JP5481868B2 - 溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法、および合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法 - Google Patents

溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法、および合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、優れた表面外観を有し生産性も高い高張力溶融亜鉛めっき鋼板またはこの鋼板に合金化処理が施された高張力合金化溶融亜鉛めっき鋼板(以下、「溶融亜鉛めっき鋼板またはこの鋼板に合金化処理が施された合金化溶融亜鉛めっき鋼板」を総称して「めっき鋼板」という。)の製造方法、およびそのようなめっき鋼板を製造するための溶融亜鉛めっきの前処理方法、さらにこの前処理方法に使用される溶融亜鉛めっき用洗浄液に関する。
近年、家電、建材、及び自動車などの各種機械、装置類では高性能化と同時に軽量化が強く推進されており、適用される鋼板の高強度化技術が数多く開発されてきた。これらの用途では耐食性が重要視されるため、経済性に優れた溶融亜鉛めっき鋼板が用いられている。また、溶融亜鉛めっき後に地鉄とめっき皮膜を反応させた合金化溶融亜鉛めっき鋼板は、その防錆機能あるいは塗装後の性能が良好であるので広く用いられている。
この様な高強度鋼板を使用する場合、鋼板を高強度化すると延性が低下して加工が困難となる。このため、用途拡大に対応して高強度で良好な延性と優れためっき皮膜特性とを兼ね備えためっき鋼板が求められるようになった。
このような延性も高めた高強度鋼板を得るためには、TRIP効果をもたらすことが可能な残留オーステナイト鋼板が一般的に使用されている。この様な鋼板は、通常、鋼板中にSi、Al、Mn等の易酸化性元素の含有量を高めることで残留オーステナイトの含有量を高めることが行われている。
ところが、この様な易酸化性元素の含有量を高めると不めっきが発生しやすくなるという問題がある。不めっきは、外観性を損ね、生産性や歩留まり低下などの問題が発生させる。また、母材をなす鋼板の表面に形成されたSi、Al、Mnの酸化物は、不めっきには至らない場合であってもその上に形成されためっき層との密着性が低くなるため、曲げ加工などを行ったときに容易に母材鋼板とめっき層との界面でめっき剥離が発生し、この部分がめっき割れとなって外観不良をもたらすこともある。
したがって、この様な易酸化性元素の含有量を高めた場合にはめっきの表面外観を改善することが重要な課題となる。なお、以下の説明では、このような不めっきおよびめっき密着性の低下を「めっき不良」と総称する。
ここで、上記の易酸化性元素のうちでも、Siについては、その含有量が0.2質量%以上となるとめっき不良が顕著となる。また、母材鋼板の表層にSiの酸化物が形成されると、溶融亜鉛めっきと母材との合金化が起こりにくくなり、合金化処理の処理温度が高くなったり、処理時間が長くなったりする。これは連続溶融亜鉛めっきラインの設備負荷を増大させ、生産性の低下をもたらす。また、処理温度が高くなるため、残留オーステナイトがセメンタイトとフェライトに分解してしまい、良好な延性を有する鋼板を得ることができなくなるという問題もある。
以上のことから、延性にも優れた高強度めっき鋼板を連続溶融亜鉛めっきラインで製造する場合には、めっきの表面外観や生産性の低下を抑制する必要がある。
かかる問題を解決すべく、酸化性雰囲気中で鋼板を加熱、表面に酸化Feを形成して、その後還元することにより、Siの表面濃化を抑制する技術に係る発明が多数開示されている(例えば特許文献1)。
また、溶融めっき処理の前処理としてプレめっきをする技術も多数開示されており、中でもSiを0.1〜3質量%を含有する鋼板の表面に元素量換算で0.1〜1000mg/mのSを含有し、かつ、アルカリ金属を含有しない化合物を鋼板表面に付着させた後、鋼板の最高到達温度:500℃超で酸化処理を行い、次いで、還元性雰囲気中にて50秒以上の保持時間で還元処理を行う前処理方法が特許文献2に開示されている。
さらに、焼鈍時の水蒸気分圧を調整する発明も多数出願されており、中でも特許文献3では、750℃以上かつ900℃以下の温度域において、Hを1〜60体積%含有し、水分圧PHOと水素分圧PHとが特定の関係に規定された雰囲気で焼鈍することにより、表面外観が良好になることが開示されている。
特許第2587724号公報 特開2007-247018号公報 特開2007-211280号公報
しかしながら、連続溶融めっきラインにて、特許文献1に開示される処理を行うと、ハースロールへSi、Al、Mn酸化物が巻き付き、この巻き付いた酸化物が後段の鋼帯表面に転写することでめっき外観を著しく損ねる問題が発生する。
また、特許文献2に記載されるようなSを含む化合物を用いて前処理を実施すると、Sが鋼板中に固溶するため、加工時にSを基点にして割れが発生する問題がある。さらに、還元中の水素と結合して硫化水素が発生する問題があり、Sを含有する化合物を用いて鋼板を前処理することは、作業性を著しく低下させ、環境上も好ましくない。
さらに、連続溶融亜鉛めっきラインでは、材料特性を改善すべく、350℃〜550℃の低温の温度域で10〜90秒間保持を行う処理(以下「低温保持処理」という。)が行われる場合がある。なお、350℃未満では、焼鈍後の冷却中に低Cのマルテンサイトが生成し、550℃より高いと、ベイナイト変態が起こらずオーステナイトがパーライトに変態することが懸念される。
