JP5488387B2 - 電線導出構造およびシールドブラケット - Google Patents

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Description

本発明は、電線をシールドする金属製の筒状部のうち電線が導出する開口端縁の内側に保護部材を配置してなる電線導出構造、および当該電線導出構造を有するシールドブラケットに関する。
従来より、ノンシールド電線を金属製の筒状部で包囲することによりシールドする方法が知られている。そして、このようなシールド構造では、例えば筒状部から導出した電線が屈曲されて筒状部の開口端縁に押しつけられると、絶縁用の被覆が損傷等する虞があるため、筒状部のうち電線が導出する開口端縁の内側に保護部材を装着することがある。
上述のようなシールド構造を有する電線保持部材として、シールドコネクタやシールドパイプ等が知られている。
例えば特許文献1に記載のシールドコネクタは、ハウジングの後端部(電線が導出する側の端部)に金属製のシールドシェルが組み付けられたものであり、シールドシェルの開口端縁の内側には保護部材が取り付けられている。この保護部材は、2つの分割体が可撓性を有するヒンジで連結されたものであり、ヒンジを起点に閉じたり開いたりすることが可能とされている。このような構成とすることで、ハウジングに電線を挿通した後に、保護部材を装着することが可能となっている。そして、保護部材の外周面には、ハウジングの係止穴に係止する係止突起が設けられており、係止突起が係止穴に係止することで、保護部材がシールドコネクタに固定される。
また、例えば特許文献2に記載のシールドパイプにおいては、上記のような構成の保護部材を、シールドパイプの端末部に装着することが考えられる。このような場合には、円筒形状をなすシールドパイプの内周面に沿うよう、円筒形状をなす保護部材を装着することが想定される。
特開2005−129355号公報 特開2007−66994号公報
ところが、保護部材を構成する2つの分割体の端部(ヒンジとは反対側の端部)の間には、シールドコネクタまたはシールドパイプに装着した状態であっても、少なからず隙間が空くので、2つの分割体が隙間の分だけ変位する可能性がある。そして、分割体が内側へ変位すると、係止突起が係止穴から外れて、保護部材が不用意に離脱してしまう虞がある。
また、上記したシールドパイプのように、保護部材の装着部が円筒形状をなす場合には、係止突起をシールドパイプの係止穴に位置合わせしにくく、保護部材を装着する際に、係止突起が係止穴の位置からずれているにもかかわらず、そのままに留め置かれてしまう虞がある。
このように、電線をシールドする金属製の筒状部の開口端縁の内側に保護部材を配置する場合に、保護部材が不用意に離脱してしまう虞があるので対策が望まれていた。
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、保護部材が不用意に離脱することを防ぐことが可能な電線導出構造、およびシールドブラケットを提供することを目的とする。
本発明の電線導出構造は、電線を保持する電線保持部材に、前記電線をシールドする金属製の筒状部が備えられ、この筒状部のうち前記電線が導出する開口端縁の内側に、前記電線を包囲する保護部材を配置してなる電線導出構造であって、前記保護部材は、可撓性を有するヒンジで連結された2つの分割体が前記ヒンジを起点に開閉可能とされたものであり、前記保護部材の外周面には係止突起が設けられ、前記電線保持部材には、前記係止突起が係止可能な係止穴が形成され、前記係止突起が前記係止穴に係止することで、前記保護部材が前記電線保持部材に固定されるものであり、前記電線保持部材のうち前記保護部材が装着される装着部の内周面には、前記保護部材が、前記係止突起と前記係止穴とが嵌合する正規の姿勢で前記装着部に装着されたときに、前記分割体の前記ヒンジとは反対側の端部の間に突出するリブが設けられている。
