JP6428857B2 - 表面処理液及び該表面処理液を用いた表面処理アルミニウム板の製造方法並びに表面処理アルミニウム板 - Google Patents
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Description
本発明の他の目的は、上記表面処理アルミニウム板を形成可能な表面処理液を提供することである。
本発明の表面処理アルミニウム板の製造方法においては、前記化成処理皮膜における炭素量Cと、ジルコニウム又はチタン量Mの質量比C/Mが、1乃至40であることが好適である。
また有機樹脂被覆としてポリエステルフィルムを用いたプレコート材料とする場合にも、表面処理膜とポリエステルフィルムとの間にプライマー等の塗装層を介在させる必要がなく、生産性及び経済性に優れている。
更に本発明の表面処理アルミニウム板の製造に用いられる表面処理液は、水分散性のポリエステル樹脂及びポリカルボン酸を用いることにより、ジルコニウム化合物又はチタン化合物と共にポリエステル樹脂を表面処理膜に一様に存在させることができると共に、ポリカルボン酸がジルコニウムイオン又はチタンイオンと金属キレート錯体を形成することによって、優れた耐食性及び加工密着性を得ることが可能になる。
従来よりジルコニウム化合物又はチタン化合物を含有する無機表面処理膜は知られているが、本発明の表面処理アルミニウム板における化成処理皮膜は、これらの無機物質に加えてポリエステル樹脂及びポリカルボン酸が存在することにより、従来の無機表面処理膜に比して顕著に耐食性及び加工密着性が向上することがわかった。
すなわち、本発明の表面処理アルミニウム板における化成処理皮膜は、アルミニウム板側にジルコニウム化合物又はチタン化合物が位置し、このジルコニウム化合物又はチタン化合物によってポリエステル樹脂が基板に固定され、有機樹脂被覆が施される際等の熱処理によって、ポリエステル樹脂が化成処理皮膜表面を均一に覆うことによって耐食性を発現するとともに、次いで施される有機樹脂被覆との密着性が顕著に向上される。またアルミニウムイオン、ジルコニウムイオン又はチタンイオンと、ポリカルボン酸が金属キレート錯体となって存在し、この金属キレート錯体によっても金属と有機物の密着性が向上するため、上記ポリエステル樹脂による密着性の向上と相俟って、顕著に耐食性及び加工密着性を向上させることが可能になる。
C/Mが上記範囲にある表面処理アルミニウム板は、表面処理に際してジルコニウムイオン又はチタンイオンが適切に析出して、ポリエステル樹脂及びポリカルボン酸と共に良好な化成処理皮膜が形成されており、上述した優れた耐食性及び加工密着性を備えた表面処理アルミニウム板を確実に得ることが可能になるが、上記範囲よりもC/Mの値が小さいと耐食性が劣るようになる。一方、上記範囲よりもC/Mの値が大きいと、表面処理に要する時間が長くなり、生産性に劣る。
また、析出皮膜量としては特に制限されるものではないが、上記炭素量Cが5mg/m2乃至1000mg/m2、特に50mg/m2乃至500mg/m2の範囲にあることが好まく、またジルコニウム又はチタン量Mが、1mg/m2乃至200mg/m2、特に2mg/m2乃至100mg/m2の範囲にあることが好ましい。上述した範囲よりも少ない場合には、アルミニウム板の被覆が十分に行われず耐食性が劣るようになり、一方、上述した範囲よりも多い場合は、皮膜量の増加に応じた性能向上の効果が得られないため、生産性に劣る。
尚、化成処理皮膜中の炭素量(C)及びジルコニウム又はチタン量(M)は、市販の蛍光X線分析装置によって膜厚を定量することができる。この場合、予め炭素及びジルコニウム又はチタンについて重量膜厚が既知の複数のサンプルからこれらの重量膜厚とX線強度の関係を示す検量線を作成しておき、試料を用いて測定したX線強度を、検量線に基づき重量膜厚に換算する。
図1は、本発明の有機樹脂被覆表面処理アルミニウム板の一例の断面構造を示す図であり、アルミニウム板2の両面に化成処理皮膜3,3が形成されており、この化成処理皮膜3,3の上に直接有機樹脂被覆4,4が形成されている。
