JP5486094B2 - エアバッグ用ポリエステル原糸およびこの製造方法 - Google Patents

エアバッグ用ポリエステル原糸およびこの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、エアバッグ用布に使用可能なポリエステル原糸に関し、より詳細には、優れた機械的物性、形態安定性、収納性などを有する高強力、高伸率、および高収縮のポリエステル原糸、この製造方法、これを利用したエアバッグ用布に関する。
一般的に、エアバッグ(air bag)は、走行中の車両が約40km/h以上の速度で正面衝突するとき、車両に加えられる衝突衝撃を衝撃感知センサで感知した後、火薬を爆発させてエアバッグ内部にガスを供給して膨張させることによって運転手および乗客を保護する装置を意味し、一般的なエアバッグシステムの構造は図1に示すとおりである。
図1に示すように、一般的なエアバッグシステムは、雷管122の点火によってガスを発生させるインフレータ(inflater)121、この発生したガスによって運転席の運転手側に膨張展開するエアバッグ124からなり、操向ホイール101に装着されるエアバッグモジュール100、衝突時に衝撃信号を発生する衝撃センサ130、およびその衝撃信号によってインフレータ121の雷管122を点火させる電子制御モジュール(Electronic Control Module)110を含んで構成されている。このように構成されたエアバッグシステムは、車両が正面衝突するようになれば衝撃センサ130で衝撃を感知し、電子制御モジュール110に信号を伝達する。このとき、これを認識した電子制御モジュール110は雷管122を点火させ、インフレータ121内部のガス発生剤を燃焼させる。このように燃焼するガス発生剤は、急速なガス発生によってエアバッグ124を膨張させる。このように膨張して展開されたエアバッグ124は、運転手の前面上半身と接触しながら衝突による衝撃荷重を部分的に吸収し、慣性によって運転手の頭と胸が前進しながら膨張したエアバッグ124と衝突する場合、エアバッグ124のガスがエアバッグ124に形成された排出孔から急速に排出し、運転手の前面部に緩衝作用するようになる。したがって、前面衝突時に運転手に伝達される衝撃力を効果的に緩衝させることにより、2次傷害を軽減できるようになる。
上述したように、自動車に用いられるエアバッグは、一定の形態に製造された後、その体積を最小化するために折り畳まれた状態で自動車のハンドルや自動車の側面ガラス窓または側面構造物などに装着され、折り畳まれた状態を維持しながらインフレータ121の作動時にエアバッグが膨張して展開されるようにする。
したがって、自動車への装着時にエアバッグのフォールディング性およびパッケージ性を効果的に維持しながら、エアバッグ自体の損傷および破裂を防ぎ、優れたエアバッグクッションの展開性能を発揮し、乗客に加えられる衝撃を最小化するためには、エアバッグ布の優れた機械的物性と共に、フォールディング性および乗客に加えられる衝撃を減らすための柔軟性が極めて重要となる。しかし、乗客の安全のために優れた空気遮断効果および柔軟性を同時に維持しながらも、エアバッグが受ける衝撃に十分に耐え、自動車内に効果的に装着されて使用されるエアバッグ用布は提案されていない状況にある。
従来には、ナイロン66などのポリアミド繊維がエアバッグ用原糸の材料として用いられていた。しかし、ナイロン66は、耐衝撃性は優れてはいるが、ポリエステル繊維に比べて耐湿熱性、耐光性、形態安定性の側面から後れをとっており、原料費用も高いという短所がある。
一方、日本特許公開公報平04−214437号には、このような欠点が軽減されたポリエステル繊維の使用が提案されている。特に、このように既存のポリエステル原糸を用いてエアバッグを製造する場合には、自動車内に装着するとき、狭い空間に収納するために低デニール原糸が使用されてきた。しかし、このような低デニールのポリエステル原糸は、強力低下および靱性低下により、エアバッグ用布として製造するとき、高温高湿の苛酷な条件下で十分な機械的物性、気密性、および展開性能を維持するのに限界があった。
したがって、エアバッグ用布としての使用に適するように優れた形態安定性および空気遮断効果を維持しながらも、乗客に加えられる衝撃を減らすための柔軟性、収納性、および高温高湿の苛酷な条件下で優れた機械的物性を維持する繊維原糸の開発に対する研究が必要である。
本発明は、エアバッグ用布に使用可能なように優れた形態安定性および柔軟性、収納性を確保しながらも、高温高湿の苛酷な条件下で十分な性能を維持するエアバッグ用ポリエステル原糸を提供することを目的とする。
また、本発明は、前記ポリエステル原糸を製造する方法を提供することを他の目的とする。
さらに、本発明は、前記ポリエステル原糸を用いて製造されるエアバッグ用布を提供することをさらに他の目的とする。
本発明は、常温で測定されたポリエステル原糸の1.0g/d応力で伸び率が0.4%以下であり、4.0g/d応力で伸び率が4.0%以下であり、7.0g/dの応力で伸び率が7.0%以下であり、前記ポリエステル原糸の初期モジュラスが105〜130g/dであるエアバッグ用ポリエステル原糸を提供する。
また、本発明は、固有粘度が0.85dl/g以上であるポリエステル重合体を270〜305℃で溶融紡糸してポリエステル未延伸糸を製造する段階、および前記ポリエステル未延伸糸を延伸する段階を含む前記エアバッグ用ポリエステル原糸の製造方法を提供する。
また、本発明は、前記ポリエステル原糸を用いて製造されるエアバッグ用布を提供する。
一般的なエアバッグシステムを示す図である。 本発明の一実施形態に係るエアバッグ用ポリエステル原糸の製造工程を模式的に示す工程図である。
以下、発明の具体的な実施形態に係るエアバッグ用ポリエステル原糸、この製造方法、およびこれから製造されるエアバッグ用布についてより詳しく説明する。ただし、これは発明の一例として提示されるものであって、これによって発明の権利範囲が限定されることはなく、発明の権利範囲内で実施形態に対する多様な変形が可能であることは、当業者によって自明である。
さらに、本明細書全体に渡って特別な言及がない限り、「含む」または「含有」とは、ある構成要素(または構成成分)を特別な制限なく含むことを称し、他の構成要素(または構成成分)の付加を除外するものと解釈してはならない。
ポリエステルエアバッグ用布は、ポリエチレンテレフタレート(以下、「PET」とする)を含む重合体を溶融紡糸して未延伸糸を製造し、これを延伸して延伸糸(すなわち、原糸)を得た後、このような工程によって得られたポリエステル原糸を製織加工して製造されてもよい。したがって、前記 ポリエステル原糸の特性がポリエステルエアバッグ用布の物性に直/間接的に反映される。
