JP5469324B2 - シンタクチックフォームの製造方法 - Google Patents
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従来、シンタクチックフォームの製造方法は次のようになされている。
すなわち、まず、モールド内にマイクロバルーンを充填し、次いでモールド内に充填されたマイクロバルーンに液状の熱硬化性を有する熱硬化性樹脂を注入して含浸させ、次いでモールドをオーブン内に入れ、該オーブンの雰囲気温度を制御することにより、モールド内のマイクロバルーンに含浸された熱硬化性樹脂を加熱硬化させ、これによりシンタクチックフォームを得ている。
シンタクチックフォームは、海中、特に大深度で用いられる深海探査機などの浮力材として使用されることから、大きな圧壊強度を有することが要求される。
すなわち、熱硬化性樹脂を加熱硬化させると、熱硬化性樹脂の架橋反応により自己発熱する。このような熱硬化性樹脂からの発熱を硬化発熱という。
したがって、熱硬化性樹脂が加熱硬化する過程において、上述した硬化発熱の作用により熱硬化性樹脂の中心部温度は周辺部温度よりも高くなる傾向にある。
さらに、マイクロバルーンは中空構造であることから熱伝導性が低いため、熱硬化性樹脂のうちモールドの中心部分に位置する熱硬化性樹脂ほど蓄熱し、熱硬化性樹脂の中心部温度が周辺部温度よりも高くなる傾向はより顕著なものとなる。
その結果、熱硬化性樹脂の加熱硬化の過程において、熱硬化性樹脂の中心部温度は短時間のうちに高い温度の発熱ピークに到達しその後徐々に低下していくことになる。
したがって、モールドの中心部分に位置する熱硬化性樹脂は周辺部分に位置する熱硬化性樹脂に比較して時間的に早く硬化しかつ収縮することになる。
このように、モールドの中心部分の熱硬化性樹脂が周辺部分よりも先行して短時間のうちに硬化し収縮すると、モールド内で成形されたシンタクチックフォームの内部ひずみが大きなものとなり、圧壊強度の向上を図る上で限界が生じてしまう。
特に、シンタクチックフォームの体積が大きくなるほど、熱硬化性樹脂の中心部温度の発熱ピークが高くなり、したがって、モールドの中心部分の熱硬化性樹脂が周辺部分よりもより短時間で硬化収縮し、シンタクチックフォームの内部ひずみがより大きなものとなり、圧壊強度の向上を図る上で不利がある。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、圧壊強度の向上を図る上で有利なシンタクチックフォームの製造方法を提供することにある。
なお、本明細書では、マイクロバルーン(微小中空球状体)と熱硬化性樹脂との複合材料をシンタクチックフォームというものとする。言い換えると、フィラーとしてマイクロバルーンを、マトリックスとして熱硬化性樹脂を用いた複合材料をシンタクチックフォームというものとする。
まず、マイクロバルーンを準備する。
本実施の形態では、マイクロバルーンとしてガラスを用いたマイクロバルーンを用いる。
また、マイクロバルーンの平均粒径は、10μm以上500μm以下である。
ここで、マイクロバルーンの平均粒径が10μmに満たないと、マイクロバルーン同士が緻密になりすぎるため、液状の熱硬化性樹脂を含浸するのが困難となる不利があり、マイクロバルーンの平均粒径が500μmを超えると、マイクロバルーンの充填率が低くなり成形されるシンタクチックフォームが高密度(高比重)となるという問題がある。
なお、マイクロバルーンを形成する材料はガラスに限定されるものではなく、従来公知のさまざまな無機物(無機系材料)あるいは有機物(有機系材料)を用いることができる。
無機物としては、ホウケイ酸ガラス、シリカ、カーボン、セラミックなどが挙げられる。
有機物としては、各種熱可塑性樹脂や各種熱硬化性樹脂が挙げられる。
モールド20はシンタクチックフォームを成形するものである。
本実施の形態では、モールド20は、モールド本体22と、下蓋体24と、上蓋体26とを含んで構成されている。
モールド本体22は、本実施の形態では断面形状が均一の円筒壁状を呈している。
下蓋体24は、本実施の形態では、モールド本体22の下部開口を閉塞する円盤状を呈している。
下蓋体24にはその厚さ方向に貫通する第1孔部28が形成されている。
上蓋体26は、モールド本体22の上部開口を閉塞する円盤状を呈している。
上蓋体26にはその厚さ方向に貫通する第2孔部30が形成されている。
すなわち、本実施の形態では、モールド20によって成形されるシンタクチックフォームは高さと、この高さよりも大きな直径とを有する扁平な円柱状を呈している。具体的には、シンタクチックフォームの高さは200mm、直径は340mmである。
シンタクチックフォームの直径はモールド本体22の直径によって決定され、シンタクチックフォームの高さは下蓋体24および上蓋体26の間隔によって決定されることになる。
