JP5468230B2 - 難燃性木材の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、難燃性木材の製造方法に関するものである。
建築材料や家具、工芸品などに幅広く使用されている木材が燃焼することは、周知の事実である。これまで木材に難燃性を付与する方法は、幾つか提案されており、その中に一つの方法としてとして、金属アルコキシドにより、木材を難燃化する製造方法が開示されている。
特許文献1において、木材中に一種或いは二種以上の金属アルコキシドの溶液を木材に含浸させ、その後加水分解若しくは加熱分解することによって金属アルコキシドを木材中で不燃性の金属酸化物に変え、木材を難燃化する製造方法が開示されている。
特許文献2では、金属アルコキシドを木材或いは木質材料に含浸させて、その後加水分解又は加熱分解することによって金属アルコキシドを木材中で不燃性、不溶性の金属酸化物に変えた後、該木材に有機ハロゲン化合物を含浸、又は表層に塗布する事によって木材に耐火性能を付与する木材金属酸化物複合体の製造方法が開示されており、特許文献3には、木材中に1種又は2種以上の金属アルコキシドの溶液を含浸させる際に、加水分解性アルコキシシリル基含有有機ケイ素化合物を添加して木材細胞空隙内でこれらを加水分解又は加熱分解し、重縮合させる改質(難燃)木材の製造方法が開示されている。
これらの方法は、いずれも金属アルコキシド溶液又は金属アルコキシドを含む複合溶液に木材を浸漬させ、金属アルコキシドを含浸させる方法であり、常圧含浸だけでなく、減圧含浸、加圧含浸などの方法が開示されている。また、含浸した金属アルコキシドの加水分解また加熱分解は、該木材を加熱して金属酸化物に変える方法が開示されている。
ここで、これまで開示されている方法は、いずれも金属アルコキシド溶液に木材を浸漬させる必要があり、また、該金属アルコキシドを含浸させる工程と、金属アルコキシドを加水分解又は加熱分解する工程が、それぞれ別工程となっているだけでなく、含浸後の金属アルコキシドを含む残溶液を回収しなければならなかった。
特開平5−278008号公報 特開平6−802号公報 特許第2962191号公報
本発明は、難燃性に優れた木材を簡易な工程で製造できる、難燃性木材の製造方法を提供することを目的とする。
本発明は、金属アルコキシドの蒸気とキャリアガスの混合ガスを木材と接触させて、木材の細胞壁表面及び/又は細胞壁内において前記金属アルコキシドの反応物を形成させる工程(除く、ほう素アルコキシドと前記ほう素アルコキシドと共沸混合物を形成する化合物との混合物の蒸気による処理であって、前記共沸混合物の沸点以上、且つ、前記ほう素アルコキシドがほう酸と他の反応生成物に加水分解する反応における、前記ほう素アルコキシドまたは前記他の反応生成物のより低い方の沸点以下の温度で行われる処理)を備える、難燃性木材の製造方法を提供する。
この製造方法によれば、木材の表面や細胞壁の外側のみならず、木材表面に露出していない木材細胞の細胞壁内部に、金属アルコキシドの反応物を形成することができ、液相で含浸する公知の方法(以下、「液相含浸法」と呼ぶ場合がある。)によるものに比較して、より簡易な工程で、難燃性により優れた難燃性木材を製造することができる。
金属アルコキシドは、下記一般式(1)で表される化合物であることが好ましい。
M(OR …(1)
[式中、Mは、Na、K、Li、Ba、Ca、Sr、Mg、Zn、Sn、Sb、B、Si、P、Ti、Al、Zr、Ta、Nb、Ge、Fe、Co、Ni、V及びMnからなる群より選ばれる金属原子、Rはアルキル基、nは上記金属原子の価数である1〜5の整数、をそれぞれ示す。]
キャリアガスは、水蒸気であることが好ましい。
金属アルコキシド蒸気とキャリアガスの混合ガスの圧力は、金属アルコキシド単独の蒸気圧に比べ非常に高くすることができるため、木材の内部まで速やかに金属アルコキシドが到達させることができる。また、キャリアガスに水蒸気を利用すれば、木材やオートクレーブ本体、配管などを加熱する熱源になるだけでなく、金属アルコキシド蒸気が木材以外の場所で一端凝縮し液体になっても、水蒸気の熱により、再び蒸発気化させることができる。このため、金属アルコキシドを無駄なく効率的に、木材の細胞壁表面及び/又は細胞壁内部に付着させることが可能となる。さらに、金属アルコキシドと木材の反応を促進するため、金属アルコキシドが速やかに加水分解、加熱分解、縮合反応等を生じ、金属酸化物になる。なお、本発明において、金属アルコキシドの反応物は、木材の細胞壁表面や細胞壁内部に存在するが、同時に細胞内腔中に充填されていても構わない。
