JP5482192B2 - シリコンウェハ用洗浄剤 - Google Patents

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Description

本発明は、半導体デバイス製造において、特に微細でアスペクト比の高い回路パターン化されたデバイスの製造歩留まりの向上を目的としたシリコン基板(ウェハ)の洗浄技術に関する。
ネットワークやデジタル家電用の半導体デバイスにおいて、さらなる高性能・高機能化や低消費電力化が要求されている。そのため回路パターンの微細化が進行しており、それに伴い製造歩留まりの低下を引き起こすパーティクルサイズも微小化している。その結果、微小化したパーティクルの除去を目的とした洗浄工程が多用されており、その結果、半導体製造工程全体の3〜4割にまで洗浄工程が占めている。
その一方で、従来行われていたアンモニアの混合洗浄剤による洗浄では、回路パターンの微細化に伴い、その塩基性によるウェハへのダメージが問題となっている。そのため、よりダメージの少ない例えば希フッ酸系洗浄剤への代替が進んでいる。
これにより、洗浄によるウェハへのダメージの問題は改善されたが、半導体デバイスの微細化に伴うパターンのアスペクト比が高くなることによる問題が顕在化している。すなわち洗浄またはリンス後、気液界面がパターンを通過する時にパターンが倒れる現象を引き起こし、歩留まりが大幅に低下することが大きな問題となっている。
このパターン倒れは、ウェハを洗浄液またはリンス液から引き上げるときに生じる。これは、パターンのアスペクト比が高い部分と低い部分との間において、残液高さの差ができ、それによってパターンに作用する毛細管力に差が生じることが原因と言われている。
このため、毛細管力を小さくすれば、残液高さの違いによる毛細管力の差が低減し、パターン倒れが解消すると期待できる。毛細管力の大きさは、以下に示される式で求められるPの絶対値であり、この式からγ、もしくは、cosθを小さくすれば、毛細管力を低減できると期待される。
P=2×γ×cosθ/S(γ:表面張力、θ:接触角、S:パターン寸法)
特許文献1には、γを小さくしてパターン倒れを抑制する手法として気液界面を通過する前に洗浄液を水から2−プロパノールへ置換する技術が開示されている。しかし、この手法では、パターン倒れ防止に有効である一方、γが小さい2−プロパノール等の溶媒は通常の接触角も小さくなり、その結果、cosθが大きくなる傾向にある。そのため、対応できるパターンのアスペクト比が5以下である等、限界があると言われている。
また、特許文献2には、cosθを小さくしてパターン倒れを抑制する手法として、レジストパターンを対象とする技術が開示されている。この手法は接触角を90°付近とすることで、cosθを0に近づけ毛細管力を極限まで下げることによって、パターン倒れを抑制する手法である。
しかし、この開示された技術はレジストパターンを対象としており、レジスト自体を改質するものであり、さらに最終的にレジストと共に除去が可能であるため、乾燥後の処理剤の除去方法を想定する必要がなく、本目的には適用できない。
また、半導体デバイスのパターン倒れを防止する手法として、臨界流体の利用や液体窒素の利用等が提案されている。しかし、いずれも一定の効果があるものの、従来の洗浄プロセスと異なり、密閉系もしくはバッチでの処理が必要であるため、スループットなどコスト上問題があった。
特開2008−198958号公報 特開平5−299336号公報
半導体デバイスの製造時には、シリコンウェハ表面は微細な凹凸パターンを有する面とされる。本発明は、表面に微細な凹凸パターンを有するシリコンウェハの製造方法において、パターン倒れを誘発しやすい洗浄工程を改善するためのシリコンウェハ用洗浄剤を提供することを課題とする。
本発明のシリコンウェハ用洗浄剤は、表面に微細な凹凸パターンを有するシリコンウェハ用の洗浄剤であり、該洗浄剤は少なくとも水系洗浄液と、洗浄過程中に凹凸パターンの少なくとも凹部を撥水化するための撥水性洗浄液とを含み、該撥水性洗浄液は、シリコンウェハのSiと化学的に結合可能な反応性部位と疎水性基を含む撥水性化合物からなるもの、又は、該撥水性洗浄液の総量100質量%に対して0.1質量%以上の該撥水性化合物と、有機溶媒とが混合されて含まれるものとすることで、該撥水性洗浄液により撥水化されたシリコンウェハ表面の凹部に水が保持されたと仮定したときの毛細管力を2.1MN/m以下とせしめるものであることを特徴とする。
本発明の洗浄剤において、各洗浄液はそれぞれ独立に使用され、該洗浄液は少なくとも2種類以上使用される。
また、本発明において、撥水性とは、物品表面の表面エネルギーを低減させて、水やその他の液体と該物品表面との間(界面)で相互作用、例えば、水素結合、分子間力などを低減させる意味である。特に水に対して相互作用を低減させる効果が大きいが、水と水以外の液体の混合液や、水以外の液体に対しても相互作用を低減させる効果を有する。該相互作用の低減により、物品表面に対する液体の接触角を大きくすることができる。
本発明のシリコンウェハ用洗浄剤に含まれる水系洗浄液は、凹凸パターンが形成されたシリコンウェハの洗浄に際して、シリコンウェハ表面を微細な凹凸パターンを有する面とした後に当該面の凹部に供給される。また、撥水性洗浄液の前記シリコンウェハへの供給を経てから前記シリコンウェハへ供給されてもよい。さらには、撥水性洗浄液及び水系洗浄液はシリコンウェハ表面の凹部に当該洗浄液とは異なる洗浄液が保持された状態で該異なる洗浄液を置換しながらシリコンウェハ表面に供されてもよい。
本発明のシリコンウェハ用洗浄剤は、複数の洗浄液からなるもので、凹部の保持された洗浄液を、他の洗浄液で置換しながら用いられるもので、該洗浄剤は、最終的にシリコンウェハ表面から除去される。
本発明のシリコンウェハ用洗浄剤にてシリコンウェハ表面が洗浄されている間に、シリコンウェハ表面の凹部は、前記撥水性洗浄液を一旦保持することになる。この保持によって、凹部は撥水性化合物により撥水化された表面状態となる。
本発明では、前記撥水性化合物をシリコンウェハのSiと化学的に結合可能な反応性部位を含むものとしているので、洗浄剤が凹部から除去されるまで前記撥水化された表面状態をシリコンウェハ表面に保持させることができる。従って、洗浄液が除去されるとき、すなわち、乾燥されるとき、前記凹部表面が前記撥水化された表面状態となっているので、毛細管力が小さくなり、パターン倒れが生じにくくなる。また、前記撥水化された表面状態は、光照射又はシリコンウェハを加熱することによって除去できる。
撥水性洗浄液において、前記撥水性化合物が、該撥水性洗浄液の総量100質量%に対して0.1質量%未満では、前記凹部表面を十分に撥水化された表面状態としにくい。
また、撥水性洗浄液を、シリコンウェハのSiと化学的に結合可能な反応性部位と疎水性基を含む撥水性化合物と、有機溶媒とが混合されて含まれるものとすることにより、短時間で前記凹部表面を十分に撥水化された表面状態としやすくなる。
本発明のシリコンウェハ用洗浄剤は優れたパターン倒れ防止性を示すので、該洗浄剤を用いると、表面に微細な凹凸パターンを有するシリコンウェハの製造方法中の洗浄工程が、スループットが低下することなく改善される。従って、本発明のシリコンウェハ用洗浄剤を用いて行われる表面に微細な凹凸パターンを有するシリコンウェハの製造方法は、生産性が高いものとなる。
本発明の洗浄剤は、今後益々高くなると予想される例えば7以上のアスペクト比を有する凹凸パターンにも対応可能であり、より高密度化された半導体デバイス生産のコストダウンを可能とする。しかも従来の装置から大きな変更がなく対応でき、その結果、各種の半導体デバイスの製造に適用可能なものとなる。
本発明のシリコンウェハ用洗浄剤を用いる表面に微細な凹凸パターンを有するシリコンウェハの好適な洗浄方法は、
シリコンウェハ表面を微細な凹凸パターンを有する面とした後、水系洗浄液を当該面に供し、凹部に水系洗浄液を保持する工程
凹部に保持された水系洗浄液を該水系洗浄液とは異なる洗浄液Aで置換する工程
凹凸パターンの凹部表面を撥水化するための撥水性洗浄液を該凹部に保持する工程
洗浄剤を除去する工程
を有する。
さらに、前記撥水性洗浄液を凹部に保持する工程の後で、凹部に保持された撥水性洗浄液を該撥水性洗浄液とは異なる洗浄液Bに置換してもよい。また、前記異なる洗浄液Bへの置換を経て、該凹部に水系溶液からなる水系洗浄液を保持する工程を行うことがより好ましい。
また、前記洗浄剤を除去する工程は、
凹部に保持された洗浄液を乾燥により凹部より除去する工程、
シリコンウェハ表面を光照射、又はシリコンウェハを加熱する工程
を有する。