本発明の表面処理アルミニウム板の表面処理に用いる表面処理液としては、水分散性のポリエステル樹脂と、ポリカルボン酸、フッ素イオン、ジルコニウムイオン又はチタンイオンを含有することを特徴とする水溶液から成るものである。
すなわち、本発明においては、上述したとおり、表面処理液中にポリエステル樹脂が分散体の形態で存在し、このポリエステル樹脂分散体が、化成処理皮膜中のジルコニウム化合物又はチタン化合物と共に一様にアルミニウム板表面に存在し、またポリカルボン酸は、カルボキシル基の存在により密着性を向上できると共に、ジルコニウムイオン又はチタンイオンと金属キレート錯体を形成することにより、有機樹脂被覆との密着性及び耐食性に優れた化成処理皮膜を提供することが可能になる。
更にポリカルボン酸が含有されていることにより、表面処理に際して過剰なジルコニウム化合物又はチタン化合物の析出が抑制できる。
また本発明の表面処理液においては、ポリエステル樹脂が500ppm以上10000ppm未満、特に1000乃至5000ppm、ポリカルボン酸が5乃至2000ppm、特に100乃至1000ppm、ジルコニウムイオン又はチタンイオンが5ppm以上5000ppm未満、特に5乃至4000ppm、特に50乃至1000ppmの量で含有されていることが好適である。後述する表面処理の条件等と共に、表面処理液中の各成分が上記範囲にあることにより、化成処理皮膜におけるC/Mの値が上述した範囲にあり、上述した優れた化成処理皮膜を形成できるが、上記範囲よりも各成分の含有量が少ない場合には、満足する耐食性及び密着性を得ることができず、その一方、上記範囲よりも各成分が多いと、処理液の安定性が劣るようになるおそれがあると共に、更なる耐食性等の向上も得られず、経済性も低下する。
親水基としては、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、スルホン酸基、又はこれらの誘導体や金属塩、エーテル等であり、これらを分子内に含むことにより水に分散可能な状態で存在する。
親水性基を含むモノマーとしては、具体的にはポリエチレングリコール,ポリプロピレングリコール,グリセリン,ポリグリセリン等の水酸基含有ポリエーテルモノマー、5−スルホイソフタル酸,4−スルホナフタレン−2,7−ジカルボン酸,5(4−スルホフェノキシ)イソフタル酸等のスルホン酸含有モノマーの金属塩又はアンモニウム塩等を挙げることができる。
また親水性基を有するビニル系モノマーをポリエステル樹脂にグラフト重合させたものでもよく、親水性基を有するビニル系モノマーとしては、カルボキシル基、水酸基、スルホン酸基、アミド基等を含むもの、親水性基に変化させることができる基としては酸無水物基、グリシジル基、クロル基等を含むものを挙げることができる。
本発明においては、水分散性ポリエステル樹脂としては、親水基としてスルホン酸基を有するものを好適に用いることができる。
また、これら水分散性ポリエステル樹脂のガラス転移温度は、−40℃〜140℃が好ましく、20℃乃至120℃がより好ましい。また、水分散性ポリエステル樹脂の数平均分子量は1000乃至10万が好ましく、3000乃至8万がより好ましい。
尚、本発明の表面処理液においては、フッ素イオンを含有することにより、アルミニウムが溶解し、ジルコニウム化合物又はチタン化合物を適切に析出させることができる。従って上記のうちフッ素イオンを供給可能な化合物以外を用いる場合は、フッ素化合物としてフッ化ナトリウム(NaF)、フッ化カリウム(KF)、フッ化アンモニウム(NH4F)等を組み合わせて用いることもできる。
尚、表面処理液中にフッ素イオンを存在させる場合には、フッ素イオンが5乃至4000ppmの範囲にあることが望ましい。上記範囲よりもフッ素イオン濃度が低いと、フッ素イオンのエッチング効果を得ることができず、一方上記範囲よりもフッ素イオン濃度が高いと析出効率をかえって阻害するおそれがある。
