以下、本発明に係る画像形成装置を図面に則して更に詳しく説明する。
[実施例1]
1.画像形成装置の全体構成及び動作
図1は、本発明に係る画像形成装置の一実施例の概略構成図である。本実施例の画像形成装置100は、電子写真プロセスを利用するフルカラーレーザープリンタである。
画像形成装置100は、複数の画像形成部として、それぞれイエロー、マゼンタ、シアン、黒の各色の画像を形成するための第1、第2、第3、第4の画像形成部10Y、10M、10C、10Kを有する。各画像形成部10Y、10M、10C、10Kには、それぞれイエロー、マゼンダ、シアン、黒色の各色用プロセスカートリッジBY、BM、BC、BKが配置される。本実施例では、各色用のプロセスカートリッジBY、BM、BC、BKは、転写装置20が有する無端ベルト状の中間転写体である中間転写ベルト21の画像担持面の移動方向に沿って、略垂直方向に配列される。そして、画像形成装置100は、各色用のプロセスカートリッジBで形成されたトナー像を中間転写ベルト21上に転写することでフルカラー画像を形成することができる。プロセスカートリッジBY、BM、BC、BKにおける画像の形成工程については後述する。
尚、本実施例では、各画像形成部10Y、10M、10C、10Kの構成は、形成する画像の色が異なることを除いて実質的に同一である。従って、以下、特に区別を要しない場合は、いずれかの色ように設けられた要素であることを示すために図中符号に与えた添え字Y、M、C、Kは省略して総括的に説明する。
各色のプロセスカートリッジBにおいて被現像体である感光ドラム1上に形成されたトナー像は、1次転写部N1において1次転写手段としての1次転写ローラ22により中間転写ベルト21上に転写(1次転写)される。1次転写ローラ22は、中間転写ベルト21を挟んで各感光ドラム1の対向位置に設けられ、中間転写ベルト21を感光ドラム1に向けて押圧し、中間転写ベルト21と感光ドラム1とが接触する1次転写部N1を形成する。中間転写ベルト21上のトナー像は、中間転写ベルト21の移動方向下流側の2次転写部N2に設けられた2次転写手段としての2次転写ローラ23により、一括して記録紙などの転写材P上に転写(2次転写)される。2次転写ローラ23は、中間転写ベルト21の外周面に接触して2次転写部N2を形成する。尚、中間転写ベルト21上の未転写トナーは、中間転写ベルトクリーナー24によって回収される。
転写材Pは、画像形成装置100の下部のカセット11内に積載されており、印字動作の要求とともに給紙ローラ12により搬送され、2次転写部N2において、中間転写ベルト21上に形成されたトナー像が転写される。
その後、転写材Pは定着ユニット13へと搬送され、定着ユニット13により転写材P上のトナー像は転写材Pに加熱定着される。その後、転写材Pは、排紙部14を経て画像形成装置100の装置本体Aの外部に排出される。
画像形成装置100においては、装置本体Aに対して着脱可能なプロセスカートリッジBなどを収納する第1のユニットと、転写ユニット、記録紙などの転写材Pを収納する第2のユニットとは分離可能になっている。そして、紙詰まりなどの処理時や、プロセスカートリッジBの交換時において、第1のユニットと第2のユニットとを開口を設けるように分離することにより、上記処理や交換を行う。
2.プロセスカートリッジにおける画像形成プロセス
次に、プロセスカートリッジBにおける画像形成プロセスについて説明する。
図2は、プロセスカートリッジBの断面を示す。
プロセスカートリッジBは、像担持体としてのドラム型の電子写真感光体(感光体)である感光ドラム1を有する。又、プロセスカートリッジBは、感光ドラム1に作用するプロセス手段として、帯電手段としての帯電装置2、現像手段としての現像装置3、及びクリーニング手段としてのクリーニング装置4を有する。プロセスカートリッジBは、これら感光ドラム1、帯電装置2、現像装置3、クリーニング装置4が枠体によって一体的に装置本体Aに対して着脱可能に構成されている。
本実施例では、画像形成プロセスの中心となる感光ドラム1として、アルミニウム製シリンダの外周面に機能性膜である下引き層、キャリア発生層、キャリア移送層を順にコーティングした有機感光ドラムを用いる。画像形成プロセスにおいて、感光ドラム1は、駆動手段(図示せず)により、180mm/secの周速度(プロセススピード)で図中矢印R1方向に回転駆動される。
本実施例では、帯電装置2は、接触帯電部材である帯電ローラで構成される。帯電ローラ2は、導電性ゴムのローラ部を感光ドラム1に加圧接触させて設けられている。そして、帯電ローラ2は、感光ドラム1の回転に伴って、図中矢印R2方向に従動回転する。
帯電ローラ2の芯金には、画像形成プロセスの帯電工程において、感光ドラム1に対して−1100Vの直流電圧が印加される。これにより誘起された電荷によって、感光ドラム1の表面には、−550Vの一様な暗部電位(Vd)が形成される。
この一様な表面電荷分布を有する感光ドラム1の表面に対して、装置本体Aに設けられた露光手段として露光装置(スキャナーユニット)6により、画像データに対応して発光されるレーザ光による露光が行われる。露光装置6は、画像データに対応して発光されるレーザ光のスポットパターンにより、図中矢印Lで示すように感光ドラム1を露光する。感光ドラム1の露光された部位は、キャリア発生層からのキャリアにより表面の電荷が消失し、電位が低下する。その結果、露光部位は明部電位Vl=−100V、未露光部位は暗部電位Vd=−550Vの静電潜像(静電像)が感光ドラム1上に形成される。
