JP5465384B2 - 水生生物用固形化材料の製造方法及びアミノ酸固形化材料の製造方法 - Google Patents

水生生物用固形化材料の製造方法及びアミノ酸固形化材料の製造方法 Download PDF

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本発明は水生生物用固形化材料の製造方法及びアミノ酸固形化材料の製造方法に関し、例えば、焼酎廃液をセメント等で固めた固形化材料として魚礁に用いて好適な技術に関する。
近年、焼酎廃液は産業廃棄物として海洋投棄、地中埋蔵投棄が制限され、その処理を行うために肥料や飼料へ焼酎廃液を加工することが試みられている。しかしながら、焼酎廃液は毎年11月頃から翌年2月頃までの比較的短期間に一度に多量に排出されることから、この焼酎廃液を短時期に大量に処理することは困難とされている。また、特に甘藷焼酎の廃液は水に対する親和性が極めて高く、遠心分離(水と固形物とを分離する)することが不可能なために、他への応用が極めて困難とされている。
従来、例えば特許文献1には、焼酎蒸留粕と生コンクリートスラッジとを混合して、混合物をほぼ中性となし、この混合物中の蒸留粕を植物の肥料成分とすることを特徴とする土壌改良材が示されている。また、特許文献2には、焼酎粕と生コンクリート洗浄汚泥とを混合して焼酎粕を中和する方法と、焼酎粕を発酵活性液で発酵して活性化させ、これらに土や石粉を混合して土壌改良材や発芽促進材等の処理物を得ることが示されている。
また、特許文献3には、焼酎の廃液を固液分離して液体成分の水素イオン濃度を約5〜6に調整し、次いで凝集材を加えて溶解成分を固化した後固液分離し、得られた最終液体をセメント及び砂利等と混合してコンクリート成形物を得ることを特徴とする焼酎の廃液処理方法が提供されている。
しかしながら、上記特許文献1及び特許文献2に記載の方法においては、生コンクリート洗浄汚泥を天日で蒸発固化する工程、固化スラッジを粉砕する工程、粉砕スラッジを篩い分けする工程、さらに粒度を揃える工程等、発明品を得るまでに天日に長期間を要し、さらに製造工程が嵩み複雑である。また、一度に大量の焼酎廃液を処理することは難しい。
また、特許文献3に記載の方法において生成される固形化材料は、焼酎廃液を2度も固液分離した後のコンクリート成形物であるため、工程が極めて複雑である。また、廃液中の繊維質をことごとくろ過するため、ほとんど水であり、栄養成分及び繊維質等の含量は皆無である。また、魚礁として十分な強度を確保することは困難であり、さらに、大量の焼酎廃液を短期間で処理することはできない。
これらに対し、特許文献4には、焼酎粕から水生生物用固形化材料を製造する技術が記載されている。しかしながら、焼酎粕は腐敗しやすく、その品質管理が難しい。また、固形分が含まれるためにコンクリートに配合すると固化時間が長くなる。更に、必要以上に粘性が増して作業性が悪化し、コンクリートの質にばらつきが生じやすい。
また、近年では、焼酎だけでなく種々の飲食物の製造の際に排出されるごみの利用についても検討されている。たとえば、梅の漬け汁の用途、乳製品の製造及び果物の缶詰の加工の際に生じる残渣の用途について検討されている。
更に、今後のエネルギー材料として注目されているバイオエタノールを製造する際には多くの繊維質を含む残渣が生じるため、その処理について検討されている。
特開2002−342570号公報 特開2002−346499号公報 特開昭63−264185号公報 特開2007−181457号公報
本発明は、安定した特性を得ることができる水生生物用固形化材料の製造方法、及びアミノ酸固形化材料の製造方法を提供することを目的としている。
本発明に係る水生生物用固形化材料の製造方法は、0.09wt%以上のアミノ酸と、固化剤とを混合して固形化されている水生生物用固形化材料の製造方法であって、アミノ酸を含有する焼酎廃液から、アミノ酸を1.5wt%以上含有する溶液を得る工程と、骨材に対し、前記溶液と、少なくとも超速硬化セメント及び普通セメントからなる群から選択された1種以上と、多機能性硬化剤とを混合して固形化する工程と、を有し、1m 3 の前記水生生物用固形化材料あたり、前記溶液の量を150〜210kgとし、前記超速硬化セメント及び前記普通セメントの総量を260〜350kgとし、前記超速硬化セメント及び前記普通セメントの総量に対して前記多機能性硬化剤の量を2〜5wt%とすることを特徴とする。なお、前記骨材に対し、さらに、減水剤又は高強度混和材の少なくとも一方を混合して固形化することが好ましい。
