JP5481492B2 - 水反応性Al複合材料、水反応性Al膜、このAl膜の製造方法、及び成膜室用構成部材 - Google Patents

水反応性Al複合材料、水反応性Al膜、このAl膜の製造方法、及び成膜室用構成部材 Download PDF

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Description

本発明は、水反応性Al複合材料、水反応性Al膜、このAl膜の製造方法、及び成膜室用構成部材に関し、特にTiを添加したAlを用いる水反応性Al複合材料、この水反応性Al複合材料からなる水反応性Al膜、このAl膜の製造方法、及びこのAl膜で覆われた成膜室用構成部材に関する。
スパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング法、CVD法等により薄膜を形成するための成膜装置において、その装置内に設けられる成膜室用構成部材には、成膜プロセス中に成膜材料からなる金属又は金属化合物の膜が不可避的に付着する。この成膜室用構成部材としては、例えば、基板以外の真空容器内部に膜が付着するのを防止するための防着板や、シャッターや、基板の所定の場所だけに成膜するために用いるマスクや、基板搬送用トレイ等を挙げることができる。成膜プロセス中に、これらの部材にも目的とする薄膜(基板上に形成すべき薄膜)と同組成の膜が付着する。これらの部材は、付着膜の除去後、繰返し使用されるのが通常である。
これら成膜室用構成部材に不可避的に付着する膜は、成膜プロセスの作業時間の長さに応じて厚くなる。このような付着膜は、その内部応力や繰返しの熱履歴による応力によって成膜室用構成部材からパーティクルとなって剥離され、基板に付着し、膜欠陥の生じる原因となる。そのために、成膜室用構成部材は、付着膜の剥離が生じない段階で、成膜装置から取り外され、洗浄して付着膜を除膜し、その後に表面仕上げして、再使用するというサイクルが定期的に行われている。
成膜材料として、例えば、Al、Mo、Co、W、Pd、Nd、In、Ti、Re、Ta、Au、Pt、Se、Ag等の有価金属を用いる場合、基板上への膜形成に与らずに、基板以外の構成部材に付着した金属を回収すると共に、構成部材をリサイクルするための処理技術の確立が求められている。
例えば、成膜装置において基板以外の装置内壁や各成膜室用構成部材表面等への成膜材料の付着を防止するために用いる防着板の場合、成膜時についた付着物を除膜して再利用しているのが現状である。この付着物の除膜法としては、サンドブラスト法や、酸やアルカリによるウェットエッチング法や、過酸化水素等による水素脆性を利用した除膜法や、さらには電気分解を利用した除膜法が一般的に行われている。この場合、付着物の除膜処理を実施する際に、防着板も少なからず溶解して損傷を受けるので、再利用回数には限りがある。そのため、防着板の損傷を出来るだけ少なくするような除膜法の開発が望まれている。
上記サンドブラスト法において発生するブラスト屑や、酸やアルカリ処理等の薬液処理において生じる廃液中の除膜された付着膜の濃度が低いと、有価金属の回収費用は高くなり、採算がとれない。このような場合には、廃棄物として処理されているのが現状である。
上記薬液処理ではまた、薬液自体の費用が高いだけでなく、使用済み薬液の処理費用も高いことから、また、環境汚染を防止する面からも、薬液の使用量をできるだけ少なくしたいという要望がある。さらに、上記のような薬液処理を行うと、防着板から除膜された成膜材料は新たな化学物質に変質するので、除膜された付着物から成膜材料のみを回収するにはさらに費用が加算される。従って、回収コストに見合った単価の成膜材料のみが回収対象になっているのが現状である。
上記したような付着膜の除膜法以外に、水分の存在する雰囲気中で反応して溶解し得る性質を有する水反応性Al複合材料からなるAl膜で被覆した構成部材を備えた装置内で成膜プロセスを実施し、成膜中に付着した膜をAl膜の反応・溶解により除膜・分離せしめ、この除膜された付着膜から成膜材料の有価金属を回収する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。この水反応性Al複合材料は、Al若しくはAl合金とIn、Sn、In及びSn、又はそれらの合金とからなっている。
特開2005−256063号公報(特許請求の範囲)
本発明の課題は、上述の従来技術の問題点を解決することにあり、2N〜5NAlを用いた、水分の存在する雰囲気中で反応して溶解し得るAl複合材料、このAl複合材料からなるAl膜、このAl膜の製造方法、及びこのAl膜で覆われた成膜室用構成部材を提供することにある。
本発明の水反応性Al複合材料は、2NAl〜5NAlから選ばれたAlに、Al基準で、2.0〜5.0wt%のIn、並びに0.05〜1.0wt%のTi、V、及びZrから選ばれた金属を添加してなることを特徴とする。
