JP5460697B2 - 電波吸収体 - Google Patents

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Description

本発明は、電波吸収体に関し、さらに詳しくは、30MHzから18GHzの周波数帯域の電磁波を効果的に吸収する小型の電波吸収体に関する。
近年、電子機器が発生した電磁妨害波が他の機器に誤動作を生じさせたり、逆に外来電磁妨害波により電子機器が誤動作することがないように、電子機器には電磁環境両立性(EMC:Electro Magnetic Compatibility)が求められている。EMC評価を行うためには、電波暗室と呼ばれる測定用の部屋が必要となる。電波暗室の外壁は、外来電磁波の暗室内への浸入や暗室内の測定装置から発生する電磁波の外部への放射を防止するため、金属板で覆われている。また、不要な電磁波の反射を防止するため、暗室内部には電波吸収体が取り付けられている。電波暗室の種類には、自動車や大型の電子機器等大型製品を評価するための10m法電波暗室や、比較的小型の製品を評価するための3m法電波暗室や小型暗室等がある。3m法暗室や小型暗室では、特に、電波吸収体が小型であることが要求される。
従来、電波暗室内で測定される周波数範囲は30MHz〜1GHzであった。しかし、携帯電話、RFタグなど通信機器の小型化・多様化に伴い、測定周波数の上限も拡大している。2007年2月には、1GHz〜18GHzの周波数範囲の測定サイトの確認方法が、CISPR16−1−4 Ed.2として規格化されており、電波暗室に要求される対応周波数範囲は30MHz〜18GHzに拡大している。
一般に、広帯域の周波数に適応するための電波吸収体として、カーボンを含有したピラミッド形状の電波吸収体及びフェライトタイルを組み合わせた複合型電波吸収体が用いられている。このような複合型電波吸収体では、300MHz以上の周波数帯域の電磁波はピラミッド形状の電波吸収体により吸収させ、それ未満の周波数帯域の電磁波はフェライトタイルにより吸収させる。これにより、30MHz〜18GHzの幅広い周波数帯域において電波吸収特性を確保することができる。しかし、上記複合型電波吸収体の高さは一般的に90cm〜300cmとなるため、これを用いた3m法電波暗室や小型電波暗室を、省スペースで設計することはできない。
特許文献1には、小型暗室用の電波吸収体として、フェライトタイルと、これに接合した所定の比誘電率を有する汎用樹脂にフェライト粉を分散させた材料からなるピラミッド形状等の吸収体とを含む複合電波吸収体が開示されている。この電波吸収体を従来の小型のフェライト暗室サイズに用いることで、高周波への対応が可能であることが記載されている。しかしながら、フェライトの磁気特性では、スネーク限界により、高周波化には限界がある。そのため、フェライトの組成等を最適化しても10GHz以上の周波数帯域への対応は困難と考えられている。
一方、特許文献2には、導電性を有する抵抗被膜体により形成され、金属板に向かって垂直方向に格子状又は蜂の巣状に配置された電波吸収部から構成される電波吸収体が開示されている。この電波吸収体では、抵抗被膜体の面抵抗値を自由空間の電波インピーダンスとして、一定間隔及び一定厚さにして、格子状等に組み合わせて配列されている。このため、吸収体表面に入射した電波の反射を抑制することができるとされている。また、抵抗被膜体内部に進んだ電波は、抵抗被膜体表面で電波の直進と共に吸収されることにより減衰していき、金属板表面近傍におけるインピーダンスは、空間のインピーダンスに近づき、効率のよい電波吸収が可能であることが記載されている。そして、この電波吸収体では、インピーダンスを空間インピーダンスに整合させるために必要な吸収体の高さを大幅に減らすことができ、スペース上有利であることが示されている。しかしながら、誘電損失体から構成される特許文献2の電波吸収体では、高周波数帯域の電波を効果的に吸収することはできるが、低周波数帯域の電波に対応することはできない。
