JP2011224939A - 繊維強化樹脂成形品、およびその製造方法 - Google Patents

繊維強化樹脂成形品、およびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】中空2を有するFRP1が中子3の引き抜きを容易に行うことができない形状であっても、コストアップすることなく中空2の形状を安定させて、表面品質を向上させるとともにマトリックス樹脂の注入圧を高めて成形サイクルを短縮する。
【解決手段】FRP1において、繊維強化樹脂部4の内側に中子3を残存させる。これにより、中子3を引き抜く必要がなくなるので、FRP1が中子3の引き抜きを容易に行うことができない形状であっても、FRP1を複数のパーツに分割する必要がなくなる。このため、設備コストやランニングコストを安価に抑えることができるので、コストアップすることなく中空2を有するFRP1を得ることができる。また、中子3を引き抜く必要がないので、中子3自身の剛性を高めたり、中空2に充填物を充填してRTM成形後に充填物を抜き出したりすることで、中空2の形状を安定させることができる。
【選択図】図2

Description

本発明は、中空を有する繊維強化樹脂成形品、およびその製造方法に関する。
従来から、炭素繊維やガラス繊維等の強化繊維にエポキシ樹脂やポリエステル樹脂等の樹脂を含浸させた繊維強化樹脂成形品が、車両、航空機等の様々な分野で実用化されるようになっている(以下、繊維強化樹脂成形品を「FRP」と呼ぶことがある。なお、FRPとは、英文字Fiber Reinforced Plasticsの頭文字を並べたものである。)。
そして、FRPの製造には、賦形された強化繊維を金型内に配した後、金型内を封鎖して樹脂を注入するとともに強化繊維に含浸させる成形方法(以下、RTM成形と呼ぶ。なお、RTMとは、英文字Resin Transfer Moldingの頭文字を並べたものである。)が多用されている。
ところで、FRPを用いた最終製品は中空を有するものが多い。このため、RTM成形によりFRPを製造する場合、予め、中空の形状に合わせた中子を製作しておき、例えば、中子の外側に強化繊維を配して強化繊維を賦形し、賦形された強化繊維と中子との一体物を金型内に配し、金型内において中子の外側に樹脂を注入するとともに強化繊維に含浸させる方法が採られる(例えば、特許文献1〜3参照)。
しかし、成形後のFRPから中子を取り除く必要があるので、FRPは、中子の引き抜き等が可能となるように少なくとも1つの開口を有する形状に成形される。このため、最終製品が、中子の引き抜きを容易に行えない形状である場合、例えば、中子の引き抜き方向に関して開口径が中子の最大径よりも小さくなってしまうような場合、そもそも、中子を利用することができない。
そして、このような場合、中子を利用せず、最終製品を少なくとも2つのパーツに分け、各パーツに対応したFRPを個別に成形しておき、各パーツを溶着や接着により一体化して最終製品とする必要がある。この結果、パーツ毎に賦形用およびRTM成形用等の設備が必要になって設備コスト、およびランニングコスト共に高くなってしまう。
なお、特許文献4には、金型の上型と下型とによりフィルムバッグを挟み込んで保持し、フィルムバッグ内に高圧の空気を送り込んだ状態でRTM成形を行う技術が開示されている。この方法によれば、剛性の高い中子を引き抜くかわりに、柔軟なフィルムバッグを引き抜くことになるので、上記のような形状であっても、開口さえ存在すれば中子としてのフィルムバッグを比較的容易に引き抜くことができる。
しかし、フィルムバッグが柔軟であるほどRTM成形時に、中子としてのフィルムバッグの形状が安定せず、中空の形状が安定しないので、表面にヒケや歪み等が発生しやすくなって表面品質が低下するものと考えられる。
