JP6230831B2 - 荷電粒子線装置および画像取得方法 - Google Patents

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Description

本発明は、荷電粒子線を用いた試料検査装置、レビュー装置、パターン計測装置等の荷電粒子線装置およびこれを用いた画像取得方法に関する。
半導体デバイスは、フォトマスクに形成されたパターンを、リソグラフィー処理およびエッチング処理によりウェハ上に転写する工程を繰り返すことにより製造される。このような製造プロセスにおいては、良好な歩留まりの早期な立ち上げ、及び、製造プロセスの安定な稼働の維持を実現することが重要である。このためには、ウェハのインライン検査を行い、発見された欠陥を迅速に解析し、欠陥発生の原因究明と対策に活用することが必須である。検査結果を迅速に欠陥対策に結び付けるためには、多数の検出された欠陥を高速にレビューして、発生原因別に分類する自動欠陥レビュー技術と分類技術が鍵となる。さらに、製造プロセスの微細化に伴い、半導体デバイスの製造歩留まりに影響を及ぼす欠陥サイズも微細化してきており、光学式のレビュー装置では、分解能の高いレビューが困難である。このため、高速、高分解能でレビューが可能な走査型電子顕微鏡(以下、レビューSEMと略す場合がある)式のレビュー装置が製品化されている。
レビューSEMでは、光学式欠陥検査装置などから半導体ウェハ上の欠陥位置情報を得て、光学式欠陥検査装置より高倍率で画像を撮像することで、製造プロセスの問題点を見つけ出す作業が行われる。例えば欠陥位置に高速にステージ移動して、SEMの低倍像モードで欠陥位置を検出して、SEMの高倍像モードで欠陥を中心にして撮像し、この高倍像モードで取得した高倍像を分析して、欠陥の分類作業を行う。
半導体デバイスの発展に伴い、ライン&スペース構造のスペース部はより深くエッチングされており、深溝構造が形成されている。電子線照射時にスペース部から発生する信号電子量は溝の深さが深くなるに従い減少する。そのため、スペース部で信号対雑音比が低下して、ライン部に対してスペース部を観察するのが困難になりつつある。また、ホール構造もより深くエッチングされて、深穴構造が形成され、同様に走査型電子顕微鏡での観察が困難になりつつある。
スペース部で信号対雑音比を向上させる一つの方法は、光電子増倍管のゲインを上げる方法であるが、同じ試料像内でライン部の明るさの階調も同時に上がってしまい、ライン部が明るすぎて、スペース部を観察できなくなる。そこで、ライン部の信号電子の大部分を占めている二次電子を抑制して、相対的にスペース部の階調を上げるために、エネルギーフィルタが用いられる。エネルギーフィルタは、信号電子を信号電子運動エネルギーに応じて選択できるハイパスフィルタである。
特許文献1のように、電圧を印加した金属メッシュに信号電子を通過させて、信号電子に対して減速電場を形成して、信号電子を選別する方法が知られている。
特許文献2では、対物レンズに電極を配置して、電極に電圧を印加する方法が知られている。
特許第4302316号公報(米国特許第6667476号明細書) 特開2006−294627号公報(米国特許出願公開第2003/0042417号明細書)
エネルギーフィルタに電圧を印加すると、深溝や深穴の信号比が表面部分に対し、相対的に向上する。その一方で、信号電子の絶対量は低下し、分解能は劣化する。
また、走査電子顕微鏡では、信号量を増加させるために試料または試料ステージにリターディング電圧を印加することがある。したがってリターディング電圧を印加する場合には、このリターディング電圧値とエネルギーフィルタに印加する電圧値との差で選別できる信号電子のエネルギーが決まることになる。しかしながら、これらの電圧値の調整に際しては可変パラメータが複数あるため、最適な電圧値に調整することが困難であった。
さらに、これらの電圧値を調整する際には、例えば電圧変化に伴う焦点ずれが起こる可能性があり、電圧値を変化させる度に焦点を合わせる必要があるので、さらにバリア条件設定の作業効率が落ちる可能性がある。また、電圧値を調整するために荷電粒子線を照射することにより試料に帯電が発生し、この帯電の影響によってリターディング電圧値やエネルギーフィルタの電圧値に設定した電圧値と実際に形成されている電圧値との間にずれが生じうる可能性がある。
そこで本発明は、リターディング電圧値とエネルギーフィルタに印加する電圧値等の最適なバリア条件を簡単に設定可能な荷電粒子線装置を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明では、ブースター電圧とリターディング電圧との差であるフィルタ電圧を複数の条件に変化させ、各条件において試料の画像を生成し、生成された画像中の観察対象物の内部と外部のコントラスト比またはコントラスト差に基づいてフィルタ電圧の最適値を求めることを特徴とする。
また、ブースター電圧の変化量が焦点位置に与える影響とリターディング電圧の変化量が焦点位置に与える影響とが相殺されるように、フィルタ電圧を複数の条件に変化させることを特徴とする。
