JP5470554B2 - 液状物注出用フィルム状逆止弁およびフレキシブル包装袋 - Google Patents

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Description

本発明は、平坦度の高い表裏2枚の、軟質のプラスチック製積層フィルム(以下、「積層フィルム」という)の重ね合わせによって形成される、外気の袋内への侵入を自動的に阻止するセルフシール逆止機能つきの液状物注出用フィルム状逆止弁と、このフィルム状逆止弁を有する、軟質の液状物充填用軟質包装袋、即ちフレキシブル包装袋に関するものである。
上掲のセルフシール逆止機能つきの、プラスチック製積層フィルムからなるフィルム状逆止弁およびそれを備えるフレキシブル包装袋としては、発明者らの提案に係る特許文献1、2に開示されたようなものがある。
特開2005−15029号公報 特開2005−59958号公報
特許文献1、2に開示されているフィルム状逆止弁の逆止機能とは、平坦で密着可能な表裏2枚のプラスチック製積層フィルムを重ね合わせて対面させ、かつ重なり合うそれらの積層フィルム相互間に形成される注出通路が、毛細管作用による液状物の常時介在によって密着することで、セルフシール逆止機能を発揮することである。そのため、フィルム状逆止弁に用いられるプラスチックフィルムとしては、上記の逆止機能を確実に発揮させるため、薄く柔軟で平坦なフィルムを用いることが好適であるとされている。
しかしながら、フィルム状逆止弁を薄く柔軟な積層フィルムを用いて構成すると表裏2枚の積層フィルム同士の密着性を向上させることができる一方で、弁自体の指向性(吐出方向性)の低下、さらには折れ曲がるなどして、袋内から注出させるべき液状被包装物を円滑に一定の方向に注出することができなくなることや、それに伴い、重合している表裏2枚の積層フィルムの間に歪みが生じて、平坦度が失われ、液状物を常時介在させることで、逆止作用が生じるようになるための隙間が維持できなくなり、逆止機能を有効に発揮できないおそれがあった。
そこで、本発明の目的は、従来技術が抱えている上述した課題を解決することを目的とし、重ね合わせて逆止機能が発揮されるようにした表裏2枚の積層フィルム同士の密着性およびフラット性(平坦度)を向上させるとともに、被包装物の吐出方向の安定性(指向性)に優れたフィルム状逆止弁と、それを備えるフレキシブル包装袋について提案することにある。
上記目的を実現するために鋭意研究した結果、発明者らは、下記の要旨構成に係る本発明を開発するに到った。即ち、本発明は、袋本体の側部に突設されるものであって、その袋本体に接続される基端部および、液状物の注出通路を形造る中央部分を除き、外周部分が相互に融着されてなり、かつ、重なり合う積層フィルム相互間の微小隙間に液状物が介在することで外気の袋内への侵入を阻止する外側逆止機能を生ずる、液状物充填用軟質包装袋のための平坦なフィルム状逆止弁において、重ね合せる前記積層フィルム双は、腰異なるものどうしであり、腰度の大きい側の積層フィルムは、腰度40mN以上600mN以下、他方の腰度の小さい側の積層フィルムは、腰度10mN以上40mN未満であることを特徴とする液状物注出用フィルム状逆止弁である。
本発明において、上記のフィルム状逆止弁は、
)前記積層フィルムのいずれか少なくとも一方の内面は、濡れ処理された濡れ強化面であること、
)前記濡れ強化面は、コロナ放電処理面、UVオゾン処理面、プラズマ処理面および火炎処理面のいずれか1以上の処理面からなること、
)前記濡れ強化面は、腰度の大きい側の積層フィルムに施されていること、
(4)前記濡れ強化面は、腰度の小さい側の積層フィルムに施されていること、
(5)袋本体に突設される前記フィルム状逆止弁先端部近傍に開口のための引裂き誘導線を有するとともに、外表面は、少なくともその先端部に設けられた開口予定位置を含むその近傍に、撥水物質または撥油物質の塗布層を有すること、
が、より好ましい解決手段となる。
また、本発明は、液状物充填用包装袋の袋本体に対し、前記平坦なフィルム状逆止弁の基端部を、袋本体の側部、角部または頂部のいずれかの内表面に融着接合して突出させてなるフレキシブル包装袋を提案する。
本発明において、上記のフレキシブル包装袋は、
(1)前記フィルム状逆止弁の基端部は、対面するシーラント層を低融点のプラスチックフィルムによって低温融着され、注出通路内表面が仮封止されていること、
(2)前記包装袋の袋本体は、表裏いずれか一方の積層フィルムの非シール部分が、少なくとも上部または、前記フィルム状逆止弁側の側縁近傍において、凹凸構造を有する積層フィルムによって構成されていること、
(3)積層フィルムに形成した前記凹凸構造は、表裏の積層フィルムの一方もしくは両方に、エンボス加工、ブラスト加工、ローレット加工、しわ加工、縦・横縞加工を、面状、縞状、ストライプ状に施して、一部模様もしくは全面模様として形成されたものであること、
(4)前記包装袋の袋本体の下端に自立用底部を設けてなること、
(5)前記包装袋の袋本体は、前記自立用底部を除いた3方シール自立袋であり、立ち姿が上部は扁平で、下部が筒状であること、
が、より好ましい解決手段となる。
本発明によれば、セルフシール逆止機能をもつフィルム状逆止弁を、腰の異なる2枚のプラスチック製積層フィルムを重ね合わせることによって形成しているので、腰度の大きい積層フィルム(以下、「高腰度フィルム」という)が、芯材的機能を発揮して、この逆止弁が折れ曲がったり、歪んだりすることがなく、液状物の注出(吐出)方向の安定性(指向性)を向上させることができる。しかも、腰度の小さい積層フィルム(以下、「低腰度フィルム」という)が、前記高腰度フィルムによく密着することで、積層フィルム同士のフラット性(平坦度)ならびに逆止機能性をより一層向上させることができる。
本発明では、フィルム状逆止弁の注出通路内面に濡れ処理を施すことによって、フィルム状逆止弁を形成する表裏2枚の重合する積層フィルム相互間に、液状被包装物が該注出通路内面に毛細管作用によって常時介在させることができ、このときフィルム間に生じている分子間力に由来する高い密着力をもたらし、フィルム状逆止弁のセルフシール逆止機能をより確実に発揮させることができる。
本発明によれば、フィルム状逆止弁の少なくとも開口予定位置(注ぎ口)が撥水、撥油性に優れるため、液状被包装物の吐出後の液だれを効果的に防止することができ、使用者の手・指を汚すようなことがなく、たとえ、液だれが発生したとしても、該液だれは、フィルム状逆止弁の下縁部に設けられた尖塔状の突起を伝って下方に垂れ落ちるため、フィルム状逆止弁の下縁部から袋本体部にまで伝い落ちるのを防ぐことができる。
本発明によれば、フィルム状逆止弁の基端部の内面を低温融着処理によって仮封止することにより、ハンドリング時など、このノス゛ル部分に予期しない力が加わったような場合でも、逆止機能特性が阻害されることがないフィルム状逆止弁つきのフレキシブル包装袋を提供することができる。
本発明によれば、袋本体を構成している積層フィルムの少なくとも一部に、好ましくは縞状の凸凹構造を付与することで、再注出時などに、いつでも円滑な注ぎ出しが可能となり、袋本体が逆止機能に由来して潰れ変形したような場合でも、注ぎ出しが最後まで容易にできるようになる。
また、本発明によれば、袋本体下端に自立用底部を設けることで、フレキシブル包装袋を自立させることが可能であり、さらに袋本体部分が、自立用底部を除いた3方シール袋からなるため、袋本体内に液状被包装物を液中シール充填等した後も、その立ち姿が、下部の円筒状(充填空間の確保)に対し、上部についてはフラットな扁平形状を維持することができるため、フィルム状逆止弁の逆止機能を有効に発揮させることができる。