このような低温保持処理を行う場合について特許文献3に開示される技術を安易に適用すると、本発明者らの検討によれば、表面外観がむしろ低下する場合があることが明らかになった。すなわち、Siなどの易酸化性元素の含有量を高めた鋼では、延性と外観とに優れた高張力めっき鋼板を、低温保持処理の工程を有する連続溶融亜鉛めっきラインによって生産性高く製造することは実現されていないのが現状であった。
そこで、本発明は、TRIP効果や固溶強化が期待されながら、これまでの技術ではめっき不良が発生したり、合金化処理を適切に行うことが困難となったりする問題を有していた0.2質量%以上Siを含有する鋼からなるめっき鋼板について、これらの問題点の発生を抑制しうる手段を提供することを目的とする。
本発明者らは、易酸化性元素としてSiを0.2質量%以上含有する鋼からなり延性に優れ高張力を有するめっき鋼板を連続溶融亜鉛めっきラインで製造し、めっきの表面外観の改善や合金化処理時間の短縮を実現する方法を鋭意検討した結果、以下の知見を得た。
(1)一般式HOOC-(CH2)n-COOHで表されnが8以下であるジカルボン酸、その塩、およびそのジカルボン酸またはそのイオンを水溶液中で形成することが可能な化合物から選ばれる一種または二種以上(以下、これらを「ジカルボン酸類」と総称する。)を含有する洗浄液を鋼帯に接触させる前処理を行うことにより、めっき不良が抑制されるとともに合金化処理時間が短縮される。これは、この前処理によってジカルボン酸のOH基が鋼帯の表層に結合し、この鋼帯の表層に吸着したOH基が高温で分解することにより、鋼帯表層の水蒸気分圧を高くなって、安定した高露点焼鈍が実現されていると推測される。
(2)さらに、低温保持処理を実施可能な連続溶融亜鉛めっきラインで製造する場合には、定温保持処理における露点を焼鈍処理における露点よりも高くすることによっても、めっき不良が抑制されるとともに合金化処理時間が短縮される。低温保持処理における露点を焼鈍処理の露点のように高い温度とすると、高露点での焼鈍処理によってSi、Al、Mn等の酸化物は抑制されるものの、鋼板表面のFeの還元が十分でないことに由来してめっき不良や合金化処理時間の遅延が発生しているものと推測される。
(3)上記(1)または(2)を単独で、またはこれらを組み合わせて実施することにより、表面外観を安定化させ、且つ生産性を向上することが実現される。
以上の知見に基づき得られた本発明は次のとおりである。
(1)Siの含有量が0.2質量%以上である化学組成を有する鋼からなる熱間圧延鋼帯または冷間圧延鋼帯に対して、次の(i)〜(iii)の工程を施し、過時効帯を有する連続溶融めっきラインを用いて、次の(iv)〜(vii)の工程を施すことを特徴とする溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法:
(i)前記熱間圧延鋼帯または冷間圧延鋼帯をアルカリ処理液に接触させるアルカリ処理工程、
(ii)前記アルカリ処理工程が施された熱間圧延鋼帯または冷間圧延鋼帯を、一般式HOOC−(CH−COOHで表されnが8以下であるジカルボン酸およびその塩から選ばれる一種または二種以上を0.01質量%以上含有する溶融亜鉛めっき用洗浄液に接触させる洗浄工程、
(iii)前記洗浄工程が施された熱間圧延鋼帯または冷間圧延鋼帯を乾燥させる乾燥工程
(iv)前記乾燥工程が施された熱間圧延鋼帯または冷間圧延鋼帯を700℃以上900℃以下の温度域で30秒間以上60秒間以下焼鈍する焼鈍処理工程、
(v)前記焼鈍処理工程が施された熱間圧延鋼帯または冷間圧延鋼帯を、3℃/s以上200℃/s以下の冷却速度で350℃以上550℃以下の温度域まで冷却する冷却工程、
(vi)前記冷却工程が施された熱間圧延鋼帯または冷間圧延鋼帯を、350℃以上550℃以下の温度域で10秒間以上90秒間以下保持する保持処理工程、および
(vii)前記保持処理工程が施された熱間圧延鋼帯または冷間圧延鋼帯を、全Al濃度を0.08質量%以上0.5質量%以下に調整した溶融亜鉛めっき浴に浸漬するめっき処理工程、
ここで、
前記焼鈍処理工程から前記保持処理工程における雰囲気中水素濃度は2体積%以上40体積%以下であって、かつ
前記焼鈍処理工程における雰囲気の露点DMと前記保持処理工程における雰囲気の露点DLとは次の関係を満たす:
DL≦−30℃
DM−DL≧10℃
(2)前記洗浄工程に引き続いて、当該洗浄工程後の熱間圧延鋼帯または冷間圧延鋼帯の表面に付着する前記溶融亜鉛めっき用洗浄液を薄膜化する薄膜化工程を備え、前記乾燥工程では、当該薄膜化工程が施された熱間圧延鋼帯または冷間圧延鋼帯の乾燥が当該薄膜化工程終了後30秒以内に行われる上記(1)記載の溶融亜鉛めっき鋼板製造方法。
)上記(または上記(2)に記載される製造方法により製造された溶融亜鉛めっき鋼板に対して450℃以上580℃以下の温度域で合金化処理を行うことを特徴とする合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
本発明によれば、0.2質量%以上Siを含有する鋼からなるめっき鋼板であっても、めっき不良が発生しにくくなり、合金化処理の処理時間を短縮される。したがって、延性に優れ高張力でありながら、外観不良も発生しにくいめっき鋼板を生産性高く得ることが実現される。
