まず、浴室の上部に設置され、使用者の頭上からシャワー水を散水するシャワーヘッド(一般的なオーバーヘッドシャワー)について説明する。浴室の上部に設置される一般的なシャワーヘッドは、シャワーヘッドの下面が浴室の床面(水平面)に対して傾斜した状態で設置されるので、使用者がシャワーの使用を中止すると、シャワーヘッド内部の下方に残水が溜まってしまい、次の使用者がシャワーの使用を開始すると、シャワーヘッド内部に溜まった残水が冷水となって使用者に注がれるという問題があった。
また、浴室の上部に設置される一般的なシャワーヘッドは、内部の水圧を高めるために薄板状に構成されているので、内部の水は表面張力により保持され易い。よって、使用者がシャワーの使用を中止した場合には、内部の水が下方に案内され難くなり、シャワーヘッドからの水滴の落下が長い間続き、その水滴の落下による不快音が継続するという問題もあった。
ここで、浴室の上部に設置されるシャワーヘッドに対して、特許文献1に記載される技術を適用すれば、シャワーヘッド内の残水が重力により下方へ流れる際に、散水板の周方向に伸びる複数の溝内に残水が進入し、その複数の溝内の残水は、溝を伝わって下方に案内され易くなるので、早く排水することができる。
しかしながら、特許文献1は、シャワー水を径方向外方に向けて噴射させるために溝を形成する思想なので、盆状の側面を形成する側壁と、盆状の平面部に形成される溝との間に距離を有しており、その側壁と溝との距離により形成される空間内に多くの残水が溜まってしまう。その結果、次の使用者がシャワーの使用を開始すると、シャワーヘッド内部の残水が冷水となって使用者に注がれるので、使用者に不快感を与えてしまうという問題点があった。
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、シャワーヘッド内部の残水を早く排水できると共に、冷水となった残水が使用者に注がれて使用者に不快感を与えることを低減することができるシャワーヘッドの残水排水構造およびシャワー装置を提供することを目的としている。
この目的を達成するために請求項1記載のシャワーヘッドの残水排水構造は、外形が略平板状に形成されると共に、内部に供給された液体を外部に散水するシャワーヘッドの残水を排水するものであり、前記シャワーヘッドの下面部を構成し、水平面に対して角度を有して配置される散水板と、前記シャワーヘッドの側面部を構成する側壁と、前記シャワーヘッドの上面部を構成する蓋体と、前記散水板、側壁および蓋体により形成され、前記シャワーヘッドの内部に供給される液体を貯留する内部空間と、前記散水板に穿設され、前記内部空間に貯留される液体を外部に散水する複数の散水孔と、その複数の散水孔のうち、前記散水板の外縁部で且つ最下方に位置する最下方散水孔と、前記散水板の内側面の上方から下方に亘って形成され、前記側壁の下方の内側面に連通すると共に、前記最下方散水孔に連通する排水溝とを備え、その排水溝の少なくとも一部は、前記最下方散水孔よりも下方であって前記最下方散水孔が穿設されている前記散水板の外縁部から前記蓋体側に延びる前記側壁の内側面によって形成されている。
請求項2記載のシャワーヘッドの残水排水構造は、外形が略平板状に形成されると共に、内部空間に供給された液体を外部に散水するシャワーヘッドの残水を排水するものであり、前記シャワーヘッドの下面部を構成する散水板と、前記シャワーヘッドの側面部を構成する側壁と、前記シャワーヘッドの上面部を構成し、水平面に対して角度を有して設置される蓋体と、前記散水板に穿設され、前記散水板、側壁および蓋体により形成される前記内部空間に供給される液体を外部に散水する複数の散水孔と、その複数の散水孔のうち、前記散水板の外縁部で且つ最下方に位置する最下方散水孔と、前記蓋体の内側面の上方から下方に亘って形成されると共に、前記蓋体の内側面の前記最下方散水孔に対向する部分を含んで形成され、前記側壁の下方の内側面に連通する排水溝とを備え、その排水溝の少なくとも一部は、前記最下方散水孔よりも下方であって前記最下方散水孔が穿設されている前記散水板の外縁部から前記蓋体側に延びる前記側壁の内側面によって形成されている。
請求項3記載のシャワーヘッドの残水排水構造は、請求項1又は2に記載のシャワーヘッドの残水排水構造において、前記散水板および蓋体は、略円盤状に形成され、前記複数の散水孔は、前記散水板の外縁部に位置する散水孔が同心円上に穿設されており、前記排水溝は、前記散水板の外縁部または蓋体の外縁部の全周に亘って形成されている。
請求項4記載のシャワーヘッドの残水排水構造は、請求項3記載のシャワーヘッドの残水排水構造において、前記排水溝は、前記散水板に形成され、前記散水板の内側面から、前記側壁方向に下方傾斜した傾斜面を有している。
請求項5記載のシャワーヘッドの残水排水構造は、請求項1から4のいずれかに記載のシャワーヘッドの残水排水構造において、前記散水板と蓋体との間は、前記内部空間への液体の流出が停止されている状態で、前記散水板と蓋体との間の液体が表面張力により保持可能となる距離に構成されている。
請求項6記載のシャワー装置は、外形が略平板状に形成されると共に、内部空間に供給された液体を外部に散水するシャワーヘッドを備えており、前記シャワーヘッドは、前記シャワーヘッドの下面部を構成し、水平面に対して角度を有して配置される散水板と、前記シャワーヘッドの側面部を構成する側壁と、前記シャワーヘッドの上面部を構成する蓋体と、前記散水板、側壁および蓋体により形成され、前記シャワーヘッドの内部に供給される液体を貯留する内部空間と、前記散水板に穿設され、前記内部空間に貯留される液体を外部に散水する複数の散水孔と、その複数の散水孔のうち、前記散水板の外縁部で且つ最下方に位置する最下方散水孔と、前記散水板の内側面の上方から下方に亘って形成され、前記側壁の下方の内側面に連通すると共に、前記最下方散水孔に連通する排水溝とを備え、その排水溝の少なくとも一部は、前記最下方散水孔よりも下方であって前記最下方散水孔が穿設されている前記散水板の外縁部から前記蓋体側に延びる前記側壁の内側面によって形成されている。