本発明に係るフレキシブル包装袋の一実施形態を示す図である。 本発明にかかるフィルム状逆止弁の開口予定位置の拡大断面図である。 本発明に係るフレキシブル包装袋のフィルム状逆止弁に塗布層を設けた状態の正面図である。 本発明に係るフレキシブル包装袋の袋本体に設ける凹凸加工域を例示する略線図である。 凹凸構造の拡大断面図である。 本発明に係るフレキシブル包装袋の他の一実施形態を示す正面図である。
外気の袋内への侵入を自身が自動的に阻止するセルフシール逆止機能を有する本発明に係るフィルム状逆止弁は、熱可塑性の、一軸もしくは二軸延伸ベースフィルム層と、そのいずれか一方、もしくはその両側を挟むように積層してなるシーラント層とからなる2層もしくは3層の積層フィルム(以下、3層の例で述べる)を具え、かつその積層フィルムを表裏となるように重ね合わせ、それぞれの側の積層プラスチックフィルム、たとえば、2枚で一対の積層プラスチックフィルムにおける対面する前記シーラント層どうし、または半幅に折返してなる1枚の積層プラスチックフィルムの、互いに対向するシーラント層どうしを、包装袋の袋本体に接続される基端部および、液状物の注出通路となる中央部分を除く外周部分について、ヒートシール、高周波シールまたは、インパルスシール等によって相互に皺が寄らないように平坦に融着させて、全体として略楔形を呈するように形成したものである。
なお、本発明のフィルム状逆止弁の有する逆止機能とは、包装袋から被包装物を注出する際に、被包装物と入れ代わって、空気等が液状被包装物が充填された袋本体内へ侵入するのを防ぐ外側逆止機能であって、例えば、特開2005−52596号の逆止弁のように、被包装物が袋本体から排出するのを防ぐ内側逆止機能とは異なるものである。
すなわち、前記フィルム状逆止弁は、双方とも平坦な密着可能な表裏2枚のプラスチックフィルムを重ね合わせて対面させ、かつ重なり合うそれらのフィルム相互間の微少隙間に、毛細管作用によって液状物が常時介在することによって生じる分子間力に由来する密着力を生じさせて、上記セルフシール逆止機能を発揮するようにしたものであり、そのため、表裏2枚のプラスチックフィルムは、フラット性(平坦度)の高いものの方が高い逆止効果が得られ、表裏2枚のプラスチックフィルムの重合時の隙間を2μm〜300μm程度とすることが必要となる。
そこで、本発明では、フィルム状逆止弁の吐出方向の安定性(指向性)や前記外側逆止機能の向上のため、フィルム状逆止弁を構成する表裏のそれぞれの側の積層プラスチックフィルムとして、腰の異なる、高腰度フィルムと低腰度フィルムとを用いて、これらの重ね合わせによって、フィルム状逆止弁を形成することを提案する。
このようにフィルム状逆止弁を、腰の異なるプラスチックフィルムの重ね合わせによって形成したことにより、腰度の高い、高腰度フィルムの方が芯材的機能を果たし、フィルム状逆止弁が折れ曲がったり、歪んだりすることがなくなり、被包装物の注出時の方向安定性(指向性)が向上するとともに、低腰度フィルムが、この高腰度フィルムによく密着するため、フラット性(平坦度)を向上させやすくなり、逆止機能を効果的に発揮できるようになる。
発明では、フィルム状逆止弁を構成する表裏2枚の積層フィルムはいずれも、少なくとも一軸もしくは二軸延伸ベースフィルム層とベースフィルム層を挟んで積層したそれぞれのシーラント層との3層構造にすることが有効であり、その一方で、積層フィルム(肥厚フィルム)の厚みが、他方の積層フィルム(薄厚フィルム)の厚みよりも大きく、肥厚フィルムの厚み、60μm以上、250μm以下、好ましくは80〜150μm、薄厚フィルムの厚み、10μm以上、60μm未満、好ましくは20〜40μmとすることが好ましい
また、前記表裏2枚の積層フィルムは、一方の積層フィルム(高腰度フィルム)の腰度が、他方の積層フィルム(低腰度フィルム)の腰度よりも大きく、高腰度フィルムの腰度が40mN以上、600mN以下を有し、低腰度フィルムの腰度が10mN以上、40mN未満を有する。なお、腰度とは、積層フィルムの単位幅(15mm)当たりの曲げ強さであり、特開2005−59958号公報の図10に開示されているような、腰度測定装置(ミニベア(株)ロードセル
UL−100GR)を用いて測定した値である。
積層フィルムの腰度は、フィルム構成や、ベースフィルム層およびシーラント層の材質等によっても異なるが、積層フィルムの腰度が、高腰度フィルムについて、上記範囲を下回る(腰度:40mN未満)か、低腰度フィルムについて、上記範囲を上回る場合(腰度:40mN以上)には、上記のように被包装物の注出後において、積層フィルム間に常時介在する被包装物の分子間力に基づく密着力によって、高腰度フィルムと低腰度フィルムとが密着した場合に、高腰度フィルムが芯材として機能することができず、注出指向性が悪くなる。一方、高腰度フィルムについて、積層フィルムの腰度が上記範囲を上回る場合(腰度:600mN超)は、曲げ強さが大きくなりすぎて、液状被包装物の注出停止後のフィルム状逆止弁の内表面の密着性が損なわれ、逆止機能を効果的に発揮することができないおそれがある。また、低腰度フィルムについて、積層フィルムの腰度が上記範囲を下回る場合(腰度:10mN未満)には、十分な強度が確保できないおそれがある。
なお、高腰度フィルムおよび低腰度フィルムは、好ましくは、少なくともベースフィルム層(支持基材)とそれぞれの側に積層したシーラント層との3層構造からなり、ベースフィルム層は、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン、ポリエステル、ポリプロピレンまたはEVOHなどからなることが好ましく、シーラント層は、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン酢酸ビニル共重合層、エチレンアクリル酸エチル共重合体層、アイオノマー層などからなることが好ましい。なお、シーラント層は、ベースフィルム層に対する溶融押出しラミネート法またはドライラミネート法、エクストルージョンラミネート法、コエクストルージョンラミネート法などによって積層される。
前記積層フィルムのうち、低腰度フィルムについては、それのベースフィルム層は、厚みが5〜40μmであることが好ましく、より好ましくは10〜20μmである。ベースフィルム層の厚みが5μm未満では、水蒸気不透過性、ガスバリア性等が不足するおそれがあり、40μm超では、曲げ強度が大きくなりすぎるおそれがある。一方、シーラント層については、合計厚みが5〜20μmであることが好ましく、その厚みが5μm未満では、十分なシール強度を確保することができないおそれがあり、20μmを超えると、積層フィルムの曲げ強度が大きくなりすぎるおそれがある。なお、シーラント層は、厚みの合計が上記範囲内にある限り、2層以上の層で構成することも可能である。
なお、一般的に、腰度が大きいフィルムは、厚みの厚い肥厚フィルムとなり、一方、腰度の小さいフィルムは、また厚みの薄い薄厚フィルムとなるが、いずれにおいても、ベースフィルム層については、それのいずれか一方の表面にSiO2蒸着層、塩化ビニリデンコーティング層、酸化アルミニウムコーティング層、Al蒸着層あるいはこれらのスパッタリング層などからなるガスバリア層を形成したものを用いることが好ましい。これにより、被包装物によって濡れたフィルム状逆止弁が乾きにくくなり、その結果、内表面が相互によく密着するようになるとともに、水蒸気不透過性やガスバリア性等が付与され、液状被包装物の長期に亘る劣化のない保存が可能になり、包装袋内への外気の侵入を有効に阻止することができる。なお、ガスバリア層の厚みは、0.5〜20μm程度とすることが望ましい。