特許第3041295号公報 特許第2660647号公報
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、30MHzから18GHzの広い周波数帯域の電磁波を効果的に吸収する小型の電波吸収体を提供することを目的とする。
上記目的に鑑み鋭意研究の結果、本発明者らは、多角錐形状又はウェッジ形状の磁性損失体の隣接する多角錐間又はウェッジ間の谷間部に、磁性損失体の底面に対して垂直な、又は傾斜した板状の誘電損失体を設けることにより、低周波数帯域での電波吸収特性を維持しつつ、高周波数帯域での電波吸収特性を大幅に向上させることができるため、広い周波数帯域に亘り優れた電波吸収特性が得られることを見出し、本発明に想到した。すなわち、本発明の電波吸収体は複数の多角錐形状又はウェッジ形状の磁性損失体からなる磁性損失吸収体であって、平面上に、前記磁性損失体の底面を、隣接又は所定間隔で離間して載置し磁性損失体間に谷間部を設けた磁性損失吸収体と、板状の誘電損失体からなる誘電損失吸収体であって、狭幅部を基部として前記磁性損失体間の谷間部に、磁性損失体の底面に対して垂直または所定角度で傾斜して配置される誘電損失吸収体とを備えることを特徴とする。
本発明によれば、広い周波数帯域において優れた電波吸収性能を有する小型の電波吸収体が実現される。これを用いることで、3m法電波暗室や小型電波暗室においても広い周波数帯域での測定が可能となる。
以下に本発明の電波吸収体について詳細に説明する。
なお、本明細書における電波吸収体の説明(請求項を含む)において、別段断らない限り、本発明の電波吸収体は電波入射側を上側として配置した状態を基準として方向を定義することとし、例えば断面図は配置される平面(電波吸収体の底面)に垂直な断面として説明する。これらの電波吸収体は、電波暗室に取り付けられる際にはそれぞれの床面、壁面、天井面に対して取り付けるため、その姿勢は上下左右いずれでも取りうることは言うまでもない。
また、本明細書に添付の図面においては、参照符号は全ての部材に付しておらず、代表する構成要素の一部のみに付与し、それ以外の同様部分については省略している場合がある。
図1に本発明の電波吸収体の一例の断面図を示す。図1に示された電波吸収体1は、平板部2上に底面を載置して所定間隔離間して設置された複数のピラミッド形状の磁性損失体3で構成される磁性損失吸収体4と、これらのピラミッド形状の磁性損失体3の間に形成される谷間部に配置された板状の誘電損失体5からなる誘電損失吸収体6とからなる。すなわち、磁性損失体3の底面を、同一平面上に、所定間隔離間して載置することにより隣り合うピラミッド間に谷間部が形成される。この谷間部に磁性損失体3の底面(平板部2の上面)に対して垂直に狭幅部分を基部として板状の誘電損失体5が設置されている。
なお、平板部2の材料は、上面が平面であれば特に限定されないが、樹脂、ゴム、木材、セラミックス等が用いられる。また、平板部2の材料も磁性損失材とすることにより、さらに優れた電波吸収特性が得られる。平板部2は磁性損失体3とは別部材として成形してもよいが、その上に載置される磁性損失体3と同じ材料で構成される場合には、射出成型等により一体成形することができ、製造コストの点から好ましい。
上記構成の電波吸収体1に入射した電磁波の一部は、伝搬経路7に示すように、誘電損失体5と磁性損失体3との間で反射を繰り返しながら、誘電損失体5及び磁性損失体3に吸収され、減衰していく。また、伝搬経路8に示すように、誘電損失体5を透過した電磁波は、磁性損失体3の間で反射を繰り返しながら、吸収され減衰する。このように本発明の電波吸収体1においては、それぞれの周波数の電磁波に最適な反射経路が形成され、電磁波が吸収され、減衰するため、幅広い周波数帯域の電磁波を効果的に吸収できる。
