従来技術の鉄道車両駆動制御装置の構成を図17と図18に示す。
1は直流電源である架線、2は集電器、3は直流回路遮断器、4は直流回路開閉器、5は充電用開閉器、6は充電回路抵抗器、7は平滑リアクトル、8は車輪、9は帰線であるレール、10は電源電圧検出手段、11は平滑コンデンサ、12は直流電圧検出手段、21は車両を駆動する永久磁石形同期電動機、22はインバータ回路である電力変換手段、23U〜23Zはインバータ回路のスイッチング素子、24U、24V、24Wは電動機回路に流れる電流を検出するための電動機電流検出手段、25は電動機回路開閉器である。
平滑リアクトル7及び平滑コンデンサ11は、架線1から電力変換手段22への電圧と電流を平滑する機能を有する。
インバータ回路である電力変換手段22は、スイッチング素子23U〜23Zを内蔵しており、この6個のスイッチング素子を任意にON・OFF動作することによって、直流電圧を任意の電圧と任意の周波数の3相交流電圧に変換する機能を有している。
永久磁石形同期電動機21には、電力変換手段22からU相電流Iu、V相電流Iv、W相電流Iwの3相交流電力が供給される。又このとき、それぞれの永久磁石形同期電動機21の各端子には電力変換手段22から線間電圧Vuv、Vvw、Vwuが印加される。
直流回路遮断器3は、機能的には開閉器の一種であり、直流電源である架線と鉄道車両駆動制御装置との間の回路の接続・切り離しをおこなう。このように遮断器は、通常動作時はONしており、保護動作が機能した場合に、正常回路を保護するために、電流を遮断するスイッチである。
充電用開閉器5と充電回路抵抗器6は、電力変換手段22を起動する前に平滑コンデンサ11を充電するためのものである。
鉄道車両駆動制御装置の運転を開始する場合や、走行中に保護機能が保護検知したために一旦鉄道車両駆動制御装置を停止した後に再度運転を開始する場合には、まず、充電用開閉器5を投入して充電回路抵抗器6で制限された電流によって平滑コンデンサ11が充電される。平滑コンデンサ11の充電が完了した後に直流回路開閉器4と電動機回路開閉器25が投入されるとともに、充電用開閉器5が開放される。
直流回路開閉器4と電動機回路開閉器25を投入するタイミングについては、充電回路抵抗器6の抵抗値と平滑コンデンサ11の静電容量から予め求められる充電時間を考慮して、充電用開閉器5を投入した後に前記の充電時間が経過したことで、直流回路開閉器4と電動機回路開閉器25を投入するとともに充電用開閉器5を開放する。又は別の方式として、直流電圧検出手段12の出力信号である電圧検出値を監視して平滑コンデンサ11の電圧が予め設定された閾値を超えたときに直流回路開閉器4と電動機回路開閉器25を投入するとともに充電用開閉器5を開放しても良い。
直流回路遮断器3と直流回路開閉器4と電動機回路開閉器25が投入されて鉄道車両駆動制御装置の回路が構成された後、電力変換手段22は内蔵するスイッチング素子のON・OFF動作を開始して起動する。
図18は従来技術の鉄道車両駆動制御装置の制御回路及び制御部201の構成を示す図である。
101は制御回路電源、102は制御回路電源グラウンド、103は直流回路遮断器3の駆動操作コイル、104は直流回路開閉器4の駆動操作コイル、105は充電用開閉器5の駆動操作コイル、125は電動機回路開閉器25の駆動操作コイル、110は電源電圧検出手段10の出力信号、112は直流電圧検出手段12の出力信号、124U〜124Wは電動機電流検出手段24U〜24Wの出力信号、201は制御部、202はインバータ制御手段、203は直流回路遮断器3の投入手段、204は直流回路開閉器4の投入手段、205は運転指令、206は運転停止指令出力手段、207は運転停止指令、208は電力変換手段起動指令出力手段、209は電力変換手段起動指令、225は電動機回路開閉器投入手段である。
継電器106aは、直流回路遮断器3の駆動操作コイル103に電源を供給する制御回路であり、直流回路遮断器投入手段203からの投入指令信号によって投入される。