特に、従来のナイロン66などのポリアミド繊維の代わりにポリエステルをエアバッグ用原糸として適用するためには、優れた空気遮断効果を確保できるように原糸の気密性を向上させると同時に、強力低下およびフォールディング性の低下、高温高湿の苛酷な条件下での物性低下、これに伴う展開性能の低下を克服しなければならない。
ポリエステルはナイロンに比べて収縮率が低いため、布製造時に熱処理工程を実行すれば、エアバッグ布の気密性が低下して優れた空気遮断効果を提供することが困難になり、強い分子鎖を有しているため、エアバッグ用布として用いて自動車に装着する場合には収納性(packing)が著しく低下するようになる。また、ポリエステル分子鎖内のカルボキシル末端基(Carboxyl End Group、以下、「CEG」とする)は、高温高湿条件でエステル基(esterbond)を攻撃して分子鎖切断を招来し、エイジング後の物性を低下させる原因となる。
これにより、本発明は、ポリエステル原糸で初期モジュラスおよび伸び率などの物性範囲を最適化することにより、剛軟度を著しく低めながらも、靱性(toughness)などの優れた機械的物性および空気遮断性能などを維持することができ、エアバッグ用布に効果的に適用することができる。
特に、本発明者の実験結果、所定の特性を有するポリエステル原糸からエアバッグ用布を製造することにより、さらに向上したフォールディング性、形態安定性、および空気遮断効果を示し、エアバッグ用布として使用するとき、自動車装着などでより優れた収納性(packing)および高温高湿の苛酷な条件下でも優れた機械的物性、空気流出防止、気密性などを維持できることが明らかになった。
これにより、発明の一実施形態により、本発明は所定の特性を有するポリエステル原糸が提供される。このようなポリエステル原糸は、常温で測定された原糸の1.0g/d応力で伸び率が0.4%以下であり、4.0g/d応力で伸び率が4.0%以下であり、7.0g/dの応力で伸び率が7.0%以下であり、前記ポリエステル原糸の初期モジュラスが105〜130g/dであってもよい。
このようなポリエステル原糸は、ポリエチレンテレフタレート(PET)を主成分として含むことが好ましい。このとき、前記PETは、その製造段階で多様な添加剤が添加されてもよく、エアバッグ用布に適した物性を示すためには、少なくとも70モル%以上、より好ましくは90モル%以上を含む原糸であってもよい。以下、PETという用語は、特別な説明なく、PET高分子が70モル%以上である場合を意味する。
前記発明の一実施形態に係るポリエステル原糸は、後述する溶融紡糸および延伸条件下で製造され、初期モジュラスが105〜130g/dであり、常温で測定された原糸の1.0g/d応力に処されたときには0.4%以下に伸び、4.0g/dの応力に処されたときには4.0%以下に伸び、7.0g/dの応力に処されたときには7.0%以下に伸びる特性を示すようになった。
一般的に、ポリエステルは、分子構造上において、ナイロンなどに比べて収縮率が低いために布として生成され、熱処理すればエアバッグ布の気密性が低下して優れた空気遮断効果を提供し難く、強い分子鎖を有しているため、エアバッグ用布として用いて自動車に装着する場合には収納性(packing)が著しく低下するようになる。しかし、高粘度のチップを使用して低温紡糸を適用して滴定延伸工程を経て得られた前記ポリエステル原糸は、高強力、高伸率、高モジュラス、および高収縮の特性を示し、以前に周知のポリエステル産業用の原糸よりも高い所定の範囲で最適化した初期モジュラス、すなわち、105〜130g/d、好ましくは107〜128g/d、より好ましくは110〜125g/dの初期モジュラスを示す。
このとき、前記ポリエステル原糸のモジュラスは、引張試験時に得られる応力−変形度線図の弾性区間の傾きから得られる弾性係数の物性値であって、物体を両側に掴んで伸ばすときの物体の伸びる程度と変形する程度を示す弾性率に該当する値である。また、原糸の初期モジュラスは、応力−変形度で「0」点以後にほぼ弾性区間が開始する地点における弾性係数物性値である。前記原糸初期のモジュラスが高ければ、弾性は優れているが布の剛軟度(stiffness)が悪くなることがあり、初期モジュラスが極めて低い場合には、布の剛軟度は優れているが弾性回復力が低くなって布の強靭性が悪くなることがある。しかし、本発明のポリエステル原糸は、初期モジュラスを上述したような最適範囲で維持することにより、高強力、高伸率、高収縮の特性を示すことができる。このように最適化した範囲の初期モジュラスを有するポリエステル原糸から製造されたエアバッグ用布は、既存のポリエステル布に比べて向上した気密性と共に、優れたフォールディング性、柔軟性、および収納性を示すことができる。
さらに、前記ポリエステル原糸は、上述したような最適化した初期モジュラスと共に、延伸が最小化した特徴を有する。これにより、前記ポリエステル原糸は、常温で1.0g/dの応力に処されたときには0.4%以下、または0.05%〜0.4%、好ましくは0.1%〜0.4%に伸長し、4.0g/dの応力に処されたときには4.0%以下、または0.5%〜4.0%、好ましくは0.1%〜4.0%に伸長し、7.0g/dの応力に処されたときには7.0%以下、または1.0%〜7.0%、好ましくは2.0%〜7.0%に伸長してもよい。このような特性により、前記ポリエステル原糸から製造されたエアバッグ用布が既存のポリエステル布の低い気密性および高い剛軟度(stiffness)問題などを解決し、優れたフォールディング性、柔軟性、および収納性を示すことができる。
これと同時に、前記ポリエステル原糸は、以前に周知のポリエステル原糸に比べてより向上した固有粘度、すなわち、0.8dl/g以上または0.8dl/g〜1.2dl/g、好ましくは0.85dl/g以上または0.85dl/g〜1.15dl/g、より好ましくは0.9dl/g以上または0.9dl/g〜1.10dl/gの固有粘度を示してもよい。固有粘度は、前記ポリエステル原糸をエアバッグ用途として適用するとき、コーティング工程などで熱的変形が起こらないようにするために前記範囲で確保されることが好ましい。
前記原糸の固有粘度が0.8dl/g以上になることによって低延伸で高強力を発揮し、エアバッグ原糸の要求強力を満たすことができるため好ましく、そうでない場合には高延伸によって物性発現せざるを得なくなる場合がある。このように高延伸を適用する場合は、繊維の配向度が上昇し、低い伸び率と低い靱性(toughness)の物性が獲得されざるを得なくなる場合がある。したがって、前記原糸の固有粘度を0.8dl/g以上に維持しながら低延伸を適用することで、高強力、高伸率と共に高収縮の物性発現を可能にすることが好ましい。また、原糸粘度が1.2dl/gを超えれば、延伸時の延伸張力が上昇して工程上の問題を発生させる場合があるため、1.2dl/g以下であることがより好ましい。特に、本発明のポリエステル原糸は、このように高い程度の固有粘度を維持することにより、低延伸によって低い剛軟度を提供すると同時に、エアバッグ用布に十分な機械的物性および耐衝撃性、靱性(toughness)などを提供することができる高強力特性がさらに付与されるようになる。
