JP4907457B2 - ナット - Google Patents

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Description

本発明は、ボルトと組み合わせて使用するナットに関し、更に具体的には、長尺の軸部を有するボルトとの締結作業の効率改善に関するものである。
通常、ナットは、ボルトの軸部先端から挿通し、締め付け位置まで回転させて、前記ボルトの頭部との間に対象物を挟み込んで締め付ける。しかしながら、前記軸部が長い場合には、締結位置までに何度もナットを回して移動させなければならず、作業に非常に手間がかかる。このため、例えば、以下の特許文献1には、分割された一対のナット片を仮止め状態で連結させることにより、長いボルトに対しても容易に締め込みが可能なナットが開示されている。
特開2002−122115公報
しかしながら、以上のような背景技術では、一対のナット片を一つのナットとして機能させるためには、前記ナット片の外周に結束部材を巻いて工具で締め付けたり、ナット片の接合縁をボルト止めしたりする必要がある。すなわち、ナットの締め込み以前に、ペンチやドライバー等の何らかの工具が必要となり、締結作業を効率よく行うことができない。また、結束部材や接合縁などがナットの周方向に突出するために、締め込み作業の妨げになったり、締結部分の美観が損なわれたりするという不都合もある。
本発明は、以上の点に着目したもので、その目的は、長尺のネジ部への締結作業を効率よく行うことができるナットを提供することである。
前記目的を達成するため、本発明は、ボルトと組み合わせて対象物の締め付けを行うナットであって、前記ボルトのネジ部と螺合するネジ穴を有しており、対向する一対の平行面と、前記対象物に対向する端部側から他端側へ向けて広がる一対のテーパ面からなる外周面を備えるとともに、全体が前記平行面において周方向に2分割されたナット本体,対向する一対の平行面と、前記ナット本体のテーパ面と略同一勾配の一対のテーパ面からなり、前記ナット本体よりも軸方向に長い貫通孔を有するとともに、該貫通孔内に前記ナット本体を収納した状態で締め付け方向の反対側に移動させることにより、分割されたナット本体のネジ穴を前記ボルトのネジ部に噛ませるホルダ,一方の端部が、前記分割されたナット本体の締め付け方向の反対側の端面に固定されており、他方の端部が、前記ホルダの貫通孔から突出する一対のバネ状のアームと、前記貫通孔から突出した前記一対のアームを連結する連結部とを有しており、前記分割されたナット本体を前記バネ状のアームの弾性力により前記貫通孔の内面に向けて付勢する付勢手段,該付勢手段の一対のアームに係合する溝部を有しており、前記付勢手段に装着可能であって、前記分割されたナット本体の位置を決めるための本体位置決め手段,を備えるとともに、前記ナット本体とホルダは、前記ボルトのネジ部と略直交する断面形状が略同一であって、嵌合状態において同時に回転可能であることを特徴とする。
主要な形態の一つは、前記貫通孔の締め付け方向の反対側の端部に設けられており、前記ナット本体の端面と係合するストッパ手段,を備えたことを特徴とする。
本発明の前記及び他の目的,特徴,利点は、以下の詳細な説明及び添付図面から明瞭になろう。
本発明は、ボルトのネジ部に螺合可能であり、一対の平行面とテーパ面を外周面に備えるとともに、前記平行面において周方向に2分割されるナット本体と、該ナット本体のテーパ面に沿って摺動可能な貫通孔を有し、かつ、前記ナット本体とともに回転可能なホルダによりナットを構成する。そして、締結位置への押し込みの際に開いたナット本体のネジ穴を、前記締結位置近傍において、分割されたナット本体の端面に一端が固定され、他端が連結部で連結された一対のアームを有する付勢手段を利用して前記ネジ部に噛ませるとともに、前記一対のアームに係合する溝部を有する本体位置決め手段によって、前記分割されたナット本体の位置決めを行うこととした。このため、ホルダの外側に突出物などを設けることなく、長尺のボルトへの締結作業を効率よく行うことができるという効果が得られる。
以下、本発明を実施するための最良の形態を、実施例に基づいて詳細に説明する。
最初に、図1及び図2を参照しながら、本発明の実施例1を説明する。図1は、本実施例の構造を示す図であり、(A)は分解斜視図,(B)は組立状態を示す斜視図である。図2は、本実施例の作用を示す断面図である。図1及び図2に示すように、本実施例のナット10は、ボルト12の頭部18との間に対象物20を挟んで締め込みを行うものであって、スクリューコッタ(ないしナット本体)30とその外周面に装着可能なホルダ40により構成されている。
