本発明による蓄電装置の実施形態を図面を参照して説明する。
本実施の形態は、電動車両、とくに電気自動車の車載電源装置を構成する蓄電装置に本発明を適用した例である。電気自動車は、内燃機関であるエンジンと電動機とを車両の駆動源として備えたハイブリッド電気自動車、および電動機を車両の唯一の駆動源とする純正電気自動車等を含む。
本明細書では、蓄電装置は、電池モジュールと制御装置で構成され、電池モジュールは、複数の電池ブロックで構成され、複数の電池ブロックのそれぞれは、複数の電池セルを接続した組電池をケーシングに収容して構成されるものとして説明する。
図1を参照して、実施の形態の蓄電装置を含む車載電機システム(電動機駆動システム)の構成について説明する。
−車載電機システム−
車載電機システムは、モータジェネレータ10、インバータ装置20、車両全体を制御する車両コントローラ30、および車載電源装置を構成する蓄電装置等を備える。蓄電装置は、複数の蓄電池を備えており、たとえば、複数のリチウムイオン電池セルを備えたリチウムイオンバッテリ装置1000として構成される。
(モータジェネレータ)
モータジェネレータ10は、三相交流同期機である。モータジェネレータ10は、車両の力行時および内燃機関であるエンジンを始動する時など、回転動力が必要な運転モードでは、モータ駆動し、発生した回転動力を車輪およびエンジンなどの被駆動体に供給する。この場合、車載電機システムは、モータジェネレータ10に、リチウムイオンバッテリ装置1000から電力変換装置であるインバータ装置20を介して、直流電力を三相交流電力に変換して供給する。
モータジェネレータ10は、車両の減速時や制動時などの回生時およびリチウムイオンバッテリ装置1000の充電が必要な時など、発電が必要な運転モードでは、車輪あるいはエンジンからの駆動力によって駆動し、ジェネレータとして三相交流電力を発生させる。この場合、車載電機システムは、モータジェネレータ10からの三相交流電力をインバータ装置20を介して直流電力に変換し、リチウムイオンバッテリ装置1000に供給する。これにより、リチウムイオンバッテリ装置1000には電力が蓄積される。
(インバータ装置20)
インバータ装置20は、前述した電力変換、すなわち直流電力から三相交流電力への変換、および三相交流電力から直流電力への変換をスイッチング半導体素子の作動(オン・オフ)によって制御する電子回路装置である。インバータ装置20は、パワーモジュール21、ドライバ回路22、モータコントローラ23を備えている。
パワーモジュール21は、6つのスイッチング半導体素子を備え、この6つのスイッチング半導体素子のスイッチング動作(オン・オフ)によって、前述した電力変換を行う電力変換回路である。
スイッチング半導体素子には、たとえば、金属酸化膜半導体型電界効果トランジスタ(MOSFET)あるいは絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ(IGBT)を用いる。パワーモジュール21をMOSFETから構成する場合は、寄生ダイオードがドレイン電極とソース電極との間に電気的に逆並列に接続されている。一方、パワーモジュール21をIGBTから構成する場合には、別途、ダイオードをコレクタ電極とエミッタ電極との間に電気的に逆並列に接続する必要がある。
パワーモジュール21は、2つ(上アームおよび下アーム)のスイッチング半導体素子を電気的に直列に接続した直列回路(一相分のアーム)を三相分、電気的に並列に接続した三相ブリッジ回路により構成されている。
パワーモジュール21には直流正極側モジュール端子(図示省略)および直流負極側モジュール端子(図示省略)が設けられ、各上アームにおける下アームへの接続側の反対側は、直流正極側モジュール端子に、各下アームにおける上アームへの接続側の反対側は直流負極側モジュール端子にそれぞれ電気的に接続されている。直流正極側モジュール端子および直流負極側モジュール端子は、直流正極側外部端子、直流負極側外部端子にそれぞれ電気的に接続されている。直流正極側外部端子および直流負極側外部端子は、リチウムイオンバッテリ装置1000との間において直流電力を授受するための電源側端子であり、リチウムイオンバッテリ装置1000から延びる電源ケーブル610,620が電気的に接続されている。
さらに、パワーモジュール21には交流側モジュール端子が設けられ、交流側モジュール端子は交流側外部端子に電気的に接続されている。交流側外部端子は、モータジェネレータ10との間において三相交流電力を授受するための負荷側端子であり、モータジェネレータ10から延びる負荷ケーブルが電気的に接続されている。
(モータコントローラ)
モータコントローラ23は、パワーモジュール21を構成する6つのスイッチング半導体素子のスイッチング動作を制御するための電子回路装置である。モータコントローラ23は、上位制御装置、たとえば車両全体を制御する車両コントローラ30から出力されたトルク指令に基づいて、6つのスイッチング半導体素子に対するスイッチング動作指令信号(たとえばPWM(パルス幅変調信号))を生成する。この生成された指令信号はドライバ回路22に出力される。
ドライバ回路22は、モータコントローラ23から出力されたスイッチング動作指令信号に基づいて、パワーモジュール21を構成する6つのスイッチング半導体素子に対する駆動信号を生成する。この駆動信号は、パワーモジュール21を構成する6つのスイッチング半導体素子のゲート電極に出力される。これにより、パワーモジュール21を構成する6つのスイッチング半導体素子は、ドライバ回路22から出力された駆動信号に基づいてスイッチング(オン・オフ)が制御される。
蓄電装置、すなわちリチウムイオンバッテリ装置1000は、電気エネルギーを蓄積および放出(直流電力を充放電)するための電池モジュール100、および電池モジュール100の状態を管理および制御するための制御装置900を備えている。
電池モジュール100は、2つの電池ブロック(あるいは電池パック)、すなわち電気的に直列に接続される高電位側電池ブロック100aおよび低電位側電池ブロック100bから構成されている。
