JP5480677B2 - 担子菌抑制剤および担子菌抑制用肥料組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、植物病の治癒や植物病の発症予防に有効な植物病原菌抑制剤に関する。より具体的には、ダラースポット病、フェアリーリング病、葉腐病などの病害菌を抑制または病状を改善でき、安全性が高く、実用性や作業性に優れた植物病原菌抑制剤および該植物病原菌抑制剤を含有する肥料組成物ならびにそれらの製造方法に関する。
近年、食の安全に対する社会的関心の高まりもあって、農業においては化学合成薬剤への依存度を低下させる試みが検討されている。
また、化学合成農薬の中には発がん性や変異原性が報告または懸念されているものがあり、農業以外の植生管理の現場においても、減農薬技術や無農薬管理技術の確立に向けての検討が開始されている。
しかし、現状のまま化学合成農薬の使用を削減しただけでは、植物病害が発生し、現状の高品位な緑化環境や食料生産を維持することはできない。特に芝草などの緑化植物は、公園、校庭をはじめゴルフ場、サッカー場、野球場など公共性の高い施設の環境維持に重要な役割を果たしており、病害の発生防止が強く求められている。
芝草の深刻な病害として、ダラースポット病、フェアリーリング病、リゾクトニア病、ピシウム病、カーブラリア病などを挙げることができる。これらの病害は芝草が密生した芝生に発生するが、芝生は植物として過密状態にある上に、単一品種により構成される場合が多く、いったん病害が発生すると大発生する危険性が高く、これらの病害の防除のため常に注意を払う必要がある(非特許文献1)。
例えば、ダラースポット病は、夏季における発症数の増加や芝草の植付け面積の増加に伴う発症の顕在化などにより近年我が国で問題視されるようになっている。アメリカでは、重要な病害として全米芝草評価プログラムにおける評価対象にもなっており(非特許文献2)、無農薬管理下においては大きな問題となることが確認されている(非特許文献3)。本病は見た目の品質低下だけでなく、ゴルフ場におけるパッティングクオリティーに大きく影響するため、防除には最大限の努力が払われている。
また、リゾクトニア病は、ほぼ全国的に発生が認められる最も重要な病害の一つであり(非特許文献4)、有効な防除方法が望まれている。
フェアリーリング病は担子菌により引き起こされる病気で、本病を的確に防除するには非常な困難を伴うとされている(非特許文献5)。
また、ピシウム病には、重大な被害を及ぼす病気としてペントグラス赤焼病などがあり、湿度が高い場合、突然発生するなど、水と関係して被害を急速に拡大する傾向にあり(非特許文献6)、対策が望まれている。
したがって、環境に優しく人体に安全で、しかも低コストかつ簡便で効果の確実な植物病原菌抑制剤の登場が強く望まれているが、このような植物病原菌抑制剤は現在のところほとんど開発されていない。
このような状況に鑑み、本発明者らは、安全で環境汚染の少ない素材として天然に存在する桂皮酸に着目し、芝生用散布液剤となした桂皮酸やその誘導体を含む水溶液、分散液などの液状物質が芝生病原菌の繁殖抑制に有効であることを明らかにし、これらの知見ならびに技術的思想を「芝生生育保持剤」として開示した(特許文献1)。しかし、当該文献に開示される桂皮酸は水溶性が低く、高濃度水溶液とすることができない。また、対象となる芝生病原菌は、非常に限定されている。
農業や園芸において、栄養剤や液体肥料は、流通に伴う労力を軽減し作業性を向上させるため、通常、濃縮された原液を流通し、使用に際して適宜希釈して用いられている。同様に、植物病原菌抑制剤も液状として流通させることが好ましい。しかし、桂皮酸の飽和水溶液濃度は25℃で約0.05%と低く、しかも、この濃度は微生物抑制に効果的な濃度(0.01%〜0.05%)と近いため、輸送上の利点は少ない(文中で、「%」とあるものは特に断りのない限り質量基準である)。また、濃度が低いため、保存安定性に問題が生じる可能性もある。また、固体状の桂皮酸は、水溶液を調製するために加熱が必要であり、作業が煩雑となるという問題がある。
また、環境変化の影響や芝草の植付け面積の増加などにより、従来我が国では問題とされなかったダラースポット病や、フェアリーリング病、ラージパッチ病、カーブラリア病などの病気が近年多く報告されており、これらの病原菌に対して安全で有効な病原菌抑制剤が求められている。
上述の病原菌は、それぞれ耐薬品性などの性質が大きく異なり、従来公知の農薬をそのまま適用しても、別の病原菌に対する効果と同様の効果を期待することはできない。また、桂皮酸の飽和水溶液濃度は25℃で0.05%程度であることから、この濃度で駆逐できない病害菌については、桂皮酸のみでは抑制できないという問題点もある。
特開平5−117125号公報
浅野義人、加藤正広:「NHK趣味の園芸よくわかる栽培12か月、芝生」、日本放送出版協会、第114頁、2005年 加藤正広:「全米芝草評価プログラムの評価表の見方と品種選択のポイント」、月刊ゴルフマネジメント、第257号、第70頁〜第76頁、2005年 青木孝一:「第14章 芝草無農薬管理の現状と方向」、芝草・芝地ハンドブック、北村文雄、眞木芳助、柳久、大久保晶、野間豊 編著、博友社、第336頁〜第348頁、1997年 早川敏広、百町満朗:「リソクトニア病」、植物防疫、第61巻、第3号、第143頁〜第147頁、2007年 寺嶋芳江:「フェアリーリング病」、植物防疫、第61巻、第3号、第148頁〜第151頁、2007年 景山幸二、青柳岳人:「ピシウム病」、植物防疫、第61巻、第3号、第127頁〜第129頁、2007年
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は上記の諸問題を解決し、環境に優しく、毒性が少なく、禾本科植物などの植物に対する病原菌を確実に抑制できる植物病原菌抑制剤および該植物病原菌抑制剤を含む肥料組成物を提供することである。
本発明者は、上記の目的を達成すべく桂皮酸の誘導体について広く研究を行った。そして、現在日本で市販されていない桂皮酸カリウムの合成方法を確立し、その性質等について鋭意研究をした結果、桂皮酸とアルカリ金属化合物との混合物または桂皮酸塩を用いることにより、上記の如き従来技術の問題点を解決されることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、桂皮酸とアルカリ金属化合物との混合物または桂皮酸塩を含むことを特徴とする担子菌抑制剤および該担子菌抑制剤を含有する肥料組成物を提供する。
上記担子菌抑制剤においては、前記桂皮酸塩が少なくとも桂皮酸カリウムまたは桂皮酸ナトリウムを含むこと;前記アルカリ金属化合物が、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素カリウムおよび炭酸水素ナトリウムからなる群より選ばれる少なくとも1種であること;担子菌、フェアリーリング病病原菌であること;前記フェアリーリング病病原菌が、チビホコリタケまたはヒダホコリタケであること;芝草用であること;芝草がクリーピングベントグラスであることが好ましい。また、本発明は上記担子菌抑制剤を含有する肥料組成物を提供する