実施例における試験No.1の断面観察像を示す図である。 実施例における試験No.3の断面観察像を示す図である。 実施例における試験No.11の断面観察像を示す図である。 実施例における試験No.13の断面観察像を示す図である。
本発明の溶融亜鉛めっき鋼板およびこれに合金化処理を施した合金化溶融亜鉛めっき鋼板(めっき鋼板)ならびにその製造方法、さらにその製造方法に使用される洗浄液について説明する。なお、以下の記載は、発明の趣旨をより良く理解させるためのものであるから、特に指定の無い限り、本発明を限定するものではない。
1.母材をなす鋼板の化学組成
本発明に係るめっき鋼板の母材をなす鋼板(以下、本発明に係るめっき鋼板の母材をなす鋼板を「母材鋼板」と略記する。)の化学組成は、高張力鋼板としての特性を示すことが可能な化学組成を有し、さらに、優れた延性を実現するためにSiの含有量が0.2質量%以上である。以下に母材鋼板の化学組成の好ましい範囲について説明する。なお、以下の説明において、鋼の化学組成を示す%は、特に断りがない限り質量%を意味する。
(1)C:0.05%以上0.3%以下
Cは鋼をフェライト+オーステナイトの2相温度域に加熱した後に冷却する際のオーステナイトを安定化する作用があり、冷却後の母材鋼板に残留オーステナイトを導入するのに必要な元素である。残留オーステナイトを確保するためにCの含有量を0.05%以上とすることが好ましい。また、0.3%以上含有させても母材鋼板が硬化しすぎて延性を損ない加工性が悪くなるうえ、溶接性も損なわれることが懸念されるので、その含有量は0.3%以下とすることが好ましい。より好ましい含有量は0.08%以上0.25%以下である。
(2)Si:0.2%以上3.0%以下
Siは鋼を脱酸し健全な母材鋼板を得るのに有効な元素である。また、2相温度域でのフェライトの体積率を増し、オーステナイトのC濃度を高めて冷却時のオーステナイトを安定化する作用があるので、残留オーステナイトを得るのに有効な元素である。これらの効果を確保するために、Si含有量を0.2%以上とする。より好ましくは0.5%以上である。しかしながら、その含有量が増すにつれて溶融めっき時の母材鋼板の表面でのめっき濡れ性を損なうと共に合金化速度を小さくする作用がある。このため、Si含有量が増すにつれてめっき皮膜の品質や合金化処理の生産性を損なう傾向がある。本発明によればそのようなこのような傾向を抑えられているものの、これらの作用を完全に排除することは困難であるから、Si含有量を3.0%以下とすることが好ましい。
(3)Al:0.001%以上0.5%以下
AlもSiと同様に、鋼を脱酸し健全な母材鋼板を得るのに有効な元素である。また、2相温度域でのフェライトの体積率を増し、オーステナイトのC濃度を高めて冷却時のオーステナイトを安定化する作用があるので、残留オーステナイトを得るのに有効な元素である。これらの効果を確保するために、Al含有量を0.001%以上とすることが好ましい。より好ましくは0.005%以上である。一方、Alを1%以上添加してもその効果は飽和する。また、Alは低い方がめっき表層の外観には好ましいことからAl含有量を0.5%以下とすることが好ましい。さらに、Alは高価であるうえ、過度に含有させると介在物が増し母材鋼板の延性が損なわれるため、この観点からも含有量を0.5%以下とすることが好ましい。
(4)Mn:0.5%以上3.0%以下
Mnにはオーステナイトを安定化する作用があり、母材鋼板を残留オーステナイト鋼板とするのに好適な元素である。TRIP効果を安定的に得るべく母材鋼板における残留オーステナイト体積率を1体積%以上とするためには、Mnを0.5%以上含有させることが好ましい。より好ましくは0.8%以上である。一方、Mnは高価であるうえ、過度に含有させると母材鋼板が脆くなり加工性が損なわれるので、その含有量は3.0%以下とすることが好ましく、2.5%以下とすればさらに好ましい。
(5)Ti、Nb
TiおよびNbにはいずれも溶融亜鉛めっき鋼板の合金化処理時にめっき皮膜の合金化を促進する作用があり、本発明における重要な元素である。また、母材鋼板にこれらの元素の内の1種または両方を適量含有させることにより、必要に応じ母材鋼板の強度を高めることが可能となる。したがって、これらの元素を合計で0.001%以上含有させることが好ましい。しかしながら、過度に多く含有させると、その合金化促進効果が飽和するばかりか、機械特性の観点より細粒化するために伸びが低下するおそれがあるため、合計で0.3%以下とすることが好ましい。
(6)P:0.001%以上0.05%以下
Pは固溶強化を高める作用があるので添加することが好ましいが、過剰添加は母材鋼板の中央部に偏析や合金化を遅延することがあるので、0.05%以下とすることが好ましい。Pの下限値は特に限定しないが、0.001%未満とすることは、脱リン工程に長時間を要することになり、経済的に不利である。したがって、下限は0.001%以上とすることが好ましい。
(7)S:0.01%以下
Sは熱延時の製造性に悪影響を及ぼす。このことから含有量の上限値を0.01%とすることが好ましい。下限は特に限定されない。母材鋼板に求められる他の特性や経済性を考慮して適宜設定すればよい。
(8)N:0.02%以下
Nも不純物として鋼中に不可避的に含有される元素であり、その含有量は低い方が望ましい。N含有量が多いとAlNとして消費されるAlの量が多く、Alの効果が減殺されるばかりでなく、AlNによる延性の劣化が顕著になるので、N含有量は0.02%とすることが好ましい。Nの下限値は特に限定しない。たとえば0.001%未満とすれば性能上は好ましいが製鋼段階での脱窒処理に長時間を要する。