したがって、このような最適化した初期モジュラスおよび高い伸び率、好ましくは高い固有粘度を示すポリエステル原糸を利用することで、優れた機械的物性および収納性、形態安定性、耐衝撃性、空気遮断効果を同時に示すエアバッグ用布を製造することが可能となる。これにより、前記ポリエステル原糸を利用すれば、より低い剛軟度およびフォールディング性、柔軟性、収納性を示しながらも、優れた耐衝撃性、形態安定性、機械的物性、気密性を示すエアバッグ用布を得ることができる。このようなエアバッグ用ポリエステル布は、優れた機械的物性、形態安定性、空気遮断効果を示しながらも、自動車の狭い空間に装着するときに優れたフォールディング性、収納性を提供すると同時に、優れた柔軟性によって乗客に加えられる衝撃を最小化して搭乗者を安全に保護することができるため、エアバッグ用布などとして好ましく適用することができる。
また、本発明のポリエステル原糸は、後述する溶融紡糸および延伸条件下で製造され、既存に周知のポリエステル原糸に比べて大きく低下したカルボキシル末端基(CEG)含有量を示してもよい。すなわち、前記ポリエステル原糸は50meq/kg以下、好ましくは40meq/kg以下、より好ましくは30meq/kg以下のCEG含有量を示してもよい。ポリエステル分子鎖内のカルボキシル末端基(CEG)は、高温高湿条件でエステル基(esterbond)を攻撃して分子鎖切断を招来し、これによってエイジング(aging)後の物性を低下させるようになる。特に、前記CEG含有量が50meq/kgを超過するようになれば、エアバッグ用途として適用するときに、高い湿度条件下でCEGによってエステル結合が切断されて物性低下が起こるようになるため、前記CEG含有量は50meq/kg以下になることが好ましい。
一方、前記発明の一実施形態に係るポリエステル原糸は、引張強度が7.5g/d以上または7.5g/d〜11.0g/d、好ましくは8.0g/d以上または8.0g/d〜10.0g/dであり、切断伸度が13%以上または13%〜35%、好ましくは14%以上または14%〜25%を示してもよい。また、前記原糸は、乾熱収縮率が5.0%以上または5.0%〜10.0%、好ましくは5.2%以上または5.2%〜10.0%であり、靱性値が25×10−1g/d以上または25×10−1g/d〜46×10−1g/d、好ましくは31×10−1g/d以上、または31×10−1g/d〜44×10−1g/dを示してもよい。既に上述したように、固有粘度および初期モジュラス、伸び率範囲を最適な範囲で確保することにより、本発明のポリエステル原糸は優れた程度で強度および物性を確保できるだけでなく、エアバッグ用布として製造するときに優れた性能を発揮することができる。特に、上述したように、ポリエステル原糸の乾熱収縮率を最適範囲で維持することにより、高収縮による布の空気透過度を効果的に制御することができる。
また、本発明のポリエステル原糸は、一般的なコーティング布のラミネートコーティング温度に該当する150℃での収縮応力が0.005〜0.075g/dであることが好ましく、一般的なコーティング織物のゾルコーティング温度に該当する200℃での収縮応力が0.005〜0.075g/dであることが好ましい。すなわち、前記150℃と200℃での収縮応力がそれぞれ0.005g/d以上になることによってコーティング工程中に熱による布の弛み現象を防ぐことができ、0.075g/d以下になることによってコーティング工程を経て常温で冷却されるときに弛緩応力を緩和させることができる。前記収縮応力は、0.10g/dの固定荷重下で測定した値を基準にした。
以上のようにコーティングなどの熱処理工程で変形を防ぐためには、前記ポリエステル原糸は、結晶化度が40%〜55%であり、好ましくは41%〜52%、より好ましくは41%〜50%であってもよい。前記原糸の結晶化度は、エアバッグ用布に適用するときに熱的形態の安定性維持などのために40%以上であることが好ましく、前記結晶化度が55%を超える場合には、非結晶領域が減少することによって衝撃吸収性能が低下するという問題点が発生することがあるため、55%以下であることが好ましい。
また、前記ポリエステル原糸は、単糸繊度が0.5〜20デニール、好ましくは2.0〜10.5デニールであってもよい。前記ポリエステル原糸がエアバッグ用布に効果的に使用されるためには、収納性の側面において低繊度高強力を維持しなければならないため、適用可能な原糸の総繊度は200〜1,000デニール、好ましくは220〜840デニール、さらに好ましくは250〜600デニールであってもよい。また、前記原糸のフィラメント数が多いほどソフトな感触を与えることができるが、過度に多い場合には紡糸性が良くないことがあるため、フィラメント数は50〜240、好ましくは55〜220、さらに好ましくは60〜200であってもよい。
一方、上述したような発明の一実施形態に係るポリエステル原糸は、ポリエステル重合体、例えばPETチップを溶融紡糸して未延伸糸を製造し、前記未延伸糸を延伸する方法によって製造されてもよく、上述したように、これらの各段階の具体的な条件や進行方法がポリエステル原糸の物性に直/間接的に反映されることにより、上述した物性を有するポリエステル原糸が製造されるようになる。
特に、このような工程の最適化により、初期モジュラスが105〜130g/dであり、常温で1.0g/dの応力に処されたときには0.4%以下に伸び、4.0g/dの応力に処されたときは4.0%以下に伸び、7.0g/dの応力に処されたときは7.0%以下に伸びるエアバッグ用ポリエステル原糸を確保できることが明らかになった。また、本発明において、このような溶融紡糸および延伸工程の最適化により、高い湿度条件下で酸として存在してポリエステル原糸の基本分子鎖の切断を誘発させるカルボキシル末端基(CEG:Carboxyl End Group)を最小化できることが明らかになった。したがって、このようなポリエステル原糸は、初期モジュラスおよび伸び率を同時に最適な範囲で示し、優れた機械的物性および収納性、形態安定性、耐衝撃性、空気遮断効果を有するエアバッグ用布に好ましく適用される。
このようなポリエステル原糸の製造方法について、各段階別により具体的に説明する。
前記エアバッグ用ポリエステル原糸の製造方法は、固有粘度が0.85dl/g以上のポリエステル重合体を270〜305℃で溶融紡糸してポリエステル未延伸糸を製造する段階、および前記ポリエステル未延伸糸を延伸する段階を含む。
まず、添付の図面を参照しながら、本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者が容易に実施できるように、本発明の溶融紡糸および延伸工程の実施形態を簡略に説明する。
