JP5460881B2 - モータ駆動回路 - Google Patents

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Description

本発明は、モータ駆動回路に関する。
従来技術として、下記特許文献1に示される電源回路では、コモンモードチョークコイルと、ライン・バイパス・コンデンサ(いわゆる「Yコンデンサ」)とを有するフィルタにおいて、2つのYコンデンサのそれぞれが接続されるべきシャーシグラウンドとの間にインダクタンス素子をそれぞれ挿入し、且つ、当該インダクタンス素子同士の接続端をシャーシグラウンドに接続する回路構成が開示されている。この電源回路によれば、Yコンデンサとインダクタンスとの共振周波数により減衰周波数を有するフィルタを構成でき、不要電磁波を低減することができるとされている。
特開2008−182784号公報
しかしながら、モータをPWM駆動するモータ駆動回路の場合、キャリア周波数の高調波ノイズ成分に帯域幅があるため、Yコンデンサとインダクタンス素子とからなる帯域遮断フィルタでは帯域幅が狭くなり、ノイズを十分に除去できない場合があるという課題があった。
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、回路規模を増大させることなく、帯域幅のある高調波ノイズ成分を充分に抑制することができるモータ駆動回路を提供することを目的とする。
上述した課題を解決し、目的を達成するため、本発明は、交流モータをPWM駆動するモータ駆動回路において、交流電源からの電力を整流する整流回路と、前記整流回路の出力を平滑化して保持する直流中間回路と、前記直流中間回路に保持された直流電力に基づき前記交流モータへの印加電圧をPWM制御するインバータ回路と、前記交流電源と前記整流回路との間に挿入されるフィルタ回路と、を備え、前記フィルタ回路は、前記PWM制御を行うか否かに関わらず発生し得る高調波ノイズを低減するノイズフィルタと、前記PWM制御によって発生し得る帯域幅のある高調波ノイズを低減する帯域遮断フィルタと、を備えたことを特徴とする。
この発明によれば、回路規模を増大させることなく、帯域幅のある高調波ノイズ成分を充分に抑制することができるという効果を奏する。
図1は、実施の形態1に係るモータ駆動回路の一構成例を示す図である。 図2は、PWM制御を行う際にモータ駆動回路の内部で発生し得る高調波ノイズを説明する図である。 図3は、LCR直列回路の挿入損失特性の一例を示す図である。 図4は、ノイズフィルタと帯域遮断フィルタとの間の機能分担を説明する図である。 図5は、実施の形態1に係るモータ駆動回路の他の構成例を示す図である。 図6は、実施の形態2に係るモータ駆動回路の一構成例を示す図である。 図7は、第1のシミュレーションに係るフィルタ回路部の回路定数の一例を示す図である。 図8は、第1のシミュレーションに係る第1のフィルタ回路での挿入損失特性を示す図である。 図9は、第1のシミュレーションに係る第2のフィルタ回路での挿入損失特性を示す図である。 図10は、第1のシミュレーションに係るフィルタ回路部全体での挿入損失特性を示す図である。 図11は、第2のシミュレーションに係る第2のフィルタ回路での回路定数の一例を示す図である。 図12は、第2のシミュレーションに係る第2のフィルタ回路での挿入損失特性を示す図である。 図13は、第2のシミュレーションに係るフィルタ回路部全体での総合挿入損失特性を示す図である。 図14は、第3のシミュレーションに係る2つの第2のフィルタ回路での挿入損失特性(挿入損失が最大となる周波数差:0%)を示す図である。 図15は、第3のシミュレーションに係る2つの第2のフィルタ回路での挿入損失特性(挿入損失が最大となる周波数差:2.5%)を示す図である。 図16は、第3のシミュレーションに係る2つの第2のフィルタ回路での挿入損失特性(挿入損失が最大となる周波数差:5%)を示す図である。
以下に添付図面を参照し、本発明の実施の形態にかかるモータ駆動回路について説明する。なお、以下に示す実施の形態により本発明が限定されるものではない。