また、前記洗浄剤を除去する工程の、凹部に保持された洗浄液を乾燥により凹部より除去する工程とシリコンウェハ表面を光照射、又はシリコンウェハを加熱する工程の間に、凹部に洗浄液Bを供し、該洗浄液Bを乾燥により除去する工程を行ってもよいし、前記洗浄液Bを供した後に該凹部に水系溶液からなる水系洗浄液を保持し、該水系洗浄液を乾燥により除去する工程を行ってもよい。
前記撥水性洗浄液は、シリコンウェハのSiと化学的に結合可能な反応性部位と疎水性基を含む撥水性化合物からなるもの、又は、該撥水性洗浄液の総量100質量%に対して0.1質量%以上の撥水性化合物と有機溶媒とが混合されて含まれるものである。なお、撥水性化合物の含有量を多くすると、前記凹部表面を均質に撥水化された表面状態としにくい傾向があり、また、少なくすると、短時間で前記凹部表面を十分に撥水化された表面状態としにくい傾向がある。このため、該撥水性化合物は、該撥水性洗浄液の総量100質量%に対して0.2〜50質量%が好ましく、特に0.2〜30質量%が好ましい。
シリコンウェハ表面を微細な凹凸パターンを有する面とするパターン形成工程では、まず、該ウェハ表面にレジストを塗布したのち、レジストマスクを介してレジストに露光し、露光されたレジスト、または、露光されなかったレジストをエッチング除去することによって所望の凹凸パターンを有するレジストを作製する。また、レジストにパターンを有するモールドを押し当てることでも、凹凸パターンを有するレジストを得ることができる。次に、ウェハをエッチングする。このとき、レジストパターンの凹の部分が選択的にエッチングされる。最後に、レジストを剥離すると、微細な凹凸パターンを有するシリコンウェハが得られる。
なお、シリコンウェハとしては、自然酸化膜や熱酸化膜や気相合成膜(CVD膜など)などの酸化ケイ素膜が表面に形成したもの、あるいは、上記凹凸パターンを形成したときに、該凹凸パターンの少なくとも一部が酸化ケイ素となるものも含まれる。
また、シリコンおよび/または酸化ケイ素を含む複数の成分から構成されたウェハに対しても、該シリコンおよび/または酸化ケイ素表面を撥水化することができる。該複数の成分から構成されたウェハとしては、シリコンおよび/または自然酸化膜や熱酸化膜や気相合成膜(CVD膜など)などの酸化ケイ素膜が表面に形成したもの、あるいは、凹凸パターンを形成したときに、該凹凸パターンの少なくとも一部がシリコンおよび/または酸化ケイ素となるものも含まれる。
シリコンウェハ表面を微細な凹凸パターンを有する面とした後、水系洗浄液で表面の洗浄を行い、乾燥等により水系洗浄液を除去すると、凹部の幅が小さく、凸部のアスペクト比が大きいと、パターン倒れが生じやすくなる。該凹凸パターンは、図1及び図2に記すように定義される。図1は、表面が微細な凹凸パターン2を有する面とされたシリコンウェハ1を斜視したときの模式図を示し、図2は図1中のa−a’断面の一部を示したものである。凹部の幅5は、図2に示すように凸部3と凸部3の間隔で示され、凸部のアスペクト比は、凸部の高さ6を凸部の幅7で割ったもので表される。洗浄工程でのパターン倒れは、凹部の幅が70nm以下、特には45nm以下、アスペクト比が4以上、特には6以上のときに生じやすくなる。
本発明の好ましい態様では、シリコンウェハ表面を微細な凹凸パターンを有する面とした後、水系洗浄液を当該面に供し、凹部に水系洗浄液を保持する。そして、凹部に保持された水系洗浄液を該水系洗浄液とは異なる洗浄液Aで置換する。該異なる洗浄液Aの好ましい例としては、本発明で特定する撥水性洗浄液、水、有機溶媒、あるいは、それらの混合物、あるいは、それらに酸、アルカリ、界面活性剤のうち少なくとも1種以上が混合されたもの等が挙げられる。また、該異なる洗浄液Aとして該撥水性洗浄液以外を使用したときは、凹部4に該異なる洗浄液Aが保持された状態で、該異なる洗浄液Aを該撥水性洗浄液に置換していくことが好ましい。
また、前記異なる洗浄液Aの好ましい例の一つである有機溶媒の例としては、炭化水素類、エステル類、エーテル類、ケトン類、含ハロゲン溶媒、スルホキシド系溶媒、アルコール類、多価アルコールの誘導体、含窒素化合物溶媒等が挙げられる。
また、前記撥水性化合物は、プロトン性溶媒と反応しやすいため、前記異なる洗浄液Aの好ましい例の一つである有機溶媒は、非プロトン性溶媒が特に好ましい。なお、非プロトン性溶媒は、非プロトン性極性溶媒と非プロトン性非極性溶媒の両方のことである。このような非プロトン性溶媒としては、炭化水素類、エステル類、エーテル類、ケトン類、含ハロゲン溶媒、スルホキシド系溶媒、水酸基を持たない多価アルコールの誘導体、N−H結合を持たない含窒素化合物溶媒が挙げられる。前記炭化水素類の例としては、トルエン、ベンゼン、キシレン、ヘキサン、ヘプタン、オクタンなどがあり、前記エステル類の例としては、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、アセト酢酸エチルなどがあり、前記エーテル類の例としては、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどがあり、前記ケトン類の例としては、アセトン、アセチルアセトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルブチルケトンなどがあり、前記含ハロゲン溶媒の例としては、パーフルオロオクタン、パーフルオロノナン、パーフルオロシクロペンタン、パーフルオロシクロヘキサン、ヘキサフルオロベンゼンなどのパーフルオロカーボン、1、1、1、3、3−ペンタフルオロブタン、オクタフルオロシクロペンタン、2,3−ジハイドロデカフルオロペンタン、ゼオローラH(日本ゼオン製)などのハイドロフルオロカーボン、メチルパーフルオロイソブチルエーテル、メチルパーフルオロブチルエーテル、エチルパーフルオロブチルエーテル、エチルパーフルオロイソブチルエーテル、アサヒクリンAE−3000(旭硝子製)、Novec HFE−7100、Novec HFE−7200、Novec7300、Novec7600(いずれも3M製)などのハイドロフルオロエーテル、テトラクロロメタンなどのクロロカーボン、クロロホルムなどのハイドロクロロカーボン、ジクロロジフルオロメタンなどのクロロフルオロカーボン、1,1−ジクロロ−2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロパン、1,3−ジクロロ−1,1,2,2,3−ペンタフルオロプロパン、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン、1,2−ジクロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンなどのハイドロクロロフルオロカーボン、パーフルオロエーテル、パーフルオロポリエーテルなどがあり、前記スルホキシド系溶媒の例としては、ジメチルスルホキシドなどがあり、前記水酸基を持たない多価アルコール誘導体の例としては、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテートなどがあり、N−H結合を持たない含窒素化合物溶媒の例としては、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、トリエチルアミン、ピリジンなどがある。
図3は、洗浄工程にて凹部4が洗浄液8を保持した状態の模式図を示している。図3の模式図のシリコンウェハは、図1のa−a’断面の一部を示すものである。洗浄工程の際に、撥水性洗浄液が、凹凸パターン2が形成されたシリコンウェハ1に供される。この際、撥水性洗浄液は図3に示したように少なくとも凹部4に保持された状態となり、凹部4が撥水化される。
凹部4に前記撥水性洗浄液が一旦保持された状態から当該洗浄液とは異なる洗浄液への置換を経て、水系洗浄液を供する場合、凹部4に保持された撥水性洗浄液を、撥水性洗浄液とは異なる洗浄液Bと置換する。この異なる洗浄液Bの例としては、水系溶液からなる水系洗浄液、又は、有機溶媒、又は、前記水系洗浄液と有機溶媒の混合物、又は、それらに酸、アルカリ、界面活性剤のうち少なくとも1種以上が混合されたもの等が挙げられ、特に、水系洗浄液、又は、有機溶媒、又は、前記水系洗浄液と有機溶媒の混合物が好ましい。また、この異なる洗浄液Bとして水系洗浄液以外を使用したときは、凹部4に水系洗浄液以外の洗浄液が保持された状態で、該洗浄液を水系洗浄液へと置換していくことが好ましい。
また、前記異なる洗浄液Bの好ましい例の一つである有機溶媒の例としては、炭化水素類、エステル類、エーテル類、ケトン類、含ハロゲン溶媒、スルホキシド系溶媒、アルコール類、多価アルコールの誘導体、含窒素化合物溶媒等が挙げられる。
