JP5466983B2 - 絶縁膜組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、基材上に電極を保護する等の目的で設けられる絶縁膜、特に複写機の定着ヒータ等の絶縁膜の形成に好適な絶縁膜組成物に関する。
例えば、トナー画像を紙等に転写して定着する形式の複写機では、その定着装置においてその紙等が加熱されつつ加圧されることによって、転写されたトナーが溶融させられてその紙等に定着させられる。定着装置には、その紙等を加熱するための定着ヒータと、その紙等を定着ヒータに向かって加圧しつつ一方向に送るための加圧ローラとが備えられている。このような定着装置の一形式として、定着ヒータを平板長尺状に形成すると共に、加圧ローラとの間にその回転に伴って回転させられる耐熱樹脂製の定着フィルムを設けて、定着装置を小型化すると共にその熱容量を低下させたものがある。
上記の定着ヒータは、例えば、ガラスやセラミックス等から成る平板状の基板の表面に、印刷或いは転写等の適宜の方法でAg/Pd合金等から成る抵抗発熱体層を設けたものである。この抵抗発熱体層は、例えばその両端部においてAg等から成る電極端子に接続されると共に、その表面がガラスを主成分とする絶縁膜で覆われている。このような絶縁膜は、平板状の定着ヒータに限られず、円筒状の絶縁性基材の外周面に抵抗発熱体層を設けた定着ローラにも設けられ、複写機の他に、回路基板においても、その表面に設けられた電極等の導体膜や電子部品等を保護する目的で絶縁膜が形成される。
特開平10−338543号公報 特開平11−147711号公報 特開2001−226117号公報
ところで、上記のような絶縁膜において、高い信頼性を得るためには、耐電圧が可及的に高く絶縁破壊が容易に起きないことが望まれる。これに対して、ガラス粉末の5〜45(wt%)をアルミナ粉末に置き換えることによって耐電圧を高めたガラスペーストが提案されている(例えば、特許文献1を参照。)。このガラスペーストは、900(℃)以下の比較的低い焼成温度で緻密な膜を形成し得る低軟化点ガラスを用いた場合に耐電圧が低くなる傾向にあることから、膜厚を厚くすることなく耐電圧を高めることを目的としたものである。しかしながら、上記ガラスペーストから生成される絶縁膜は、耐電圧が未だ低く、一層の向上が望まれていた。
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであって、その目的は、耐電圧が一層高い絶縁膜を形成し得る絶縁膜組成物を提供することにある。
斯かる目的を達成するため、本発明の要旨とするところは、所定の基材の表面に絶縁膜を形成するために用いられるガラスを主成分とする絶縁膜組成物であって、アスペクト比が1.2以下のアルミナ粉末を含み、そのアルミナ粉末は、水酸化アルミニウムをハロゲンガスと共に噴射して気相成長させる化学蒸着法を用いて製造されたものであることにある。
このようにすれば、ガラスを主成分とする絶縁膜組成物には、アルミナ粉末が含まれていることから、その絶縁膜組成物から形成される絶縁膜の耐電圧が高められる。このとき、アルミナ粉末のアスペクト比が1.2以下と小さく球形に近いことから、一層耐電圧の高い絶縁膜が得られる。さらに、そのアルミナ粉末は、水酸化アルミニウムをハロゲンガスと共に噴射して気相成長させる化学蒸着法を用いて製造されたものであるので、球形に近い微細なアルミナ粉末が容易に得られるとともに、粒径のばらつきが小さいため、耐電圧が高くそのばらつきの小さい絶縁膜を形成し得る絶縁膜組成物が得られる。
なお、本願において「アスペクト比」は、粒子の長径/短径比で、球形に近いほど値が1に近くなる。アスペクト比が小さいほど耐電圧も高くなり且つばらつきも小さくなる利点がある。すなわち、上記アルミナ粉末は、球形に近いほど好ましい。
因みに、ガラスを主成分とする絶縁膜組成物にアルミナ粉末を添加することは、前述したように従来から知られていることであり(前記特許文献1を参照。)、また、そのような絶縁膜組成物は市販されている。しかしながら、現在までに知られているこれらの絶縁膜組成物では、添加するアルミナ粉末の物性については特に考慮されていなかった。そのため、製造コスト面で有利な安価な破砕アルミナが用いられていたことから、アスペクト比が大きいので、耐電圧のばらつきが大きくなり、信頼性に欠けていたものと考えられる。
