近年、携帯電話等の移動体通信分野の発達により弾性表面波素子の需要が高まっており、この弾性表面波素子の基板として、タンタル酸リチウム、ニオブ酸リチウム、四ホウ酸リチウム、水晶、ランガサイト等の圧電性酸化物単結晶ウェハ基板が利用されている。また、携帯電話等の薄型化に伴い、主要デバイスの一つである弾性表面波素子の低背化が進んでおり、この弾性表面波素子に用いられる圧電性酸化物単結晶ウェハ基板の厚みに対しても薄型化の要求が年々高まってきている。
ところで、弾性表面波素子として用いられるウェハ基板は、一般的にその主面側に櫛型電極を設け、電圧信号を加えることで電極間に所望の弾性表面波を発生させることから、電極形成面は鏡面研磨されている必要がある。また、電極が形成される面とは反対側の面も鏡面研磨されていると、弾性表面波と共に発生する基板内部を通過するバルク波等の障害波が鏡面化された反対側の面より反射してしまい、周波数特性におけるスプリアス異常等を引き起こしてしまう。このため、弾性表面波素子に用いられるウェハ基板は、その一方が鏡面、他方が粗面になっている必要があり、通常、両面が粗面化されたウェハ基板の片面のみを鏡面研磨する方法、あるいは、両面が鏡面化されたウェハ基板の電極を形成しない面を粗い研磨剤で研磨加工またはホーニング加工することにより粗面化している。
更に、弾性表面波素子等に用いられる圧電性酸化物単結晶ウェハ基板に求められる形状特性としてウェハ表面の平坦度がある。すなわち、弾性表面波素子の製作過程において、光化学反応を用いた露光技術によりウェハ基板表面に金属電極をパターン形成する場合、ウェハ基板表面に不規則な凹凸があると焦点ずれ等を引き起こし、パターン通りの金属電極が形成されない等の問題を生じてしまう。このため、ウェハ基板の表面形状は凹凸等の起伏の小さい、すなわち平坦度等の良好なウェハが求められる。特に、近年においては、ウェハ1枚当りからできるだけ多くの素子が取得できることを目的とし、ウェハ基板の中央部はもちろんのこと、最外周付近における加工精度においても高平坦度の要求が年々高まっており、ウェハ基板外周部のわずかな面ダレ等も歩留まりの観点から問題となる場合が多い。一般的には、エッジ除外領域を1mmとしたときの、TTV(Total Thickness Variation)で3μm以下、また、最大LTV(Local Thickness Variation)を0.5μm以下としたときのPLTV(Percent Local Thickness Variation)で100%が求められる。
そして、上述したウェハ基板の片面のみを鏡面研磨するには、研磨しない面の固定保持が必要となり、ウェハ基板を保持するための手段として種々の方法が考案されている。
例えば、加熱したワックスを介してセラミックプレート等へウェハ基板を接着する方法(特許文献1参照)、セラミックプレートのウェハ保持部に無数の吸着孔を設けてウェハ基板を真空吸着する方法(特許文献2参照)、バッキング材と呼ばれる発泡ポリウレタン等からなる吸着材でウェハ基板を水吸着する方法(特許文献3、特許文献4参照)、型抜き穴が設けられたテンプレートとセラミックプレートとで凹部を形成しかつ凹部に収容されたウェハ基板を水等の液体を介して吸着させる方法(特許文献5参照)、あるいは、型抜き穴が設けられたテンプレートとセラミックプレートとで凹部を形成しこの凹部にサポート基板が貼り付けられたウェハ基板を収容しかつ水等の液体を介して上記ウェハ基板を吸着させる方法(特許文献6参照)等が知られている。
ところで、ウェハ基板をワックスで接着する特許文献1に記載の方法は、平坦度等の加工精度に優れ、任意の厚みのウェハ基板を固定保持できるという利点を有する反面、接着に高度な技術を要すると共に、ワックスを洗浄する工程が必要で作業が煩雑になるという問題があった。また、粗面化したウェハ基板面に付着したワックスを完全に除去しきれないと素子製作の過程で電極剥れの原因になる等の問題があった。加えて、ウェハ基板を加熱して接着することから、圧電性酸化物単結晶ウェハが有する焦電性のために加熱工程でウェハ基板に割れ等が発生し易いという問題もあった。
また、セラミックプレートへウェハ基板を真空吸着させる特許文献2に記載の方法は、任意の厚みのウェハ基板を固定保持できるが、セラミックプレートに真空吸着のための空孔が必要となり、空孔が存在する部分とそうでない部分とで研磨時にウェハ基板が受ける荷重に差異を生じ、これに起因して鏡面研磨面に凹凸が生じる等の平坦度に問題があった。また、ウェハ基板とセラミックプレートとの間に異物が介在してしまうと、異物が介在した部分の研磨面が極度に研磨されてディンプルと呼ばれるヘコミを生じてしまう危険性があり、異物を除去するための高度にクリーンな環境設備が必要になる等の問題があった。