前記炭化水素類の例としては、トルエン、ベンゼン、キシレン、ヘキサン、ヘプタン、オクタンなどがあり、前記エステル類の例としては、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、アセト酢酸エチルなどがあり、前記エーテル類の例としては、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどがあり、前記ケトン類の例としては、アセトン、アセチルアセトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルブチルケトンなどがあり、前記含ハロゲン溶媒の例としては、パーフルオロオクタン、パーフルオロノナン、パーフルオロシクロペンタン、パーフルオロシクロヘキサン、ヘキサフルオロベンゼンなどのパーフルオロカーボン、1、1、1、3、3−ペンタフルオロブタン、オクタフルオロシクロペンタン、2,3−ジハイドロデカフルオロペンタン、ゼオローラH(日本ゼオン製)などのハイドロフルオロカーボン、メチルパーフルオロイソブチルエーテル、メチルパーフルオロブチルエーテル、エチルパーフルオロブチルエーテル、エチルパーフルオロイソブチルエーテル、アサヒクリンAE−3000(旭硝子製)、Novec HFE−7100、Novec HFE−7200、Novec7300、Novec7600(いずれも3M製)などのハイドロフルオロエーテル、テトラクロロメタンなどのクロロカーボン、クロロホルムなどのハイドロクロロカーボン、ジクロロジフルオロメタンなどのクロロフルオロカーボン、1,1−ジクロロ−2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロパン、1,3−ジクロロ−1,1,2,2,3−ペンタフルオロプロパン、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン、1,2−ジクロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンなどのハイドロクロロフルオロカーボン、パーフルオロエーテル、パーフルオロポリエーテルなどがあり、前記スルホキシド系溶媒の例としては、ジメチルスルホキシドなどがあり、アルコール類の例としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコール、1,3−プロパンジオールなどがあり、前記多価アルコールの誘導体の例としては、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテートなどがあり、含窒素化合物溶媒の例としては、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、ピリジンなどがある。
水系洗浄液の例としては、水、あるいは、水に有機溶媒、酸、アルカリのうち少なくとも1種以上が混合された水を主成分(例えば、水の含有率が50質量%以上)とするものが挙げられる。特に、水系洗浄液に水を用いると、撥水性洗浄液によって撥水化された凹部の表面の該液との接触角θが大きくなって毛細管力Pが小さくなり、さらに乾燥後にウェハ表面に汚れが残リにくくなるので好ましい。
撥水性化合物により撥水化された凹部4に水系洗浄液が保持された場合の模式図を図4に示す。図4の模式図のシリコンウェハは、図1のa−a’断面の一部を示すものである。凹部4の表面は撥水性化合物により撥水化された表面状態10となっている。そして、前記Siと化学的に結合可能なユニットによって、撥水化された表面状態10は、水系洗浄液9が凹部4から除去されるときもシリコンウェハ表面に保持されている。
撥水性洗浄液により撥水化されたシリコンウェハ表面の凹部、すなわち図4に示すような凹部4の表面が撥水性化合物により撥水化された表面状態10となったとき、該凹部に水が保持されたと仮定したときの毛細管力は2.1MN/m以下であることが好ましい。該毛細管力が2.1MN/m以下であれば、パターン倒れが発生し難いため好ましい。また、該毛細管力が小さくなると、パターン倒れは更に発生し難くなるため、該毛細管力は1.5MN/m以下が特に好ましく、1.0MN/m以下がさらに好ましい。さらに、洗浄液との接触角を90°付近に調整して毛細管力を限りなく0.0MN/mに近づけることが理想的である。
また、撥水性洗浄液のシリコンウェハのSiと化学的に結合可能な反応性部位と疎水性基を含む撥水性化合物において、該反応性部位は、シラノール基(Si−OH基)と反応するものが挙げられ、その例として、クロロ基、ブロモ基などのハロゲン基、イソシアネート基、アミノ基、ジアルキルアミノ基、イソチオシアネート基、アジド基、アセトアミド基、シラザン、−N(CH)COCH、−N(CH)COCF、イミダゾール環、オキサゾリジノン環、モルホリン環などのSi−N結合、アルコキシ基、アセトキシ基、トリフルオロアセトキシ基、−OC(CH)=CHCOCH、−OC(CH)=N−Si(CH、−OC(CF)=N−Si(CH、CO−NH−Si(CHなどのSi−O−C結合、アルキルスルホネート基、パーフルオロアルキルスルホネート基などのSi−O−S結合、あるいは、ニトリル基などが挙げられる。また、該疎水性基の例として、炭化水素基を含む1価の有機基やC−F結合を含む1価の有機基が挙げられる。このような撥水性化合物は、前記反応性部位がシリコンウェハの凹凸パターンの酸化ケイ素層のシラノール基と速やかに反応し、撥水性化合物がシロキサン結合を介してシリコンウェハのSiと化学的に結合することによって、ウェハ表面を疎水性基で覆うことができるため、短時間で毛細管力を小さくできる。
さらに、撥水性洗浄液において、シリコンウェハのSiと化学的に結合可能な反応性部位と疎水性基を含む撥水性化合物が、下記一般式[1]、[2]および[3]からなる群から選ばれる少なくとも一つからなることが好ましい。
(RSi(CH4−a−b−c [1]
〔RSi(CH2−dNH3−e [2]
Si(CHY [3]
ここで、R、R、および、Rは、それぞれ、炭素数が1〜18の炭化水素基を含む1価の有機基、または、炭素数が1〜8のパーフルオロアルキル鎖を含む1価の有機基である。また、Xは、クロロ基、イソシアネート基、アルコキシ基、アセトキシ基、トリフルオロアセトキシ基、−OC(CH )=CHCOCH 、アルキルスルホネート基、パーフルオロアルキルスルホネート基、または、ニトリル基を示し、Yは、Siと結合する元素が窒素の1価の有機基を示す。aは1〜3の整数、bおよびcは0〜2の整数であり、aとbとcの合計は1〜3である。さらに、dは0〜2の整数で、eは1〜3の整数である。
また、前記一般式[1]のR、前記一般式[2]のR、および、前記一般式[3]のRは、それぞれ、C2m+1(m=1〜18)、または、C2n+1CHCH(n=1〜8)であることが特に好ましい。
前記一般式[1]で示される撥水性化合物としては、例えば、C1837SiCl、C1021SiCl、C13SiCl、CSiCl、CHSiCl、C1837Si(CH)Cl、C1021Si(CH)Cl、C13Si(CH)Cl、CSi(CH)Cl、(CHSiCl、C1837Si(CHCl、C1021Si(CHCl、C13Si(CHCl、CSi(CHCl、(CHSiCl、(CHSiHClなどのアルキルクロロシラン、あるいは、C17CHCHSiCl、C13CHCHSiCl、CCHCHSiCl、CFCHCHSiCl、C17CHCHSi(CH)Cl、C13CHCHSi(CH)Cl、CCHCHSi(CH)Cl、CFCHCHSi(CH)Cl、C17CHCHSi(CHCl、C13CHCHSi(CHCl、CCHCHSi(CHCl、CFCHCHSi(CHCl、CFCHCHSi(CH)HClのフルオロアルキルクロロシラン、あるいは、前記クロロシランのクロロ基を、イソシアネート基、アルコキシ基、アセトキシ基、トリフルオロアセトキシ基、−OC(CH)=CHCOCH、アルキルスルホネート基、パーフルオロアルキルスルホネート基、あるいは、ニトリル基に置き換えた撥水性化合物を用いることができ、クロロ基やイソシアネート基やアルコキシ基が特に好ましい。
前記一般式[2]で示される撥水性化合物としては、例えば、(CHSiNHSi(CH、CSi(CHNHSi(CH、CSi(CHNHSi(CH、C13Si(CHNHSi(CH13、CSi(CHNHSi(CH、{(CHSi}N、{CSi(CHN、(CHHSiNHSi(CHH、CFCHCHSi(CHNHSi(CHCHCHCF、CCHCHSi(CHNHSi(CHCHCH、C13CHCHSi(CHNHSi(CHCHCH13、C17CHCHSi(CHNHSi(CHCHCH17、{CFCHCHSi(CHNなどを用いることができる。特に、前記一般式[2]のdが2であるジシラザンが好ましい。