また、柔軟なフィルムバッグを利用する場合にRTM成形を可能とするには、樹脂の注入圧をフィルムバッグの内圧(中空の圧力)以下にする必要があるので、注入圧の上限が限定されてしまう。例えば、特許文献4の実施例によれば、フィルムバッグ内に1MPaの圧空が導入される点が記載されているが、この場合、樹脂の注入圧を1MPa以下にする必要がある。この結果、樹脂の注入時間が限定されてしまい、成形サイクルを短縮することができなくなる。
また、特許文献5には、低融点合金で中子を製作しておき、この中子の外面に繊維強化樹脂を膜状に積層して硬化させ、その後に中子を溶融して取り除く技術が開示されている。しかし、FRPの一体ごとに金属製の中子を製作して溶融する必要があるため、工程は極めて煩雑になりコストが高くなってしまうものと考えられる。
特開2007−90810号公報 特開2008−73876号公報 特開2008−213389号公報 特開2006−150614号公報 特開2003−103643号公報
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたものであり、その目的は、中空を有する繊維強化樹脂成形品(FRP)の製造において、FRPが中子の引き抜きを容易に行うことができない形状である場合でも、コストアップすることなく中空の形状を安定させて、表面品質を向上させるとともに樹脂の注入圧を高めて成形サイクルを短縮することにある。
〔請求項1の手段〕
請求項1に記載の繊維強化樹脂成形品は中空を有するものであって、中空を形成する中子と、中子の外側に成形された繊維強化樹脂部とを備え、繊維強化樹脂部の内側に中子が残存している。
これにより、FRPから中子を引き抜く必要がなくなるので、FRPが中子の引き抜きを容易に行うことができない形状である場合でも、コストアップすることなく中空の形状が安定したFRPを得ることができる。
すなわち、FRPから中子を引き抜く必要がないので、FRPが中子の引き抜きを容易に行うことができない形状である場合でも、FRPを複数のパーツに分割する必要がなくなる。このため、設備コストおよびランニングコストを安価に抑えることができるので、コストアップすることなく中空を有するFRPを得ることができる。
また、FRPから中子を引き抜く必要がないので、例えば、以下のような中空形状を安定させるための対策を採用することができる。
すなわち、プリフォーム形成時に作用する賦形圧や、RTM成形時に作用する樹脂の注入圧等に耐え得るように中子を高剛性に設けたり、中子の剛性をさほど高めなくても中空に充填物を充填して中子と充填物との組合せで剛性を高め、RTM成形後に充填物を抜き出したりすることで、中空の形状を安定させることができる。また、中子は、剛性の高低に関わらずポリプロピレンやPET等をブロー成形等することにより安価に得ることができる。
以上により、中空を有するFRPの製造において、FRPが中子の引き抜きを容易に行うことができない形状である場合でも、コストアップすることなく中空の形状を安定させて、表面品質を向上させるとともに樹脂の注入圧を高めて成形サイクルを短縮することができる。
〔請求項2の手段〕
請求項2に記載の繊維強化樹脂成形品の製造方法は、中子の外側に強化繊維を配して賦形することにより、中子と強化繊維とを一体化したプリフォームを形成する賦形工程と、プリフォームを所定の金型内に配するとともに、金型内において中子の外側に樹脂を注入して強化繊維に樹脂を含浸させ、中子の外側に繊維強化樹脂部を成形するRTM成形工程とを備える。
この手段は、中子を残すFRPを製造するにあたり、中子と強化繊維とを一体化したプリフォームを形成することを示すものである。
〔請求項3の手段〕
請求項3に記載の製造方法は、賦形工程の前に、中空に充填物を充填して閉じ込める充填工程と、RTM成形工程後に中子から充填物を抜き出す後処理工程とを備える。
これにより、中子の剛性がさほど高くなくても、賦形工程およびRTM成形工程において中子と充填物との組合せで剛性が高まるので、中子は賦形圧や樹脂の注入圧に耐えることができる。このため、中空の形状を安定させることができる。
