以下、本発明の実施形態に係るSAW装置について、図面を参照して説明する。なお、以下の説明で用いられる図は模式的なものであり、図面上の寸法比率等は現実のものとは必ずしも一致していない。
また、第2の実施形態以降において、既に説明された実施形態と同一又は類似する構成については、既に説明された実施形態と同一の符号を付すことがあり、また、説明を省略することがある。
符号は、同一又は類似する構成のものについて、「第1出力端子11A、第2出力端子11B」などのように、同一の数字の符号と、互いに異なる大文字のアルファベットの付加符号とを組み合わされたものが使用されることがある。また、この場合において、単に「出力端子11」というなど、名称の頭の番号、及び、上記の付加符号を省略することがあるものとする。
<第1の実施形態>
図1は、本発明の第1の実施形態に係るSAW装置1を示す平面図である。
SAW装置1は、不平衡信号が入力され、その入力された不平衡信号をフィルタリングしつつ、平衡信号に変換し、その平衡信号を出力するフィルタ装置として構成されている。その入力から出力までの過程において、SAW装置1は、電気信号のSAWへの変換、及び、SAWの電気信号への変換も行う。
SAW装置1は、SAWが伝搬する基板3を有している。また、SAW装置1は、基板3の主面3a上において、不平衡信号が入力される入力端子5と、入力された信号をフィルタリングする第1段のSAW素子7及び第2段のSAW素子9と、フィルタリングされた平衡信号を出力する出力端子11とを有している。この他にも、SAW装置1は、SAW素子上に空間を形成しつつSAW素子を覆うカバー等を有するが、図示は省略する。
基板3は、圧電効果を示す圧電体により構成された、いわゆる圧電基板である。圧電体は、例えばLiNbO3やLiTaO3である。なお、基板3の平面形状は適宜に設定されてよい。
SAWは、SAW素子(7、9)に励起されて主面3aを矢印で示す伝搬方向D1において伝搬する。なお、以下では、主面3aに沿う方向であって伝搬方向D1に直交する方向を直交方向D2ということがある。
入力端子5は、主面3aに一つのみ設けられている。入力端子5には、不平衡信号が入力される。
第1段のSAW素子7は、縦結合ダブルモード型の共振子SAWフィルタにより構成されている。具体的には、SAW素子7は、伝搬方向D1に配列された複数のIDT電極17と、これら複数のIDT電極17の列の両端に配置された反射器19とを有している。IDT電極17の数は、例えば、3個である。
各IDT電極17は、1対の櫛歯状電極29を有している。櫛歯状電極29は、伝搬方向D1に延びるバスバー31と、バスバー31から直交方向D2に延びる複数の電極指33とを有している。1対の櫛歯状電極29は、複数の電極指33が互いに噛合うように配置されている。複数の電極指のピッチ(異なるIDT電極17間のピッチを含む)は、全体として概ね一定のピッチとされている。
第1櫛歯状電極29Aは入力端子5側に、第2櫛歯状電極29Bは出力端子11側に配置されている。なお、第2段のSAW素子9や他の実施形態においても、第1櫛歯状電極29Aは入力側の櫛歯状電極を、第2櫛歯状電極29Bは出力側の櫛歯状電極を指すものとする。
複数のIDT電極17のうち、中央に配置された第2IDT電極17Bにおいては、第1櫛歯状電極29Aは入力端子5に接続され、第2櫛歯状電極29Bはグランドに接続されている。また、第2IDT電極17Bの両側に配置された第1IDT電極17A及び第3IDT電極17Cにおいては、第1櫛歯状電極29Aはグランドに接続され、第2櫛歯状電極29Bは第2段のSAW素子9に接続されている。
入力端子5からの不平衡信号sが第2IDT電極17Bにより基板3に印加されると、不平衡信号sがSAWに変換され、伝搬方向D1において伝搬する。第1IDT電極17A及び第3IDT電極17Cは、そのSAWを電気信号に変換して第2段のSAW素子9へ出力する。この過程において、複数の電極指のピッチ(異なるIDT電極17間のピッチを含む)を概ね半波長とする信号が抽出されることにより、フィルタリングが行われる。なお、上記の説明から理解されるように、複数のIDT電極17は、不平衡信号sに基づくSAWの伝搬路において配列されている。
複数の電極指のピッチは、信号の概ね半波長であるから、隣接する電極指33同士は、位相が互いに180°異なる(逆相)信号に対応することになる。図1では、複数の電極指33を黒又は白により色分けすることにより、このような位相の相違を表している。すなわち、黒塗りの複数の電極指33は互いに同一の位相に対応し、白塗りの複数の電極指33は互いに同一の位相に対応し、黒塗りの複数の電極指33が対応する位相と、白塗りの複数の電極指33が対応する位相とは、互いに逆相である。
ここで、第2IDT電極17Bの第1櫛歯状電極29Aの複数の電極指33と、第1IDT電極17Aの第2櫛歯状電極29Bの複数の電極指33との間に配置された、第2IDT電極17Bの第2櫛歯状電極29B及び第1IDT電極17Aの第1櫛歯状電極29Aの電極指33の数は0である。換言すれば、信号が入力される複数の電極指33と信号を出力する複数の電極指33との間に配置された、グランドに接続された電極指33の数は偶数である。
従って、第1IDT電極17Aの第2櫛歯状電極29Bは、第2IDT電極17Bの第1櫛歯状電極29Aに入力された信号とは位相が180°異なる信号を出力する。換言すれば、第1IDT電極17Aは、入力された不平衡信号sの位相を反転した反転信号s1を出力する。