さらにまた、前記一般式[3]で示される撥水性化合物としては、例えば、Yが、−NH、−N(CH、−N(C、−NHCOCH、−N、−N=C=S、−N(CH)COCH、−N(CH)COCF、−N=C(CH)OSi(CH、−N=C(CF)OSi(CH、−NHCO−OSi(CH、−NHCO−NH−Si(CH、イミダゾール環、オキサゾリジノン環、モルホリン環である化合物などを用いることができる。
また、撥水性洗浄液中に水があると、撥水性化合物の反応性部位は、加水分解してシラノール基(Si−OH)となる。該反応性部位は、このシラノール基とも反応するため、その結果、撥水性化合物同士が結合して2量体化する。この2量体は、シリコンウェハの酸化ケイ素層のシラノール基との反応性が低いため、シリコンウェハ表面を撥水化するのに要する時間が長くなる。このため、前記撥水性洗浄液の溶媒には、水以外、すなわち、有機溶媒が用いられる。該有機溶媒は、前記撥水性化合物を溶解するものであれば良く、例えば、炭化水素類、エステル類、エーテル類、ケトン類、含ハロゲン溶媒、スルホキシド系溶媒、アルコール類、多価アルコールの誘導体、含窒素化合物溶媒などが好適に使用される。
ただし、前記撥水性化合物は、プロトン性溶媒と反応しやすいため、前記有機溶媒は、非プロトン性溶媒を用いると、短時間で撥水性を発現しやすくなるので特に好ましい。なお、非プロトン性溶媒は、非プロトン性極性溶媒と非プロトン性非極性溶媒の両方のことである。このような非プロトン性溶媒としては、炭化水素類、エステル類、エーテル類、ケトン類、含ハロゲン溶媒、スルホキシド系溶媒、水酸基を持たない多価アルコールの誘導体、N−H結合を持たない含窒素化合物溶媒が挙げられる。前記炭化水素類の例としては、トルエン、ベンゼン、キシレン、ヘキサン、ヘプタン、オクタンなどがあり、前記エステル類の例としては、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、アセト酢酸エチルなどがあり、前記エーテル類の例としては、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどがあり、前記ケトン類の例としては、アセトン、アセチルアセトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルブチルケトンなどがあり、前記含ハロゲン溶媒の例としては、パーフルオロオクタン、パーフルオロノナン、パーフルオロシクロペンタン、パーフルオロシクロヘキサン、ヘキサフルオロベンゼンなどのパーフルオロカーボン、1、1、1、3、3−ペンタフルオロブタン、オクタフルオロシクロペンタン、2,3−ジハイドロデカフルオロペンタン、ゼオローラH(日本ゼオン製)などのハイドロフルオロカーボン、メチルパーフルオロイソブチルエーテル、メチルパーフルオロブチルエーテル、エチルパーフルオロブチルエーテル、エチルパーフルオロイソブチルエーテル、アサヒクリンAE−3000(旭硝子製)、Novec HFE−7100、Novec HFE−7200、Novec7300、Novec7600(いずれも3M製)などのハイドロフルオロエーテル、テトラクロロメタンなどのクロロカーボン、クロロホルムなどのハイドロクロロカーボン、ジクロロジフルオロメタンなどのクロロフルオロカーボン、1,1−ジクロロ−2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロパン、1,3−ジクロロ−1,1,2,2,3−ペンタフルオロプロパン、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン、1,2−ジクロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンなどのハイドロクロロフルオロカーボン、パーフルオロエーテル、パーフルオロポリエーテルなどがあり、前記スルホキシド系溶媒の例としては、ジメチルスルホキシドなどがあり、前記水酸基を持たない多価アルコール誘導体の例としては、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテートなどがあり、N−H結合を持たない含窒素化合物溶媒の例としては、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、トリエチルアミン、ピリジンなどがある。
また、前記有機溶媒に不燃性のものを使うと、撥水性洗浄液が不燃性になる、あるいは、引火点が高くなって、該撥水性洗浄液の危険性が低下するので好ましい。含ハロゲン溶媒は不燃性のものが多く、不燃性含ハロゲン溶媒は不燃性有機溶媒として好適に使用できる。
また、有機溶媒には、微量の水分が存在してもよい。ただし、この水分が溶媒に大量に含まれると、撥水性化合物は該水分によって加水分解して反応性が低下することがある。このため、溶媒中の水分量は低くすることが好ましく、該水分量は、前記撥水性化合物と混合したときに、該撥水性化合物に対して、モル比で1モル倍未満とすることが好ましく、0.5モル倍未満にすることが特に好ましい。
また、撥水性洗浄液には、前記撥水性化合物とウェハ表面の反応を促進させるために、触媒が添加されても良い。このような触媒として、トリフルオロ酢酸、無水トリフルオロ酢酸、ペンタフルオロプロキオン酸、無水ペンタフルオロプロキオン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、無水トリフルオロメタンスルホン酸、硫酸、塩化水素などの水を含まない酸、アンモニア、アルキルアミン、ジアルキルアミンなどの塩基、ピリジン、ジメチルホルムアミドなどの非プロトン性含窒素溶媒、硫化アンモニウム、酢酸カリウム、メチルヒドロキシアミン塩酸塩などの塩、および、スズ、アルミニウム、チタンなどの金属錯体や金属塩が好適に用いられる。特に、触媒効果や清浄度を考慮すると、トリフルオロ酢酸、トリフルオロ酢酸無水物、トリフルオロメタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸無水物、硫酸、塩化水素などの水を含まない酸が好ましい。
触媒の添加量は、前記撥水性化合物の総量100質量%に対して、0.001〜5質量%が好ましい。添加量が少なくなると触媒効果が低下するので好ましくない。また、過剰に多くしても触媒効果は向上せず、逆に、ウェハ表面を侵食したり、不純物としてウェハに残留する懸念もある。このため、前記触媒添加量は、0.001〜5質量%が好ましい。
さらにまた、撥水性洗浄液は、温度を高くすると、より短時間で前記凹部表面を撥水化された表面状態としやすくなる。均質に撥水化された表面状態となりやすい温度は、10〜160℃、特には15〜120℃で保持されることが好ましい。撥水性洗浄液の温度は、凹部4に保持されているときも当該温度に保持することが好ましい。
次に、撥水性化合物により撥水化された凹部4に保持された洗浄液を除去し、さらに洗浄剤を除去する工程が行われる。該工程は、
凹部に保持された洗浄液を乾燥により凹部より除去する工程、
シリコンウェハ表面を光照射、又はシリコンウェハを加熱する工程
を有することが好ましい。
前記凹部から洗浄液が除去されるときに、凹部に保持されている洗浄液は、水系洗浄液が好ましい。この場合、前記撥水性洗浄液を凹部に保持する工程の後で、凹部に保持された撥水性洗浄液と該撥水性洗浄液とは異なる洗浄液Bとの置換を経て該凹部に水系溶液からなる水系洗浄液を保持する工程を行うことが好ましい。なお、前記凹部から洗浄液が除去されるときに、凹部に保持されている洗浄液は、撥水性洗浄液、あるいは、該異なる洗浄液Bでも良い。
前記の洗浄液を凹部より除去する工程では、洗浄液が乾燥により除去される。当該乾燥は、スピン乾燥法、IPA(2−プロパノール)蒸気乾燥、マランゴニ乾燥、加熱乾燥、温風乾燥、真空乾燥などの周知の乾燥方法によって行うことが好ましい。
前記のシリコンウェハ表面を光照射、又はシリコンウェハを加熱する工程では、シリコンウェハ表面の撥水化された表面状態10が除去される。
光照射で前記撥水化された表面状態10を除去する場合、撥水性化合物により撥水化された表面状態10中のSi−C結合、C−C結合、C−F結合を切断することが有効であり、このためには、それらの結合エネルギーである58〜80kcal/mol、83kcal/mol、116kcal/molに相当するエネルギーである350〜450nm、340nm、240nmよりも短い波長を含む紫外線を照射することが好ましい。この光源としては、メタルハライドランプ、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、エキシマランプ、カーボンアークなどが用いられる。紫外線照射強度は、例えば、照度計(ミノルタ製照射強度計UM−10、受光部UM−360〔ピーク感度波長:365nm、測定波長範囲:310〜400nm〕の測定値で100mW/cm以上が好ましく、200mW/cm以上が特に好ましい。なお、照射強度が100mW/cm未満では前記撥水化された表面状態10を除去するのに長時間要するようになる。