〔請求項4の手段〕
請求項4に記載の繊維強化樹脂成形品の製造方法は、強化繊維を賦形してプリフォームを形成する賦形工程と、中子を所定の金型内に配するとともに、金型内において中子の外側にプリフォームを配し、中子の外側に樹脂を注入して強化繊維に樹脂を含浸させ、中子の外側に繊維強化樹脂部を成形するRTM成形工程とを備える。
この手段は、中子を残すFRPを製造するにあたり、中子を含まないプリフォームを形成することを示すものである。
〔請求項5の手段〕
請求項5に記載の製造方法は、RTM成形工程の前に、中空に充填物を充填して閉じ込める充填工程と、RTM成形工程後に中子から充填物を抜き出す後処理工程とを備える。
これにより、中子の剛性がさほど高くなくても、成形工程において中子と充填物との組合せで剛性が高まるので、中子は樹脂の注入圧に耐えることができる。このため、中空の形状を安定させることができる。
〔請求項6の手段〕
請求項6に記載の製造方法によれば、後処理工程で抜き出した充填物を、再度、充填工程で中空に充填して利用する。
これにより、例えば、ショットピーニングに使用される金属球やセラミック球を充填物として利用することができるようになる。このため、例えば、砂等を充填物として使用することによる粉塵発生等の事態を回避することができる。
〔請求項7の手段〕
請求項7に記載の繊維強化樹脂成形品によれば、少なくとも繊維強化樹脂部を厚さ方向に貫通する穴が存在する。
これにより、穴に相当する突起を金型等に設けて、突起により中子の支持および位置決めを行うことができる。このため、中空の位置を安定させることができる。
〔請求項8の手段〕
請求項8に記載の製造方法によれば、RTM成形工程前の中子の外側表面には凹凸が存在する。
これにより、金型内に注入した樹脂を、早期に金型内で中子の外側表面に沿って分散させることができる。
(a)は繊維強化樹脂成形品の斜視図であり、(b)は中子の斜視図である。 (a)は図1(a)のA−A断面図であり、(b)は(a)の部分拡大図である。 (a)は充填工程の説明図であり、(b)は賦形工程の説明図である。 (a)はRTM成形工程の説明図であり、(b)は後処理工程の説明図である。 繊維強化樹脂成形品の断面図である(変形例)。
実施形態の繊維強化樹脂成形品は中空を有するものであって、中空を形成する中子と、中子の外側に成形された繊維強化樹脂部とを備え、繊維強化樹脂部の内側に中子が残存している。
また、繊維強化樹脂成形品には、少なくとも繊維強化樹脂部を厚さ方向に貫通する穴が存在する。
また、実施形態の繊維強化樹脂成形品の製造方法は、中子の外側に強化繊維を配して賦形することにより、中子と強化繊維とを一体化したプリフォームを形成する賦形工程と、プリフォームを所定の金型内に配するとともに、金型内において中子の外側に樹脂を注入して強化繊維に樹脂を含浸させ、中子の外側に繊維強化樹脂部を成形するRTM成形工程とを備える。
さらに、この製造方法は、賦形工程の前に、中空に充填物を充填して閉じ込める充填工程と、RTM成形工程後に中子から充填物を抜き出す後処理工程とを備え、後処理工程で抜き出した充填物を、再度、充填工程で中空に充填して利用する。
なお、この製造方法によれば、RTM成形工程前の中子の外側表面には凹凸が存在する。
〔実施例の構成〕
実施例の繊維強化樹脂成形品(FRP)1の構成を、図1および図2を用いて説明する。
FRP1は、中空2を有するものであり、自動車、バイク、産業用ロボットおよび一般産業用機器等に適用できる中空部材であり、例えば、自動車のフレーム、シャシー部品、足回り部品、サスペンション部品、ドアパネルやフードパネル等に利用することができ、より具体的には、クロスメンバー等に好適に利用することができる。そして、FRP1は、中空2を形成する中子3と、中子3の外側にRTM成形により設けられる繊維強化樹脂部4とを備え、繊維強化樹脂部4の内側に中子3が残存している。