請求項7記載のシャワー装置は、外形が略平板状に形成されると共に、内部空間に供給された液体を外部に散水するシャワーヘッドを備えており、前記シャワーヘッドは、前記シャワーヘッドの下面部を構成する散水板と、前記シャワーヘッドの側面部を構成する側壁と、前記シャワーヘッドの上面部を構成し、水平面に対して角度を有して設置される蓋体と、前記散水板に穿設され、前記散水板、側壁および蓋体により形成される前記内部空間に供給される液体を外部に散水する複数の散水孔と、その複数の散水孔のうち、前記散水板の外縁部で且つ最下方に位置する最下方散水孔と、前記蓋体の内側面の上方から下方に亘って形成されると共に、前記蓋体の内側面の前記最下方散水孔に対向する部分を含んで形成され、前記側壁の下方の内側面に連通する排水溝とを備え、その排水溝の少なくとも一部は、前記最下方散水孔よりも下方であって前記最下方散水孔が穿設されている前記散水板の外縁部から前記蓋体側に延びる前記側壁の内側面によって形成されている。
請求項1記載のシャワーヘッドの残水排水構造によれば、シャワーヘッドは、下面部が散水板、上面部が蓋体、側面部が側壁で構成され、その散水板、蓋体および側壁により内部に供給された液体を貯留する内部空間が形成される。その内部空間に貯留された液体を外部に散水する複数の散水孔が散水板に穿設されているので、シャワーヘッド内部に供給された液体は、内部空間を通り散水孔から外部に散水される。
また、散水板には、複数の散水孔のうち散水板の外縁部で且つ最下方に位置する最下方散水孔が穿設されており、散水板の内側面には、側壁の下方の内側面に連通すると共に最下方散水孔に連通する排水溝が上方から下方に亘って形成されている。ここで、散水板は水平面に対して角度を有して配置されているので、使用者がシャワーの使用を中止すると、内部空間内の残水は、重力によって散水板の角度に対して下方に流れる。内部空間内の残水が下方へ流れる際には、排水溝が形成される部分の水路の断面積が内部空間内の水路の断面積より大きくなるので、排水溝内の残水が下方へ流れ易くなる。そして、排水溝内に下方に流れる残水の流れができると、その排水溝の流れに周りの残水が巻き込まれるので、内部空間内の残水が上方から下方へ流れ易くなる。その結果、内部空間内の残水は、排水溝により最下方散水孔に案内され易くなり早く外部に排水されるので、シャワーヘッドからの水滴の落下が長い間続き、その水滴の落下による不快音が継続することを抑制することができるという効果がある。
また、最下方散水孔は、散水板の外縁部で且つ最下方に位置し、その最下方散水孔に連通する排水溝は、側壁の下方の内側面に連通して形成されているので、排水溝により下方に案内される残水の殆どは最下方散水孔から排水される。よって、シャワーヘッドの内部空間内の残水が少なくなるので、次の使用者がシャワーの使用を開始しても、使用者に注がれる冷水となった残水を少なくでき、使用者に与える不快感を低減することができるという効果がある。
請求項2記載のシャワーヘッドの残水排水構造によれば、シャワーヘッドは、下面部が散水板、上面部が蓋体、側面部が側壁で構成され、その散水板、蓋体および側壁により内部に供給された液体を貯留する内部空間が形成される。その内部空間に貯留された液体を外部に散水する複数の散水孔が散水板に穿設されているので、シャワーヘッド内部に供給された液体は、内部空間を通り散水孔から外部に散水される。
また、散水板には、複数の散水孔のうち散水板の外縁部で且つ最下方に位置する最下方散水孔が穿設され、蓋体の内側面には、側壁の下方の内側面に連通し、最下方散水孔に対向する部分を含んで上方から下方に亘って排水溝が形成されている。ここで、蓋体は水平面に対して角度を有して配置されているので、使用者がシャワーの使用を中止すると、内部空間内の残水は、重力によって蓋体の角度に対して下方に流れる。内部空間内の残水が下方へ流れる際に内部空間に残水が充満していれば、排水溝が形成される部分の水路の断面積が内部空間内の水路の断面積より大きくなるので、排水溝内の残水が上方から下方へ流れ易くなる。つまり、使用者がシャワーの使用を中止した場合の残水の下方に流れる初期動作が排水溝により形成される。そして、残水の下方に流れる初期動作が排水溝により形成されると、その排水溝の流れの周りの残水が巻き込まれるので、内部空間内の残水が上方から下方へ流れ易くなる。その結果、内部空間内の残水は、排水溝により最下方散水孔に案内され易くなり早く外部に排水されるので、シャワーヘッドからの水滴の落下が長い間続き、その水滴の落下による不快音が継続することを抑制することができるという効果がある。
また、最下方散水孔は、散水板の外縁部で且つ最下方に位置し、その最下方散水孔に対向する部分を含んで形成される排水溝は、側壁の下方の内側面に連通して形成されているので、排水溝により下方に案内される残水の殆どは最下方散水孔から排水される。よって、シャワーヘッドの内部空間内の残水が少なくなるので、次の使用者がシャワーの使用を開始しても、使用者に注がれる冷水となった残水を少なくでき、使用者に与える不快感を低減することができるという効果がある。
請求項3記載のシャワーヘッドの残水排水構造によれば、請求項1又は2に記載のシャワーヘッドの残水排水構造の奏する効果に加え、散水板および蓋体は、略円盤状に形成されており、複数の散水孔は、散水板の外縁部に位置する散水孔が同心円上に穿設され、排水溝は、散水板の外縁部または蓋体の外縁部の全周に亘って形成されている。よって、シャワーヘッドに散水板や蓋体を組み付ける作業やシャワーヘッドを浴室などに取り付ける作業において、シャワーヘッドの周方向における位置決めが不要になるので、作業効率を向上できるという効果がある。