更に、バッキング材を用いてウェハ基板を吸着保持する特許文献3と特許文献4に記載の方法は、任意の厚みのウェハ基板を固定保持することが可能で、残留異物等の問題は少ないものの、発泡ポリウレタン等からなる吸着材の厚みのバラツキが、ウェハ表面に転写されるため、ウェハ基板表面の平坦度が低下し易いという問題があった。
他方、型抜き穴が設けられたテンプレートとで凹部を形成しこの凹部に収容されたウェハ基板を水等を介してセラミックプレートへ直接吸着させる特許文献5に記載の方法は、特許文献1〜4に記載された方法の上記問題はない反面、上記凹部を形成するためのテンプレートは、硬化樹脂等から成るテンプレート本体(基材部)と、テンプレート本体(基材部)をセラミックプレートに固定する両面テープ等から成る粘着部とで構成されるため、凹部に収容された研磨中のウェハ基板がテンプレート本体(基材部)と共に上記粘着部へ負荷を与える結果、粘着部がセラミックプレートから剥離しあるいは破損することでウェハ基板の外周部に面ダレを発生させ易く、更に、ウェハ基板の仕上げ厚みは上記テンプレート本体(基材部)と粘着部(両面テープ)を合わせた厚みよりも薄く研磨することができないことからウェハ基板の薄型化が困難になる等の問題があった。
また、型抜き穴が設けられたテンプレートとセラミックプレートとで凹部を形成しこの凹部にサポート基板が貼り付けられたウェハ基板を収容しかつ水等の液体を介して上記ウェハ基板を吸着固定させる特許文献6に記載の方法は、ウェハ側面はテンプレート本体(基材部)のみで保持されることで粘着部の破損等は確かに発生し難く、また、サポート基板の厚みを任意に変えることで任意の仕上げ厚みのウェハ基板を得ることができるが、ウェハ裏面側に位置するサポート基板の厚みのバラツキがウェハ表面へ転写され、ウェハ表面の平坦度が低下し易いという問題があった。更に、接合部がウェハ基板とサポート基板間およびサポート基板とプレート間と2層に増えることで異物介在の可能性が高くなり、ウェハ表面へ凹凸が生じ易くなるという問題があった。
本発明はこのような問題点に着目してなされたもので、その課題とするところは、弾性表面波素子用等に用いられる圧電性酸化物単結晶ウェハ基板等の片面鏡面研磨加工において、研磨時および研磨後の後工程等の取り扱い性等に問題を生じさせること無く、莫大な投資も必要とせず、特に、面ダレ等のない高平坦度に優れた加工精度を有し、更に、任意の仕上げ厚みを有する片面鏡面ウェハ基板を再現性良く製造できる研磨方法を提供し、合わせてこの研磨方法に適用される研磨用プレートを提供することにある。
そこで、上記課題を解決するため本発明者が鋭意検討した結果、ウェハ基板を片面研磨加工する際にウェハの保持方法を以下のように工夫することにより、従来の保持方法では得られなかった以下のような技術的利点を見出すに至った。
すなわち、研磨定盤上に設置された研磨布とプレートとの間にウェハ基板を挟み込み、研磨定盤とプレートをそれぞれ回転させることによりウェハ基板における上記研磨布側の面を研磨布により研磨する方法において、上記プレートとして片面側に複数の略円柱形状凸型部を有するプレートを適用し、かつ、上記凸型部に嵌合される複数の開口部を有するテンプレート本体(基材部)を粘着部により上記プレートに貼り付けてプレートの上記各凸型部上面とテンプレート本体(基材部)の上記各開口部内壁面とで凹部形状のウェハ収容部を構成すると共に、このウェハ収容部に収容されたウェハ基板をウェハ収容部の凸型部上面に液体を介し該液体の吸着力により保持させながらウェハ基板の研磨加工を行うことにより、研磨中のウェハ基板から粘着部に負荷がかかり難くなって上記プレートから粘着部が剥れる等の劣化を低減させることが可能となり、かつ、高い平坦度を有し特にウェハ外周部に面ダレの無い片面鏡面ウェハ基板の研磨が可能となり、更に、テンプレート本体(基材部)の厚みを変えることでウェハ収容部を形成する凹部の高さが任意に変更されて、研磨後の仕上げ厚みが比較的薄い片面鏡面ウェハ基板を再現性良く得ることができるという技術的利点を見出すに至った。
ここで、上記プレートにおける略円柱形状凸型部の高さH0はテンプレートの上記粘着部の厚みよりも大きく、かつ、テンプレート本体(基材部)の厚みが研磨後のウェハ基板の厚み(すなわち、ウェハの仕上げ厚みH2)よりも小さければいずれでも良いが、テンプレート本体(基材部)と凸型部を有するプレートを接着させるための粘着部の厚みは、十分な接着強度を確保するには0.05mm以上が望ましい。従って、上記プレートにおける略円柱形状凸型部の高さH0は0.05mm以上が望ましい。
