JP6171257B2 - 複合材料及びその製造方法 - Google Patents

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本発明は、熱伝導性フィラー及び樹脂を含有する複合材料及びその製造方法に関する。
熱伝導性フィラーと樹脂とを混合して熱伝導性を有する複合材料については、従来から数多く開発されている。例えば、グラファイトは、単結晶に近い状態では800W/mKの高い熱伝導率を示すが、グラファイトと樹脂とを均一に混合して複合材料を作製しても、熱伝導性が十分なものは得られず、例えば、グラファイトを50質量%含有する複合材料であっても熱伝導率が10W/mKを超えるものは得られず(特開2011−16937号公報(特許文献1))、パワーデバイスの放熱といった高い熱伝導率が要求される用途に適用できる複合材料が求められてきた。
また、熱伝導性を向上させるために、複合材料中の熱伝導性フィラーの連結点を増加させることが検討されている。例えば、特開2000−91485号公報(特許文献2)では、炭素繊維などの熱伝導性の配合材を内包する樹脂材が開示されており、前記配合材が接触したり、繊維状の配合材を配向させることにより高い熱伝導性が得られることも開示されている。しかしながら、この樹脂材では、樹脂からなるマトリクス相に前記配合材が分散しているため、前記熱伝導性の配合材は必ずしも十分な熱伝導パスを形成しておらず、樹脂材の熱伝導性も十分なものではなかった。
特開2011−16937号公報 特開2000−91485号公報
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、優れた熱伝導性を有する複合材料、並びに、このような複合材料において、確実に熱伝導パスを形成することが可能な複合材料の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、樹脂粒子及び熱伝導性フィラーを含有する混合物を圧縮することによって、熱伝導性に優れた複合材料が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の複合材料は、熱伝導性フィラーにより形成されているマトリクス相と、該マトリクス相中に独立した島状で分散している樹脂相とを備えている複合材料であって、前記樹脂相の平均アスペクト比が以上であり、前記複合材料の熱伝導方向が前記熱伝導性フィラーの熱伝導方向と一致していることを特徴とするものである。このような複合材料において、前記熱伝導性フィラーの形状としては平板状又は繊維状が好ましい。また、前記樹脂相は配向した状態で分散していることが好ましい。さらに、前記樹脂相の形状としては平板状又は繊維状が好ましい。
また、本発明の複合材料の製造方法は、内部に空隙を有する樹脂粒子及び熱伝導性フィラーを含有する混合物を圧縮することによって、前記熱伝導性フィラーにより形成されているマトリクス相中に前記樹脂粒子が変形して形成された樹脂相を独立した島状で分散させることを特徴とするものである。
このような複合材料の製造方法において、前記樹脂相は配向した状態で分散させることが好ましい。また、前記樹脂相の形状としては平板状又は繊維状が好ましい。さらに、前記樹脂粒子としては、空隙率が10〜99.5%であるものが好ましく、樹脂の発泡体がより好ましい。また、前記樹脂粒子においては、表面が熱伝導性フィラーで被覆されていることが好ましい。
なお、本発明の複合材料によって優れた熱伝導性が得られる理由は必ずしも定かではないが、本発明者らは以下のように推察する。すなわち、本発明の複合材料の製造方法においては、熱伝導性フィラー及び樹脂粒子を含有する混合物を、例えば圧縮成形する。これにより、樹脂粒子が圧縮方向に押し潰されるため、島状の樹脂相が熱伝導性フィラーからなるマトリクス相によって覆われた状態の複合材料が得られる。そして、前記マトリクス相内では熱伝導性フィラーが配向して熱伝導パスを形成するため、高い熱伝導率が得られると推察される。
一方、従来の複合材料の製造方法においては、熱伝導性フィラーと樹脂とが均一に混合されている混合物を圧縮成形する。これにより、熱伝導性フィラーが圧縮方向と垂直な方向に配向した状態で樹脂相中に均一に分散している複合材料が得られる。この複合材料においては、樹脂相がマトリクス相となり、複合材料を横断する熱伝導パスが形成されにくいため、本発明の複合材料に比べて熱伝導率が低くなると推察される。
本発明によれば、複合材料中に確実に熱伝導パスを形成することができ、熱伝導性に優れた複合材料を得ることが可能となる。
実施例及び比較例で作製した圧縮成形体及び熱伝導率測定用試料を示す模式図である。 実施例1で得られた熱伝導率測定用試料のxz断面の走査型電子顕微鏡写真である。 実施例1で得られた熱伝導率測定用試料のxz断面の走査型電子顕微鏡写真である。 実施例1で得られた熱伝導率測定用試料のxy平面のX線CT断面像を示すX線写真である。 実施例2で得られた熱伝導率測定用試料のxz断面の走査型電子顕微鏡写真である。 実施例2で得られた熱伝導率測定用試料のxz断面の走査型電子顕微鏡写真である。 実施例2で得られた熱伝導率測定用試料のxy平面のX線CT断面像を示すX線写真である。 実施例4で得られた熱伝導率測定用試料のxz断面の走査型電子顕微鏡写真である。 実施例4で得られた熱伝導率測定用試料のxz断面の走査型電子顕微鏡写真である。 実施例4で得られた熱伝導率測定用試料のxy平面のX線CT断面像を示すX線写真である。 実施例4で得られた熱伝導率測定用試料のX線CT立体像を示すX線写真である。 グラファイト含有率と熱伝導率との関係を示すグラフである。 実施例5で調製した表面がグラファイトで被覆されたポリスチレン極小ビーズの走査型電子顕微鏡写真である。 実施例5で得られた熱伝導率測定用試料のxz断面の走査型電子顕微鏡写真である。 実施例5で得られた熱伝導率測定用試料のxz断面の走査型電子顕微鏡写真である。 実施例5で得られた熱伝導率測定用試料のxy平面のX線CT断面像を示すX線写真である。 実施例8で調製した表面が窒化ホウ素で被覆されたポリスチレン極小ビーズの走査型電子顕微鏡写真である。 比較例9で得られた熱伝導率測定用試料のxz断面の走査型電子顕微鏡写真である。 比較例9で得られた熱伝導率測定用試料のxy平面のX線CT断面像を示すX線写真である。 比較例10で得られた熱伝導率測定用試料のxz断面の走査型電子顕微鏡写真である。 比較例10で得られた熱伝導率測定用試料のxy平面のX線CT断面像を示すX線写真である。 実施例9で調製した表面がグラファイトで被覆されたポリエーテルイミドペレットの走査型電子顕微鏡写真である。 実施例9で得られた熱伝導率測定用試料のxy平面のX線CT断面像を示すX線写真である。 実施例9で得られた熱伝導率測定用試料のxz平面のX線CT断面像を示すX線写真である。 比較例11で得られた熱伝導率測定用試料のxy平面のX線CT断面像を示すX線写真である。 比較例11で得られた熱伝導率測定用試料のxz平面のX線CT断面像を示すX線写真である。 実施例10で得られた熱伝導率測定用試料のxy平面のX線CT断面像を示すX線写真である。 実施例10で得られた熱伝導率測定用試料のxz平面のX線CT断面像を示すX線写真である。 比較例12で得られた熱伝導率測定用試料のxy平面のX線CT断面像を示すX線写真である。 比較例12で得られた熱伝導率測定用試料のxz平面のX線CT断面像を示すX線写真である。 グラファイト含有率と熱伝導率との関係を示すグラフである。 比較例13で得られた熱伝導率測定用試料のxy平面のX線CT断面像を示すX線写真である。 比較例13で得られた熱伝導率測定用試料のxz平面のX線CT断面像を示すX線写真である。 比較例14で得られた熱伝導率測定用試料のxy平面のX線CT断面像を示すX線写真である。 比較例14で得られた熱伝導率測定用試料のxz平面のX線CT断面像を示すX線写真である。 比較例15で得られた熱伝導率測定用試料のxy平面のX線CT断面像を示すX線写真である。 比較例15で得られた熱伝導率測定用試料のxz平面のX線CT断面像を示すX線写真である。 比較例16で得られた熱伝導率測定用試料のxy平面のX線CT断面像を示すX線写真である。 比較例16で得られた熱伝導率測定用試料のxz平面のX線CT断面像を示すX線写真である。 比較例17で得られた熱伝導率測定用試料のxy平面のX線CT断面像を示すX線写真である。 比較例17で得られた熱伝導率測定用試料のxz平面のX線CT断面像を示すX線写真である。 比較例18で得られた熱伝導率測定用試料のxy平面のX線CT断面像を示すX線写真である。 比較例18で得られた熱伝導率測定用試料のxz平面のX線CT断面像を示すX線写真である。 比較例19で得られた熱伝導率測定用試料のxy平面のX線CT断面像を示すX線写真である。 比較例19で得られた熱伝導率測定用試料のxz平面のX線CT断面像を示すX線写真である。
