JP5487152B2 - 細胞採取システム - Google Patents

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Description

本発明は、培養細胞や血球細胞などの組織から分離された細胞を解析などの目的に採取し、96穴/384穴プレートなどの反応プレートに細胞を所望の数だけ導入するためのシステムに関する。
近年、培養細胞などの分離した細胞の一細胞解析細胞中の遺伝子発現解析を行う研究が行われている(非特許文献1)。このとき、細胞をひとつずつ反応槽に導入し、解析プロトコルを実行することが必要である。細胞の採取はガラスキャピラリなどの先端が細いピペットを用いて行い、プラスティック製の反応槽に個別に分注する。そのため、細胞の採取と分注に時間を要する。一方、単位時間あたり採取細胞数を増やす有効な方法はフローサイトメトリを用いたセルソータを用いる方法である(非特許文献2)。
また、細胞採取のスループットを向上するためにプレート上に形成された細胞より小さな穴に細胞を捕捉して、プレートを移動させる機構によって、このプレートの細胞が捕捉された穴と反応槽が配列したプレートの反応槽を1対1に対応させることによって、細胞を反応槽中に取ることが可能である構成が知られている(特許文献1及び2)。
特開昭64-60365号公報 特開昭64-80278号公報
Wang, D. and Bodovitz, S., Trends in Biotechnology Vol.28, No.6, pp.281-290, 2010年 Daveley, H.M. and Kell, D.B., Microbiological Reviews, Vol.60, No.4, pp.641-696, 1996年
細胞をピペットで1つずつ吸引するのではなく、簡便に細胞を捕捉し、反応槽に吐出できるシステムが必要である。
フローサイトメータを用いる方法(例えば非特許文献2)では、フローサイトメータは複雑な送液システムのために非常に高価であるという問題がある。また、分取される細胞の顕微鏡像を事前に確認することはできない。さらに、多くの場合、目的の細胞だけを分離するために電界や超音波等の撃力を細胞に直接印加しているため、細胞にダメージを与えることが多い。
一方、これらの問題を解決するために、細胞採取のために細胞の直径よりも小さな穴を設け、溶液中の細胞をこの溶液を吸引することによって捕捉する方法(特許文献1及び2)は、並列に細胞を採取するためスループットが高く、吸引する溶液の圧力を適切に調整することによって細胞へのダメージも低減することも可能である。しかし、採取した細胞に対して、酵素等の試薬を用いるバイオ解析(一例として細胞中の核酸やタンパク質の定量評価を行う解析)を行うためには、96wellや384wellプレート(以下これらを「反応槽プレート」と総称する)に分注することが有効である。なぜなら、さまざまな解析装置や試薬の分注機器がこの反応槽の間隔や形状に合わせて作られているため、これらの装置や機器をそのまま利用可能となるためである。このとき、たとえば、96wellプレート上の反応槽の間隔は9mmであるため、このピッチにあわせて細胞採取プレート上に細胞採取孔を開けて、このピッチで細胞を捕捉する必要がある。しかし、細胞を捕捉しない領域の面積が細胞採取孔に比べて大きくなるため、この領域に細胞が吸着し、細胞を破損したり、細胞を失ったりする。また、細胞を反応槽プレートに導入するときに、反応槽プレートと細胞採取プレートの間に細胞が入り、うまく、両者が位置あわせできない等の問題が発生する。
また、細胞採取孔で細胞を捕捉できたか、2個以上の細胞を捕捉してしまったか、さらには、捕捉した細胞の形状や種類が何であるかを顕微鏡で観察して確認してから、反応槽に導入することは有効である。しかし、これを実行するために、細胞採取プレートに対していつもフォーカスが調整された顕微鏡像を得ることが必要である。シャーレ等に浮遊した細胞を採取するのに、シャーレ中のある位置に実体顕微鏡のフォーカス位置を調整して、細胞採取プレートを細胞を含む溶液中を自由に動かして細胞を採取しようとすると、細胞採取面付近の像は得ることができない。
そのため、本発明が解決しようとする課題は、スループットが高く、機構安価な装置で、簡便に1つ1つの細胞を、医療やバイオの研究機関で一般的に使われている96wellプレートや384wellプレートに導入する手段を提供することである。
本発明者は上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、細胞を捕捉し吐出するシステムにおいて細胞を捕捉する孔付近の光学像を得るための手段を一体的に具備することによって、細胞の捕捉状態を観察することができ、簡便かつ確実に細胞を捕捉・吐出できることを見出した。また、細胞を捕捉する孔の付近を親水性とし、それ以外の領域を撥水性とすることによって、不要な細胞吸着を防止し、細胞採取の効率を向上できることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち本発明は以下のとおりである。
[1]少なくとも1つの孔が設けられた細胞採取プレートであって、その一方の面を細胞を含む溶液に浸漬又は接触させることが可能である細胞採取プレートと
前記孔から細胞を含む溶液を吸引し、細胞を孔に捕捉するための手段と
前記孔に捕捉された細胞を吐出する手段と
前記細胞採取プレートの孔付近の光学像を得るための手段と
を備えることを特徴とする細胞採取システム。