図2は、本発明の一実施形態により、前記溶融紡糸および延伸段階を含むポリエステル原糸製造工程を模式的に示す工程図である。図2のように、本発明のエアバッグ用ポリエステル原糸の製造方式は、上述したような方式によって製造されたポリエステル重合体を溶融させ、口金によって紡糸した溶融高分子を急冷空気(quenching−air)で冷却させ、油剤ロール220(またはオイル−ジェット)を利用して未延伸糸に油剤を付与し、前−集束器(pre−interlacer)230を用いて一定の空気圧力で未延伸糸に付与された油剤を原糸の表面に均一に分散させる。この後、多段の延伸装置241〜246によって延伸過程を経た後、最終的にセカンド集束器(2nd Interlacer)250にて一定の圧力で原糸をインターミングル(intermingle)させ、巻取機260で巻き取って原糸を生産してもよい。
一方、本発明のポリエステル原糸製造方法は、まず、高粘度のポリエステル重合体を溶融紡糸してポリエステル未延伸糸を製造する。
このとき、初期モジュラスおよび伸び率の範囲を所定の最適化した範囲に充足するポリエステル未延伸糸を得るためには、前記溶融紡糸工程は、ポリエステル重合体の熱分解を最小化できるように低い温度範囲で実行することが好ましい。特に、高粘度のポリエステル重合体の固有粘度およびCEG含有量などに対して工程による物性低下を最小化できるように、すなわち、ポリエステル重合体の高粘度および低いCEG含有量を維持できるように低温紡糸、例えば、270〜305℃、好ましくは275〜300℃、より好ましくは280〜300℃の温度で実行してもよい。ここで、紡糸温度とは、射出機(Extruder)の温度を称するものであって、前記溶融紡糸工程が305℃を超えて実行されるときには、ポリエステル重合体の熱分解が多量に発生し、固有粘度の低下によって分子量減少およびCEG含有量増加が大きくなることがあり、原糸の表面損傷によって全般的な物性低下を招来するようになって好ましくない。これに反し、前記溶融紡糸工程を270℃未満で進行するときには、ポリエステル重合体の溶融が困難になることがあり、N/Z表面冷却によって紡糸性が低下することもあるため、前記温度範囲内で溶融紡糸工程を実行することが好ましい。
実験結果、このような低い温度範囲でポリエステル重合体の溶融紡糸工程を進行することにより、ポリエステル重合体の分解反応を最小化し、高い固有粘度を維持し、高い分子量を確保することにより、後続する延伸工程において高い延伸比率を適用しなくても高強力の原糸を得ることができ、このように低延伸工程を実行できることによってモジュラスを効果的に低めることができ、上述した物性を充足するポリエステル原糸が得られることが明らかになった。
また、前記溶融紡糸工程は、ポリエステル重合体の分解反応を最小化する側面において、より低い紡糸張力下で進められるように、すなわち、紡糸張力を最小化できるように、例えば、前記ポリエステル重合体を溶融紡糸する速度を300〜1,000m/minの低速で調節してもよく、好ましくは350〜700m/minに調節してもよい。このように、選択的に低い紡糸張力および低い紡糸速度下でポリエステル重合体の溶融紡糸工程を進行することにより、ポリエステル重合体の分解反応をさらに最小化することができる。
一方、このような溶融紡糸工程を経て得られた未延伸糸は0.8dl/g以上または0.8dl/g〜1.2dl/g、好ましくは0.85dl/g以上または0.85dl/g〜1.15dl/g、より好ましくは0.90dl/g以上または0.90dl/g〜1.10dl/gの固有粘度を示してもよい。また、このように低温紡糸によって得られた未延伸糸の分子内CEG含有量が50meq/kg以下、好ましくは40meq/kg以下、より好ましくは30meq/kg以下であってもよい。このような無燃糸の分子内CEG含有量は、後続する延伸工程を行った延伸糸、すなわち、ポリエステル原糸でも同じ水準で維持されてもよい。
特に、上述したように、高強力高伸率の高収縮ポリエステル原糸を製造するためには、未延伸糸製造工程において高粘度ポリエステル重合体、例えば、固有粘度0.85dl/g以上のポリエステル重合体を使用し、溶融紡糸および延伸工程によってこのような高粘度範囲を最大限に維持し、低延伸で高強力を発揮することができ、モジュラスを効果的に低めることが好ましい。また、前記ポリエステル重合体の溶融温度の上昇による分子鎖切断と紡糸パックからの吐出量による圧力増加を防ぐためには、固有粘度が2.0dl/g以下であることがより好ましい。
また、ポリエステル原糸で製造してエアバッグ用布として適用するとき、高温高湿条件下でも優れた物性を維持できるようにするためには、前記ポリエステル重合体の分子内CEG含有量は30meq/kg以下であることが好ましい。ここで、前記ポリエステル重合体のCEG含有量は、溶融紡糸および延伸工程を進行した後にも最大限に低い範囲で維持され、最終製造されたポリエステル原糸が高強力および優れた形態安定性、機械的物性、苛酷な条件下で優れた物性発現特性を確保できるようにすることが好ましい。このような側面において、前記ポリエステル重合体のCEG含有量が30meq/kgを超過すれば、溶融紡糸および延伸工程によって最終製造されたポリエステル原糸の分子内CEG含有量が過剰となり、例えば、30meq/kg〜50meq/kgを超える程度に増加し、高い湿度条件下でCEGによってエステル結合が切断され、原糸自体およびこれから製造された布の物性低下が起こることがある。
特に、このような高粘度および低いCEG含有量のポリエステル重合体は、上述したような低温条件下で溶融紡糸を実行してポリエステル重合体の熱分解などを最大限に抑制することにより、ポリエステル重合体とポリエステル原糸との固有粘度およびCEG含有量差を最小化してもよい。例えば、ポリエステル重合体とポリエステル原糸との固有粘度差は0.5dl/g以下または0〜0.5dl/g、好ましくは0.4dl/g以下または0.1〜0.4dl/gとなるように溶融紡糸および以後工程を実行してもよい。また、ポリエステル重合体とポリエステル原糸との分子内CEG含有量差は20meq/kg以下または0〜20meq/kg、好ましくは15meq/kg以下または3〜15meq/kgとなるように工程を実行してもよい。
前記ポリエステル重合体は、ポリエチレンテレフタレート(PET)を主成分として含むことが好ましく、エアバッグ用原糸として機械的物性を確保するためには、好ましくは70モル%以上、より好ましくは90モル%以上を含んでもよい。
本発明は、このようにポリエステル重合体の固有粘度低下およびCEG含有量の増加を最大限に抑制することにより、ポリエステル原糸の優れた機械的物性を維持すると同時に、優れた伸び率を確保することができ、エアバッグ用布に適した高強力の低モジュラス原糸を製造することができる。
