JP5475421B2 - レーザー溶接用の銅材料または銅合金材料 - Google Patents

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本発明は、レーザー溶接用の銅材料あるいは銅合金材料に関するものである。
銅(銅合金を含む、以下同じ。)板は、導電性及び熱伝導性に優れていることから電子材料や電気回路材料として、例えば端子や接点、あるいはバスバーにおいて広く用いられており、通常は他の導電材料と接合して用いられる。
接合方法としては、半田付け、かしめ、抵抗溶接などが挙げられる。また、他の接合方法として、炭酸ガスレーザー、エキシマレーザー、YAGレーザー、ファイバーレーザー、ダイオードレーザー(LD)などを用いたレーザー溶接も導入されている。これは、端子や接点等の小型化に伴って必然的に接合部分も小さくなり、かかる小さな接合部位を高速に作製するにはレーザー溶接が最適であるからである。特に、小型で高出力が得られるYAGレーザーやファイバーレーザーが小型溶接に多用されるようになっており、多くのアルミ材料や鉄材料に適用されている。
一方で、銅板はレーザー溶接に用いられる波長領域でのレーザーの反射率が高い(吸収率が低い)ため、他の材料に比べてレーザー溶接が難しいという問題がある。具体的には、YAGレーザーの波長は1064nm、ファイバーレーザーの波長は1075nm、ダイオードレーザー(LD)の波長は700〜1500nmである。そして、例えば900〜1100nmでのレーザーの吸収率は、鉄が35%、ニッケルが30%、アルミが28%前後、スズが45%程度であるのに対し、銅は10%以下である。
このように、銅板は他の材料と比べて溶接が難しいことから、銅板のレーザー溶接には大きなエネルギーを必要とした。その一方で、高エネルギーのレーザーを銅板に用いると、銅板が溶融貫通してしまうという問題があった。その理由は以下の通りである。
すなわち、一般的に、レーザー溶接では、レーザー照射で材料表面が溶融すると、キーホールと呼ばれる溶融穴がすぐに形成される。そして、レーザーはこのキーホール内部で複数反射を繰り返すことで吸収が増加されるため、一旦溶融した材料はレーザー溶接し易くなる。銅板の場合も、キーホールが形成されると溶融が進み易い。そうすると、一旦キーホールが形成された後の銅板は、照射されるレーザーが高エネルギーである分、一気に裏面まで溶融が進んでしまうこととなる。
つまり、銅板をレーザー溶接する場合、レーザーのエネルギーが低いと銅板の高い反射性のために溶融することができず、一方、銅板を溶融できる高エネルギーのレーザーを銅板に照射すると表面溶融に続いてキーホール内部の溶融が急激に進んでしまい、容易に貫通してしまう。
このような銅板の溶融貫通は、例えば二枚の銅板を重ね合わせて溶接を行う場合において、レーザー照射面である上側の銅板の板厚に比べてレーザー照射面でない下側の銅板の板厚が厚ければ、溶融は下側の銅板の途中で止まるため不都合はないが、下側の銅板の板厚が上側の銅板の板厚と同等もしくは薄いと、材料に穴が開いて種々の不都合が生じることとなる。
より詳細には、例えば、自動車用の端子接続分野においては、光反射率を低下させた(光吸収率を向上させた)めっき銅を用いたYAGレーザー溶接が多用されている。かかるYAGレーザーを用いた溶接では、レーザー照射面である上側材料には0.1mm以下の薄い銅板が使われており、また、接合する下側の材料(銅板など)は板厚が厚い場合が多いため、下側の材料の途中で溶融が止まりやすく、レーザーによる溶融貫通を問題にする必要がない。また、得られる接合体は主に小電流用途で使用されるため、溶接部の接触電気抵抗による発熱を問題にすることもない。
一方、近年、電極に数アンペアから数十アンペア、あるいは数百アンペアの大電流を通電する用途に接合体を使用するケースが増大しており、同時に、部品の大型化を抑制する動きも進んでいる。このため、接点や端子に用いられる銅板としては、接点の幅は小さく保ちつつ電気抵抗を低減するべく、レーザー照射面である上側の銅板の板厚を厚くする方向で設計が行われるようになっており、上側と下側の銅板の板厚が同程度になる場合がある。この場合、板厚の厚い上側の銅板を溶融するべく高エネルギーのレーザーを照射すると、下側の銅板ともども溶融貫通することとなる。