また、本発明では、フィルム状逆止弁を構成する表裏2枚の積層フィルムの、少なくともいずれか一方のフィルムの注出通路内面、好ましくは、さらに袋本体部分の内面に、上述した外側逆止機能を生じさせるためのフィルム相互間に働く分子間力が、液状物の介在によって狭まることに由来する密着力を、より確実なものにするために、濡れ処理を施すことが有効である。この濡れ処理面をフィルム状逆止弁の注出通路内面に設けることにより、フィルム状逆止弁を構成する表裏2枚の重合する積層フィルム間に、液状被包装物が注出通路内面に毛細管作用によって常時介在することによって生じる分子間力に由来する密着力が生じ、上述した外側逆止機能(外気の袋内への侵入阻止)をより確実に発揮させることができる。
前記濡れ処理とは、例えば、PEやPP、EAV、アイオノマーなどからなる積層フィルムのシーラントフィルムの表面に、コロナ放電処理、UVオゾン処理、プラズマ処理、火炎処理等を好適例とする濡れ処理を施すことによって、フィルム表面の物理的な表面改質と極性官能基生成による化学的な表面改質との相乗効果により、フィルムの濡れ性を向上させる処理であり、この処理が施されたフィルム面を濡れ処理面(「濡れ強化面」とも言う)という。
そこで、発明者らは、この濡れ処理の作用効果について検証した。表1は、その結果を示すものである。即ち、LLDPE15/PET12/LLDPE20の3層の積層構造からなる積層フィルムを使ったフィルム状逆止弁の注出通路内面(シーラントフィルム内面)部分に、コロナ放電処理(放電条件:放電量81.7W・min/m)を行った後、該内面フィルムを、濡れ試薬を用いて濡れ張力を測定した。
その結果、濡れ処理前の濡れ張力は32N/mだったが、処理後では56N/mを示した。また、水、醤油、ポン酢、油についての接触角は、表に示すとおりとなり、液体の凝集力、即ち、表面張力(S)が弱くなり、いずれも接触角(θ)が明らかに小さくなり濡れ性が改善され、フィルム相互間には、上述した毛細管現象に併せて、常に必要な液体が途切れることなく存在させることができるようになり、長期に亘ってフレキシブル包装袋を使用しない場合においても、注出通路が乾くようなことがなく、逆止機能を確実に付与する上で、この処理の有効性が確められた。
Figure 0005470554
ところで、本発明のフィルム状逆止弁は、積層フィルムのほぼ幅方向(上下方向)に延びるフィルム弁開口部、即ち、注ぎ口縁部の長さは、その積層フィルムの積層数にかかわらず、5〜100mm程度とすることが好ましいが、ここにおける「ほぼ幅方向」は、先に述べたのと同様に、引裂き方向、ひいては、フィルム弁開口縁部の延在方向を、積層フィルムの幅方向に対して0〜15°の範囲の角度で傾斜させることがあることを考慮したものである。フィルム弁開口部の長さが5mm未満では、袋本体部の容積との関連において注出量が少なすぎる一方で、それが100mmを越えると注出方向の正確な特定が難しくなる。
本発明では、このようなフィルム状逆止弁の少なくとも開口部(注ぎ出)の外表面、すなわち、開口予定部を含むその近傍の外表面に、撥水性物質・撥油性物質の塗布層を設けることが好ましい。フィルム状逆止弁に対し、このような処理を施した場合には、包装袋を起立姿勢に復帰させて液状被包装物の注出を停止するに際しての、いわゆる液切れ性が高まり、液状被包装物の不測の垂れ落ちを有効に防止することができる。
上記撥水物質としては、シリコーンオイルやフッ素系樹脂、アクリル系樹脂もしくはアミド系樹脂からなる撥水コート剤を用い、撥油物質としては、シリコン樹脂やテフロン樹脂、シリコン変性アクリル樹脂などの撥油コート剤を用い、これらにウレタン系、アクリル系、エステル系、硝化綿系、アミド系、塩ビ系、ゴム系、スチレン系、オレフィン系、塩酸ビ系、セルロース系、フェノール系などの樹脂をバインダとして添加する。
本発明において、このような撥水・撥油塗布層を設ける理由は、例えば、液状被包装物が醤油や酒のような低粘度のものである場合、その液状被包装物の、食品へのかけ過ぎを防ぐべく、注出口形成後の、多くは平面形状が方形の包装袋をわずかずつ傾けてそれを注出すると、液状の被包装物が、包装袋のその傾動姿勢で、形成された注出口より高さレベルの低い、即ちそれの下方側に位置することとなる辺部分を伝わって意図しない個所に滴下することがしばしばあり、ときには、液状被包装物によって着衣を汚損することがあり、これを防止するためである。
これにより、液状被包装物が、油性のドレッシングやサラダオイル等の高粘度ものであっても、注出姿勢において、フィルム状逆止弁の先端部よりに開口した注出口より下方側に位置することとなる辺部分の外表面に撥油層を設けることにより、包装袋をわずかずつ傾けて、注出口から、液状被包装物の徐々なる注出を行うときの、その撥油層による液切れ性を向上させて、包装袋の下方側に位置することとなる辺部分の、オイル等による濡れを瞬時に防止して、粘稠状液体の、意図しない個所への伝い落ちのおそれを効果的に取り除くことができる。
本発明の場合、こうした撥水・撥油塗布層と、液状被包装物、例えば醤油やオイルとの接触角は100〜170°の範囲とすることが好適であり、これにより、注出口の近傍部分へのこうした液状物の回り込みを十分に防止して、それの注出の的確性をより一層高めることができる。
発明者らは、本発明のフィルム状逆止弁について、撥水層の有無が、液状被包装物の液切れ性に与える影響について検討した。つまり、15μm厚みの二軸延伸ナイロンベースフィルムと、50μm厚みのリニアローデンシティポリエチレンシーラント層との積層構造からなるフレキシブル包装袋のフィルム状逆止弁に対し、その開口予定部(注出口予定線部)から袋本体部側の下縁部に、コート剤としてシリコーンオイルを塗布した撥水層を設けたもの(発明適合例)と、撥水層を設けないもの(比較例)の2種類を用意した。そして、これら2種類のフレキシブル包装袋に、液状被包装物として、こいくちしょうゆ(キッコーマン株式会社製)を封入し、注出口を開封した状態で、傾動角度測定装置に固定して、50mm/minで徐々に傾けていき、液状被包装物が注出し始める角度(α)を測定した。
表2の結果より、注出開始角度は、撥水層の有無による影響がないが、液だれに関しては、比較例では、液状被包装物の注出開始角度において液だれが発生しているのに対し、発明適合例では、撥水層の存在により、液状被包装物の注出開始角度よりも傾動角度のきつい(小さい)状態まで液だれを抑制することができることが確認できている。
Figure 0005470554
さらに、本発明では、前記フィルム状逆止弁の下縁部の開口予定部(注出口)より基端部側に偏った位置に、尖塔状の液だれ防止用突起を設けても良い。この液だれ防止用突起によって、フィルム状逆止弁の注出口から発生した液だれは、包装袋の下方側に位置することとなる辺部分に達する前に、該突起部分を伝い落ちることになり、袋本体部分や、これを包囲する外容器内等が汚れることがなく、液だれの意図しない個所への伝い落ちるおそれを効果的に取り除くことができる。なお、この尖塔状の液だれ防止用突起の外表面は、前記撥水層または撥油層を設けることが好ましく、これにより該突起の液だれによる濡れを瞬時に防止することができる。
