以下に述べる本実施例のMRI装置が備える自動鑑別ユニットは、先ず、選択的な非造影MRI撮影によって血管系単位で収集された撮影領域の時系列的なボリュームデータに基づいて血管領域を検出し、次いで、前記ボリュームデータのボクセルの中から所定の閾値より小さなボクセル値を有するボクセル及び前記血管領域のボクセルを除くことにより腫瘍候補領域を検出する。そして、腫瘍候補領域を構成するボクセルの中から所定値以上のTIC(Time Intensity Curve)勾配を呈するボクセルを抽出して腫瘍領域を検出し、得られた腫瘍領域の形状及びボクセル値分布に基づいて腫瘍の鑑別を行なう。
尚、以下の説明では、被検体の肝臓領域に対する非造影MRI撮影により時系列的に収集されたボリュームデータに基づいて当該被検体の肝臓内に発生した腫瘍の鑑別を行なう場合について述べるが、鑑別診断の対象臓器は肝臓に限定されない。又、Time-SLIP(Time-Spatial Labeling Inversion Pulse)法とTrue SSFP(Steady-State Free Precession)法を組み合わせることにより所望の血管系が強調されたボリュームデータを時系列的に収集することが可能な非造影MRI撮影(非造影MRA)について述べるが他のパルスシーケンスを用いた非造影MRI撮影であっても構わない。
(装置の構成)
本発明の第1の実施例におけるMRI装置の構成と機能につき図1乃至図13を用いて説明する。但し、図1は、当該MRI装置の全体構成を示すブロック図であり、図7は、このMRI装置が備える自動鑑別ユニットの具体的な構成を示すブロック図である。
即ち、図1のMRI装置100は、被検体150に対して磁場を発生する静磁場発生部1及び傾斜磁場発生部2と、被検体150に対してRFパルスを照射しこの被検体150が発生するMR信号を検出する送受信部3と、被検体150の肝臓領域に対する非造影MRI撮影によって収集されたMR信号(MRデータ)を再構成処理してボリュームデータを生成するボリュームデータ生成部4と、このボリュームデータをレンダリング処理して3次元画像データを生成する画像データ生成部5と、各種血管系において時系列的に収集された前記ボリュームデータを解析することにより被検体150の肝臓内に発生した腫瘍の鑑別を行なう自動鑑別ユニット6と、画像データ生成部5において生成された3次元画像データや自動鑑別ユニット6において得られた腫瘍の鑑別結果等を表示する表示部7を備えている。
更に、MRI装置100は、被検体150を載置する天板40と、この天板40を被検体150の体軸方向(z軸方向)へ移動させる天板移動機構部50と、パルスシーケンスを含むMR信号収集条件の設定、撮影領域及び反転パルス照射領域の設定、鑑別結果表示条件の設定等を行なう入力部8と、MRI装置100が有する上述の各ユニットを制御する制御部9を備えている。
静磁場発生部1は、常伝導磁石あるいは超電導磁石によって構成される主磁石11と、この主磁石11に電流を供給する静磁場電源12を備え、図示しないガントリ中央部の撮影野に配置された被検体150に対し強力な静磁場を形成する。尚、主磁石11は、永久磁石によって構成されていてもよい。
一方、傾斜磁場発生部2は、被検体150の体軸方向(図1のz軸方向)とこの体軸方向に直交するx軸方向及びy軸方向に対して傾斜磁場を形成する傾斜磁場コイル21と、傾斜磁場コイル21の各々に対してパルス電流を供給する傾斜磁場電源22を備えている。
傾斜磁場コイル21及び傾斜磁場電源22は、被検体150が置かれたガントリ中央部の撮影野に対して位置情報を付加する。即ち、傾斜磁場電源22は、制御部9から供給されるシーケンス制御信号に基づいてx軸方向,y軸方向及びz軸方向の傾斜磁場コイル21に供給するパルス電流を制御することにより各々の方向に対して傾斜磁場を形成する。そして、x軸方向,y軸方向及びz軸方向の傾斜磁場は合成されて互いに直交するスライス選択傾斜磁場、位相エンコード傾斜磁場及び周波数エンコード(読み出し)傾斜磁場が任意の方向に形成され、これらの傾斜磁場は、主磁石11によって形成された静磁場に重畳されて被検体150に印加される。
次に、送受信部3は、被検体150に対してRFパルスを照射すると共に被検体150から発生したMR信号を検出する送受信コイル31と、送受信コイル31に接続された送信部32及び受信部33を備えている。但し、送受信コイル31は、送信専用コイルと受信専用コイルによって構成されていても構わない。
送信部32は、位置決め用画像データの収集を目的としたパイロット撮影モード及び診断用画像データの収集を目的とした本撮影モードにおいて送受信コイル31に対してパルス電流を供給する機能を有し、図示しない基準信号発生器、変調器及び電力増幅器等を有している。前記基準信号発生器は、主磁石11の静磁場強度によって決定される磁気共鳴周波数(ラーモア周波数)と同じ周波数を有した基準信号を発生し、前記変調器は、この基準信号を所定の選択励起波形で変調してパルス電流を生成する。
そして、得られたパルス電流は、前記電力増幅器を介して送受信コイル31へ供給され、被検体150に対しRFパルスが照射される。特に、Time-SLIP法とTrue SSFP法を組み合わせたパルスシーケンスによる本実施例の非造影MRI撮影では、1つのボリュームデータの収集に際し、180度のフリップ角を有した2つの反転パルス(インバージョンパルス)、90度パルス及び複数の180度パルスが送受信コイル31に対し所定の順序で供給される。
一方、受信部33は、前記RFパルスが照射された被検体150において発生し送受信コイル31によって検出されたMR信号に対して中間周波変換、位相検波、低周波増幅、フィルタリング、A/D変換等の信号処理を行なう。