また、凸型部上面の直径をD1、ウェハ基板の直径をD2とした場合、D2≦D1の関係を満たすことが必要である。仮に凸型部上面の直径D1がウェハ基板の直径D2よりも小さい(すなわち、D2>D1)と、凸型部上面に接しない部分のウェハ基板表面の研磨中における研磨速度が低下し、ウェハ基板表面に凹凸の起伏が形成され、平坦度の悪化を招く。一方、凸型部上面の直径D1がウェハ基板の直径D2よりも大き過ぎると、プレートの上記凸型部上面とテンプレート本体(基材部)の上記開口部内壁面とで構成される凹部形状のウェハ収容部において、収容されたウェハ基板とウェハ収容部の隙間が大きくなることから研磨中におけるウェハ外れが発生する等の危険性があるため、凸型部上面の直径をD1、ウェハ基板の直径をD2とした場合、D2≦D1≦D2+5mmの関係を満たすことが必要である。
また、ウェハ収容部を形成する凹部の高さをH1、ウェハの仕上げ厚みをH2とした場合、H1≦H2の関係を満たすことが必要である。上記ウェハ収容部を形成する凹部の高さH1がウェハの仕上げ厚みH2よりも大きいと、研磨布等の研磨面から受ける荷重がテンプレート表面にも及ぶようになるため、研磨速度が極度に低下しあるいはウェハ中央部と外周部の研磨速度に差が生じる等してウェハ外周部に面ダレを発生する危険性があることから、特に、ウェハ収容部を形成する凹部の高さH1は、ウェハの仕上げ厚みH2よりも30μm以下の高さであることが好ましい。但し、H1≦H2の関係を満たすことを条件に何らの制限を受けるものではない。
次に、ウェハ収容部を形成する凹部の高さH1は、テンプレートの厚みを任意に変える[すなわち、テンプレート本体(基材部)の厚みと両面テープ等粘着部の厚みを任意に変える]ことで自由にその高さを変更することができるが、上記ウェハの仕上げ厚みH2が0.05mm以下のときには研磨後のウェハを剥し取る際等に割ってしまう等ウェハ自体の取り扱いが困難となる。従って、ウェハ収容部を形成する上記凹部の高さH1は0.05mm以上が好ましい。
また、上記プレートの凸型部上面とテンプレート本体(基材部)の開口部内壁面とで構成される凹部形状のウェハ収容部に関し、ウェハ収容部を形成する凹部の内側壁面は比較的強度の高いテンプレート本体(基材部)により構成されることが好ましいことから、強度の弱い粘着部の高さ(厚さ)は、上記プレートの凸型部高さH0より低く設定されていることが必要である。そして、テンプレート本体(基材部)の材質は、ウェハ基板へのダメージを考慮してエポキシガラスやアラミド等の樹脂材が選定されるが、これ等の材料に限定されるものではない。また、テンプレートの上記粘着部の材質は、凸型部を有するプレートとの接着強度やスラリーに対する耐薬品性を考慮すると天然ゴムやアクリル等が好ましいが、粘着テープ基材の材質も含めてこれ等材料に限定されるものではない。
次に、ウェハ基板が接触する上記プレートにおける凸型部上面の表面粗さは、研磨中のウェハ回転等によるウェハ裏面と凸型部上面との擦れ合わせによるウェハ裏面へのキズ等の発生を抑制する観点から、凸型部上面の表面粗さをRa1とし、凸型部上面に接触するウェハ面粗さをRa2とした場合、Ra1/Ra2≦2の関係を満たすことが好ましく、特に、Ra1とRa2は同程度の粗さであることが好ましい。
複数の略円柱形状凸型部を有する新規構造のプレートが適用される本発明に係るウェハ基板の研磨方法によれば、新たな設備投資等を必要とせず、従来のウェハ貼り付け方法がそのまま適用でき、加熱ワックスを用いて接着するときのワックス残りや加熱時の割れは発生せず、真空吸着に伴う吸着孔の存在に起因した平坦度の悪化も起こらず、バッキング材における厚みのバラツキによる平坦度の悪化も起こらない。更に、水等の液体を用いて平坦構造のプレートにウェハ基板を吸着保持させるときのテンプレート粘着部の影響を受けず、ひいてはウェハとサポート基板の貼り合せのようにサポート基板の平坦度等を考慮せずとも高平坦度な加工精度を有し、かつ、任意の仕上げ厚みを有する片面鏡面ウェハ基板の研磨加工を実現することができる。
本発明に係るウェハ基板の研磨方法は、研磨定盤上に設置された研磨布とプレートとの間にウェハ基板を挟み込み、研磨定盤とプレートをそれぞれ回転させることにより、ウェハ基板における上記研磨布側の面を研磨布により研磨する方法において、
上記プレートがその片面側に複数の略円柱形状凸型部を有しており、この凸型部に嵌合される複数の開口部を有するテンプレートが上記プレートに貼り付けられてプレートの上記各凸型部上面とテンプレートの上記各開口部内壁面とで凹部形状のウェハ収容部が構成され、このウェハ収容部に収容されたウェハ基板がウェハ収容部の凸型部上面に液体を介し該液体の吸着力により保持されており、
凹部形状のウェハ収容部を形成する上記凹部の高さをH1、ウェハの仕上げ厚みをH2とし、凸型部上面の直径をD1、ウェハ基板の直径をD2とした場合、
H1≦H2、かつ、D2≦D1≦D2+5mmの関係を満たす条件でウェハ基板の研磨加工を行うことを特徴としている。
そして、本発明に係るウェハ基板の研磨方法によれば、弾性表面波素子用等に用いられる圧電性酸化物単結晶ウェハ基板の片面鏡面研磨加工において、研磨時および研磨後の後工程等の取り扱い性等に問題を生じさせること無く、莫大な投資も必要とせず、面ダレのない高平坦度に優れた加工精度を有し、かつ、任意の仕上げ厚みを有する片面鏡面ウェハを再現性良く製造することが可能となる。