まず、スクリューコッタ30は、前記ボルト12の軸部14に形成されたネジ部16に螺合するネジ穴32が軸方向に形成されており、外周面には、対向する一対の平行面37と、一方の端部34から他方の端部36へ向けて広がった一対のテーパ面38が形成されている。本実施例では、前記端部34がボルト12の頭部18に対向するように、前記スクリューコッタ30がボルト12に取り付けられる。また、前記スクリューコッタ30は、軸方向と略直交する断面形状が、略長方形となっている。このようなスクリューコッタ30は、前記テーパ面38が、後述するホルダ40の貫通孔42内のテーパ面44に沿ってスライドできるように、前記平行面37において周方向に2分割されている。前記スクリューコッタ30は、例えば、前記ネジ穴32も含めて一体加工した後に、2つの分割体30A,30Bに分割される。
次に、前記ホルダ40は、その外側は公知のナットのように多角形(図示の例では六角形)に形成されている。また、略中央部には、対向する一対の平行面43と、一方の端部40Aから他方の端部40B側へ向けて広がった一対のテーパ面44とからなる貫通孔42が形成されている。該貫通孔42は、軸方向に略直交する断面形状が、前記スクリューコッタ30の外周面の断面形状と略同一となっている。また、前記テーパ面44は、前記ホルダ40が前記スクリューコッタ30の外周面に沿って摺動可能となるように、該スクリューコッタ30のテーパ面38と略同一勾配となっている。前記貫通孔42の端部40A側には、内側へ向けて若干突出した縁部46が設けられている。また、前記端部40Aの縁部には、面圧が通常のボルトと同等になるように面積を調整するための面取り41が形成されている。
次に、図2も参照して本実施例の作用を説明する。まず、図2(A)に示すように、対象物20に頭部18が接するように取り付けたボルト12の軸部14に、前記ホルダ40を、端部40Aが対象物20(ないし頭部18)側に向くようして、端部14A側から挿通する。前記ホルダ40を、頭部18付近まで移動させたら、図2(B)に示すように、前記ホルダ40よりも手前(図示の例では右側)の位置で、前記分割体30A及び30Bの端部34側を、ホルダ40の貫通孔42に差し込み、ボルト12の軸部14を挟む。
前記分割体30A,30Bで軸部14を挟んだら、図2(C)に示すように、ホルダ40をスクリューコッタ30側(図2(C)の右側)へ移動させ、ホルダ40をスクリューコッタ30の端部34側から被せる。すると、テーパ面38及び44の作用により、ホルダ40の移動に伴い、前記分割体30A,30Bが、軸部14に向けて押し付けられ、スクリューコッタ30のネジ穴32と軸部14のネジ部16が噛み合う。この状態では、前記スクリューコッタ30の外周面とホルダ40の貫通孔42の嵌合により、スクリューコッタ30とホルダ40が同時に回転可能となっている。すなわち、一つのナット10として使用可能な状態となっている。そして、図示しない工具(六角レンチなど)を用いて、図2(D)に示すように、前記対象物20を締め込みする位置までナット10を回転させる。なお、締め込み完了後は、前記ホルダ40がテーパ面44によりスクリューコッタ30を締め付けているため、ナット10が緩むことがない。
このように、実施例1によれば、分割体30A及び30Bからなるスクリューコッタ30の外側に、該スクリューコッタ30の外周面に沿って摺動可能なテーパ面44を有するホルダ40を装着して、スクリューコッタ30のネジ穴32をボルト12のネジ部16に噛ませる。そして、前記ホルダ40を介してスクリューコッタ30を回転させて、ボルト12の軸部14に螺合させて対象物20の締め込みを行うこととした。このため、対象物20を締め付ける位置の直前までは、ナット10のねじ込み操作を行う必要がなくなるため、締結作業の効率を向上させることができる。また、ホルダ40の外側に突出物がないため、締結作業を妨げることがなく、締結部分の美観を損なうこともない。
次に、図3及び図4を参照しながら、本発明の実施例2を説明する。図3は、本実施例の構造を示す図であり、(A)は分解斜視図,(B)は組立状態を示す斜視図である。図4は、本実施例の作用を示す断面図である。なお、上述した実施例1と同一ないし対応する構成要素には同一の符号を用いることとする。図3及び図4に示すように、本実施例のナット50は、スクリューコッタ(ないしナット本体)52,バネ66,プレート68,ホルダ70により構成されている。