次に、上述のTime-SLIP法とTrue SSFP法を組み合わせることにより所望の血管系が強調されたボリュームデータを時系列的に収集することが可能な本実施例の非造影MRI撮影につき図2乃至図4を用いて説明する。尚、図2は、MR信号の収集に先立ち、被検体150に対して設定された撮影領域を含む広範囲な3次元領域に対し非選択的な第1の反転パルスを照射し、前記撮影領域に隣接して設定された反転パルス照射領域に対し選択的な第2の反転パルスが照射される当該非造影MRI撮影のパルスシーケンスを示しており、図3は、上述の第1の反転パルス及び第2の反転パルスが照射された肝臓組織の原子核スピンが有する縦磁化の時間的変化を示している。又、図4は、上述の第1の反転パルス及び第2の反転パルスの照射により非造影での観測が可能となる血管領域及び腫瘍領域の血流情報を模式的に示している。
尚、以下では、説明を簡単にするために、非選択的な第1の反転パルスのみが照射され腫瘍の鑑別に必要なボリュームデータが収集される領域を撮影領域と呼び、前記第1の反転パルス及び選択的な第2の反転パルスが微小時間差で照射される領域を反転パルス照射領域と呼ぶ。
図2において、図2(a)は、被検体150の肝臓領域に対して照射されるRFパルス、図2(b)乃至図2(d)は、前記肝臓領域に対して印加されるスライス選択傾斜磁場(Gs)、位相エンコード傾斜磁場(Ge)及び周波数エンコード(読み出し)傾斜磁場(Gr)、図2(e)は、前記RFパルスの照射により被検体150の肝臓領域から発生するMR信号を夫々示している。
図2に示した非造影MRI撮影のパルスシーケンスでは、先ず、時刻t1において180度のフリップ角を有する反転パルスPI1(第1の反転パルス)が被検体150の撮影領域を含む広範囲な3次元領域に対して照射され、次いで、時刻t1に後続する時刻t2において同様のフリップ角を有する反転パルスPI2(第2の反転パルス)が前記撮影領域に隣接して設定された反転パルス照射領域に対して照射される。そして、反転パルスPI1の照射時刻t1から所定時間TIだけ経過した時刻t3において90度パルスが照射され、True SSFP法のパルスシーケンスに基づくMR信号の収集が開始される。
図3は、反転パルスPI1のみが照射された撮影領域の原子核スピンが有する縦磁化の時間的変化(図3(b)の実線)と上述の反転パルスPI1及び反転パルスPI2が照射された反転パルス照射領域の原子核スピンが有する縦磁化の時間的変化(図3(b)の破線)を示しており、時刻t1における反転パルスPI1の照射により正の縦磁化(Mo)から負の縦磁化(−Mo)へ180度反転した反転パルス照射領域及び撮影領域の縦磁化は肝臓組織が有する所定の緩和時間に従って元の縦磁化(Mo)へ戻ろうとする。このような回復過程の時刻t2において反転パルスPI2が反転パルス照射領域に対し選択的に照射された場合、反転パルス照射領域の縦磁化−M2は反転パルスPI2により強制的に正の縦磁化M2へ戻される。但し、この場合、時刻t1と時刻t2の時間差は極めて小さいため、反転パルス照射領域の縦磁化M2は縦磁化Moと略等しい値となる。
そして、例えば、図3(b)の実線で示した撮影領域の縦磁化がMoに対して極めて小さなM1となる時刻t3においてTrue SSFP法のパルスシーケンスが開始されることにより、反転パルス照射領域の組織や血液からは縦磁化M2の大きさに比例した高感度のMR信号が収集され、撮影領域からは縦磁化M1の大きさに比例した低感度のMR信号が収集される。
次に、反転パルスPI1及び反転パルスPI2を用いたTime-SLIP法の適用によって得られる血流情報につき図4を用いて説明する。ここでは、門脈系腫瘍及び門脈に対して非造影MRI撮影を行なう場合について述べるが、肝動脈系腫瘍及び肝動脈あるいは肝静脈系腫瘍及びこの肝静脈系腫瘍に近接した肝静脈に対する非造影MRI撮影も同様の方法によって行なうことが可能である。
図4は、例えば、被検体150の非造影MRI撮影に先行して行われるパイロット撮影において収集された位置決め用画像データの観察化で門脈系腫瘍及びこの門脈系腫瘍に近接する門脈を基準として設定された撮影領域Raとこの撮影領域Raに隣接し前記門脈の上流部が含まれるように設定された反転パルス照射領域Rbを示している。
このような撮影領域Ra及び反転パルス照射領域Rbに対する時刻t1の反転パルスPI1と反転パルス照射領域Rbに対する時刻t2の反転パルスPI2が照射された後、時刻t1からTI経過した時刻t3においてTrue SSFP法のパルスシーケンスによるMR信号の収集が開始された場合、原子核スピンの縦磁化が著しく減少している撮影領域Raの肝臓組織Ra1からは低感度のMR信号が収集される。
一方、時刻t2における反転パルスPI2の照射により比較的大きな縦磁化を有する反転パルス照射領域Rbの門脈内血液は、時刻t3において図4の斜線で示す門脈領域Ra2及び門脈系腫瘍領域Ra3に到達するため、これらの領域からは高感度のMR信号を収集することができる。即ち、上述の方法によれば、反転パルスPI1及び反転パルスPI2の照射から所定時間経過した後にTrue SSFP法による高速MRI撮影を行なうことにより、撮影領域Raの門脈や門脈系腫瘍における血流情報を高感度で抽出することが可能となる。
同様にして、上述の位置決め用画像データの観察下で肝動脈系腫瘍及び肝静脈系腫瘍を基準として撮影領域を設定し、更に、これらの腫瘍に近接した肝動脈及び肝静脈の上流部に対し反転パルス照射領域を設定することにより、各々の血管系における血流情報を分離して抽出することができる。
次に、図1のボリュームデータ生成部4は、図5に示すようにMRデータ記憶部41、高速演算処理部42、補間処理部43及びボリュームデータ記憶部44を備え、MRデータ記憶部41には、スライス選択傾斜磁場及び位相エンコード傾斜磁場を順次更新することにより被検体150の3次元領域から時系列的に収集された各種血管系のMR信号がMRデータとして保存される。
一方、高速演算処理部42は、MRデータ記憶部41から読み出した3次元k空間(周波数空間)のMRデータに対し2次元フーリエ変換あるいは3次元フーリエ変換による再構成処理を行なって実空間の3次元データを生成し、補間処理部43は、高速演算処理部42によって生成された時系列的な3次元データのボクセルを必要に応じて補間処理し等方的なボクセルで構成されたボリュームデータを生成する。そして、各種血管系において得られた時系列的なボリュームデータは、撮影領域(図4参照)の位置情報を付帯情報としてボリュームデータ記憶部44に保存される。
