ところが、ろう材の中には棒状等の固体形状に成形するのが困難で、一般にはペースト状のままでしか利用し得ないものがあったり、ろう付対象の材質や使用環境等の要因によりろう付に使用するろう材が制限されたりする場合がある。
例えば、銅ろう(リン銅ろう)は酸性のドレンが発生して潜熱回収用の熱交換器には腐食の観点から適当ではなく、銀ろうはろう付対象がステンレス製のものであるとろう付対象との間で電食発生のおそれを生じるため適当ではない。その一方、ろう付対象のフィンやチューブとして耐食性を考慮してステンレス製のものを採用した場合には、上記の銅ろうや銀ろう以外のろう材としてニッケルろうの使用が考えられる。
しかしながら、ニッケルろうはペースト状のものが一般であり、ニッケルろうを使用する場合には、ろう付箇所ごとにペースト状のニッケルろうを塗布する必要があり、ろう付により熱交換器を量産する上で生産性や生産コストの点で大きな障害となってしまう。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ステンレス製のフィン及びチューブをペースト状のろうを用いて量産体制に適したろう付を行い得る、ステンレス製フィンアンドチューブ式熱交換器の製造方法を提供することにある。
上記目的を達成するために、第1の発明では、ステンレス製の複数のフィンを所定間隔で整列させたフィン組立体に対し所定数のステンレス製のチューブを貫通配置し、フィン組立体を構成する各フィンと各チューブとを炉内でろう付する、ステンレス製フィンアンドチューブ式熱交換器の製造方法を対象にして、次の特定事項を備えることとした。すなわち、上記チューブ貫通方向に対し上記フィン組立体に挿通し得る長さの杆状部材に対し、外周面の少なくとも一部の面であって長手方向の略全長にわたりペースト状ろうを予め塗布してなるろう担持部材を用意する一方、上記各フィンに対しチューブが貫通配置されるチューブ挿通孔の上下方向位置に上記ろう担持部材に対応する形状の担持部材挿通孔を貫通形成する。次に、上記フィン組立体にチューブを貫通配置させる一方、上記フィン組立体の各フィンの担持部材挿通孔に対しろう担持部材を挿通させた後、これを炉内に入れてろう付する、こととした(請求項1)。
この発明の場合、所定数のフィンを整列させて形成されたフィン組立体において各フィンの担持部材挿通孔により構成される通路に対しろう担持部材を挿通させることで、各チューブと各フィンとを互いにろう付するためのペースト状ろうをチューブ組み付け後のフィン組立体に対し付与し得ることになる。そして、炉内に入れることで、ろう担持部材に塗布されたペースト状ろうが溶融して下方のチューブに対し流下し、チューブとフィンとのろう付が行われる。そして、この場合、ろう担持部材を用いることによって、たとえペースト状ろうであったとしても、他の棒状等の固形ろう材と同様の取扱いによって、ろう付による熱交換器の製造を行うことが可能となる。これにより、ペースト状ろうをろう付箇所毎に塗布する場合と比べ、大幅な工数削減を実現し、ペースト状ろうを用いてステンレス製のフィンアンドチューブ式の熱交換器を量産し得ることになると共に、予めペースト状ろうを塗布しておいたろう担持部材を用いるようにしているため、ろう付箇所毎に塗布する場合と比べ、ペースト状ろうの不足や塗り忘れ等に起因するろう付不良の発生を回避し得ることになる。
この発明において、上記担持部材挿通孔を上記チューブ挿通孔の上下方向に対し斜めに横切るように形成する一方、上記ろう担持部材の杆状部材を板状にして、ろう付後は上記上下方向に流れる流体の整流板として機能し得るようにすることができる(請求項2)。このようにすることにより、ろう付に用いたろう担持部材を、ペースト状ろうが溶解・流下してろう付後に残る杆状部材を熱交換器の整流板として使用することが可能となる。
第2の発明では、ステンレス製の複数のフィンを所定間隔で整列させたフィン組立体に対し所定数のステンレス製のチューブを貫通配置し、フィン組立体を構成する各フィンと各チューブとを炉内でろう付する、ステンレス製フィンアンドチューブ式熱交換器の製造方法を対象にして次の特定事項を備えることとした。すなわち、上記各フィンに対しチューブが貫通配置されるチューブ挿通孔の上側位置にそのチューブ挿通孔の最上位の部位に臨んで開口するよう小径孔を形成し、かつ、その小径孔をバーリング加工によりバーリング縁が少なくとも上記フィン組立体のフィン間隔と同等に突出するように形成しておき、上記フィン組立体にすることにより相隣接する一方のフィンのバーリング縁が他方のフィンに当接してチューブ貫通方向に連続して連通する充填孔が形成されるようにする。そして、上記フィン組立体にチューブを貫通配置させた後に、このフィン組立体に形成された上記充填孔に対し一側から他側にかけてペースト状ろうを充填し、この後、これを炉内に入れてろう付する、こととした(請求項3)。
