JP5475823B2 - 電子部品ケース用包材及び電子部品用ケース並びに電子部品 - Google Patents

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Description

この発明は、例えばリチウムイオン2次電池やキャパシターなどの電子部品のケース用包材に関する。
リチウムイオン2次電池は、例えばノートパソコン、ビデオカメラ、携帯電話、電気自動車等の電源として広く用いられている。このリチウムイオン2次電池としては、電池本体の周囲をケースで包囲した構成のものが用いられている。このケース用包材としては、例えば延伸ポリアミドフィルムからなる外層/接着剤層/アルミニウム箔/接着剤層/内層が順に積層一体化された構成のものが公知である(例えば特許文献1参照)。この特許文献1に記載された包材では、アルミニウム箔の少なくとも内層側の面は、リン酸金属塩等を含有した処理液で処理されることによって易接着処理が施されている。このような処理によってアルミニウム箔と内層との接着強度を向上させることができる。
特開2001−6631号公報(請求項1、請求項2)
ところで、電池ケース用包材としては、次のような諸機能を備えていることが求められている。
1)耐電解液性に優れること:高温条件下でも電解液に対する耐性に優れていてアルミニウム箔の腐食や電解液の漏れが生じないこと
2)ガスバリア性に優れること:外部からの水蒸気の侵入を防止できること(外部から水蒸気が侵入すると電解液が加水分解を受けてフッ酸を生成し、該フッ酸によりアルミニウム箔が腐食するので、これを十分に防止できること)
3)成形性が良好であること:良好状態に成形加工できること
4)層間接着強度に優れていること。
しかるに、前記従来技術に係る電池ケース用包材では、アルミニウム箔表面の易接着処理によって十分な接着強度が得られるものの、高温条件下では十分な耐電解液性を持続させることができないという問題があった。近年、リチウムイオン2次電池は、ノートパソコン、ビデオカメラ、携帯電話、電気自動車等、屋外環境で使用されるものに搭載されるケースが多くなっていることから、夏期などの高温条件下での使用にも十分に耐えられるだけの耐電解液性を有することが強く求められるようになってきているが、上記従来技術の包材では、高温条件下での耐電解液性は十分なものではなかった。この耐電解液性が不十分であると、電解液により内側層とアルミニウム箔層との層間接着強度が低下し、層間で剥離現象が生じ、外部から電池内部に水蒸気が侵入して電解液が加水分解し、フッ酸が生成して、アルミニウム箔を腐食させたり、場合によっては剥離した層間より電解液が漏洩し、電池機能を損傷させる恐れがあった。
この発明は、かかる技術的背景に鑑みてなされたものであって、成形性が良好で、ガスバリア性に優れると共に、層間接着強度に優れ、特に高温条件下においても耐電解液性に優れた電子部品ケース用包材及び電子部品用ケース並びに該ケースが用いられた電子部品を提供することを目的とする。
前記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
[1]外側層としての耐熱性樹脂延伸フィルム層と、内側層としての熱可塑性樹脂未延伸フィルム層と、これら両フィルム層間に配設されたアルミニウム箔層とを含む、電子部品ケース用包材において、前記アルミニウム箔層は、アルミニウム箔の少なくとも前記内側層側の片面に下地皮膜が形成されたものからなり、前記下地皮膜は、キトサン及びキトサン誘導体からなる群より選ばれた1種または2種以上のキトサン類と、Ti、Hf、Mo、W、Se、Ce、Fe、Cu、Zn、V及び3価Crからなる群より選ばれた1種または2種以上の金属を含む金属化合物とを含有してなる下地処理剤で前記アルミニウム箔の表面を処理することによって形成された皮膜であることを特徴とする電子部品ケース用包材。
[2]外側層としての耐熱性樹脂延伸フィルム層と、内側層としての熱可塑性樹脂未延伸フィルム層と、これら両フィルム層間に配設されたアルミニウム箔層とを含む、電子部品ケース用包材において、前記アルミニウム箔層は、アルミニウム箔の少なくとも前記内側層側の片面に下地皮膜が形成されたものからなり、前記下地皮膜は、キトサン及びキトサン誘導体からなる群より選ばれた1種または2種以上のキトサン類と、Ti、Hf、Mo、W、Se、Ce、Fe、Cu、Zn、V及び3価Crからなる群より選ばれた1種または2種以上の金属との金属架橋反応により形成された皮膜であることを特徴とする電子部品ケース用包材。