感光ドラム1上に形成された静電潜像は、現像装置3により現像される。現像装置3の構成及び動作についての詳細は後述するが、現像装置3は、所定のコート量及び電荷量のトナーコート層が形成された現像剤担持体としての現像ローラ31を有する。現像ローラ31は、感光ドラム1に接触しながら、図中矢印R3方向、即ち、接触部において感光ドラム1の表面移動方向に対し順方向に回転する。現像ローラ31には、現像バイアス印加手段としての現像バイアス電源8(図3)からトナーの正規の帯電極性(本実施例では負極性)と同極性の直流電圧(DCバイアス)が印加される。本実施例では、画像形成時には、現像ローラ31に、−300Vの直流電圧が印加される。そして、摩擦帯電により負極性に帯電したトナーが、感光ドラム1に接触する現像部において、感光ドラム1と現像ローラ31との間の電位差により、感光ドラム1上の明部電位部に転移する。こうして、感光ドラム1上の静電潜像がトナー像(現像剤像)として現像される。
各プロセスカートリッジBの感光ドラム1に接触する中間転写ベルト21は、各感光ドラム1に対向した1次転写ローラ22により感光ドラム1に加圧される。又、1次転写ローラ22には、1次転写バイアス印加手段としての1次転写電源(図示せず)から、トナーの正規の帯電極性(本実施例では負極性)とは逆極性の直流電圧が印加され、感光ドラム1との間で1次転写電界が形成される。これにより、感光ドラム1上のトナー像は、中間転写ベルト21が感光ドラム1に加圧接触する転写領域において、1次転写電界の力を受けて、感光ドラム1上から中間転写ベルト21上に転写される。
一方、感光ドラム1上で中間転写ベルト21に転写されずに残った未転写トナーは、クリーニング装置4に設置されたウレタンゴム製のクリーニングブレード41により感光ドラム1の表面から掻き落とされ、クリーニング装置4内に収納される。
本実施例では、帯電装置2と、露光装置6とで、感光ドラム1に静電像を形成する静電像形成手段が構成される。
3.現像装置
次に、現像装置3についてより詳しく説明する。
図3は、現像装置3及び関連する画像形成装置100の一部の概略構成を示す。
現像装置3は、非磁性1成分現像剤であるトナーを収容する現像容器33を有する。又、現像装置3は、トナーを担持して感光ドラム1に向けて搬送する現像剤担持体としての現像ローラ31を有する。現像ローラ31は、感光ドラム1に対して接触しながら、図中矢印R3方向、即ち、接触部において感光ドラム1の表面移動方向に対し順方向に回転する。又、現像装置3は、現像ローラ31にトナーを供給すると共に、現像に供されずに現像ローラ31上に残留したトナーを剥ぎ取る供給ローラ32を有する。供給ローラ32は、現像ローラ31に対して接触しながら、図中矢印R4方向、即ち、接触部において現像ローラ31の表面移動方向に対し逆方向に回転する。又、現像装置3は、現像ローラ31の表面移動方向において供給ローラ32の下流側で現像ローラ31に当接する、現像剤層厚規制手段(現像剤量規制手段)としての規制部材である規制ブレード34を有する。更に、現像装置3は、現像容器33の内部に、トナーを撹拌すると共に、現像ローラ31に向けて搬送する撹拌部材35を有する。
本実施例では、非磁性1成分現像剤であるトナーは、結着樹脂、電荷制御剤を含む懸濁重合法により調整され、流動化剤などを外添剤として添加することで負帯電性を有するように作製した。ただし、高画質化の点で、重合法であることが好ましいが、粉砕法により調整されてもよい。
現像ローラ31としては、本実施例では、外径6mmの芯金に導電性の弾性層5mmを形成した外径16mmの弾性ローラを用いた。弾性層には、体積抵抗値106Ωmのシリコーンゴムを用いた。尚、この弾性ローラの表層には、トナーへの電荷付与機能を持つコート層などを設けてもよい。本実施例では、感光ドラム1に安定して弾性接触させるために、現像ローラ31の弾性層の硬度をJIS−Aで45°とした。又、現像ローラ31の表面粗さは、使用するトナーの粒径にもよるが、算術平均粗さRaで0.05〜3.0μmとした。ここで、算術平均粗さRaの測定は、JIS B0601に基づいて、小坂研究所(株)製の表面粗さ試験機SE−30を使用して行った。高画質化のためには、この算術平均粗さRaは、0.3〜1.0μmであることが好ましい。
現像ローラ31には、画像形成時に、第1の電圧印加手段としての現像バイアス電源8により、負極性の所定の直流電圧が印加される。前述のように、本実施例では、現像ローラ31には、現像バイアス電源8により、−300Vの直流電圧が印加される。
供給ローラ32としては、本実施例では、外径5mmの芯金上に発泡骨格構造で比較的低硬度のポリウレタンフォームを5.5mm形成した外径16mmの弾性スポンジローラを用いた。供給ローラ32は、連泡性の発泡体で構成することにより、過大な圧力を加えることなく現像ローラ31と当接し、発泡体表面の適度な凸凹で現像ローラ31上へのトナー供給及び現像時に消費されずに残像したトナーの剥ぎ取りを行うことができる。このセル構造の掻き取り性は、ウレタンフォームに限定されるものでなく、シリコーンゴムやエチレンプロピレンジエンゴム(EPDMゴム)などを発泡させたゴムなどが使用可能である。
現像ローラ31の回転方向において、供給ローラ32と現像ローラ31との接触面の下流側に、現像ローラ31に当接する規制ブレード34が設けられている。