高電位側電池ブロック100aの負極側(低電位側)と低電位側電池ブロック100bの正極側(高電位側)との間にはSD(サービスディスコネクト)スイッチ700が設けられ、SDスイッチ700には高電位側電池ブロック100aおよび低電位側電池ブロック100bから延びる電源ケーブル630,640が電気的に接続されている。SDスイッチ700はリチウムイオンバッテリ装置1000の保守、点検の時の安全性を確保するために設けられた安全装置であり、スイッチとヒューズとを電気的に直列に接続した電気回路から構成され、サービスマンによって保守、点検時に操作される。
セルコントローラ200は、バッテリコントローラ300からの指令によって複数のリチウムイオン電池セルの状態の管理および制御を行う、いわゆるバッテリコントローラ300の手足であり、複数の集積回路(IC)によって構成されている。複数のリチウムイオン電池セルの状態の管理および制御には、各リチウムイオン電池セルの電圧の計測、各リチウムイオン電池セルの蓄電量の調整などがある。各集積回路は、対応する複数のリチウムイオン電池セルが決められており、対応する複数のリチウムイオン電池セルに対して状態の管理および制御を行う。
セルコントローラ200を構成する集積回路の電源には、対応する複数のリチウムイオン電池セルを用いている。このため、セルコントローラ200と電池モジュール100の両者は接続線800を介して電気的に接続されている。各集積回路には、対応する複数のリチウムイオン電池セルの最高電位の電圧が接続線800を介して印加されている。
高電位側電池ブロック100aの正極端子とインバータ装置20の直流正極側外部端子とは電源ケーブル610を介して電気的に接続され、高電位側電池ブロック100aの負極端子とSDスイッチ700とは電源ケーブル630を介して電気的に接続されている。低電位側電池ブロック100bの負極端子とインバータ装置20の直流負極側外部端子とは電源ケーブル620を介して電気的に接続され、低電位側電池ブロック100bの正極端子とSDスイッチ700とは電源ケーブル640を介して電気的に接続されている。
電源ケーブル610、620の途中にはジャンクションボックス400、負極側メインリレー412が設けられている。ジャンクションボックス400の内部には、正極側メインリレー411およびプリチャージ回路420から構成されたリレー機構が収納されている。リレー機構は、電池モジュール100とインバータ装置20との間を電気的に導通および遮断するための開閉部であり、車載電機システムの起動時には電池モジュール100とインバータ装置20との間を導通、車載電機システムの停止時および異常時には電池モジュール100とインバータ装置20との間を遮断する。このように、リチウムイオンバッテリ装置1000とインバータ装置20との間をリレー機構によって制御することにより、車載電機システムの高い安全性を確保できる。
リレー機構はモータコントローラ23により駆動、制御される。モータコントローラ23は、車載電機システムの起動時には、リチウムイオンバッテリ装置1000の起動完了の通知をバッテリコントローラ300から受けることにより、リレー機構に対して導通の指令信号を出力してリレー機構を駆動させる。また、モータコントローラ23は、車載電機システムの停止時にはイグニションキースイッチからオフの出力信号を受けることにより、また、車載電機システムの異常時には車両コントローラからの異常信号を受けることにより、リレー機構に対して遮断の指令信号を出力してリレー機構を駆動させる。
正極側メインリレー411は電源ケーブル610の途中に設けられ、リチウムイオンバッテリ装置1000の正極側とインバータ装置20の正極側との間の電気的な接続を制御する。負極側メインリレー412は電源ケーブル620の途中に設けられ、リチウムイオンバッテリ装置1000の負極側とインバータ装置20の負極側との間の電気的な接続を制御する。
プリチャージ回路420は、プリチャージリレー421および抵抗422を電気的に直列に接続した直列回路であり、正極側メインリレー411に電気的に並列に接続されている。
車載電機システムの起動時にあたっては、まず、負極側メインリレー412が投入され、この後に、プリチャージリレー421が投入される。これにより、リチウムイオンバッテリ装置1000から供給された電流が抵抗422によって制限された後、インバータ搭載の平滑コンデンサに供給されて充電される。平滑コンデンサが所定の電圧まで充電された後、正極側メインリレー411が投入され、プリチャージリレー421が開放される。これにより、リチウムイオンバッテリ装置1000から正極側メインリレー411を介してインバータ装置20に主電流が供給される。
ジャンクションボックス400の内部には電流センサ430が収納されている。電流センサ430は、リチウムイオンバッテリ装置1000からインバータ装置20に供給される電流を検出するために設けられたものである。電流センサ430の出力線はバッテリコントローラ300に電気的に接続されている。バッテリコントローラ300は、電流センサ430から出力された信号に基づいて、リチウムイオンバッテリ装置1000からインバータ装置20に供給された電流を検出する。この電流検出情報は、バッテリコントローラ300からモータコントローラ23や車両コントローラ30などに通知される。
電流センサ430はジャンクションボックス400の外部に設置しても構わない。また、リチウムイオンバッテリ装置1000の電流の検出部位は、正極側メインリレー411のインバータ装置20側のみならず、正極側メインリレー411の電池モジュール100側であってもよい。
なお、ジャンクションボックス400の内部にリチウムイオンバッテリ装置1000の電圧を検出するための電圧センサを収納してもよい。バッテリコントローラ300は、電圧センサの出力信号に基づいてリチウムイオンバッテリ装置1000の全体の電圧を検出する。この電圧検出情報はモータコントローラ23や車両コントローラ30に通知される。リチウムイオンバッテリ装置1000の電圧の検出部位は、リレー機構の電池モジュール100側あるいはインバータ装置20側のどちらでもよい。
−リチウムイオンバッテリ装置−
次に、図2〜図5を用いて、リチウムイオンバッテリ装置1000の構成について説明する。