Al複合材料がこのような組成を有することにより、この材料から得られたAl膜は、Al中の不純物Cuの量に関係なく、水分の存在する雰囲気中で容易に水素を発生して溶解する。
上記水反応性Al複合材料からなるAl溶射膜において、Inの添加量が2.0wt%未満であると、水分との反応性が低下し、5.0wt%を超えると、水分との反応性が非常に高くなり、大気中の水分と反応してしまう場合があり、また、Ti、V、及びZrから選ばれた金属の添加量が0.05wt%未満であると、この金属を添加しない場合と同じであって、所望の効果を得ることができず、1.0wt%を超えると、Al複合材料から溶射により得られるAl膜が硬くなり、目的とする水反応性、即ち水への溶解性が低下する。
本発明の水反応性Al膜は、上記水反応性Al複合材料からなることを特徴とする。
本発明の水反応性Al膜の製造方法は、2NAl〜5NAlから選ばれたAlに、Al基準で、2.0〜5.0wt%のIn、並びに0.05〜1.0wt%のTi、V、及びZrから選ばれた金属を添加した材料を組成が均一になるように溶融し、この溶融材料を基材表面に対して大気雰囲気中で溶射し、その後大気雰囲気中にさらして凝固させることにより成膜することを特徴とする。
本発明の成膜装置の成膜室用構成部材は、上記水反応性Al複合材料からなる水反応性Al膜又は上記水反応性Al膜の製造方法により製造された水反応性Al膜を表面に備えたことを特徴とする。
上記構成部材は、防着板、シャッター又はマスクであることを特徴とする。
本発明の水反応性Al複合材料からなるAl膜は、溶射などの簡単なプロセスで安いコストで容易に製造できる。このAl膜はまた、300〜350℃程度の高温での成膜プロセスからの熱履歴を経た後でも、Al中の不純物Cuの量に関係なく、水分の存在する雰囲気中で反応して溶解し得る性質を持っているという効果を奏する。
本発明のAl膜は、水分の存在下で水素を発生しながら効率的に溶解するので、この水反応性Al膜で覆われた成膜室用構成部材(例えば、防着板、シャッター及びマスク等)を備えた成膜装置を用いて成膜すれば、成膜プロセス中に防着板等の表面に付着する成膜材料からなる不可避的な付着膜を、このAl膜の反応・溶解により除膜・分離せしめ、この除膜された付着膜から成膜材料の有価金属を容易に回収することができ、また、除膜・分離の際に構成部材に損傷を与えることが殆どないので、その再使用回数を格別に増加せしめるという効果を奏する。
実施例1で得られたAl溶射膜におけるAl純度が、Ti添加の有無による溶射膜溶解性に及ぼす影響を示すための、熱処理(熱履歴)温度(℃)と溶解電流密度(mA/cm)との関係を示すグラフ。 実施例1で得られたAl溶射膜におけるAl中の不純物Cuが溶射膜溶解性に及ぼす影響を示すための、熱処理(熱履歴)温度(℃)と溶解電流密度(mA/cm)との関係を示すグラフ。 実施例1で得られたAl溶射膜におけるAl中の不純物Cuの含量がTi添加の有無による溶射膜溶解性に及ぼす影響を示すための、熱処理(熱履歴)温度(℃)と溶解電流密度(mA/cm)との関係を示すグラフ。 実施例1で得られたAl溶射膜におけるAl純度が、Ti添加の有無による溶射膜溶解性に及ぼす影響を示すための、熱処理(熱履歴)温度(℃)と溶解電流密度(mA/cm)との関係を示すグラフ。 (a)及び(b)は、8%冷間加工した4NAlの再結晶に及ぼす添加元素(質量%)の効果を示すものであって、(a)は普通添加元素の場合の、各温度で30分焼なまし後に検鏡によって測定した再結晶温度(℃)を示し、(b)は特殊添加元素の再結晶温度(℃)を示し、(c)は純銅の再結晶温度(℃)上昇に及ぼす微量合金元素(質量%)の影響を示すグラフ。 実施例2で得られたAl溶射膜におけるTi又はVを添加したAl−In組成におけるAl中の不純物Cuの含量がTi又はV添加の有無による溶射膜溶解性に及ぼす影響を示すための、熱処理(熱履歴)温度(℃)と溶解電流密度(mA/cm)との関係を示すグラフ。 実施例3で得られたAl溶射膜に対する不純物Cuの影響を示すための、熱処理(熱履歴)温度(℃)と溶解電流密度(mA/cm)との関係を示すグラフ。 実施例4で得られたAl溶射膜における熱処理(熱履歴)温度(℃)と熱処理(熱履歴)時間とが溶射膜溶解性に及ぼす影響を示すための、熱処理(熱履歴)時間(hr)と溶解電流密度(mA/cm)との関係を示すグラフ。 実施例5で得られたAl溶射膜におけるTi添加の有無による熱処理(熱履歴)時間(hr)と溶解電流密度(mA/cm)との関係を示すグラフ。 実施例5で得られたAl溶射膜が200時間までの熱履歴を受けた場合における、250℃での熱処理(熱履歴)時間(hr)と溶解時間(hr)との関係を示すグラフ。 実施例6で得られたAl溶射膜付基材から除膜した付着膜(溶射膜)の状態を示すSEM像であり、(a)は、4NAl(不純物Cu:検出限界以下)−3.0wt%Inの場合、(b)は、4NAl(不純物Cu:40ppm)−3.0wt%Inmの場合、及び(c)は、4NAl(不純物Cu:40ppm)−3.0wt%In−0.2wt%Tiの場合に観測されたSEM像。