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
先ず、本発明の複合材料について説明する。本発明の複合材料は、熱伝導性フィラーにより形成されているマトリクス相と、該マトリクス相中に独立した島状で分散している樹脂相とを備えるものである。本発明の複合材料においては、熱伝導性フィラーによりマトリクス相が形成されているため、このマトリクス相が熱伝導パスとなり、優れた熱伝導性を得ることができる。また、熱伝導性フィラーにより形成されているマトリクス相中に独立した島状の樹脂相が存在しているため、マトリクス相が補強され、熱伝導性フィラーのみからなる成形体の脆さを改善することができる。
本発明にかかるマトリクス相を形成する熱伝導性フィラーとしては、例えば、板状グラファイト、板状窒化アルミニウム、板状窒化ホウ素、板状アルミナ、アルミフレーク、銅フレーク等の平板状の熱伝導性フィラー、SiC繊維、炭素繊維、カーボンナノチューブ、金属めっきを施した繊維、金属繊維等の繊維状の熱伝導性フィラーが挙げられる。これらの熱伝導性フィラーは1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。また、このような熱伝導性フィラーのうち、より高い熱伝導率が得られるという観点から、板状グラファイト、板状窒化ホウ素、炭素繊維、カーボンナノチューブが好ましい。
このような熱伝導性フィラーの平均長軸長さとしては、0.5μm〜10mmが好ましく、1μm〜1000μmがより好ましい。熱伝導性フィラーの平均長軸長さが前記下限未満になると、熱伝導性フィラー間の熱伝導が起こりにくくなり、かつ粒界抵抗が増大するため、複合材料の熱伝導性が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、得られる複合材料の均一性が低下する傾向にある。また、本発明に用いる熱伝導性フィラーとしては、高い熱伝導性が得られるという観点から、熱伝導性フィラーにおける熱伝導性の最も高い方向が熱伝導性フィラーの長軸方向と一致しているものが特に好ましいが、熱伝導性フィラーの入手可能性や熱伝導性フィラーの異方性の程度によって必ずしもそれに限定されるものではない。また、本発明の複合材料においては、より高い熱伝導性が得られるという観点から、このような熱伝導性フィラーの熱伝導方向と複合材料の熱伝導方向が一致していることが好ましい。
また、前記熱伝導性フィラーの平均厚さ(平板状の場合)又は平均直径(繊維状の場合)としては1nm〜1mmが好ましく、10nm〜100μmがより好ましい。熱伝導性フィラーの平均厚さ又は平均直径が前記下限未満になると、熱伝導界面の増加により熱抵抗が増大したり、熱伝導性フィラーそのものの熱伝導性が低下したりする傾向にあり、他方、前記上限を超えると、熱伝導性フィラーが過度に粗大となり、樹脂成分との複合化が困難となる傾向にある。
さらに、前記熱伝導性フィラーの平均アスペクト比(平板状の場合:平均長軸長さ/平均厚さ、繊維状の場合:平均長軸長さ/平均直径)としては、1より大きければ特に制限はないが、熱伝導性フィラーの配向によって高い熱伝導性が得られるという観点から、2以上が好ましく、10以上がより好ましい。なお、熱伝導性フィラーの平均アスペクト比の上限として特に制限はないが、10000以下が好ましい。
本発明にかかる樹脂相を形成する樹脂成分としては、圧縮・加熱により成形できるものであれば特に制限はなく、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン)、ポリオレフィンエラストマー、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン、ABS樹脂、ポリアミドイミド、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、ブチルゴム、天然ゴム、ポリイソプレン、ポリエーテルイミド、シリコーン樹脂等が挙げられる。また、エポキシ樹脂やフェノール樹脂等の熱硬化性樹脂も使用することができる。これらの樹脂成分は1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。また、このような樹脂成分のうち、発泡体を得る場合には、ポリスチレン、ポリエチレンが好ましい。
本発明の複合材料中の樹脂相の形状としては、熱伝導性フィラーにより形成されるマトリクス相の熱伝導パスの伝導性が損なわれない限り、特に制限はないが、平板状又は繊維状が好ましい。樹脂相がこのよう形状を有することにより、熱伝導性フィラーにより形成されるマトリクス相同士の密着を促進または補助しやすく、前記マトリクス相の熱伝導パスが迂回するために起こる複合材料の熱伝導性の低下を抑制することが可能となる。また、平板状又は繊維状の樹脂相はマトリクス相中に配向した状態で存在していることが好ましい。これにより、前記熱伝導パスの形成が阻害されにくくなり、複合材料の熱伝導性を更に向上させることが可能となるだけでなく、少ない熱伝導性フィラー量で高い熱伝導率を得ることができる。
前記樹脂相の平均長軸長さ(球状の場合には平均直径)としては、マトリクス相を形成する熱伝導性フィラーの平均長軸長さの1倍以上であれば特に制限はないが、2〜100倍が好ましい。樹脂相の平均長軸長さが前記下限未満になると、得られる複合材料の熱伝導性が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、熱伝導パスが形成されにくくなる傾向にある。
また、前記樹脂相の平均厚さ(平板状の場合)、平均直径(繊維状の場合)又は平均短軸長さ(その他の形状(球状を除く)の場合)としては0.5μm〜10mmが好ましく、1μm〜5mmがより好ましい。特に、複合材料に高熱伝導性を発現させるためには、樹脂相の大きさ(特に、平均厚さ)が熱伝導性フィラーの大きさ(特に、平均厚さ(平板状の場合)又は平均直径(繊維状の場合))より大きいことが重要である。また、樹脂相の平均厚さ又は平均直径が前記下限未満になると、熱伝導性フィラー同士が接触しにくく、十分な熱伝導パスが形成されず、複合材料の熱伝導性が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、複合材料そのものを作製しにくい傾向にある。
また、前記樹脂相の平均アスペクト比(平板状の場合:平均長軸長さ/平均厚さ、繊維状の場合:平均長軸長さ/平均直径、その他の形状(球状を除く)の場合:平均長軸長さ/平均短軸長さ)としては、2以上が好ましく、5以上がより好ましい。樹脂相の平均アスペクト比が前記下限未満になると、熱伝導性フィラーにより形成されるマトリクス相の熱伝導パスが迂回するため、複合材料の熱伝導性が低下する傾向にある。なお、樹脂相の平均アスペクト比の上限として特に制限はないが、10000以下が好ましい。