リチウムイオンバッテリ装置1000は大きく分けて、電池モジュール100および制御装置900の2つのユニットから構成されている。
(電池モジュール)
以下、電池モジュール100の構成について説明する。
前述したように、電池モジュール100は、高電位側電池ブロック100aおよび低電位側電池ブロック100bから構成され、2つの電池ブロック100a、100bは、電気的に直列に接続されている。なお、高電位側電池ブロック100aと低電位側電池ブロック100bは、同様の構成を有している。
このため、図4および図5には、高電位側電池ブロック100aおよび低電位側電池ブロック100bを代表して、高電位側電池ブロック100aのみを示し、低電位側電池ブロック100bの詳細な構成については説明を省略する。
図2および図3に示すように、高電位側電池ブロック100aおよび低電位側電池ブロック100bは、各ブロックの長手方向同士が平行となるように互いに隣接して並列に配置される。高電位側電池ブロック100aおよび低電位側電池ブロック100bは、モジュールベース101上に並置され、ボルトなどの固定手段により固定されている。モジュールベース101は、短手方向に三分割された剛性のある薄肉の金属板(たとえば鉄板)により構成され、車両に固定されている。すなわち、モジュールベース101は、短手方向の両端部と中央部に配置された3つの部材から構成されている。
このような構成により、モジュールベース101の面を各電池ブロック100a,100bの下面と面一にでき、電池モジュール100の高さ方向の寸法の低減に寄与する。
高電位側電池ブロック100aおよび低電位側電池ブロック100bの上部は、後述する制御装置900の筐体910によって固定されている。
図2〜図5、特に図4および図5に示すように、高電位側電池ブロック100aは大きく分けて、ケーシング110(筐体、ハウジングあるいはパッケージと呼ぶ場合もある)および組電池120から構成されている。組電池120はケーシング110の内部に収納されて保持されている。
図5に示すように、ケーシング110は、略六面体状のブロック筐体であり、具体的には、入口流路形成板111、出口流路形成板118、入口側案内板112(図3参照)、出口側案内板113、およびサイドプレートと呼ばれる2つの側板130、131の6つの部材の結合体から構成されている。ケーシング110の内部空間は、組電池120が収納される収納室として機能するとともに、組電池120を冷却するための冷却媒体(冷却空気)が流通する冷却通路として機能する。
なお、以下の説明において、ケーシング110の長さが最も長い方向、および、冷却媒体入口114(図3参照)側から冷却媒体出口115側に至る方向を、長手方向と定義する。また、ケーシング110の長手方向に対向する2つの側面(入口側案内板112および出口側案内板113)とは異なる2つの側面(2つの側板130,131)が対向する方向、リチウムイオン電池セル140の中心軸方向(正極端子および負極端子の2つの電極が対向する方向)、および2つのリチウムイオン電池セル140を電気的に接続するバスバー150と2つのリチウムイオン電池セル140とが対向する方向を、短手方向と定義する。さらに、入口流路形成板111と出口流路形成板118とが対向する方向を、電池モジュール100の設置方向に関係なく高さ方向と定義する。
図5に示すように、入口流路形成板111はケーシング110の上面を形成する長方形状の平板である。出口流路形成板118はケーシング110の底面を形成する平板である。入口流路形成板111および出口流路形成板118は互いの長手方向端部の位置が長手方向にずれている。入口流路形成板111および出口流路形成板118は、剛性のある薄肉の金属板から構成されている。
入口側案内板112は、ケーシング110の長手方向に対向する側面の一方側を形成する板状部材である(図3参照)。図5に示すように、出口側案内板113は、ケーシング110の長手方向に対向する側面の他方側を形成する板状部材である。入口側案内板112および出口側案内板113は、剛性のある薄肉の金属板から構成されている。
図3に示すように、入口流路形成板111と入口側案内板112との間には、冷却媒体である冷却空気のケーシング110内部への導入口を構成する冷却媒体入口114が形成されている。冷却媒体入口114には、冷却空気を冷却媒体入口114まで導くための冷却媒体入口ダクト116が設けられている。前述したように、入口流路形成板111と出口流路形成板118とは互いにずれて配置されており、ケーシング110の入口側端部はステップ状に形成されている(図2〜図5参照)。図5に示すように、出口流路形成板118と出口側案内板113との間には、冷却空気のケーシング110内部からの導出口を構成する冷却媒体出口115が形成されている。冷却媒体出口115には、冷却空気を冷却媒体出口115から外部に導くための冷却媒体出口ダクト117が設けられている。
冷却媒体入口114および冷却媒体出口115は高さ方向(入口流路形成板111と出口流路形成板118との対向方向)に位置がずれている。すなわち冷却媒体入口114は入口流路形成板111側に位置し、冷却媒体出口115は出口流路形成板118側に位置している。
電池ブロックの組立性を考慮して、入口流路形成板111、出口側案内板113、冷却媒体入口114および冷却媒体入口ダクト116は一体に形成され、出口流路形成板118、入口側案内板112、冷却媒体出口115および冷却媒体出口ダクト117は一体に形成されている。
一体に形成された入口流路形成板111、出口側案内板113、冷却媒体入口114、冷却媒体入口ダクト116、および、同じく一体に形成された出口流路形成板118、入口側案内板112、冷却媒体出口115、冷却媒体出口ダクト117は、金属を金型鋳造して作られており、板金の曲げ加工により作られる筐体に比べて厚みを有するため、外部からの荷重や衝撃に対してより高い強度を持つと共に、ねじ穴や加工面の寸法精度も板金加工に比べて高いため他の部品との組み立て性もよい。
