JP5470194B2 - 荷電粒子線装置 - Google Patents

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本発明は、荷電粒子線装置に関し、特に試料表面の電位を計測し、試料表面の電位を制御することでフォーカスを合わせることを特徴とする。
電子線やイオンビームなどの荷電粒子線を用いて試料を観察,測定,加工を行う装置としては、走査型電子顕微鏡(SEM)や収束イオンビーム装置(FIB)がある。これらの装置は、加速した荷電粒子線を対物レンズや試料に印加するリターディング電圧を調整することで荷電粒子線を試料上で収束させ、さらに荷電粒子線をラスター走査し、試料から発生する二次電子を荷電粒子線のラスター走査に同期して検出することにより、試料の表面形状を反映した2次元信号(画像)を取得する。近年の荷電粒子線装置は、鮮明な画像を得るためにオートフォーカス機構を搭載している。
試料に大きな帯電が付着し、かつその帯電量が未知である場合、その帯電量に応じて焦点位置が変化する。オートフォーカスにおいて、画像を取得するための対物レンズの励磁もしくはリターディング電圧の範囲を大きくする必要があり、オートフォーカスの時間が長くなるという問題があった。
また、試料表面に帯電が発生している状態において対物レンズを用いてフォーカスを合わせた場合において、帯電から生じた焦点ずれを対物レンズの励磁電流を調整し、その対物レンズの励磁電流を用いて倍率計算を行うと、実際の倍率とは異なる値を算出する。
試料表面の帯電が原因で発生する上記問題、つまり、オートフォーカス時間が長くなる問題,倍率ずれが発生する問題を解決するための方法としては、たとえば特許文献1のように試料を試料室に搬送する過程で静電容量計を用いて試料の帯電量を計測したり、特許文献2のように試料室内に静電容量計を組み込んで帯電量を計測したりする手法が提案されている。静電容量計によって計測した試料表面電位を打ち消すようにリターディング電圧を制御し、電子線などの荷電粒子を所望のエネルギーで試料に照射させる。
また、特許文献3には、試料の帯電による像障害を解消する走査形電子顕微鏡が提案されている。
WO2003/007330 特開2001−52642号公報 WO99/46798
先に述べた静電容量計を用いて試料表面の電位を計測する方法は、表面電位を高速に計測できる反面、局所的な試料表面の電位を計測することはできない。
また、特許文献2で帯電量を測定するためには、試料を静電容量計の部分まで一度移動させなければならず、そのためスループットが低下する。静電容量計を制御するための回路なども新たに必要になる。
特許文献3に関しては、一次電子線照射によりウェーハから二次電子が放出している状態において、二次電子検出器の出力が最大となるように試料表面の電位を制御している。しかし、試料上の帯電量が大きい場合にこの方法を利用するためには、一次電子線を試料に入射させるために一次電子線の加速電圧を大きくしなければならない。これは、低加速電圧で測定したいという近年の要求を満たさない。さらにこの発明は、二次電子が放出している状態において、二次電子検出器の出力が最大になる点を求めているため、ビームによる試料の損傷も大きく、最大点を同定することも難しい。
さらに、試料によって従来から知られているウェーハ帯電とは異なる帯電現象が存在することが分かった。近年の半導体製造過程では、リターディング電圧を印加しない状態においては表面帯電が無いにもかかわらず、リターディング電圧を印加すると表面帯電が発生するような試料が存在することが分かった。原因は不明であるが、観察する場所の電界もしくは磁界の影響で、表面電位が変化しているものと推察されている。この問題を解決するためには、観察条件に近い電界や磁界の状態において表面電位を計測する必要がある。
本発明の目的は、試料にリターディング電圧を印加した状態で、精度良く高速に表面電位を計測する手段を提供することである。
