JP5477413B2 - 分岐鎖アミノ酸の心不全適応 - Google Patents
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査における心拍出量の向上に関しても、同様に、重症の患者や高齢者に対して、心不全に伴う種々の諸症状の病態の改善につながるかどうかは不明である。多彩な背景をもつ症候群と捉えられる心不全においては、単に、心室駆出率や心拍出量により表現される心臓ポンプ機能を改善するのみならず、食欲や気力の低下や浮腫などのQOLの低下を改善することが重要である。
や胸水の貯留や尿量低下などの症状を改善することが必要である。しかし、これまでに分岐鎖アミノ酸の投与がこのような、心不全患者に伴う症状を改善するかどうかは不明であった。
一方で、分岐鎖アミノ酸には、癌悪液質や腎透析患者における食欲を改善することが非特許文献1ならびに非特許文献2などにより知られているが、心不全における食欲の改善ならびに、心不全に伴う食欲低下に対しての効果は知られておらず、さらに浮腫や胸水の貯留や尿量低下などの症状を改善するかどうかは不明であった。
(1)イソロイシン、ロイシンおよびバリンを有効成分とする、慢性心不全の急性増悪に伴う症状の改善用組成物、
(2)慢性心不全の急性増悪に伴う症状が、心臓性悪液質、食欲低下、低アルブミン血症、低タンパク質血症、尿量低下、うっ血性の症状、胸水の貯留、心胸郭比の増加、下肢または全身の浮腫、心嚢液貯留からなる群から選ばれる少なくとも1種である、上記(1)に記載の組成物、
(3)イソロイシン、ロイシンおよびバリンの含有量が、1回摂取単位量あたり1g以上である、上記(1)または(2)に記載の組成物、
(4)イソロイシン、ロイシンおよびバリンの重量比が、1:1.5〜2.5:0.8〜1.7であることを特徴とする、上記(1)〜(3)に記載の組成物、
(5)心不全の治療薬と併用されるものである、上記(1)〜(4)のいずれかに記載の組成物、
(6)心不全治療薬の作用を増強するものである、上記(5)に記載の組成物、
(7)心不全の治療薬が、利尿薬、血管拡張性降圧薬、β遮断薬、強心薬からなる群から選ばれる少なくとも1種である、上記(5)または(6)に記載の組成物、
(8)慢性心不全の急性増悪に伴う症状が心不全の治療薬により改善されないものである、上記(1)〜(7)のいずれかに記載の組成物、
(9)医薬である、上記(1)〜(8)のいずれかに記載の組成物、
(10)食品である、上記(1)〜(8)のいずれかに記載の組成物、
(11)食品が保健機能食品またはダイエタリーサプリメントである、上記(10)に記載の組成物、
(12)保健機能食品が特定保健用食品または栄養機能食品である、上記(11)に記載の組成物、
(13)食品が濃厚流動食である、上記(10)に記載の組成物、
(14)上記(1)〜(13)のいずれかに記載の組成物、および当該組成物を慢性心不全の急性増悪に伴う症状の改善に使用することができる、または使用すべきであることを
記載した記載物を含む、商業的パッケージ、
(15)利尿薬、血管拡張性降圧薬、β遮断薬、強心薬からなる群から選ばれる少なくとも1種の治療薬ならびにイソロイシン、ロイシンおよびバリンを含むことを特徴とする、心不全の予防または治療用の配合剤、
(16)イソロイシン、ロイシンおよびバリンを有効成分とする、慢性心不全の急性増悪に伴う症状の改善用組成物の有効量を経口投与することを含む、慢性心不全の急性増悪に伴う症状の改善方法。
また、本発明の組成物は、アミノ酸を有効成分とすることから、安全性が高く副作用がほとんどないため、医薬品及び食品として極めて有利である。
本発明の組成物は、慢性心不全の急性増悪に伴う症状の改善などに有用である。なお、本明細書において、「改善」とは、「予防・治療」を含む意である。