入口流路形成板111、出口流路形成板118、入口側案内板112、出口側案内板113、冷却媒体入口114および冷却媒体出口115と、側板130、131との結合はネジあるいはボルト若しくはリベットなどの固定手段(図示省略)により行われる。それらの結合部材間には、ケーシング110の内部の気密性を高め、冷却媒体入口114からケーシング110の内部に導入された冷却媒体が外部に漏れずに冷却媒体出口115から排出されるように、シール部材(図示省略)が設けられている。
図5に示すように、側板130,131は、ケーシング110の短手方向に対向する2つの側面を形成する平板状部材であり、電気的な絶縁性を有するPBTなどの樹脂からなる成形体である。側板130,131の肉厚は入口流路形成板111、出口流路形成板118、入口側案内板112および出口側案内板113の肉厚よりも厚い。側板130,131の詳細な構成については、後述する。
側板130、131の外側、すなわち組電池120の収納室と反対側には、サイドカバ
ーと呼ばれる覆い部材160が設けられている。図5には、側板130の外側の覆い部材160のみが図示されているが、側板131の外側にも覆い部材160が設置される。覆い部材160は、ボルトあるいはリベットなどの固定手段(図示省略)によって側板130に固定されている。
覆い部材160は、鉄あるいはアルミニウムなどの金属板をプレス加工した平板、またはPBTなどの樹脂を成形して形成した平板であり、側板130の平面形状とほぼ同じ形状に構成されている。覆い部材160は、後述する側板130の貫通孔132に対応する部位を含む領域が側板130とは反対側に一様に膨らんでいる。
これにより、覆い部材160と側板130との間には空間が形成される。この空間は、リチウムイオン電池セル140から噴出したミスト状のガスが、冷却通路を流通する冷却媒体とは分離して放出されるガス排出通路として機能する。
ガス排出通路の開口部は、ガスに含まれる電解液などの液体の排出を考慮して側板130の下部に形成されている。具体的には、側板130の冷却媒体入口114側、かつ出口流路形成板118側の側板130に形成されている。ガス排出通路の先端部分は管状に形成されており、ガス排出通路から排出されたガスを外部に導くためのガス排出管139(図3参照)が接続されている。
このように、ケーシング110は、対向する一対の側板130,131と、一対の側板130,131の間で上面を形成する入口流路形成板111と、一対の側板130,131の間で下面を形成する出口流路形成板118とを有し、これら部材により複数のリチウムイオン電池セル140の収容空間が形成されている(図5参照)。
(組電池)
組電池120は複数のリチウムイオン電池セル140の集合体(リチウムイオン電池セル群)である。複数のリチウムイオン電池セル140は、ケーシング110の内部に形成された収納室に整列して収納されていると共に、短手方向から側板130,131により挟持され、バスバーと呼ばれる複数の導電部材との接合によって電気的に直列に接続されている。
リチウムイオン電池セル140は、円柱形状の構造体であり、電解液が注入された電池ケースの内部に電池素子および安全弁等の構成部品が収納されて構成されている。
図5に示すように、本実施形態では、円筒形のリチウムイオン電池セル140を16本、ケーシング110の内部に整列配置することにより組電池120を構成している。具体的には、リチウムイオン電池セル140の中心軸が短手方向に沿って延在するように横倒しした状態で、8本のリチウムイオン電池セル140を並列に配置して第1電池セル列121を構成する。また、第1電池セル列121と同様に8本のリチウムイオン電池セル140を配置して第2電池セル列122を構成する。組電池120は、第1電池セル列121と第2電池セル列122を高さ方向に積層(段積みあるいは俵積み)することによって構成される。
すなわち、組電池120は、リチウムイオン電池セル140を長手方向に8列、高さ方向に2段あるいは2層並べて構成される。
第1電池セル列121および第2電池セル列122は互いに長手方向にずれている。すなわち第1電池セル列121は、第2電池セル列122よりも入口流路形成板111側であって、冷却媒体入口114側にずれて配置されている。一方、第2電池セル列122は、第1電池セル列121よりも出口流路形成板118側であって、冷却媒体出口115側にずれて配置されている。
たとえば、第1電池セル列121の最も冷却媒体出口115側に位置するリチウムイオン電池セル140の中心軸の長手方向の位置が、第2電池セル列122の最も冷却媒体出口115側に位置するリチウムイオン電池セル140の中心軸と、それに隣接するリチウムイオン電池セル140の中心軸との間の中間位置になるように、第1電池セル列121および第2電池セル列122が長手方向にずれて配置されている。
第1電池セル列121を構成するリチウムイオン電池セル140は端子の向きが交互に逆向きになるように並置されている。第2電池セル列122を構成するリチウムイオン電池セル140も同様に、端子の向きが交互に逆向きになるように並置されている。
ただし、第1電池セル列121を構成するリチウムイオン電池セル140の端子の冷却媒体入口114側から冷却媒体出口115側への並び順は、第2電池セル列122を構成するリチウムイオン電池セル140の端子の並び順と異なる。すなわち、第1電池セル列121は、側板130側に面するリチウムイオン電池セル140の端子が、冷却媒体入口114側から冷却媒体出口115側に向かって負極端子、正極端子、負極端子、…、正極端子の順に配置されている。一方、第2電池セル列122は、側板130側に面するリチウムイオン電池セル140の端子が、冷却媒体入口114側から冷却媒体出口115側に向かって正極端子、負極端子、正極端子、…、負極端子の順に配置されている。
このように、第1電池セル列121と第2電池セル列122とを長手方向にずらして配置することにより、組電池120の高さ方向の寸法を低くでき、高電位側電池ブロック100aを高さ方向に小型化することができる。
(側板)
次に、組電池120を両側から挟持する側板130,131の構成について詳細に説明する。ここでは、理解を容易にするため、一方の側板130の構成のみを説明するが、他方の側板131も基本的には側板130と同様に構成されている。