従って、弾性表面波素子の製造工程等において、ウェハ表面へ金属電極を露光技術によりパターン形成する際、ウェハ表面の凹凸に伴う焦点ずれ等の問題が解消されることから歩留まりの向上が図れ、また、近年のデバイス低背化に伴うウェハの薄板化要求に対応した任意の薄い片面鏡面基板を提供できる効果を有している。
以下、本発明の実施の形態について具体的に説明するが、本発明はこれ等実施の形態に限定されるものではない。
まず、圧電性酸化物単結晶ウェハの製造工程について説明する。例えば、チョクラルスキー法により育成されたインゴットの外周を円筒研削加工等により円筒状とし、これを所定の厚さにスライス加工することで円形板状のウェハ基板を得る。次いで、スライスしたウェハ基板を両面ラップ加工等で所定の厚みまで研磨し、両面が粗面化されたウェハ基板を得る。このスライス工程とラップ工程は、従来と同様の加工方法を採用すればよく、本発明の主眼とするところは、両面が粗面化されたウェハに対し、以下に述べる片面鏡面研磨に適用されるウェハ保持方法と片面鏡面研磨の加工方法を提供することである。
図1は(A)は、本発明に係るウェハ基板の保持方法を説明するための概略断面説明図、図1(B)は図1(A)において印Aで示した部位の部分拡大図である。
まず、本発明に係るウェハ基板の保持方法は、片面側に複数の略円柱形状凸型部1aを有するプレート1と、この凸型部1aに嵌合される複数の開口部を有するテンプレート2が用いられる。また、上記テンプレート2は、複数の開口部を有するテンプレート本体(基材部)2aと、テンプレート本体(基材部)2a片面側の開口部を除く部位に設けられテンプレート本体(基材部)2aを上記プレート1に固定するための粘着部2bとで構成されている。
そして、上記凸型部1aに嵌合される複数の開口部を有するテンプレート本体(基材部)2aを、上記粘着部2bによりプレート1に貼り付けてプレート1の上記各凸型部1a上面とテンプレート本体(基材部)2aの上記各開口部内壁面とで凹部形状のウェハ収容部3が構成されている。このとき、適用される上記プレート1は、略円柱形状凸型部1a表面が所定の平坦度および粗さになっているものを選定するとよい。また、プレート1の凸型部1aの高さとテンプレート本体(基材部)2aおよび粘着部2bの厚みは、所定の関係を満たすものが選ばれている。
次いで、ウェハ収容部3を形成する凹部に、両面が粗面研磨されたウェハ基板4の裏面側を水等の液体を介して貼り付けることにより、ウェハ基板4がウェハ収容部3の凸型部1a上面に液体を介し該液体の吸着力により保持される。このとき、ウェハ基板4表面の高さは、テンプレート本体(基材部)2aの表面高さよりも僅かに高く外方へ飛び出した状態となっている。
次に、図2は、本発明に係るウェハ基板の研磨方法を示す概略断面説明図である。図2において、研磨定盤5の上表面に研磨布6が貼り付けられており、この研磨布6上へ図示外の研磨液を供給することにより研磨面を提供するものである。また、上記研磨定盤5は、この定盤5に連結された駆動軸7を介してモーター制御等により任意の回転速度で回転駆動される。
また、ウェハ収容部に収容された上記ウェハ基板4が保持されたプレート1は、ウェハ基板4の表面が研磨布6の上に対向するようセットされ、かつ、プレート1の裏面側へ押圧機構部8を接触させることで、プレート1を介しウェハ基板4へ任意の荷重を印加することができる。また、押圧機構部8は駆動軸9に連結されており、モーター制御等により任意の回転速度で回転駆動され、これにより押圧機構部8と共に上記プレート1が回転する。
そして、上記研磨布6上へ研磨液を供給しながら研磨定盤5を回転させ、合せて押圧機構部8をプレート1と共に研磨定盤5と逆方向へ回転させることで、研磨布6に押圧されたウェハ基板4表面の鏡面研磨加工が行われ、所定の厚みに達したところで研磨加工は終了となる。
尚、上記研磨方法で使用されたテンプレート2については、繰り返し研磨加工を行っても、その粘着部2bがプレート1から剥離しあるいは破損する等の不具合はほとんど発生しない技術的効果が確認され、また、得られたウェハ基板4についても、特にウェハ外周部の面ダレが著しく改善される等ウェハ面内の高平坦度領域が拡大し、これに伴い弾性表面波素子等の歩留まりの向上に寄与できるものであることが確認される。
次に、本発明の実施例について比較例を挙げて具体的に説明する。
試料として直径D2=100mmのウェハ基板を用いた。
まず、チョクラルスキー法により育成したタンタル酸リチウム単結晶のインゴット側面を円筒研削加工して円筒状にし、加えてOF(オリエンテーションフラット)研削加工を行った後、ワイヤーソーを用いてスライス加工することにより円板状ウェハを得た。