混合ガスは、少なくとも1種のオルガノシランの蒸気を含有することが好ましい。
混合ガスにオルガノシランの上記を含有させることで、金属アルコキシドが加水分解又は加熱分解し、金属酸化物になる過程で、オルガノシランと反応することが可能となり、また、オルガノシランが木材の水酸基と結合し、木材に撥水性を付与するため、金属アルコキシドの反応で得られた金属酸化物が水の作用で溶出し難く、難燃性を長期的に維持できる改質木材を得ることができるようになる。
オルガノシランは、下記一般式(2)で表される化合物であることが好ましい。
SiX4−m …(2)
[式中、Rは炭素数1〜18の有機基、Xは加水分解性基、mは1〜3の整数、をそれぞれ示す。]
炭素数が18までの有機基を有するオルガノシランは、蒸気として使用しやすく、キャリアガスと容易に混合して、細胞壁内部に侵入するため、木材に撥水性を付与し、難燃性を長期的に維持できる改質木材を得ることができる。
木材と接触させる混合ガスの温度は、60〜240℃であることが好ましい。
上記の温度範囲の混合ガスを木材と接触させることによって、より短時間で確実に難燃性木材を製造することができる。
金属アルコキシドの重量は、接触する木材の絶乾重量に対して、1〜400重量%であることが好ましい。
本製造方法では、上記範囲の量の金属アルコキシドで、難燃性に特に優れた木材を得ることができる。
本発明により、難燃性に優れた木材を簡易な工程で製造できる、難燃性木材の製造方法が提供される。
以下に本発明の実施形態を詳細に説明する。
本実施形態における難燃性木材の製造方法は、金属アルコキシド蒸気と水蒸気等のキャリアガスを含有する混合ガスで木材を処理することを特徴とする。
混合ガスに含まれる金属アルコキシドは、アルコキシ基を有する金属化合物であり、反応により金属酸化物に変化し得る化合物である。金属アルコキシドは、温度を上げるに従い気化し、僅かながらも蒸気圧を有するものが好ましい。
好適な金属アルコキシドは、M(OR)nの基本構造を有する化合物である。ここで、Mは、Na、K、Li、Ba、Ca、Sr、Mg、Zn、Sn、Sb、B、Si、P、Ti、Al、Zr、Ta、Nb、Ge、Fe、Co、Ni、V及びMnからなる群より選ばれる金属原子であり、Rはアルキル基、nは金属原子の価数で1〜5の整数である。
金属アルコキシドのアルキル基(R)としては、炭素数1〜20(好ましくは炭素数1〜18、更には炭素数1〜6、特には炭素数1〜4)のアルキル基が好ましい。アルキル基の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基,ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基などが挙げられる。なお、金属アルコキシドが複数のアルキル基を有する場合、アルキル基はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。一般的に、アルキル基が長鎖になるに従い、加水分解反応が遅くなるだけでなく、処理後も木材中に残存し、可燃成分の原因となる場合があるため、アルキル基はメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基が好ましい。
特に好適な金属アルコキシドは、ケイ素アルコキシドであり、例えばテトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロピルシランなどが例示される。また、2種類以上の金属アルコキシドを組み合わせたものを使用してもよく、ケイ素アルコキシドのあらゆる組み合わせが適用可能である。
混合ガスに任意に添加される、オルガノシランの蒸気は、オルガノシラン(有機基を有するシラン化合物)の蒸気である。オルガノシランとしては、R SiX4−m(m=1,2,3)の構造を有する有機ケイ素化合物が好ましい。なお、オルガノシランが複数のR又はXを有する場合、それらはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