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係るモータ駆動回路の一構成例を示す図である。実施の形態1に係るモータ駆動回路は、図1に示すように、フィルタ回路2、整流回路3、直流中間回路4およびインバータ回路5を備えて構成される。このモータ駆動回路では、交流電源(図1では、三相交流電源1を例示)からの電力が整流回路3にて整流され、直流中間回路4にて平滑化される。平滑化された直流電力は、インバータ回路5にて所望電圧および所望周波数の交流電力に変換され、インバータ回路5の出力端(交流出力端)に接続される交流モータ6(図1では三相誘導電動機(IM)を例示)に供給され、交流モータ6がPWM駆動される。
フィルタ回路2は、三相交流電源1に接続されるノイズフィルタ21および、ノイズフィルタ21の後段に配置される帯域遮断フィルタ22を備えて構成される。
ノイズフィルタ21には、アクロス・ザ・ライン・コンデンサ(いわゆる「Xコンデンサ」)を各相間に接続してなる第1回路部24、コモンモードチョークを各相に挿入してなる第2回路部25および、一端が各相に接続される3つのYコンデンサの各他端をフレームグラウンド(FG)に接続してなる第3回路部26が設けられている。
帯域遮断フィルタ22は、一端が三相交流電源1と整流回路3とを繋ぐ各相電源線に接続され、各他端同士が相互に接続される3つのYコンデンサ(単相交流電源の場合には2つのYコンデンサ)と、当該3つのYコンデンサの接続端とフレームグラウンド(FG)との間に挿入される抵抗素子およびインダクタンス素子による直列接続回路とを備えて構成される。
なお、図1では、抵抗素子およびインダクタンス素子の直列接続回路がフレームグラウンドに接続される構成を示しているが、フレームグラウンドと同電位の端子に接続しても構わない。
また、図1では帯域遮断フィルタ22をノイズフィルタ21における第3回路部26の後段に配置しているが、第3回路部26の前段に配置しても構わない。
整流回路3は、ダイオード素子31をフルブリッジ型に接続して構成される。整流回路3の後段に配置される直流中間回路4は、平滑コンデンサ32を備えて構成される。直流中間回路4の後段に配置されるインバータ回路5は、トランジスタ素子とダイオード素子とが逆並列に接続されたスイッチング素子33を直列に接続したアーム回路(レグ)が構成され、このアーム回路を並列に3個(三相モータの場合)接続して構成される。
つぎに、実施の形態1にかかるモータ駆動回路の要旨について図1〜図4の図面を参照して説明する。ここで、図2は、PWM制御を行う際にモータ駆動回路の内部で発生し得る高調波ノイズを説明する図であり、図3は、LCR直列回路の挿入損失特性の一例を示す図であり、図4は、ノイズフィルタ21と帯域遮断フィルタ22との間の機能分担を説明する図である。
まず、基本的な点として、デューティ50%のパルス波形をフーリエ級数に展開すると基本波成分の他に3次、5次、7次、・・・という奇数次の高調波ノイズ成分(基本波の奇数倍の成分)のみが現れ、偶数次の高調波ノイズ成分は現れない。また、パルス周期を変更せずにデューティ比の比率のみを変更した繰り返し波形の場合、高調波ノイズ成分が大きくなる次数は変わってくるが、ノイズピークの出現間隔は変更されない。ここで、PWM制御を行わない場合が繰り返し周期内でデューティ比が一定である波形に対応し、PWM制御を行う場合が繰り返し周期内でデューティ比が変更される波形に対応する。
スイッチング素子をスイッチング制御する場合、例えば電源回路のようにPWM制御を行わない回路であれば、高調波ノイズ成分の現れ方は各次数ごとに周期的であり、キャリア周波数を基本波とする高調波ノイズ成分は帯域幅を意識する必要のない急峻な波形となる。
一方、本実施の形態のモータ駆動回路のようにPWM制御を行う回路の場合、PWM制御そのものは周期的に行われるが、PWM制御の周期内でデューティ比が変更されることになるので、高調波ノイズ成分の現れ方が周期的な点は変更されないが、キャリア周波数を基本波とする高調波ノイズ成分は帯域幅を有する波形となって現れる。
図2に示す波形は、このような帯域幅を有する基本波ノイズ成分および高調波ノイズ成分を表したものである。基本波ノイズ成分K1に加え、2次高調波ノイズ成分K2、3次高調波ノイズ成分K3、4次高調波ノイズ成分K4、5次高調波ノイズ成分K5においても、両矢印で示すような帯域幅を有する波形となる。したがって、図1に示すノイズフィルタ21において、第3回路部26のような帯域幅を有さないフィルタのみでは、帯域幅のあるノイズ成分を十分に除去できない場合が生ずる。