また、FRP1は、例えば、長手方向の両端が開口しておらず、中空2が外部に開口する穴5を有するものの、穴5から中子3を容易に引き抜くことができない形状を呈する。例えば、穴5に垂直な方向を中子3の引き抜き方向と仮定した場合(図2(a)参照)、この引き抜く方向に関して穴5の径が中子3の寸法よりも小さいため、FRP1は、中子3を容易に引き抜くことができない形状となっている。
中子3は、賦形時やRTM成形時の温度以上の融点を有する樹脂を、ブロー成形等することにより設けられる。また、中子3の成形に用いる樹脂としては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ABS、ポリアミド、ポリエステル等の熱可塑性樹脂を挙げることができる。
なお、中子3の中空2には、後記するようにFRP1の製造工程において充填物7が充填されて閉じ込められ、RTM成形工程後に充填物7が抜き出される(図3、図4参照)。このため、充填物7を充填するための充填穴8は、中空2に充填物7が充填された後、例えば、中子3と同一材料からなる蓋部材(図示せず)が宛がわれて高周波加熱シールにより封鎖されたり、所定の封止部材が嵌め込まれて封鎖されたりする。また、中子3には、後記するように賦形型9内および成形型10内において位置決めに利用するための位置決めピン11が設けられている。
繊維強化樹脂部4は、強化繊維13(図3(b)参照)に樹脂を含浸させてなるものであり、強化繊維13の基本材料としては、例えば、炭素繊維、ガラス繊維、金属繊維等の無機繊維、アラミド繊維、ポリアミド繊維等の有機繊維を挙げることができる。また、強化繊維13に含浸させる樹脂(以下、マトリックス樹脂と呼ぶ。)としては、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、フェノール樹脂等の熱硬化性樹脂や、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリプロピレン樹脂等の熱可塑性樹脂を挙げることができる。
また、中子3の外側表面には、適宜、凹凸が設けられており(図2(b)参照)、RTM成形時に、マトリックス樹脂が早期に成形型10内(図3、図4参照)で中子3の外側表面に沿って分散できるようになっている。また、凹凸を設けることで、中子3の剛性を高めることもできる。なお、凹凸の高さ、幅、ピッチをより細かくすることで、マトリックス樹脂の硬化時にFRP1の表面に生じるヒケや歪み等が発生しにくくなり、FRP1の表面品質が向上する。
また、繊維強化樹脂部4には、例えば、厚さ方向に貫通する穴5が存在するが、この穴5は、後記するように成形型10内において中子3の支持および位置決めを行うための突起14が抜き取られて形成されたものである(図3、図4参照)。さらに、穴5は中子3を貫通して中空2に達しているが、中子3を貫通する部分は、後記するように充填物7を中空2から抜き出すために開けられたものである。
〔実施例の製造方法〕
実施例のFRP1の製造方法を、図3、図4を用いて説明する。
実施例のFRP1の製造方法は、中子3の中空2に充填物7を充填して閉じ込める充填工程と、充填物7を充填した中子3と強化繊維13とを一体化したプリフォーム16を形成する賦形工程と、プリフォーム16を成形型10内に配してマトリックス樹脂を注入し、繊維強化樹脂部4を成形するRTM成形工程と、中子3から充填物7を抜き出す後処理工程とを備える。
以下、FRP1の製造方法を工程順に説明する。
まず、充填工程では、例えば、ショットピーニングに使用される小径の金属球やセラミック球を充填物7として中空2に充填する。なお、充填物7を中空2に充填する際に、中空2を大気圧よりも低圧に減圧して充填の稠密性を高めてもよい。また、充填物7として、RTM成形工程の温度で膨張しない液体を使用してもよい。
