JP5468968B2 - インク廃液吸収体 - Google Patents
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本発明において、ポリウレタンフォームに含浸させる含浸液(以下、「本発明の含浸液」と称す場合がある。)は、消泡剤及び/又は整泡剤とグリセリンとを含み、更に好ましくはバインダーを含むものである。通常、この含浸液は、水溶液ないし水分散液として調製される。
消泡剤としては、例えば、アルコール類、エーテル類、ポリオール類、脂肪酸エステル類、金属石鹸類、燐酸エステル類、シリコーン類、及びノニオン性界面活性剤類等を挙げることができる。本発明では、これらのうち、特にシリコーン系消泡剤が好ましく、特に自己乳化型シリコーン系消泡剤が好ましい。自己乳化型シリコーン系消泡剤を用いた場合には、親水性変性シリコーンオイルの作用により、インク廃液吸収体のインク吸収性及び排出性を向上させることができる。
BAN MS−575(Ultra Additives Inc. 製)、カルビノール変性としてKF−6001、KF−6003(信越シリコーン株式会社製)等を挙げることができる。
整泡剤としては、ポリジメチルシロキサン−ポリエチレンオキサイド共重合体、ポリジメチルシロキサン−ポリプロピレンオキサイド共重合体、ポリジメチルシロキサン−ポリエチレンアジペート共重合体などからなる整泡剤を挙げることができるが、シリコーン系整泡剤が好ましく、特に自己乳化型シリコーン系整泡剤が好ましい。このようなシリコーン系整泡剤の市販品としては、WI55、L−6202B(いずれも東レ・ダウコーニング株式会社製)などを挙げることができる。
グリセリンとしては、市販のものを適宜用いることができる。具体的には、阪本薬品工業株式会社製、関東化学株式会社製のものを用いることができる。
バインダーとしては、例えば油性、油分散性、水溶性、水分散性、両親媒性のバインダーのいずれも使用可能である。中でも、水等の溶剤に溶解、または分散可能で、溶剤を除去することにより被膜を形成するものが好適である。この点で、樹脂やエラストマー等の有機高分子材料が好適である。これらは熱可塑性、熱硬化性のいずれであってもよいが、特に、水溶性のものが好ましい。
界面活性剤としては、例えば、コハク酸塩、カルボン酸塩、リン酸塩、スルホン酸塩、エチレンオキシド等の陰イオン界面活性剤(アニオン系界面活性剤);アルキルアミン塩、第四アンモニウム塩等の陽イオン界面活性剤(カチオン系界面活性剤);ポリエチレングリコールアルキルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル、アルキルアリルエーテル、アルキルエーテル、アルキルエステル、アルキルアミン、フェニルエーテル、アルキルアルカノールアミド等の非イオン界面活性剤(ノニオン系界面活性剤);アミノ酸、アルキルベタイン、アミンオキサイド、アルキルイミダゾリニウム等の両性界面活性剤;ポリシロキサン等のシリコーン系界面活性剤;フッ素系界面活性剤;等が用いられる。また、本発明においては高分子型界面活性剤、反応型界面活性剤も好適に使用可能である。
本発明の含浸液は、上記消泡剤及び/又は整泡剤、グリセリン、界面活性剤、バインダー及び媒体としての水の他、必要に応じて水溶性溶剤や、保湿剤、pH調整剤、防腐・防カビ剤、荷電制御剤等の各種の添加剤の1種又は2種以上を含有することができる。
本発明の含浸液は、水に、消泡剤及び/又は整泡剤とグリセリンと、更に、必要に応じて添加されるバインダー及び各種の添加剤を混合することにより調製される。
本発明の含浸液を用いてポリウレタンフォームの含浸処理を行う方法としては、特に制限はないが、例えば、前記含浸液にポリウレタンフォームを浸漬して、ポリウレタンフォームに含浸液を含浸させる方法が挙げられる。含浸液の含浸後には、必要に応じて過剰の液分を絞り取った後、乾燥する。この乾燥は100〜180℃程度の温度に加熱して行っても良い。
本発明のインク廃液吸収体は、優れた加工性を備えるものであるため、ベースとなるポリウレタンフォームに対して含浸処理を行った後、打ち抜き加工等で所定の寸法に加工して製造することが好ましい。この方法であれば、従来のようにベースとなるポリウレタンフォームに対して打ち抜き加工などを行った後、インク廃液吸収体毎に含浸処理を施すという煩雑な工程を経ることなく製造することが可能である。
本発明のインク廃液吸収体において、ポリウレタンフォームへの消泡剤及び/又は整泡剤の含浸量は、インク廃液吸収体に要求される性能によっても異なるが、好ましくは0.01〜8.0kg/m3、更に好ましくは0.05〜4.0kg/m3である。消泡剤及び/又は整泡剤の含浸量が少ない場合には、十分なインク吸収性を得ることができない。また、ポリウレタンフォームへのグリセリンの含浸量は1.0〜8.0kg/m3、特に1.6〜4.0kg/m3が好ましい。グリセリンの含浸量が上記範囲よりも少ないとグリセリン用いることによる本発明の効果を十分に得ることができず、多いと取り扱い性及び加工性が低下するため好ましくない。
