JP5472258B2 - 音声信号処理装置 - Google Patents

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Description

この発明は、入力された音声信号に種々の処理を施す音声信号処理装置に関する。
従来、モノラルスピーカで音の広がり感を与えるものとして、例えば特許文献1に示すような処理が知られている。
特許文献1では、Lチャンネルの入力信号とRチャンネルの入力信号の差成分であるL−R信号を生成し、ローパスフィルタを介して所定のゲインでL+R信号に加算することで、音の広がり感を与えるものが記載されている。
特許第4526757号公報
しかし、特許文献1の方式では、ローパスフィルタを介するため、L−R信号は、低域側の位相は変化しないが、高域側の位相が変化する。そのため、L−R信号をL+R信号に加算した場合に、周波数特性が崩れ、L−R信号のゲインを高くするほど低域だけが強調され過ぎてしまう。
そこで、本発明は、差信号と和信号を合成する場合であっても、周波数特性が大きく変化しない音声信号処理装置を提供することを目的とする。
この発明の音声信号処理装置は、複数チャンネルの音声信号を入力する入力部と、前記複数チャンネルの音声信号の和信号を生成する和信号生成部と、前記複数チャンネルの音声信号の差信号を生成する差信号生成部と、前記和信号の位相を変化させる移相処理部と、前記差信号の周波数特性を変化させるとともに、前記移相処理部の位相変化に応じて、位相を変化させる周波数処理部と、前記移相処理部および前記周波数処理部の出力信号を合成して出力する出力部と、を備えたことを特徴とする。
このように、本発明の音声信号処理装置は、差信号(例えばL−R信号)の周波数特性および位相を変化させるが、差信号の位相変化に応じて和信号(例えばL+R信号)の位相も変化させることで、差信号および和信号の位相差を制御する。この位相差をある程度の帯域(例えば音質に影響が大きい10kHz未満等)で保持すれば、当該帯域内では周波数特性が崩れず、差信号のゲインを高くしたとしてもある帯域だけが強調され過ぎることがなくなる。
また、和信号と差信号の位相差は、特定の帯域だけ保持される場合であってもよいが、可聴帯域全体で保持されることが音質上好ましい。
また、差信号の周波数特性および位相を変化させるためには、1次のバンドパスフィルタを用いることで実現することができる。この場合、バンドパスフィルタの中心周波数は、定位感に影響する周波数(一般的に300Hz〜5kHz程度)に設定されることが望ましい。
また、上記移相処理部は1次のオールパスフィルタにより実現することができる。オールパスフィルタは、低周波数帯域から高周波数帯域にかけて、0度から−180度までなだらかに位相が変化する特性を有するため、このオールパスフィルタの位相の周波数特性(位相特性)に合わせてバンドパスフィルタの位相特性を設定することが好ましい。例えば、90度移相が生じる周波数と、バンドパスフィルタの中心周波数を一致させる。また、バンドパスフィルタの位相特性が、オールパスフィルタの位相特性とほぼ同様となるように、バンドパスフィルタの周波数特性(ゲインの周波数特性)を設定する。
また、上記移相処理部および周波数処理部は、それぞれDSPを用いたデジタル信号処理で実現することも可能であるが、オペアンプ、抵抗器、コンデンサ等のアナログ回路を用いて実現することも可能である。アナログ回路の場合、DSPを用いたデジタル信号処理に比べ、非常に安価に実現することが可能である。
この発明によれば、差信号と和信号を合成する場合であっても、周波数特性が大きく変化しない。
信号処理装置の構成を示すブロック図である。 図2(A)は、振幅の周波数特性を示す図であり、図2(B)は、位相の周波数特性を示す図である。 変形例1に係る信号処理装置の構成を示すブロック図である。 変形例2に係る信号処理装置の構成を示すブロック図である。 変形例3に係る信号処理装置の構成を示すブロック図である。
図1は、本発明の信号処理装置の構成を示すブロック図である。本実施形態の信号処理装置は、複数チャンネルの音声信号を入力し、ミックスダウンしてモノラルの音声信号として出力する装置である。なお、本実施形態において、特に記載無き場合、音声信号は、全てアナログ信号として説明する。
信号処理装置は、入力インタフェース(I/F)11、加算器12、加算器13、オールパスフィルタ(APF)14、バンドパスフィルタ(BPF)15、レベル調整器16、レベル調整器17、および出力I/F18を備えている。