規制ブレード34は、現像ローラ31上のトナーを感光ドラム1上の静電潜像を現像するのに適した所定のコート量及び所定の電荷量に制御することを目的とする。規制ブレード34は、弾性及び導電性を有している。規制ブレード34は、現像容器33に固定された支持板金34aにより、リン青銅板やステンレス板などの薄板状弾性部材34bを片持ちで支持し、その現像ローラ31との対向部の腹面を現像ローラ31に対して当接させている。本実施例では、厚さ1.2mmの鉄板を支持板金34aとして使用し、厚み120μmのリン青銅板を薄板状弾性部材34bとして使用した。又、規制ブレード34の薄板状弾性部材34bは、その自由端を現像ブレード34の表面移動方向上流側に向けて、支持板金34aに固定支持されている。薄板状弾性部材34bの片持ち支持部から現像ローラ31との当接部までの距離、所謂、自由長さは14mmであり、現像ローラ31の薄板状弾性部材34bに対する押し込み量は1.5mmである。
規制ブレード34には、画像形成時に、第2の電圧印加手段としての印加電圧が可変な規制バイアス電源9により、詳しくは後述するようにして設定される直流電圧が印加される。
尚、本実施例の現像装置3は、トナー容量を含む寿命が、A4用紙印字率5%換算で1万5千枚相当に設定されている。
上述のように、現像ローラ31への電圧印加は、第1の電圧印加手段としての現像バイアス電源8により行う。又、規制ブレード34への電圧印加は、第2の電圧印加手段としての電圧可変な規制バイアス電源9により行う。
本実施例では、現像ローラ31と規制ブレード34との間の直流電圧(以下「規制バイアス」ともいう。)Vbは、電圧可変な規制バイアス電源9による規制ブレード34に対する印加電圧を調整することで設定する。
本実施例では、電圧可変な規制バイアス電源9は、電圧印加部9aと、規制バイアスVbを可変に制御する電圧制御手段としての電圧制御部9bと、を有する構成とされる。本実施例では、電圧制御部9bは、電圧印加部9aの出力電圧を可変に制御することで、後述する現像ローラ31に印加される電圧と規制ブレード34に印加される電圧との電位差である規制バイアスを可変に制御する。
そして、現像ローラ31と規制ブレード34との間の直流電圧、即ち、規制バイアスVbは、トナーを現像ローラ31側に押し付ける方向の電界が形成されるように設定される。本実施例ではトナーは負帯電性である。又、本実施例では、現像バイアス電源8により現像ローラ31に印加する直流電圧は−300Vである。そのため、本実施例では、規制バイアス電源9により規制ブレード34に供給される直流電圧は、−300Vより小さい値に設定される。
例えば、現像バイアス電源8から現像ローラ31に供給される直流電圧が−300Vの場合に、規制バイアスVbが200Vであるとは、規制バイアス電源9から規制ブレード34に供給される直流電圧が−500Vであることを意味する。
一方、トナーが正帯電性である場合には、現像バイアス電源8により現像ローラ31に供給される直流電圧より大きい値の直流電圧が規制ブレード電源9から規制ブレード34に供給されるように設定すればよい。
つまり、現像ローラ31に印加する直流電圧をV1、規制ブレード34に印加する直流電圧をV2として、その差(電位差)である規制バイアスVbを、次式、
Vb=V1−V2
で定義する。そして、画像形成時には、この規制バイアスVbがトナーの正規帯電極性とは逆極性となるように、規制バイアス電源9から規制ブレード34に所定の直流電圧が印加される。即ち、画像形成時には、規制ブレード34に印加する直流電圧V2の方が、現像ローラ31に印加する直流電圧V1よりも、トナーの正規帯電極性側に大きくなるように、規制バイアス電源9から規制ブレード34に直流電圧を印加する。このとき、規制ブレード34と現像ローラ31との当接領域及びその近傍において、正規帯電極性に帯電したトナーを現像ローラ31側に押し付ける方向の電界が形成される。
現像バイアス電源8、規制バイアス電源9は、装置本体Aに設けられた演算処理手段としての演算処理部7に接続されている。現像バイアス電源8、規制バイアス電源9は、演算処理部7からの指示により動作する。
又、画像形成装置100は、装置本体Aに、規制ブレード34を通過した後の現像ローラ31上に担持されたトナー層の表面電圧Vtを測定するための表面電圧検知手段(電圧検知手段)としての電圧計5を備えている。電圧計5は、表面電圧Vtをセンサー部51を介して読み取る。電圧計5の基準電位は現像ローラ31の芯金の電位としている。電圧計5は、検知結果に係るデータを転送できるように、演算処理部7に接続されている。
本実施例の電圧計5は、図8に示すように、表面電圧Vtの検知時は、スイッチSWが端子p1と繋がって、表面電圧Vtを電圧計5により検知する。一方、表面電圧Vtを検知しない時は、スイッチSWが端子p2と繋がるようになっている。そのため、スイッチSWは、演算処理部7に接続されており、演算処理部7からの指示により動作する。
演算処理手段としての演算処理部7は、演算処理を行う中心的素子であるCPU71、検知されたデータなどを格納する書き換え可能な記憶装置としてのRAM72、予め用意されたデータなどを格納する記憶装置としてのROM73になどから構成されている。CPU71、RAM72及びROM73は、互いにデータの転送や読み込みが可能となっている。演算処理部7は、電圧計5から入力される情報に基づいて演算処理を行うことができる。
4.規制バイアスVbの設定方法
次に、本実施例の規制バイアスVbの設定方法について説明する。図4は、規制バイアスVbを設定する手順を示すフローチャートである。