[3]前記金属として3価Crが用いられている前項1または2に記載の電子部品ケース用包材。
[4]前記アルミニウム箔層と前記熱可塑性樹脂未延伸フィルム層とが、ウレタン系接着剤層、アクリル系接着剤層または熱可塑性エラストマーを含有してなる接着剤層を介してドライラミネートされている前項1〜3のいずれか1項に記載の電子部品ケース用包材。
[5]前記アルミニウム箔層と前記熱可塑性樹脂未延伸フィルム層とが、酸変性ポリプロピレン層を介してヒートラミネートされている前項1〜3のいずれか1項に記載の電子部品ケース用包材。
[6]前記アルミニウム箔層と前記熱可塑性樹脂未延伸フィルム層とが、共押出された酸変性ポリプロピレン層及び未変性ポリプロピレン層を介してヒートラミネートされており、前記酸変性ポリプロピレン層は前記アルミニウム箔層の下地皮膜に接して配置されている前項1〜3のいずれか1項に記載の電子部品ケース用包材。
[7]前記酸変性ポリプロピレンが無水マレイン酸変性ポリプロピレンである前項5または6に記載の電子部品ケース用包材。
[8]前記キトサン類は、キトサン、カルボキシメチルキトサン、カチオン化キトサン、ヒドロキシアルキルキトサン及びこれらの酸との塩からなる群より選ばれた1種または2種以上のキトサン類である前項1〜7のいずれか1項に記載の電子部品ケース用包材。
[9]前記耐熱性樹脂延伸フィルム層は、ポリアミドまたはポリエステルからなる延伸フィルムにより構成されている前項1〜8のいずれか1項に記載の電子部品ケース用包材。
[10]前記熱可塑性樹脂未延伸フィルム層は、ポリエチレン、ポリプロピレン、オレフィン系共重合体、これらの酸変性物およびアイオノマーからなる群より選ばれた少なくとも1種の熱可塑性樹脂からなる未延伸フィルムで構成されている前項1〜9のいずれか1項に記載の電子部品ケース用包材。
[11]前項1〜10のいずれか1項に記載の電子部品ケース用包材を深絞り成形または張り出し成形することにより所要形状に成形された電子部品用ケース。
[12]電子部品本体と、該電子部品本体を包囲したケースとからなり、前記ケースは、前項1〜10のいずれか1項に記載の電子部品ケース用包材を深絞り成形または張り出し成形することにより形成されたものであることを特徴とする電子部品。
[1]の発明では、キトサン類と、前記特定の金属を含む金属化合物とを含有してなる下地処理剤で処理することによって形成された下地皮膜がアルミニウム箔の少なくとも片面(内側層側の片面)に設けられているから、この下地皮膜によって電解液等の浸透を効果的に防止することができて、包材としての耐電解液性を向上させることができる。特に高温条件下での耐電解液性に常に優れたものとなる。従って、この発明の電子部品ケース用包材は、高温環境下で使用されるような場合であっても十分に安定した耐電解液性を示す。また、この電子部品ケース用包材は、成形性が良好で、ガスバリア性に優れると共に、層間接着強度も優れている。
なお、[1]の発明において、下地処理剤は、分子内にカルボキシル基を少なくとも1個有する有機化合物を含有する構成であるのがより好ましい。また、[1]の発明において、下地皮膜は、アルミニウム箔の両面に形成されているのが好ましい。
[2]の発明では、キトサン類と、前記特定の金属との架橋反応により形成された下地皮膜がアルミニウム箔の少なくとも片面(内側層側の片面)に設けられているから、この下地皮膜によって電解液等の浸透を効果的に防止することができて、包材としての耐電解液性を向上させることができる。特に高温条件下での耐電解液性に非常に優れたものとなる。従って、この発明の電子部品ケース用包材は、高温環境下で使用されるような場合であっても十分に安定した耐電解液性を示す。また、この電子部品ケース用包材は、成形性が良好で、ガスバリア性に優れると共に、層間接着強度も優れている。なお、[2]の発明において、下地皮膜は、アルミニウム箔の両面に形成されているのが好ましい。
[3]の発明では、前記金属として3価Crが用いられているから、高温条件下での耐電解液性をより向上させることができると共に、成形性も向上させることができる。
[4]の発明では、アルミニウム箔層と熱可塑性樹脂未延伸フィルム層とが、ウレタン系接着剤層、アクリル系接着剤層または熱可塑性エラストマーを含有してなる接着剤層を介してドライラミネートされているから、この包材は水分透過性が小さいものとなる。従って外部からの水蒸気が電池内部に侵入することで電解質が加水分解してフッ酸が生成してアルミニウム箔が腐食するようなことを十分に防止できる。