本発明の表面処理液を用いたアルミニウム板の表面処理方法は、上述した水分散性ポリエステル樹脂、ポリカルボン酸、及びジルコニウム化合物又はチタン化合物を水性媒体に配合し、ポリエステル樹脂が500ppm以上10000ppm未満、ポリカルボン酸が5乃至2000ppm、ジルコニウムイオン又はチタンイオンが5ppm以上5000ppm未満の量となるように調製された表面処理液を用い、浸漬処理或いはスプレー処理、ロールコーターによる処理によって行うことができる。
表面処理液のpHは、1.5乃至4.0の範囲にあることが好ましく、必要に応じて硝酸又はアンモニアを添加して調整する。上記範囲よりもpHが低いと十分な皮膜を得ることができず、一方上記範囲よりもpHが大きいと、処理液の安定性に劣るようになる。
また表面処理液の温度は、特に限定されないが、35乃至70℃の範囲にあることが、安定して被膜を形成する上で望ましい。
表面処理液への浸漬に先立って、アルミニウム板は、常法により、脱脂、水洗、必要に応じて、エッチング処理、水洗、更に酸洗、水洗の前処理を行う。次いで、上記pH及び温度範囲に調整された表面処理液に2乃至20秒間浸漬、或いはスプレー処理した後、水洗し、乾燥することによって、化成処理被膜が形成された表面処理アルミニウム板を得ることができる。
尚、アルミニウム板は、従来製缶材料に用いられていたアルミニウム板を全て使用することができ、アルミニウム合金板の他、純アルミニウム板であってもよく、またその厚みはこれに限定されないが、100乃至500μmの範囲にあるものを好適に使用することができる。
また、表面処理の方法によっては、基板のアルミニウムが溶解することもあり、化成皮膜にアルミニウム化合物が含有する場合がある。
本発明の有機樹脂被覆表面処理アルミニウム板は、上記表面処理アルミニウム板の化成処理皮膜上に有機樹脂から成る層を被覆して成るものであり、上述した表面処理アルミニウム板を用いることから、有機樹脂被覆の密着性、特に加工密着性に優れており、このため優れた耐食性、耐デント性を有している。
本発明の有機樹脂被覆表面処理アルミニウム板において、化成処理皮膜上に設ける有機樹脂としては、特に限定はなく、熱可塑性樹脂から成るフィルム、或いは熱硬化性乃至熱可塑性樹脂から成る塗膜を挙げることができる。
更に塗膜形成可能な塗料としては、フェノールエポキシ、アミノ−エポキシ等の変性エポキシ塗料、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体けん化物、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体、エポキシ変性−、エポキシアミノ変性−、エポキシフェノール変性−ビニル塗料または変性ビニル塗料、アクリル塗料、ポリエステル系塗料、スチレン−ブタジェン系共重合体等の合成ゴム系塗料等を挙げることができ、これらの2種以上の組合わせであってもよい。
ポリエステル樹脂としては、ホモポリエチレンテレフタレートも勿論使用可能であるが、フィルムの到達し得る最高結晶化度を下げることが耐衝撃性や加工性の点で望ましく、この目的のためにポリエステル中にエチレンテレフタレート以外の共重合エステル単位を導入するのがよい。エチレンテレフタレート単位を主体とし、他のエステル単位の少量を含む共重合ポリエステル樹脂を用いることが特に好ましい。
一般に共重合ポリエステル中の二塩基酸成分の70モル%以上、特に75モル%以上がテレフタル酸成分から成り、ジオール成分の70モル%以上、特に75モル%以上がエチレングリコールから成り、二塩基酸成分の1乃至30モル%、特に5乃至25モル%がテレフタル酸以外の二塩基酸成分から成ることが好ましい。
テレフタル酸以外の二塩基酸としては、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸:シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸:コハク酸、アジピン酸、セバチン酸、ドデカンジオン酸等の脂肪族ジカルボン酸:の1種又は2種以上の組合せが挙げられ、エチレングリコールまたはブチレングリコール以外のジオール成分としては、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、1,6−ヘキシレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物等の1種又は2種以上が挙げられる。