まず、前記スクリューコッタ52は、ボルト軸部14のネジ部16に螺合するネジ穴54が軸方向に形成されており、外周面には、対向する一対の平行面59と、一方の端部56から他方の端部58側へ向けて広がった一対のテーパ面60が形成されている。本実施例では、端部56側がボルト頭部18に向くように装着される。また、スクリューコッタ52は、軸方向と略直交する断面形状が略長方形となっている。このようなスクリューコッタ52は、後述するホルダ70の貫通孔72内のテーパ面74に沿ってスライドできるように、前記平行面59において周方向に2つに分割されており、前記実施例1と同様に、前記ネジ穴54も含めて一体形成した後に、2つの分割体52A,52Bに分割される。更に、スクリューコッタ52の外周面には、図3(B)に示すように、分割線62上に前記分割体52A及び52Bにわたって溝64が形成されている。該溝64は、前記分割体52A,52Bを、後述するホルダ70側へ常時押し広げるためのバネ66を収納するものである。前記バネ66は、本実施例では、開いた状態では、図3(A)に示すように略V字状となっており、閉じた状態では、図3(B)に示すように略U字状となっている。本実施例では、前記バネ66として、板状のバネを用いている。
次に、前記ホルダ70は、その外側は公知のナットのように多角形(図示の例では六角形)に形成されており、略中央部には、一対の対向する平行面73と、一方の端部70Aから他方の端部70B側へ向けて広がった一対のテーパ面74とからなる貫通孔72が形成されている。該貫通孔72は、軸方向に略直交する断面形状が、前記スクリューコッタ52の外周面の断面と略同一の長方形となっている。また、前記テーパ面74は、前記ホルダ70が前記スクリューコッタ52の外周面に沿って摺動可能となるように、該スクリューコッタ52のテーパ面60と略同一勾配となっている。前記貫通孔72は、前記スクリューコッタ52を一方の端部に寄せたときに、他方の端部との間に所定の隙間が生じるような長さに設定されている。また、貫通孔72の端部70A側には、内側へ向けて若干突出した縁部76が設けられており、他方の端部70B側には、前記スクリューコッタ52の抜け落ちを防止するための略リング状のプレート68が設けられる。該プレート68は、前記ホルダ70内にバネ66で付勢された分割体52A及び52Bを収納した後に、例えば、カシメ,ストップリング,溶接などの適宜手段で固定される。また、前記端部70Aの縁部には、前記実施例1と同様に、面圧を調整するための面取り71が形成されて
いる。
次に、図4も参照して本実施例の作用を説明する。あらかじめ、溝64にバネ66を設けて外側に付勢した分割体52Aと52Bを、断面形状が合うように、前記ホルダ70の貫通孔72に収納し、プレート68でホルダ70から外れないように固定しておく。この状態では、前記バネ66の付勢力により、前記分割体52Aと52Bは、常時、ホルダ70の貫通孔72の内面に向けて押圧されている。このため、テーパ面60がテーパ面74に沿ってスライドし、スクリューコッタ52のネジ穴54の径が、ボルト12の軸部14よりも大きく押し広げられている。また、スクリューコッタ52は、ホルダ70の端部70B側に寄り、プレート68により係止されている。
以上のようなナット50を、ホルダ70の端部70Aが対象物20(ないし頭部18)側に向くようして、端部14A側から挿通する。前記ナット50を頭部18付近まで移動させたら、図4(B)に示すように、スクリューコッタ52の分割体52A,52Bのいずれか一方のネジ穴54がボルト12のネジ部16に噛むように、ナット50を前記軸部14に略直交する方向にずらす。図示の例では、ナット50を押し下げて、分割体52Aのネジ穴54をネジ部16に噛ませている。