本発明の具体的な方法は以下のとおりである。
荷電粒子線を減速するようにリターディング電圧を高め、荷電粒子線のエネルギーが0[eV]付近にまで低下すると、試料に到達した荷電粒子線のエネルギーでは二次電子を発生させることはできなくなる。この性質を利用し、試料に到達する荷電粒子線のエネルギーを0[eV]にするようなリターディング電圧を測定し、試料表面の電位を推定する。
具体的には、荷電粒子線が試料表面に到達しないようなリターディング電圧と、荷電粒子線が試料表面に到達するリターディング電圧の間で、二次電子検出器の出力が最小になるリターディング電圧を求め、その電圧から試料の表面電位を求める。その後、求めた表面電位を打ち消すようにリターディング電圧を調整することで、荷電粒子線を所望のエネルギーで試料に照射させる。
以上のような構成によれば、試料表面の電位を計測しその電位を打ち消すことで、荷電粒子線が所望のエネルギーで試料に照射することができる。そのため、倍率誤差が発生せず、正しい倍率で測定を行うことができる。
また、表面電位が補正されるため、オートフォーカスの実行時間を短縮することが可能となる。これにより、パターン寸法を計測または検査する荷電粒子線装置において、スループットを向上させることができる。
さらに、荷電粒子線を用いているため、微細な領域での表面帯電を測定することができる。
なお、本発明の他の目的、及び他の具体的な構成については、以下発明の実施の形態の欄で詳細に説明する。
実施例1および実施例2のシステム構成。 リターディング電圧と検出器の出力の関係(試料表面電位がない場合)。 リターディング電圧と検出器の出力の関係(試料表面電位が−0.2[kV]の場合)。 表面電位計測フロー。 表面電位の計算方法。 二次電子放出効率によるVr−I特性の変化。 ウェーハにおける大域帯電。 ウェーハ表面電位の計測位置。 ウェーハ表面電位計測と表面電位の補正手順。 ウェーハ表面電位計測方法。 表面電位計測の指定画面。
以下、本発明の実施形態の走査型電子顕微鏡について図面を用いて説明する。
図1に実施例の概略を示す。走査型電子顕微鏡(SEM)の装置の中で、電子源1から発生した電子は、一次電子加速電源13から電圧が印加された一次電子加速電極2によって加速されたのちに、試料8に印加されたリターディング電圧により減速され、かつ対物レンズ7により収束されて試料上に照射される。試料に電子線が照射されると、試料から二次電子が発生し、二次電子はリターディング電圧により電子銃側に加速される。二次電子は反射板5にあたり反射板で発生した二次電子が二次電子検出器10で補足され、二次電子検出器に入射する電子の量に応じて二次電子検出器の出力が変化する。
ここで、リターディング電圧を用いた電子線走査について簡単に説明する。
走査電子顕微鏡や、収束イオンビーム装置においては、電子線によって回路パターンの素子を損傷させることなく、荷電粒子線を試料上で収束させるために、半導体ウェーハに電圧を印加して電子線の照射エネルギー強度を制御している。この電圧の印加をリターディング電圧と呼ぶ。
走査型電子顕微鏡は、走査コイル6により電子ビームを試料上で走査し、走査に同期して二次電子検出器の出力を画像の濃淡に変換してディスプレーに表示することで、試料表面の形状を二次元画像として表示する。
本発明においては、リターディング電圧を制御し、そのときの二次電子検出器10を検出し、制御コンピュータ11で表面電位を求め、表面電位推定部12において表面電位を推定し、試料に到達する電子線のエネルギーを所望のエネルギーになるようにリターディング電圧を制御する。