三官能以上の多塩基酸及び多価アルコールとしては、トリメリット酸、ピロメリット酸、ヘミメリット酸、1,1,2,2−エタンテトラカルボン酸、1,1,2−エタントリカルボン酸、1,3,5−ペンタントリカルボン酸、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸、ビフェニル−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸等の多塩基酸や、ペンタエリスリトール、グリセロール、トリメチロールプロパン、1,2,6−ヘキサントリオール、ソルビトール、1,1,4,4−テトラキス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン等の多価アルコールが挙げられる。
本発明の有機樹脂被覆に用いるポリエステル樹脂層は、単層の樹脂層であってもよく、また同時押出などによる多層の樹脂層であってもよい。多層のポリエステル樹脂層を用いると、下地層、すなわち表面処理アルミニウム板側に接着性に優れた組成のポリエステル樹脂を選択し、表層に耐内容物性、すなわち耐抽出性やフレーバー成分の非吸着性に優れた組成のポリエステル樹脂を選択できるので有利である。
上記ポリエステル樹脂層には、それ自体公知の樹脂用配合剤、例えば非晶質シリカ等のアンチブロッキング剤、無機フィラー、各種帯電防止剤、滑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等を公知の処方に従って配合することができる。
本発明において、有機樹脂被覆がポリエステル樹脂等の熱可塑性樹脂から成る被覆である場合の厚みは、一般に3乃至50μmの範囲にあることが望ましく、有機樹脂被覆が塗膜である場合には、0.5乃至20g/m2の塗工量であることが望ましい。有機樹脂被覆の厚みが、上記範囲よりも小さいと耐食性が不十分となり、一方上記範囲よりも大きいと加工性の点で問題を生じやすい。
本発明において、表面処理アルミニウム板への有機樹被覆の形成は任意の手段で行うことができ、例えば、ポリエステル樹脂被覆の場合では、押出コート法、キャストフィルム熱接着法、二軸延伸フィルム熱接着法等により行うことができ、熱硬化性塗料による被覆等の場合には、ロールコート法、スプレー法等、従来公知の方法で塗工できる。
また前述した通り、本発明においては、表面処理アルミニウム板の有機樹脂被覆の密着性に優れていることから、化成処理膜と有機樹脂被覆、特にポリエステル樹脂から成る被覆との間に、接着用プライマー等の塗膜を設ける必要はないが、勿論設けることを除外するものではなく、密着性と耐食性とに優れた従来公知のフェノールエポキシ系塗料等のプライマー塗料を用いることもでき、表面処理アルミニウム板或いはポリエステルフィルムの何れに予め設けてもよい。
本発明の缶体は、前述した有機樹脂被覆表面処理アルミニウム板から形成されている限り、従来公知の任意の製缶法により成形することができ、側面継ぎ目を有するスリーピース缶であることもできるが、一般にシームレス缶(ツーピース缶)であることが好ましい。このシームレス缶は、有機樹脂被覆表面処理アルミニウム板の有機樹脂被覆面が少なくとも缶内面側となるように、絞り・再しぼり加工、絞り・再絞りによる曲げ伸ばし加工(ストレッチ加工)、絞り・再絞りによる曲げ伸ばし・しごき加工或いは絞り・しごき加工等の従来公知の手段に付すことによって製造される。
本発明の缶蓋は、前述した有機樹脂被覆表面処理アルミニウム板から形成されている限り、従来公知の任意の製蓋法により成形することができ、一般には、ステイ・オン・タブタイプのイージーオープン缶蓋やフルオープンタイプのイージーオープン缶蓋に適用することができる。