本発明の複合材料において、前記樹脂相の割合としては、複合材料全体に対して5〜98体積%が好ましく、10〜95体積%がより好ましく、20〜90体積%が特に好ましく、40〜70体積%が最も好ましい。また、熱伝導性フィラー(マトリクス相)の割合としては、複合材料全体に対して95〜2体積%が好ましく、90〜5体積%がより好ましく、80〜10体積%が特に好ましく、60〜30体積%が最も好ましい。樹脂相の割合が前記下限未満になる(熱伝導性フィラーの割合が前記上限を超える)と、得られる複合材料が脆くなる傾向にあり、他方、樹脂相の割合が前記上限を超える(熱伝導性フィラーの割合が前記下限未満になる)と、熱伝導パスが形成されにくくなる傾向にある。
また、本発明の複合材料において、隣接する樹脂相の一部が接触していてもよいが、熱伝導パスを確実に形成するためには、隣接する樹脂相同士が接触していないことが好ましく、隣接する樹脂相間の平均距離が前記熱伝導性フィラーの平均厚さより大きいことがより好ましい。さらに、隣接する樹脂相間の平均距離が長いほど、複合材料の熱伝導性が向上する傾向にある。このような観点から、複合材料中の隣接する樹脂相間の平均距離としては、1〜10000μmが好ましく、10〜10000μmがより好ましい。また、隣接する樹脂相間の距離を均等にすることによって、複合材料の熱伝導性を向上させることができる。なお、このような隣接する樹脂相間の平均距離は、マトリクス相を形成する熱伝導性フィラーと樹脂相を形成する樹脂成分の配合比を調整することによって制御することができ、熱伝導性フィラーの配合量を多くすることによって、隣接する樹脂相間の平均距離を長くすることが可能となる。
次に、本発明の複合材料の製造方法について説明する。本発明の複合材料の製造方法は、樹脂粒子及び熱伝導性フィラーを含有する混合物を圧縮することによって、前記熱伝導性フィラーにより形成されているマトリクス相中に前記樹脂粒子が変形して形成された樹脂相を独立した島状で分散させるものである。
本発明に用いられる樹脂粒子としては、圧縮により変形して樹脂相を形成できるものであれば特に制限はないが、平板状又は繊維状の樹脂相が形成し、熱伝導性フィラーにより形成されるマトリクス相同士の密着及び異方性粒子の配向を促進または補助しやすく、また、空隙の収縮に伴う圧縮応力により熱伝導性フィラーが圧縮されるという観点から、内部に空隙を有する樹脂粒子が好ましく、樹脂ビーズ等の樹脂の発泡体がより好ましい。しかしながら、発泡倍率が低い樹脂粒子であっても、圧縮成形時の粒子間に働く圧縮力により熱伝導性フィラーが密着、配向する効果は存在しており、複合材料の熱伝導性向上に貢献することができる。また、前記樹脂粒子の外観形状としては、球状、紐状、棒状、柱状、又はこれらが異方的に変形した形状が挙げられるが、複合材料製造時に成形しやすく、また、樹脂粒子の表面を熱伝導性フィラーで被覆しやすいという観点から、球状が好ましい。
このような樹脂粒子の平均長軸長さ(球状粒子の場合には平均直径)として、0.01〜10mmが好ましく、0.1〜10mmがより好ましい。樹脂粒子の平均長軸長さが前記下限未満になると、樹脂粒子の表面を熱伝導性フィラーで被覆しにくくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、複合材料を成形しにくく、また、不均一で脆い複合材料が得られる傾向にある。
また、発泡体等の内部に空隙を有する樹脂粒子を用いた場合、その空隙率(発泡倍率)が大きいほど、形成される樹脂相のアスペクト比が大きくなる。内部に空隙を有する樹脂粒子の空隙率としては、10〜99.5%が好ましく、50〜99.5%がより好ましい。内部に空隙を有する樹脂粒子の空隙率が前記下限未満になると、アスペクト比が大きい樹脂相を容易に形成することが困難となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、樹脂粒子の表面積が大きくなりすぎ、樹脂粒子の表面を熱伝導性フィラーで被覆しにくくなる傾向にある。
また、本発明の複合材料の製造方法においては、空隙率が大きい樹脂粒子を使用することによって、熱伝導率の異方性が高い複合材料を得ることができ、他方、空隙率が小さい樹脂粒子を使用することによって、熱伝導率の異方性が低い複合材料(異方性がない複合材料を含む)を得ることが可能となる。具体的には、熱伝導率の異方性が高い複合材料を製造する場合には、空隙率が70%以上(より好ましくは80%以上、特に好ましくは90%以上)の内部に空隙を有する樹脂粒子(より好ましくは発泡体)を使用することが好ましい。このように、空隙率が異なる樹脂粒子を適宜選択することによって、熱伝導率の異方性が高い複合材料と低い複合材料(異方性がない複合材料を含む)とを容易に作り分けることが可能となる。
なお、空隙率が大きい樹脂粒子を使用することによって、熱伝導率の異方性が高い複合材料が得られる理由は必ずしも定かではないが、本発明者らは以下のように推察する。すなわち、空隙率が大きい樹脂粒子を使用した場合には、熱伝導性フィラーが圧縮方向と垂直な方向に配向して熱伝導性フィラーの熱伝導方向が揃うだけでなく、樹脂粒子が圧縮方向に更に押し潰されるため、熱伝導パスの形成を阻害しない方向に揃った平板状又は繊維状の樹脂相が形成され、熱伝導率の異方性が発現しやすくなると推察される。
本発明の複合材料の製造方法においては、先ず、このような樹脂粒子と前記熱伝導性フィラーとを混合する。前記樹脂粒子と前記熱伝導性フィラーとの混合割合としては、複合材料中に熱伝導性フィラーからなるマトリクス相(熱伝導パス)を形成できる割合であれば特に制限はないが、得られる複合材料中の樹脂相が5〜98体積%、熱伝導性フィラー(マトリクス相)が95〜2体積%となるように混合することが好ましく、樹脂相が10〜95体積%、マトリクス相が90〜5体積%となるように混合することがより好ましく、樹脂相が20〜90体積%、マトリクス相が80〜10体積%が特に好ましく、樹脂相が40〜70体積%、マトリクス相が60〜30体積%が最も好ましい。熱伝導性フィラー(マトリクス相)の割合が前記下限未満になると、十分な熱伝導パスが形成されない傾向にあり、他方、前記上限を超えると、樹脂相による補強効果が十分に得られず、複合材料が脆くなる傾向にある。
本発明の複合材料の製造方法においては、前記樹脂粒子と前記熱伝導性フィラーとをドライブレンド等の公知の混合方法によって混合してもよいが、熱伝導性フィラーが効率的に連結され、熱伝導パスを容易に形成でき、熱伝導性に優れた複合材料が得られるという観点から、前記樹脂粒子の表面を前記熱伝導性フィラーで被覆した粒子を調製することが好ましい。
前記樹脂粒子の表面を前記熱伝導性フィラーで被覆する方法としては特に制限はないが、前記樹脂粒子と前記熱伝導性フィラーとを溶媒中で混合した後、溶媒を除去する方法;前記樹脂粒子と前記熱伝導性フィラーとバインダー樹脂とを溶媒中で混合した後、溶媒を除去する方法等が挙げられる。前者の方法では、得られる被覆粒子に樹脂粒子及び熱伝導性フィラー以外の成分が含まれないため、高い熱伝導率を有する複合材料を得ることができ、他方、後者の方法では、樹脂粒子表面からの熱伝導性フィラーの剥離を抑制することができる。
前記溶媒としては特に制限はないが、水、アルコール(例えば、メタノール、エタノール)、トルエン、アルカン(例えば、ヘキサン、ペンタン)、エーテル、ジオキサン等が挙げられる。
前記バインダー樹脂としては熱伝導性フィラーの熱伝導性を阻害しないものであれば特に制限はないが、例えば、ポリビニルブチラールのほか、前記樹脂相を形成する樹脂成分として例示した樹脂が挙げられる。このようなバインダー樹脂の配合量としては、熱伝導性フィラー100質量部に対して50質量部以下が好ましく、10質量部以下がより好ましい。バインダー樹脂の配合量が前記上限を超えると、熱伝導性フィラー間にバインダー樹脂が存在しやすく、熱伝導パスの形成が阻害され、複合材料の熱伝導性が低下する傾向にある。