請求項4記載のシャワーヘッドの残水排水構造によれば、請求項3記載のシャワーヘッドの残水排水構造の奏する効果に加え、排水溝は、散水板に形成され、散水板の内側面から、側壁方向に下方傾斜した傾斜面を有しているので、その傾斜面により排水溝内へ流れる残水の流れが形成され易くなる。よって、排水溝の周辺の残水は、排水溝内の流れに巻き込まれて更に下方へ案内され易くなるので、シャワー本体内部の残水をより早く排水することができるという効果がある。
請求項5記載のシャワーヘッドの残水排水構造によれば、請求項1から4のいずれかに記載のシャワーヘッドの残水排水構造の奏する効果に加え、散水板と蓋体との間には、内部空間への液体の流出が停止されている状態で液体が表面張力により保持される。よって、散水板と蓋体との間は短い距離になり、シャワーヘッドの外形も薄板状に形成されるので、美観が良くなりデザイン性の向上したシャワーヘッドを提供することができるという効果がある。
ここで、上記特許文献1のように、蓋体が略半球状に形成される一般的なシャワーヘッドでは、散水板と蓋体との間に液体は保持されないが、その分、外形の厚みが大きくなったり、デザイン性も向上することはできない。使用者は、シャワーヘッドの散水能力だけでなく、そのデザイン性に対しても購入意欲を増すものである。故に、本願では、デザイン性の向上のために、散水板と蓋体との間で表面張力により液体が保持されてしまう程の薄板状に形成している。
一方、本願のように、シャワーヘッドを薄板状に形成し、散水板と蓋体との間で表面張力により液体が保持されてしまうと、使用者がシャワーの使用を停止した場合、内部空間内の残水が下方へ流れ出しても、散水板と蓋体との間で液体が保持され易くなり、早期に残水を外部に排水できないと共に、内部空間内の残水が多く残ってしまう可能性がある。よって、シャワーヘッドを薄板状に形成した場合にも、シャワーヘッドからの水滴の落下が長い間続き、その水滴の落下による不快音が継続したり、次の使用者に対して冷水となった残水が多く注がれて使用者に不快感を与えてしまうという問題が生じる。そこで、本願は、排水溝を設け、内部空間内の残水を早く排出し且つ残水を少なくする構成を有している。つまり、シャワーヘッドを薄板状にした場合に、生じる問題点を解決するための排水溝が設けられているので、デザイン性を向上しつつ、内部空間内の残水を早く且つ少なくして排水することができる。
請求項6記載のシャワー装置によれば、シャワーヘッドを有しており、そのシャワーヘッドは、下面部が散水板、上面部が蓋体、側面部が側壁で構成され、その散水板、蓋体および側壁により内部に供給された液体を貯留する内部空間が形成される。その内部空間に貯留された液体を外部に散水する複数の散水孔が散水板に穿設されているので、シャワーヘッド内部に供給された液体は、内部空間を通り散水孔から外部に散水される。
また、散水板には、複数の散水孔のうち散水板の外縁部で且つ最下方に位置する最下方散水孔が穿設されており、散水板の内側面には、側壁の下方の内側面に連通すると共に最下方散水孔に連通する排水溝が上方から下方に亘って形成されている。ここで、散水板は水平面に対して角度を有して配置されているので、使用者がシャワーの使用を中止すると、内部空間内の残水は、重力によって散水板の角度に対して下方に流れる。内部空間内の残水が下方へ流れる際には、排水溝が形成される部分の水路の断面積が内部空間内の水路の断面積より大きくなるので、排水溝内の残水が下方へ流れ易くなる。そして、排水溝内に下方に流れる残水の流れができると、その排水溝の流れに周りの残水が巻き込まれるので、内部空間内の残水が上方から下方へ流れ易くなる。その結果、内部空間内の残水は、排水溝により最下方散水孔に案内され易くなり早く外部に排水されるので、シャワーヘッドからの水滴の落下が長い間続き、その水滴の落下による不快音が継続することを抑制することができるシャワーヘッドを備えたシャワー装置を提供することができるという効果がある。
また、最下方散水孔は、散水板の外縁部で且つ最下方に位置し、その最下方散水孔に連通する排水溝は、側壁の下方の内側面に連通して形成されているので、排水溝により下方に案内される残水の殆どは最下方散水孔から排水される。よって、シャワーヘッドの内部空間内の残水が少なくなるので、次の使用者がシャワーの使用を開始しても、使用者に注がれる冷水となった残水を少なくでき、使用者に与える不快感を低減することができるシャワーヘッドを備えたシャワー装置を提供することができるという効果がある。
請求項7記載のシャワー装置によれば、シャワーヘッドを有しており、そのシャワーヘッドは、下面部が散水板、上面部が蓋体、側面部が側壁で構成され、その散水板、蓋体および側壁により内部に供給された液体を貯留する内部空間が形成される。その内部空間に貯留された液体を外部に散水する複数の散水孔が散水板に穿設されているので、シャワーヘッド内部に供給された液体は、内部空間を通り散水孔から外部に散水される。
また、散水板には、複数の散水孔のうち散水板の外縁部で且つ最下方に位置する最下方散水孔が穿設され、蓋体の内側面には、側壁の下方の内側面に連通し、最下方散水孔に対向する部分を含んで上方から下方に亘って排水溝が形成されている。ここで、蓋体は水平面に対して角度を有して配置されているので、使用者がシャワーの使用を中止すると、内部空間内の残水は、重力によって蓋体の角度に対して下方に流れる。内部空間内の残水が下方へ流れる際に内部空間に残水が充満していれば、排水溝が形成される部分の水路の断面積が内部空間内の水路の断面積より大きくなるので、排水溝内の残水が上方から下方へ流れ易くなる。つまり、使用者がシャワーの使用を中止した場合の残水の下方に流れる初期動作が排水溝により形成される。そして、残水の下方に流れる初期動作が排水溝により形成されると、その排水溝の流れの周りの残水が巻き込まれるので、内部空間内の残水が上方から下方へ流れ易くなる。その結果、内部空間内の残水は、排水溝により最下方散水孔に案内され易くなり早く外部に排水されるので、シャワーヘッドからの水滴の落下が長い間続き、その水滴の落下による不快音が継続することを抑制することができるシャワーヘッドを備えたシャワー装置を提供することができるという効果がある。