レーザー加工が材料に穴を開けることを目的する場合には、上記現象は特に問題とはならない。しかしながら、溶接のように、二つ以上の材料を合わせて接合する場合、レーザーが材料を完全に貫通することは必ずしも望ましいものではなく、材料の内部で溶融を止めることが好ましい場合が多い。したがって、レーザー溶接によって溶融貫通し難い厚膜の銅板が望まれており、銅板の反射率を制御する重要性がますます高まっている。
光反射率を低下させた(光吸収性を向上させた)上記めっき銅(銅材料)として、例えば特許文献1には、表面にSnめっき層を有する銅または銅合金が開示されている。また、特許文献2には、無酸素銅にNiめっきを施した銅材料が開示されている。
しかしながら、銅材料の表面にSnやNiが存在すると、レーザー溶接時にSnやNiが銅と合金化して、接合部の電気抵抗が増加する場合があった。接合体を大電力用途で使用する場合には、接合部に大きな電流が流れ込むため、接合部の電気抵抗が増加すると極めて大きな問題となる。
特開平8−218137号公報 特開昭64−75699号公報
本発明は上記の様な状況の下でなされたものであり、本発明の目的は、SnやNiなどによるめっきを必要とせず、また、接合部の電気抵抗の増加を最小限に抑えることが可能な、レーザー溶接し易い銅材料あるいは銅合金材料を提供することにある。
本発明者らは、(1)レーザー溶接に用いられるYAGレーザーやファイバーレーザーなどの波長1000nm付近のレーザーに対する銅板や銅合金板の反射率を低下させるとともに、(2)接合部の電気抵抗を増加させない銅板や銅合金板の処理方法について鋭意研究を行った。その結果、銅板や銅合金板に所定の樹脂層を設けることにより、上記課題を解決できることを見出した。
すなわち、上記課題を解決し得た本発明のレーザー溶接用の銅材料または銅合金材料は、板厚0.05〜10.0mmの銅板または銅合金板の少なくとも片面が、着色剤を含有する樹脂層で被覆されてなり、前記樹脂層表面の波長1000nmの光に対する反射率が40%以下であることを特徴とする。
また、本発明では、前記樹脂層が、エポキシ樹脂、(メタ)アクリル樹脂、およびウレタン樹脂よりなる群から選択される少なくとも1種を含むことや、前記着色剤が、前記樹脂層中に0.1〜30質量%含まれること、及び前記樹脂層の膜厚が1〜500μmであることが好ましい実施態様である。
本発明の銅材料または銅合金材料は、少なくとも片面に、着色剤を含有する樹脂層を有し、波長1000nmの光に対する反射率を40%以下に制御するため、レーザー溶接を容易に行うことができる。また、Snめっき層やNiめっき層を設けないため、溶接時に銅材料または銅合金材料の表面が合金化して接合部の電気抵抗が増加するのを抑えることが期待される。
本発明のレーザー溶接用の銅材料または銅合金材料(以下、単に「銅材料」と称する場合がある。)は、板厚0.05〜10.0mmの銅板または銅合金板の少なくとも片面が、着色剤を含有する樹脂層で被覆されてなり、前記樹脂層表面の波長1000nmの光に対する反射率が40%以下であることを特徴とする。以下、本発明の銅材料または銅合金材料について詳細に説明する。
(銅板、銅合金板)
本発明で用いる銅合金板の合金元素としては、当該銅合金板から得られる銅合金材料を電子材料や電気回路材料に用いることができれば特に限定されず、例えば、Zn、Al、Fe、Mn、Snなどが挙げられる。これらの合金元素は単独で含まれても、2種以上が組み合わせて含まれてもよい。合金元素の含有率は、得られる接合体に要求される機械特性や耐熱性、加工性に応じて適宜調整され、特に限定されるものではないが、例えば、Znなら50質量%以下、Alなら13質量%以下、Feなら7質量%以下、Mnなら3.0質量%以下、Snなら10質量%以下含まれることが好ましい。
本発明で用いる銅板の板厚は0.05〜10.0mmである。板厚が0.05mm未満では銅板が薄くなり過ぎて箔の状態となって自立せず、何らかの基材に銅板を貼り付けて用いることとなる。その場合、基材の状態によって溶接状態が著しく変わるため、溶接を容易に行えない場合がある。また、レーザーのスポット径を小さくしても溶接が難しい場合がある。板厚が10.0mmを超えると、溶接するのに高いエネルギーを必要とするため、製造コストが上昇する。また、用いる溶接機によっては高いエネルギーを出力できずに溶接できない場合がある。銅板の板厚は、0.1mm以上(より好ましくは0.5mm以上)が好ましく、5.0mm以下(より好ましくは3.0mm以下)が好ましい。