前記ネジ穴54をネジ部16に噛ませたら、その状態のまま、図4(C)に示すように、ホルダ70を締め付け方向の反対側(図の右側)へ移動させる。すると、テーパ面60及び74の作用により、ホルダ70の移動に伴い、分割体52A,52Bが、軸部14へ向けて押し付けられ、2つの分割体52A,52Bの双方のネジ穴54と、ボルト12のネジ部16が噛む。なお、この状態では、前記スクリューコッタ52の外周面とホルダ70の貫通孔72の嵌合により、スクリューコッタ52とホルダ70が、一つのナット50として回転可能となっている。そして、図示しない工具を用いて、図4(D)に示すように、前記対象物20を締め込みする位置までナット50を回転させる。なお、締め込み完了後は、前記ホルダ70がテーパ面74によりスクリューコッタ52を締め付けているため、ナット50が緩むことがない。本実施例の効果は、基本的には上述した実施例1と同様であるが、スクリューコッタ52を予めホルダ70内に収納しておくこととしたので、締結作業の一層の効率化を図ることができるという効果がある。
次に、図5を参照しながら、本発明の実施例3を説明する。図5は、本実施例の構造を示す図であり、(A)は分解斜視図,(B)は組立状態を示す外観斜視図,(C)は組立状態を示す断面斜視図である。図5に示すように、本実施例のナット100は、スクリューコッタ(ないしナット本体)102,バネ体114,ホルダ120,セットプレート136,ストップリング142により構成されている。
まず、前記スクリューコッタ102は、ボルト軸部14のネジ部16に螺合するネジ穴104が軸方向に形成されており、外周面には、対向する一対の平行面110と、一方の端部106から他方の端部108側へ向けて広がった一対のテーパ面112が形成されている。また、前記平行面110とテーパ面112の間には、他のテーパ面111が形成されている。本実施例では、端部106側がボルト頭部18に向くように装着されている。また、スクリューコッタ102は、軸方向と略直交する断面が、長方形の角を落とした略長方形となっている。このようなスクリューコッタ102は、後述するホルダ120の貫通孔124内のテーパ面128に沿ってスライドできるように、前記平行面110において周方向に2つに分割されており、前記実施例1及び2と同様に、前記ネジ穴104も含めて一体形成した後に、2つの分割体102A,102Bに分割される。
更に、スクリューコッタ102の端部108側には、バネ体114が設けられている。該バネ体114は、板バネ状の一対の湾曲したアーム116A,116Bを備えており、該一対のアーム116A,116Bの一方の端部は、適宜手段によって、分割体102A,102Bのそれぞれの端部108に固定されている。また、他方の端部は、連結リング118に固定されている。前記バネ体114は、前記分割体102A,102Bを、後述するホルダ120側へ常時押し広げるためのものであって、前記一対のアーム116A,116Bは、前記連結リング118が、常時、前記ホルダ120の貫通孔124から外部
に突出する長さに設定されている。
次に、前記ホルダ120は、その外側は公知のナットのように多角形(図示の例では六角形)に形成されており、略中央部には、一対の対向する平行面126と、一方の端部120Aから他方の端部120B側へ向けて広がった一対のテーパ面128とからなる貫通孔124が形成されている。該貫通孔124は、軸方向に略直交する断面形状が、前記スクリューコッタ102の外周面の断面形状と略同一となっている。また、前記テーパ面128は、前記ホルダ120が前記スクリューコッタ102の外周面に沿って摺動可能となるように、該スクリューコッタ102のテーパ面112と略同一勾配となっている。前記貫通孔124は、前記スクリューコッタ102を一方の端部に寄せたときに、他方の端部との間に所定の隙間が生じるような長さに設定されている。また、貫通孔124の端部120A側には、内側へ向けて若干突出した縁部130が設けられており、他方の端部120B側には、段差132及び溝部134が全周にわたって形成されている。
前記段差132には、スクリューコッタ102の位置決めを行うためのセットプレート136が設けられる。該セットプレート136は、略リング状であって、中央には前記スクリューコッタ102のバネ体114を通すための略円形の開口部138を備えている。該開口部138には、前記バネ体114の一対のアーム116A,116Bと係合する一対の係合溝140が形成されている。また、前記溝部134には、前記スクリューコッタ102やセットプレート136の抜け落ちを防止するための略リング状のストップリング142が設けられる。該ストップリング142は、一箇所に切れ目144を備えており、前記ホルダ120内にバネ体114で連結された分割体102A及び102Bと、セットプレート136を収納した後に、前記溝部134に固定される。更に、前記ホルダ120の端部120Aの縁部には、前記実施例1及び2と同様に、面圧を調整するための面取り122が形成されている。なお、前記セットプレート136及びストップリング142は、必要に応じて設けるようにすればよい。