図3(b)は、図3(a)に示すLCR直列回路の挿入損失特性の一例を示す図であり、R成分(抵抗成分)を有さないLC直列回路の挿入損失を破線で示し、R成分を有するLCR直列回路の挿入損失を実線で示している。図示のように、LC直列回路に直列に挿入する抵抗値を可変することにより共振の鋭さを表す指標であるQ値(Quality Factor)を変化させる(Q値を小さくする)ことができ、急峻な特性を帯域幅のある特性に変更することが可能となる。なお、挿入損失特性における帯域幅W1は、ノイズ電圧の帯域幅(図2参照)に応じて決定すればよい。
ところで、モータの運転効率を高める場合や、モータでの高精細な制御を行う場合には、キャリア周波数を高くすることが有効である。しかしながら、キャリア周波数を高く設定した場合、ノイズレベルが高くなり、ノイズフィルタの強化が必要になるのと共に、伝導ノイズの規制対象周波数に含まれる150kHz付近にキャリア周波数の低次高調波ノイズ成分が含まれて来る場合があり、図4はその一例を示している。
図4に示す波形は、キャリア周波数が36kHzの場合における5次以上の高調波ノイズ波形を示しており、横軸の零位置は規制対象周波数の下限値である150kHzを示している。キャリア周波数が36kHzの場合、5次高調波ノイズが180(=36×5)kHzに相当し、6次高調波ノイズが216(=36×6)kHzに相当する。すなわち、キャリア周波数を高くした場合、キャリア周波数が低い場合には現れない低次高調波のノイズ成分が規制対象周波数内に含まれることになる。
一方、本実施の形態のモータ駆動回路では、帯域遮断フィルタ22を用いることにより、180kHz付近に現れる5次高調波ノイズ成分K5を低減することができる。なお、216kHz付近に現れる6次高調波ノイズ成分K6や、それ以上の高調波ノイズ成分(一点鎖線L1で示すノイズ成分)については、5次高調波ノイズ成分K5に比べてノイズレベルが小さいため、ノイズフィルタ21にて低減可能である。
ここで、帯域遮断フィルタ22のような帯域幅を有する帯域遮断フィルタを用いない場合には、例えば、ノイズフィルタ21において、第2回路部25および第3回路部26を多段に接続したり、第2回路部25のインダクタンスや、第3回路部26における容量値を大きくするなどの対応が必要であり、フィルタ回路全体の体積が増大することへの懸念がある。
一方、本実施の形態のモータ駆動回路では、帯域遮断フィルタ22を用いて低次高調波ノイズ成分を低減できるため、キャリア周波数を高くした場合であってもフィルタ回路全体の体積増やコスト増を抑制することが可能となる。
なお、キャリア周波数を例えば52kHzのように更に高く設定した場合を考えると、3次高調波ノイズが156(=52×3)kHzに相当し、4次高調波ノイズが208(=52×4)kHzに相当し、5次高調波ノイズが260(=52×5)kHzに相当する。この場合、4次高調波ノイズ成分もしくは5次高調波ノイズ成分の何れかのレベルが大きく、ノイズフィルタ21のみでは規定レベルまで低減できない可能性もある。このような場合には、図5に示すように、帯域遮断フィルタ22を多段に接続すればよい。例えば、帯域遮断フィルタ22aを用いて3次高調波ノイズ成分を低減させ、帯域遮断フィルタ22bを用いて4次高調波ノイズ成分もしくは5次高調波ノイズ成分のうちの高い方のノイズ成分を低減させるように構成すればよい。
以上説明したように、実施の形態1のモータ駆動回路によれば、交流電源と整流回路との間に挿入されるフィルタ回路において、フィルタ回路に具備されるノイズフィルタは、PWM制御を行うか否かに関わらず発生し得る高調波ノイズを低減し、フィルタ回路に具備される帯域遮断フィルタは、PWM制御によって発生し得る帯域幅のある高調波ノイズを低減することとしたので、ノイズフィルタを強化する度合いが小さくなり、フィルタ回路全体のコストや、実装に伴う体積の増加を抑制することができる。
また、実施の形態1のモータ駆動回路によれば、キャリア周波数を高く設定することができるので、モータ損失の低減とモータに対する高精細な制御が可能になる。
実施の形態2.