例えば、被検体150の肝臓領域に対しTime-SLIP法とTrue SSFP法を組み合わせた非造影MRI撮影を行なって門脈及び門脈系腫瘍、肝動脈及び肝動脈系腫瘍、肝静脈及び肝静脈系腫瘍の描出を夫々独立させて行なう場合、ボリュームデータ生成部4は、門脈系の描出を目的とする非造影MRI撮影(非造影門脈系撮影)によって収集されたMR信号に基づくボリュームデータ(門脈系ボリュームデータ)、肝動脈系の描出を目的とする非造影MRI撮影(非造影肝動脈系撮影)によって収集されたMR信号に基づくボリュームデータ(肝動脈系ボリュームデータ)、更には、肝静脈系の描出を目的とする非造影MRI撮影(非造影肝静系撮影)によって収集されたMR信号に基づくボリュームデータ(肝静脈系ボリュームデータ)を順次生成する。そして、得られたこれらのボリュームデータを各々の非造影MRI撮影において設定された撮影領域の位置情報と共に自己のボリュームデータ記憶部44に保存する。
次に、図1の画像データ生成部5は、ボリュームレンダリング画像データを3次元画像データとして生成する機能を有し、例えば、図6に示すようにボリュームデータ補正部51、不透明度・色調設定部52、レンダリング処理部53及び画像データ記憶部54を備えている。
ボリュームデータ補正部51は、ボリュームデータ生成部4のボリュームデータ記憶部44から読み出した門脈系ボリュームデータ、肝動脈系ボリュームデータ及び肝静脈系ボリュームデータのボクセル値を予め設定された3次元表示用の視線ベクトルと臓器境界面に対する法線ベクトルとの内積値に基づいて補正し、不透明度・色調設定部52は、補正されたボクセル値に基づいて不透明度や色調を設定する。
一方、レンダリング処理部53は、不透明度・色調設定部52によって設定された不透明度及び色調に基づいて門脈系ボリュームデータ、肝動脈系ボリュームデータ及び肝静脈系ボリュームデータをレンダリング処理して3次元画像データ(門脈系3次元画像データ、肝動脈系3次元画像データ及び肝静脈系3次元画像データ)を生成し、得られたこれらの3次元画像データを画像データ記憶部54に一旦保存した後表示部7へ供給する。
次に、図1に示した自動鑑別ユニット6の具体的な構成につき図7のブロック図を用いて説明する。この自動鑑別ユニット6は、ボリュームデータ生成部4のボリュームデータ記憶部44から血管系単位で供給される時系列的なボリュームデータに対し時相間の位置ずれを補正する位置補正部60と、位置補正部60から供給される位置ずれ補正後の時系列的なボリュームデータに基づいて門脈、肝動脈及び肝静脈の血管領域を設定する血管領域設定部61と、位置補正部60から供給される前記ボリュームデータに基づいてこれらの血管に近接して発生した門脈系腫瘍、肝動脈系腫瘍及び肝静脈系腫瘍の領域を設定する腫瘍領域設定部62を備え、更に、門脈及び肝動脈の血流量を計測することによりこれらの血管に近接して発生した腫瘍やびまん性肝疾患の悪性度を判定する血行動態計測部63と、腫瘍領域設定部62から供給される腫瘍領域の形状及びボクセル値分布や血行動態計測部63から供給される腫瘍の悪生度判定結果に基づいて被検体150の肝臓内に発生した門脈系腫瘍、肝動脈系腫瘍及び肝静脈系腫瘍の鑑別を行なう腫瘍鑑別部64と、腫瘍鑑別部64による腫瘍の鑑別結果や血行動態計測部63による腫瘍やびまん性肝疾患の悪性度判定結果等に基づいて表示データを生成する表示データ生成部65を備えている。
位置補正部60は、図示しない演算処理部とデータ記憶部を備え、前記演算処理部は、先ず、ボリュームデータ生成部4のボリュームデータ記憶部44に保存されている時系列的な門脈系ボリュームデータ、肝動脈系ボリュームデータ及び肝静脈系ボリュームデータとこれらのボリュームデータに付帯情報として付加されている撮影領域の位置情報を読み出す。次いで、これらのボリュームデータに対し上述の撮影領域に対応する(例えば、同一の形状と位置情報を有する)選択領域を設定し、前記選択領域における時系列的なボリュームデータに対し、例えば、ボリュームデータ間のパターンマッチング処理を順次行なうことによりこれらのボリュームデータが有している非造影MRI撮影時の体動等に起因した位置ずれを補正する。そして、位置ずれ補正後のボリュームデータは前記データ記憶部に保存される。
血管領域設定部61は、位置ずれ補正後のボリュームデータに基づいて門脈、肝動脈及び肝静脈の血管領域を検出する機能を有し、図7に示すように基準ボリュームデータ選択部611、芯線設定部612及び血管領域検出部613を供えている。
基準ボリュームデータ選択部611は、位置補正部60から供給される前記選択領域の時系列的なボリュームデータの中からボクセル値が最大あるいはボクセル値の変化率が最大となるボリュームデータを基準ボリュームデータとして選択する。
例えば、Time-SLIP法とTrue SSFP法を組み合わせた非造影門脈系撮影により撮影領域内の門脈に血流情報が出現してから消失するまでの期間に収集された時系列的な門脈系ボリュームデータのボクセル値を計測し、ボクセル値が最大あるいはボクセル値の変化率が最大となる時相の門脈系ボリュームデータを基準門脈系ボリュームデータとして選択する。この場合、各時相の門脈系ボリュームデータにおけるボクセル値は門脈内の血液から得られるMR信号の大きさに対応しており、従って、上述の方法によれば、門脈内を流れる血流量あるいはその変化率が最も大きな時相において収集された門脈系ボリュームデータが選択される。
更に、同様の手順により、非造影肝動脈系撮影によって収集され位置ずれ補正された前記選択領域の時系列的な肝動脈系ボリュームデータの中から基準肝動脈系ボリュームデータを選択し、非造影肝静脈系撮影によって収集され位置ずれ補正された前記選択領域の時系列的な肝静脈系ボリュームデータの中から基準肝静脈系ボリュームデータを選択する。