ステップSa1では、電圧可変な電源9により、規制バイアスVbが掃引される。具体的には、規制バイアスVbは、図5に示すような掃引時間と規制バイアスとの関係(サイン波)に従って0Vから150Vまで、約20秒間変化させた。より詳細には、本実施例では、現像ローラ31に印加する直流電圧は−300Vで固定とし、規制ブレード34に印加する直流電圧を−300Vから−450Vまで変化させた。即ち、本実施例では、規制ブレード34に印加する直流電圧の方が、現像ローラ31に印加する直流電圧よりも、トナーの正規帯電極性と同極性側に大きくなる範囲内において、規制バイアスVbを変化させながら、表面電圧Vtを検知する。
次に、ステップSa2では、規制バイアスVbの値に対応する表面電圧Vtが電圧計5により検知され、RAM72に格納される。又、CPU71が、RAM72内に格納された規制バイアスVb及び表面電圧Vtから、規制バイアスVbに対する表面電圧Vtの関係(以下「表面電圧プロファイル」ともいう。)Vt=Vt(Vb)を算出し、RAM72に格納する。図6は、この表面電圧プロファイルVt(Vb)の一例である。
詳しくは後述するように、この表面電圧プロファイルVt=Vt(Vb)には、表面電圧Vtの極大値と極小値とが生じることが分かった。ここで、表面電圧プロファイルVt=Vt(Vb)における表面電圧Vtの極大値、極小値とは、表面電圧Vtの絶対値においてみた場合のものである。ただし、この表面電圧(表面電位)Vtは、トナーの正規の帯電極性と同極性である。ステップSa2では、CPU71は、この表面電圧プロファイルVt=Vt(Vb)における表面電圧Vtの極大値を検出する。
次に、ステップSa3では、CPU71は、表面電圧プロファイルVt=Vt(Vb)における表面電圧Vtの極小値を検出する。又、ステップSa3では、CPU71が、ステップSa2において算出された表面電圧プロファイルVt=Vt(Vb)における表面電圧Vtの極大値Vtmaxと、ここで算出された表面電圧Vtの極小値Vtminとの電圧差Dを次式により算出する。
D=|Vtmax−Vtmin|
そして、CPU71は、この電圧差Dが、D≧0.5Vの関係を満たすとき、引き続き規制バイアスVbの設定するための制御を継続する。一方、CPU71は、この電圧差DがD<0.5Vの関係を満たす場合は、画像形成装置100の動作を停止させ、規制バイアスVbの設定を終了する(ステップSa7)。このとき、CPU71が、警告を発させるようになっていてもよい。即ち、この場合、演算処理部7は、警告を発するため及び又は画像形成装置100の動作を停止させるための信号を出力する。尚、電圧差Dによって極小値の検知を行う理由は後述する。
その後、ステップSa4では、CPU71は、表面電圧プロファイルVt=Vt(Vb)において表面電圧Vtが極小値をとる時の規制バイアスVbminの値を算出し、RAM72内に格納する。
その後、詳しくは後述するステップSa5における規制バイアスVbの適正値算出工程を経て、ステップSa6において、演算処理部7の命令により、画像形成時に規制バイアス電源9が規制ブレード34に印加する直流電圧を設定する。これにより、画像形成時の規制バイアスVbを設定する。
ここで、ステップSa5の規制バイアスVbの適正値算出工程の詳細を説明する前に、規制バイアスVbに対する表面電圧Vtの関係、即ち、表面電圧プロファイルVt=Vt(Vb)について更に詳しく説明する。図6は、表面電圧プロファイルVt=Vt(Vb)の一例である。
先ず、表面電圧プロファイルVt=Vt(Vb)の中に極小値が生じる理由について説明する。本発明者らの検討によれば、規制バイアスVbの値が|Vbmin|の値より小さい領域と、|Vbmin|の値より大きい領域とにおいて、トナーと規制ブレード34とが接触する回数が変化するために、上記極小値が生じるものと考えられる。即ち、規制バイアスVbの値が|Vbmin|の値より小さい領域では、規制バイアスVbによりトナーが受ける現像ローラ31の方向に働く力は小さいと考えられる。そのため、トナーは、規制ブレード34との接触回数多くなる。
一方、規制バイアスVbの値が|Vbmin|の値より大きい領域では、規制バイアスVbによりトナーが受ける現像ローラ31の方向に働く力は大きくなる。その結果、トナーは、現像ローラ31の方向に押し付けられる。そのため、規制ブレード34とトナーとの接触回数が少なくなると考えられる。
規制ブレード34とトナーとの接触回数が多いとき、トナーと規制ブレード34との間の摩擦帯電の頻度が増加し、その結果、規制ブレード34の表面電圧Vtが増加する。一方、規制ブレード34とトナーとの接触回数が少ないとき、トナーと規制ブレード34との間の摩擦帯電の頻度が低下するため、表面電圧Vtが減少する。
又、本発明者らの検討によれば、Vb=Vbminに設定すると、現像ローラ31上のトナーコート層に、現像ローラ31の回転方向に沿って不規則な筋が生じることが分かった。この理由は、Vb=Vbminの場合には、規制バイアスVbによりトナーが現像ローラ31に押し付けられやすい状態と、押し付けられにくい状態とが共存する不安定領域であるために、トナーコート層が乱れるためであると考えられる。
このため、上述のような縦筋の発生を抑制するためには、規制バイアスVbは、次のように設定する。即ち、規制バイアスVbは、次式、
|Vb|>|Vbmin|
を満たすように設定することが好ましく、又、次式、
|Vb|>|Vbmin|+20V、即ち、|Vb|−|Vbmin|>20V
を満たすように設定することがより好ましいことが分かった。