図6は、実施の形態2に係るモータ駆動回路の一構成例を示す図である。図6のモータ駆動回路では、インバータ回路5を収納する筐体とインバータ回路5のスイッチング素子を冷却するための放熱フィンとの間に存在し得る浮遊容量、放熱フィンとのフレームグラウンド(FG)との間に生じ得る寄生インダクタンスおよび寄生抵抗が図示されている。これらの浮遊容量、寄生インダクタンスおよび寄生抵抗は、帯域遮断フィルタ22とインバータ回路5との間のノイズ経路上に存在し得る浮遊成分(寄生成分)である。これらの値が、帯域遮断フィルタ22におけるコンデンサ、インダクタンス素子および抵抗素子の値に対し無視できない程度の大きさを有する場合、図示の矢印に沿う経路のコモンモード電流が流れる可能性がある。このようなコモンモード電流が流れる経路が存在する場合、共振電流の大きさが理論値と異なってくるため、共振周波数も理論値からのずれが生じる可能性がある。
そこで、実施の形態2のモータ駆動回路では、上記した浮遊容量、寄生インダクタンスおよび寄生抵抗の値を考慮して帯域遮断フィルタ22または22a,22bにおけるコンデンサ、インダクタンス素子および抵抗素子の値を決定する。なお、これら浮遊容量、寄生インダクタンスおよび寄生抵抗の値をシミュレーション等により、ある程度の確度で推定できる場合には、それらの推定した値を用いて、コンデンサ、インダクタンス素子および抵抗素子の値を決定すればよい。
一方、浮遊容量、寄生インダクタンスおよび寄生抵抗の値の推定が困難である場合には、帯域遮断フィルタ22(22a,22b)における抵抗素子ならびに、コンデンサおよびインダクタンス素子のうちの少なくとも一つを可変要素として調整すればよい。
以上説明したように、実施の形態2のモータ駆動回路によれば、帯域遮断フィルタとインバータ回路との間のノイズ経路上に存在し得る浮遊容量、寄生インダクタンスおよび寄生抵抗を考慮して、帯域遮断フィルタのインダクタンス、容量値および抵抗値を決定しているので、所望の周波数に帯域遮断フィルタのフィルタ特性を合わせることが可能になり、遮断特性の向上が図れる。
(第1のシミュレーション結果)
つぎに、実施の形態1,2のモータ駆動回路に係る第1のシミュレーション結果について図7〜図10の図面を参照して説明する。なお、図8〜図10に示す挿入損失特性は、浮遊容量、寄生インダクタンスおよび寄生抵抗に対する考慮はなされている。
まず、第1のシミュレーションに係るフィルタ回路部の回路定数は、図7に示すとおりである。この場合、ノイズフィルタ21での挿入損失特性は図8に示すものとなり、200kHz〜30MHzの帯域に渡って40dB以上の挿入損失を付与可能な特性となっている。
また、図7に示す回路定数の場合、帯域遮断フィルタ22での挿入損失特性は図9に示すものとなり、180kHzの高調波ノイズ成分に対して40dB以上の挿入損失を付与できる特性となっている。なお、図8に示す特性と図9に示す特性とを併せたものが図10である。すなわち、図10は、ノイズフィルタ21および帯域遮断フィルタ22を併せたフィルタ回路部全体での挿入損失特性(総合挿入損失特性)を示す図である。図8に示すフィルタ特性のみでは、低次高調波ノイズ成分の低減能力が不足しているが、図9に示す帯域遮断フィルタ22の挿入損失特性を加えることで所望のフィルタ特性が得られている。
なお、図10に示す総合挿入損失特性において、図示の波形では分かりにくいが、180kHz付近のピーク波形と10MHz付近のピーク波形とでは、180kHz付近のピーク波形の方が幅広くなっている。180kHz付近のピーク波形は、図7における帯域遮断フィルタ22において、抵抗値を0.2Ωに設定したことにより得られており、帯域幅を有する高調波ノイズ成分に好適なフィルタ特性となっている。
(第2のシミュレーション結果)