この発明の場合、所定数のフィンを整列させて形成したフィン組立体において各フィンの小径孔により連続して連通する充填孔が形成されることになる。そして、この充填孔に対しペースト状ろう自体を直接に充填することで、各チューブと各フィンとを互いにろう付するためのペースト状ろうをフィン組立体に対し容易に付与することが可能となる。そして、炉内に入れることで、充填孔に充填されたペースト状ろうが溶融して開口から下方のチューブに対し流下し、チューブとフィンとのろう付が行われる。この場合、バーリング縁と、チューブの外表面の一部により区画された充填孔によってペースト状ろうを確実に保持することが可能となり、他の棒状等の固形ろう材と同様又はそれよりも簡易な作業や取扱いによりろう付による熱交換器の製造を行うことが可能となる。これにより、ペースト状ろうをろう付箇所毎に塗布する場合と比べ、大幅な工数削減を実現することができ、ペースト状ろうを用いてステンレス製のフィンアンドチューブ式の熱交換器を量産し得ることになる。しかも、本発明の場合、ペースト状ろうを充填孔に対し直接に充填するだけでよく、他の特別な部材を用意する必要がないため、製造工程的にも、製造コスト的にも優れた製造方法を提供し得ることになると共に、充填孔に対しペースト状ろうを充填するだけでよいため、ろう付箇所毎に塗布する場合と比べ、ペースト状ろうの塗布量不足や塗り忘れ等に起因するろう付不良の発生を回避し得ることになる。
本発明において、上記小径孔を、そのバーリング縁が上記フィン間隔よりも所定量長く突出させ、かつ、相隣接する一方のフィンのバーリング縁の先端が他方のフィンのバーリング縁の内側に内嵌し得るように先細り形状となるテーパ状に形成し、フィン組立体にすることにより相隣接する一方のフィンのバーリング縁の先端が他方のフィンのバーリング縁の内側に内嵌した状態で上記充填孔が形成されるようにすることができる(請求項4)。このようにすることにより、各バーリング縁の先端部が隣りのバーリング縁に重なり合うことになり、充填孔の密封性が大幅に増大することになる。このため、この充填孔に対しペースト状ろうを充填していっても、漏れに起因するロスが殆どない状態で確実に充填することが可能となる。これにより、ろう付の確実性やペースト状ろうの歩留まりの向上が見込まれることになる。
第3の発明では、ステンレス製の複数のフィンを所定間隔で整列させたフィン組立体に対し所定数のステンレス製のチューブを貫通配置し、フィン組立体を構成する各フィンと各チューブとを炉内でろう付する、ステンレス製フィンアンドチューブ式熱交換器の製造方法を対象にして、次の特定事項を備えることとした。すなわち、上記チューブ貫通方向に対し上記フィン組立体に挿通し得る長さを有しかつその長さ方向の全長に亘り開口を有する筒状の保持部材に対し、その内部にペースト状ろうを予め充填してなるろう保持部材を用意する一方、上記各フィンに対しチューブが貫通配置されるチューブ挿通孔の最上位の部位に臨んで開口するよう保持部材挿通孔を貫通形成しておく。次に、上記フィン組立体にチューブを貫通配置させた後に、上記フィン組立体の各フィンの保持部材挿通孔に対しろう保持部材をその開口がチューブの外表面に臨むように挿通させ、この後、これを炉内に入れてろう付する、こととした(請求項5)。
この発明の場合、所定数のフィンを整列させて形成したフィン組立体において各フィンの保持部材挿通孔に対しろう保持部材を挿通させることで、各チューブと各フィンとを互いにろう付するためのペースト状ろうをフィン組立体に対し付与することが可能となる。そして、これを炉内に入れることで、ろう保持部材に充填されたペースト状ろうが溶融して開口から下方のチューブに対し流下し、チューブとフィンとのろう付が行われる。そして、この場合、ペースト状ろうであっても、そのペースト状ろうをろう保持部材により確実に保持することが可能であり、他の棒状等の固形ろう材と同様又はそれよりも簡易な作業や取扱いによりろう付による熱交換器の製造を行うことが可能となる。これにより、ペースト状ろうをろう付箇所毎に塗布する場合と比べ、大幅な工数削減を実現することができ、ペースト状ろうを用いてステンレス製のフィンアンドチューブ式の熱交換器を量産することが可能となると共に、予めペースト状ろうを充填しておいたろう保持部材を用いるようにしているため、ろう付箇所毎に塗布する場合と比べ、ペースト状ろうの不足や塗り忘れ等に起因するろう付不良箇所の発生を回避し得ることになる。。
本発明において、上記保持部材として円形以外の異形の断面形状を有するものとする一方、上記保持部材挿通孔をその保持部材と対応する形状に形成するようにすることができる(請求項6)。このようにすることにより、ろう保持部材を保持部材挿通孔に挿通させた状態では長手方向軸の回りの回転が阻止され、ろう保持部材の下向き開口がチューブの上面に向いた状態に確実に維持されることになる。これにより、炉内でのろう付の際にはペースト状ろうを確実にチューブの外周面に流下させ得るようになる。