また、回路基板の導体膜や電子部品等を保護するための絶縁膜を形成するための樹脂組成物において、アルミナ粉末をフィラーとして添加することが提案されている(前記特許文献2、3を参照。)。この樹脂組成物は、樹脂の熱伝導性が低いことから、これを改善する目的でアルミナ粉末を添加したものである。したがって、本願発明と同様に絶縁膜組成物にアルミナ粉末を添加するものではあるが、主成分が相違すると共にアルミナ粉末を添加する目的も全く相違する。
ここで、好適には、前記アルミナ粉末のアスペクト比は、1.1以下である。このようにすれば、アルミナ粉末が一層球形に近づくことから、焼成後の絶縁膜に突起が一層生じ難くなる。しかも、絶縁膜を形成するに際して絶縁膜組成物のペーストを調製してスクリーン印刷法を利用する場合には、一層球形に近いアルミナ粉末が用いられることからペーストの分散性が向上するので、印刷、乾燥後における膜の密度が一層高められ、焼成後に一層緻密な絶縁膜が得られる利点がある。
また、好適には、前記アルミナ粉末は化学蒸着(CVD)法を用いて製造されたものである。CVD法を用いると、アスペクト比が小さい球形に近い微細なアルミナ粉末を容易に製造できると共に、粒径のばらつきも小さいため、一層耐電圧が高く且つばらつきの小さい絶縁膜を形成し得る絶縁膜組成物が得られる。上記CVD法は、例えば、アルミニウムアルコキシドを加水分解して合成した水酸化アルミニウムを塩素等のハロゲンガスと共に噴射して気相成長させることでアルミナ粉末を得るものである。アスペクト比の小さいアルミナ粉末の製造方法はCVD法に限られず、液相法や破砕粉末を加工する方法なども考えられるが、上記のようなCVD法によれば、ばらつきの少ない粉末を安価に製造できることから好ましい。
また、好適には、前記アルミナ粉末は、平均粒径D50が5(μm)以下である。形成する絶縁膜の膜厚にも依存するが、平均粒径が5(μm)以下であれば、定着ヒータや回路基板の絶縁膜用途などにおいて問題となるような突起が生じ難く、しかも、耐電圧の最小値も十分に高くなる。
また、好適には、前記アルミナ粉末は、平均粒径D50が0.3(μm)以上である。添加するアルミナ粉末の凝集を抑制して高い分散性を得るためには、平均粒径を0.3(μm)以上とすることが好ましい。
また、好適には、前記アルミナ粉末は、ガラス粉末に対して、30〜70(wt%)の範囲で添加される。70(wt%)以下に留めれば、アルミナ粉末の添加に伴って焼成後の膜面が荒れることが十分に抑制されるので、表面平滑性の一層高い絶縁膜が得られる。また、30(wt%)以上にすれば、熱伝導性も十分に高くなる。同様な観点から、アルミナ粉末の添加量は40〜60(wt%)の範囲が一層好ましい。
なお、本発明において、絶縁膜の主成分となるガラスは特に限定されず、鉛ガラスでも無鉛ガラスでもよい。鉛ガラスとしては、例えば、PbO-SiO2-ZnO系ガラスやPbO-SiO2-B2O3系ガラス等が挙げられる。また、無鉛ガラスとしては、SiO2-B2O3-ZnO系ガラス、SiO2-B2O3-ZnO-Al2O3系ガラス、Bi2O3-B2O3系ガラス等が挙げられる。何れにおいても、上記成分に加えてアルカリ金属酸化物やアルカリ土類酸化物等を適宜含むことができる。
また、好適には、本発明の絶縁膜組成物は、複写機等のトナー定着に用いられる定着ヒータの表面に形成された抵抗発熱体層を覆う絶縁膜を形成するためのものである。本発明の絶縁膜組成物は、前述したように低アスペクト比のアルミナ粉末が添加されることで高い耐電圧を有するため、高電圧が印加される定着ヒータの絶縁膜に好適である。
本発明の一実施例の絶縁膜組成物で絶縁膜を形成した定着ヒータが備えられた定着装置の要部断面構成を模式的に示す図である。 本発明の一実施例の絶縁膜組成物で絶縁膜を形成した他の定着ヒータの断面構造を模式的に示す図である。 本発明の一実施例の絶縁膜組成物で絶縁膜を形成した回路基板の断面構造を模式的に示す図である。 低アスペクト比のアルミナ粉末を添加した本発明の一実施例の絶縁膜組成物から形成した絶縁膜の耐電圧特性を、高アスペクト比のアルミナ粉末を添加した比較例のそれと共に示す図である。 実施例、比較例共に図4に示したものとは異なるアルミナ粉末を用いた絶縁膜の耐電圧特性を示す図である。 高アスペクト比のアルミナ粉末の一例を示す電子顕微鏡写真である。 高アスペクト比のアルミナ粉末の他の例を示す電子顕微鏡写真である。 低アスペクト比のアルミナ粉末の一例を示す電子顕微鏡写真である。 低アスペクト比のアルミナ粉末の他の例を示す電子顕微鏡写真である。