鮮明な画像を得るためには、荷電粒子線を試料表面で収束させなければならないが、試料表面の高さの違いや、試料表面に付着した電荷のため、荷電粒子線を試料表面で収束させるのは難しい。このため、近年の荷電粒子線装置は、オートフォーカス機構を搭載している。多くのオートフォーカス機構は、対物レンズの励磁もしくはリターディング電圧を調整することで、荷電粒子線が焦点を結ぶ位置を複数回変え、それぞれの焦点位置で画像を取り込む。次に、それぞれの焦点位置での画像に対して、焦点評価用フィルタ(微分,2次微分,ソーベル,ラプラシアン等)を施し、焦点評価画像を作成し、焦点評価値(鮮鋭度ともいう)を算出する。ここで、焦点評価値としては、焦点評価画像の前科措置の合計、その平均値,分散値等を用いることができる。ここまでの工程は、通常オートフォーカスとして実行され、焦点評価値の最大値の励磁電流値若しくはリターディング電圧を合焦点時の励磁電流若しくはリターディング電圧とする。本明細書の中では、対物レンズの励磁もしくはリターディング電圧を連続的もしくは離散的に変化させる操作を、スウィープと呼ぶ。また、スウィープする範囲を、スウィープ幅と呼ぶ。
近年になって接地しても残留する固定的な帯電をもつウェーハが散見されるようになった。この固定的帯電の原因は例えばスピンコーターによるレジスト塗布時の摩擦でレジスト内部での有極性物質が分極し電位が固定するのであるとか、プラズマを使用したエッチング処理による帯電であると言われている。
特にSOI(Silicon on Insulator)技術を使用する場合、ウェーハに絶縁膜を形成し、絶縁膜上に半導体パターンを形成するため、数百ボルトの帯電が発生する場合があることが知られている。このような大きな帯電が発生した状態では、オートフォーカスの処理時間が極めて長くなり、検査全体のスループットが低下するという問題が発生した。
また、試料表面に帯電が発生している状態において対物レンズを用いてフォーカスを合わせた場合は、次のような問題が発生する。荷電粒子線装置では、試料に帯電が生じていないことを前提に倍率計算を行い、焦点が合っていない場合は試料の高さが変わったものとして倍率計算を行っている。しかし、たとえば走査型電子顕微鏡の場合は、試料表面にマイナスの帯電が付着していると、その帯電の影響で電子線が減速してしまい焦点位置が変わってしまう。このため、帯電から生じた焦点ずれを対物レンズの励磁電流を調整し、その対物レンズの励磁電流を用いて倍率計算を行うと、実際の倍率とは異なる値を算出する。パターンの寸法を計測する荷電粒子線装置の場合は、正しい寸法を計測しないという問題が発生する。
このような問題を踏まえて、以下の実施例を提案する。
図2に、試料の表面電位計測方法の原理を説明する。ただし、試料表面に帯電はない場合についての説明である。電子線の加速電圧をV1とし、リターディング電圧をVrとする。電子は負電荷を有するので、リターディング電圧は負の電位である。もし、VrにVr<−V1の電位を与えると、一次電子は試料には到達できなくなり、一次電子は試料に到達する前に電子銃の方向に反射する。反射板5に到達した電子は反射板で二次電子を発生させ、二次電子検出器において電子を計測することができる。この場合は、一次電子は反射板を通過するときの速度で反射板に戻ってくる。そのため、反射板で発生する二次電子はリターディング電圧によらず一定の量である。したがって、二次電子検出器の出力はリターディング電圧によらずほぼ一定の値になる。
次に、Vr=−V1の状態になると、加速電圧と減速する電圧が同じであるため、一次電子のエネルギーは試料表面上で0[eV]になる。この場合は、試料から二次電子を発生させることができないため、二次電子検出器の出力は低下する。
次に、Vr>−V1の状態を説明する。この場合は、一次電子線は試料表面に到達し、試料から二次電子が発生し、その二次電子は二次電子検出器によって検出される。Vrを高くすることにより試料への到達する電子のエネルギーが大きくなることから、リターディング電圧をプラス方向に上昇させるにしたがい二次電子の発生量が増える。
以上からわかるように、Vr<−V1の状態では、二次電子検出器の出力はリターディング電圧によらずほぼ一定値になる。Vr=−V1の状態では、二次電子が発生しないので二次電子検出器の出力は低下する。Vr>−V1になると、リターディング電圧により試料へ入射するエネルギーが変わるため、そのエネルギーに応じて二次電子が発生し、二次電子検出器の出力が変化する。