なお、以下では、不平衡信号sが入力される複数の電極指33と反転信号s1を出力する複数の電極指33との間に配置された、グランドに接続された電極指33の数(偶数)を反転用設定数ということがある。
一方、第2IDT電極17Bの第1櫛歯状電極29Aの複数の電極指33と、第3IDT電極17Cの第2櫛歯状電極29Bの複数の電極指33との間に配置された、第2IDT電極17Bの第2櫛歯状電極29B及び第3IDT電極17Cの第1櫛歯状電極29Aの電極指33の数は1である。換言すれば、信号が入力される複数の電極指33と信号を出力する複数の電極指33との間に配置された、グランドに接続された電極指33の数は奇数である。
従って、第3IDT電極17Cの第2櫛歯状電極29Bは、第2IDT電極17Bの第1櫛歯状電極29Aに入力された信号と位相が同一の信号を出力する。換言すれば、第1IDT電極17Cは、入力された不平衡信号sの位相を反転していない非反転信号s0を出力する。
なお、以下では、不平衡信号sが入力される複数の電極指33と非反転信号s0を出力する複数の電極指33との間に配置された、グランドに接続された電極指33の数(奇数)を非反転用設定数ということがある。
このように、第1IDT電極17Aから反転信号s1が出力され、第3IDT電極17Cから非反転信号s0が出力されることは、第1段のSAW素子7が平衡信号を出力することに相当する。すなわち、第1段のSAW素子7は、フィルタリングだけでなく、不平衡信号−平衡信号の変換も行う。
反射器19は、伝搬方向D1に延びる2本のバスバー31と、直交方向D2に延び、2本のバスバー31に掛架される複数の電極指33とを有している。SAWが反射器19間に閉じ込められることにより、第1段のSAW素子7は高いQ値を実現する。
第2段のSAW素子9は、第2段第1部のSAW素子15Aと、第2段第2部のSAW素子15Bとを有している。
第2段第1部のSAW素子15A及び第2段第2部のSAW素子15Bは、それぞれ、第1段のSAW素子7と同様に、縦結合ダブルモード型の共振子SAWフィルタにより構成されている。すなわち、第2段第1部のSAW素子15Aは、伝搬方向D1に配列された複数のIDT電極21と、これら複数のIDT電極21の列の両端に配置された反射器23とを有している。第2段第2部のSAW素子15Bは、伝搬方向D1に配列された複数のIDT電極25と、これら複数のIDT電極25の列の両端に配置された反射器27とを有している。
さらに、第1段のSAW素子7、第2段第1部のSAW素子15A、及び、第2段第2部のSAW素子15Bは、互いに同一又は対称の構成となっている。本実施形態では、第2段第1部のSAW素子15Aは、伝搬方向D1に直交する不図示の対称軸に関して、第1段のSAW素子7と線対称の構成となっている。すなわち、第2段第1部のSAW素子15Aの第1IDT電極21A、第2IDT電極21B及び第3IDT電極21Cは、それぞれ、第1段のSAW素子15Aの第3IDT電極17C、第2IDT電極17B及び第1IDT電極17Aと同一の構成となっている。なお、第2段第1部のSAW素子15Aが、第1段のSAW素子7に対し、第1段のSAW素子7の中心を対称の中心とする点対称の構成となっていてもよい。また、第2段第2部のSAW素子15Bは、第1段のSAW素子7と同一の構成となっている。従って、第1段のSAW素子7、第2段第1部のSAW素子15A、及び、第2段第2部のSAW素子15Bは、例えば、電極指33の寸法、数、ピッチが互いに同一又は対称である。
第2段第1部のSAW素子15Aの複数のIDT電極21のうち、中央に配置された第2IDT電極21Bにおいては、第1櫛歯状電極29Aは第1IDT電極17Aの第2櫛歯状電極29Bに接続され、第2櫛歯状電極29Bはグランドに接続されている。また、第2IDT電極21Bの両側に配置された第1IDT電極21A及び第3IDT電極21Cにおいては、第1櫛歯状電極29Aはグランドに接続され、第2櫛歯状電極29Bは出力端子11に接続されている。
上述のように、第2段第1部のSAW素子15Aは、第1段のSAW素子7と対称の構成であるから、第2段第1部のSAW素子15Aは、第1段のSAW素子7から入力された反転信号s1(不平衡信号)をフィルタリングするとともに、不平衡信号−平衡信号の変換を行う。そして、第2段第1部のSAW素子15Aは、反転信号s1を反転していない反転−非反転信号s10と、反転信号s1を反転した反転−反転信号s11とを出力する。
なお、上記の説明から理解されるように、複数のIDT電極21は、反転信号s1に基づくSAWの伝搬路において配列されている。
また、第2段第1部のSAW素子15Aは、第1段のSAW素子7と対称の構成であるから、位相の反転、非反転に係る電極指の数も、第1段のSAW素子7と同様である。すなわち、反転信号s1が入力される複数の電極指33と反転−反転信号s11を出力する複数の電極指33との間に配置された、グランドに接続された電極指33の数(反転−反転用設定数)は、反転用設定数と同一である。反転信号s1が入力される複数の電極指33と反転−非反転信号s10を出力する複数の電極指33との間に配置された、グランドに接続された電極指33の数(反転−非反転用設定数)は、非反転用設定数と同一である。