磁性損失体3は、多角錐形状(円錐形状を含む)又はウェッジ形状であればよいが、底面を正方形とした四角錐形状又はウェッジ形状の磁性損失体3が好ましく用いられる。このとき、磁性損失体3の四角錐の底面の一辺の長さは、10mm〜200mmであることが好ましい。本発明において、具体的な磁性損失体3の高さ(底面から頂部までの寸法)は、特に限定されないが、小型暗室などを実現するためには、50mm〜200mmとするのが好ましい。また、磁性損失体3の先端形状は鋭角としてもよいが、耐衝撃性を考慮すると、曲面(R形状)、又は平面とするのが好ましい。なお、本発明において、「磁性損失体の底面」とは、多角錐形状の場合には当該多角形が平面として出現する面(錐の先端とは反対面)であり、ウェッジ形状の場合にはウェッジ先端部と反対側に位置する面を称することとする。
磁性損失体3の材料は、特に限定されず、フェライト粉を含有する樹脂やセラミックス等が挙げられる。フェライト粉としては、Fe/NiO/ZnO系、Fe/NiO/ZnO/CuO系、Fe/MnO/ZnO系等が用いられる。また、樹脂材料としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、フッ素樹脂、アリル樹脂、エポキシ樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、スチロール樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリカーボネート樹脂、アセチルセルロース樹脂等が用いられる。これらの樹脂材料のいずれか1種を用いてもよいが、複数種を混合して用いてもよい。また、セラミックス材料としては、アルミナ、シリカ、ムライト等が用いられる。フェライト粉の含有率は、磁性損失体の全質量に対して、37質量%〜91質量%が好ましい。
本発明において、複数の磁性損失体3を平面(平板部2)上にその底面を載置して配置することにより磁性損失吸収体4を構成する。ここで、磁性損失体間に所定間隔を開けて配置してもよいが、隣り合う磁性損失体の底面を隣接(密接)して配置することもできる。これにより、磁性損失体間に板状の誘電損失体を設置する谷間部が形成される。多角錐形状の磁性損失体の場合、例えば規則的に行列状であるマトリックス状に磁性損失体を配置して磁性損失吸収体を構成するのが好ましい。また、ウェッジ形状の磁性損失体の場合には、複数の磁性損失体を平行に配置して1ブロックとし、隣接する個所に、例えば垂直方向等、異なる向きに配置された複数のブロックを設置して磁性損失吸収体を構成してもよい。
誘電損失体5は、一般的な板状の部材であり、主面を構成する広幅部と、表裏の主面をつなぐ側面である狭幅部分を有する。この狭幅部分を基部として、磁性損失体3の底面(設置平面)に対して、垂直又は所定角度傾斜させて設置される。誘電損失体を傾斜して設ける場合には、垂直面に対して、0度より大きく、45度以下の範囲の傾斜にするのが好ましい。また、実施形態の例として、1個所の谷間部当たりに垂直の板状誘電損失体と傾斜した板状誘電損失体、又は二つの傾斜した板状誘電損失体を組み合わせて誘電損失吸収体を構成することもできる。2枚の誘電損失体を傾斜させる場合には、それぞれが上記の傾斜角を取ることができる。すなわち、2枚の板状誘電損失体を隣接して断面V字状とする場合には、2枚の板状誘電損失体を垂直面に対して、それぞれ反対側方向に、0度より大きく、45度以下の範囲で傾斜するのが好ましい。この範囲で板状の誘電損失体を配置して誘電損失吸収体を構成することにより、入射方向への反射が抑えられ、誘電損失体間での反射が多くなるため、電波吸収体は優れた電波吸収特性を備えることができる。なお、1個所の谷間部当たりに二つの板状誘電損失体を組み合わせる場合には、その基部や頂部となる狭幅部分は連続していてもよく、例えば、断面V字状となる組み合わせであってもよい。