成膜装置を用いてスパッタリング法等の各種成膜方法により薄膜を製造する場合、成膜室内はプロセス温度による繰り返しの熱履歴を受ける。そのため、本発明の水反応性Al複合材料からなるAl膜を利用して成膜室内に不可避的に付着する膜を除膜しようとする場合、Al膜でコーティングされた防着板等の成膜室内に設けられた構成部材の表面も繰り返しの熱履歴を受ける。従って、熱履歴を受ける前の溶射(アーク溶射、フレーム溶射)成膜時のAl膜が、安定で取り扱いやすいと共に、成膜プロセスにおける熱履歴を経た後の不可避的な付着膜の付着したAl膜が、容易に基材から除膜できるような溶解性(活性)を有し、かつ安定であることが必要である。本発明の水反応性Al膜の場合、そのような溶解性を十分に満足するものである。
上記成膜室内での熱履歴の上限温度は、例えば、スパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング法、CVD法等による成膜の場合、300〜350℃程度であるので、一般に300℃までの熱履歴を経たAl膜が水反応性を有するものであれば実用上十分であり、好ましくは350℃までの熱履歴を経たAl膜が水反応性を有するものであればさらに良い。
上記溶射膜溶解性については、Al膜で覆われた基材を所定の温度(40〜130℃、好ましくは80〜100℃)の温水(好ましくは、脱イオン水)に所定の時間浸漬した際の液中の電流密度(本発明では、溶解電流密度(mA/cm)と称す)で評価する。この測定方法は、サンプルの処理液浸漬前後の質量減少を測定し、表面積、浸漬処理時間等から電流密度の値に換算する方法である。この方法により測定された溶解電流密度が、50mA/cm以上あれば、成膜プロセスにおける熱履歴を経た後の不可避的な付着膜の付着したAl膜が基材から付着膜ごと容易に除膜できる溶解性(活性)を有するものといえる。
本発明者らは、熱履歴を経た後の各種Al溶射膜の溶解性について検討している過程で、Al中に存在する不純物Cuの量に依存して、Al膜の溶解性が変動するが、Al−In系にTi、V、及びZrから選ばれた金属を所定量添加することにより、その溶解性が改良されることに気がついた。すなわち、2NAl〜5NAlから選ばれたAlに、Al基準で、2.0〜5.0wt%のIn、及び0.05〜1.0wt%、好ましくは0.1〜1.0wt%、より好ましくは0.13〜0.6wt%のTi、V、及びZrから選ばれた金属を添加してなる水溶性Al複合材料から得られるAl膜によれば、不純物Cuの含量に関係なく、所期の目的を達成できることに気が付いた。Ti、V、及びZrから選ばれた金属の添加量が0.05wt%未満であり、1.0wt%を超えると、上記のような問題が生じる。また、これら金属の添加量が0.1wt%の方が0.05wt%よりも水への溶解性が高く、また、0.9wt%の方が1.0wt%よりも得られるAl膜が硬くなく、水への溶解性が高い。
本発明では、純度2N(99%)、3N(99.9%)、4N(99.99%)及び5N(99.999%)のAlに対して有効である。このうち、4NAl及び5NAlは、例えば電解法により得られた2N(99%)Al、3N(99.9%)Alをさらに3層電解法によって、又は部分凝固法(偏析法)による凝固時の固相と液相との温度差を利用する方法等によって得られる。これらのAl中の主な不純物は、Fe、Siであり、その他にCu、Ni、C等が含まれており、その含量はAl原料の産地その他により異なる。
本発明の水反応性Al複合材料からなるAl膜は、2NAl〜5NAl中にInとTi、V、及びZrから選ばれた金属とが均一に高度に分散しているので、Al中に存在する不純物Cuの量に関係なく、水、水蒸気、水溶液等のような水分の存在する雰囲気中で容易に反応して溶解する。
一般に、Al−In系においては、AlとInとの間の電気化学的電位差が非常に大きいが、Alの自然酸化膜が存在すると、Alのイオン化が進まない。しかし、一度自然酸化膜が破れ、Inと直接結合すると、その電位差がAlのイオン化を急激に促進させる。その際、Inは、化学的に変化することなく、そのままの状態でAl結晶粒中に高度に分散して存在している。Inは、低融点で、かつAlとは固溶体化しないので、AlとInとの密度差に注意を払いつつ、AlとInとを組成が均一になるように溶融せしめた材料を溶射法に従って基材に対して溶射すると、急冷凝固とその圧縮効果により所望のAl膜が得られる。
この場合と同様に、AlとInとTi、V、及びZrから選ばれた金属とを組成が均一になるように溶融せしめた材料を溶射法に従って基材に対して溶射すると、急冷凝固とその圧縮効果により本発明のAl膜が得られる。