オルガノシランにおけるRは、炭素数1〜18の有機基であるが、1〜16が好ましく、1〜12がより好ましい。Rとしては、アルキル基、ハロゲノアルキル基、アリール基、ハロゲノアリール基、アラルキル基、ハロゲノアラルキル基が挙げられるが(いずれも炭素数が1〜18のもの)、撥水性の観点から、アルキル基、ハロゲノアルキル基が好ましい。ここで、「ハロゲノ」としては、フルオロ、クロロ、ブロモが好ましく、フルオロがより好ましい。
有機基がアルキル基の場合、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基などが挙げられるが、一般的にアルキル基は長鎖になるに従い、加水分解反応が遅くなるだけでなく、処理後も木材中に残存し、可燃成分の原因となる場合があるため、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基が好ましい。
オルガノシランにおける加水分解性基としては、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシルオキシ基、アルケニルオキシ基、アミノ基、メルカプト基、ケトキシメート基、アミノオキシ基、カルバモイル基が挙げられるが、反応性の観点から、ハロゲン原子、アルコキシ基が好ましい。
オルガノシランとして好ましいものは、オルガノクロロシラン及びオルガノアルコキシシラン、フルオロアルキルクロロシラン、フルオロアルキルアルコキシシランであり、中でも、オルガノアルコキシシランが好ましい。
好ましく用いられるオルガノシランは、オルガノクロロシラン及びオルガノアルコキシシラン、フルオロアルキルクロロシラン、フルオロアルキルアルコキシシランであり、その中でも特に好ましく用いられるものは、オルガノアルコキシシランである。
オルガノクロロシランとしては、アルキルクロロシランが好ましい。アルキルクロロシランとしては、例えば、トリメチルクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、メチルトリクロロシラン、トリエチルクロロシラン、トリオクタデシルクロロシランなどのメチルクロロシランやトリフェニルクロロシラン、ジフェニルジクロロシラン、フェニルトリクロロシランなどのフェニルクロロシラン又はフルオロアルキルクロロシランなどを挙げることができる。
フルオロアルキルクロロシランとしては、例えば1H,1H,2H,2H−パーフルオロプロピルトリクロロシラン、1H,1H,2H,2H−パーフルオロオクチルトリクロロシラン、1H,1H,2H,2H−パーフルオロデシルトリクロロシラン、1H,1H,2H,2H−パーフルオロデシルメチルジクロロシラン、1H,1H,2H,2H−パーフルオロデシルジメチルクロロシランなどを例示でき、フルオロアルキルアルコキシシランとしては、1H,1H,2H,2H−パーフルオロプロピルトリメトキシシラン、1H,1H,2H,2H−パーフルオロオクチルトリメトキシシラン、1H,1H,2H,2H−パーフルオロデシルトリメトキシシラン、1H,1H,2H,2H−パーフルオロデシルメチルジメトキシシラン、1H,1H,2H,2H−パーフルオロデシルジメチルメトキシシランなどを例示できる。
オルガノアルコキシシランとしては、アルキルアルコキシシランが好ましく、中でも、アルキルトリアルコキシシラン(m=1)が特に好ましい。アルキルトリアルコキシシランとしては、例えば、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ペンチルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘプチルトリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、ペンチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、ヘプチルトリエトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、ノニルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ウンデシルトリメトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、テトラデシルトリメトキシシラン、ペンタデシルトリメトキシシラン、ヘキサデシルトリメトキシシラン、ヘプタデシルトリメトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシラン、ノニルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ウンデシルトリメトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、ノニルトリエトキシシラン、デシルトリエトキシシラン、テトラデシルトリエトキシシラン、ペンタデシルトリエトキシシラン、ヘキサデシルトリエトキシシラン、ヘプタデシルトリエトキシシラン、オクタデシルトリエトキシシランなどが挙げられる。
金属アルコキシドとオルガノシランとは組み合わせて使用でき、組み合わせは任意である。難燃性木材の製造において溶液として適用する場合、金属アルコキシドとオルガノシランを混合した複合溶液でも、別々でも構わない。
難燃性木材の製造において、オルガノシランを蒸気として使用するため、全く気化しないオルガノシランは使用できず、撥水性能を有する有機基(R)の炭素数は、加水分解性基(X)にも影響されるが、18程度が限界となる。また、撥水性性能は高いが、蒸気圧が低い長鎖アルキル基を有するオルガノシランと、撥水性能はやや劣るが、蒸気圧の高いアルキル基を有するオルガノシランを混合することは、好ましい様態である。具体的な例として、本発明において好ましく用いられるアルキルアルコキシシランは、炭素数1〜4のアルキル基を有するアルキルアルコキシシランの少なくとも1種と、炭素数6〜18のアルキル基を有するアルキルアルコキシシランの少なくとも1種との混合物などが挙げられる。
難燃性木材の製造において用いられる混合ガスには、キャリアガスが含まれている。キャリアガスとしては、水蒸気、アルコール蒸気、ハロゲンガス、窒素ガスなどが挙げられるが、反応性だけでなく汎用性、経済性及び安全性などの観点から水蒸気が好ましい。また、混合ガスは、加熱加圧可能なチャンバ内で発生させることが好ましく、このようなチャンバとしてはオートクレーブが挙げられる。
オートクレーブ内で少なくとの1種の金属アルコキシド蒸気と水蒸気の混合ガスを形成する方法としては、特に限定される必要はないが、例えば、予め別の容器や配管等で形成した少なくとも1種の金属アルコキシド蒸気と水蒸気の混合ガスをオートクレーブ内に注入する方法、オートクレーブ内に少なくとも1種の金属アルコキシドが存在する状態において、オートクレーブ内に水蒸気を注入する方法、オートクレーブ内に少なくとも1種の金属アルコキシド及び水が存在する状態において、オートクレーブを外部からの熱源により加熱する方法、オートクレーブ内に少なくとも1種の金属アルコキシド蒸気と水蒸気を別々に注入する方法、などがある。
予め別の容器や配管等で少なくとも1種の金属アルコキシド蒸気と水蒸気の混合ガスを形成する方法としては、例えば、別の容器内に少なくとも1種の金属アルコキシドが存在する状態で、水蒸気を注入し、該容器内を高温高圧にして、金属アルコキシドを気化させる方法やオートクレーブ内に注入する水蒸気の配管途中に設けた金属アルコキシドの注入口から気化ノズルなどを介して、プランジャーポンプなどで金属アルコキシドを直接水蒸気配管内に圧入する方法などがある。ここで、注入する金属アルコキシドは、液体、ミスト、蒸気などいずれの状態でも良く、液体やミストで圧入された場合、高温高圧の水蒸気配管内で気化する。
予めオートクレーブ内に少なくとも1種の金属アルコキシドを入れておく方法は、例えば、金属アルコキシドをオートクレーブ内にそのまま直接入れておく方法、金属アルコキシドを密閉されていない開放容器に入れておく方法、自動開閉が可能な密閉容器内に金属アルコキシドを入れておき、密閉容器を開放する方法などがある。自動開閉が可能な密閉容器内に金属アルコキシドを入れておく場合には、水蒸気を注入する前から開放しておくだけでなく、水蒸気を注入している途中の任意のタイミングで密閉容器を開放しても構わない。