[5]の発明では、アルミニウム箔層と熱可塑性樹脂未延伸フィルム層とが、酸変性ポリプロピレン層を介してヒートラミネートされているから、高温条件下での耐電解液性をさらに向上させることができる。
[6]の発明では、アルミニウム箔層と熱可塑性樹脂未延伸フィルム層とが、共押出された酸変性ポリプロピレン層及び未変性ポリプロピレン層を介してヒートラミネートされており、酸変性ポリプロピレン層はアルミニウム箔層の下地皮膜に接して配置されているから、高温条件下での耐電解液性をさらに向上させることができる。かつ、未変性ポリプロピレン層が積層一体化されているので、良好な成形性を確保することができる。
[7]の発明では、酸変性ポリプロピレンとして無水マレイン酸変性ポリプロピレンが用いられているから、高温条件下での耐電解液性をさらに向上させることができる。
[8]の発明では、下地皮膜の強度を向上させることができる。
[9]の発明では、耐熱性樹脂延伸フィルム層(外側層)は、ポリアミドまたはポリエステルからなる延伸フィルムにより構成されているから、成形時のアルミニウム箔のネッキングを効果的に防止することができ、深くシャープな形状の成形体(ケース)を得ることが可能となる。
[10]の発明では、熱可塑性樹脂未延伸フィルム層(内側層)は、ポリエチレン、ポリプロピレン、オレフィン系共重合体、これらの酸変性物およびアイオノマーからなる群より選ばれた少なくとも1種の熱可塑性樹脂からなる未延伸フィルムで構成されているから、包材にヒートシール性を十分に付与することができる。
[11]の発明では、電子部品用ケースは、高温環境下で使用されるような場合であっても十分に安定した耐電解液性を示すと共に、成形性が良好で、ガスバリア性に優れると共に、層間接着強度も優れている。
[12]の発明では、高温環境下で使用されるような場合であっても十分に安定した耐電解液性を示すと共に、成形性が良好で、ガスバリア性に優れると共に、層間接着強度にも優れた電子部品用ケースを備えた電子部品が提供される。
この発明に係る電子部品ケース用包材の一実施形態を示す断面図である。 この発明に係る電子部品ケース用包材の他の実施形態を示す断面図である。 この発明に係る電子部品ケース用包材の製造方法の一例を示す図である。
この発明に係る電子部品ケース用包材(1)の一実施形態を図1に示す。この包材は、電池ケース用包材として用いられるものである。前記包材(1)は、アルミニウム箔(10)の両面に下地皮膜(11)(12)が形成されてなるアルミニウム箔層(4)の上面に(下地皮膜(11)の上に)二液反応型接着剤からなる第1接着剤層(5)を介して耐熱性樹脂延伸フィルム層(外側層)(2)が積層一体化されると共に、前記アルミニウム箔層(4)の下面に(下地皮膜(12)の下に)二液反応型接着剤からなる第2接着剤層(6)を介して熱可塑性樹脂未延伸フィルム層(内側層)(3)が積層一体化された構成からなる。
前記耐熱性樹脂延伸フィルム層(外側層)(2)は、包材として良好な成形性を確保する役割を主に担う部材である、即ち成形時のアルミニウム箔のネッキングによる破断を防止する役割を担うものである。前記耐熱性樹脂延伸フィルム(2)としては、特に限定されるものではないが、ポリアミドまたはポリエステルからなる延伸フィルムを用いるのが好ましい。前記耐熱性樹脂延伸フィルム層(2)の厚さは、9〜50μmに設定されるのが好ましい。9μm未満では、シャープな成形を行うときに延伸フィルムの伸びが不足してアルミニウム箔にネッキングを生じやすく成形不良を発生しやすくなるので好ましくない。また50μmを超えてもこれ以上の成形性向上は望めず徒に樹脂使用量を増大させるだけであるので好ましくない。
前記熱可塑性樹脂未延伸フィルム層(内側層)(3)は、リチウムイオン二次電池等で用いられる腐食性の強い電解液などに対しても優れた耐薬品性を具備させると共に、包材にヒートシール性を付与する役割を担うものである。前記熱可塑性樹脂未延伸フィルム(3)としては、特に限定されるものではないが、ポリエチレン、ポリプロピレン、オレフィン系共重合体、これらの酸変性物およびアイオノマーからなる群より選ばれた少なくとも1種の熱可塑性樹脂からなる未延伸フィルムを用いるのが好ましい。前記熱可塑性樹脂未延伸フィルム層(3)の厚さは、9〜50μmに設定されるのが好ましい。9μm未満では、厚さが薄くなり過ぎてピンホールが発生することが懸念されるので好ましくない。また50μmを超えても徒に樹脂使用量を増大させるだけであるので好ましくない。中でも、前記熱可塑性樹脂未延伸フィルム層(3)の厚さは、20〜40μmに設定されるのが特に好ましい。