継電器106bは、直流回路開閉器4の駆動操作コイル104に電源を供給する制御回路であり、直流回路開閉器投入手段204からの投入指令信号によって投入される。このように継電器は、遮断器あるいは開閉器を動作させるコイルの駆動電流をON・OFFするスイッチである。
継電器106cは、充電用開閉器5の駆動操作コイル105に電源を供給する制御回路であり、直流回路開閉器投入手段204からの投入指令信号によって投入される。
継電器106dは、電動機回路開閉器25の駆動操作コイル125に電源を供給する制御回路であり電動機回路開閉器投入手段225からの投入指令信号によって投入される。
インバータ制御手段202は、直流電圧検出手段の出力信号112と、電動機電流検出手段の出力信号124U〜124Wと、電力変換手段起動指令出力手段208の出力である電力変換手段起動指令209を入力として、電力変換手段22の各スイッチング素子をON・OFF動作させるためのゲート信号123U〜123Zを出力する。
運転停止指令出力手段206は、例えば鉄道車両駆動制御装置が有する保護機能が保護を検知した場合に、鉄道車両駆動制御装置の運転を停止するために、運転停止指令207を出力する。
電力変換手段起動指令出力手段208は、鉄道車両(列車)の運転台などからの運転指令205と、直流回路遮断器3の連動補助接点信号303と、直流回路開閉器4の連動補助接点信号304と、電動機回路開閉器25の連動補助接点信号325と、運転停止指令207を入力として、電力変換手段22が動作する場合に、各スイッチング素子のON・OFF動作を許可する指令である電力変換手段起動指令209を出力する。
ここで、例えば鉄道車両駆動制御装置が有する保護機能が故障等を検知して図17の鉄道車両駆動制御装置を停止する場合、運転停止指令出力手段206が運転停止指令207を出力すると、直流回路開閉器投入手段204が直流回路開閉器投入指令信号の出力を停止することによって、継電器106bを経て直流回路開閉器4が開放され、又、電動機回路開閉器投入手段225が電動機回路開閉器投入指令信号の出力を停止することによって、継電器106dを経て電動機回路開閉器25が開放され、更に、電力変換手段起動指令出力手段208が電力変換手段起動指令209の出力を停止することによって、インバータ制御手段202はスイッチング素子のゲート信号123U〜123Zを全て阻止状態(OFF)として電力変換手段22の動作が停止する。
ところで、鉄道車両の場合、鉄道車両駆動制御装置が故障しても故障が発生した場所で停車したままでいることは、同じ路線を走行する他の列車の運転を妨げることになるので、最寄の駅まで、又は修理をおこなう車庫まで故障した列車を回送できる必要があるという、鉄道車両としての特殊な技術的要請がある。
本システムの鉄道車両駆動制御装置では、鉄道車両を駆動する電動機として永久磁石形同期電動機を適用している。永久磁石形同期電動機は、鉄道車両の駆動用電動機として従来利用されていた誘導電動機と比較して、電動機の効率が向上するという長所を有している反面、永久磁石形同期電動機が回転していると永久磁石の磁束によって永久磁石形同期電動機の端子に誘起電圧が発生する。
鉄道車両駆動制御装置のインバータ回路が内蔵しているスイッチング素子が短絡モードで故障すると、永久磁石形同期電動機の端子が短絡されて閉回路が構成されることになる。このため、永久磁石形同期電動機が回転すると誘起電圧によって永久磁石形同期電動機から、故障したインバータ回路に電流が流れ込み、損傷を更に拡大してしまう。又このとき、永久磁石形同期電動機とインバータ回路との間の閉回路に流れる電流のために、永久磁石形同期電動機にブレーキ力が発生する。よって、鉄道車両を回送することができなくなる。