また、光照射で前記撥水化された表面状態10を除去する場合、紫外線で前記撥水化された表面状態10の構成成分を分解すると同時に活性酸素を発生させ、該活性酸素によって前記撥水化された表面状態10の構成成分を酸化揮発させると、処理時間が短くなるので特に好ましい。この光源としては、低圧水銀ランプやエキシマランプが用いられる。
シリコンウェハを加熱する場合、400〜700℃、好ましくは、500〜700℃でシリコンウェハの加熱を行う。この加熱時間は、1〜60min、好ましくは10〜30minの保持で行うことが好ましい。また、当該工程では、オゾン暴露、プラズマ照射、コロナ放電などを併用してもよい。
シリコンウェハの表面を微細な凹凸パターンを有する面とすること、凹部に保持された洗浄液を他の洗浄液で置換することは、公知文献等にて記載されているように、既に確立された技術であるので、本発明では、撥水性洗浄液の評価を中心に行った。また、背景技術等で述べた式
P=2×γ×cosθ/S(γ:表面張力、θ:接触角、S:パターン寸法)
から明らかなようにパターン倒れは、洗浄液のシリコンウェハ表面への接触角、すなわち液滴の接触角と、洗浄液の表面張力に大きく依存する。凹凸パターン2の凹部4に保持された洗浄液の場合、液滴の接触角と、パターン倒れと等価なものとして考えてよい毛細管力とは相関性があるので、前記式と撥水化された表面状態10の液滴の接触角の評価から毛細管力を導き出してもよい。なお、実施例において、前記洗浄液として、水系洗浄液の代表的なものである水を用いた。
しかしながら、表面に微細な凹凸パターンを有するシリコンウェハの場合、パターンは非常に微細なため、撥水化された表面状態10自体の撥水性を正確に評価できない。
撥水性評価のための水滴の接触角の評価は、JIS R 3257「基板ガラス表面のぬれ性試験方法」にもあるように、サンプル(基材)表面に数μlの水滴を滴下し、水滴と基材表面のなす角度の測定によりなされる。しかし、パターンを有するシリコンウェハの場合、接触角が非常に大きくなる。これは、Wenzel効果やCassie効果が生じるからで、接触角が基材の表面形状(ラフネス)に影響され、見かけ上の水滴の接触角が増大するためである。
そこで、本発明では撥水性洗浄液を表面が平滑なシリコンウェハに供して、撥水化された表面状態として、該表面状態を表面に微細な凹凸パターン2が形成されたシリコンウェハ1の撥水化された表面状態10とみなし、種々評価を行った。
詳細を下記に述べる。以下では、撥水性洗浄液が供されたシリコンウェハの評価方法、撥水性洗浄液の調製、そして、シリコンウェハに撥水性洗浄液を供した後の評価結果が述べられる。
〔撥水性洗浄液が供されたシリコンウェハの評価方法〕
撥水性洗浄液が供されたシリコンウェハの評価方法として、以下の(1)〜(4)の評価を行った。
(1)撥水性洗浄液により撥水化された表面状態の接触角評価
撥水化されたウェハ表面上に純水約2μlを置き、水滴とウェハ表面とのなす角(接触角)を接触角計(協和界面科学製:CA−X型)で測定した。ここでは撥水化された表面状態の接触角が50〜120°の範囲であったものを合格(表中で○と表記)とした。
(2)毛細管力の評価
下式を用いてPを算出し、毛細管力(Pの絶対値)を求めた。
P=2×γ×cosθ/S
ここで、γは表面張力、θは接触角、Sはパターン寸法を示す。なお、線幅:45nm、アスペクト比:6のパターンでは、ウェハが気液界面を通過するときの洗浄液が水の場合はパターンが倒れやすく、2−プロパノールの場合はパターンが倒れ難い傾向がある。パターン寸法:45nm、ウェハ表面:酸化ケイ素の場合、洗浄液が、2−プロパノール(表面張力:22mN/m、酸化ケイ素との接触角:1°)では毛細管力は0.98MN/mとなる。一方、水銀を除く液体の中で表面張力が最も大きい水(表面張力:72mN/m、酸化ケイ素との接触角:2.5°)では毛細管力は3.2MN/mとなる。そこで、中間の2.1MN/mを目標とし、水が保持されたときの毛細管力が2.1MN/m以下になれば合格(表中で○と表記)とした。
(3)撥水性洗浄液により撥水化された表面状態の除去性
以下の条件でメタルハライドランプのUV光をサンプルに2時間照射した。照射後に水滴の接触角が30°以下となったものを合格(表中で○と表記)とした。
・ランプ:アイグラフィックス製M015−L312(強度:1.5kW)
・照度:下記条件における測定値が128mW/cm
・測定装置:紫外線強度計(ミノルタ製、UM−10)
・受光部:UM−360
(受光波長:310〜400nm、ピーク波長:365nm)
・測定モード:放射照度測定
(4)撥水化された表面状態の除去後のシリコンウェハの表面平滑性評価
原子間力電子顕微鏡(セイコ−電子製:SPI3700、2.5μm四方スキャン)によって表面観察し、中心線平均面粗さ:Ra(nm)を求めた。なお、Raは、JIS B 0601で定義されている中心線平均粗さを測定面に対し適用して三次元に拡張したものであり、「基準面から指定面までの偏差の絶対値を平均した値」として次式で算出した。撥水化された表面状態を除去した後のウェハのRa値が1nm以下であれば、洗浄によってウェハ表面が侵食されていない、および、撥水性洗浄液の残渣がウェハ表面にないとし、合格(表中で○と表記)とした。
Figure 0005482192

ここで、X、X、Y、Yは、それぞれ、X座標、Y座標の測定範囲を示す。Sは、測定面が理想的にフラットであるとした時の面積であり、(X−X)×(Y−Y)の値とした。また、F(X,Y)は、測定点(X,Y)における高さ、Zは、測定面内の平均高さを表す。
実施例1
(1)撥水性洗浄液の調製
撥水性化合物としてトリメチルクロロシラン〔(CHSiCl〕;3g、有機溶媒としてトルエン;97gを混合し、約5min撹拌して、撥水性洗浄液の総量に対する撥水性化合物の濃度(以降「撥水性化合物濃度」と記載する)が3質量%の撥水性洗浄液を得た。
(2)シリコンウェハの洗浄
平滑な熱酸化膜付きシリコンウェハ(表面に厚さ1μmの熱酸化膜層を有するSiウェハ)を1質量%のフッ酸水溶液に2min浸漬し、次いで純水に1min、アセトンに1min浸漬した。
(3)シリコンウェハ表面への撥水性洗浄液による表面処理
上記「(1)撥水性洗浄液の調製」で調製した撥水性洗浄液を50℃に加温し、この洗浄液に30min浸漬させた。その後、シリコンウェハを2−プロパノールに1min浸漬し、次いで、純水に1min浸漬した。最後に、シリコンウェハを純水から取出し、エアーを吹き付けて、表面の純水を除去した。
得られたウェハを上記「撥水性洗浄液が供されたシリコンウェハの評価方法」に記載した要領で評価したところ、表1に示すとおり、表面処理前の初期接触角が10°未満であったものが、表面処理後の接触角は74°となり、撥水性付与効果を示した。また、上記「毛細管力の評価」に記載した式を使って水が保持されたときの毛細管力を計算したところ、毛細管力は0.9MN/mとなり、毛細管力は小さかった。また、UV照射後の接触角は10°未満であり撥水化された表面状態は除去できた。さらに、UV照射後のウェハのRa値は0.5nm未満であり、洗浄時にウェハは侵食されず、さらにUV照射後に撥水性洗浄液の残渣は残らないことが確認できた。
Figure 0005482192
実施例2
撥水性化合物濃度を1質量%とした以外はすべて実施例1と同じとした。評価結果は表1に示すとおり、表面処理後の接触角は68°となり、撥水性付与効果を示した。また、水が保持されたときの毛細管力は1.2MN/mとなり、毛細管力は小さかった。また、UV照射後の接触角は10°未満であり撥水化された表面状態は除去できた。さらに、UV照射後のウェハのRa値は0.5nm未満であり、洗浄時にウェハは侵食されず、さらにUV照射後に撥水性洗浄液の残渣は残らないことが確認できた。
実施例3
撥水性化合物にヘキサメチルジシラザン〔(CHSiNHSi(CH〕を用いた以外はすべて実施例1と同じとした。評価結果は表1に示すとおり、表面処理後の接触角は55°となり、撥水性付与効果を示した。また、水が保持されたときの毛細管力は1.8MN/mとなり、毛細管力は小さかった。また、UV照射後の接触角は10°未満であり撥水化された表面状態は除去できた。さらに、UV照射後のウェハのRa値は0.5nm未満であり、洗浄時にウェハは侵食されず、さらにUV照射後に撥水性洗浄液の残渣は残らないことが確認できた。
実施例4