また、試料の帯電状態に基づいてリターディング電圧を補正することを特徴とする。
本発明によれば、リターディング電圧値とエネルギーフィルタに印加する電圧値等の最適なバリア条件を簡単に設定可能な荷電粒子線装置を提供することができる。
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
本実施例における荷電粒子線装置の概略構造を示す縦断面図。 本実施例におけるライン&スペース構造の(a)上面および(b)断面の模式図。 本実施例における電圧差Vdを負電圧にしたときの試料像の概略図。 本実施例における暗部と明部との明るさの階調の比の、及び、信号対雑音比の、電圧差Vdの依存性を示す図。 本実施例におけるエネルギーフィルタON/OFF時の各レイヤーにおける2次電子の放出比の一例を示した図。 本実施例における(a)観察対象欠陥画像の一例および(b)ライン領域の輝度プロファイルを示した図。 本実施例におけるフィルタ電圧最適化のシーケンス図。 本実施例におけるフィルタ電圧補正時に取得する輝度プロファイルの一例(a)および理想信号と測定信号の相関値のグラフ(b)を示した図。 本実施例におけるフィルタ電圧補正のシーケンス図。
以下、図面を参照し、本発明の実施例について詳細に説明する。以下、荷電粒子線装置の一例として走査型電子顕微鏡を用いた例を説明するが、これは本発明の単なる一例であって、本発明は以下説明する実施の形態に限定されるものではない。本発明において荷電粒子線装置とは荷電粒子線を用いて試料の画像を撮像する装置を広く含むものとする。荷電粒子線装置の一例として、走査型電子顕微鏡を用いた検査装置、レビュー装置、パターン計測装置が挙げられる。また、汎用の走査型電子顕微鏡や、走査型電子顕微鏡を備えた試料加工装置や試料解析装置にも適用可能である。
また本明細書において、「欠陥」とはパターンの欠陥に限らず、異物やパターン寸法異常、構造不良等を広く含むものとする。また、観察対象は「欠陥」である例を説明するが、これに限られず正常なパターンであってもよい。また本明細書において、「試料」とはパターンが形成された半導体ウェハの例で説明しているが、人工的にまたは自然に形成されているパターンを有する観察対象物であればよい。また、本実施例で説明する帯電測定技術はパターンのないウェハに対しても適用可能である。
図2以降の図において、図1と同じ機能部分には図1と同じ番号を付し、重複する説明を省略する。
図1は、本実施例における走査型電子顕微鏡の一例を示す概略断面図である。なお、図面では、走査型電子顕微鏡に必要な真空容器、ウェハ搬送システムなどは省略している。一次電子線を発生する電子源は陰極1、第一陽極2、第二陽極3により構成される。陰極1と第一陽極2の間には、制御装置22で制御される高電圧制御電源15により電圧が印加され、所定のエミッション電流が陰極1から引き出される。陰極1と第二陽極3の間には制御装置22で制御される高電圧制御電源15により加速電圧が印加されるため、陰極1から放出された一次電子線4は加速されて後段のレンズ系に進行する。一次電子線4は絞り板5で不要な領域を除去され、集束レンズ制御電源16で制御された集束レンズ6で結像位置23に集束される。
その後、一次電子線4は、対物レンズ制御電源20で制御された対物レンズ11により試料12上に微小スポットとして集束される。集束された一次電子線4は、偏向コイル制御電源19により制御された偏向コイル10で偏向され試料12上を二次元的に走査される。偏向コイル10の走査信号は、観察倍率に応じて偏向コイル制御電源19により制御される。一次電子線4の走査範囲は、観察倍率により決定される。試料12に、直接または、試料12を保持する試料保持器(図示せず)を介して、リターディング電圧制御電源26より負電圧が印加されることにより、一次電子線4を減速させる電界が生成される。これによって、一次電子線4は加速電圧以上の運動エネルギーを有したまま対物レンズ11を通過して、通過後に一次電子線4は減速され、加速電圧より小さい運動エネルギーで試料12に衝突する。このとき試料または試料保持器に印加している負電圧をリターディング電圧と称する。一次電子線4が対物レンズ11をより高い運動エネルギーで通過できるので、収差を低減できて、分解能向上が図られている。当然ながら、走査型電子顕微鏡の光学系はこれ以外に他のレンズや電極、検出器を含んでもよいし、一部が上記と異なっていてもよく、荷電粒子光学系の構成はこれに限られない。
一次電子線4の照射により試料12から発生した信号電子は運動エネルギーに応じて、二次電子7と反射電子13に分類される。試料12に印加された電圧によって、二次電子7は導体板8方向に加速され、対物レンズを通過する。二次電子7は試料12に印加された電圧に近い運動エネルギーを持っており、反射電子13は一次電子線4に近い運動エネルギーを持っている。一例を挙げれば、二次電子の運動エネルギーは試料12に印加された電圧が−100Vの場合は−100eVから−120eVであり、反射電子の運動エネルギーは一次電子線4の運動エネルギーが1keVの場合、−800eVから−1000eVである。二次電子7や反射電子13は、対物レンズ11の陰極1方向に進行した後、一次電子線4が通過できる開口を有する導体板8に衝突して、三次電子14を発生させる。三次電子14を検出器9で検出し、信号増幅器18で増幅させる。増幅された信号を、制御装置22内の画像生成部221にて偏向コイル10の走査信号と同期させて試料像を生成し、像表示装置21に表示される。導体板8、検出器9を合わせて検出系と称することもある。