また、最下方散水孔は、散水板の外縁部で且つ最下方に位置し、その最下方散水孔に対向する部分を含んで形成される排水溝は、側壁の下方の内側面に連通して形成されているので、排水溝により下方に案内される残水の殆どは最下方散水孔から排水される。よって、シャワーヘッドの内部空間内の残水が少なくなるので、次の使用者がシャワーの使用を開始しても、使用者に注がれる冷水となった残水を少なくでき、使用者に与える不快感を低減することができるシャワーヘッドを備えたシャワー装置を提供することができるという効果がある。
以下、本発明の好ましい実施の形態について、添付図面を参照して説明する。本実施形態は、シャワー装置10の最上部に取り付けられるオーバーヘッドシャワー吐水部18において、内部に残る残水を早く排水すると共に残水の量を少なくすることができる残水排水構造に関するものである。
まず、図1を参照して、シャワー装置10の概略について説明する。図1は、本発明の一実施形態のオーバーヘッドシャワー吐水部18を備えるシャワー装置10の正面図および各種操作部44,46,48,50の拡大図である。なお、図1において、矢印Xは、シャワー装置10の上下方向を示し、矢印Yは、シャワー装置10の左右(幅)方向を示している。
図1に示すように、シャワー装置10は、浴室の壁面(図示せず)に設置される縦長の箱体状のケース12により表面が覆われている。ケース12は、上面、下面、側面および背面を覆うケース本体14と、前面を覆う前面カバー16とで構成されている。
なお、本実施形態のシャワー装置10は、浴室の床面(水平面)から所定距離上方に配置され、ケース12の下端から上端までの上下方向(図1矢印X方向)寸法が約1700mmに形成されている。よって、シャワー装置10は、その上端が、床面からの高さが1700mm以上となるので、浴室の天井近傍に位置する。
シャワー装置10は、主に、前面カバー16の上端部に設けられるオーバーヘッドシャワー(以下「OHシャワー」と略す)吐水部18と、前面カバー16の中段部に設けられるボデーシャワー(以下「Bシャワー」と略す)吐水部20と、ケース12の下端に設けられる吐水管(カラン)22と、ケース12の側方(図1矢印Y方向左側)に設けられるハンドシャワー(以下「Hシャワー」と略す)吐水部24と、吐水量や水温などを調整する各種操作部44,46,48,50とを備えている。
OHシャワー吐水部18は、使用者に向けて頭上から下向きにシャワー水(なお、ミスト状ではない)を噴射するものであり、前面カバー16から前方にほぼ水平に延び出したパイプ30(図2参照)と、パイプ30の先端部に取り付けられる略円盤状のシャワーヘッド31とを備えている。また、OHシャワー吐出部18は、シャワーヘッド31の下面が手前側から奥側に向かって下降傾斜して取り付けられている(即ち、シャワーヘッド31の下面が水平面に対して角度を有して配置されている)。
Bシャワー吐水部20は、シャワー装置10の左右方向(図1矢印Y方向)に複数列で且つ、シャワー装置10の上下方向(図1矢印X方向)に複数箇所に設けられている。本実施形態では、左右方向に2列で且つ上下方向に5箇所ずつの合計10個の吐水部が設けられている。具体的には、最上部にBシャワー吐水部20a1,20b1が設けられ、その下方に向かって順番に、Bシャワー吐水部20a2,20b2,20a3,20b3,20a4,20b4,20a5,20b5が設けられている。
また、Bシャワー吐水部20は、使用者の頭部より低い位置でミスト状のシャワーを前方(図1手前側)に向かって噴射するものであり、Bシャワー吐水部20a1,20b1は、使用者の胸部にミスト状のシャワーを噴射し、Bシャワー吐水部20a2〜20a4,20b2〜20b4は、使用者の腰部を中心にミスト状のシャワーを噴射し、Bシャワー吐水部20a5,20b5は、使用者の足下にミスト状のシャワーを噴射するものである。
吐水管22は、ケース12の下端に水平方向に回転可能に取り付けられ、主に、使用者が洗い場に座った状態で使用するものである。また、先端には、吐水口34が設けられ、その吐水口34から吐水を1本の直流束で下向きに吐出する。
Hシャワー吐水部24は、ケース12の側面に垂直方向に回転可能な取り付けるエルボ状の継手42にシャワーホース26を介して連結されており、そのシャワーホース26の先端に、グリップ36と、ヘッド38とが連結されている。
Hシャワー吐水部24のヘッド38の下面には、散水板が取り付けられ、その散水板に複数のシャワー孔40が分散状に設けられており、そのシャワー孔40からシャワー水が噴射される。なお、Hシャワー吐水部24は、ケース12の側面(図1矢印Y方向左側面)に設けられたシャワーフック28によって脱着可能に掛止される。
操作部44は、OHシャワー吐水部18用の操作部であり、拡大図に示すように、操作部周りに設けられた表示部の差し位置を示す指示部52が設けられている。操作部44は、シャワー吐水状態、シャワー止水状態、及び、温度確認位置の3位置に切替操作可能に構成されると共に、回転角度に応じて流量を調整可能に構成されている。
操作部46は、Bシャワー吐水部24用の操作部であり、拡大図に示すように、操作部周りに設けられた表示部の差し位置を示す指示部54が設けられている。操作部46は、シャワー吐水状態、シャワー止水状態、及び、温度確認位置の3位置に切替操作可能に構成されると共に、回転角度に応じて流量を調整可能に構成されている。
操作部48は、温水と冷水との混合水の温度調整用の操作部であり、拡大図に示すように、操作部周りに設けられた表示部の差し位置を示す指示部56が設けられている。操作部50は、吐水管22とHシャワー吐水部24との吐水を切り替える操作部であり、拡大図に示すように、操作部周りに設けられた表示部の差し位置を示す指示部58が設けられている。また、操作部50は、回転角度に応じて流量を調整可能に構成されている。