ところで、このフィルム状逆止弁は、例えば、楔形のフィルム状逆止弁の基端部外表面を、たとえば袋本体の側部上部の内表面に、融着接合するに当っては、該フィルム状逆止弁の内表面の(シーラント層どうし)相互融着を防止するために、注出通路につながる弁の基端部内側に、より高融点のまたは熱溶融しない離型シートを差し込むことや、逆止弁の内外表面のそれぞれのシーラント層の融着温度を、たとえば、材質の変更、あるいは押出しラミネート条件の変更等によって相互に異ならしめる方法により、または、逆止弁内表面のシーラント層フィルムの融点を、逆止弁外表面のシーラント層フィルムより高くすること等によって達成される。
例えば、内面側[裏材]シーラントフィルムとしては、ポリプロピレン、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂であって、望ましくは、外面側[表材]の融点よりも20℃程度高い融点をもち、[表材]とは袋本体のシーラント層のヒートシール温度よりも高い温度でヒートシール可能なフィルムを用いることが望ましい。これは、フィルム状逆止弁と袋本体とをヒートシールによって融着接合する際に、フィルム状逆止弁の内側面のシーラントフィルムどうしがヒートシールされることを防止するためである。
以上のようにして製造したフィルム状逆止弁は、逆止弁の外表面に位置することになるシーラント層、たとえば、無延伸の各種のポリエチレン層またはポリプロピレン層などを、軟質の袋本体の内表面層としての、好ましくは、同種のシーラント層に、たとえばヒートシールによって融着させることにより、逆止弁の基端部を、これも簡易、迅速に、しかも常に確実に袋本体に融着接合させることができ、これにより、袋本体に対する、その上部、角部もしくは頂部のいずれかの位置から外方へ突出するフィルム状逆止弁を具えたフレキシブル包装袋を製造することができる。
なお、本発明のフィルム状逆止弁は、袋本体からの突出長さX=30〜100mm程度、弁幅(切り裂き開口位置)Y=20〜80mm程度の大きさとすることが代表的なものである。
ここで、軟質の袋本体のフィルム構成は、それの外表面に位置するベースフィルム層および、内表面に位置するシーラント層のそれぞれを、フィルム状逆止弁と同種のベースフィルム層およびシーラント層とすることができ、また、それらの間に適宜の中間層を介装したものとすることもできる。また、好ましくは、軟質積層フィルムからなる袋本体の内表面を形成するシーラント層は、該逆止弁の最外層のシーラント層と同種の樹脂材料により構成する。これによれば、該逆止弁と袋本体との融着接合強度を十分に高めることができる。
例えば、袋本体を2層あるいは3層構造の積層フィルムにより形成する場合には、この積層フィルムのうちの一軸もしくは二軸延伸ベースフィルムは、厚みが8〜30μmのポリエチレンテレフタレートフィルム層(PET層)やナイロン樹脂フィルム層(NY層)、エチレンビニルアルコール(EVOH)などにて構成することが好ましい。また、この袋本体に用いる積層フィルムのシーラント層は、10〜60μmの厚みの無延伸のPE層またはPP層、EVA層、アイオノマー層、EVOH層などにより構成してもよい。
ところで、上記袋本体のベースフィルム層の厚みを8μm未満としたときは、水蒸気不透過性、ガスバリア性等が不足するおそれがあり、一方、30μmを超える厚みとしたときは、積層フィルムの曲げ強さが大きくなりすぎて、被包装物の注出の停止後の、逆止弁内表面どうしの密着性が損なわれるおそれがある。また、シーラント層については、それが10μm未満の厚さでは、十分なシール強度を確保できないおそれがあり、60μmを超えると、積層フィルムの曲げ強さが大きくなりすぎるおそれがある。この厚みが合計で補償される限り、このそれぞれのシーラント層を2層以上のフィルムで構成することも可能である。
また、かかる袋本体に用いる積層フィルムとしては、一定量の液状物を充填することから、腰の強いものが求められる。本発明においては、積層フィルムの単位幅(15mm)あたりの曲げ強さ、いいかえれば腰度は、前記のように特開2005−59958号公報の図10に開示されているような、腰度測定装置(ミニベア(株)ロードセル UL−100GR)を用いて測定した値が、40〜300mNとなる程度にすることが好ましい。腰度が40mN未満では、包装袋からの被包装物の注出に当たっての、それの注出方向等の安定性が劣る他、袋本体の腰弱感が否めず、包装袋それ自体の強度不足が顕在化するおそれがある。一方、300mNを超えると、積層フィルムの積層構造のいかんにかかわらず、フィルム状逆止弁を含めた全体の逆止機能が低下するおそれがある。
かかるフィルム構成を有する袋本体に対し、上述したフィルム状逆止弁を突設してなる上記フレキシブル包装袋としては、繰返し注出を行う場合に対応し、とくに再注出の場合であっても、最初の場合と同じように、円滑で制御された所定量の注ぎ出しができるようにするものが望ましい。
そのため、本発明では、袋本体の少なくとも一方の内面が凹凸構造となるように、即ち、表・裏の積層フィルムに対し、それぞれのシール(横シール、縦シール、弁と本体との接合シール、および弁の周縁部シール)部分を除く部分が、エンボス加工やブラスト加工、ローレット加工などの粗面化加工、ランダムなしわ加工、縦・横縞加工等のいずれかが施された凹凸構造を有するものを使用することが好ましい。なお、シール部分を除く理由は、シール部分に凹凸があるとシール不良を起こすからである。
袋本体に、このような凹凸構造を形成する理由は、フィルム状逆止弁の作用により、液状被包装物を注出した後は、該フィルム状逆止弁の逆止作用のみならず、袋本体内もまた、外気の侵入(逆流)が阻止され、液状物介在の下で、これらの積層フィルム間には毛細管作用が働いて強く密着した状態(逆止作用)となる。とくに、該袋本体内は、注出した液状物の相当量に当たる体積分だけ、フィルムの収縮ないしは袋本体の潰れ変形が発生して強く融着した状態になる。
その結果、充填した液状の被包装物を、該フィルム状逆止弁を通じて再度、注ぎ出そうとするとき、該袋本体内に十分な液量(液高さ)があるとき(水頭圧が大きいとき)は、スムースな注ぎ出しがある程度補償されるが、袋内液量が少なくなると、水頭圧が小さくなって、注ぎ出し圧力が前記積層フィルムどうしの、毛細管作用による密着力に負けて、円滑な注ぎ出しや液戻りが阻害されるようになる。
とくに、袋内液量が少なくなると、該袋本体にしわが生じてこれが堰止め作用を起し、液の流れが淀み、かつ液の流路が断たれて円滑な注ぎ出しが困難になるばかりか、この場合においてもし、袋胴部の加圧力を増大させれば、意図しない過大な量が吐出するおそれもあり、安定した注出を確保することができなくなる。
このような弊害を除くために、本発明では、袋本体の、少なくとも前記フィルム状逆止弁近傍における縦・横の範囲の毛細管作用に基づく積層フィルムの密着力を少し緩和し、液流の停滞、淀み、詰りを防止して、流路を確保するため、つまり、袋本体に生じている毛細管作用による密着力を、フィルム状逆止弁部分の逆止作用を低下させることなく緩和するため、袋本体の表裏となる積層フィルムの少なくとも一方に、好ましくは直線状、曲線状のストライプ模様からなる凹凸構造を付与することが好ましく、とくに袋本体部分において前記毛細管作用が弱くなるようにする。
積層フィルムに加える前記凹凸構造は、袋本体の表裏となる積層フィルム相互間の隙間(縦シール、横シール、弁と本体との接合シール部分を除く)、即ち、液層の厚みが、通常2〜5μm程度で上述した毛細管作用に基づく密着力を発生させているが、この積層フィルムの一方もしくは双方に、例えばエンボス加工をして、フィルム相互間の隙間が20μm以上、好ましくは30μm以上、より好ましくは50μm以上になるような凹凸を付与する。この場合、前記毛細管作用が小さくなり、積層フィルムどうしの密着力の低下をもたらす。その結果、少なくとも、この凹凸構造が付与された個所については、常に流路が確保された状態となり、袋内液量が極端に少なくなったような場合でも、液状の被包装物の常にスムースな注出が保障される。