ただし、電池モジュール側正極外部端子180および電池モジュール側負極外部端子181は、側板130のみに設けられている。電池モジュール側正極外部端子180は、組電池120の最高電位の正極端子に電気的に接続された導電部材であり、電池モジュール側負極外部端子181は、組電池120の最低電位の負極端子に電気的に接続された導電部材である。電池モジュール側正負極外部端子180,181は、側板130の上面に突出するように長手方向に並んで設けられている。電池モジュール側正負極外部端子180,181には、電池モジュール100とは別に予めサブアセンブリとして製作されたターミナルブロック500に設けた正極側接続端子580および負極側接続端子581がそれぞれ接続される。正極側接続端子580および負極側接続端子581は、ターミナルブロック500に取り付けられる電源ケーブル610,630(図1参照)と電気的に接続されている。ターミナルブロック500の構造については、後述する。
図5に示すように、略長方形の平板形状に形成された側板130には、短手方向に貫通する16つの円形の貫通孔132が形成されている。貫通孔132は、16本のリチウムイオン電池セル140の電極位置に対応して開口するように配置されている。したがって、組電池120がケーシング110内に収納されると、側板130の各貫通孔132は、対応するリチウムイオン電池セル140一端側の端子面で塞がれ、側板131側の貫通孔132は、リチウムイオン電池セル140の他端側の端子面で塞がれる。
側板130において、組電池120の収納室を形成する内壁面とは反対側の外壁面170には、貫通孔132の周囲を部分的に取り囲むように突起部135が形成されている。さらに、外壁面170には、貫通孔132同士の間に、リチウムイオン電池セル140と接続されるバスバー150を配置するため、固定ガイド130aが複数形成されている。突起部135および固定ガイド130aは、それぞれ外壁面170から突出し、覆い部材160とバスバー150との接触を防止するように構成されている。これにより、覆い部材160がたとえば鉄等の金属製の平板から構成されている場合に、覆い部材160とバスバー150との間の短絡を防止することができる。
図4および図5に示すように、側板130の上面、すなわち入口流路形成板111側の面には、接続端子810が設けられている。接続端子810は、側板130と同じ成形材料によって側板130に一体に成形され、側板130の上面において冷却媒体入口114側に配置されている。図6に示すように、各接続端子810は、電圧検出導体805の信号取り出し端子である。接続端子810にはコネクタが設けられ、コネクタを介して接続線800が接続され、図2および図3に示すように、接続線800の先端のコネクタが制御装置900のコネクタ912に接続されている。
図6を参照して電圧検出導体805を説明する。
電圧検出導体805の形状は、側板130を小型化して電池モジュール100全体を小型化するように、側板130の利用可能なスペースを効率的に利用するように設計されている。また、複数のリチウムイオン電池セル140は、バスバー150を介して直列に接続されているため、電圧検出導体805が接続される複数のバスバー150の間で電位差が発生することとなる。そこで、電圧検出導体805は、隣接する検出線806間の電位差ができるだけ小さくなるように検出線806の配置が決定されている。なお、符号800aが電圧検出導体805の先端部であり、この先端部800aがバスバー150に溶接される。
電圧検出導体805は、プレス加工等により所定の形状に成形された後、たとえば側板130と同様の樹脂からなる樹脂部807によって形状が固定される。具体的には、樹脂部807によって、複数の検出線806をそれぞれ分離した状態にするとともに、各検出線806の形状を保つように固定する。電圧検出導体805は、たとえば、樹脂部807によって複数の部位で検出線806を固定した2つのサブユニットから構成されている。図6に示すように、それぞれのサブユニットにはそれぞれ外部へ信号を取り出す接続端子810が設けられている。
樹脂部807によって固定された電圧検出導体805は、たとえば側板130を構成する樹脂によるインサートモールド成形により側板130と一体化して形成される。これにより、図5に示すように、接続端子810が側板130,131の上面に突設される。検出線806同士はそれぞれ分離して固定されているので、電圧検出導体805が側板130と一体化されると、検出線806の短絡は実質的に発生しない。
このように側板130に樹脂成形された電圧検出導体805は、図2および図3に示すように、その接続端子810から接続線800により電圧検出用コネクタ912に接続されている。電圧検出用コネクタ912は、制御装置900の短手方向両端部にそれぞれ設置されている。高電位側電池ブロック100aに設けられた接続端子810に接続された接続線800は、制御装置900の高電位側電池ブロック100aの上方に配置されたコネクタ912に接続される。一方、低電位側電池ブロック100bに設けられた接続端子810に接続された接続線800は、制御装置900の低電位側電池ブロック100bの上方に配置されたコネクタ912に接続される。
接続線800の長さは、配線ミスを防止するために、各接続端子810と対応するコネクタ912までの距離に相当するように設定されている。たとえば、高電位側電池ブロック100aの接続端子810に接続された接続線800は、低電位側電池ブロック100b用のコネクタ912まで到達しないような短さに設定されている。図6に示す電流遮断部820は、ヒューズワイヤを備え、制御装置900や接続線800の異常時に溶断して組電池120からの電流を遮断し、製品を保護する機能を有している。
図2および図3に示すように、接続線800は、多数のハーネスを絶縁性保護部材で部分的に束ねられ、後述するように、ハーネスガード811で多数のハーネスの引き回し経路が規制、すなわち案内されているとともに、上方からの負荷に対して保護されている。
制御装置900は、電池モジュール100の上に載置されている。具体的には、制御装置900は高電位側電池ブロック100aおよび低電位側電池ブロック100bの上に跨って載置された電子回路装置であり、筐体910、および筐体910の内部に収納された一つの回路基板を備えている。