入力I/F11は、本発明の入力部に相当し、他装置や自装置内のコンテンツ再生部(不図示)から音声信号を入力する。この実施形態では、アナログ音声信号を入力する例について説明するが、デジタル音声信号を入力する場合には、入力I/F11の内部にD/Aコンバータを備える。また、MP3等のエンコードデータを入力する場合には、デコーダも備える。入力した音声信号のうち、左チャンネル(L)信号および右チャンネル(R)信号は、それぞれ加算器12および加算器13に供給される。
加算器12は、本発明の和信号生成部に相当し、L信号とR信号とを加算して和信号(L+R信号)を生成し、出力する。加算器13は、本発明の差信号生成部に相当し、L信号からR信号を減算して差信号(L−R信号)を生成し、出力する。なお、差信号は、R信号からL信号を減算したR−L信号として生成される態様であってもよい。
このような差信号は、L信号およびR信号の同相成分が消去されたものであり、主に残響等のサラウンド感に影響する成分が含まれたものである。本実施形態の信号処理装置は、この差信号を和信号に加算することで、当該和信号を単一のスピーカから出力してモノラル再生を行う場合であっても広がりあるサラウンド感を与えることができるものである。ただし、和信号と差信号を単純に加算すると、L信号成分またはR信号成分が消去されてしまう。そこで、本発明の信号処理装置は、以下に示すように、APF14およびBPF15で移相処理および周波数処理を行うことで、和信号と差信号を加算してもL信号成分およびR信号成分が消去されず、かつ最終段の出力信号の周波数特性が大きく変化しない信号処理を実現する。
APF14は、本発明の移相処理部に相当し、入力信号の周波数特性(ゲインの周波数特性)はそのままに、位相を90度変化させる1次のフィルタである。APF14には、LR信号が入力される。BPF15は、本発明の周波数処理部に相当し、入力信号の所定周波数帯域を通過させる1次のフィルタである。BPF15には、LR信号が入力される。
APF14の90度移相が生じる周波数と、BPF15の中心周波数は、同じ周波数となるように設定されている。本実施形態では、APF14について1kHzで90度移相が生じ、BPF15の中心周波数が1kHzとなるように回路特性を設定している。なお、APF14における90度移相が生じる周波数、およびBPF15の中心周波数は、定位に影響がある周波数帯域(概ね300Hz〜5kHz)に設定するが、実際にはスピーカの特性や入力音声信号(ソース)の内容に応じて適宜設定する。また、BPF15の周波数特性(ゲインの周波数特性)は、詳細は後述するが、APF14の位相の周波数特性(位相特性)に応じて設定する。
APF14の出力信号は、レベル調整器16に入力され、BPF15の出力信号は、レベル調整器17に入力される。レベル調整器16およびレベル調整器17は、それぞれ入力されたL+R信号およびL−R信号のレベルを調整し、出力I/F18に出力する。
レベル調整器17のゲインを大きくすれば、サラウンド感が強調され、レベル調整器16のゲインを大きくすれば、同相成分が強調されることになる。例えば、ソースに人の音声が含まれたものであれば、レベル調整器16のゲインを高くして人の音声を強調するようにしてもよいし、逆に、ソースがBGMであれば、レベル調整器16のゲインを低くして、サラウンド感を強調するようにしてもよい。あるいは聴取者の好みに合わせた設定を行ってもよい。また、レベル調整器16およびレベル調整器17のゲインは固定であってもよいが、ユーザインタフェースを設け、各ゲインを調整できる態様としてもよい。
出力I/F18は、本発明の出力部に相当し、レベル調整器16から出力されたL+R信号、およびレベル調整器17から出力されたL−R信号を合成し、この合成後の信号を外部に出力する。図示は省略するが、出力された信号は、パワーアンプで増幅されてからスピーカに出力される。
次に、図2を参照して、APF14およびBPF15の周波数特性および位相特性について説明する。図2(A)は、APF14、BPF15、および出力信号(出力I/F18の出力信号)の周波数特性(ゲインの周波数特性)を示す図であり、同図(B)はAPF14、BPF15、および出力信号の位相特性(位相の周波数特性)を示す図である。