このような構成によれば、リブが2つの分割体の端部の間に挟まれるから、保護部材が正規の姿勢で保持されるので、係止突起が係止穴から外れてしまうことを防ぐことができる。また、2つの分割体の端部の間にリブが配されるようにして保護部材を装着すれば、保護部材は、係止突起が係止穴に係止する正規の姿勢で装着部に装着される。すなわち、本発明によれば、保護部材が不用意に離脱することを防ぐことができる。
また、前記リブは、前記保護部材の内側まで突出する寸法を有しているものとしてもよい。このような構成によれば、分割体の端部がリブを乗り越えることを防ぐことができるから、保持部材を確実に正規の姿勢に保持することができる。
また、前記保護部材は、前記装着部に対して、前記筒状部の前記開口端縁側から奥側へ向かう方向に挿入されて装着されるものであり、前記リブは、前記装着部のうち前記保護部材の挿入方向の手前側の端から奥方に向かって延びるものとしてもよい。このような構成によれば、保護部材を装着する際に、分割体の端部の位置を合わせやすい。
また、前記保護部材には、軸方向に延びるスリットにより他の部分と切り離されて内外方向に弾性変位可能とされた弾性変位部が設けられ、前記係止突起は、前記弾性変位部に設けられているものとしてもよい。
このような構成によれば、保護部材を装着する際には弾性変位部が内側に弾性変位し、装着完了時には外側に弾性復帰して係止突起が係止穴に係止するから、保護部材を容易に装着することができ、かつ高い係止力を確保することができる。
本発明のシールドブラケットは、金属製のケースに固定されるシールドブラケットであって、電線をシールドする金属製の筒状部が備えられ、前記筒状部のうち前記電線が導出する側の開口端縁の内側に、前記電線を包囲する保護部材が装着され、前記保護部材は、可撓性を有するヒンジで連結された2つの分割体が前記ヒンジを起点に開閉可能とされたものであり、前記保護部材の外周面には係止突起が設けられ、前記シールドブラケットには、前記係止突起が係止可能な係止穴が形成され、前記係止突起が前記係止穴に係止することで、前記保護部材が前記シールドブラケットに固定されるものであり、前記シールドブラケットのうち前記保護部材が装着される装着部の内周面には、前記保護部材が、前記係止突起と前記係止穴とが嵌合する正規の姿勢で前記装着部に装着されたときに、前記分割体の前記ヒンジとは反対側の端部の間に突出するリブが設けられている。
本発明によれば、保護部材が不用意に離脱することを防ぐことが可能な電線導出構造、およびシールドブラケットを提供することができる。
実施形態1にかかるシールドブラケットの背面図 シールドブラケットの側面図 リテーナを装着する前のシールドブラケットを示す断面図であって、図1のA−A位置における断面に相当する断面図 リテーナを装着した後のシールドブラケットを示す断面図であって、図1のA−A位置における断面に相当する断面図 リテーナを装着した後のシールドブラケットを示す断面図であって、図2のB−B位置における断面に相当する断面図 リテーナの外観斜視図 分割体が開いた状態のリテーナを示す背面図 分割体が閉じた状態のリテーナを示す背面図 実施形態2にかかるシールドパイプの断面図
<実施形態1>
以下、本発明を具体化した実施形態1について、図1〜図8を参照しつつ詳細に説明する。
本実施形態におけるシールドブラケット(電線保持部材)10は、図示しない金属製のケースに取り付けられて使用されるものである。シールドブラケット10は、金属材料を加工して全体的に筒状に成形されたものであり、ケースの開口に嵌め込まれて、ケースの内外を連通する。このシールドブラケット10を介して、ワイヤハーネスがケースの内外にわたり配策される。以下、各構成部材において、図1の上下方向を上下方向とし、また、シールドブラケット10がケースに固定されたときにケース内に配置される側(図2の左側)を前方、ケース外に配置される側(図2の右側)を後方として説明する。