本発明によれば、桂皮酸と比べて溶解性が高く、高濃度の水溶液を調製できる植物病原菌抑制剤が提供される。本発明の植物病原菌抑制剤は、天然物である桂皮酸の塩を有効成分とし、極めて安全性が高く、植物体には悪影響を及ぼさず、植物病原菌のみを抑制できる。さらに、植物病の治癒や植物生育保持に利用できる。また、桂皮酸(25℃で最大0.05%濃度)では不可能な高濃度の水溶液(桂皮酸塩として5〜50%)を調製できることから、桂皮酸水溶液では抑制できなかった病原菌を抑制できるばかりでなく、保存安定性に優れ、輸送効率を向上することができる。また、高濃度溶液を調製できることから、原液希釈系の用途にも対応できる。
本発明の植物病原菌抑制剤を使用することにより、公園、校庭、緑地、ゴルフ場、サッカー場などの植生管理の効率性を向上し、穀物や牧草・飼料の生産性を向上できる。
白色粉末(A)の蛍光X線分析チャート。 桂皮酸と白色粉末(A)の赤外線吸収スペクトル。 白色粉末(A)のイオンクロマトグラム。 ダラースポット病に対する効果を示すグラフ。 ダラースポット病に対する効果を示すグラフ。 ダラースポット病に対する効果を示すグラフ。
次に発明を実施するための最良の形態を挙げて本発明をさらに詳しく説明する。本発明で植物病原菌抑制剤として使用される桂皮酸塩は、桂皮酸のアルカリ金属塩やアルカリ土類金属塩などである。より具体的には、桂皮酸カリウム、桂皮酸ナトリウムなどを挙げることができる。
桂皮酸の飽和水溶液濃度は25℃で0.05%程度であるが、桂皮酸のアルカリ金属塩、特に桂皮酸カリウムは、容易に高濃度の水溶液(例えば、20%)を調製することができる。このため、保存安定性に優れた高濃度溶液を調製できるばかりでなく、輸送効率にも優れている。また、水溶性が高いという利点を生かし、粉末や顆粒として運搬し、施用現場にて容易に、施用目的に応じた濃度の本発明の植物病原菌抑制剤を調製することができ、植生管理の効率化にも貢献できる。
桂皮酸は、C6−C3化合物(フェニルプロパン誘導体)であり、リグニン、リグナン、カテキン、フラボノイド、アントシアニン、スチルベン、カルコンなどの植物成分の生合成過程における前駆物質であるので植物とは相性が良い。また、桂皮酸はリグニンの分解産物と同様の構造を持ち、環境中に廃棄されても微生物分解を受け、腐植物質の素材にもなり得るので環境に優しいことに加え、食品添加物でもあるので安全性が高い。また、桂皮酸塩はLD50値が大きく(例えば、桂皮酸ナトリウムの場合、マウスの腹腔内投与で2g/kgである。)、変異原性も報告されていないので極めて安全性が高く、禾本科植物などの植物に対する毒性も極めて少ない。一方、微生物抑制効果、特にかび(真菌類)に対する抑制効果が顕著であることから、桂皮酸塩を使用すれば、植物体にはダメージ(損傷)を与えず、植物病原菌を抑制することができる。以上のことから、本発明の植物病原菌抑制剤は単に微生物、特にかび起源の植物病の抑制および予防に効果があるばかりでなく、植物体周辺の環境衛生の保持にも効果を発揮する。
本発明の植物病原菌抑制剤は、桂皮酸塩を用いる代わりに、桂皮酸とアルカリ金属化合物との混合物を含むものであってもよい。アルカリ金属化合物の例としては、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウム、硝酸カリウム、トリポリリン酸ナトリウム、トリポリリン酸カリウム、ポリリン酸ナトリウム、ポリリン酸カリウム、リン酸3ナトリウム、リン酸3カリウム、リン酸水素2カリウム、リン酸水素2ナトリウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウムを挙げることができる。これらのアルカリ金属化合物の中でも好適に用いることができるものとして、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素カリウムおよび炭酸水素ナトリウムからなる群より選ばれる少なくとも1種を挙げることができる。
本発明の植物病原菌抑制剤および該植物病原菌抑制剤を含有する肥料組成物の施用対象植物に制限はなく、どの植物に対しても植物病原菌抑制による病状回復および植物生育保持効果が期待できるが、好適な施用対象植物としては禾本科植物が挙げられる。また、本発明の植物病原菌抑制剤および該植物病原菌抑制剤を含有する肥料組成物は、上記禾本科植物のうち、芝草などの緑化用植物、イネやコムギなどの穀物、オーチャードグラスやチモシーなどの牧草・飼料などに対して特に好適に用いられる。
本発明の植物病原菌抑制剤を好適に適用できる芝草としては、暖地型芝草と寒地型芝草の双方が挙げられる。暖地型芝草としてはヒメコウライシバ、コウライシバ、ノシバ、バミューダグラス、セントオーガスチングラス、バッファローグラス、センチピードグラス、カーペットグラス、バヒアグラスなどが挙げられるが、特にバミューダグラスに対して効果が大きい。また、寒地型芝草では、ケンタッキーブルーグラス、トールフェスク、クリーピングレッドフェスク、チューイングフェスク、ハードフェスク、ペレニアルライグラス、イタリアンライグラス、クリーピングベントグラス、コロニアルベントグラスなどが挙げられるが、クリーピングベントグラスなどに対し効果が大きい。
本発明の植物病原菌抑制剤を好適に適用できる穀類としては、イネ、オオムギ、コムギ、ライムギ、エンバク、ハトムギ、キビ、ヒエ、アワ、トウモロコシ、モロコシ、シコクビエ、マコモなどが挙げられるが、特にイネ、コムギなどに対して効果が大きい。
本発明の植物病原菌抑制剤を好適に適用できる牧草・飼料としては、暖地型禾本科牧草と寒地型禾本科牧草の双方が挙げられる。暖地型牧草としてはローズグラス、バヒアグラス、ダリスグラス、ギニアグラス、カラードギニアグラス、ネピアグラス、パンゴラグラス、ジャイアントスターグラス、バミューダグラス、キクユグラスなどが挙げられるが、特にバミューダグラスに対して効果が大きい。また、寒地型牧草では、オーチャードグラス、チモシー、イタリアンライグラス、ペレニアルライグラス、トールフェスク、メドウフェスク、スムーズブロムグラスなどが挙げられるが、オーチャードグラス、チモシーなどに対し効果が大きい。
本発明の植物病原菌抑制剤および該植物病原菌抑制剤を含有する肥料組成物を用いて植物病原菌を抑制することにより、植物病を治癒または予防することができ、植物の生育を保持することができる。治癒または予防の対象となる植物病としては、真菌性病害と細菌性病害が挙げられ、特に真菌性病害に対して効果が大きい。
本発明の植物病原菌抑制剤が好適に抑制しうる真菌性病害としては、ダラースポット病、リゾクトニア病、ピシウム病、カーブラリア病、フェアリーリング病などが挙げられる。ここで、ダラースポット病とは芝草に対する病気でスクレロチニア・ホモエオカルパ(Sclerotinia homoeocarpa)の学名を持つ子のう菌により引き起こされる病気で犬の足跡と呼ばれる病気が含まれる。