つぎに、実施の形態1,2のモータ駆動回路に係る第2のシミュレーション結果について図11〜図13の図面を参照して説明する。なお、図12,13に示す挿入損失特性は、第1のシミュレーション結果と同様に、浮遊容量、寄生インダクタンスおよび寄生抵抗に対する考慮はなされている。
第2のシミュレーションに係る第2のフィルタ回路の回路定数は、図11に示すとおりである。この場合、帯域遮断フィルタ22a,22bでの挿入損失特性は図12に示すものとなり、180kHz(5次)および252kHz(7次)による各高調波ノイズ成分に対して40dB以上の挿入損失を付与できる特性となっている。
また、図8に示す特性と図12に示す特性とを併せたものが図13であり、ノイズフィルタ21および帯域遮断フィルタ22を併せたフィルタ回路部全体での総合挿入損失特性を示している。図8に示すフィルタ特性のみでは、低次高調波ノイズ成分の低減能力が不足しているが、図13に示す帯域遮断フィルタ22a,22bの挿入損失特性を加えることで所望のフィルタ特性が得られている。
実施の形態3.
つぎに、実施の形態3に係るモータ駆動回路について説明する。実施の形態3に係るモータ駆動回路の構成は、図5に示すものと同一もしくは同等である。実施の形態1は、2段構成とした帯域遮断フィルタ22a,22bを異なる低次高調波ノイズ成分を低減する帯域遮断フィルタとして機能させる実施形態であったが、実施の形態3は、2つの帯域遮断フィルタ22a,22bにて1つの低次高調波ノイズ成分を低減する実施形態である。
(第3のシミュレーション結果)
実施の形態3に係る動作については、実施の形態3に係る第3のシミュレーション結果を用いて説明する。
まず、第3のシミュレーションに係る回路定数であるが、帯域遮断フィルタ22aの回路定数は図11に示すとおりである。一方、帯域遮断フィルタ22bの回路定数のうち、容量値および抵抗値については帯域遮断フィルタ22aのものと同一であるが、インダクタンスについては可変としている。
図14〜図16に示すシミュレーション結果で見ると、図14は、挿入損失が最大となる周波数差が0%となる場合、すなわち同一の回路定数を有する帯域遮断フィルタを2段構成にした場合である。また、図15は、挿入損失が最大となる周波数差が2.5%となる場合である。周波数差が2.5%であるため、一方の帯域遮断フィルタにおける遮断周波数の中心値と他方の帯域遮断フィルタにおける遮断周波数の中心値との間には4.5(=180×2.5/100)kHzの差が設けられている。このように、実施の形態3のフィルタ構成は、遮断周波数の中心値を所定量ずらした2段の帯域遮断フィルタを用いるスタガード・フィルタ(staggered filter)の構成である。
図16は、挿入損失が最大となる周波数差が5%となる場合であり、一方の帯域遮断フィルタにおける遮断周波数の中心値と他方の帯域遮断フィルタにおける遮断周波数の中心値との間には9(=180×5/100)kHzの差が設けられている。図16の場合、180kHzと189kHzとの間に6dB程度の窪みが生じているが、この程度の窪みは許容範囲である。なお、図15および図16では、スタガーさせる周波数を遮断周波数の高い側にシフトさせるシミュレーション結果について示したが、遮断周波数の低い側にシフトさせるようにしても構わない。例えば、挿入損失が最大となる周波数差が2.5%の場合であれば、2段の帯域遮断フィルタにおける遮断周波数の中心値は、175.5kHzと180kHzになる。
以上説明したように、実施の形態3のモータ駆動回路によれば、遮断周波数の中心値を所定量ずらした2段の帯域遮断フィルタを用いるスタガード・フィルタにより帯域幅のあるフィルタ特性を実現しているので、帯域遮断フィルタのQ値を下げることなく、すなわち帯域遮断フィルタの急峻な特性を変更することなく帯域幅のある特性に変更することが可能となる。
実施の形態4.