また、前記ポリエステル重合体、例えばPETチップは、モノフィラメントの繊度が0.5〜20デニール、好ましくは1〜15デニールとなるように考案された口金によって紡糸されることが好ましい。すなわち、紡糸内の斜切の発生および冷却時に互いの干渉によって斜切が発生する可能性を低めるためには、モノフィラメントのデニールが1.5デニール以上にならなければならず、冷却効率を高めるためには、モノフィラメントの繊度が15デニール以下であることが好ましい。
また、前記ポリエステル重合体を溶融紡糸した後には、冷却工程を付加して前記ポリエステル未延伸糸を製造してもよい。このような冷却工程は、15〜60℃の冷却風を加える方法によって進行することが好ましく、それぞれの冷却風の温度条件において冷却風量を0.4〜1.5m/sに調節することが好ましい。これにより、発明の一実施形態に係る諸般物性を示すポリエステル未延伸糸をより簡単に製造することができる。
一方、このような紡糸段階によってポリエステル未延伸糸を製造した後には、このような未延伸糸を延伸して延伸糸を製造する。このとき、前記延伸工程は、総延伸比5.0〜6.5、好ましくは5.0〜6.2の条件下で延伸工程を実行してもよい。特に、前記延伸工程は、ポリエステル未延伸糸がGR1とGR2を通過した後にGR2とGR3の間で3.0〜5.0、好ましくは3.2〜4.8の延伸比で一端延伸を進行し、GR3とGR4の間で1.0〜2.0、好ましくは1.2〜1.8の延伸比で進行してもよい。
前記ポリエステル未延伸糸は、溶融紡糸工程を最適化して高い固有粘度と低い初期モジュラスを維持し、分子内CEG含有量も最小化した状態である。したがって、6.5を越える高い延伸比条件下で前記延伸工程を進行すれば過延伸水準となり、前記延伸糸に切糸または毛羽などが発生することがあり、高い繊維の配向度によって低い伸び率の原糸が製造されるようになる。特に、このように高い延伸比条件下で原糸の伸び率が低下する場合、エアバッグ用布として適用するときにフォールディング性、収納性が優れないことがある。この反面、比較的低い延伸比下で延伸工程を進行すれば繊維配向度が低く、これから製造されたポリエステル原糸の強度が一部低くなることがある。ただし、物性側面において5.0以上の延伸比下で延伸工程を実行すれば、例えば、エアバッグ用布などへの適用に適した高強力高伸率の高収縮ポリエステル原糸の製造が可能となるため、前記延伸工程は5.0〜6.5の延伸比条件下で進行することが好ましい。
本発明のさらに他の適切な実施形態によれば、直接紡糸延伸工程によって高強度および高伸率の性質を同時に満たしてもよく、高収縮のポリエステル原糸を製造するために高粘度のポリエステル重合チップを用いて溶融紡糸した後、ワインダに巻き取られるまで多段ゴデットローラを経ながら延伸、熱固定、弛緩、巻取工程を含んでもよい。
前記延伸工程は、前記未延伸糸をオイルピックアップ量0.2%〜2.0%の条件下でゴデットローラを通過させた後に実行してもよい。
前記弛緩過程において、弛緩率は1%〜7%が好ましく、1.1%〜6.8%がより好ましい。前記弛緩率が1.0%未満である場合には、原糸に張力が高く加えられて原糸に斜切が誘発され、7.0%を超過するときには、高収縮率発現が困難となってエアバッグ用布の製造時に優れた空気遮断効果を得られなくなることがある。
また、前記延伸工程では、前記未延伸糸を約170〜225℃の温度条件下で熱処理する熱固定工程を追加で実行してもよく、好ましくは、前記延伸工程の適切な進行のために175〜220℃の温度で熱処理してもよい。ここで、温度が170℃未満の場合には、熱的効果が十分でなくて弛緩効率が低下して収縮率達成が困難であり、225℃を超過する場合には、弛緩効率が大きくて低収縮の収縮率を示すため、高収縮による気密性に優れたエアバッグ布の製造が困難になる。
このとき、巻取速度は2,000〜4,000m/min、好ましくは2,500〜3,700m/minで実行してもよい。
これにより、発明のさらに他の実施形態により、上述したポリエステル原糸を含むエアバッグ用ポリエステル布が提供される。
本発明において、エアバッグ(airbag)用布とは、自動車用エアバッグの製造に使用される布または不織布などを意味するものであり、上述したような工程によって製造されたポリエステル原糸を用いて製造されることを特徴とする。
特に、本発明は、既存に高強度−低伸度のポリエステル繊維ではない高強度−高伸度の高収縮ポリエステル繊維を用いることにより、エアバッグ膨張時のエネルギー吸収能力に優れているだけでなく、優れた形態安定性と空気遮断性、および優れたフォールディング性、柔軟性、収納性を有するエアバッグ用ポリエステル布を提供することができる。また、前記エアバッグ用布は、常温物性が優れているだけでなく、高温および高湿の苛酷な条件下でエイジング(aging)後にも優れた機械的物性および気密性などを維持することができる。
より具体的に説明すれば、本発明のエアバッグ用布は、米国材料試験協会規格ASTM D 5034方法によって常温で測定した引張強度が220kgf/inchまたは220〜350kgf/inchであってもよく、好ましくは230kgf/inchまたは230〜300kgf/inch程度の範囲であってもよい。前記引張強度の場合、既存のエアバッグ要求物性の側面において220kgf/inch以上であることが好ましく、現実的に物性発現の側面において350kgf/inch以下であることが好ましい。
前記エアバッグ用布は、米国材料試験協会規格ASTM D 5034方法によって常温で測定した切断伸度が20%以上または20%〜60%であってもよく、好ましくは28%以上または28%〜50%程度の範囲であってもよい。前記切断伸度の場合、既存のエアバッグ要求物性の側面において20%以上であることが好ましく、現実的に物性発現の側面において60%以下であることが好ましい。
また、エアバッグ用コーティング布は、高温−高圧のガスによって急速に膨張するために優れた引裂強度水準が要求されるが、前記エアバッグ用コーティング布の破裂強度を示す引裂強度を米国材料試験協会規格ASTM D 2261方法によって常温で測定したとき、22kgf以上または22〜60kgf、好ましくは25kgf以上または25〜55kgfとなってもよい。ここで、コーティング布の引裂強度が前記下限値、すなわち、常温で22kgf未満である場合には、エアバッグの展開時にエアバッグの破裂が発生することにより、エアバッグ機能に大きな危険を招来することがある。
本発明に係るエアバッグ用布は、ASTM D 1776方法によって測定した経糸方向および緯糸方向の布収縮率がそれぞれ4.0%以下、好ましくは2.0%以下であってもよい。ここで、布の形態安定性の側面においては、経糸方向および緯糸方向の布収縮率が1.0%を超えないことが最も好ましい。