撥水性化合物に(トリフルオロプロピル)トリクロロシラン〔CFCHCHSiCl〕を用いた以外はすべて実施例1と同じとした。評価結果は表1に示すとおり、表面処理後の接触角は86°となり、優れた撥水性付与効果を示した。また、水が保持されたときの毛細管力は0.2MN/mとなり、毛細管力は小さかった。また、UV照射後の接触角は10°未満であり撥水化された表面状態は除去できた。さらに、UV照射後のウェハのRa値は0.5nm未満であり、洗浄時にウェハは侵食されず、さらにUV照射後に撥水性洗浄液の残渣は残らないことが確認できた。
実施例5
撥水性化合物に(トリフルオロプロピル)メチルジクロロシラン〔CFCHCHSi(CH)Cl〕を用いた以外はすべて実施例1と同じとした。評価結果は表1に示すとおり、表面処理後の接触角は84°となり、優れた撥水性付与効果を示した。また、水が保持されたときの毛細管力は0.3MN/mとなり、毛細管力は小さかった。また、UV照射後の接触角は10°未満であり撥水化された表面状態は除去できた。さらに、UV照射後のウェハのRa値は0.5nm未満であり、洗浄時にウェハは侵食されず、さらにUV照射後に撥水性洗浄液の残渣は残らないことが確認できた。
実施例6
撥水性化合物に(トリフルオロプロピル)ジメチルクロロシラン〔CFCHCHSi(CHCl〕を用いた以外はすべて実施例1と同じとした。評価結果は表1に示すとおり、表面処理後の接触角は70°となり、撥水性付与効果を示した。また、水が保持されたときの毛細管力は1.1MN/mとなり、毛細管力は小さかった。また、UV照射後の接触角は10°未満であり撥水化された表面状態は除去できた。さらに、UV照射後のウェハのRa値は0.5nm未満であり、洗浄時にウェハは侵食されず、さらにUV照射後に撥水性洗浄液の残渣は残らないことが確認できた。
実施例7
撥水性化合物にオクタデシルジメチルクロロシラン〔C1837Si(CHCl〕を用いた以外はすべて実施例1と同じとした。評価結果は表1に示すとおり、表面処理後の接触角は88°となり、優れた撥水性付与効果を示した。また、水が保持されたときの毛細管力は0.1MN/mとなり、毛細管力は小さかった。また、UV照射後の接触角は10°未満であり撥水化された表面状態は除去できた。さらに、UV照射後のウェハのRa値は0.5nm未満であり、洗浄時にウェハは侵食されず、さらにUV照射後に撥水性洗浄液の残渣は残らないことが確認できた。
実施例8
撥水性化合物にトリメチルクロロシラン〔(CHSiCl〕とトリフルオロプロピルジメチルクロロシラン〔CFCHCHSi(CHCl〕を質量比で50:50とし、撥水性化合物の合計濃度を3質量%とした以外はすべて実施例1と同じとした。評価結果は表1に示すとおり、表面処理後の接触角は76°となり、撥水性付与効果を示した。また、水が保持されたときの毛細管力は0.8MN/mとなり、毛細管力は小さかった。また、UV照射後の接触角は10°未満であり撥水化された表面状態は除去できた。さらに、UV照射後のウェハのRa値は0.5nm未満であり、洗浄時にウェハは侵食されず、さらにUV照射後に撥水性洗浄液の残渣は残らないことが確認できた。
実施例9
撥水性洗浄液中の有機溶媒をハイドロフルオロエーテル(3M製HFE−7100)とした以外はすべて実施例1と同じとした。評価結果は表1に示すとおり、表面処理後の接触角は74°となり、撥水性付与効果を示した。また、水が保持されたときの毛細管力は0.9MN/mとなり、毛細管力は小さかった。また、UV照射後の接触角は10°未満であり撥水化された表面状態は除去できた。さらに、UV照射後のウェハのRa値は0.5nm未満であり、洗浄時にウェハは侵食されず、さらにUV照射後に撥水性洗浄液の残渣は残らないことが確認できた。
実施例10
撥水性洗浄液中の有機溶媒を含ハロゲン溶剤(日本ゼオン製ゼオローラH:1,1,2,2,3,3,4−ヘプタフルオロシクロペンタン)とした以外はすべて実施例1と同じとした。評価結果は表1に示すとおり、表面処理後の接触角は78°となり、撥水性付与効果を示した。また、水が保持されたときの毛細管力は0.7MN/mとなり、毛細管力は小さかった。また、UV照射後の接触角は10°未満であり撥水化された表面状態は除去できた。さらに、UV照射後のウェハのRa値は0.5nm未満であり、洗浄時にウェハは侵食されず、さらにUV照射後に撥水性洗浄液の残渣は残らないことが確認できた。
実施例11
撥水性洗浄液中の有機溶媒をcis−1,2−ジクロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(DCTFP)とした以外はすべて実施例1と同じとした。評価結果は表1に示すとおり、表面処理後の接触角は72°となり、撥水性付与効果を示した。また、水が保持されたときの毛細管力は1.0MN/mとなり、毛細管力は小さかった。また、UV照射後の接触角は10°未満であり撥水化された表面状態は除去できた。さらに、UV照射後のウェハのRa値は0.5nm未満であり、洗浄時にウェハは侵食されず、さらにUV照射後に撥水性洗浄液の残渣は残らないことが確認できた。
実施例12
撥水性洗浄液中の有機溶媒を1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(CTFP)とした以外はすべて実施例1と同じとした。評価結果は表1に示すとおり、表面処理後の接触角は74°となり、撥水性付与効果を示した。また、水が保持されたときの毛細管力は0.9MN/mとなり、毛細管力は小さかった。また、UV照射後の接触角は10°未満であり撥水化された表面状態は除去できた。さらに、UV照射後のウェハのRa値は0.5nm未満であり、洗浄時にウェハは侵食されず、さらにUV照射後に撥水性洗浄液の残渣は残らないことが確認できた。
実施例13
上記「(3)シリコンウェハ表面への撥水性洗浄液による表面処理」でシリコンウェハを撥水性洗浄液に浸漬した後、2−プロパノールに1min浸漬し、最後にシリコンウェハを2−プロパノールから取出し、エアーを吹き付けて、表面の2−プロパノールを除去して撥水化された表面状態のウェハを得た以外はすべて実施例9と同じとした。評価結果は表1に示すとおり、表面処理後の接触角は72°となり、撥水性付与効果を示した。また、水が保持されたときの毛細管力は1.0MN/mとなり、毛細管力は小さかった。また、UV照射後の接触角は10°未満であり撥水化された表面状態は除去できた。さらに、UV照射後のウェハのRa値は0.5nm未満であり、洗浄時にウェハは侵食されず、さらにUV照射後に撥水性洗浄液の残渣は残らないことが確認できた。
実施例14
撥水性洗浄液中の有機溶媒をDCTFPとした以外はすべて実施例13と同じとした。評価結果は表1に示すとおり、表面処理後の接触角は70°となり、撥水性付与効果を示した。また、水が保持されたときの毛細管力は1.1MN/mとなり、毛細管力は小さかった。また、UV照射後の接触角は10°未満であり撥水化された表面状態は除去できた。さらに、UV照射後のウェハのRa値は0.5nm未満であり、洗浄時にウェハは侵食されず、さらにUV照射後に撥水性洗浄液の残渣は残らないことが確認できた。
実施例15
上記「(3)シリコンウェハ表面への撥水性洗浄液による表面処理」でシリコンウェハを撥水性洗浄液に浸漬した後、純水に1min浸漬し、最後にシリコンウェハを純水から取出し、エアーを吹き付けて、撥水化された表面状態のウェハを得た以外はすべて実施例9と同じとした。評価結果は表1に示すとおり、表面処理後の接触角は74°となり、撥水性付与効果を示した。また、水が保持されたときの毛細管力は0.9MN/mとなり、毛細管力は小さかった。また、UV照射後の接触角は10°未満であり撥水化された表面状態は除去できた。さらに、UV照射後のウェハのRa値は0.5nm未満であり、洗浄時にウェハは侵食されず、さらにUV照射後に撥水性洗浄液の残渣は残らないことが確認できた。
実施例16
撥水性洗浄液中の有機溶媒をDCTFPとした以外はすべて実施例15と同じとした。評価結果は表1に示すとおり、表面処理後の接触角は72°となり、撥水性付与効果を示した。また、水が保持されたときの毛細管力は1.0MN/mとなり、毛細管力は小さかった。また、UV照射後の接触角は10°未満であり撥水化された表面状態は除去できた。さらに、UV照射後のウェハのRa値は0.5nm未満であり、洗浄時にウェハは侵食されず、さらにUV照射後に撥水性洗浄液の残渣は残らないことが確認できた。
実施例17
上記「(3)シリコンウェハ表面への撥水性洗浄液による表面処理」でシリコンウェハを撥水性洗浄液に浸漬した後、エアーを吹き付けて、表面の撥水性洗浄液を除去した。次いで、2−プロパノールに1min浸漬し、純水に1min浸漬し、最後に、シリコンウェハを純水から取出し、エアーを吹き付けて表面の純水を除去することによって、撥水化された表面状態のウェハを得た以外はすべて実施例11と同じとした。評価結果は表1に示すとおり、表面処理後の接触角は72°となり、撥水性付与効果を示した。また、水が保持されたときの毛細管力は1.0MN/mとなり、毛細管力は小さかった。また、UV照射後の接触角は10°未満であり撥水化された表面状態は除去できた。さらに、UV照射後のウェハのRa値は0.5nm未満であり、洗浄時にウェハは侵食されず、さらにUV照射後に撥水性洗浄液の残渣は残らないことが確認できた。