筐体910は、扁平な直方体状の金属製箱体であり、高電位側電池ブロック100aおよび低電位側電池ブロック100bに対して、ボルトあるいはネジなどの固定手段により固定されている。これにより、高電位側電池ブロック100aおよび低電位側電池ブロック100bは互いの短手方向の端部同士が制御装置900によって接続されて固定される。すなわち、制御装置900は、電池モジュール100における支持、補強部材として機能し、電池モジュール100の強度を向上することができる。
回路基板の上面には複数の電子部品(図示省略)や複数のコネクタ911,912,913が半田により接続されており、コネクタとしては、電圧検出用コネクタ912、温度検出用コネクタ913、および外部接続用コネクタ911等がある。
電圧検出用コネクタ912には32本のリチウムイオン電池セル140に電気的に接続された接続線800のコネクタが結合され、温度検出用コネクタ913には、電池モジュール100の内部に配置された複数の温度センサ(図示省略)の信号線のコネクタ(図示省略)が結合される。
外部接続用コネクタ911には、バッテリコントローラ300に駆動電源を供給するための電源線、イグニションキースイッチのオンオフ信号を入力するための信号線、および車両コントローラ30やモータコントローラ23とCAN通信するための通信線などのコネクタ(図示省略)が結合される。
高電位側電池ブロック100aに設けられた接続端子810に接続された接続線800は、制御装置900の高電位側電池ブロック100aの上方に配置されたコネクタ912に接続される。一方、低電位側電池ブロック100bに設けられた接続端子810に接続された接続線800は、制御装置900の低電位側電池ブロック100bの上方に配置されたコネクタ912に接続される。
前述したように低電位側電池ブロック100bは高電位側電池ブロック100aと全く同じ構造を有している。
図5に示すように、入口流路形成板111には制御装置900を取り付けるために使用されるメネジ110a,110b,110cと、後述するターミナルブロック500を取り付けるために使用されるメネジ110dが形成されている。
図2および図3に示すように、入口流路形成板111には、制御装置900よりも冷却媒体入口114寄りに、一対のハーネスガード811が取り付けられている。ハーネスガード811は、電圧検出用コネクタ912から接続端子810に至る配線(接続線)800を保持固定するもので、合成樹脂によって階段状に2段階に屈曲した開放溝状に形成されている。
ハーネスガード811は、高電位側電池ブロック100aにおいては、メネジ110aに螺合されるビスによって入口流路形成板111の上面に固定され、低電位側電池ブロック100aにおいては、メネジ110bに螺合されるビスによって入口流路形成板111の上面に固定されている。高電位側電池ブロック100aに使用するハーネスガード811と、低電位側電池ブロック100bに使用するハーネスガード811は勝手違いに製作されている。
図2に示すように、ハーネスガード811の最上面である支持平面811P、制御装置900の最上面である支持平面900P、ターミナルブロック500の最上面である支持平面500P、および、冷却媒体入口ダクト116側の端部において入口流路形成板111から立設している4本の支持突起890の最上面である支持平面890Pは、略同一の高さに設定されている。すなわち、本実施形態による蓄電装置においては、入口流路形成板111の上方において、一定レベルの支持平面811P,900P,500Pおよび890Pが形成されている。これらの支持平面は、その全面で上方からの負荷を分散して負担し、蓄電装置の強度、耐衝撃性を向上する。
(ターミナルブロック)
本実施の形態に係るターミナルブロック500について図7〜図11を参照して詳しく説明する。図7および図8はターミナルブロック500の斜視図であり、図7はターミナルブロック500に電源ケーブル610,630が取り付けられる前の状態を示す図であり、図8はターミナルブロック500に電源ケーブル610,630が取り付けられた後の状態を示す図である。図7および図8は、カバー590が開いた状態のターミナルブロック500を示している。図9は、電源ケーブルのケーブル端子560が接続される端子接続部50P(50N)を示す斜視図である。図10(a)はターミナルブロック500の平面図、図10(b)は図10(a)のA−A線に沿って切断して示す図である。
図7および図8に示すように、ターミナルブロック500は、電池モジュール側正負極外部端子180,181(図5参照)および電源ケーブル610,630のケーブル端子560(図8参照)が接続される一対の端子接続部50P,50Nと、ケーシング110上面のメネジ110d(図5参照)に対する取付部であるカラー510とが樹脂製のターミナルブロック本体にインサート成形されたブロックとして予め製作されている。
図8に示すように、電源ケーブル610,630の一端には、取付孔が形成された平板状のケーブル端子560が設けられている。電源ケーブル610,630は、導体が絶縁体とポリ塩化ビニル等の保護被覆とで覆われて、ある程度の剛性を有し、平面視L字状に屈曲された状態でターミナルブロック500に配設されている。
ターミナルブロック本体は、矩形箱状のターミナルケース520と、カバー590とを有している。図10も参照して説明すると、ターミナルケース520は、端子接続部50P,50Nが配設される第1ブロック520aと、端子接続部50P,50Nに接続される電源ケーブル610,630(図8参照)が配設される第2ブロック520bとを有している。図7および図8に示すように、カバー590は、ターミナルケース520の第1ブロック520aに対して開閉可能に装着されている。
第1ブロック520aは、端子接続部50P,50Nが配設される平板状の底板と、端子接続部50P,50Nを囲むように底板に立設される囲い壁521とを有している。図8に示すように、端子接続部50P,50Nは、それぞれ導電板531とボルト540とナット546とを有している。