次に、図2から図5を参照して、OHシャワー吐水部18について詳細に説明する。まず、図2を参照して、OHシャワー吐水部18の外観について説明する。図2は、OHシャワー吐水部18の外観を示した側面図である。なお、図2では、シャワーヘッド31と、パイプ30との接続部分のみ断面図で図示している。また、図2において、矢印Xは、シャワー装置10の上下方向を示し、矢印Zは、シャワー装置10の奥行き方向を示している。
図2に示すように、OHシャワー吐水部18のシャワーヘッド31は、ケース12の前面カバー16(図1参照)から前方(図2矢印Z方向左方)にほぼ水平に延出したパイプ30に対して、30度程度傾斜して連結されている。よって、シャワーヘッド31の下面は、シャワー装置10の前方側に向いており、その結果、使用者の全身にシャワーを散水することができる。
シャワーヘッド31は、薄板の円盤状に形成されている。これは、薄板の円板状に形成することで、シャワーヘッド31の内部に供給される水の水圧を高めると共に、径方向における水圧を略均等にするためである。即ち、シャワーヘッド31の中心から供給される水の水圧を、中心からの距離に関わらず略均等にして、散水されるシャワーの勢いを略均等にするためである。
また、シャワーヘッド31は、前面カバー16(図1参照)から前方にほぼ水平に延出したパイプ30に対して、ボールジョイント33を介して連結されている。ボールジョイント33は、シャワーヘッド31の上下方向の傾斜角度および左右方向の傾斜角度を変更可能にするものである。本実施形態では、上下上方(図2矢印X方向)に10度および左右方向(図1矢印Y方向)に10度の範囲で、傾斜角度を変更可能に構成されている。
ボールジョイント33の外表面とシャワーヘッド31側との当接面には、Oリング34が配置されている。よって、シャワーヘッド31の傾斜角度が変更されたとしても、ボールジョイント33の外表面とシャワーヘッド31との連結部分から水漏れが発生することを防止することができる。
次に、図3を参照して、OHシャワー吐水部18のシャワーヘッド31を構成する各種部品について説明する。図3は、OHシャワー吐水部18のシャワーヘッド31を構成する各種部品の分解斜視図である。
図3に示すように、OHシャワー吐水部18は、側面を覆う化粧リング61と、下面を覆う化粧板62と、その化粧板62の上部に配置される下板63と、下板63の上部に配置される中間層64と、その中間層64の上部に配置される散水板65と、側面および上面を形成する蓋体66と、ボールジョイント33(図2参照)が内挿されるジョイント67と、そのジョイント67と散水板65との間に配置され内部空間X(図4参照)に水を流入(供給)する流入部材68と、ジョイント67に螺着されるナット69と、下板63と蓋体66とを螺着するネジ70とを主に備えている。
化粧リング61は、シャワーヘッド31の側面部の一部を形成するものであり、化粧板62は、シャワーヘッド31の下面部の一部を形成するものである。この化粧リング61及び化粧板62は、シャワーヘッド31の外観を装飾するものであり、樹脂材やステンレス材などで構成される。また、化粧板62には、複数の散水孔71が穿設されている。
下板63は、シャワーヘッド31の下面部の一部を形成し、中間層64及び散水板65を位置決めすると共に中間層64及び散水板65を下方から支持するものであり、樹脂材などから構成されている。下板63には、後述する中間層64の下方突起部77が嵌挿される複数の散水孔73と、上方(図3上方向)に向かって突起しネジ70が螺着されるネジ突起部74と、上方(図3上方向)に向かって突起し略中心(軸心を通る位置)に設けられた中央突起部75とが設けられている。この中央突起部75は、中空状に形成されており、内部空間X内に空気を供給する供給路として作用する。
中間層64は、シャワーヘッド31の下面部の一部を形成し、散水される水の流路を形成するものであり、ゴム状などの弾性材で構成されている。中間層64には、下板63の散水孔73に挿通され下方(図3下方向)に突起した複数の下方突起部77と、その下方突起部77に貫通形成され水の流路を形成する散水流路78と、下板63のネジ突起部74が挿通される貫通孔79と、下板63の中央突起75が挿通される貫通孔80と、位置決め用の突起であり上方に突起した上方突起部81とが設けられている。
散水板65は、シャワーヘッド31の下面部の一部を形成し、蓋体66との間で水を貯留する内部空間Xの下面(底面)を形成するものであり、プラスチックなどの樹脂材で構成されている。散水板65には、中間層64の散水流路78に連通する散水孔83と、下板63のネジ突起部74が挿通される貫通孔84と、中間層64の上方突起部81が挿通される貫通孔85と、下板63の中央突起部75が挿通される中央挿通部86とが設けられている。
蓋体66は、シャワーヘッド31の上面部および側面部の一部を形成するものであり、樹脂材などで構成されている。この蓋体66は、下板63と、中間層64と、散水板65と、ジョイント67の一部と、流入部材68とを内側に収納し、化粧リング61の内側に螺着される。
また、蓋体66は、散水板65との間で水を貯留する内部空間Xの上面を形成する上壁90(各請求項の蓋体)と、側面を形成する側壁91(各請求項の側壁)とで構成されている。蓋体66の上壁90には、ネジ70の軸部70aのみが挿通可能な貫通孔と、ネジ70の頭部70bが支持されるざくり部からなるネジ孔88と、ジョイント67の一部が挿通される貫通孔89とが設けられている。
ジョイント67は、パイプ30側と連結される部分であると共に、パイプ30から供給される水をシャワーヘッド31の内部に供給する流路を形成するものであり、金属材で構成されている。ジョイント67には、下方(図3下方向)に蓋体66の内側面と当接しジョイント67の抜けを防止する皿部91と、ボールジョイント33が内挿される筒部92とで構成されている。