次に、このようにして得られた前記樹脂粒子と前記熱伝導性フィラーとの混合物(表面が熱伝導性フィラーで被覆された樹脂粒子を含む)を圧縮する。これにより、前記樹脂粒子が変形して樹脂相が、前記熱伝導性フィラーにより形成されているマトリクス相中に形成される。また、前記樹脂相は前記マトリクス相で覆われており、独立した島状として存在する。さらに、前記樹脂粒子として内部に空隙を有する樹脂粒子を用いた場合には、前記圧縮により平板状又は繊維状の樹脂相が形成され、熱伝導性フィラーにより形成されるマトリクス相同士の密着を促進または補助しやすい傾向にある。
前記圧縮方法としては、一軸圧縮であっても二軸圧縮であってもよい。また、静水圧で等方的に圧縮してもよい。また、圧縮は、室温で行なってもよいが、より効率的に成形できるという観点から、下記式:
Tg−10℃≦T
で表される条件を満たす温度に加熱しながら行うことが好ましく、より高い熱伝導性を有する複合材料が得られるという観点から、下記式:
Tg≦T≦Tg+40℃
で表される条件を満たす温度に加熱しながら行うことがより好ましく、下記式:
Tg+10℃≦T≦Tg+20℃
で表される条件を満たす温度に加熱しながら行うことが特に好ましい。なお、前記式中、Tは加熱温度(単位:℃)を表し、Tgは樹脂成分のガラス転移温度又は軟化温度(単位:℃)を表す。さらに、圧縮時の圧力としては特に制限はないが、0.1〜10000kg/cmが好ましい。圧縮時の圧力が前記下限未満になると、樹脂相及び熱伝導性フィラーが所定の方向に十分に配向しなかったり、また、圧縮成形後に空隙が残存する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、型内に樹脂成分を密封しておくことが困難となり、型から材料が漏れ出す場合がある。
このようにして得られる圧縮成形体を固化させることによって本発明の複合材料を得ることができる。固化の方法としては特に制限はなく、従来公知の方法、例えば、樹脂成分として熱可塑性樹脂を用いた場合には放冷などの冷却による方法、各種(熱、光、水)硬化性樹脂を用いた場合にはそれぞれ適切な硬化方法を採用することができる。また、このような固化は、圧縮成形時又は圧縮成形後のいずれにおいて実施してもよい。
以下、実施例および比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
<熱伝導率測定>
図1に示すように、圧縮成形体1から熱伝導率測定用試料2(x軸方向長さ:2.5mm、y軸方向長さ:10mm、z軸方向長さ:10mm)を切出し、前記試料の厚さ方向(x軸方向)又は圧縮方向(z軸方向)を熱流方向としてキセノンフラッシュアナライザー(NETZSCH社製「LFA 447 NanoFlash」)を用いて圧縮方向に垂直な方向(x軸方向)及び平行な方向(z軸方向)の熱拡散率を測定した。また、前記試料の比熱を熱振動型示差走査熱量測定装置(ティー・エイ・インスツル社製)を用いて測定した。さらに、前記試料の密度を水中置換法により求めた。これらの結果から次式:
熱伝導率(W/(m・K))=比熱(J/(kg・K))×密度(kg/m
×熱拡散率(m/秒)
により、圧縮方向に垂直な方向(x軸方向)及び平行な方向(z軸方向)の熱伝導率を算出した。
<電子顕微鏡観察>
電子顕微鏡観察は、走査型電子顕微鏡((株)日立ハイテクノロジーズ製「S−4300」)を用いて行なった。
<X線CT検査>
X線CT検査は、X線CT装置(ヤマト科学(株)製「TDM−1000H−II」)を用いて行なった。
(実施例1)
ポリスチレン極小ビーズ(iFABRIC製、直径:0.5〜1mm、見かけ比重:0.01g/cm、真比重:1.0g/cm、空隙率:98%、ガラス転移温度:100℃)4.87g及びグラファイト(日本黒鉛工業(株)製「CMX−40」、平均長軸長さ:約40μm、平均厚さ:2μm、密度:2.2g/cm)2.09gをポリエチレン袋に入れ、十分に混合した。得られた混合物を圧縮治具に装着された直径14mmの円筒中に充填し、円筒の長さ方向(図1のz軸方向)に室温で充填物を予備圧縮(圧力:1kg/cm)した。その後、圧力を開放し、充填物を圧縮治具ごと130℃の恒温槽で30分間加熱した。次いで、充填物を圧縮治具ごと恒温槽から取り出した後すぐに、プランジャを介して円筒の長さ方向(図1のz軸方向)に1000kg/cmの圧力で圧縮し、圧縮状態を保持したまま、約3時間放冷して圧縮成形体を固化させた。その後、圧縮治具の円筒から圧縮成形体を取出した。
得られた圧縮成形体中のグラファイトの含有率をポリスチレン極小ビーズとグラファイトの仕込質量比から算出した。その結果を表1に示す。また、図1に示すように、圧縮成形体1から熱伝導率測定用試料2を切出して圧縮方向に垂直な方向(x軸方向)及び平行な方向(z軸方向)の熱伝導率を求めた。その結果を表1に示す。さらに、前記試料2の圧縮方向(z軸方向)に平行な面(xz平面)で切断した断面(xz断面)を走査型電子顕微鏡により観察した。その結果を図2A及び2Bに示す。また、前記試料2の圧縮方向(z軸方向)に垂直な面(xy平面)のX線CT検査を行なった。その結果を図3に示す。
図2A及び2BのSEM写真から、得られた圧縮成形体において、ポリスチレンからなる樹脂相(暗部)は、グラファイトからなるマトリックス相(明部)に取り囲まれた状態で、圧縮方向(z軸方向)に垂直な方向(x軸方向)に配向していることが確認された。このSEM写真から、無作為に10個の樹脂相を抽出して、その長さ(x軸方向)及び厚さ(z軸方向)、隣接する樹脂相間の距離を測定したところ、平均長さは700μmであり、平均厚さは40μmであり、隣接する樹脂相間の平均距離は50μmであった。さらに、図3のX線CT断面像から、得られた圧縮成形体において、グラファイトが網目状にマトリックス相(明部)を形成していることが確認された。以上の結果から、ポリスチレンからなる樹脂相は、平板状又は繊維状を有しており、グラファイトからなるマトリックス相中に独立した島状かつ圧縮方向に垂直な方向に配向した状態で分散していることが確認された。
(実施例2)
グラファイト(日本黒鉛工業(株)製「CMX−40」)2.09gをメタノール50mlに添加し、さらに、前記ポリスチレン極小ビーズ(iFABRIC製)4.87gを添加して振動混合した。得られた混合物を200mlのフラスコに入れ、エバポレーターを用いてフラスコを回転させながら、減圧下で約30分間かけてメタノールを蒸発させた。得られた固体を真空乾燥した後、電子顕微鏡観察を行なったところ、ポリスチレン極小ビーズの表面はグラファイトで被覆されていることがわかった。この固体を用いた以外は実施例1と同様にして圧縮成形体を得た。
この圧縮成形体中のグラファイトの含有率を実施例1と同様にして算出した。その結果を表1に示す。また、実施例1と同様に、圧縮成形体1から熱伝導率測定用試料2を切出して圧縮方向に垂直な方向(x軸方向)及び平行な方向(z軸方向)の熱伝導率を求めた。その結果を表1に示す。さらに、前記試料2の圧縮方向(z軸方向)に平行な面(xz平面)で切断した断面(xz断面)を走査型電子顕微鏡により観察した。その結果を図4A及び4Bに示す。また、前記試料2の圧縮方向(z軸方向)に垂直な面(xy平面)のX線CT検査を行なった。その結果を図5に示す。