次に、ウェハ表裏面粗さRa2が0.30μmになるような適切な粒度を有する遊離砥粒を用いた両面ラップ加工により、ウェハ厚みが0.25mmとなるまで研磨した。
次に、得られたウェハ基板について片面鏡面研磨加工を施すため、図1(A)(B)に示したウェハ基板4の保持を目的としたセラミック製プレート1とテンプレート2を用意した。すなわち、円柱形状凸型部1aの高さH0(プレート表面高さ)が0.50mm、上記凸型部1a上面の直径D1が101.0mm、かつ、直径D2=100mmのウェハ基板4と接触する上記凸型部1a上面の表面粗さRa1が0.30μmのセラミック製プレート1を用意し、かつ、上記凸型部1aに嵌合される複数の開口部を有しエポキシガラスにより形成された厚さ0.55mmのテンプレート本体(基材部)2aと、厚さ0.10mmの天然ゴムから成り上記テンプレート本体(基材部)2a片面側の開口部を除く部位に設けられた粘着部2bとで構成されるテンプレート2を用意すると共に、上記セラミック製プレート1に粘着部2bを介しテンプレート本体(基材部)2aを貼り付けて各凸型部1a上面と各開口部内壁面とで構成される凹部形状のウェハ収容部3を形成した。そして、ウェハ収容部3にウェハ基板4を収容しかつ凸型部1a上面に純水を介しウェハ基板4の裏面側を吸着保持させた。
このとき、ウェハ収容部3を形成する上記凹部の高さ[すなわち、プレート1の凸型部1aよりテンプレート本体(基材部)2a表面が飛び出している高さ]H1は0.15mmで、また、ウェハ基板4表面はテンプレート本体(基材部)2a表面よりも0.10mm外方へ飛び出していた。
このようにして構成されたセラミック製プレート1を、図2に示す研磨布6上へ、ウェハ基板4の表面が研磨布6へ接するようにセットした。次いで、押圧機構部8をセラミック製プレート1の直上よりゆっくりと降ろしてプレート1に接触させ、コロイダルシリカ研磨液を研磨布6へ供給しながら研磨定盤5および押圧機構部8をゆっくりと回転上昇させ、これと合せて押圧機構部8を徐々に加圧しながら所定の回転速度および圧力まで到達させた後、この状態を一定時間維持することで片面鏡面研磨加工を行い、ウェハの仕上げ厚みH2を0.20mmとした。この鏡面研磨加工後に、取り出したウェハ基板4を所定の薬液で超音波洗浄することで、研磨加工でウェハに付着した研磨液の除去を行った。
そして、上記工程を200枚のウェハ基板に対し実施し、かつ、得られたウェハの平坦度を測定した。測定条件は、エッジ除外領域1.0mm、サイトサイズ5.0×5.0mmとした。
その結果、TTVの平均値で1.65μm、LTV≦0.5μm以下のサイト占有率(PLTV)は100%と良好であった。また、ウェハ基板の裏面を蛍光灯下で目視観察したところ、キズ、汚れ、割れの発生は一切認められなかった。
尚、これ等結果を以下の表1にそれぞれ示す。
上記セラミック製プレート1における円柱形状凸型部1aの高さH0(プレート表面高さ)を0.05mm、エポキシガラスにより形成されたテンプレート本体(基材部)2aの厚さを0.15mm、かつ、天然ゴムから成る粘着部2bの厚さを0.05mmとした以外は実施例1と同様にして、タンタル酸リチウム単結晶ウェハ基板を100枚、片面鏡面研磨した。このとき、ウェハ収容部3を形成する上記凹部の高さ[すなわち、プレート1の凸型部1aよりテンプレート本体(基材部)2a表面が飛び出している高さ]H1は0.15mmで、また、ウェハ基板4表面はテンプレート本体(基材部)2a表面よりも0.10mm外方へ飛び出していた。
そして、実施例1と同様、鏡面研磨後のウェハ洗浄を行い、ウェハの平坦度を測定したところ、TTVの平均値は1.87μm、PLTVは100%と良好であった。また、ウェハ基板の裏面を蛍光灯下で目視観察したところ、キズ、汚れ、割れの発生は一切認められなかった。
これ等結果も以下の表1にそれぞれ示す。
上記セラミック製プレート1における円柱形状凸型部1aの高さH0(プレート表面高さ)を1.00mm、エポキシガラスにより形成されたテンプレート本体(基材部)2aの厚さを1.05mm、かつ、天然ゴムから成る粘着部2bの厚さを0.10mmとした以外は実施例1と同様にして、タンタル酸リチウム単結晶ウェハ基板を100枚、片面鏡面研磨した。このとき、ウェハ収容部3を形成する上記凹部の高さ[すなわち、プレート1の凸型部1aよりテンプレート本体(基材部)2a表面が飛び出している高さ]H1は0.15mmで、また、ウェハ基板4表面はテンプレート本体(基材部)2a表面よりも0.10mm外方へ飛び出していた。
そして、実施例1と同様、鏡面研磨後のウェハ洗浄を行い、ウェハの平坦度を測定したところ、TTVの平均値は1.94μm、PLTVは100%と良好であった。また、ウェハ基板の裏面を蛍光灯下で目視観察したところ、キズ、汚れ、割れの発生は一切認められなかった。
これ等結果も以下の表1にそれぞれ示す。