添加されたInとTi、V、及びZrから選ばれた金属とは溶射プロセスによってAl結晶粒中に高度に分散し、Alと直接接触した状態を保っている。In(Ti、V、Zr)はAlと安定層を作らないので、Al/In(Ti、V、Zr)界面は高いエネルギーを保持しており、水分の存在する雰囲気中では水分との接触面で激しく反応する。また、添加元素であるInとTi、V、及びZrから選ばれた金属とが高度な分散状態にあることに加えて、発生するH気泡の膨張による機械的作用により、AlOOHを主体とする反応生成物は表面で皮膜化することなく微粉化して液中へ散り、溶解反応は次々に更新される反応界面で持続的、爆発的に進む。
上記のようなAl−In−Ti、V、及びZrから選ばれた金属系の挙動は、Al純度には関係なく、2NAl〜5NAlにおいて同様に生じる。
また、Al−In系の場合、Al中に存在する不純物Cuの含量に依存して、熱履歴を経た後のAl溶射膜の溶解性に与える影響が大きい。Cu含量が多い(例えば、40ppm)と、高温の熱履歴を経た後のAl溶射膜の溶解性は劣り、付着膜の除膜処理の際に水の温度を高くしても除膜し難くなる。また、Cu含量が低い(例えば、10ppm)場合でも、付着膜の除膜処理のための水の温度を高くしなければならない場合がある(例えば、100℃以上)。しかしながら、Al−In系にTi、V、及びZrから選ばれた金属の所定量を添加することにより、Cu含量に関係なく、所望の溶解性を示すことができる。
以下、主に4NAl−In−Tiからなる水反応性Al複合材料を例にとり説明する。Al溶射膜は、In及びTiが4NAl中に一様に分散したAl−In−Ti複合材料を用いて、溶射法に従って所定の雰囲気中で被処理基材の表面に成膜することにより製造される。得られたAl−In−Ti溶射膜は、Al結晶粒の中にIn及びTi結晶粒(粒径10nm以下)が均一に高度に分散した状態で含まれている。
上記Al溶射膜は、例えば次のようにして製造される。4NAl、In及びTiを用意し、このAlに対して、2.0〜5.0wt%のIn、及び0.05〜1.0wt%、好ましくは0.1〜1.0wt%、より好ましくは0.13〜0.6wt%のTiを配合し、Al中にIn及びTiを均一に溶解させて、ロッド又はワイヤー形状に加工した物を溶射材料として用い、例えばフレーム溶射法により、空気中で、公知の溶射条件で、成膜装置の防着板等の成膜室用構成部材となる基材の表面に吹き付けて急冷凝固させ、被覆することにより所望の水反応性Al溶射膜を備えた基材を製造することができる。かくして得られたAl溶射膜は、上記したように、Al結晶粒中にIn及びTiが高度に分散した状態で存在している膜である。
上記したようにAl溶射膜で被覆された基材を温水中に浸漬し、又は水蒸気を吹きつけると、例えば所定の温度の温水中に浸漬した場合、浸漬直後から反応が始まって、水素ガスが発生し、さらに反応が進むと析出したIn等により水が黒色化し、最終的に、溶射膜は水との激しい反応により微粉化し、全て溶解し、温水中にはAl、In、Ti(V、Zr)等が沈殿として残る。この反応は、水温が高いほど激しく反応が進む。
上記溶射膜は、ロッド又はワイヤー形状の材料を用いたフレーム溶射で形成した例で説明したが、粉末状の材料を用いたフレーム溶射でもよく、さらにはアーク溶射、プラズマ溶射でもよい。本発明では、これらの溶射法に従って、公知のプロセス条件で、上記した原材料を溶融し、基材表面に吹き付けて急冷凝固させ、溶射膜を形成する。
上記したように、成膜装置の成膜室内に設けられる防着板やシャッター等の成膜室用構成部材として、その表面を本発明の水反応性Al膜で覆ったものを使用すれば、所定の回数の成膜プロセス後に、成膜材料が不可避的に付着した成膜室用構成部材からこの付着膜を簡単に除膜し、有価金属を容易に回収することができる。
この場合、剥離処理液として、化学薬品を用いることなく、単に純水等の水や水蒸気や水溶液を用いるため、防着板等の成膜室用構成部材の溶解による損傷を回避することができ、これらの再利用回数が薬品を使用する場合と比べて飛躍的に増加する。また、薬品を使用しないため、処理コストの大幅削減や環境保全にもつながる。さらに、防着板等の成膜室用構成部材に付着する多くの成膜材料は水に溶解しないので、成膜材料と同じ組成のものが同じ形態のままの固体として回収できるというメリットもある。さらにまた、回収コストが劇的に下がるのみならず、回収工程も簡素化されるので、回収可能材料の範囲が広がるというメリットもある。例えば、成膜材料が貴金属やレアメタルのように高価な金属である場合、本発明の水反応性Al複合材料からなる溶射膜を防着板等の成膜室用構成部材に適用しておけば、成膜中に不可避的に付着した膜を有する成膜室用構成部材を水中に浸漬し或いは水蒸気を吹き付けることによって、成膜材料からなる付着膜を除膜できるので、汚染を伴わずに、貴金属やレアメタル等の回収が可能である。回収コストが安価であると共に、成膜材料を高品質のまま回収できる。