図4A及び4BのSEM写真から、得られた圧縮成形体において、ポリスチレンからなる樹脂相(暗部)は、グラファイトからなるマトリックス相(明部)に取り囲まれた状態で、圧縮方向(z軸方向)に垂直な方向(x軸方向)に配向していることが確認された。このSEM写真から、無作為に10個の樹脂相を抽出して、その長さ(x軸方向)及び厚さ(z軸方向)、隣接する樹脂相間の距離を測定したところ、平均長さは1500μmであり、平均厚さは50μmであり、隣接する樹脂相間の平均距離は70μmであった。さらに、図5のX線CT断面像から、得られた圧縮成形体において、グラファイトが網目状にマトリックス相(明部)を形成していることが確認された。以上の結果から、ポリスチレンからなる樹脂相は、平板状又は繊維状を有しており、グラファイトからなるマトリックス相中に独立した島状かつ圧縮方向に垂直な方向に配向した状態で分散していることが確認された。
(参考例1)
グラファイトのみを用いた以外は実施例1と同様にして圧縮成形体を得た。実施例1と同様に、圧縮成形体1から熱伝導率測定用試料2を切出して圧縮方向に垂直な方向(x軸方向)の熱伝導率を求めたところ375W/(m・K)であった。この熱伝導率から、グラファイトの含有率が16体積%の圧縮成形体の熱伝導率(上限値)を算出したところ、375×0.16=60W/(m・K)であった。
(実施例3)
ポリスチレン極小ビーズの量を4gに、グラファイトの量を4gに変更した以外は実施例1と同様にして圧縮成形体を得た。この圧縮成形体中のグラファイトの含有率を実施例1と同様にして算出した。その結果を表1に示す。また、実施例1と同様に、圧縮成形体1から熱伝導率測定用試料2を切出して圧縮方向に垂直な方向(x軸方向)及び平行な方向(z軸方向)の熱伝導率を求めた。その結果を表1に示す。
(実施例4)
ポリスチレン極小ビーズの量を4gに、グラファイトの量を4gに変更した以外は実施例2と同様にして圧縮成形体を得た。この圧縮成形体中のグラファイトの含有率を実施例1と同様にして算出した。その結果を表1に示す。また、実施例1と同様に、圧縮成形体1から熱伝導率測定用試料2を切出して圧縮方向に垂直な方向(x軸方向)及び平行な方向(z軸方向)の熱伝導率を求めた。その結果を表1に示す。さらに、前記試料2の圧縮方向(z軸方向)に平行な面(xz平面)で切断した断面(xz断面)を走査型電子顕微鏡により観察した。その結果を図6A及び6Bに示す。また、前記試料2の圧縮方向(z軸方向)に垂直な面(xy平面)のX線CT検査を行なった。その結果を図7に示す。さらに、前記試料2のX線CT検査を立体的に行なった。その結果を図8に示す。
図6A及び6BのSEM写真から、得られた圧縮成形体において、ポリスチレンからなる樹脂相(暗部)は、グラファイトからなるマトリックス相(明部)に取り囲まれた状態で、圧縮方向(z軸方向)に垂直な方向(x軸方向)に配向していることが確認された。このSEM写真から、無作為に10個の樹脂相を抽出して、その長さ(x軸方向)及び厚さ(z軸方向)、隣接する樹脂相間の距離を測定したところ、平均長さは800μmであり、平均厚さは70μmであり、隣接する樹脂相間の平均距離は90μmであった。さらに、図7のX線CT断面像から、得られた圧縮成形体において、グラファイトが網目状にマトリックス相(明部)を形成していることが確認された。さらに、図8のX線CT立体像から、得られた圧縮成形体において、グラファイトからなるマトリックス相(明部)が平板状のポリスチレンからなる樹脂相(暗部)を圧縮方向(z軸方向)に垂直な方向(x軸方向)に配向した状態で内包していることが確認された。以上の結果から、ポリスチレンからなる樹脂相は、平板状又は繊維状を有しており、グラファイトからなるマトリックス相中に独立した島状かつ圧縮方向に垂直な方向に配向した状態で分散していることが確認された。
(参考例2)
参考例1と同様に、グラファイトの含有率が31体積%の圧縮成形体の圧縮方向に垂直な方向(x軸方向)の熱伝導率(上限値)を算出したところ、375×0.31=116.25W/(m・K)であった。
(比較例1〜6)
液状エポキシ樹脂(日新レジン(株)製「クリスタルレジンIISP−C」、密度:1.0g/cm)及びグラファイト(日本黒鉛工業(株)製「CMX−40」)を表1に示すグラファイト含有率となるように混合した。得られた混合物を圧縮治具に装着された直径14mmの円筒中に充填し、プランジャを介して円筒の長さ方向(図1のz軸方向)に500kg/cmの圧力で圧縮し、圧縮状態を保持したまま、約12時間放冷して圧縮成形体を固化させた。実施例1と同様に、圧縮成形体1から熱伝導率測定用試料2を切出して圧縮方向に垂直な方向(x軸方向)の熱伝導率を求めた。その結果を表1に示す。
表1に示した結果に基づいて、グラファイト含有率に対して圧縮成形体の圧縮方向に垂直な方向(x軸方向)の熱伝導率をプロットした結果を図9に示す。なお、図9中の点線は、参考例1〜2の結果から求めた各グラファイト含有率において理論的に得られる熱伝導率(上限値)を表す。図9に示した結果から明らかなように、本発明の複合材料は、グラファイトが同じ含有率でエポキシ樹脂中に均一に分散している圧縮成形体(比較例1〜6)に比べて熱伝導率が高くなることがわかった。
また、ポリスチレン極小ビーズの表面をグラファイトで被覆した場合(実施例2及び4)には、グラファイトとポリスチレン極小ビーズとを単純混合した場合(実施例1及び3)に比べて、高い熱伝導率を有する複合材料が得られることがわかった。さらに、実施例2及び4で得られた圧縮成形体は、そのグラファイト含有率で理論的に得られる熱伝導率(上限値)に近い熱伝導率を有しており、本発明の複合材料が熱伝導性を発揮する上で極めて理想的な構造を有していることがわかった。さらに、表1に示した結果から明らかなように、実施例1〜4で得られた圧縮成形体は、熱伝導率の異方性が高い複合材料であることがわかった。
(実施例5)
ポリビニルブチラール(和光純薬工業(株)製、重合度:700)70mgをメタノール50mlに溶解し、これにグラファイト(日本黒鉛工業(株)製「CMX−40」)2.09gを添加して攪拌混合した。得られた混合物に前記ポリスチレン極小ビーズ(iFABRIC製)4.81gを添加して攪拌混合した。得られた混合物を200mlのフラスコに入れ、エバポレーターを用いてフラスコを回転させながら、減圧下で約30分間かけてメタノールを蒸発させた。得られた固体を真空乾燥した後、電子顕微鏡観察を行なったところ、図10に示すように、ポリスチレン極小ビーズの表面はグラファイトで被覆されていることがわかった。この固体を用いた以外は実施例1と同様にして圧縮成形体を得た。
この圧縮成形体中のグラファイトの含有率を実施例1と同様にして算出した。その結果を表2に示す。また、実施例1と同様に、圧縮成形体1から熱伝導率測定用試料2を切出して圧縮方向に垂直な方向(x軸方向)及び平行な方向(z軸方向)の熱伝導率を求めた。その結果を表2に示す。また、前記試料2の圧縮方向(z軸方向)に平行な面(xz平面)で切断した断面(xz断面)を走査型電子顕微鏡により観察した。その結果を図11A及び11Bに示す。また、前記試料2の圧縮方向(z軸方向)に垂直な面(xy平面)のX線CT検査を行なった。その結果を図12に示す。
図11A及び11BのSEM写真から、得られた圧縮成形体において、ポリスチレンからなる樹脂相(暗部)は、グラファイトからなるマトリックス相(明部)に取り囲まれた状態で、圧縮方向(z軸方向)に垂直な方向(x軸方向)に配向していることが確認された。このSEM写真から、無作為に10個の樹脂相を抽出して、その長さ(x軸方向)及び厚さ(z軸方向)、隣接する樹脂相間の距離を測定したところ、平均長さは800μmであり、平均厚さは50μmであり、隣接する樹脂相間の平均距離は80μmであった。さらに、図12のX線CT断面像から、得られた圧縮成形体において、グラファイトが網目状にマトリックス相(明部)を形成していることが確認された。以上の結果から、ポリスチレンからなる樹脂相は、平板状又は繊維状を有しており、グラファイトからなるマトリックス相中に独立した島状かつ圧縮方向に垂直な方向に配向した状態で分散していることが確認された。