あるいは、本発明において、上記保持部材としてメッシュ状の小径円筒材又は多孔状の小径円筒材を用いる一方、上記保持部材挿通孔をその保持部材と対応する形状に形成するようにすることができる(請求項7)。このようにすることにより、請求項6の如く回り止めの構成を特に付加することなく、溶融したペースト状ろうをチューブに対し確実に流下させることが可能となる。すなわち、保持部材挿通孔として、最下位部位がチューブ挿通孔2bに開口していさえすれば、円形断面にすることができ、円形断面にして長手方向軸の回りにたとえ回転したとしても、保持部材がメッシュ状や孔付きであるので、長手方向軸の回りにたとえ回転したとしても、溶融したペースト状ろうを確実に流下させることが可能となる。しかも、上記の如く回り止めの必要がないため、保持部材挿通孔として、加工の容易な円形を採用することも可能となる。
以上のいずれかのステンレス製フィンアンドチューブ式熱交換器の製造方法を、潜熱回収用として使用する熱交換器の部分に適用し、他の部分は固形ろう材を用いてろう付するようにすることもできる(請求項8)。このようにすることにより、ドレン水が発生して腐食環境下となる潜熱回収用の熱交換器の部分についてはペースト状ろうを用いて耐久性のあるろう付が実現する一方、他の熱交換器の部分、例えば顕熱回収用の熱交換器の部分についてはコスト的に優れかつ必要十分なろう付で製造し得ることになる。
以上、説明したように、請求項1又は請求項2のステンレス製フィンアンドチューブ式熱交換器の製造方法によれば、所定数のフィンを整列させて形成されたフィン組立体において各フィンの担持部材挿通孔により構成される通路に対しろう担持部材を挿通させることで、各チューブと各フィンとを互いにろう付するためのペースト状ろうをチューブ組み付け後のフィン組立体に対し付与することができるようになる。そして、炉内に入れれば、ろう担持部材に塗布されたペースト状ろうの溶融・流下によって、チューブとフィンとのろう付を行うことができる。このようなろう担持部材を用いることによって、たとえペースト状ろうであったとしても、他の棒状等の固形ろう材と同様の取扱いによって、ろう付による熱交換器の製造を行うことができるようになる。これにより、ペースト状ろうをろう付箇所毎に塗布する場合と比べ、大幅な工数削減を実現することができ、ペースト状ろうを用いてステンレス製のフィンアンドチューブ式の熱交換器を量産することができると共に、予めペースト状ろうを塗布しておいたろう担持部材を用いるようにしているため、ろう付箇所毎に塗布する場合と比べ、ペースト状ろうの不足や塗り忘れ等に起因するろう付不良箇所の発生を回避することができるようになる。
特に、請求項2によれば、ろう付に用いたろう担持部材を、ペースト状ろうが溶解・流下してろう付後に残る杆状部材を熱交換器の整流板として使用することができるようになる。
請求項3又は請求項4のステンレス製フィンアンドチューブ式熱交換器の製造方法によれば、所定数のフィンを整列させて形成したフィン組立体において各フィンの小径孔により連続して連通する充填孔を形成することができ、この充填孔に対しペースト状ろう自体を直接に充填することで、各チューブと各フィンとを互いにろう付するためのペースト状ろうをフィン組立体に対し容易に付与することができるようになる。そして、炉内に入れれば、充填孔に充填されたペースト状ろうが溶融して開口から下方のチューブに対し流下し、チューブとフィンとのろう付を行うことができる。この場合、バーリング縁と、チューブの外表面の一部により区画された充填孔によってペースト状ろうを確実に保持することができ、他の棒状等の固形ろう材と同様又はそれよりも簡易な作業や取扱いによりろう付による熱交換器の製造を行うことができるようになる。これにより、ペースト状ろうをろう付箇所毎に塗布する場合と比べ、大幅な工数削減を実現することができ、ペースト状ろうを用いてステンレス製のフィンアンドチューブ式の熱交換器を量産することができるようになる。しかも、ペースト状ろうを充填孔に対し直接に充填するだけでよく、他の特別な部材を用意する必要がないため、製造工程的にも、製造コスト的にも優れた製造方法を提供することができることになると共に、充填孔に対しペースト状ろうを充填するだけでよいため、ろう付箇所毎に塗布する場合と比べ、ペースト状ろうの塗布量不足や塗り忘れ等に起因するろう付不良の発生を回避することができるようになる。
特に、請求項4によれば、小径孔のバーリング縁をフィン間隔よりも所定量長く突出させ、かつ、バーリング縁の先端を先細り形状となるテーパ状に形成し、フィン組立体において相隣接する一方のフィンのバーリング縁の先端が他方のフィンのバーリング縁の内側に内嵌した状態で充填孔を形成することで、各バーリング縁の先端部が隣りのバーリング縁に重なり合うことになって、充填孔の密封性を大幅に増大させることができるようになる。このため、この充填孔に対しペースト状ろうを充填していっても、漏れに起因するロスが殆どない状態で確実に充填することができ、これにより、ろう付の確実性やペースト状ろうの歩留まりの向上を図ることができるようになる。
