JP5469563B2 - タイヤの排水性評価方法 - Google Patents

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Description

本発明は、特に厚さ1.0mm程度の薄い水膜に対しても、タイヤの排水性の評価を行いうるタイヤの排水性評価方法に関する。
タイヤの排水性評価方法として、タイヤの走行路内に、不透明な水膜を張った透明なガラス板を配置し、その上を走行するタイヤの接地形状を、前記ガラス板の下方から撮影するものが知られている(例えば特許文献1参照。)。なお撮影された接地形状の画像データからは、そのデータ分析によって、例えば接地面積、接地面形状、接地長さなどを求めることができ、これに基づいて、走行時のタイヤ速度や水膜の厚さに応じたタイヤの排水性を評価している。
しかしながら、上記方法においては、ガラス板上に水膜を形成する際、表面張力の影響により、ガラス板上に散布された水は、薄く広範囲に拡散するのが妨げられる。その結果、例えば厚さ2mm以下の薄い水膜を形成するのが難しくなり、この薄い水膜での排水性を確認、評価することができないという問題がある。
特開平7−128196号公報
そこで本発明は、予めガラス面に親水性被膜をコーティングすることを基本として、厚さ1.0mm程度の薄い水膜を形成することができ、この薄い水膜での走行テストを可能として排水性の評価の信頼性を高めうるタイヤの排水性評価方法を提供することを目的としている。
上記課題を解決するために、本願請求項1の発明は、水膜を形成したガラス板上を走行しているタイヤの接地形状を、前記ガラス板の下方から撮影してタイヤの排水性を評価する方法であって、
透明なガラス板の上面に、水溶性シリコンを主成分とする親水性コーティング剤を塗布して親水性被膜をコーティングするコーティングステップと、
前記親水性被膜がコーティングされたガラス板上に、懸濁水を撒いて不透明の水膜を形成する水膜形成ステップと、
前記水膜を形成したガラス板上でタイヤを走行させ、そのときの接地形状をガラス板の下方からビデオカメラで撮影する撮影ステップとを含むとともに、
前記コーティングステップは、親水性コーティング剤をタイヤの走行方向と平行に塗布することを特徴としている。
又請求項2の発明では、前記コーティングステップは、親水性コーティング剤を3〜5回の範囲で重ね塗りすることを特徴としている。
又請求項3の発明では、 前記撮影ステップ終了毎に、前記ガラス板表面の不透明な水膜を、透明な水で洗い流す洗浄ステップを行うことを特徴としている。
又請求項4の発明では、 前記コーティングステップは、前記親水性コーティング剤の塗布に先駆け、前記ガラス板の上面をガラスコンパウンドで研磨することにより油分を含む汚れを除去する汚れ除去ステップを含むことを特徴としている。
本発明は叙上の如く、ガラス板の上面に、水溶性シリコンを主成分とする親水性コーティング剤を塗布して親水性被膜をコーティングしている。従って、ガラス板上で、懸濁水を撒いて不透明の水膜を形成する際、表面張力の影響を抑えて懸濁水を薄く広範囲に拡散させることができ、例えば厚さ1.0mm程度の薄い水膜での排水性を確認、評価することが可能となる。
他方、ガラス板の上面に親水性被膜をコーティングした場合、その上を高荷重のタイヤが通過するため、前記親水性被膜が剥がれやすく、その寿命が非常に短い。そのため、親水性被膜を形成するコーティングステップを頻繁に行うことが必要となって、テストの作業効率を損ねるという新たな問題を招く。しかし本発明では、親水性コーティング剤をタイヤの走行方向と平行な向きに塗布している。これによって親水性被膜の剥がれを抑制することができ、コーティングステップの頻度を大幅に抑えることができる。
