JP5459052B2 - 液晶配向剤、液晶配向膜および液晶表示素子 - Google Patents

液晶配向剤、液晶配向膜および液晶表示素子 Download PDF

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Description

本発明は、ジアミンとテトラカルボン酸二無水物を反応させて得られるポリアミック酸を含有する液晶配向剤に関する。そして、この液晶配向剤より得られる液晶配向膜およびこの液晶配向膜を有する液晶表示素子にも関する。
液晶表示素子は、ノートパソコンやデスクトップパソコンのモニターをはじめ、ビデオカメラのビューファインダー、投写型のディスプレイ等の様々な液晶表示装置に使われており、最近ではテレビにも用いられている。さらに液晶素子は、光プリンターヘッド、光フーリエ変換素子、ライトバルブ等のオプトエレクトロニクス関連素子にも利用されている。
液晶表示素子には種々の素子が知られているが、液晶表示素子の技術の発展は、液晶表示素子の駆動方式や液晶表示素子の構造の改良のみならず、液晶表示素子に使用される構成部材の改良によって達成されている。液晶表示素子は、通常は、液晶層中の液晶組成物を特定の方向に配向させるための液晶配向膜を有する。液晶配向膜は、液晶表示素子の表示品位に係わる重要な要素の一つであり、液晶表示素子の高品質化に伴って液晶配向膜の役割が年々重要になってきている。
液晶配向膜は、液晶配向剤を用いて形成される。現在、主として用いられている液晶配向剤とは、ポリアミック酸または可溶性のポリイミドを有機溶剤に溶解させた溶液である。液晶配向膜は、このような溶液を基板に塗布した後、加熱等の手段により成膜することにより形成される。
液晶表示素子の表示品位を向上させるために液晶配向膜に要求される重要な特性として、イオン密度が挙げられる。イオン密度が高いと、フレーム期間中に液晶にかかる電圧が低下し、結果として輝度が低下して正常な階調表示に支障をきたすことがある。また、例え初期のイオン密度が低くても、高温加速試験後のイオン密度(長期信頼性)が増加してしまう場合は好ましくない。
前記した問題を解決する試みとして、例えば液晶配向膜を形成させるための、物性の異なる二以上のポリアミック酸を組み合わせて含むポリアミック酸組成物が知られている(例えば特許文献1および2参照)。
一方で、低温焼成でもイミド化率の高い膜を形成するための液晶配向剤として、ピペラジンのような塩基性窒素原子を有する二価の有機基を有するジアミンとテトラカルボン酸二無水物とを反応させて得られるポリアミック酸を含有する液晶配向剤が知られている(例えば特許文献3参照)。
さらに、窒素原子を有する芳香族ジアミンとテトラカルボン酸二無水物とを反応させて得られるポリアミック酸とその熱特性とが知られている(例えば非特許文献1参照)。
しかしながら、これらの先行技術によって得られる液晶配向剤にはイオン密度の低減という課題についてさらなる検討の余地が残されている。
特開平11−193345号公報 特開平11−193347号公報 特開平9−194725号公報
Journal of Polymer Science:Part A:Polymer Chemistry, vol. 30, p1099-1102 (1992)
本発明の課題は、イオン密度が低く、かつ、その長期信頼性に優れた液晶表示素子を提供することであり、その特性をもたらす液晶配向膜、その液晶配向膜を形成するための液晶配向剤、その液晶配向剤に用いるポリマー、そして、そのポリマーの原料となるジアミンを提供することである。
本発明者らは、分子内に2つの1級アミノ基およびこの1級アミノ基以外の窒素原子を有する脂肪族ジアミンと、2種類以上のテトラカルボン酸二無水物を原料とするポリアミック酸を含有する組成物を液晶配向剤に用いた。その結果、この液晶配向剤によって形成された液晶配向膜を有する液晶表示素子が低いイオン密度を示し、その長期信頼性にも優れていること見出した。さらに、この液晶配向剤は保存安定性に優れていることを見出し、本発明を完成させるに至った。
本発明の液晶配向剤は次の[1]項に示される。
[1] 式(N)で表されるジアミンまたはこのジアミンとその他のジアミンとの混合物を、少なくとも2種類のテトラカルボン酸二無水物と70〜200℃で反応させて得られるポリアミック酸を含有する液晶配向剤。

Figure 0005459052
式(N)において、YおよびYは独立して、単結合または炭素数1〜7の直鎖アルキレンである。
本発明の好ましい態様に掛かるジアミンをテトラカルボン酸二無水物と反応させて得たポリアミック酸またはその誘導体を含有する組成物を液晶配向剤に用いることによって、保存安定性が高い液晶配向剤を得ることが出来る。その液晶配向剤によって形成された液晶配向膜を有する液晶表示素子は、低いイオン密度を示し、かつ、その長期信頼性にも優れている。
本明細書で用いる用語について説明する。式(N)で表わされるジアミンをジアミン(N)と略称することがある。他の式で表されるジアミンも同様に略称することがある。式(1)で表わされるテトラカルボン酸二無水物を酸無水物(1)と略称することがある。他の式で表されるテトラカルボン酸二無水物についても同様に略称することがある。「(メタ)アクリロイルオキシ」は、アクリロイルオキシおよびメタクリロイルオキシの総称であり、「(メタ)アクリレート」は、アクリレートおよびメタクリレートの総称であり、「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸およびメタクリル酸の総称である。
化学構造式を説明する際に用いる用語「任意の」は、位置だけでなく個数についても任意であることを意味する。そして、例えば、「任意のAはB、CまたはDで置き換えられてもよい」という表現は、少なくとも1つのAがBで置き換えられてもよく、少なくとも1つのAがCで置き換えられてもよく、少なくとも1つのAがDで置き換えられてもよく、そして更に複数のAがB〜Dの少なくとも2つで置き換えられてもよいことを意味する。但し、連続する複数の−CH−が同じ基で置き換えられることは含まれない。
環を構成する炭素との結合位置が明確でない置換基は、その結合位置が化学的に問題のない範囲内で自由であることを意味する。化学構造式において、文字(例えばD)を六角形で囲った基は環構造の基(環D)であることを意味する。複数の式において同じ記号が用いられている場合は、その基が同じ定義範囲を有することを意味するが、すべての式において同時に同じ基でなければならないことを意味しない。複数の式において同じ基であってもよいし、式ごとに異なる基であってもよい。
本発明は、前記の[1]項と次の[2]〜[17]項で構成される。
[2] YおよびYがトリメチレンである、[1]項に記載の液晶配向剤。
[3] その他のジアミンが側鎖基を有するジアミンである式(VIII)および式(X)〜式(XIII)で表されるジアミンの群から選択される少なくとも1つである、[1]項または[2]項に記載の液晶配向剤。

Figure 0005459052
式(VIII)において、Aは単結合、−O−、−CO−、−COO−、−OCO−、−CONH−、−CHO−、−CFO−、または炭素数1〜6のアルキレンであり、このアルキレンにおける任意の−CH−は−O−、−CH=CH−または−C≡C−で置き換えられてもよく;Rはステロイド骨格を有する基、炭素数3〜30のアルキル、炭素数1〜30のアルキルもしくは炭素数1〜30のアルコキシを置換基として有するフェニル、または式(IX)で表される基であり、この炭素数3〜30のアルキルにおける任意の−CH−は−O−、−CH=CH−または−C≡C−で置き換えられてもよく;

Figure 0005459052
式(IX)において、AおよびAは独立して単結合、−O−、−COO−、−OCO−、−CONH−、炭素数1〜4のアルキレン、炭素数1〜3のオキシアルキレン、または炭素数1〜3のアルキレンオキシであり;環Bおよび環Cは独立して1,4−フェニレンまたは1,4−シクロヘキシレンであり;RおよびRは独立してフッ素またはメチルであり、fおよびgは独立して0、1または2であり;c、dおよびeは独立して0〜3の整数であり、これらの合計は1以上であり;Rは炭素数1〜30のアルキル、炭素数1〜30のアルコキシ、または炭素数2〜30のアルコキシアルキルであり、これらのアルキル、アルコキシおよびアルコキシアルキルにおいて、任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく、そして任意の−CH−はジフルオロメチレンで置き換えられてもよく;

Figure 0005459052

Figure 0005459052
式(X)および式(XI)において、Rは独立して水素またはメチルであり;Rは水素、炭素数1〜20のアルキルまたは炭素数2〜20のアルケニルであり;RおよびRは独立して炭素数1〜20のアルキルまたはフェニルであり;Aは独立して単結合、−CO−または−CH−であり;

Figure 0005459052
式(XII)および式(XIII)において、Rはメチルまたは炭素数2〜30のアルキルであり、このアルキルの任意の−CH−は、−O−、−CH=CH−または−C≡C−で置き換えられてもよく;R10は炭素数6〜22のアルキルであり;R11は炭素数1〜22のアルキルであり;Aは独立して−O−または炭素数1〜6のアルキレンであり;Aは単結合または炭素数1〜3のアルキレンであり;環Tは1,4−フェニレンまたは1,4−シクロヘキシレンであり;hは0または1である。
[4] その他のジアミンが式(VIII−2)、式(VIII-4)〜式(VIII−6)、式(XII−2)、式(XII−4)および式(XII−6)で表されるジアミンから選択される少なくとも1つである、[3]項に記載の液晶配向剤。

Figure 0005459052

Figure 0005459052

Figure 0005459052

Figure 0005459052

Figure 0005459052
これらの式において、R23、R29およびR30は独立して炭素数1〜30のアルキル、または炭素数1〜30のアルコキシである。
[5] その他のジアミンが側鎖基を有するジアミンである式(VIII)および式(X)〜式(XIII)で表されるジアミンの群から選択される少なくとも1つと、側鎖基を持たないジアミンである式(I)〜式(VII)および式(XV)で表されるジアミンの群から選択される少なくとも1つとの混合物である、[1]項または[2]項に記載の液晶配向剤。

Figure 0005459052
式(VIII)において、Aは単結合、−O−、−CO−、−COO−、−OCO−、−CONH−、−CHO−、−CFO−、または炭素数1〜6のアルキレンであって、このアルキレンにおける任意の−CH−は−O−、−CH=CH−または−C≡C−で置き換えられてもよく;Rはステロイド骨格を有する基、炭素数3〜30のアルキル、炭素数1〜30のアルキルもしくは炭素数1〜30のアルコキシを置換基として有するフェニル、または式(IX)で表される基であって、この炭素数3〜30のアルキルにおける任意の−CH−は−O−、−CH=CH−または−C≡C−で置き換えられてもよく;