請求項5〜請求項7のいずれかのステンレス製フィンアンドチューブ式熱交換器の製造方法によれば、所定数のフィンを整列させて形成したフィン組立体において各フィンの保持部材挿通孔に対しろう保持部材を挿通させることで、各チューブと各フィンとを互いにろう付するためのペースト状ろうをフィン組立体に対し付与することができるようになる。そして、これを炉内に入れることで、ろう保持部材内に充填されたペースト状ろうの溶融により開口から下方のチューブに対し流下させることができ、チューブとフィンとのろう付を行うことができる。このため、ペースト状ろうであっても、そのペースト状ろうをろう保持部材により確実に保持することができ、他の棒状等の固形ろう材と同様又はそれよりも簡易な作業や取扱いによりろう付による熱交換器の製造を行うことができるようになる。これにより、ペースト状ろうをろう付箇所毎に塗布する場合と比べ、大幅な工数削減を実現することができ、ペースト状ろうを用いてステンレス製のフィンアンドチューブ式の熱交換器を量産することができるようになると共に、予めペースト状ろうを充填しておいたろう保持部材を用いるようにしているため、ろう付箇所毎に塗布する場合と比べ、ペースト状ろうの不足や塗り忘れ等に起因するろう付不良箇所の発生を回避することができるようになる。
特に、請求項6によれば、ろう保持部材を保持部材挿通孔に挿通させた状態では異形断面であるため長手方向軸の回りの回転を阻止することができ、ろう保持部材の下向き開口がチューブの上面に向いた状態に確実に維持させることができるように。これにより、炉内でのろう付の際にはペースト状ろうを確実にチューブの外周面に流下させることができる。
請求項7によれば、保持部材としてメッシュ状の小径円筒材又は多孔状の小径円筒材を用いることで、回り止めの構成を特に付加することなく、溶融したペースト状ろうをチューブに対し確実に流下させることができるようになる。しかも、回り止めの必要がないため、保持部材挿通孔として、加工の容易な円形を採用することができるようになる。
請求項8によれば、以上のいずれかのステンレス製フィンアンドチューブ式熱交換器の製造方法を、潜熱回収用として使用する熱交換器の部分に適用し、他の部分は固形ろう材を用いてろう付するようにすることで、ドレン水が発生して腐食環境下となる潜熱回収用の熱交換器の部分についてはペースト状ろうを用いて耐久性のあるろう付を実現させることができる一方、他の熱交換器の部分についてはコスト的に優れかつ必要十分なろう付で製造することができるようになる。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。以下の各実施形態におけるフィンやチューブは全てステンレス製であり、ろう材としてはペースト状ろうを用いており、そのペースト状ろうとして具体的には例えばニッケルろうを用いている。又、以下の各実施形態におけるろう付による熱交換器の製造方法の基本は、所定形状のフィンを所定数・所定間隔に整列させてフィン組立体を構築し、これに所定数のチューブを挿入又は圧入させて貫通等(以下、単に「挿通」という)させた状態で、以下の各実施形態で説明する方法でペースト状ろうをセットした後、これをろう付用の炉内に入れて所定の高温雰囲気中で一括ろう付処理することにより、各フィンとチューブとを一体的に結合させて熱交換器を製造するものである。なお、以下の実施形態では、熱交換器ケースについて触れていないが、炉に挿入して一括ろう付する際には、フィン組立体のみならず熱交換器ケースをも組み付けた状態で炉に挿入して、熱交換器ケースをも共にろう付するようにしてもよい。又、以下に記載のフィン及びチューブは、フィンアンドチューブ式の熱交換器を構成する吸熱用フィン及び吸熱用チューブのことである。
<第1実施形態>
図1は、本発明の実施形態に係る製造方法に熱交換器のフィンを示す。このフィン1にはチューブ挿通孔2,2,…と、後述のろう担持部材3が挿通される担持部材挿通孔4,4,…が貫通形成されている。チューブ挿通孔2,2,…は図例のものでは上段に3つと、下段に4つの7つ(奇数個)のものが千鳥配置にて形成されている。各担持部材挿通孔4は、後述のろう担持部材3の形状に対応した矩形状の形状を有し、所定の傾斜角度で斜めに配向され、図例のものはチューブ挿通孔2と同数のものがそれぞれチューブ挿通孔2毎に対応する位置に形成されている。詳しくは、各担持部材挿通孔4は、後述の如くろう担持部材3がろう付のために使用された後に熱交換器となった際には整流板として機能する幅と傾斜を有することになるように所定位置で所定の傾斜角度で斜め下向きに延び、かつ、延びた先の最も下位となる角の鉛直下方に、対応するチューブ挿通孔4の最も上縁が位置することになるように配置されている(図1(a)に一点鎖線で示す鉛直線を参照)。これは、炉内において、上記の最下位の角から後述のろう担持部材3のペースト状ろうが溶けて、上記チューブ挿通孔4に挿通されたチューブ5の最上位の外表面に滴下もしくは溶け落ちるようにするためである。なお、図1(a)には担持部材挿通孔4,4,…の全てが上段のチューブ挿通孔2,2,…よりも上方位置に配置された形態を示しているが、これに限らず、下段のチューブ挿通孔2,2,…のろう付用のための担持部材挿通孔を、上記の一点鎖線の鉛直線上の位置で、かつ、上段のチューブ挿通孔2,2,…と下段のチューブ挿通孔2,2,…との間の上下方向中間位置に配置するようにしてもよい。