このため、例えば、インバータ回路と永久磁石電動機の間に設けた電流検出手段によって、インバータの出力電流に異常を検出するか、又は直流電圧監視手段(直流電圧検出手段)によって、平滑コンデンサの直流電圧に異常を検出するなどの方法によって、インバータ回路が故障したことを保護機能が検出した場合に、インバータ回路と永久磁石形同期電動機との間の回路を開放する必要がある。このために、例えば特許文献1に示すような方式が提案され、インバータ回路と永久磁石形同期電動機との間の回路に開閉器を設けている。
以下、本発明の実施形態を図に基づいて説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態による鉄道車両駆動制御装置の車両駆動装置の構成を主に示している。
図1の各構成要素を以下に説明する。1は直流電源である架線、2は集電器、3は直流回路遮断器、4は直流回路開閉器、5は充電用開閉器、6は充電回路抵抗器、7は平滑リアクトル、8は車輪、9は帰線であるレール、10は電源電圧検出手段、11は平滑コンデンサ、12は直流電圧検出手段、21は車両を駆動する永久磁石形同期電動機、22はインバータ回路である電力変換手段、23U〜23Zはインバータ回路のスイッチング素子、24U〜24Wは電動機電流検出手段、25は電動機回路開閉器である。
電力変換手段22はインバータ回路であり、スイッチング素子23U〜23Zを内蔵しており、この6個のスイッチング素子を任意に導通(ON)・阻止(OFF)動作させることによって、直流電圧を任意の電圧と任意の周波数の3相交流電圧に変換する機能を有している。
図1では、スイッチング素子23U〜23Zは、適用例として、逆並列に接続されたダイオードを内蔵したIGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)として記載しているが、電流を導通(ON)・阻止(OFF)する機能を有した素子であれば種類はIGBTに限定されず適用可能である。又、ダイオードを内蔵しないIGBTを適用してこれと逆並列に別構成要素のダイオードを接続した回路構成としても良い。
電力変換手段22のスイッチング素子のON・OFF動作の方法については例えばパルス幅変調(PWM)方式などがあるが、周知の技術であるとともにどの方式を適用しても本発明の鉄道車両駆動制御装置の実施形態には影響しないため説明を省略する。
直流回路遮断器3は、機能的には開閉器の一種であり、直流電源である架線と電力変換手段22との回路の接続・切り離しをおこなう。直流回路遮断器3は、例えば、鉄道車両駆動制御装置の制御回路電源が投入されると制御部201から出力される投入指令信号によって投入される。
平滑リアクトル7は、架線1から電力変換手段22への電流を平滑する機能を有する。
充電用開閉器5と充電回路抵抗器6は、電力変換手段22を起動する前に平滑コンデンサ11を充電するためのものある。
平滑コンデンサ11は、電力変換手段22に供給される直流電圧を安定させる作用を持つ。
鉄道車両駆動制御装置の運転を開始する場合や、走行中に保護機能が故障(過電圧、過電流あるいはスイッチ動作不良等)を検知したために、一旦鉄道車両駆動制御装置を停止した後に再度運転を開始する場合には、まず、充電用開閉器5を投入して平滑コンデンサ11を充電する。充電用開閉器5が投入されると充電回路抵抗器6で制限された電流によって平滑コンデンサ11が充電される。平滑コンデンサ11の充電が完了した後に直流回路開閉器4と電動機回路開閉器25が投入されるとともに、充電用開閉器5が開放される。
直流回路開閉器4と電動機回路開閉器25を投入するタイミングについては、充電回路抵抗器6の抵抗値と平滑コンデンサ11の静電容量から予め求められる充電時間を考慮して、充電用開閉器5を投入した後に前記の充電時間が経過したことで、直流回路開閉器4と電動機回路開閉器25を投入するとともに充電用開閉器5を開放する。又は別の方式として、直流電圧検出手段12の出力信号である電圧検出値を監視して平滑コンデンサ11の電圧が予め設定された閾値を超えたときに直流回路開閉器4と電動機回路開閉器25を投入するとともに充電用開閉器5を開放しても良い。