[2]前記細胞採取プレートの前記面の孔付近が親水性である及び/又は前記面の孔付近以外の部分は撥水性であることを特徴とする、[1]に記載の細胞採取システム。
[3]少なくとも1つの孔が設けられた細胞採取プレートであって、その一方の面を細胞を含む溶液に浸漬又は接触させることが可能である細胞採取プレートと
前記孔から細胞を含む溶液を吸引し、細胞を孔に捕捉するための手段と
前記孔に捕捉された細胞を吐出する手段と
を備え、前記細胞採取プレートの前記面の孔付近が親水性である及び/又は前記面の孔付近以外の部分は撥水性であることを特徴とする細胞採取システム。
[4]前記孔が2次元又は1次元状に配列して前記細胞採取プレートに設けられている、[1]〜[3]のいずれかに記載の細胞採取システム。
[5]前記孔の直径が前記細胞の直径よりも小さいことを特徴とする、[1]〜[4]のいずれかに記載の細胞採取システム。
[6]前記細胞採取プレートの少なくとも一部分が透明である、[1]〜[5]のいずれかに記載の細胞採取システム。
[7]前記細胞採取プレートの孔の周辺が透明であることを特徴とする、[1]〜[6]のいずれかに記載の細胞採取システム。
[8]前記細胞採取プレートの孔付近の光学像を得るための手段が光ファイババンドルを含むことを特徴とする、[1]、[2]及び[4]〜[7]のいずれかに記載の細胞採取システム。
[9]前記孔付近の細胞採取プレートの形状が、前記細胞を含む溶液に浸漬又は接触させる面の側に突起していることを特徴とする、[1]〜[8]のいずれかに記載の細胞採取システム。
[10]照明手段をさらに具備することを特徴とする、[1]〜[9]のいずれかに記載の細胞採取システム。
[11]前記孔付近の光学像を解析するコンピュータ及びソフトウェアをさらに具備するものであり、前記孔と孔以外の像のコントラスト差を用いて、自動的に孔に細胞が捕捉されたことを認識することを特徴とする、[1]、[2]及び[4]〜[10]のいずれかに記載の細胞採取システム。
[12]前記光学像を得るための手段が、蛍光励起光源、蛍光検出するための光学系及び蛍光像を得るための撮像素子であることを特徴とする、[1]、[2]及び[4]〜[11]のいずれかに記載の細胞採取システム。
[13]前記細胞採取プレートを洗浄する機構をさらに具備することを特徴とする、[1]〜[12]のいずれかに記載の細胞採取システム。
[14][1]〜[13]のいずれかに記載の細胞採取システムと
細胞を分注するための少なくとも1つの反応槽が設けられた反応槽プレートと
を備え、前記反応槽プレートの反応槽の配列間隔に一致した間隔で、前記細胞採取プレートに孔が設けられていることを特徴とする細胞採取・分注システム。
[15]前記細胞採取プレートの孔の数と前記反応槽プレートの反応槽の数が一致することを特徴とする、[14]に記載の細胞採取・分注システム。
[16]前記細胞採取プレート及び前記反応槽プレートに、前記反応槽プレートに対して前記細胞採取プレートの位置合わせを行う手段が設けられていることを特徴とする、[14]又は[15]に記載の細胞採取・分注システム。
[17]前記反応槽プレートの反応槽の中心から偏った位置に前記細胞採取プレートの孔が位置するように位置合わせ手段が設けられていることを特徴とする、[16]に記載の細胞採取・分注システム。
[18]前記細胞採取プレートが、前記細胞を含む溶液及び前記反応槽プレートと分離されており、自由に動かすことが可能であることを特徴とする、[14]〜[17]のいずれかに記載の細胞採取・分注システム。
[19]前記細胞採取プレートの孔に捕捉された細胞を前記反応槽プレートに分注するときに、前記光学像のピントを前記反応槽の内部に合わせることができる手段をさらに具備することを特徴とする、[14]〜[18]のいずれかに記載の細胞採取・分注システム。
本発明により、細胞採取システム及び細胞採取・分注システムが提供される。本発明に係るシステムは、簡便に細胞を単離して採取し、既存の反応槽プレートに採取した細胞を分注することができる。従って、本発明により、簡便なかつ小型のシステムにおいて、細胞採取時の信頼性を向上させることができ、また細胞採取の効率を向上することができる。
上記した以外の、課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
実施例1の細胞採取工程での本発明のシステム構成の一例を示す図である。 実施例1の細胞採取面の表面処理パタンの例を示す図である。 実施例1の細胞分注工程での本発明のシステム構成の一例を示す図である。 実施例1の細胞採取面の断面形状の例を示す図である。 実施例2の細胞採取工程での本発明のシステム構成の一例を示す図である。 実施例3の細胞採取工程での本発明のシステム構成の一例を示す図である。 実施例3の細胞採取面の表面処理パタンの例を示す図である。 親水処理を行った部分(A)及び撥水性の部分(B)上の液滴の形状を示す図である。
本発明は、細胞を含む溶液から細胞を捕捉し目的の部位に吐出するための細胞採取システムに関する。具体的には、細胞培養用に一般的に用いられているシャーレやフラスコの中に直接細胞採取プレートを導入し、細胞が浮遊している溶液中に前記プレートの一方の面(採取面)のみを接触させ、もう一方の面(裏面)から、前記溶液を吸引することによって、細胞を捕捉する。細胞採取プレートは自由に動かすことができるようにする。特に、手でもって動かすことができるほど小型で、軽量になっていることが望ましい。このとき、細胞採取プレートの裏面から、細胞像が観察できるように撮像素子と結像の光学系を細胞採取プレートと一体にすることによって、フォーカス位置が細胞採取プレートを動かしても移動しないようにする。あるいは又はそれに加えて、細胞採取プレートの細胞採取面の孔の付近は親水性とし、それ以外の部分は撥水性とすることによって、孔以外の部分への細胞の吸着を防止する。