リゾクトニア病とは、不完全菌であるリゾクトニア(Rhizoctonia)属菌が引き起こす病気で、各種作物に対して苗立枯れや根腐れなどの病徴を生ずる。リゾクトニア病には苗立枯れ病、根腐れ病、イネ紋枯病、くもの巣病などが含まれる。芝草に対するリゾクトニア病には、リゾクトニア・ソラニ(Rhizoctonia solani)の学名を持つ菌が病原菌である葉腐病、褐色葉腐病、くもの巣病、プラウンパッチ、紋枯病、ラージパッチ、リゾクトニアラージパッチなどの病気と、2核のリゾクトニア属菌(binucleate Rhizoctonia)が病原菌である疑似葉腐病、イエローパッチ、ウインターパッチ、象の足跡、春はげ症、リゾクトニア春はげ症、ホワイトパッチ、冬葉腐病などと呼ばれる病気が含まれる。
ピシウム病とは、ピシウム(Pythium)属菌に起因する病気で、各種作物に対して苗立枯れ、種子の腐敗、根腐れなどの病徴を生ずる。芝草に対するピシウム病にはピシウム性春はげ症、ピシウムパッチ、ピシウムブライト、不揃症、綿腐病、赤焼病などの病気が含まれる。
また、カーブラリア病とは、不完全菌カルバラリア・ゼニキュラータ(Curvularia geniculata)により引き起こされる病気で、芝草病の立枯病、葉枯病、カーブラリア葉枯病などの病気が含まれる。
フェアリーリング病とは、ホコリタケ(Lycoperdon perlatum)、チビホコリタケ ボビスタ・デルモキサンタ(Bovista dermoxantha 異名 Lycoperdon pusillum)、ヒダホコリタケ(Vascellum curtisii)、コムラサキシメジ レピスタ・ソルディダ(Lepista sordida)、シバフタケ(Marasmius oreades)などの担子菌によって引き起こされる芝草の病気で、芝草をリング状に枯死させたり、芝草に濃緑色のリングが形成されたり、キノコの子実体がリング状に発生したりする病徴を生ずる。
従来、農林業や園芸分野などで用いられる植物用殺菌剤には変異原性、腫瘍原性またはがん原性などの遺伝毒性が報告されているものや、残留性が高く、環境ホルモンの疑いがあるものもある。
しかし、本発明の植物病原菌抑制剤は、植物中に自然に存在する物質である桂皮酸の塩を有効成分としており、化学合成物質を主成分とした殺菌剤に散見される変異原性や内分泌かく乱性の疑いも認められていない。また、残留性も低いので極めて安全に使用できる。本発明の植物病原菌抑制剤は、植物体には深刻な毒性は及ぼさず、植物病原菌のみを抑制でき、植物病の治癒や植物生育保持にも利用できる。上述した通り、特に真菌類が原因の植物病に対し優れた抑制効果を備えている。
また、本発明の植物病原菌抑制剤で使用する桂皮酸塩は桂皮酸と比較して水溶性が高く、種々の濃度の桂皮酸塩の水溶液を調製し、散布することにより植物体の予防にも治療にも効果を発揮することができる。具体的には植物体の患部に直接散布するか、植物体周辺に散布して使用する。例えばその水溶液を、羅病植物の根、茎、葉などの部位に散布したり、その水溶液に羅病植物の根、茎、葉などの部位を浸すことにより、または当該植物の周辺の土壌に水溶液を散布することにより、植物病原菌抑制剤として用いることができる。
本発明の植物病原菌抑制剤を使用する場合、粉体または顆粒状として施用現場まで運搬し、使用現場にて目的に適した濃度(桂皮酸カリウムの場合、例えば、0.5%)の水溶液を調製し、直ちに施用するのが好ましい。また、桂皮酸塩を含む溶液を濃厚液(原液)として調製し、使用時に目的に応じて適宜希釈して使用してもよい。さらに必要により展着剤や他の抗菌剤、殺菌剤やその他の添加剤などと混合して用いることもできる。また、上記の桂皮酸塩をシクロデキストリンなどとの包接化合物として使用することや、ゼオライト、シリカなどの担体に担持させて粉体またはその懸濁液としても使用できる。
また、水溶液として用いる以外にも、本発明の植物病原菌抑制剤の水溶液を利用して乳化液、分散液、懸濁液を調製し使用してもよい。あるいは、粉体または顆粒状の固体として散布し、次いで適量の水を散布して用いてもよい。
本発明の植物病原菌抑制剤を水溶液として使用する場合、一応の目安として、桂皮酸塩として0.01〜2.0%程度の水溶液にして使用する。また、流通の利便性向上のため濃縮液とする場合、一例として、桂皮酸塩として0.1〜30%程度に調製することができる。
本発明の植物病原菌抑制剤の使用量は特に制限されないが、桂皮酸カリウムを使用する場合、施用区域の単位面積(m2)あたり桂皮酸カリウムとして0.1〜6.0gとなる量を2〜4回/月散布するのが効果的である。使用量が多すぎると植物体の成育に悪い影響を与える場合があり、少なすぎると十分な効果が発揮されない場合がある。他の塩を用いた場合も、桂皮酸カリウムに準じた量(桂皮酸残基部分として0.1〜5.0g)を上記と同様に散布する。
また、本発明の植物病原菌抑制剤を種々の農・園芸用資材、農薬などの化学物質と混合することにより、それらに植物病原菌抑制作用を付与することができる。農・園芸用資材の例としては、界面活性剤、着色剤、香料、植物栄養剤、各種添加物を挙げることができる。また、農薬の例としては、他の抗菌剤、殺菌剤、除草剤、殺虫剤、展着剤、植物成長調整剤、忌避剤を挙げることができる。本発明の植物病原菌抑制剤は環境に優しいという特徴を備えているため、環境影響の低い天然物系薬剤との混合が好ましい。
また、本発明の植物病原菌抑制剤を種々の肥料と混合することにより、これらの肥料に植物病原菌抑制作用を付与することができる。特に水溶性が高い肥料成分と混合して該肥料組成物を水溶液として施用することで、速効性の植物病原菌抑制剤として用いることができる。このような速効性の植物病原菌抑制剤を用いることにより、植物管理の適切な時期、例えば水やりの際に、効率的かつ簡便で安全に植物病原菌の抑制および病状治癒を達成することができる。
本発明の植物病原菌抑制剤と混合する肥料は、窒素、リン酸、カリウム、カルシウム、マグネシウム、マンガン、ホウ素などの肥料成分を含有するものであればよい。本発明の植物病原菌抑制剤との混合に適する肥料の例として、窒素質肥料、リン酸質肥料、カリ質肥料、石灰質肥料、ケイ酸質肥料、苦土質肥料、マンガン質肥料、ホウ素質肥料、複合肥料(熔成複合肥料、化成肥料、成型複合肥料、吸着複合肥料、被覆複合肥料、副産複合肥料、液状複合肥料、配合肥料、家庭園芸用複合肥料)、微量要素複合肥料、農薬その他のものが混入された肥料、有機質肥料、汚泥肥料などの普通肥料を挙げることができる。
上記のうち、窒素質肥料の例としては、硫酸アンモニウム(硫安)、塩化アンモニウム(塩安)、硫酸苦土アンモニア、腐植酸アンモニア、硝酸アンモニウム(硝安)、硝酸アンモニア石灰(硝安石灰)、硝酸石灰、硝酸ソーダ、尿素、被覆尿素、石灰窒素、IB(イソブチリデン2尿素、イソブチルアルデヒド加工尿素肥料)、CDU(クロトニリデン2尿素、アセトアルデヒド加工尿素肥料)、ウレアホルム(ウラホルム、ホルム窒素、ホルムアルデヒド加工尿素肥料)、GU(グアニル尿素)、オキサミドなどの無機質肥料の他、油かす類や魚肥類などの有機質肥料を挙げることができる。
また、リン酸質肥料の例としては、過リン酸石灰、重過リン酸石灰、苦土過リン酸石灰、熔成リン肥(熔リン)、BM熔リン、焼成リン肥、熔過リン、重焼リン、苦土重焼リン、腐植酸混合リン肥、副産リン肥などの無機質肥料の他、骨粉類、米ぬかなどの有機質肥料を挙げることができる。