Figure 0005459052
式(IX)において、AおよびAは独立して単結合、−O−、−COO−、−OCO−、−CONH−、炭素数1〜4のアルキレン、炭素数1〜3のオキシアルキレン、または炭素数1〜3のアルキレンオキシであり;環Bおよび環Cは独立して1,4−フェニレンまたは1,4−シクロヘキシレンであり;RおよびRは独立してフッ素またはメチルであり、fおよびgは独立して0、1または2であり;c、dおよびeは独立して0〜3の整数であり、これらの合計は1以上であり;Rは炭素数1〜30のアルキル、炭素数1〜30のアルコキシ、または炭素数2〜30のアルコキシアルキルであり、これらのアルキル、アルコキシおよびアルコキシアルキルにおいて、任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく、そして任意の−CH−はジフルオロメチレンで置き換えられてもよく;

Figure 0005459052

Figure 0005459052
式(X)および式(XI)において、Rは独立して水素またはメチルであり;Rは水素、炭素数1〜20のアルキルまたは炭素数2〜20のアルケニルであり;RおよびRは独立して炭素数1〜20のアルキルまたはフェニルであり;Aは独立して単結合、−CO−または−CH−であり;

Figure 0005459052
式(XII)および式(XIII)において、Rはメチルまたは炭素数2〜30のアルキルであり、このアルキルの任意の−CH−は、−O−、−CH=CH−または−C≡C−で置き換えられてもよく;R10は炭素数6〜22のアルキルであり;R11は炭素数1〜22のアルキルであり;Aは独立して−O−または炭素数1〜6のアルキレンであり;Aは単結合または炭素数1〜3のアルキレンであり;環Tは1,4−フェニレンまたは1,4−シクロヘキシレンであり;hは0または1であり;

Figure 0005459052
式(I)〜式(VII)および式(XV)において、Xは炭素数2〜12の直鎖アルキレンであり;Yは独立して単結合、−O−、−CO−、−NH−、−N(CH)−、−CONH−、−NHCO−、−C(CH−、−C(CF−、−O−(CH−O−、−S−、−S−S−、−SO−、−S−(CH−S−または炭素数1〜12の直鎖アルキレンであり、tは1〜12の整数であり;ZおよびZは水素であるが、Yが−NH−、−N(CH)−、−CH−、−C(CH−または−C(CF−であるときには互いに結合して単結合を形成してもよく;環Dはフェニレンまたはピペラジン−1,4−ジイルであり;R33およびR34は独立して炭素数1〜3のアルキルまたはフェニルであり;Aは独立して炭素数1〜6のアルキレン、フェニレンまたはアルキル置換されたフェニレンであり;mは1〜10の整数であり;シクロヘキサン環またはベンゼン環の任意の水素は、フッ素、メチル、トリフルオロメチル、−OH、−COOH、−SOH、−PO、ベンジルまたはヒドロキシベンジルで置き換えられてもよい。
[6] その他のジアミンが式(VIII−2)、式(VIII-4)〜式(VIII−6)、式(XII−2)、式(XII−4)および式(XII−6)で表されるジアミンから選択される少なくとも1つと、式(IV−1)、式(IV−2)、式(IV−15)〜式(IV−17)、式(V−1)〜式(V−12)、式(V−33)、式(V−35)〜式(V−37)、式(VI−7)、式(VII−2)および式(XV−1)で表されるジアミンから選択される少なくとも1つとの混合物である、[5]項に記載の液晶配向剤。

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Figure 0005459052
これらの式において、R23、R29およびR30は独立して炭素数1〜30のアルキル、または炭素数1〜30のアルコキシである。
[7] ポリアミック酸が、式(N)で表されるジアミンの群から選択される少なくとも1つと、[3]項に記載の側鎖基を有するジアミンである式(VIII)および式(X)〜式(XIII)で表されるジアミンの群から選択される少なくとも1つとの混合物をテトラカルボン酸二無水物と反応させて得られるポリアミック酸と、[5]項に記載の側鎖基を持たないジアミンである式(I)〜式(VII)および式(XV)で表されるジアミンの群から選択される少なくとも1つまたはこの側鎖基を持たないジアミンの少なくとも1つと式(N)で表されるジアミンの群から選択される少なくとも1つとの混合物をテトラカルボン酸二無水物と反応させて得られるポリアミック酸との混合物である、[1]項に記載の液晶配向剤。
[8] ポリアミック酸が、式(N)で表されるジアミンの群から選択される少なくとも1つと、[3]項に記載の側鎖基を有するジアミンである式(VIII)および式(X)〜式(XIII)で表されるジアミンの群から選択される少なくとも1つと、[5]項に記載の側鎖基を持たないジアミンである式(I)〜式(VII)および式(XV)で表されるジアミンの群から選択される少なくとも1つとからなる混合物をテトラカルボン酸二無水物と反応させて得られるポリアミック酸と、前記の側鎖基を持たないジアミンの少なくとも1つまたはこの側鎖基を持たないジアミンの少なくとも1つと式(N)で表されるジアミンの群から選択される少なくとも1つとの混合物をテトラカルボン酸二無水物と反応させて得られるポリアミック酸との混合物である、[1]項に記載の液晶配向剤。
[9] ポリアミック酸が、式(N)で表されるジアミンの群から選択される少なくとも1つと、[5]項に記載の側鎖基を持たないジアミンである式(I)〜式(VII)および式(XV)で表されるジアミンの群から選択される少なくとも1つとの混合物をテトラカルボン酸二無水物と反応させて得られるポリアミック酸と、[3]項に記載の側鎖基を有するジアミンである式(VIII)および式(X)〜式(XIII)で表されるジアミンの群から選択される少なくとも1つまたはこの側鎖基を有するジアミンの少なくとも1つと前記の側鎖基を持たないジアミンの少なくとも1つとの混合物をテトラカルボン酸二無水物と反応させて得られるポリアミック酸との混合物である、[1]項に記載の液晶配向剤。
[10] 少なくとも2種類のテトラカルボン酸二無水物が芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族以外のテトラカルボン酸二無水物との混合物である、[1]〜[9]のいずれか1項に記載の液晶配向剤。
[11] 芳香族テトラカルボン酸二無水物が式(1)、式(2)、式(5)〜式(7)および式(17)で表される化合物の少なくとも1つである、[10]項に記載の液晶配向剤。

Figure 0005459052
[12] 芳香族テトラカルボン酸二無水物が式(1)で表される化合物である、[11]項に記載の液晶配向剤。
[13] 少なくとも2種類のテトラカルボン酸二無水物が式(1)、式(2)、式(5)〜式(7)および式(17)で表される芳香族テトラカルボン酸二無水物の少なくとも1つと、式(19)、式(23)、式(25)、式(35)〜式(39)、式(44)、式(49)、および式(68)で表される芳香族以外のテトラカルボン酸二無水物の少なくとも1つとの混合物である、[1]〜[9]のいずれか1項に記載の液晶配向剤。

Figure 0005459052

Figure 0005459052

Figure 0005459052

Figure 0005459052

Figure 0005459052
[14] 芳香族以外のテトラカルボン酸二無水物が式(19)、式(23)、式(37)(49)および式(68)で表される化合物の少なくとも1つである、[13]項に記載の液晶配向剤。

Figure 0005459052
[15] 芳香族テトラカルボン酸二無水物が式(1)で表される化合物であり、芳香族以外のテトラカルボン酸二無水物が式(19)で表される化合物である、[13]項に記載の液晶配向剤。
[16] [1]〜[15]のいずれか1項に記載の液晶配向剤の塗膜を加熱することによって形成される液晶配向膜。
[17] 1対の基板とこの基板の間に形成される液晶層と、液晶層に電圧を印加する電極と、[16]項に記載の液晶配向膜とを有する液晶表示素子。
本発明の液晶配向剤は、ジアミン(N)の少なくとも1つまたはこの(これらの)ジアミンと式(N)では表されないその他のジアミンとの混合物を、2種類以上のテトラカルボン酸二無水物と反応させることによって得られるポリアミック酸を含有する。このポリアミック酸は、ポリアミック酸の誘導体であってもよく、ポリアミック酸とその誘導体の混合物であってもよい。
ポリアミック酸の誘導体としては、1)ポリアミック酸を完全に脱水閉環反応させて得られるポリイミド、2)ポリアミック酸を部分的に脱水閉環反応させて得られる部分イミド化ポリアミック酸、3)ポリアミック酸エステル、4)テトラカルボン酸二無水物の一部をジカルボン酸に置き換えることによって得られるポリアミック酸−ポリアミド共重合体、5)このポリアミック酸−ポリアミド共重合体の一部もしくは全部を脱水閉環反応させて得られるポリアミドイミドが挙げられる。これらのうちポリイミドおよび部分イミド化ポリアミック酸が好ましく、ポリイミドがより好ましい。本明細書では、実施例を除いて、ポリアミック酸およびその誘導体の総称として「ポリアミック酸」を用いる。
本発明に用いられるジアミンは、下記の式(N)で表される分子内に2つの1級アミノ基およびこの1級アミノ基以外の窒素原子を有する化合物である。