前記布は、米国材料試験協会規格ASTM D 737方法によって常温で測定した空気透過度が10.0cfm以下、または0〜10.0cfm、または0.5〜10.0cfmであってもよい。特に、エアバッグ用布の空気透過度は、布にゴム成分コーティング層を含むことによって著しく低めることができ、ほぼ0cfmに近い値の空気透過度を確保することもできる。本発明のコーティング布の空気透過度は1.4cfm以下、または0〜1.4cfmであってもよい。ただし、このようなゴム成分コーティングを実行しない場合、本発明の非コーティング布は、米国材料試験協会規格ASTM D 737方法によって常温で測定した空気透過度が10.0cfm以下または0〜10.0cfm、好ましくは3.5cfm以下または0〜3.5cfmであってもよい。このとき、このような本発明の非コーティング布で空気透過度が10.0cfm、より好ましくは3.5cfmを超える場合、またはコーティング布で空気透過度が1.4cfmを超える場合には、エアバッグ用布の気密性を維持する側面においては好ましくないこともある。
また、本発明のエアバッグ用布は、米国材料試験協会規格ASTM D 4032方法によって常温で測定した剛軟度が0.2kgf以上または0.2〜1.2kgf、好ましくは0.5kgf以上または0.5〜1.0kgfであってもよい。特に、530デニール以上である場合は1.2kgf以下であってもよく、460デニール未満の場合は0.8kgf以下の範囲を有してもよい。
本発明の布は、エアバッグ用として使用するためには前記剛軟度範囲を維持することが好ましく、剛軟度が0.2kgf未満と極めて低い場合には、エアバッグ膨張展開時に十分な保護支持機能が行われないこともあり、車両装着時にも形態維持性能が低下して収納性が低下することがある。また、非常に硬い状態となって折り畳み難くなることによって収納性が低下することを防ぎ、布の変色現象を防ぐためには、前記剛軟度は1.2kgf以下が好ましく、特に460デニール未満である場合には0.8kgf以下が好ましく、530デニール以上である場合にも1.2kgf以下であることが好ましい。
また、本発明のさらに他の実施形態により、ポリエステル原糸を用いたエアバッグ用布の製造方法が提供される。本発明のエアバッグ用布製造方法は、前記ポリエステル原糸を使用してエアバッグ用生地を製織する段階、前記製織されたエアバッグ用生地を精錬する段階、および前記精練された布をテンタリングする段階を含む。
本発明において、前記ポリエステル原糸は、通常の製織方法、精練、およびテンタリング工程を経て最終的なエアバッグ用布として製造されてもよい。このとき、布の製織形態は特定の形態に限定されることはなく、平織タイプとOPW(One Piece Woven)タイプの製織形態すべてが好ましい。
特に、本発明のエアバッグ用布は、前記ポリエステル原糸を緯糸および経糸として利用し、ビーミング(beaming)、製織、精練、およびテンタリング工程を経て製造されてもよい。前記布は通常の製織機を使用して製造されてもよく、ある特定の織機を使用することに限定されることはない。ただし、平織形態の布は、レピア織機(Rapier Loom)やエアージェット織機(Air Jet Loom)、またはウォータジェット織機(Water Jet Loom)などを使用して製造されてもよく、OPW形態の布はジャカード織機(Jacquard Loom)を使用して製造されてもよい。
また、本発明のエアバッグ用布は、表面にコーティングまたはラミネートされたシリコン樹脂、ポリビニルクロライド樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリウレタン樹脂などの1種以上からなるコーティング層をさらに含むことが好ましいが、コーティング樹脂の種類はこのように言及された物質のみに限定されることはない。前記樹脂コーティング層は、ナイフコート法、ドクターブレード法、または噴霧コーティング法によって適用されてもよいが、これもこのように言及された方法のみに限定されることはない。
前記樹脂コーティング層の単位面積糖コーティング量は20〜200g/m、好ましくは20〜100g/mとなるように用いられてもよい。特に、OPW(One Piece Woven)タイプのサイドカーテンエアバッグ用布の場合においては、前記コーティング量が30g/m〜95g/mが好ましく、エアバッグ用平織布の場合は、前記コーティング量が20g/m〜50g/m水準が好ましい。
このようにコーティングされたエアバッグ用布は、裁断と縫製工程を経ながら一定の形態を有するエアバッグクッション形態として製造される。前記エアバッグは特別な形態に限定されることはなく、一般的な形態に製造されてもよい。
一方、本発明のさらに他の実施形態により、前記のエアバッグを含むエアバッグシステムが提供される。前記エアバッグシステムは、関連業者に周知の通常の装置を備えてもよい。前記エアバッグは、フロンタルエアバッグ(Frontal Airbag)とサイドカーテンエアバッグ(Side Curtain Airbag)に大別されてもよい。前記フロンタル用エアバッグには運転席用、助手席用、側面保護用、膝保護用、足首保護用、歩行者保護用エアバッグなどがあり、サイドカーテンタイプエアバッグは自動車の側面衝突や転覆事故時に乗客を保護するようになる。したがって、本発明のエアバッグは、フロンタル用エアバッグとサイドカーテンエアバッグをすべて含む。
本発明において、上述した内容以外の事項は必要に応じて加減が可能であるため、本発明では特に限定しない。
本発明によれば、所定の範囲で初期モジュラスおよび伸び率などが最適化され、優れた機械的物性と共に、気密性および空気遮断効果が優れたエアバッグ用布を製造することができるエアバッグ用ポリエステル原糸が提供される。
このようなエアバッグ用ポリエステル原糸は、高強力、高伸率、および高収縮によって最適化した物性を示すことにより、エアバッグ用布に使用されるときに優れた形態安定性、機械的物性、空気遮断効果が得られるだけでなく、これと同時に優れたフォールディング性および柔軟性を確保することができ、自動車装着時に収納性を著しく改善すると同時に、乗客に加えられる衝撃を最小化して搭乗者を安全に保護することができる。
したがって、本発明のポリエステル原糸およびこれを利用したポリエステル布は、車両用エアバッグ製造などに極めて好ましく用いることができる。
以下、本発明の理解のために好ましい実施例を提示するが、下記実施例は本発明を例示するだけであり、本発明の範囲が下記実施例に限定されることはない。
実施例1〜5
下記表1に示すように、所定の固有粘度およびCEG含有量を有するPET重合体を溶融紡糸して延伸する段階を経てエアバッグ用ポリエステル原糸を製造した。
前記PET重合体は、283〜295℃の温度で溶融して紡糸口金を通じて溶融ポリエステルを吐出し、前記吐出された溶融ポリエステルをフード−ヒータおよび断熱板で構成された遅延冷却区間に通過させて遅延急冷(delayed quenching)した。