ろう付の工程としては、まず、図1(b)に示すように、上記の各フィン1を天地逆転させて上側に位置していた担持部材挿通孔4,4,…が下側に位置するようにする。次に、図2に示すように天地逆転させた所定数のフィンを整列させてフィン組立体10にし、この天地逆転状態のフィン組立体10の各チューブ挿通孔2に対しチューブ5を挿通させる一方、ろう担持部材3を各担持部材挿通孔4に挿通させる。本実施形態においては、チューブ5の挿通と、ろう担持部材3の挿通と順序はいずれが先でもよく、その先後は問わない。
ろう担持部材3は、上記フィン組立体10に挿通し得る長さの杆状部材としての基板31の片面にペースト状ろうPを塗布したものである。基板31は、ろう付が終了して熱交換器として使用される際には整流板として機能するように、その幅や厚みが設定され、図例のものでは所定幅の帯板状のものが用いられている。基板31の材質としてはフィン1やチューブ5をステンレス製にして耐食性や耐熱性を高める趣旨から、それらと同様にステンレス製のものが好ましい。そして、このようなペースト状ろうPが塗布された面を上にしてろう担持部材3を、各担持部材挿通孔4に対応させて幅方向を斜めに傾けた状態で、フィン組立体10の一端側から他端側に向けて挿通させる。
全ての担持部材挿通孔4,4,…に対するろう担持部材3の挿通と、全てのチューブ挿通孔2,2,…に対するチューブ5の挿通とが終了して組み付けが終了すれば、その組み付け後のフィン組立体10を図示省略の炉に移動させる。そして、炉内に挿入する直前に、上記の組み付け後のフィン組立体10の上下を再逆転させて、本来の天地の向きに復元させた状態にして炉内に挿入する。この再逆転により、ろう担持部材3のペースト状ろうPの塗布面が下向きになり、所定の高温雰囲気下にされた炉内では、図3に示すように、各ろう担持部材3の下向き面に塗布されたペースト状ろうPが溶融し、フィン1の表面に沿って流下又滴下して鉛直下方に位置する各チューブ5の最上位の外表面に流れ、チューブ挿通孔2との境界に沿って周囲を流下することになる。炉から出せば、各チューブ5と各フィン1、及び、各ろう担持部材3を構成していた基板31と各フィン1がそれぞれろう付部Wによりろう付されて一体的に結合した状態で熱交換器が製造されることになる。
この熱交換器は、例えば給湯器に組み込まれた場合には、図4に示すように、下側に組み付けられた図示省略の燃焼バーナからの燃焼ガス(同図の点線の矢印参照)が熱交換器6を下から上に流れ、この高温の燃焼ガスによって、チューブ5,5,…内に端から順に折返し通水される水が熱交換加熱されることになる。その際に、担持部材挿通孔4に対しろう付された各基板31が燃焼ガスの流れを変えて各チューブ5との接触をより長くするようにする整流板(邪魔板)として機能し、これにより、各基板31は燃焼ガスからの熱交換効率をより高めるように作用することになる。
以上の第1実施形態の場合、担持部材挿通孔4,4…を各フィン1に形成し、所定数のフィン1,1,…を整列させて形成されたフィン組立体10において各フィン1の担持部材挿通孔4,4,…により構成される通路に対しろう担持部材3を挿通させることで、各チューブ5と各フィン1とを互いにろう付するためのペースト状ろうPをチューブ組み付け後のフィン組立体10に対し付与することができるようになる。この場合、ろう担持部材3を用いることによって、たとえペースト状ろうPであったとしても、他のろうにより形成された棒状等の固形ろう材と同様の取扱いによりろう付による熱交換器の製造を行うことができるようになる。これにより、ペースト状ろうをろう付箇所毎に塗布する場合と比べ、大幅な工数削減を実現することができ、ペースト状ろうPを用いてステンレス製のフィンアンドチューブ式の熱交換器を量産することができるようになる。その上に、ろう付に用いたろう担持部材3は、ろう付後においては、その基板31を熱交換器の整流板として使用することができる。
図5及び図6には、上記のろう担持部材3と担持部材挿通孔4との組み合わせとは異なる形状の形態が例示されている。すなわち、第1の例としては、ろう担持部材3a(図5(b)参照)として横断面形状が逆Vの字状のものを用い、各フィン1に形成する担持部材挿通孔4a(図5(a)参照)の形状はそのろう担持部材3aの逆Vの字状のそれと対応する形状であって上下逆転したVの字状のものとする。なお、図5(a)中の符号4は上述の担持部材挿通孔4と同様形状とし、この担持部材挿通孔4に対しては上述のろう担持部材3を用い、上記のVの字状のろう担持部材3aと組み合わすようにすればよい。図5(a)の図例ではチューブ挿通孔2,2,…が各フィン1に対し千鳥配置ではなくて格子配置の配列にて形成され、各担持部材挿通孔4aは1つで左右に隣接する2つのチューブ挿通孔2,2に対しペースト状ろうを供給し得るように配置されている。つまり、各フィン1を図5(a)に示す本来の天地状態から天地を逆転させてフィン組立体を構築し、この天地逆転状態のフィン組立体の各担持部材挿通孔4aに対し、図5(b)に示す逆Vの字状の基板31aの上面(2つの外向き面)にペースト状ろうPが塗布されたろう担持部材3aを挿通させると、逆Vの字状のろう担持部材3aの両端から下方位置の2つのチューブ挿通孔2,2に挿通された2つのチューブ(図示省略)の最上縁位置にペースト状ろうPが各フィン1表面に沿って流下するようになっている。そして、このようにチューブ5及びろう担持部材3aが組み付けられた状態でかつ天地逆転状態のフィン組立体を、炉内に挿入して一括ろう付して炉から取り出した後に、本来の天地状態に戻すようにすればよい。この場合も、熱交換器の状態では基板31aが整流板(邪魔板)としての機能することになる。