また、オートクレーブ内に少なくとも1種の金属アルコキシド及び水が存在する状態で、オートクレーブを外部からの熱源により加熱する方法において、オートクレーブ内に金属アルコキシド及び水を入れておく方法としては、例えば、オートクレーブ内に金属アルコキシドと水をそのまま直接入れておく方法、それぞれ別々の開放容器内に入れておく方法、水は開放容器に入れ、金属アルコキシドは自動開閉が可能な密閉容器内に入れ、加熱過程の任意のタイミングで密閉容器を開放する方法などがある。ここで、外部からの熱源は、特に限定される必要はないが、電気、ガス、重油、軽油、水蒸気などがある。
水蒸気を利用して金属アルコキシドを蒸発気化させる方法は、水蒸気が金属アルコキシドを気化させる熱源となるだけでなく、得られた金属アルコキシド蒸気と水蒸気の混合ガスの圧力は、金属アルコキシド単独の蒸気圧に比べ非常に高くなるため、木材の内部まで速やかに到達することができる。また、水蒸気を利用すれば木材やオートクレーブ本体、配管などを加熱する熱源になるだけでなく、金属アルコキシド蒸気が木材以外の場所で一端凝縮し液体になっても、水蒸気の熱により、再び蒸発気化するため、金属アルコキシドを無駄なく効率的に、木材内部に到達させることが可能なばかりか、金属アルコキシドと木材の反応を促進するため、金属アルコキシドが速やかに加水分解又は加熱分解し、縮合反応も生じて金属酸化物になる。尚、必要に応じて、オートクレーブを外部の熱源を利用して、予備加熱や補助加熱をしても構わない。金属アルコキシドの反応物(反応物は、好適にはシロキシ骨格を有している)は、好ましくは、細胞壁を構成するセルロース等の水酸基と反応して、細胞壁内部で細胞壁と結合している。
金属アルコキシドの蒸気と水蒸気の混合ガス用いて木材を高温高圧で処理する場合、すなわち、金属アルコキシド蒸気と水蒸気の混合ガスを高温高圧で木材と接触させる場合において、混合ガスを接触させる前後の圧力が、0.02〜3.0MPaであることが好ましく、0.05〜2.0MPaであることがより好ましく、更には0.1〜1.5MPaであることが特に好ましい。混合ガスを接触させる温度は、60〜240℃が好ましく、80〜215℃がより好ましく、更には100〜200℃が特に好ましい。また、木材を金属アルコキシド蒸気と水蒸気の混合ガスで処理する前にオートクレーブ内の空気を真空ポンプなどで除去することは好ましい態様である。ここで、金属アルコキシドの木材内部への浸透は、金属アルコキシド蒸気と水蒸気の混合ガスが、オートクレーブ中を高温高圧にする際の大きな圧力差が推進力となるため、単独では蒸気圧の低い種類の金属アルコキシドでも速やかにかつ確実に木材内部まで浸透する。
また、高温高圧の金属アルコキシド蒸気と水蒸気を含有する混合ガスで木材を処理する時間は、0.5〜5時間でよい。一部未反応の金属アルコキシドが存在して十分に難燃性が発現していない場合には、未反応の金属アルコキシドを反応させるために室温で数日〜数週間放置しておくだけでも良いが、更には60℃〜180℃で0.5〜5時間程度加熱するのが好ましい。ここで、加熱方法は、特に限定されないが一般的な熱風加熱や遠赤外線加熱又は水蒸気加熱などを使用することができる。
金属アルコキシド量は、処理する木材の絶乾重量を基準にして、1〜400重量%が好ましく、3〜200重量%がより好ましく、更には5〜100重量%が特に好ましい。また、オルガノシラン量は、処理する木材の絶乾重量を基準にして、0.1〜40.0重量%が好ましく、0.5〜20.0重量%がより好ましく、更には1.0〜10.0重量%が特に好ましい。
難燃性木材の製造に使用される木材は、特に限定される必要はないが、例えば原木丸太、製材品、スライス単板、合板などが挙げられ、乾燥品や湿潤品(飽水品)でも構わない。
以下に実施例を挙げ、本発明をより具体的に説明する。
本実施例において、金属アルコキシド等の浸透量及び木材の撥水性の指標となる金属アルコキシド等の重量増加率、水の接触角は、次のように測定した。
<金属アルコキシド等の重量増加率>
木材に対する金属アルコキシド等の浸透量は、処理前後の重量増加率から求められ、具体的に金属アルコキシド等による重量増加率は、同一寸法、同一材料の木材を105℃で24時間乾燥した該木材の絶乾重量(W)に対して、金属アルコキシド蒸気と水蒸気の混合ガスで処理した後、105℃で24時間乾燥した処理木材の絶乾重量(W)から次式により求めた。