エポキシガラスにより形成されたテンプレート本体(基材部)2aの厚さを0.60mmとした以外は実施例1と同様にして、タンタル酸リチウム単結晶ウェハ基板を100枚、片面鏡面研磨した。このとき、ウェハ収容部3を形成する上記凹部の高さ[すなわち、プレート1の凸型部1aよりテンプレート本体(基材部)2a表面が飛び出している高さ]H1は0.20mmで、また、ウェハ基板4表面はテンプレート本体(基材部)2a表面よりも0.05mm外方へ飛び出していた。
そして、実施例1と同様、鏡面研磨後のウェハ洗浄を行い、ウェハの平坦度を測定したところ、TTVの平均値は2.04μm、PLTVは100%と良好であった。また、ウェハ基板の裏面を蛍光灯下で目視観察したところ、キズ、汚れ、割れの発生は一切認められなかった。
これ等結果も以下の表1にそれぞれ示す。
上記ウェハ基板の直径D2を100.0mm、上記セラミック製プレート1における円柱形状凸型部1a上面の直径D1を105.0mmとした以外は実施例1と同様にして、タンタル酸リチウム単結晶ウェハ基板を100枚、片面鏡面研磨した。
そして、実施例1と同様、鏡面研磨後のウェハ洗浄を行い、ウェハの平坦度を測定したところ、TTVの平均値は2.13μm、PLTVは100%と良好であった。また、ウェハ基板の裏面を蛍光灯下で目視観察したところ、キズ、汚れ、割れの発生は一切認められなかった。
これ等結果も以下の表1にそれぞれ示す。
ウェハ基板4と接触する上記凸型部1a上面の表面粗さRa1が0.60μmのセラミック製プレート1を適用した以外は実施例1と同様にして、タンタル酸リチウム単結晶ウェハ基板を100枚、片面鏡面研磨した。
そして、実施例1と同様、鏡面研磨後のウェハ洗浄を行い、ウェハの平坦度を測定したところ、TTVの平均値は1.72μm、PLTVは100%と良好であった。また、ウェハ基板の裏面を蛍光灯下で目視観察したところ、キズ、汚れ、割れの発生は一切認められなかった。
これ等結果も以下の表1にそれぞれ示す。
ウェハ基板4と接触する上記凸型部1a上面の表面粗さRa1が0.70μmのセラミック製プレート1を適用した以外は実施例1と同様にして、タンタル酸リチウム単結晶ウェハ基板を100枚、片面鏡面研磨した。
そして、実施例1と同様、鏡面研磨後のウェハ洗浄を行い、ウェハの平坦度を測定したところ、TTVの平均値は1.73μm、PLTVは100%と良好であった。
また、ウェハ基板の裏面を蛍光灯下で目視観察したところ、シミ状の汚れや割れは一切発生していなかったが、2枚のウェハ基板の裏面に極微小なキズが認められた。但し、このキズは不良品となるほどのものではなかった。
これ等結果も以下の表1にそれぞれ示す。
両面ラップ加工により得られるウェハ4の厚みを0.20mm、片面鏡面研磨により得られるウェハの仕上げ厚みH2を0.15mmとした以外は実施例1と同様にして、タンタル酸リチウム単結晶ウェハ基板を100枚、片面鏡面研磨した。このとき、ウェハ収容部3を形成する上記凹部の高さ[すなわち、プレート1の凸型部1aよりテンプレート本体(基材部)2a表面が飛び出している高さ]H1は0.15mmで、また、ウェハ基板4表面はテンプレート本体(基材部)2a表面よりも0.05mm外方へ飛び出していた。
そして、実施例1と同様、鏡面研磨後のウェハ洗浄を行い、ウェハの平坦度を測定したところ、TTVの平均値は1.81μm、PLTVは100%と良好であった。また、ウェハ基板の裏面を蛍光灯下で目視観察したところ、キズ、汚れ、割れの発生は一切認められなかった。
これ等結果も以下の表1にそれぞれ示す。
両面ラップ加工により得られるウェハ4の厚みを0.15mm、エポキシガラスにより形成されたテンプレート本体(基材部)2aの厚さを0.50mm、かつ、片面鏡面研磨により得られるウェハの仕上げ厚みH2を0.10mmとした以外は実施例1と同様にして、タンタル酸リチウム単結晶ウェハ基板を100枚、片面鏡面研磨した。このとき、ウェハ収容部3を形成する上記凹部の高さ[すなわち、プレート1の凸型部1aよりテンプレート本体(基材部)2a表面が飛び出している高さ]H1は0.10mmで、また、ウェハ基板4表面はテンプレート本体(基材部)2a表面よりも0.05mm外方へ飛び出していた。
そして、実施例1と同様、鏡面研磨後のウェハ洗浄を行い、ウェハの平坦度を測定したところ、TTVの平均値は1.88μm、PLTVは100%と良好であった。また、ウェハ基板の裏面を蛍光灯下で目視観察したところ、キズ、汚れ、割れの発生は一切認められなかった。
これ等結果も以下の表1にそれぞれ示す。
両面ラップ加工により得られるウェハ4の厚みを0.10mm、エポキシガラスにより形成されたテンプレート本体(基材部)2aの厚さを0.45mm、かつ、片面鏡面研磨により得られるウェハの仕上げ厚みH2を0.05mmとした以外は実施例1と同様にして、タンタル酸リチウム単結晶ウェハ基板を20枚、片面鏡面研磨した。このとき、ウェハ収容部3を形成する上記凹部の高さ[すなわち、プレート1の凸型部1aよりテンプレート本体(基材部)2a表面が飛び出している高さ]H1は0.05mmで、また、ウェハ基板4表面はテンプレート本体(基材部)2a表面よりも0.05mm外方へ飛び出していた。