また、カリ質肥料の例としては、塩化カリウム、硫酸カリウム、硫酸カリ苦土、重炭酸カリウム、ケイ酸カリウム、腐植酸カリウムなどが用いられ、石灰質肥料としては、生石灰、消石灰、炭酸カルシウム、副産石灰、混合石灰肥料、貝化石肥料などを挙げることができる。
また、本発明の植物病原菌抑制剤を含有する肥料組成物に好適な水溶性の肥料成分の例としては、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、硝酸アンモニウム、硝酸ソーダ、硝酸カルシウム、尿素、リン酸、リン酸1アンモニウム、リン酸2アンモニウム、過リン酸石灰、塩化カリウム、硫酸カリウム、リン酸1カリウム、リン酸2カリウム、硝酸カリウムを挙げることができる。
本発明の植物病原菌抑制剤である桂皮酸塩としてアルカリ金属塩を製造する場合、その水溶液がアルカリ性を呈する塩または塩基の存在下、水溶液のアルカリ性を保ちながら桂皮酸を徐々に溶解することにより、桂皮酸の水溶液を調製し、この溶液から晶析により高純度の桂皮酸塩を得ることができる。
本発明の植物病原菌抑制剤として最も好適に使用される桂皮酸塩の一つである桂皮酸カリウムは、現在日本では市販されておらず、容易に入手することはできない。
以下に、桂皮酸カリウムの入手方法を示す。まず、約90℃の熱水に、30%となる量の桂皮酸と13%となる量の水酸化カリウム(純度85%、試薬特級)をそれぞれ1/3量ずつ3回程度に分けて徐々に溶解し、桂皮酸濃度約30%の水溶液を調製する。このときのpHは7.8前後となる。次に、この水溶液を4℃まで冷却し、この温度で24時間放置すると白色沈澱を生ずるのでこれを濾別し、濾別した白色沈澱を105℃で6時間程乾燥した後、粉砕し、桂皮酸カリウムの白色粉末を得ることができる。または、上記桂皮酸溶液をバット上に薄く広げ105℃で6時間程度加熱し、水分を蒸発乾枯させた後、得られた白色固体を粉砕し、桂皮酸カリウムの白色粉末を得ることができる。上記の桂皮酸水溶液調製の際に使用する塩または塩基の使用量は特に限定されないが、桂皮酸に対して30〜300%となる量が好ましい。
一方、桂皮酸ナトリウムは市販のものを入手することができる。桂皮酸ナトリウムを合成する場合、まず、約90℃の熱水に、10%となる量の桂皮酸と2.6%となる量の水酸化ナトリウム(純度97%、試薬特級)をそれぞれ1/3量ずつ3回程度に分けて徐々に溶解させ、桂皮酸濃度約10%の水溶液を調製する。このときのpHは7.7前後となる。次に、この水溶液を4℃まで冷却し、この温度で24時間放置すると白色沈澱を生ずるのでこれを濾別し、濾別した白色沈澱を105℃で6時間程乾燥した後、粉砕し、桂皮酸ナトリウムの白色粉末を得ることができる。または、上記桂皮酸溶液をバット上に薄く広げ105℃で6時間程度加熱し、水分を蒸発乾枯させた後、得られた白色固体を粉砕し、桂皮酸ナトリウムの白色粉末を得ることができる。上記の桂皮酸水溶液調製の際に使用する塩または塩基の使用量は特に限定されないが、桂皮酸に対して20〜200%となる量が好ましい。
本発明の植物病原菌抑制剤の有効成分である桂皮酸塩を調製する際に使用する塩基または塩は、塩基またはその水溶液がアルカリ性を呈する弱酸と強塩基の塩であればいずれも使用可能であるが、特にpH緩衝作用を示し、環境汚染の恐れが少なく、人体に安全であるものを用いることが好ましい。塩基としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどが、弱酸と強塩基との塩としては、例えば、炭酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウム、トリポリリン酸カリウム、ポリリン酸ナトリウム、ポリリン酸カリウム、リン酸3ナトリウム、リン酸3カリウム、リン酸水素2カリウム、リン酸水素2ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム酢酸ナトリウム、酢酸カリウムなどが好ましいものとして挙げられる。特に好ましい塩基または塩としては、食品にも用いられる水酸化カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウム、炭酸カリウムおよび酢酸ナトリウムなどが挙げられる。
次に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。なお、文中の「部」または「%」とあるのは質量基準である。
<桂皮酸カリウム粉末の調製>
(1)白色粉末(A)の調製
90℃の蒸留水650mLに水酸化カリウム(純度85%、試薬特級)130gを溶解し、この水酸化カリウム溶液に桂皮酸302gを徐々に加えて撹拌して溶解し、該溶液を蒸留水で1000mLにメスアップして、濃度30%の桂皮酸水溶液(pH7.8)を調製した。次にこの溶液を25℃まで冷却した後、4℃で12時間放置し、白色物質を析出させた。この白色物質を取り出し、風乾の後、105℃で6時間乾燥し、白色粉末370gを得た。以下、当該白色粉末を白色粉末(A)と呼ぶ。
(2)桂皮酸カリウムの確認
a)カリウムの確認
白色粉末(A)を蛍光X線分析したところ、図1に示すチャートを得た。このチャートを見ると、140 2θ(゜)付近(Kα:図1ではKAで表示)にカリウムのピークが確認され、白色粉末(A)中にはカリウム成分が存在することが明らかになった。
b)カルボン酸塩形成の確認
白色粉末(A)を赤外分光法にて分析したところ、図2の下側に示す赤外線吸収スペクトルを得た。このスペクトルを桂皮酸の赤外線吸収スペクトル(図2の上側)と比較すると、白色粉末(A)のスペクトルでは、桂皮酸のスペクトルで見られる1700cm-1付近のフリーなカルボン酸のピークが消滅し、新たに1550cm-1付近にカルボン酸塩のピークが確認された。このことから、白色粉末(A)中にはカルボン酸の塩が存在していることが明らかになった。
c)カリウム成分の定量
白色粉末(A)1gを正確に量り200mLのメスフラスコに入れ、精製水50mL、0.2M−硝酸5mLを加えて精製水で200mLとして振り混ぜた。さらに精製水で20倍希釈してイオンクロマトグラフィーで分析したところ、図3に示すクロマトグラムが得られた。このクロマトグラムのカリウムのピーク面積からカリウムの量を計算したところ、0.21gであった。この結果より、白色粉末(A)中のカリウム成分は21.0%であることが明らかになった。
d)桂皮酸成分の定量
クロロホルム処理した白色粉末(A)0.05gを正確に量り50mLのメスフラスコに入れ、0.5M−塩酸1mL、精製水20mLを加えて振り混ぜ、エタノールを加えて50mLとした。さらにエタノールで50倍希釈し、吸光光度法(270nm)を用いて、標準桂皮酸溶液(対照)との比較により該白色粉末(A)中の桂皮酸成分を定量したところ、桂皮酸成分は全白色粉末中の76.7%であることが明らかになった。
e)白色粉末(A)の内容確認
以上のa)〜d)の分析試験の結果から、白色粉末(A)は桂皮酸カリウムであり、その純分は約98%であることが確認された。
<桂皮酸カリウム水溶液のダラースポット病病原菌に対する抑制試験>
参考例1]
