JP5461231B2 - 太陽電池シートの設置方法 - Google Patents

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Description

本発明は、構造物の壁面、天面、屋上面等に設置できる太陽電池シートおよびその設置方法に関する。
特許文献1の開示によれば、フレキシブル太陽電池モジュールの多くは両面を保護層としてETFE等のフッ素樹脂が積層されているが、一般にフッ素樹脂は濡れ性が悪く、接着剤を塗布して構造物に貼付しても、長期間の接着力の持続は期待できない。
そこで、接着剤塗布面の保護層の表面にコロナ処理、プラズマ処理等の表面処理を行うことにより、接着剤の濡れ性を改善して、長期間の接着力を保持することが可能としている。
また、一般論として、フレキシブルなシート状の材料を接着剤を介して被着体に設置するには、接着剤を介してシート状の材料を被着体に貼付後、それぞれの界面でウキが発生しないように錘等の重量物をシート上に載せ、接着剤が硬化してから取外すことが行われている。
特開平10−284745号公報
特許文献1の技術では、コロナ処理、プラズマ処理等の表面改質を行うことで、濡れ性を高くして接着剤との付着性を向上させている。フレキシブル太陽電池シートは通常、光電素子をサンドイッチするように、フッ素樹脂等のプラスチック材料からなる封止部材により挟持されており、全体の厚みが1mm程度で剛性のあるシートである。このようなシートは、筒状に巻くことが可能で、嵩張らない為、設置する箇所への搬送が容易であるが、筒状に巻かれている為、巻きクセが付いてしまったり、複数の異なる材料を積層している為、それぞれの熱膨張率の違いにより、シートが湾曲したり波打つことがある。また、一般的に、プラスチックシートと接着剤との付着力は、引張り強さおよびせん断強さについては大きいものの、剥離強さついては極端に小さい。接着剤を塗布する面の表面を改善して接着剤との付着力を高めたシートを用いたとしても、長期間屋外に設置した場合には、昼夜や季節による温度変化によるシートの熱膨張や収縮による歪を、接着剤により拘束しきれずに、シートの端部より剥離が発生してしまう。
これらのことに鑑みて、本発明は、コンクリート、金属、プラスチック、FRP、セラミック等からなる被着体に対して、簡便で、確実で、環境条件によらずに品質が安定した太陽電池シートの設置方法とそのための太陽電池シートを提供することを課題とする。
本発明者らが鋭意検討した結果、以下のような本発明を完成した。
(1)光起電力素子と前記素子を挟持する封止部材とを有する略平面状の太陽電池シートであって、当該シートの少なくとも1辺に沿って封止部材を縫うように設けられている糸状物をさらに有し、前記糸状物は当該シートの表裏面を貫通している、太陽電池シート。
(2)糸状物が太陽電池シートの少なくとも2辺に沿って設けられている(1)の太陽電池シート。
(3)太陽電池シートの少なくとも1辺から50mm以内に設けられている糸状物を有する(1)又は(2)の太陽電池シート。
(4)太陽電池シートの一方の面に設けられた金属箔、紙または布帛からなる層をさらに有し、前記層は糸状物によって封止部材に縫い付けられている(1)〜(3)のいずれかの太陽電池シート。
(5)接着剤を介して被着体に太陽電池シートを設置する方法であって、(1)〜(4)のいずれかの太陽電池シートの一方の面にあらわれている糸状物と被着体とが接着剤を介して貼り付けられる、太陽電池のシートの設置方法。
(6)上記接着剤が、エポキシ系接着剤、ウレタン系接着剤、シリコーン系接着剤、ゴム系接着剤、ビニルエステル系接着剤、ポリエステル系接着剤、ポリマーセメント系接着剤、アクリル系接着剤、ポリオレフィン系接着剤および樹脂モルタルからなる群から選ばれる1又はそれ以上である、(5)の設置方法。
(7)太陽電池シートの被着体側の面において、糸状物があらわれていない領域の少なくとも一部に両面テープを貼付して、上記接着剤および両面テープの両方を介して被着体に太陽電池シートを貼り付ける、(5)又は(6)の設置方法。
(8)被着体が既存建築物の壁体である(5)〜(7)のいずれかの設置方法。