ワイヤハーネスは、3本の電線Wを束にしたものであり、シールドブラケット10よりも後方に位置する部分は、図示しないシールド部材で包囲されている。電線Wは、アルミニウム合金製の単芯線や銅製の撚り線等からなる導体の外周を合成樹脂製の絶縁被覆で包囲したノンシールドタイプのものであって、導体および絶縁被覆がいずれも可撓性を備えており、曲げ変形可能とされている。シールド部材は、金属製(例えば、銅合金製)の素線をメッシュ状に編み込んだ編組線により筒状に形成された可撓性を有するものであり、自在に曲げ変形可能とされている。
シールドブラケット10は、電線Wを内周側に挿通可能な筒状をなす筒状部10Aと、筒状部10Aから側方に突出してケースに固定される突出部10Bとを有している。
突出部10Bは、図2に示すように、筒状部10Aの前後方向における中間位置よりも前端寄りの位置に設けられ、筒状部10Aの全周から側方に突出している。突出部10Bは、図1に示すように、筒状部10Aの上方および下方に、左右方向に比して大きく突出し、その上端部および下端部には、ボルト孔11が形成されている。
筒状部10Aは、3本の電線Wを挿通可能な円筒状をなしている。筒状部10Aの内径寸法は、前端位置において最大とされ、後方へ向かって少しずつ小さくなり、後端位置において最小とされている(図3参照)。
筒状部10Aのうち後端寄りの部分は、ワイヤハーネスのシールド部材がかしめ付けられる被圧着部12とされている。被圧着部12は、その前後の部分よりも厚さ寸法が小さくされ、外周面が内側に窪んだ形状とされている。被圧着部12の外周面に被せられたシールド部材の端末部は、図示しないカシメリングによってカシメ付けられ、筒状部10Aに導通可能に接続される。
筒状部10Aのうち被圧着部12よりも前側の部分(筒状部10Aの前後方向の略中央部分)は、シールド部材を包囲して保護する図示しないゴムブーツの端末部が固定される被固定部13とされている。被固定部13の外周面に被せられたゴムブーツの端末部は、図示しない固定リングにより締め付けられ、筒状部10Aに固定される。
そして、被圧着部12と被固定部13との間には、カシメリングおよび固定リングを筒状部10Aの軸方向に対して位置決めする位置決め突条14が、外側に突出して設けられている。位置決め突条14は、筒状部10Aの略全周にわたり形成されている。なお、位置決め突条14と突出部10Bとの間の部分が被固定部13である。
筒状部10Aのうち突出部10Bよりも前方には、ゴム栓21およびシールリング22が嵌着される被嵌着部15が設けられている。ゴム栓21は、被嵌着部15の内側に嵌め込まれ、シールリング22は、被嵌着部15の外側に嵌め着けられる。ゴム栓21は、電線Wを挿通可能な貫通孔21Aが3つ形成された一括ゴム栓である。このゴム栓21の外周面が被嵌着部15の内周面に密着し、各貫通孔21Aの周面が各電線Wの外周面に密着することで、筒状部10A内への前方からの水の浸入を防ぐ。また、シールリング22の外周面がケースの開口の周面に密着し、シールリング22の内周面が被嵌着部15の外周面に密着することで、ケース内への開口からの水の浸入を防ぐ。
筒状部10Aの前端部(被嵌着部15よりも前方の部分)は、被嵌着部15よりも厚さ寸法が小さくされている(図3参照)。筒状部10Aの前端部には、後述する前側ホルダ27Fの爪部26が係止する孔部16が形成されている。孔部16は、筒状部10Aの内外方向に貫通する孔である。
ゴム栓21の前方および後方には、ゴム栓21の前後方向への位置ずれを規制する合成樹脂製のホルダ27が装着されている。両ホルダ27には、電線Wを挿通可能な挿通孔23が3つずつ形成されており、各挿通孔23は、外側へ開放された形態とされている。これにより、各ホルダ27の挿通孔23に対しては、解放された側から電線Wを差し入れることが可能となっている。
両ホルダ27のうちゴム栓21の後方に装着される後側ホルダ27Bは、筒状部10Aの内側に形成された位置決め段差部17に突き当たって後方への位置ずれが防止される(図3参照)。