永久磁石形同期電動機21は、その回転子が歯車などを介して駆動用車輪の車軸と接続されるか、又は回転子が駆動用車輪の車軸と直接接続されて鉄道車両を駆動するためのもので、例えば永久磁石同期電動機や永久磁石補助形リラクタンス電動機などであり、永久磁石を利用し、それ故にその回転子(ロータ)の回転により誘起電圧を発生する方式の電動機である。永久磁石形同期電動機21には電力変換手段22からU相電流Iu、V相電流Iv、W相電流Iwの3相交流電力が供給される。又このとき、永久磁石形同期電動機21のそれぞれの端子には電力変換手段22から線間電圧Vuv、Vvw、Vwuが印加される。
図2は、図1に示した本発明の第1の実施形態による鉄道車両駆動制御装置の車両制御装置の構成例を主に示した図である。
図2において、101は制御回路電源、102は制御回路電源グラウンド、103は直流回路遮断器駆動操作コイル、104は直流回路開閉器駆動操作コイル、105は充電用開閉器駆動操作コイル、125は電動機回路開閉器駆動操作コイル、110は電源電圧検出手段10の出力信号、112は直流電圧検出手段12の出力信号、124U〜124Wは電動機電流検出手段24U〜24Wの出力信号、201は制御部、202はインバータ制御手段、203は直流回路遮断器投入手段、204は直流回路開閉器投入手段、205は運転指令、206は運転停止指令出力手段、207は運転停止指令、208は電力変換手段起動指令出力手段、209は電力変換手段起動指令、210は電動機回路開放指令出力手段、211は電動機回路開放指令、225は電動機回路開閉器投入手段である。
継電器106aは、直流回路遮断器3の駆動操作コイル103に電源を供給する制御回路であり、直流回路遮断器投入手段203からの投入指令信号によって投入される。直流回路遮断器投入手段203は、例えば、鉄道車両駆動制御装置の制御回路電源が投入されると、直流回路遮断器3の投入指令信号を出力する。
継電器106bは、直流回路開閉器4の駆動操作コイル104に電源を供給する制御回路であり直流回路開閉器投入手段204からの投入指令信号によって投入される。又、継電器106cは、充電用開閉器5の駆動操作コイル105に電源を供給する制御回路であり直流回路開閉器投入手段204からの投入指令信号によって投入される。
直流回路開閉器投入手段204は、例えば、直流回路遮断器3が投入された後に鉄道車両(列車)の運転台を介して運転士から運転指令205が入力されると、電源電圧検出値である電源電圧検出手段10の出力信号110が正常な範囲(低電圧検知も過電圧検知もしない範囲)であることを条件として、充電用開閉器5の投入指令信号を出力する。直流回路開閉器4の投入指令信号は、例えば、充電回路抵抗器6の抵抗値と平滑コンデンサ11の静電容量から求められる充電時間を考慮して、充電用開閉器の投入指令信号を出力した後に前記の充電時間が経過したことで直流回路開閉器4の投入指令信号を出力する。又、運転停止指令207が入力された場合は、直流回路開閉器4の投入指令信号及び充電用開閉器5の投入指令信号出力はともに停止する。
継電器106dは、電動機回路開閉器25の駆動操作コイル125に電源を供給する制御回路であり電動機回路開閉器投入手段225からの投入指令信号によって投入される。電動機回路開閉器投入手段225は、直流回路開閉器投入手段204が出力した直流回路開閉器の投入指令信号が入力されると、電動機回路開閉器の投入指令信号を出力する。又、電動機回路開放指令211が入力された場合は、電動機回路開閉器の投入指令信号の出力を停止する。
インバータ制御手段202は、直流電圧検出値である直流電圧検出手段12の出力信号112と、電動機電流検出値である電動機電流検出手段24U〜24Wの出力信号124U〜124Wと、電力変換手段起動指令出力手段208の出力である電力変換手段起動指令209を入力として、永久磁石形同期電動機21の発生トルクを制御するための演算をおこない、電力変換手段22の各スイッチング素子を導通(ON)・阻止(OFF)動作させるためのゲート信号123U〜123Zを出力する。又、電力変換手段起動指令209の入力が停止した場合は、ゲート信号123U〜123Zは全て阻止(OFF)状態となり電力変換手段22の動作が停止する。