本発明のタイヤの排水性評価方法を実施するために用いるタイヤの接地形状撮影装置の概念図である。 タイヤの排水性評価方法を示すフローチャートである。 ガラス板を、親水性被膜とともに示す部分拡大断面図である。 ガラス板の下方から見たタイヤの接地形状を示す図面である。 コーティングステップにおける塗布方向を示す説明図である。 塗布方向が走行方向と直角な場合の問題点を示す説明図である。
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。図1は本発明のタイヤの排水性評価方法を実施するために用いるタイヤの接地形状撮影装置の概念図、又図2はタイヤの排水性評価方法を示すフローチャートである。
図1において、タイヤの接地形状撮影装置1は、車両2が通行可能な透明なガラス板3と、このガラス板3の下方に設置されるビデオカメラ4とを具える。
前記ガラス板3は、前記車両2の通過に十分耐えうる強度を有する透明なガラス板であって、その上面3Sには、図3に拡大して示すように、透明な親水性被膜5がコーティングされている。
そして、親水性被膜5がコーティングされたガラス板3上に、懸濁水を撒いて不透明の水膜6を形成するとともに、その水膜6上で、タイヤTを走行させる。このとき、前記水膜6が不透明な懸濁水で形成されるため、親水性被膜5を介してガラス板3と接するタイヤTの接地部分A以外を、前記懸濁水によって被覆することができる。従って、図4に示すように、前記接地部分Aと非接地部分Bとの差異が明確となってタイヤTの接地形状Pを鮮明に映し出すことができる。そのためには、前記懸濁水として、タイヤTとは異なる色を有していることが必要であり、通常タイヤTは黒色であるため、懸濁水としては、白色或いは黄色のものが好ましく採用しうる。又懸濁水は、外部から入ってくる太陽光などの外光も遮蔽するため、接地部分Aの映像が暗くならずに、はっきりと映し出すことが可能となる。
又前記ガラス板3が透明であるため、ガラス板3の上面3Sに現れる前記タイヤTの接地形状Pを、ガラス板3を通してその下方(下面側)からビデオカメラ4で撮影することができる。なお撮影の際には、前記接地形状Pは、周知の照明装置7により下方から照明される。
又撮影された接地形状Pの画像データは、従来と同様、例えばコンピュータなどの画像処理装置(図示しない)によって画像処理され、接地面積、接地面形状、接地長さなどのデータが算出される。そしてこのデータに基づいて、走行時のタイヤ速度や水膜6の厚さに応じたタイヤTの排水性能が評価される。
次に、前記排水性評価方法をさらに詳しく説明する。この方法では、図2に示すように、
(1)透明なガラス板3の上面3Sに、親水性被膜5をコーティングするコーティングステップK1と、
(2)前記親水性被膜5がコーティングされたガラス板3上に、不透明の水膜6を形成する水膜形成ステップK2と、
(3)前記水膜6上で、タイヤTを走行させ、その接地形状Pをガラス板3の下方からビデオカメラ4で撮影する撮影ステップK3とを含んで構成される。
前記コーティングステップK1では、水溶性シリコンを主成分とする親水性コーティング剤を、前記ガラス板3の上面3Sに塗布することで、透明な親水性被膜5を形成する。このような親水性コーティング剤は、市販のものとして、例えば錦之堂(株)製のWATER・X親水コート、日本ケミカル工業(株)製のウォータ・クリーンガードなどが挙げられる。この種の親水性コーティング剤は、安価であり、又塗布によって親水基を持つ特殊シリコン被膜を形成するため、光触媒(酸化チタン)系のコーティング剤の如く紫外線が無くても、被膜形成直後から親水効果を発揮することができる。
しかしながら、このような親水性コーティング剤で親水性被膜5をコーティングした場合、その上を高荷重のタイヤが摩擦しながら転動するため、この親水性被膜5の剥離が早期に発生し、コーティングステップK1を頻繁に行わなければならないという新たな問題が発生する。そこで本発明では、図5に示すように、親水性コーティング剤をタイヤの走行方向Fとは平行に塗布している。この場合、走行方向Fと平行であれば、走行方向後方F1側から前方F2に向かって塗布しても、或いは前方F2側から後方F1に向かって塗布してもかまわない。