Figure 0005459052
式(N)において、YおよびYは独立して、単結合または炭素数1〜7の直鎖アルキレンである。
ジアミン(N)の例を次に示す。

Figure 0005459052
これらのジアミンの中ではジアミン(N−3)および(N−4)が好ましく、ジアミン(N−4)がより好ましい。
本発明の液晶配向剤に用いるポリアミック酸を製造するときの原料であるジアミンは、ジアミン(N)の群から選択される少なくとも1つのジアミンだけであってもよいし、これら以外のその他のジアミンの少なくとも1つをさらに含んでいてもよい。即ち、ジアミン(N)の群から選択されるジアミンの使用割合は、ポリアミック酸製造に用いるジアミン原料に占める割合として1〜100モル%であり、1〜50モル%であることが好ましく、5〜20モル%であることがより好ましい。ジアミン(N)をこのような使用割合にすることによって、液晶表示素子のイオン密度を低減させ、かつ、低いイオン密度を長期間に渡り保持することが出来る。さらに、この液晶配向剤は高い保存安定性を示すようになる。
その他のジアミンはその構造の違いによって2種類に分けることができる。即ち、2つのアミノ基を結ぶ骨格を主鎖として見たときに、主鎖から分岐する基、即ち側鎖基を有するジアミンと側鎖基を持たないジアミンである。側鎖基を有するジアミンをテトラカルボン酸二無水物と反応させることによって、ポリマーの主鎖に対して多数の側鎖基を有するポリアミック酸が得られる。このようなポリマー主鎖に対して側鎖基を有するポリアミック酸を使用するとき、このポリマーを含有する液晶配向剤から形成される液晶配向膜は、液晶表示素子におけるプレチルト角を大きくすることができる。即ち、この側鎖基はプレチルト角を大きくする効果を有する基である。このような効果を有する側鎖基は炭素数3以上の基である必要があり、具体的な例として炭素数3以上のアルキル、炭素数3以上のアルコキシ、炭素数3以上のアルコキシアルキル、およびステロイド骨格を有する基を挙げることができる。1つ以上の環を有する基であって、その末端の環が置換基として炭素数1以上のアルキル、炭素数1以上のアルコキシおよび炭素数2以上のアルコキシアルキルのいずれか1つを有する基も側鎖基としての効果を有する。本発明における側鎖基はこれらの基から選ばれる。以下の説明では、このような側鎖基を有するジアミンを側鎖型ジアミンと称することがある。そして、このような側鎖基を持たないジアミンを非側鎖型ジアミンと称することがある。
そして、側鎖型ジアミンと非側鎖型ジアミンを適切に使い分けることにより、上記の種々の表示素子のそれぞれに必要なプレチルト角に対応することができる。即ち、TN方式やVA方式に代表される縦電界方式では比較的大きなプレチルト角が必要となるため、側鎖型ジアミンが主に用いられる。このとき、さらにプレチルト角をコントロールするためには非側鎖型ジアミンを併用すればよい。非側鎖型ジアミンと側鎖型ジアミンの配合比率は、目的とするプレチルト角の大きさに応じて決めればよい。もちろん、側鎖基を適当に選ぶことにより、側鎖型ジアミンのみを用いて対応することも可能である。IPS方式のような横電界方式ではプレチルト角が小さく、高い液晶配向性が必要となるため、非側鎖型ジアミンの少なくとも1つを用いればよい。このように、本発明の液晶配向剤は、任意の種類の液晶表示素子に適用することができる。
側鎖基の具体例は次の通りである。
まず最初に、アルキル、アルキルオキシ、アルキルオキシアルキル、アルキルカルボニル、アルキルカルボニルオキシ、アルキルオキシカルボニル、アルキルアミノカルボニル、アルケニル、アルケニルオキシ、アルケニルカルボニル、アルケニルカルボニルオキシ、アルケニルオキシカルボニル、アルケニルアミノカルボニル、アルキニル、アルキニルオキシ、アルキニルカルボニル、アルキニルカルボニルオキシ、アルキニルオキシカルボニル、アルキニルアミノカルボニル等を挙げることができる。そして、これらの基におけるアルキル、アルケニルおよびアルキニルは、いずれも炭素数3以上の基である。但し、アルキルオキシアルキルにおいては、全体として炭素数3以上であればよい。なお、これらの基は直鎖状であっても分岐鎖状であってもよい。
次に、末端の環が置換基として炭素数1以上のアルキル、炭素数1以上のアルコキシまたは炭素数2以上のアルコキシアルキルを有することを条件に、フェニル、フェニルアルキル、フェニルアルキルオキシ、フェニルオキシ、フェニルカルボニル、フェニルカルボニルオキシ、フェニルオキシカルボニル、フェニルアミノカルボニル、フェニルシクロヘキシルオキシ、炭素数3以上のシクロアルキル、シクロヘキシルアルキル、シクロヘキシルオキシ、シクロヘキシルオキシカルボニル、シクロヘキシルフェニル、シクロヘキシルフェニルアルキル、シクロヘキシルフェニルオキシ、ビス(シクロヘキシル)オキシ、ビス(シクロヘキシル)アルキル、ビス(シクロヘキシル)フェニル、ビス(シクロヘキシル)フェニルアルキル、ビス(シクロヘキシル)オキシカルボニル、ビス(シクロヘキシル)フェニルオキシカルボニル、およびシクロヘキシルビス(フェニル)オキシカルボニル等の環構造の基を挙げることができる。
さらに、2個以上のベンゼン環を有する基、2個以上のシクロヘキサン環を有する基、またはベンゼン環およびシクロヘキサン環で構成される2環以上の基であって、結合基が独立して単結合、−O−、−COO−、−OCO−、−CONH−もしくは炭素数1〜3のアルキレンであり、末端の環が置換基として炭素数1以上のアルキル、炭素数1以上のフッ素置換アルキル、炭素数1以上のアルコキシ、または炭素数2以上のアルコキシアルキルを有する環集合基を挙げることができる。もちろん、ステロイド骨格を有する基も側鎖基として有効である。
側鎖型ジアミンの好ましい例は、式(VIII)および式(X)〜式(XIII)で表されるジアミンである。

Figure 0005459052
式(VIII)において、Aは単結合、−O−、−CO−、−COO−、−OCO−、−CONH−、−CHO−、−CFO−、または炭素数1〜6のアルキレンであり、このアルキレンにおける任意の−CH−は−O−、−CH=CH−または−C≡C−で置き換えられてもよい。Aの好ましい例は単結合、−O−、−COO−、−OCO−、−CHO−、および炭素数1〜3のアルキレンであり、特に好ましい例は単結合、−O−、−COO−、−OCO−、−CHO−、−CH−および−CHCH−である。Rはステロイド骨格を有する基、炭素数3〜30のアルキル、炭素数1〜30のアルキルもしくは炭素数1〜30のアルコキシを置換基として有するフェニル、または式(IX)で表される基であり、この炭素数3〜30のアルキルにおける任意の−CH−は−O−、−CH=CH−または−C≡C−で置き換えられてもよい。Rの好ましい例は炭素数3〜30のアルキル、炭素数1〜30のアルキルもしくは炭素数1〜30のアルコキシを置換基として有するフェニル、および式(IX)で表される基である。2つのアミノ基のベンゼン環との結合位置は、Aの結合位置を1位とするとき、3位と5位または2位と5位であることが好ましい。

Figure 0005459052
式(IX)において、AおよびAは独立して単結合、−O−、−COO−、−OCO−、−CONH−、炭素数1〜4のアルキレン、炭素数1〜3のオキシアルキレン、または炭素数1〜3のアルキレンオキシであり、好ましくは単結合または炭素数1〜4のアルキレンである。環Bおよび環Cは独立して1,4−フェニレンまたは1,4−シクロヘキシレンである。RおよびRは独立してフッ素またはメチルである。fおよびgは独立して0、1または2であり、好ましくは0である。c、dおよびeは独立して0〜3の整数であり、これらの合計は1以上である。Rは炭素数1〜30のアルキル、炭素数1〜30のアルコキシ、または炭素数2〜30のアルコキシアルキルであり、これらのアルキル、アルコキシおよびアルコキシアルキルにおいて、任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく、そして、任意の−CH−はジフルオロメチレンで置き換えられてもよい。Rの好ましい例は炭素数1〜30のアルキルおよび炭素数1〜30のアルコキシである。

Figure 0005459052

Figure 0005459052
式(X)および式(XI)において、Rは独立して水素またはメチルである。Rは水素、炭素数1〜20のアルキルまたは炭素数2〜20のアルケニルである。RおよびRはそれぞれ独立して炭素数1〜20のアルキルまたはフェニルである。Aは独立して単結合、−CO−または−CH−である。式(X)において、2つの「NH−Ph−A−O−」の一方はステロイド骨格の3位に結合し、もう一方は6位に結合していることが好ましい。また、2つのアミノ基のベンゼン環との結合位置は、いずれもAの結合位置に対して、メタ位またはパラ位であることが好ましい。式(XI)において、2つの「NH−(R−)Ph−A−O−」のベンゼン環との結合位置は、いずれもステロイド骨格が結合している炭素に対してメタ位またはパラ位であることが好ましい。また、2つのアミノ基のベンゼン環との結合位置は、いずれもAの結合位置に対して、メタ位またはパラ位であることが好ましい。

Figure 0005459052

Figure 0005459052
式(XII)および式(XIII)において、Rは炭素数1〜30のアルキルであり、このアルキルの任意の−CH−は、−O−、−CH=CH−または−C≡C−で置き換えられてもよい。R10は炭素数6〜22のアルキルであり、R11は炭素数1〜22のアルキルである。Aは独立して−O−または炭素数1〜6のアルキレンである。Aは単結合または炭素数1〜3のアルキレンである。環Tは1,4−フェニレンまたは1,4−シクロヘキシレンである。hは0または1である。式(XII)において、2つのアミノ基のベンゼン環との結合位置は、いずれもAの結合位置に対してメタ位またはパラ位であることが好ましい。式(XIII)において、2つのアミノ基のベンゼン環との結合位置は、いずれもAの結合位置に対してメタ位またはパラ位であることが好ましい。
ジアミン(VIII)の具体例を次に示す。

Figure 0005459052
式(VIII−1)〜式(VIII−11)において、R23は炭素数1〜30のアルキルまたは炭素数1〜30のアルコキシであり、好ましくは炭素数5〜25のアルキルまたは炭素数5〜25のアルコキシである。R24は炭素数1〜30のアルキルまたは炭素数1〜30のアルコキシであり、好ましくは炭素数3〜25のアルキルまたは炭素数3〜25のアルコキシである。

Figure 0005459052
式(VIII−12)〜式(VIII−17)において、R25は炭素数4〜30のアルキルであり、好ましくは炭素数6〜25のアルキルである。R26は炭素数6〜30のアルキルであり、好ましくは炭素数8〜25のアルキルである。

Figure 0005459052

Figure 0005459052
式(VIII−18)〜式(VIII−37)において、R27は炭素数1〜30のアルキルまたは炭素数1〜30のアルコキシであり、好ましくは炭素数3〜25のアルキルまたは炭素数3〜25のアルコキシである。R28は水素、フッ素、炭素数1〜30のアルキル、炭素数1〜30のアルコキシ、−C≡N、−OCHF、−OCHFまたは−OCFであり、好ましくは炭素数3〜25のアルキル、または炭素数3〜25のアルコキシである。

Figure 0005459052
上記のジアミン(VIII−1)〜ジアミン(VIII−43)のうち、ジアミン(VIII−1)〜ジアミン(VIII−11)が好ましく、ジアミン(VIII−2)およびジアミン(VIII−4)〜ジアミン(VIII−6)がより好ましい。
ジアミン(X)の具体例を次に示す。

Figure 0005459052
ジアミン(XI)の具体例を次に示す。

Figure 0005459052

Figure 0005459052

Figure 0005459052
ジアミン(XII)の具体例を次に示す。

Figure 0005459052

Figure 0005459052
式(XII−1)〜式(XII−3)において、R29は炭素数1〜30のアルキルまたは炭素数1〜30のアルコキシであり、好ましくは炭素数3〜30のアルキルまたは炭素数3〜30のアルコキシである。式(XII−4)〜式(XII−8)において、R30は炭素数1〜30のアルキルまたは炭素数1〜30のアルコキシであり、好ましくは炭素数3〜30のアルキルまたは炭素数3〜30のアルコキシである。
ジアミン(XIII)の具体例を次に示す。

Figure 0005459052
式(XIII−1)〜式(XIII−3)において、R31は炭素数6〜22のアルキルであり、好ましくは炭素数6〜20のアルキルである。R32は炭素数1〜22のアルキルであり、好ましくは炭素数1〜10のアルキルである。
上記の側鎖型ジアミンの具体例のうち、ジアミン(VIII−2)、ジアミン(VIII−4)〜ジアミン(VIII−6)、ジアミン(XII−2)、ジアミン(XII−4)およびジアミン(XII−6)が好ましい。
上記のような側鎖型ジアミンは、液晶表示素子において大きなプレチルト角を発現させることを目的とする場合には、本発明の液晶配向剤に用いるポリマーを製造するに際して、ジアミン総量における割合を1〜90モル%とすることが好ましく、5〜70モル%とすることがより好ましい。
前記のような側鎖基を持たないジアミン、即ち非側鎖型ジアミンの好ましい例として、式(I)〜式(VII)および式(XV)で表される化合物が挙げられる。