(実施例6)
ポリビニルブチラールの量を80mgに、グラファイト量を4gに、ポリスチレン極小ビーズの量を3.9gに変更した以外は実施例5と同様にして圧縮成形体を得た。この圧縮成形体中のグラファイトの含有率を実施例1と同様にして算出した。その結果を表2に示す。また、実施例1と同様に、圧縮成形体1から熱伝導率測定用試料2を切出して圧縮方向に垂直な方向(x軸方向)及び平行な方向(z軸方向)の熱伝導率を求めた。その結果を表2に示す。
表2に示した結果から明らかなように、バインダー樹脂を用いた場合(実施例5〜6)にも、高い熱伝導率を有する複合材料が得られることがわかった。また、実施例5〜6で得られた圧縮成形体は、熱伝導率の異方性が高い複合材料であることもわかった。
(実施例7)
ポリビニルブチラールの量を230mgに、ポリスチレン極小ビーズの量を4.64gに変更し、グラファイトの代わりに窒化ホウ素(電気化学工業(株)製「SGP」、平均長軸長さ:18μm、平均厚さ:2μm、密度:2.1g/cm)2.09gを用いた以外は実施例5と同様にして固体を得た。この固体の電子顕微鏡観察を行なったところ、ポリスチレン極小ビーズの表面は窒化ホウ素で被覆されていることがわかった。この固体を用いた以外は実施例5と同様にして圧縮成形体を得た。
得られた圧縮成形体中の窒化ホウ素の含有率をポリスチレン極小ビーズと窒化ホウ素の仕込質量比から算出した。その結果を表3に示す。また、実施例1と同様に、圧縮成形体1から熱伝導率測定用試料2を切出して圧縮方向に垂直な方向(x軸方向)及び平行な方向(z軸方向)の熱伝導率を求めた。その結果を表3に示す。
(実施例8)
ポリビニルブチラールの量を450mgに、窒化ホウ素の量を4.08gに、ポリスチレン極小ビーズの量を3.56gに変更した以外は実施例7と同様にしてポリスチレン極小ビーズの表面が窒化ホウ素で被覆されている固体を得た。この固体の電子顕微鏡観察を行なったところ、図13に示すように、ポリスチレン極小ビーズの表面は窒化ホウ素で被覆されていることがわかった。この固体を用いた以外は実施例5と同様にして圧縮成形体を得た。
得られた圧縮成形体中の窒化ホウ素の含有率を実施例7と同様にして算出した。その結果を表3に示す。また、実施例1と同様に、圧縮成形体1から熱伝導率測定用試料2を切出して圧縮方向に垂直な方向(x軸方向)及び平行な方向(z軸方向)の熱伝導率を求めた。その結果を表3に示す。
(比較例7〜8)
液状エポキシ樹脂(日新レジン(株)製「クリスタルレジンIISP−C」)及び窒化ホウ素(電気化学工業(株)製「SGP」)を表3に示す窒化ホウ素含有率となるように混合した。この混合物を用いた以外は比較例1と同様にして圧縮成形体を得た。実施例1と同様に、圧縮成形体1から熱伝導率測定用試料2を切出して圧縮方向に垂直な方向(x軸方向)及び平行な方向(z軸方向)の熱伝導率を求めた。その結果を表3に示す。
表3に示した結果から明らかなように、本発明の複合材料は、窒化ホウ素が同じ含有率でエポキシ樹脂中に均一に分散している圧縮成形体(比較例7〜8)に比べて熱伝導率が高くなることがわかった。また、実施例7〜8で得られた圧縮成形体は、熱伝導率の異方性が高い複合材料であることもわかった。
(比較例9)
液状エポキシ樹脂(日新レジン(株)製「クリスタルレジンIISP−C」)5g、グラファイト(日本黒鉛工業(株)製「CMX−40」)3g及び炭素繊維(日本グラファイトファイバー(株)製「グラノックXN−100−03Z」、直径:9μm、長さ:3mm、密度:2.2g/cm)2g混合した。この混合物を用いた以外は比較例1と同様にして圧縮成形体を得た。
得られた圧縮成形体中のグラファイト及び炭素繊維の含有率を液状エポキシ樹脂、グラファイト及び炭素繊維の仕込質量比から算出した。その結果を表4に示す。また、実施例1と同様に、圧縮成形体1から熱伝導率測定用試料2を切出して圧縮方向に垂直な方向(x軸方向)及び平行な方向(z軸方向)の熱伝導率を求めた。その結果を表4に示す。なお、表4には、実施例3〜4及び比較例4で得られた圧縮成形体の熱伝導率も示した。さらに、前記試料2の圧縮方向(z軸方向)に平行な面(xz平面)で切断した断面(xz断面)を走査型電子顕微鏡により観察した。その結果を図14に示す。また、前記試料2の圧縮方向(z軸方向)に垂直な面(xy平面)のX線CT検査を行なった。その結果を図15に示す。
(比較例10)
長さが3mmの炭素繊維の代わりに長さが150μmの炭素繊維(日本グラファイトファイバー(株)製「グラノックXN−100−15M」、直径:9μm、密度:2.2g/cm)2gを用いた以外は比較例9と同様にして圧縮成形体を得た。この圧縮成形体中のグラファイト及び炭素繊維の含有率を液状エポキシ樹脂、グラファイト及び炭素繊維の仕込質量比から算出した。その結果を表4に示す。また、実施例1と同様に、圧縮成形体1から熱伝導率測定用試料2を切出して圧縮方向に垂直な方向(x軸方向)及び平行な方向(z軸方向)の熱伝導率を求めた。その結果を表4に示す。さらに、前記試料2の圧縮方向(z軸方向)に平行な面(xz平面)で切断した断面(xz断面)を走査型電子顕微鏡により観察した。その結果を図16に示す。また、前記試料2の圧縮方向(z軸方向)に垂直な面(xy平面)のX線CT検査を行なった。その結果を図17に示す。
表4に示した比較例4と比較例9〜10の結果を対比すると、エポキシ樹脂からなる樹脂相中に均一に分散しているグラファイトの一部を熱伝導性の炭素繊維に置換することによって、熱伝導率が向上することがわかった。これは、図14〜17のSEM写真から、炭素繊維を混合することにより圧縮成形体を横断する熱伝導パスが形成されたためと推察される。しかしながら、炭素繊維間やグラファイトと炭素繊維との接触が必ずしも十分ではなく、また、樹脂相の熱抵抗が大きいため、グラファイトによって熱伝導パスが十分に形成されている本発明の複合材料(実施例3〜4の圧縮成形体)ほどの高い熱伝導率が得られなかったと推察される。
(実施例9)
ポリビニルブチラール(和光純薬工業(株)製、重合度:700)62mgをメタノール50mlに溶解し、これにグラファイト(日本黒鉛工業(株)製「CMX−40」)2.09gを添加して攪拌混合した。得られた混合物に、ポリエーテルイミドペレット(SABIC社製「Ultem1000」、直径:2.5mm、ガラス転移温度:217℃)を予め発泡させたポリエーテルイミド発泡ペレット(発泡倍率:2.5倍(空隙率:60%))8.0gを添加して攪拌混合した。得られた混合物を200mlのフラスコに入れ、エバポレーターを用いてフラスコを回転させながら、常圧下で約30分間かけてメタノールを蒸発させた。得られた固体を真空乾燥した後、電子顕微鏡観察を行なったところ、図18に示すように、ポリエーテルイミド発泡ペレットの表面はグラファイトで被覆されていることがわかった。この固体を用い、圧縮成形体作製時の恒温槽での加熱温度を260℃に変更し、圧縮時の圧力を1000kg/cmに変更した以外は実施例1と同様にして圧縮成形体を得た。
この圧縮成形体中のグラファイトの含有率をポリエーテルイミド発泡ペレットとグラファイトの仕込質量比から算出した。その結果を表5に示す。また、実施例1と同様に、圧縮成形体1から熱伝導率測定用試料2を切出して圧縮方向に垂直な方向(x軸方向)及び平行な方向(z軸方向)の熱伝導率を求めた。その結果を表5に示す。さらに、前記試料2の圧縮方向(z軸方向)に垂直な面(xy平面)と平行な面(xz平面)のX線CT検査を行なった。その結果を図19A及び19Bに示す。
図19A及び19BのX線CT断面像から、得られた圧縮成形体において、グラファイトが樹脂相(暗部)を取り囲むように網目状にマトリックス相(明部)を形成していることが確認された。また、グラファイト相は圧縮方向(z軸方向)に平行な面(xz平面)だけでなく、垂直な面(xy平面)においても連続したパスを形成していることが確認された。