本発明のインク廃液吸収体のポリウレタンフォームとしては、前述の如く、所定の物性を備えたものが好ましい。以下、好ましいポリウレタンフォームの物性について具体的に説明する。なお、以下のフォーム物性の測定方法は、後述の実施例の項に記載される通りである。
ポリウレタンフォームの通気度は、120以上cc/cm2/sec、特に120〜450cc/cm2/sec、とりわけ120〜300cc/cm2/sec、であることが好ましい。通気度が前記範囲よりも小さいと、インク廃液吸収体のインク排出性が低くなり、インク廃液吸収体にインクが堆積する原因となる。ポリウレタンフォームの通気度が低いと含浸液の含浸性、生産性に劣るものとなることから高い方が好ましいが、過度に通気度の高いものは、インク廃液吸収体としての硬度等の要求特性を満足し得ず、好ましくない。
セル数は20〜60個/25mmであり、特に、30〜60個/25mmであることが好ましい。セル数がこの範囲より少ないとインクをフォーム内で保持することが困難になる。また、セル数が20個/25mmよりも少ないポリウレタンフォームは、製造することが困難であるため製造効率が低下する原因となる。セル数が前記範囲よりも多いと含浸液にポリウレタンフォームを含浸させる場合、含浸しにくくなり、含浸液の含浸量が一定になりにくい。また、含浸速度も遅く、コスト高をまねく。セル数が前記範囲内であるポリウレタンフォームであれば、インクの吸収性が高いインク廃液吸収体を得ることができる。
ポリウレタンフォームの密度は、10〜100kg/m3であることが好ましく、特に20〜50kg/m3であることが好ましい。密度が過度に高いとコスト高となるが、過度に密度の低いものは、インク廃液吸収体としての硬度等の要求特性を満足し得ず、好ましくない。
ポリウレタンフォームの硬度は、プリンターへの組み付け性に関係し、10〜30kgfが好ましく、特に15〜20kgfであることが好ましい。硬度が高過ぎても低過ぎても、プリンターへの組み付け性に劣るものとなる。
上述のポリウレタンフォームに前述の含浸液を含浸処理してなる本発明のインク廃液吸収体は、そのインク吸収性やプリンターへの組み付け性、耐久性、コスト等から、次のような物性を有することが好ましい。なお、以下の物性についても、その測定方法は、後述の実施例の項に示す通りである。
15〜110kg/m3、特に20〜50kg/m3であることが好ましい。
10〜30kgf、特に15〜20kgfであることが好ましい。
120cc/cm2/sec以上であることが好ましく、特に120〜450cc/cm2/secであることが好ましい。通気度が120cc/cm2/sec以下であるとインク廃液吸収体のインク排出性が低下し、インクが堆積しやすくなる。このインク廃液吸収体の通気度が120cc/cm2/sec以上であれば、インクが詰まりにくくなるため、インク排出性が向上し、インクが堆積しにくくなると共に、インクが着弾しやすくなるため、ミスト性能も向上する。
このような本発明のインク廃液吸収体は、特にインクジェット式記録装置のプリンターヘッドに対応するインク導通材又はインク吸収材、このインク導通材に接触させるインク吸収体等に適用されるが、何らこれらに限定されるものではない。
表1に示す配合の含浸液を調製し、この含浸液中に表1に示す特性を備える軟質ポリウレタンフォームを浸漬した後引き上げ、160℃で5分乾燥してインク廃液吸収体を得た。実施例及び比較例で用いたポリウレタンフォーム、消泡剤及び/又は整泡剤、グリセリン、界面活性剤及びバインダーの仕様は以下の通りである。
ブリヂストン社製の軟質ポリウレタンフォームを用いた。軟質ポリウレタンフォームの物性は表1の通りである。なお、実施例1〜10及び比較例1〜11では厚さが3mmである軟質ポリウレタンフォームをそれぞれ用い、比較例12では厚さが2mmである軟質ポリウレタンフォームを用いた。また、実施例1〜10及び比較例1〜11では、硬度が15kgfである軟質ポリウレタンフォームを用い、比較例12では、硬度が11kgfである軟質ポリウレタンフォームをそれぞれ用いた。
信越化学工業社製「KS−502」:シリコーン系自己乳化型消泡剤
信越化学工業社製「KS−537」:シリコーン系自己乳化型消泡剤
東レ・ダウコーニング社製「L−6202B」:シリコーン系自己乳化型整泡剤
<グリセリン>
関東化学社製「グリセリン」
エネックス社製「SEレベラ450」:アニオン・ノニオン系混合界面活性剤(樹脂濃度85重量%、アニオン:ノニオン=3:7(成分比))