(9)その他の元素
上記の元素のほか、めっき鋼板に求められる特性に応じて、V,B,Cr,Mo,W,Ni,Ca,Mg,Biなどの元素を適宜含有してもよい。
上述した元素以外は、Feおよび不純物である。ここで、「不純物」とは、鋼材の工業的生産において原料たる鉱石、スクラップや製造設備からの溶出成分等から混入するものであり、性能に悪影響を及ぼさない範囲で含有されていてもよい。
2.母材鋼板の組織
本発明のめっき鋼板は良好な延性を有するため、母材鋼板の組織には、残留オーステナイトが含まれる。この残留オーステナイト鋼板は、一般には、曲げ加工などの加工時に表層におけるオーステナイト/フェライト粒界での割れが発生しやすく、その割れ部が表層の溶融亜鉛めっき層や合金化溶融亜鉛めっき層まで進展して、加工後のめっき鋼板の外観を著しく劣化させる場合がある。したがって、母材鋼板の内部では延性を良好にするために残留オーステナイトを含有しつつ、その表層部のオーステナイト量は可能な限り減らすことが、加工性の低下を抑制する観点からは好ましい。
3.製造方法
続いて、本発明のめっき鋼板を得る製造方法に関して述べる。本発明に係る製造方法は、その一態様として、ジカルボン酸類を含有する洗浄液によって洗浄を行い、かつ700℃以上の高温での露点と低温での露点をコントロールすることを特徴としている。この態様は過時効帯を設けうる連続溶融めっき設備で実施可能な製造方法である。
(1)めっき前処理
本発明に係るめっき前処理は、次の工程を備える。
(i)Siの含有量が0.2質量%以上である化学組成を有する鋼からなる熱間圧延鋼帯または冷間圧延鋼帯をpH11以上で且つ50℃以上のアルカリ処理液に接触させるアルカリ処理工程。
(ii)ジカルボン酸類を0.01質量%以上含有する溶融亜鉛めっき用洗浄液に、アルカリ処理工程が施された熱間圧延鋼帯または冷間圧延鋼帯を接触させる洗浄工程。
(iii)洗浄工程が施された熱間圧延鋼帯または冷間圧延鋼帯を乾燥させる乾燥工程。
以下、各工程について個別に説明する。
(i)アルカリ処理工程
アルカリ処理工程は、熱間圧延鋼帯または冷間圧延鋼帯(以下、これらを「鋼帯」と総称する。)の表面に付着した油分や汚れを除去し、その表面を活性化するための工程である。公知のアルカリ処理液、例えば珪酸塩、リン酸塩、金属水酸化物などを含有する水溶液を用いることができ、処理条件(pH、温度、接液時間など)は処理液の組成、処理される鋼帯の汚れの程度などを考慮して適宜設定される。一例を挙げれば、NaOHを含有するアルカリ処理液(pH14.0,濃度5%)を用いた場合には、液温を50℃程度にすると、10秒程度の接液時間で鋼帯表面の油分や汚れを除去することが実現される。
(ii)洗浄工程
上記のアルカリ処理工程が施された鋼帯をそのまま、好ましくはその鋼帯を水洗した後、ジカルボン酸類を含有する水性の溶融亜鉛めっき用洗浄液(以下、「洗浄液」と略記する。)に接触させる洗浄工程を行う。
ここで、ジカルボン酸類とは、前述のように、一般式HOOC-(CH2)n-COOHで表されnが8以下であるジカルボン酸、その塩、およびそのジカルボン酸またはそのイオンを水溶液中で形成することが可能な化合物から選ばれる一種または二種以上をいう。塩におけるカウンターイオンは特に限定されず、ナトリウムイオン、カリウムイオン、アンモニウムイオン、マグネシウムイオン、アルミニウムイオンなどが例示される。また、カウンターイオンは一種類であってもよい複数種類であってもよい。「水溶液中で形成することが可能な化合物」とは、例えば加水分解により上記のジカルボン酸やそのイオンを形成することが可能な化合物をいい、典型的にはエステルが例示される。
ジカルボン酸類は、そのままで、またはジカルボン酸もしくはジカルボン酸イオンの状態で、活性化された母材鋼板の表面における金属と強く結合し、その後の乾燥工程を経た後もその状態が維持されているものと推測される。このため、めっき前の焼鈍工程(詳細は後述。)において母材内部に供給される酸素濃度が高まり、めっき不良をもたらすSiが母材鋼板の表面に拡散してくることが抑制されているものと考えられる。そして、Siの表面への拡散が抑制されることが合金化処理時間の短縮にも寄与していると考えられる。
このようなジカルボン酸類の作用から明らかなように、洗浄液におけるジカルボン酸類の濃度は特に厳密に限定されない。過度に濃度が低い場合には表面に吸着するジカルボン酸類量が少なくなるが、ジカルボン酸類の濃度を0.01質量%以上とすれば、このような問題の発生を安定的に回避することが可能であり、0.2質量%以上とすれば特に好ましい。濃度を高めるとジカルボン酸類の吸着量は増加するものの、鋼帯の表面においてジカルボン酸類が吸着しうる部位には上限があるため、ジカルボン酸類の濃度を過度に高めても効果が飽和することは自明である。しかも、過度に濃度が高い場合には、溶融亜鉛めっき用洗浄液に含有されるジカルボン酸類の種類によっては、設備の腐食、鋼板の過度のエッチング、粘度上昇などに基づく作業性の低下などの問題が発生する可能性がある。したがって、これらの問題が発生しない範囲で濃度の上限を設定し、その範囲内で濃度を管理すればよい。
なお、ジカルボン酸の種類としては、一般式HOOC-(CH2)n-COOHにおけるnが8を越えると、洗浄液の粘度上昇が顕著となり、作業性が低下する。したがって、n数は8を上限とする、つまりセバシン酸を上限とすることが好ましい。下限は0、すなわちシュウ酸である。扱いやすさの観点からは、マロン酸(n=1)、コハク酸(n=2)が好ましい。