本実施例の作用を説明すると、まず、バネ体114によって連結され、かつ、外側に付勢された分割体102Aと102Bを、前記バネ体114の一対のアーム116A,116Bを内側に押しながら、前記ホルダ120の貫通孔124に収納する。次に、前記バネ体114の連結リング118側から、前記セットプレート136をホルダ120の段部132に向けてはめる。すると、前記セットプレート136の開口部138に形成された係合溝140に、前記一対のアーム116A,116Bが係合し、これらの先端に固定された分割体102A,102Bが適切な位置に保持される。なお、ここでいう適切な位置とは、前記分割体102A,102Bの断面形状が合う状態である。次に、前記ストップリング142を、ホルダ120の溝部134に係合させて、内部部品が外部に飛び出すのを防止する。この状態では、前記アーム116A,116Bの付勢力により、前記分割体102Aと102Bは、常にホルダ120の貫通孔124の内面に向けて押圧されている。このため、テーパ面112が、ホルダ120のテーパ面128に沿ってスライドし、スクリューコッタ102のネジ穴104の径が、ボルト12の軸部14よりも大きく押し広げられている。また、スクリューコッタ102は、ホルダ120の端部120B側に寄り、ストップリング142により係止されている。
以上のようなナット100を、ホルダ120の端部120Aが、対象物20(ないしボルト頭部18)側を向くようにして、端部14A側から挿通する。前記ナット100を頭部18付近まで移動させたら、スクリューコッタ102の分割体102A,102Bのいずれか一方のネジ穴104が、ボルト12のネジ部16に噛むように、ナット100を前記軸部14に略直交する方向にずらす。
前記ネジ穴104をネジ部16に噛ませたら、その状態のまま、ホルダ120を締め付け方向の反対側へ移動させる。すると、テーパ面112,128の作用により、ホルダ120の移動に伴って、分割体102A,102Bが軸部14へ向けて押し付けられ、2つの分割体102A,102Bの双方のネジ穴104と、ボルト12のネジ部16が噛む。なお、この状態では、前記スクリューコッタ102の外周面とホルダ120の貫通孔の嵌合により、スクリューコッタ102とホルダ120が、一つのナット100として回転可能となっている。そして、図示しない工具を用いて、前記対象物20を締め込みする位置までナット100を回転させる。なお、締め込み完了後は、前記ホルダ120がテーパ面128によりスクリューコッタ102を締め付けているため、ナット100が緩むことがない。
本実施例によれば、上述した実施例2の効果に加え、一対の板バネ状のアーム116A,116Bを備えたバネ体を利用して分割体102A,102Bを連結したので、締結作業の一層の向上を図ることができるという効果がある。また、前記一対のアーム116A,116Bと係合する係合溝140を備えたセットプレート136を用いることとしたので、分割されたスクリューコッタ102の位置決めを容易に行うことができるという効果が得られる。
次に、図6及び図7を参照しながら、本発明の実施例4を説明する。図6は、本実施例の構造を示す図であり、(A)は分解斜視図,(B)は組立状態を示す外観斜視図である。図7は、本実施例の作用を示す断面図である。図6に示すように、本実施例のナット200は、スクリューコッタ(ないしナット本体)202,バネ体214,ホルダ220,プレート250により構成されている。
まず、前記スクリューコッタ202は、ボルト軸部14のネジ部16に螺合するネジ穴204が軸方向に形成されており、外周面は、一方の端部206から他方の端部208側へ向けて広がったテーパ面212の一部に、対向する一対の平行面210を設けた形状となっている。前記平行面210は、大径側の端部208側にのみ形成されており、本実施例では、他方の端部206側がボルト頭部18に向くように装着される。このようなスクリューコッタ202は、後述するホルダ220の貫通孔224内において、第1収納部226のテーパ面226Aに沿ってスライドできるように、前記平行面210において周方向に2つに分割されている。そして、前記実施例1〜3と同様に、前記ネジ穴204も含めて一体形成した後に、2つの分割体202A,202Bに分割される。