実施例18
上記「(3)シリコンウェハ表面への撥水性洗浄液による表面処理」でシリコンウェハを撥水性洗浄液に浸漬した後、エアーを吹き付けて、表面の撥水性洗浄液を除去した。次いで、2−プロパノールに1min浸漬し、最後に、シリコンウェハを2−プロパノールから取出し、エアーを吹き付けて表面の2−プロパノールを除去することによって、撥水化された表面状態のウェハを得た以外はすべて実施例11と同じとした。評価結果は表1に示すとおり、表面処理後の接触角は70°となり、撥水性付与効果を示した。また、水が保持されたときの毛細管力は1.1MN/mとなり、毛細管力は小さかった。また、UV照射後の接触角は10°未満であり撥水化された表面状態は除去できた。さらに、UV照射後のウェハのRa値は0.5nm未満であり、洗浄時にウェハは侵食されず、さらにUV照射後に撥水性洗浄液の残渣は残らないことが確認できた。
実施例19
上記「(3)シリコンウェハ表面への撥水性洗浄液による表面処理」でシリコンウェハを撥水性洗浄液に浸漬した後、エアーを吹き付けて、表面の撥水性洗浄液を除去した。次いで、純水に1min浸漬し、最後に、シリコンウェハを純水から取出し、エアーを吹き付けて表面の純水を除去することによって、撥水化された表面状態のウェハを得た以外はすべて実施例11と同じとした。評価結果は表1に示すとおり、表面処理後の接触角は72°となり、撥水性付与効果を示した。また、水が保持されたときの毛細管力は1.0MN/mとなり、毛細管力は小さかった。また、UV照射後の接触角は10°未満であり撥水化された表面状態は除去できた。さらに、UV照射後のウェハのRa値は0.5nm未満であり、洗浄時にウェハは侵食されず、さらにUV照射後に撥水性洗浄液の残渣は残らないことが確認できた。
実施例20
上記「(3)シリコンウェハ表面への撥水性洗浄液による表面処理」でシリコンウェハを撥水性洗浄液から取出した後、エアーを吹き付けて、撥水化された表面状態のウェハを得た以外はすべて実施例9と同じとした。評価結果は表1に示すとおり、表面処理後の接触角は74°となり、撥水性付与効果を示した。また、水が保持されたときの毛細管力は0.9MN/mとなり、毛細管力は小さかった。また、UV照射後の接触角は10°未満であり撥水化された表面状態は除去できた。さらに、UV照射後のウェハのRa値は0.5nm未満であり、洗浄時にウェハは侵食されず、さらにUV照射後に撥水性洗浄液の残渣は残らないことが確認できた。
実施例21
撥水性洗浄液中の有機溶媒をcis−1,2−ジクロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(DCTFP)とした以外はすべて実施例20と同じとした。評価結果は表1に示すとおり、表面処理後の接触角は72°となり、撥水性付与効果を示した。また、水が保持されたときの毛細管力は1.0MN/mとなり、毛細管力は小さかった。また、UV照射後の接触角は10°未満であり撥水化された表面状態は除去できた。さらに、UV照射後のウェハのRa値は0.5nm未満であり、洗浄時にウェハは侵食されず、さらにUV照射後に撥水性洗浄液の残渣は残らないことが確認できた。
実施例22
上記「(2)シリコンウェハの洗浄」でシリコンウェハをフッ酸水溶液に浸漬した後、純水に1min浸漬し、2−プロパノール(iPA)に1min浸漬した以外はすべて実施例1と同じとした。評価結果は表1に示すとおり、表面処理後の接触角は72°となり、撥水性付与効果を示した。また、水が保持されたときの毛細管力は1.0MN/mとなり、毛細管力は小さかった。また、UV照射後の接触角は10°未満であり撥水化された表面状態は除去できた。さらに、UV照射後のウェハのRa値は0.5nm未満であり、洗浄時にウェハは侵食されず、さらにUV照射後に撥水性洗浄液の残渣は残らないことが確認できた。
実施例23
上記「(2)シリコンウェハの洗浄」でシリコンウェハをフッ酸水溶液に浸漬した後、純水に1min浸漬し、2−プロパノール(iPA)に1min浸漬した以外はすべて実施例9と同じとした。評価結果は表1に示すとおり、表面処理後の接触角は72°となり、撥水性付与効果を示した。また、水が保持されたときの毛細管力は1.0MN/mとなり、毛細管力は小さかった。また、UV照射後の接触角は10°未満であり撥水化された表面状態は除去できた。さらに、UV照射後のウェハのRa値は0.5nm未満であり、洗浄時にウェハは侵食されず、さらにUV照射後に撥水性洗浄液の残渣は残らないことが確認できた。
実施例24
上記「(2)シリコンウェハの洗浄」でシリコンウェハをフッ酸水溶液に浸漬した後、純水に1min浸漬し、2−プロパノール(iPA)に1min浸漬した以外はすべて実施例11と同じとした。評価結果は表1に示すとおり、表面処理後の接触角は70°となり、撥水性付与効果を示した。また、水が保持されたときの毛細管力は1.1MN/mとなり、毛細管力は小さかった。また、UV照射後の接触角は10°未満であり撥水化された表面状態は除去できた。さらに、UV照射後のウェハのRa値は0.5nm未満であり、洗浄時にウェハは侵食されず、さらにUV照射後に撥水性洗浄液の残渣は残らないことが確認できた。
実施例25
上記「(2)シリコンウェハの洗浄」でシリコンウェハをフッ酸水溶液に浸漬した後、純水に1min浸漬し、2−プロパノール(iPA)に1min浸漬した以外はすべて実施例13と同じとした。評価結果は表1に示すとおり、表面処理後の接触角は70°となり、撥水性付与効果を示した。また、水が保持されたときの毛細管力は1.1MN/mとなり、毛細管力は小さかった。また、UV照射後の接触角は10°未満であり撥水化された表面状態は除去できた。さらに、UV照射後のウェハのRa値は0.5nm未満であり、洗浄時にウェハは侵食されず、さらにUV照射後に撥水性洗浄液の残渣は残らないことが確認できた。
実施例26
上記「(2)シリコンウェハの洗浄」でシリコンウェハをフッ酸水溶液に浸漬した後、純水に1min浸漬し、2−プロパノール(iPA)に1min浸漬した以外はすべて実施例14と同じとした。評価結果は表1に示すとおり、表面処理後の接触角は70°となり、撥水性付与効果を示した。また、水が保持されたときの毛細管力は1.1MN/mとなり、毛細管力は小さかった。また、UV照射後の接触角は10°未満であり撥水化された表面状態は除去できた。さらに、UV照射後のウェハのRa値は0.5nm未満であり、洗浄時にウェハは侵食されず、さらにUV照射後に撥水性洗浄液の残渣は残らないことが確認できた。
実施例27
上記「(2)シリコンウェハの洗浄」でシリコンウェハをフッ酸水溶液に浸漬した後、純水に1min浸漬し、2−プロパノール(iPA)に1min浸漬した以外はすべて実施例20と同じとした。評価結果は表1に示すとおり、表面処理後の接触角は72°となり、撥水性付与効果を示した。また、水が保持されたときの毛細管力は1.0MN/mとなり、毛細管力は小さかった。また、UV照射後の接触角は10°未満であり撥水化された表面状態は除去できた。さらに、UV照射後のウェハのRa値は0.5nm未満であり、洗浄時にウェハは侵食されず、さらにUV照射後に撥水性洗浄液の残渣は残らないことが確認できた。
実施例28
上記「(2)シリコンウェハの洗浄」でシリコンウェハをフッ酸水溶液に浸漬した後、純水に1min浸漬し、2−プロパノール(iPA)に1min浸漬した以外はすべて実施例21と同じとした。評価結果は表1に示すとおり、表面処理後の接触角は72°となり、撥水性付与効果を示した。また、水が保持されたときの毛細管力は1.0MN/mとなり、毛細管力は小さかった。また、UV照射後の接触角は10°未満であり撥水化された表面状態は除去できた。さらに、UV照射後のウェハのRa値は0.5nm未満であり、洗浄時にウェハは侵食されず、さらにUV照射後に撥水性洗浄液の残渣は残らないことが確認できた。
実施例29
上記「(2)シリコンウェハの洗浄」でシリコンウェハをフッ酸水溶液に浸漬した後、純水に1min浸漬し、2−プロパノール(iPA)に1min浸漬し、トルエンに1min浸漬した以外はすべて実施例1と同じとした。評価結果は表1に示すとおり、表面処理後の接触角は74°となり、撥水性付与効果を示した。また、水が保持されたときの毛細管力は0.9MN/mとなり、毛細管力は小さかった。また、UV照射後の接触角は10°未満であり撥水化された表面状態は除去できた。さらに、UV照射後のウェハのRa値は0.5nm未満であり、洗浄時にウェハは侵食されず、さらにUV照射後に撥水性洗浄液の残渣は残らないことが確認できた。