洗浄液の溶媒は水を主成分とすることが好ましい。ジカルボン酸類の溶解度を高める目的でアルコールやエーテルなど水への溶解度が高い有機溶媒を水に加えて含有させてもよい。その含有量は特に限定されず、ジカルボン酸類やジカルボン酸類以外の添加物の種類や濃度、処理条件などに応じて適宜設定すればよい。
なお、溶解度を高める観点から、ジカルボン酸類としてジカルボン酸を用いた場合において、それ以外の添加物としてNaOHなどのアルカリ性材料を添加してもよい。この場合には、ジカルボン酸類としてジカルボン酸塩を用いた場合と実質的に同じ効果が得られる。このようにジカルボン酸類の塩として洗浄液に存在させることは、ジカルボン酸単体を添加する場合に比べて洗浄液のpHを高くすることが可能である。このことは設備の腐食や鋼板の過度のエッチングといった問題の発生を抑制するため、好ましい。
洗浄液と鋼帯との接触方法は特に限定されない。槽内に洗浄液を満たし、これに鋼帯を浸漬させてもよいし、洗浄液をスプレー噴射してもよいし、洗浄液が含浸されたロールと鋼帯とを接触させてもよい。
また、洗浄液に接触させた後の鋼帯をそのまま次の乾燥工程に供してもよいし、鋼帯の表面に付着した洗浄液量を調整して洗浄液の薄膜を鋼帯の表面に形成してから次の乾燥工程に供してもよい。
乾燥ムラに起因する外観の劣化が問題となる場合には、洗浄工程後、洗浄液を薄膜化して乾燥が均一に行われるようにする、すなわち薄膜化工程が行われることが好ましい。この薄膜化工程における薄膜形成方法は特に限定されない。ドクターブレードやエアーナイフを用いてもよいし、スポンジなどの吸水・保水機能を有するロールを用いてもよい。
これらの薄膜化のための手段を適宜調整して薄膜の厚さを調整したり、洗浄液に含まれるジカルボン酸類の種類やその濃度を調整したりすることで、乾燥工程後に表面に付着するジカルボン酸類の量を調整することが可能である。薄膜の厚さについては、後述する乾燥工程における処理条件との関係で適宜設定されるべきものであるが、過度に薄い場合には表面に付着するジカルボン酸類の量が少なすぎて効果が得られなくなり、過度に厚い場合には乾燥工程への搬送途中や乾燥工程内における膜厚の変動幅が大きくなって乾燥ムラをもたらすことが懸念される。したがって、1μm以上30μm以下とすることが好ましく、2μm以上20μm以下とすれば特に好ましい。
なお、この洗浄工程で使用した洗浄液を、上記のアルカリ処理工程後の水洗のための洗浄水として使用すれば、資源の再利用となるばかりか、液性が酸性であれば、鋼帯の表面に残留するアルカリ性物質が洗浄水で中和されることになり、洗浄効率が高まって好ましい。
(iii)乾燥工程
上記の洗浄工程またはこれに引き続いて行われる薄膜化工程により表面にジカルボン酸類を含む洗浄液が付着した鋼帯は、すみやかに次工程である乾燥工程に供され、その表面が乾燥される。
洗浄工程または薄膜化工程と乾燥工程との間隔は短いことが乾燥ムラの発生を防止する観点から好ましく、特に、薄膜化工程を行った場合には30秒以内に乾燥工程を行うことが好ましい。
乾燥温度や乾燥時間は、表面に付着した洗浄液量に応じて乾燥ムラが発生しないように適宜設定すればよい。一例を挙げれば、洗浄液が20μm以下の薄膜が形成された鋼帯を乾燥温度60℃で乾燥する場合には、おおむね10秒の乾燥時間となる。
(2)めっき処理および合金化処理
本発明に係るめっき処理および合金化処理方法は次の工程を備える。
(i)熱間圧延鋼帯または冷間圧延鋼帯を700℃以上900℃以下の温度域で30秒間以上60秒間以下焼鈍する焼鈍処理、
(ii)焼鈍処理が施された熱間圧延鋼帯または冷間圧延鋼帯を、3℃/s以上200℃/s以下の冷却速度で350℃以上550℃以下の温度域まで冷却する冷却処理、
(iii)冷却処理が施された熱間圧延鋼帯または冷間圧延鋼帯を、350℃以上550℃以下の温度域で10秒間以上90秒間以下保持する保持処理、および
(iv)保持処理が施された熱間圧延鋼帯または冷間圧延鋼帯を、全Al濃度を0.08質量%以上0.5質量%以下に調整した溶融亜鉛めっき浴に浸漬するめっき処理、
ここで、
焼鈍処理から保持処理における雰囲気中水素濃度は2体積%以上40体積%以下、かつ焼鈍処理における雰囲気の露点DMと保持処理における雰囲気の露点DLとは次の関係を満たす:
DL≦−30℃
DM−DL≧10℃。
(v)さらに、必要に応じ、上記のめっき処理により得られた溶融亜鉛めっき鋼板に対して450℃以上580℃以下の温度域で合金化処理を行う合金化処理を有してもよい。
以下、各工程について個別に説明する。
(i)焼鈍処理工程
焼鈍処理工程では、乾燥工程を経て表面に洗浄液に含まれるジカルボン酸類が付着した鋼帯を、700℃以上900℃以下の温度域で30秒間以上60秒間以下焼鈍する。
焼鈍温度が700℃未満であったり、焼鈍時間が30秒間未満であったりする場合には、再結晶が起こりにくく、かつセメンタイトが固溶しないため、鋼帯の特性が劣化する。一方、焼鈍温度が900℃を超えると、結晶粒が粗大化するだけでなく、焼鈍中のオーステナイトの体積率が増大し、最終的に生成するマルテンサイト中のC含有量が低くなるだけでなく、炉温の上昇による製造コストの増大が避けられない。また、焼鈍時間が90秒間を超える場合には、結晶粒が粗大化するほか、ライン速度が低下し、生産性が低下するので、好ましくない。
この焼鈍処理工程における雰囲気は、水素濃度が2体積%以上40体積%以下であり、露点DMが後述する保持処理工程における雰囲気の露点DLとの関係で、DM−DL≧10℃、残部は窒素などの不活性ガスで構成される。好ましくは、前記式を満たしつつ−20℃≦DM≦10℃である。