実施の形態4では、モータ駆動回路のインバータ回路5に具備されるスイッチング素子について説明する。モータ駆動回路で用いられるスイッチング素子としては、珪素(Si)を素材とする半導体トランジスタ素子(IGBT、MOSFETなど)と、同じく珪素を素材とする半導体ダイオード素子とを逆並列に接続した構成のものが一般的である。上記実施の形態1〜3で説明した技術は、この一般的なスイッチング素子を具備するインバータ部およびコンバータ部に用いることができる。
一方、上記実施の形態1〜3の技術は、珪素を素材として形成されたスイッチング素子に限定されるものではない。この珪素に代え、近年注目されている炭化珪素(SiC)を素材とするスイッチング素子を具備するインバータ回路5に用いることも無論可能である。
ここで、炭化珪素は、高温度での使用が可能であるという特徴を有しているので、インバータ回路5に具備されるスイッチング素子として炭化珪素を素材とするものを用いれば、スイッチング素子モジュールの許容動作温度を高温側に引き上げることができるので、キャリア周波数を高めて、スイッチング速度を増加させることが可能である。しかしながら、PWM制御を行うモータ駆動回路においては、上述したような低次高調波ノイズの問題と、帯域幅のある高調波ノイズの問題とがあるため、これらの問題点をクリアする手当をすることなく、単純にキャリア周波数を高める制御を行うことは難しい。
上述したように、実施の形態1〜3に係る技術によれば、PWM制御を行うモータ駆動回路において、キャリア周波数を高めることに付随して生ずる低次高調波ノイズおよび帯域幅のある高調波ノイズの問題を解決することができる。このため、炭化珪素を素材とするスイッチング素子を用いてスイッチング速度を増大させたとしても、高調波ノイズの問題をクリアしつつ、モータの運転効率を高めることが可能となる。
なお、炭化珪素(SiC)は、珪素(Si)よりもバンドギャップが大きいという特性を捉えて、ワイドバンドギャップ半導体と称される半導体の一例である。この炭化珪素以外にも、例えば窒化ガリウム系材料または、ダイヤモンドを用いて形成される半導体もワイドバンドギャップ半導体に属しており、それらの特性も炭化珪素に類似した点が多い。したがって、炭化珪素以外の他のワイドバンドギャップ半導体を用いる構成も、本発明の要旨を成すものである。
また、このようなワイドバンドギャップ半導体によって形成されたトランジスタ素子やダイオード素子は、耐電圧性が高く、許容電流密度も高いため、トランジスタ素子やダイオード素子の小型化が可能であり、これら小型化されたトランジスタ素子やダイオード素子を用いることにより、これらの素子を組み込んだ半導体モジュールの小型化が可能となる。
また、ワイドバンドギャップ半導体によって形成されたトランジスタ素子やダイオード素子は、耐熱性も高いため、ヒートシンクの小型化が可能となり、スイッチング素子モジュールの更なる小型化が可能になる。
さらに、ワイドバンドギャップ半導体によって形成されたトランジスタ素子やダイオード素子は、電力損失が低いため、スイッチング素子やダイオード素子の高効率化が可能であり、延いてはスイッチング素子モジュールの高効率化が可能になる。
なお、以上の実施の形態1〜4に示した構成は、本発明の構成の一例であり、別の公知の技術と組み合わせることも可能であるし、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、一部を省略する等、変更して構成することも可能であることは言うまでもない。