芯線設定部612は、表示部7に表示された3次元画像データ(門脈系3次元画像データ、肝動脈系3次元画像データ及び肝静脈系3次元画像データ)の観察下で入力部8が位置補正部60から供給される各種ボリュームデータの門脈、肝動脈及び肝静脈に対して設定した始点を出発点とし、同様にして入力部8が設定した終点までの血管芯線を設定する。
血管芯線の設定については既に種々の方法が提案されており、例えば、画像データ生成部5によって生成され表示部7に表示された門脈系3次元画像データの門脈、肝動脈系3次元画像データの肝動脈及び肝静脈系3次元画像データの肝静脈に対し入力部8が設定した始点を基準として3次元の全角度方向に複数の単位ベクトルを発生させ、これらの単位ベクトルの中から探索ベクトルとして選定した血管の内壁までの距離が最大となる方向の単位ベクトルに直交する血管断面の重心位置を算出する。
次いで、上述の探索ベクトルと血管断面との交差位置が前記重心位置と一致するようにその方向が補正された探索ベクトルを前記重心位置において新たに設定し、補正後の探索ベクトルを用いて上述の手順を繰り返すことにより得られた血管走行方向における複数の重心位置に基づいて門脈、肝動脈及び肝静脈の芯線を設定する。尚、上述の芯線設定は、基準ボリュームデータ選択部611において選択されたボリュームデータの中から所定範囲のボクセル値を有するボクセルを抽出し、これらのボクセルによって構成されたボリュームデータに対して上述の始点及び終点を設定することにより行なわれる。
図8は、3次元配列された複数のボクセルによって構成されるボリュームデータVaに対して芯線設定部612が設定する血管芯線Caの座標系を示したものであり、血管芯線Caは、ボリュームデータVaにおける座標F1(X1、Y1,Z1)を始点、FQ(XQ,YQ,ZQ)を終点とし血管内腔の横断面における重心Fq(Xq,Yq、Zq)を連結することによって生成される。
図7へ戻って、血管領域設定部61の血管領域検出部613は、芯線設定部612によって設定された血管芯線と直交する全角度方向に対して複数の単位ベクトルを設定し、これらの単位ベクトルの方向においてボクセル値の変化率が最大となる位置を血管壁とすることにより基準ボリュームデータ(基準門脈系ボリュームデータ、基準肝動脈系ボリュームデータ及び基準肝静脈系ボリュームデータ)における血管領域(門脈領域、肝動脈領域及び肝静脈領域)を検出する。
次に、図7に示した自動鑑別ユニット6の腫瘍領域設定部62は、位置補正部60から供給される前記選択領域の時系列的なボリュームデータに基づいて門脈系腫瘍、肝動脈系腫瘍及び肝静脈系腫瘍の腫瘍領域を設定する機能を有し、腫瘍候補領域検出部621、TIC計測部622及び腫瘍領域検出部623を備えている。
腫瘍候補領域検出部621は、位置補正部60から供給される前記選択領域の時系列的なボリュームデータの中から所定の閾値より大きなボクセル値を有するボクセルを抽出する。このとき、比較的大きな還流量を有する腫瘍領域等のボクセルが血管領域のボクセルと共に抽出される。
更に、腫瘍候補領域検出部621は、抽出した上述のボクセルの中から血管領域検出部613によって検出された血管領域のボクセルを除くことにより正常領域やびまん性肝疾患領域の一部を含む腫瘍領域を腫瘍候補領域として検出する。
例えば、Time-SLIP法とTrue SSFP法を組み合わせた非造影門脈撮影により撮影領域内の門脈内に血流情報が出現してから消失するまでの期間内に収集された前記選択領域の時系列的な門脈系ボリュームデータの中から所定閾値より大きなボクセル値を有するボクセルを抽出する。次いで、血管領域検出部613から供給される門脈領域の位置情報に基づき、抽出された上述のボクセルの中から門脈領域のボクセルを除くことにより門脈系腫瘍候補領域を検出する。
更に、上述と同様の手順により、非造影肝動脈撮影において収集された時系列的な肝動脈系ボリュームデータに基づいて肝動脈系腫瘍候補領域を検出し、非造影肝静脈撮影において収集された時系列的な肝静脈系ボリュームデータに基づいて肝静脈系腫瘍候補領域を検出する。
一方、TIC計測部622は、時系列的な門脈系ボリュームデータ、肝動脈系ボリュームデータ及び肝静脈系ボリュームデータの各々に対して腫瘍候補領域検出部621が検出した門脈系腫瘍候補領域、肝動脈系腫瘍候補領域及び肝静脈系腫瘍候補領域のボクセル値の時間的変化をTIC(Time Intensity Curve)として計測する。そして、腫瘍領域検出部623は、例えば、上述の腫瘍候補領域を構成するボクセルの各々において計測されたTICの勾配が所定の閾値より大きな負の値を有するボクセルを抽出し、更に、抽出したボクセルに対しボクセル間の間隙を埋める補間処理や周囲に余白を形成するための余白形成処理等を行なって門脈系腫瘍領域、肝動脈系腫瘍領域及び肝静脈系腫瘍領域を検出する。
図9は、腫瘍候補領域のボクセルに対してTIC計測部622が計測したTICの具体例を示したものであり、腫瘍候補領域Aoは、図9(a)に示すようにボクセルBaを含む領域AaとボクセルBbを含む領域Abを有している。一方、図9(b)は、TIC計測部622が、領域AaのボクセルBaに対して計測したTICaと領域AbのボクセルBbに対して計測したTICbを示しており、TICa及びTICbは血流速度によって決定される時刻Tpにおいて最大値を有する。この場合、腫瘍領域検出部623は、時刻Tpから所定時間経過した時刻ToにおいてTICaの勾配Ca及びTICbの勾配Cbを計測し、予め設定された勾配Cxより小さな負の勾配Caを有するボクセルBaの領域は非腫瘍領域として、又、勾配Cxより大きな負の勾配Cbを有するボクセルBbは腫瘍領域として検出する。
即ち、TIC計測部622は、時系列的なボリュームデータの腫瘍候補領域に含まれている全てのボクセルに対してTICの計測を行ない、腫瘍領域検出部623は、計測されたTICの所定時刻Toにおける勾配と予め設定された勾配Cxとを比較することにより前記ボリュームデータの腫瘍候補領域における腫瘍領域を検出する。