なお、前記外側層(2)、内側層(3)は、いずれも単層であっても良いし、複層であっても良い。
前記アルミニウム箔層(4)は、包材に酸素や水分の侵入を阻止するガスバリア性を付与する役割を担うものであり、アルミニウム箔(10)の両面に下地皮膜(11)(12)が形成された構成からなる。
前記アルミニウム箔(10)としては、純アルミニウム系またはアルミニウム−鉄系合金からなる厚さ10〜100μmのO材(軟質材)が好適に用いられる。前記アルミニウム箔(10)の厚さは30〜50μmに設定されるのが特に好ましい。
前記下地皮膜(11)(12)は、キトサン及びキトサン誘導体からなる群より選ばれた1種または2種以上のキトサン類と、Ti、Hf、Mo、W、Se、Ce、Fe、Cu、Zn、V及び3価Crからなる群より選ばれた1種または2種以上の金属を含む金属化合物とを含有してなる下地処理剤で前記アルミニウム箔の両面を処理することによって形成された皮膜である。このような処理によって、前記キトサン類と、Ti、Hf、Mo、W、Se、Ce、Fe、Cu、Zn、V及び3価Crからなる群より選ばれた1種または2種以上の金属との金属架橋反応により形成された下地皮膜(11)(12)がアルミニウム箔(10)の表裏両面に形成される。なお、本実施形態では、アルミニウム箔(10)の両面に下地皮膜(11)(12)が形成された構成が採用されているが、アルミニウム箔(10)の前記内側層(3)側の片面に(内面側に)下地皮膜(12)が形成された構成を採用しても良い。
前記キトサン類について説明する。前記キトサンは、例えばカニやエビ等の甲殻類から抽出される天然高分子キチンを60〜100モル%脱アセチル化することで得られる。また、キトサン誘導体は、例えばキトサンに存在する水酸基又は/及びアミノ基に対して、カルボキシル化、グルコール化、トシル化、硫酸化、リン酸化、エーテル化、アルキル化などして得られた化合物である。中でも、前記キトサン類としては、キトサン、カルボキシメチルキトサン、カチオン化キトサン、ヒドロキシアルキルキトサン及びこれらの酸との塩からなる群より選ばれた1種または2種以上のキトサン類を用いるのが好ましい。
また、前記Ti、Hf、Mo、W、Se、Ce、Fe、Cu、Zn、V及び3価Crからなる群より選ばれた1種または2種以上の金属を含む金属化合物としては、特に限定されるものではないが、例えばこれら金属の金属酸化物、水酸化物、錯体化合物、有機酸塩、無機酸塩などが挙げられる。
中でも、前記金属化合物としては、3価Crを含む金属化合物を用いるのが好ましく、この場合には、高温条件下での耐電解液性をより向上させることができるし、成形性も向上させることができる。前記3価Crを含む金属化合物としては、例えば硫酸クロム、硝酸クロム、フッ化クロム、蓚酸クロム、酢酸クロム等が挙げられる。
前記下地処理剤には、前記キトサン類および前記金属化合物に加えて、さらに分子内にカルボキシル基を少なくとも1個有する有機化合物を含有せしめるのが好ましい。このような有機化合物を含有せしめることによって、キトサン類の溶解性を向上できるし、キトサン類の金属架橋度を向上させる(高分子量化する)ことができる。
前記分子内にカルボキシル基を少なくとも1個有する有機化合物としては、特に限定されないが、例えば酢酸、蓚酸、マロン酸、リンゴ酸、酒石酸、メリト酸、アジピン酸、コハク酸、マレイン酸、フタル酸、セバチン酸、クエン酸、ブタントリカルボン酸、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸、エチレンジアミンテトラカルボン酸、トリメリット酸等が挙げられる。
前記下地処理剤には、必要に応じてさらにpH調整剤、各種添加剤などを含有せしめても良い。
前記下地処理剤におけるキトサン類の濃度は、0.001〜10質量%の範囲に設定するのが好ましく、特に0.1〜5質量%の範囲に設定するのがより好ましい。また、前記下地処理剤における金属化合物の濃度は、0.001〜10質量%の範囲に設定するのが好ましく、特に0.1〜5質量%の範囲に設定するのがより好ましい。また、前記下地処理剤における両者の混合比については、前記キトサン類100質量部に対して前記金属化合物1〜1000質量部とするのが好ましく、特に10〜100質量部とするのがより好ましい。