上記の凹凸加工は、円柱や角柱等の凹凸模様を有するエンボスロール(特開2008−12669号公報)などを用いて規則的な模様の他、不規則な模様を付与する加工が好ましい。また、こうしたエンボス加工に代えて、ランダムなしわ加工、ブラスト加工、ローレット加工、縦、横のストライプ状の加工を施したものであってもよい。これらは、図5(a)のストライプ状、同図(b)のディンプル状凹凸構造断面図に例示するように、凹凸位置がずれて嵌まり合うようにして、20μm程度の一定の隙間Gが形成されるように組み合わせたものが望ましい。例えば、製袋機において、製袋前(縦シール前)または製袋後に熱ロール(70〜80℃)を使って成形する。
発明者らは、NY15蒸着面/PET12蒸着面/XA−HD40の積層フィルム構成になる袋本体内に、被包装物として醤油を、液中シール充填したフレキシブル包装袋を傾けて、液が出なくなったときの残量を測る実験を行った。その結果、表3に示すように、凹凸加工を施した積層フィルムを用いた場合に効果が顕著であることがわかった。なお、この実験では、袋本体のフィルム状逆止弁近傍に、ストライプ状凹凸模様を付与したもの、およびエンボス凹凸模様を付与したものと、凹凸加工を施していない袋本体とを比較した。その結果、本発明に適合する例では、残量が少なく、最後まで使い切ることができると共に、注ぎ出しが円滑にできることがわかった。
Figure 0005470554
また、上記の凹凸構造は、袋本体ならびにフィルム状逆止弁の注出通路、即ち、非シール部分の少なくとも一部、例えば、その形成位置が、少なくとも本体の弁取付け位置側の側縁に沿うその近傍からフィルム状逆止弁にかけて連続するように、または、フィルム状逆止弁に設けたストライプ状凹凸構造と、袋本体に設けたストライプ状凹凸構造をクロスさせて、実質的(結果的)に連続する態様で設けてもよい。このように、袋本体のみならず、フィルム状逆止弁にも凹凸構造を付与することで、再注出時の流路確保に有効である。なお、凹凸構造は、ストライプ状の凹凸模様を、面状もしくは島状の一部模様もしくは全面模様の形で施され、対向するシーラントフィルムを粗面化したものをドライラミネートもしくは共押出しした積層フィルムを用いることもできる。
ところで、袋本体内に液中シール充填した液状包装物の円滑な注ぎ出しを確保するための前記凹凸構造は、該袋本体から前記フィルム状逆止弁の切裂き開口位置までにかけて(好ましくは、切り裂き線から5mm以上離れた位置まで)直線状または曲線状で連続する一連の縦縞模様からなることが有効である。とくに、袋本体内の液状包装物が残り少ない場合でも、袋内底部からフィムル状逆止弁まで液状物の滞ることのない円滑なルートを形成させるようにするためには、該袋本体からフィルム状逆止弁の切裂き開口部までが連続していることが、フィルムの腰折れなどに起因する途中の堰止めを無くす上で有効である。
このように構成してなるフレキシブル包装袋に対する液状被包装物の充填包装は、少なくとも三層構造の積層フィルムよりなるフィルム状逆止弁の、袋本体への接合工程と同時に、または、その接合工程の後に行うことができ、この充填包装は、たとえば、液中シール充填を行うこと、または被包装物の充填の後に袋内脱気を行うこと等によって包装袋内から外気を十分に排除した状態にて行うことが、袋内被包装物の酸化等を防止する上で好ましく、また、フィルム状逆止弁に逆止機能をより確実に発揮させる上でも好ましい。
なお、「液中シール充填」とは、包装袋内に、空気や窒素等の気体が残留しないように、フィルムどうしをヒートシールする際に、袋内充填液体を、そのフィルム間に挟持した状態のもとで、その液体の一部を追い出し乍ら一緒にヒートシール(夾雑物シール)することをいうものとする。
ところで、本発明に係るフレキシブル包装袋内に充填した液状の液状被包装物の注出は、前記フィルム状逆止弁の先端部寄りに形成される開口予定部分(引き裂き誘導疵やノッチの付加位置より先端側)を手指によって切り取って開封することによって行う。即ち、逆止弁の開封後は、液状被包装物は、当該包装袋の本体部分を、フィルム状逆止弁の開口部(注ぎ口)が下方に向く姿勢となるように傾動させることにより所要の注出が行われる。
この場合、軟質の積層フィルムからなるフィルム状逆止弁は、液状被包装物の水頭圧の作用や手指によるフレキシブル包装袋の本体部分胴部を加圧することにより、液状物が常時介在することにより生ずる、フィルム−液体−フィルム間の分子間力が抗して表・裏の側に離隔して大きな隙間を作り、注出通路を開放し、該液状被包装物の注出を許容する態勢となる。
なお、フィルム状逆止弁の開口部(注ぎ口)を通じて、液状被包装物が注出する際、軟質の積層フィルムからなる袋本体部分は、液状被包装物の注出にもかかわらず、該逆止弁のもつセルフシール逆止機能(注ぎ出された液状被包装物に代わって、空気が袋本体内に侵入しないこと)により、外気の吸い込み(逆流)が行われないので、袋本体部分は、その注出体積分に相当する量だけ順次に収縮ないしは潰れ変形することになる。
このように、フレキシブル包装袋内に液状物を充填した後は、フィルム状逆止弁の開封下で、それを傾動させることによって、所要量の液状被包装物を袋内から注出され、そして、フィルム状逆止弁の開口部からの該液状被包装物の流出は、このフレキシブル包装袋を元の起立姿勢に復帰させることにより停止する。この流出の停止により、該フィルム状逆止弁の注出通路内および袋本体内の非液体部分は、袋本体内に充填されている液状物が毛細管現象によって、これらの部分が常時、液状被包装物が介在して濡れた状態になるため、その停止と同時に、フィルム状逆止弁のプラスチックフィルムの内面どうしは相互に強く密着し、したがって、フィルム状逆止弁の先端部に設けた前記開口部もまた、密着したままとなるため、外気の、袋本体部内への侵入を確実に阻止することができる。
このようなフィルム状逆止弁を備えるフレキシブル包装袋において、袋内に充填されている液状被包装物は、それの注出前はもちろん、注出中および注出後においても、外気から一切遮断されて保護されることになり、袋内液状被包装物の酸化、汚損等が有効に防止されることになる。
以上の説明から明らかなように、このフィルム状逆止弁を構成する2枚のプラスチックフィルムの内表面(注出通路)には、袋本体内に液状物が残っている限り、毛細管現象によって常時液状物が介在することになる。即ち、このフィルムどうしが密着することによる外側逆止機能は、フレキシブル包装袋の起立復帰によって、該フィルム状逆止弁が水頭圧の作用から解放されて製造時の元形状に復帰することに加え、フィルム状逆止弁内の液状被包装物の一部が、袋本体部内へ還流するに際して、減圧により液状被包装物によって濡れた表裏一対のフィルムどうしの内表面(注出通路)が、相互に吸着し合うこと等によって自動的に行われる(セルフシール)。そして、このような密着は、包装袋からの液状被包装物の注出に伴って、収縮ないしは潰れ変形された袋本体部分が、それに固有の弾性復元力に基づいて、その内部を減圧傾向へと作用するときに、より確実になる。
かくしてフィルム状逆止弁は、特別の操作等なしに、フレキシブル包装袋の起立復帰と、それの切り裂き開口である注出口の自動的な密着封止(セルフシール)により、優れたセルフシール逆止機能を発揮することになる。
この一方で、液状被包装物の再度の注出は、本発明のフレキシブル包装袋を、上述したようにして傾動させ、好ましくはさらに袋本体部の胴部を加圧することにより行うときに、より効果的となり、その停止も上述したように包装袋の起立復帰により行うことができる。そしてこの場合もまた、該フィルム状逆止弁は、自動的な密着封止に基いて、外気の侵入に対してすぐれた逆止機能を発揮する。