従って、本発明に係る細胞採取システムは、少なくとも1つの孔が設けられた細胞採取プレートであって、その一方の面を細胞を含む溶液に浸漬又は接触させることが可能な細胞採取プレートを備える。細胞採取プレートは、孔を有するものであれば任意の大きさ、形状及び材質のものとすることができ、好ましくは細胞を含む溶液を導入したシャーレ、細胞を分注しようとする反応槽プレートなどの大きさ及び形状に適した大きさ及び形状とする。例えば、円形、正方形、長方形などの形状の平板とすることができる。ここで、細胞採取プレートの孔の部分が、細胞を含む溶液に浸漬又は接触させる面(細胞採取面)の側に突起していることが好ましい(例えば図4B)。
細胞採取プレートの大きさは、3×3 mm〜500×500 mm、好ましくは10×10 mm〜85×125 mmとすることができる。また厚みは、0.1mm〜10mm、好ましくは0.3〜5mmとすることができる。
細胞採取プレートの材質は、限定されるものではないが、樹脂(例えばポリエステル樹脂、ポリスチレン、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ABS樹脂(Acrylonitrile Butadiene Styrene樹脂)、ナイロン、アクリル樹脂、フッ素樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリ塩化ビニリデン、メチルペンテン樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ピーク樹脂、エポキシ樹脂及び塩化ビニル樹脂等)、金属(例えば金、銀、銅、アルミニウム、タングステン、モリブデン、クロム、白金、チタン、ニッケル等)、合金(例えばステンレス、ハステロイ、インコネル、モネル、ジュラルミン等)、ガラス(例えばガラス、石英ガラス、溶融石英、合成石英、アルミナ、サファイア、セラミクス、フォルステライト及び感光性ガラス等)、半導体材料、シリコン、ゴム(例えば天然及び合成ゴム)などとすることができる。複数の材質を組み合わせてもよく、例えば細胞採取プレートの本体部分と、細胞採取面に接する部分とを別の材質で作製してもよい。具体的には、細胞採取プレートの本体部分は十分な強度を保つために硬性の材質で作製し、細胞採取面に接する部分は、後述する光学系の観察のために透明の材質で作製する。
細胞採取プレートの細胞採取面の孔付近は親水性であることが好ましい。「孔付近」とは、孔を含む孔の周囲の領域を指し、孔から少なくとも10μm、好ましくは少なくとも30μmであって、多くとも2mm、好ましくは多くとも1mmの領域とすることができる。例えば、細胞採取プレートの孔を中心に10〜200μm、好ましくは30〜100μm、例えば50μmの直径の領域を親水処理する。親水性とする方法は、当技術分野で公知の方法を用いることができ、例えばUVオゾン処理方法、具体的には酸素雰囲気下の254nm又は176nm波長のUV光を照射する方法、及びレジストパタニングを行った後に、OH基を官能基として有するシランカップリング剤を開口部のみにと反応させて親水パタンを生成する方法などがある。これにより、細胞を含む溶液の液滴が親水性の部分、すなわち孔付近に吸着しやすくなる。またこれに加えて、あるいは単独で、細胞採取プレートの細胞採取面の孔付近以外の部分は撥水性であることが好ましい。孔以外の部分に撥水処理を行うか、又は細胞採取プレートを撥水性の材質(例えばポリ塩化ビニリデン)で作製することによって撥水性とすることができる。これにより、細胞を含む溶液の液滴が孔付近以外の部分へ吸着することを回避することができる。なお本発明において、「親水性」及び「撥水性」は、親水性及び撥水性の表面上の液滴の撥水角により定義され、親水性表面上の液滴の撥水角は、撥水性表面上の液滴の撥水角よりも小さく、これらの2つの角度により相対的に定義される(例えば図8参照)。
また、細胞採取プレートの少なくとも一部分が透明であることが好ましい。例えば、細胞採取プレートの孔の周辺を透明とすることができる。「孔の周辺」とは、孔を含む孔の周囲の領域を指し、孔の中心から少なくとも10μm、好ましくは少なくとも30μmであって、多くとも2mm、好ましくは多くとも1mmの領域とすることができる。あるいは、細胞採取プレートの全体を透明の材質で作製してもよい。これにより、後述する光学系による細胞の光学像の観察が容易となる。
細胞採取プレートには、少なくとも1つの孔が設けられる。孔の直径は、採取しようとする細胞の直径よりも小さいものとする。例えば原核細胞は約1〜10μmであり、真核細胞は約5〜100μmであり、採取しようとする特定の細胞の大きさに基づいて孔の大きさを決定することができる。具体的には、動物細胞の大きさは一般に5〜10μmであるため、孔の直径は2〜5μm、例えば4μmとすることができる。また孔の形状は特に限定されるものではなく、円形、長方形、正方形、長方形、三角形などの形状とすることができる。細胞採取プレートの厚み方向の孔の形状も特に限定されるものではなく、例えばテーパ状、筒状とすることができる。また孔の数も限定されるものではなく、1〜1000個、例えば1個、4個、16個、96個、384個などの項を設けることができる。