又、図6に示すものは、各フィン1に対し斜めではなくて左右方向に延びる矩形状の貫通孔を担持部材挿通孔4b,4cとして形成したものである。左右に隣接する2つのチューブ挿通孔2,2に跨るように幅の大きい担持部材挿通孔4bと、1つのチューブ挿通孔2に対応してその上方位置に配置された幅の小さい担持部材挿通孔4cとを例示している。そして、図示を省略するが、これら担持部材挿通孔4b,4cに対応する2種類の幅の帯板状の基板にペースト状ろうを塗布した2種類のろう担持部材を、これら担持部材挿通孔4b,4cに挿通する。この場合にも、ろう付後に各フィンに一体化されて残るろう担持部材の基板は燃焼ガスの流れを変えてより長くチューブとの接触を維持させるための整流板(邪魔板)となる。
以上説明した第1実施形態においては、これまで説明した製造方法に限らず、次のようにしてもよい。すなわち、ペースト状ろうPの粘度に応じて、ペースト状ろうPをろう担持部材3,3aの片面(上面)のみならず、両面(上下面)に塗布するようにしてもよい。つまり、粘度が低くてペースト状ろうPが落下しない程度であれば、このようにしてもよい。さらに、粘度が低くて塗布面を下向きにしたとしてもペースト状ろうPが落下しない程度であれば、基板3,3aの上面又は下面の如何を問わずに片面にペースト状ろうPを塗布しておくだけでよく、天地逆転工程をも省略するようにしてもよい。つまり、上記の如くフィン1やフィン組立体10を天地逆転した上でろう担持部材3を挿通させ、炉に挿入する直前に元の天が上に地が下になるように再度逆転させたり、あるいは、図5の例の如くチューブやろう担持部材3aを挿通させて組み付けたフィン組立体を天地逆転状態のまま炉に挿入しろう付が完了して炉から出してから再度逆転させたり、という天地逆転工程を全て省略し、本来の天地の状態でろう担持部材の挿通を行えばよい。
又、熱交換器製造後にろう担持部材3,3aの基板31,31aを整流板(邪魔板)として使用しないのであれば、ろう担持部材3,3aを構成する基板31,3aの形状や、これを挿通させる担持部材挿通孔4,4a,4b,4cは帯板状やVの字状(アングル状)でなくてもよく、棒状等の種々の形状のものを採用することができる。
<第2実施形態>
図7(a)は第2実施形態で用いるフィン1aを示す。このフィン1aは、上下方向に5段にわたり千鳥配置に形成したチューブ挿通孔2a,2a,…を有している。図例のものは最も上の1段目に7つのチューブ挿通孔2a,2a,…、2段目に6つのチューブ挿通孔2a,2a,…、3段目に7つのチューブ挿通孔2a,2a,…、4段目に6つのチューブ挿通孔2a,2a,…、5段目に7つのチューブ挿通孔2a,2a,…がそれぞれ形成されている。各チューブ挿通孔2aは図7(b)及び図7(c)に示すようにバーリング加工により一側にバーリング縁21が突出するように形成されており、さらに各チューブ挿通孔2aの最上縁位置で各チューブ挿通孔2aと連通する、つまり開口する小径孔7が、同様にバーリング加工によりバーリング縁71を上記バーリング縁21と同じ側に突出させて形成されている。つまり、チューブ挿通孔2aと小径孔7とは上下方向に互いの周縁位置において切り欠かれたように連続して連通しているのである。双方のバーリング縁21,71は互いに同じバーリング高さSになるように形成され、このバーリング高さSはフィン組立体10(図8等参照)のフィン間隔と同じになるように設定されている。
ろう付のために所定数のフィン1a,1a,…を整列させて図8に示すようにフィン組立体10aとする。このフィン組立体10aにおいては、図例のあるフィン1aのバーリング縁21が右隣りのフィン1aに当接し、このフィン1aのバーリング縁21がさらに右隣りのフィン1aに当接することになって、各チューブ挿通孔2aはそれぞれのバーリング縁21が順次連続して一直線状に連通した1つの連続孔を構成することになる。これと同様に、あるフィン1aの小径孔7のバーリング縁71が右隣りのフィン1aに当接し、このフィン1aのバーリング縁71がさらに右隣りのフィン1に当接することになって、各小径孔7はそれぞれのバーリング縁71が順次連続して一直線状に連通する連続孔である充填孔70を構成することになる。そして、各チューブ挿通孔2aにより構成されるチューブ挿通用の連続孔に対し図9(a)に示すようにチューブ5を挿通した後、各チューブ5の上側位置において各小径孔7のバーリング縁71,71,…により一直線状に連通した状態で形成される充填孔70に対しペースト状ろうPを充填していく。上記のチューブ5を挿通させた状態では、図9(b)に示すように、そのチューブ5の最も上縁位置に臨んで充填孔70が下向きに開口することになる。この充填孔70に対する上記の充填は例えば充填器具8(図9(a)参照)のノズル81を上記の連続孔の一端に差し込んで充填するようにすればよい。この充填により充填孔70には図10(a)に示すようにペースト状ろうPが充填され、そのペースト状ろうPの一部はチューブ5の上面の一部に接触することになる。