以下、本発明の一実施例を図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の実施例において図は適宜簡略化或いは変形されており、各部の寸法比および形状等は必ずしも正確に描かれていない。
図1は、本発明の一実施例の定着ヒータ10が備えられた複写機の定着装置の要部構成を模式的に示す断面図である。図1において、定着装置は、定着ヒータ10が基台12の下端部に固定されると共に、略円筒形状の定着フィルム14がその周囲に配置され、更に、それらの下方に加圧ローラ16がその軸心回りの回転可能に設けられている。
上記の定着ヒータ10は、アルミナ等のセラミック材料から成る紙面に垂直な方向に長い平板長尺状の基材18と、その一面に適宜のパターンで設けられた抵抗発熱体層20と、その抵抗発熱体層20を覆う絶縁膜22とを備えたもので、基材18が基台12に設けられた凹部に埋め込まれた状態で固定されている。
上記の抵抗発熱体層20は、例えばAg/Pd合金等から成るもので、トナー定着に必要な発熱量が得られるように適宜のパターン、例えば基材18の一端側から他端側に向かう直線状パターンや屈曲パターン等で設けられている。なお、基材18の長手方向の両端部には、図示しない一対の電極が前記絶縁膜22から露出した状態で設けられており、上記抵抗発熱体層20はその両端部がこれら一対の電極に接続されている。
また、前記絶縁膜22は、例えば、SiO2-B2O3-ZnO系ガラスと、フィラーとから成るもので、例えば10〜50(μm)程度の範囲内の厚さ寸法で設けられている。上記のガラスは、例えば、ネットワーク成分であるSiO2、B2O3、ZnOを合計で73(mol%)、中間ネットワーク成分であるAl2O3を4(mol%)、修飾酸化物成分であるBaO、SrOを合計で23(mol%)の割合で含む組成を備えている。また、このガラスの軟化点は690(℃)程度、熱膨張率は67(%)程度である。
また、上記のフィラーは、アスペクト比が1.2以下、例えば1.07程度で、平均粒径が0.8(μm)程度のアルミナ粉末から成るもので、絶縁膜22中に45(wt%)程度の割合で含まれている。このフィラーは、絶縁膜22の耐電圧を高める目的で添加されたものである。上記アルミナ粉末は、例えば、アルミニウムアルコキシドを加水分解して合成した水酸化アルミニウムを塩素ガスと共に噴射して気相成長させることによって製造したもので、このような製造方法によることから、上述したように微細でアスペクト比が小さい特徴を有している。
また、前記の加圧ローラ16は、例えばアルミニウム製円柱24の外周面にシリコーンゴム26が固着されたもので、図示しない軸受け装置にそのアルミニウム製円柱24が回転可能に軸支されている。加圧ローラ16は、その使用状態において、定着フィルム14を介して定着ヒータ10に押圧されるようになっている。
このように構成された定着装置において、図示しない転写装置によりトナーが転写された記録紙28等が送られてくると、定着ヒータ10と加圧ローラ16との間で定着フィルム14を介して加圧されると同時に加熱され、トナーに含まれる樹脂が溶融して、その記録紙28等にトナーが定着させられる。このとき、定着フィルム14は、加圧ローラ16の回転に伴って回転させられるので、定着ヒータ10はその表面すなわち絶縁膜22の表面が定着フィルム14で擦られることになるが、本実施例の絶縁膜22は高い耐電圧を有することから、これにより静電気が発生しても、絶縁破壊が生じ難い特徴を有している。
すなわち、上記の絶縁膜22は、前述したようにアスペクト比が小さいアルミナ粉末を含むことから、例えば耐電圧の平均値が120(V/μm)以上と十分に高く、且つ、ばらつきも±10(%)程度と十分に小さい優れた耐電圧特性を有している。そのため、耐電圧が十分に高いことから、複写機の使用中に発生する静電気による絶縁破壊が生じ難いのである。しかも、耐電圧のばらつきが小さいことから、所望の耐電圧特性を備えた定着ヒータ10を高い歩留まりで製造できる利点もある。