ここで、金属球を充填物7として採用する場合、充填物7の熱伝導性が高いので、RTM成形工程において、中子3の外側表面近傍におけるマトリックス樹脂の流動性が高まり、成形性にとって有利であると考えられる。また、セラミック球を充填物7として採用する場合、充填物7は金属球を採用する場合に比べて軽量になるとともに熱膨張が少なくなる。このため、充填物7が詰まった中子3やFRP1の運搬が容易になり、充填物7の熱膨張に起因する問題(例えば、中空2の容積拡大が考えられる。)の発生を抑制できる。
なお、充填物7を充填するための充填穴8は、前記のように中空2に充填物7が充填された後、例えば、中子3と同一材料からなる蓋部材(図示せず)が宛がわれて高周波加熱シールにより封鎖されたり、所定の封止部材が嵌め込まれて封鎖されたりする。
次に、賦形工程では、充填物7を充填した中子3および強化繊維13を賦形型9内に配し、所定の温度に加熱するとともに所定の荷重を加えて封鎖することでプリフォーム16を形成する。ここで、賦形工程とは、中子3および強化繊維13を次のRTM成形工程において使用する成形型10内に適切に配することができる形状とするための工程である。また、プリフォーム16とは、成形型10内に適切に配することができるように賦形された強化繊維13、または中子3および強化繊維13の一体物であり、本実施例では、中子3および強化繊維13の一体物がプリフォーム16として成形型10内に配される。
また、賦形型9内に配される強化繊維13は、裁断およびパイリングにより積層体をなしている。そして、積層体状の強化繊維13により中子3を上下から包み込むようにして賦形型9内に配し、プリフォーム16を形成する。
また、賦形型9は、例えば、上型17と下型18とからなるものであり、下型18には、穴5に対応する位置に突起19が設けられ、突起19の上面に、位置決めピン11が嵌る位置決めボス20が設けられている。そして、位置決めボス20に位置決めピン11が嵌ることで、賦形型9内において中子3が位置決めされる。そして、賦形型9内から取り出されたプリフォーム16は、周縁をラフトリムされてから成形型10内に配される。
次に、RTM成形工程では、プリフォーム16を成形型10内に配して成形型10内を封鎖するとともに、成形型10内において中子3の外側にマトリックス樹脂を注入し、強化繊維13にマトリックス樹脂を含浸させて硬化させる。これにより、中子3の外側に繊維強化樹脂部4が成形される。なお、マトリックス樹脂を注入するための装置は周知の構成を有するものであり、成形型10内は、真空ポンプ等により減圧することが可能である。そして、RTM成形工程では、成形型10内を減圧しながらマトリックス樹脂を成形型10内に注入する。
また、成形型10は、例えば、上型22と下型23とからなるものであり、下型23には、穴5に対応する位置に突起14が設けられ、突起14の上面に、位置決めピン11が嵌る位置決めボス24が設けられている。そして、位置決めボス24に位置決めピン11が嵌ることで、成形型10内において中子3が位置決めされる。そして、RTM成形工程後に成形型10から取り出されたFRP1には、突起14の存在により、繊維強化樹脂部4を厚さ方向に貫通して中子3の表面に達する穴5が形成される。
後処理工程では、充填物7を内蔵するFRP1を成形型10から取り出して中子3から充填物7を抜き出す。すなわち、穴5を、中空2に向かって延長して中子3を貫通させる。これにより、中空2に充填された充填物7の抜き出しが可能になる。なお、充填物7は、全量、完全に抜き出され、再度、充填工程で中空2に充填されて再利用される。
〔実施例の効果〕
実施例のFRP1は、中空2を形成する中子3と、中子3の外側に成形された繊維強化樹脂部4とを備え、繊維強化樹脂部4の内側に中子3が残存している。
これにより、FRP1から中子3を引き抜く必要がなくなるので、FRP1が中子3の引き抜きを容易に行うことができない形状であっても、コストアップすることなく中空2を有するFRP1を得ることができる。なお、中子3は、ポリプロピレンやPET等をブロー成形等することにより安価に得ることができる。