両ホルダ27のうちゴム栓21の前方に装着される前側ホルダ27Fは、ゴム栓21の前面をカバーするゴム栓カバー部24と、筒状部10Aの前端のエッジを覆うエッジカバー部25とを有している。エッジカバー部25は、ゴム栓カバー部24の周縁から前方に突出し、筒状部10Aの前端部の前面、内周面および外周面を覆う。エッジカバー部25の後端部には、筒状部10Aの孔部16に係止する爪部26が、内側に突出して設けられている。爪部26が孔部16に係止することで、前側ホルダ27Fは、筒状部10Aから前方へ離脱することが規制される。なお、エッジカバー部25の後端とシールリング22の前端とは前後方向に近接して位置する。
そして、筒状部10Aの後端部は、後述するリテーナ(保護部材)30が装着される装着部18とされている。装着部18は、筒状部10Aのうちの後端縁から位置決め突条14までの部分、言い換えると、被固定部13よりも後側の部分である(図4参照)。
筒状部10Aには、リテーナ30の係止突起38が係止可能な係止穴19が形成されている。係止穴19は、装着部18の前端寄りの位置、言い換えると、位置決め突条14の後側の位置であって被圧着部12の範囲内に形成されている。
係止穴19は、筒状部10Aの左右に一対が設けられている。各係止穴19は、略円形をなして筒状部10Aを内外方向に貫通している(図2参照)。一対の係止穴19は、ほぼ同じ形状および同じ大きさをなし、筒状部10Aの軸線を挟んで対称位置に設けられている。係止穴19は、被圧着部12の前側部分に設けられ、その直径は、被圧着部12の前後方向の寸法の半分よりも大きくされている。
リテーナ30は、電線Wを一括して包囲可能なものであり、筒状部10Aの後端縁(電線Wが導出する開口端縁)の内側に配置されて、筒状部10Aの後端縁に電線Wが直接接触して損傷等することを防ぐものである。リテーナ30は、筒状部10A(装着部18)に対して、筒状部10Aの後端側(開口端縁側)から前側(奥側)へ向かう方向に押し込まれて装着される。リテーナ30は、その後端部が筒状部10Aから後方に突出した状態で装着される(図4参照)。
リテーナ30の後端部には、筒状部10Aの後端に突き当たって、リテーナ30の前方への移動を規制するストッパ31が設けられている。ストッパ31は、リテーナ30の外側へ突出するものであって、後述する弾性変位部35の後方部分を除いた略全体に設けられている(図6参照)。
リテーナ30は合成樹脂製であって、可撓性を有するヒンジ30Aで連結された2つの分割体30Bが、ヒンジ30Aを起点に開閉可能とされた単一部品である(図7および図8参照)。2つの分割体30Bは左右対称をなし、その上端同士がヒンジ30Aにより連結されている。各分割体30Bは、断面形状が半円形状をなすものであり、分割体30Bが閉じた状態では、全体として筒状部10Aよりも一回り小さい円筒状をなす。リテーナ30の内径寸法は、全長にわたり略一定とされ、厚さ寸法が、前方から後方に向かって少しずつ小さくされている(図4参照)。すなわち、リテーナ30の外周面は、筒状部10Aの内周面に沿って傾斜している。ヒンジ30Aは、分割体30Bよりも薄いものであり、分割体30Bの厚さ方向の略中央位置よりも若干内側の位置を連結している。なお、各分割体30Bの端部のうちヒンジ30Aにより連結される側の端部を連結端部32、連結端部32とは反対側の端部を切離端部33と称する。
リテーナ30には、スリット34により他の部分と切り離されて、リテーナ30の内外方向に弾性変位可能とされた弾性変位部35が設けられている(図6参照)。
スリット34は、リテーナ30の前端から後方へ向かってリテーナ30の軸方向に沿って延びるものであり、前方に開放された形態をなしている。スリット34は、各分割体30Bの周方向における中央部分を挟む位置に一対ずつ形成され、一対のスリット34の間の部分が弾性変位部35とされる。
各弾性変位部35は、前端が自由端とされた片持ち状をなしている。各弾性変位部35、およびスリット34を挟んで各弾性変位部35と隣接する部分のうち、後述する係止突起38の位置よりも後方の部分は、他の部分よりも厚さ寸法が若干小さくされた応力緩和部36とされている。なお、弾性変位部35の両側方には、リテーナ30の前端から後端までの全長にわたり直線状に延びる補強突条37が設けられている。