次に、バネ体214は、後述するホルダ220の第1収納部226に収納したスクリューコッタ202を押さえるためのもので、該スクリューコッタ202の端部208側に接触するプレート216と複数の板バネ218によって構成されている。前記プレート216は、前記ボルト12の軸部14が貫通可能な開口部217を備えるとともに、前記ホルダ220の第2収納部228の位置決めプレート232A,232Bに沿って摺動可能となるように、一対の対向する縁部216A,216Bを備えている。また、前記板バネ218は、一端が前記プレート216に固定され、他端が後述するプレート250に接触可能となっており、押圧によって変形し、かつ、形状復元が可能な材料によって形成されている。
次に、前記ホルダ220は、その外側は公知のナットのように多角形(図示の例では六角形)に形成されており、その内側は、前記ボルト12の軸部14を通す貫通孔224となっている。前記貫通孔224は、前記スクリューコッタ202のテーパ面212と略同一勾配のテーパ面226Aを有する第1収納部226と、前記スクリューコッタ202の一対の平行面210と略同一間隔の一対の位置決めプレート232A及び232Bを有する第2収納部228が連続形成した形状となっている。前記第1収納部226は、軸方向の長さが、前記スクリューコッタ202の長さとほぼ同程度となっており、スクリューコッタ202のネジ穴204がボルト12のネジ部16に噛み合った状態では、前記スクリューコッタ202のほぼ全体が納まるようになっている。
一方、前記第2収納部228の位置決めプレート232A,232Bの間隔は、前記スクリューコッタ202の平行面210の間隔とほぼ同等か若干大きくなるように設定されている。前記位置決めプレート232Aは、第1収納部226と第2収納部228間の段差227に軸方向に沿って固定される1組の平面部234A,234Bと、平面状の連結部236が連結した形状となっている。他方の位置決めプレート232Bも、同様の構造となっている。なお、前記連結部236は、前記第1収納部226のテーパ面226Aにかかるように取り付けられている。このため、前記スクリューコッタ202を、平行面210が前記連結部236に当たるようにセットすると、貫通孔224内でのスクリューコッタ202の回転を防止しつつ、第1収納部226から第2収納部228にかけて軸方向に摺動するようにガイドすることが可能となる。
以上のような貫通孔224の端部220A側には、内側へ向けて若干突出した縁部230が形成されており、他方の端部220B側の内側には、後述するプレート250を嵌めるための複数の爪238が設けられている。また、該爪238と前記位置決めプレート232A及び232Bの端部には隙間240が形成される。前記隙間240には、前記バネ体214の抜け落ちを防止するためのプレート250が設けられる。該プレート250は、略中央部にボルト軸部14を通すための開口部252を備えるとともに、縁部には、前記隙間240に嵌めるための係合部254が設けられている。前記プレート250は、前記ホルダ220にスクリューコッタ202とバネ体214を収納した後に、前記隙間240に係合部254を係合することで固定される。更に、前記ホルダ220の端部220Aの縁部には、上述した実施例1〜3と同様に、面圧を調整するための面取り222が形成されている。
次に、図7も参照して本実施例の作用を説明する。あらかじめ、スクリューコッタ202の分割体202A,202Bを、断面形状が合うように、前記ホルダ220の貫通孔224の第1収納部226に収納する。そして、前記スクリューコッタ202の端部208にプレート216が接触し、板バネ218がホルダ端部220B側を向くように、バネ体214を第2収納部228に収納し、プレート250でホルダ220から外れないように固定しておく。この状態では、前記板バネ218が押圧されていない状態のため、前記分割体202A,202Bは、ほぼ全体が第1収納部226に収納されている。
このようなナット200を、図7(A)に示すように、ホルダ220の端部220Aが対象物20(ないしボルト頭部18)側に向くようにして、ボルトの端部側から挿通し、図7(B)に示すように締結位置まで押し込む。すると、ボルト軸部14によって、分割体202A,202Bが貫通孔224の内面に向けて押し広げられるとともに、テーパ面226A及び位置決めプレート232A,232Bに沿って摺動し、前記バネ体214の板バネ218がプレート250に押し当てられて変形する。図7(B)に示す締結位置まで押し込んでから一端手を離すと、前記板バネ218の形状復元によってプレート250が押され、ホルダ220全体が締め込み方向の反対側(図の右側)へ若干移動する。