そして、実施例1と同様、鏡面研磨後のウェハ洗浄を行い、ウェハの平坦度を測定したところ、TTVの平均値は2.05μm、PLTVは100%と良好であった。また、ウェハ基板の裏面を蛍光灯下で目視観察したところ、キズ、汚れ、割れの発生は一切認められなかった。
これ等結果も以下の表1にそれぞれ示す。
[比較例1]
エポキシガラスにより形成されたテンプレート本体(基材部)2aの厚さを0.65mmとした以外は実施例1と同様にして、タンタル酸リチウム単結晶ウェハ基板を100枚、片面鏡面研磨した。このとき、ウェハ収容部3を形成する上記凹部の高さ[すなわち、プレート1の凸型部1aよりテンプレート本体(基材部)2a表面が飛び出している高さ]H1は0.25mmで、また、ウェハ基板4表面はテンプレート本体(基材部)2a表面と同じ高さであり、また、研磨中の研磨速度は実施例1の約1/2に低下していた。
そして、実施例1と同様、鏡面研磨後のウェハ洗浄を行い、ウェハの平坦度を測定したところ、TTVの平均値は4.75μm、PLTVは91.8%と悪化していた。また、ウェハ基板の裏面を蛍光灯下で目視観察したところ、キズ、汚れ、割れの発生は一切認められなかった。
これ等結果も以下の表1にそれぞれ示す。
[比較例2]
上記ウェハ基板の直径D2を100.0mm、上記セラミック製プレート1における円柱形状凸型部1a上面の直径D1を97.0mmとした以外は実施例1と同様にして、タンタル酸リチウム単結晶ウェハ基板を100枚、片面鏡面研磨した。
そして、実施例1と同様、鏡面研磨後のウェハ洗浄を行い、ウェハの平坦度を測定したところ、TTVの平均値は3.83μm、PLTVは94.3%と悪化していた。また、ウェハ基板の表面外周部を蛍光灯下で目視観察したところ、ウェハ表面外周部に凹凸の起伏が認められた。また、同様にウェハ基板の裏面を蛍光灯下で目視観察したところ、キズ、汚れ、割れの発生は一切認められなかった。
これ等結果も以下の表1にそれぞれ示す。
[比較例3]
上記ウェハ基板の直径D2を100.0mm、上記セラミック製プレート1における円柱形状凸型部1a上面の直径D1を108.0mmとした以外は実施例1と同様にして、タンタル酸リチウム単結晶ウェハ基板を100枚、片面鏡面研磨しようとしたところ、研磨中にウェハ基板が外れる現象が発生し、内20枚が割れにより破損した。
そして、実施例1と同様、鏡面研磨後の残ったウェハ基板に対し洗浄を行い、ウェハの平坦度を測定したところ、TTVの平均値は2.43μm、PLTVは99.2%と悪化していた。また、ウェハ基板の表面を蛍光灯下で目視観察したところ、研磨中に割れたウェハの破片で発生したと考えられる無数のキズがウェハ表面に認められた。同様にウェハ基板の裏面を蛍光灯下で目視観察したところ、キズや汚れの発生は一切認められなかった。
これ等結果も以下の表1にそれぞれ示す。
[比較例4]
比較例4は、特許文献1に記載された手法に基づき、加熱したワックスを介してウェハをセラミックプレートへ接着し、片面鏡面研磨した例である。
実施例1と同様にして得られた両面ラップ加工された表裏粗面のタンタル酸リチウム単結晶ウェハ基板を、全面平坦なセラミックプレートへ加熱したワックス(日化精工株式会社製 スカイリキッド)で貼り付け、片面研磨装置を用いて片面鏡面研磨加工を行った。実施例1と同様、ウェハの仕上げ厚みH2は0.20mmとした。このとき、研磨加工中の研磨速度は実施例1とほぼ同程度であった。
上記のような工程を100枚のウェハ基板に対し実施したところ、ワックス加熱によるウェハ貼り付けの段階で、全体の6%のウェハで割れが発生した。
鏡面研磨が終了した残りのウェハに対しては、実施例1と同様に、鏡面研磨後のウェハ洗浄を行い、ウェハの平坦度を測定したところ、TTVの平均値で1.87μm、PLTVは100%と良好であった。また、ウェハ基板の裏面を蛍光灯下で目視観察したところ、キズの発生は認められなかったものの、シミ状の汚れが全体の12%で発生していた。
これ等結果も以下の表1にそれぞれ示す。
[比較例5]
比較例5は、特許文献2に記載された手法に基づき、セラミックプレートのウェハ保持部に無数の吸着孔を設けてウェハ基板を吸着し、片面鏡面研磨した例である。
実施例1と同様にして得られた両面ラップ加工された表裏粗面のタンタル酸リチウム単結晶ウェハ基板を、直径1mmの真空吸着孔が24個設けられた全面平坦な形状のセラミックプレートで吸着し、片面研磨装置を用いて片面鏡面研磨加工を行った。実施例1と同様、ウェハの仕上げ厚みH2は0.20mmとした。このとき、研磨加工中の研磨速度は実施例1とほぼ同程度であった。