比較例11
ポリエーテルイミド発泡ペレットの代わりに未発泡のポリエーテルイミドペレット(SABIC社製「Ultem1000」)8.0gを用いた以外は実施例9と同様にして固体を得た。この固体を真空乾燥した後、電子顕微鏡観察を行なったところ、ポリエーテルイミドペレットの表面はグラファイトで被覆されていることがわかった。この固体を用いた以外は実施例9と同様にして圧縮成形体を得た。
この圧縮成形体中のグラファイトの含有率を未発泡のポリエーテルイミドペレットとグラファイトの仕込質量比から算出した。その結果を表5に示す。また、実施例1と同様に、圧縮成形体1から熱伝導率測定用試料2を切出して圧縮方向に垂直な方向(x軸方向)及び平行な方向(z軸方向)の熱伝導率を求めた。その結果を表5に示す。さらに、前記試料2の圧縮方向(z軸方向)に垂直な面(xy平面)と平行な面(xz平面)のX線CT検査を行なった。その結果を図20A及び20Bに示す。
図20A及び20BのX線CT断面像から、得られた圧縮成形体において、グラファイトが樹脂相(暗部)を取り囲むように網目状にマトリックス相(明部)を形成していることが確認された。また、グラファイト相は圧縮方向(z軸方向)に平行な面(xz平面)だけでなく、垂直な面(xy平面)においても連続したパスを形成していることが確認された。
(実施例10
ポリビニルブチラールの量を120mgに、グラファイトの量を4.0gに、ポリエーテルイミド発泡ペレット(発泡倍率:2.5倍(空隙率:60%))の量を5.51gに変更した以外は実施例9と同様にして圧縮成形体を得た。この圧縮成形体中のグラファイトの含有率を実施例9と同様にして算出した。その結果を表5に示す。また、実施例1と同様に、圧縮成形体1から熱伝導率測定用試料2を切出して圧縮方向に垂直な方向(x軸方向)及び平行な方向(z軸方向)の熱伝導率を求めた。その結果を表5に示す。さらに、前記試料2の圧縮方向(z軸方向)に垂直な面(xy平面)と平行な面(xz平面)のX線CT検査を行なった。その結果を図21A及び21Bに示す。
図21A及び21BのX線CT断面像から、得られた圧縮成形体において、グラファイトが樹脂相(暗部)を取り囲むように網目状にマトリックス相(明部)を形成していることが確認された。また、グラファイト相は圧縮方向(z軸方向)に平行な面(xz平面)だけでなく、垂直な面(xy平面)においても連続したパスを形成していることが確認された。
比較例12
ポリビニルブチラールの量を120mgに、グラファイトの量を4.0gに、未発泡のポリエーテルイミドペレットの量を5.51gに変更した以外は比較例11と同様にして圧縮成形体を得た。この圧縮成形体中のグラファイトの含有率を比較例11と同様にして算出した。その結果を表5に示す。また、実施例1と同様に、圧縮成形体1から熱伝導率測定用試料2を切出して圧縮方向に垂直な方向(x軸方向)及び平行な方向(z軸方向)の熱伝導率を求めた。その結果を表5に示す。さらに、前記試料2の圧縮方向(z軸方向)に垂直な面(xy平面)と平行な面(xz平面)のX線CT検査を行なった。その結果を図22A及び22Bに示す。
図22A及び22BのX線CT断面像から、得られた圧縮成形体において、グラファイトが樹脂相(暗部)を取り囲むように網目状にマトリックス相(明部)を形成していることが確認された。また、グラファイト相は圧縮方向(z軸方向)に平行な面(xz平面)だけでなく、垂直な面(xy平面)においても連続したパスを形成していることが確認された。
表5に示した結果に基づいて、グラファイト含有率に対して圧縮成形体の圧縮方向に垂直な方向(x軸方向)の熱伝導率をプロットした結果を図23に示す。なお、図23中の点線は、参考例1〜2の結果から求めた各グラファイト含有率において理論的に得られる熱伝導率(上限値)を表す。図23に示した結果から明らかなように、ポリエーテルイミド発泡ペレットの表面をグラファイトで被覆した場合(実施例9及び10)及び未発泡のポリエーテルイミドペレットの表面をグラファイトで被覆した場合(比較例11及び12)のいずれにおいても、本発明の複合材料は、グラファイトが同じ含有率でエポキシ樹脂中に均一に分散している圧縮成形体(比較例1〜6)に比べて熱伝導率が高くなることがわかった。
また、実施例9〜10で得られた圧縮成形体は、そのグラファイト含有率で理論的に得られる熱伝導率(上限値)と同程度あるいはそれ以上の熱伝導率を有しており、本発明の複合材料が熱伝導性を発揮する上で極めて理想的な構造(分散状態)を有していることがわかった。
以上の結果から、樹脂粒子としてポリエーテルイミドペレットを用いた場合にも、ポリエーテルイミドからなる樹脂相がグラファイトからなるマトリックス相中に独立した島状で分散している、熱伝導性に優れた複合材料が得られることが確認された。
比較例13
ポリビニルブチラール(和光純薬工業(株)製、重合度:700)183mgをメタノール200mlに溶解し、これにグラファイト(日本黒鉛工業(株)製「CMX−40」)6.12gを添加して攪拌混合した。得られた混合物に、未発泡のポリメチルメタクリレートペレット((株)クラレ製「パラペットG1000」、直径:2.5mm、ガラス転移温度:105℃)17.25gを添加して攪拌混合した。得られた混合物を1000mlのフラスコに入れ、エバポレーターを用いてフラスコを回転させながら、常圧下で約30分間かけてメタノールを蒸発させた。得られた固体を真空乾燥した後、電子顕微鏡観察を行なったところ、ポリメチルメタクリレートペレットの表面はグラファイトで被覆されていることがわかった。この固体20gを用い、圧縮成形体作製時の恒温槽での加熱温度を100℃に、圧縮時の圧力を1000kg/cmに変更した以外は実施例1と同様にして圧縮成形体を得た。
この圧縮成形体中のグラファイトの含有率を未発泡のポリメチルメタクリレートペレットとグラファイトの仕込質量比から算出した。その結果を表6に示す。また、実施例1と同様に、圧縮成形体1から熱伝導率測定用試料2を切出して圧縮方向に垂直な方向(x軸方向)及び平行な方向(z軸方向)の熱伝導率を求めた。その結果を表6に示す。さらに、前記試料2の圧縮方向(z軸方向)に垂直な面(xy平面)と平行な面(xz平面)のX線CT検査を行なった。その結果を図24A及び24Bに示す。
図24A及び24BのX線CT断面像から、得られた圧縮成形体において、グラファイトが樹脂相(暗部)を取り囲むように網目状にマトリックス相(明部)を形成していることが確認された。また、グラファイト相は圧縮方向(z軸方向)に平行な面(xz平面)だけでなく、垂直な面(xy平面)においても連続したパスを形成していることが確認された。
比較例14〜16
圧縮成形体作製時の恒温槽での加熱温度を110℃(比較例14)、120℃(比較例15)及び140℃(比較例16)のいずれかに変更した以外は比較例13と同様にして圧縮成形体を得た。この圧縮成形体中のグラファイトの含有率を比較例13と同様にして算出した。その結果を表6に示す。また、実施例1と同様に、圧縮成形体1から熱伝導率測定用試料2を切出して圧縮方向に垂直な方向(x軸方向)及び平行な方向(z軸方向)の熱伝導率を求めた。その結果を表6に示す。さらに、前記試料2の圧縮方向(z軸方向)に垂直な面(xy平面)と平行な面(xz平面)のX線CT検査を行なった。その結果を図25A〜27Bに示す。
図25A〜27BのX線CT断面像から、いずれの圧縮成形体においても、グラファイトが樹脂相(暗部)を取り囲むように網目状にマトリックス相(明部)を形成していることが確認された。また、グラファイト相は圧縮方向(z軸方向)に平行な面(xz平面)だけでなく、垂直な面(xy平面)においても連続したパスを形成していることが確認された。
(比較例17