上記白色粉末(A)の水溶液を用いて、桂皮酸カリウム濃度が0.01%であるポテトデキストロース寒天培地(PDA培地:栄研器材株式会社、1L中にバレイショ浸出液200g、ブドウ糖20g、寒天15gを含む)を調製し、直径90mmのシャーレに分注し、寒天プレートを作製した。このプレートの中央に1白金耳量のダラースポット病病原菌(Sclerotinia homoeocarpa)の菌糸を接種し、25℃で培養し、培養から2日後、5日後、8日後にコロニーの直径を測定した。結果を表1に示す。
参考例2]
PDA培地の桂皮酸カリウム濃度を0.05%としたこと以外は参考例1と同様にしてコロニーの測定を行った。結果を表1に示す。測定の結果、参考例1の場合よりも顕著な病原菌の成長抑制効果を確認できた。
参考例3]
PDA培地の桂皮酸カリウム濃度を0.1%としたこと以外は参考例1と同様にしてコロニーの測定を行った。結果を表1に示す。参考例3では、8日目までコロニーの発生は確認されなかった。
[比較例1]
PDA培地に桂皮酸カリウムを添加しなかったこと以外は参考例1と同様にしてコロニーの測定を行った。比較例1では、培養開始から5日経過後にプレート全面にコロニーが成長した。
以上の結果から、本発明の桂皮酸カリウムの水溶液が、芝病菌であるダラースポット病病原菌の生育を効果的に抑制できることが明らかとなった。
Figure 0005480677
<桂皮酸カリウムのダラースポット病病巣分離菌に対する抑制試験>
参考例4〜6、比較例2]
(1)ダラースポット病病巣からの病原菌の分離
ダラースポット病の病状を呈している芝草から、真菌用培地を用いた平板希釈法にて生育優勢な糸状菌株2株を分離し、それぞれ分離菌Aおよび分離菌Bとした。
(2)ダラースポット病病巣からの病原菌の抑制試験
ダラースポット病病原菌として上記分離菌AおよびBを用いたこと以外は参考例1〜3および比較例1と同様にしてそれぞれコロニーの直径を測定した(参考例4〜6、比較例2)。結果を表2に示す。表2の結果より、本発明の植物病原菌抑制剤である桂皮酸カリウムの水溶液はダラースポット病病巣分離菌の生育を効果的に抑制できることが明らかとなった。特に、培地中の桂皮酸カリウム濃度が0.01%を超える場合にはプレートにコロニーが発生せず、ダラースポット病病巣分離菌の発生を完全に抑制することができた。
Figure 0005480677
<ベントグラスに発生したダラースポット病に対する発病軽減効果>
参考例7]
20℃の蒸留水400mLに前記白色粉末(A)2.0gを溶解し、濃度0.5%の桂皮酸カリウム水溶液を調製した。
ダラースポット病が発生した芝草(クリーピングベントグラス)圃場に試験区(1試験区の広さは1m2)を設定し、上記0.5%桂皮酸カリウム水溶液(0.5%区)を施用した。施用量は1回につき、250mL/m2とした。施用回数は4回とし、最初の施用日を0日目とし、2回目の施用を9日目、3回目の施用を16日目、4回目の施用を23日目に行った。最初の施用日(施用前、0日目)、15日目および26日目に、各区のダラースポット病の病斑数(0.25m2あたりの病斑数)を測定し、発病程度を(0:無−4:甚)として0.1単位で評価し、3試験区について測定、評価した。平均値の推移を図4および図5に点線で示す。
参考例8]
白色粉末(A)の使用量を4.0gとし、濃度1%の桂皮酸カリウム水溶液を用いたこと以外は参考例7と同様にして病斑数を測定し、発病程度を評価した。3試験区の平均値の推移を図4および図5に破線で示す。
[比較例3]
白色粉末(A)を使用しなかったこと以外は参考例7と同様にして病斑数を測定し、発病程度を評価した。3試験区の平均値の推移を図4および図5に実線で示す。
これらの結果から、桂皮酸カリウム水溶液の施用区では、ダラースポット病病斑数、発病程度共に減少および低下する傾向が認められ、本発明の植物病原菌抑制剤が、ダラースポット病の病状を軽減できることが明らかとなった。
<ベントグラスに発生したダラースポット病に対する防除効果>
参考例9]
20℃の蒸留水400mLに前記白色粉末(A)0.5gを溶解し、濃度0.125%の桂皮酸カリウム水溶液を調製した。
ダラースポット病が発生した芝草(クリーピングベントグラス)圃場に試験区(1試験区の広さは1m2)を設定し、上記0.125%桂皮酸カリウム水溶液を施用した。施用量は1回につき、250mL/m2とした。施用回数は5回とし、最初の施用日を0日目とし、2回目の施用を7日目、3回目の施用を13日目、4回目の施用を25日目、5回目の施用を29日目に行った。最初の施用日(施用前、0日目)、7日目、13日目、25日目、29日目および36日目に、各区のダラースポット病の病斑数(0.25m2あたりの病斑数)を測定した。3試験区の平均値の推移を図6に点線で示す。
参考例10]
白色粉末(A)の使用量を1gとし、濃度0.25%の桂皮酸カリウム水溶液を用いたこと以外は参考例9と同様にして病斑数を測定した。3試験区の平均値の推移を図6に一点鎖線で示す。
参考例11]
白色粉末(A)の使用量を2gとし、濃度0.5%の桂皮酸カリウム水溶液を用いたこと以外は参考例9と同様にして病斑数を測定した。3試験区の平均値の推移を図6に破線で示す。
[比較例4]
白色粉末(A)を使用しなかったこと以外は参考例9と同様にして病斑数を測定した。3試験区の平均値の推移を図6に実線で示す。
これらの結果から、桂皮酸カリウム水溶液の施用により、ダラースポット病病斑数の増加を抑えることができ、本発明の植物病原菌抑制剤の散布によりダラースポット病を効果的に抑制できることが明らかになった。
<桂皮酸カリウム水溶液のフェアリーリング病病原菌チビホコリタケに対する抑制試験>
[実施例12]
参考例1と同様の手順で桂皮酸カリウム濃度が0.01%の寒天プレートを作製し、プレートの中央に1白金耳量のフェアリーリング病病原菌チビホコリタケ(Bovista dermoxantha)(Lp41)の菌糸を接種し、25℃で培養した。培養から4日後、8日後、12日後および25日後にコロニーの直径を測定した。結果を表3に示す。
[実施例13、14、比較例5]
寒天プレート中の桂皮酸カリウム濃度を0.05%、0.1%および0%としたこと以外は実施例12と同様の実験を行った。結果をそれぞれ表3に示す。
プレート中に桂皮酸カリウムが含まれる場合、0.01%〜0.1%のいずれの濃度においても、コロニーの発生は確認できなかった。一方、桂皮酸カリウムを添加しなかった比較例5では、コロニーが発生し、時間とともに成長した。
これらの結果から、0.01%以上の桂皮酸カリウムを培地中に添加することにより、フェアリーリング病病原菌チビホコリタケの成長を効果的に抑制できることが明らかとなった。
Figure 0005480677
<フェアリーリング病病原菌チビホコリタケに対する防除効果>
[実施例15]
(1)芝草培地
芝草であるベントグラスの刈りカス9部とメトロミックス350(カナダ、サングロー社製)9部とを混合し、これに水7.5部を加えた培地を調製して、芝草培地とした。
(2)前培養および接種源
上記芝草培地をバイオポット(直径8cm、高さ13cm)に高さ5cmほど充填し、これにフェアリーリング病病原菌チビホコリタケ(Bovista dermoxantha)(Lp41)を接種した。このバイオポットを28℃で14日間培養して、接種源を調製した。