このような本発明のフレキシブル包装袋においては、フィルム状逆止弁の、外表面側のシーラント層を低融点のものとし、それの基端部を、袋本体の側部、多くは、上端部分の側部からの突出姿勢で、袋本体の内表面のシーラント層と融着接合させる一方、このフィルム状逆止弁の内表面側のシーラント層を高融点のものとすることにより、たとえば、フィルム状逆止弁の基端部分を、その逆止弁の、袋本体の内表面への融着接合に当って、本来のヒートシール強度の半分以下の接着強度で、相対的に低温で仮融着された状態とした仮封止部としたものが好ましい。
なおここで、低温仮融着による仮封止部は、完全な融着接合部を形成する場合に比して、ヒートシール手段の加熱温度、加圧力および加圧時間の少なくとも一つを低減させることによって実現することができる。
ところで、上記の仮封止部の形成に当っては、それの形成位置は、フィルム状逆止弁の、袋本体への融着接合位置に対応する位置とすることができることはもちろん、その対応位置よりも袋本体の内側に幾分偏った位置、もしくは逆に、その対応位置より、袋本体の外側に幾分偏った位置とすることもできる。そして、これらのいずれの場合にあっても、フィルム状逆止弁がそれ本来の機能を発揮するのに十分な長さ(5〜80mm程度)の、被包装物注出通路形成部分を、低温仮融着部分、即ち仮封止部の外側に残存させることが必要である。
またここで、上記仮封止部の形成に当っては、フィルム状逆止弁に、高融点シーラント層および低融点シーラント層を用いることが必要になるが、これらのシーラント層をともに、直鎖状低密度ポリエチレンを含む低密度ポリエチレンによって形成すること、または、高融点シーラント層を、中密度もしくは高密度ポリエチレンにより形成し、低融点シーラント層を低密度ポリエチレンにより形成することが好ましい。
なお、同一材質になるポリエチレンの、融点の高低の選択は、たとえば、シーラント層の積層に際する押出しラミネート条件等を相互に変化させることによって実現することも可能である。
なお、上記のように仮封止部を、フィルム状逆止弁の、袋本体への融着接合位置もしくはその近傍で、フィルム状逆止弁の基端部分に設けることにより、包装袋に充填包装した液状被包装物の、その仮封止部より逆止弁先端側への流入が確実に阻止されることになり、被包装物が、たとえ50〜100℃に加熱されたものであっても、フィルム状逆止弁の、被包装物注出通路の大部分が、その注出通路を膨らませる向きの永久変形から十分に保護されることになる。
従って、フィルム状逆止弁の、仮封止部より先端側の部分は、常にフィルム状逆止弁の機能を十分に発揮させることができ、包装袋からの被包装物の注出に際する、その袋本体内への外気の侵入を十分に防止することができ、また、被包装物の注出停止時のセルフシール逆止機能を確実に発揮させることができる。
ところで、袋内被包装物が常温近くまで冷却された後の、その被包装物の包装袋からの注出に当っては、包装袋に、たとえばそれの厚み方向に荷重を作用させて仮封止部の開封をもたらすとともに、フィルム状逆止弁の先端部分を破断もしくは切断除去して、注出開口を形成し、かかる状態で、包装袋を傾動させ、注出開口が下向きに向く注出姿勢とする。
なおここで、包装袋の、仮封止部を除く他の融着接合部は、たとえば、仮封止部の2倍以上の強度でヒートシールされていることから、その仮封止部を開封するに必要な荷重が作用しても、不測の破袋を生じることはない。
これがため、加熱された被包装物による膨満変形を受けていないフィルム状逆止弁部分は、袋内の被包装物の注出に伴う、袋本体内への外気の侵入を、袋本体の潰れ変形の下での、注出開口の、必要にして十分な開放下で有効に防止することができる。また、包装袋の、起立姿勢への復帰に基づく注出の停止に際し、被包装物に濡れたその注出弁部分の元形状への復帰によるセルフシール逆止機能によって袋本体内への外気の侵入を確実に阻止することができる。
ここで、高融点シーラント層および低融点シーラント層のそれぞれをともに低密度ポリエチレンにより形成した場合、または、高融点シーラント層を、中密度もしくは高密度ポリエチレンにより形成し、低融点シーラント層を低密度ポリエチレンにより形成した場合のいずれにおいても、所期した通りのシール強度を有する仮封止および、フィルム状逆止弁に所要の融着接合を簡単かつ容易に実現することができる。
また、前記仮封止部のヒートシール強度は、0.3〜3(N/15mm)、とりわけ、0.7〜1(N/15mm)の範囲とすることが、仮封止部12の不足の開封を防止する一方で、他の融着接合部に何の影響をも及ぼすことなく、その仮封止部を作為的に開封する上で好ましい。
すなわち、それが0.3(N/15mm)未満では、加熱状態の液状被包装物の、袋内容量等との関連の下で、仮封止部12に意図しない開封が起こるおそれがあり、一方で、3(N/15mm)を超えると、仮封止部を開封するのに要する荷重が、他の融着接合部等にも不測の影響(破袋や開封)を及ぼすおそれがある。
ところで、仮封止部の開封のための荷重は、50〜350(N)、とりわけ100〜200(N)の範囲とすることが、シール部を含む他の個所の破袋などを招かず、輸送や作業中に誤って開封しないようにするために必要である。
即ち、開封荷重が50(N)未満では、被包装物を充填包装した包装袋の積み重ねにより、下段側の包装袋で、仮封止部が開封されるおそれがあり、逆に、350(N)を越える場合やヒートシール強度が高すぎる場合、仮封止部を開封するに要する荷重によって、他の融着接合部が影響を受けるおそれがある。
本発明者らの研究によれば、例えば、軟質の袋本体(NY15/PET12/LLDPE40)の側部上部に、フィルム状逆止弁の基端部を、低温融着して仮封止してなるものにおいて、かかるフィルム状逆止弁のフィルムの積層構造を、直鎖状低密度ポリエチレン層(低融点シーラント層)/二軸延伸ポリエチレンテレフタレート層/直鎖状低密度ポリエチレン層(高融点シーラント層)とし、この積層フィルムを、ヒートシート温度をパラメータとして、シリンダ付きヒートシーラーにより、300kPaのシリンダ圧力で3秒間加熱加圧したときの仮封止部のヒートシール強度(N/15mm)を、引張試験機(TENSILON RTG−1300)にて、引張速度200mm/min、フィルム幅15mmの条件で測定した。その結果を表4に示す。
Figure 0005470554
また、本発明のフレキシブル包装袋においては、袋本体の下端に自立用底部を設け、自立できるようにしてもよい。この場合、袋本体部分は、自立用底部を除いた3方シール袋からなることが好ましく、その理由は、袋本体部分の左右側縁に縦シールを施すことで、袋本体内に液状被包装物を液中シール充填等によってガスレス充填した後も、その立ち姿を、上部についてはフラットな扁平形状に維持させることができ、即ち、フィルム状逆止弁を構成する表裏二枚のプラスチックフィルムのフラット性(平坦度)が高くなり、このことが、前記フィルム状逆止弁の逆止機能を保証し、液状被包装物を注出した後の逆止機能を確実に維持させる上で有効に作用するからである。
次に、本発明に係るフィルム状逆止弁およびフレキシブル包装袋について、図面に即して、具体的な形態を説明する。図1は、この発明に係るフレキシブル包装袋の一実施形態を示す図である。図中1は、フィルム状逆止弁を示し、このフィルム状逆止弁1は、袋本体2のたとえば側部の融着部で、それの内表面のシーラント層に、最外層のシーラント層、好ましくは、袋本体のシーラント層と同種の樹脂材料からなるシーラント層によって基端部を融着接合され、フレキシブル包装袋Aを構成する。