Figure 0005459052
これらの式において、Xは炭素数2〜12の直鎖アルキレンである。Yは独立して単結合、−O−、−CO−、−NH−、−N(CH)−、−CONH−、−NHCO−、−C(CH−、−C(CF−、−O−(CH−O−、−S−、−S−S−、−SO−、−S−(CH−S−または炭素数1〜12の直鎖アルキレンであって、tは1〜12の整数である。ZおよびZは水素であるが、Yが−NH−、−N(CH)−、−CH−、−C(CH−または−C(CF−であるときには互いに結合して単結合を形成してもよい。環Dはフェニレンまたは1,4−ジアザシクロヘキシレンである。R33およびR34はそれぞれ独立して炭素数1〜3のアルキルまたはフェニルである。Aは独立して炭素数1〜6のアルキレン、フェニレンまたはアルキル置換されたフェニレンである。mは1〜10の整数である。シクロヘキサン環またはベンゼン環の任意の水素は、フッ素、メチル、−OH、−COOH、−SOH、−PO、ベンジルまたはヒドロキシベンジルで置き換えられてもよい。
ジアミン(I)の例を次に示す。

Figure 0005459052
ジアミン(II)の具体例を次に示す。

Figure 0005459052
ジアミン(III)の具体例を次に示す。

Figure 0005459052
ジアミン(IV)の具体例を次に示す。

Figure 0005459052
ジアミン(V)の具体例を次に示す。

Figure 0005459052

Figure 0005459052

Figure 0005459052
ジアミン(VI)の具体例を次に示す。

Figure 0005459052
ジアミン(VII)の具体例を次に示す。

Figure 0005459052
ジアミン(XV)の具体例を次に示す。

Figure 0005459052
上記の非側鎖型ジアミンのうち、ジアミン(IV−1)〜ジアミン(IV−5)、ジアミン(IV−15)〜ジアミン(IV−17)、ジアミン(V−1)〜ジアミン(V−12)、ジアミン(V−26)、ジアミン(V−27)、ジアミン(V−31)、ジアミン(V−33)、ジアミン(V−35)〜ジアミン(V−37)、ジアミン(VI−1)、ジアミン(VI−2)、ジアミン(VI−6)、ジアミン(VII−1)〜ジアミン(VII−5)およびジアミン(XV−1)が好ましく、ジアミン(IV−1)、ジアミン(IV−2)、ジアミン(IV−15)〜ジアミン(IV−17)、ジアミン(V−1)〜ジアミン(V−12)、ジアミン(V−33)、ジアミン(V−35)〜ジアミン(V−37)、ジアミン(VI−7)、ジアミン(VII−2)およびジアミン(XV−1)がより好ましい。
このような非側鎖型ジアミンは、液晶表示素子において低いイオン密度をもたらすために、本発明の液晶配向剤におけるポリアミック酸の原料としてのジアミン総量においてモル比で1〜98%含まれることが好ましく、10〜95%含まれることがより好ましい。
本発明で用いるジアミンには、前記のジアミン(I)〜ジアミン(VIII)、ジアミン(X)〜ジアミン(XIII)およびジアミン(XV)以外のジアミンを用いることができる。このようなジアミンとしては、例えば、フルオレン環を有するフルオレン系ジアミンおよびジアミン(VIII)〜ジアミン(XII)以外の側鎖型ジアミンが挙げられる。
ジアミン(VIII)〜ジアミン(XII)以外の側鎖型ジアミンの例はジアミン(1')〜ジアミン(8')である。

Figure 0005459052

Figure 0005459052

Figure 0005459052
これらの式において、R35およびR36はそれぞれ独立して炭素数3〜30のアルキル基である。これらのジアミンは、本発明の液晶配向剤におけるポリアミック酸を製造する際に、本発明の効果が損なわれない程度の範囲で用いることができる。
ポリアミック酸を製造する際には、基本的に等モル量のテトラカルボン酸二無水物成分とジアミン成分を有機溶剤で混合する。このとき塩が沈殿するが、反応温度を通常70〜200℃、好ましくは70〜150℃、より好ましくは70〜100℃にして、混合物中の沈殿物が溶解し、均一の溶液になるまで反応を行った後、溶液の温度を室温に下げて反応を続ける。
ポリアミック酸を製造する際には、ジアミンにモノアミンを添加してもよい。モノアミンを添加することによって、ポリアミック酸を生成する際の重合反応のターミネーションを起こすことができ、それ以上の重合反応の進行を抑えることができる。即ち、得られる重合体(ポリアミック酸またはその誘導体)の分子量を容易に制御することができ、例えば本発明の効果が損なわれることなく液晶配向剤の塗布特性を改善することができる。モノアミンの添加割合は、目的とするポリアミック酸の分子量を考慮して適宜調整すればよい。本発明の効果が損なわれなければ、二種以上のモノアミンを添加してもよい。モノアミンの例はアニリン、4−ヒドロキシアニリン、シクロヘキシルアミン、n−ブチルアミン、n−ペンチルアミン、n−ヘキシルアミン、n−ヘプチルアミン、n−オクチルアミン、n−ノニルアミン、n−デシルアミン、n−ウンデシルアミン、n−ドデシルアミン、n−トリデシルアミン、n−テトラデシルアミン、n−ペンタデシルアミン、n−ヘキサデシルアミン、n−ヘプタデシルアミン、n−オクタデシルアミン、およびn−エイコシルアミンである。
本発明では、ジアミンをテトラカルボン酸二無水物と反応させてポリアミック酸を得るに際して、前記のようにジアミン(N)の群から選択されるジアミンとその他のジアミンとの混合物を用いることができる。このとき、その他のジアミンの好ましい例の1つは、ジアミン(VIII)およびジアミン(X)〜ジアミン(XIII)の群から選ばれる側鎖型ジアミンの少なくとも1つである。その他のジアミンのもう1つの好ましい例は、ジアミン(VIII)およびジアミン(X)〜ジアミン(XIII)の群から選ばれる側鎖型ジアミンの少なくとも1つとジアミン(I)〜ジアミン(VII)およびジアミン(XV)の群から選ばれる非側鎖型ジアミンの少なくとも1つとの混合物である。前記の[3]〜[6]項はジアミン(N)の群から選択されるジアミン、側鎖型ジアミンおよび非側鎖型ジアミンの組み合わせの好ましい例である。
本発明では、上記のように混合ジアミンをテトラカルボン酸と反応させて得られたポリアミック酸をポリマー成分としてもよいし、原料の異なるポリアミック酸の混合物をポリマー成分としてもよい。ポリアミック酸の混合物の好ましい例の1つは、ジアミン(N)の群から選択されるジアミンの少なくとも1つと、ジアミン(VIII)およびジアミン(X)〜ジアミン(XIII)の群から選ばれる側鎖型ジアミンの少なくとも1つとの混合物、または、このジアミン混合物にジアミン(I)〜ジアミン(VII)およびジアミン(XV)の群から選ばれる非側鎖型ジアミンの少なくとも1つを更に加えた混合物をテトラカルボン酸二無水物と反応させて得られるポリアミック酸と、前記の非側鎖型ジアミンの少なくとも1つまたはこの非側鎖型ジアミンの少なくとも1つとジアミン(N)の群から選択されるジアミンの少なくとも1つとの混合物をテトラカルボン酸二無水物と反応させて得られるポリアミック酸との混合物である。
ポリアミック酸の混合物の好ましい例のもう1つは、ジアミン(N)の群から選択されるジアミンの少なくとも1つと、ジアミン(I)〜ジアミン(VII)およびジアミン(XV)の群から選ばれる非側鎖型ジアミンの少なくとも1つとの混合物をテトラカルボン酸二無水物と反応させて得られるポリアミック酸と、ジアミン(VIII)およびジアミン(X)〜ジアミン(XIII)の群から選ばれる側鎖型ジアミンの少なくとも1つまたはこの側鎖型ジアミンの少なくとも1つと前記の非側鎖型ジアミンの少なくとも1つとの混合物をテトラカルボン酸二無水物と反応させて得られるポリアミック酸との混合物である。前記の[7]〜[9]項にはポリマー成分がポリアミック酸の混合物である好ましい例が記載されている。
本発明では少なくとも2種類のテトラカルボン酸二無水物を用いる。テトラカルボン酸二無水物の好ましい例は芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族以外のテトラカルボン酸二無水物の混合物である。芳香族以外のテトラカルボン酸二無水物の例は、脂環式テトラカルボン酸二無水物および脂肪族テトラカルボン酸二無水物である。なお、本発明における芳香族テトラカルボン酸は、4つのカルボキシル基が1つまたは複数の芳香環に直接結合しているテトラカルボン酸である。
芳香族テトラカルボン酸二無水物の例を次に示す。

Figure 0005459052

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上記の芳香族テトラカルボン酸二無水物のうち、酸無水物(1)、酸無水物(2)、酸無水物(5)〜酸無水物(7)、酸無水物(11)および酸無水物(17)が好ましく、酸無水物(1)が特に好ましい。
脂環式テトラカルボン酸二無水物の例を次に示す。

Figure 0005459052

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Figure 0005459052
上記の脂環式テトラカルボン酸二無水物のうち、酸無水物(19)、酸無水物(25)、酸無水物(35)〜酸無水物(37)、酸無水物(39)、酸無水物(44)および酸無水物(49)が好ましく、酸無水物(19)がより好ましい。
脂肪族テトラカルボン酸二無水物の例を次に示す。下記の例のうち酸無水物(23)および酸無水物(68)が好ましい。

Figure 0005459052
本発明では、上記の酸無水物(1)〜酸無水物(68)以外のテトラカルボン酸二無水物も用いることができる。その例として側鎖基を有するテトラカルボン酸二無水物が挙げられる。側鎖基を有するテトラカルボン酸二無水物を用いることによって、液晶表示素子におけるプレチルト角を大きくすることができる。側鎖基を有するテトラカルボン酸二無水物としては、例えばステロイド骨格を有する酸無水物(69)および酸無水物(70)が挙げられる。