本発明によれば、被着体への設置のための接着剤が太陽電池シートの糸状物に吸収され易く、太陽電池シートと被着体との接着強度の向上に寄与する。好ましくは、糸状物が形成するラインにおいて被着体との接着が強固になることにより、前記ラインによるアンカー効果が奏され、太陽電池シートは被着体に十分な接着強度を持って固定され、剥離などが生じにくい。特に、糸状物が太陽電池シートの少なくとも2辺以上に沿って設けられている場合には、太陽電池シートに湾曲や波打ちを発生させようとする力が2本以上の糸状物から接着剤界面と伝わり、その力は、接着強度が極端に低くなる剥離強さとして伝達されず、接着強度が高い、せん断強さ、引張り強さに変換され伝達されて拘束する。
糸状物が太陽電池シートの端部付近部にある場合には、太陽電池シート自体の剛性により、太陽電池シートの端部にまで糸状物のアンカー効果が伝達され、端部の剥離が発生しにくくなる。
太陽電池シートを設置する際に、接着剤を塗布する面の少なくとも一部に両面テープに代表される感圧型接着剤支持体を貼付させておくことによって、接着剤が硬化するまでの仮止めをすることが可能である。このような設置による場合は寿命等の理由により太陽電池シートを撤去する際の工事が容易になる。具体的には、太陽電池シートと被着体とが強固に結合するのは糸状物付近の接着剤使用部位が殆どであるため、糸状物をカッター等の切断工具で切断することによって、容易に撤去できるようになる。
本発明によれば、被着体の種類・形状あるいは設置する環境に応じて、さまざまな材質および粘度の接着剤が選定可能である。被着体がどのような環境においても、確実に容易に太陽電池シートを設置固定することが可能である。
本発明に係る太陽電池シートの模式図である。図1(A)は平面図であり、そのI−II断面図が図1(B)である。 本発明の幾つかの実施形態における、太陽電池シートの平面図である。 本発明の幾つかの実施形態における、太陽電池シートの断面図である。 本発明による太陽電池シートの平面図である。 本発明の好適態様による太陽電池シートの模式図である。 被着体に設置された本発明による太陽電池シートの模式断面図である。 実施例による太陽電池シートの模式図である。 傾斜したコンクリート壁に設置した太陽電池シートの模式断面図である。
図1は、本発明に係る太陽電池シートの模式図である。図1(A)は平面図であり、そのI−II断面図が図1(B)である。本発明によれば、太陽電池シート1は、太陽電池シート1は好ましくはフレキシブル太陽電池シートである。フレキシブル太陽電池シートは、筒状に巻くことができる程度に変形しうるモジュールである。本発明では、フレキシブル太陽電池を例にとる説明も用いるが、必ずしもフレキシブル太陽電池に限定される訳ではない。図1の態様では、太陽電池シート1はフレキシブル太陽電池シートである。太陽電池シート1は、光起電力素子30、封止部材20および糸状物10を有する。添付の図面では糸状物10は点線で表している。
光起電力素子30は、太陽光に代表される光エネルギーを電気エネルギーに変換する素子であり、半導体材料や有機材料から構成されるものが公知であり、それらを特に限定無く用いることができる。光起電力素子30は略平面状に構成され、封止部材20によって挟持されている。換言すると、光起電力素子30の両面および周囲が封止部材20によって囲まれている。光起電力素子30を封止部材20が挟持するように構成することは従来の太陽電池シートにおいて通常行われていることであり、例えば、光起電力素子30よりも大きな2枚のフィルムで、光起電力素子30の両面から挟むように積層し、前記2枚のフィルムを溶着等によって一体化することにより封止部材20を構成することができる。太陽電池シート1がフレキシブル太陽電池シートである場合には、フレキシブルな材料、好適には有機樹脂などで、封止部材20が構成される。
本発明によれば、封止部材20の材質、厚さや形状などは適宜設計することができ、材質としてはETFE等のフッ素樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエステル樹脂などが挙げられる。封止部材20には表面処理などを適宜施して、隣接する層との接着性を高めることが好ましい。樹脂フィルムの表面処理としては、接着剤に対する濡れ性を高めるための金属ナトリウム処理、コロナ処理、プラズマ処理等が挙げられ、さらに他の公知の濡れ性を高める表面改質方法の採用が可能である