エネックス社製「BS−050301−1」:アクリル樹脂系エマルジョン接着剤(樹脂濃度50重量%、アニオン性乳化剤1重量%未満含有)
実施例1〜5,8〜10及び比較例1〜10,12においては、軟質ポリウレタンフォームへの含浸液の含浸量が乾燥重量で5kg/cm3となるように調整した。また、実施例6,7においては、含浸量が乾燥重量でそれぞれ8kg/cm3,4kg/cm3となるように調整し、比較例11においては、含浸量が乾燥重量で3kg/cm3となるように調整した。消泡剤及び/又は整泡剤、グリセリン、界面活性剤及びバインダーの各々の含浸量については、含浸量比が、使用した各含浸液における各成分の配合比に等しいとして算出した。
水平においた各インク廃液吸収体のテスト片(100mm×100mm×10mm厚さ)の上面中央部に対して、テスト片上面から高さ5cmの位置にシリンジの針の先端をセットし、1ccのインクを滴下し、インクがテスト片表面から吸収されるまでの時間(秒)を測定し、以下の基準で評価した。
◎:0.5秒以下
○:0.5秒を超え、1.0秒以下
△:1.0秒を超え、2.0秒以下
×:2.0秒を超え、5.0秒以上
各インク廃液吸収体を市販のインクジェットプリンターに搭載し、標準インクカートリッジをカラー列に装着した。15℃及び10%相対湿度の環境下で、L版フォトペーパーに対する縁無印刷を50枚実施し、その後24時間室温にて放置する工程を1工程とし、これを20工程繰り返した。各工程毎にインクミストによるプリンター内部の汚れを評価することにより、インク廃液吸収体のインクミスト防止性を下記基準により評価した。
◎:インクミストによる汚れが全くない
○:インクミストによる汚れがほとんどない
×:インクミストによる汚れがある
◎:10〜9点
○:8〜7点
△:6〜4点
×:3点以下
ベースとなる軟質ポリウレタンフォームを含浸液で含浸処理した後、打ち抜き加工で加工する際の加工性を以下の基準で評価した。
○:加工の際に軟質ポリウレタンフォームが変形しなかったもの
×:加工の際に軟質ポリウレタンフォームが変形したもの
打ち抜き加工により加工したインク廃液吸収体をプリンターに組み付ける際の作業性により評価した。従来のインク廃液吸収体を組み付ける際の作業性と比較して、従来のインク廃液吸収体より作業性が良好であれば○、従来と同等及び従来以下であれば×とした。
実施例及び比較例のインク廃液吸収体を製造する際のコストを、従来のインク廃液吸収体を製造する場合のコストと比較して、以下の基準で評価した。
◎:非常に安価に製造することができる。
○:安価に製造することができる。
△:従来の製品と同程度のコストがかかる。
×:従来の製品よりコストがかかる。
××:従来の製品より多くのコストがかかる。
×××:従来の製品より極めて多くのコストがかかる。
Claims (8)
- ポリウレタンフォームを、消泡剤及び/又は整泡剤とグリセリンとを含む含浸液で含浸処理してなるインク廃液吸収体において、
該ポリウレタンフォームは、通気度が120cc/cm2/sec以上で、セル数が20〜60個/25mmであり、
該含浸液は、該含浸液中の消泡剤及び/又は整泡剤とグリセリンとの重量比が1/0.8〜1/70で、消泡剤及び/又は整泡剤とグリセリンとの合計の含有率が5〜45重量%であることを特徴とするインク廃液吸収体。 - 請求項1において、前記ポリウレタンフォームは、通気度が120〜450cc/cm2/secであり、セル数が30〜60個/25mmであることを特徴とするインク廃液吸収体。
- 請求項1又は2において、前記消泡剤がシリコーン系消泡剤であることを特徴とするインク廃液吸収体。
- 請求項3において、前記シリコーン系消泡剤が自己乳化型シリコーン系消泡剤であることを特徴とするインク廃液吸収体。
- 請求項1ないし4のいずれか1項において、前記含浸液がアニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤及びノニオン系界面活性剤のうちの1種又は2種以上を含むものであることを特徴とするインク廃液吸収体。
- 請求項1ないし5のいずれか1項において、前記ポリウレタンフォームへの消泡剤及び/又は整泡剤の含浸量が0.01〜5.0kg/m3であり、グリセリンの含浸量が1.0〜8.0kg/m3であることを特徴とするインク廃液吸収体。
- 請求項1ないし6のいずれか1項において、前記ポリウレタンフォームが、非ハロゲン系難燃剤を含む難燃性軟質ポリウレタンフォームであることを特徴とするインク廃液吸収体。
- 請求項1ないし7のいずれか1項において、前記ポリウレタンフォームに前記含浸液を含浸させた後、所定の大きさに切断して得られることを特徴とするインク廃液吸収体。
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