インバータ制御手段202がおこなう永久磁石形同期電動機21の発生トルクを制御するための演算の方法は、例えば、永久磁石形同期電動機21に流れる電流(電流検出手段の検出値)を座標変換の方法を用いて磁束方向成分と磁束方向と直交方向成分とに分離して電流制御をおこなうベクトル制御などの方法があるが、周知の技術であるとともにどの方式を適用しても本発明の鉄道車両駆動制御装置の実施形態には影響しないため説明を省略する。
運転停止指令出力手段206は、例えば鉄道車両駆動制御装置が有する保護機能が鉄道車両駆動制御装置の故障を検知した場合に、鉄道車両駆動制御装置の運転を停止するために、運転停止指令207を出力する。
電力変換手段起動指令出力手段208は、鉄道車両(列車)の運転台などからの運転指令205と、直流回路遮断器3の連動補助接点信号303と、直流回路開閉器4の連動補助接点信号304と、電動機回路開閉器25の連動補助接点信号325と、運転停止指令207を入力として、電力変換手段22が動作可能な場合に、例えば、図3に示す論理に従って、各スイッチング素子の導通(ON)・阻止(OFF)動作を許可する指令である電力変換手段起動指令209を出力する。
電動機回路開放指令出力手段210は、運転停止指令207と、電動機電流検出手段の出力信号124U〜124Wを入力として、例えば図4に示した構成によって、電動機回路開放指令211を出力する。
図4は電動機回路開放指令出力手段210の一実施例として電動機回路開放指令出力手段210Aの構成を示すブロック図である。比較器221〜213は、電流検出値124U〜124Wが0か否かそれぞれ判断し、0の場合にハイレベル信号を出力する。電動機21に流れる3相交流電流は、位相が互いに120°ずれているので、通常動作時は同時に0となることはない。
保護機能が故障等を検知し、運転停止指令出力手段206の出力停止指令207がアクティブ(active)レベル(ハイレベル)となると、NOT回路224はローレベル信号を出力し、RSフリップフロップ226のリセット(R)は解除される。次いで電流検出値124U〜124Wが全て0となると、AND回路225はハイレベル信号を出力するので、RSフリップフロップ226のセット入力(S)にハイレベルが入力され、電動機回路開放指令211としてハイレベル信号が出力される。
このように、保護機能が故障などを検知し、運転停止指令出力手段206の出力停止指令207がアクティブレベルになると、同期電動機21の3相電流がインバータ制御手段202により確実に全て0に制御された後、電動機回路開閉器25により遮断される。従って、同期電動機の3相電流遮断に起因するサージ電圧はスイッチング素子23の電流端子に発生しない。
又電動機回路開放指令出力手段210は、図5のような構成としても良い。図5は電動機回路開放指令出力手段210の他の実施例として電動機回路開放指令出力手段210Bの構成を示すブロック図である。絶対値検出部231〜233は、電動機21の3相電流検出値124U〜124Wの絶対値をそれぞれ検出する。最大値選択部234は、絶対値検出部231〜233の出力信号値のうち最大の値を常に選択する。比較器235は最大値選択部234の出力信号値が0か否か判断し、出力信号値が0の場合にハイレベル信号を出力する。