以下、本発明について、参考例及び実施例に基づき詳細に説明する。
(参考例)
2NAl、3NAl及び4NAlを用い、Inを添加したAl−In組成におけるAl純度と、Al中の不純物Cu量と、得られた溶射膜の溶解性との関係を検討した。Inの添加量は、Al重量基準である。
(a)2NAl(不純物Cu:<400ppm)−3.0wt%In
(b)3NAl(不純物Cu:70ppm)−3.0wt%In
(c)3NAl(不純物Cu:検出限界以下)−3.0wt%In
(d)4NAl(不純物Cu:検出限界以下)−3.0wt%In
Al及びInを上記の割合で配合し、Al中にInを均一に溶解させてロッド形状に加工した溶射材料を用い、溶棒式フレーム溶射(熱源:C−Oガス、約3000℃)によって、大気雰囲気中で、アルミニウム製基材の表面に吹き付けて溶射膜を形成した。かくして得られた各溶射膜に対して、成膜プロセスから受ける熱履歴の代わりに常温〜350℃の熱処理(大気中、1時間、炉冷)を施した。熱処理を受ける前の状態(常温)の溶射膜付基材及び熱処理を経た後(熱履歴を経た後)の溶射膜付基材を80℃の純水300ml中に浸漬し、各溶射膜の溶解性を浸漬液の電流密度(mA/cm)を測定して検討した。
2NAl〜4NAlのAl溶射膜の溶解性に関する検討の結果、4NAlであって不純物Cuの量が検出限界以下である場合のAl溶射膜に対する溶解度は、2NAl及び3NAlの場合と比べて高く、3NAl及び4NAlであって、不純物Cuの量が検出限界以下である場合には、熱処理温度350℃で溶解電流密度が50mA/cm以上あり、溶解可能であることが分かった。しかし、2NAl及び3NAlであって不純物Cuの含量が70ppm以上である場合には、350℃の熱処理(熱履歴)を経た溶射膜は十分な溶解性がなかった。この場合、処理液温度を100℃にしても溶解出来なかった。
また、4NAl(不純物Cu:30ppm)−2.5wt%In及び4NAl(不純物Cu:10ppm)−4.0wt%Inについても、上記と同様に実施したところ、350℃の熱処理(熱履歴)を経た溶射膜も同様に十分な溶解性はなかった。
本実施例では、以下のように、4NAlにInを添加したAl−In、4NAlにIn及びTiを添加したAl−In−Ti、並びに5NAlにInを添加したAl−Inを用い、Tiを添加したAl−In組成におけるAl純度と、Ti添加の有無による溶射膜溶解性との関係を検討した(図1参照)。In及びTiの添加量はAl重量基準である。
(a)4NAl(不純物Cu:検出限界以下)−3.0wt%In−0.2wt%Ti
(b)5NAl(不純物Cu:検出限界以下)−3.0wt%In
(c)4NAl(不純物Cu:検出限界以下)−3.0wt%In
また、以下のように、不純物Fe、Si、Cu、Ni、及びCを含む4NAlにInを添加したAl−Inを用い、不純物が溶射膜溶解性に与える影響を検討した(図2参照)。In及びTiの添加量はAl重量基準である。
(a)4NAl(不純物Cu:10ppm、Fe:80ppm、Si:100ppm、Ni:<10ppm)−3.0wt%In
(b)ULMAT産4NAl(不純物Cu:40ppm、Fe:40ppm、Si:80ppm、Ni:<10ppm)−3.5wt%In
(c)4NAl(不純物Cu:10ppm、Fe:60ppm、Si:100ppm、Ni:検出限界以下)−3.0wt%In
(d)ULMAT産4NAl(不純物Cu:40ppm、Fe:110ppm、Si:100ppm、Ni:<10ppm、C:30ppm)−3.0wt%In
(e)中国産3NAl(不純物Cu:70ppm、Fe:120ppm、Si:100ppm、Ni:30ppm)−3.0wt%In
さらに、以下のように、4NAlにInを添加したAl−In、並びに4NAlにIn及びTiを添加したAl−In−Tiを用い、Tiを添加したAl−In組成におけるAl中の不純物Cuの含量と、Ti添加の有無による溶射膜溶解性との関係を検討した(図3参照)。In及びTiの添加量はAl重量基準である。
(a)4NAl(不純物Cu:検出限界以下)−2.7wt%In−0.20wt%Ti
(b)4NAl(不純物Cu:30ppm)−3.0wt%In−0.40wt%Ti
(c)4NAl(不純物Cu:40ppm)−3.0wt%In−0.56wt%Ti
(d)4NAl(不純物Cu:検出限界以下)−3.0wt%In
(e)4NAl(不純物Cu:30ppm)−3.5wt%In
(f)4NAl(不純物Cu:40ppm)−3.0wt%In
さらにまた、以下のように、2NAlにInを添加したAl−In、2NAlにIn及びTiを添加したAl−In−Ti、3NAlにInを添加したAl−In、3NAlにIn及びTiを添加したAl−In−Ti、並びに4NAlにInを添加したAl−In及び4NAlにIn及びTiを添加したAl−In−Tiを用い、Tiを添加したAl−In組成におけるAl純度と、Ti添加の有無による溶射膜溶解性との関係を検討した(図4参照)。In及びTiの添加量はAl重量基準である。