孔は、細胞採取プレートに2次元又は1次元状に配列して設けられていることが好ましい。例えば、4列の1次元状、4列×4列の2次元状に配列することができる。孔の配列は、細胞を吐出する反応槽プレートの反応槽の配列間隔に一致させることが好ましい。例えば、5〜50mmの間隔(ピッチ)で孔を配列することができる。細胞採取プレートの孔の数と反応槽プレートの反応槽の数は一致させてもよいし、又は異なっていてもよい。例えば、反応槽プレートとして96wellプレートを用いる場合に、その反応槽の配列間隔に一致した間隔で96個の孔を有する細胞採取プレートを用いることもできるし、又は反応槽の配列間隔に一致した間隔で16個の孔を有する細胞採取プレートを用いることができる。
細胞採取プレートに孔を設けるための方法は、細胞採取プレートに使用する材質の種類及び孔の大きさに応じて、当技術分野で公知の方法を用いることができる。例えば、切削加工、穿孔加工、エキシマレーザ加工などを適宜選択することができる。
また本発明の細胞採取システムは、細胞採取プレートの孔から細胞を含む溶液を吸引し、細胞を孔に捕捉するための手段と、孔に捕捉された細胞を吐出する手段とを備える。例えば、細胞採取プレートの細胞採取面とその裏面の間に圧力差を印加する手段と、印加された圧力差を元に戻す又は逆向きに圧力差を印加する手段を用いることができる。具体的には、細胞採取面の裏面に接続された、細胞を含む溶液を吸引するための排出チューブを、該細胞を含む溶液よりも低い位置に設置することにより、細胞採取面とその裏面の間に重力による圧力差を印加することができる。あるいは、ポンプなどの吸引手段を用いて、孔から細胞を含む溶液を吸引して、細胞採取面とその裏面の間に重力による圧力差を印加することができる。
本発明の細胞採取システムは、細胞採取プレートの孔付近の光学像を得るための手段を備えることが好ましい。そのような手段は、当技術分野で公知の光学系とすることができ、例えば光ファイババンドルを含むことができる。光学系として、例えばレンズ(視野レンズ、対物レンズ及び結像レンズ)、ミラー、フィルタ、撮像素子(CMOSセンサ、CCDセンサなど)などを用いることができる。また、例えば採取しようとする細胞が蛍光を発する場合には、該手段は、蛍光励起光源、蛍光検出するための光学系及び蛍光像を得るための撮像素子とすることができる。孔付近の光学像を得ることによって、孔又は孔のそれぞれに細胞が1つ捕捉できたか、捕捉できていないか、2以上の細胞を捕捉しているかを判定し、その後行う反応の正確性及び信頼性を保証することができる。
本発明の細胞採取システムは、細胞採取プレートの孔付近の光学像を解析するコンピュータ及びソフトウェアをさらに具備するものであることが好ましく、これにより、孔と孔以外の像のコントラスト差を用いて、自動的に孔に細胞が捕捉されたことを認識することができる。
本発明の細胞採取システムは、照明手段をさらに具備することが好ましい。照明手段は、当技術分野で公知の任意の種類、形状及び大きさの照明とすることができる。例えば、白色電球、白色LEDなどが挙げられる。照明手段は、細胞採取システムと一体となっていてもよいし、又は取り外し可能なものであってもよいし、又は別個のパーツであってもよい。
また本発明の細胞採取システムは、細胞採取プレートを洗浄する機構をさらに具備することが好ましい。洗浄機構は、細胞採取システムと一体となっていてもよいし、又は洗浄時に接続する別個のパーツであってもよい。洗浄機構としては、洗浄液導入管、洗浄液廃棄容器などが含まれる。
本発明はまた、本発明の細胞採取システムと、細胞を分注するための少なくとも1つの反応槽が設けられた反応槽プレートとを備える細胞採取・分注システムに関する。本発明の細胞採取・分注システムは、細胞採取システムにおける細胞の捕捉が終了したときに、溶液の吸引を停止するが、吸引圧力は維持するようにして、シャーレやフラスコから反応槽プレートに簡便に移動できるように簡易な構成となっている。
上述したように、本発明の細胞採取・分注システムにおいて、細胞採取プレートの孔は、反応槽プレートの反応槽の配列間隔に一致した間隔で設けられている。また、細胞採取プレートの孔の数と反応槽プレートの反応槽の数が一致することが好ましいが、異なっていてもよい。
反応槽プレートは、実施する反応に関連する分野において公知の反応プレートとすることができる。具体的には、水不溶性で、加熱変性時に溶融しない固体平面であることが好ましい。その材料としては、例えば金属、合金、シリコン、ガラス材料、樹脂等のプラスチックが挙げられる。また、反応槽プレートの形状は、反応槽が区画化された平面であり、例えばタイタープレート、多孔質又は細孔アレーなどである。
細胞採取プレートの孔は、反応槽プレートの反応槽のピッチに合わせて配置しているため、細胞採取プレートに捕捉された細胞と反応槽の位置は一対一に対応させることが簡単にできる。本発明の細胞採取・分注システムにおいて、細胞採取プレート及び反応槽プレートは、反応槽プレートに対して細胞採取プレートの位置合わせを行う手段を備えていることが好ましい。位置合わせを行う手段は、はめ込み構造、例えばピンと穴のはめ込み構造、凹凸のはめ込み構造などとすることができる。このような位置合わせ手段を反応槽プレートと細胞採取プレート又はその周辺に固定して設置することが有効である。位置合わせ手段は、反応槽プレートの反応槽の中心から偏った位置に細胞採取プレートの孔(すなわち捕捉された細胞)が位置するように設けられていることが好ましい。特に、孔が反応槽の壁面に近い位置にくるように位置合わせ手段を設置し、細胞を含む溶液が反応槽の壁面を伝わって底付近に達するようにすることが好ましく、これにより細胞へのダメージを有効に低減することができる。