上記のような工程を100枚のウェハ基板に対し実施し、実施例1と同様に、鏡面研磨後のウェハ洗浄を行い、ウェハの平坦度を測定したところ、TTVの平均値で2.87μm、PLTVは98.1%と悪化していた。ウェハ基板の表面を蛍光灯下で目視観察したところ、真空吸着孔に対応するウェハ表面にディンプルと呼ばれる凹みが認められた。また、ウェハ基板の裏面を蛍光灯下で目視観察したところ、キズ、汚れ、割れの発生は一切認められなかった。
[比較例6]
比較例6は、特許文献3や特許文献4に記載された手法に基づき、バッキング材と呼ばれる発泡ポリウレタンの吸着材でウェハ基板を水吸着し、片面鏡面研磨した例である。
実施例1と同様にして得られた両面ラップ加工された表裏粗面のタンタル酸リチウム単結晶ウェハ基板を、厚さ0.40mmの発泡ポリウレタンから成るバッキング材を介して全面平坦なセラミックプレートに貼り付け、片面研磨装置を用いて片面鏡面研磨加工を行った。実施例1と同様、ウェハの仕上げ厚みH2は0.20mmとした。このとき、研磨加工中の研磨速度は実施例1とほぼ同程度であった。
上記のような工程を100枚のウェハ基板に対し実施し、実施例1と同様に、鏡面研磨後のウェハ洗浄を行い、ウェハの平坦度を測定したところ、TTVの平均値で4.28μm、PLTVは93.8%と悪化していた。また、ウェハ基板の裏面を蛍光灯下で目視観察したところ、キズ、汚れ、割れの発生は一切認められなかった。
これ等結果も以下の表1にそれぞれ示す。
[比較例7]
比較例7は、特許文献5に記載された手法に基づき、型抜き穴が設けられたテンプレートとセラミックプレートとで凹部を形成し、この凹部に収容されたウェハ基板を、水を介して吸着させ、片面鏡面研磨した例である。
すなわち、型抜き穴が設けられたテンプレート(基材部厚み0.10mm、粘着部厚み0.05mm)を、全面平坦なセラミックプレートに貼り付けることで凹部形状のウェハ収容部を構成し、実施例1と同様にして得られた両面ラップ加工された表裏粗面のタンタル酸リチウム単結晶ウェハ基板を上記ウェハ収容部に収容すると共に、純水を介してウェハ基板をウェハ収容部内に貼り付けた後、片面研磨装置を用いて片面鏡面研磨加工を行った。実施例1と同様、ウェハの仕上げ厚みH2は0.20mmとした。このとき、研磨加工中の研磨速度は実施例1とほぼ同程度であった。
上記のような工程を100枚のウェハ基板に対し実施し、実施例1と同様に、鏡面研磨後のウェハ洗浄を行い、ウェハの平坦度を測定したところ、TTVの平均値で2.52μm、PLTVは98.8%であった。また、ウェハ基板の裏面を蛍光灯下で目視観察したところ、キズ、汚れ、割れの発生は一切認められなかった。
これ等結果も以下の表1にそれぞれ示す。
[比較例8]
比較例8は、特許文献6に記載された手法に基づき、型抜き穴が設けられたテンプレートとセラミックプレートとで凹部を形成し、この凹部にサポート基板が貼り付けられたウェハ基板を収容し、水を介してウェハ基板を吸着させ、片面鏡面研磨した例である。
すなわち、型抜き穴が設けられたテンプレート(基材部厚み0.25mm、粘着部厚み0.10mm)を、全面平坦なセラミックプレートに貼り付けることで凹部形状のウェハ収容部を構成し、このウェハ収容部に、鏡面研磨するウェハと同じ材質のサポート基板(材質:タンタル酸リチウム、厚み:0.20mm、表裏粗さ:0.30μm、平坦度:TTV≦1.0μm)を収容すると共に水を介して吸着させ、更に、実施例1と同様にして得られた両面ラップ加工された表裏粗面のタンタル酸リチウム単結晶ウェハ基板を上記サポート基板上にワックスを介し貼り付けた後、片面研磨装置を用いて片面鏡面研磨加工を行った。実施例1と同様、ウェハの仕上げ厚みH2は0.20mmとした。このとき、研磨加工中の研磨速度は実施例1とほぼ同程度であった。
上記のような工程を100枚のウェハ基板に対し実施し、実施例1と同様に、鏡面研磨後のウェハ洗浄を行い、ウェハの平坦度を測定したところ、TTVの平均値で3.41μm、PLTVは97.0%であった。また、ウェハ基板の裏面を蛍光灯下で目視観察したところ、キズ、割れの発生は認められなかったものの、シミ状の汚れが全体の8%で発生していた。
(注)表1中「○」は「有」、「△」は「僅かに有」、「×」は「無」を示す。
[評 価]
(1)表1に示されているように、比較例1〜8と較べ、実施例1〜10の方がウェハ基板の平坦度は優れていることから、弾性表面波素子の製造プロセスにおいて、ウェハ基板全面に亘って金属電極パターンの形成が可能になるため、素子歩留まりの改善が図れる。
(2)また、実施例1〜10において、ウェハ基板の裏面に擦れキズや汚れが一切生じないことから、キズに起因したプロセス上の割れや電極の剥離等を回避することが可能となる。
(3)更に、近年のデバイス低背化に伴うウェハの薄板化要求に対応した任意の薄い片面鏡面基板を製作することが可能となる。