第2段第2部のSAW素子15Bの複数のIDT電極25のうち、中央に配置された第2IDT電極25Bにおいては、第1櫛歯状電極29Aは第3IDT電極17Cの第2櫛歯状電極29Bに接続され、第2櫛歯状電極29Bはグランドに接続されている。また、第2IDT電極25Bの両側に配置された第1IDT電極25A及び第3IDT電極25Cにおいては、第1櫛歯状電極29Aはグランドに接続され、第2櫛歯状電極29Bは出力端子11に接続されている。
上述のように、第2段第2部のSAW素子15Bは、第1段のSAW素子7と同様の構成であるから、第2段第2部のSAW素子15Bは、第1段のSAW素子7から入力された非反転信号s0(不平衡信号)をフィルタリングするとともに、不平衡信号−平衡信号の変換を行う。そして、第2段第2部のSAW素子15Bは、非反転信号s0を反転していない非反転−非反転信号s00と、非反転信号s0を反転した非反転−反転信号s01とを出力する。
なお、上記の説明から理解されるように、複数のIDT電極25は、非反転信号s0に基づくSAWの伝搬路において配列されている。
また、第2段第2部のSAW素子15Bは、第1段のSAW素子7と同様の構成であるから、位相の反転、非反転に係る電極指の数も、第1段のSAW素子7と同様である。すなわち、非反転信号s0が入力される複数の電極指33と非反転−反転信号s01を出力する複数の電極指33との間に配置された、グランドに接続された電極指33の数(非反転−反転用設定数)は、反転用設定数と同一である。非反転信号s0が入力される複数の電極指33と非反転−非反転信号s00を出力する複数の電極指33との間に配置された、グランドに接続された電極指33の数(非反転−非反転用設定数)は、非反転用設定数と同一である。
以上のとおり、第2段のSAW素子9からは、反転−非反転信号s10、反転−反転信号s11、非反転−非反転信号s00、非反転−反転信号s01の4つの信号が出力される。
出力端子11は、主面3aに2つ設けられている。第1出力端子11Aは、反転−非反転信号s10と、非反転−反転信号s01とを足し合わせた信号を出力する。第2出力端子11Bは、反転−反転信号s11と、非反転−非反転信号s00とを足し合わせた信号を出力する。
非反転−非反転信号s00は、不平衡信号sの位相を1回も反転していない信号であり、反転−反転信号s11は、不平衡信号sの位相を2回反転した信号であるから、両者は同位相である。一方、非反転−反転信号s01及び反転−非反転信号s10は、いずれも不平衡信号sの位相を1回反転した信号であるから、両者は同位相であり、また、非反転−非反転信号s00及び反転−反転信号s11に対して逆位相である。
従って、第1出力端子11A及び第2出力端子11Bは、平衡信号を出力する平衡出力端子10として機能する。
なお、入力端子5、第1段のSAW素子7、第2段のSAW素子9及び出力端子11の接続は、主面3aに設けられた配線により行われる。具体的には、入力端子5と第2IDT電極17Bとは入力配線35により接続される。第1IDT電極17Aと第2IDT電極21Bとは第1中間配線37Aにより接続される。第1IDT電極17Aと第2IDT電極25Bとは第2中間配線37Bにより接続される。第1IDT電極21A、第1IDT電極25A及び第1出力端子11Aは、第1出力配線39Aにより相互に接続される。第3IDT電極21C、第3IDT電極25C及び第2出力端子11Bは、第2出力配線39Bにより相互に接続される。第1出力配線39Aと第2出力配線39Bとは、不図示の絶縁体を介して立体交差している。
図2(a)及び図2(b)は、SAW装置1の平衡出力信号において位相差が縮小される原理を感覚的に説明する模式図である。
図2(a)は、従来技術のSAW装置を示している。このSAW装置は、実施形態の第1段のSAW素子7のみを有しており、第2段のSAW素子9を有していない。この場合、非反転信号s0及び反転信号s1が平衡信号として出力端子11から出力されることになる。
ここで、不平衡信号sの位相を0°とし、信号の位相を反転するごとに位相にαの誤差が生じると仮定すると、非反転信号s0の位相は0°となり、反転信号s1の位相は180°+αとなる。従って、図2(a)の出力端子11から出力される平衡信号の位相差は180°+αとなる。
図2(b)は、本実施形態のSAW装置1を示している。SAW装置1では、上述のように、第2段のSAW素子9から4つの信号(s00、s01、s10、s11)が出力される。
上述のように、信号の位相を反転するごとに位相にαの誤差が生じると仮定すると、1回も反転されない非反転−非反転信号s00の位相は0°、1回反転された非反転−反転信号s01及び反転−非反転信号s10の位相は180°+α、2回反転された反転−反転信号s11の位相は0°+2αとなる。
そして、非反転−非反転信号s00と反転−反転信号s11とを足し合わせた信号の位相は0°+(0°+2α)となり、非反転−反転信号s01と反転−非反転信号s10とを足し合わせた信号の位相は(180°+α)+(180°+α)となる。そして、両者の位相差[(180°+α)+(180°+α)]−[0°+(0°+2α)]は、誤差同士が相殺され、180°となる。
図3(a)〜図3(e)は、SAW装置1における信号の経時変化を示しており、図3(a)〜図3(e)において、横軸は時間、縦軸は信号レベルである。この図を参照して、位相差の誤差縮小についてより詳細に説明する。
図3(a)は、位相が1回も反転されていない信号、すなわち、不平衡信号s、非反転信号s0、又は、非反転−非反転信号s00の変化を示している。なお、この図に示すように、位相が0〜180°のsin波を例にとってモデル化して説明する(実際の信号の位相は0〜180°ではない)。