(3)接種および桂皮酸カリウム水溶液の噴霧
芝草培地を充填した別のバイオポットを10個用意し、それぞれの中央に、植物培養ビン(直径2.5cm、高さ10cm)を2/3ほど差し込んで穴を確保し、これらのバイオポットを高圧蒸気滅菌した。滅菌後、培養ビンを抜き、生じた穴の中へ上記接種源を薬匙で2杯入れ、芝草培地を2cmほど覆土し、その上から前記白色粉末(A)を用いて調製した桂皮酸カリウム1%水溶液を、1ポット当たり4mL噴霧した。
(4)効果測定
これらのバイオポットを28℃で培養し、培養開始から28日目に覆土上部の菌糸体面積を計測し、菌成長なしの表面積割合(%)および菌成長なしのポット数割合(%)を次式により算出した。
菌成長なしの表面積割合(%)=[(菌成長なしの表面積cm2)/(ポットの表面積cm2)]×100
菌成長なしのポット数割合(%)=[(菌成長なしのポット数)/全ポット数]×100
10個のポット中4つでごく少量の菌糸体が発生したが、いずれも菌糸体面積の計測には不十分であった。結果のまとめを表4に示す。
[比較例6]
桂皮酸カリウム1%水溶液の代わりに市販の芝病防除用農薬(市販品A)を2000倍希釈液したものを用いたこと以外は実施例15と同様の手順にて実験を行った。培養開始から28日後にはすべてのポットで菌糸体の発生が確認された。結果のまとめを表4に示す。
[比較例7]
桂皮酸カリウム1%水溶液の代わりに蒸留水を用いたこと以外は実施例15と同様の手順にて実験を行った。培養開始から28日後には、全てのポットで菌糸体が表面を覆っていた。結果のまとめを表4に示す。
(5)効果判定
これらの結果から、本発明の桂皮酸カリウム水溶液を噴霧したポットは、菌成長なしのポット数も多く、菌糸体の表面積で見ると、ほぼ完全にフェアリーリング病病原菌チビホコリタケを防除できることが明らかとなった。
Figure 0005480677
<フェアリーリング病病原菌ヒダホコリタケに対する抑制試験>
[実施例16〜18、比較例8]
ダラースポット病病原菌(Sclerotinia homoeocarpa)に代えてフェアリーリング病病原菌ヒダホコリタケ(Vascellum curtisii)(Vp19)を用い、コロニーの直径の測定を培養開始から4、8、12、25日後に行ったこと以外は参考例1〜3および比較例1と同様の手順で実験を行った。この結果、本発明の桂皮酸カリウムを含む培地では、培養開始から25日を経過しても、ヒダホコリタケのコロニーが発生しなかった。結果のまとめを表5に示す。
これらの結果から、培地中に0.01%以上の桂皮酸カリウムを添加することによりヒダホコリタケの成長を効果的に抑制できることが明らかとなった。
Figure 0005480677
<フェアリーリング病病原菌ヒダホコリタケに対する防除効果>
[実施例19]
(1)芝草培地
フェアリーリング病病原菌チビホコリタケ(Bovista dermoxantha)(Lp41)の代わりにフェアリーリング病病原菌ヒダホコリタケ(Vascellum curtisii)(Vp19)を用いたこと以外は実施例15と同様の手順で、菌糸体表面積の測定を行った。
この結果、培養開始から28日後における菌成長なしの表面積割合は78%であった。
[比較例9]
桂皮酸カリウム1%水溶液の代わりに滅菌水を使用したこと以外は実施例19と同様の実験を行った。培養開始から28日後における菌成長なしの表面積割合は18%であった。
本発明の桂皮酸カリウム水溶液を噴霧したポットは、滅菌水を噴霧した比較例のポットに比べて菌成長なしの表面積割合が4倍以上であった。これらの結果から、本発明の植物病原菌抑制剤が、フェアリーリング病病原菌ヒダホコリタケを効果的に防除できることが明らかになった。
Figure 0005480677
<カーブラリア病病原菌に対する抑制試験>
参考例20〜22、比較例10]
ダラースポット病病原菌(Sclerotinia homoeocarpa)に代えてカーブラリア病病原菌(Curvularia geniculata)を用い、コロニーの直径の測定を培養開始から2、4、7日後に行ったこと以外は参考例1〜3および比較例1と同様の手順で実験を行った(それぞれ、参考例20〜22、比較例10)。結果を表7に示す。
培地中の桂皮酸カリウム濃度が0.01%でも、カーブラリア病病原菌の成長を抑制することができ、0.05%および0.1%では、培養開始から7日後までコロニーが発生せず、カーブラリア病病原菌の成長を完全に抑制することができた。これらの結果から、本発明の植物病原菌抑制剤である桂皮酸カリウムが、カーブラリア病病原菌の生育を効果的に抑制できることが示された。
Figure 0005480677
<桂皮酸カリウムのラージパッチ病病原菌に対する抑制試験>
参考例23]
PDA培地の桂皮酸カリウム濃度を0.2%とし、ダラースポット病病原菌に代えてラージパッチ病病原菌(Rhizoctonia solani AG2-2 LP)を用い、コロニーの直径の測定を培養開始から3、7、13日後に行ったこと以外は参考例1と同様にして実験を行った。この結果、培養開始から13日が経過しても、プレートにはコロニーが発生しなかった。
参考例24]
PDA培地の桂皮酸カリウム濃度を0.5%としたこと以外は参考例23と同様の実験を行った。この結果、培養開始から13日が経過しても、プレートにはコロニーが発生しなかった。
[比較例11]
桂皮酸カリウムの代わりに桂皮酸を用い、PDA培地の桂皮酸濃度を0.05%としたこと以外は参考例23と同様の実験を行った。培養開始から3日後にはプレートにコロニーが発生し、13日後にはプレートの表面全体を覆うまでコロニーが成長した。
[比較例12]
桂皮酸カリウム水溶液の代わりに蒸留水を用いてPDA培地を調製したこと以外は参考例23と同様の実験を行った。培養開始後から急速にコロニーが成長し、7日後にはプレートの全面を覆うまでコロニーが成長した。
参考例23、24、比較例11、12の結果をまとめたものを表8に示す。これらの結果より、本発明の植物病原菌抑制剤である桂皮酸カリウム水溶液がラージパッチ病病原菌の生育を効果的に抑制できることが示された。本発明の植物病原菌抑制剤は、桂皮酸よりも水溶性が高いことから、飽和桂皮酸水溶液よりも高濃度の溶液を調製することができ、このような高濃度溶液を使用することにより桂皮酸の飽和水溶液を用いる場合と比べてもはるかに強力なラージパッチ病病原菌抑制効果を発揮できることが分かった。
Figure 0005480677
<桂皮酸カリウム水溶液のブラウンパッチ病病原菌に対する抑制試験>
参考例25]
ラージパッチ病病原菌に代えてブラウンパッチ病病原菌(Rhizoctonia solani AG2-2IIIB)を用いたこと以外は参考例24と同様にして実験を行った。この結果、培養開始から13日が経過しても、プレートにはコロニーが発生しなかった。
[比較例13]
桂皮酸カリウムの代わりに桂皮酸を用い、PDA培地の桂皮酸濃度を0.05%としたこと以外は参考例25と同様の実験を行った。この結果、培養開始からコロニーが成長し、培養開始から13日後にはコロニーがプレート全面を覆うほど成長した。