上記説明では、試料表面に帯電が存在しない場合を説明したが、試料表面に帯電が存在する場合を、図3を用いて説明する。図3は、試料表面に−0.2[kV]の帯電がある例を示している。この場合は、図2に対して−0.2[kV]の帯電が付着しているため、Vr=−V1+0.2[kV]のときに試料表面電位が−V1になる。図2においては、Vr−I特性が0.2[kV]だけ右にシフトする。つまり、Vr−I特性は表面電位に応じてシフトし、シフト量を求めることで表面電位を計測することができる。
試料の表面電位計測方法を図4のフローチャートを用いて詳細に説明する。まず、リターディング電圧を、一次電子が試料に到達しないような初期電圧にする(S01)。このとき、初期電圧は、予測される試料表面電位を考慮して決定する必要がある。たとえば、試料上に0.1[kV]程度の正帯電があることが経験的に分かっているなら、Vr<−V1−0.1[kV]でなければならない。次に、適切な倍率で一次電子線を二次元的に走査することで画像を得る(S02)。画像の明るさは二次電子検出器の出力に比例するので、画像の平均輝度を計算する(S03)。次に、リターディング電圧をStep[kV]だけ加え(S04)、指定された回数Nになるまで上記処理を繰り返す(S05,S06)。
リターディング電圧をスウィープさせ、それらの電圧に対応した画像の平均輝度から、表面電位Vspを計算し(S07)、一次電子線が所望のエネルギーVacc[eV]で試料に入射するようにリターディング電圧を制御する(S08)。ここで、設定すべきリターディング電圧Vrは、一次電子線の加速電圧V1と推定された表面電位Vspから次式のように設定する。
r=−V1+Vacc−Vsp (式1)
図4の説明では、Vrを正の方向に増加させていったが、負の方向に減算していってもよい。また、S02において二次元画像を得る代わりに、一次電子線を一次元的に走査し、二次電子検出器から1次元信号を得て、1次元信号の平均値を用いても同様のことができる。
また、このフローチャートを指令するプログラムを走査電子顕微鏡その他の荷電粒子線装置に組み込むこともできる。
従来技術で説明したパターンの鮮鋭度を評価するオートフォーカス方式では、各画像の評価において微分処理を代表とするエッジ強調処理が必要であるが、エッジ強調処理を行うためにはエッジ強調処理においてノイズが強調されないよう、ある程度のS/N比が必要とされる。S/N比を確保するためには、走査型電子顕微鏡においてはフレーム積算によりS/N比を改善したり、微分処理前に平滑化フィルタによってノイズを低減するなどの方法が一般的であるが、これらの処理によってオートフォーカス実行時間が長くなるという問題が発生する。一方、本発明では、パターンが存在しない場所でも表面電位を計測することができる。各画像の平均輝度を求めるだけでよいので、ノイズの影響を受けにくく、フレーム積算やS/N比を改善するための平滑化を行う必要はなく、パターンの鮮鋭度を評価する従来型オートフォーカスに比べ高速に処理を行うことができる。
次に、複数のリターディング電圧Vrとそれらの電圧に対応した画像の平均輝度(二次電子検出器の出力Iに比例する)から、表面電位Vspを求める方法を図5を用いて説明する。リターディング電圧を離散的にスウィープさせて得られた二次電子検出器の出力Iから、輝度が最小となるデータを求め、その前後1点合計3点のデータから、そのデータを通る二次関数を求める。この方法により、リターディング電圧を離散的に変化させた場合でも、精度良く二次電子検出器の出力が最小になるリターディング電圧を求めることができる。