端子接続部50Pの導電板531は、図9に示すように、矩形平板状の基部535を有し、基部535には、曲げ加工により基部535の一辺(外縁)から立ち上がるように、正極側接続端子580が形成されている。負極側接続端子581も同様に、端子接続部50Nの導電板531から延在している。端子接続部50P,50Nのそれぞれの導電板531から延在する正極側接続端子580および負極側接続端子581は、前述した組電池120の電池モジュール側正極外部端子180および電池モジュール側負極外部端子181(図5参照)にそれぞれ接続される。
ボルト540は、図9に示すように、導電板531の基部535の上面中央から上方に向かって突出されている。図8に示すように、ボルト540には電源ケーブル610,630のケーブル端子560が挿通され、ボルト540にナット546が装着されることで、ケーブル端子560が端子接続部50P,50Nに固定される。
図7、図8および図10に示すように、正負極側接続端子580,581の近傍における第1ブロック520aの底板には、ケーシング110の側板130から上方に突出する正負極外部端子180,181(図5参照)が下方から挿通される開口524が設けられている。
第2ブロック520bは、電源ケーブル610,630が載置される平板状の載置板と、電源ケーブル610,630のそれぞれの両側近傍において電源ケーブル610,630の回転を規制するために載置板に立設されるケーブル規制板526とを有している。
図2に示すように、ターミナルブロック500は、カバー590を閉じた状態では略直方体状であり、ケーシング110の上面に設置されており、制御装置900よりも冷却媒体出口115側に、短手方向に並列して配置されている。
電池モジュール側正極外部端子180および電池モジュール側負極外部端子181(図5参照)は、第1ブロック520aの底板に設けられた開口524(図7および図8参照)から上方に向かって挿通され、ターミナルブロック500に設けられている正極側接続端子580および負極側接続端子581にそれぞれ溶接される。その際、端子の当接面同士を接触させ、その外側を電極で挟む。そのため、図7および図8に示すように、第1ブロック520aの囲い壁521には、端子の当接面と直交する方向に端子同士を溶接するための作業用の開口としての切り欠き529が4箇所設けられ、電極が入るスペースが確保されている。
なお、正負極側接続端子580,581とボルト540とは、正負極側接続端子580,581側の溶接用作業スペースを確保するように配置されている。
カバー590は、図7および図8に示すように、第1ブロック520aの上方を覆う天板と、第1ブロック520aの切り欠き529を塞ぐ塞ぎ板592とを有している。カバー590は、図2に示すように、端子接続後、第1ブロック520aの内部に異物が入らないように閉じられて、第1ブロック520aの上方や4箇所の切り欠き529を塞いでいる。
カバー590は、閉じられたときに第1ブロック520aの囲い壁521によって支持され、正負極外部端子180,181と、正負極側接続端子580,581との接続部を上方からの負荷に対して保護している。
本実施の形態に係るターミナルブロック500の端子接続部50P,50Nには、電源ケーブル610,630の着脱時におけるボルト540の引き抜きおよび回転を防止するための爪532が設けられている。爪532は、図9に示すように、曲げ加工により、正負極側接続端子580,581が形成された辺に直交する辺のそれぞれから立ち上がるように形成されている。
図10に示すように、ボルト540は、基部535の裏面から挿入され、基部535に頭部540aがかしめ固定されることにより、導電板531と一体となっている。導電板531はインサート成形により第1ブロック520aに一体とされており、基部535は、基部535の上面と、ターミナルブロック本体の底板の上面とがほぼ同一面上に位置するように、ターミナルブロック本体の底板に埋め込まれている。爪532は、第1ブロック520aの底板から上方に突出するように形成された囲い壁521の下部に設けられる保持部522の内部に埋め込まれている。爪532が保持部522によって覆われているため、爪532の外面は保持部522の内面に係合している。
図11は、爪532と保持部522との係合部を模式的に示した断面図である。図11(a)は側面断面図であり、図11(b)は平面断面図(図11(a)のB−B断面図)である。図11(a)に示すように、ボルト540を上方に引っ張る力が加わった場合、保持部522が爪532の上面532tや爪532の根元に相当する基部535の縁部近傍上面532bを押さえつけるように保持するため、ボルト540が引き抜かれることが防止される。なお、爪532の外周の側面532sと保持部522の内側面との付着力も引き抜き防止に寄与する。
図11(b)に示すように、ボルト540を回転させる方向に力が加わった場合、保持部522の内側面が爪532の外周の側面532sを押さえつけるように保持するため、ボルト540の回転が防止される。
以上説明した本実施の形態によれば、以下のような作用効果を奏することができる。
(1)電源ケーブルのケーブル端子560が接続されるボルト540が導電板531の基部535に固着され、導電板531から突出する爪532がインサート成形によりターミナルブロック本体に埋め込まれている。これにより、電源ケーブルのケーブル端子560をボルト540に挿通し、ナット546を締め付けることによって、ケーブル端子560を端子接続部50P,50Nに固定する際や、ナット546を取り外す際に、ボルト540が引き抜かれることが防止されるとともに、ボルト540の回転が防止される。よって、電源ケーブルの端子着脱時におけるボルト540の脱落を防止したターミナルブロック500を備えた蓄電装置を提供することができる。
(2)ボルト540および爪532は、基部535の上面から上方に突出している。ボルト540と爪532の突出方向を同じ方向にすることで、ターミナルブロック500の高さ方向寸法を抑えることができる。たとえば、爪532をボルト540と異なる方向である下方に突出させた場合、爪532の埋め込み部分だけターミナルブロック500の高さ寸法が長くなるが、本実施の形態では、爪532がボルト540と平行に設けられており、底板から上方に突出するように形成された囲い壁521の根元に設けられる保持部522内に爪532が埋め込まれているため、爪532を設けることによりターミナルブロック500の高さ方向寸法が長くなることはない。