本発明に係るアミノ酸固形化材料の製造方法は、0.09wt%以上のアミノ酸と、固化剤とを混合して固形化されているアミノ酸固形化材料の製造方法であって、アミノ酸を含有する焼酎廃液から、アミノ酸を1.5wt%以上含有する溶液を得る工程と、前記溶液に、少なくとも超速硬化セメント及び普通セメントからなる群から選択された1種以上と、多機能性硬化剤とを混合して固形化する工程と、を有し、1m 3 の前記アミノ酸固形化材料あたり、前記溶液の量を150〜210kgとし、前記超速硬化セメント及び前記普通セメントの総量を260〜350kgとし、前記超速硬化セメント及び前記普通セメントの総量に対して前記多機能性硬化剤の量を2〜5wt%とすることを特徴とする。
これらの水生生物用固形化材料及び製造方法によれば、適正な量のアミノ酸を含有しているので、安定した特性を得ることができ、例えば、魚礁等の水産分野で使用されるコンクリート製品、並びに、護岸ブロック及び消波ブロック等の河川事業及び港湾事業等で使用されるコンクリート製品に用いることができる。
以下、本発明の実施形態について説明する。1m3の水生生物用固形化材料の製造にあたって、260〜350kgのセメント量、150〜210kgのアミノ酸溶液、セメント量に対し0.5〜4wt%の減水剤、セメント量に対し2〜5wt%の多機能性硬化剤を混合する。アミノ酸溶液としては、アミノ酸を1.5wt%以上含有する溶液を用いる。アミノ酸溶液は、例えば焼酎廃液を固液分離し、その結果が得られた液体を濃縮することにより得ることができる。
アミノ酸濃縮液は腐敗することがないために保管が容易である。また、固形分が含まれないため、上記で述べた焼酎粕の問題点解決することができる。よって、アミノ酸濃縮液は、水生生物用のコンクリートの材料として、水の代わりに使用することができるといえる。
セメント量が260kg未満であると、所定の強度が得られず、またセメント量が350kgを超えると、セメント量を増加させることによる効果が得られず、コスト面においても無駄である。このためセメント量は260〜350kgが有効である。
アミノ酸溶液が150kg未満であると、所定の強度が得られず、またアミノ酸溶液が210kgを超えると所定の強度に達しない。このためアミノ酸溶液は、150〜210kgが有効である。
また、アミノ酸溶液のアミノ酸濃度が1.5wt%未満であると、魚礁に用いた場合に後述のようなアミノ酸による水生生物の誘因効果等を得にくい。このためアミノ酸濃度は、1.5wt%以上であることが望ましい。
減水剤がセメント量に対して0.5wt%未満であると、減水剤の効果が得られない。またセメント量に対して4wt%を超えると、減水剤を添加することによる効果が変わらない。このため減水剤は、セメント量の0.5〜4wt%が望ましい。
多機能性硬化剤がセメント量に対して2wt%未満であると、所定の強度が得られない。またセメント量に対して5wt%を超えると、多機能性硬化剤を添加する効果が得られない。このため多機能性硬化剤はセメント量の2〜4wt%が望ましい。
前述した添加物を加え、硬化させると、アミノ酸を0.09wt%以上含有する水生生物用固形化材料が得られる。そして、このような水生生物用固形化材料を魚礁に用いれば、水生生物を誘引したり、水生生物の餌となる微生物の付着を促進させたりすることができる。
また、液状のアミノ酸を水中で使用すると拡散してしまうために効果が短期間で終了してしまうが、アミノ酸をコンクリートに含有させた場合には、コンクリート表面からゆっくりと溶出させることが可能となり、アミノ酸の効果を永続的に発揮させることができる。
アミノ酸を含有したコンクリートを河川の護岸に使用することで、アミノ酸の効果によって植物や微生物の生育環境が良くなり、河川などの植生の改善、環境の向上に役立つ。
アミノ酸による集魚効果は、アミノ酸濃縮液の特性で記述したとおりであるが、その他にアミノ酸コンクリートには水質浄化作用があることから、水質環境を改善する機能がある。
なお、アミノ酸を含有する溶液として、焼酎廃液等の食品廃棄物から得られるアミノ酸だけでなく、植物由来のものから生成するアミノ酸、例えばバイオエタノールの製造時に排出される残渣等の産業廃棄物から抽出するアミノ酸を用いてもよい。また、アミノ酸を濃縮しない液、例えば有機物からアミノ酸の成分を抽出した液及びアミノ酸を溶解させた液を使用してもよい。
(アミノ酸含有量についての実験)
種々の焼酎粕の原液の状態でのアミノ酸含有量と、これらの焼酎粕を培養して生成したアミノ酸濃縮液のアミノ酸含有量とを測定した。この結果を図1に示す。
また、図1に示すように、アミノ酸濃縮液には、焼酎粕原液と比較して17.4程度のアミノ酸が含まれることが判明した。つまり、焼酎粕から生成されるアミノ酸濃縮液1トンに含まれるアミノ酸の量は15.84kgであるのに対して、甘藷焼酎粕では0.91kgであることから、アミノ酸濃縮液には甘藷焼酎粕よりも17.4倍のアミノ酸を含んでいるといえる。また、アミノ酸の種類は18種類に及ぶ。アミノ酸の含有濃度が高いことから、水生生物に対して焼酎粕よりも大きな効果が期待できる。魚類に対するアミノ酸の摂餌促進活性については、単独のアミノ酸よりも複数のアミノ酸の併用によって高い効果が得られることが知られている。魚種別にみるとヨーロッパウナギ、ニホンウナギではアラニン、グリシンなど、マダイではアラニン、グリシン、グルタミン酸など、ブリではアラニン、プロリンなどが摂餌促進活性を持つことが明らかになっている。また頭足類では、マダコがグルタミン酸やグリシンに対して走行性を示すことが明らかになっている。
