JP5717368B2 - シンタクチックフォームの製造方法 - Google Patents
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Description
従来、シンタクチックフォームの製造方法は次のようになされている。
すなわち、まず、モールド内にマイクロバルーンを充填し、液状の熱硬化性樹脂を前記モールド内に注入して前記マイクロバルーンに含浸させ、モールドをオーブン内に入れ、該オーブンの雰囲気温度を制御することにより、モールド内のマイクロバルーンに含浸された熱硬化性樹脂を加熱硬化させ、これによりシンタクチックフォームを得ている。
シンタクチックフォームは、海中、特に大深度で用いられる深海探査機などの浮力材として使用されることから、低い密度と、大きな圧壊強度とを有することが要求される。
また、マイクロバルーンには、破損した破片や、中空率の低いマイクロバルーンといった高密度成分がある割合で含まれていることから、これを用いて製造されるシンタクチックフォームは、十分な低密度化を達成できなかった。
そこで本発明者は、強度の向上を図りつつ低密度化を達成すべく、シンタクチックフォームの製造方法を提案した(特許文献3参照)。この製造方法は、水のような液媒の存在下、マイクロバルーンに圧力をかけ、これにより破損したマイクロバルーンの破片を除去し、得られた破損していないマイクロバルーンを選別し、続いて選別されたマイクロバルーンに熱硬化性樹脂を含浸させ、シンタクチックフォームを得るというものである。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、強度の向上を図りつつ、十分な低密度化を達成したシンタクチックフォーム形成用材料およびシンタクチックフォームの製造方法を提供することにある。
すなわち本発明は、以下の通りである。
1.マイクロバルーンと、平均粒径が前記マイクロバルーンの平均粒径の1/10以下である無機粉体とを混合する第1工程と、
前記第1工程で得られた混合物をモールド内に充填する第2工程と、
前記第2工程後、液状の熱硬化性樹脂を前記モールド内に注入して前記マイクロバルーンに含浸させる第3工程と、
前記モールド内で前記熱硬化性樹脂を加熱硬化させる第4工程と
を有し、前記マイクロバルーンが、下記の加圧工程と選別工程とを経て得られたものであるシンタクチックフォームの製造方法。
加圧工程:前記マイクロバルーンに圧力をかける工程。
選別工程:前記加圧工程で破損したマイクロバルーンの破片を除去することで破損していないマイクロバルーンを得る工程。
2.前記無機粉体が、シリカまたはアルミナであることを特徴とする前記1に記載の製造方法。
3.前記無機粉体が、前記マイクロバルーンに対して0.01〜1質量%の範囲で添加されることを特徴とする前記1または2に記載の製造方法。
4.前記マイクロバルーンが、ガラス製のマイクロバルーンであることを特徴とする前記1〜3のいずれかに記載の製造方法。
本発明のシンタクチックフォームの製造方法は、マイクロバルーンと、前記マイクロバルーンの平均粒径の1/10以下である無機粉体とを混合する第1工程と、前記第1工程で得られた混合物をモールド内に充填する第2工程と、前記第2工程後、液状の熱硬化性樹脂を前記モールド内に注入して前記マイクロバルーンに含浸させる第3工程と、前記モールド内で前記熱硬化性樹脂を加熱硬化させる第4工程とを有するものであるので、マイクロバルーンの流動性が顕著に高まり、モールド内にマイクロバルーンを高充填することができ、強度の向上を図りつつ、十分な低密度化を達成したシンタクチックフォームを提供できる。
本明細書でいうシンタクチックフォームとは、少なくともマイクロバルーン(微小中空球状体)と熱硬化性樹脂との複合材料を言うものとする。言い換えると、フィラーとしてマイクロバルーンを、マトリックスとして熱硬化性樹脂を用いた複合材料をシンタクチックフォームと言うものとする。
ここで、マイクロバルーンの平均粒径が10μmに満たないと、マイクロバルーン同士が緻密になりすぎるため、液状の熱硬化性樹脂を含浸するのが困難となる不利があり、マイクロバルーンの平均粒径が500μmを超えると、マイクロバルーンの充填率が低くなり形成されるシンタクチックフォームが高密度(高比重)となるという問題がある。