Figure 0005459052
ポリアミック酸を製造する際には、テトラカルボン酸二無水物にジカルボン酸無水物を添加して用いてもよい。そうすることによって、ポリアミック酸を生成する際の重合反応のターミネーションを起こすことができ、それ以上の重合反応の進行を抑えることができる。即ち、得られる重合体(ポリアミック酸)の分子量を容易に制御することができ、例えば本発明の効果が損なわれることなく液晶配向剤の塗布特性を改善することができる。ジカルボン酸無水物の添加割合は、目的とするポリアミック酸の分子量を考慮して適宜調整すればよい。また、添加するジカルボン酸無水物の種類も、本発明の効果が損なわれなければ2種以上でもよい。ジカルボン酸無水物の例は、無水マレイン酸、無水フタル酸、無水イタコン酸、n−デシルサクシニック酸無水物、n−ドデシルサクシニック酸無水物、n−テトラデシルサクシニック酸無水物、n−ヘキサデシルサクシニック酸無水物およびシクロヘキサン酸無水物である。
本発明では、ポリアミック酸を製造する際に、モノイソシアネート化合物をさらに添加してもよい。モノイソシアネート化合物を添加することによって、得られるポリアミック酸の末端が修飾され、分子量が調節される。この末端修飾型のポリアミック酸を用いることにより、例えば本発明の効果が損なわれることなく液晶配向剤の塗布特性を改善することができる。モノイソシアネート化合物の添加量は、ジアミンおよびテトラカルボン酸二無水物の総量に対して1〜10モル%であることが、前記の観点から好ましい。モノイソシアネート化合物としては、例えばフェニルイソシアネートおよびナフチルイソシアネートが挙げられる。
本発明で使用するポリアミック酸は、ポリイミドの膜の形成に用いられる公知のポリアミック酸と同様に製造することができる。テトラカルボン酸二無水物の総仕込み量は、ジアミンの総モル数とほぼ等モル(モル比0.9〜1.1程度)とすることが好ましい。
ポリアミック酸の分子量は、ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)で、10,000〜500,000であることが好ましく、20,000〜200,000であることがより好ましい。ポリアミック酸の分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法による測定値から求めることができる。
ポリアミック酸は、多量の貧溶剤で沈殿させて得られる固形分をIR、NMRで分析することによりその存在を確認することができる。ポリアミック酸をKOHやNaOH等の強アルカリの水溶液によって分解し、その分解物の有機溶剤による抽出物をGC、HPLCもしくはGC−MSで分析することにより、使用されている原料を確認することができる。
本発明の液晶配向剤は、前記ポリアミック酸以外の他の成分をさらに含有してもよい。例えば、本発明の液晶配向剤は、液晶表示素子の電気特性を長期に安定させる観点から、アルケニル置換ナジイミド化合物をさらに含有していてもよい。このアルケニル置換ナジイミド化合物の好ましい例を次に示す。

Figure 0005459052

Figure 0005459052

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本発明の液晶配向剤は、例えば液晶表示素子の電気特性を長期に安定させる観点から、ラジカル重合性不飽和二重結合を有する化合物をさらに含有していてもよい。ラジカル重合性不飽和二重結合を有する化合物としては、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸アミド等の(メタ)アクリル酸誘導体、およびビスマレイミドが挙げられ、ラジカル重合性不飽和二重結合を2つ以上有する(メタ)アクリル酸誘導体がより好ましい。
また例えば、本発明の液晶配向剤は、液晶表示素子における電気特性の長期安定性の観点から、オキサジン化合物をさらに含有していてもよい。オキサジン化合物としては、例えば式(a)〜式(f)に示す化合物が挙げられる。

Figure 0005459052

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Figure 0005459052
式(a)〜式(f)において、RおよびRは炭素数1〜30の有機基であり;R〜Rは水素または炭素数1〜6の炭化水素基であり;Xは単結合、−O−、−S−、−S−S−、−SO−、−CO−、−CONH−、−NHCO−、−C(CH−、−C(CF−、−(CH−、−O−(CH−O−、−S−(CH−S−であって、mは1〜6の整数であり;Yは独立して単結合、−O−、−S−、−CO−、−C(CH−、−C(CF−または炭素数1〜3のアルキレンである。
本発明の液晶配向剤は、例えば液晶表示素子における電気特性の長期安定性の観点から、分子内にエポキシ環を1つまたは2つ以上有するエポキシ化合物をさらに含有してもよい。このエポキシ化合物はエポキシ環を有するモノマー、オリゴマーまたは重合体であってもよい。
本発明の液晶配向剤は各種添加剤をさらに含有していてもよい。各種添加剤としては、例えばポリアミック酸およびその誘導体以外のポリマー、および低分子化合物が挙げられ、それぞれの目的に応じて選択して使用することができる。このポリマーとしては、有機溶剤に可溶性のポリマーが挙げられる。このようなポリマーを本発明の液晶配向剤に添加することは、形成される液晶配向膜の電気特性や配向性を制御する観点から好ましい。該ポリマーとしては、例えばポリアミド、ポリウレタン、ポリウレア、ポリエステル、ポリエポキサイド、ポリエステルポリオール、シリコーン変性ポリウレタン、およびシリコーン変性ポリエステルが挙げられる。
前記低分子化合物としては、例えば1)塗布性の向上を望むときにはこの目的に沿った界面活性剤、2)帯電防止の向上を必要とするときは帯電防止剤、3)基板との密着性や耐ラビング性の向上を望むときにはシランカップリング剤やチタン系のカップリング剤、また、4)低温でイミド化を進行させる場合はイミド化触媒が挙げられる。
シランカップリング剤としては、例えばビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルトリメトキシシラン、パラアミノフェニルトリメトキシシラン、パラアミノフェニルトリエトキシシラン、メタアミノフェニルトリメトキシシラン、メタアミノフェニルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、N−(1,3−ジメチルブチリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロピルアミン、およびN,N’−ビス[3−(トリメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミンが挙げられる。
イミド化触媒としては、例えばトリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン等の脂肪族アミン類;N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジエチルアニリン、メチル置換アニリン、ヒドロキシ置換アニリン等の芳香族アミン類;ピリジン、メチル置換ピリジン、ヒドロキシ置換ピリジン、キノリン、メチル置換キノリン、ヒドロキシ置換キノリン、イソキノリン、メチル置換イソキノリン、ヒドロキシ置換イソキノリン、イミダゾール、メチル置換イミダゾール、ヒドロキシ置換イミダゾール等の環式アミン類が挙げられる。前記イミド化触媒は、N,N−ジメチルアニリン、o−ヒドロキシアニリン、m−ヒドロキシアニリン、p−ヒドロキシアニリン、o−ヒドロキシピリジン,m−ヒドロキシピリジン,p−ヒドロキシピリジン、およびイソキノリンから選ばれる一種または二種以上であることが好ましい。
本発明の液晶配向剤は、液晶配向剤の塗布性や前記ポリアミック酸の濃度の調整の観点から、溶剤をさらに含有していてもよい。この溶剤は、ポリマー成分を溶解する能力を持った溶剤であれば格別制限なく適用可能である。前記溶剤は、ポリアミック酸、可溶性ポリイミド等のポリマー成分の製造工程や用途面で通常使用されている溶剤を広く含み、使用目的に応じて、適宜選択できる。前記溶剤は一種でも二種以上の混合溶剤であってもよい。このような溶剤としては、前記ポリアミック酸の親溶剤や、塗布性改善を目的とした他の溶剤が挙げられる。
ポリアミック酸に対し親溶剤である非プロトン性極性有機溶剤としては、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルイミダゾリジノン、N−メチルカプロラクタム、N−メチルプロピオンアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、ジエチルアセトアミド、γ−ブチロラクトン等のラクトンが挙げられる。
塗布性改善等を目的とした他の溶剤の例としては、乳酸アルキル、3−メチル−3−メトキシブタノール、テトラリン、イソホロン、エチレングリコールモノアルキルエーテル(例えば、エチレングリコールモノブチルエーテル)、ジエチレングリコールモノアルキルエーテル(例えば、ジエチレングリコールモノエチルエーテル)、エチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート、エチレングリコールモノフェニルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノアルキルエーテル、プロピレングリコールモノアルキルエーテル(例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル)、マロン酸ジアルキル(例えば、マロン酸ジエチル)、ジプロピレングリコールモノアルキルエーテル(例えば、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル)、およびこれらの化合物の末端OH基をエステル化したアセテート類が挙げられる。
これらのうち特に好ましい溶剤は、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルイミダゾリジノン、γ−ブチロラクトン、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、およびジプロピレングリコールモノメチルエーテルである。
本発明において液晶配向剤中の前記ポリアミック酸を含むポリマー成分の濃度は、特に限定されないが、0.1〜40重量%が好ましい。該液晶配向剤を基板に塗布するときには、膜厚調整のため含有されているポリマー成分を予め溶剤により希釈する操作が必要とされることがある。このとき液晶配向剤に対して溶剤を容易に混合するのに適した粘度に液晶配向剤の粘度を調整する観点から、前記ポリマー成分の濃度は40重量%以下であることが好ましい。
また液晶配向剤中における前記ポリマー成分の濃度は、液晶配向剤の塗布方法に応じて調整される場合もある。液晶配向剤の塗布方法がスピンナー法や印刷法のときには、膜厚を良好に保つために、前記ポリマー成分の濃度を通常10重量%以下とすることが多い。その他の塗布方法、例えばディッピング法やインクジェット法では更に濃度を低くすることもあり得る。一方、前記ポリマー成分の濃度が0.1重量%以上であると、得られる液晶配向膜の膜厚が最適となり易い。従って、前記ポリマー成分の濃度は、通常のスピンナー法や印刷法等では0.1重量%以上、好ましくは0.5〜10重量%である。しかしながら、液晶配向剤の塗布方法によっては、更に低い濃度で使用してもよい。
なお、液晶配向膜の作製に用いる場合において、本発明の液晶配向剤の粘度は、この液晶配向剤の膜を形成する手段や方法に応じて決めることができる。例えば、印刷機を用いて液晶配向剤の膜を形成する場合は、十分な膜厚を得る観点から5mPa・s以上であることが好ましく、また印刷ムラを抑制する観点から100mPa・s以下であることが好ましく、より好ましくは10〜80mPa・sである。スピンコートによって液晶配向剤を塗布して液晶配向剤の膜を形成する場合は、同様の観点から、5〜200mPa・sであることが好ましく、より好ましくは10〜100mPa・sである。液晶配向剤の粘度は、溶剤による希釈や攪拌を伴う養生によって小さくすることができる。
本発明の液晶配向膜は、前述した本発明の液晶配向剤の塗膜が加熱されて形成される膜である。本発明の液晶配向膜は、液晶配向剤から液晶配向膜を作製する通常の方法によって得ることができ、例えば本発明の液晶配向膜は、本発明の液晶配向剤の塗膜を形成する工程と、これを加熱して焼成する工程とによって得ることができる。本発明の液晶配向膜については、必要に応じて、前記焼成工程で得られる膜をラビング処理してもよい。
前記塗膜は、通常の液晶配向膜の作製と同様に、液晶表示素子における基板に本発明の液晶配向剤を塗布することによって形成することができる。前記基板には、ITO(Indium TinOxide)電極等の電極やカラーフィルタ等が設けられていてもよいガラス製の基板が挙げられる。
液晶配向剤を基板に塗布する方法としてはスピンナー法、印刷法、ディッピング法、滴下法、インクジェット法等が一般に知られている。これらの方法は本発明においても同様に適用可能である。
前記塗膜の焼成は、前記ポリアミック酸が脱水・閉環反応を呈するのに必要な条件で行うことができる。前記塗膜の焼成は、オーブンまたは赤外炉の中で加熱処理する方法、ホットプレート上で加熱処理する方法等が一般に知られている。これらの方法も本発明において同様に適用可能である。一般に150〜300℃程度の温度で1分間〜3時間行うことが好ましい。
前記ラビング処理は、通常の液晶配向膜の配向処理のためのラビング処理と同様に行うことができ、本発明の液晶配向膜において十分なリタデーションが得られる条件であればよい。特に好ましい条件は、毛足押し込み量0.2〜0.8mm、ステージ移動速度5〜250mm/sec、ローラー回転速度500〜2,000rpmである。液晶配向膜の配向処理方法としては、ラビング法の他に、光配向法や転写法等が一般に知られている。本発明の効果が得られる範囲において、これらの他の配向処理方法を前記ラビング処理において併用してもよい。
本発明の液晶配向膜は、前述した工程以外の他の工程をさらに含む方法によって好適に得られる。このような他の工程としては、前記塗膜を乾燥させる工程や、ラビング処理前後の膜を洗浄液で洗浄する工程等が挙げられる。
乾燥工程は、前記焼成工程と同様に、オーブンまたは赤外炉の中で加熱処理する方法、ホットプレート上で加熱処理する方法等が一般に知られている。これらの方法も前記乾燥工程に同様に適用可能である。乾燥工程は溶剤の蒸発が可能な範囲内の温度で実施することが好ましく、前記焼成工程における温度に対して比較的低い温度で実施することがより好ましい。
配向処理の前後における液晶配向膜の洗浄液による洗浄方法としては、ブラッシング、ジェットスプレー、蒸気洗浄または超音波洗浄等が挙げられる。これらの方法は単独で行ってもよいし、併用してもよい。洗浄液としては純水または、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等の各種アルコール類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、塩化メチレン等のハロゲン系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類を用いることができるが、これらに限定されるものではない。もちろん、これらの洗浄液は十分に精製された不純物の少ないものが用いられる。このような洗浄方法は、本発明の液晶配向膜の形成における前記洗浄工程にも適用することができる。
本発明の液晶配向膜の膜厚は、特に限定されないが、10〜300nmであることが好ましく、30〜150nmであることがより好ましい。本発明の液晶配向膜の膜厚は、段差計やエリプソメータ等の公知の膜厚測定装置によって測定することができる。
本発明の液晶表示素子は、一対の基板と液晶分子を含有し、この一対の基板の間に形成される液晶層と、液晶層に電圧を印加する電極と、液晶分子を所定の方向に配向させる本発明の液晶配向膜とを有する。
基板には本発明の液晶配向膜で前述したガラス製の基板を用いることができ、電極には本発明の液晶配向膜で前述したようにガラス製の基板に形成されるITO電極を用いることができる。液晶層は液晶配向膜面を内側にした基板間に密封される液晶組成物によって形成される。
使用する液晶組成物には、特に制限はなく、誘電率異方性が正または負の各種の液晶組成物を用いることができる。誘電率異方性が正の好ましい液晶組成物には、特許第3086228号公報、特許第2635435号公報、特表平5−501735号公報、特開平8−157826号公報、特開平8−231960号公報、特開平9−241644号公報(EP885272A1明細書)、特開平9−302346号公報(EP806466A1明細書)、特開平8−199168号公報(EP722998A1明細書)、特開平9−235552号公報、特開平9−255956号公報、特開平9−241643号公報(EP885271A1明細書)、特開平10−204016号公報(EP844229A1明細書)、特開平10−204436号公報、特開平10−231482号公報、特開2000−087040公報、特開2001−48822公報等に開示されている液晶組成物が挙げられる。
誘電率異方性が負の好ましい液晶組成物には、特開昭57−114532号公報、特開平2−4725号公報、特開平4−224885号公報、特開平8−40953号公報、特開平8−104869号公報、特開平10−168076号公報、特開平10−168453号公報、特開平10−236989号公報、特開平10−236990号公報、特開平10−236992号公報、特開平10−236993号公報、特開平10−236994号公報、特開平10−237000号公報、特開平10−237004号公報、特開平10−237024号公報、特開平10−237035号公報、特開平10−237075号公報、特開平10−237076号公報、特開平10−237448号公報(EP967261A1明細書)、特開平10−287874号公報、特開平10−287875号公報、特開平10−291945号公報、特開平11−029581号公報、特開平11−080049号公報、特開2000−256307公報、特開2001−019965公報、特開2001−072626公報、特開2001−192657公報等に開示されている液晶組成物が挙げられる。
前記誘電率異方性が正または負の液晶組成物に一種以上の光学活性化合物を添加して使用することも何ら差し支えない。
本発明の液晶表示素子は、種々の電界方式用の液晶表示素子を形成することができる。このような電界方式用の液晶表示素子には、前記基板の表面に対して水平方向に前記電極が前記液晶層に電圧を印加する横電界方式用の液晶表示素子や、前記基板の表面に対して垂直方向に前記電極が前記液晶層に電圧を印加する縦電界方式用の液晶表示素子が挙げられる。
横電界方式用の液晶表示素子は、比較的大きなプレチルト角を発現しなくてもよい。従って、横電界方式用の液晶表示素子には、非側鎖型ジアミンを用いて得られる非側鎖型ポリアミック酸を含有する液晶配向剤から形成される液晶配向膜が好適に用いられる。
縦電界方式用の液晶表示素子は、比較的大きなプレチルト角の発現を要する。従って、縦電界方式用の液晶表示素子には、側鎖型ジアミンまたはこれを含むジアミン混合物を用いて得られる側鎖型ポリアミック酸を含有する液晶配向剤から形成される液晶配向膜が好適に用いられる。
このように、本発明の液晶配向剤を原料として作製される液晶配向膜は、その原料であるポリマーを適宜選択することにより、種々の表示駆動方式の液晶表示素子に適用させることができる。
本発明の液晶表示素子は、前述した構成要素以外の要素をさらに有していてもよい。このような他の構成要素として、本発明の液晶表示素子には、偏光板(偏光フィルム)、波長板、光散乱フィルム、駆動回路等の、液晶表示素子に通常使用される構成要素が実装されてもよい。
以下、本発明を実施例により説明する。なお、実施例において用いる化合物は次の通りである。
<テトラカルボン酸二無水物>
酸無水物(1):ピロメリット酸二無水物
酸無水物(19):1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物
酸無水物(23):1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸二無水物
酸無水物(68):エチレンジアミン四酢酸二無水物
<ジアミン>
ジアミン(N−3):1,4−ビス(2−アミノエチル)ピペラジン
ジアミン(N−4):1,4−ビス(3−アミノプロピル)ピペラジン
ジアミン(V−1):4,4’−ジアミノジフェニルメタン
ジアミン(V−7):4,4’−ジアミノ−1,2−ジフェニルエタン
ジアミン(V−35):4,4’−ジアミノ−ジフェニルアミン
ジアミン(VII―13):2,2−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)プロパン
ジアミン(VIII−5−1):5−[[4−(4’−ペンチル[1,1’−ビシクロヘキシル]−4−イル)フェニル]メチル]−1,3−ジアミノベンゼン
ジアミン(XII−2−1):1,1−ビス[4−(4−アミノフェニル)メチルフェニル]−4−n−ヘプチルシクロヘキサン
ジアミン(XII−4−1):1,1−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル−4−(トランス−4−n−ペンチルシクロヘキシル)シクロヘキサン
[アルケニル置換ナジイミド化合物]
下記構造式(Ina−1)で表される化合物:BANI−M