保護機能が故障等を検知し、停止指令207がアクティブレベル(ハイレベル)となると、NOT回路236はローレベル信号を出力し、RSフリップフロップ238のリセット(R)は解除される。次いで3相電流検出値124U〜124Wが全て0となると、比較器235はハイレベル信号を出力し、AND回路237はハイレベル信号を出力する。このとき、RSフリップフロップ238のセット入力(S)にハイレベルが入力され、電動機回路開放指令211としてハイレベル信号が出力される。 ここで、例えば鉄道車両駆動制御装置が有する保護機能が鉄道車両駆動制御装置の故障(過電圧、過電流あるいはスイッチ動作不良等)を検知して、鉄道車両駆動制御装置を停止する場合、運転停止指令出力手段206が運転停止指令207を出力する。すると、直流回路開閉器投入手段204が直流回路開閉器4の投入指令信号出力を停止することによって、継電器106bを経て直流回路開閉器4の接触子が開放される。又、運転停止指令207が出力されると、電力変換手段の起動指令出力手段208が電力変換手段起動指令209の出力を停止することによって、インバータ制御手段202はスイッチング素子のゲート信号123U〜123Zを全て阻止状態(OFF)として電力変換手段22の動作が停止する。更に、電力変換手段22の停止に伴って、図4又は図5に示すような電動機回路開放指令出力手段210が、電動機回路の電流がゼロであることを条件として電動機回路開放指令211を電動機回路開閉器投入手段225に出力する。これによって、電動機回路開閉器25の投入指令信号の出力が停止し、継電器106dを経て電動機回路開閉器25の接触子が開放される。
本発明の第1の実施形態の鉄道車両駆動制御装置によれば、車両を駆動する永久磁石形同期電動機21と電力変換手段22との間に設けた電動機回路開閉器25を開放する場合に、電動機回路開閉器25の接触子が電流を遮断してサージ電圧を発生することを防止し、電力変換手段22に内蔵されるスイッチング素子に過大な電圧が印加されてスイッチング素子を破損することを防止できる。
なお、図1に示した鉄道車両駆動制御装置では、電動機回路開閉器25の接触子は、電力変換手段22と永久磁石形同期電動機21との間の3相交流回路の3相全てに接触子を設けた構成としているが、この接触子は永久磁石形同期電動機21の誘起電圧によって故障した電力変換手段22に流れ込む電流を切り離すためのものであるから、図6のように、3相交流回路のうちの2相に接触子を設けた構成としても良い。
又、図1に示した鉄道車両駆動制御装置の説明及び図6では、電動機回路開閉器25の動作機構がノーマルオープン(駆動操作コイルが無加圧のとき、接触子が開放状態になる機構)の場合で説明している。電動機回路開閉器25の動作機構がノーマルクローズ(駆動操作コイルが無加圧のとき、接触子が投入状態になる機構)の場合は、電動機回路開閉器投入手段225から出力される電動機回路開閉器の投入指令信号が反転し、信号が無いとき電動機回路開閉器25が投入状態となり、信号が有るとき電動機回路開閉器25が開放状態となる。その他の部分の本発明の実施形態の各構成要素の動作は前述の説明と同様である。
次に、本発明の第2の実施形態の鉄道車両駆動制御装置について説明する。本発明の第2の実施形態の鉄道車両駆動制御装置は、前述の本発明の第1の実施形態の鉄道車両駆動制御装置に比較して、電動機回路開放指令出力手段210の構成と動作が異なる。
図7に第2の実施形態に係る電動機回路開放指令出力手段210Cの構成例を示す。電動機回路開放指令出力手段210Cは、運転停止指令207と、電動機電流検出手段の出力信号124U〜124Wを入力する。比較器241aは、電動機電流検出値124Uが予め設定された値Aよりも大きい(ここでA<0の値)場合、ハイレベル信号を出力する。比較器241bは、電動機電流検出値124Uが予め設定された値Bよりも小さい(ここでB>0の値)場合、ハイレベル信号を出力する。従ってAND回路244は、電動機電流検出値124Uが予め設定された範囲(A〜B)内の値であるとき、ハイレベル信号を出力する。即ち、電動機電流検出値が範囲(A〜B)内の値であるとき、電動機電流は流れていないと判断される。比較器242、243、AND回路245、246の動作も同様である。又AND回路247、NOT回路248、RSフリップフロップ249の動作は、図4の第1の実施形態におけるAND回路、NOT回路、RSフリップフロップと同様である。