本発明で用いる太陽電池シート1は略平面状である。通常、太陽電池シート1が形作る平面の一つの主面が受光面であり、反対側の主面が被着体への設置面となる。これら両主面を本明細書では表面および裏面とも表記する。太陽電池シート1が形作る平面は好ましくは略四角形状であり、より好ましくは、その角部は丸みを帯びている。太陽電池シート1が被着体(図示せず)から剥がれようとする力に対して糸状物10の接着強度が抗力となっているが、四隅は糸状物10から距離が長くなってしまい、抗力が伝達されないことにより、剥がれが発生する恐れがある。さらに、角部に丸みを付与することによって、直角のままである場合に比べて、端部から同じ距離を剥がそうとした場合の面積が大きいため、剥がれ難くなる。
本発明によれば、糸状物10は太陽電池シート1の少なくとも1辺に沿っていて、かつ、当該シート1の表裏面を貫通して封止部材20を縫うように設けられている。糸状物10は接着剤を吸収しやすくする点から好ましくはマルチフィラメントである。マルチフィラメントは複数の繊維(フィラメント)を一本に束ねてなる糸である。マルチフィラメントの使用によって、接着剤が糸に含浸してFRP化し、太陽電池シート1と接着剤との付着強度が高くなる。マルチフィラメントを構成する繊維は、好ましくは、合成繊維、金属繊維、ガラス繊維、炭素繊維などである。糸状物10は、糸、紐、ロープなどの形態であってもよい。
糸状物10の材質が、金属やガラスなどである場合は、長期耐候性に優れる点で好ましい。一方、ミシン縫製によって糸状物10を封止部材20に縫い付ける場合は、伸度が大きい合成繊維からなる糸が好適である。合成繊維からなる糸を用いる場合は、糸状物10に耐候性塗料を塗布して耐候性を向上させてもよい。
糸状物10を縫い付けることにより、封止部材20に表裏面を貫く孔(図示せず)が発生する。この孔に接着剤が硬化する前に空気が入り込むと、糸状物10と接着剤との密着性を損なう恐れがある。そのような懸念を減じるために、その孔に縫製によるミシン目を塞ぐ効果がある目止め材と呼ばれる樹脂を充填したり、接着剤が硬化するまで粘着テープを糸状物10の上に貼り付けて空気の侵入を防ぐこともできる。
糸状物10が存在することによって、本発明の太陽電池シート1を被着体(図示せず)に設置する際に、該シート1の全面に接着剤を塗布する必要が無い。このことを利用して、太陽電池シート1の接着剤塗布面の一部に両面テープ(図示せず)を貼付しておくこともできる。太陽電池シート1に貼付された両面テープの貼付とは反対側の面には剥離フィルムなどを設けておき、太陽電池シート1を作業現場において設置する際に、両面テープが貼付されていない箇所に接着剤を塗布して、この剥離フィルムを剥がして、被着体に設置することができる。こうすることで、接着剤が硬化するまでの間、両面テープが仮止めの役割を担うことになる。
図2は、本発明の幾つかの実施形態における、太陽電池シート1の平面図である。図2(A)では、糸状物10が太陽電池シート1の一辺のみに沿って形成されている。図2(B)および図2(C)では、糸状物10が太陽電池シート1の2辺に沿って形成されている。太陽電池シート1の少なくとも2辺に沿って糸状物10が形成される形態では、外気温度の高低などの原因によって太陽電池シート1に湾曲や波打ちを発生させる力が発生しても、その力は、太陽電池シート1から糸状物10さらには接着剤の界面へと伝わり、接着強度が極端に低くなる剥離強さとして伝達されず、接着強度が高い、せん断強さ、引張り強さに変換されて伝達される。結果として、図2(B)および図2(C)のように、少なくとも太陽電池シート1の2辺に沿って糸状物10が形成されている場合には、太陽電池シート1の剥離防止効果がいっそう高められる。