無論、シンタクチックフォームの外径形状は扁平な円柱状に限定されるものではなく、シンタクチックフォームの外径形状として、直方体状、立方体状、球状など従来公知のさまざまな形状が採用可能である。
なお、本発明の製造方法によって得られるシンタクチックフォームは、その体積が15リットル以上であり、かつ、最も薄い部分の厚みが150mm以上であると、シンタクチックフォームを深海探査機などの浮力材として使用に足る浮力を得ることができ、製造コスト面でメリットがある。
シンタクチックフォームの体積が15リットル以上であり、かつ、最も薄い部分の厚みが150mm以上であるという条件に満たないと、必要な浮力を得るためにシンタクチックフォーム同士を接着剤あるいは金具により接合して用いるしかなく、製造コストを低減する上で不利がある。
まず、モールド本体22に下蓋体24を取着し、上蓋体26を取り外した状態で、モールド本体22内に選別工程で得られたマイクロバルーンMを充填する。
次いで、モールド本体22の上部開口を上蓋体26で閉塞する。
以上の工程が特許請求の範囲の第1の工程に相当する。
本実施の形態では、熱硬化性樹脂としてエポキシ熱硬化性樹脂を用いるが、熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂、ポリウレタン、熱硬化性ポリイミド、メラミン樹脂、尿素樹脂(ユリア樹脂)、不飽和ポリエステル樹脂などの従来公知のさまざまな熱硬化性樹脂が採用可能である。
これにより、モールド本体22内に充填されたマイクロバルーンMに熱硬化性樹脂が含浸する。
やがて、第2孔部30から未硬化の液状の熱硬化性樹脂があふれてきたならば、第1孔部28からの熱硬化性樹脂の注入を停止する。
そして、図2に示すように、第1、第2孔部28、30をそれぞれ第1、第2閉塞部材32、34で閉塞する。
以上の工程が特許請求の範囲の第2の工程に相当する。
第1加熱工程P1は、オーブン内の雰囲気温度Taを0度以上80度以下の第1温度T1で1時間以上保持するものである。
このようにモールド20を入れたオーブンの雰囲気温度Taを第1温度T1で1時間以上保持することにより、モールド20内のマイクロバルーンMに含浸された熱硬化性樹脂をゆっくり反応させることができ、熱硬化性樹脂の硬化発熱による中心部温度Tbの急激な上昇を抑制する上で有利となっている。
また、第1温度T1を保持する時間が1時間未満であると、第1加熱工程P1での熱硬化性樹脂の反応量が少なく熱硬化性樹脂の反応を時間的に分散する上で不利となる。
モールド20内のマイクロバルーンに含浸された熱硬化性樹脂は、第1加熱工程P1によって第1温度T1で加熱されることで熱硬化性樹脂の分子同士が架橋する反応が部分的に進行することで硬化発熱も部分的に進行している。
第2加熱工程P2により第2温度T2で加熱されることで熱硬化性樹脂の分子同士が架橋する反応がさらに進行するが、その際の硬化発熱は第1加熱工程P1で反応が終了していない残りの熱硬化性樹脂の分子同士が架橋する反応によるものであり、したがって、第2加熱工程P2によって発生する硬化発熱は時間的に分散されたものとなり、中心部温度Tbの発熱ピークは抑制されたものとなる。
中心部温度Tbは発熱ピークを過ぎると、次第に雰囲気温度Taに近づいていく。これは、熱硬化性樹脂の反応が時間経過と共に低下し、やがて熱硬化性樹脂の反応が終了すると、硬化発熱がゼロとなることによる。
これにより、第3の工程が終了する。
なお、モールド20内への熱硬化性樹脂Rの注入に際してモールド20内に負圧を与えるVaRTM成形(Vacuum Assisted Resin Transfer Molding)を採用するか、モールド20内への熱硬化性樹脂Rの注入に際してモールド20内に負圧を与えないRTM成形(Resin Transfer Molding)を採用するかは任意である。
したがって、第1、第2加熱工程P1,P2の2つの加熱工程によって熱硬化性樹脂の硬化発熱を時間的に分散して行わせたので、モールド20内の熱硬化性樹脂の中心部温度Tbの発熱ピークを低下させる上で有利となる。
そのため、モールド20の中心部分に位置する熱硬化性樹脂の硬化収縮と、周辺部分に位置する熱硬化性樹脂の硬化収縮との差を低減する上で有利となり、これによりモールド20内で成形されたシンタクチックフォームの内部ひずみの発生を抑制することができ、シンタクチックフォームの圧壊強度の向上を図る上で有利となる。
特に、シンタクチックフォームの体積が大きくなるほど、熱硬化性樹脂の中心部温度の発熱ピークが高くなる傾向にあるが、本実施の形態によれば、熱硬化性樹脂の中心部温度の発熱ピークを効果的に低下させることができるため、内部ひずみの発生を確実に抑制でき、したがって、体積が大きなシンタクチックフォームであっても圧壊強度の向上を図る上で有利となる。