このようにDMを高めに設定することにより、雰囲気に含まれるHOからOが形成され、これが酸素原子(O)となって母材鋼帯に拡散しているものと考えられる。このため、鋼帯の内部にあるSi原子が表面部に拡散してくる前にこの酸素と結合して酸化物を形成し、結果的にSi原子が表面部に拡散することが抑制され、このSi原子に由来するめっき不良の発生が抑制されているものと推測される。
なお、焼鈍工程に先立って、通常の溶融亜鉛めっきラインで行われるような無酸化炉や直火炉による母材の加熱を行ってもよい。
(ii)冷却工程
冷却工程では、焼鈍処理工程後の鋼帯を、3℃/s以上200℃/s以下の冷却速度で350℃以上550℃以下の温度域まで冷却する。
焼鈍処理後の冷却速度が3℃/sより低い場合には、冷却中にオーステナイトからパーライトまたはセメンタイトが生成し、所望の金属組織を得ることが困難となる。また、冷却速度が200℃/sより速い場合には、冷却速度の制御が困難になり、均一な組織が得られなくなってしまう。
この冷却工程における雰囲気は、水素濃度が2体積%以上40体積%以下、残部は窒素などの不活性ガスで構成される。このときの露点は特に管理する必要はないが、連続溶融めっきラインでは冷却工程に先立って行われる焼鈍処理工程を行う領域、冷却工程を行う領域、およびこれに引き続いて行われる保持処理工程を行う領域が連通しているため、焼鈍処理工程における雰囲気の露点および保持処理工程における雰囲気の露点を管理すれば、冷却工程における雰囲気における露点は自らそれらの露点の間で実質的に一定に保持される。
なお、上記のように、焼鈍処理工程において雰囲気の露点を高めることは、母材となる鋼帯の表面から内部に酸素を拡散させてSiの表面への拡散を抑制するために行われている。この拡散現象は温度が高いほど顕著となるため、保持工程よりも温度が低下している冷却工程では、露点を高めることによる酸素拡散は相対的に発生しにくくなっている。このため、冷却工程で露点を高めても上記のSiの表面への拡散の抑制という効果は得られにくい。したがって、冷却工程で雰囲気の露点を管理することは、焼鈍処理工程における露点管理に比べ有意性が低い。
(iii)保持処理工程
保持処理工程では、冷却処理工程によって350℃以上550℃以下の温度域に冷却された鋼帯を、その温度域で10秒間以上90秒間以下保持する。
保持処理工程における保持温度(以下、「低温保持温度」という。)が350℃未満では、焼鈍後の冷却中にC含有量が低いマルテンサイトが生成し、低温保持温度が550℃より高い場合には、ベイナイト変態が起こらず、オーステナイトがパーライトに変態するため、所望の材料特性が得られない。
保持処理工程における保持時間(以下、「低温保持時間」という。)が10秒間未満の場合には、ベイナイト変態が起こらず、オーステナイトへのCの濃縮が進まないため、C含有量が低いマルテンサイトとなり、延性が低下する。低温保持時間が90秒間を超える場合には、生産性が低下するだけでなく、酸化物の生成によるめっき密着性の劣化を招くほか、本発明の理想組織であるC含有量が高いマルテンサイトの生成が抑制されて、延性の低下と形状凍結性不良を招く。
この焼鈍処理工程における雰囲気は、水素濃度が2体積%以上40体積%以下であり、露点DLが−30℃以下、残部は窒素などの不活性ガスで構成される。また、上記のように、DLはDMとの関係で、DM−DL≧10℃を満たす。
このようにDLを低めに設定することにより、めっき不良(ここでは、不めっきやめっきの密着不良のみならず、めっきムラやめっき垂れも含む。)の発生がさらに抑制されるとともに、めっき後に合金化処理を行ったときの合金化に要する時間を著しく短縮することが実現される。
その理由は完全には明らかにはされていないが、次のような現象が発生しているものと推測される。すなわち、高露点で焼鈍を行うと、上記のように多くの酸素が鋼帯の内部に拡散していると考えられるが、その一方で、鋼帯の表面を構成する原子に相当量の酸素が吸着したり、さらに進んで鉄の酸化物を形成したりしていると推測される。このように酸素が表面に残留したまま鋼帯をめっき処理温度近傍まで冷却し、そのままめっき処理工程に供すると、この酸素の存在が原因となってめっき不良が発生したり、合金化処理に要する時間が長くなったりする。これに対し、本発明のように保持処理工程を設け、この工程における雰囲気の露点を低くすれば、表面に残留する酸素が適切に除去され、めっき不良の発生や合金化処理時間の遅延が抑制される。
このように保持処理工程の露点を低くすることで、高露点焼鈍によって酸化の傾向が強まった鋼帯表面がめっきに適するように調整されているものといえる。したがって、高露点焼鈍と同様に鋼帯表面の酸化の傾向を強める作用を有していると推測される本発明に係る洗浄工程を行った場合には、低露点での保持処理工程を行うことがめっき性を向上させる観点から好ましい。
なお、上記のようにDLおよびDMを制御する手段は特に限定されないが、焼鈍処理工程から保持処理工程を行うラインは前述のように連通しているため、焼鈍処理工程を行う部分から水分を供給し、保持処理工程における露点管理は焼鈍処理工程を行う領域から供給される水分量を調整することで行うことが合理的である。
(iv)めっき処理工程
めっき処理工程では、保持処理工程を経た鋼帯を、全Al濃度を0.08質量%以上0.5質量%以下に調整した溶融亜鉛めっき浴に浸漬し、鋼帯の表面に亜鉛めっき層を形成させる。