図3は本発明の幾つかの実施形態における、太陽電池シート1の断面図である。糸状物を封止部材20に縫い付ける好適な手段として、ミシン縫製が挙げられる。図3(A)はミシン縫製により形成された糸状物11および12を有する太陽電池シート1の断面図である。ミシン縫製の場合は、上糸11と下糸12の2本の糸が太陽電池シート1を構成する封止部材20の内部で係合されている。図3(A)の形態では、1本の(例えば上糸11)については封止部材20を貫通していないが、糸状物11および12の組合わせとしてみたときには封止部材20を表裏に貫いており、こういった形態もまた本発明に属するものである。図3(B)は一本の糸状物を有する太陽電池シート1の断面図である。この形態では、手縫いのように一本の糸状物10が太陽電池シートの表面および裏面に交互にあらわれるように縫製されている。
図4は本発明による太陽電池シート1の平面図である。太陽電池シート1は、その少なくとも1辺から好ましくは50mm以内、より好ましくは20mm以内、さらに好ましくは3〜15mmに設けられている糸状物10を有する。太陽電池シート1の1辺から糸状物10までの距離は図中ではL1またはL2で表現される。上記範囲内であれば、太陽電池モジュールの端部の剥離の恐れが低減する。
図5は本発明の好適態様による太陽電池シート1の模式図である。図5(A)は平面図、そのI−II断面図が図5(B)であり、図5(C)は図5(A)とは反対側の平面図(裏面図)である。この太陽電池シートの裏面には金属箔、紙または布帛からなる層40が設けられている。接着剤との付着性が高める為、層40は好ましくは布帛等の単位面積あたりの表面積が大きい材料である。また、層40には、縫製する糸状物10との接合強度を高める為、布やメッシュ等の補強布が積層されていれば、より好適である。太陽電池シート1の裏面側に層40が設けられていて、層40は封止部材20とともに糸状物10によって縫い込まれている。
本発明によれば、布帛は、繊維材料を原料とする平面状の部材であり、いわゆる布状物ということもできる。布帛としては、糸状の繊維材料を織って得られる織布、糸状の繊維材料を編んで得られる編布、繊維材料を接着材料を用いたり繊維材料同士の接着力を用いるなどしてシート状に加工してなる不織布、複数種類の布帛を積層してなる積層布などが挙げられる。布帛を構成する繊維材料(繊維基材)としては、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、ビニロン繊維、ポリオレフィン繊維、ガラス繊維、カーボン繊維、セルロース繊維などが非限定的に挙げられる。これらの繊維は単一種類を用いてもよいし、2種以上を組合わせて用いてもよい。具体的な布帛の例として、ポリエステルやポリエチレンテレフタレート(PET)などに代表される各種合成樹脂からなる不織布や織物(クロス)などを好適に挙げることができる。
図5の態様では、太陽電池シート1の裏面側に設けられた層40は、封止部材20の外側にはみ出すように形成されている。このように前記層40が封止部材20の外側にはみ出していてもよいし、はみ出していなくてもよい。
本発明によれば、上述のような太陽電池シート1を接着剤を用いて被着体に接着させる。図6は被着体に設置された本発明による太陽電池シートの模式断面図である。太陽電池シート1の設置面側と被着体50とが接着剤(図示せず)を介して接着している。このとき、太陽電池シート1の設置面側にあらわれた糸状物10に接着剤が塗布されるようにする。糸状物10は接着剤を吸収しやすく、被着体50との強固な接着が期待される。また、糸状物10が太陽電池シート1の2辺以上に沿って形成されている場合には、設置後の太陽電池シート1に発生する剥離力をせん断力や引張力に変換する作用を担う。
設置用接着剤は、エポキシ系接着剤、ウレタン系接着剤、シリコーン系接着剤、ゴム系接着剤、ビニルエステル系接着剤、ポリエステル系接着剤、ポリマーセメント系接着剤、アクリル系接着剤、ポリオレフィン系接着剤、樹脂モルタルなどから適宜選択することができる。ポリマーセメント系接着剤とは、樹脂エマルジョンが添加されたセメントモルタルであり、樹脂モルタルとは、合成樹脂接着剤と砂が配合されたモルタルである。これらの接着剤は単一の種類を用いてもよいし、複数種類のものを混合して用いてもよい。
設置用接着剤の量は、接着剤、被着体50、糸状物10、封止部材20の種類などに応じて適宜設定される。