リテーナ30の外周面には、筒状部10Aの係止穴19に係止する係止突起38が設けられている。係止突起38は、弾性変位部35の前端寄りの位置に設けられている。係止突起38は、図2に示すように、そのほぼ全体が係止穴19に嵌合するものである。係止突起38は、リテーナ30の外方から見ると上下方向にわずかに長い長円形状をなし、その長手方向(長軸方向)の長さ寸法は、係止穴19の直径と略同等の寸法とされている。
係止突起38の前側半分は、前端から後方に向かって少しずつ高さ寸法が大きくされており、その突出端面は、後方に向かって少しずつ外方に傾斜する案内面38Aとされている(図4参照)。係止突起38の後側部分は、弾性変位部35からの突出高さが略一定とされその周面のうち後側の面は、係止穴19の周面に当接する係止面38Bとされている。リテーナ30は、係止突起38が係止穴19に係止することで、筒状部10Aからの後方への離脱が規制され、シールドブラケット10に固定される。
リテーナ30の内周面における前端および後端には、弾性変位部35を含む略全周にわたり丸みが付されて第1曲面部39Aが形成されている。また、各分割体30Bの連結端部32および切離端部33の内側には、その前後方向の全体にわたり丸みが付されて第2曲面部39Bが形成されている(図5参照)。また、スリット34の両側面の内側には、その前後方向にわたり丸みが付されて第3曲面部39Cが形成されている。これらの曲面部39A,39B,39Cにより、電線Wがリテーナ30に強く接触したとしても、電線Wが損傷等しないようにされている。
筒状部10Aには、リテーナ30の切離端部33の間に突出するリブ40が設けられている(図3参照)。リブ40は、装着部18の内周面のうち一対の係止穴19の略中間となる位置、すなわちリテーナ30が、図5に示すように、係止突起38と係止穴19とが嵌合した姿勢(正規の姿勢)で装着部18に装着されたときに、分割体30Bの切離端部33の間となる位置に設けられている。ここで、正規の姿勢とは、係止突起38が係止穴19に嵌合した状態を保持している姿勢であって、分割体30Bが内側へ変位して係止突起38が係止穴19から外れたときには、もはや正規の姿勢ではない。
リブ40は、筒状部10A(装着部18)の後端(リテーナ30の挿入方向の手前側の端)から前方に向かって直線状に延びるものであり、その前後方向の長さ寸法(延長寸法)は、リテーナ30の軸方向の長さ寸法よりも若干短いものとされている。リブ40は、リテーナ30の内側まで突出する寸法、すなわちリテーナ30の厚さ寸法よりも大きい突出寸法を有している。また、リテーナ30の幅寸法は全体にわたり略一定とされ、その幅寸法は、リテーナ30が正規の姿勢にあるときの分割体30Bの切離端部33の間の間隔と同等である。より詳細には、リブ40の幅寸法は、リテーナ30が正規の姿勢にあるときであって、さらに両分割体30Bの係止突起38が、ともに係止穴19に対して最大の係止代(係止突起38の係止面38Bにおける突出寸法のほぼ限度一杯)を確保している状態(図5参照)における、分割体30Bの切離端部33の間の間隔と同等とされている。
次に、シールドブラケット10の組み付け手順について説明する。
まず、シールドブラケット10の筒状部10Aにワイヤハーネスを挿通する。3本の電線Wのうちシールド部材の端末部から前方に導出されている部分を、筒状部10Aに対して後方から挿入して、筒状部10Aの前方に導出させる。
次に、筒状部10Aの前方に引き出された電線Wにゴム栓21を装着する。そして、そのゴム栓21の後側に後側ホルダ27Bを装着し、この後側ホルダ22Bを、筒状部10Aに対して前方から所定の位置まで押し込んで装着する。その後、ゴム栓21を移動させて後側ホルダ27Bの前側(被嵌着部15)に配置し、また被嵌着部15の外周側にシールリング22を装着する。次いで、電線Wのうちゴム栓21よりも前方の位置に前側ホルダ27Fを装着し、前側ホルダ27Fを筒状部10Aの前端部に嵌め付けて爪部26を穴部に係止させる。なお、ゴム栓21は、後側ホルダ27Bを装着した後に装着してもよい。