制御装置22内には、上記の画像生成部221の他に、フィルタ電圧制御部223やフィルタ電圧最適化部222が設けられている。走査型電子顕微鏡には、このほかにも各部分の動作を制御する制御部が含まれている(図示省略)。制御装置22に含まれる各機能ブロックは、専用の回路基板によってハードウェアとして構成されていてもよいし、走査型電子顕微鏡に接続されたコンピュータで実行されるソフトウェアによって構成されてもよい。ハードウェアにより構成する場合には、処理を実行する複数の演算器を配線基板上、または半導体チップまたはパッケージ内に集積することにより実現できる。ソフトウェアにより構成する場合には、コンピュータに高速な汎用CPUを搭載して、所望の演算処理を実行するプログラムを実行することで実現できる。このプログラムが記録された記録媒体により、既存の装置をアップグレードすることも可能である。また、これらの装置や回路、コンピュータ間は有線又は無線のネットワークで接続され、適宜データが送受信される。以下では特に断りの無い限り、各種演算処理は制御装置22で行われ、各種プログラムやデータは記憶部27に保持されるものとして説明する。
本実施例では、対物レンズ11内に配置されたブースター電極24にブースター電圧制御電源25により負電圧を印加する。ここでブースター電極24に印加する電圧をブースター電圧と称する。ブースター電極24は一次電子線の光軸を囲むような円筒形状であって、対物レンズの磁路内に円筒の孔を一次電子線が通過するように配置される。なお、一次電子線が通過する孔は複数の電極片によりブースター電極が形成することにより形成されてもよい。ブースター電極24の形状はこれに限られない。ブースター電極24は対物レンズ11の磁路の一部として形成され、対物レンズの磁路と共用となっていてもよい。
電圧差Vdを次の式にて定義する。
(電圧差Vd)=(ブースター電極24の電圧Vb)−(試料12の電圧Vr)
本明細書ではVbをブースター電圧、Vrをリターディング電圧と称し、Vdをフィルタ電圧と称することがある。試料12の電圧(リターディング電圧)の絶対値よりブースター電極24の電圧(ブースター電圧)の絶対値を大きくすることで、電圧差Vd(フィルタ電圧)は負となる。電圧差Vdを負の電圧にすることで、試料から発生した二次電子7を減速させ、二次電子7は導体板8方向に飛行できずに7aのような軌跡になる。その結果、二次電子7は導体板8に到達できず、試料像は二次電子7が抑制されて、反射電子13が支配的な像になる。電圧差Vdの負電圧を調整することである一定以下の運動エネルギーの二次電子7が抑制されて、相対的に反射電子13の割合が増加した試料像が構成される。
フィルタ電圧は上記したようにブースター電圧とリターディング電圧との差により決定される。荷電粒子線装置の制御装置22の内部に設けられたフィルタ電圧制御部223では、電圧制御電源25、リターディング電圧制御電源26に出力するブースター電圧およびリターディング電圧を制御することにより、フィルタ電圧Vdを複数の条件に設定することができる。
図2(a)は試料の一例として、ウェハ上に形成された半導体パターン構造の一種であるライン&スペース構造の上面の模式図を示したものである。図2(b)は図2(a)におけるA−B方向の断面の模式図を示したものである。ライン&スペース構造では、ライン部31は凸形状、スペース部30は凹形状を成している。凸形状のライン部31に一次電子線4が照射されると、ライン部31の両端のエッジ部からエッジ効果で二次電子7が効率よく出射される。一方、凹形状のスペース部30に一次電子線4が照射されると、ライン部31の両端にあるようなエッジ形状がないので、二次電子7はライン部31より出射されにくい。その結果、試料像はライン部31が明るく、スペース部30が相対的に暗くなる。このため、スペース部30に半導体プロセス起因の形状不良部がある場合、この形状不良部を検出できないことがある。試料像(SEM像)の明るさの階調幅は固定である。画像の最も明るい部分と最も暗い部分の階調値が1枚の画像に存在すると、明るい部分の階調値が階調幅以下に収まるように、画像全体の階調値を下げる調整が行われる。そのため、暗い部分の階調値はさらに暗くなる。具体的には、試料像の明るさの階調は256段階である場合には、ライン部31が200階調以上、スペース部30が50階調以下の場合、形状不良部を検出できないことがある。
一次電子線4がライン部31を走査することで発生する二次電子7を導体板8に到達させないようにすれば、三次電子14に変換されて検出器9で検出される回数が減少して、ライン部31の明るさの階調値はスペース部に対して相対的に減少する。ここで、上記に説明した電圧差Vdが負電圧になるように、ブースター電極24と試料12の電圧を調整することで、二次電子7だけを選択的に抑制して検出できて、ライン部をスペース部に対して相対的に明るくできる。