図3(b)は、位相が1回反転された信号、すなわち、反転信号s1、非反転−反転信号s01、又は、反転−非反転信号s10の変化を示している。上述のように、図3(b)に示される信号は、1回の位相の反転に伴って、位相にαの誤差を生じている。
図3(c)は、位相が2回反転された信号、すなわち、反転−反転信号s11の変化を示している。上述のように、図3(c)に示される信号は、2回の位相の反転に伴って、位相に2αの誤差を生じている。
図3(d)は、非反転−非反転信号s00と反転−反転信号s11とを足し合わせた信号の変化を示している。すなわち、本実施形態の第2出力端子11Bから出力される信号の変化を示している。図3(d)に示す信号は、ピーク値における位相が図3(a)に示す信号に対してαずれた信号となっている。
図3(e)は、非反転−反転信号s01と反転−非反転信号s10とを足し合わせた信号の変化を示している。すなわち、本実施形態の第1出力端子11Aから出力される信号の変化を示している。図3(e)に示す信号は、ピーク値における位相が図3(a)に示す信号に対して180°+αずれた信号となっている。
従って、図3(d)に示す信号と、図3(e)に示す信号とは、共に、ピーク値における位相が誤差αを含んでいるから、これらの信号の位相差は180°となる。すなわち、位相差が縮小される。
以上の実施形態によれば、SAW装置1は、不平衡信号sが入力され、平衡信号(s0、s1)を出力する第1段のSAW素子7と、第1段のSAW素子7からの平衡信号が入力され、平衡信号(s00、s01、s10、s11)を出力する第2段のSAW素子9と、第2段のSAW素子9からの平衡信号を出力する平衡出力端子10とを有する。第1段のSAW素子7は、不平衡信号sの位相を反転していない非反転信号s0と、不平衡信号sの位相を1回反転した反転信号s1とを出力する。第2段のSAW素子9は、非反転信号s0の位相を反転していない非反転−非反転信号s00と、非反転信号s0の位相を1回反転した非反転−反転信号s01と、反転信号s1の位相を反転していない反転−非反転信号s10と、反転信号s1の位相を1回反転した反転−反転信号s11とを出力する。平衡出力端子10は、非反転−反転信号s01と反転−非反転信号s10とを足し合わせた信号(s01+s10)を出力する第1出力端子11Aと、非反転−非反転信号s00と反転−反転信号s11とを足し合わせた信号(s00+s11)を出力する第2出力端子11Bとを有する。
従って、図2及び図3を参照して説明したように、不平衡信号sをフィルタリングして平衡信号を出力するに際し、位相差における誤差を縮小することができる。しかも、第2段のSAW素子9における4つの信号間において誤差を相殺することから、位相差の誤差縮小専用のフィルタを設けるようなことがなく、構成が簡素である。
第2段のSAW素子9は、第2段第1部のSAW素子15Aと、第2段第2部のSAW素子15Bとを有している。第2段第1部のSAW素子15Aは、反転信号s1に基づくSAWの伝搬路に沿って配列された複数のIDT電極21と、複数のIDT電極21の列の両端に配置された反射器23とを有し、反転信号s1が入力され、反転−非反転信号s10と、反転−反転信号s11とを出力する。第2段第2部のSAW素子15Bは、非反転信号s0に基づくSAWの伝搬路に沿って配列された複数のIDT電極25と、複数のIDT電極25の列の両端に配置された反射器27とを有し、非反転信号s0が入力され、非反転−非反転信号s00と、非反転−反転信号s01とを出力する。
すなわち、第2段のSAW素子9は、2つのSAW素子を組み合わせて構成されている。従って、反転信号s1に基づくSAWと、非反転信号s0に基づくSAWとの相互干渉を抑制することが容易であり、設計が簡単である。また、4つの出力信号に関するフィルタリング特性を適宜に調整することも容易である。
第1段のSAW素子7においては、不平衡信号sが入力される第2IDT電極17Bと、非反転信号s0を出力する第3IDT電極17Cと、反転信号s1を出力する第1IDT電極17Aとが、不平衡信号sに基づくSAWの伝搬路において反射器を挟まずに配列されている。従って、第1段のSAW素子7は、簡素な構成である。
反転用設定数と、反転−反転用設定数と、非反転−反転用設定数とは互いに同一であり、非反転用設定数と、反転−非反転用設定数と、非反転−非反転用設定数とは互いに同一である。誤差αは、これらの設定数に影響を受けると推測されるところ、これらの設定数が上述のように同一であることにより、図2及び図3を参照して説明した誤差αの相殺の効果が得られやすくなることが期待される。
第1段のSAW素子7と、第2段第1部のSAW素子15Aと、第2段第2部のSAW素子15Bとは、同一又は対称の構成である。従って、図2及び図3を参照して説明した誤差αの相殺の効果が更に得られやすくなることが期待される。
<第2の実施形態>
図4は、本発明の第2の実施形態に係るSAW装置101を示す平面図である。なお、第2の実施形態以降の実施形態の平面図においては、基板3の図示は省略するものとする。
SAW装置101は、第1段のSAW素子107の構成が第1の実施形態の第1段のSAW素子7の構成と相違する。具体的には、以下のとおりである。
第1段のSAW素子107は、第1段第1部のSAW素子113Aと、第1段第2部のSAW素子113Bとを有している。