めっき浴温度は、めっき付着量の調整を容易にするために430℃以上とし、Znの蒸発を避けてめっき浴の維持を容易にするために550℃以下とすることが好ましい。めっき浴から引き上げた後のめっき付着量の調整は、気体絞り法等、通常用いられている方法により行えばよい。めっき密着性を高める目的でめっき浴中にAlを添加するが、このAlの含有量は全めっき浴の質量に対して0.09質量%以上0.5質量%が好ましい。
本発明においてめっき付着量は特に限定されないが、高い耐食性と優れた経済性とを両立させる観点より、片面当たり10〜200g/mとすることが好適である。
(v)合金化処理工程
さらに、必要に応じ、上記のめっき処理工程を経て得られた溶融亜鉛めっき層を有する鋼帯に対して、450℃以上580℃以下の温度域で合金化処理を行う合金化処理工程を行ってもよい。
合金化処理温度が580℃を超えると、オーステナイトがセメンタイトとフェライトに分解して所望の特性が得られにくくなる。一方、450℃未満の場合には合金化に要する時間が特に長くなり、連続処理を行うことが実質的に不可能となってしまう。
上記の温度範囲であれば、本発明に係る鋼帯は、保持処理工程を経たことによって表面性状が良好になっているため、合金化処理に要する時間は短縮され、設備を小型化したり、ラインスピードを高めたりすることが可能となる。さらに、短時間で合金化処理が行われるため、鋼帯内での合金化のばらつきが少なくなり、外観や耐食性などが均一となりやすい。
なお、めっき相中のFeの含有率は特に限定されない。用途に応じて適宜設定すればよいが、耐食性と経済性とのバランスの観点より7質量%以上18質量%以下が好適である。
本発明を、実施例を参照しながらより具体的に説明する。
(実施例1)
1.評価サンプルの作製
実験用真空溶解炉を用いて、表1に示される化学組成を有する鋼を溶解し、鋳造した。脱酸はTiまたはAlを使用して行った。
続いて、これらの鋼塊を熱間鍛造により厚さ20mmの鋼片とし、電気加熱炉を用いて1250℃に加熱し、30分間保持した。鋼片を炉から抽出した後、実験用熱間圧延機を用いて、910℃以上の温度範囲で熱間圧延し、厚さ4mmの熱間圧延鋼板を得た。熱間圧延後、直ちに水スプレー冷却により650℃まで冷却してこれを巻取り温度とし、同温度に保持された電気加熱炉中に装入して30分間保持した後、20℃/hの冷却速度で炉冷却して巻取り後の徐冷処理とした。
得られた熱間圧延鋼帯を巻き戻し、これを酸洗して冷間圧延母材とし、圧下率82.5%で冷間圧延し、厚さ0.7mmの冷間圧延鋼板を得て、これを巻き取って冷間圧延鋼帯とした。
得られた冷間圧延鋼帯を巻き戻し、アサファインC−4S(朝日化学工業(株)製アルカリ洗浄剤)を5体積%含有してなるアルカリ洗浄液で70℃に加熱されたものを鋼帯に対してスプレー噴射するアルカリ処理を行い、鋼帯表面に残留する油分や汚れを除去した。
アルカリ処理が行われた鋼帯を純水にて水洗し、コハク酸などを所定量含有する表2に示される水溶液(実施例1においては表2に示される水溶液を「洗浄液」という。)を水洗後の鋼帯に30秒間スプレー噴射した。なお、表2に示される洗浄液No.Dは、セバシン酸の溶解度を高めるためにNaOHもあわせて添加したものである。
その後、ロール絞りにより鋼帯の表面に付着した洗浄液を10μm厚に薄膜化した。なお、一部のサンプルについては、比較のために洗浄液の吹付けを行わなかった。
薄膜化された洗浄液が表面に付着した鋼帯を、薄膜化後5秒程度で炉内温度が60℃に維持された乾燥炉に搬送し、洗浄液の水分を揮発させてコハク酸などを鋼帯の表面に付着させた。
こうして表面にコハク酸などが付着した鋼帯を、連続焼鈍シミュレーターを用いて熱処理した。各工程における熱処理条件は表3に示したとおりである。
なお、初期酸化加熱における雰囲気は大気であり、焼鈍処理工程および保持処理工程における雰囲気の残部は窒素であった。
Alを0.13質量%含有し、液温が460℃に維持された溶融亜鉛めっき槽内に、上記の熱処理を経た鋼帯を通過させて、溶融亜鉛めっきを行った。めっき後、ガスワイピングを行って付着量を50g/m以上60g/m以下に制御した。
続いて、一部の溶融亜鉛めっき層が形成された鋼帯については、これを500℃に加熱して合金化処理を行った。
2.評価方法
得られためっき鋼帯について、次の評価を行った。
(1)めっき外観評価
めっき鋼帯から50mm×50mmの大きさの評価試験片を切り出し、その表面に形成された溶融亜鉛めっき層を目視で観察し、不めっき部の有無を確認した。
(2)合金化処理時間の評価
合金化処理の時間を変更して得られた複数の合金化溶融亜鉛めっき皮膜を10%塩酸中へ溶解し、ICPにてめっき皮膜の元素分析を行い、合金化度が8%になる時間を測定した。
(3)断面観察
めっき鋼帯から切り出した評価試験片を樹脂に埋め込んでバフ研摩し、断面観察用サンプルを作製した。断面をナイタールでエッチングしたのち、電子顕微鏡で観察した。結晶粒の大きさを中心に観察し、表面近傍の結晶粒径が大きくなっている場合には、脱炭層が表面部に形成されていると判断した。
3.評価結果
評価結果を表4に示す。
表4に示されるように、コハク酸を含有する洗浄液で洗浄する洗浄工程を実施することで(試験No.1)、洗浄工程を実施しない場合(試験No.11)に比べて不めっきの発生が抑制されるとともに合金化処理時間が短縮されることが確認された。この効果は、洗浄液におけるコハク酸の濃度が0.2g/Lの場合(試験No.2)にも得られた。また、このような効果はジカルボン酸類を含有する洗浄剤に固有であって、セバシン酸を含有する洗浄液を使用した場合(試験No.6,7)にも同様に得られたが、リン酸を含む洗浄液で洗浄工程を実施した場合(試験No.5)には洗浄工程を実施しない場合(試験No.12)よりもはるかに合金化に要する時間が長くなる結果が得られた。