図2(A)および図2(B)に示すように、APF14の周波数特性は完全にフラット(全帯域で0dB)であり、低周波数帯域から高周波数帯域にかけて、0度から−180度までなだらかに位相が変化する位相特性を有する。本実施形態では、定位感に影響が大きい1kHzで−90度の位相となるようにAPF14の回路特性を設定している。
また、図2(A)に示すようにBPF15は、中心周波数が1kHzに設定されている。図2(B)に示すように、この中心周波数では、位相が変化しない。したがって、1kHzにおいて、APF14の出力信号とBPF15の出力信号との位相差は、90度となる。なお、この例では、BPF15のピークゲインは、−3dBとなっているが、一例として出力信号のゲインが−6dBとなるようにBPF15のゲイン特性(レベル調整器17のゲイン)を設定しているためであり、実際のBPF15のピークゲインは、必要とする出力信号のゲインに応じて適宜設定される。
そして、図2(B)に示すように、BPF15は、APF14の位相特性とほぼ同様の位相特性を示すように回路特性が設定されている。すなわち、BPF15の周波数特性をなだらかに、広帯域な(例えば−3dB幅を300Hz〜5kHz程度とする)通過帯域を設定し、APF14の位相特性に合わせた回路特性を設定する。
このように、APF14およびBPF15は、可聴帯域全体で位相差が保持されているため、図2(A)の出力信号の周波数特性に示すように、APF14の出力信号とBPF15の出力信号を加算しても、周波数特性が大きく崩れることなく、差信号のゲインを高く(例えば和信号と同じゲインに)したとしてもある帯域だけが強調され過ぎることがなくなり、音質に影響なく広がりあるサラウンド感を与えることが可能になる。
また、上記のような特性を有するAPF14およびBPF15は、オペアンプ、抵抗器、コンデンサ等のアナログ回路を用いて非常に安価に実現することが可能である。ただし、本発明の移相処理部および周波数処理部は、それぞれDSPを用いたデジタル信号処理で実現することも可能であり、和信号の位相のみ変化させる信号処理部と和信号の位相変化に応じて差信号の周波数特性および位相を変化させるための信号処理部と、を有していればよい。
また、上記実施形態では、可聴帯域全体でAPF14との位相差が保持されるようにBPF15の周波数特性を設定する例を示したが、本発明において可聴帯域全体で位相差が保持される必要はない。特に、音質に影響が大きい帯域(例えば10kHz未満)において位相差が保持されるだけでもよい。
なお、本実施形態では、モノラルスピーカを用いてLチャンネルおよびRチャンネルの2チャンネル再生を行う例を示したが、入力信号がリアLチャンネル(SL)およびリアRチャンネル(SR)の場合においても、本発明を適用することが可能である。この場合、和信号がSL+SR信号となってAPF14で移相処理がなされ、差信号がSL−SR信号となってBPF15で移相処理および周波数処理がなされる。この場合、SLチャンネルおよびSRチャンネルの音声信号を、聴取者の背面に設置した1つのスピーカから出力する場合に好適である。
また、本発明の信号処理装置は、さらに多数チャンネルの音声信号を入力する場合にも適用可能である。
(変形例1)
図3は、変形例1に係る信号処理装置の構成を示すブロック図である。図1と共通する構成については同一の符号を付し、その説明を省略する。図3の信号処理装置は、低域専用(LFE)チャンネルを加えた2.1チャンネル再生を行うために、LFE信号のレベル調整を行うレベル調整器21を備えている。レベル調整器21でレベル調整されたLFE信号は、出力I/F18に入力される。
出力I/F18は、レベル調整器16から出力されたL+R信号と、レベル調整器17から出力されたL−R信号と、レベル調整器21から出力されたLFE信号と、を合成し、この合成後の信号を外部に出力する。このようにして、2.1チャンネルの入力信号であっても、モノラル信号として出力し、単一のスピーカから出力する場合であっても広がりあるサラウンド感を実現することができる。
(変形例2)
図4は、変形例2に係る信号処理装置の構成を示すブロック図である。なお、図3と共通する構成については同一の符号を付し、その説明を省略する。図4の信号処理装置は、センタチャンネル(C)、リアL(SL)チャンネル、およびリアR(SR)チャンネルを加えた5.1チャンネル再生を行うために、C信号のレベル調整を行うレベル調整器22、SL信号のレベル調整を行うレベル調整器23、およびSR信号のレベル調整を行うレベル調整器24を備えている。レベル調整器22でレベル調整されたC信号、レベル調整器23でレベル調整されたSL信号、およびレベル調整器24でレベル調整されたSR信号は、それぞれ出力I/F18に入力される。