二次関数を求めるときに用いるデータに関して他の実施例を説明する。一次電子が試料に到達しないときの二次電子検出器の出力若しくは画像の平均輝度はほぼ一定になるが、例えばこの値を閾値として設定する。そして、この閾値より小さいデータを最小値を求めるためのデータとして用いる。閾値より小さなデータに対して二次関数のフィッティングを行い、この方法により、リターディング電圧を離散的に変化させた場合でも、精度良く二次電子検出器の出力が最小になるリターディング電圧を求めることができる。
ただし、観察する試料の材質の違いにより、二次電子検出器の出力Iが最小になるリターディング電圧を求めるだけでは必ずしも十分でない場合もある。一次電子が反射するようなリターディング電圧の領域においては、リターディング電圧や試料に依存せず二次電子検出器の出力は一定である。一方、一次電子が試料に到達するようなリターディング電圧の領域では、試料から発生する二次電子の量は、二次電子放出効率に依存するため、Vr−I特性は二次電子放出効率の違いにより図6のように変化する。これにより、画像の平均輝度Iが最小になるリターディング電圧は、試料に依存する。そこで、試料によって発生する「ずれ」を補正するための電圧Voffを予め求めておき、リターディング電圧を以下のように制御すればよい。つまり、(式1)は次式のようになる。
r=−V1+Vacc−Vsp+Voff (式2)
一般には、上記方法により表面電位を求め(式2)でリターディング電圧を制御しただけでは、焦点が合った画像を得ることはできない。試料に付着する表面電位はリターディング電圧を調整することで打ち消されるものの、試料の高さの違いから発生する焦点ずれを補正していないためである。そこで、焦点を試料表面に合わせるためには、たとえば対物レンズの励磁を変化させ焦点位置を制御しなければならない。もし試料を保持するステージが上下方向の微動が可能であれば、上下方向の微動を用いて試料の高さを制御してもよい。
なお、本実施例ではリターディング電圧Vrをスウィープさせたが、一次電子線の加速電圧V1をスウィープさせる、若しくはその両方をスウィープさせても良い。いずれにしても検出器の出力が最小となる時のリターディング電圧Vr、一次電子線の加速電圧V1が分かれば、その和分若しくは差分をとることにより、表面電位は求まるからである。
この場合、求めた表面電位をステージの印加電圧若しくは一次電子加速電極の印加電圧に重畳することも可能であり、または当該求めた表面電位を前記ステージの印加電圧若しくは一次電子加速電極の印加電圧に振り分けて重畳することも可能である。
リターディング電圧を正の方向に増加させても負の方向に減算してもよいが、試料から二次電子が発生していない状態からリターディング電圧を正の方向に増加させる場合には、次のような利点がある。表面電位を求めるためには、二次電子検出器の出力が最小となる時のリターディング電圧が分かればいい。そこで、二次電子検出器の出力が最小となった時点若しくは前記のフィッティングができる程度のデータが得られた時点で測定を終了することができる。この範囲では、主に試料に一次電子線が照射されていない状態であり、電子線照射による試料の損傷を最大限防ぎ、かつ一次電子線の照射自体による帯電を防ぐことができるという利点がある。また、リターディング電圧を変化させる範囲を前記範囲に限ることで短時間での測定が可能であり、スループット向上に寄与するという利点がある。
半導体回路パターンはウェーハと呼ばれる試料上に作り込まれる。この半導体回路パターンの線幅などを計測する装置として、測長SEMが広く利用されている。測長SEMの基本構成も図1と同じである。ウェーハはステージ15に固定され、観察対象のパターンを一次電子線が照射するようにステージを移動させることにより、任意の場所を観察できるようにしている。
半導体回路パターンの計測では、試作段階では1枚のウェーハ内を数百点計測する場合がある。また、量産に移行してからでも1枚のウェーハ内で数十点のパターンを計測する場合が多い。このような場合は、実施例1で述べた方法ですべての測定点において表面電位計測を行うとスループットが低下する。そこで、パターン寸法などの測定に先立ちウェーハ内の数点で表面電位を計測し、その情報から任意の位置の表面電位を予測することで、スループットの低下を押さえることができる。