前記下地処理剤でアルミニウム箔(10)を処理する際の処理方法としては、下地処理剤をアルミニウム箔(10)の表面に塗布した後、加熱乾燥させる又は乾燥させる塗布処理や、下地処理剤中の成分をアルミニウム箔(10)の表面と化学反応させた後に表面を水洗して乾燥させる化成処理などが挙げられるが、特にこれらに限定されない。前記塗布手法としては、例えばロールコート法、スピンコート法、浸漬法、スプレー法等が挙げられる。
しかして、前記キトサン類のアルミニウム箔(10)表面に対する乾燥時付着量は、キトサン換算で1〜500mg/m2 の範囲であり、前記金属化合物のアルミニウム箔(10)表面に対する乾燥時付着量は金属換算で1〜500mg/m2 の範囲であるのが好ましい。中でも、前記キトサン類のアルミニウム箔(10)表面に対する乾燥時付着量は、キトサン換算で10〜100mg/m2 の範囲であるのが特に好ましい。また、前記金属化合物のアルミニウム箔(10)表面に対する乾燥時付着量は金属換算で5〜50mg/m2 の範囲であるのが特に好ましい。
前記第1接着剤層(5)は、特に限定されるものではないが、ウレタン系二液反応型接着剤により形成されたウレタン系接着剤層であるのが好ましく、これにより深絞り成形または張り出し成形で十分にシャープな成形を行うことが可能となる。
前記第2接着剤層(6)は、特に限定されるものではないが、二液反応型接着剤により形成されたウレタン系接着剤層、アクリル系接着剤層または熱可塑性エラストマーを含有してなる接着剤層であるのが好ましい。アクリル系接着剤層または熱可塑性エラストマーを含有してなる接着剤層である場合には、包材(1)の水分透過性は非常に小さくなるので、外部からの水蒸気が電池内部に侵入することで電解質が加水分解してフッ酸が生成してアルミニウム箔(10)が腐食するようなことを十分に防止できる利点がある。
或いは、前記第2接着剤層に代えて図2に示すような構成を採用することもできる。即ち、前記アルミニウム箔層(4)の下地皮膜(12)に接して配置された、共押出による酸変性ポリプロピレン層(21)と未変性ポリプロピレン層(22)の2層からなる構成を採用しても良く、この場合にはより耐電解液性を向上できる。このような積層物は、例えば図3に示すような方法で製造される。即ち、酸変性ポリプロピレン層(21)及び未変性ポリプロピレン層(22)を共押出する一方、図面左側からアルミニウム箔層(4)を供給しつつ、図面右側から熱可塑性樹脂未延伸フィルム(3)を供給して、これら(4)(3)の間に酸変性ポリプロピレン層(21)及び未変性ポリプロピレン層(22)を一対の加熱加圧ロールで挟み込んでヒートラミネートする。
前記酸変性ポリプロピレンとしては、特に限定されないが、無水マレイン酸変性ポリプロピレンを用いるのが好ましい。
この発明の電子部品ケース用包材(1)を深絞り成形または張り出し成形することにより、電子部品用ケースを得ることができる。また、従来の電子部品ケース用包材では、下地皮膜の耐電解液性が不十分であるために、電解液により内側層とアルミニウム箔層との層間接着強度が低下し、層間で剥離現象が生じ、外部から電池内部に水蒸気が侵入して電解液が加水分解し、フッ酸が生成して、アルミニウム箔を腐食させたり、場合によっては剥離した層間より電解液が漏洩し、電池機能を損傷させる恐れがあったが、本発明の電子部品用ケースは、高温環境下で使用されるような場合であっても十分に安定した耐電解液性を示すと共に、成形性が良好で、ガスバリア性に優れると共に、層間接着強度も優れている。また、深くシャープな形状に成形することも十分に可能である。
しかして、リチウムイオン2次電池などの電池等の電子部品本体を、前記電子部品用ケースで包囲した構成とすることにより、この発明の電子部品が得られる。
次に、この発明の具体的実施例について説明する。
参考例1>
水500質量部、グリセリル化キトサン10質量部、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸10質量部を混合した液を4時間撹拌することによってグリセリル化キトサンを十分に溶解させた。得られた溶解液にフッ化クロム(3価Cr)5質量部を添加して、下地処理剤を得た。次いで、40μmのアルミニウム箔の両面に前記下地処理剤をロールコーターで塗布した後、200℃で30秒間加熱乾燥することによって、アルミニウム箔(10)の両面に下地皮膜(11)(12)を形成せしめた(アルミニウム箔層(4)を得た)。