(樹脂層)
本発明の銅材料は、銅板の少なくとも片面に樹脂層を有してなり、かかる樹脂層により、波長1000nmの光に対する銅材料(より詳細には、樹脂層が形成された側の銅板表面)の反射率を40%以下に制御している。このため、本発明の銅材料は、樹脂層が形成されていない未処理の銅板に比べて低いレーザー出力で溶接することが可能になる。また、本発明の銅材料を未処理の銅板と重ね合わせて溶接する際に、レーザー照射によりレーザー照射面が溶融し始めるエネルギー(溶融開始時レーザー出力)と、レーザー照射による溶融が接合体の裏面(照射面の裏面)に達するのに要するエネルギー(溶融貫通時レーザー出力)との差が大きくなるため、レーザーによる溶融を接合体の内部で留める(溶融貫通しない)照射条件を設定するのが容易になる。
また、かかる樹脂層であれば、溶接時の温度(おおむね1100℃以上)で分解して、溶接時に銅材料と合金化しないため、接合部の電気抵抗が増加するのを最小限に抑えることができる。
本発明では、樹脂層を備える側の銅材料の、波長1000nmの光に対する反射率は35%以下(より好ましくは30%以下、さらに好ましくは20%以下)であることが好ましい。反射率の下限については特に限定されるものではないが、技術的制限から1%となる。銅材料の光反射率の測定方法については後述する。
本発明の銅材料が備える樹脂層は、例えば、エポキシ樹脂、(メタ)アクリル樹脂、およびウレタン樹脂よりなる群から選択される少なくとも1種を含んで構成されることが好ましい。
エポキシ樹脂としては、フェノール類またはアルコール類とエピクロルヒドリンとの反応によって得られるグリシジルエーテル型エポキシ樹脂;カルボン酸類とエピクロルヒドリンとの反応によって得られるグリシジルエステル型エポキシ樹脂;アミン類またはシアヌル酸とエピクロルヒドリンとの反応によって得られるグリシジル型エポキシ樹脂;2重結合の酸化によって得られる内部エポキシ樹脂;エポキシ樹脂変成BT樹脂;エポキシ樹脂変成シアネートエステル樹脂などが挙げられる。
(メタ)アクリル樹脂としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−ステアリル(メタ)アクリレートなどのアルキル(メタ)アクリレート;ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;ベンジル(メタ)アクリレート;メラミン(メタ)アクリレート;ポリエステル(メタ)アクリレート;エポキシ(メタ)アクリレート等の単独重合体またはこれらの共重合体が挙げられる。
ウレタン樹脂としては、ポリイソシアネートと活性水素基含有化合物(例えば、水、ポリオール、ポリアミン、ポリチオール等)との重付加物などが挙げられる。
本発明の銅材料が備える樹脂層は、膜厚が1〜500μmであることが好ましい。膜厚が1μm未満の場合には、銅材料の光反射率を40%以下にできず、溶融開始時レーザー出力を十分に低くすることができない場合がある。また、溶融開始時レーザー出力と溶融貫通時レーザー出力との差を大きくすることができない場合がある。また、膜厚が500μmを超える場合には、銅材料から樹脂層が剥離し易くなる場合がある。また、溶接時に飛散する不要物量が増加して、作業性が悪化する場合がある。上記膜厚は、5μm以上(より好ましくは10μm以上)が好ましく、200μm以下(より好ましくは100μm以下)が好ましい。なお、膜厚の測定方法については後述する。
本発明の銅材料においては、樹脂層に着色剤を含有させるが、かかる着色剤としては、波長1000nmの光に対する反射率が低く、銅材料の反射率を40%以下にできれば特に限定されるものではなく、例えば、有機顔料、無機顔料、染料が挙げられる。