ここで、このフィルム状逆止弁1は、図2に、図1の弁幅方向のIII−III線に沿う拡大断面図で示すように、相互に融着される表裏のそれぞれの積層プラスチックフィルムが、厚みが大きい側の高腰度フィルム3と、厚みが小さい側の低腰度フィルム4とから構成されている。各フィルム3、4は、ベースフィルム層5、5’と、このベースフィルム層5、5’の内面側と外面側にそれぞれ積層したシーラント層6、6’、7、7’との三層構造としたところにおいて、互いに対向する内面側のシーラント層6、6’どうしを、基端辺を除く周辺部分で、所定の幅、たとえば0.5〜3mmの幅、好ましくは、1.0〜2.0mmの幅にわたって、好適にはヒートシールにより所要の形態の下に融着させることで、簡易迅速に、しかも、常に確実に製造することができ、かかるフィルム状逆止弁1は、その平坦形状にあり、それの基端部で、外面側のシーラント層7、7’を袋本体2の内表面にこれも好ましくはヒートシールによって融着させることで、その袋本体2に、常に適正にかつ確実に、しかも簡単に接合させることができる。
なお、低腰度フィルム4は、たとえば12μm程度の二軸延伸のPET層もしくはNY層からなるベースフィルム層5’と、そのベースフィルム層5’の両側の面にそれぞれ積層した、たとえば10〜15μm程度の無延伸のPE層もしくはPP層6’7’からなり、一方、高腰度フィルム3は、たとえば20μm程度の二軸延伸のPET層もしくはNY層からなるベースフィルム層と、そのベースフィルム層の両側の面にそれぞれ積層した、たとえば20〜30μm程度の無延伸のPE層もしくはPP層から構成される。
このように、フィルム状逆止弁1は、高腰度フィルム3と低腰度フィルム4との重ね合わせによって形成することにより、高腰度フィルム3が芯材となり、フィルム状逆止弁1が折れ曲がったり、歪んだりすることがなく、吐出方向の安定性(指向性)が向上すると共に、低腰度フィルム4が、高腰度フィルム3に張り付くようにして密着することで逆止機能を向上させることができる。
なお、積層フィルムの腰度は、積層フィルムの厚みに依存するものではなく、フィルム構成によるため、例えば、厚みが大きくても、腰度の小さい積層フィルムや、厚みが小さくても腰度の大きい積層フィルムが存在することになる。
なお、このように構成してなる本発明のフレキシブル包装袋Aは、上記のように液状の液状被包装物を液中シール充填等によって脱気包装して、袋内にガスが残留しないように充填することが、前記フィルム状逆止弁1のセルフシール逆止機能(外側逆止機能)をおこさせる上で必要となる。
そして、前記フィルム状逆止弁1には、図1では、その上縁部の切り裂き開口予定位置(注出口)に、Iノッチ、Vノッチ、Uノッチ、ベースノッチおよびダイヤカットなどの開封手段からなる引裂き誘導疵1aを設けることが好ましく、該引裂き誘導疵1aを開封して使用状態に供する。
また、このフィルム状逆止弁1は、その下縁部の開口予定部より基端部側に幾分寄った位置に、液だれ防止用の尖塔状の突起1bを設けることが好ましい。この突起1bは、フィルム状逆止弁1の開口端から発生した液だれが、該フィルム状逆止弁1の下縁部から袋本体部分2にまで伝い落ちるのを防ぐために設けられている。
このフィルム状逆止弁1の外面、即ちベースフィルム層5、5’の切り裂き予定線(開口予定部)から基端部側にかけての外表面には、図3にドット表示をもって例示するように、液だれを防止し、液切れを向上させるための撥水剤もしくは撥油剤の塗布層(撥水、撥油塗布層)10を、少なくとも開口端と下縁部に沿って設けることが好ましい。
これと共に、前記液だれ防止用の尖塔状の突起1bにも撥水剤もしくは撥油剤の塗布層10を設けることにより、液切れ性をさらに向上させることができる。
また、図2に示したように、フィルム状逆止弁1の内面側シーラント層6、6’の表面、とくに、注出通路8の形成部分の内表面は、コロナ放電処理等を施すことにより、濡れ性を強化した面、濡れ処理層11とすることが好ましく、これにより外側逆止機能を効果的に発揮することができる。
また、図4(a)〜(d)に一例として示したように、袋本体2の表裏いずれか少なくとも一方の積層フィルムの、フィルム状逆止弁1近傍に、縞状の加工や、エンボス加工、ブラスト加工などによって凹凸構造14を設けることが好ましく、これにより、袋本体2の、フィルム状逆止弁1近傍における毛細管作用に基づく積層フィルムの密着力が少し緩和され、被包装物の全体として円滑な流れを確保し、特に、被包装物が残り少なくなったときの注ぎ出しが最後まで容易にできるようになる。
一方で、上記凹凸構造14の採用によって、弁からの液状被包装物の過剰な注ぎ出しを招くことがあり、これを防止するために、本発明では、図1および図3に示すように、フィルム状逆止弁1の下縁部、とくに弁取付基端部側(袋本体側)に隣接した場所に、注出量制御用液溜め部1cを設け、吐出流が一時的に、この帯域で滞留するようにして、意図しない過剰な注ぎ出しを防止し、安定した定量吐出をもたらすようにすることが好ましい実施形態となる。
このような液溜め部1cの採用によって、袋本体2からフィルム状逆止弁1の注出通路に導かれた液状被包装物は、かかる液溜め部1cにて一時滞留し、吐出流速が一般的に低下した上で、切裂き開口部に向うようになるので、前記の過剰な流出を避けることができるようになる。
さらに、前記液溜め部1cの形成に併せ、さらに好ましくは、図3に示すように、該フィルム状逆止弁1の注出通路基端部のシール部分に、注出流の整流化を目的とした堰止め部なる突起(シールにて形成)15を設け、定量吐出が実現できるようにしてもよい。なお、この突起15は、湾曲するように形成することが好ましく、これにより堰止め効果による過剰な注ぎ出しが防止できると共に、突起15部分に被包装物の吐出流が集中してシールが剥離するおそれがなく、安定した定量吐出が可能になる。
また、図1に示すように、フィルム状逆止弁1の基端部分は、その逆止弁1の、袋本体2の内表面への融着接合に当って、本来のヒートシール強度の半分以下の接着強度で仮融着することで仮封止部12が形成されている。これによれば、フレキシブル包装袋A内に充填包装された液状被包装物の、その仮封止部12より逆止弁1先端側への流入が確実に阻止されることになり、被包装物が、たとえ50〜100℃に加熱されたものであっても、フィルム状逆止弁1の注出通路8が膨らませる向きに永久変形することがなく、常にフィルム状逆止弁1の機能を十分に発揮させることができる。なお、被包装物のフレキシブル包装袋Aからの注出に当っては、包装袋Aに、たとえばそれの厚み方向に荷重を作用させることにより仮封止部12を開封する。
このように構成してなる図1に示すフレキシブル包装袋Aの使用は、前記フィルム状逆止弁1の引き裂き誘導疵1aの引裂き開封によってフィルム状逆止弁1を開口、すなわち注ぎ口を確保した状態で、このフレキシブル包装袋A内の液状被包装物を、たとえば、フレキシブル包装袋Aを傾動させる姿勢で、該フィルム状逆止弁1に設けた注ぎ口からの外気の侵入、吸入なしに注出させることによって行う。この一方で、そのフレキシブル包装袋Aの起立復帰に基づく注出の停止に伴って、そのフィルム状逆止弁1の内表面を、その内表面を濡らす液状被包装物からなる液膜の介在下で全体にわたって密着させることで、外気の、該フレキシブル包装袋A内への侵入を確実に阻止する。
A フレキシブル包装袋
S スタンディングパウチ
1 フィルム状逆止弁
1a 引裂き誘導疵
1b 液だれ防止用突起
1c 液溜め部
2 袋本体部分
高腰度フィルム
低腰度フィルム
5、5’ ベースフィム層
6、6’ 内側シーラント層
7、7’ 外側シーラント層