なお、マイクロバルーンを形成する材料はガラスに限定されるものではなく、従来公知のさまざまな無機物(無機系材料)あるいは有機物(有機系材料)を用いることができる。無機物としては、ホウケイ酸ガラス、シリカ、カーボン、セラミックなどが挙げられる。有機物としては、各種熱可塑性樹脂や各種熱硬化性樹脂が挙げられる。
まず、マイクロバルーンと液媒とを混合してスラリー状とする。液媒としては、水や、ベンゼン、エタノールに代表される有機溶媒が挙げられる。続いて、マイクロバルーンに圧力をかける加圧工程を行なう。加圧工程は、特許文献3に開示された耐圧容器を使用し、マイクロバルーンにかける圧力を1MPa以上30MPa以下とするのが好ましい。加圧工程により、該圧力に耐え得るマイクロバルーンは破損せずにその形状を維持し、該圧力に耐えられないマイクロバルーンは破損して破片となる。
次に、加圧工程で破損したマイクロバルーンの破片を除去することで破損していないマイクロバルーンを得る選別工程を行う。
この選別工程は、例えば、加圧工程によって得られたマイクロバルーンの破片および破損していないマイクロバルーンを液媒に投入し、液媒中において沈降しないマイクロバルーンを得ることでなされる。液媒として水を用いると、水よりも比重が重い破片は液媒中で沈降し、液媒よりも比重が軽い破損していないマイクロバルーンは液媒中で沈降せず浮かび上がる。したがって、液媒中で浮かび上がったマイクロバルーンを回収することで破損していないマイクロバルーンを得ることができる。この選別工程においては、破損していないマイクロバルーンのうち、液媒よりも比重が重いマイクロバルーンも液媒中を沈降するため、比重が重いマイクロバルーンを排除でき、シンタクチックフォームの比重の低下を図る上で有利となる。
無機粉体としては、本発明の効果の点から、例えばシリカ、アルミナ等が好ましい。これらは市販品を利用することができ、例えばシリカとして疎水性のヒュームドシリカである日本アエロジル(株)製、商品名AEROSIL R972、住友化学(株)製、商品名AKP−G015等が挙げられる。なお、無機粉体は表面が化学修飾されていても構わない。
また無機粉体の比重は、できるだけ低いほうが好ましい。
まず、マイクロバルーンと、前記マイクロバルーンの平均粒径の1/10以下である無機粉体とを混合する第1工程を行なう。当該混合は、簡易的には、塩化ビニル樹脂のようなプラスチック製の袋へ両粉体を入れて袋自体を揺することで攪拌混合が可能であるが、混合量が多い場合は、ヘンシェルミキサーやレーディゲーミキサーのような攪拌型粉体装置を用いて行なえばよい。また、マイクロバルーンは、前述のように加圧工程と選別工程とを経て得られたものであることが好ましい。
図1に示すモールド20を用意する。本実施の形態では、モールド20は、モールド本体22と、下蓋体24と、上蓋体26とを含んで構成されている。
モールド本体22は、本実施の形態では断面形状が均一の円筒壁状を呈している。
下蓋体24は、本実施の形態では、モールド本体22の下部開口を閉塞する円盤状を呈している。
下蓋体24にはその厚さ方向に貫通する第1孔部28が形成されている。
上蓋体26は、モールド本体22の上部内周に接触しつつ挿入される大きさの外径を有する小径部2602と、小径部2602と同軸上で小径部2602よりも大きな外径を有しモールド本体22の上部開口を閉塞する大径部2604とを有している。上蓋体26にはその厚さ方向に貫通する第2孔部30が形成されている。すなわち、本実施の形態では、モールド20によって成形されるシンタクチックフォームは高さと、この高さよりも大きな直径とを有する扁平な円柱状を呈している。シンタクチックフォームの直径はモールド本体22の直径によって決定され、シンタクチックフォームの高さは下蓋体24の上面および上蓋体26の小径部2602の下面との間隔によって決定されることになる。無論、シンタクチックフォームの外径形状は扁平な円柱状に限定されるものではなく、シンタクチックフォームの外径形状として、直方体状、立方体状、球状など従来公知のさまざまな形状が採用可能である。