具体的には、有機顔料としては、黒色有機顔料(例えば、アゾ系顔料、ベンズイミダゾ・ペリレン)、多環式顔料(例えば、フタロシアニン)等が挙げられる。無機顔料としては、黒色無機顔料(例えば、カーボンブラック、ボーンブラック、グラファイト、鉄黒、金属酸化物(酸化銅、酸化コバルト、酸化クロム))等が挙げられる。染料としては、アゾ系染料、アントラキノン系染料、フタロシアニン系染料、キノンイミン系染料、キノフタロン系染料、キノリン系染料、ニトロ系染料、カルボニル系染料、メチン系染料、ピロドン系染料、ピラゾロン系染料、アクリド系染料、黒色染料(例えば、アジン系染料、ニグロシン系染料、オルトアミノフェノール、パラフェニレンジアミン)等が挙げられる。これらの着色剤は、単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記着色剤のなかでも、黒色有機顔料、多環式顔料、黒色無機顔料、黒色染料を用いることが好ましく、特にフタロシアニン、カーボンブラック、酸化銅よりなる群から選択される少なくとも1種を用いることがより好ましい。
かかる着色剤は、樹脂層中に0.1質量%以上(より好ましくは0.3質量%以上)含まれることが好ましく、30質量%以下(より好ましくは20質量%以下)含まれることが好ましい。これにより、銅材料の反射率を40%以下に制御することができる。着色剤の含有率が0.1質量%未満では、銅材料の反射率を40%以下に制御できない場合がある。着色剤の含有率が30質量%を超えると、樹脂層の強度が脆くなって、樹脂層が銅材料から剥離したり、割れ易くなる場合がある。
本発明の銅材料は、溶融開始時レーザー出力と溶融貫通時レーザー出力との差が大きいものであるが、具体的には以下の通りである。すなわち、板厚0.5mmの未処理の銅板に、板厚0.5mmの銅板の片面に樹脂層を形成してなる本発明の銅材料を、樹脂層非形成面が接合面となるように重ね合わせ、樹脂層形成面に、Ybファイバーレーザーをスポット径0.1mmφ、速度2000mm/minで照射した際の、レーザー照射面が溶融し始めるのに要するレーザーのエネルギー(溶融開始時レーザー出力)と、レーザー照射による溶融が接合体の裏面(レーザー照射面の裏面)に到達するのに要するレーザーのエネルギー(溶融貫通時レーザー出力)との差を測定した場合に、200W以上となる。当該レーザー出力差が200W以上であれば、レーザーによる銅材料の溶融を接合体の内部で留めて、溶融貫通させない照射条件を設定するのが容易になる。かかるレーザー出力差は300W以上(より好ましくは400W以上、さらに好ましくは500W以上)であることが好ましい。レーザー出力差の上限については特に制限されるものではないが、技術的制限から本発明では600Wとなる。なお、本発明において、溶融開始時レーザー出力は、膜厚0.5mmの銅板(表面に樹脂層が形成されていない銅板)に対して上記条件のレーザー照射を行った場合の溶融開始時レーザー出力に比して900W以下(850W以下)となる。
(銅材料または銅合金材料)
本発明の銅材料は、板厚が0.05〜10.0mmの銅板または銅合金板の少なくとも片面に着色剤を含有する樹脂層を有し、当該樹脂層表面の波長1000nmの光に対する反射率が40%以下に制御されている。このため、本発明の銅材料は低いレーザー出力で溶接することができ、また、レーザーによる銅材料の溶融を接合体の内部で留める(溶融貫通しない)照射条件を設定するのが容易になる。さらに、接合部の電気抵抗が増加するのを最小限に抑えることができる。したがって、本発明の銅材料によれば、YAGレーザーやファイバーレーザーなど、波長が1000nm付近のレーザーを用いたレーザー溶接を容易に行うことができる。
以下、本発明の銅材料の製造方法(樹脂層の形成方法)について詳細に説明する。
(樹脂層の形成方法)
銅板の少なくとも片面に樹脂層を設ける方法としては、特に限定されず、例えば、前記着色剤と樹脂とを混練し、溶媒を添加してペースト化し、このペーストを銅板に塗布した後、溶媒を除去する方法が挙げられる。
めっきや酸化処理などの方法で、銅板の片面のみの光反射率を制御するには、他面(非処理面)をマスキングしたり、後処理によって除去するなどの手間を要する。これに対し、上記のような塗布方法によれば、特に銅板の片面にのみ樹脂層を形成するのを、最も簡便に、かつ汎用性高く行うことができる。
また、本発明の銅材料を他の材料と重ね合わせ溶接する際に、片面のみに樹脂層を設けた銅材料を用い、かつ当該樹脂層をレーザー照射面とすれば、本発明の銅材料を他の材料と重ね合わせ溶接する際に接合界面に不要物が混入しないため、接合部の接合強度の低下や電気抵抗の増加を抑制することができる。