加えて、本発明者らの検討によれば、表面電圧プロファイルVt=Vt(Vb)を求めるための表面電圧Vtの検出終了時の規制バイアスVbの値であるVboの値は、次式、
Vbo≠Vbmin
を満たすことが好ましいことが分かった。これにより、トナーコート層の不安定化による縦筋の発生を抑制できる。
即ち、本発明によれば、トナーコート層の状態を把握するために、規制バイアスVbを掃引して表面電圧Vtを検知することで、トナーコート層の状態の変化を適宜検知する。そのため、トナーコート層の状態の検知時に、上述のような縦筋が発生すると、非検知時、即ち、画像形成時への影響が大きくなることが考えられる。つまり、トナーコート層の状態の検知時においても、トナーコート層が不安定となる状態を極力抑えることが好ましい。従って、トナーコート層の不安定化による縦筋の発生を抑制するためには、表面電圧プロファイルVt=Vt(Vb)を求めるための表面電圧Vtの検出終了時の規制バイアスVboは、次のように設定する。即ち、当該規制バイアスVboは、次式、
|Vbo|>|Vbmin|
を満たすように設定することが好ましく、又、次式、
|Vbo|>|Vbmin|+20V、即ち、|Vbo|−|Vbmin|>20V
を満たすように設定することがより好ましい。
次に、表面電圧Vtの取り込み時の変動幅について説明する。図14に示すように、表面電圧プロファイルVt=Vt(Vb)において、各規制バイアスVbの近傍の所定の領域における表面電圧Vtの変動幅を求める。本実施例では、図14に示すように、ある規制バイアスVbに対して検知される表面電圧Vtの変動幅ΔVt(Vb)は、その規制バイアスVbの値から約5V程度大きい値までの間の変動幅とした。ただし、本実施例では、約5V程度としたが、変動幅は、検出装置の検出精度に依存するため、検出装置の検出精度に応じて適宜設定することが好ましい。
本発明者らの検討によれば、この変動幅は、トナーコート層が不安定になると、大きくなることが分かった。その理由は、概ね以下のように考えられる。
規制バイアスVbの値が大きくなると、トナーとトナーとの間、トナーと規制ブレード34との間、トナーと現像ローラ31との間などに局所的に放電現象が生じる。そのため、不安定なトナーコート層の形成とともに、表面電圧Vtの変動幅ΔVt(Vb)が大きくなる。
一方、規制バイアスVbが、次式、
|Vbmin|≦|Vb|≦|Vbmin|+20V
を満たす領域においては、トナーが十分に現像ローラ31側に押し付けられる領域であるため、表面電圧Vtの変動幅ΔVt(Vb)は小さく、安定している。
本発明者らの鋭意検討の結果、トナーコート層が著しく不安定となるのは、Vb=Vbminの時の表面電圧Vtの変動幅ΔVt(Vbmin)を基準として、次式、
|ΔVt(Vb)|>3×|ΔVt(Vbmin)|
を満たす場合であることが分かった。
従って、トナーコート層の変動を抑制するためには、次式、
|ΔVt(Vb)|≦3×|ΔVt(Vbmin)|
を満たすように、規制バイアスVbを設定することが好ましい。
更に、本実施例では、前述のように、ステップSa3において、電圧差D<0.5Vの状態では、画像形成装置100の停止を行う設定とした。これは、電圧差D<0.5Vの状態では、Vbminを判定することが困難であると考えられるためである。
さて、再び図4を参照して、ステップSa5の規制バイアスVbの適正値算出工程について説明する。
ステップSa5において、CPU71は、表面電圧プロファイルVt=Vt(Vb)における表面電圧Vtの極大値、極小値のそれぞれに対する規制バイアスVbmax、Vbminを算出する。又、CPU71は、これらVbmaxとVbminの電圧差Vs(=|Vbmin−Vbmax|)を算出する。そして、CPU71は、この電圧差Vsにより、規制バイアスVbの適正値を算出する。
更に説明すると、この電圧差Vsは、図6に示すように、電圧差Dが生じる際の規制バイアスVbの変化量である。本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、図9に示すように、印字枚数の増加に応じ、この電圧差Vsの値が増加することを見出した。つまり、電圧差Vsは、トナーの劣化と関係する値(指標)と考えられる。その理由は、十分明らかとなってはいないが、概ね以下のためと考えられる。
前述したように、トナーの劣化が進行し、トナーの凝集性が高くなると、トナー1つ1つが動きにくくなる。すると、トナーが十分、現像ローラ31の方向へ押し付けられるためには、より大きい電気的な力、即ち、規制バイアスVbを必要とする。つまり、トナーの動きやすさが低下することで、規制バイアスVbにより、トナーが現像ローラ31の方向へ押し付つけられにくくなるため、VbmaxからVbminに到達するまでの電圧差Vsが大きくなる。その結果、印字枚数の増加とともに、電圧差Vsが大きくなると考えられる。
次に、ステップSa5の規制バイアスVbの適正値算出工程についてより詳細に説明する。
図10は、予め用意した現像装置を用いて、電圧差Vsの値に対する良好な画像を得るために適正な規制バイアスVbの関係をVb=Vb(Vs)として算出したものである。本実施例では、このVb=Vb(Vs)の関係をROM73に予め書き込んだ。
具体的には、このVb=Vb(Vs)の関係の算出に用いた現像装置は、本実施例と同じ構成であり、その現像装置を用いて画像比率5%の連続印字で適宜電圧差Vsの測定と画像評価を行うことにより、適正な規制バイアスVbの値を算出した。
図11は、図4のステップSa5における規制バイアスVbの適正値算出工程をより詳しく示したフローチャートである。