また、本発明の細胞採取・分注システムにおいて、細胞採取プレートは、細胞を含む溶液及び反応槽プレートと分離されており、自由に動かすことが可能であることが好ましい。
本発明の細胞採取・分注システムは、細胞採取プレートの孔に捕捉された細胞を反応槽プレートに分注するときに、細胞採取システムにおいて取得された光学像のピントを前記反応槽の内部に合わせることができる手段をさらに具備することが好ましい。例えば、そのような手段として上述した孔付近の光学像を得るための手段を用いてもよい。
本発明の細胞採取システム及び細胞採取・分注システムは、細胞の培養又は分析を行うために細胞を1個ずつ反応槽に分注することが望まれる場合に好適である。採取及び分注する細胞は、培養又は分析反応を行おうとする細胞であれば限定されるものではなく、原核細胞及び真核細胞(特に動物細胞)とすることができる。細胞を含む溶液は、対象の細胞に適した溶液であれば適宜選択することができ、等張性が調整された緩衝液(例えばリン酸緩衝食塩水)、培養培地などを用いることができる。細胞密度は、採取しようとする細胞の数、細胞採取プレートの孔の数などに応じて適宜選択することができる。
本発明の細胞採取システム及び細胞採取・分注システムを用いて、細胞培養用に一般的に用いられているシャーレやフラスコの中に直接細胞採取プレートを導入し、細胞が浮遊している溶液中に細胞採取プレートの一方の面(採取面)のみを接触させ、もう一方の面(裏面)から、細胞を含む溶液を吸引することによって、細胞を捕捉する。細胞採取プレートと反応槽プレートの位置あわせが完了した時点で、細胞採取用の孔に印加している圧力を逆向きにし、溶液といっしょに細胞を吐出し、反応槽に分注する。ここで、溶液と一緒に細胞を採取することによって、細胞へのダメージを低減することができる。
上述したように、本発明により、細胞採取システム及び細胞採取・分注システムが提供される。本発明に係るシステムは、簡便に細胞を単離して採取し、既存の反応槽プレートに採取した細胞を分注することができる。特に細胞の採取と同時にその光学像を得ることによって、細胞を採取できなかったり、2つ以上の細胞が分注された反応槽を識別することができる。また、特定の種類の細胞かどうかを確認して次の解析にすすむことができる。すなわち、簡便なかつ小型のシステムにおいて、細胞採取時の信頼性を向上させることができる。また、細胞採取プレートの孔付近だけ親水性とし、それ以外の領域に撥水性とすることによって、細胞採取の効率を向上することができる。
以下、図面を参照して本発明の実施形態の具体例について説明する。ただし、これらの実施例は本発明を実現するための一例に過ぎず、本発明を限定するものではないことに注意すべきである。
[実施例1]
本実施例は本発明の基本となる実施の形態の例である。本実施例では直径50mmφ以上のシャーレに浮遊した培養細胞(特に動物細胞)を16個同時に捕捉し、96wellプレートに吐出するシステム例を示す。
図1にシャーレに浮遊する細胞を捕捉する工程でのシステム構成を示す。直径60mmのガラス製シャーレ1にPBSバッファ2を導入し、培養細胞3を浮遊させた。細胞密度は1000個/mL程度に調整している。この溶液に片側の面を接するように細胞採取システム(シャーレ1とPBSバッファ2以外の構成すべて)を沈める。細胞採取システムの先端には細胞採取プレート5が設置されており、その一方の面(細胞採取面)が細胞3を含むPBSバッファ2に接するように保持されている。細胞採取プレート5には細胞採取用の細孔7が設けられており、細胞採取面での開口部の直径は4μmに設定している。この細孔は96wellプレートの反応槽ピッチにあわせて、9mm間隔で4×4の16個設けられている。本実施例では細胞採取プレート5は2層から構成されており、細胞採取面に接する部分6は厚さ5μmのポリ塩化ビニリデンフィルムを用いた。他のポリプロピレンやポリカーボネートやサイクリックポリオレフィン等を用いてもよい。穿孔加工はエキシマレーザ加工を用いた。細胞採取プレート5の裏面側は形状保持の役割を担っており、ピーク樹脂の切削加工によって成形した。孔はテーパ形状で細胞採取面に近いところでの直径を1mm、裏面側で3mmとなるようにした。吸引チャンバ8の内部は、細胞を捕捉する前にPBSバッファで満たしておく。これには溶液リザバ9(PBSバッファ2が蓄えられている)からの溶液を送液チューブ21を通してポンプ10を用いて送液することで実現する。また、吸引チャンバ8へのバッファの送液(加圧)、吸引(減圧)、大気開放に関する制御はポンプ10に対して、信号線11を介してコントローラ12から制御信号を送ることによって制御する。細胞採取プレートの大きさは、45×45mm〜500×500 mmとし、厚みは1mmとした。
次に、細胞を捕捉するために前記細胞採取プレート5の細孔7の細胞採取面と裏面の間に圧力差を発生させる必要がある。このために、排出チューブ13をシャーレ1中のバッファ液面よりも適切な低い位置に設置し、排出チューブ13の途中に設置したフローコントローラ14で流量を調整して実行した。このように、重力を用いた圧力差の生成を用いた理由は、高い圧力差が細孔7にかかると細胞にダメージを与える可能性があるからである。小さく、正確に制御された圧力印加がポンプで実行可能な場合は、フローコントローラ14の代わりにポンプ10を用いてもよい。なお、フローコントローラ14もポンプ10と同様にその制御はコントローラ12で制御した。15は廃液容器であり、排出されたPBSや不要な孔を通過した小さい細胞やごみ等を回収する。