次に、シールドブラケット10にリテーナ30を装着する(図3および図4参照)。リテーナ30を開いた状態にして電線Wの束に対して側方から装着し、リテーナ30を閉じた状態にして電線Wに沿って移動させ、筒状部10Aに対して後方から嵌め込む。このとき、分割体30Bの切離端部33の間にリブ40が入り込むようにして、リテーナ30の位置を合わせる。そして、リテーナ30を前方に押し込むと、係止突起38の案内面38Aが筒状部10Aの後端に当たって弾性変位部35が少しずつ内側に弾性変位し、弾性変位部35を弾性変形させたまま、リテーナ30は装着部18内を前方に移動する。このとき、分割体30Bの切離端部33がリブ40の側面に当たることにより、リテーナ30はリブ40の延び方向に沿って移動する。やがてリテーナ30のストッパ31が筒状部10Aの後端に突き当たり、係止突起38が係止穴19に嵌合し、同時に弾性変位部35が外側に弾性復帰する。こうして、リテーナ30がシールドブラケット10に固定された状態になる。
次に、シールド部材の端末部を被圧着部12に被せてカシメリングをかしめ付け、ゴムブーツの端末部を被固定部13に被せて固定リングを締め付ける。
こうして、シールドブラケット10をケースに固定する準備が整った後、筒状部10Aをケースの開口に嵌め込み、突出部10Bをケースの外面に沿わせた状態にして、ボルト孔11にボルトを締め付けて固定する。なお、シールドブラケット10をケースに固定した後、シール部材のかしめ付けおよびゴムブーツの固定を行ってもよい。
こうして、シールドブラケット10はケースに固定され、組み付け作業が完了する。
上記のように構成された実施形態1によれば、以下の効果を奏する。
電線Wを保持するシールドブラケット10に、電線Wをシールドする金属製の筒状部10Aが備えられ、この筒状部10Aのうち電線Wが導出する開口端縁の内側に、電線Wを包囲するリテーナ30を配置してなり、リテーナ30は、可撓性を有するヒンジ30Aで連結された2つの分割体30Bがヒンジ30Aを起点に開閉可能とされたものであり、リテーナ30の外周面には係止突起38が設けられ、シールドブラケット10には、係止突起38が係止可能な係止穴19が形成され、係止突起38が係止穴19に係止することで、リテーナ30がシールドブラケット10に固定されるものであり、シールドブラケット10のうちリテーナ30が装着される装着部18の内周面には、リテーナ30が、係止突起38と係止穴19とが嵌合する正規の姿勢で装着部18に装着されたときに、分割体30Bの切離端部33の間に突出するリブ40が設けられている。
これにより、リブ40が2つの分割体30Bの端部の間に挟まれるから、リテーナ30が正規の姿勢で保持されるので、係止突起38が係止穴19から外れてしまうことを防ぐことができる。また、2つの分割体30Bの切離端部33の間にリブ40が配されるようにしてリテーナ30を装着すれば、リテーナ30は、係止突起38が係止穴19に係止する正規の姿勢で装着部18に装着されるから、係止突起38が係止穴19の位置からずれたまま留め置かれる事態を防止できる。したがって、本実施形態によれば、リテーナ30が不用意に離脱することを防ぐことができる。
また、リブ40は、リテーナ30の内側まで突出する寸法を有しているから、分割体30Bの端部がリブ40を乗り越えることを防ぐことができる。したがって、リテーナ30を確実に正規の姿勢に保持することができる。
また、リテーナ30は、装着部18に対して、筒状部10Aの開口端縁側から奥側へ向かう方向に挿入されて装着されるものであり、リブ40は、装着部18のうちリテーナ30の挿入方向の手前側の端から奥方に向かって延びるものである。このように、リブ40が装着部18の手前側にあるので、リテーナ30を装着する際に、分割体30Bの切離端部33の位置を合わせやすい。
また、リテーナ30には、軸方向に延びるスリット34により他の部分と切り離されて内外方向に弾性変位可能とされた弾性変位部35が設けられ、係止突起38は、弾性変位部35に設けられている。これにより、リテーナ30を装着する際には弾性変位部35が内側に弾性変位し、装着完了時には外側に弾性復帰して係止突起38が係止穴19に係止するから、リテーナ30を容易に装着することができ、かつ高い係止力を確保することができる。