(a)2NAl(不純物Cu:検出限界以下)−3.0wt%In
(b)2NAl(不純物Cu:検出限界以下)−3.0wt%In−0.15wt%Ti
(c)3NAl(不純物Cu:検出限界以下)−3.0wt%In
(d)3NAl(不純物Cu:検出限界以下)−3.0wt%In−0.11wt%Ti
(e)4NAl(不純物Cu:検出限界以下)−3.0wt%In
(f)4NAl(不純物Cu:検出限界以下)−3.0wt%In−0.13wt%Ti
Al、In、Tiを上記の割合で配合し、Al中にIn、In/Tiを均一に溶解させてロッド形状に加工した溶射材料を用い、溶棒式フレーム溶射(熱源:C−Oガス、約3000℃)によって、大気雰囲気中で、アルミニウム製基材の表面に吹き付けて溶射膜を形成した。かくして得られた各溶射膜に対して、成膜プロセスから受ける熱履歴の代わりに常温〜350℃の熱処理(大気中、1時間、炉冷)を施した。熱処理を受ける前の状態(常温)の溶射膜付基材及び熱処理を経た後(熱履歴を経た後)の溶射膜付基材を80℃の純水300ml中に浸漬し、各溶射膜溶解性を浸漬液の電流密度を測定して検討した。得られた結果を、図1〜4に示す。図1は、Al純度と、Ti添加の有無による溶射膜溶解性との関係を示すグラフであり、図2は、Al中の不純物Cuによる溶射膜溶解性に与える影響を示すグラフであり、図3は、Al中の不純物Cuの含量と、Ti添加の有無による溶射膜溶解性との関係を示すグラフであり、図4は、Al純度と、Ti添加の有無による溶射膜溶解性との関係を示すグラフである。図1〜4において、横軸は熱処理(熱履歴)温度(℃)であり、縦軸は溶解電流密度(mA/cm)である。
図1から明らかなように、4NAl−InにTiを添加することにより、Tiを添加していない5NAl−Inの場合よりも高い溶射膜溶解性が発現していることが分かる。
図2から明らかなように、溶射膜溶解性はFe、Si濃度に殆ど依存しないが、CuはAl−In溶射膜の水反応性を低下させ、溶解性を低下させることが分かる。
図3から明らかなように、Tiの添加により、Tiを添加していない場合よりも高い溶射膜溶解性が発現していること、また、Al中に所定量の不純物Cuが含まれていると、Al−In組成の場合、溶射膜溶解性は低いが、Tiの添加により、高い溶射膜溶解性が発現していることが分かる。すなわち、Tiを添加することにより、Cuの影響を少なくすることが可能である。2NAl及び3NAlの場合も同様な傾向を示す。
図4から明らかなように、2NAl−In、3NAl−In及び4NAl−InのそれぞれにTiを添加することにより、Tiを添加していない場合よりも、高温で高い溶射膜溶解性が発現していることが分かる。
上記したように、Tiの添加により高い溶射膜溶解性が発現するのは、図5(a)〜(c)に示すように、TiがAlの再結晶温度(150〜200℃)を上昇させる効果があるからであり、再結晶温度が高くなれば、Inの偏析、Al−Cuの抑制が可能になる結果であると考えられる。図5(a)及び(b)は、8%冷間加工した4NAlの再結晶に及ぼす添加元素(質量%)の効果を示すグラフであり、(a)は普通添加元素の場合の、各温度で30分焼なまし後に検鏡によって測定した再結晶温度(℃)を示すグラフであり、(b)は特殊添加元素の再結晶温度(℃)を示すグラフであり、(c)は純銅の再結晶温度(200〜250℃)の上昇に及ぼす微量合金元素(質量%)の影響を示すグラフである。図5(a)〜(c)から明らかなように、Tiの他に、V及びZr等もAlの再結晶温度を上昇させることができる。
本実施例では、以下のように、所定量の不純物Cuを含む4NAlに対して、Inを添加したAl−In、Tiを添加したAl−In−Ti、及びVを添加したAl−In−Vを用い、Ti又はVを添加したAl−In組成におけるAl中の不純物Cuの含量と、Ti又はV添加の有無による溶射膜溶解性との関係を検討した(図6参照)。In、Ti、Vの添加量は、Al重量基準である。
(a)4NAl(不純物Cu:40ppm)−3.0wt%In
(b)4NAl(不純物Cu:40ppm)−3.0wt%In−0.05wt%V
(c)4NAl(不純物Cu:40ppm)−3.0wt%In−0.17wt%Ti
Al、In、Ti、Vを上記の割合で配合し、Al中に、In及びTi、又はIn及びVを均一に溶解させてロッド形状に加工した溶射材料を用い、溶棒式フレーム溶射(熱源:C−Oガス、約3000℃)によって、大気雰囲気中で、アルミニウム製基材の表面に吹き付けて溶射膜を形成した。かくして得られた各溶射膜に対して、成膜プロセスから受ける熱履歴の代わりに常温〜350℃の熱処理(大気中、1時間、炉冷)を施した。熱処理を受ける前の状態(常温)の溶射膜付基材及び熱処理を経た後(熱履歴を経た後)の溶射膜付基材を80℃の純水300ml中に浸漬し、各溶射膜溶解性を浸漬液の電流密度を測定して検討した。得られた結果を、図6に示す。図6において、横軸は熱処理(熱履歴)温度(℃)であり、縦軸は溶解電流密度(mA/cm)である。