Figure 0005459052
[オキシラン化合物]
DGA :4,4’−メチレンビス(N,N−ジグリシジルアニリン)
ECS :2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン
<ラジカル重合性不飽和二重結合を有する化合物>
HEA :N,N’−ジヒドロキシエチレンビスアクリルアミド
<溶剤>
NMP:N−メチル−2−ピロリドン
BC :ブチルセロソルブ(エチレングリコールモノブチルエーテル)
<1.ポリアミック酸の合成>
[合成例1]
温度計、攪拌機、原料投入仕込み口および窒素ガス導入口を備えた100mLの四つ口フラスコに化合物(XII−4−1)を0.8242g、化合物(V−1)を2.1686gと化合物(N−4)を0.2739gおよび脱水NMP20.0gを入れ、乾燥窒素気流下攪拌溶解した。次いで化合物(1)を0.4473g、化合物(19)を1.6088gと化合物(23)を0.6772gおよび脱水NMP50.0gを入れ、75℃で8時間反応させた後、室温環境下で15時間反応させた。得られた溶液に、BC24.0gを加えて、未反応のモノマー、副生成物を含むポリマー固形分(以降、ポリマー固形分と略記する。)の濃度が6重量%のポリアミック酸溶液を得た。このポリアミック酸をPA1とする。PA1の重量平均分子量は25,100であった。
ポリアミック酸の重量平均分子量は、得られたポリアミック酸をリン酸−DMF混合溶液(リン酸/DMF=0.6/100:重量比)でポリアミック酸濃度が約2重量%になるように希釈し、2695セパレーションモジュール・2414示差屈折計(Waters製)を用いて、上記混合溶液を展開剤としてGPC法により測定し、ポリスチレン換算することにより求めた。なお、カラムはHSPgel RT MB−M(Waters製)を使用し、カラム温度50℃、流速0.40mL/minの条件で測定した。
[合成例2〜17]
表1に示したようにテトラカルボン酸二無水物およびジアミンを変更した以外は、合成例1に準拠してポリアミック酸溶液(PA2)〜(PA17)を調製した。合成例1を含めて、結果を表1にまとめた。
Figure 0005459052
Figure 0005459052
<液晶配向剤の保存安定性評価>
−20℃の冷凍庫に液晶配向剤を1か月間放置し、その時、ポリマーの析出が見られた場合は「不良」、見られない場合を「良好」と判断した。

Figure 0005459052
参考例1]
<2.液晶表示素子の作製>
合成例1で合成した濃度6重量%のポリアミック酸溶液(PA1)を、NMP/BC=4/1(重量比)の混合溶剤を加えて、ポリマー固形分濃度が4重量%になるように希釈して液晶配向剤とした。得られた液晶配向剤を用いて、下記の通り液晶表示素子を作製した。
<液晶表示素子の作製方法>
液晶配向剤を、二枚のITO電極付きガラス基板にスピンナーにて塗布し、膜厚70nmの膜を形成した。塗膜後80℃にて約1分間加熱乾燥した後、210℃にて15分間加熱処理を行い、液晶配向膜を形成した。次いで、液晶配向膜が形成された基板の表面をラビング装置にてラビング処理して配向処理を行った。その後、液晶配向膜を超純水中で5分間超音波洗浄してからオーブン中120℃で30分間乾燥した。
一方のガラス基板に4μmのギャップ材を散布し、液晶配向膜を形成した面を内側にしてラビング方向が逆平行になるように対向配置させた後、エポキシ硬化剤でシールし、ギャップ4μmのアンチパラレルセルを作製した。該セルに、下記に示す液晶組成物を注入し、注入口を光硬化剤で封止した。次いで、110℃で30分間加熱処理を行い、液晶表示素子を作製した。