細孔7で捕捉された細胞4を光学顕微鏡で確認するために、前記細胞採取面に接する部分6として透明の材料を用いた。それゆえ透明の開口部は1mmφとなり、この領域の光学イメージ(光学像)を取得することが可能である。この開口部にあわせて、非球面レンズ16とファイババンドル17(ファイバコア系3μm、バンドル直径1mm)を用いた。レンズ16は細孔7の開口部に捕捉された細胞4の像をファイババンドル17表面に結像し、この像がCMOSセンサ18上に伝達される。CMOSセンサ18のチップサイズを大きくすると素子のコストが高くなってしまうため、ファイバを用いて分散した16個のイメージを合成して1つの撮像素子を用いることが可能な構成とした。22は照明用白色LEDである。CMOSセンサ18で得られた像は信号線23を通して、外部のPC及び外部ディスプレイに送信される。フォーカス位置を調整できるように、CMOSセンサ18、ファイババンドル17、非球面レンズ16を一体にした、光学モジュール19を上下に移動させるマイクロメータ20を設けた。これによって、細胞がどの細孔で捕捉できたか、2つ以上捕捉してしまった細孔はどの位置にあるのか、異常な形状の細胞を捕捉してしまった細孔はどの位置であるかを判断することができ、反応槽に分注後、解析用試薬を導入せずに無駄な試薬コストを省くだけでなく、解析後の個別の細胞と細胞の光学イメージを対応させることができる。
本発明における光学系の第一義的な目的は、細孔に細胞が1つ捕捉できたか、捕捉できていないか、2つ以上捕捉してしまっているかを判定することにある。このため、細孔の裏面からの細胞の光学像は必ずしも鮮明でなくてよい。極端な例としては、細胞が1つだけ捕捉された場合の細孔の輪郭の像のコントラストが適切に変化することだけを判定するだけでも、光学系の目的の大部分が達成できる。
図2に細胞採取面の細孔7の配置パタンを示す。細胞採取のための細孔7が9mm間隔で16個、正方格子状に配列されている。また、細孔7以外の領域は撥水表面の部分26となっている。
このとき、吸引チャンバ8内部は外部に対して適切な(細胞を壊さない程度の弱い)印圧が保たれるようにコントローラ12で圧力を制御する。
次に捕捉された細胞4を反応槽プレート31の反応槽32に1つずつ分注するために、図3に示すように、細胞採取プレート5(本実施例では細胞採取面に接する部分6)と反応槽プレート31が密着する。このとき、細孔7の位置と反応槽32の位置を合わせるために位置あわせ用ピン33が反応槽プレート31に取り付けられ、位置あわせ穴34が細胞採取プレート5側に取り付けられている。また、細孔7の位置は反応槽32の中心からずれており、溶液を吐出したとき、反応槽32の壁面をつたって、細胞が反応槽32の底部に達するように、位置あわせ穴34の位置が調整されている。
細胞の分注には、ポンプ10を用いて溶液リザバ9中のPBSバッファを吐出する。このとき、もちろんフローコントローラ14は流量0になるように設定する。
また、細胞が吐出されたかどうかを確認するために、フォーカス位置が反応槽32の底付近になるように、光学モジュール19をマイクロメータ20を用いて移動させることができる。
本実施例では細胞の採取の確認を顕微鏡像から目視で行うことを前提としているが、これを自動化することも可能である。この自動化のために、信号線23を用いてCMOSセンサ18で得られた画像をPCに転送する。細胞が捕捉されたときには細孔の内部の屈折率がない場合に比べて上昇するため、照明用白色LED22からの光の反射率が変化する。そのため、細孔の輪郭を形成するリングのコントラストが変化する。このコントラストの変化を画像認識ソフトにて識別し、細胞が捕捉されたかどうかを自動判定することが可能である。本実施例では照明は細胞採取プレート5の裏面側から行ったが、細胞採取面側から行っても同様のコントラスト変化が発生する。
また、図4に細胞採取プレート5の細胞採取面の細孔7付近の形状を示す。本実施例では2通りの形状を準備した。図4Aは細胞採取面側から裏面に向かって、孔径が細くなる形状である。なお、孔径は最小開口寸法で示している。このような形状の場合、細胞が応力に対して変形しやすいときには、細胞が孔の奥まで侵入し、壁面との接着面積が大きいため、細胞が壁面に接着し、吐出時に溶液を逆流させたときに、細胞が破壊されたり、細胞が溶液とともに吐出されずに残ったりするケースがある。この問題を緩和するめに、断面形状を図4Bのように、細胞採取面側に突起させ、壁面との接触面積を一定に保つ工夫を行った。
なお本実施例では16個の細孔7を細胞採取プレート5に設けたが、1個でもかまわないし、96個や、384個でもよい。1個の場合には不必要な細胞を反応槽に導入する可能性を下げることができるし、96個や384個の場合にはスループットを向上させることができる。
[実施例2]
本実施例は、蛍光顕微鏡の機能を備えて、目的のタンパク質が発現した細胞のみを反応槽プレートに導入する場合を記す。図5に本実施例の細胞採取時のシステム構成例を示す。
シャーレ1中の細胞は採取したい細胞3のみが緑色蛍光タンパク質(GFP)でラベルされているものとする。また、採取した細胞は癌細胞で他の細胞(血球細胞)に比べて大きく、柔軟性も低い。そのため、細孔7からPBSバッファ2を吸引して細胞3を捕捉しようとするとき、多くの不要な血球細胞は吸引チャンバ8の方に抜けて、廃液として廃液容器15に排出され、目的の細胞だけが捕捉される。同時にこの細胞は蛍光ラベルされていることから、蛍光を確認することが可能である。図5には蛍光計測によって捕捉された細胞4が目的の細胞であるかどうかを確認するための構成を記している。励起光減として波長488nmの半導体レーザ51の出力部分に励起光を必要な細胞励起数に応じてファンアウトするファイババンドル52、及び、このファイバから出力されたレーザを細孔7付近に集光させるための視野レンズ53、励起光を反射し蛍光ラベル(GFP)からの蛍光を透過するダイクロイックミラー54、蛍光を集光するための対物レンズ55、撮像素子(冷却CCD58)上に蛍光像を結像させるための結像レンズ56、励起光レーザからの散乱光や水からのラマン散乱を除去して蛍光のバックグラウンドを低減するためのバンドパスフィルタ57と冷却CCD58が光学モジュール59の中に配置されている。