一方、焼鈍処理工程で露点を高め、保持処理工程で露点を低下させることによっても(試験No.12)、両工程における露点を同一にした場合(試験No.11)に比べて不めっきの発生が抑制されるとともに合金化処理時間が短縮されることが確認された。
さらに、コハク酸を含有する洗浄液を使用するとともに露点を変化させることで(試験No.2)、不めっきの発生が抑制され、合金化処理時間が著しく短縮されることが確認された。この場合には、露点の変化量が大きいほど合金化処理時間が短くなる傾向も確認された(試験No.3)。
なお、図1から4に示されるように、処理No.bまたはcの熱処理を行った場合には常に脱炭層が形成され(図2,4)、コハク酸を含有する洗浄液による洗浄工程を行った場合でも、処理No.aの熱処理を行った場合には脱炭層は形成されなかった(図1,3)。
(実施例2)
実施例1において得られた冷間圧延鋼帯を巻き戻し、この鋼帯に対して実施例1と同様のアルカリ処理を行った。アルカリ処理が行われた鋼帯を純水にて水洗し、コハク酸を10g/L含有し溶媒が純水である洗浄液を水洗後の鋼帯に30秒間スプレー噴射した。
続いて、ロール絞りにより鋼帯の表面に付着した洗浄液を表5に示される厚さに薄膜化した。薄膜化された洗浄液が表面に付着した鋼帯を、薄膜化後5秒程度で炉内温度が60℃に維持された乾燥炉に搬送し、洗浄液の水分を揮発させてコハク酸を鋼帯の表面に付着させた。
こうして表面にコハク酸が残留した鋼帯を、連続焼鈍シミュレーターを用いて熱処理した。各工程における熱処理条件は次のとおりである。
初期酸化加熱:大気中で、550℃にて1秒間加熱。
焼鈍処理工程:水素濃度が4体積%、露点が−10℃、残部窒素からなる雰囲気で、850℃にて60秒間加熱。
冷却工程:10℃/秒で500℃まで冷却。
保持処理工程:水素濃度が4体積%、露点が−40℃、残部窒素からなる雰囲気で、500℃にて60秒間加熱。
保持処理工程が終了した鋼帯を、Alを0.13質量%含有し、液温が460℃に維持された溶融亜鉛めっき槽内に通過させて、溶融亜鉛めっきを行った。めっき後、ガスワイピングを行って付着量を50g/m以上60g/m以下に制御した。さらに、溶融亜鉛めっき層が形成された鋼帯については、これを500℃に加熱して合金化処理を行った。
得られた鋼帯について、実施例1と同様に不めっきの有無の評価および合金化率が8%になるまでの合金化処理時間の評価を行った。その結果を表5に示す。

Claims (3)

  1. Siの含有量が0.2質量%以上である化学組成を有する鋼からなる熱間圧延鋼帯または冷間圧延鋼帯に対して、次の(1)〜(3)の工程を施し、過時効帯を有する連続溶融めっきラインを用いて、次の()〜()の工程を施すことを特徴とする溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法:
    (1)前記熱間圧延鋼帯または冷間圧延鋼帯をアルカリ処理液に接触させるアルカリ処理工程、
    (2)前記アルカリ処理工程が施された熱間圧延鋼帯または冷間圧延鋼帯を、一般式HOOC−(CH −COOHで表されnが8以下であるジカルボン酸およびその塩から選ばれる一種または二種以上を0.01質量%以上含有する溶融亜鉛めっき用洗浄液に接触させる洗浄工程、
    (3)前記洗浄工程が施された熱間圧延鋼帯または冷間圧延鋼帯を乾燥させる乾燥工程、
    前記乾燥工程が施された熱間圧延鋼帯または冷間圧延鋼帯を700℃以上900℃以下の温度域で30秒間以上60秒間以下焼鈍する焼鈍処理工程
    )前記焼鈍処理工程が施された熱間圧延鋼帯または冷間圧延鋼帯を、3℃/s以上200℃/s以下の冷却速度で350℃以上550℃以下の温度域まで冷却する冷却工程
    )前記冷却工程が施された熱間圧延鋼帯または冷間圧延鋼帯を、350℃以上550℃以下の温度域で10秒間以上90秒間以下保持する保持処理工程、および
    )前記保持処理工程が施された熱間圧延鋼帯または冷間圧延鋼帯を、全Al濃度を0.08質量%以上0.5質量%以下に調整した溶融亜鉛めっき浴に浸漬するめっき処理工程
    ここで、
    前記焼鈍処理工程から前記保持処理工程における雰囲気中水素濃度は2体積%以上40体積%以下であって、かつ
    前記焼鈍処理工程における雰囲気の露点DMと前記保持処理工程における雰囲気の露点DLとは次の関係を満たす:
    DL≦−30℃
    DM−DL≧10℃。
  2. 前記洗浄工程に引き続いて、当該洗浄工程後の熱間圧延鋼帯または冷間圧延鋼帯の表面に付着する前記溶融亜鉛めっき用洗浄液を薄膜化する薄膜化工程を備え、
    前記乾燥工程では、当該薄膜化工程が施された熱間圧延鋼帯または冷間圧延鋼帯の乾燥が当該薄膜化工程終了後30秒以内に行われる
    請求項1記載の溶融亜鉛めっき鋼板製造方法。
  3. 請求項1または請求項2に記載される製造方法により製造された溶融亜鉛めっき鋼板に対して450℃以上580℃以下の温度域で合金化処理を行うことを特徴とする合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
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