図3は電圧差Vdを負電圧にした時の試料像の概略図を示したものである。例えば、ライン部31が100階調、スペース部30が70階調となり、スペース部30の形状不良部を検出しやすい画像になる。
図4に、スペース部30である暗部とライン部31である明部との明るさの階調の比の、及び、信号対雑音比の、電圧差Vdの依存性を示す。暗部と明部との明るさの階調の比は電圧差Vdに対して単調に増加する。しかし、電圧差Vdの増加によって試料像を形成する信号電子の主成分である二次電子7が抑制されてしまうので、試料像の信号対雑音比は低下する。したがって、明部と暗部の明るさの階調比と信号対雑音比のバランスが取れるように、電圧差Vdを最適値に調整することが重要である。
当然ながら試料はこれに限られるものではなく、その他の試料構造であっても、同様である。ライン&スペース構造以外の例として、複数のホールを有する試料が挙げられる。ホール構造の試料ではホール穴底部が周辺部に比べて相対的に暗くなるので、電圧差Vdを負電圧にすることで、ホール穴底部を相対的に明るくすることができる。
図5に、電圧差Vdを負電圧にすることで、スペース部やホール穴底部などの暗部が相対的に明るくなる原理図を記載する。ここでは暗部をBottom Layer、明部をTop Layerとして説明する。図5上段に表されるように、エネルギーフィルタがOFFの場合、すなわち電圧差Vdが0の場合、グラフのグレー部分の面積としてあらわされるSignal量はTop LayerとBottom Layerとで差が大きい。このため、相対的に信号電子量の少ないBottom LayerはTop layerと比較して暗くなる。エネルギーフィルタがONの場合、すなわち電圧差Vdが0でない場合には、図5上段グラフの斜線部で表されるエネルギーの低い信号電子は検出器まで到達しない。そのため、図5下段グラフのグレー部分の面積として表される検出される信号電子の総量はTop LayerとBottom Layerで差が小さくなり、相対的にBottom Layerが明るくなる。したがって、電圧差Vdを最適値に設定することで、電圧差Vdと試料12の電圧を加算した運動エネルギー以下のエネルギーを有する二次電子7の検出を抑制できる。
電圧差Vdの最適値はライン&スペース構造、ホール構造、暗部の構造不良部の形状などによって異なる。したがって、最適な電位差Vd、およびこの電位差Vdを形成するためのブースター電圧Vbやリターディング電圧Vrを簡便に求められることが望まれる。
フィルタ電圧Vdの調整方法としては、ブースター電圧やリターディング電圧を変化させることでフィルタ電圧Vdを複数の条件に変化させて、それぞれの条件で画像を取得し、各画像において欠陥部分のコントラストが最大になる点を探す方法が考えられる。しかし、欠陥部分のコントラストを肉眼で評価しなければならず精度が悪い。
そこで、精度良くかつ自動でフィルタ電圧を最適化する方法を説明する。図6(a)ではBottom部分にある観察対象欠陥の画像の例を示している。ここでBottom部分とは、試料の凹部にあたる領域のことであり例えば図2(a)の黒い領域で表された部分のことである。本来Bottom部分は全体の画像の中においてコントラストが悪いので、Bottom部分の正常部(背景)と欠陥部の差は必ずしも明確ではないが、図6(a)では分かりやすさのため背景を白、欠陥部をグレーにして表している。
この画像に置いて観察対象欠陥のエッジ部分を横切るようにライン状または帯状のエリアを選択し、そのエリア内の輝度プロファイルを取得する。図6(a)ではBottom部分のみを表しているが、全体の画像の中でもコントラストは悪いながら欠陥の位置を認識することは可能である。したがって、ユーザは全体の画像の中からBottom部分に対応する領域に存在する欠陥のエッジ部分を横切るように輝度プロファイルを取得するエリアを選択する。
図6(b)に、図6(a)で指定したエリアで取得された輝度プロファイルを示している。VbまたはVrをスイープして、複数のフィルタ電圧条件下でそれぞれ画像を撮像する。ここでスイープとは電圧を段階的にまたは連続的に変化させる操作のことである。VbまたはVrを変化させて複数のフィルタ電圧条件下で撮像した各画像から抽出した複数の輝度プロファイルのうち、観察対象物の内部と外部のコントラスト比またはコントラスト差に基づいてフィルタ電圧の最適値を求める。具体的には当該コントラスト比またはコントラスト差が最も大きくなるときのVbおよびVrの条件を最適条件として設定する。フィルタ電圧の最適値は、制御装置22内に設けられたフィルタ電圧最適化部222によって求められる。
しかし、上記の方法では、VbまたはVrを変化させる度に像のフォーカスがずれる。そのため、輝度プロファイルを取得する度に焦点合わせを実行しなければならず、スループットの低下につながる可能性がある。