次に、図7の血行動態計測部63は、血流量計測部631と悪性度判定部632を備えている。血流量計測部631は、腫瘍領域設定部62の腫瘍領域検出部623から供給される腫瘍領域の位置情報、血管領域設定部61の血管領域検出部613から供給される血管領域の形状情報及び位置補正部60から供給されるボリュームデータの血流情報に基づいて上述の腫瘍領域に近接した血管を流れる血流量を計測する機能を有している。
即ち、血流量計測部631は、腫瘍領域検出部623によって検出された門脈系腫瘍領域に近接する門脈及び肝動脈系腫瘍領域に近接する肝動脈の形状(血管内径)を血管領域抽出部623から供給される血管領域情報に基づいて計測し、更に、位置補正部60から供給される位置ずれ補正後の時系列的なボリュームデータに基づいて前記門脈及び前記肝動脈の血流速度を計測する。そして、上述の血管内径と血流速度に基づいて門脈血流量及び肝動脈血流量を計測する。
一方、悪性度判定部632は、血流量計測部631によって計測された門脈血流量及び肝動脈血流量に基づいて肝臓内に発生した腫瘍等の局在性肝疾患や肝硬変等のびまん性肝疾患に対する悪性度を判定する。
図10は、悪性度が比較的低い再生結節や異形性小結節を有するびまん性肝疾患及び悪性度が高い肝細胞癌(原発性肝癌)における肝動脈血流量及び門脈血流量の具体例を示したものであり、この図10に示すように、肝疾患の悪性度が増大する程肝動脈血流量は増大し門脈血流量は減少することが一般に知られている。従って、悪性度判定部632は、血流量計測部631が計測した肝動脈血流量及び門脈血流量に基づいて肝疾患の悪性度を判定することができる。
次に、図7の腫瘍鑑別部64は、腫瘍領域検出部623によって検出された腫瘍領域の形状(円形度あるいは凹凸度)やボクセル値分布、更には悪性度判定部632から供給される悪性度判定結果に基づいて門脈系腫瘍、肝動脈系腫瘍及び肝静脈系腫瘍に対する鑑別を行なう。この場合、腫瘍鑑別部64は、腫瘍領域検出部623によって検出された腫瘍領域の形状及びボクセル値分布と自己の記憶回路に予め保管されている肝細胞癌、転移性肝癌、肝血管腫等に対応した形状及びボクセル値分布の標準的な特徴量とを比較し、この比較結果と悪性度判定部632から供給される悪性度の判定結果とに基づいて被検体150の肝臓内に発生した腫瘍の鑑別を行なう。
図11は、early-vascular phase、 late-vascular phase及び post-vascular phaseの時相において収集されたボリュームデータに対し腫瘍領域検出部623が検出した腫瘍領域の形状及びボクセル値分布に基づいて腫瘍鑑別部64が鑑別した肝細胞癌、転移性肝癌及び肝血管腫の具体例を示したものであり、ボクセル値分布は等高線表示法によって示している。この図11に示すように、例えば、early-vascular phase及びlate-vascular phaseにおけるボクセル値分布は肝細胞癌、肝血管腫、転移性肝癌の順に辺縁部近傍において急峻となり、post-vascular phaseの肝細胞癌及び肝血管腫における辺縁部の円形度は転移性肝癌と比較して著しく損なわれる。従って、上述の各時相における腫瘍領域の辺縁形状やボクセル値分布によりこれらの腫瘍に対する鑑別を行なうことができる。
次に、図7の表示データ生成部65は、門脈系ボリュームデータ、肝動脈系ボリュームデータ及び肝静脈系ボリュームデータの各々に基づいて血管領域検出部613が検出した血管領域に上述のボリュームデータに基づいて腫瘍領域検出部623が検出した腫瘍領域を重畳し、更に、腫瘍鑑別部64における腫瘍の鑑別結果や悪性度判定部632における悪性度の判定結果等を付加して表示データを生成する。
図12は、表示データ生成部65により血管系単位で生成された表示データの具体例を示したものであり、例えば、図12(a)に示すように、門脈系腫瘍及び肝静脈系腫瘍としての転移性肝癌と肝動脈系腫瘍としての肝細胞癌が被検体150の肝臓内に存在する場合、表示データ生成部65は、門脈系ボリュームデータに基づいて血管領域検出部613が検出した門脈に腫瘍領域検出部623が検出した門脈系腫瘍(転移性肝癌)を重畳して門脈系データ(図12(b))を生成し、同様にして肝静脈に肝静脈系腫瘍(転移性肝癌)を重畳した肝静脈系データ(図12(c))や肝動脈に肝動脈系腫瘍(肝細胞癌)を重畳した肝動脈系データ(図12(d))を生成する。そして、上述の門脈系データ、肝静脈系データ及び肝動脈系データを所定フォーマットに従って合成あるいは配列することにより表示データを生成する。
但し、表示データ生成部65によって生成される表示データは図12に示したものに限定されるものではなく、種々の表示データが可能である。図13は、表示データ生成部65によって生成される表示データの変形例を示したものであり、この図13に示すように、腫瘍鑑別部64により同一の鑑別結果が得られた腫瘍を血管系に関係なく合成して表示データを生成しても構わない。
即ち、図13では、腫瘍鑑別部64により転移性肝癌とされた門脈系腫瘍と肝静脈系腫瘍が図13(d)において示され、肝細胞癌とされた肝動脈系腫瘍が図13(e)において示される。この場合、表示データ生成部65は、図13(d)に示した転移性肝癌や図13(e)に示した肝細胞癌にこれらの腫瘍に対応する血管を重畳してもよいが、図13(a)乃至図13(c)に示すように各々の血管は腫瘍に対し独立させて示してもよい。
図1へ戻って、MRI装置100の表示部7は、図示しないデータ変換部とモニタを備え、前記データ変換部は、画像データ生成部5において生成された門脈系3次元画像データ、肝動脈系3次元画像データ及び肝静脈系3次元画像データに対しD/A変換やテレビフォーマット変換等の変換処理を行なって前記モニタに表示する。同様にして、前記データ変換部は、自動鑑別ユニット6の表示データ生成部65において生成された、例えば、図12あるいは図13の表示データに対しても上述と同様の変換処理を行なって前記モニタに表示する。