図2は、複写機に上記定着ヒータ10および定着フィルム14に代えて用いられる他の実施例の円筒状の定着ヒータ30の断面構造を模式的に示したものである。定着ヒータ30は、円筒状の基材32と、その外周面に固着された抵抗発熱体層34と、その抵抗発熱体層34を覆う絶縁膜36とを備えている。
上記の基材32は、例えば、SiO2-B2O3-Al2O3系の硬質ガラスから成るものである。この硬質ガラスには、上記成分の他に少量のアルカリ金属酸化物やアルカリ土類金属酸化物などが含まれている。
また、上記の抵抗発熱体層34は、前記抵抗発熱体層20と同様にAg/Pd合金等を用いて直線状パターンや螺旋状パターン等の適宜の形状で設けられている。また、絶縁膜36は前記絶縁膜22と同様に構成されたものである。このような形態の定着ヒータにおいても、その使用時には抵抗発熱体層34に高電圧が印加されると共に、記録紙28や加圧ローラ16等と擦れ合うことから、高い耐電圧が要求されるが、定着ヒータ10と同様に絶縁膜36が優れた耐電圧特性を有することから、耐電圧に優れた定着ヒータ30を高い歩留まりで製造できる利点がある。
また、このように優れた耐電圧特性を有する絶縁膜22、36を構成するガラスは、上述した定着ヒータ10、30に限られず、耐電圧が高く且つ信頼性を要求される他の用途、例えば、図3に示すような厚膜ハイブリッドICその他の回路基板40の絶縁膜42にも用いられる。
図3において、回路基板40は、アルミナ等から成る基板44の一面に導体膜46を形成すると共にICやチップ抵抗等の電子部品48を実装し、これらを絶縁膜42で覆ったものである。上記導体膜46は、例えばAgやAg/Pd等の厚膜導体材料から成るもので、電子部品48は、この導体膜46にハンダ等を用いて固着されている。このような用途においても、低アスペクト比のアルミナ粉末をフィラーとして含む本実施例の絶縁膜42によれば、十分に高い耐電圧が得られるので、回路基板40の信頼性が高められる利点がある。
また、上記図1〜図3に示す何れの用途においても、上記絶縁膜22,36,42は、ガラスに比べて熱伝導率の高いアルミナ粉末を含むことから、熱伝導性も高められているので、放熱性にも優れている特徴を有する。
上記のような絶縁膜22,36,42は、例えば、ガラス粉末およびフィラーをベヒクル中に分散した厚膜絶縁ペーストすなわち絶縁膜組成物を調製し、これを抵抗発熱体層20、34や導体膜46等の上にディッピングやスクリーン印刷等の適宜の塗布方法を用いて塗布し、焼成処理を施すことによって形成される。
図4、図5は、上記のようにして形成される絶縁膜の耐電圧を、フィラーとして添加するアルミナ粉末のアスペクト比および粒径を変化させて評価した結果を示したものである。用いたアルミナ粉末の特性およびガラスとの混合比を表1,2に示す。これら表1,2において、「高アスペクト比アルミナ」が比較例、「低アスペクト比アルミナ」が実施例である。表1に示すアルミナAは、平均粒径(D50)が0.8(μm)と微細なもの、表2に示すアルミナBは、平均粒径が4(μm)前後と比較的大きなものである。粒径は何れもレーザ回折法で測定した値である。これら4種のアルミナの電子顕微鏡写真を図6〜図9に示す。なお、微粉のアルミナAを用いた厚膜絶縁ペーストのガラス:アルミナ混合比(wt%)は、55:45とし、アルミナBを用いたものは50:50とした。なお、何れのサンプルも、フィラーとして添加したアルミナ粉末のアスペクト比・粒径・混合比が異なる他は同様な条件で絶縁膜を形成した。
上記図4、図5に示す耐電圧特性は、例えば、平坦なアルミナ基板上に厚膜導体を印刷形成して下部電極を設け、その上に各厚膜絶縁ペーストを厚膜スクリーン印刷によって塗布して焼成処理を施して絶縁膜を形成した後、その絶縁膜上にCuテープを貼り付けて上部電極を形成し、試験装置によって上下電極間に交流電圧を印加して、印加電圧毎の絶縁破壊個数(累積値)を測定することにより評価した。サンプル数は各仕様とも36個である。この評価では、印加電圧を0.1(V)ずつ上昇させて、絶縁破壊が起きたときの電圧を測定値とした。上記試験装置としては、KIKUSUI社製TOS-5051を使用した。また、グラフに示した電圧は実効値である。
