JP5481868B2 - 溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法、および合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法 - Google Patents
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かかる問題を解決すべく、酸化性雰囲気中で鋼板を加熱、表面に酸化Feを形成して、その後還元することにより、Siの表面濃化を抑制する技術に係る発明が多数開示されている(例えば特許文献1)。
以上の知見に基づき得られた本発明は次のとおりである。
(i)前記熱間圧延鋼帯または冷間圧延鋼帯をアルカリ処理液に接触させるアルカリ処理工程、
(ii)前記アルカリ処理工程が施された熱間圧延鋼帯または冷間圧延鋼帯を、一般式HOOC−(CH2)n−COOHで表されnが8以下であるジカルボン酸およびその塩から選ばれる一種または二種以上を0.01質量%以上含有する溶融亜鉛めっき用洗浄液に接触させる洗浄工程、
(iii)前記洗浄工程が施された熱間圧延鋼帯または冷間圧延鋼帯を乾燥させる乾燥工程、
(iv)前記乾燥工程が施された熱間圧延鋼帯または冷間圧延鋼帯を700℃以上900℃以下の温度域で30秒間以上60秒間以下焼鈍する焼鈍処理工程、
(v)前記焼鈍処理工程が施された熱間圧延鋼帯または冷間圧延鋼帯を、3℃/s以上200℃/s以下の冷却速度で350℃以上550℃以下の温度域まで冷却する冷却工程、
(vi)前記冷却工程が施された熱間圧延鋼帯または冷間圧延鋼帯を、350℃以上550℃以下の温度域で10秒間以上90秒間以下保持する保持処理工程、および
(vii)前記保持処理工程が施された熱間圧延鋼帯または冷間圧延鋼帯を、全Al濃度を0.08質量%以上0.5質量%以下に調整した溶融亜鉛めっき浴に浸漬するめっき処理工程、
ここで、
前記焼鈍処理工程から前記保持処理工程における雰囲気中水素濃度は2体積%以上40体積%以下であって、かつ
前記焼鈍処理工程における雰囲気の露点DMと前記保持処理工程における雰囲気の露点DLとは次の関係を満たす:
DL≦−30℃
DM−DL≧10℃。
本発明に係るめっき鋼板の母材をなす鋼板(以下、本発明に係るめっき鋼板の母材をなす鋼板を「母材鋼板」と略記する。)の化学組成は、高張力鋼板としての特性を示すことが可能な化学組成を有し、さらに、優れた延性を実現するためにSiの含有量が0.2質量%以上である。以下に母材鋼板の化学組成の好ましい範囲について説明する。なお、以下の説明において、鋼の化学組成を示す%は、特に断りがない限り質量%を意味する。
Cは鋼をフェライト+オーステナイトの2相温度域に加熱した後に冷却する際のオーステナイトを安定化する作用があり、冷却後の母材鋼板に残留オーステナイトを導入するのに必要な元素である。残留オーステナイトを確保するためにCの含有量を0.05%以上とすることが好ましい。また、0.3%以上含有させても母材鋼板が硬化しすぎて延性を損ない加工性が悪くなるうえ、溶接性も損なわれることが懸念されるので、その含有量は0.3%以下とすることが好ましい。より好ましい含有量は0.08%以上0.25%以下である。
Siは鋼を脱酸し健全な母材鋼板を得るのに有効な元素である。また、2相温度域でのフェライトの体積率を増し、オーステナイトのC濃度を高めて冷却時のオーステナイトを安定化する作用があるので、残留オーステナイトを得るのに有効な元素である。これらの効果を確保するために、Si含有量を0.2%以上とする。より好ましくは0.5%以上である。しかしながら、その含有量が増すにつれて溶融めっき時の母材鋼板の表面でのめっき濡れ性を損なうと共に合金化速度を小さくする作用がある。このため、Si含有量が増すにつれてめっき皮膜の品質や合金化処理の生産性を損なう傾向がある。本発明によればそのようなこのような傾向を抑えられているものの、これらの作用を完全に排除することは困難であるから、Si含有量を3.0%以下とすることが好ましい。