図6から明らかなように、所定量の不純物Cuを含む4NAl−InにTi又はVを添加することにより、Ti、Vを添加していない4NAl−Inよりも高い溶射膜溶解性が発現していることが分かる。2NAl、3NAl及び5NAlの場合も同様な傾向を示す。
上記したように、Ti又はVの添加により高い溶射膜溶解性が発現するのは、図5(a)〜(c)に示すように、Ti、VがAlの再結晶温度を上昇させる効果があるからである。そのため、図5(c)に示すように、Zrの添加も、再結晶温度を上昇させる効果があることから、Ti及びVの添加と同様に高い溶射膜溶解性を発現する。
本実施例では、実施例1と同様に、以下のような4NAl−In組成の溶射膜を作製して、熱処理(熱履歴)温度と各溶射膜溶解性との関係を検討した。
(a)4NAl(不純物Cu:検出限界以下)−3.0wt%In
(b)4NAl(不純物Cu:40ppm)−3.0wt%In
(c)4NAl(不純物Cu:検出限界以下)−3.0wt%In(+0.001MのCuSO
ただし、上記組成(c)に関しては、溶射膜付基材を浸漬する浸漬液中に0.001MのCuSOを添加したものを用いて電流密度を測定した。この場合、浸漬液中にCu2+(Cu:64ppm)が含まれている。得られた結果を図7に示す。図7において、横軸は熱処理(熱履歴)温度(℃)であり、縦軸は溶解電流密度(mA/cm)である。
図7から明らかなように、Cuが存在する場合(上記組成(b)及び(c))、同じような溶解傾向を示し、Cuを含まない場合(上記組成(a))よりも、高温熱処理(熱履歴)温度での溶射膜溶解性が低いことが分かる。2NAl、3NAl及び5NAlの場合も同様な傾向を示す。
本実施例では、実施例1に従って作製した、以下の合金組成を有するAl−In及びAl−In−Tiの溶射膜に対し、200℃、250℃、275℃の熱処理(熱履歴)温度で、この熱処理(熱履歴)時間を変動させて得た溶射膜付基板を、実施例1と同様に、所定の浸漬液中に浸漬し、各溶射膜溶解性を浸漬液の電流密度を測定して検討した(図8)。
(a)4NAl(不純物Cu:検出限界以下)−3.0wt%In(200℃)
(b)4NAl(不純物Cu:検出限界以下)−3.0wt%In(250℃)
(c)4NAl(不純物Cu:検出限界以下)−3.0wt%In(275℃)
(d)4NAl(不純物Cu:検出限界以下)−2.7wt%In−0.20wt%Ti(250℃)
(e)4NAl(不純物Cu:30ppm)−3.0wt%In−0.40wt%Ti(250℃)
(f)4NAl(不純物Cu:40ppm)−3.0wt%In−0.56wt%Ti(250℃)
(g)4NAl(不純物Cu:検出限界以下)−2.7wt%In−0.20wt%Ti(275℃)
(h)4NAl(不純物Cu:30ppm)−3.0wt%In−0.40wt%Ti(275℃)
(i)4NAl(不純物Cu:40ppm)−3.0wt%In−0.56wt%Ti(275℃)
得られた結果を、図8に示す。図8において、横軸は熱処理(熱履歴)時間(hr)であり、縦軸は溶解電流密度(mA/cm)である。図8から明らかなように、10〜20時間の熱処理(熱履歴)時間で溶射膜溶解性はほぼ一定に安定化する。従って、溶射膜溶解性は、20時間の熱処理(熱履歴)時間で判定が可能であると考えられる。
また、図8における熱処理(熱履歴)温度250℃の場合の溶射膜(上記組成(b)、(d)、(e)及び(f))の溶解性について比較すると、Tiを所定量添加してなる溶射膜の場合、Tiを添加していない溶射膜よりも約2倍高い溶解性を示すことが明らかである。熱処理(熱履歴)温度275℃の場合も250℃とほぼ同じ高い溶解性を示す。
さらに、Tiを添加することにより、不純物Cuによる熱処理(熱履歴)の影響が緩和されることが明らかである。
本実施例では、実施例1に従って作製した、以下の合金組成を有するAl−In及びAl−In−Tiの溶射膜に対し、250℃の熱処理(熱履歴)温度で、この熱処理(熱履歴)時間を100時間まで延長して得た溶射膜付基材を、実施例1と同様に、所定の浸漬液中に浸漬し、各溶射膜溶解性を浸漬液の電流密度を測定して検討した(図9)。
(a)4NAl(不純物Cu:40ppm)−3.3wt%In−0.17wt%Ti
(b)4NAl(不純物Cu:40ppm)−2.9wt%In−0.13wt%Ti
(c)4NAl(不純物Cu:40ppm)−3.3wt%In−0.28wt%Ti
(d)5NAl(不純物Cu:40ppm)−3.0wt%In