ステップSa51では、CPU71は、ステップSa2にて検出され、RAM72に格納された表面電圧プロファイルVt=Vt(Vb)を読み込む。そして、CPU71は、表面電圧Vtの極大値、極小値のそれぞれに対する規制バイアスVbmax、Vbminを算出し、更にこれらVbmaxとVbminの電圧差Vs(=|Vbmin−Vbmax|)を算出し、これらをRAM72に格納する。
次に、ステップSa52では、CPU71は、RAM72に格納された電圧差Vs、及びROM73に予め格納された関係Vb=Vb(Vs)を読み込み、当該関係と電圧差Vsとの対比処理、即ち、Vb=Vb(Vs)の関係に電圧差Vsを代入する処理を行う。そして、ステップSa53において、CPU71は、規制バイアスVbの適正値を算出する。
その後、ステップSa5の適正な規制バイアスVbを算出する工程が終了し、ステップSa6へ移行する。
5.画像形成装置の警告・停止工程
本実施例では、更に、上述の指標トナーの劣化の進行を反映した画像形成装置100(或いは現像装置3)の動作の警告・停止工程を設けることができる。
図7は、警告・停止工程を含む本実施例に従う制御の手順を示すフローチャートである。
図7のステップSb1〜Sb4までは、図4に示す規制バイアスVbを設定する工程のステップSa1〜Sa4と同じである。
その後、ステップSb5の後述する警告・停止判定工程を経て、警告を発する場合は、警告表示をして(ステップSb6)、継続して画像形成装置100を作動させて(ステップSb8)、警告・停止工程を終了する。
又、ステップSb5の後述する警告・停止判定工程を経て、警告・停止を行わない場合は、継続して画像形成装置100を作動させて(ステップSb8)、警告・停止工程を終了する。
更に、ステップSb5の後述する警告・停止判定工程を経て、停止を行う場合は、画像形成装置100を停止させ(ステップSb7)、警告・停止工程を終了する。
次に、上述のステップSb5における警告・停止判定工程について更に説明する。
先ず、CPU71は、ステップSb2にてRAM72に格納された表面電圧プロファイルVt=Vt(Vb)を読み込む。そして、CPU71は、表面電圧Vtの極大値と極小値のそれぞれに対する規制バイアスVbmax、Vbminを算出し、更にこれらVbmaxとVbminの電圧差Vs(=|Vbmin−Vbmax|)を算出する。
次に、CPU71は、この電圧差Vsと、予めROM73に格納されている所定値(基準値)Vskとを対比する。そして、CPU71は、比較の結果、電圧差Vsが基準値Vsk以上、即ち、Vs≧Vskの関係満たす場合に、画像形成装置100の動作を継続することに対する警告を発するか、画像形成装置100を停止させる。この場合、演算処理部7は、警告を発するため及び/又は画像形成装置の動作を停止させるための信号を出力する。つまり、この場合は、トナー補給が正常に行われなかったり、補給用のトナーがなくなったりしたことによって、現像装置3内のトナーの劣化が著しく進んだ状態であると考えられる。
具体的には、予め用意した現像装置を用いて、警告・停止のタイミングとして、それぞれ適切な所定値Vsk1=28V(警告)、Vsk2=30V(停止)を算出し、この値をROM73に書き込んだ。ここで、所定値Vsk1、Vsk2の値の算出に用いた現像装置は、本実施例と同じ構成であり、画像比率5%の連続印字し、電圧差Vsの測定と画像評価することにより、適正な値を算出した。
このように、本実施例によれば、電圧差Vsを指標として用いることにより、簡易な構成により、トナーの状態を検知することができ、例えば、トナーの劣化が著しく進んでいる場合などに警告を発したり、装置の動作を停止させたりすることができる。
尚、本実施例では、規制バイアスVbの設定工程、及び、警告・停止工程は、画像形成を行わない非印字中に実施した。具体的には、印字枚数2000枚毎に各工程を行い、警告・停止工程により警告が行われた後は、1000枚毎に、各工程を実施した。このように、警告後、各工程を行うタイミングを短くする理由は、トナーの劣化の加速を考慮し、適宜、調整できるようにするためである。尚、規制バイアスVbの設定工程と、警告・停止工程とは、本実施例のように同じタイミングで行うことができるが、異なるタイミングで行ってもよい。
[比較例1]
本比較例は、基本的には実施例1に準ずるが、以下の点が異なる。
本比較例では、本実施例とは異なり、規制バイアスVbの設定制御、警告・停止制御は行わない。本比較例では、現像ローラ31への印加電圧は−300Vに固定し、又、規制ブレード34への印加電圧は−500Vに固定した。
[比較例2]
本比較例は、基本的には実施例1に準ずるが以下の点が異なる。
本比較例では、図4のステップSa5の規制バイアスVbの適正値算出工程において、印字枚数Rを検出し、印字枚数Rにより規制バイアスVbの適正値を算出することが実施例1とは異なる。
以下、本比較例における規制バイアスVbの適正値算出工程について説明する。
図12は、予め用意した現像装置を用いて、印字枚数Rの値に対する良好な画像を得るために適正な規制バイアスVbの関係をVb=Vb(R)として、算出したものである。本比較例では、このVb=Vb(R)の関係をROM73に予め書き込んだ。
具体的には、このVb=Vb(R)の関係の算出に用いた現像装置は、本比較例と同じ構成であり、その現像装置を用いて画像比率5%の連続印字で適宜Vbminの測定と画像評価することにより、適正な規制バイアスVbの値を算出した。