第1段第1部のSAW素子113A及び第1段第2部のSAW素子113Bそれぞれは、不平衡信号を出力するように構成されている。そして、第1段第1部のSAW素子113Aと、第1段第2部のSAW素子113Bとで、互いに逆相の不平衡信号を出力することにより、第1段のSAW素子107全体としては、平衡信号を出力するように構成されている。具体的には、以下のとおりである。
第1段第1部のSAW素子113A及び第1段第2部のSAW素子113Bは、それぞれ、縦結合ダブルモード型のSAWフィルタにより構成されている。すなわち、第1段第1部のSAW素子113Aは、伝搬方向D1に配列された複数のIDT電極117と、複数のIDT電極117の列の両端に配置された反射器19とを有している。第1段第2部のSAW素子113Bは、伝搬方向D1に配列された複数のIDT電極118と、複数のIDT電極118の列の両端に配置された反射器19とを有している。なお、本実施形態では、IDT電極117の数は3であり、IDT電極118の数は3である。
第1段第1部のSAW素子113Aにおいて、中央に配置された第2IDT電極117Bの第1櫛歯状電極29Aは、入力端子5に接続されている。第2IDT電極117Bの両側に配置された第1IDT電極117A及び第3IDT電極117Cの第2櫛歯状電極29Bは、共に、第2段1部のSAW素子15Aの第2IDT電極21Bに接続されている。
また、第2IDT電極117Bの第1櫛歯状電極29Aの複数の電極指33と、第1IDT電極117Aの第2櫛歯状電極29Bの複数の電極指33との間に配置された、グランドに接続された電極指33の数は0(偶数)である。同様に、第2IDT電極117Bの第1櫛歯状電極29Aの複数の電極指33と、第3IDT電極117Cの第2櫛歯状電極29Bの複数の電極指33との間に配置された、グランドに接続された電極指33の数は0(偶数)である。
従って、第1IDT電極117Aの第2櫛歯状電極29B及び第3IDT電極117Cの第2櫛歯状電極29Bは、共に、反転信号s1を出力する。そして、第1IDT電極117A及び第3IDT電極117Cから出力された反転信号s1は、足し合わされ、第2IDT電極21Bに入力される。
一方、第1段第2部のSAW素子113Bにおいて、中央に配置された第2IDT電極118Bの第1櫛歯状電極29Aは、入力端子5に接続されている。第2IDT電極118Bの両側に配置された第1IDT電極118A及び第3IDT電極118Cの第2櫛歯状電極29Bは、共に、第2段第2部のSAW素子15Bの第2IDT電極25Bに接続されている。
また、第2IDT電極118Bの第1櫛歯状電極29Aの複数の電極指33と、第1IDT電極118Aの第2櫛歯状電極29Bの複数の電極指33との間に配置された、グランドに接続された電極指33の数は1(奇数)である。同様に、第2IDT電極118Bの第1櫛歯状電極29Aの複数の電極指33と、第3IDT電極118Cの第2櫛歯状電極29Bの複数の電極指33との間に配置された、グランドに接続された電極指33の数は1(奇数)である。
従って、第1IDT電極118Aの第2櫛歯状電極29B及び第3IDT電極118Cの第2櫛歯状電極29Bは、共に、非反転信号s0を出力する。そして、第1IDT電極118A及び第3IDT電極118Cから出力された非反転信号s0は、足し合わされ、第2IDT電極25Bに入力される。
なお、第2段のSAW素子9の構成、第2段のSAW素子9における非反転信号s0及び反転信号s1の入力位置、並びに、第2段のSAW素子9の平衡出力端子10への接続方法は、第1の実施形態と同様である。
以上の第2の実施形態によれば、第1の実施形態と同様に、不平衡信号sをフィルタリングして平衡信号を出力するに際し、位相差における誤差を縮小することができる。
また、SAW装置101は、第1段第1部のSAW素子113Aと、第1段第2部のSAW素子113Bとを有する。第1段第1部のSAW素子113Aは、不平衡信号sに基づくSAWの伝搬路に沿って配列された複数のIDT電極117と、複数のIDT電極117の列の両端に配置された反射器19とを有し、非反転信号s0を出力する。第1段第2部のSAW素子113Bは、不平衡信号sに基づくSAWの伝搬路に沿って配列された複数のIDT電極118と、複数のIDT電極118の列の両端に配置された反射器19とを有し、反転信号s1を出力する。
従って、反転信号s1と非反転信号s0とは、それぞれ別個のSAW素子により生成される。その結果、例えば、フィルタリング特性を適宜に調整することが容易化される。
<第3の実施形態>
図5は、本発明の第3の実施形態に係るSAW装置201を示す平面図である。
SAW装置201は、第1及び第2の実施形態と同様に、縦接続された2段のSAW素子を有している。SAW装置201の第1段のSAW素子107の構成は、第2の実施形態と同様である。
第2段のSAW素子209は、第2段第1部のSAW素子215Aと、第2段第2部のSAW素子215Bとを有している。
第2段第1部のSAW素子215Aは、第1の実施形態の第2段第1部のSAW素子15Aとは異なり、2つの反転信号s1が並行に入力される。同様に、第2段第2部のSAW素子215Bは、第1の実施形態の第2段第2部のSAW素子15Bとは異なり、2つの非反転信号s0が並行に入力される。
ただし、第2段第1部のSAW素子215Aは、第2段第1部のSAW素子15Aと同様に、反転−非反転信号s10及び反転−反転信号s11を出力する。また、第2段第2部のSAW素子215Bは、第2段第2部のSAW素子15Bと同様に、非反転−非反転信号s00及び非反転−反転信号s01を出力する。具体的には、以下のとおりである。