重量増加率={(W−W)/W}×100 [重量%]
<水の接触角>
縦40mm、横40mm、長さ200mmの木材を長さ100mmの位置で切断し、幅40mm、厚さ40mmの切断面上を幅方向及び厚さ方向に10mm間隔で各4点の合計16箇所を温度20℃、湿度65%の条件下で協和界面科学株式会社製の接触角計(CA−DT型)により測定した。
<金属アルコキシドの同定>
金属アルコキシド蒸気と水蒸気の混合ガスで処理した木材サンプルを、日本電子株式会社(JEOL)製のエネルギー分散形X線分析装置(JED−2300)を具備した電子顕微鏡(JSM−6060−LV)で、該木材の細胞壁断面のSEM写真と、該細胞壁断面のKαX線による金属アルコキシドが有する金属のマッピング像により、金属アルコキシドの反応物の存在場所を同定した。
[実施例1]
縦40mm、横40mm、長さ200mmの杉及びスプルース各々10本を、予め150℃に加熱した容積1.25mのオートクレーブに入れ、該オートクレーブ中をゲージ圧−0.095MPaに減圧した状態で、ゲージ圧1.5Mpaを有する水蒸気配管に蒸気ノズルを介して、プランジャーポンプでテトラメトキシシラン10kgをミスト状に圧入して形成した混合蒸気をゲージ圧1.0MPaまで注入した。その後、圧力を維持するため、水蒸気のみを注入し、ゲージ圧1.0MPaで3時間を保持した。ここで、使用した木材は、いずれも60℃、3日間乾燥品であった。
本実施例により得られた木材5点平均の金属アルコキシド等の重量増加率は、スプルースが88.1重量%、杉が92.5重量%であり、各々木材中にテトラメトキシシランが浸透していることが確認された。また、本実施例で得られたスプルースの細胞壁断面のSEM写真(図1)と、該細胞壁断面のケイ素(Si)のマッピング像(図2)から、細胞壁内にテトラメトキシシランの反応物に由来すると推察されるケイ素の存在が確認された。また、同様な方法で杉の細胞壁断面にも、テトラメトキシシランの反応物に由来すると推察されるケイ素の存在が確認された。
[実施例2]
縦40mm、横40mm、長さ200mmの杉及びスプルース各々10本を、予め150℃に加熱した容積1.25mのオートクレーブに入れ、該オートクレーブ中をゲージ圧−0.095MPaに減圧した状態で、テトラエトキシシラン5kgを容積0.312mの別の圧力容器に入れ、ゲージ圧−0.095MPaに減圧した後、水蒸気を注入し、ゲージ圧1.2MPaとして形成した混合ガスを該オートクレーブ中にゲージ圧0.5MPaまで注入した。その後、圧力を維持するため、水蒸気のみを注入し、ゲージ圧0.5MPaで1時間を保持した。ここで、使用した木材は、いずれも60℃、3日間乾燥品であった。
本実施例により得られた木材5点平均の金属アルコキシド等の重量増加率は、スプルースが38.5重量%、杉が42.3重量%であり、各々木材中にテトラメトキシシランが浸透していることが確認された。また、細胞壁断面のSEM写真と、該細胞壁断面のケイ素(Si)のマッピング像から、スプルース及び杉の細胞壁断面に、テトラメトキシシランの反応物に由来すると推察されるケイ素の存在が確認された。
[実施例3]
縦40mm、横40mm、長さ200mmの杉及びスプルース各々2本と、各々別の開放容器に入れたテトラメトキシシラン500gと水2000gを、容積0.02mのオートクレーブに入れ、該オートクレーブ中をゲージ圧−0.095MPaに減圧した後、該オートクレーブが具備する電気ヒータでゲージ圧1.5MPaまで加熱し、その状態で1時間保持した。ここで、使用した木材は、いずれも60℃、3日間乾燥品であった。
本実施例により得られた木材の金属アルコキシド等の重量増加率は、スプルースが19.8重量%、杉が22.2重量%であり、各々木材中にテトラメトキシシランが浸透していることが確認された。また、細胞壁断面のSEM写真と、該細胞壁断面のケイ素(Si)のマッピング像から、スプルース及び杉の細胞壁断面に、金属アルコキシドの反応物に由来すると推察されるケイ素の存在が確認された。
[実施例4]