[比較例14]
桂皮酸カリウム水溶液の代わりに蒸留水を用いてPDA培地を調製したこと以外は参考例25と同様の実験を行った。この結果、培養開始から急速にコロニーが成長し、培養開始から7日後にはコロニーがプレート全面を覆うほど成長した。
参考例25および比較例13、14のまとめを表9に示す。表9の結果から、培地中に本発明の植物病原菌抑制剤である桂皮酸カリウムを含有することにより、ブラウンパッチ病病原菌の生育を効果的に抑制できることが示された。本発明の植物病原菌抑制剤は、桂皮酸よりも水溶性が高いことから、飽和桂皮酸水溶液よりも高濃度の溶液を調製することができ、このような高濃度溶液を使用することにより桂皮酸の飽和水溶液を用いる場合と比べてもはるかに強力なブラウンパッチ病病原菌抑制効果を発揮できることが分かった。
Figure 0005480677
<桂皮酸カリウムのカーネーション根腐病病原菌に対する抑制試験>
参考例26]
ブラウンパッチ病病原菌に代えてピシウム病であるカーネーション根腐病の病原菌(Pythium aphanidermatum)を用い、コロニーの直径の測定を培養開始から3、7、15日後に行ったこと以外は参考例25と同様にして実験を行った。この結果、培養開始から15日が経過しても、プレートにはコロニーが発生しなかった。
[比較例15]
桂皮酸カリウムの代わりに桂皮酸を用い、PDA培地の桂皮酸濃度を0.05%としたこと以外は参考例26と同様の実験を行った。この結果、培養開始からコロニーが成長し、培養開始から15日後にはコロニーがプレート全面を覆うほど成長した。
[比較例16]
桂皮酸カリウム水溶液の代わりに蒸留水を用いてPDA培地を調製したこと以外は参考例26と同様の実験を行った。この結果、培養開始から急速にコロニーが成長し、培養開始から7日後にはコロニーがプレート全面を覆うほど成長した。
参考例26および比較例15、16のまとめを表10に示す。これらの結果から、培地中に本発明の植物病原菌抑制剤である桂皮酸カリウムを含有することにより、カーネーション根腐病病原菌の生育を効果的に抑制できることが示された。本発明の植物病原菌抑制剤は、桂皮酸よりも水溶性が高いことから、飽和桂皮酸水溶液よりも高濃度の溶液を調製することができ、このような高濃度溶液を使用することにより桂皮酸の飽和水溶液を用いる場合と比べてもはるかに強力なカーネーション根腐病病原菌抑制効果を発揮することが分かった。
Figure 0005480677
<桂皮酸ナトリウム粉末の調製>
90℃の蒸留水650mLに水酸化ナトリウムと桂皮酸を徐々に加えて溶解し、濃度10%の桂皮酸水溶液を調製した。次にこの溶液を25℃まで冷却した後、4℃で12時間放置し、白色物質を析出させた。この白色物質を取り出し、風乾の後、105℃で6時間乾燥し、白色粉末を得た。この白色粉末を以下、白色粉末(B)と呼ぶ。白色粉末(A)と同様に蛍光X線分析、赤外分光スペクトル測定、イオンクロマトグラム測定および桂皮酸成分を定量し、白色粉末(B)は桂皮酸ナトリウムであることを確認した。
<桂皮酸ナトリウムのダラースポット病病原菌に対する抑制試験>
参考例27]
白色粉末(A)の代わりに白色粉末(B)を用い、コロニーの直径の測定を培養開始から3、5、7日後に行ったこと以外は参考例2と同様にして実験を行った。
この結果、実験開始から3日後には小さなコロニーが発生し、その後徐々にコロニーが成長した。
参考例28]
寒天プレート中の桂皮酸ナトリウム濃度を0.1%としたこと以外は参考例27と同様にして実験を行った。培養開始から7日を経過してもプレートにコロニーは発生しなかった。
[比較例17]
桂皮酸ナトリウム水溶液の代わりに蒸留水を用いてPDA培地を調製したこと以外は参考例27と同様にしてコロニーの測定を行った。この結果、培養開始から急速にコロニーが成長し、培養開始から7日後にはコロニーがプレート全面を覆うほど成長した。
参考例27、28および比較例17のまとめを表11に示す。表11の結果から、培地中に本発明の植物病原菌抑制剤である桂皮酸ナトリウムを含有することにより、ダラースポット病病原菌の生育を効果的に抑制できることが示された。特に、培地中の濃度が0.1%である場合には、ダラースポット病病原菌の生育を完全に抑制できることが分かった。
Figure 0005480677
<桂皮酸ナトリウムのラージパッチ病病原菌に対する抑制試験>
参考例29、30、比較例18]
ダラースポット病病原菌の代わりにラージパッチ病病原菌(Rhizoctonia solani AG2-2 LP)を用いて、参考例27、参考例28および比較例17と同様の実験を行った(それぞれ参考例29、参考例30、比較例18)。結果を表12に示す。これらの結果から、培地中に本発明の植物病原菌抑制剤である桂皮酸ナトリウムを0.05%以上含有することにより、ラージパッチ病病原菌の生育を完全に抑制できることが分かった。
Figure 0005480677
<桂皮酸ナトリウムのブラウンパッチ病病原菌に対する抑制試験>
参考例31〜33、比較例19]
ラージパッチ病病原菌の代わりにブラウンパッチ病病原菌(Rhizoctonia solani AG2-2IIIB)を用いたこと以外は参考例29、参考例30および比較例18と同様の実験を行った(それぞれ、参考例31、参考例32、比較例19)。また、桂皮酸ナトリウム水溶液の濃度を0.5%としたこと以外は参考例31と同様の実験を行った(参考例33)。結果を表13に示す。これらの結果から、培地中に本発明の植物病原菌抑制剤である桂皮酸ナトリウムを0.05%以上含有することにより、ブラウンパッチ病病原菌の生育を抑制できることが分かった。特に、水酸化ナトリウム濃度が0.5%のときは、ブラウンパッチ病病原菌の生育を完全に抑制できることが示された。
Figure 0005480677
<桂皮酸と弱酸塩の混合物のラージパッチ病病原菌抑制効果>
参考例34]
桂皮酸1.48部と炭酸水素カリウム1部とを混合し、本発明の植物病原菌抑制剤である組成物(以下、組成物Aと略す。)を調製した。この組成物Aの1.34gを水1リットルに溶解させ、約0.13%の組成物A水溶液を調製した。この0.13%組成物A水溶液を用いてPDA培地を調製し、ダラースポット病病原菌に代えてラージパッチ病病原菌(Rhizoctonia solani AG2-2 LP)を用い、コロニーの直径の測定を培養開始から3、5、7日後に行ったこと以外は参考例1と同様にして実験を行った。
参考例35、36、比較例20]
0.065%組成物A水溶液、0.013%組成物A水溶液または蒸留水を用いてPDA培地を調製したこと以外は参考例34と同様にして実験を行った(それぞれ、参考例35、36、比較例20)。結果を表14に示す。
表14の結果から、培地中に本発明の植物病原菌抑制剤である組成物Aを0.013%(桂皮酸カリウムとして0.01%)以上含有することにより、ラージパッチ病病原菌の生育を効果的に抑制できることがわかった。特に、組成物Aを0.065%(桂皮酸カリウムとして0.05%)以上含有することにより、ラージパッチ病病原菌の生育を完全に抑制できることが示された。
Figure 0005480677