化成処理皮膜中のポリエステル樹脂及びポリカルボン酸に由来する炭素原子の量は、蛍光X線分析装置を用いて測定した。測定に用いた検量線は、濃度が既知の水分散型ポリエステル及びポリカルボン酸含有水溶液を、清浄なアルミニウム合金上に塗装焼き付けして炭素量が既知の標準板を作製し、これらの蛍光X線強度と測定炭素量との相関から測定した。
化成処理皮膜中のジルコニウム化合物又はチタン化合物に由来するジルコニウム又はチタン量は、蛍光X線分析装置を用いて測定した。検量線は、皮膜量が既知のジルコニウム又はチタン析出標準板を用意し、これらの蛍光X線強度と皮膜量の相関から測定した。
化成処理皮膜中の、ポリエステル樹脂及びポリカルボン酸に由来する炭素量と、ジルコニウム化合物又はチタン化合物に由来するジルコニウム又はチタン量の比で表わされる有機/無機比の算出については、蛍光X線分析により得られた皮膜量を、以下の式を用いて計算することで得た。
有機/無機比=C/M (−)
C:化成処理皮膜中の炭素量(mg/m2)
M:化成処理皮膜中のジルコニウム又はチタン量(mg/m2)
使用機器: 理学電機製 ZSX100e
測定条件: 測定対象 Zr−Kα線、C−Kα線
測定径 20mm
X線出力 50kV−70mA
測定時間 20秒(Zr)、100秒(C)
表面処理アルミニウム板の化成皮膜中の金属キレート錯体の確認は、フーリエ変換赤外分光光度計で測定した。金属イオンと複合化することにより、カルボン酸はカルボン酸塩へと転換する。一般に、カルボン酸の特性吸収帯は、920〜970cm−1付近、1700〜1710cm−1付近、2500〜3200cm−1付近の波長にあることが知られている。また、カルボン酸塩の特性吸収帯は、1480〜1630cm−1付近の波長にあることが知られており、これらピークのシフトを確認することで金属キレート錯体を確認した。
使用機器:Digilab社製 FTS7000series
測定方法:ゲルマニウムプリズムを用いた一回反射法
測定波長領域:4000〜700cm−1
作製した表面処理アルミニウム板の耐食性能は、塩化物イオンを含有する酸性水溶液に浸漬し、性状の変化を経時で観察することで行った。アルミ供試板の耐食性が不足している場合、露出部の金属基板が溶解し、腐食により金属化合物が発生するので、これらに由来する白錆を確認することで評価した。
試験に用いたモデル水溶液は、食塩を1000ppmとし、これにクエン酸を加えてpHが3.0となるよう調整したものを用いた。また、試験時の保管温度は37℃で行った。
耐食性 可 :経時2週間の時点で、白錆の発生なし
耐食性 不可 :経時2週間の時点で、白錆の発生あり
作製した缶体の缶側壁部の缶底から高さ45mm〜95mmの部分を幅15mmで短冊状に切り出し、短冊状の先端から35mm位置(缶底からの高さ80mmの位置に相当)に缶外面側素地に達する傷を入れた。予め入れた傷を起点として折り曲げを繰り返すことにより金属片のみを切断し、樹脂フィルムだけで繋がっている部分を作った後、この部分を内面側になるようにし、ピール試験機を用いて180度剥離試験を23℃下、引張速度5mm/minで行って密着強度を測定した。
評価結果は
加工後密着力 ○:密着強度が、1.0N/15mm以上
加工後密着力 ×:密着強度が、1.0N/15mm以下
で示した。
アルミニウム合金板(3004材)を準備し、日本ペイント社製の脱脂剤「サーフクリーナーEC371」(商品名)の2%水溶液中(50℃)に、6秒間浸漬して脱脂処理を行った。脱脂処理後、水洗してから、日本ペイント社製のエッチング剤「サーフクリーナー420N−2」(商品名)の2%水溶液中(50℃)に、6秒間浸漬してアルカリエッチング処理を行った。エッチング処理後、水洗してから、2%硫酸水溶液中(50℃)に6秒間浸漬して酸洗浄を行った。