天板40は、図示しない寝台の上面において被検体150の体軸方向(z軸方向)へスライド自在に取り付けられ、この天板40に載置された被検体150をz軸方向へ移動させることによりその撮影対象部位を撮影野の所望位置に設定する。一方、天板移動機構部50は、例えば、前記寝台の端部あるいは下部に取り付けられ、天板40を移動させるための駆動信号を制御部9から供給される天板移動制御信号に基づいて生成する。天板40を被検体150の体軸方向へ順次移動させながらMRI撮影を所定間隔で行なうことにより広範囲なボリュームデータや3次元画像データの収集が可能となる。
次に、入力部8は、操作卓上に表示パネルやスイッチ、キーボード、マウス等の各種入力デバイスを備え、被検体情報の入力、パルスシーケンスを含むMR信号収集条件の設定、撮影モード(即ち、非造影門脈系撮影モード、非造影肝動脈系撮影モード及び非造影肝静脈系撮影モード)の選択、画像データ生成条件及び画像データ表示条件の設定、撮影領域及び反転パルス照射領域の設定、ボクセル値に対する閾値の設定、鑑別結果表示条件の設定、更には、各種コマンド信号の入力等を行なう。
制御部9は、主制御部91、シーケンス制御部92及び天板移動制御部93を備えている。主制御部91は、図示しないCPUと記憶回路を備え、MRI装置100が有する各ユニットを統括して制御する機能を有している。そして、主制御部91の前記記憶回路には、入力部8において入力/設定/選択された被検体情報、撮影モード情報、撮影領域情報、反転パルス照射領域情報、MR信号収集条件等の情報が保存される。一方、主制御部91のCPUは、特に、上述のMR信号収集条件に基づき傾斜磁場コイル21や送受信コイル31に供給するパルス電流の大きさ、極性、供給時間、供給タイミング等を設定してシーケンス制御部92へ供給することにより被検体150に対する非造影門脈系撮影、非造影肝動脈系撮影及び非造影肝静脈系撮影を順次実行させ、更に、これらの撮影によって収集されたボリュームデータに基づいて被検体150の肝臓内に発生した腫瘍等に対する自動鑑別を実行させる。
シーケンス制御部92は、図示しないCPUと記憶回路を備え、主制御部91から供給される上述のMR信号収集条件を前記記憶回路に一旦保存した後、これらの情報に基づいてTime-SLIP法とTrue SSFP法を組み合わせた非造影MRI撮影のシーケンス制御信号を生成し傾斜磁場発生部2の傾斜磁場電源22や送受信部3の送信部32を制御する。一方、天板移動制御部93は、入力部8から主制御部91を介して供給される天板移動指示信号に基づいて天板移動制御信号を生成し天板移動機構部50へ供給する。
(自動鑑別の手順)
次に、本実施例の自動鑑別ユニット6が血管系単位で収集されたボリュームデータに基づいて行なう自動鑑別の手順を図14のフローチャートに沿って説明する。尚、ここでも、非造影MRI撮影によって収集された門脈系ボリュームデータ、肝動脈系ボリュームデータ及び肝静脈系ボリュームデータに基づいて被検体150の肝臓内に発生した腫瘍の鑑別を行なう場合について述べるが、鑑別診断の対象臓器は肝臓に限定されない。
腫瘍の鑑別に先立ち、MRI装置100を操作する医師や検査師等(以下では、操作者と呼ぶ。)は、被検体150に対しTime-SLIP法とTrue SSFP法を組み合わせた非造影MRI撮影を行なって時系列的な門脈系ボリュームデータ、肝動脈系ボリュームデータ及び肝静脈系ボリュームデータを収集し、得られたこれらのボリュームデータは、各々の撮影において設定された撮影領域の位置情報を付帯情報としてボリュームデータ生成部4のボリュームデータ記憶部44に保存する(図14のステップS1)。
ボリュームデータの収集と保存が終了したならば、自動鑑別ユニット6の位置補正部60は、先ず、ボリュームデータ記憶部44に保存されている時系列的な門脈系ボリュームデータ、肝動脈系ボリュームデータ及び肝静脈系ボリュームデータとこれらのボリュームデータに付帯情報として付加されている撮影領域の位置情報を読み出す。次いで、これらのボリュームデータに対し上述の撮影領域に対応する(例えば、同一の形状と位置情報を有する)選択領域を設定し、前記選択領域における時系列的なボリュームデータに対し、例えば、時相の異なるボリュームデータ間のパターンマッチング処理を順次行なうことによりこれらのボリュームデータが有している非造影MRI撮影時の体動等に起因した位置ずれを補正する(図14のステップS2)。
次に、血管領域設定部61の基準ボリュームデータ選択部611は、位置補正部60から供給される前記選択領域の時系列的な門脈系ボリュームデータの中からボクセル値が最大あるいはボクセル値の変化率が最大となる門脈系ボリュームデータを基準門脈系ボリュームデータとして選択する(図14のステップS3)。
次いで、芯線設定部612は、門脈系ボリュームデータの門脈に対して設定された始点から終点までの血管芯線を設定し(図14のステップS4)、血管領域検出部613は、芯線設定部612によって設定された血管芯線と直交する全角度方向に対して複数の単位ベクトルを設定し、これらの単位ベクトルの方向においてボクセル値の変化率が最大となる位置を血管壁とすることにより基準門脈系ボリュームデータにおける門脈領域を検出する(図14のステップS5)。
一方、腫瘍領域設定部62の腫瘍候補領域検出部621は、位置補正部60から供給される前記選択領域の時系列的な門脈系ボリュームデータの中から所定の閾値より大きなボクセル値を有するボクセルを抽出し、得られたボクセルの中から血管領域検出部613によって検出された門脈領域のボクセルを除くことにより非腫瘍領域の一部を含む門脈系腫瘍領域を門脈系腫瘍候補領域として検出する(図14のステップS6)。