「急性増悪」とは、何らかの原因により心不全症状が悪化した結果により代償機序に破綻をきたし、全身の循環機能不全による臓器不全として、腎不全、肝不全、呼吸不全、多臓器不全、肺閉塞症、全身性閉塞症を生じた病態であり、呼吸困難や起坐呼吸により緊急入院を余儀なくされることが多い。とりわけ高齢者の慢性心不全においては、急性増悪による繰り返し入院が顕著な特徴のひとつである。
「慢性心不全の急性増悪に伴う症状」とは、心臓性悪液質、食欲低下、低アルブミン血症、低タンパク質血症、尿量低下、うっ血性の症状、胸水の貯留、心胸郭比の増加、下肢または全身の浮腫、心嚢液貯留などが挙げられ、こうした症状が改善されないと、長期の入院が必要となる。
「低アルブミン血症」や「低タンパク質血症」とは、心臓悪液質などにより、栄養不良となり、血液中の蛋白質量が減少した状態をいう。
「尿量低下」とは、心不全による腎臓への血液供給不足から、尿量が減少することをいい、この結果、体内に水分が貯留しやすくなる。
「うっ血」とは、体液量、循環血液量が増加しそれが臓器にうっ滞している状態である。心不全においては、循環血の肺うっ血が合併することが多く、重症度が進むにつれ、労作性呼吸困難・起座呼吸、夜間発作性呼吸困難、肺水腫などの症状を伴う。静脈うっ血により下肢や全身の浮腫や胸水、腹水などの症状が現れる。また、うっ血が種々の臓器においておこった結果、臓器の機能障害や機能不全をもたらす原因のひとつとなる。
「心胸郭比」とは、胸部X線写真上での心臓陰影と胸部の幅との比で、心臓機能が低下すると、代償的に心臓が肥大し、心胸郭比は増加する。
「心嚢液」とは、心臓周囲の心膜内(心嚢)に血液や体液が貯留したもので、心うっ血や心膜の炎症によって生じる。心嚢液が貯留すると心臓は圧迫され、ポンプ機能が損なわれるため、心不全病態はさらに悪化する。
また、イソロイシン、ロイシン及びバリンは、それぞれ、遊離体のみならず、塩の形態でも使用することができる。塩の形態としては、酸付加塩や塩基との塩等を挙げることもでき、イソロイシン、ロイシン及びバリンの医薬品として許容される塩を選択することが好ましい。
イソロイシン、ロイシン及びバリンにそれぞれ付加して医薬として許容される塩を形成する酸としては、例えば、塩化水素、臭化水素、硫酸、リン酸等の無機酸;酢酸、乳酸、クエン酸、酒石酸、マレイン酸、フマル酸、モノメチル硫酸等の有機酸が挙げられる。
イソロイシン、ロイシン及びバリンの医薬として許容される塩基の例としては、例えば、ナトリウム、カリウム、カルシウム等の金属の水酸化物又は炭酸化物、あるいはアンモニア等の無機塩基;エチレンジアミン、プロピレンジアミン、エタノールアミン、モノアルキルエタノールアミン、ジアルキルエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等の有機塩基が挙げられる。
る場合、心不全の治療薬としては、心不全の治療において通常用いられる治療薬であれば特に限定されず、具体的には、利尿薬(ループ利尿薬、カリウム保持性の利尿薬など)、血管拡張性降圧薬(アンジオテンシン変換酵素阻害剤(ACE−I)、アンジオテンシン受容体II拮抗薬(ARB)など)、β遮断薬、強心薬(カテコールアミン薬、PDEIII阻害剤、ジギタリス製剤など)、抗血栓薬、アルドステロン拮抗薬などが挙げられる。
例えば、通常の食生活から摂取される1日あたりの分岐鎖アミノ酸の量を、前記本発明における有効成分の1日あたりの投与量から控除して算定する必要はない。
範囲である。
また、このような食品を、保健機能食品またはダイエタリーサプリメントとして提供することも可能である。この保健機能食品には、特定保健用食品および栄養機能食品なども含まれる。特定保健用食品は、例えば、慢性心不全の急性増悪に伴う症状の改善など、特定の保健の目的が期待できることを表示できる食品である。また、栄養機能食品は、1日あたりの摂取目安量に含まれる栄養成分量が、国が定めた上・下限値の規格基準に適合している場合その栄養成分の機能の表示ができる食品である。ダイエタリーサプリメントには、いわゆる栄養補助食品または健康補助食品などが含まれる。本発明において、特定保健用食品には、慢性心不全の急性増悪に伴う症状の改善などの用途に用いるものであるという表示を付した食品、さらには、かかる用途に用いるものである旨を記載した書類(い