ポリメチルメタクリレート(和光純薬工業(株)製)7.63gをクロロホルム(和光純薬工業(株)製)に溶解し、これにグラファイト(日本黒鉛工業(株)製「CMX−40」)2.71gを添加して攪拌混合した。得られた混合物にメタノールを添加して再沈させた後、エバポレーターを用いてフラスコを回転させながら、常圧下で約30分間かけてメタノールを蒸発させ、得られた固体を真空乾燥した。この固体を用い、圧縮成形体作製時の恒温槽での加熱温度を110℃に変更した以外は比較例13と同様にして圧縮成形体を得た。
この圧縮成形体中のグラファイトの含有率をポリメチルメタクリレートとグラファイトの仕込質量比から算出した。その結果を表6に示す。また、実施例1と同様に、圧縮成形体1から熱伝導率測定用試料2を切出して圧縮方向に垂直な方向(x軸方向)及び平行な方向(z軸方向)の熱伝導率を求めた。その結果を表6に示す。さらに、前記試料2の圧縮方向(z軸方向)に垂直な面(xy平面)と平行な面(xz平面)のX線CT検査を行なった。その結果を図28A及び28Bに示す。
図28A及び28BのX線CT断面像から、得られた圧縮成形体において、樹脂がマトリックス相を形成していることが確認された。
表6に示した結果から明らかなように、グラファイトが樹脂相を取り囲むように網目状にマトリックス相を形成している本発明の複合材料(比較例13〜16)は、樹脂がマトリックス相を形成し、グラファイトが同じ含有率でマトリックス相に分散している複合材料(比較例17)に比べて、熱伝導率が非常に高くなることがわかった。
また、圧縮成形体作製時の恒温槽での加熱温度が120℃(ポリメチルメタクリレートのTg+15℃)以下の範囲では、加熱温度が高くなるにつれて、得られる複合材料の熱伝導性は向上したが、加熱温度が140℃(ポリメチルメタクリレートのTg+35℃)になると、加熱温度が110〜120℃(ポリメチルメタクリレートのTgの+5〜15℃)の場合に比べて複合材料の熱伝導性は低くなることがわかった。
以上の結果から、樹脂粒子としてポリメチルメタクリレートペレットを用いた場合にも、ポリメチルメタクリレートからなる樹脂相がグラファイトからなるマトリックス相中に独立した島状で分散している、熱伝導性に優れた複合材料が得られることが確認された。
比較例18
ポリスチレン80mgをトルエン50mlに溶解し、これにグラファイト(日本黒鉛工業(株)製「CMX−40」)5gを添加して攪拌混合した。得られた混合物に、半硬化フェノール樹脂(リグナイト(株)製「LPS−500B」、直径:0.5mm)15gを少量ずつ添加した。得られた混合物を1000mlのフラスコに入れ、エバポレーターを用いてフラスコを回転させながら、常圧下で約30分間かけてトルエンを蒸発させた。得られた固体を真空乾燥した後、電子顕微鏡観察を行なったところ、フェノール樹脂粒子の表面はグラファイトで被覆されていることがわかった。この固体20gを用い、圧縮成形体作製時の恒温槽での加熱温度を150℃に、圧縮時の圧力を1000kg/cmに変更した以外は実施例1と同様にして圧縮成形体を得た。
この圧縮成形体中のグラファイトの含有率を半硬化フェノール樹脂とグラファイトの仕込質量比から算出した。その結果を表7に示す。また、実施例1と同様に、圧縮成形体1から熱伝導率測定用試料2を切出して圧縮方向に垂直な方向(x軸方向)及び平行な方向(z軸方向)の熱伝導率を求めた。その結果を表7に示す。さらに、前記試料2の圧縮方向(z軸方向)に垂直な面(xy平面)と平行な面(xz平面)のX線CT検査を行なった。その結果を図29A及び29Bに示す。
図29A及び29BのX線CT断面像から、得られた圧縮成形体において、グラファイトが樹脂相(暗部)を取り囲むように網目状にマトリックス相(明部)を形成していることが確認された。また、グラファイト相は圧縮方向(z軸方向)に平行な面(xz平面)だけでなく、垂直な面(xy平面)においても連続したパスを形成していることが確認された。
比較例19
ポリスチレンの量を146mgに、グラファイトの量を10.1gに、半硬化フェノール樹脂の量を12.7gに変更した以外は比較例18と同様にして圧縮成形体を得た。この圧縮成形体中のグラファイトの含有率を比較例18と同様にして算出した。その結果を表7に示す。また、実施例1と同様に、圧縮成形体1から熱伝導率測定用試料2を切出して圧縮方向に垂直な方向(x軸方向)及び平行な方向(z軸方向)の熱伝導率を求めた。その結果を表7に示す。さらに、前記試料2の圧縮方向(z軸方向)に垂直な面(xy平面)と平行な面(xz平面)のX線CT検査を行なった。その結果を図30A及び30Bに示す。
図30A及び30BのX線CT断面像から、得られた圧縮成形体において、グラファイトが樹脂相(暗部)を取り囲むように網目状にマトリックス相(明部)を形成していることが確認された。また、グラファイト相は圧縮方向(z軸方向)に平行な面(xz平面)だけでなく、垂直な面(xy平面)においても連続したパスを形成していることが確認された。
表7に示した結果から明らかなように、グラファイトがフェノール樹脂からなる樹脂相を取り囲むように網目状にマトリックス相を形成している本発明の複合材料(比較例18〜19)は、グラファイトが同じ含有率で熱硬化性樹脂であるエポキシ樹脂中に均一に分散している圧縮成形体(比較例3〜4)に比べて熱伝導率が高くなることがわかった。
以上の結果から、樹脂として熱硬化性樹脂であるフェノール樹脂を用いた場合にも、ポリスチレンやポリエーテルイミド、ポリメタクリレート等の熱可塑性樹脂を用いた場合と同様に、フェノール樹脂からなる樹脂相がグラファイトからなるマトリックス相中に独立した島状で分散している、熱伝導性に優れた複合材料が得られることが確認された。
以上説明したように、本発明によれば、複合材料中に確実に熱伝導パスを形成することが可能となる。したがって、本発明の複合材料は、熱伝導性に優れているため、例えば、自動車用放熱材料、ヒーター材料等として有用である。
1:圧縮成形体、2:熱伝導率測定用試料

Claims (10)

  1. 熱伝導性フィラーにより形成されているマトリクス相と、該マトリクス相中に独立した島状で分散している樹脂相とを備えている複合材料であって、
    前記樹脂相の平均アスペクト比が以上であり、
    前記複合材料の熱伝導方向が前記熱伝導性フィラーの熱伝導方向と一致していることを特徴とする複合材料。
  2. 前記熱伝導性フィラーの形状が平板状又は繊維状であることを特徴とする請求項1に記載の複合材料。
  3. 前記樹脂相が配向した状態で分散していることを特徴とする請求項1又は2に記載の複合材料。
  4. 前記樹脂相の形状が平板状又は繊維状であることを特徴とする請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載の複合材料。
  5. 内部に空隙を有する樹脂粒子及び熱伝導性フィラーを含有する混合物を圧縮することによって、前記熱伝導性フィラーにより形成されているマトリクス相中に前記樹脂粒子が変形して形成された樹脂相を独立した島状で分散させることを特徴とする複合材料の製造方法。
  6. 前記樹脂相を配向した状態で分散させることを特徴とする請求項5に記載の複合材料の製造方法。
  7. 前記樹脂相の形状が平板状又は繊維状であることを特徴とする請求項5又は6に記載の複合材料の製造方法。
  8. 前記樹脂粒子の空隙率が10〜99.5%であることを特徴とする請求項5〜7のうちのいずれか一項に記載の複合材料の製造方法。
  9. 前記樹脂粒子が樹脂の発泡体であることを特徴とする請求項5〜8のうちのいずれか一項に記載の複合材料の製造方法。
  10. 前記樹脂粒子の表面が熱伝導性フィラーで被覆されていることを特徴とする請求項5〜9のうちのいずれか一項に記載の複合材料の製造方法。
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