このようにチューブ5を挿通させてペースト状ろうPを各充填孔70に充填させた状態で炉内に挿入し高温環境下で一括ろう付処理を施す。炉内では、充填孔70に充填されたペースト状ろうPが溶融してチューブ5とチューブ挿通孔2aとの境界部、すなわちチューブ5の外周面とバーリング縁21の内周面との間に沿って周囲に流下し、これによりチューブ5の外周面とバーリング縁21の内周面とがろう付部W(図10(b)参照)により強固にろう付されることになる。
ここで、上記の充填孔70を次のように形成することもできる。すなわち、図11に示すように、バーリング縁71aを先端側に向かうほど先細り形状になるようにテーパ状に形成し、かつ、そのバーリング高さもフィン間隔(=バーリング縁21のバーリング高さS)に所定の重なり代αだけ大きくなるように設定して小径孔7aを形成する。このような小径孔7aが形成されたフィン1aを所定間隔に整列して行くと、あるフィン1aのチューブ挿通孔2aのバーリング縁21は隣り合う他のフィン1aと当接するだけであるものの、小径孔7aのバーリング縁71aはチューブ挿通孔2aのバーリング縁21よりもさらに突出形成されているため、上記重なり代α分だけ上記バーリング縁71aの先端部がバーリング縁形成側に隣接する他のフィン1aの小径孔7aの内部に内嵌してそのバーリング縁71aの内周面に当接した状態となる。これにより、図9の場合と同様にチューブ5の上に一直線状に連通した連続孔として充填孔70aが形成されるものの、その密封性は図9の充填孔70よりも大幅に増大することになる。このため、これに対しペースト状ろうPを充填していっても、漏れに起因するロスも殆どない状態で確実に充填することができるようになる。
以上の第2実施形態の場合も、小径孔7,7,…、7a,7a,…を各フィン1aに形成し、所定数のフィン1a,1a,…を整列させて形成したフィン組立体10aにおいて各フィン1aの小径孔7,7,…、7a,7a,…により構成される充填孔70,70aに対しペースト状ろうP自体を直接に充填することで、各チューブ5と各フィン1aとを互いにろう付するためのペースト状ろうPをフィン組立体10aに対し付与することができるようになる。この場合、バーリング縁71,71,…、71a,71a,…と、チューブ5の外表面の一部により区画された充填孔70によってペースト状ろうPを確実に保持させることができ、他のろうにより形成された棒状等の固形ろう材と同様又はそれよりも簡易な作業や取扱いによりろう付による熱交換器の製造を行うことができるようになる。これにより、ペースト状ろうをろう付箇所毎に塗布する場合と比べ、大幅な工数削減を実現することができ、ペースト状ろうPを用いてステンレス製のフィンアンドチューブ式の熱交換器を量産することができるようになる。又、この第2実施形態の場合、ペースト状ろうPを直接に充填するだけでよく、他の特別な部材を用意する必要がないため、製造工程的にも、製造コスト的にも優れた製造方法を提供することができる。
<第3実施形態>
図12(a)は第3実施形態で用いるフィン1bを示す。このフィン1bは、第2実施形態のフィン1aと同様に、上下方向に5段にわたり千鳥配置に形成したチューブ挿通孔2b,2b,…を有している。各チューブ挿通孔2bは図12(b)及び図12(c)に示すようにチューブ5に対応した円形の貫通孔として形成されており、さらに各チューブ挿通孔2bの最上縁位置に臨んで開口するように保持部材挿通孔9も併せて形成されている。保持部材挿通孔9は図例では矩形状に設定されている。
そして、ろう付のために所定数のフィン1b,1b,…を整列させて図13に示すようにフィン組立体10bとし、各チューブ挿通孔2bに対しチューブ5を挿通した後、各チューブ5の上側位置の保持部材挿通孔9,9,…に対しろう保持部材11を挿通させる。ろう保持部材11は、図14に示すように、横断面形状が下方に開口するように逆転させた溝形形状の保持部材111の内部に対しペースト状ろうPを充填させて保持させたものである。フィン組立体10bに対しチューブ5及びろう保持部材11が挿通されて組み付けられた状態では、図15(a)に示すように、チューブ5の最も上縁位置に対しろう保持部材11の開口が下向きに臨んでペースト状ろうPが接触することになる。
このようにチューブ5及びろう保持部材11が組み付けられた状態のフィン組立体10bを炉内に挿入し高温環境下で一括ろう付処理を施す。炉内では、ろう保持部材11内のペースト状ろうPが溶融してチューブ5とチューブ挿通孔2bとの境界面に沿って周囲に流下し、これによりチューブ5の外周面とチューブ挿通孔2bの内周面とがろう付部W(図15(b)参照)によりろう付されることになる。