わゆる能書き)などをパッケージとして包含する食品なども含まれるものとする。
さらに、本発明の組成物を濃厚流動食や、食品補助剤として利用することも可能である。食品補助剤として使用する場合、例えば錠剤、カプセル、散剤、顆粒、懸濁剤、チュアブル剤、シロップ剤等の形態に調製することができる。本発明における食品補助剤とは、食品として摂取されるもの以外に栄養を補助する目的で摂取されるものをいい、栄養補助剤、サプリメントなどもこれに含まれる。
慢性心不全急性増悪により入院し、利尿薬や降圧剤、強心薬などの薬物療法による通常の治療法を施しているにもかかわらず、諸症状の改善が認められない患者(表1:8名、平均年齢80.75歳、男性1名、女性7名)に対して、下記に示す成分を含有する分岐鎖アミノ酸顆粒(商品名:リーバクト顆粒、味の素(株)製)を1回、1包を1日3回食後に経口投与した。
1)食事摂取量
2)血清アルブミン
3)血清総蛋白量
4)尿量
5)心胸郭比
6)胸水の程度
7)浮腫の程度
8)症例2の心嚢液貯留量
BCAA顆粒を投与する前後の10日間における総食事回数(30回分)において、それぞれほぼ全量を摂取できた回数(A)とほとんど食事を摂取できなかった回数(B)をそれぞれカウントして、その割合を投与前後で比較し、図1にプロットした。グラフにおいて横軸の1は投与前、2は投与後のデータを示す。なお、症例1および4においては、食事摂取に関するデータが取れなかったため、解析から除外した。BCAA顆粒の投与により、ほぼ全量を摂取できた食事回数が増加し、一方で、ほとんど摂取できなかった食事回数が減少した。このことから、BCAA顆粒の投与によって、心臓性悪液質の主要な症状である食欲不振症が改善されたことは明らかである。
BCAA顆粒の投与前および投与後1ヶ月の血清アルブミン値(g/dl)を測定し、
図2にプロットした。なお、症例1および5においてはデータが取れなかったため、解析から除外した。グラフにおいて横軸の1は投与前、2は投与後のデータを示す。解析対象の6症例の平均においては、投与前の2.85g/dlに対して1ヶ月後には3.57g/
dlと血清アルブミン値の改善が認められた。
BCAA顆粒の投与前および投与後1ヶ月の血清総蛋白質値(g/dl)を測定し、図3にプロットした。なお、症例5においてはデータが取れなかったため、解析から除外した。グラフにおいて横軸の1は投与前、2は投与後のデータを示す。解析対象の7症例の平均においては、投与前の5.98g/dlに対して1ヶ月後には6.71g/dlと血清総蛋白質値の改善が認められた。
これらの、血清アルブミン値及び血清総蛋白質値の改善結果より、BCAA顆粒の投与によって、心不全に伴う心臓性悪液質の主要な症状である蛋白質低栄養が改善されたことは明らかである。
BCAA顆粒の投与前後のそれぞれ5日間および10日間の1日あたりの尿量(ML)を測定し、その平均値を図4および図5にプロットした。グラフにおいて横軸の1は投与前、2は投与後のデータを示す。なお、症例1および4においてはデータが取れなかったため、解析から除外した。解析対象の6症例の平均においては、図4に示すように、投与前5日間の平均値1290 mlに対して、投与後5日間の平均では1564 mlと尿量の増加が認められ、また、図5に示すように、投与前10日間の平均値1259 mlに
対して、投与後10日間の平均では1644 mlと同様に増加が認められた。対象患者
は全例において、表1の治療薬に示す利尿薬による治療が既にほどこされていたにもかかわらず、尿量の十分な改善が認められていなかったが、従来の治療法に加えて、BCAA顆粒を投与することによって、心不全病態による循環機能低下に伴う尿量の減少を改善することは明らかである。