出力I/F18は、レベル調整器16から出力されたL+R信号と、レベル調整器17から出力されたL−R信号と、レベル調整器21から出力されたLFE信号と、レベル調整器22から出力されたC信号と、レベル調整器23から出力されたSL信号と、レベル調整器24から出力されたSR信号と、を合成し、この合成後の信号を外部に出力する。このようにして、5.1チャンネルの入力信号であっても、モノラル信号として出力し、単一のスピーカから出力する場合であっても広がりあるサラウンド感を実現することができる。
(変形例3)
さらに、図5は、変形例3に係る信号処理装置の構成を示すブロック図である。なお、図4と共通する構成については同一の符号を付し、その説明を省略する。図5の信号処理装置は、SL信号とSR信号とを加算して和信号(SL+SR信号)を生成する加算器31と、SL信号からSR信号を減算して差信号(SL−SR信号)を生成する加算器32と、を備えている。さらに、図5の信号処理装置は、SL+SR信号を入力するAPF33と、SL−SR信号を入力するBPF34と、APF33の出力信号のレベル調整を行うレベル調整器35と、BPF34の出力信号のレベル調整を行うレベル調整器36と、を備えている。
APF33およびBPF34は、それぞれAPF14およびBPF15と同様の特性を有するフィルタである。すなわち、SL+SR信号は、APF33により、1kHzにおいて90度移相され、SL−SR信号は、BPF15により、可聴帯域全体においてSL+SR信号との位相差が90度に保持された状態となる。
そして、SL+SR信号は、レベル調整器35でレベル調整され、SL−SR信号は、レベル調整期36でレベル調整された後、それぞれ出力I/F18に入力される。
出力I/F18は、レベル調整器16から出力されたL+R信号と、レベル調整器17から出力されたL−R信号と、レベル調整器21から出力されたLFE信号と、レベル調整器22から出力されたC信号と、レベル調整器35から出力されたSL+SR信号と、レベル調整器36から出力されたSL−SR信号と、を合成し、この合成後の信号を外部に出力する。この場合においても、SL+SR信号とSL−SR信号との位相差が可聴帯域全体で90度に保持され、周波数特性が大きく崩れることなく、音質に影響なく広がりあるサラウンド感をさらに強調することが可能になる。
11…入力I/F
12…加算器
13…加算器
14…APF
15…BPF
16…レベル調整器
17…レベル調整器
18…出力I/F

Claims (6)

  1. 複数チャンネルの音声信号を入力する入力部と、
    前記複数チャンネルの音声信号の和信号を生成する和信号生成部と、
    前記複数チャンネルの音声信号の差信号を生成する差信号生成部と、
    前記和信号の位相を変化させる移相処理部と、
    前記差信号の周波数特性を変化させるとともに、前記移相処理部の位相変化に応じて、位相を変化させる周波数処理部と、
    前記移相処理部および前記周波数処理部の出力信号を合成して出力する出力部と、
    を備えたことを特徴とする音声信号処理装置。
  2. 前記和信号と前記差信号の位相差が可聴帯域全体で保持されることを特徴とする請求項1に記載の音声信号処理装置。
  3. 前記周波数処理部は、バンドパスフィルタであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の音声信号処理装置。
  4. 前記バンドパスフィルタの中心周波数は、定位感に影響する周波数であることを特徴とする請求項3に記載の音声信号処理装置。
  5. 前記移相処理部は、オールパスフィルタであり、
    前記バンドパスフィルタは、前記オールパスフィルタとの位相差が可聴帯域全体で保持される特性を有することを特徴とする請求項3または請求項4に記載の音声信号処理装置。
  6. 前記移相処理部および前記周波数処理部は、アナログ回路により実現されることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれかに記載の音声信号処理部。
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