すなわち、FRP1から中子3を引き抜く必要がないので、FRP1を複数のパーツに分割して個別の設備により各々のパーツを製造する必要がなくなる。このため、設備コストおよびランニングコストを安価に抑えることができるので、中子3の引き抜きを容易に行うことができない形状であっても、コストアップすることなく中空2を有するFRP1を得ることができる。
また、FRP1の製造では、中空2に充填物7を充填して中子3と充填物7との組合せで中子3の剛性を高めた上で賦形工程やRTM成形工程を行い、後処理工程にて充填物7を抜き出す。
これにより、中子3は、賦形圧やマトリックス樹脂の注入圧に耐えることができるので、賦形工程やRTM成形工程において中空2の形状が安定する。このため、FRP1の表面にヒケや歪み等が発生しにくくなるので、FRP1の表面品質を高めることができる。また、マトリックス樹脂の注入圧を高めて強化繊維13に対するマトリックス樹脂の含浸速度を大きくし、成形サイクルを短縮することができる。
また、FRP1の製造では、後処理工程で抜き出した充填物7を、再度、充填工程で中空2に充填して再利用する。
これにより、例えば、ショットピーニングに使用される金属球やセラミック球を充填物7として利用することができるようになる。このため、例えば、砂等を充填物7として使用することによる粉塵発生等の事態を回避することができる。
また、FRP1には、少なくとも繊維強化樹脂部4を厚さ方向に貫通する穴5が存在する。
これにより、賦形型9の下型18や成形型10の下型23において、穴5に相当する位置にそれぞれ突起19、14を設けて、例えば、突起19、14にそれぞれ位置決めボス20、24を設けるとともに中子3に位置決めピン11を設けて、位置決めボス20、24に位置決めピン11を嵌めることにより、中子3の支持および位置決めを行うことができる。このため、中空2の位置を安定させることができる。
また、RTM成形工程前の中子3の外側表面には凹凸が存在する。
これにより、成形型10内に注入したマトリックス樹脂を、早期に成形型10内で中子3の外側表面に沿って分散させることができる。
〔変形例〕
FRP1およびその製造方法の態様は、実施例に限定されず種々の変形例を考えることができる。例えば、実施例の製造方法によれば、中子3は、中空2に充填物7を内蔵することで剛性が強化されていたが、中子3自身を賦形圧やマトリックス樹脂の注入圧等に耐え得るように高剛性に設けて中空2に充填物7を充填することなく、賦形工程やRTM成形工程を行うようにしてもよい。この場合、充填物7の充填および抜き出しの作業が不要になるので、FRP1の製造が簡素になる。また、中子3は、剛性の高低に関わらずポリプロピレンやPET等をブロー成形等することにより安価に得ることができる。
また、実施例の製造方法により製造されたFRP1は、1つの中空2を有するものであったが、図5に示すように、2つ以上の中空2を有するFRP1を設けることもできる。
また、実施例の製造方法によれば、プリフォーム16は、中子3と強化繊維13との一体物として設けられていたが、中子3を含まず主に強化繊維13からなるプリフォーム16を設けておき、RTM成形工程において、成形型10内に中子3を配するとともに、成形型10内においてプリフォーム16により中子3を包み込んでから成形型10内を封鎖し、マトリックス樹脂を注入するようにしてもよい。
例えば、賦形工程において、中子3を含まず主に強化繊維13からなる複数のプリフォーム16を設けておき、RTM成形工程において、成形型10内で複数のプリフォーム16により中子3を外側から包み込んで成形型10内を封鎖し、マトリックス樹脂を注入するようにしてもよい。この場合、充填物7を中子3に充填する時期は、RTM成形工程よりも前であればよく、例えば、賦形工程と充填工程とを同時進行させてもよい。