誘電損失体は、磁性損失体の吸収限界である10GHz以上の周波数帯域での電波吸収性能の向上を目的に設置されている。そのため、誘電損失体間の水平方向の間隔は、目的とする最小周波数である10GHzの波長と同程度の大きさ、即ち、波長3.0cmの0.5倍〜2.0倍である1.5cm〜6cmに設定するのが好ましい。板状の誘電損失体を傾斜して設置する場合には、隣り合う誘電損失体の最大高さにおける水平距離を上記範囲に設定するのが好ましい。
誘電損失体は、誘電損失材料からなる板状材であれば、特にその材料及び構造は限定されない。たとえばその構造としてはシート状の単体の板材や、段ボール構造又はハニカム構造等を含む板材構造を適用しうる。誘電損失材料としては、カーボン含有発泡ウレタン、カーボン含有発泡スチレン、カーボン含有発泡ポリプロピレン、又はカーボンを含有し、若しくはカーボン層を塗布したプラスティック、紙、シリカやアルミナ等の無機材料からなるシート等が用いられる。カーボンとしては、カーボンファイバー及びグラファイト、カーボンブラック等の粉末状カーボンが用いられる。カーボンファイバーを用いる場合には、繊維長さは、0.5mm〜7mmが好ましく、繊維径は、5μm〜10μmが好ましい。また、カーボンファイバーの添加量は、誘電損失体の全質量に対して、0.03質量%〜1.7質量%が好ましく、0.03質量%〜0.4質量%がより好ましい。カーボン粉末として、グラファイトを用いる場合には、粉末の粒径は、1μm〜100μmが好ましく、誘電損失体の全質量に対して、1.5質量%〜15質量%添加するのが好ましい。一方、カーボンブラックを用いる場合には、粉末の一次粒径は、10nm〜500nmが好ましく、誘電損失体の全質量に対して、1質量%〜5質量%添加するのが好ましい。
以下に本発明の誘電損失吸収体6の形態を中心に、本発明の電波吸収体1について図面を参照して説明する。
図2には、板状の誘電損失体5から形成した複数のウェッジ形状からなる誘電損失吸収体6の斜視図を示す。本構成の誘電損失吸収体6を用いると、隣接する多角錐又はウェッジ形状の磁性損失体3間の連続した谷間部分に断面略V字形状の板状誘電損失体5を設置して電波吸収体1を構成することになる。この構成では、誘電損失体5と磁性損失体3間での反射経路が図1に示す伝搬経路7,8より、さらに複雑になる。このため、これらで構成した電波吸収体1は幅広い周波数帯域の電磁波を確実に吸収することが可能となる。ここで、誘電損失吸収体6のV字形状を構成する2枚の板状誘電損失体5は、垂直面に対して、それぞれ反対側に向かって0度を超え、45度以下の範囲で傾斜させるのが好ましい。
なお、誘電損失吸収体6の高さ(配置平面から最も離れた最高部までの距離であり、すなわち最高部から配置平面に対して下ろした垂線の長さ)は、多角錐形状又はウェッジ形状の磁性損失体3の高さを100とした場合の割合で、50〜200が好ましく、70〜130がより好ましい。誘電損失吸収体6の高さをこの範囲に設定することにより、磁性損失体3と誘電損失体5とで囲われた空間による、電磁波の閉じ込め効果により、電波吸収体1の電波吸収特性はさらに向上する。
なお、本構成の誘電損失吸収体は、全領域を同じ高さとしてもよいが、例えば、V字形状の一方の高さを高くし、他方を低くする等、場所により高さを変えることもできる。この場合には、誘電損失吸収体の算術平均高さが前記範囲となることが好ましい。
図3にさらに別のウェッジ形状の誘電損失体5(誘電損失吸収体6)の斜視図を示す。この例では、図2のウェッジ形状の誘電損失体5の上面部(頂点部分)を部分的に切断・開口し、開口部9から多角錐形状又はウェッジ形状の磁性損失体3の各頂点を露出できるようにした(露出状態については図示せず)。この構成は、誘電損失体5上面部での入射方向への反射が抑制されるため、誘電損失体5間の反射により、より優れた電波吸収特性が得られる点で好ましい。