次に実施例について説明する。
図3は比較例と実施例の製造方法の試験結果を示す図である。
図3に示す比較例、実施例1、実施例2の条件でシンタクチックフォームを製造した。
(1)比較例
シンタクチックフォームは扁平な円柱状を呈し、成形寸法は直径340mm、高さ190mmとし、容積は17リットルとした。
比較例では、モールド20をオーブン内に入れたならば、第1加熱工程に相当する工程を経ることなく、第2加熱工程のみを実施し、オーブン内の雰囲気温度Taを第1温度T1から高い第2温度T2まで約24時間をかけて上昇させたのちこの第2温度T2を熱硬化性樹脂が硬化するに足る時間保持した。
第1温度T1は40度とし、第2温度T2は180度とした。
(2)実施例1
シンタクチックフォームは比較例と同じく、扁平な円柱状を呈し、成形寸法は直径340mm、高さ190mmとし、容積は17リットルとした。
第1加熱工程では、第1温度T1を60度とし、第1温度T1を保持する時間を10時間とした。
第2加熱工程では、第2温度T2を180度とした。
詳細には、雰囲気温度Taを第1温度T1=60度から第2温度T2=180度まで約21時間かけて上昇させたのち、第2温度T2=180度で約24時間保持し、その後、室温まで温度を低下させた。
(3)実施例2
シンタクチックフォームは、直方体状を呈し、成形寸法は縦580mm、横580mm、高さ200mmとし、容積は63リットルとした。
第1加熱工程では、第1温度T1を40度とし、第1温度T1を保持する時間を90時間とした。
第2加熱工程では、第2温度T2を195度とした。
詳細には、雰囲気温度Taを第1温度T1=40度から第2温度T2=195度まで約70時間かけて上昇させたのち、第2温度T2=195度で約24時間保持し、その後、室温まで温度を低下させた。
比較例では、熱硬化性樹脂の反応が急激に促進された結果、硬化発熱ピーク(モールド20内の熱硬化性樹脂の中心部温度Tb)が252度まで上昇しており、発熱ピークが実施例1、2に比較して100度以上高い温度に達している。
そのため、モールドの中心部分に位置する熱硬化性樹脂の硬化収縮と、周辺部分に位置する熱硬化性樹脂の硬化収縮との差が大きなものとなっており、モールド内で成形されたシンタクチックフォームの内部ひずみが顕著なものとなり、シンタクチックフォームの圧壊強度の向上を図る上で不利となっている。
特に、シンタクチックフォームの体積が大きくなるほど、熱硬化性樹脂の中心部温度の発熱ピークが高くなる傾向にあるため、比較例の場合には、内部ひずみが顕著に発生することになり、圧壊強度の向上を図る上で一層不利となる。
比較例では、自らの硬化収縮に耐え切れず硬化終了後に既に割れており、成形品質は不良であった。
実施例2では、硬化発熱ピーク(中心部温度Tb)は63度となっており、成形品質は良好であった。
なお、実施例2では、実施例1に比較して第1温度T1の温度をより低温とし、第1温度T1を保持する時間をより長時間としたので、硬化発熱ピーク(中心部温度Tb)が実施例1に比較してより低温となっている。
したがって、モールド20の中心部分に位置する熱硬化性樹脂の硬化収縮と、周辺部分に位置する熱硬化性樹脂の硬化収縮との差を低減する上でより有利となっている。
これによりモールド20内で成形されたシンタクチックフォームの内部ひずみの発生を一層抑制することができ、より均一性の高いシンタクチックフォームを得ることができ、均一性の向上を図る上でより一層有利となっている。
Claims (1)
- モールド内に平均粒径が10μm以上500μm以下のガラスからなるマイクロバルーンを充填する第1の工程と、
前記モールド内に充填されたマイクロバルーンに液状の熱硬化性を有するエポキシ熱硬化性樹脂を注入して含浸させる第2の工程と、
前記モールドをオーブン内に入れ、該オーブンの雰囲気温度を制御することにより、前記モールド内のマイクロバルーンに含浸されたエポキシ熱硬化性樹脂を加熱硬化させることでシンタクチックフォームを得る第3の工程とを含むシンタクチックフォームの製造方法であって、
前記第3の工程は、
前記オーブン内の雰囲気温度を0度以上80度以下の第1温度で1時間以上保持する第1加熱工程と、
前記第1加熱工程ののち、前記オーブン内の雰囲気温度を100度以上250度以下の第2温度まで上昇させたのちこの第2温度を前記エポキシ熱硬化性樹脂が硬化するに足る時間保持する第2加熱工程とを含み、
前記シンタクチックフォームは、その体積が15リットル以上、かつ、最も薄い部分の厚みが150mm以上である、
ことを特徴とするシンタクチックフォームの製造方法。
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