細胞3を捕捉するために吸引したとき、ほとんどの不要な血球細胞は細孔7を通過し廃液容器15に排出され、GFPが細胞表面に固定され、蛍光を発する細胞のみが細胞採取プレート5上に捕捉される。また、上記光学モジュール59によって捕捉された細胞4が真に蛍光を発しているかどうかを確認することが可能である。
[実施例3]
本実施例では実施例1と同様シャーレに浮遊した細胞3を複数同時に捕捉し、96wellプレートに吐出するシステムであるが、細胞採取プレート5表面上の細胞捕捉用の細孔7以外の部分に細胞が付着しないようにするために、表面処理を施した例を示す。本例では、細胞を捕捉したことを確認するための光学系は組み込まれていないが、これを組み込んでもよい。
図6にシャーレに浮遊する細胞3を捕捉する工程でのシステム構成を示す。実施例1と同様にガラス製シャーレ1に培養細胞3を浮遊させたPBSバッファ2に片側の面を接するように細胞採取システムを沈める。細胞採取プレート5には細胞採取用の細孔7が設けられており、細胞採取面での開口部の直径はここでも4μmに設定している。この細孔7は96wellプレートの反応槽ピッチにあわせて、9mm間隔で4×4の16個設けられている。図7に細胞採取プレート5の断面図及び細胞と接する方の面(細胞採取面)の上面図を示す。本実施例では細胞採取プレート5は1層から構成されており、細孔7以外の形状は射出成形を用いて加工した。材料はポリオレフィンとしたが、ポリプロピレンやポリカーボネート等の樹脂を用いてもよい。また、材料として半導体を用いて、その加工に半導体プロセスの技術を用いてもよい。射出成形時に直径30μmで厚さ5μmの薄膜部分28を形成し、その中心部分に穿孔加工としてエキシマレーザ加工で直径4μmの細孔7を形成した。細胞採取プレート5の厚さは形状保持のために0.5mmとした。細胞採取プレートの大きさは、45×45mm〜500×500 mmとし、厚みは1mmとした。
また、図7の上面図に細胞採取面の表面処理パタンを示す。細胞採取細孔7が9mm間隔で16個、正方格子状に配列されている。細孔7を中心に50μmの直径の領域25が親水処理されており、それ以外の領域26はポリ塩化ビニリデン表面が撥水のためそのままの状態で残している。親水処理は金属マスクで細孔7付近だけを開口部として、UVオゾン処理(酸素雰囲気下のUV照射(254nm又は176nm波長の光を含む))を10分行った。半導体プロセスで通常使用されるレジストパタニングを行ったあと、OH基を官能基として有するシランカップリング剤を開口部のみに反応させて親水パタンを生成してもよい。ここではより簡便な処理方法を選択した。これによって、溶液をシャーレから吸引し、細胞の捕捉が確認されたあと、システムをシャーレから引き上げると、液滴はほぼ親水処理されたところだけに残り、細胞も細孔周辺にしか吸着しない。
ここで、親水と撥水表面についての定義を記す。図8に25の親水処理をした部分と26の親水処理をしていない撥水表面の部分にPBSバッファの液滴をおいた場合の断面図を示す。親水処理をした表面25の上に滴下された液滴81の撥水角θ1は、撥水表面26上の液滴82の撥水角θ2に比べて小さい。本発明ではこれら2つの角度の大小で親水面か撥水面かを相対的に定義する。
吸引チャンバ8の内部は、細胞3を捕捉する前にPBSバッファ2で満たしておく。これには溶液リザバ9(PBSバッファが蓄えられている)からの溶液を送液チューブ21を通してポンプ10を用いて送液することで実現する。また、吸引チャンバ8へのバッファの送液(加圧)、吸引(減圧)、大気開放に関する制御はポンプ10に対して、信号線11を介してコントローラ12から制御信号を送ることによって制御する。
次に、細胞3を捕捉するために前記細胞採取プレート5の細孔7の細胞採取面と裏面の間に圧力差を発生させる必要がある。このために、排出チューブ13をシャーレ1中のバッファ液面よりも適切な低い位置に設置し、排出チューブ13の途中に設置したフローコントローラ14で流量を調整して実行した。15は廃液容器であり、排出されたPBSを回収する。
このとき、吸引チャンバ8内部は外部に対して適切な(細胞を壊さない程度の弱い)陰圧が保たれるようにコントローラ12で圧力を制御する。
次に捕捉された細胞4を反応槽プレートに吐出する場合は前実施例と同様である。
なお本実施例では16個の細孔7を細胞採取プレート5に設けたが、1個でもかまわないし、96個や、384個でもよい。1個の場合には不必要な細胞を反応槽に導入する可能性を下げることができるし、96個や384個の場合にはスループットを向上させることができる。
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明をわかりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加、削除又は置換を行うことが可能である。
1 シャーレ
2 PBSバッファ
3 細胞
4 捕捉された細胞
5 細胞採取プレート
6 細胞採取面に接する部分
7 細孔
8 吸引チャンバ
9 溶液リザバ
10 ポンプ
11 信号線