実施例30
上記「(2)シリコンウェハの洗浄」でシリコンウェハをフッ酸水溶液に浸漬した後、純水に1min浸漬し、2−プロパノール(iPA)に1min浸漬し、ハイドロフルオロエーテル(3M製HFE−7100)に1min浸漬した以外はすべて実施例9と同じとした。評価結果は表1に示すとおり、表面処理後の接触角は74°となり、撥水性付与効果を示した。また、水が保持されたときの毛細管力は0.9MN/mとなり、毛細管力は小さかった。また、UV照射後の接触角は10°未満であり撥水化された表面状態は除去できた。さらに、UV照射後のウェハのRa値は0.5nm未満であり、洗浄時にウェハは侵食されず、さらにUV照射後に撥水性洗浄液の残渣は残らないことが確認できた。
実施例31
上記「(2)シリコンウェハの洗浄」でシリコンウェハをフッ酸水溶液に浸漬した後、純水に1min浸漬した以外はすべて実施例1と同じとした。評価結果は表1に示すとおり、表面処理後の接触角は70°となり、撥水性付与効果を示した。また、水が保持されたときの毛細管力は1.1MN/mとなり、毛細管力は小さかった。また、UV照射後の接触角は10°未満であり撥水化された表面状態は除去できた。さらに、UV照射後のウェハのRa値は0.5nm未満であり、洗浄時にウェハは侵食されず、さらにUV照射後に撥水性洗浄液の残渣は残らないことが確認できた。
実施例32
上記「(2)シリコンウェハの洗浄」でシリコンウェハをフッ酸水溶液に浸漬した後、純水に1min浸漬した以外はすべて実施例9と同じとした。評価結果は表1に示すとおり、表面処理後の接触角は70°となり、撥水性付与効果を示した。また、水が保持されたときの毛細管力は1.1MN/mとなり、毛細管力は小さかった。また、UV照射後の接触角は10°未満であり撥水化された表面状態は除去できた。さらに、UV照射後のウェハのRa値は0.5nm未満であり、洗浄時にウェハは侵食されず、さらにUV照射後に撥水性洗浄液の残渣は残らないことが確認できた。
実施例33
撥水性化合物にエチルジメチルクロロシラン〔CSi(CHCl〕を用いた以外はすべて実施例23と同じとした。評価結果は表1に示すとおり、表面処理後の接触角は76°となり、撥水性付与効果を示した。また、水が保持されたときの毛細管力は0.8MN/mとなり、毛細管力は小さかった。また、UV照射後の接触角は10°未満であり撥水化された表面状態は除去できた。さらに、UV照射後のウェハのRa値は0.5nm未満であり、洗浄時にウェハは侵食されず、さらにUV照射後に撥水性洗浄液の残渣は残らないことが確認できた。
実施例34
撥水性化合物にプロピルジメチルクロロシラン〔CSi(CHCl〕を用いた以外はすべて実施例23と同じとした。評価結果は表1に示すとおり、表面処理後の接触角は80°となり、優れた撥水性付与効果を示した。また、水が保持されたときの毛細管力は0.6MN/mとなり、毛細管力は小さかった。また、UV照射後の接触角は10°未満であり撥水化された表面状態は除去できた。さらに、UV照射後のウェハのRa値は0.5nm未満であり、洗浄時にウェハは侵食されず、さらにUV照射後に撥水性洗浄液の残渣は残らないことが確認できた。
比較例1
シリコンウェハに撥水性洗浄液を供さなかった以外は、実施例1と同じとした。すなわち、本比較例では、撥水化されていない表面状態のウェハを評価した。評価結果は表1に示すとおり、ウェハの接触角は3°と低く、水が保持されたときの毛細管力は3.2MN/mと大きかった。
比較例2
トリメチルクロロシシラン〔(CHSiCl〕;3.0gと2−プロパノール(iPA);94.6gを混合し、次いで、0.1N硝酸水溶液(pH1.0);2.4gを添加し、約24時間室温で撹拌して、撥水性洗浄液を得た以外は、実施例1と同じとした。すなわち、本比較例では、反応性部位が加水分解した撥水性化合物を含む撥水性洗浄液を用いた。評価結果は表1に示すとおり、表面処理後の接触角は20°と低く、水が保持されたときの毛細管力は2.7MN/mと大きかった。
表面が微細な凹凸パターン2を有する面とされたシリコンウェハ1を斜視したときの模式図を示す図である。 図1中のa−a’断面の一部を示したものである。 洗浄工程にて凹部4が洗浄液8を保持した状態の模式図を示している。 撥水化された表面状態の凹部4に水系洗浄液が保持された状態の模式図を示す図である。
1 シリコンウェハ
2 シリコンウェハ表面の微細な凹凸パターン
3 パターンの凸部
4 パターンの凹部
5 凹部の幅
6 凸部の高さ
7 凸部の幅
8 凹部4に保持された洗浄液
9 凹部4に保持された水系洗浄液
10 撥水性化合物により撥水化された表面状態

Claims (7)

  1. 表面に微細な凹凸パターンを有するシリコンウェハ用洗浄剤であり、
    該シリコンウェハ用洗浄剤は、水系洗浄液と、該水系洗浄液による洗浄後に凹凸パターン表面に保持された液体を置換して用いる撥水性洗浄液との組み合わせからなり、
    前記撥水性洗浄液は、凹凸パターンの少なくとも凹部を撥水化するためのものであり
    該撥水性洗浄液は、シリコンウェハのSiと化学的に結合可能な反応性部位と疎水性基を含む撥水性化合物からなるもの、又は、該撥水性洗浄液の総量100質量%に対して0.1質量%以上の該撥水性化合物と、有機溶媒とが混合されものとすることで、該撥水性洗浄液により撥水化されたシリコンウェハ表面の凹部に水が保持されたと仮定したときの毛細管力を2.1MN/m以下とせしめるものであることを特徴とするシリコンウェハ用洗浄剤。
  2. 前記撥水性洗浄液は、前記撥水性化合物と有機溶媒とが混合されて含まれるものであり、該撥水性化合物は、撥水性洗浄液の総量100質量%中に0.2〜50質量%となるように混合されて含まれるものであることを特徴とする請求項1に記載のシリコンウェハ用洗浄剤。
  3. 撥水性洗浄液において、シリコンウェハのSiと化学的に結合可能な反応性部位と疎水性基を含む撥水性化合物が、下記一般式[1]、[2]および[3]からなる群から選ばれる少なくとも一つからなることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のシリコンウェハ用洗浄剤。
    (RSi(CH4−a−b−c [1]
    〔RSi(CH2−dNH3−e [2]
    Si(CHY [3]
    ここで、R、R、および、Rは、それぞれ、炭素数が1〜18の炭化水素基を含む1価の有機基、または、炭素数が1〜8のパーフルオロアルキル鎖を含む1価の有機基である。また、Xは、クロロ基、イソシアネート基、アルコキシ基、アセトキシ基、トリフルオロアセトキシ基、−OC(CH )=CHCOCH 、アルキルスルホネート基、パーフルオロアルキルスルホネート基、または、ニトリル基を示し、Yは、Siと結合する元素が窒素の1価の有機基を示す。aは1〜3の整数、bおよびcは0〜2の整数であり、aとbとcの合計は1〜3である。さらに、dは0〜2の整数で、eは1〜3の整数である。
  4. 前記撥水性化合物に混合される有機溶媒は、非プロトン性溶媒であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のシリコンウェハ用洗浄剤。
  5. 前記撥水性化合物に混合される有機溶媒は、不燃性含ハロゲン溶媒であることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のシリコンウェハ用洗浄剤。
  6. 表面に微細な凹凸パターンを有するシリコンウェハの洗浄において、
    水系洗浄液による洗浄後に凹凸パターン表面に保持された液体を置換して用いる撥水性洗浄液であり、
    該撥水性洗浄液は、凹凸パターンの少なくとも凹部を撥水化するためのものであり、
    該撥水性洗浄液は、シリコンウェハのSiと化学的に結合可能な反応性部位と疎水性基を含む撥水性化合物からなるもの、又は、該撥水性洗浄液の総量100質量%に対して0.1質量%以上の該撥水性化合物と、有機溶媒とが混合されものであることを特徴とするシリコンウェハの洗浄過程中に使用される撥水性洗浄液。
  7. 請求項1乃至請求項5のいずれかに記載のシリコンウェハ用洗浄剤を用いるシリコンウェハ表面の洗浄方法であり、該方法は、水系洗浄液による洗浄後に凹凸パターン表面に保持された液体を撥水性洗浄液に置換して凹凸パターンの少なくとも凹部を撥水化した後に、洗浄液をシリコンウェハ表面から取り除いた後にシリコンウェハ表面を光照射又はシリコンウェハを加熱する工程を有することを特徴とするシリコンウェハ表面の洗浄方法。
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