一般的には、図7に示すように、ウェーハ全体に大域的な帯電が発生し、ウェーハ中央付近に大きな電位を持ち、周辺部では電位が低下する傾向をもつ場合が多いので、このような特性をもつ近似関数で表面電位を近似すればよい。たとえば、図8のようにウェーハ上の10個所で表面帯電を計測し、10箇所の表面電位の情報から、任意の座標(x,y)における表面帯電Vsp(x,y)を(式3)で近似すればよい。
sp(x,y)=a×r3+b×r2+c×r+d (式3)
r=(x2+y21/2
ここで、
x,y:座標(ウェーハ中央が0である座標系)
a,b,c,d:係数である。
係数a,b,c,dは、計測データを最もよく近似するように最小2乗法などを用いて求めればよい。この例では、帯電はウェーハ中央に対して対称であるという式を用いたが、ウェーハ表面の帯電を近似するのに適切な近似式であれば(式3)のような近似式である必要はない。また、計測した複数の位置での電位情報から、内挿によって任意位置での電位を測定しても良い。
測長SEMは、一般的にはレシピと呼ばれるファイルに、一連の測定手順を記述し、その手順にしたがって装置を稼動させることで、無人運転を可能にしている。レシピ処理の動作を図9を用いて説明する。1枚のウェーハをレシピを用いて測定する場合は、ウェーハを試料室内に搬入した後に、最初にウェーハ表面の電位を計測する。つまり、レシピによって定められている表面電位計測位置に移動し(S20)、その場所で表面電位を計測する(S21)。レシピに記述されている点数だけ上記処理を繰り返す(S22)。表面電位の計測が完了したら、(式3)のような表面電位近似関数Vsp(x,y)を求める(S30)。
パターン寸法測定ステップにおいては、最初に測定位置にステージを用いて移動する(S40)。その後、S30で求めた表面電位近似関数Vsp(x,y)を用いて測定位置の表面電位を求め、(式2)を用いてリターディング電圧を制御し、表面電位を打ち消す(S41)。その後、オートフォーカス(S42)や計測すべきパターンを検出し(S43)、最終的に目的のパターンの寸法を計測すればよい(S44)。
一般に、ウェーハにおける帯電量は、半導体製造工程により大きく異なる。また、同じ工程のウェーハであっても、ウェーハごとに帯電量が異なる場合がある。先に説明した方法でウェーハ表面の帯電量を計測する場合は、ウェーハ帯電が少ない場合や、完全に帯電が無い場合であっても表面電位を計測し、必ずしも効率がよいとは言えない。一般には、ウェーハ周辺に比べウェーハ中央の方が帯電が大きいので、最初にウェーハ中央で表面電位を計測し、帯電が多いかどうかを判断し、帯電が大きいと判断した場合はウェーハ表面の電位計測を行い、ウェーハ表面の帯電が小さいと判断した場合はウェーハ表面の電位計測を行わないことでスループットの低下を少なくすることができる。
具体的な動作フローを図10に示す。図10では、図9のS20からS30のステップが変更されている。つまり、最初にウェーハ表面電位計測ステップ1において、ウェーハ中央の表面電位を計測する。図10においては、決められている半径以内に存在する測定点においてウェーハ表面電位を計測する(S50,S51,S52)。図10においては2点の計測を行っている。次に、S51において計測した表面電位から、ウェーハ中央付近の表面電位を推定する。図10においては2点の平均値をウェーハ中央付近の表面電位とすればよい。その後、ウェーハ中央付近の表面の電位が、予め決められているしきい値よりも小さい場合は、試料表面には「帯電が無い」と判断する(S53)。「帯電が無い」と判断した場合は、パターン寸法の測定ステップに進む。一方、しきい値よりも大きい場合は、試料表面に「帯電が有る」と判断する。試料表面に「帯電が有る」と判断された場合は、引き続き表面電位計測位置において表面電位を計測する(S54,S55,S56)。その後、表面電位近似関数を求める(S30)。図10の場合は、残り8点において表面電位計測を行う。