すると、テーパ面226A及び212の作用により、ホルダ220の移動に伴い、分割体202A,202Bがボルト軸部14へ向けて押し付けられ、図7(C)に示すように、2つの分割体202A,202Bの双方のネジ穴204と、ボルト12のネジ部16が噛む。なお、この状態では、前記スクリューコッタ202の外周面とホルダ220の貫通孔224の嵌合により、スクリューコッタ202とホルダ220が、一つのナット200として回転可能となっている。そして、図示しない工具を用いて、図7(D)に示すように、前記対象物20を締め込みする位置までナット200を回転させる。なお、締め込み完了後は、前記ホルダ220がテーパ面226Aによりスクリューコッタ202を締め付けているため、ナット200が緩むことがない。
このように、実施例4によれば、締結位置近傍までナット200を押し込んだ後に、ナット200をボルト軸部14に略直交する方向にずらすことなく、バネ体214の形状復元性を利用して、自動的にスクリューコッタ202の分割体202A,202Bのネジ穴204を、ボルト12のネジ部16に噛ませることとした。このため、上述した実施例2及び3の効果に加え、より一層の締結作業の効率向上が可能になるという効果が得られる。
なお、本発明は、上述した実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることができる。例えば、以下のものも含まれる。
(1)前記実施例で示した形状,寸法,デザインは一例であり、必要に応じて適宜変更してよい。材料についても同様に、必要に応じて適宜変更可能である。
(2)前記実施例2で示したバネ66も一例であり、同様の効果を奏するものであれば、他の公知の各種の付勢手段を用いるようにしてよい。例えば、図8(A)に示すように、線材からなる略V字状のバネ80を用いるようにしてもよいし、図8(B)に示すバネ82のように菱形のものを用いるようにしてもよい。また、図8(C)に示すコイル状のバネ84を、スクリューコッタ52の平行面に設けられた溝64Cの上下2ヶ所に設けるようにしてもよい。更に、図8(D)に示すように、略U字状ないし略V字状のバネ86の端部近傍に、外側に突出した凸部88A及び88Bを形成するとともに、前記スクリューコッタ52の溝64Dに、穴90A及び90Bを設けて、該穴90A,90Bに前記凸部88A,88Bを差し込んで位置決めを図るようにしてもよい。前記実施例4のバネ体214も一例であり、同様の効果を奏するように、必要に応じて適宜設計変更してよい。
(3)前記実施例2のプレート68や、実施例3のセットプレート136及びストップリング142も一例であり、スクリューコッタ52や102の抜け落ちを防止できるものであれば、他の公知の各種の係止機構を用いてよい。また、これらプレート68,セットプレート136,ストップリング142は、必要に応じて設けるようにすればよい。実施例4のプレート250についても同様に、スクリューコッタ202とバネ体214の抜け落ちを防止できるものであれば、他の公知の各種の係止機構を用いてよい。
(4)前記実施例で示したスクリューコッタ30,52,102,202の分割状態も一例であり、平行面において2分割してあればよく、ボルト軸部14に対して斜めに分割したり、不均等に分割したりするようにしてもよい。
本発明によれば、ボルトのネジ部に螺合可能であり、一対の平行面とテーパ面を外周面に備えるとともに、前記平行面において周方向に2分割されるナット本体と、該ナット本体のテーパ面に沿って摺動可能な貫通孔を有し、かつ、前記ナット本体とともに回転可能なホルダによりナットを構成する。そして、締結位置への押し込みの際に開いたナット本体のネジ穴を、前記締結位置近傍において、分割されたナット本体の端面に一端が固定され、他端が連結部で連結された一対のアームを有する付勢手段を利用して前記ネジ部に噛ませるとともに、前記一対のアームに係合する溝部を有する本体位置決め手段によって、前記分割されたナット本体の位置決めを行うこととした。このため、ボルトと組み合わせて使用するナットの用途に適用できる。特に、長尺のボルトと締結するナットの用途に好適である。