図4において、平均粒径が0.8(μm)と微細なアルミナ粉末を用いた場合には、膜厚が22(μm)程度の絶縁膜を形成することができるが、低アスペクト比のアルミナを用いた実施例では2.4〜3.1(kV)程度、すなわち109〜141(V/μm)程度の耐電圧が得られる。これに対して、高アスペクト比のアルミナを用いた比較例では1.7〜2.1(kV)程度、すなわち77〜95(V/μm)程度の耐電圧に留まる。単位厚み当たりの平均値およびばらつきでみると、実施例では、平均値が120(V/μm)程度で、ばらつきが22(V/μm)程度であるのに対し、比較例では、平均値が84(V/μm)程度で、ばらつきが18(V/μm)程度になる。ばらつきは同程度であるが、低アスペクト比のアルミナ粉末をフィラーとして用いた実施例では、高アスペクト比のフィラーを用いた比較例に比べて、最低値でも平均値でも30(V/μm)以上向上している。
また、図5において、平均粒径が4(μm)程度の比較的大きなアルミナ粉末を用いた場合には、膜厚が33(μm)程度の絶縁膜を形成することができるが、低アスペクト比のアルミナを用いた実施例では1.3〜2.4(kV)程度、すなわち39〜73(V/μm)程度の耐電圧が得られる。これに対して、高アスペクト比のアルミナを用いた比較例では0.4〜1.5(kV)程度、すなわち12〜45(V/μm)程度の耐電圧に留まる。単位厚み当たりの平均値およびばらつきでみると、実施例では、平均値が62(V/μm)程度で、ばらつきが34(V/μm)程度であるのに対し、比較例では、平均値が27(V/μm)程度で、ばらつきが33(V/μm)程度になる。ばらつきは同程度であるが、低アスペクト比のアルミナ粉末をフィラーとして用いた実施例では、高アスペクト比のフィラーを用いた比較例に比べて、最低値でも平均値でも30(V/μm)前後向上している。
上記の高アスペクト比アルミナBは、一般に用いられている破砕アルミナで、高アスペクト比アルミナAは、例えばこれを更に粉砕したものであるが、何れもアスペクト比が2前後と大きくなっている。これに対して、低アスペクト比アルミナA,Bは、アスペクト比が1程度と小さい。上記の評価結果によれば、高アスペクト比のアルミナ粉末をフィラーとして用いる場合に比較して、低アスペクト比のアルミナ粉末をフィラーとして用いれば、耐電圧が著しく向上することが明らかである。
なお、上記表1,表2に記載した平均アスペクト比は、電子顕微鏡写真で適当な個数、例えば1視野当たり10個程度の粒子を任意に選んで長軸寸法および短軸寸法を測定し、各粒子のアスペクト比(長軸寸法/短軸寸法)を測定して平均値を算出したものである。高アスペクト比アルミナAはアスペクト比が例えば1.38〜2.25の範囲でばらつき、平均値は1.75であった。また、高アスペクト比アルミナBはアスペクト比が1.21〜3.33の範囲でばらつき、平均値は2.31であった。また、低アスペクト比アルミナAはアスペクト比が1.00〜1.13の範囲でばらつき、平均値は1.07であった。また、低アスペクト比アルミナBはアスペクト比が1.00〜1.08の範囲でばらつき、平均値は1.04であった。高アスペクト比アルミナは、アスペクト比の平均値が大きいだけでなく、ばらつきも著しく大きい。
要するに、本実施例によれば、ガラスを主成分とする厚膜絶縁ペーストには、CVDにより製造されたアスペクト比が1.2以下のアルミナ粉末が含まれていることから、その厚膜絶縁ペーストから形成される絶縁膜の耐電圧が高められる。
特に、本実施例においては、低アスペクト比のアルミナA,B共にアスペクト比が1.1以下であって一層球形に近いことから、絶縁膜に突起が生じにくくなると共に、前記厚膜絶縁ペーストを調製するに際して高い分散性が得られるので、印刷、乾燥時に膜の密度が高められ、焼成後に一層緻密な絶縁膜が得られる利点もある。
以上、本発明を図面を参照して詳細に説明したが、本発明は更に別の態様でも実施でき、その主旨を逸脱しない範囲で種々変更を加え得るものである。

Claims (1)

  1. 所定の基材の表面に絶縁膜を形成するために用いられるガラスを主成分とする絶縁膜組成物であって、
    アスペクト比が1.2以下のアルミナ粉末を含み、
    前記アルミナ粉末は、水酸化アルミニウムをハロゲンガスと共に噴射して気相成長させる化学蒸着法を用いて製造されたものであることを特徴とする絶縁膜組成物。
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