流入部材68は、ジョイント67から供給される水を、散水板65と蓋体66との間に形成される内部空間Xに流入するものであり、プラスチックなどの樹脂材で構成されている。流入部材68は、下面(図3下側の面)が開放された筒状に形成されており、上面(図3上側の面)に複数の貫通孔94が形成され、上面の中央から下方に突出した突出部95が形成されている。
以上のように構成された各種部品を組み付けてシャワーヘッド31を製作する場合には、下板63のネジ突起部74及び中央突起部75に、中間層64の貫通孔79,80をそれぞれ挿通させると共に、下板63の散水孔73に中間層64の下方突起部77を嵌挿して、下板63に対して中間層64を位置決めしつつ固定する。
次に、中間層64の上方突起部81を散水板65の貫通孔85に挿通させると共に、下板63の中央突起75を散水板65の中央挿通部86に挿通させて、下板63及び中間層64に対して散水板65を位置決めしつつ固定する。
そして、流入部材68の突出部95を、散水板65の中央挿通部86(下板63の中央突起部75)内に緩挿し、ジョイント67をナット69により固定した状態の蓋体66を被せ、ネジ70により蓋体66と下板63とを螺着する。
その後、化粧リング61内に化粧板62をセットし、下板63、中間層64、散水板65、蓋体66、ジョイント67、流入部材68が一体に組み付けられた部材を、化粧リング61内にねじ込み、シャワーヘッド31が完成する。
なお、OHシャワー吐水部18内を流動する水は、図3の矢印Aで示すように、パイプ30(図2参照)の内部、ボールジョイント33(図2参照)の内部、ジョイント67の内部、流入部材68の貫通孔94、散水板65と蓋体66との間に形成される内部空間X、散水板65の散水孔83、中間層64の散水流路78(下板63の散水孔73を通過)、化粧板62の散水孔71を通り、外部へ散水されることになる。
また、流入部材68の貫通孔94を通過する水は、下板63の中央突起部75の内路を通って供給される空気を引き込みつつ、散水板65の上面に勢いよく流出されるので、散水板65の中央挿通部86近傍で泡立ち微少な気泡が生成され、その微少な気泡を含む水が外部に散水される。即ち、使用者に対して、浴び心地の良い水を生成することができる。
また、中間層64をゴム状の弾性材で構成することにより、製品の歩留まりを向上することができる。これは、中間層64を硬い部材で構成した場合には、下方突起部77及び上方突起部79の配置位置の精密な精度が必要となり、その分、製品不良が発生し易いのに対し、中間層64をゴム状の弾性材で構成することにより、極端に精密な精度を必要としないからである。
次に、図4及び図5を参照して、散水板65について詳細に説明する。図4は、散水板65及び蓋体66の一部の断面を示した断面図であり、図4(a)は、図3のIVa−IVa線における散水板65及び蓋体66の断面図であり、図4(b)は、図3のIVb−IVb線における散水板65及び蓋体66の断面図である。
また、図5は、散水板65の上面図であり、水の流れを模式的に示した図である。なお、図5の下側は、シャワー装置10にOHシャワー吐水部18が取り付けられた状態で下方に位置し、図5の上側は、シャワー装置10にOHシャワー吐水部18が取り付けられた状態で上方に位置するものとする。よって、図5の最も下側に位置する散水孔83が最下方散水孔となる。
図4(a)に示すように、散水板65は、中央挿通部86近傍の板厚が一番薄く、軸心から径方向外側(図4(a)右方向)に向かうほど厚みが厚くなる階段状に形成されている。本実施形態では、5段階の階段状に構成されており、1段目(最下段)の径方向の幅t1が短く(約5mm)、2段目から4段目(中段)までの径方向の幅t2からt4は略同等で且つ1段目の幅t1より長く(約13mm)、5段目(最上段)の径方向の幅t5が最も長く幅t2の略2倍(約26mm)に構成されている。
また、蓋体66の上壁90の下面であり、散水板65に対向する面は平面に構成されているので、散水板65と蓋体66の上壁90の下面との間の高さh1からh5は、1段目から5段目に向かうほど低くなるように構成されている。
ここで、散水板65が平面(階段状でない)に形成されていると、中央挿通部86近傍の水圧は、流入部材68から勢い良く水が流入されるので高くなる一方、散水板65の外周部(外縁部)近傍では、水の勢いが弱くなり水圧が低くなってしまう。その結果、シャワーヘッド31から散水される水は、中央部分の勢いが強く、径方向外側に向かうほど勢いが弱くなってしまい、使用者の浴び心地が低下してしまう。
そこで、本実施形態では、散水板65と蓋体66の上壁90の下面との間の高さを、径方向外側に向かうほど段階的に低くし、水が通過する断面積を小さくすることで、散水板65と蓋体66との間に形成される内部空間X内の水圧を略均等にしている。その結果、シャワーヘッド31から散水される水の勢いが略均等になるので、使用者の浴び心地が低下することを抑制することができる。
なお、本実施形態では、高さh5が0.5mmから3mmの間になるように構成されている。高さh5を0.5mmから3mmの間に構成すると、流入部材68から水が流入されていない状態で、5段目の上面と蓋体66の上壁90との間の水が表面張力により保持される。また、5段目の上面と蓋体66の上壁90との間の水を保持する表面張力は、その5段目の上面と蓋体66の上壁90との間で保持されている水が、排水溝101を流れる水の流れに巻き込まれつつ下方へ流れ出す場合に生じる力より小さくなるように構成されている。
また、図4(a)に示すように、散水板65の5段目より更に径方向外側となる外周部(外縁部、図4(b)に示す範囲w1)には、排水溝101が形成されている。この排水溝101は、散水板65の5段目の平面から蓋体66の側壁91方向に下降傾斜した傾斜面102と、その傾斜面102に連続し径方向外側に伸びる底面103と、蓋体66の側壁91の内側面104とにより囲まれて形成されている。
なお、排水溝101の傾斜面102及び底面103は、図5に示すように、散水板65の全外周に形成されているので、蓋体66の側壁91の全ての内側面104により排水溝101が形成される。即ち、排水溝101は、蓋体66の側壁91の内側面104に連通していることになる。