<実施形態2>
次に、本発明を具体化した実施形態2に係る電線導出構造を図9によって説明する。
本実施形態の電線導出構造は、電線Wを保持する電線保持部材がシールドパイプ50である点で、実施形態1とは相違する。なお、実施形態1と同様の構成には同一符号を付して重複する説明を省略する。
本実施形態に係るシールドパイプ50は、3本の電線Wを一括してシールドする金属製の筒状をなし、すなわちシールドパイプ50の本体が、本発明の筒状部に該当する。そして、シールドパイプ50のうち電線Wが導出する開口端縁の内側には、実施形態1と同様、電線Wを包囲するリテーナ30が配置されている。
リテーナ30は、実施形態1と同様、可撓性を有するヒンジ30Aで連結された2つの分割体30Bがヒンジ30Aを起点に開閉可能とされたものであり、その外周面には係止突起38が設けられている。また、シールドパイプ50には、係止突起38が係止可能な係止穴51が形成され、係止突起38が係止穴51に係止することで、リテーナ30がシールドパイプ50に固定される。
係止穴51は、シールドパイプ50の開口端寄りの位置に形成されている。係止穴51は、実施形態1と同様、シールドパイプ50の左右に一対が設けられ、各係止穴51は、略円形をなしてシールドパイプ50を内外方向に貫通している。一対の係止穴51は、ほぼ同じ形状および同じ大きさをなし、シールドパイプ50の軸線を挟んで対称位置に設けられている。
また、シールドパイプ50のうちリテーナ30が装着される装着部52の内周面には、リテーナ30が、係止突起38と係止穴51とが嵌合する正規の姿勢で装着部52に装着されたときに、分割体30Bの切離端部33の間に突出するリブ53が設けられている。
リブ53は、実施形態1と同様、装着部52の内周面のうち一対の係止穴51の略中間となる位置に設けられている。リブ53は、実施形態1と同様、シールドパイプ50(装着部52)の開口端(リテーナ30の挿入方向の手前側の端)から奥方に向かって直線状に延びるものであり、その長さ寸法(延長寸法)、突出寸法、および幅寸法は、実施形態1のリブ40と同等とされている。
以上のように実施形態2においては、実施形態1と同様、シールドパイプ50のうちリテーナ30が装着される装着部52の内周面には、リテーナ30が正規の姿勢で装着部52に装着されたときに、分割体30Bの切離端部33の間に突出するリブ53が設けられている。これにより、リブ53が2つの分割体30Bの切離端部33の間に挟まれるから、リテーナ30が正規の姿勢で保持されるので、係止突起38が係止穴51から外れてしまうことを防ぐことができる。また、2つの分割体30Bの切離端部33の間にリブ53が配されるようにしてリテーナ30を装着すれば、リテーナ30は、係止突起38が係止穴51に係止する正規の姿勢で装着部52に装着される。したがって、リテーナ30が不用意に離脱することを防ぐことができる。
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施形態では、リテーナ30は、その後端部が筒状部10A(50)から後方に突出した状態で装着されるものであるが、これに限らず、リテーナは、その後端位置が、筒状部の後端位置と一致するものであってもよい。
(2)上記実施形態では、筒状部10A(50)は円筒形状とされているが、これに限らず、電線Wをシールド可能な形状であればどのような形状であってもよく、例えば、楕円形状、方形状、または複数の円形状をなす部分が幅方向に連なった形状であってもよい。
(3)上記実施形態では、リブ40(53)は、筒状部10A(50)の前後方向に直線状に延びるものとされているが、これに限らず、リブは、例えば前後左右の幅寸法が同等とされた柱状のものであってもよく、また、このようなリブを、筒状部の前後方向に複数、並べて形成してもよい。