AlもSiと同様に、鋼を脱酸し健全な母材鋼板を得るのに有効な元素である。また、2相温度域でのフェライトの体積率を増し、オーステナイトのC濃度を高めて冷却時のオーステナイトを安定化する作用があるので、残留オーステナイトを得るのに有効な元素である。これらの効果を確保するために、Al含有量を0.001%以上とすることが好ましい。より好ましくは0.005%以上である。一方、Alを1%以上添加してもその効果は飽和する。また、Alは低い方がめっき表層の外観には好ましいことからAl含有量を0.5%以下とすることが好ましい。さらに、Alは高価であるうえ、過度に含有させると介在物が増し母材鋼板の延性が損なわれるため、この観点からも含有量を0.5%以下とすることが好ましい。
Mnにはオーステナイトを安定化する作用があり、母材鋼板を残留オーステナイト鋼板とするのに好適な元素である。TRIP効果を安定的に得るべく母材鋼板における残留オーステナイト体積率を1体積%以上とするためには、Mnを0.5%以上含有させることが好ましい。より好ましくは0.8%以上である。一方、Mnは高価であるうえ、過度に含有させると母材鋼板が脆くなり加工性が損なわれるので、その含有量は3.0%以下とすることが好ましく、2.5%以下とすればさらに好ましい。
TiおよびNbにはいずれも溶融亜鉛めっき鋼板の合金化処理時にめっき皮膜の合金化を促進する作用があり、本発明における重要な元素である。また、母材鋼板にこれらの元素の内の1種または両方を適量含有させることにより、必要に応じ母材鋼板の強度を高めることが可能となる。したがって、これらの元素を合計で0.001%以上含有させることが好ましい。しかしながら、過度に多く含有させると、その合金化促進効果が飽和するばかりか、機械特性の観点より細粒化するために伸びが低下するおそれがあるため、合計で0.3%以下とすることが好ましい。
Pは固溶強化を高める作用があるので添加することが好ましいが、過剰添加は母材鋼板の中央部に偏析や合金化を遅延することがあるので、0.05%以下とすることが好ましい。Pの下限値は特に限定しないが、0.001%未満とすることは、脱リン工程に長時間を要することになり、経済的に不利である。したがって、下限は0.001%以上とすることが好ましい。
Sは熱延時の製造性に悪影響を及ぼす。このことから含有量の上限値を0.01%とすることが好ましい。下限は特に限定されない。母材鋼板に求められる他の特性や経済性を考慮して適宜設定すればよい。
Nも不純物として鋼中に不可避的に含有される元素であり、その含有量は低い方が望ましい。N含有量が多いとAlNとして消費されるAlの量が多く、Alの効果が減殺されるばかりでなく、AlNによる延性の劣化が顕著になるので、N含有量は0.02%とすることが好ましい。Nの下限値は特に限定しない。たとえば0.001%未満とすれば性能上は好ましいが製鋼段階での脱窒処理に長時間を要する。
上記の元素のほか、めっき鋼板に求められる特性に応じて、V,B,Cr,Mo,W,Ni,Ca,Mg,Biなどの元素を適宜含有してもよい。
本発明のめっき鋼板は良好な延性を有するため、母材鋼板の組織には、残留オーステナイトが含まれる。この残留オーステナイト鋼板は、一般には、曲げ加工などの加工時に表層におけるオーステナイト/フェライト粒界での割れが発生しやすく、その割れ部が表層の溶融亜鉛めっき層や合金化溶融亜鉛めっき層まで進展して、加工後のめっき鋼板の外観を著しく劣化させる場合がある。したがって、母材鋼板の内部では延性を良好にするために残留オーステナイトを含有しつつ、その表層部のオーステナイト量は可能な限り減らすことが、加工性の低下を抑制する観点からは好ましい。
続いて、本発明のめっき鋼板を得る製造方法に関して述べる。本発明に係る製造方法は、その一態様として、ジカルボン酸類を含有する洗浄液によって洗浄を行い、かつ700℃以上の高温での露点と低温での露点をコントロールすることを特徴としている。この態様は過時効帯を設けうる連続溶融めっき設備で実施可能な製造方法である。
本発明に係るめっき前処理は、次の工程を備える。
(i)Siの含有量が0.2質量%以上である化学組成を有する鋼からなる熱間圧延鋼帯または冷間圧延鋼帯をpH11以上で且つ50℃以上のアルカリ処理液に接触させるアルカリ処理工程。