太陽電池シート1の設置面側にあられている糸状物10に接着剤が塗布されるようにするということは、(1)設置前の太陽電池シート1の設置面側にあらわれている糸状物10に直接的に接着剤を塗布することに限らず、(2)被着体50の太陽電池シート1を設置しようとする箇所のうち少なくとも糸状物10が接触する箇所に接着剤を塗布することや、(3)接着剤を塗布する前に太陽電池シート1を被着体50に戴置して糸状物10と被着体との間に接着剤を充填することも含む概念である。いずれにせよ、接着剤塗布後の太陽電池シート1については、糸状物10の内部に接着剤がしみ込むように被着体50に押し付けて、残留気泡が無いように貼り合せて接着固定する。接着剤が硬化すると、糸状物10などの繊維材料と相俟ってFRPとなり、設置された太陽電池シート1の強度向上に資する。
上述したように、太陽電池シート1の設置面側の全面に接着剤を塗布する必要は無い。前記設置面の一部に両面テープ(図示せず)を貼付しておく場合には、接着剤が硬化するまでの間は、前記両面テープが仮止めの役割を担う。
本発明によれば、太陽電池シート1を工場などの生産設備の整った環境で作製し、屋外などの設置現場では、該シート1を接着剤を用いて被着体50に設置することが好ましい。
本発明によれば、被着体50は太陽電池シート1を支持するに足る大きさおよび強度を備える物品・部材であれば特に限定はない。新規に建築される建築物の一部を被着体50として、そこに太陽電池シート1を組み込むこともできる。被着体50は既存建築物の壁体であってもよい。新築の際に太陽電池シート1を設置する場合には、その設置を考慮して建築物を設計できるのに対して、既存建築物の場合には、太陽電池シート1の設置を考慮していない場合が殆どであるから、設置のために穿孔することができなかったり、設置のための広い作業スペースが取れなかったりというように、設置環境が必ずしも良好であるとはいえない。本発明の設置方法では、太陽電池シート1の設置が容易であるから、必ずしも設置環境が良好であるとは限らない既存建築物の壁体に対して太陽電池シート1を設置することができる。ここで、壁体は、水平方向、鉛直方向、斜め方向のいずれであってもよい。
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
<屋上面への太陽電池シートの設置>
<使用材料>
フレキシブル太陽電池モジュール:フイルムタイプアモルファス太陽電池(富士電機株式会社製 FWAVE)を用いた。封止部材の材質はETFEである。
糸状物:ステンレス縫製用ミシン糸(日本精線株式会社製 品番12−100/3)
<太陽電池シートの製作>
フレキシブル太陽電池モジュールの端部から10mm〜5mm内側の全周囲に、上記糸状物をミシンで縫製し、ミシン目を目止め剤で封止して、太陽電池シートとした。
<コンクリート製被着体への設置>
設置する屋上面にエポキシプライマーを塗布した。不陸部分をポリマーセメントで修正した。接着剤として1000Pa・s程度の粘度を有するエポキシ接着剤を500g/m塗布した。その後、直ちに、太陽電池シートの糸状物を接着剤に押し付けるようにして、接着剤に被せて施工終了とした。接着剤が硬化養生した後、太陽電池シートの端部を観察した。糸状物と接着剤とが十分に接着しており、ウキ、剥離は認められなかった。
<傾斜面への太陽電池シートの設置>
<使用材料>
フレキシブル太陽電池モジュール:実施例1と同様の、フイルムタイプアモルファス太陽電池(富士電機株式会社製 FWAVE)を用いた。
糸状物:実施例1と同様の、ステンレス縫製用ミシン糸(日本精線株式会社製 品番12−100/3)を用いた。
布帛層:不織布/PEメッシュ/不織布の3層からなるラミネートテープ(50mm幅)を用いた。
両面テープ:発泡体基材両面感圧型接着剤支持体(リンテック株式会社製 TL−505−12W厚さ1.2mm)を用いた。
<太陽電池シートの製作>