(4)上記実施形態では、各分割体30Bには一対のスリット34が形成され、その一対のスリット34の間の部分が弾性変位部35とされているが、これに限らず、例えば、各分割体に一のスリットのみを形成し、この一のスリットと切離端部との間の部分を弾性変位部としてもよい。
(5)上記実施形態では、本発明を、電線保持部材がシールドブラケット10またはシールドパイプ50である場合について示したが、本発明は、例えば電線保持部材が、樹脂製のハウジングと金属製のシールドシェル(筒状部)とを有するシールドコネクタであっても適用可能であり、シールドシェルがハウジングの後端(電線Wが導出する側の端)よりも後方に突出している場合に、リテーナをハウジングの内側に配置して、シールドシェルの端縁の内側に沿うようにし、リテーナの係止突起を、ハウジングに形成した係止穴に係止させてもよい。
W…電線
10…シールドブラケット(電線保持部材)
10A,50…筒状部
19,51…係止穴
18,52…装着部
30…リテーナ(保護部材)
30A…ヒンジ
30B…分割体
33…切離端部(ヒンジとは反対側の端部)
34…スリット
35…弾性変位部
38…係止突起
40,53…リブ
50…シールドパイプ(電線保持部材)

Claims (5)

  1. 電線を保持する電線保持部材に、前記電線をシールドする金属製の筒状部が備えられ、この筒状部のうち前記電線が導出する開口端縁の内側に、前記電線を包囲する保護部材を配置してなる電線導出構造であって、
    前記保護部材は、可撓性を有するヒンジで連結された2つの分割体が前記ヒンジを起点に開閉可能とされたものであり、
    前記保護部材の外周面には係止突起が設けられ、
    前記電線保持部材には、前記係止突起が係止可能な係止穴が形成され、
    前記係止突起が前記係止穴に係止することで、前記保護部材が前記電線保持部材に固定されるものであり、
    前記電線保持部材のうち前記保護部材が装着される装着部の内周面には、前記保護部材が、前記係止突起と前記係止穴とが嵌合する正規の姿勢で前記装着部に装着されたときに、前記分割体の前記ヒンジとは反対側の端部の間に突出するリブが設けられている電線導出構造。
  2. 前記リブは、前記保護部材の内側まで突出する寸法を有している請求項1に記載の電線導出構造。
  3. 前記保護部材は、前記装着部に対して、前記筒状部の前記開口端縁側から奥側へ向かう方向に挿入されて装着されるものであり、
    前記リブは、前記装着部のうち前記保護部材の挿入方向の手前側の端から奥方に向かって延びるものである請求項1または請求項2に記載の電線導出構造。
  4. 前記保護部材には、軸方向に延びるスリットにより他の部分と切り離されて内外方向に弾性変位可能とされた弾性変位部が設けられ、
    前記係止突起は、前記弾性変位部に設けられている請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の電線導出構造。
  5. 金属製のケースに固定されるシールドブラケットであって、
    電線をシールドする金属製の筒状部が備えられ、
    前記筒状部のうち前記電線が導出する側の開口端縁の内側に、前記電線を包囲する保護部材が装着され、
    前記保護部材は、可撓性を有するヒンジで連結された2つの分割体が前記ヒンジを起点に開閉可能とされたものであり、
    前記保護部材の外周面には係止突起が設けられ、
    前記シールドブラケットには、前記係止突起が係止可能な係止穴が形成され、
    前記係止突起が前記係止穴に係止することで、前記保護部材が前記シールドブラケットに固定されるものであり、
    前記シールドブラケットのうち前記保護部材が装着される装着部の内周面には、前記保護部材が、前記係止突起と前記係止穴とが嵌合する正規の姿勢で前記装着部に装着されたときに、前記分割体の前記ヒンジとは反対側の端部の間に突出するリブが設けられているシールドブラケット。
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