また、実施例の製造方法によれば、賦形型9の下型18や成形型10の下型23において、穴5に相当する位置にそれぞれ突起19、14を設けて位置決めボス20、24に位置決めピン11を嵌めることにより、中子3の支持および位置決めを行っていたが、FRP1の形状自体が中子3の支持および位置決めに適する場合には、位置決めボス20、24や位置決めピン11等をもうけることなく、いわゆる形状ガイドにより賦形型9内や成形型10内で中子3の支持および位置決めを行うようにしてもよい。この場合、後処理工程では、FRP1において剛性や外観等に関わらない位置に穴5を開けて充填物7を抜き出すことができる。
また、実施例の製造方法によれば、位置決めピン11は、中子3において1箇所のみに設けられていたが、位置決めピン11を2箇所以上に設けてもよい。
また、中子3の充填物7として液体を採用する場合、賦形型9内に中子3および強化繊維13を配した状態で、賦形工程の開始前または賦形工程の途中で中子3に充填物7としての液体を注入するようにしてもよく、成形型10内にプリフォーム16を配した状態で、RTM成形工程の開始前またはRTM成形工程の途中で中子3に液体を注入するようにしてもよい。
1 FRP(繊維強化樹脂成形品)
2 中空
3 中子
4 繊維強化樹脂部
5 穴
7 充填物
10 成形型(所定の金型)
13 強化繊維
16 プリフォーム

Claims (8)

  1. 中空を有する繊維強化樹脂成形品であって、
    前記中空を形成する中子と、前記中子の外側に成形された繊維強化樹脂部とを備え、
    前記繊維強化樹脂部の内側に前記中子が残存していることを特徴とする繊維強化樹脂成形品。
  2. 請求項1に記載の繊維強化樹脂成形品の製造方法において、
    前記中子の外側に強化繊維を配して賦形することにより、前記中子と前記強化繊維とを一体化したプリフォームを形成する賦形工程と、
    前記プリフォームを所定の金型内に配するとともに、この金型内において前記中子の外側に樹脂を注入して前記強化繊維に樹脂を含浸させ、前記中子の外側に前記繊維強化樹脂部を成形するRTM成形工程とを備える繊維強化樹脂成形品の製造方法。
  3. 請求項2に記載の繊維強化樹脂成形品の製造方法において、
    前記賦形工程の前に、前記中空に充填物を充填して閉じ込める充填工程と、
    前記RTM成形工程後に前記中子から前記充填物を抜き出す後処理工程とを備える繊維強化樹脂成形品の製造方法。
  4. 請求項1に記載の繊維強化樹脂成形品の製造方法において、
    強化繊維を賦形してプリフォームを形成する賦形工程と、
    前記中子を所定の金型内に配するとともに、この金型内において前記中子の外側に前記プリフォームを配し、前記中子の外側に樹脂を注入して前記強化繊維に樹脂を含浸させ、前記中子の外側に前記繊維強化樹脂部を成形するRTM成形工程とを備える繊維強化樹脂成形品の製造方法。
  5. 請求項4に記載の繊維強化樹脂成形品の製造方法において、
    前記RTM成形工程の前に、前記中空に充填物を充填して閉じ込める充填工程と、
    前記RTM成形工程後に前記中子から前記充填物を抜き出す後処理工程とを備える繊維強化樹脂成形品の製造方法。
  6. 請求項3または請求項5に記載の繊維強化樹脂成形品の製造方法において、
    前記後処理工程で抜き出した充填物を、再度、前記充填工程で前記中空に充填して利用することを特徴とする繊維強化樹脂成形品の製造方法。
  7. 請求項2〜6の内のいずれか1つに記載の製造方法により製造された繊維強化樹脂成形品において、
    少なくとも前記繊維強化樹脂部を厚さ方向に貫通する穴が存在することを特徴とする繊維強化樹脂成形品。
  8. 請求項2〜7の内のいずれか1つに記載の繊維強化樹脂成形品の製造方法において、
    前記RTM成形工程前の前記中子の外側表面には凹凸が存在することを特徴とする繊維強化樹脂成形品の製造方法。
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