テトラエトキシシラン5kgとプロピルトリエトキシシラン0.03kgの混合物を使用する以外は、実施例1と同様の方法で処理した。
本実施例により得られた木材5点平均の金属アルコキシド等の重量増加率は、スプルースが40.9重量%、杉が42.6重量%であった。また、水の接触角は、スプルースが82〜101°、杉が81〜98°の撥水性を有していた。このことから、各々木材中にテトラエトキシシランとプロピルトリエトキシシランの混合物が浸透していることが確認された。また、細胞壁断面のSEM写真と、該細胞壁断面のケイ素(Si)のマッピング像から、スプルース及び杉の細胞壁断面に、金属アルコキシドの反応物に由来すると推察されるケイ素の存在が確認された。
[実施例5]
縦105mm、横105mm、長さ1000mmの杉30本を、予め150℃に加熱した容積1.25mのオートクレーブに入れ、該オートクレーブ中をゲージ圧−0.095MPaに減圧した状態で、ゲージ圧1.5Mpaを有する水蒸気配管に蒸気ノズルを介して、プランジャーポンプでテトラエトキシシラン55kgをミスト状に圧入して形成した混合ガスをゲージ圧0.005MPaまで注入し後、水蒸気のみを注入し、ゲージ圧0.5MPaとして、3時間を保持した。ここで、使用した木材は、60℃で3週間乾燥品が15本、原木に近い未乾燥品(ずぶ生材)が15本であった。
本実施例により得られた木材5点平均の金属アルコキシド等の重量増加率は、乾燥品が7.8重量%、未乾燥品が19.2重量%であり、各々木材中にテトラエトキシシランが浸透していることが確認された。また、細胞壁断面のSEM写真と、該細胞壁断面のケイ素(Si)のマッピング像から、スプルース及び杉の細胞壁断面に、金属アルコキシドの反応物に由来すると推察されるケイ素の存在が確認された。
上記実施例より、各々木材中に金属アルコキシドである、テトラメトキシシラン又はテトラエトキシシランが浸透し、その反応物が形成されており、実施例1〜5で得られた木材は、難燃性木材として使用できる。
スプルースの細胞断面のSEM写真である。 図1と同一の細胞断面のケイ素(Si)マッピング像である。

Claims (7)

  1. 金属アルコキシドの蒸気とキャリアガスの混合ガスを木材と接触させて、前記木材の細胞壁表面及び/又は細胞壁内部に前記金属アルコキシドの反応物を含有させる工程(除く、ほう素アルコキシドと前記ほう素アルコキシドと共沸混合物を形成する化合物との混合物の蒸気による処理であって、前記共沸混合物の沸点以上、且つ、前記ほう素アルコキシドがほう酸と他の反応生成物に加水分解する反応における、前記ほう素アルコキシド又は前記他の反応生成物のより低い方の沸点以下の温度で行われる処理)を備える、難燃性木材の製造方法。
  2. 前記金属アルコキシドが、下記一般式(1)で表される化合物である、請求項1記載の製造方法。
    M(OR …(1)
    [式中、Mは、Na、K、Li、Ba、Ca、Sr、Mg、Zn、Sn、Sb、B、Si、P、Ti、Al、Zr、Ta、Nb、Ge、Fe、Co、Ni、V及びMnからなる群より選ばれる金属原子、Rはアルキル基、nは前記金属原子の価数である1〜5の整数、をそれぞれ示す。]
  3. 前記キャリアガスが水蒸気である、請求項1又は2記載の製造方法。
  4. 前記混合ガスは、少なくとも1種のオルガノシランの蒸気を含有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の製造方法。
  5. 前記オルガノシランが、下記一般式(2)で表される化合物である、請求項4記載の製造方法。
    SiX4−m …(2)
    [式中、Rは炭素数1〜18の有機基、Xは加水分解性基、mは1〜3の整数、をそれぞれ示す。]
  6. 前記木材と接触させる前記混合ガスの温度が60〜240℃である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の製造方法。
  7. 前記金属アルコキシドの重量が、接触する木材の絶乾重量に対して、1〜400重量%である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の製造方法。
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