図4(A)には一方向に延びる断面略V字形状(フィン形状)の板状誘電損失体5(誘電損失吸収体6)を示し、図4(B)には、ピラミッド形状の磁性損失体3の隣接する谷間部の一方向のみに当該板状誘電損失体5を設置した電波吸収体1の構成を示す。この構成では、ピラミッド形状の磁性損失体3の底面に対して、板状誘電損失吸収体6には水平面が存在しないものとなる。このため、電磁波入射方向への反射が抑えられ、より優れた電波吸収特性を発揮し得る。
さらに、図5にはこの変形例を示す。ここでは、図4(B)の電波吸収体を基本構成として、この複数個をフィン形状の延びる方向がそれぞれ異なるように配置して電波吸収体1を構成している。この電波吸収体1は、その電波吸収特性の方向性がなくなり、あらゆる方向の電磁波を効率よく吸収できる。
図6(A)から図6(C)に本発明の他の実施形態による電波吸収体1を示す。本実施形態においては、誘電損失吸収体6は、図6(A)に示す下側に切り欠き部を設けた断面略V字形状の複数の誘電損失体5と、図6(B)に示す上側に切り欠き部を設けた断面略V字形状の複数の誘電損失体5とで構成され、これらを嵌め合わせることで、グリッド形状の誘電損失吸収体6を得る。一方、複数のピラミッド形状の磁性損失体3はマトリックス状に配置されて、磁性損失吸収体4を構成する。このグリッド形状の誘電損失吸収体6を、上方から覆い被せるようにピラミッド形状の磁性損失体3の谷間部に配置することで電波吸収体1が構成されている。この時に、誘電損失体5の切り欠き部は、複数のピラミッド形状の磁性損失体3が隣接して配置されて形成される谷間部に適合するように、縦列・横列に合わせた大きさに設計されている。このようなグリッド形状の誘電損失吸収体6により、さらに電磁波の反射回数が増加し、優れた閉じこめ効果が生じるため、電波吸収体1の電波吸収特性が大幅に向上する。
図7には、全てのピラミッド形状の磁性損失体3の側面に対して、断面略V字形状の板状誘電損失体5を設置した電波吸収体1を示す。この構成では、さらに電磁波の反射回数が増加し、より優れた電波吸収特性を発揮する。
本発明の効果を以下の実施例によりさらに詳細に説明する。
(実施例1)
ポリプロピレン樹脂にMn系フェライト粉を得られる磁性損失体に対して80質量%分散した。この樹脂材料を射出成形することによりピラミッド形状(底面:50mm×50mm、高さ:70mm)の磁性損失体3を複数個作製した。そして図6(C)に示すように磁性損失体3と同じ材料で作製した平板部2(厚さ13mm)の上に、ピラミッド形状磁性損失体3を縦横4個ずつ(合計16個)マトリックス状に配置して、磁性損失吸収体4を得た。
一方、カーボンファイバー(繊維長さ:3mm、繊維径:7μm)を紙に分散した厚さ3mmのシートを用いて、図6(A)及び(B)に示す形状の誘電損失体5をそれぞれ作製した。ここで、カーボンファイバーの含有量は、誘電損失体の誘電率が8+j0.7となるように調整した。それぞれの誘電損失体5の切り欠き部を嵌め合わせ、グリッド形状の誘電損失吸収体6を構成した。この誘電損失吸収体6を、ピラミッド形状の磁性損失体3の上方から覆い被せるように谷間部に配置して、図6(C)に示す電波吸収体1を作製した。なお、グリッド形状の誘電損失体5の高さは、52mmとし、ピラミッド形状の磁性損失体3の高さの0.74倍とした。
得られた電波吸収体1の10GHz〜18GHzの電波吸収特性を測定した結果を図8に示す。測定は、ピラミッド形状の磁性損失体を縦横4個ずつ配置した磁性損失吸収体を縦横3ピースずつ並べ、底面積600mm×600mmとした試料を用いて、誘電体レンズを用いた反射量測定装置により行った。比較として、磁性損失吸収体4のみの測定結果(比較例1)及び誘電損失吸収体6のみの測定結果(比較例2)も図8に示す。