まず、モールド本体22に下蓋体24を取着し、上蓋体26を取り外した状態で、モールド本体22内に前記第1工程で得られた混合物Mを充填する。
次いで、モールド本体22の上部開口を上蓋体26で閉塞する。
具体的には、第1孔部28から、液状の熱硬化性樹脂Rを所定の圧力で注入すると共に、第2孔部30に負圧をかける。これにより、モールド本体22内に充填されたマイクロバルーンに熱硬化性樹脂Rが含浸する。
やがて、第2孔部30から未硬化の液状の熱硬化性樹脂Rがあふれてきたならば、第1孔部28からの熱硬化性樹脂Rの注入を停止する。
そして、図2に示すように、第1、第2孔部28、30をそれぞれ第1、第2閉塞部材32、34で閉塞する。
前記のようにして、熱硬化性樹脂Rが含浸されたマイクロバルーンが収容されたモールド20を加熱用のオーブンに入れ、所定の温度で所定時間加熱することで、熱硬化性樹脂Rが熱硬化する。
熱硬化性樹脂の硬化が終了したならば、モールド本体22から下蓋体24、上蓋体26を取り外し、形成されたシンタクチックフォームを取り出す。
これにより、シンタクチックフォームが得られる。
なお、本実施の形態では、モールド20内への熱硬化性樹脂Rの注入に際してモールド20内に負圧を与えるVaRTM成形(Vacuum Assisted Resin Transfer Molding)を採用したが、モールド20内への熱硬化性樹脂Rの注入に際してモールド20内に負圧を与えないRTM成形(Resin Transfer Molding)、もしくは加圧を行なわず減圧のみで吸入する方法を採用してもよいことは無論である。
選別されたマイクロバルーンの平均粒径を下記表1に示す。
なお、平均粒径は、粒度分析計マイクロトラックMT3300EX(日機装製)を使用して測定した。
次に、選別されたマイクロバルーンと、無機粉体とを混合した。無機粉体の使用量は、マイクロバルーンに対し、0.06質量%または0.10質量%とした。得られた混合物を、以下、混合物Mという。なお、無機粉体は、疎水性のヒュームドシリカである日本アエロジル(株)製、商品名AEROSIL R972、または、アルミナである住友化学(株)製、商品名AKP−G015である。
AEROSIL R972の平均粒径は、16nmであり、AKP−G015の平均粒径は、30nmである。
したがって、そのような狭いスペースに装着可能なシンタクチックフォームの体積は限定されており、体積が同じシンタクチックフォームであっても軽い比重の方がより大きな浮力を得ることができるため有利である。
あるいは、同じ浮力を得るのであれば、より軽い比重のシンタクチックフォームの方がより少ない体積で済むことから、深海探査機において占有するスペースを節約できるため有利である。
Claims (4)
- マイクロバルーンと、平均粒径が前記マイクロバルーンの平均粒径の1/10以下である無機粉体とを混合する第1工程と、
前記第1工程で得られた混合物をモールド内に充填する第2工程と、
前記第2工程後、液状の熱硬化性樹脂を前記モールド内に注入して前記マイクロバルーンに含浸させる第3工程と、
前記モールド内で前記熱硬化性樹脂を加熱硬化させる第4工程と
を有し、前記マイクロバルーンが、下記の加圧工程と選別工程とを経て得られたものであるシンタクチックフォームの製造方法。
加圧工程:前記マイクロバルーンに圧力をかける工程。
選別工程:前記加圧工程で破損したマイクロバルーンの破片を除去することで破損していないマイクロバルーンを得る工程。 - 前記無機粉体が、シリカまたはアルミナであることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
- 前記無機粉体が、前記マイクロバルーンに対して0.01〜1質量%の範囲で添加されることを特徴とする請求項1または2に記載の製造方法。
- 前記マイクロバルーンが、ガラス製のマイクロバルーンであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
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