第2段第1部のSAW素子215A及び第2段第2部のSAW素子215Bは、それぞれ、縦結合ダブルモード型のSAWフィルタにより構成されている。すなわち、第2段第1部のSAW素子215Aは、伝搬方向D1に配列された複数のIDT電極221と、複数のIDT電極221の列の両端に配置された反射器23とを有している。第2段第2部のSAW素子215Bは、伝搬方向D1に配列された複数のIDT電極225と、複数のIDT電極225の列の両端に配置された反射器27とを有している。
第2段第1部のSAW素子215Aは、4つのIDT電極221を有している。列の両端のIDT電極221A及び221Dは、第1IDT電極117A及び第3IDT電極117Cに並列に接続されている。すなわち、両端のIDT電極221A及び221Dは、反転信号s1が並行に入力される。
また、列の中央側に配置されたIDT電極221B及び221Cは、平衡出力端子10に接続されている。すなわち、信号が入力されるIDT電極221A及び221Dに隣接するIDT電極221B及び221Cは、平衡信号を出力する。
信号が入力されるIDT電極と、当該IDT電極に隣接し、信号を出力するIDT電極との間の信号の位相の非反転又は反転は、第1の実施形態において説明したように、信号が入力される複数の電極指33と、信号を出力する複数の電極指33との間に配置され、グランドに接続される電極指33の数が奇数又は偶数に設定されることにより実現される。
具体的には、第1IDT電極221Aと第2IDT電極221Bとの間の本数は1本(奇数)、第3IDT電極221Cと第4IDT電極221Dとの間の本数は2本(偶数)となっている。
また、列の中央の2つのIDT電極221B及び221Cにおいては、信号を出力する複数の電極指33と、信号を出力する複数の電極指33との間に配置され、グランドに接続される電極指33の数は、偶数に設定されており、SAWが互いに打ち消し合わないように設定されている。
従って、第2IDT電極221Bは、反転信号s1の位相を反転していない反転−非反転信号s10を出力し、第3IDT電極221Cは、反転信号s1の位相を反転した反転−反転信号s11を出力する。
同様に、第2段第2部のSAW素子215Bは、4つのIDT電極221を有し、列の両端のIDT電極225A及び225Dは、非反転信号s0が入力されるIDT電極となっており、列の中央側に配置されたIDT電極225B及び225Cは、平衡信号を出力するIDT電極となっている。
位相の非反転又は反転に係る、グランドに接続された電極指33の数については、第1IDT電極225Aと第2IDT電極225Bとの間の本数は2本(偶数)、第3IDT電極225Cと第4IDT電極225Dとの間の本数は1本(奇数)となっている。
また、列の中央の2つのIDT電極225B及び225C間における、グランドに接続される電極指33の数は、第2段第1部のSAW素子215Aと同様に、偶数に設定されており、SAWが互いに打ち消し合わないように設定されている。
従って、第2IDT電極225Bは、非反転信号s0の位相を反転していない非反転−非反転信号s00を出力し、第3IDT電極225Cは、非反転信号s0の位相を反転した非反転−反転信号s01を出力する。
以上のように、第3の実施形態の第2段のSAW素子209においても、反転−非反転信号s10、反転−反転信号s11、非反転−非反転信号s00、非反転−反転信号s01の4つの信号が出力される。4つの信号は、第1の実施形態と同様の組み合わせで足し合わされ、平衡出力端子10に出力される。
以上の第3の実施形態によれば、第1の実施形態と同様に、不平衡信号sをフィルタリングして平衡信号を出力するに際し、位相差における誤差を縮小することができる。
<第4の実施形態>
図6は、本発明の第4の実施形態に係るSAW装置301を示す平面図である。
SAW装置301の第1段のSAW素子307は、第1の実施形態の第1段のSAW素子7と同様に、不平衡信号が入力され、平衡信号を出力する縦結合ダブルモード型SAWフィルタである。ただし、第1の実施形態の第1段のSAW素子7においては、IDT電極17の数が3つであったのに対し、第2の実施形態の第1段のSAW素子307においては、IDT電極317の数が5つとなっている。
入力端子5は、5つのIDT電極317のうち、中央及び両端のIDT電極317A、317C及び317Eに対して並列に接続されている。すなわち、不平衡信号sは、一つ置きに配置された複数のIDT電極317A、317C及び317Eに入力される。
その不平衡信号sが入力されるIDT電極317間に配置されたIDT電極317B及び317Dは、第2段のSAW素子309に対して並列に接続されている。すなわち、これらのIDT電極317B及び317Dは、フィルタリング後の平衡信号を第2段のSAW素子309に出力する。
第1段のSAW素子307においても、第1の実施形態と同様に、信号が入力される複数の電極指33と、信号を出力する複数の電極指33との間に配置され、グランドに接続される電極指33が偶数又は奇数に設定されることにより、位相の反転又は非反転が実現される。
具体的には、5つのIDT電極317の各電極間における、グランドに接続される電極指33の数は、第1IDT電極317A側から順に、2(偶数)、0(偶数)、1(奇数)、1(奇数)となっている。