(3)導電板531の基部535の上面と、ターミナルブロック本体の底板の上面とがほぼ同一面上に位置するように、導電板531の基部535をインサート成形によりターミナルブロック本体の底板に埋め込んだ。これにより、導電板531をターミナルブロック本体の底板の上面に載置して固定した場合に比べて、高さ方向に裕度を持たせることができる。蓄電装置は、ターミナルブロック500の最上面である支持平面500Pと、その他の電装部品を保護する部材の最上面である支持平面811P,890Pと、制御装置900の最上面である支持平面900Pとが同じ平面状に位置するように設定されており、高さ方向に制約がある。したがって、ターミナルブロック500の高さ方向を短くするとともに、他の保護部材および制御装置900の高さ方向を短くすることができる場合は、蓄電装置をコンパクトにすることができる。
(4)ターミナルブロック本体内に配設される電源ケーブルの両側近傍にケーブル規制板526が設けられているため、ナット546を締め付ける際に、電源ケーブルが回転したとしても、電源ケーブルがケーブル規制板526に接触して電源ケーブルの回転が規制される。したがって、電源ケーブルを押さえつけておく必要がなく、容易に電源ケーブルのケーブル端子560を端子接続部50P,50Nに取り付けることができる。
(5)電池モジュール側正負極外部端子180,181と、正負極側接続端子580,581との当接面と直交する方向に作業用開口としての切り欠き529が設けられているため、容易に両側から電極で端子を挟んで端子同士を溶接することができる。
(6)ターミナルケース520に開閉可能なカバー590を設けた。これにより、カバー590を開いて、電源ケーブルを端子接続部50P,50Nに着脱することができる。電源ケーブルを取り付けた後、第1ブロック520aの内部空間を覆うようにカバー590を閉じることで、ターミナルケース520内に埃や水滴等の異物が侵入することを防いで、漏電や短絡を防止することができる。さらに、切り欠き529から指が入ることも防止されるため、安全が確保される。
(7)爪532、正極側接続端子580および負極側接続端子581は、導電板531を曲げることによって形成することができるため、容易に端子接続部50P,50Nを製作することができる。
次のような変形も本発明の範囲内であり、変形例の一つ、もしくは複数を前述の実施形態と組み合わせることも可能である。
(1)本発明は、ターミナルケース520において電源ケーブルが載置される第2ブロック520bを設けることに限定されない。第1ブロック520aのみでターミナルケース520を構成してもよい。この場合、電源ケーブルは、ターミナルケース520とは別に設けられるケーブル保持部材により保持される。なお。ケーブル保持部材を設置することなく、電源ケーブルを電池ブロック100a,100bのケーシング110の上面に載置させてもよい。
(2)前述の実施の形態では、基部535にボルト540の頭部540aをかしめ固定したが、本発明は、これに限定されない。溶接によりボルト540の端部を基部535に固着してもよい。
(3)本発明は、導電板531の基部535をターミナルブロック本体の底板に埋め込む場合に限定されない。ターミナルブロック本体の底板の上面に基部535を載置させてもよい。なお、基部535の少なくとも一部を底板に埋め込むようにインサート成形することで、埋め込んだ深さだけ高さ方向に裕度を持たせることができるため好適である。
(4)前述の実施形態では、ボルト540と爪532が基部535の上面から上方に突出しているが、本発明は、これに限定されない。たとえば、ボルト540を基部535の上面から上方に突出させ、爪532を基部535の下面から下方に突出させてもよい。
(5)前述の実施形態では、爪532を曲げ加工により形成したが、本発明は、これに限定されない。たとえば、爪532を溶接により導電板531に固着させてもよい。
(6)前述の実施形態では、端子接続部50P,50Nの抜け防止部材として、導電板531に平板状の一対の爪532を設けたが、本発明は、これに限定されない。端子接続部50P,50Nの抜けを防止する種々の形状の抜け止め部材を導電板531に1個あるいは3個以上設けることができる。
(7)前述の実施形態では、ターミナルブロック500と、接続端子810と制御装置900を接続する接続線800を構成するハーネスを保護するハーネスガード811と、接続端子810の周辺にケーシング110から立設された支持突起890とを保護部材として設けたが、これら保護部材はいずれか1つ、あるいはいずれか2つの組み合わせでもよい。
(8)1つの電池ブロックで構成される蓄電装置、3つ以上の電池ブロックで構成される蓄電装置にも本発明を適用できる。
(9)前述の実施形態では、16本のリチウムイオン電池セル140を接続した2つの電池ブロック100a,100bから構成される電池モジュール100を例示した。しかし、本発明は前述した電池モジュール100の構成や接続方式(直列、並列)に限定されるものではなく、リチウムイオン電池セル140の本数や電池セル列の本数や配列、方向を変えたものに関しても適用される。
(10)リチウムイオン電池セル140として円筒形電池を例示したが、本発明は、これに限定されるものではない。たとえば、リチウムイオン電池セル140の形状が、角型蓄電池やラミネート封止の電池に関しても適用され、また、リチウムイオン電池以外に、ニッケル水素電池などの他の電池に関しても適用される。
(11)蓄電装置は、他の電動車両、たとえばハイブリッド電車などの鉄道車両、バスなどの乗合自動車、トラックなどの貨物自動車、バッテリ式フォークリフトトラックなどの産業車両などの車両用電源装置に利用することもできる。
(12)蓄電装置は、コンピュータシステムやサーバシステムなどに用いられる無停電電源装置、自家用発電設備に用いられる電源装置など、電動車両以外の電源装置を構成する蓄電装置に適用しても構わない。
本発明の特徴を損なわない限り、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で考えられるその他の形態についても、本発明の範囲内に含まれる。