次いで、TIC計測部622は、時系列的な門脈系ボリュームデータの各々に対して腫瘍候補領域検出部621が検出した門脈系腫瘍候補領域におけるボクセル値の時間的変化をTIC(Time Intensity Curve)として計測する(図14のステップS7)。そして、腫瘍領域検出部623は、門脈系腫瘍候補領域を構成するボクセルの各々において計測されたTICの勾配が所定の閾値より大きな負の値を有するボクセルを抽出し、更に、抽出したボクセルに対しボクセル間の間隙を埋める補間処理や周囲に余白を形成するための余白形成処理等を行なって門脈系腫瘍領域を検出する(図14のステップS8)。
次に、自動鑑別ユニット6の腫瘍鑑別部64は、腫瘍領域検出部623によって検出された門脈系腫瘍領域の形状(円形度あるいは凹凸度)及びボクセル値分布と自己の記憶回路に予め保管されていた肝細胞癌、転移性肝癌、肝血管腫等に対応した形状及びボクセル値分布の標準的な特徴量とを比較し、この比較結果に基づいて被検体150の肝臓内に発生した門脈系腫瘍の鑑別を行なう(図14のステップS9)。
門脈系ボリュームデータに基づく門脈系腫瘍の鑑別が終了したならば、位置補正部60から供給される位置ずれ補正後の肝動脈系ボリュームデータ及び肝静脈系ボリュームデータに対して上述のステップS3乃至ステップS9に示した手順を繰り返すことにより肝動脈系腫瘍及び肝静脈系腫瘍の鑑別を行なう(図14のステップS3乃至ステップS9)。
そして、門脈系腫瘍、肝動脈系腫瘍及び肝静脈系腫瘍の鑑別が終了したならば、自動鑑別ユニット6の表示データ生成部65は、門脈系ボリュームデータ、肝動脈系ボリュームデータ及び肝静脈系ボリュームデータの各々に基づいて血管領域検出部613が検出した門脈、肝動脈及び肝静脈に上述のボリュームデータに基づいて腫瘍領域検出部623が検出した門脈系腫瘍、肝動脈系腫瘍及び肝静脈系腫瘍を重畳し、更に、腫瘍鑑別部64による腫瘍の鑑別結果を付加して表示データを生成する。そして、得られた表示データを表示部7のモニタに表示する(図14のステップS10)。
尚、上述のステップS9における各種腫瘍の鑑別は、血行動態計測部63の血流量計測部631によって計測された門脈、肝動脈及び肝静脈の血流量に基づいて悪性度判定部632が判定した肝疾患の悪性度を加味して行なってもよい。
以上述べた本発明の第1の実施例によれば、低侵襲的な非造影MRI撮影によって収集された当該被検体の比較的広範囲なボリュームデータに基づいて腫瘍の自動鑑別を高精度で行なうことが可能となる。このため、例えば、従来困難とされていた肝臓の全領域等を対象とした非侵襲的な鑑別が容易となり、診断精度及び診断効率が大幅に向上するのみならず検査における被検体や操作者の負担を大幅に軽減することができる。
特に、撮影領域に隣接した反転パルス照射領域に対する反転パルスの照射により各種血管系の腫瘍を独立させて観察することが可能となるため、腫瘍の鑑別を高い精度で行なうことができ、開腹手術、経カテーテル治療、ラジオ波焼灼治療等に対する治療方針の決定や治療計画の策定を短時間かつ的確に行なうことが可能となる。
又、腫瘍領域は、所定の閾値より大きなボクセル値を有するボクセルの中から血管領域のボクセルとTIC勾配が所定値以下となる非腫瘍領域のボクセルを除くことによって検出されるため、血管領域に影響されることなく正確な腫瘍領域の検出が可能となり、従って、鑑別精度を向上させることができる。
更に、上述の実施例によれば、腫瘍に対する鑑別は、予め設定された判定基準に基づいて自動的に行なわれるため客観的かつ効率的な鑑別が可能となる。このため、経験の浅い医師(操作者)であっても正確な鑑別診断を行なうことができる。
以上の理由により、従来の肝癌確定診断等において必要とされているスクリーニング検査から確定検査までのフローを非造影MRI撮影において収集された血管系単位のボリュームデータに基づいて行なうことが可能となる。
次に、本発明の第2の実施例について説明する。この第2の実施例における鑑別診断装置は、別途設置されたMRI装置によって予め収集されたボリュームデータを用いて腫瘍領域を検出し、得られた腫瘍領域の形状やボクセル値の分布状態等に基づいて腫瘍の自動鑑別を行なう。
(装置の構成)
本実施例の鑑別診断装置の構成につき図15を用いて説明する。図15は、本実施例における鑑別診断装置の全体構成を示すブロック図であり、この図15において、図7に示した自動鑑別ユニット6の各ユニットと同一の構成及び機能を有するユニットは同一の符号を付加し詳細な説明は省略する。
即ち、本実施例の鑑別診断装置200は、別途設置された図示しないMRI装置によって予め収集されネットワークあるいは大容量の記憶媒体等を介して供給された当該被検体の各種血管系における時系列的なボリュームデータが予め保管されているボリュームデータ保管部70と、ボリュームデータ保管部70から読み出した前記ボリュームデータに基づいて腫瘍の鑑別を行なう自動鑑別ユニット6と、自動鑑別ユニット6において得られた腫瘍の鑑別結果等を表示する表示部7aと、ボクセル値に対する閾値の設定や鑑別結果表示条件の設定等を行なう入力部8aと、鑑別診断装置200が有する上述の各ユニットを統括的に制御するシステム制御部9aを備えている。
ボリュームデータ保管部70には、MRI装置を用いた非造影MRI撮影によって選択的に収集された各種血管系のボリュームデータがこれらのボリュームデータを収集する際に設定された撮影領域の位置情報を付帯情報として予め保管されている。
自動鑑別ユニット6は、既に図7において述べたように、ボリュームデータ保管部70から読み出した時系列的なボリュームデータに対し位置ずれ補正を行なう位置補正部60と、位置補正部60から供給された位置ずれ補正後のボリュームデータに基づいて血管領域を設定する血管領域設定部61と、前記位置ずれ補正後のボリュームデータに基づいてこれらの血管に近接して発生した腫瘍の領域を設定する腫瘍領域設定部62と、血管内の血流量を計測することによりこれらの血管に近接して発生した腫瘍の悪性度を判定する血行動態計測部63と、腫瘍領域設定部62から供給される腫瘍領域の形状及びボクセル値分布と血行動態計測部63から供給される腫瘍の悪生度判定結果に基づいて腫瘍の鑑別を行なう腫瘍鑑別部64と、腫瘍鑑別部64による腫瘍の鑑別結果や血行動態計測部63による肝疾患部の悪性度判定結果に基づいて表示データを生成する表示データ生成部65を備えている。