本発明者の研究の結果、親水性被膜5の剥離は、親水性コーティング剤を塗布した際に生じる塗り継ぎ時の界面jが影響していることが判明した。即ち、もし図6に示すように、親水性コーティング剤をタイヤの走行方向Fと直角方向に塗布する場合、ガラス板3の前記走行方向Fの長さが、塗布ローラなどの塗布具10の長さに比して大であるため、親水性被膜5を形成するためには、塗布面aの端部同士を重ね合わせて塗り継ぎする必要があり、このとき塗り継ぎ時の界面jが走行方向Fと直角方向に発生する。そしてこの界面jが、走行時のタイヤTとの擦れによって直角に力を受け、この界面jを基点として剥離が発生する。これに対して、タイヤの走行方向Fと平行に塗布する場合には、図5の如く、走行方向Fには塗り継ぎを要することなく連続して塗布しうる。そのため、少なくとも走行方向Fと直角方向には界面jが発生することがなく、親水性被膜5の剥離を防止することができる。
又親水性被膜5の耐久性を高めるためには、走行方向Fと平行に3〜5回の範囲で重ね塗りすることが好ましい。重ね塗りの回数が3回未満では、親水性被膜5の寿命が短くなって、コーティングステップK1を頻繁に行うことが必要となる。又重ね塗りの回数が5回を越えても、親水性被膜5の寿命のさらなる増加が見込まれず、コーティングステップK1における時間とコストの無駄となる。なお、前記重ね塗りでは、塗布→乾燥→塗布→乾燥・・・のように、先に塗布した被膜が乾燥した後、次の塗布を行う。この乾燥には、10〜20分程度必要となる。
又前記親水性被膜5の剥離を抑制するためには、ガラス板3の上面3Sが清浄であることも必要である。そのためは、前記コーティングステップK1において、前記親水性コーティング剤の塗布に先駆け、前記ガラス板3の上面3Sにおける汚れを除去する汚れ除去ステップK1aを行うことが好ましい。この汚れ除去ステップK1aでは、ガラスコンパウンドを用い、ガラス板3の上面3Sを研磨することにより油分を含む汚れを除去する。ガラスコンパウンドとしては、例えば自動車用の油膜取り剤など、研磨剤(コンパウンド)入りの市販の種々のものが採用できる。例えば市販のガラスコンパウンドとしては、(株)ソフト99コーポレーション製のガラス用コンパウンドZ、(株)ウィルソン製のガラスコンパウンドsuperなどが挙げられる。
次に、水膜形成ステップK2では、懸濁水を撒いて不透明の水膜を形成する。このとき、ガラス板3には前記親水性被膜5がコーティングされているため、表面張力の影響を抑えて懸濁水を薄く広範囲に拡散させることができる。従って、水膜の厚さを、例えば厚さ1.0mm程度まで減じることができる。前記懸濁水としては、ガッシュ、ポスターカラーなどの不透明水彩絵具を水で希釈したものが好適である。特に、ガッシュ、ポスターカラーは、彩度が高くタイヤの接地部分A(黒色)との識別性に優れるとともに、少量でも不透明さが失われないため水の特性を充分に維持することが可能であり、タイヤの排水性能を評価する上で特に好ましい。懸濁水の色としては、前述の如く、白色や黄色、とりわけ白色が接地形状Pを鮮明に映し出す上で好ましい。
次に、撮影ステップK3では、水膜6を形成したガラス板3上をタイヤTが走行する際、そのタイヤTの接地形状Pを、ガラス板3の下方からビデオカメラ4で撮影する。この撮影された接地形状Pの画像データは、前述の如く、例えばコンピュータなどの画像処理装置(図示しない)によって画像処理され、例えば接地面積、接地面形状、接地長さなどのデータが算出される。そしてこのデータに基づいて、走行時のタイヤ速度や水膜6の厚さに応じたタイヤTの排水性能が評価される。