図7はこの実施例による太陽電池シートの模式図である。図7(A)は平面図であり、そのI−II断面図が図7(B)であり、図7(C)は図7(A)に表現される面とは反対側の面の模式図(裏面図)である。フレキシブル太陽電池モジュール(太陽電池シート1)の端部から10mm〜5mm内側の全周囲に、糸状物10ステンレス縫製用ミシン糸をミシンで縫製した。このとき、裏面側(図7(C)側)に布帛層40(ラミネートテープ)が太陽電池シート1から約30mmからはみ出すようにして封止部材20とともに糸状物で縫い付けた。裏面側の中央付近に、両面テープ41を布帛層40と重ならないように貼付した。
<コンクリート壁傾斜面への設置>
図8は傾斜したコンクリート壁に設置した太陽電池シートの模式断面図である。被着体であるコンクリート壁50(傾斜面)に、接着剤を使わずに太陽電池シートを仮置きした。このとき、両面テープ41で太陽電池シートを被着体50に貼付した。両面テープ41があるので、傾斜面であっても太陽電池シートは支持されるため、後で用いる接着剤が硬化するまでの短期間であれば、太陽電池シートがズレたり脱落することは無かった。太陽電池の中心付近に両面テープ41を貼付しているので、該テープ41の厚さのために、太陽電池シートの端部付近には被着体との間に隙間が生じた。この隙間に、粘度1000Pa・sのエポキシ系接着剤42を充填した。これによって、接着剤42は糸状物10へ塗布されることになった。傾斜面での施工の場合、接着剤42の硬化前の粘度が低いとダレが生じて、接着剤が必要な箇所から離脱してしまう懸念もある。しかし、本実施例では、布帛層40が封止部材20の外側にはみだしているので、そのはみ出した布帛層40が接着剤42のダレを防止した。布帛層40は単位面積あたりの表面積が大きい為、低粘度の接着剤42を糸状物10の周辺に保持することが可能となっていることも、接着剤42のダレ防止に寄与した。接着剤が硬化養生した後、太陽電池シートの端部を観察した。糸状物10と接着剤42とが十分に接着しており、また、糸状物10は縫製により封止部材20と十分に接合されているから、太陽電池シートが被着体50に十分強固に設置固定されたことが確認できた。
本発明によれば、太陽電池シートを種々の被着体に設置することができ、太陽光発電の利用がさらに促進されることが期待される。
1 太陽電池シート
10、11、12 糸状物
20 封止部材
30 光起電力素子
40 金属箔、紙または布帛からなる層
41 両面テープ
42 接着剤
50 被着体

Claims (7)

  1. 接着剤を介して被着体に太陽電池シートを設置する方法であって、前記太陽電池シートは光起電力素子と前記素子を挟持する封止部材とを有する略平面状であり、前記太陽電池シートの少なくとも1辺に沿って封止部材を縫うように設けられている糸状物をさらに有し、前記糸状物は当該シートの表裏面を貫通していて、
    前記太陽電池シートの一方の面にあらわれている糸状物と被着体とが接着剤を介して貼り付けられる、太陽電池シートの設置方法
  2. 糸状物が太陽電池シートの少なくとも2辺に沿って設けられている請求項1記載の設置方法
  3. 太陽電池シートの少なくとも1辺から50mm以内に設けられている糸状物を有する請求項1又は2記載の設置方法
  4. 太陽電池シートの一方の面に設けられた金属箔、紙または布帛からなる層をさらに有し、前記層は糸状物によって封止部材に縫い付けられている請求項1〜3のいずれか1項に記載の設置方法
  5. 上記接着剤が、エポキシ系接着剤、ウレタン系接着剤、シリコーン系接着剤、ゴム系接着剤、ビニルエステル系接着剤、ポリエステル系接着剤、ポリマーセメント系接着剤、アクリル系接着剤、ポリオレフィン系接着剤および樹脂モルタルからなる群から選ばれる1又はそれ以上である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の設置方法。
  6. 太陽電池シートの被着体側の面において、糸状物があらわれていない領域の少なくとも一部に両面テープを貼付して、上記接着剤および両面テープの両方を介して被着体に太陽電池シートを貼り付ける、請求項1〜5のいずれか1項に記載の設置方法。
  7. 被着体が既存建築物の壁体である請求項1〜6のいずれか1項に記載の設置方法。
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