。
図15(a)のように、緩締工具(「多角レンチ」1410)に押圧されて、図15(b)に示すようにP6の位置からP7の位置に移動する場合を考える。
多角レンチ1410は、図15(b)のように、六角ナットの角と適合する「角部」が、レンチやスパナと異なり6以上(例えば、倍の12)ある。
この「多角レンチ」の特徴は、(スパナのように)角を合わせなくとも、簡単に装着できる点にある。
これを本発明に適用した場合の締付自動調整部1310の動きを図15に示す。
図15(a)には、多角レンチ1410を、緩止具1303とナット702で構成された実施例3の緩止機能付きナット1301に装着した場合の側面図である。
多角レンチ1410を装着すると、この多角レンチ1410の壁面に側面機能部1310cが押圧される。図のようにボルトを装着している場合、これ以上締まる方向には回転できないため、図15(b)のようにP6の位置からP7の位置に移動する。
尚、もし、「多角レンチ」の装着位置が悪い場合、例えば、図15(b)のP6の位置で多角レンチの“山”が重なって、反対方向にしか動けないような場合、側面機能部1310cは動くことができずに(実際問題として)「装着できない」ことになる。しかし、この場合でも「多角レンチ」の装着位置を(上手く装着できるように)ほんの少しずらせば、難なく装着できる。何れの場合でも、「多角レンチ」を装着できる場合、必ず、図15(b)のような位置関係になる。
上記のように、「多角レンチ」1410の谷間に側面機能部1310cが入り込んだ場合、後述する六角のボックスレンチ1420で押圧されたよりも側面機能部1310cの移動量は小さくなるが、図15(a)のように、側面機能部1310cの下端が多少外向きに開いている形状の場合、上方への「遊び」がなくなるように移動するために、十分な移動量が確保できる。
図15(a)及び図15(b)から明らかなように、ナット702と緩止具1303により構成される緩止機能付きナット1301は、緩止具1303が弾性変形してその外径寸法が縮小することで、ナット702と適合し得る「多角レンチ1410」の内寸法より小さくなり、多角レンチ1410に装着し得る。
図16では「ボックスレンチ1420」を使用した例について示す。
図16(b)のように、緩締工具に押圧されて、破線で示すP8の位置から実線で示すP9の位置に移動する場合を例にして説明する。
図16(a)は、ボックスレンチ1420を、実施例3の緩止機能付きナット1301に装着した場合の断面図である。
ボックスレンチ1420を装着すると、ボックスレンチ1420の上部壁に屈曲機能部1310bが押圧され、ボックスレンチ1420の側内壁部に側面機能部1310cが押圧される。
側面機能部1310cが先に押圧される場合は、基本的には上述の「多角レンチ」の場合と同じである。但し、「ボックスレンチ」には「多角レンチ」のような谷間がないため、より強く押圧される。
屈曲機能部1310bが先に押圧される場合を図16(a)(b)に示す。
ボックスレンチ1420の上内壁がP8の位置で屈曲機能部1310を押圧すると、図16(b)のように、屈曲機能部1310が潰される形状になる。
この場合、当該部分に集中した力は、金属線の弾性によって全体に均一に及ぶため、緩止コイル部103aを緩ませるように作用する。
従って、結果的に(側面を押圧された)実施例1あるいは実施例2と同様に、側面機能部1310cも(締付の緩みに応じて)若干回転しP9の位置に移動する。
尚、側面機能部1310cが先に押圧された場合でも、屈曲部分が残っている場合には、「ボックスレンチ」の上壁によってさらに押圧される場合もある。
図16(a)及び図16(b)から明らかなように、ナット702と緩止具1303により構成される緩止機能付きナット1301は、緩止具1303が弾性変形して外径寸法が縮小することで、ナット702と適合するボックスレンチ1420の内寸法より小さくなり、ボックスレンチ1420に装着し得る。
尚、上記の実施例の説明は、実施例1〜3を各々「スパナ」、「きく(多角レンチ)」、「ボックスレンチ」を用いた場合を例に説明した。しかし、上述の説明から明らかなように、側面機能部は「スパナ」や「きく(多角レンチ)」のように横側から作用する緩締工具に適合するものであり、屈曲機能部は「ボックスレンチ」のように上側から作用する緩締工具に適合するものである。
従って、上記の実施例2〜3では、各々側面機能部と屈曲機能部を具備しているため「スパナ」、「きく(多角レンチ)」、「ボックスレンチ」の全てに対応できる。
また、ナットに関しては、実施例1で示したように(角を落としていない)「六角ナット」の適用も可能である事例も示したが、側面機能部を有する場合(実施例2及び実施例3)のように「六角ナット」の角を落とした構成の方が好ましいことは言うまでもない。