次に、得られた下地皮膜(11)の表面にウレタン系二液反応型接着剤(5)をグラビアロールで塗布し、加熱によりある程度乾燥させた後、その接着剤面にナイロンからなる厚さ25μmの延伸フィルム(2)をラミネートした。
次に、図3に示すように、厚さ3μmの無水マレイン酸変性ポリプロピレン層(21)及び厚さ12μmの未変性ポリプロピレン層(22)を共押出する一方、図面左側から延伸フィルム(2)が接着された前記アルミニウム箔層(4)を供給しつつ、図面右側からポリプロピレンからなる厚さ30μmの未延伸フィルム(3)を供給して、これら(4)(3)の間に共押出された無水マレイン酸変性ポリプロピレン層(21)及び未変性ポリプロピレン層(22)を一対の加熱加圧ロールで挟み込んでヒートラミネートした。
次に、得られた積層フィルムの下地皮膜(11)の表面にウレタン系樹脂接着剤(5)をグラビアロールで塗布し、加熱によりある程度乾燥させた後、その接着剤面にナイロンからなる厚さ25μmの延伸フィルム(2)をラミネートして、総厚さ113μmの電池ケース用包材を得た。
参考例2>
水500質量部、カチオン化キトサン15質量部、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸15質量部を混合した液を4時間撹拌することによってカチオン化キトサンを十分に溶解させた。得られた溶解液にフッ化クロム(3価Cr)8質量部を添加して、下地処理剤Xを得た。下地処理剤として前記下地処理剤Xを用いた以外は、参考例1と同様にして電池ケース用包材を得た。
参考例3>
水500質量部、カルボキシメチルキトサン20質量部、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸20質量部を混合した液を4時間撹拌することによってカルボキシメチルキトサンを十分に溶解させた。得られた溶解液にフッ化クロム(3価Cr)10質量部を添加して、下地処理剤Yを得た。下地処理剤として前記下地処理剤Yを用いた以外は、参考例1と同様にして電池ケース用包材を得た。
参考例4>
水500質量部、キトサン15質量部、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸15質量部を混合した液を4時間撹拌することによってキトサンを十分に溶解させた。得られた溶解液にフッ化クロム(3価Cr)8質量部を添加して、下地処理剤Zを得た。下地処理剤として前記下地処理剤Zを用いた以外は、参考例1と同様にして電池ケース用包材を得た。
参考例5>
下地処理剤を作成する際に、フッ化クロム(3価Cr)5質量部に代えて、モリブデン酸アンモニウム5質量部を用いた以外は、参考例1と同様にして電池ケース用包材を得た。
参考例6>
下地処理剤を作成する際に、フッ化クロム(3価Cr)5質量部に代えて、チタンフッ化アンモニウム5質量部を用いた以外は、参考例1と同様にして電池ケース用包材を得た。
参考例7>
下地処理剤を作成する際に、グリセリル化キトサン10質量部に代えてキトサン10質量部を用い、フッ化クロム(3価Cr)5質量部に代えてチタンフッ化アンモニウム5質量部を用いた以外は、参考例1と同様にして電池ケース用包材を得た。
参考例8>
ナイロンからなる厚さ25μmの延伸フィルムに代えて、ポリエステルからなる厚さ25μmの延伸フィルムを用いた以外は、参考例1と同様にして電池ケース用包材を得た。
<参考例
水500質量部、グリセリル化キトサン20質量部、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸20質量部を混合した液を4時間撹拌することによってグリセリル化キトサンを十分に溶解させた。得られた溶解液にフッ化クロム(3価Cr)10質量部を添加して、下地処理剤を得た。次いで、40μmのアルミニウム箔の両面に前記下地処理剤をロールコーターで塗布した後、200℃で30秒間加熱乾燥することによって、アルミニウム箔の両面に下地皮膜を形成せしめた(アルミニウム箔層を得た)。
次に、得られたアルミニウム箔層の下地皮膜(11)の表面にウレタン系二液反応型接着剤(5)をグラビアロールで塗布し、加熱によりある程度乾燥させた後、その接着剤面にナイロンからなる厚さ25μmの延伸フィルム(2)をドライラミネートした。
更に、得られた積層フィルムの下地皮膜(12)の表面にウレタン系二液反応型接着剤(6)をグラビアロールで塗布し、加熱によりある程度乾燥させた後、その接着剤面にポリプロピレンからなる厚さ30μmの未延伸フィルム(3)をドライラミネートして、総厚さ101μmの電池ケース用包材を得た。