比較例1の磁性損失吸収体4のみでは、10GHz以上の高周波数帯域では、十分な電波吸収特性は得られなかった。また、比較例2の誘電損失吸収体6のみでは、比較例1(磁性損失吸収体4)に比べ、若干改善されている周波数帯域も認められるが、十分とはいえなかった。これに対して、磁性損失吸収体4と誘電損失吸収体6とを組み合わせた本発明の実施例1の電波吸収体1では、特に高周波数帯域における電波吸収性能(反射減衰量)が大幅に向上し、10GHz〜18GHzの全周波数帯域において、20dB以上の反射減衰量が得られることが確認された。なお、図8には示していないが、本実施例の電波吸収体1では、30MHzから10GHzの周波数範囲においても電波吸収特性の低下は殆ど認められず、20dB以上の反射減衰量が得られた。
このように本発明では、低周波数帯域における磁性損失体の優れた電波吸収特性を維持しつつ、高周波数帯域での電波吸収特性を大幅に向上させることが可能である。本実施例では、ピラミッド形状の磁性損失体とグリッド形状の誘電損失体との相互作用のみならず、グリッド形状による電磁波の閉じこめ効果が電波吸収特性の向上に大きく寄与していると考えられる。
本発明の電波吸収体の一例を示す断面図である。 板状誘電損失体(誘電損失吸収体)の一例を示す斜視図である。 板状誘電損失体(誘電損失吸収体)の他の一例を示す斜視図である。 板状誘電損失体(誘電損失吸収体)の他の一例を示す斜視図(A)及びそれを用いた本発明の電波吸収体の斜視図(B)である。 本発明の電波吸収体の他の一例を示す斜視図である。 グリッド形状誘電損失吸収体を構成する誘電損失体を示す斜視図((A)、(B))及びそれを用いた本発明の電波吸収体の斜視図(C)である。 本発明の電波吸収体の他の一例を示す斜視図である。 実施例1の電波吸収体及び比較例1(磁性損失吸収体単独)並びに比較例2(誘電損失吸収体単独)の電波吸収特性を評価した結果を示す図である。
1・・・電波吸収体
2・・・平板部
3・・・ピラミッド状磁性損失体
4・・・磁性損失吸収体
5・・・板状誘電損失体
6・・・誘電損失吸収体
7・・・伝搬経路
8・・・伝搬経路
9・・・開口部

Claims (5)

  1. 複数の多角錐形状又はウェッジ形状の磁性損失体からなる磁性損失吸収体であって、平面上に、前記磁性損失体の底面を、隣接又は所定間隔で離間して載置し磁性損失体間に谷間部を設けた磁性損失吸収体と、
    板状の誘電損失体からなる誘電損失吸収体であって、狭幅部を基部として前記磁性損失体間の谷間部に、磁性損失体の底面に対して垂直または所定角度で傾斜して配置される誘電損失吸収体と、
    を備えることを特徴とする電波吸収体。
  2. 前記誘電損失吸収体の前記平面からの垂直方向の高さは、前記磁性損失体の前記平面からの垂直方向の高さを100とした割合が50〜200の範囲であることを特徴とする請求項1に記載の電波吸収体。
  3. 前記誘電損失吸収体は、断面略V字形状で、当該V字を構成する少なくとも一方の板状誘電損失体を前記平面の垂直面に対して、0度を超え45度の範囲に傾斜させたことを特徴とする請求項1又は2に記載の電波吸収体。
  4. 前記磁性損失体はマトリックス状に配置されており、前記誘電損失吸収体は、前記磁性損失体を囲うグリッド形状であることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の電波吸収体。
  5. 前記磁性損失体が四角錐形状であることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の電波吸収体。
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