従って、グランドに接続された偶数本の電極指33を介在させて第1IDT電極317A及び第3IDT電極317Cに挟まれた第2IDT電極317Bは、反転信号s1を出力する。一方、グランドに接続された奇数本の電極指33を介在させて第3IDT電極317C及び第5IDT電極317Eに挟まれた第4IDT電極317Dは、非反転信号s0を出力する。
第2段のSAW素子309は、反転信号s1及び非反転信号s0の双方が入力される。ただし、第2段のSAW素子309は、他の実施形態の第2段のSAW素子と同様に、反転−非反転信号s10、反転−反転信号s11、非反転−非反転信号s00及び非反転−反転信号s01の4つの信号を出力する。具体的には、以下のとおりである。
第2段のSAW素子309は、縦結合ダブルモード型のSAWフィルタにより構成されている。すなわち、第2段のSAW素子309は、伝搬方向D1に配列された複数のIDT電極321と、複数のIDT電極321の列の両端に配置された反射器23とを有している。複数のIDT電極321の数は、例えば、5個である。
両側の4つのIDT電極321A、321B、321D及び321Eは、他の実施形態と同様に、互いに概ね同等の大きさを有する第1櫛歯状電極29A及び第2櫛歯状電極29Bを有している。
一方、中央のIDT電極321Cは、共通櫛歯状電極30Aと、第1分割櫛歯状電極30Baと、第2分割櫛歯状電極30Bbとを有している。第1分割櫛歯状電極30Ba及び第2分割櫛歯状電極30Bbは、伝搬方向D1における大きさが概ね共通櫛歯状電極30Aの伝搬方向D1における大きさの半分となっている。そして、第1分割櫛歯状電極30Ba及び第2分割櫛歯状電極30Bbは、それぞれ共通櫛歯状電極30Aと電極指33が噛み合うように配置されている。
なお、第3IDT電極321Cは、2つのIDT電極から構成されていると捉えることもできる。
第2IDT電極321Bは、第2IDT電極317Bに接続されており、反転信号s1が入力される。また、第4IDT電極321Dは、第4IDT電極317Dに接続されており、非反転信号s0が入力される。
上記の信号が入力されるIDT電極321B及び321Dに隣接して配置されたIDT電極321A、321C、321Eは、平衡出力端子10に接続されており、平衡信号を出力するIDT電極となっている。
第3IDT電極321Cにおいて、第1分割櫛歯状電極30Ba及び第2分割櫛歯状電極30Bbは、それぞれ、別個の出力端子11に接続され、信号を出力する櫛歯状電極となっている。
本実施形態においても、信号が入力される複数の電極指33と、信号が出力される複数の電極指33との間に配置された、グランドに接続される電極指33の数が奇数又は偶数に設定されることにより、位相の反転又は非反転が実現される。
具体的には、第1IDT電極321Aの第2櫛歯状電極29B、第2IDT電極321Bの第1櫛歯状電極29A、及び、第3IDT電極321Cの第1分割櫛歯状電極30Baの間の本数は、順に、1本(奇数)、0本(偶数)となっている。また、第3IDT電極321Cの第2分割櫛歯状電極30Bb、第4IDT電極321Dの第1櫛歯状電極29A、及び、第5IDT電極321Eの第2櫛歯状電極29Bの間の本数は、順に、0本(偶数)、1本(奇数)となっている。
また、第1分割櫛歯状電極30Baと、第2分割櫛歯状電極30Bbとの間における、グランドに接続される電極指33の数は、偶数に設定されており、SAWが互いに打ち消し合わないように設定されている。
従って、第1IDT電極321Aは反転−非反転信号s10を出力し、第1分割櫛歯状電極30Baは反転−反転信号s11を出力し、第2分割櫛歯状電極30Bbは非反転−反転信号s01を出力し、第5IDT電極321Eは非反転−非反転信号s00を出力する。4つの信号は、第1の実施形態と同様の組み合わせで足し合わされ、平衡出力端子10に出力される。
以上の第4の実施形態によれば、第1の実施形態と同様に、不平衡信号sをフィルタリングして平衡信号を出力するに際し、位相差における誤差を縮小することができる。
第2段のSAW素子309においては、反転信号s1が入力される第2IDT電極321Bと、反転−非反転信号s10を出力する第1IDT電極321Aと、反転−反転信号s11を出力する第3IDT電極321Cと、非反転信号s0が入力される第4IDT電極321Dと、非反転−非反転信号s00を出力する第5IDT電極321Eと、非反転−反転信号s01を出力する第3IDT電極321Cとが、反転信号s1及び非反転信号s0に基づくSAWの伝搬路において反射器23を挟まずに配列されている。
すなわち、第2段のSAW素子309は、一のSAW素子により構成されており、反射器23の数が減じられた分、SAW装置の小型化が図られる。
<実施例及び比較例>
実施形態に係るSAW装置に関し、寸法などを具体的に設定し、フィルタ特性を調べるシミュレーションを行った。以下に、シミュレーションの条件及び結果を例示する。
(実施例1及び比較例1)
実施例1の概略構成は、図1に示した第1の実施形態のSAW装置1と同様である。
図7は、実施例1における各種の寸法を示す図表である。
図7において、「電極」の欄は、図1に示すIDT電極及び反射器の符号を示している。そして、当該欄の右側の各種の欄には、各IDT電極又は反射器毎の寸法が示されている。「交差幅」の欄は、図1において符号CWで示すように、互いに噛み合う電極指33の直交方向D2における重複量を示している。「電極比率」の欄は、伝搬方向D1における、IDT電極全体の大きさ(電極指33の非配置位置含む)に対する電極指33の占有率を示している。「電極本数」の欄は、電極指33の数を示している。