(ii)ジカルボン酸類を0.01質量%以上含有する溶融亜鉛めっき用洗浄液に、アルカリ処理工程が施された熱間圧延鋼帯または冷間圧延鋼帯を接触させる洗浄工程。
(iii)洗浄工程が施された熱間圧延鋼帯または冷間圧延鋼帯を乾燥させる乾燥工程。
(i)アルカリ処理工程
アルカリ処理工程は、熱間圧延鋼帯または冷間圧延鋼帯(以下、これらを「鋼帯」と総称する。)の表面に付着した油分や汚れを除去し、その表面を活性化するための工程である。公知のアルカリ処理液、例えば珪酸塩、リン酸塩、金属水酸化物などを含有する水溶液を用いることができ、処理条件(pH、温度、接液時間など)は処理液の組成、処理される鋼帯の汚れの程度などを考慮して適宜設定される。一例を挙げれば、NaOHを含有するアルカリ処理液(pH14.0,濃度5%)を用いた場合には、液温を50℃程度にすると、10秒程度の接液時間で鋼帯表面の油分や汚れを除去することが実現される。
上記のアルカリ処理工程が施された鋼帯をそのまま、好ましくはその鋼帯を水洗した後、ジカルボン酸類を含有する水性の溶融亜鉛めっき用洗浄液(以下、「洗浄液」と略記する。)に接触させる洗浄工程を行う。
上記の洗浄工程またはこれに引き続いて行われる薄膜化工程により表面にジカルボン酸類を含む洗浄液が付着した鋼帯は、すみやかに次工程である乾燥工程に供され、その表面が乾燥される。
本発明に係るめっき処理および合金化処理方法は次の工程を備える。
(i)熱間圧延鋼帯または冷間圧延鋼帯を700℃以上900℃以下の温度域で30秒間以上60秒間以下焼鈍する焼鈍処理、
(ii)焼鈍処理が施された熱間圧延鋼帯または冷間圧延鋼帯を、3℃/s以上200℃/s以下の冷却速度で350℃以上550℃以下の温度域まで冷却する冷却処理、
(iii)冷却処理が施された熱間圧延鋼帯または冷間圧延鋼帯を、350℃以上550℃以下の温度域で10秒間以上90秒間以下保持する保持処理、および
(iv)保持処理が施された熱間圧延鋼帯または冷間圧延鋼帯を、全Al濃度を0.08質量%以上0.5質量%以下に調整した溶融亜鉛めっき浴に浸漬するめっき処理、
ここで、
焼鈍処理から保持処理における雰囲気中水素濃度は2体積%以上40体積%以下、かつ焼鈍処理における雰囲気の露点DMと保持処理における雰囲気の露点DLとは次の関係を満たす:
DL≦−30℃
DM−DL≧10℃。
(i)焼鈍処理工程
焼鈍処理工程では、乾燥工程を経て表面に洗浄液に含まれるジカルボン酸類が付着した鋼帯を、700℃以上900℃以下の温度域で30秒間以上60秒間以下焼鈍する。
なお、焼鈍工程に先立って、通常の溶融亜鉛めっきラインで行われるような無酸化炉や直火炉による母材の加熱を行ってもよい。
冷却工程では、焼鈍処理工程後の鋼帯を、3℃/s以上200℃/s以下の冷却速度で350℃以上550℃以下の温度域まで冷却する。
保持処理工程では、冷却処理工程によって350℃以上550℃以下の温度域に冷却された鋼帯を、その温度域で10秒間以上90秒間以下保持する。
めっき処理工程では、保持処理工程を経た鋼帯を、全Al濃度を0.08質量%以上0.5質量%以下に調整した溶融亜鉛めっき浴に浸漬し、鋼帯の表面に亜鉛めっき層を形成させる。
本発明においてめっき付着量は特に限定されないが、高い耐食性と優れた経済性とを両立させる観点より、片面当たり10〜200g/m2とすることが好適である。
さらに、必要に応じ、上記のめっき処理工程を経て得られた溶融亜鉛めっき層を有する鋼帯に対して、450℃以上580℃以下の温度域で合金化処理を行う合金化処理工程を行ってもよい。
(実施例1)
1.評価サンプルの作製
実験用真空溶解炉を用いて、表1に示される化学組成を有する鋼を溶解し、鋳造した。脱酸はTiまたはAlを使用して行った。
薄膜化された洗浄液が表面に付着した鋼帯を、薄膜化後5秒程度で炉内温度が60℃に維持された乾燥炉に搬送し、洗浄液の水分を揮発させてコハク酸などを鋼帯の表面に付着させた。
Alを0.13質量%含有し、液温が460℃に維持された溶融亜鉛めっき槽内に、上記の熱処理を経た鋼帯を通過させて、溶融亜鉛めっきを行った。めっき後、ガスワイピングを行って付着量を50g/m2以上60g/m2以下に制御した。
続いて、一部の溶融亜鉛めっき層が形成された鋼帯については、これを500℃に加熱して合金化処理を行った。