<参考例10
水500質量部、グリセリル化キトサン10質量部、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸10質量部を混合した液を4時間撹拌することによってグリセリル化キトサンを十分に溶解させた。得られた溶解液にフッ化クロム(3価Cr)5質量部を添加して、下地処理剤を得た。次いで、40μmのアルミニウム箔の両面に前記下地処理剤をロールコーターで塗布した後、200℃で30秒間加熱乾燥することによって、アルミニウム箔の両面に下地皮膜を形成せしめた(アルミニウム箔層を得た)。
次に、得られたアルミニウム箔層の下地皮膜(11)の表面にウレタン系二液反応型接着剤(5)をグラビアロールで塗布し、加熱によりある程度乾燥させた後、その接着剤面にナイロンからなる厚さ25μmの延伸フィルム(2)をドライラミネートした。
更に、得られた積層フィルムの下地皮膜(12)の表面にアクリル系二液反応型接着剤(6)をグラビアロールで塗布し、加熱によりある程度乾燥させた後、その接着剤面にポリプロピレンからなる厚さ30μmの未延伸フィルム(3)をドライラミネートして、総厚さ100μmの電池ケース用包材を得た。
<実施例
アクリル系二液反応型接着剤(6)に代えて、熱可塑性エラストマーを含有した二液反応型接着剤(6)を用いた以外は、参考例10と同様にして電池ケース用包材を得た。
<比較例1>
下地処理を全く施していないアルミニウム箔(40μm)をアルミニウム箔層として用いた以外は、参考例1と同様にして電池ケース用包材を得た。
<比較例2>
40μmのアルミニウム箔の両面に水系処理剤(アクリル樹脂含有量5質量%、フッ化ジルコニウム5質量%含有)を塗布した後乾燥することによってアルミニウム箔の両面に下地処理を施したものをアルミニウム箔層として用いた以外は、参考例1と同様にして電池ケース用包材を得た。
<比較例3>
40μmのアルミニウム箔の両面に10質量%のリン酸クロム塩水溶液を塗布した後乾燥することによって、アルミニウム箔の両面に下地処理を施したものをアルミニウム箔層として用いた以外は、参考例1と同様にして電池ケース用包材を得た。
Figure 0005475823
上記のようにして得られた各電池ケース用包材に対して下記評価法に基づいて性能評価を行った。
<接着強度評価法>
未延伸ポリプロピレンフィルム層とアルミニウム箔層の界面で剥離して両者間の接着強度を測定した。接着強度(ラミネート強度)が15N/15mm以上であるものを「◎」、10N/15mm以上15N/15mm未満であるものを「○」、5N/15mm以上10N/15mm未満であるものを「△」、5N/15mm未満のものを「×」とした。
<成形性評価法>
包材を110×180mmのブランク形状にして、成形高さフリーのストレート金型にて深絞り1段成形を行い、各包材の成形高さにより、成形性を評価した。成形高さが5mm以上のものを「◎」、3mm以上5mm未満のものを「○」、2mm以上3mm未満のものを「△」、2mm未満のものを「×」とした。なお、使用した金型のポンチ形状は、長辺60mm、短辺45mm、コーナーR:1〜2mm、ポンチ肩R:1〜2mm、ダイス肩R:0.5mmであった。
<外面の剥離の有無の評価>
上記深絞り1段成形により得られた成形品を乾燥機内で80℃で3時間放置した後、外面層がデラミネーション(剥離)を生じていないか目視観察を行った。成形高さが5mm以上の場合でも剥離が全く生じていなかったものを「◎」、成形高さが5mm以上で剥離が生じたものを「○」、成形高さが3mm以上で剥離が生じたものを「△」、成形高さが3mm未満でも剥離が生じたものを「×」とした。
<高温条件での耐電解液性の評価>
上記深絞り1段成形により得られた成形品(容器)内に電解液(ジメチルカーボネート+エチルカーボネート(DMC:EC=1:1)+リチウム塩)を注入し、ヒートシール後に容器を倒置し、この状態で85℃で1ヶ月保存した。しかる後、電解液の液漏れの有無を調べ、漏れがなかったものを「◎」とし、漏れがあったものを「×」とした。また、85℃で1ヶ月保存した後の包材の内側層を剥離して、アルミニウム箔表面の変色及び腐食の有無を調べ、アルミニウム箔表面の変色、腐食ともに無かったものを「◎」、僅かに変色があったものを「○」、ある程度の変色があったものを「△」、少なくとも点状の腐食が観察されたものを「×」とした。