前記遅延急冷されたポリエステル繊維に、ロール形態の油剤付与装置を利用して油剤を付与した。このとき、前記油剤の量は、原糸100重量部に対して0.8重量部であり、使用された油剤はエチレンオキシド/プロピレンオキシド付加ジオールエステル(30重量部)、エチレンオキシド付加ジオールエステル(15重量部)、グリセリルトリエステル(10重量部)、トリメチルプロパントリエステル(10重量部)、および少量の帯電防止剤を混合した紡糸油剤を用いた。
前記油剤が付与された原糸を前−集束器に通過させ、ゴデットローラを利用して延伸した。
前記延伸後にセカンド集束器(2nd Interlacer)を利用して前記延伸されたポリエステル原糸にインターミングルを付与した後、巻取機で巻き取ってポリエステル原糸を製造した。
このとき、PET重合体の固有粘度と分子内CEG含有量、溶融紡糸工程時の紡糸速度および紡糸張力、紡糸温度条件、延伸比、熱処理温度、および弛緩率は下記表1に示すとおりであり、残りの条件はポリエステル原糸製造のための通常の条件に従った。
Figure 0005486094

前記実施例1〜5によって製造されたポリエステル原糸に対して次の方法によって物性を測定し、測定された物性は下記表2に整理した。
1)結晶化度
ポリエステル原糸の密度ρはn−ヘプタンと四塩化炭素を利用した密度勾配管法によって25℃で測定し、結晶化度は下記計算式1によって計算した。
Figure 0005486094
……(計算式1)
前記式において、ρは原糸の密度、ρは結晶の密度(PETの場合は1.457g/cm)、およびρは非結晶の密度(PETの場合は1.336g/cm)である。
2)固有粘度
四塩化炭素を利用して試料から油剤を抽出し、160±2℃でOCP(Ortho Chloro Phenol)に溶かした後、25℃の条件で自動粘度測定器(Skyvis−4000)を利用して粘度管での試料粘度を測定し、下記計算式2によってポリエステル原糸の固有粘性度(intrinsic viscosity:IV)を求めた。
Figure 0005486094
……(計算式2)
3)CEG含有量
ポリエステル原糸のカルボキシル末端基(CEG:Carboxyl End Group)は、ASTM D 664およびD4094の規定により、試料0.2gを50mLの三角フラスコに入れた後にベンジルアルコール20mLを加え、ホットプレート(hot plate)を利用して180℃まで上げて5分間に渡って維持させて試料を完全に溶解した後、160℃に冷却させ、135℃が到達するときにフェノールフタレン5〜6滴を加えて0.02N KOHで滴定し、無色からピンク色に変わる滴定点で下記計算式3によってCEG含有量(COOH million equiv./試料kg)を計算した。
[数3]
CEG=(A−B)×20×1/W ……(計算式3)
前記式において、Aは試料の滴定に消費されたKOHの量(mL)であり、Bは供試料の滴定に消費されたKOHの量(mL)であり、Wは試料の重量(g)である。
4)初期モジュラス
米国材料試験協会規格ASTM D 885の方法により、引張試験時に得られる応力−変形度グラフの弾性区間の傾きから弾性係数を算出して初期モジュラスを測定した。
5)引張強度および切断伸度
ポリエステル原糸の引張強度および切断伸度を万能材料試験器(Instron)を用いて測定し、試料長は250mmであり、引張速度は300mm/minとし、初期ロッドは0.05g/dに設定した。
6)乾熱収縮率
英国テストライト(Testrite)社のTestrite MK−V装備を用いて18.0℃の温度および総張力(30g)で乾熱収縮率を2分間に渡って測定した。
7)靱性値
下記計算式4によって靱性(Toughness、10−1g/d)値を計算した。
Figure 0005486094
……(計算式4)
8)単糸繊度
単糸繊度は、糸枠を利用して原糸を9000mだけ取ってその重量を測り、原糸の総繊度(Denier)を求めた後、フィラメント数で分る方法によって測定した。
9)伸び率
前記引張強度および切断伸度測定方法と同じ方法によって測定し、S−Sカーブ(Curve)で各荷重(Load)に該当する伸度値を確認した。
Figure 0005486094
比較例1〜5
下記表3に記載された条件を除いては、実施例1〜5と同じ方法によって比較例1〜5のポリエステル原糸を製造した。
Figure 0005486094
前記比較例1〜5によって製造されたポリエステル原糸の物性を下記表4に整理した。
Figure 0005486094
製造例1〜5
実施例1〜5によって製造されたポリエステル原糸を用いてレピア織機によってエアバッグ用布生地を製織し、精練およびテンタリング工程を経てエアバッグ用布を製造し、前記布にポリビニルクロライド(PVC)樹脂をナイフコーティング(knife over roll coating)方法によってコーティングし、PVCコーティングされた布を製造した。
このとき、布の経糸および緯糸製織密度、製織形態、樹脂コーティング量は下記表5に示すとおりであり、残りの条件はエアバッグ用ポリエステル布製造のための通常の条件に従った。
Figure 0005486094

前記実施例1〜5によって製造されたポリエステル原糸を用いて製造されたそれぞれのエアバッグ用ポリエステル布に対して次の方法によって物性を測定し、測定された物性は下記表6に整理した。
(a)引張強度および切断伸度
エアバッグ布から試片を裁断して米国材料試験協会規格ASTM D 5034による引張強度測定装置の下部クランプに固定させ、上部クランプを上に移動させながらエアバッグ布試片が破断するときの強度および伸度を測定した。
(b)引裂強度
米国材料試験協会規格ASTM D 2261によってエアバッグ用布の引裂強度を測定した。
(c)経糸および緯糸方向布収縮率
米国材料試験協会規格ASTM D 1776によって経/緯糸方向の布収縮率を測定した。まず、OPW用エアバッグ布から試片を裁断した後、経糸および緯糸方向に収縮前の長さである20cmずつを表示し、149℃で1時間に渡ってチャンバで熱処理した試片の収縮した長さを測定し、経糸方向および緯糸方向の布収縮率{(収縮前の長さ−収縮後の長さ)/収縮前の長さ×10.0%}を測定した。
(d)剛軟度
米国材料試験協会規格ASTM D 4032によって剛軟度測定装置を利用してサーキュラバンド法(Circular Bend)法によって布の剛軟度を測定した。また、剛軟度測定法としてケンティレバー法を適用してもよく、布にベンディングを与えるために一定角度の傾斜を与えた試験台であるケンティレバー測定機器を利用した布ベンディング長さ測定によって剛軟度を測定してもよい。
(e)硬度
米国材料試験協会規格ASTM D 1777によってエアバッグ用布の硬度を測定した。