次に、レシピファイル作成における表面電位計測の設定画面を図11を用いて説明する。設定する第1の情報は、表面電位計測を行うかどうかのフラグである。表面帯電が発生しているかどうかは、試料により異なるので、表面電位計測を行うかどうかを指定する。第2の情報は、表面電位計測のスウィープ範囲である。表面電位は試料ごとに異なるものの、ある程度の電位の範囲が既知の場合は、スウィープ範囲を適切に狭めることで表面電位計測の測定時間を短縮することが可能になる。第3の情報は、表面電位計測を行う場所であり、図11の例では、チップ内の座標と表面電位計測を行うチップを指定している。表面電位計測を行うチップは、マウス操作で行えるようにすることで、容易に計測チップを指定することができる。
上記の設定画面では3つの情報を入力した。しかしながら、本発明における試料表面の電位計測技術においては、実施例1でも説明したように必ずしも試料表面にパターンが存在している必要はないので、任意の場所で表面電位を計測することが可能である。このため、レシピ作成においては、ユーザが入力すべき情報を非常に少なくすることが可能である。たとえば、表面電位計測を行う点数だけを指定し、表面電位を計測する場所はシステムがランダムに決定するといった方法も可能であるし、表面電位補正を行うかどうかだけを指定することで、システム内に事前に記録されている複数の座標で表面電位を計測するといった方法でもよい。
上記で説明した方法により、表面電位の計測は数点から10点程度でよく、スループットの低下を最小に押さえることができる。ウェーハ表面電位が適切に制御されるため、オートフォーカス(S26)のスウィープ幅を狭くすることができ、オートフォーカス実行時間を短縮することができる。たとえウェーハ表面電位の計測を行ったとしても、パターン寸法などの測定点数が多い場合は、各測定点でのオートフォーカスを不要もしくは短縮することができ、レシピ実行時間を短縮することができる。また、表面電位が制御されることで、表面電位が原因で発生する倍率誤差が無くなり、正しい寸法を計測することが可能になる。
1…電子源、2…一次電子加速電極、3…一次電子、4…コンデンサレンズ、5…反射板、6…走査コイル、7…対物レンズ、8…試料、9…二次電子、10…二次電子検出器、11…制御コンピュータ、12…表面電位推定部、13…一次電子加速電源、14…リターディング回路、15…ステージ。

Claims (12)

  1. 荷電粒子源と、
    荷電粒子を検出する荷電粒子検出器と、
    加速電極に荷電粒子線を加速させる加速電圧を印加する電源と、
    試料を搭載する試料ステージと、
    前記試料ステージに前記荷電粒子線を減速させるリターディング電圧を印加する電源と、
    前記リターディング電圧を制御する制御コンピュータを備えた荷電粒子線装置において、
    当該制御コンピュータは、前記リターディング電圧を掃引し、
    前記荷電粒子検出器の出力と前記掃引したリターディング電圧との関係を示す特性カーブを取得し、基準となる特性カーブに対する前記取得した特性カーブのシフトに基づいて、試料表面の電位を求めることを特徴とする荷電粒子線装置。
  2. 請求項1において、
    荷電粒子検出器の出力として1次元信号、或いは2次元画像を取得し、
    前記1次元信号、或いは2次元画像の輝度を求めることによって前記特性カーブを取得し、前記基準となる特性カーブに対する当該取得した特性カーブのシフトに基づいて、試料表面の電位を求めることを特徴とする荷電粒子線装置。
  3. 荷電粒子源と、
    荷電粒子を検出する荷電粒子検出器と、
    加速電極に荷電粒子線を加速させる加速電圧を印加する電源と、