更に、各包材を電解液(ジメチルカーボネート+エチルカーボネート(DMC:EC=1:1)+リチウム塩)に浸漬し、この浸漬状態で85℃で1ヶ月保存した後の包材について、未延伸ポリプロピレンフィルム層とアルミニウム箔層の界面で剥離して両者間の接着強度を測定した。測定された接着強度が、初期接着強度に対して変化が殆どなく保持率95%以上であったものを「◎」、初期接着強度に対して保持率60%以上95%未満であったものを「○」、初期接着強度に対して保持率30%以上60%未満であったものを「△」、初期接着強度に対して保持率30%未満であったものを「×」とした。
Figure 0005475823
表2の各実施例、各比較例の初期ラミネート強度はいずれも良好であるが、85℃電解液浸漬後のラミネート強度を見ると、本発明の実施例1、参考例1〜10の電池ケース用包材はすべて良好なラミネート強度を維持できているのに対し、比較例1〜3の包材では、ラミネート強度が大きく低下しており、従って本発明の電池ケース用包材は耐電解液性に非常に優れていることが判る。
また、比較例1、2の電池ケース用包材は電解液浸漬後の耐食性が劣っており、また比較例3の電池ケース用包材は成形性に劣っていた。
1…電子部品ケース用包材
2…外側層
3…内側層
4…アルミニウム箔層
5…第1接着剤層
6…第2接着剤層
10…アルミニウム箔
11…下地皮膜
12…下地皮膜
21…酸変性ポリプロピレン層
22…未変性ポリプロピレン層

Claims (8)

  1. 外側層としての耐熱性樹脂延伸フィルム層と、内側層としての熱可塑性樹脂未延伸フィルム層と、これら両フィルム層間に配設されたアルミニウム箔層とを含む、電子部品ケース用包材において、
    前記アルミニウム箔層は、厚さ10〜100μmの軟質アルミニウム箔の少なくとも前記内側層側の片面に下地皮膜が形成されたものからなり、
    前記下地皮膜は、キトサン及びキトサン誘導体からなる群より選ばれた1種または2種以上のキトサン類と、Ti、Hf、Mo、W、Se、Ce、Fe、Cu、Zn、V及び3価Crからなる群より選ばれた1種または2種以上の金属を含む金属化合物とを含有してなる下地処理剤で前記アルミニウム箔の表面を処理することによって形成された皮膜であり、
    前記アルミニウム箔層と前記熱可塑性樹脂未延伸フィルム層とが、熱可塑性エラストマーを含有してなる接着剤層を介してドライラミネートされ
    前記包材は、深絞り成形用の包材または張り出し成形用の包材であることを特徴とする電子部品ケース用包材。
  2. 前記包材を電解液(ジメチルカーボネート+エチルカーボネート(ジメチルカーボネート:エチルカーボネート=1:1)+リチウム塩)に浸漬し、この浸漬状態で85℃で1ヶ月保存した後の包材について、熱可塑性樹脂未延伸フィルム層とアルミニウム箔層の界面で剥離して両者間の接着強度を測定したとき、測定された接着強度が、初期接着強度に対して保持率60%以上である請求項1に記載の電子部品ケース用包材。
  3. 前記金属化合物として、3価Crを含む金属化合物が用いられている請求項1または2に記載の電子部品ケース用包材。
  4. 前記キトサン類は、キトサン、カルボキシメチルキトサン、カチオン化キトサン、ヒドロキシアルキルキトサン及びこれらの酸との塩からなる群より選ばれた1種または2種以上のキトサン類である請求項1〜のいずれか1項に記載の電子部品ケース用包材。
  5. 前記耐熱性樹脂延伸フィルム層は、ポリアミドまたはポリエステルからなる延伸フィルムにより構成されている請求項1〜のいずれか1項に記載の電子部品ケース用包材。
  6. 前記熱可塑性樹脂未延伸フィルム層は、ポリエチレン、ポリプロピレン、オレフィン系共重合体、これらの酸変性物およびアイオノマーからなる群より選ばれた少なくとも1種の熱可塑性樹脂からなる未延伸フィルムで構成されている請求項1〜のいずれか1項に記載の電子部品ケース用包材。
  7. 請求項1〜のいずれか1項に記載の電子部品ケース用包材を深絞り成形または張り出し成形することにより所要形状に成形された電子部品用ケース。
  8. 電子部品本体と、該電子部品本体を包囲したケースとからなり、前記ケースは、請求項1〜のいずれか1項に記載の電子部品ケース用包材を深絞り成形または張り出し成形することにより形成されたものであることを特徴とする電子部品。
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