図9から明らかなように、Tiを添加することにより、100時間という長時間の熱履歴を受けても、溶射膜溶解性を維持していたが、Tiを添加しないと、溶射膜溶解性は、極めて低く、20時間を過ぎるとほとんど無くなることが分かる。
また、(a)4NAl(不純物Cu:検出限界以下)−3.0wt%In−0.17wt%Ti、(b)4NAl(不純物Cu:40ppm)−3.0wt%In−0.17wt%Ti、及び(c)5NAl(不純物Cu:40ppm)−3.0wt%Inについて、上記と同様にして、ただし200時間までの熱履歴を受けた場合について、250℃での熱処理(熱履歴)時間と溶解時間との関係を検討した。その結果を図10に示す。
図10から明らかなように、Tiを添加することにより、短時間の溶解時間で溶射膜が溶解することが分かる。
本実施例では、(a)4NAl(不純物Cu:検出限界以下)−3.0wt%In、(b)4NAl(不純物Cu:40ppm)−3.0wt%In、及び(c)4NAl(不純物Cu:40ppm)−3.0wt%In−0.2wt%Tiについて、実施例1と同様に溶射膜を製造し300℃で1時間熱処理した後の溶射膜に対してSEM像を観測し、Inの析出粒子に関して検討した。組成(a)〜(c)は、それぞれ、図11(a)〜(c)に対応する。図中、白い部分が析出したIn粒子である。
図11(a)〜(c)から明らかなように、In粒子は、組成(c)<組成(a)<組成(b)の順に大きくなることが分かる。このことからも、Cuが存在すると溶射膜溶解性が低く、Tiを添加することにより溶射膜溶解性が高くなることが分かる。
本実施例では、実施例1に従って作製した図3において示す組成(c)におけるTi含量の0.56wt%を0.03wt%、0.80wt%、1.0wt%、及び1.20wt%に代えて、溶射膜溶解性を検討した。その結果、Ti含量が0.03wt%であるとTiを添加しない場合とほぼ同程度の溶射膜溶解性を示し、0.80wt%及び1.0wt%であると0.56wt%とほぼ同程度の溶射膜溶解性を示し、また、1.20wt%であると1.0wt%より膜が硬くなり、水への溶解性が低かった。
実施例1で得られた4NAl(不純物Cu:40ppm)−3.0wt%In−0.20wt%Ti溶射膜、及び4NAl(不純物Cu:40ppm)−3.0wt%In−0.56wt%Ti溶射膜、並びに実施例2で得られた4NAl(不純物Cu:40ppm)−3.0wt%In−0.05wt%Ti溶射膜で表面が被覆された防着板を設けたスパッタリング装置を用いて白金(Pt)成膜を30サイクル実施した後、このPtの付着した防着板を取り外し、80℃の温水により処理したところ、30分で溶射膜が溶解し、Ptの付着膜が防着板から除膜された。このため、成膜材料であるPtを容易に回収できた。この際、温水中にはAlOOHが沈殿していた。なお、実施例1で得られた4NAl(不純物Cu:40ppm)−3.0wt%In溶射膜で表面が被覆された防着板を用いて同様に実施したところ、付着膜は防着板から除膜し難かった。
本発明の水反応性Al複合材料からなるAl膜によって、スパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング法、CVD法等で金属又は金属化合物の薄膜を形成するための真空成膜装置内の成膜室用構成部材の表面を被覆すれば、成膜プロセス中にこの成膜室用構成部材の表面上に付着した不可避的付着膜を、水分の存在する雰囲気中で除膜し、回収することができる。従って、本発明は、これらの成膜装置を使用する分野、例えば半導体素子や電子関連機器等の技術分野において、成膜室用構成部材の再利用回数を増加させ、有価金属を含んでいる成膜材料を回収するために利用可能である。

Claims (5)

  1. 2NAl〜5NAlから選ばれたAlに、Al基準で、2.0〜5.0wt%のIn、並びに0.05〜1.0wt%のTi、V、及びZrから選ばれた金属を添加してなることを特徴とする水反応性Al複合材料。
  2. 2NAl〜5NAlから選ばれたAlに、Al基準で、2.0〜5.0wt%のIn、並びに0.05〜1.0wt%のTi、V、及びZrから選ばれた金属を添加した材料を組成が均一になるように溶融し、この溶融材料を基材表面に対して大気雰囲気中で溶射し、その後大気雰囲気中にさらして凝固させることにより成膜することを特徴とする水反応性Al膜の製造方法。
  3. 請求項1記載の水反応性Al複合材料からなることを特徴とする水反応性Al膜。
  4. 請求項1記載の水反応性Al複合材料からなる水反応性Al膜又は請求項2記載の方法により製造された水反応性Al膜を表面に備えたことを特徴とする成膜装置の成膜室用構成部材。
  5. 前記構成部材が、防着板、シャッター又はマスクであることを特徴とする請求項4記載の成膜室用構成部材。
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