BCAA顆粒の投与前後の適当なときにX線検査を実施し、心胸郭比(CTR、%)の測定を行い、その変化を図6にプロットした。グラフにおいて横軸の1は投与前、2は投与後のデータを示す。なお、症例4、8においては投与前においても胸水の貯留が認めらなかったため、データは取得せず、解析から除外した。解析対象の6例全例で、CTRの改善が認められ、BCAA顆粒の投与前後における改善率の平均は5.1%であった。また、改善に要した期間はそれぞれ次の通りであった。症例1では2.5ヶ月、症例2は5日間、症例3は1.5ヶ月、症例5は10日間、症例6は10日間、症例8は9日間。この結果より、BCAA顆粒を投与することによって、心不全病態による循環機能低下を代償的に補う心肥大を改善することは明らかである。
上記のX線検査結果に基づき、画像上の胸水貯留の程度を下記の要領にて5段階に数値化して投与前後での変化を図7にプロットした。
<胸水の程度>
1:CTAがシャープに見える
2:CTAがDullに見える
3:胸水が横隔膜レベルまで貯留
4:胸水が貯留し横隔膜が追えないが、心陰影は境界が追えるもの
5:胸水により心陰影も追えないもの
.5ヶ月、症例5は10日間、症例6は10日間、症例8は9日間。この結果より、BCAA顆粒を投与することによって、心不全病態による循環機能低下による胸水の貯留を改善することは明らかである。
BCAA顆粒の投与前後の適当なときに浮腫の程度を下記の基準により評価した。
心不全病態における循環不全による体液の貯留が原因となる胸水および浮腫は、BCAA投与により、血清アルブミンの上昇に先立って改善された。症例2では、図2、3、4、5で明らかなように、血清アルブミンや総蛋白質の改善は微小であり、また、尿量の改善も少ない。この症例では、心嚢液貯留が顕著であったため、BCAA投与による心嚢液の変化を心エコー診断での長軸断層像によって評価し、経時的な変化を図8にプロットした。BCAA投与後、2週間(14日)で心嚢液の貯留はほぼ標準レベルに低下し、心不全病態に伴う症状を改善していることが明らかとなった。
Claims (8)
- 有効成分はイソロイシン、ロイシンおよびバリンからなり、慢性心不全の急性増悪に伴う症状の改善用医薬組成物であって、当該症状が、心不全の治療薬により改善されない症状であり、かつ心臓性悪液質、食欲低下、低アルブミン血症、低タンパク質血症および下肢または全身の浮腫からなる群から選ばれる少なくとも1種であり、心不全の治療薬が、利尿薬、血管拡張性降圧薬、β遮断薬、強心薬からなる群から選ばれる少なくとも1種である組成物。
- 慢性心不全の急性増悪に伴う症状が、低アルブミン血症である請求項1に記載の組成物。
- イソロイシン、ロイシンおよびバリンの含有量が、1回摂取単位量あたり1g以上である、請求項1または2に記載の組成物。
- イソロイシン、ロイシンおよびバリンの重量比が、1:1.5〜2.5:0.8〜1.7であることを特徴とする、請求項1〜3に記載の組成物。
- 心不全の治療薬と併用されるものである、請求項1〜4のいずれかに記載の組成物。
- 心不全の治療薬が、利尿薬、血管拡張性降圧薬、β遮断薬、強心薬からなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項5に記載の組成物。
- 利尿薬、血管拡張性降圧薬、β遮断薬、強心薬からなる群から選ばれる少なくとも1種の心不全の治療薬ならびにイソロイシン、ロイシンおよびバリンを含むことを特徴とする、心不全の治療薬により改善されない慢性心不全の急性増悪に伴う症状の予防または治療用の配合剤であって、当該症状が心臓性悪液質、食欲低下、低アルブミン血症、低タンパク質血症および下肢または全身の浮腫からなる群から選ばれる少なくとも1種である配合剤。
- 慢性心不全の急性増悪に伴う症状が、低アルブミン血症である請求項7に記載の配合剤。
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