又本発明では、ガラス面に、水溶性シリコンを主成分とする親水性コーティング剤によって親水性被膜5をコーティングしている。そのため、懸濁水が親水性被膜5に長時間接触していると、懸濁水に含まれる顔料やそのバインダーなどの成分が、親水性被膜5のシリコンに吸着して親水性被膜5自体が不透明化し、鮮明な画像が得られなくなる傾向がある。そこで、撮影ステップK3終了毎に、ガラス板3上の水膜6を、透明な水で洗い流す洗浄ステップK4を行うことが好ましい。
なお前記図2の如く、親水性被膜5による親水効果が維持されている間は、「水膜形成ステップK2」→「撮影ステップK3」→「洗浄ステップK4」→「水膜形成ステップK2」・・・と繰り返される。
以上、本発明の特に好ましい実施形態について詳述したが、本発明は図示の実施形態に限定されることなく、種々の態様に変形して実施しうる。
図2のフローチャートに基づき、本発明のタイヤの排水性評価方法の実験を表1の仕様で行い、ガラス板上に形成しうる水膜の厚さ、及び各水膜の厚さにおいて実施可能な排水性テストの回数(親水性被膜の耐久性)について評価した。比較のため、親水性被膜を形成しない場合(比較例2、3)、親水性被膜に代えて撥水性被膜を形成した場合(比較例4、5)も、併せてテストを実施した。
(ア)親水性被膜形成のための親水性コーティング剤として、錦之堂(株)製のWATER・X親水コートを使用した。
(イ)汚れ除去ステップのためのガラスコンパウンドとして、(株)ウィルソン製のガラスコンパウンドsuperを使用した。
(ウ)水膜形成用の懸濁水として、市販のポスタカラー(白)を水道水にて希釈したものを使用した。
(エ)撥水性被膜のための撥水性コーティング剤として、錦之堂(株)製のrain・Xを使用した。
Figure 0005469563
表1のように実施例は、厚さ1.0mmの薄い水膜での排水性テストを可能とするとともに、親水性被膜の耐久性を高め、コーティングステップの頻度を大幅に抑えうるのが確認できる。
3 ガラス板
4 ビデオカメラ
5 親水性被膜
6 水膜
K1 コーティングステップ
K1a 汚れ除去ステップ
K2 水膜形成ステップ
K3 撮影ステップ
K4 洗浄ステップ
P 接地形状
T タイヤ

Claims (4)

  1. 水膜を形成したガラス板上を走行しているタイヤの接地形状を、前記ガラス板の下方から撮影してタイヤの排水性を評価する方法であって、
    透明なガラス板の上面に、水溶性シリコンを主成分とする親水性コーティング剤を塗布して親水性被膜をコーティングするコーティングステップと、
    前記親水性被膜がコーティングされたガラス板上に、懸濁水を撒いて不透明の水膜を形成する水膜形成ステップと、
    前記水膜を形成したガラス板上でタイヤを走行させ、そのときの接地形状をガラス板の下方からビデオカメラで撮影する撮影ステップとを含むとともに、
    前記コーティングステップは、親水性コーティング剤をタイヤの走行方向と平行に塗布することを特徴とするタイヤの排水性評価方法。
  2. 前記コーティングステップは、親水性コーティング剤を3〜5回の範囲で重ね塗りすることを特徴とする請求項1記載の特徴とするタイヤの排水性評価方法。
  3. 前記撮影ステップ終了毎に、前記ガラス板表面の不透明な水膜を、透明な水で洗い流す洗浄ステップを行うことを特徴とする請求項1又は2記載のタイヤの排水性評価方法。
  4. 前記コーティングステップは、前記親水性コーティング剤の塗布に先駆け、前記ガラス板の上面をガラスコンパウンドで研磨することにより油分を含む汚れを除去する汚れ除去ステップを含むことを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載のタイヤの排水性評価方法。
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