本発明の実施例1の構造を示す図であり、(A)は分解斜視図,(B)は組立状態を示す斜視図である。 前記実施例1の作用を示す断面図である。 本発明の実施例2の構造を示す図であり、(A)は分解斜視図,(B)は組立状態を示す斜視図である。 前記実施例2の作用を示す断面図である。 本発明の実施例3の構造を示す図であり、(A)は分解斜視図,(B)は組立状態を示す外観斜視図,(C)は組立状態を示す断面斜視図である。 本発明の実施例4の構造を示す図であり、(A)は分解斜視図,(B)は組立状態を示す外観斜視図である。 前記実施例4の作用を示す断面図である。 本発明の他の実施例を示す図である。
符号の説明
10:ナット
12:ボルト
14:軸部
14A:端部
16:ネジ部
18:頭部
20:対象物
30:スクリューコッタ(ナット本体)
30A,30B:分割体
32:ネジ穴
34,36:端部
37:平行面
38:テーパ面
40:ホルダ
40A,40B:端部
41:面取り
42:貫通孔
43:平行面
44:テーパ面
46:縁部
50:ナット
52:スクリューコッタ(ナット本体)
52A,52B:分割体
54:ネジ穴
56,58:端部
59:平行面
60:テーパ面
62:分割線
64,64C,64D:溝
66:バネ
68:プレート
70:ホルダ
70A,70B:端部
71:面取り
72:貫通孔
73:平行面
74:テーパ面
76:縁部
80,82,84,86:バネ
88A,88B:凸部
90A,90B:穴
100:ナット
102:スクリューコッタ(ナット本体)
102A,102B:分割体
104:ネジ穴
106,108:端部
110:平行面
111,112:テーパ面
114:バネ体
116A,116B:アーム
118:連結リング
120:ホルダ
120A,120B:端部
122:面取り
124:貫通孔
126:平行面
128:テーパ面
130:縁部
132:段差
134:溝部
136:セットプレート
138:開口部
140:係合溝
142:ストップリング
144:切れ目
200:ナット
202:スクリューコッタ(ナット本体)
202A,202B:分割体
204:ネジ穴
206,208:端部
210:平行面
212:テーパ面
214:バネ体
216:プレート
216A,216B:縁
217:開口部
218:板バネ
220:ホルダ
220A,220B:端部
222:面取り
224:貫通孔
226:第1収納部
226A:テーパ面
227:段差
228:第2収納部
230:縁部
232A,232B:位置決めプレート
234A,234B:平面部
236:連結部
238:爪
240:隙間
250:プレート
252:開口部
254:係合部

Claims (2)

  1. ボルトと組み合わせて対象物の締め付けを行うナットであって、
    前記ボルトのネジ部と螺合するネジ穴を有しており、対向する一対の平行面と、前記対象物に対向する端部側から他端側へ向けて広がる一対のテーパ面からなる外周面を備えるとともに、全体が前記平行面において周方向に2分割されたナット本体,
    対向する一対の平行面と、前記ナット本体のテーパ面と略同一勾配の一対のテーパ面からなり、前記ナット本体よりも軸方向に長い貫通孔を有するとともに、該貫通孔内に前記ナット本体を収納した状態で締め付け方向の反対側に移動させることにより、分割されたナット本体のネジ穴を前記ボルトのネジ部に噛ませるホルダ,
    一方の端部が、前記分割されたナット本体の締め付け方向の反対側の端面に固定されており、他方の端部が、前記ホルダの貫通孔から突出する一対のバネ状のアームと、前記貫通孔から突出した前記一対のアームを連結する連結部とを有しており、前記分割されたナット本体を前記バネ状のアームの弾性力により前記貫通孔の内面に向けて付勢する付勢手段,
    該付勢手段の一対のアームに係合する溝部を有しており、前記付勢手段に装着可能であって、前記分割されたナット本体の位置を決めるための本体位置決め手段,
    を備えるとともに、
    前記ナット本体とホルダは、前記ボルトのネジ部と略直交する断面形状が略同一であって、嵌合状態において同時に回転可能であることを特徴とするナット。
  2. 前記貫通孔の締め付け方向の反対側の端部に設けられており、前記ナット本体の端面と係合するストッパ手段,
    を備えたことを特徴とする請求項記載のナット。
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