図13は、図4のステップSa5において本比較例に従って行う制御のフローチャートである。
ステップSa54では、CPU71は、印字枚数Rと、ROM73に予め格納されたVb=Vb(R)とを読み込み、これらの対比処理、即ち、Vb=Vb(R)の関係に印字枚数Rを代入する処理を行う。そして、ステップSa55において、CPU71は、規制バイアスVbの適正値を算出する。
その後、ステップSa5の適正な規制バイアスVbを算出する工程が終了し、ステップSa6へ移行する。
又、本比較例においては、図7を参照して説明した警告・停止工程を行わない。
[比較例3]
本比較例は、基本的には実施例1に準ずるが以下の点が異なる。
本比較例では、図4のステップSa5の規制バイアスVbの適正値算出工程において、規制バイアスVbの適正値をVbminとして算出することが異なる。
又、本比較例においては、図7を参照して説明した警告・停止工程を行わない。
又、本比較例では、規制バイアスVbの適正値算出工程は、印字枚数2000枚毎に実施した。
[評価試験例]
以下、本発明に従う実施例と比較例との差異を調べるための画像評価について説明する。
1.評価方法
先ず、実施例及び比較例の評価方法について説明する。
(a)耐久後のカブリ評価1(画像比率5%)
カブリとは、本来印字しない白部(未露光部)においてトナーがわずか現像され、地汚れのように現れる画像不良のことである。
カブリ量は、光学反射率測定機(東京電飾製TC−6DS)によりグリーンフィルタによる光学反射率を測定した。即ち、出力画像の白部の反射率を記録紙のみの反射率から差し引いてカブリ分の反射率量を求め、カブリ量として評価した。カブリ量は記録紙上を10点以上測定しその平均値を求めた。
××:カブリ量が3.0%を越える。
×:カブリ量が1.0〜3.0%未満である。
△:カブリ量が0.5〜1.0%未満である。
○:カブリ量が0.2〜0.5%未満である。
◎:カブリ量が0.2%未満である。
カブリ評価は、試験環境25℃、50%Rh(相対湿度)、1万5千枚印字後に行った。印字テストは、画像比率5%の横線の記録画像を連続的に通紙して行った。ここで、画像比率5%の横線とは、具体的に、1ドットライン印字後、19ドットライン非印字を繰り返す画像を用いた。
又、以降述べる他の画像欠陥が生じた場合は、その個所を避けて測定し、カブリを純粋に評価できるよう配慮した。
(b)耐久後のカブリ評価2(画像比率1%)
本評価のカブリ測定は、測定方法、評価基準は同じであるが、印字テストを、画像比率1%の横線の記録画像を連続的に通紙して行ったことが異なる。ここで、画像比率1%の横線として、具体的に、1ドットライン印字、99ドットライン非印字を繰り返す画像を用いた。
(c)耐久後のカブリ評価3(画像比率1%・間欠印字)
本評価のカブリ測定は、測定方法、評価基準は同じであるが、印字テストを、画像比率1%の横線の記録画像を間欠的に通紙して行ったことが異なる。ここで、画像比率1%の横線として、具体的に、1ドットライン印字、99ドットライン非印字を繰り返す画像を用いた。
ここで、本発明における間欠印字とは、特定枚数印字後、現像装置の動作を静止させ、再度、印字動作を行う印字方法を意味する。従って、印字動作の始動直後及び静止直前に非印字状態で、現像装置が作動する時間が生じる。
本評価においては、2枚連続印字後、現像装置の静止動作を行ない、現像装置の静止後、再度、現像装置が始動するように設定した。
(d)縦筋評価
縦筋評価は、ベタ黒画像を印字し、目視により縦筋の有無を評価した。
×:ベタ黒画像中に、縦筋が2本以上である。
○:ベタ黒画像中に、縦筋が2本未満である。
印字テストは、試験環境25℃、50%Rh、1000枚印字後に行った。印字テストは、画像比率5%の横線の記録画像を連続的に通紙して行った。
2.評価結果
次に、実施例1、及び比較例1〜3の評価結果について説明する。評価結果を表1に示す。
<比較例1に対する優位性>
はじめに、従来技術である比較例1と実施例1と比較することにより本発明の優位性について説明する。
比較例1は、予め現像ローラと規制ブレードとの間に印加する規制バイアスVbを一定値の200Vに設定した例であるが、耐久時のカブリ量が多いことが分かる。その原因は、印字枚数が少ない時期から、規制バイアスVbを印加しているためと考えられる。
即ち、現像ローラと規制ブレードとの間に規制バイアスVbを印加すると、現像ローラと規制ブレードとが当接する当接ニップ内で、トナーは、現像ローラの方向へ力を受ける。つまり、比較例1では、トナーが印字枚数の少ない時期から、規制バイアスVbにより付加されたストレスを受ける。そのため、トナーの外添剤の遊離、埋め込みなどによるトナーの劣化を生じ、電荷付与性が低下する。その結果、耐久時のカブリが増加する。
一方、本発明に従う実施例1は、表面電圧Vtの極大値、極小値のそれぞれに対する規制バイアスVbmax、Vbminの電圧差Vs(=|Vbmin−Vbmax|)の値に応じて、即ち、トナーの劣化に応じて、適切な規制バイアスVbを印加する。
そのため、実施例1では、印字枚数が少ない時期において、規制バイアスVbの印加によるトナーへの過剰なストレスを抑制することができる。
加えて、実施例1では、トナー劣化が進んだときに、必要な規制バイアスVbを印加するため、カブリ量を著しく抑制することができる。
<比較例1〜3に対する優位性>
次に、実施例1と比較例1〜3を比較することによって、本発明の優位性について説明する。
・画像評価(a)、(b)、(c)について:
比較例1は、上述したように、印字枚数の少ない時期から規制バイアスVbを一定量印加する。そのため、トナーの劣化が促進され、カブリ量の増加を生じる。
比較例2は、印字枚数Rに応じて適正な規制バイアスVbを印加した例である。予め準備されたVb=Vb(R)の関係は、画像比率5%時印字を想定して算出された関係である。そのため、画像比率が予め想定された値に近い耐久経緯を経ている画像比率5%時の耐久カブリは抑制されている。しかし、画像比率1%と非常にトナー消費の少ない状態においては、カブリ量が悪化する。この理由は、次のように考えられる。
即ち、トナー消費の少ない耐久経緯を経た場合、印字枚数時の現像装置内のトナー量は、想定された値より多くなる。現像装置内のトナー量が多い場合、現像装置内のトナーへのストレスは概ね平均化されるため、トナーの劣化も軽微となる。
ところが、比較例2においては、トナーの劣化が軽微であるにもかかわらず、規定の印字枚数R時には、所定の規制バイアスVbを印加する。このため、比較例1と同様に、トナー劣化の少ない状態において過剰な規制バイアスVbを印加し、トナーに過剰なストレスを加える。その結果、トナー消費の少ない耐久経緯を経ると、トナー劣化を促進し、カブリ量増加を生じる。
一方、本発明に従う実施例1は、印字枚数やトナーの消費量の違いにかかわらず、トナー劣化を反映する電圧差Vsの値に応じて、適正な規制バイアスVbを印加するため、印字枚数やトナーの消費量の違いにかかわらず、カブリ量の増加を抑制する。
又、比較例3は、規制バイアスVbをVbminに設定した例である、実施例1に比べ、カブリ量がやや多い。その理由は、トナーの劣化による帯電付与性低下時には、カブリ量を抑制するために十分な規制バイアスVbの印加を行うことができないためであると考えられる。その結果、軽微なカブリ量の増加を生じる。
一方、本発明に従う実施例1においては、電圧差Vsの値に応じて、即ち、トナーの劣化度合いに応じて、印加する規制バイアスVbの値を大きくするように設定している。そのため、過剰なバイアス印加を抑制することで、トナーの劣化の促進を抑えると同時に、トナーの劣化による帯電付与性低下時にカブリ量を抑制するために十分な規制バイアスVbを印加することができる。
以上のことから、本発明に従う実施例1においては、印字枚数やトナー消費量にかかわらず、トナーの劣化を反映する電圧差Vsの値に応じ、適正な規制バイアスVbを印加するため、トナーの劣化を著しく抑制することができる。加えて、実施例1においては、「トナーの劣化の進行」、即ち、「電圧差Vsの値の増加」に応じて、規制バイアスVbの値を大きくする。そのため、トナーの劣化時の帯電付与性低下によるカブリ量の抑制のために必要な規制バイアスVbの印加が可能となり、カブリ量を著しく抑制することができる。
・画像評価(d)について:
比較例3は、規制バイアスVbをVbminに設定するため、縦筋が発生すると考えられる。即ち、前述したように、Vbmin近傍に規制バイアスVbを設定すると、トナーが現像ローラの方向に押し付けられる状態(|Vbmin|より大きい値の時)と規制ブレードとトナーとの接触回数が多い状態(|Vbmin|より小さい値の時)の混在を生じる。そのため、トナーコート層が不安定となる結果、縦筋が発生する。
一方、本発明に従う実施例1は、規制バイアスVbは、Vbminより大きい値、より好ましくは、Vb>Vbmin+20Vを満たすように設定する。そのため、上記混在状態時のトナーコート層の不安定化によるベタ黒画像中の縦筋発生を著しく抑制することができる。
このように実施例1によれば、規制バイアスVbを、表面電圧Vtと規制バイアスVbとの関係Vt=Vt(Vb)から得られる表面電圧Vtが極小値の時の規制バイアスVbminより大きくすることで、トナーコート層を安定させ、縦筋を抑制することができる。又、実施例1によれば、印字枚数やトナー消費量にかかわらず、トナーの劣化を反映する電圧差Vsの値に応じ、適正な規制バイアスVbを印加するため、トナーの劣化を著しく抑制することができる。加えて、実施例1によれば、「トナーの劣化の進行」、即ち、「電圧差Vsの値の増加」に応じて、規制バイアスVbの値を大きくする。そのため、トナーの劣化時の帯電付与性低下によるカブリ量の抑制のために必要な規制バイアスVbの印加が可能となり、カブリ量を著しく抑制することができる。又、実施例1によれば、簡易な構成にて上記効果を長期に渡って得ることができる。
以上説明したように、本発明により奏される作用効果には、以下のものが含まれる。
印字枚数やトナー消費量にかかわらず、トナーの劣化に応じ、現像ローラと規制ブレードとの間に適正な規制バイアスVbを印加することができるため、トナーの劣化を著しく抑制することができる。加えて、「トナーの劣化の進行」に応じて、規制バイアスVbの値を大きくするため、トナーの劣化時の帯電付与性低下によるカブリ量の抑制のために必要な規制バイアスVbの印加が可能となり、カブリ量を著しく抑制することができる。
又、トナーコート層の不安定化が生じにくいように規制バイアスVbを設定するため、縦筋を抑制することができる。
更に、簡易な構成にて上記効果を得るとともに、長期に渡って安定した画像形成を行うことができる。
従って、本発明によれば、画像形成枚数や現像剤の消費量などにかかわらず、現像剤担持体と規制部材との間に印加する電圧を適正な値に制御して、現像剤担持体上に安定した現像剤層を形成することができる。又、本発明によれば、現像剤担持体と規制部材との間に印加する電圧により現像剤の受けるストレスを軽減し、長期に渡って良好な画像を形成することができる。