8 注出通路
9 底部
10 撥水・撥油塗布層
11 濡れ処理層
12 仮融着部
13 ガス溜め空間
14 凹凸構造
15 堰き止め部
さらに、液状被包装物の注出の停止後は、フィルム状逆止弁1の注出通路内面の、逆止機能による密着封止をもって、フレキシブル包装袋A内への外気の侵入が阻止され、該フレキシブル包装袋A内に残留する液状被包装物の、外気による汚損、酸化等を十分に阻止することができる。
このようにして所要量の液状被包装物を注出した後は、フィルム状逆止弁1の先端部に設けた注ぎ口は、自動的に密着閉止し、その状態の下でフレキシブル包装袋Aを起立姿勢に復帰させる。
ここで、フィルム状逆止弁1の、この逆止機能をもたらす密着閉止は、前にも述べたように、フィルム状逆止弁1が水頭圧から解放されて、表裏の積層フィルム3、4が、フィルム状逆止弁1の製造時の原形状に復帰すること、およびフィルム状逆止弁1内の液状被包装物が袋本体部分2へ還流するに際して表裏の積層フィルム3、4が減圧雰囲気におかれることにより、軟質な積層フィルム3、4の内表面(シーラント層6、6’)どうしが、それらの面に付着する液状被包装物の介在下で、フィルム状逆止弁1幅の全体にわたって、該液状被包装物の毛細管作用によって相互に負圧吸着されること等によって行われることになる。
そして、このような外側のセルフシール逆止機能に基づく表裏の積層フィルム3、4どうしの密着閉止は、潰れ変形等した袋本体部分2が、固有の弾性復元力に基いて袋本体部分2内を減圧傾向とする場合に、より確実に維持されることになる。
なお、フレキシブル包装袋A内に、液状の被包装物を、液中シール充填によって袋内にガスが侵入しないように充填することが、フィルム状逆止弁1のセルフシール逆止作用を起させる上で必要であるが、時として、注出時にごく少量の外気が侵入することがある他、被包装物自体が内蔵するガスが、事後的に袋内に発生することがある。こうしたガスを、位置的に貯留し、フィルム状逆止弁1からの逆止注出を確実にするため、袋本体2の上部、即ちフィルム状逆止弁1よりも上の位置にある上部横シール部分に、必要に応じて図3に示すようなガス溜め空間13を、袋幅方向に1〜複数個設けることが好ましい。
また、図6に示す本発明のフレキシブル包装袋Aの他の実施形態は、袋本体2下端部(底部)に、船底形底部9を有した自立型のスタンディングパウチSであり、底部9を除いた3方をヒートシール等により融着接合してなる自立袋であることが好ましく、これにより、袋本体内に液状被包装物をガスレス充填した後も、左右側縁に施した縦シールいよって立ち姿が上部はフラットな扁平形状で、下部が筒状形状を維持することができるため、フィルム状逆止弁1を構成する表裏2枚の積層フィルム3、4のフラット性(平坦度)が高く、セルフシール逆止機能を有効に発揮することができる。
また、船底形底部の両角部は、図6に示すようにいずれも面取りし、底部が下向き凸のゆるい湾曲状を呈するようにすることが好ましく、これにより、底部の両角部が床面に接地して当たることがなく、自立型のスタンディングパウチSの下端全体が床面につくようになって自立安定した立ち姿を確保することができる。
なお、自立型のスタンディングパウチSの船底形底部の両角部は、曲率半径Rが8mm以上になるように面取りすることが好ましく、より好ましくは、8mm〜20mmの範囲とする。そして、とくに前記曲率半径Rは、スタンディングパウチSの底部に向って次第に小さくなるように形づくることが好ましい。なお、曲率半径Rを8mm以上としたのは、8mm未満の場合には、船底形底部の両角部が床面に当たって、スタンディングパウチSの中央部が浮き上がってしまうためである。
本発明の技術は、一般的な液状物充填包装体、とりわけ液体注出口を備える詰め替え用包装袋として利用可能である。
A フレキシブル包装袋
S スタンディングパウチ
1 フィルム状逆止弁
1a 引裂き誘導疵
1b 液だれ防止用突起
1c 液溜め部
2 袋本体部分
3 肥厚フィルム
4 薄厚フィルム
5、5’ ベースフィム層
6、6’ 内側シーラント層
7、7’ 外側シーラント層
8 注出通路
9 底部
10 撥水・撥油塗布層
11 濡れ処理層
12 仮融着部
13 ガス溜め空間
14 凹凸構造
15 堰き止め部

Claims (12)

  1. 袋本体の側部に突設されるものであって、その袋本体に接続される基端部および、液状物の注出通路を形造る中央部分を除き、外周部分が相互に融着されてなり、かつ、重なり合う積層フィルム相互間の微小隙間に液状物が介在することで外気の袋内への侵入を阻止する外側逆止機能を生ずる、液状物充填用軟質包装袋のための平坦なフィルム状逆止弁において、
    重ね合せる前記積層フィルム双は、腰異なるものどうしであり、
    腰度の大きい側の積層フィルムは、腰度40mN以上600mN以下、他方の腰度の小さい側の積層フィルムは、腰度10mN以上40mN未満であることを特徴とする液状物注出用フィルム状逆止弁。
  2. 前記積層フィルムのいずれか少なくとも一方の内面は、濡れ処理された濡れ強化面であることを特徴とする請求項1に記載の液状物注出用フィルム状逆止弁。
  3. 前記濡れ強化面は、コロナ放電処理面、UVオゾン処理面、プラズマ処理面および火炎処理面のいずれか1以上の処理面からなることを特徴とする請求項1または2に記載の液状物注出用フィルム状逆止弁。
  4. 前記濡れ強化面は、腰度の大きい側の積層フィルムに施されていることを特徴とする請求項2または3に記載の液状物注出用フィルム状逆止弁。
  5. 前記濡れ強化面は、腰度の小さい側の積層フィルムに施されていることを特徴とする請求項2または3に記載の液状物注出用フィルム状逆止弁。
  6. 袋本体に突設される前記フィルム状逆止弁先端部近傍に開口のための引裂き誘導線を有するとともに、外表面は、少なくともその先端部に設けられた開口予定位置を含むその近傍に、撥水物質または撥油物質の塗布層を有することを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の液状物注出用フィルム状逆止弁。
  7. 液状物充填用包装袋の袋本体に対し、請求項1〜のいずれか1項に記載の平坦なフィルム状逆止弁の基端部を、袋本体の側部、角部または頂部のいずれかの内表面に融着接合して突出させてなるフレキシブル包装袋。
  8. 前記フィルム状逆止弁の基端部は、対面するシーラント層を低融点のプラスチックフィルムによって低温融着され、注出通路内表面が仮封止されていることを特徴とする請求項のフレキシブル包装袋。
  9. 前記包装袋の袋本体は、表裏いずれか一方の積層フィルムの非シール部分が、少なくとも上部または、前記フィルム状逆止弁側の側縁近傍において、凹凸構造を有する積層フィルムによって構成されていることを特徴とする請求項またはに記載のフレキシブル包装袋。
  10. 積層フィルムに形成した前記凹凸構造は、表裏の積層フィルムの一方もしくは両方に、エンボス加工、ブラスト加工、ローレット加工、しわ加工、縦・横縞加工を、面状、縞状、ストライプ状に施して、一部模様もしくは全面模様として形成されたものであることを特徴とする請求項に記載のフレキシブル包装袋。
  11. 前記包装袋の袋本体の下端に自立用底部を設けてなることを特徴とする請求項10のいずれか1項に記載のフレキシブル包装袋。
  12. 前記包装袋の袋本体は、前記自立用底部を除いた3方シール自立袋であり、立ち姿が上部は扁平で、下部が筒状であることを特徴とする請求項11に記載のフレキシブル包装袋。
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