また、半導体ウェハ上の欠陥群はウェハ上に離散的に分布している。これらの欠陥群を観察する場合、欠陥毎にウェハ上の観察位置が変化する。ウェハ上の観察位置が変化すると、装置の機械的交差、ウェハ厚みの変化によりウェハ高さが変化する。半導体製品の生産性向上のために、半導体ウェハ上の欠陥を観察する時間をできる限り短縮すること、すなわち高スループットであることが求められる。そこで、フォーカス調整もできる限り短時間で行うことが要求されている。
そこで、焦点を変えずにフィルタ電圧を現在の電圧とは異なる電圧に変化させる方法として、ブースター電圧の変化量が焦点位置に与える影響とリターディング電圧の変化量が焦点位置に与える影響とが相殺されるように、ブースター電圧とリターディング電圧を同時に変化させる方法を用いる。言い換えればVbの変化量に対するデフォーカス量を相殺するようにVrを変化させる。これによって、焦点位置を一定に保ったまま、Vdを変化させることができる。例えば、ブースター電極に印加する電圧をVb→Vb+ΔVと変化させた時、試料12に印加する電圧をVr→Vr―KΔVのように変化させる。ここで示したKとは、Vbを印加するブースター電極に対するVrを印加するリターディング電極のフォーカス感度比である。Kは予め測定し、荷電粒子線装置に接続されたコンピュータのメモリやハードディスク等の記憶部に、固定されたパラメータとして記憶しておく。なお、Kは正のパラメータである。VbにΔV印加することで生じたオーバーフォーカスを、Vrに逆バイアスの電圧(―KΔV)を印加することで相殺し、焦点位置を維持したまま、フィルタ電圧Vdを変化させる事が可能となる。
以上によれば、ブースター電極24に印加するブースター電圧と試料12に印加するリターディング電圧を変化させることで、焦点位置を変化させずにフィルタ電圧を変化させることができる。さらに、欠陥部のコントラストが最大になるようにブースター電極24と試料12の電圧を調整することで、暗部の構造不良部を検査する最適のフィルタ電圧を求める機能を実現できる。
図7のフローチャートを用いて、最適なフィルタ電圧を印加する方法を詳細に説明する。まず、観察対象となる欠陥位置にステージを移動する(ステップ100)。次に、観察対象となる欠陥のエッジ部分に交差するようにライン状または帯状の領域を選択する(ステップ101)。次に、Vb、Vrの初期値を設定する(ステップ102)。次にSEM像を取得し、そのSEM像からステップ101で選択したライン上の輝度プロファイルを取得する(ステップ103)。次に、Vbを印加する電源が電源の振り幅上限に達しているか判定を行う(ステップ104)。達していない場合ブースター電極24に印加する電圧(Vb)をStep[V]だけ増加させる。同時に、試料12に−K×Step[V]印加する(ステップ105)。次に、再度SEM像を撮像し、選択したライン上の輝度プロファイルを取得する。Vbが電源の振り幅として設定された規定値を超えるまで上記処理を繰り返す。次に、取得した輝度プロファイルの中から背景部分と欠陥部分のコントラストが最大となるSEM像を決定(ステップ106)し、そのときのVb及びVrを電極に印加する(ステップ107)ことで、フィルタ電圧の最適化が可能となる。なお、上記ではVbを増加させる場合の例を説明したが、VbをStep[V]ごと減少させていってもよい。
エネルギーフィルタとしてのフィルタ電圧は、ブースター電極24と試料12に印加した電圧の差で決定される。ゆえに、試料の帯電や、静電チャック電源の零点ズレ等に起因して、フィルタ電位に誤差が生じる可能性がある。すなわち、フィルタ電圧としてユーザが意図したとおりの電圧が印加されない場合がある。よって、フィルタ電圧が意図した電位となるようにVbやVrの大きさを調整する必要がある。
図8(a)(b)を用いて試料の帯電の影響に基づいてVbやVrにオフセット量を加えることでフィルタ電圧を補正する原理を説明する。本方法はVbやVrを複数の条件に連続的または段階的に変化させて、電圧−輝度値のプロファイルにおける特徴点(例えば検出される二次電子が急減するときのVbやVrの電圧)を用いてウェハの帯電を推定するものであり、その帯電を打ち消すようにVbまたはVrにフィードバックする。以下で説明するオフセット量の演算は特に断りのない限り制御装置22内のフィルタ電圧最適化部222によって行われる。
図8(a)には、VbまたはVrを変化させた場合の輝度値の依存性を示している。なお、以下で「輝度値」は、画像に含まれる画素の平均輝度値でもよいし、任意に指定された特定の領域の代表輝度値でもよい。
ウェハに帯電がない場合には、図8(a)中の四角の点列で示すような依存性(プロファイル)となることが予想される。すなわち、Vb、Vrを変化させると、ある電圧以上では検出される二次電子が抑制されるため輝度が大きく減少する。この輝度変化が発生し始める電圧がVbまたはVrの原点となる。実際のウェハでも、Vb、Vrを変化させると、同様に、ある電圧から輝度の変化が発生する。しかしながらウェハに帯電が生じている場合には、図8(a)中の三角の点列で示した依存性(プロファイル)となり、輝度変化が発生し始める電圧が理想信号の場合に比べてシフトする。このシフト量がウェハの帯電によるフィルタ電圧の誤差となる。シフト量は、例えばウェハに帯電がない場合の理想的な輝度信号のプロファイルと実際のウェハで取得した信号との正規相関をとり、相関値の極大点を検出し、検出した極大点における電圧値から求めることができる。