複数の電極指33は、フィルタ特性向上の観点から、各IDT電極の伝搬方向D1の端部(IDT電極間となる領域)において、ピッチが狭くなるように配置されることが好ましい。実施例1においても、そのような電極指33の配置が仮定された。そして、「広いピッチの本数」は、ピッチが狭く設定されなかった電極指33の本数を示している。「広いピッチの平均値」は、その「広いピッチの本数」の電極指33におけるピッチの平均値を示している。「狭いピッチの本数」は、ピッチが狭く設定された電極指33の本数を示している。「狭いピッチの平均値」は、その「狭いピッチの本数」の電極指33におけるピッチの平均値を示している。
図8は、比較例1に係るSAW装置801の構成を示す平面図である。
SAW装置801は、第1段のSAW素子807及び第2段のSAW素子809を有している。そして、入力端子5からの不平衡信号sをフィルタリングし、非反転−非反転信号s00と、反転−非反転信号s10とを平衡信号として平衡出力端子10に出力する。
第1段のSAW素子807は、第1IDT電極817A〜第3IDT電極817C、第1反射器819A及び第2反射器819Bを有している。第2段のSAW素子809は、第1IDT電極821A〜第3IDT電極821C、第1反射器823A及び第2反射器823Bを有している。第2IDT電極821Bは、共通櫛歯状電極830Aと、第1分割櫛歯状電極830Baと、第2分割櫛歯状電極830Bbとを有している。
図9は、比較例1における各種の寸法を示す図表である。図9において、「電極」の欄は、図8に示すIDT電極、櫛歯状電極及び反射器の符号を示している。他の欄については、図7と同様である。
図10(a)〜図10(c)は、実施例1及び比較例1のSAW装置の電気特性を示している。図10(a)〜図10(c)において、横軸は周波数を示している。図10(a)において、縦軸は通過特性を示している。図10(b)において、縦軸は、平衡信号を構成する2つの信号の振幅の差(振幅平衡度)を示している。図10(c)において、縦軸は、平衡信号を構成する2つの信号の位相差の誤差α(位相差−180°、位相平衡度)を示している。実線L1は、実施例1の電気特性を示し、点線L2は、比較例1の電気特性を示している。実施例1及び比較例1においては、通過帯域として、843〜875Hzが想定されている。
図10(b)及び図10(c)より、実施例1は、比較例1に対して、平衡度が改善されていることが容易に見て取れる。より具体的には、所望される通過帯域において、比較例1の振幅平衡度が最大で1.2dBであるのに対して、実施例1の振幅平衡度は最大で0.3dBとなっている。また、所望される通過帯域において、比較例1の位相平衡度が最大で3.2°であるのに対して、実施例1の位相平衡度は最大で2.8°となっている。なお、通過特性については、実施例1と比較例1とで有意な差は見られなかった。換言すれば、実施例1のSAW装置は、通過特性を劣化させることなく振幅平衡度および位相平衡度を改善することができる。
(実施例2及び比較例2)
実施例2の概略構成は、図6に示した第4の実施形態のSAW装置301と同様である。なお、実施例2における各種の寸法は、図7及び図9に示すものと大きくは違わない。
図11は、比較例2に係るSAW装置901の構成を示す平面図である。
SAW装置901は、第1段のSAW素子307及び第2段のSAW素子909を有している。SAW装置901の第1段のSAW素子307の構成は、実施例2の第1段のSAW素子307の構成と同様である。
SAW装置901の第2段のSAW素子909の構成は、実施例2の第2段のSAW素子309の構成と類似している。ただし、SAW素子909は、位相の反転又は非反転に係る、グランドに接続される電極指33の本数の設定が実施例2とは相違する。また、SAW素子909は、平衡出力端子10への接続配線の構成も実施例2と相違する。
その結果、第2段のSAW素子909では、2つの反転−非反転信号s10が足し合わされた信号が第1出力端子11Aに出力され、2つの非反転−非反転信号s00が足し合わされた信号が第2出力端子11Bに出力される。
図12(a)〜図12(c)は、実施例2及び比較例2のSAW装置の電気特性を示す、図10(a)〜図10(c)と同様の図である。実線L3は、実施例2の電気特性を示し、点線L4は、比較例2の電気特性を示している。
図12(b)及び図12(c)より、実施例2は、比較例2に対して、平衡度が改善されていることが容易に見て取れる。より具体的には、所望される通過帯域において、比較例2の振幅平衡度が最大で0.75dBであるのに対して、実施例2の振幅平衡度は最大で0.3dBとなっている。また、所望される通過帯域において、比較例2の位相平衡度が最大で6.1°であるのに対して、実施例2の位相平衡度は最大で1.7°となっている。なお、通過特性については、実施例2と比較例2とで有意な差は見られなかった。換言すれば、実施例2のSAW装置は、通過特性を劣化させることなく振幅平衡度および位相平衡度を改善することができる。
本発明は、以上の実施形態に限定されず、種々の態様で実施されてよい。
SAW素子は、2段だけでなく、3段以上設けられてもよい。2段のSAWフィルタの入力側又は出力側にSAW共振子が配置されてもよい。