以上の第3実施形態の場合も、保持部材挿通孔9,9,…を各フィン1bに形成し、所定数のフィン1b,1b,…を整列させて形成したフィン組立体10bにおいて各フィン1bの保持部材挿通孔9,9,…に対しろう保持部材11を挿通させることで、各チューブ5と各フィン1bとを互いにろう付するためのペースト状ろうPをフィン組立体10bに対し付与することができるようになる。これにより、ペースト状ろうPであっても、そのペースト状ろうPをろう保持部材11により確実に保持することができ、他のろうにより形成された棒状等の固形ろう材と同様又はそれよりも簡易な作業や取扱いによりろう付による熱交換器の製造を行うことができるようになる。これにより、ペースト状ろうをろう付箇所毎に塗布する場合と比べ、大幅な工数削減を実現することができ、ペースト状ろうPを用いてステンレス製のフィンアンドチューブ式の熱交換器を量産することができるようになる。しかも、ろう保持部材11は全体として矩形の溝形断面を有し、保持部材挿通孔9もその矩形に対応した形状に形成されているため、ろう保持部材11を保持部材挿通孔9に挿通させた状態では長手方向軸の回りの回転が阻止され、ろう保持部材11の下向き開口をチューブ5の上面に向いた状態に確実に維持させることができ、これにより、炉内でのろう付の際にはペースト状ろうPを確実にチューブ5の外周面に流下させることができるようになる。
第3実施形態としては、上記の保持部材挿通孔9とろう保持部材11との組み合わせの他に、次のような形状のものの組み合わせを採用し得る。すなわち、第1のものとして、図16(a)に示すように円形の最下位の位置から下向きに溝を延ばして開口するような断面形状に形成した保持部材挿通孔9aとろう保持部材11aとの組み合わせが挙げられ、第2のものとして、図16(b)に示すように逆三角形の下向き先端部位を開口させたような断面形状に形成した保持部材挿通孔9bとろう保持部材11bとの組み合わせが挙げられる。いずれも、ペースト状ろうPを内部に保持することができ、炉内では下向きの開口から溶融したペースト状ろうPを流下させることができ、かつ、保持部材挿通孔9a,9b内で回り止め(長手方向軸の回りの回転阻止)が可能なものである。
さらに、上記のろう保持部材11,11a,11bの他に、次のような円形断面のものも採用し得る。すなわち、図17(a)に示すようにメッシュ状の小径円筒材を用いた保持部材111cの内部にペースト状ろうPを充填・保持させてろう保持部材11cを構成したものや、あるいは、多孔性の小径円筒材を用いた保持部材111dの内部にペースト状ろうPを充填・保持させてろう保持部材11dを構成したものを用いることができる。この場合は、保持部材挿通孔として、最下位部位がチューブ挿通孔2bに開口していさえすれば、円形断面にすることができ、円形断面にして長手方向軸の回りにたとえ回転したとしても、メッシュ状や孔付きであるので、溶融したペースト状ろうPを流下させることができる。
なお、この第3実施形態のチューブ挿通孔2bを、第2実施形態と同様にバーリング加工により形成してバーリング縁を有するようにしても、もちろんよい。
<第4実施形態>
ろう付により製造された熱交換器の用途として、潜熱回収用と顕熱回収用との双方を1つの熱交換器で兼ねる場合がある。第4実施形態はこのような場合の熱交換器の製造方法に係るものである。
すなわち、図18に示すように、例えば第2実施形態又は第3実施形態におけるフィン1a,1bを用いて形成した熱交換器では上下方向に5段にわたりチューブ5,5,…が配置されている。この内の上の2段分を潜熱回収用の熱交換器6aとして用い、下の3段分を顕熱回収用の熱交換器6bとして用いる場合、入水管12からの水はまず潜熱回収用の熱交換器6aに入水されて排ガスからの潜熱回収により予熱され、この後、顕熱回収用の熱交換器6bに流されて燃焼ガスの顕熱により所定温度までの熱交換加熱が行われて出湯管13に出湯されることになる。
このような用途の熱交換器を製造する場合には、潜熱回収用の熱交換器6aの部分は第1〜第3実施形態のいずれかで説明したペースト状ろうを用いたろう付により製造し、顕熱回収用の熱交換器6bの部分は従来から用いられている例えば銅ろうを棒状に成形した固形形状のろう材を用いたろう付により製造する。
この第4実施形態の場合、潜熱回収により排ガス中の含有成分を含むドレン水が発生して腐食環境下となる潜熱回収用の熱交換器6aについてはペースト状ろうを用いて耐久性のあるろう付を行うことができる一方、顕熱回収用の熱交換器6bについてはコスト的に優れかつ必要十分なろう付を行うことができることになる。
<他の実施形態>
なお、本発明は上記第1〜第4実施形態に限定されるものではなく、その他種々の実施形態を包含するものである。すなわち、上記第1〜第4実施形態では、ペースト状ろうPとしてニッケルろうを用いているが、その他のペースト状ろうを用いてもよい。