より具体的には、シフト量は以下の手順により求める。まず、帯電していないウェハで取得されるべき画像の輝度値のプロファイル(理想信号)を予め取得しておき、荷電粒子線装置のコンピュータに設置されたメモリやハードディスク等の記憶部27に保存しておく。次に、Vb,Vrを複数の電圧値に変化させて実際のウェハに荷電粒子線を照射することで、それぞれの電圧値における画像を取得しその画像の輝度値を求めて、電圧―輝度値のプロファイル(測定信号)を作成する。次に、理想信号のプロファイルと測定信号のプロファイルとの相関を計算して、相関値が最大となるようにこれらのプロファイルをマッチさせる。具体的には理想信号のプロファイルを図8(a)横軸方向に段階的にまたは連続的にずらしながら、相関値を求め、その相関値が最大となるときのずらし量ΔV0を求める。図8(a)にはΔV0だけ理想信号をずらして測定信号にマッチさせた例を示しており、図8(b)には横軸にずらし量ΔV、縦軸に相関値をとったグラフを示している。図8(b)ではΔV0で相関値が極大値をとっている。したがって、理想信号に対する測定信号のずれはΔV0であることがわかるので、ΔV0をオフセット量とすればよい。図8(b)において相関値が最大となる点の近傍の数点を適当な関数で近似することで極大値を求めればさらに精度が向上する。ここで、理想信号における検出される二次電子が急減するときの電圧Viは予め記憶部27に記憶されているので、この値を用いれば実際のウェハで二次電子が急減するときの電圧Vi+ΔV0を求めることができる。
上記の説明では検出される二次電子が急減する電圧を求めているが、電圧―輝度値のプロファイルにおけるそれ以外の特徴点を用いた場合でも同様である。また、上記の説明では理想信号をずらして測定信号にマッチさせる例を説明したが、測定信号をずらして理想信号にマッチさせる方法でも同様である。
このように、Vb、Vrを振って、エネルギーフィルタが効力を発揮する(検出される二次電子が急減する)電圧からウェハの帯電等を推定し、その帯電等を打ち消すようにVrにオフセット電圧を印加する。オフセット電圧には前述の方法で求めたΔV0を用いる。なお、ここではVrにオフセット電圧を印加する例で説明するが、Vrに印加する代わりにVbにオフセット電圧を印加してもよい。これによりエネルギーフィルタの原点を確実に0Vにすることができる。
なお、ここではオフセット量をVb,Vrにフィードバックする例を説明したが、上述したオフセット量の求め方は試料の帯電量の測定や試料電位の測定にも用いることができる。すなわち上述のオフセット量ΔV0は試料の帯電のみに起因するものという前提とすれば、ΔV0が試料の帯電量となる。また、試料電位はVi+ΔV0となる。試料の帯電量の測定や試料電位の測定の場合にはパターンのないウェハに対しても適用可能である。
図9に試料の帯電を考慮したVb、Vrの調整のシーケンスを示す。まず、観察位置に移動する(ステップ200)。フィルタ電圧制御部223は、電圧制御電源25、リターディング電圧制御電源26を介して、ブースター電極24または試料12に一定の電圧Vb,Vrを印加する(ステップ201)。次に、走査電子顕微鏡を用いてSEM像を撮像(ステップ202)し、フィルタ電圧最適化部222は取得した像の輝度値を求める(ステップ203)。次に、ブースター電極24に印加する電圧にStep[V]を加算する(ステップ204)。次に、Vb電源の振り幅上限に達しているか判定を行う(ステップ205)。達していない場合はステップ202に戻り、再度SEM像を撮像し、像の平均輝度を求める。以上のようにブースター電圧Vbを変化させ、各電圧条件下で得られた画像の平均輝度値で構成される輝度の電圧依存性(図8参照)を求める(ステップ206)。以下、この電圧依存性のグラフを輝度プロファイルと呼ぶこともある。フィルタ電圧最適化部222は、実際にブースター電圧またはリターディング電圧を変化させながら取得した画像群から得られる輝度の電圧依存性と理想的な輝度の電圧依存性を比較し、実際の測定で得られた輝度の電圧依存性と理想的な輝度の電圧依存性のシフト量、すなわちウェハの帯電状態を求める(ステップ207)。なお、理想的な輝度の電圧依存性は、無帯電のウェハで予め取得され装置記憶部に格納されているものとする。ここで、シフト量は、上述のとおり、測定信号と理想信号との各プロファイルにおいて輝度値が大きく変化し始めるときの電圧の差である。より正確に言えば、シフト量は、測定プロファイルの特徴点に対応する電圧と、当該特徴点と相関値が最大となる理想プロファイルの点に対応する電圧との差である。具体的なシフト量の求め方は上記したとおりである。輝度値が大きく変化し始めるときの電圧は、例えば電圧を同じ量変化させたときの輝度値の変化量が所定の閾値を超えた場合の電圧から決めることができる。求められたシフト量である電位差を仮のオフセット量としてVrに印加する(ステップ208)。