上記塗布方法で用い得る溶媒としては、着色剤や樹脂を変質させるおそれが無く、かつ加熱により溶媒の除去が容易に行える溶媒であれば特に限定されない。例えば、トルエン、キシレン、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルエチルケトン、イソプロピルアルコール、ブタノール、トリオール、水などが挙げられる。これらの溶媒は単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
ペーストの銅板への塗布方法も特に限定されず、例えば、吹きつけ、刷毛塗り、カーテンフローコート、グラビアコート、ロールコート、スピンコート、バーコート、静電塗装などが挙げられる。
以下、実施例に基づいて本発明を詳細に述べる。ただし、下記実施例は本発明を制限するものではなく、前・後記の趣旨を逸脱しない範囲で変更実施をすることは全て本発明の技術的範囲に包含される。
(実施例1)
板厚0.5mmの純銅板の片面に、熱硬化性エポキシ系黒色塗料(グリシジル型エポキシ樹脂25質量部、顔料(銅フタロシアニンと亜鉛フタロシアニンの混合物)5質量部、および溶媒(トルエン(40質量部)、酢酸ブチル(30質量部)、イソプロピルアルコール(30質量部)の混合溶媒)70質量部の混合物(ペースト))を、乾燥後の膜厚が20μmとなるようにスプレー塗装した。塗装後、150℃で2時間乾燥して、表面に樹脂層を有する本発明の銅材料1を得た。なお、樹脂層の膜厚は触針式膜厚計(株式会社ミツトヨ製、SJ400)で測定した(以下同じ)。
(実施例2)
板厚0.5mmの純銅板の片面に、アクリル系黒色塗料(メラミンアクリル樹脂25質量部、顔料(カーボンブラック)5質量部、および溶媒(トルエン(40質量部)、酢酸ブチル(30質量部)、イソプロピルアルコール(30質量部)の混合溶媒)70質量部の混合物(ペースト))を、乾燥後の膜厚が35μmとなるようにスプレー塗装した。塗装後、150℃で2時間乾燥して、表面に樹脂層を有する本発明の銅材料2を得た。
(実施例3)
板厚0.5mmの純銅板の片面に、ウレタン系黒色塗料(ポリイソシアネートの30質量%メチルエチルケトン溶液100質量部と、ポリアミンの30質量%メチルエチルケトン溶液100質量部と、顔料(銅フタロシアニンと亜鉛フタロシアニンの混合物)10質量部の混合物(ペースト))を、乾燥後の膜厚が60μmとなるようにスプレー塗装した。塗装後、150℃で2時間乾燥して、表面に樹脂層を有する本発明の銅材料3を得た。
(銅材料1〜3の反射率)
銅材料1〜3の樹脂層表面について、分光光度計(日本分光株式会社製、V600)を用い、測定波長1000nmにおける分光反射率を測定した。銅材料1は29%、銅材料2は35%、銅材料3は19%であった。なお、純銅板の反射率は85%であった。
(レーザー溶接試験)
板厚0.5mmの純銅板の上に、銅材料1〜3、あるいは、板厚0.5mmの純銅板をそれぞれ重ね合わせて、ファイバーレーザーで重ね合わせ溶接を行った。なお、銅材料1〜3については、樹脂層非形成面を接合面とした。溶接装置は、住友機械エレクロトニクス社製のYbファイバーレーザーを用いた。スポット径は0.1mmφとし、前進角5度、加工速度2000mm/min、溶接長を20mmとした。
銅材料1〜3を用いた場合、レーザー出力を800W以上にすると溶接が可能となり、1300W以上にすると溶融貫通した。一方、板厚0.5mmの純銅板を用いた場合、レーザー出力が1300W以下では、表面に傷ひとつ付けることができなかった。1400Wにすると溶融貫通した。
本発明は、レーザー溶接が容易な銅材料の提供に有用である。

Claims (3)

  1. 板厚0.05〜10.0mmの銅板または銅合金板の少なくとも片面が、有機顔料、カーボンブラック、ボーンブラック、鉄黒、金属酸化物、及び染料よりなる群から選択される1種又は2種以上の着色剤を含有する樹脂層で被覆されてなり、前記樹脂層表面の波長1000nmの光に対する反射率が40%以下であり、
    前記着色剤は、前記樹脂層中に0.1質量%以上20質量%以下含まれることを特徴とするレーザー溶接用の銅材料または銅合金材料。
  2. 前記樹脂層が、エポキシ樹脂、(メタ)アクリル樹脂、およびウレタン樹脂よりなる群から選択される少なくとも1種を含む請求項1に記載の銅材料または銅合金材料。
  3. 前記樹脂層の膜厚が1〜500μmである請求項1または2に記載の銅材料または銅合金材料。
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