以上のように電動機回路開放指令出力手段210Cは、電動機の各電流検出値が予め設定された負の値Aよりも大きく、かつ予め設定された正の値Bよりも小さい範囲の値であることを条件として、電動機回路開放指令211を出力する。
又電動機回路開放指令出力手段の構成例として、図8に示した電動機回路開放指令出力手段210D又は図9に示した電動機回路開放指令出力手段210Eの構成を適用し、電動機電流検出値の絶対値が予め設定された値Bよりも小さい(ここでB>0の値)範囲であることを条件として、電動機回路開放指令211を出力しても良い。電動機回路開放指令出力手段以外の構成要素と動作については、前述の本発明の第1の実施形態の鉄道車両駆動制御装置と同様であり、本実施形態は第1の実施形態の効果を同様に得ることができる。
次に、本発明の第3の実施形態の鉄道車両駆動制御装置について説明する。本発明の第3の実施形態の鉄道車両駆動制御装置は、前述の本発明の第1の実施形態の鉄道車両駆動制御装置に比較して、制御部201の構成と動作が異なる。
図10に制御部201の構成例を示す。電動機回路開放指令出力手段210は、運転停止指令207と、電力変換手段起動指令209を入力として、図11に示す論理に従って、電動機回路開放指令211を出力する。図11は本実施形態に係る電動機回路開放指令出力手段210Fの構成例を示す図である。鉄道車両駆動制御装置の他の構成要素と動作については、前述の第1の実施形態と同様である。
図11において、保護機能が故障等を検出して運転停止指令207がアクティブレベル(ハイレベル)となると、NOT回路252はローレベル信号を出力し、RSフリップフロップ254のリセット(R)は解除される。次いで、図3に示した論理で出力される電力変換手段起動指令209がインアクティブ(inactive)レベル(ローレベル)になると、NOT回路251はハイベル信号を出力し、AND回路253はハイレベル信号を出力するので、RSフリップフロップ254のセット入力(S)にハイレベルが入力され、電動機回路開放指令211としてハイレベル信号が出力される。
ここで、電力変換手段起動指令209がローレベルになると、電動機電流はインバータ制御手段202により0に制御される。従って、電力変換手段起動指令209のローレベル(電動機電流が0)を条件として、運転停止指令207に応じて、電動機回路開閉器25が開放される。
本発明の第3の実施形態の鉄道車両駆動制御装置によれば、車両を駆動する永久磁石形同期電動機と電力変換手段との間の電動機回路に設けた電動機回路開閉器を開放する場合に、電力変換手段22が停止して永久磁石形同期電動機21への交流電力の供給が停止してから電動機回路開閉器25が開放される。従って、電動機回路開閉器25の接触子が電流を遮断してサージ電圧を発生することを防止し、電力変換手段22に内蔵されるスイッチング素子に過大な電圧が印加されてスイッチング素子を破損することを防止可能になる。
次に、本発明の第4の実施形態の鉄道車両駆動制御装置について説明する。本発明の第4の実施形態の鉄道車両駆動制御装置は、前述の本発明の第1の実施形態の鉄道車両駆動制御装置に比較して、制御部201の構成と動作が異なる。
図12に制御部201の構成例を示す。電動機回路開放指令出力手段210は、運転停止指令207を入力として、図13に示した電動機回路開放指令出力手段210Gの論理に従って、図14に示す動作タイミングで電動機回路開放指令211を出力する。即ち電動機回路開放指令出力手段210Gは、運転停止指令207をオンディレイ時間Td1だけ遅延して、電動機回路開放指令211として出力する。