次にVrも同様に電圧値を変化させてそれぞれの電圧条件でSEM像を取得し(ステップ209〜212)、ステップ206と同様に輝度プロファイルを取得し(ステップ213)、理想信号のプロファイルに対する測定信号のプロファイルのシフト量を求める(ステップ214)。求められたシフト量である電位差をさらにVrに印加する(ステップ215)。すなわち以上の調整が終わった後にVrにはステップ208で求めたシフト量とステップ215で求めたシフト量が加算された電圧が印加されており、この電圧がVrのオフセット量となる。以上の手順により、フィルタ電圧の誤差を補正することができる。
VbとVrの2電極で同一のステップを実施する理由は以下の通りである。エネルギーフィルタの電圧補正は、試料帯電の補正が主因であることからVr電極を使用することが望ましい。しかし、Vrを変化させると1次電子線が試料に入射する電圧を変化させることになり、試料から放出される2次電子の量等の変化が画像の平均輝度に影響を与える。このため、Vr電極を広範囲で振ることは好ましくない。
そこで、まず大きく電圧を振ることが可能なブースター電圧Vbを複数の条件に変化させることで粗調整を実施する。そして、Vbを変化させることで得られた輝度の電圧依存性を用いて求められた第一のオフセット電圧(補正電圧)をVrに印加する。新たに設定された第一のオフセット電圧を基準として設定された複数の条件にリターディング電圧Vrを変化させることで微調整を行う。例えば第一のオフセット電圧を中心に小さい振り幅でVrをスイープする。Vrを変化させることで得られた輝度の電圧依存性を用いて求められた第二のオフセット電圧を、最終的なフィルタ電圧のオフセット量として、VrまたはVbに印加する。
なお、以上では理想信号のプロファイルより測定信号のプロファイルの方が二次電子が抑制され始める電圧が大きい例で説明したが、試料の帯電状態によっては理想信号のプロファイルより測定信号のプロファイルの方が二次電子が抑制され始める電圧が小さいこともある。この場合でも、同様の方法によって、Vb、Vrを補正することが可能である。
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。また、上記の各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等によりハードウェアで実現してもよい。また、上記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。
各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリや、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記録装置、または、ICカード、SDカード、光ディスク等の記録媒体に置くことができる。
また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
1:陰極、2:第一陽極、3:第二陽極、4:一次電子線、5:絞り板、6:集束レンズ、7,7a:二次電子、8:導体板、9:検出器、10:偏向コイル、11:対物レンズ、12:試料、13:反射電子、14:三次電子、15:高電圧制御電源、16:集束レンズ制御電源、18:信号増幅器、19:偏向コイル制御電源、20:対物レンズ制御電源、21:像表示装置、22:制御装置、23:結像位置、24:ブースター電極、25:ブースター電圧制御電源、26:リターディング電圧制御電源、27:記憶部、30:スペース部、31:ライン部、221:画像生成部、222:フィルタ電圧最適化部、223:フィルタ電圧制御部

Claims (12)

  1. 一次電子線を発生する電子源と、
    前記一次電子線を集束する対物レンズと、
    前記一次電子線の照射によって試料から発生する二次電子又は反射電子を検出する検出器と、
    前記一次電子線が通過する孔を有する電極と、
    前記電極にブースター電圧を印加するブースター電圧制御電源と、
    前記試料にリターディング電圧を印加することで前記試料上に前記一次電子線を減速させる電界を生成するリターディング電圧制御電源と、
    前記ブースター電圧と前記リターディング電圧とを制御することにより前記ブースター電圧と前記リターディング電圧との差であるフィルタ電圧を複数の条件に設定可能なフィルタ電圧制御部と、
    前記複数の条件のそれぞれにおいて前記検出器の信号から前記試料の画像を生成する画像生成部と、
    前記生成された画像に含まれる観察対象物の内部と外部のコントラスト比またはコントラスト差に基づいて前記フィルタ電圧の最適値を求めるフィルタ電圧最適化部と、を有し、前記フィルタ電圧制御部は、前記ブースター電圧及び前記リターディング電圧の一方の変化によって生ずる前記一次電子線の焦点位置の変化を相殺するように、他方を変化させることを特徴とする荷電粒子線装置。
  2. 請求項1に記載の荷電粒子線装置において、