12 コントローラ
13 排出チューブ
14 フローコントローラ
15 廃液容器
16 非球面レンズ
17 ファイババンドル
18 CMOSセンサ
19 光学モジュール
20 マイクロメータ
21 送液チューブ
22 照明用白色LED
23 信号線
25 親水処理をした部分
26 撥水表面の部分
28 薄膜部分
31 反応槽プレート
32 反応槽
33 位置あわせ用ピン
34 位置あわせ穴
51 半導体レーザ
52 ファイババンドル
53 視野レンズ
54 ダイクロイックミラー
55 対物レンズ
56 結像レンズ
57 バンドパスフィルタ
58 冷却CCD
59 光学モジュール
81 液滴
82 液滴

Claims (17)

  1. 少なくとも1つの孔が設けられた細胞採取プレートであって、その一方の面を細胞を含む溶液に浸漬させることが可能である細胞採取プレートと
    前記細胞採取プレートを細胞を含む溶液に浸漬させた状態で、前記孔から細胞を含む溶液を吸引し、細胞を孔に捕捉するための手段と
    前記孔に捕捉された細胞を吐出する手段と
    前記細胞採取プレートの孔付近の光学像を得るための手段と
    を備え、前記細胞採取プレートの前記面の孔付近が親水性であり、及び前記面の孔付近以外の部分は撥水性であり、前記孔付近の細胞採取プレートの形状が、前記細胞を含む溶液に浸漬させる面の側に突起していることを特徴とする細胞採取システム。
  2. 前記細胞採取プレートの孔付近の光学像を得るための手段が光ファイババンドルを含むことを特徴とする、請求項1に記載の細胞採取システム。
  3. 前記孔付近の光学像を解析するコンピュータ及びソフトウェアをさらに具備するものであり、前記孔と孔以外の像のコントラスト差を用いて、自動的に孔に細胞が捕捉されたことを認識することを特徴とする、請求項1又は2に記載の細胞採取システム。
  4. 前記光学像を得るための手段が、蛍光励起光源、蛍光検出するための光学系及び蛍光像を得るための撮像素子であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の細胞採取システム。
  5. 少なくとも1つの孔が設けられた細胞採取プレートであって、その一方の面を細胞を含む溶液に浸漬させることが可能である細胞採取プレートと
    前記細胞採取プレートを細胞を含む溶液に浸漬させた状態で、前記孔から細胞を含む溶液を吸引し、細胞を孔に捕捉するための手段と
    前記孔に捕捉された細胞を吐出する手段と
    を備え、前記細胞採取プレートの前記面の孔付近が親水性であり、及び前記面の孔付近以外の部分は撥水性であり、前記孔付近の細胞採取プレートの形状が、前記細胞を含む溶液に浸漬させる面の側に突起していることを特徴とする細胞採取システム。
  6. 前記孔が2次元又は1次元状に配列して前記細胞採取プレートに設けられている、請求項1〜5のいずれか1項に記載の細胞採取システム。
  7. 前記孔の直径が前記細胞の直径よりも小さいことを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の細胞採取システム。
  8. 前記細胞採取プレートの少なくとも一部分が透明である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の細胞採取システム。
  9. 前記細胞採取プレートの孔の周辺が透明であることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項に記載の細胞採取システム。
  10. 照明手段をさらに具備することを特徴とする、請求項1〜9のいずれか1項に記載の細胞採取システム。
  11. 前記細胞採取プレートを洗浄する機構をさらに具備することを特徴とする、請求項1〜10のいずれか1項に記載の細胞採取システム。
  12. 請求項1〜11のいずれか1項に記載の細胞採取システムと
    細胞を分注するための少なくとも1つの反応槽が設けられた反応槽プレートと
    を備え、前記反応槽プレートの反応槽の配列間隔に一致した間隔で、前記細胞採取プレートに孔が設けられていることを特徴とする細胞採取・分注システム。
  13. 前記細胞採取プレートの孔の数と前記反応槽プレートの反応槽の数が一致することを特徴とする、請求項12に記載の細胞採取・分注システム。
  14. 前記細胞採取プレート及び前記反応槽プレートに、前記反応槽プレートに対して前記細胞採取プレートの位置合わせを行う手段が設けられていることを特徴とする、請求項12又は13に記載の細胞採取・分注システム。
  15. 前記反応槽プレートの反応槽の中心から偏った位置に前記細胞採取プレートの孔が位置するように位置合わせ手段が設けられていることを特徴とする、請求項14に記載の細胞採取・分注システム。
  16. 前記細胞採取プレートが、前記細胞を含む溶液及び前記反応槽プレートと分離されており、自由に動かすことが可能であることを特徴とする、請求項12〜15のいずれか1項に記載の細胞採取・分注システム。
  17. 請求項12〜16のいずれか1項に記載の細胞採取・分注システムであって、前記細胞採取システムが前記細胞採取プレートの孔付近の光学像を得るための手段を備える場合には、前記細胞採取プレートの孔に捕捉された細胞を前記反応槽プレートに分注するときに、前記光学像のピントを前記反応槽の内部に合わせることができる手段をさらに具備することを特徴とする、細胞採取・分注システム。
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