(付着微生物測定実験)
アミノ酸コンクリートが,富栄養化の原因となる窒素化合物の一種であるアンモニアについて浄化能力を有するかを調べる実験をした。アミノ酸を含有するコンクリートブロック(4cm×4cm×16cm)を、20尾のジャワメダカを含む4リットルの天然海水中で光照射下27℃にて1ヶ月程度静置した。コンクリートブロック表層に形成された生物膜を4cm×16cmの範囲でかき取り、人工海水中に懸濁した。遠心分離により生物膜(バクテリア、付着藻類、微小原生動物などから構成される)の中の微生物を沈殿画分として回収した後、DNAを抽出した。得られたDNAを鋳型に、アンモニア酸化細菌が持つアンモニア酸化遺伝子amoAをPCR増幅し塩基配列を決定した。得られた塩基配列をDNA塩基配列データベースに対する相同性検索(BLASTX)に供した。
この結果、amoAの特異的な増幅が確認された。つまり、この生物膜の中には水質浄化に働くバクテリアを生息させることができ、実験の結果でも、アミノ酸コンクリートの表面には、水質浄化の重要な過程のひとつである硝化に作用するアンモニア酸化細菌が持つアンモニア酸化遺伝子amoAが検出された。
また、図2に示すように、PCR増幅産物の塩基配列は代表的なアンモニア酸化細菌Nitrosomonas属、Nitrosospira属と90%程度の高い相同性を示した。よって、アミノ酸を含有するコンクリートブロックの生物膜には、水質浄化能を持つとされるアンモニア酸化細菌が生息することが示唆された。
(コンクリート強度試験)
コンクリートに含有するアミノ酸の量について、図3に示す3種類の配合で強度試験を実施したところ、図4に示すように、何れも魚礁の設計強度である18N/mm2以上の強度が得られた。このことから、例えば、アミノ酸コンクリートを1m3あたりの製造にあたって、260kg以上の普通セメント、150kg以上のアミノ酸溶液、普通セメントに対し0.5wt%以上の減水剤、普通セメントに対し2wt%以上の多機能性硬化剤を混合すればよいといえる。配合2では、アミノ酸濃縮液の濃度が1.58wt%である(図1参照)。また、図3に示すように、アミノ酸濃縮液の質量は145kgである。従って、アミノ酸成分の質量は2.3kgである。その一方で、配合2の総質量は,2429.4kgである。従って、アミノ酸の含有量が最も少ない配合2におけるアミノ酸の濃度は、コンクリート全体の0.09wt%である。なお、多機能性硬化剤としては、例えば、八光工業株式会社製のYHRを使用することができる。また、高性能減水剤としては、BASFポゾリス株式会社製のレオビルド8000Sを使用することができる。
アミノ酸含有量についての実験の結果を示す図である。 付着微生物測定実験の結果を示す図である。 コンクリート強度試験に用いたコンクリートの配合を示す図である。 コンクリート強度試験の結果を示す図である。

Claims (2)

  1. 0.09wt%以上のアミノ酸と、固化剤とを混合して固形化されている水生生物用固形化材料の製造方法であって、
    アミノ酸を含有する焼酎廃液から、アミノ酸を1.5wt%以上含有する溶液を得る工程と、
    骨材に対し、前記溶液と、少なくとも超速硬化セメント及び普通セメントからなる群から選択された1種以上と、多機能性硬化剤とを混合して固形化する工程と、
    を有し、
    1m 3 の前記水生生物用固形化材料あたり、前記溶液の量を150〜210kgとし、前記超速硬化セメント及び前記普通セメントの総量を260〜350kgとし、前記超速硬化セメント及び前記普通セメントの総量に対して前記多機能性硬化剤の量を2〜5wt%とすることを特徴とする水生生物用固形化材料の製造方法。
  2. 0.09wt%以上のアミノ酸と、固化剤とを混合して固形化されているアミノ酸固形化材料の製造方法であって、
    アミノ酸を含有する焼酎廃液から、アミノ酸を1.5wt%以上含有する溶液を得る工程と、
    前記溶液に、少なくとも超速硬化セメント及び普通セメントからなる群から選択された1種以上と、多機能性硬化剤とを混合して固形化する工程と、
    を有し、
    1m 3 の前記アミノ酸固形化材料あたり、前記溶液の量を150〜210kgとし、前記超速硬化セメント及び前記普通セメントの総量を260〜350kgとし、前記超速硬化セメント及び前記普通セメントの総量に対して前記多機能性硬化剤の量を2〜5wt%とすることを特徴とするアミノ酸固形化材料の製造方法。
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