酸洗浄後、水洗してから、水分散型ポリエステル樹脂(東洋紡績社製ポリエステル「バイロナ−ルMD2000」)、ポリカルボン酸(東亜合成社製ポリアクリル酸「ジュリマー10LHP」)、及びジルコニウム化合物(アルドリッチ社製ヘキサフルオロジルコニウム酸)を、それぞれポリエステルが5000ppm、ポリアクリル酸が100ppm、ジルコニウムイオンが200ppmとなるように配合し、必要に応じて硝酸或いはアンモニアを添加してpHを1.8に調整し、その後6秒間の浸漬処理することで化成処理皮膜を形成した。更に水洗した後、210℃×180秒の条件で乾燥させ、表面処理アルミニウム板を得た。
得られた有機樹脂被覆アルミニウム板の両面に、パラフィンワックスを静電塗油した後、直径156mmの円形に打ち抜き、浅絞りカップを作成した。次いで、この浅絞りカップを、再絞り−しごき加工及びドーミング成形を行い、続いて開口端縁部のトリミング加工を行うことにより、缶体を得た。缶体の諸特性は以下の通りであった。
缶体径:66mm
缶体高さ:168mm
元板厚に対する缶側壁部の平均板厚減少率:60%
実施例1において、処理液のジルコニウムイオン量を500ppmとする以外は実施例1と同様の方法で、表面処理アルミニウム板、有機樹脂被覆表面処理アルミニウム板、及び缶体を得た。
実施例1において、処理液のポリエステル量を処理液のジルコニウムイオン量を1000ppmとする以外は実施例1と同様の方法で、表面処理アルミニウム板、有機樹脂被覆表面処理アルミニウム板、及び缶体を得た。
実施例1において、処理液のポリエステル量を2500ppm、ポリアクリル酸量を200ppm、ジルコニウムイオン量を500ppmとする以外は実施例1と同様の方法で、表面処理アルミニウム板、有機樹脂被覆表面処理アルミニウム板、及び缶体を得た。
実施例1において、処理液のポリアクリル酸量を800ppm、ジルコニウムイオン量を1000ppmとする以外は実施例1と同様の方法で、表面処理アルミニウム板、有機樹脂被覆表面処理アルミニウム板、及び缶体を得た。
実施例1において、ポリアクリル酸量を800ppm、ジルコニウムイオン量を4000ppmとする以外は実施例1と同様の方法で、表面処理アルミニウム板、有機樹脂被覆表面処理アルミニウム板、及び缶体を得た。
実施例1において、処理液のポリアクリル酸を除き、ジルコニウムイオン量を500ppmとする以外は実施例1と同様の方法で、表面処理アルミニウム板、有機樹脂被覆表面処理アルミニウム板、及び缶体を得た。
実施例2において、処理液のポリエステルとポリアクリル酸を除く以外は実施例2と同様の方法で、表面処理アルミニウム板、有機樹脂被覆表面処理アルミニウム板、及び缶体を得た。
市販のリン酸クロメート処理膜を用いる他は実施例1と同様の方法で、表面処理アルミニウム板、有機樹脂被覆表面処理アルミニウム板、及び缶体を得た。
実施例および比較例の試験評価結果を、表1に示した。
また耐食性にも優れていることから、腐食性の強い内容物に使用される缶体或いは缶蓋用の製缶材料として好適に用いることができる。
Claims (3)
- アルミニウム板を化成処理により表面処理するための表面処理液であって、水分散性のポリエステル樹脂とポリカルボン酸、フッ素イオン、及びジルコニウムイオン又はチタンイオンを含有し、前記ポリカルボン酸がポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリマレイン酸、ポリイタコン酸、アクリル酸―メタクリル酸コポリマーから選ばれる少なくても一種であって、前記ポリエステル樹脂が500ppm以上10000ppm未満、前記ジルコニウムイオン又はチタンイオンが5ppm以上5000ppm未満の量で含有され、前記ポリカルボン酸の量が5乃至2000ppmであることを特徴とする表面処理液。
- pH1.5〜4.0、温度35〜70℃に調整された請求項1記載の表面処理液を用いて、2〜20秒間の浸漬処理又はスプレー処理によりアルミニウム板に化成処理皮膜を形成することを特徴とする表面処理アルミニウム板の製造方法。
- 前記化成処理皮膜における炭素量Cと、ジルコニウム又はチタン量Mの質量比C/Mが、1乃至40である請求項2に記載の表面処理アルミニウム板の製造方法。
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