(f)空気透過度
米国材料試験協会規格ASTM D 737によってエアバッグ用布を20℃、65%RH下で1日以上放置した後、125Paの圧力の空気が38cmの円形断面を通過する量を測定した。
Figure 0005486094
比較製造例1〜5
比較例1〜5によって製造されたポリエステル原糸を用いたことを除いては、それぞれ製造例1〜5と同じ方法によってエアバッグ用ポリエステル布を製造して物性を測定し、下記表7に整理した。
Figure 0005486094
前記表6に示すように、伸び率および初期モジュラスなどが最適化した実施例1〜5のポリエステル原糸から製造された製造例1〜5のエアバッグ用布は、引張強度が235〜249kgf/inchであり、引裂強度が23〜40kgfであり、布収縮率が経糸方向および緯糸方向にそれぞれ0.6%〜0.8%および0.5%〜0.7%と極めて優れた特性を有することが分かる。これと同時に、前記製造例1〜5のエアバッグ用ポリエステル布は、剛軟度が0.52〜0.75kgfと最適範囲を示すことにより、優れた形態安定性、機械的物性と共に優れたフォールディング性、収納性を有することを確認することができる。
特に、製造例1〜5のエアバッグ用布は、高強力かつ高折伸の高収縮原糸を用い、コーティング布の空気透過度が1.0cfm以下と優れた気密性結果が得られことが分かる。
この反面、前記表7に示すように、比較例1〜5のポリエステル原糸を用いた比較製造例1〜5のエアバッグ用布は、このような特性を充足できないことが確認された。特に、比較製造例1〜5のエアバッグ用布は、経糸方向および緯糸方向への布収縮率は類似した程度で得られたが、引張強度が220〜228kgf/inchであり、引裂強度が10〜16kgfと著しく低下することが分かる。このように、引張強度および引裂強度などが著しく低下する布がエアバッグ装置に用いられる場合、エアバッグ展開時にエアバッグが破裂するなどの機械的物性の低下による問題が発生することがある。
また、比較製造例1〜5に係るコーティング布の空気透過度が1.7〜2.1cfmと大きく増加して気密性が低下することが分かり、このように空気透過度が増加した場合には、エアバッグ展開時にエアが容易に抜け出し、エアバッグの役割を果たすことができないという問題が発生することがある。

Claims (26)

  1. 常温で測定されたポリエステル原糸の1.0g/d応力で伸び率が0.4%以下であり、4.0g/d応力で伸び率が4.0%以下であり、7.0g/dの応力で伸び率が7.0%以下であり、
    前記ポリエステル原糸の初期モジュラスが105〜130g/dである、エアバッグ用ポリエステル原糸。
  2. 固有粘度が0.8dl/g以上である、請求項1に記載のエアバッグ用ポリエステル原糸。
  3. カルボキシル末端基含有量が50meq/kg以下である、請求項1に記載のエアバッグ用ポリエステル原糸。
  4. 結晶化度が40%〜55%である、請求項1に記載のエアバッグ用ポリエステル原糸。
  5. 引張強度が7.5g/d以上であり、切断伸度が13%以上である、請求項1に記載のエアバッグ用ポリエステル原糸。
  6. 乾熱収縮率が5.0%以上であり、靱性値が25×10−1g/d以上である、請求項1に記載のエアバッグ用ポリエステル原糸。
  7. 前記原糸は単糸繊度が0.5〜20デニールである、請求項1に記載のエアバッグ用ポリエステル原糸。
  8. 前記原糸は総繊度が200〜1,000デニールである、請求項1に記載のエアバッグ用ポリエステル原糸。
  9. 前記原糸のフィラメント数が50〜240である、請求項1に記載のエアバッグ用ポリエステル原糸。
  10. 固有粘度が0.85dl/g以上であるポリエステル重合体を270〜305℃で溶融紡糸してポリエステル未延伸糸を製造する段階、および
    前記ポリエステル未延伸糸を延伸する段階
    を含む、請求項1〜9のうちのいずれか一項に記載のエアバッグ用ポリエステル原糸の製造方法。
  11. 前記ポリエステル重合体は、ポリエチレンテレフタレートを70モル%以上含む、請求項10に記載のエアバッグ用ポリエステル原糸。
  12. 前記ポリエステル重合体と原糸の固有粘度差が0.5dl/g以下である、請求項10に記載のポリエステル原糸の製造方法。
  13. 前記ポリエステル重合体のカルボキシル末端基含有量が30meq/kg以下である、請求項10に記載のポリエステル原糸の製造方法。
  14. 前記ポリエステル重合体と原糸のカルボキシル末端基含有量の差が20meq/kg以下である、請求項10に記載のポリエステル原糸の製造方法。
  15. 前記紡糸工程を300m/min〜1,000m/minの紡糸速度下で実行する、請求項10に記載のエアバッグ用ポリエステル原糸の製造方法。
  16. 前記延伸工程を総延伸比5.0〜6.5となるように実行する、請求項10に記載のエアバッグ用ポリエステル原糸の製造方法。
  17. 前記未延伸糸をオイルピックアップ量0.2%〜2.0%の条件下でゴデットローラを通過させた後に延伸工程を実行する、請求項10に記載のエアバッグ用ポリエステル原糸の製造方法。
  18. 前記未延伸糸を延伸した後に170〜225℃温度下で熱固定工程を追加で含む、請求項10に記載のエアバッグ用ポリエステル原糸の製造方法。
  19. 前記未延伸糸を延伸した後に弛緩率1%〜7%の弛緩工程を追加で含む、請求項10に記載のエアバッグ用ポリエステル原糸の製造方法。
  20. 前記未延伸糸を延伸した後に巻取速度2,000〜4,000m/minの巻取工程を追加で含む、請求項10に記載のエアバッグ用ポリエステル原糸の製造方法。
  21. 請求項1〜9のうちのいずれか一項に記載のポリエステル原糸を含むエアバッグ用ポリエステル布。
  22. 前記布は、米国材料試験協会規格ASTM D 5034方法によって測定した引張強度が220kgf/inch以上である、請求項21に記載のエアバッグ用ポリエステル布。
  23. 前記布は、米国材料試験協会規格ASTM D 2261方法によって測定した引裂強度が22kgf以上である、請求項21に記載のエアバッグ用ポリエステル布。
  24. 前記布は、米国材料試験協会規格ASTM D 1776方法によって測定した経糸方向および緯糸方向の布収縮率がそれぞれ4.0%以下である、請求項21に記載のエアバッグ用ポリエステル布。
  25. 前記布は、米国材料試験協会規格ASTM D 4032方法によって測定した剛軟度が0.2kgf以上である、請求項21に記載のエアバッグ用ポリエステル布。
  26. 前記布は、米国材料試験協会規格ASTM D 737方法によって測定した空気透過度が10.0cfm以下である、請求項21に記載のエアバッグ用ポリエステル布。
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