Figure 0005459052
参考例2]
合成例2で合成した濃度6重量%のポリアミック酸溶液(PA2)を、NMP/BC=4/1(重量比)の混合溶剤を加えて、ポリマー固形分濃度が4重量%になるように希釈して液晶配向剤とした。得られた液晶配向剤を用いて、参考例1と同様に液晶表示素子を作製した。
参考例3]
合成例3で合成した濃度6重量%のポリアミック酸溶液(PA3)を、NMP/BC=4/1(重量比)の混合溶剤を加えて、ポリマー固形分濃度が4重量%になるように希釈して液晶配向剤とした。得られた液晶配向剤を用いて、参考例1と同様に液晶表示素子を作製した。
参考例4]
合成例4で合成した濃度6重量%のポリアミック酸溶液(PA4)を、NMP/BC=4/1(重量比)の混合溶剤を加えて、ポリマー固形分濃度が4重量%になるように希釈して液晶配向剤とした。得られた液晶配向剤を用いて、参考例1と同様に液晶表示素子を作製した。
参考例5]
合成例5で合成した濃度6重量%のポリアミック酸溶液(PA5)を、NMP/BC=4/1(重量比)の混合溶剤を加えて、ポリマー固形分濃度が4重量%になるように希釈して液晶配向剤とした。得られた液晶配向剤を用いて、参考例1と同様に液晶表示素子を作製した。
参考例6]
合成例6で合成した濃度6重量%のポリアミック酸溶液(PA6)を、NMP/BC=4/1(重量比)の混合溶剤を加えて、ポリマー固形分濃度が4重量%になるように希釈して液晶配向剤とした。得られた液晶配向剤を用いて、参考例1と同様に液晶表示素子を作製した。
参考例7]
合成例7で合成した濃度6重量%のポリアミック酸溶液(PA7)を、NMP/BC=4/1(重量比)の混合溶剤を加えて、ポリマー固形分濃度が4重量%になるように希釈して液晶配向剤とした。得られた液晶配向剤を用いて、参考例1と同様に液晶表示素子を作製した。
参考例8]
合成例8で合成した濃度6重量%のポリアミック酸溶液(PA8)を、NMP/BC=4/1(重量比)の混合溶剤を加えて、ポリマー固形分濃度が4重量%になるように希釈して液晶配向剤とした。得られた液晶配向剤を用いて、参考例1と同様に液晶表示素子を作製した。
参考例9]
合成例11で合成した濃度6重量%のポリアミック酸溶液(PA11)を、NMP/BC=4/1(重量比)の混合溶剤を加えて、ポリマー固形分濃度が4重量%になるように希釈して液晶配向剤とした。得られた液晶配向剤を用いて、参考例1と同様に液晶表示素子を作製した。
参考例10]
合成例12で合成した濃度6重量%のポリアミック酸溶液(PA12)を、NMP/BC=4/1(重量比)の混合溶剤を加えて、ポリマー固形分濃度が4重量%になるように希釈して液晶配向剤とした。得られた液晶配向剤を用いて、参考例1と同様に液晶表示素子を作製した。
参考例11]
合成例13で合成した濃度6重量%のポリアミック酸溶液(PA13)を、NMP/BC=4/1(重量比)の混合溶剤を加えて、ポリマー固形分濃度が4重量%になるように希釈して液晶配向剤とした。得られた液晶配向剤を用いて、参考例1と同様に液晶表示素子を作製した。
参考例12]
合成例15で合成した濃度6重量%のポリアミック酸溶液(PA15)を、NMP/BC=4/1(重量比)の混合溶剤を加えて、ポリマー固形分濃度が4重量%になるように希釈して液晶配向剤とした。得られた液晶配向剤を用いて、参考例1と同様に液晶表示素子を作製した。
[実施例
合成例17で調製した濃度6重量%のポリアミック酸溶液(PA17)と合成例5で調製した濃度6重量%のポリアミック酸溶液(PA5)とを重量比8/2で混合した。その後、NMP/BC=1/1(重量比)の混合溶剤を加えて希釈し、ポリマー固形分濃度が4重量%の液晶配向剤とした。得られた液晶配向剤を用いて、参考例1と同様に液晶表示素子を作製した。
[実施例
合成例14で調製した濃度6重量%のポリアミック酸溶液(PA14)と合成例5で調製した濃度6重量%のポリアミック酸溶液(PA5)とを重量比8/2で混合した。その後、NMP/BC=1/1(重量比)の混合溶剤を加えて希釈し、ポリマー固形分濃度が4重量%の液晶配向剤とした。得られた液晶配向剤を用いて、参考例1と同様に液晶表示素子を作製した。
[実施例
合成例14で調製した濃度6重量%のポリアミック酸溶液(PA14)と合成例16で調製した濃度6重量%のポリアミック酸溶液(PA16)とを重量比8/2で混合した。その後、NMP/BC=1/1(重量比)の混合溶剤を加えて希釈し、ポリマー固形分濃度が4重量%の液晶配向剤とした。得られた液晶配向剤を用いて、参考例1と同様に液晶表示素子を作製した。
参考13
合成例15で調製した濃度6重量%のポリアミック酸溶液(PA15)に、アルケニル置換ナジイミド化合物である化合物(BANI−M)をポリマー固形分100重量部に対して20重量部加えた。その後、NMP/BC=1/1(重量比)の混合溶剤を加えて希釈し、ポリマー固形分濃度が4重量%の液晶配向剤とした。得られた液晶配向剤を用いて、参考例1と同様に液晶表示素子を作製した。
参考14
合成例15で調製した濃度6重量%のポリアミック酸溶液(PA15)に、ポリマー固形分100重量部に対して、オキシラン化合物である化合物(ECS)を10重量部加えた。その後、NMP/BC=1/1(重量比)の混合溶剤を加えて希釈し、ポリマー固形分濃度が4重量%の液晶配向剤とした。得られた液晶配向剤を用いて、参考例1と同様に液晶表示素子を作製した。
参考15
合成例15で調製した濃度6重量%のポリアミック酸溶液(PA15)に、ポリマー固形分100重量部に対して、アルケニル置換ナジイミド化合物である化合物(BANI−M)を20重量部、オキシラン化合物である化合物(ECS)を10重量部加えた。その後、NMP/BC=1/1(重量比)の混合溶剤を加えて希釈し、ポリマー固形分濃度が4重量%の液晶配向剤とした。得られた液晶配向剤を用いて、参考例1と同様に液晶表示素子を作製した。
参考16
合成例15で調製した濃度6重量%のポリアミック酸溶液(PA15)に、ポリマー固形分100重量部に対して、オキシラン化合物である化合物(DGA)を10重量部加えた。その後、NMP/BC=1/1(重量比)の混合溶剤を加えて希釈し、ポリマー固形分濃度が4重量%の液晶配向剤とした。得られた液晶配向剤を用いて、参考例1と同様に液晶表示素子を作製した。
参考17
合成例15で調製した濃度6重量%のポリアミック酸溶液(PA15)に、ポリマー固形分100重量部に対して、アルケニル置換ナジイミド化合物である化合物(BANI−M)を20重量部、ラジカル重合性不飽和二重結合を有する化合物である化合物(HEA)を20重量部加えた。その後、NMP/BC=1/1(重量比)の混合溶剤を加えて希釈し、ポリマー固形分濃度が4重量%の液晶配向剤とした。得られた液晶配向剤を用いて、参考例1と同様に液晶表示素子を作製した。
[比較例1]
合成例17で合成した濃度6重量%のポリアミック酸溶液(PA17)を、NMP/BC=1/1(重量比)の混合溶剤を加えて、ポリマー固形分濃度が4重量%になるように希釈して液晶配向剤とした。得られた液晶配向剤を用いて、参考例1と同様に液晶表示素子を作製した。
<3.電気特性の評価>
実施例1〜、比較例1および参考例1〜17で作製した液晶表示素子について、イオン密度の測定と長期信頼性の測定を以下のようにして行った。
1)イオン密度の測定
東陽テクニカ製液晶物性評価装置6254型を用いてイオン密度[pC]の測定を行った。測定条件は、波形:三角波、周波数:0.01Hz、電圧:±10Vであり、測定温度は60℃とした。この値が小さいほど電気特性は良好であると言える。結果を表3および表4に初期(0時間)の値として示す。
2)イオン密度の保持特性の測定
作製した液晶表示素子について、経時的にイオン密度[pC]を求め、その保持特性を評価した。保持特性の試験方法には、温度100℃の雰囲気中に液晶表示素子を放置し、途中経時的に取り出しイオン密度[pC]を測定する方法を採用した。イオン密度の増加が小さいほど(例えば増加量が100未満:増加量=500時間後のイオン密度−初期(0時間)のイオン密度)イオン密度の保持特性が良好であると言え、また電気特性の長期信頼性が良好であると言える。300時間後および500時間後のデータを表3および表4に示す。
Figure 0005459052
Figure 0005459052

表2、3に示されたように、原料にジアミン(N−3)および(N−4)と2種類以上のテトラカルボン酸二無水物を用いてポリアミック酸を製造し、これを含有する液晶配向剤を調製するとき保存安定性が顕著に改善され、また、この液晶配向剤から得られる液晶配向膜を有する液晶表示素子では、イオン密度の経時的増大を抑制する効果が顕著に改善された。

Claims (13)

  1. 式(N)で表されるジアミンの群から選択される少なくとも1つと、側鎖基を有するジアミンである式(VIII)および式(X)〜式(XIII)で表されるジアミンの群から選択される少なくとも1つとの混合物をテトラカルボン酸二無水物と70〜200℃で反応させて得られるポリアミック酸と、側鎖基を持たないジアミンである式(I)〜式(VII)および式(XV)で表されるジアミンの群から選択される少なくとも1つまたはこの側鎖基を持たないジアミンの少なくとも1つと式(N)で表されるジアミンの群から選択される少なくとも1つとの混合物をテトラカルボン酸二無水物と、式(N)で表されるジアミンの群から選択される少なくとも1つを用いる場合に70〜200℃で反応させて得られるポリアミック酸との混合物である液晶配向剤。

    Figure 0005459052
    式(N)において、YおよびYは独立して単結合または炭素数1〜7の直鎖アルキレンであり;

    Figure 0005459052
    式(VIII)において、Aは単結合、−O−、−CO−、−COO−、−OCO−、−CONH−、−CHO−、−CFO−、または炭素数1〜6のアルキレンであり、このアルキレンにおける任意の−CH−は−O−、−CH=CH−または−C≡C−で置き換えられてもよく;Rはステロイド骨格を有する基、炭素数3〜30のアルキル、炭素数1〜30のアルキルもしくは炭素数1〜30のアルコキシを置換基として有するフェニル、または式(IX)で表される基であり、この炭素数3〜30のアルキルにおける任意の−CH−は−O−、−CH=CH−または−C≡C−で置き換えられてもよく;