図4(b)に示すように、散水孔83は、1段目と2段目の間、2段目と3段目の間、3段目と4段目の間、4段目と5段目の間、5段目の径方向の中心、排水溝101にそれぞれ穿設されている。即ち、散水孔83は、軸心から径方向に略等間隔に穿設されると共に、各段に設けられた複数の散水孔83は、同心円上に位置することになる(図5参照)。なお、本実施形態では、排水溝101の傾斜面102を含んで穿設させる散水孔83の軸心側の縁から散水板65の外縁までの範囲w1を、散水板65の外周部(外縁部)とする。
OHシャワー吐水部18は、上述したように、浴室の床面(水平面)に対して傾斜して配置されるので、散水板65及び蓋体66も同様に傾斜した状態で配置される。使用者がシャワーの使用を中止すると、散水板65と蓋体66との間に形成される内部空間X内の水は、複数の散水孔83を通り外部に散水される。
ここで、図5を参照して、散水板65と蓋体66との間に形成される内部空間X(図4参照)内の残水が少なくなった場合の水の流れについて説明する。
図5に示すように、散水板65と蓋体66との間に形成される内部空間X内の残水が少なくなると、1段目より径方向内側の残水は、矢印B1で示すように、1段目と2段目との段差により下方へ案内されつつ、散水孔83から外部に排水される。2段目から4段目までの残水は、1段目と同様に、矢印B2からB4で示すように、各段の段差により下方へ案内されつつ、散水孔83から外部に排水される。
一方、1段目から4段目までの散水孔83により排水されずに溢れた残水は、5段目の上面を通り下方の排水溝101に案内される。上述したように、排水溝101は、蓋体66の側壁91方向に下降傾斜した傾斜面102を有しているので、5段目の上面から排水溝101方向へ流れる水の流れが形成される。よって、5段目の上面を通る水は、矢印Cで示すように、排水溝101内を流れる水の流れに巻き込まれつつ排水溝101内に流れる。従って、1段目から4段目までの散水孔83により排水されずに5段目の上面を流れる残水は、排水溝101に案内され易くなる。
なお、上述したように、5段目の上面と蓋体66の上壁90の下面との間の水は、表面張力により保持されているので、その5段目の上面に保持されている残水が排水溝101内に流れ込む流れが形成されると、5段目の上面に保持されている残水全体が排水溝101方向へ移動し易くなる。よって、散水板65の上面の残水をより早く排水溝101に案内することができるように構成されている。
排水溝101に案内された残水は、矢印B5で示すように、散水板65の外周部(図4(b)に示す範囲w1の間)を通り、散水板65の外周部に穿設された散水孔83から排出されつつ、最下方に位置する散水孔83に案内されて外部に排水される。ここで、排水溝101の水路の断面積は、散水板65の上面を流れる水の水路の断面積に比べて大きくなるので、矢印B5で示す水の流れは、散水板65の上面を流れる水の流れより速くなる。その結果、散水板65の上面を流れる水は、排水溝101の流れに巻き込まれ易くなり、全体の流れとして最下方に位置する散水孔83に案内され易くなるので、より早く残水を排水することができる。
以上、説明したように、本実施形態のシャワーヘッド31は、散水板65の外周部に排水溝101が形成され、その排水溝101は最下方に位置する散水孔83に連通している。そして、散水板65の上面の水は、排水溝101内に流れ込み易く且つ、散水溝101の流れに巻き込まれるようにして下方に流れるので、使用者がシャワーの使用を中止して内部の残水が少なくなった場合には、その内部の残水が排水溝101により最も下方に位置する散水孔83に案内され、残水を早く外部に排水することができる。
また、排水溝101は、散水板65に形成される傾斜面102及び底面103と、蓋体66の内側面104とにより形成されているので、散水孔83と側面104との間の距離を極端に短くすることができる。その結果、シャワーヘッド31の内部の残水のほぼ全てを外部に排水することができるので、使用者がシャワーの使用を開始した場合に、冷水となった残水が使用者に注がれることを抑制でき、使用者に与える不快感を低減することができる。
なお、散水孔83には、水の表面張力などにより若干の水が残ると共に、最下方の散水孔83より下方となる排水溝101にも若干の水が残るが、その残水は、シャワーヘッド31の全内部空間Xに対して10%以下になる。そのため、使用者がシャワーの使用を開始した場合に散水される冷水は少ないので、使用者に不快感を与えることを抑制できる。
また、排水溝101は、散水板65の全外周部に形成されているので、シャワーヘッド30に対する散水板65の周方向における組付位置、更には、シャワーヘッド31のシャワー装置10への周方向における取付位置を位置決めする必要がなくなり、組付作業および取付作業の作業性を向上することができる。
次に、図6を参照して、第2実施形態について説明する。図6は、第2実施形態の散水板65の上面図である。なお、図6の下側は、シャワー装置10にOHシャワー吐水部18が取り付けられた状態で下方に位置し、図6の上側は、シャワー装置10にOHシャワー吐水部18が取り付けられた状態で上方に位置するものとする。なお、第1実施形態と同一の部分には、同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
第2実施形態の散水板65は、第1実施形態の散水板65に形成される排水溝101に加えて、略直線状の排水溝201が形成されており、より効率良く残水を排水可能に構成したものである。
図6に示すように、第2実施形態では、シャワー装置10にOHシャワー吐水部18が取り付けられた状態において、軸心を通る直線上の上方から下方に亘って排水溝201が形成されている。また、排水溝201は、散水板65の最下方に位置する排水孔83に連通されている。