以上のように、本実施の形態に係るモータ駆動回路は、回路規模を増大させることなく、帯域幅のある高調波ノイズ成分を充分に抑制することができる発明として有用である。
1 三相交流電源
2 フィルタ回路
3 整流回路
4 直流中間回路
5 インバータ回路
6 交流モータ
21 ノイズフィルタ
22,22a,22b 帯域遮断フィルタ
24 第1回路部(ノイズフィルタ)
25 第2回路部(ノイズフィルタ)
26 第3回路部(ノイズフィルタ)
31 ダイオード素子
32 平滑コンデンサ
33 スイッチング素子

Claims (7)

  1. 交流モータをPWM駆動するモータ駆動回路において、
    交流電源からの電力を整流する整流回路と、
    前記整流回路の出力を平滑化して保持する直流中間回路と、
    前記直流中間回路に保持された直流電力に基づき前記交流モータへの印加電圧をPWM制御するインバータ回路と、
    前記交流電源と前記整流回路との間に挿入されるフィルタ回路と、
    を備え、
    前記フィルタ回路は、
    前記交流電源と前記整流回路との間に挿入され、前記PWM制御を行うか否かに関わらず発生し得る高調波ノイズを低減するノイズフィルタと、
    前記ノイズフィルタの後段に配置され、前記PWM制御によって発生し得る帯域幅のある高調波ノイズを低減する帯域遮断フィルタと、
    を備え、
    前記帯域遮断フィルタは、
    一端が前記交流電源と前記整流回路とを繋ぐ各相電源線に接続され、各他端同士が相互に接続される複数のコンデンサと、
    前記複数のコンデンサの接続端とフレームグラウンドもしくはフレームグラウンドと同電位の端子との間に挿入される抵抗素子およびインダクタンス素子による直列接続回路と、
    を備えて構成されることを特徴とするモータ駆動回路。
  2. 前記帯域遮断フィルタと前記インバータ回路との間のノイズ経路上に存在し得る浮遊容量、寄生インダクタンスおよび寄生抵抗を考慮して、前記帯域遮断フィルタのインダクタンス、容量値および抵抗値が決定されていることを特徴とする請求項1に記載のモータ駆動回路。
  3. 前記帯域遮断フィルタとして、遮断周波数の異なる複数の帯域遮断フィルタが多段に接続されて構成されていることを特徴とする請求項1に記載のモータ駆動回路。
  4. 前記複数の帯域遮断フィルタにおける少なくとも2つの帯域遮断フィルタにおいて、一方の帯域遮断フィルタの処理対象と、他方の帯域遮断フィルタにおける処理対象とが、キャリア周波数を基本波とする高調波ノイズ成分のうちの異なる高調波ノイズ成分であることを特徴とする請求項に記載のモータ駆動回路。
  5. 前記複数の帯域遮断フィルタにおける少なくとも2つの帯域遮断フィルタにおいて、一方の帯域遮断フィルタにおける遮断周波数の中心値と他方の帯域遮断フィルタにおける遮断周波数の中心値との間の周波数差が、前記一方もしくは他方の帯域遮断フィルタにおける遮断周波数の±5%以内に設定されていることを特徴とする請求項に記載のモータ駆動回路。
  6. 前記インバータ回路に具備されるスイッチング素子は、ワイドバンドギャップ半導体にて形成されることを特徴とする請求項1に記載のモータ駆動回路。
  7. 前記ワイドバンドギャップ半導体は、炭化ケイ素、窒化ガリウム系材料または、ダイヤモンドを用いた半導体であることを特徴とする請求項に記載のモータ駆動回路。
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