    前記フィルタ電圧制御部は、前記ブースター電圧の変化量が焦点位置に与える影響と前記リターディング電圧の変化量が前記焦点位置に与える影響とが相殺されるように、前記フィルタ電圧を前記複数の条件に変化させることを特徴とする荷電粒子線装置。
  3. 請求項1に記載の荷電粒子線装置において、
    前記フィルタ電圧最適化部は、前記試料の帯電状態に基づいて前記ブースター電圧または前記リターディング電圧を補正することを特徴とする荷電粒子線装置。
  4. 請求項3に記載の荷電粒子線装置において、
    前記試料に帯電がない場合に取得されるべき画像の輝度値の理想プロファイルを予め記憶する記憶部を有し、
    前記フィルタ電圧制御部は、前記ブースター電圧または前記リターディング電圧を複数の条件に設定し、
    前記フィルタ電圧最適化部は、前記複数の条件のそれぞれにおいて前記検出器の信号から生成された画像の輝度値によって構成される測定プロファイルと前記理想プロファイルとを比較した結果に基づいて、前記試料の帯電状態を測定することを特徴とする荷電粒子線装置。
  5. 請求項4に記載の荷電粒子線装置において、
    前記フィルタ電圧最適化部は、前記測定プロファイルの特徴点に対応する電圧と、当該特徴点と相関値が最大となる前記理想プロファイルの点に対応する電圧と、の差を前記ブースター電圧または前記リターディング電圧のオフセット量とすることを特徴とする荷電粒子線装置。
  6. 請求項4に記載の荷電粒子線装置において、
    前記ブースター電圧を前記複数の条件にすることで取得した第一の測定プロファイルに基づいて第一のオフセット電圧を求め、
    前記リターディング電圧を前記第一のオフセット電圧を基準として設定された複数の条件にすることで取得した第二の測定プロファイルに基づいて第二のオフセット電圧を求め、
    前記第二のオフセット電圧を前記ブースター電圧または前記リターディング電圧のオフセット量とすることを特徴とする荷電粒子線装置。
  7. 一次電子線を発生する電子源と、
    前記一次電子線を集束する対物レンズと、
    前記一次電子線の照射によって試料から発生する二次電子又は反射電子を検出する検出器と、
    前記一次電子線が通過する孔を有する電極と、
    前記電極にブースター電圧を印加するブースター電圧制御電源と、
    前記試料にリターディング電圧を印加することで前記試料上に前記一次電子線を減速させる電界を生成するリターディング電圧制御電源と、を備えた荷電粒子線装置を用いて前記試料の画像を取得する画像取得方法であって、
    前記ブースター電圧と前記リターディング電圧とを制御することにより前記ブースター電圧と前記リターディング電圧との差であるフィルタ電圧を複数の条件に設定し、
    前記複数の条件のそれぞれにおいて前記検出器の信号から前記試料の画像を生成し、
    前記生成された画像に含まれる観察対象物の内部と外部のコントラスト比またはコントラスト差に基づいて前記フィルタ電圧の最適値を求めるときに、前記ブースター電圧及び前記リターディング電圧の一方の変化によって生ずる前記一次電子線の焦点位置の変化を相殺するように、他方を変化させることを特徴とする画像取得方法。
  8. 請求項7に記載の画像取得方法において、
    前記ブースター電圧の変化量が焦点位置に与える影響と前記リターディング電圧の変化量が前記焦点位置に与える影響とが相殺されるように、前記フィルタ電圧を前記複数の条件に変化させることを特徴とする画像取得方法。
  9. 請求項7に記載の画像取得方法において、
    前記試料の帯電状態に基づいて前記ブースター電圧または前記リターディング電圧を補正することを特徴とする画像取得方法。
  10. 請求項9に記載の画像取得方法において、
    前記試料に帯電がない場合に取得されるべき画像の輝度値の理想プロファイルを予め記憶しておき、
    前記ブースター電圧または前記リターディング電圧を複数の条件に設定し、
    前記複数の条件のそれぞれにおいて前記検出器の信号から生成された画像の輝度値によって構成される測定プロファイルと前記理想プロファイルとを比較した結果に基づいて、前記試料の帯電状態を測定することを特徴とする画像取得方法。
  11. 請求項10に記載の画像取得方法において、
    前記測定プロファイルの特徴点に対応する電圧と、当該特徴点と相関値が最大となる前記理想プロファイルの点に対応する電圧と、の差を前記ブースター電圧または前記リターディング電圧のオフセット量とすることを特徴とする画像取得方法。
  12. 請求項10に記載の画像取得方法において、
    前記ブースター電圧を前記複数の条件にすることで取得した第一の測定プロファイルに基づいて第一のオフセット電圧を求め、
    前記リターディング電圧を前記第一のオフセット電圧を基準として設定された複数の条件にすることで取得した第二の測定プロファイルに基づいて第二のオフセット電圧を求め、
    前記第二のオフセット電圧を前記ブースター電圧または前記リターディング電圧のオフセット量とすることを特徴とする画像取得方法。
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