    Figure 0005459052
    式(IX)において、AおよびAは独立して単結合、−O−、−COO−、−OCO−、−CONH−、炭素数1〜4のアルキレン、炭素数1〜3のオキシアルキレン、または炭素数1〜3のアルキレンオキシであり;環Bおよび環Cは独立して1,4−フェニレンまたは1,4−シクロヘキシレンであり;RおよびRは独立してフッ素またはメチルであり、fおよびgは独立して0、1または2であり;c、dおよびeは独立して0〜3の整数であり、これらの合計は1以上であり;Rは炭素数1〜30のアルキル、炭素数1〜30のアルコキシ、または炭素数2〜30のアルコキシアルキルであり、これらのアルキル、アルコキシおよびアルコキシアルキルにおいて、任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく、そして任意の−CH−はジフルオロメチレンで置き換えられてもよく;

    Figure 0005459052

    Figure 0005459052
    式(X)および式(XI)において、Rは独立して水素またはメチルであり;Rは水素、炭素数1〜20のアルキルまたは炭素数2〜20のアルケニルであり;RおよびRは独立して炭素数1〜20のアルキルまたはフェニルであり;Aは独立して単結合、−CO−または−CH−であり;

    Figure 0005459052
    式(XII)および式(XIII)において、Rはメチルまたは炭素数2〜30のアルキルであり、このアルキルの任意の−CH−は、−O−、−CH=CH−または−C≡C−で置き換えられてもよく;R10は炭素数6〜22のアルキルであり;R11は炭素数1〜22のアルキルであり;Aは独立して−O−または炭素数1〜6のアルキレンであり;Aは単結合または炭素数1〜3のアルキレンであり;環Tは1,4−フェニレンまたは1,4−シクロヘキシレンであり;hは0または1である。

    Figure 0005459052
    式(I)〜式(VII)および式(XV)において、Xは炭素数2〜12の直鎖アルキレンであり;Yは独立して単結合、−O−、−CO−、−NH−、−N(CH)−、−CONH−、−NHCO−、−C(CH−、−C(CF−、−O−(CH−O−、−S−、−S−S−、−SO−、−S−(CH−S−または炭素数1〜12の直鎖アルキレンであり、tは1〜12の整数であり;ZおよびZは水素であるが、Yが−NH−、−N(CH)−、−CH−、−C(CH−または−C(CF−であるときには互いに結合して単結合を形成してもよく;環Dはフェニレンまたはピペラジン−1,4−ジイルであり;R33およびR34は独立して炭素数1〜3のアルキルまたはフェニルであり;Aは独立して炭素数1〜6のアルキレン、フェニレンまたはアルキル置換されたフェニレンであり;mは1〜10の整数であり;シクロヘキサン環またはベンゼン環の任意の水素は、フッ素、メチル、トリフルオロメチル、−OH、−COOH、−SOH、−PO、ベンジルまたはヒドロキシベンジルで置き換えられてもよい。
  2. 側鎖基を有するジアミンが式(VIII−2)、式(VIII-4)〜式(VIII−6)、式(XII−2)、式(XII−4)および式(XII−6)で表されるジアミンから選択される少なくとも1つである、請求項1に記載の液晶配向剤。

    Figure 0005459052

    Figure 0005459052

    Figure 0005459052

    Figure 0005459052

    Figure 0005459052
    これらの式において、R23、R29およびR30は独立して炭素数1〜30のアルキル、または炭素数1〜30のアルコキシである。
  3. 式(N)で表されるジアミンの群から選択される少なくとも1つと、側鎖基を有するジアミンである式(VIII)および式(X)〜式(XIII)で表されるジアミンの群から選択される少なくとも1つと、側鎖基を持たないジアミンである式(I)〜式(VII)および式(XV)で表されるジアミンの群から選択される少なくとも1つとからなる混合物をテトラカルボン酸二無水物と70〜200℃で反応させて得られるポリアミック酸と、前記の側鎖基を持たないジアミンの少なくとも1つまたはこの側鎖基を持たないジアミンの少なくとも1つと式(N)で表されるジアミンの群から選択される少なくとも1つとの混合物をテトラカルボン酸二無水物と、式(N)で表されるジアミンの群から選択される少なくとも1つを用いる場合に70〜200℃で反応させて得られるポリアミック酸との混合物である液晶配向剤。

    Figure 0005459052
    式(N)において、YおよびYは独立して単結合または炭素数1〜7の直鎖アルキレンであり;

    Figure 0005459052
    式(VIII)において、Aは単結合、−O−、−CO−、−COO−、−OCO−、−CONH−、−CHO−、−CFO−、または炭素数1〜6のアルキレンであり、このアルキレンにおける任意の−CH−は−O−、−CH=CH−または−C≡C−で置き換えられてもよく;Rはステロイド骨格を有する基、炭素数3〜30のアルキル、炭素数1〜30のアルキルもしくは炭素数1〜30のアルコキシを置換基として有するフェニル、または式(IX)で表される基であり、この炭素数3〜30のアルキルにおける任意の−CH−は−O−、−CH=CH−または−C≡C−で置き換えられてもよく;

    Figure 0005459052
    式(IX)において、AおよびAは独立して単結合、−O−、−COO−、−OCO−、−CONH−、炭素数1〜4のアルキレン、炭素数1〜3のオキシアルキレン、または炭素数1〜3のアルキレンオキシであり;環Bおよび環Cは独立して1,4−フェニレンまたは1,4−シクロヘキシレンであり;RおよびRは独立してフッ素またはメチルであり、fおよびgは独立して0、1または2であり;c、dおよびeは独立して0〜3の整数であり、これらの合計は1以上であり;Rは炭素数1〜30のアルキル、炭素数1〜30のアルコキシ、または炭素数2〜30のアルコキシアルキルであり、これらのアルキル、アルコキシおよびアルコキシアルキルにおいて、任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく、そして任意の−CH−はジフルオロメチレンで置き換えられてもよく;

    Figure 0005459052

    Figure 0005459052
    式(X)および式(XI)において、Rは独立して水素またはメチルであり;Rは水素、炭素数1〜20のアルキルまたは炭素数2〜20のアルケニルであり;RおよびRは独立して炭素数1〜20のアルキルまたはフェニルであり;Aは独立して単結合、−CO−または−CH−であり;

    Figure 0005459052
    式(XII)および式(XIII)において、Rはメチルまたは炭素数2〜30のアルキルであり、このアルキルの任意の−CH−は、−O−、−CH=CH−または−C≡C−で置き換えられてもよく;R10は炭素数6〜22のアルキルであり;R11は炭素数1〜22のアルキルであり;Aは独立して−O−または炭素数1〜6のアルキレンであり;Aは単結合または炭素数1〜3のアルキレンであり;環Tは1,4−フェニレンまたは1,4−シクロヘキシレンであり;hは0または1である。
    Figure 0005459052
    式(I)〜式(VII)および式(XV)において、Xは炭素数2〜12の直鎖アルキレンであり;Yは独立して単結合、−O−、−CO−、−NH−、−N(CH)−、−CONH−、−NHCO−、−C(CH−、−C(CF−、−O−(CH−O−、−S−、−S−S−、−SO−、−S−(CH−S−または炭素数1〜12の直鎖アルキレンであり、tは1〜12の整数であり;ZおよびZは水素であるが、Yが−NH−、−N(CH)−、−CH−、−C(CH−または−C(CF−であるときには互いに結合して単結合を形成してもよく;環Dはフェニレンまたはピペラジン−1,4−ジイルであり;R33およびR34は独立して炭素数1〜3のアルキルまたはフェニルであり;Aは独立して炭素数1〜6のアルキレン、フェニレンまたはアルキル置換されたフェニレンであり;mは1〜10の整数であり;シクロヘキサン環またはベンゼン環の任意の水素は、フッ素、メチル、トリフルオロメチル、−OH、−COOH、−SOH、−PO、ベンジルまたはヒドロキシベンジルで置き換えられてもよい。
  4. 側鎖基を有するジアミンが式(VIII−2)、式(VIII-4)〜式(VIII−6)、式(XII−2)、式(XII−4)および式(XII−6)で表されるジアミンから選択される少なくとも1つと、側鎖基を持たないジアミンが式(IV−1)、式(IV−2)、式(IV−15)〜式(IV−17)、式(V−1)〜式(V−12)、式(V−33)、式(V−35)〜式(V−37)、式(VI−7)、式(VII−2)および式(XV−1)で表されるジアミンから選択される少なくとも1つである、請求項3に記載の液晶配向剤。

    Figure 0005459052

    Figure 0005459052

    Figure 0005459052

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    Figure 0005459052

    Figure 0005459052

    Figure 0005459052
    これらの式において、R23、R29およびR30は独立して炭素数1〜30のアルキル、または炭素数1〜30のアルコキシである。
  5. 式(N)で表されるジアミンのYおよびYがトリメチレンである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の液晶配向剤。
  6. 少なくとも2種類のテトラカルボン酸二無水物が芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族以外のテトラカルボン酸二無水物との混合物である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の液晶配向剤。
  7. 芳香族テトラカルボン酸二無水物が式(1)、式(2)、式(5)〜式(7)および式(17)で表される化合物の少なくとも1つである、請求項に記載の液晶配向剤。

    Figure 0005459052
  8. 芳香族テトラカルボン酸二無水物が式(1)で表される化合物である、請求項に記載の液晶配向剤。
  9. 少なくとも2種類のテトラカルボン酸二無水物が式(1)、式(2)、式(5)〜式(7)および式(17)で表される芳香族テトラカルボン酸二無水物の少なくとも1つと、式(19)、式(23)、式(25)、式(35)〜式(39)、式(44)、式(49)、および式(68)で表される芳香族以外のテトラカルボン酸二無水物の少なくとも1つとの混合物である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の液晶配向剤。

    Figure 0005459052

    Figure 0005459052

    Figure 0005459052

    Figure 0005459052

    Figure 0005459052
  10. 芳香族以外のテトラカルボン酸二無水物が式(19)、式(23)、式(37)、式(49)、および式(68)で表される化合物の少なくとも1つである、請求項に記載の液晶配向剤。

    Figure 0005459052
  11. 芳香族テトラカルボン酸二無水物が式(1)で表される化合物であり、芳香族以外のテトラカルボン酸二無水物が式(19)で表される化合物である、請求項に記載の液晶配向剤。
  12. 請求項1〜11のいずれか1項に記載の液晶配向剤の塗膜を加熱することによって形成される液晶配向膜。
  13. 1対の基板とこの基板の間に形成される液晶層と、液晶層に電圧を印加する電極と、請求項12に記載の液晶配向膜とを有する液晶表示素子。
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