六角ナットは「緩止具」と係合させる係合部(例えば、細溝)が必要なため、何も手を加えない「六角ナット」を使用することは難しい。ユーザには「緩止具」をナットに係合させた「緩止機能付きナット」の形で提供されると思われる。
従来法(特許文献1)の説明図 従来法(特許文献2)の説明図(その1) 従来法(特許文献2)の説明図(その2) 実施例1の説明図 実施例1における緩止具とナットの係合 実施例1における締付自動調整部の動き 実施例2の説明図(その1) 実施例2の説明図(その2) 実施例2における締付自動調整部の動き(その1) 実施例2における締付自動調整部の動き(その2) 実施例2におけるナットの角落とし部分の範囲 実施例2における緩止具とナットの係合 実施例3の説明図(その1) 実施例3の説明図(その2) 実施例3における締付自動調整部の動き(その1) 実施例3における締付自動調整部の動き(その2)
101 ;ボルト
102 ;六角ナット
103 :緩止具
103a ;緩止コイル
103b ;ナット接合部(直径よりも大巻する部分)
103c ;ナット接合部(ナットと接合している部分)
201a ;ツマミ部
201b ;ツマミ部
301a ;キャップ
301b ;キャップ
401 ;緩止機能付きナット(実施例1)
403 ;緩止具
410 ;締付自動調整部
420a ;ナット係合部
430 ;緩止具係合部
601 ;スパナ
701 ;緩止機能付きナット(実施例2)
702 ;ナット(変形七角)
703 ;緩止具
710 ;締付自動調整部
710a ;締付自動調整部(基本部)
710b ;屈曲機能部
710c ;側面機能部
1301 :緩止機能付きナット(実施例3)
1303 ;緩止具
1310 ;締付自動調整部
1310a ;締付自動調整部(基本部)
1310b ;屈曲機能部
1310c ;側面機能部
1410 ;きく(多角レンチ)
1420 ;六角レンチ(ボックスレンチ又はソケットレンチ)

Claims (8)

  1. 締工具を用いてボルトとナットを容易に螺合・螺脱し得る緩み止め機能付きナットであって、
    弾性のある金属線材によって構成された緩止具が、
    前記ボルトと螺合した前記ナットから突き出した該ボルトの突出部分の螺条に嵌合可能であり、前記金属線を螺巻した緩止コイル部と、
    前記緩止コイル部の上端から下方に屈曲し、その先端が前記ナットと係合可能な円弧状に形成されたナット係合部と、
    前記緩止コイル部の下端から接線に沿って前記ナットの外縁を越えて延伸させた締付自動調整部を具備し、
    前記ナットの上面に、円環状の細溝から成る緩止具係合部を形成し、
    前記ナットに前記緩締工具を装着したときに、前記締付自動調整部が押圧されて前記緩止コイル部が拡径するように、前記ナット係合部を前記ナット上面の前記緩止具係合部に固定し、前記緩止具を前記ナットに係合させたことを特徴とする緩み止め機能付きナット。
  2. 上面に円環状の細溝から成る緩止具係合部を有すると共にボルトに対して螺合及び螺脱が可能なナットと、金属線を螺巻し前記ボルトの螺条に対して螺合する緩止コイル部及び前記緩止コイル部の上端から下方に屈曲して前記ナットの上面に係合する円弧状のナット係合部並びに前記緩止コイル部の下端からその接線方向に沿って前記ナットの外縁を越えて延伸する締付自動調整部を備える緩止具と、を有し、前記円弧状のナット係合部を、前記円弧状の前記緩止具係合部に圧入し、前記緩止具を前記ナットに係合させたことを特徴とする緩み止め機能付きナット。
  3. 締付自動調整部は、ナット外縁近傍に屈曲機能部を有し、さらに、ナット外縁近傍からナット側面に沿って下方向に延伸した側面機能部を有する請求項1又は2に記載緩み止め機能付きナット。
  4. 締付自動調整部は、緩止コイル部の下端からナット外縁近傍までナット上面と平行に延伸したものである請求項1又は2に記載緩み止め機能付きナット。
  5. 曲機能部は、金属線を一旦上方向に屈曲させ、直ちに下方向に屈曲させた、突起形状である請求項3に記載緩み止め機能付きナット。
  6. 締付自動調整部、緩止コイル部の下端からナット外縁近傍まで若干上方向となる傾斜を有して延伸したものである求項1乃至3のいずれか一項に記載緩み止め機能付きナット。
  7. ナットは、六角ナットの一部を削り落したものである請求項1乃至6のいずれか一項に記載緩み止め機能付きナット。
  8. 六角ナットの削り落した部分は、該六角ナットの一角を該六角ナットの中心軸に平行な平面に沿って切断したものである請求項に記載緩み止め機能付きナット。
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