参考例37]
<桂皮酸と弱酸塩の混合物のブラウンパッチ病病原菌抑制効果>
組成物A水溶液の濃度を0.65%とし、ラージパッチ病病原菌の代わりにブラウンパッチ病病原菌(Rhizoctonia solani AG2-2IIIB)を用いたこと以外は参考例34と同様にして実験を行った。
参考例38、39、比較例21]
0.13%組成物A水溶液、0.065%組成物A水溶液または蒸留水を用いてPDA培地を調製したこと以外は参考例37と同様にして実験を行った(それぞれ、参考例38、39、比較例21)。結果を表15に示す。
これらの結果から、培地中に本発明の植物病原菌抑制剤である組成物Aを0.065%(桂皮酸カリウムとして0.05%)以上含有することにより、ブラウンパッチ病病原菌の生育を効果的に抑制できることがわかった。特に、組成物Aを0.65%(桂皮酸カリウムとして0.5%)含有することにより、ブラウンパッチ病病原菌の生育を完全に抑制できることが示された。
Figure 0005480677
<桂皮酸と弱酸塩の混合物のピシウム病病原菌に対する抑制効果>
参考例40]
ラージパッチ病病原菌に代えてピシウム病病原菌(Pythium graminicola)を用い、コロニーの直径の測定を培養開始から2、4、7日後に行ったこと以外は参考例34と同様にして実験を行った。
参考例41〜44、比較例22]
0.065%組成物A水溶液、0.013%組成物A水溶液、0.0065%組成物A水溶液、0.0013%組成物A水溶液または蒸留水を用いてPDA培地を調製したこと以外は参考例40と同様にして実験を行った(それぞれ、参考例41〜44、比較例22)。結果を表16に示す。
これらの結果から、培地中に本発明の植物病原菌抑制剤である組成物Aを0.0013%(桂皮酸カリウムとして0.001%)以上含有することにより、ピシウム病病原菌の生育を効果的に抑制できることがわかった。特に、組成物Aを0.0065%(桂皮酸カリウムとして0.005%)以上含有することにより、ピシウム病病原菌の生育を完全に抑制できることが示された。
Figure 0005480677
<桂皮酸カリウム配合液体肥料組成物(3成分系)のダラースポット病病原菌に対する抑制試験>
参考例45]
20℃の蒸留水400mLに硝酸カリウム0.32gおよびリン酸水素二アンモニウム0.08gを溶解し、液体肥料基液を調製した。この液体肥料基液に前記白色粉末(A)を溶解し、桂皮酸カリウムを含む液体肥料組成物を調製した。
上記桂皮酸カリウム配合液体肥料組成物を用いて、桂皮酸カリウム濃度が0.01%のPDA培地を調製し、コロニーの直径の測定を培養開始から2、4、8日後に行ったこと以外は参考例1と同様にして実験を行った。
参考例46、比較例23]
PDA培地の桂皮酸カリウム濃度を0.1%(参考例46)または0%(比較例23)としたこと以外は参考例45と同様にして実験を行った。結果を表17に示す。これらの結果から、本発明の植物病原菌抑制剤である桂皮酸カリウム配合液体肥料組成物を用いて培地を調製することにより、ダラースポット病病原菌の生育を効果的に抑制できることが示された。特に、培地中において桂皮酸カリウム濃度が0.1%である場合には、ダラースポット病病原菌の生育を完全に抑制できることが分かった。
Figure 0005480677
<桂皮酸カリウム配合液体肥料組成物(4成分系)のラージパッチ病病原菌に対する抑制試験>
参考例47]
20℃の蒸留水400mLに硝酸カリウム0.19g、硝酸アンモニウム0.10gおよびリン酸水素二カリウム0.06gを溶解し、液体肥料基液を調製した。この液体肥料基液に前記白色粉末(A)を溶解し、桂皮酸カリウムを含む本発明の液体肥料組成物を調製した。
上記桂皮酸カリウム配合液体肥料組成物を用いて桂皮酸カリウム濃度が0.01%のPDA培地を調製し、ダラースポット病病原菌に代えてラージパッチ病病原菌を用いたこと以外は参考例45と同様にして実験を行った。
参考例48、比較例24]
PDA培地の桂皮酸カリウム濃度を0.1%としたこと(参考例48)または0%としたこと(比較例24)以外は参考例47と同様にして実験を行った。結果を表18に示す。これらの結果から、本発明の植物病原菌抑制剤である桂皮酸カリウム配合液体肥料組成物を用い、培地中の桂皮酸カリウム濃度を0.1%とすることにより、ラージパッチ病病原菌の生育を完全に抑制できることが示された。
Figure 0005480677
[参考実験例1]
<植物病原菌抑制剤の水に対する溶解性試験>
水温20℃の水100gに、桂皮酸カリウム粉末(白色粉末(A))を加え、スターラーを用いて攪拌しつつ、水溶液が透明になるまでの時間を計測した。同様の実験を、桂皮酸ナトリウム粉末(白色粉末(B))および桂皮酸についても行った。結果を表19に示す。
表19の結果から、本発明の植物病原菌抑制剤である桂皮酸カリウム粉末は20℃の水に35%程度まで、桂皮酸ナトリウム粉末は5%程度までは確実に溶解することがわかった。特に、桂皮酸カリウム粉末は25%程度までは、短い時間で容易に溶解した。このことから、桂皮酸カリウム粉末が、施用現場での施用液の調製などの際に高い実用性を具備していることが明らかになった。一方、桂皮酸粉末は水溶性が低く、水溶液の調製が困難であった。
Figure 0005480677
本発明によれば、桂皮酸と比べて溶解性が高く、高濃度の水溶液を調製できる植物病原菌抑制剤が提供される。本発明の植物病原菌抑制剤は、天然物である桂皮酸の塩を有効成分とし、極めて安全性が高く、植物体には悪影響を及ぼさず、植物病原菌のみを抑制できる。
本発明の植物病原菌抑制剤は、容易に高濃度の水溶液を調製することができるので、保存安定性に優れた高濃度溶液を調製できるばかりでなく、輸送効率にも優れている。また、水溶性が高いという利点を生かし、粉末や顆粒として運搬し、施用現場にて容易に施用目的に応じた濃度の植物病原菌抑制剤を調製することができ、植生管理の効率化にも貢献できる。

Claims (8)

  1. 桂皮酸とアルカリ金属化合物との混合物または桂皮酸塩を含むことを特徴とする担子菌抑制剤。
  2. 前記桂皮酸塩が少なくとも桂皮酸カリウムまたは桂皮酸ナトリウムを含む請求項1に記載の担子菌抑制剤。
  3. 前記アルカリ金属化合物が、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素カリウムおよび炭酸水素ナトリウムからなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項1に記載の担子菌抑制剤。
  4. 前記担子菌、フェアリーリング病病原菌である請求項1に記載の担子菌抑制剤。
  5. 前記フェアリーリング病病原菌が、チビホコリタケまたはヒダホコリタケである請求項4に記載の担子菌抑制剤。
  6. 芝草用である請求項1に記載の担子菌抑制剤。
  7. 芝草がクリーピングベントグラスである請求項に記載の担子菌抑制剤。
  8. 請求項1〜のいずれか1項に記載の担子菌抑制剤を含有することを特徴とする肥料組成物。
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