    試料を搭載する試料ステージと、
    前記試料ステージに前記荷電粒子線を減速させるリターディング電圧を印加する電源と、
    前記リターディング電圧を制御する制御コンピュータを備えた荷電粒子線装置において、
    当該制御コンピュータは、前記リターディング電圧を掃引し、
    前記荷電粒子検出器の出力が最小になるときのリターディング電圧を取得し、当該取得したリターディング電圧と、基準となるリターディング電圧との差分に基づいて、試料表面の電位を求めることを特徴とする荷電粒子線装置。
  4. 請求項3において、
    荷電粒子検出器の出力として1次元信号及び2次元画像を取得し、
    前記1次元信号、或いは2次元画像の輝度を求め、
    前記1次元信号、或いは前記2次元画像の輝度が最小となるときのリターディング電圧を取得し、前記基準となるリターディング電圧との差分に基づいて、試料表面の電位を求めることを特徴とする荷電粒子線装置。
  5. 請求項1または請求項3において、
    求めた表面電位を前記リターディング電圧若しくは前記加速電圧に重畳し、
    または前記求めた表面電位を前記リターディング電圧若しくは前記加速電圧に振り分けて重畳することを特徴とする荷電粒子線装置。
  6. 請求項1または請求項3において、
    試料上の複数の位置での測定により、
    測定した位置と前記測定により求められた表面電位との関係に基づいて、
    試料上の任意の位置における表面電位を推定することを特徴とする荷電粒子線装置。
  7. 請求項6において、
    前記推定した表面電位を前記リターディング電圧若しくは前記加速電圧に重畳し、または前記推定した表面電位を前記リターディング電圧若しくは前記加速電圧に振り分けて重畳して試料の表面の電位を調整し、
    前記試料上の任意の位置で荷電粒子線が所望のエネルギーで試料に照射されるように制御することを特徴とする荷電粒子線装置。
  8. 請求項6において、
    試料上の複数の位置での表面電位測定において、
    試料中央部で所定の半径内における表面電位計測を行い、
    当該求めた表面電位が所定の閾値を越えない場合に表面電位計測を中止し、所定の閾値を越えた場合、継続して表面電位計測を行うことを特徴とする荷電粒子線装置。
  9. 請求項1または請求項3において、前記リターディング電圧の範囲を指定することを特徴とする荷電粒子線装置。
  10. 荷電粒子源から放出される荷電粒子線の試料への照射に起因して放出される荷電粒子に基づいて、試料表面の電位を求める表面電位測定方法において、
    リターディング電圧を掃引して前記荷電粒子源から放出される前記荷電粒子線のエネルギーを変化させ、
    前記荷電粒子検出器の出力と前記掃引したリターディング電圧との関係を示す特性カーブを取得し、基準となる特性カーブに対する前記取得した特性カーブのシフトに基づいて、試料表面の電位を求めることを特徴とする表面電位測定方法。
  11. 荷電粒子源から放出される荷電粒子線の試料への照射に起因して放出される荷電粒子に基づいて、試料表面の電位を求める表面電位測定方法において、
    リターディング電圧を掃引して前記荷電粒子源から放出される前記荷電粒子線のエネルギーを変化させ、
    前記荷電粒子検出器の出力が最小となるときのリターディング電圧を取得し、当該取得したリターディング電圧と、基準となるリターディング電圧との差分に基づいて、試料の表面電位を求めることを特徴とする表面電位測定方法。
  12. 請求項10または請求項11において、
    前記求めた表面電位を前記リターディング電圧若しくは前記加速電圧に重畳するまたは前記求めた表面電位を前記リターディング電圧若しくは前記加速電圧に振り分けて重畳することを特徴とする表面電位測定方法。
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