ここで、電力変換手段起動指令出力手段208及びインバータ制御手段202において、運転停止指令207が運転停止指令出力手段206から出力されてから電力変換手段のゲート信号123U〜123Zが全て阻止状態(OFF)となるまでの動作遅れ時間の合計をTd2と表す。更に、電動機回路開閉器投入手段225と継電器106dと電動機回路開閉器25において、電動機回路開放指令211が電動機回路開放指令出力手段210から出力されてから、電動機回路開閉器25の接触子が開放するまでの動作遅れ時間の合計をTd3と表す。又、運転停止指令207が運転停止指令出力手段206から出力されてから電動機回路開放指令出力手段210に入力されるまでの遅れ時間をTd4と表す。この遅れ時間Td4は、制御部201をソフトウエアで構成した場合に特に発生する遅延である。
以上のように動作遅れ時間を定義した場合、予め設定されたオンディレイ時間Td1として、
Td1 ≧ 0 かつ、
Td1 > Td2−Td3−Td4 (式1)
の関係が成立する時間が設定される。
制御部201の他の構成要素と動作については、前述の本発明の第1の実施形態の鉄道車両駆動制御装置と同様である。
本発明の第4の実施形態の鉄道車両駆動制御装置によれば、車両を駆動する永久磁石形同期電動機と電力変換手段との間の電動機回路に設けた電動機回路開閉器を開放する場合に、電力変換手段22が停止して永久磁石形同期電動機21への交流電力の供給が停止してから電動機回路開閉器25を開放する動作となる。従って、電動機回路開閉器25の接触子が電流を遮断してサージ電圧を発生することを防止し、電力変換手段22に内蔵されるスイッチング素子に過大な電圧が印加されてスイッチング素子を破損することを防止可能になる。
前述の本発明の第1から第4の実施形態の鉄道車両駆動制御装置の構成例を示した図1及び図6では、永久磁石形同期電動機とインバータ回路である電力変換手段をそれぞれ1台ずつ備えた構成としている。しかし、1台の鉄道車両駆動制御装置が複数の永久磁石形同期電動機を駆動制御する場合には、複数の永久磁石形同期電動機と、これに対応する複数の電力変換手段を備えることになる。このような構成は、永久磁石形同期電動機と電力変換手段と電動機回路開閉器と電動機電流検出手段の組み合わせの数が増加したのみで、各構成要素の動作は前述した本発明の実施形態における動作と同様であり、本発明の効果を同様に得ることができる。
又、本発明の第1の実施形態から第4の実施形態の鉄道車両駆動制御装置では、それぞれの実施形態を示した図におけるインバータ回路である電力変換手段22について、2レベル回路で構成した例で示したが、例えば図15に示す鉄道車両駆動制御装置のように、インバータ回路である電力変換手段22を中性点クランプ形の3レベル回路で構成した場合においても本発明の効果を同様に得ることができる。
つまり、本発明の実施形態として示した図におけるインバータ回路である電力変換手段22は、直流電圧を任意の大きさの電圧と任意の周波数の交流電圧に変換するインバータ回路であれば、その内部回路の構成によらず適用可能であり、本発明の効果を同様に得ることができる。
前述の本発明の第1の実施形態から第4の実施形態の鉄道車両駆動制御装置では、架線1が直流架線(直流電源)の場合を例として記載しているが、架線1が交流架線(交流電源)の場合には、図16に示した構成例のように、集電器2と平滑コンデンサ11との間に、交流電源を任意の電圧の直流電圧に変換してインバータ回路に供給するための、コンバータ回路を設置することになる。
又、前述の本発明の第1の実施形態から第4の実施形態の鉄道車両駆動制御装置では、鉄道車両駆動制御装置の電源が架線の場合を例として記載しているが、電源が電池の場合には、架線1と集電器2と帰線9の代わりに、電源である電池を接続することになる。又、電源が発電機の場合には、架線1と集電器2と帰線9の代わりに、電源である発電機を接続することになり、更に発電機の出力が交流電圧である場合は、交流電圧を直流電圧に変換する整流回路やコンバータ回路を設けることになる。
以上の説明はこの発明の実施形態であって、この発明の装置及び方法を限定するものではなく、様々な変形例を容易に実施することができるものである。