よって、第2実施形態では、使用者がシャワーの使用を中止した場合には、中心部を通る排水溝201に水の流れができ、散水板65の上面の排水溝201近傍の水は、図6の矢印Dで示すように、排水溝201の水の流れに巻き込まれつつ排水溝201内に流れ込む流れが形成されるので、最下方に位置する散水孔83に案内され易くなり、残水をより早く外部に排水することができる。
なお、第2実施形態の排水溝201の両側の側面を内側に下降傾斜して構成しても良く、この構成にすれば、中心部の水は、排水溝201内に流れ込み易くなるので、より早く残水を排水することができる。
次に、図7を参照して、第3及び第4実施形態について説明する。図7(a)は、第3実施形態の散水板65及び蓋体66の一部の断面を示した断面図であり、図7(b)は、第4実施形態の散水板65及び蓋体66の一部の断面を示した断面図である。なお、第1実施形態と同一の部分には、同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
まず、第3実施形態のシャワーヘッド31について説明する。第1実施形態のシャワーヘッド31は、散水板65の外周部に排水溝101を形成するものとしたが、第3実施形態のシャワーヘッド31は、散水板65の外周部に排水溝101を形成すると共に、蓋体66の上壁90の外周部にも排水溝301を形成し、より効率良く残水を排水可能に構成したものである。
図7(a)に示すように、第3実施形態では、第1実施形態と同様に、排水溝101が外周部に形成された散水板65と、排水溝301が蓋体66の上壁90の外周部に形成された蓋体66とで構成されている。なお、本実施形態では、蓋体66の上壁90の外周部は、範囲w2であり、この範囲w2は、散水板65の最も外周に位置する散水孔83と対向する部分を含んで構成され、範囲w1と同等に構成されている。
この蓋体66の上壁90に形成される排水溝301は、図示しないが、蓋体66の上壁90の全外周に形成されている。また、排水溝301は、散水板65に形成される排水溝101と対向する部分に形成されているので、最下方に位置する散水孔83と対向する部分を含んで形成されることになる。
第3実施形態によれば、使用者がシャワーの使用を中止し、シャワーヘッド31内部の内部空間Xに残水が充満していると、蓋体66に形成される排水溝301により残水が上方から下方へ流れ易くなる。つまり、使用者がシャワーの使用を中止した場合の残水の流れの初期動作を、蓋体66に形成される排水溝301により上方から下方に案内され易くすることができる。そして、散水板65に形成される排水溝101によって、第1実施形態と同様に、散水板65の上面の水を排水溝101内に流れ込み易く且つ、散水溝101の流れに巻き込まれるようにして下方に流せるので、使用者がシャワーの使用を中止した場合の初期動作から内部の残水が少なくなるまでの残水の排水を、効率良く早期に行うことができる。
次に、第4実施形態のシャワーヘッド31について説明する。第1実施形態のシャワーヘッド31は、散水板65の外周部に排水溝101を形成するものとしたが、第4実施形態のシャワーヘッド31は、散水板65の外周部に排水溝101を形成せずに、蓋体66の上壁90の外周部にのみ排水溝301を形成し、残水の排水の初期動作を上方から下方に流れ易く構成したものである。
図7(b)に示すように、第4実施形態では、散水板65の5段目は平面に形成され、散水板65の外周部に排水溝101は形成されておらず、蓋体66の上壁90の外周部にのみ、第3実施形態と同様の排水溝301が形成されている。
第4実施形態によれば、使用者がシャワーの使用を中止し、シャワーヘッド31内部の内部空間Xに残水が充満している場合の残水の流れの初期動作を、蓋体66に形成される排水溝301により上方から下方に案内し易くできる。よって、散水板65に排水溝101を形成する構成に比べると、残水を早期に排水することはできないが、内部空間X内の残水が下方へ流れる初期動作を作ることができるので、その分、残水を早く外部に排水することはできる。
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上述した実施の形態になんら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変更が可能であることは容易に推察できるものである。
例えば、上記第2実施形態では、散水板65に排水溝101と排水溝201とを形成するものとしたが、排水溝201のみを形成するものとしても良い。さらに、排水溝101や、排水溝102、最下方に位置する散水孔83に連通するようなV字状の排水溝、散水板65の外周部の下方のみ形成される半円状(又は円弧状)の排水溝、上下方向に亘って形成される複数の排水溝などの1つ又は複数を組み合わて構成するものとしても良い。即ち、最下方に位置する散水孔83に連通する排水溝を有していれば、その形状や数は、如何なるものであっても良い。さらに、第3及び第4実施形態の散水板65及び蓋体66の上壁90の一方または両方に、排水溝201を形成しても良い。
また、上記各実施形態では、シャワーヘッド31を略円板状に構成するものとしたが、薄板の楕円形、四角形、三角形など、その形状は如何なるものであっても良い。
また、上記各実施形態では、排水溝101に傾斜面102が形成されるものとしたが、その傾斜面102を形成せずに、散水板65の上面から底面103に対して略垂直となる側面により排水溝101を形成しても良い。この構成であっても、排水溝101により上方から下方へ流れる水の流れができ、その水の流れにより残水が巻き込まれるように下方へ案内されるので、早く残水を外部に排水することができる。
また、上記各実施形態では、蓋体66が、シャワーヘッド31の内部空間Xの側面および上面を形成するように構成したが、蓋体66を平板状に構成し散水板65により内部空間Xの底面および側面を形成するように構成しても良いし、蓋体66及び散水板65を平板状に形成し、別体として外周の側面を覆う側壁を設けるように構成しても良い。