表示部7aは、図示しないデータ変換部とモニタを備え、前記データ変換部は、自動鑑別ユニット6の表示データ生成部65において生成された表示データに対しD/A変換やテレビフォーマット変換等の変換処理を行なって前記モニタに表示する。一方、システム制御部9aは、鑑別診断装置200が有する上述の各ユニットを統括的に制御し、非造影MRI撮影によって収集された各種血管系のボリュームデータに基づいて当該被検体の体内に発生した腫瘍等に対する自動鑑別を実行させる。
尚、上述の鑑別診断装置200による自動鑑別の手順は、図14に示したステップS2乃至ステップS10と同様であるため説明は省略する。
以上述べた本発明の第2の実施例によれば、低侵襲的な非造影MRI撮影によって収集された当該被検体の比較的広範囲なボリュームデータに基づいて腫瘍の自動鑑別を高精度で行なうことが可能となる。このため、例えば、従来困難とされていた肝臓の全領域等を対象とした非侵襲的な鑑別が容易となり、診断精度及び診断効率が大幅に向上するのみならず検査における被検体や操作者の負担を大幅に軽減することができる。
特に、撮影領域に隣接した反転パルス照射領域に対する反転パルスの照射により収集された各種血管系のボリュームデータを用いることにより、腫瘍を血管系単位で独立させて観察することが可能となるため、腫瘍の鑑別を高い精度で行なうことができ、従って、手術、経カテーテル治療、ラジオ波焼灼治療等に対する治療方針の決定や治療計画の策定を的確に行なうことが可能となる。
又、腫瘍領域は、所定の閾値より大きなボクセル値を有するボクセルの中から血管領域のボクセルとTIC勾配が所定値以下となる非腫瘍領域のボクセルを除くことによって検出されるため、血管領域に影響されることなく正確な腫瘍領域の検出が可能となり、従って、鑑別精度を向上させることができる。
更に、上述の第2の実施例によれば、腫瘍に対する鑑別は、予め設定された判定基準に基づいて自動的に行なわれるため客観的かつ効率的な鑑別が可能となる。このため、経験の浅い医師(操作者)であっても正確な鑑別診断を行なうことができる。
以上の理由により、従来の肝癌確定診断等において必要とされているスクリーニング検査から確定検査までのフローを非造影MRI撮影において収集された血管系単位のボリュームデータに基づいて行なうことが可能となる。
又、上述の実施例によれば、別途設置されたMRI装置からネットワーク等を介して供給された当該被検体のボリュームデータを用いて腫瘍の鑑別を行なうことができるため、操作者は、時間や場所の制約をあまり受けることなく当該被検体に対する鑑別診断を効率よく行なうことができる。
以上、本発明の第1の実施例及び第2の実施例について述べてきたが、本発明は、上述の実施例に限定されるものではなく変形して実施することが可能である。例えば、上述の第1の実施例及び第2の実施例では、被検体150の3次元領域に対する非造影MRI撮影によって収集されたボリュームデータに基づいて肝臓内に発生した腫瘍の鑑別を行なう場合について述べたが、鑑別診断の対象臓器は肝臓に限定されない。
又、2つの反転パルスを用いたTime-SLIP法とTrue SSFP法とを組み合わせることにより所望の血管系が強調されたボリュームデータを時系列的に収集することが可能な非造影MRI撮影について述べたが、1つの選択的な反転パルスを用いたTime-SLIP法を適用した非造影MRI撮影であってもよく、他のパルスシーケンスを用いた非造影MRI撮影であっても構わない。更に、反転パルス照射領域は撮影領域内に設定されてもよく、撮影領域に隣接して設定される反転パルス照射領域あるいは撮影領域内に設定される反転パルス照射領域は1つに限定されない。
更に、上述の第1の実施例では、各種血管系のボリュームデータをレンダリング処理して3次元画像データを生成する場合について述べたが、上述のボリュームデータを用いてMIP(Maximum Intensity Projection)画像データやMPR(Multi-Planar Reconstruction)画像データを生成してもよい。そして、自動鑑別ユニット6の表示データ生成部65は、得られたこれらの画像データに前記ボリュームデータに基づいて検出された血管領域や腫瘍領域、更には、腫瘍の鑑別結果を重畳して表示データを生成してもよい。
又、第1の実施例及び第2の実施例における表示データ生成部65は、各種血管系の血管領域及び腫瘍領域が単独で示された表示データを生成してもよく、全ての血管系における血管領域と腫瘍領域が同時に示された表示データを生成してもよい。
一方、上述の第1の実施例及び第2の実施例では、位置ずれ補正後の時系列的なボリュームデータの中から選択した基準ボリュームデータに基づいて血管領域を検出し、前記時系列的なボリュームデータに基づいて検出した腫瘍領域に前記血管領域を合成して表示データを生成する場合について述べたが、同一時相のボリュームデータに基づいて検出した腫瘍領域と血管領域を合成することにより時系列的な表示データを生成してもよい。この方法によれば、血管領域及び腫瘍領域を動画像として観測することが可能となる。
又、自動鑑別ユニット6の腫瘍候補領域検出部621は、位置補正部60から供給される時系列的なボリュームデータの中から所定の閾値より大きなボクセル値を有するボクセルを抽出し、これらのボクセルの中から同一時相のボリュームデータに基づいて検出された血管領域のボクセルを除くことにより腫瘍候補領域を検出してもよい。
更に、上述の実施例では、非造影MRI撮影時に発生した被検体150の体動等に起因するボリュームデータの位置ずれを自動鑑別ユニット6が備える位置補正部60によって補正する場合について述べたが、非造影MRI撮影時に被検体150の体動を検出し、この検出結果に基づいて傾斜磁場発生部2の傾斜磁場電源22や送受信部3の送信部32を制御することにより体動に起因するボリュームデータの位置ずれを低減してもよい。