得られためっき鋼帯について、次の評価を行った。
めっき鋼帯から50mm×50mmの大きさの評価試験片を切り出し、その表面に形成された溶融亜鉛めっき層を目視で観察し、不めっき部の有無を確認した。
合金化処理の時間を変更して得られた複数の合金化溶融亜鉛めっき皮膜を10%塩酸中へ溶解し、ICPにてめっき皮膜の元素分析を行い、合金化度が8%になる時間を測定した。
めっき鋼帯から切り出した評価試験片を樹脂に埋め込んでバフ研摩し、断面観察用サンプルを作製した。断面をナイタールでエッチングしたのち、電子顕微鏡で観察した。結晶粒の大きさを中心に観察し、表面近傍の結晶粒径が大きくなっている場合には、脱炭層が表面部に形成されていると判断した。
評価結果を表4に示す。
実施例1において得られた冷間圧延鋼帯を巻き戻し、この鋼帯に対して実施例1と同様のアルカリ処理を行った。アルカリ処理が行われた鋼帯を純水にて水洗し、コハク酸を10g/L含有し溶媒が純水である洗浄液を水洗後の鋼帯に30秒間スプレー噴射した。
初期酸化加熱:大気中で、550℃にて1秒間加熱。
焼鈍処理工程:水素濃度が4体積%、露点が−10℃、残部窒素からなる雰囲気で、850℃にて60秒間加熱。
冷却工程:10℃/秒で500℃まで冷却。
保持処理工程:水素濃度が4体積%、露点が−40℃、残部窒素からなる雰囲気で、500℃にて60秒間加熱。
Claims (3)
- Siの含有量が0.2質量%以上である化学組成を有する鋼からなる熱間圧延鋼帯または冷間圧延鋼帯に対して、次の(1)〜(3)の工程を施し、過時効帯を有する連続溶融めっきラインを用いて、次の(4)〜(7)の工程を施すことを特徴とする溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法:
(1)前記熱間圧延鋼帯または冷間圧延鋼帯をアルカリ処理液に接触させるアルカリ処理工程、
(2)前記アルカリ処理工程が施された熱間圧延鋼帯または冷間圧延鋼帯を、一般式HOOC−(CH 2 ) n −COOHで表されnが8以下であるジカルボン酸およびその塩から選ばれる一種または二種以上を0.01質量%以上含有する溶融亜鉛めっき用洗浄液に接触させる洗浄工程、
(3)前記洗浄工程が施された熱間圧延鋼帯または冷間圧延鋼帯を乾燥させる乾燥工程、
(4)前記乾燥工程が施された熱間圧延鋼帯または冷間圧延鋼帯を700℃以上900℃以下の温度域で30秒間以上60秒間以下焼鈍する焼鈍処理工程、
(5)前記焼鈍処理工程が施された熱間圧延鋼帯または冷間圧延鋼帯を、3℃/s以上200℃/s以下の冷却速度で350℃以上550℃以下の温度域まで冷却する冷却工程、
(6)前記冷却工程が施された熱間圧延鋼帯または冷間圧延鋼帯を、350℃以上550℃以下の温度域で10秒間以上90秒間以下保持する保持処理工程、および
(7)前記保持処理工程が施された熱間圧延鋼帯または冷間圧延鋼帯を、全Al濃度を0.08質量%以上0.5質量%以下に調整した溶融亜鉛めっき浴に浸漬するめっき処理工程、
ここで、
前記焼鈍処理工程から前記保持処理工程における雰囲気中水素濃度は2体積%以上40体積%以下であって、かつ
前記焼鈍処理工程における雰囲気の露点DMと前記保持処理工程における雰囲気の露点DLとは次の関係を満たす:
DL≦−30℃
DM−DL≧10℃。 - 前記洗浄工程に引き続いて、当該洗浄工程後の熱間圧延鋼帯または冷間圧延鋼帯の表面に付着する前記溶融亜鉛めっき用洗浄液を薄膜化する薄膜化工程を備え、
前記乾燥工程では、当該薄膜化工程が施された熱間圧延鋼帯または冷間圧延鋼帯の乾燥が当該薄膜化工程終了後30秒以内に行われる
請求項1記載の溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。 - 請求項1または請求項2に記載される製造方法により製造された溶融亜鉛めっき鋼板に対して450℃以上580℃以下の温度域で合金化処理を行うことを特徴とする合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
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